JP2010071103A - イオンエンジン試験装置 - Google Patents

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和彦 作谷
Hidenori Ida
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貴久 永山
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Abstract

【課題】装置を大型化することなく真空排気速度を向上でき、イオンエンジン等の高出力化に対応したイオンエンジン試験装置を得る。
【解決手段】イオンエンジン試験装置は、イオン8の放出方向に対して傾斜した入射面が形成されたターゲット20〜29を円筒状の真空容器1内に互いに間隙をおいて配置し、この間隙を介して真空容器1の一側に形成されイオンエンジン2からイオン8が放出される第1の空間3と真空容器1の他側に形成された第2の空間4とを連通し、第1の空間3および第2の空間4にそれぞれ第1のクライオパネル5および第2のクライオパネル6を設置したものである。
【選択図】図1

Description

この発明は、宇宙空間で人工衛星の姿勢制御に用いられるイオンエンジン等の試験を行うイオンエンジン試験装置に関するものである。
従来のイオンエンジン試験装置としては、一側にイオンエンジンが装着された真空容器と、この真空容器内の他側にイオンエンジンと対向して設けられたチタン製の傾斜ターゲットと、真空容器の胴部内側面に設けられ極低温に冷却されたクライオパネルを備え、イオンエンジンから放出され傾斜ターゲットと衝突してガス化したイオンを極低温のクライオパネルで固化して凝着することにより、真空容器内の気体を排気(除去)して装置の高真空を維持するものがある(例えば、非特許文献1参照)。
宮崎勝弘、「イオンエンジンの寿命試験における評価精度および試験効率向上のためのイオンエンジン試験装置のターゲットの改修」、航空宇宙技術研究所資料、独立行政法人航空宇宙技術研究所、平成15年8月、第778号、p.3〜8(図1、図7)
近年、イオンエンジン等の高出力化に伴って放出されるイオンの量が増加しており、イオンエンジン試験装置としては高真空を維持するために真空排気速度の向上を図る必要がある。真空排気速度向上の方策としてはクライオパネルの表面積を増大することが考えられるが、上記のような従来装置においてクライオパネルの表面積を増大するためには真空容器を大径化する必要があり、その結果装置が大型化するという問題があった。
この発明は上記のような問題を解決するためになされたもので、装置を大型化することなく真空排気速度を向上でき、高出力化に対応したイオンエンジン試験装置を提供するものである。
この発明に係るイオンエンジン試験装置は、真空容器、この真空容器内に互いに間隙をおいて配置され、前記真空容器の一側にイオンエンジンからイオンが放出される第1の空間と、前記真空容器の他側に前記第1の空間と前記間隙を介して連通した第2の空間とを形成すると共に、前記イオンの放出方向に対して傾斜した入射面により前記イオンのエネルギーを吸収する複数の第1のターゲット、および前記真空容器の前記第1および第2の空間にそれぞれ設けられた第1および第2のクライオパネルを備えたものである。
この発明によれば、装置を大型化することなくクライオパネルの表面積を増大して真空排気速度を向上することができ、高出力化に対応したイオンエンジン試験装置を得ることができる。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。また、図2は、図1におけるA−A線断面図であり、図3は、図1のイオンエンジン試験装置の要部(ターゲット)を示す断面図である。
まず、図1ないし図3を用いて実施の形態1におけるイオンエンジン試験装置の構成について説明する。
図1においてイオンエンジン試験装置は、円筒状の真空容器1と、この真空容器1内に互いに間隙をおいて配置され、イオンのエネルギーを吸収する複数のターゲット20〜29(第1のターゲット)とを備えており、ターゲット21〜28の間隙を介して、真空容器1の一側に形成された第1の空間3と、この真空容器1の他側に形成された第2の空間4とが連通している。そして、第1の空間3には、第1のクライオパネル5が、第2の空間には第2のクライオパネル6がそれぞれ設けられている。
