JP2010075077A - 水棲生物飼育用水浄化フィルター基材 - Google Patents

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智 柳澤
Takushi Kobayashi
拓史 小林
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Abstract

【課題】本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、バクテリア定着のための特殊な素材を用いることなくバクテリアによるアンモニア態窒素の分解を行うことのできる水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材は平均繊維径10μm以下の極細繊維を含んでなる布帛であって、厚さ5mm以下であることを特徴とするものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、水棲生物飼育用水浄化フィルター基材に関する。
近年、観賞魚などの水棲生物の飼育が盛んに行われている。一般に魚類、軟体動物、甲殻類などの水棲生物飼育用水槽は循環濾過方式であり、フィルターに飼育水を通すことにより、与えた餌の食べ残しや水棲生物の排泄物中の固形分は濾過装置内のフィルター、濾材により飼育水中から取り除かれる。しかし、食べ残しや排泄物等に含まれる蛋白質などの含窒素有機化合物はバクテリアにより分解されるため、固体としてフィルター、濾材で取り除くことができない。一般的に、含窒素有機化合物は好気的環境にある濾過装置内の濾材に着床するバクテリアによりアンモニア態窒素に分解され、そのアンモニア態窒素は独立栄養細菌である亜硝酸細菌や硝酸細菌によって最終的に硝酸態窒素に変換される。水棲生物を飼育する上で、飼育水中のアンモニア態窒素、すなわちアンモニウムイオンの濃度は飼育水の水質の良否を判断するうえで良い指標となる。なぜなら、アンモニアは硝化の過程において最初に生成する無機窒素化合物であるので、その濃度は飼育水中の硝化作用を持つ細菌群の増殖程度すなわち該細菌群の濾過装置への定着の度合いを知るうえに重要な指標となる。また、アンモニウムイオンは高濃度になると水棲生物全般に対して毒性を示すことから、アンモニウムイオンの飼育水系における高濃度残留は水棲生物にとって致命傷になりかねない。水中のアンモニウムイオンの濃度を低くする方法としては、換水による希釈や活性炭などの吸着剤による吸着、特殊な材料からなる濾材に定着したバクテリアによる分解などが行われている。
しかし、換水による希釈は、しばしば換水を行う必要があるうえ、アンモニア態窒素を常時低濃度に保つことは不可能である。特許文献1は活性炭などの吸着剤によるアンモニウムイオンの吸着を行っているが、吸着限界があるために定期的に吸着剤を交換する必要がある。また、バクテリアによるアンモニア態窒素の効率的な分解がなされるためには特許文献2のようにもとより濾材にバクテリアを定着させておかなければならないという問題がある。さらに、分解能力を高めるためにはバクテリアを多く維持するための定着箇所が必要であるが、一般的な濾材では表面積を大きくするために体積が大きくなってしまうという問題があった。
特開2004−057893号公報 特開2005−117925号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、もとよりバクテリアを濾材に定着させなくとも、少ない体積でバクテリアによるアンモニア態窒素の分解を行うことのできる水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を提供せんとするものである。
すなわち本発明は、平均繊維径10μm以下の極細繊維を含んでなる布帛であって、厚さ5mm以下であることを特徴とする水棲生物飼育用水浄化フィルター基材である。
本発明によれば、バクテリア定着のためにもとよりバクテリアを濾材に定着させなくとも、少ない体積でバクテリアによるアンモニア態窒素の分解を行うことのできる水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を提供することができる。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、アクリル系繊維、綿、羊毛、絹等の天然繊維から選ばれた少なくとも1つ以上であること、なかでもポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維が、使用時の形態保持性および加工のし易さの点から好ましい。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材は、平均繊維径10μm以下の極細繊維を含んでなることが重要である。平均繊維径10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.1μm以下の極細繊維を含むことで、バクテリアの定着する表面積を大きくとることができ、フィルター基材として薄い厚さでもバクテリアの定着による水浄化効果を得ることができ、少ない体積でも水洗浄効果を得ることができる。一方、0.01μm以上とすることで、フィルターとしての使用時に形態を保持することができる。