真空容器1は、直径1.5m、長さ3m程度の円筒胴1aの両側に皿形鏡板1b、1cが設けられており、例えば、ステンレス材で構成されている。また、イオンエンジン7は第1の空間3内の鏡板1b付近に配置された設置台(図示せず)上に装着され、そのイオン放出面7aの中心が真空容器1の軸心と一致するように設置される。なお、イオンエンジン7の代わりにホールスラスタ等の静電加速型の電気推進器を用いることができる。
図3は図1におけるターゲット24〜26を拡大して示した図である。図3に示すように、例えばターゲット24は、入射面24aが形成された短冊形のイオン衝突板241と、このイオン衝突板241が一側に装着された短冊形の基板242と、この基板の他側に接合された冷却管(冷却手段)15とで構成されている。イオン衝突板241は基板242とボルトで機械的に締結され、イオン衝突板241は基板242と着脱可能に装着されている。
本実施の形態においては、イオン衝突板241はグラファイト材で、基板242および冷却管15は熱伝導率の高い銅または銅合金でそれぞれ形成されているが、他の材料を使用することもできる。また、基板242と冷却管15は低温ろう付けにより接合されているが、他の方法で接合してもよい。
なお、ターゲット24以外のターゲット20〜29についてもターゲット24と同様に、裏面に冷却管15が接合された基板の表面に入射面が形成されたイオン衝突板が装着された構成となっている。
このように構成されたターゲット20〜29は、フレーム(図示せず)に着脱可能にボルトで締結され、さらにこのフレームを真空容器1内に溶接された固定台(図示せず)にボルトを介して固定することによって、真空容器1内に設置される。
ここで、ターゲット20〜29の入射面は、イオンエンジン7から放出されるイオン8の放出方向に対して傾斜するように設けられ、特にイオン8の密度が高い領域に設置されるターゲット21〜28はイオンの入射角が60度近傍の角度になるように配置されている。また、ターゲット20および29は、イオンエンジン7のイオン放出面7aと平行に設置され、イオン8が第2のクライオパネル6に直接入射しないように、第2のクライオパネル6の内側面は、その全面がターゲット20〜29の投影面によって覆われている。また、ターゲット21〜24、およびターゲット25〜28はそれぞれ平行に設置され、図3に示すようにターゲット24はターゲット25の端部を覆うように設置されている。
ターゲット20〜29を構成する基板に接合された冷却管15には、真空容器1の外部に設置されたターゲット冷却器9から冷媒が供給されており、この冷媒によってイオン衝突板は基板を介して冷却されている。本実施の形態においては、冷媒として水を使用し、ターゲットの表面温度を20℃程度に保持できるような水温・流量の水をターゲット冷却器8から供給しているが、必要な排熱量、ターゲットの表面温度、および、価格、本体サイズ等を考慮して適宜冷媒および冷却器を選択することができる。
第1のクライオパネル5は、図2に示すように、8個のクライオパネル51〜58から構成されており、このクライオパネル51〜58が真空容器1内に設けられたクライオパネル設置台101〜108の上に取り付けられ、全体として第1の空間3を取り込むように真空容器1の内側に設けられている。また、第2のクライオパネル6は、ターゲット20〜29と対向するように第2の空間4内に設けられ、真空容器1の鏡板1cに取り付けられている。第1および第2のクライオパネル5、6には配管11を介してヘリウム冷凍機12から液体ヘリウムが供給されており、第1および第2のクライオパネル5、6の表面は常時20K以下に冷却されている。真空容器1内のガス分子は、これらのクライオパネル5、6の表面で固化して凝着するので、第1および第2のクライオパネル5、6は大容量の真空排気装置として機能する。
なお、第1および第2のクライオパネルの代わりに、イオンエンジン7の作動時に真空容器1内の真空度を1×10−3〜1×10−4Pa程度に維持することができるような排気能力を有する市販のクライオポンプを、第1および第2の空間3、4に面してそれぞれ設けてもよい。