本発明における布帛の形態としては例えば、織物、編物、不織布等を挙げることができる。なかでも不織布が、フィルターとしての形態保持性能の観点から好ましい。さらに、フィルターとしての水通過性や厚み調節などの加工性の点では、短繊維不織布が好ましい。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材の厚さとしては、5mm以下が好ましい。5mm以下、より好ましくは1mm以下とすることで、フィルターとしての水通過性が良く、基材の全体に水がいきわたり効率的に水浄化効果を得ることができる。一方、0.5mm以上とすることで、フィルターとして使用したときに形態を保持することができる。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材の目付としては、150g/m以上が好ましい。150g/m以上、より好ましくは200g/m以上とすることで、水浄化効果を得るために十分な表面積および形態保持性を得ることができる。一方、300g/m以下とすることでフィルターとして使用したときに水通過性を保つことができる。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材は、上記のような布帛同士を複数枚直接重なってなる構成でもよい。その場合は、前述の厚さや目付は重ねた全体のものとする。
また、本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材は、その使用態様として、複数枚のフィルター基材の間に、水通過性を妨げない、たとえば目の荒いスポンジやマット等のスペーサーを挟んだり、棚段のように複数枚のフィルター基材の間に空間を設けて使用することもできる。そうすることで、水濾過の圧損は防ぎつつ水浄化効果を増強させることができる。その場合は、前述の厚さや目付はスペーサーや空間により隔てられたフィルター基材ごとに規定される。
また、本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材は、上記のような布帛以外の布帛を重ねて使用してもよい。そうすることで、形態保持性や強度を向上させることができる。
次に、本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を製造する方法について説明する。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を構成する極細繊維を得る方法としては、極細繊維を直接紡糸しても良いし、極細繊維を発生することができる繊維(極細繊維発生型繊維)を紡糸した後に極細繊維を発現させても良い。繊維径の細いものが得られやすい点では、極細繊維発生型繊維から極細繊維を発現させる方法が好ましい。
極細繊維発生型繊維としては、溶剤に対する溶解性の異なる2成分以上の熱可塑性樹脂を海成分・島成分とし、海成分を溶剤を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型繊維や、2成分以上の熱可塑性樹脂を繊維断面に放射状や多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
海島型繊維には、海島型複合用口金を用い海・島の2成分を相互配列して紡糸する海島型複合繊維や、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸繊維などがある。
海島型繊維の海成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、共重合ポリスチレン、ナトリウムスルホイソフタル酸やポリエチレングリコールなどを共重合成分とした共重合ポリエステル、ポリ乳酸、熱可塑性PVA系樹脂などを用いることができる。
極細繊維発生型繊維から易溶解性ポリマー(海成分)を溶解する溶剤としては、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィンの場合はトルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、ポリ乳酸や共重合ポリエステルの場合は水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、また、熱可塑性PVA系樹脂の場合は熱水を用いることができる。また極細繊維発生加工(脱海処理)は、溶剤中に極細繊維発生型繊維不織布を浸漬し、窄液することによって行うことができる。
脱海処理は、極細繊維を布帛にする前に施してもよいし、極細繊維発生型繊維を布帛にした後に施してもよい。
極細繊維を含んでなる布帛の好ましい態様である短繊維不織布を得る方法としては、カードマシンやクロスラッパーを用いる方法や、抄紙法等を採用することができる。また、これらの方法で得られた不織布をニードルパンチやウォータージェットパンチで絡合させてもよい。なかでも、ニードルパンチ或いはウォータージェットパンチなどにより繊維を絡合させて得られるものが、厚みや目付の調節が容易であることなど加工性の点から好ましい。
本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を使用する態様としては、濾過装置に合わせた大きさで用いればよい。一般的な濾過装置のうち、外付け式、壁掛け式、上部式、下部式などどの場合でも循環水と触れるように設置することで効果を発揮することができるが、接触面積が大きいほど効果が増加する。たとえば、長方形の上部式の場合は濾過装置部分と同じ大きさの長方形で使用することが好ましい。
また、濾過装置がない場合でも、水槽内に直接濾材を設置しても効果を得ることができる。
また、飼育する水生生物の種類や数、水の量などによって水棲生物飼育用水浄化フィルター基材の大きさを適宜調節してもよい。
[評価方法]