また、第1のクライオポンプの内側には、真空容器1に固定された支持板131〜138によって支えられ、第1のクライオパネル51〜58に沿って設けられた複数のシュラウド141〜148が、真空容器1の軸心方向に間隔をおいて設けられている。
なお、真空容器1には第1および第2のクライオポンプを稼動させる前に真空容器1内を所定の真空度に減圧するための粗引き用のロータリーポンプ(図示せず)が補助真空排気装置として接続されている。
次に図1を用いてイオンエンジン試験装置の動作について説明する。
イオンエンジン2を作動させると、イオンエンジン2のイオン放出面2aからターゲットに向かって、例えば、推進剤のキセノン(以下「Xe」という)がイオン8として放出される。このとき、Xeイオン8の密度分布は真空容器1の軸心方向が最大で真空容器1の軸心を中心とした同心円上に密度が低下する形となる。
このように放出されたXeイオン8は、ほぼ全てがターゲット20〜29のイオン衝突板に衝突するので、イオン衝突板の表面からはXeガスが発生するものとみなせる。イオン衝突板の表面から発生したXeガスは、第1の空間3およびターゲット21〜28の間隙を通って第2の空間4にそれぞれほぼ等量に放出される。第2の空間4に放出されたXeガスは分子流となって、鏡板1cに設置された第2のクライオパネル6に全量が入射し、その表面で固化して凝着する。このように第2のクライオパネル6はXeガスの指向性を利用して放出されたXeガスを効率よく排気することができる。
一方、イオン衝突板から第1の空間3に向かって放出されたXeガスは、第1のクライオパネル5の表面で固化して凝着するが、第1のターゲット21〜28の間に所定の間隙を設けて第2の空間4側にもXeガスを放出できるようにしたので、第1のクライオパネル5に凝着するXeガスの量は、第1のターゲット21〜28の間に間隙を設けない場合に比べてほぼ半減することになる。すなわち、第1のクライオパネル5と第2のクライオパネル6はほぼ同量のXeガスを排気することができるので、真空容器1の形状および寸法が同一である場合には、真空容器1内のガス排気速度を約2倍に向上させることができる。
このように、真空容器1内の一側に形成されイオンエンジン2からXeイオン8放出される第1の空間と、真空容器2内の他側に形成された第2の空間とをターゲット21〜28の間隙を介して連通したことにより、第1の空間3に設けられた第1のクライオパネル5に加えて、第2の空間4に設けられた第2のクライオパネル6でも真空容器1内のXeガスを排気できるので、装置を大型化することなく真空排気速度の高いイオンエンジン試験装置を得ることができる。
また、イオンエンジン2からのイオン放出面2aと対向してターゲット20〜29を配置したことにより、放出されたイオン8が直接真空容器1や第2のクライオパネル6に衝突することを防止できるので、真空容器1および第2のクライオパネルの磨耗を抑制できる。
イオン衝突板を構成する原子は、イオンエンジン2から放出されたXeイオン8の衝突によって、スパッタ粒子として真空容器1内に飛散する。Xeイオン8のイオン衝突板201〜291に形成された入射面への入射角が90度に近いほど、イオンエンジン2に飛来するスパッタ粒子の量は減少するが、イオン衝突板への入射角が70度から90度の範囲では入射したXeイオン自身がイオン衝突板で反跳されて、第1および第2のクライオパネル5、6、基板および冷却管15等を磨耗する恐れがあるので、上記入射角は70度以下であることが好ましく、本実施の形態のように入射角を60度近傍に設定して、Xeイオンの反跳を防ぐことが望ましい。
このようにターゲット20〜29の入射面20a〜29aをイオン8の放出方向に対して傾斜して配置することにより、スパッタ粒子がイオンエンジン2に飛来し付着することを抑制できるので、スパッタ粒子の堆積によるイオンエンジン2の絶縁破壊や、イオン放出口磨耗状態等に悪影響を及ぼすことがない。また、ターゲットに入射するイオンの反跳も低減できるので、反跳粒子による真空容器1や第1および第2のクライオパネル5、6の磨耗も抑制できる。
また、本実施の形態でイオン衝突板を形成する材料として用いたグラファイトは、従来のイオンエンジン試験装置のイオン衝突板として用いられていたチタンに比べてスパッタレート(atoms/ion)が約3分の1であり、さらに同体積に含まれる原子数はチタンの約2倍であるので、同体積で比較した場合、グラファイトで形成したイオン衝突板201〜291の磨耗速度はチタンに比べて約6分の1となり、交換の頻度を大幅に低減することができる。
さらに、グラファイトはチタンの約3倍の熱伝導率を有するので、チタンに比べてイオン衝突板を約3倍厚くしても同等の表面温度を得ることができる。すなわち、イオン衝突板をチタンで形成した場合と同等の表面温度に設定する場合には、グラファイトで形成したイオン衝突板の磨耗速度をチタンに比べて約18分の1に低減することができる。
Xeイオン8の衝突によってイオン衝突板の表面温度は上昇するが、イオン衝突板を裏面に冷却管15を接合された基板の表面に装着し、イオン衝突板と冷却管15との距離を短く構成しているので、イオン衝突板を効率的に冷却することができる。
また、基板および冷却管15を銅または銅合金で形成したので、アルミニウム等の他材料で形成した場合に比べて、排熱効率を向上させることができる。
さらに、基板と冷却管15とを低温ろう付けで接合したので、接合による熱履歴を250〜300℃程度と、銀ろう付けやアルミ溶接時の熱履歴の約3分の1程度に抑制でき、その結果、接合による部材の熱ひずみが低減されて、基と冷却管15との密着性を向上して排熱効率を向上することができる。
本実施の形態によれば、イオン8の放出方向に対して傾斜した入射面が形成されたターゲット21〜29を真空容器1内に互いに間隙をおいて配置し、この間隙を介して真空容器1の一側に形成されイオンエンジン2からイオン8が放出される第1の空間3と真空容器1の他側に形成された第2の空間4とを連通したことにより、第1の空間3のみならず、第2の空間4にもクライオパネルを設置してクライオパネルの大面積化を図ることができるので、装置を大型化することなく真空排気速度を向上でき、イオンエンジン等の高出力化に対応したイオンエンジン試験装置を得ることができる。また、真空排気速度を低下させることなく装置を小型化できるので、装置設置面積の減少、装置製作費用の低減、および真空減圧・大気開放時間の短縮が可能となる。
また、本実施の形態によれば、第1のクライオパネル5を第1の空間3を取り囲むように設けたので、第1の空間3に放出されたガスを効率よく排気することができる。
また、本実施の形態によれば、第2のクライオパネル6を、ターゲット20〜29と対向して設けたことにより、第2の空間4に放出されたガスの指向性を利用して効率よく排気することができる。
また、本実施の形態によれば、第2のクライオパネル6の内側面は、その全面がターゲット20〜29の投影面によって覆われているので、イオンエンジン2から放出されるイオン8が直接第2のクライオパネル6に衝突することがなく、第2のクライオパネル6の磨耗を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、ターゲット20〜29を入射面が形成されたイオン衝突板と、このイオン衝突板が一側に装着された基板と、この基板の他側に装着された冷却管とで構成したので、イオン9がイオン衝突板に衝突することによって発生する熱を効率的に排出することができる。
また、本実施の形態によれば、イオン衝突板をグラファイトで形成したので、従来のイオンエンジン試験装置に用いられていたチタンを使用した場合に比べて排熱効率を高めることができるとともに、イオン衝突板の交換頻度を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、基板および冷却管を銅または銅合金で形成したので、アルミニウム等の他の材料で形成した場合に比べて排熱効率を高めることができる。
また、本実施の形態によれば、冷却管15は、基板に低温ろう付けにより接合したことにより、接合時のひずみを抑制できるので、基板と冷却管15との密着性を高めることができ、ターゲット20〜29の排熱効率を向上することができる。
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。