(1)繊維径
布帛表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で撮影し、繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して平均値を算出した。
なお、繊維径が50μmを超える繊維が混在している場合には、当該繊維は極細繊維に該当しないものとして平均繊維径の測定対象から除外するものとする。
また、極細繊維が異形断面等であり円形の断面を有しないの場合も、上記サンプリングの平均値が本発明の規定の本質から大きく乖離するとは考え難いことから、観察される繊維の幅をそれぞれの繊維の繊維径として測定するものとする。
(2)水浄化性能
水棲生物飼育用水浄化フィルター基材またはその積層体を幅12cm、長さ38cmの大きさに切り、上部式循環濾過装置(ジェックス社 “デュアルクリーン”600sp)内に設置した。幅61cm、奥行き31cm、高さ40cmのガラス水槽に前記濾過装置を設置し、65Lの水を入れて水温を25±2℃に保ち、循環量480L/hで水の循環を行った。3日間飼育水を循環させた後、水槽内にネオンテトラ30尾を放ち飼育した。水槽当たりフレークフード300mg/日を与え30日間飼育して、その間のアンモニウムイオンの濃度を淡水用水質測定試薬(株式会社エムエムシー企画輸入 Red Sea社 “フレッシュラボ”)より測定し、また、亜硝酸イオン、硝酸イオンの濃度を淡水用水質チェック試験紙(テトラジャパン株式会社“テトラテスト5in1”)により測定した。
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分としてポリスチレンからなり、島/海質量比55/45、島数32、単繊維繊度3.3dtex、繊維長51mm、捲宿数5.6山/cmの海島型複合繊維の原綿を用いた。この原綿をカードマシンにより開繊しウェブ化した後、クロスラッパーで該ウェブを重ね合わせて積層ウェブを作成した。ついで、ランダムにニードルが植え付けられたニードルボードを有するニードルパンチマシンで該積層ウェブに3000本/cmのニードルパンチを行って、幅120cm、目付150g/mの不織布を作成した。
該不織布を12%ポリビニルアルコール水溶液に含浸後乾燥することで形体安定材としてポリビニルアルコールをシートに付与した後、トリクロロエチレンの液流中にさらし、海成分であるポリスチレンを抽出した。次いで水中でポリビニルアルコールを抽出後、乾燥機で乾燥させて平均繊維径4μmの極細ポリエチレンテレフタレート繊維からなる、幅120cm、厚さ1mm、目付150g/mの極細繊維不織布を作成し、これを水棲生物飼育用水浄化フィルター基材とした。
水浄化性能の評価結果を表1に示す。
Figure 2010075077
本発明のフィルター基材を用いることにより15日後にはアンモニウムイオンが0ppmまで減少し、20日後には亜硝酸イオンも0ppmとなった。
[実施例2]
実施例1で得られたのと同様の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を2枚用意した。また、スペーサーとして、直径200μmのポリエチレンテレフタレート繊維からなり厚さ3cm、目付け200g/mの目の荒い不織布マットを用意した。これらをフィルター基材1枚/スペーサー1枚/フィルター基材1枚の順に重ねて、これを水棲生物飼育用水浄化フィルターとした。
水浄化性能の評価結果を表2に示す。
Figure 2010075077
アンモニウムイオンは10日後には0ppmまで減少し、15日後には亜硝酸イオンも0ppmとなった。
[比較例1]
直径100μmのポリエチレンテレフタレート繊維からなる幅12cm、長さ38cm、厚さ1mm、目付150g/mの不織布を水棲生物飼育用水浄化フィルター基材とした。
水浄化性能の評価結果を表3に示す。
Figure 2010075077
アンモニウムイオンは10日後に0.5ppmまで増加し、20日後まで0.25ppm存在した。亜硝酸イオンは5〜10日間では5ppm、その後30日まで1ppm存在した。
本発明の使用方法の一例として、水槽の上部に設置した循環フィルター装置に本発明の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材を設置した図である。
符号の説明
1: 水棲生物飼育用水浄化フィルター基材
2: 水槽
3: 循環フィルター装置
4: 循環水入
5: 循環水出
6: 水

Claims (4)

  1. 平均繊維径10μm以下の極細繊維を含んでなる布帛であって、厚さ5mm以下であることを特徴とする水棲生物飼育用水浄化フィルター基材。
  2. 前記布帛が不織布である請求項1に記載の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材。
  3. 前記不織布が短繊維不織布である請求項2に記載の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材。
  4. 前記不織布の目付が150g/m以上である請求項2または3に記載の水棲生物飼育用水浄化フィルター基材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014519332A (ja) * 2011-06-09 2014-08-14 ティー.エフ.エイチ.パブリケーションズ、インコーポレーテッド ナノ繊維を含む水槽フィルタ媒体

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