図4において、本実施の形態のイオンエンジン試験装置は、真空容器1内に設けられたターゲット(第1のターゲット)21〜28が所定の間隙をおいて互いに平行に配列されている。ただし、イオンエンジン7から放出されるイオン8が第2のクライオパネル6に直接入射しないように、第2のクライオパネル6の内側面はその全面がターゲット20〜29の投影面によって覆われるように配置されている。これらの点を除けば、本実施の形態は実施の形態1と同様の構成を有するものである。
このように構成されたイオンエンジン試験装置においては、実施の形態1と同様に、イオンエンジン7から放出されたXeイオン8はターゲット20〜29と衝突してXeガスとなる。ターゲット20〜29の表面から発生するXeガスは、第1の空間3と、ターゲット20〜29の間隙を通過して第2の空間へと放出される。
そして、第1の空間3に放出されたXeガスは第1のクライオパネル5で、第2の空間4に放出されたXeガスは第2のクライオパネル6それぞれで固化して凝着し、真空容器1内のXeガスは排気されることになる。
本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、イオン8の放出方向に対して傾斜した入射面が形成されたターゲット21〜29を真空容器1内に互いに間隙をおいて配置し、この間隙を介して真空容器1の一側に形成されイオンエンジン2からイオン8が放出される第1の空間3と真空容器1の他側に形成された第2の空間4とを連通したので、第1の空間3のみならず、第2の空間4にもクライオパネルを設置してクライオパネルの大面積化を図ることができるので、装置を大型化することなく真空排気速度を向上でき、イオンエンジン等の高出力化に対応したイオンエンジン試験装置を得ることができる。また、真空排気速度を低下させることなく、装置を小型化できる。
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。また、図6は図5の要部(ターゲット)を示す断面図である。
図5において本実施の形態のイオンエンジン試験装置は、真空容器1内に設けられたターゲット20〜24の組とターゲット25〜29の組とが真空容器1の軸心に対して、互いに対称に配置されている。このとき、イオンエンジン7から放出されるイオン8が第2のクライオパネル6に直接入射しないように、第2のクライオパネル6の内側面全面をターゲット20〜29の投影面によって覆うために、中央部のターゲット24と25は、図6に示すように、その間隔ができるだけ小さくなるように配置されている。これらの点を除けば、本実施の形態は実施の形態1と同様の構成を有するものである。
このように構成されたイオンエンジン試験装置においては、実施の形態1と同様に、イオンエンジン7から放出されたXeイオン8はターゲット20〜29と衝突してXeガスとなる。ターゲット20〜29の表面から発生するXeガスは、第1の空間3およびターゲット20〜29の間隙を通過して第2の空間4へ放出される。
イオンエンジン7は、イオン放出面7aの中心が真空容器1の軸心と一致するように設置されているので、イオンエンジン7から放出されたXeイオン8は真空容器1の軸心に対して対称の分布を有する。本実施の形態においては、ターゲット20〜29が真空容器1の軸心に対して対称に設置されているので、ターゲット20〜29から2の空間4に放出されるXeガスはより指向性の高い状態で第2のターゲット6に入射して排気される。
本実施によれば、ターゲット20〜29を、真空容器1の軸心に対して対称に配置したので、ターゲット20〜29から第2の空間4へ放出されるXeガスはより高い指向性をもって第2のクライオパネル6へ流れるので、より効率的に真空容器1内のガスを排気することができる。
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。また、図8は図7におけるA−A線断面図であり、図9は実施の形態4におけるイオンエンジン試験装置の変形例を上から見た断面図である。
図7において、イオンエンジン試験装置は、実施の形態1で示したシュラウドの代わりに、第1のクライオパネル5の内側に第2のターゲット31〜36が真空容器1の軸心方向に互いに所定の間隔をおいて配置されている。これらの点を除けば、本実施の形態は実施の形態1と同様の構成を有するものである。
第2のターゲット31〜36は、イオンエンジン7のイオン放出面7aと平行に設けられている。図8に示すように、例えば第2のターゲット31は、8個のターゲット片311〜318から構成されており、これらのターゲット片311〜318はそれぞれ真空容器に固定されたターゲット設置台161〜168に、第1のクライオパネル51〜58に沿って装着されている。他の第2のターゲット32〜36についても第2のターゲット31と同様に構成されている。
第2のターゲット31〜36は、実施の形態1で示した第1のターゲット20〜29と同様に、入射面が形成されたイオン衝突板と、このイオン衝突板が一側に装着された基板と、この基板に他側に装着された冷却管とで構成されており、この冷却管にはターゲット冷却器9から冷媒である水が供給されている。
このように構成されたイオンエンジン試験装置においては、イオンエンジン7から放出されたXeイオン8が第1のクライオパネル5に衝突するような方向に放出されても、Xeイオン8は一旦第2のターゲット31〜36に衝突するので、第1のクライオパネル5がXeイオン8の衝突によって磨耗するのを抑制できる。また、第2のターゲット31〜36は、互いに間隙をおいて配列されているので、第1のクライオパネル5の真空排気速度が低下することはほとんどない。
なお、本実施の形態では、実施の形態1に示したシュラウドに代えて第2のターゲット31〜36を設けたが、このシュラウドと第2のターゲット31〜36を併設してもよい。また、本実施の形態では、第1のクライオパネル5の排気速度の低下を最小限にするために、第2のターゲット31〜36をイオンエンジン7のイオン放出面7aと平行に設置したが、第2のターゲット31〜36のXeイオン8による磨耗抑制を重視する場合には、第2のターゲット31〜36をXeイオン8による磨耗が小さくなるように傾斜して設置してもよい。
また、図9に示すように、実施の形態2と同様に第1のターゲット21〜28を互いに平行に配置することもできる。
本実施の形態によれば、第1のクライオパネル5の内側に、真空容器1の軸心方向に互いに所定間隔をおいて配置され、イオンの放出方向に対して傾斜した入射面が形成された複数の第2のターゲット31〜36を設けたことにより、第1のクライオパネル5のイオンによる磨耗を抑制することができるので、装置の小型化やイオンエンジン7の大出力化に対応したイオンエンジン試験装置を得ることができる。
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5におけるイオンエンジン試験装置のターゲットの構成を示す断面図である。
実施の形態1ないし実施の形態4におけるイオンエンジン試験装置の第1のターゲット20〜29および第2のターゲット31〜36は、本実施の形態のように構成することもできる。
図10において、例えばターゲット21は、入射面21aが形成されたイオン衝突板211が一側に冷却管15が接合された基板212に接触熱抵抗改善部材213を介在して装着されている。接触熱抵抗改善部材213としては、例えばグラファイトシートや真空グリースなどを用いることができ、特に高い熱伝導率を有するグラファイトシートを用いることで排熱効率を向上させることができる。また、他の第1のターゲット20〜29および第2のターゲット30〜36についても同様に構成することができる。
一般的に部材と部材とを機械的に締結した場合、その部材間の接触界面には部材の表面粗さに起因するミクロン単位の空隙が存在し、この空隙の存在が熱抵抗(接触熱抵抗)となって部材間の熱伝達率を低下させる。特に真空減圧下の雰囲気では、部材間の空隙も真空となるため、部材間の熱伝達が大幅に低下する。しかし、本実施の形態のように、イオン衝突板211と基板212との間に接触熱抵抗改善部材213を介在させて部材間の空隙を埋めることによって、境界面の熱伝達率を大幅に改善することができる。その結果、イオンの衝突によってイオン衝突板211に発生する熱を効率的に排熱できる。
本実施の形態によれば、イオン衝突板211を接触熱抵抗改善部材213を介在して基板212に装着したことにより、イオン衝突板211と基板212と境界面の熱抵抗を低減することができるので第1および第2のターゲットの排熱効率を向上させることができる。
実施の形態6.
図11はこの発明の実施の形態6におけるイオンエンジン試験装置のターゲットの構成を示す断面図である。実施の形態1ないし実施の形態5におけるイオンエンジン試験装置の中央部に設けられる第1のターゲット21〜28は本実施の形態のように構成することもできる。
図11は実施の形態1ないし実施の形態4の第1のターゲット26〜28を拡大して示した図である。図11において、第1のターゲット26〜28は基板262、272、282の第2の空間4側の端部を冷却管15側に折り曲げてイオン衝突板261、271、281のスパッタ粒子が衝突するスパッタ粒子衝突板262a、272a、282aが形成されている。このとき、スパッタ粒子衝突板262a、272a、282aの端部は、隣接する第1のターゲットのイオン衝突板表面の延長線上を越える程度になるように設けられている。
スパッタ粒子衝突板262a、272a、282aは、基板262、272、282の端部を折り曲げて形成する以外に、板材等を基板262、272、282に機械的または冶金的に接合して形成してもよいし、第1のターゲットを固定しているフレーム(図示せず)に同様の効果を有する部材を配置してもよい。
また、他の第1のターゲット21〜25も同様の構成を有する。これらの点を除けば、本実施の形態は実施の形態2と同様の構成を有するものである。
次に動作について説明する。
イオンエンジン7から放出されたXeイオン8との衝突により、第1のターゲット21〜28のイオン衝突板から放出されるスパッタ粒子は、確率的にイオンの入射方向と反対の方向、すなわち第2のクライオパネル6に向かって放出される。
本実施の形態のように第1のターゲット21〜28の第2の空間4側の端部にスパッタ粒子衝突板を設けることによって、スパッタ粒子をスパッタ粒子衝突板に衝突させることができるので、スパッタ粒子を第2のクライオパネル6に向かって飛散させることなく第1のターゲット21〜28の基板上に堆積させることができる。その結果、第2のクライオパネル6にスパッタ粒子が堆積することを防ぐことが可能となるので、スパッタ粒子の堆積による第2のクライオパネル6の排気速度の低下を抑制できる。
また、第2のクライオパネル6に堆積したスパッタ粒子は、クライオパネルに凝着したガス分子とは異なり、クライオパネルの再生では取り除くことが出来ないので、スパッタ粒子を機械的に削り取りパネル表面を露出させる必要があるが、本実施の形態のように第1のターゲット21〜28の第2の空間4側にスパッタ粒子衝突板を設けることによって、このようなメンテナンスが不要となる。
本実施の形態によれば、第1のターゲット21〜28を構成する基板の第2の空間4側の端部にスパッタ粒子衝突板を設けたことにより、イオン衝突板からのスパッタ粒子をスパッタ粒子衝突板に衝突させて第2のクライオパネル6側にスパッタ粒子を飛散させることなく基板上に堆積させることができるので、第2のクライオパネル6にスパッタ粒子が堆積することを防ぐことが可能となってスパッタ粒子の堆積による第2のクライオパネル6の排気速度の低下を抑制できる。
この発明の実施の形態1におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。 図1におけるA−A線断面図である。 図1におけるイオンエンジン試験装置の要部を示す断面図である。 この発明の実施の形態2におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。 この発明の実施の形態3におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。 図5におけるイオンエンジン試験装置の要部を示す断面図である。 この発明の実施の形態4におけるイオンエンジン試験装置を上から見た断面図である。 図7におけるA−A線断面図である。 この発明の実施の形態4におけるイオンエンジン試験装置の変形例を上から見た断面図である。 この発明の実施の形態5におけるイオンエンジン試験装置の要部構成を示す断面図である。 この発明の実施の形態6におけるイオンエンジン試験装置の要部構成を示す断面図である。
符号の説明
1 真空容器、 3 第1の空間、 4 第2の空間、 5,51〜58 第1のクライオパネル、 6 第2のクライオパネル、 7 イオンエンジン、 8 イオン、 15 冷却手段、 20〜29 第1のターゲット、 21a,24a〜26a 入射面、 31〜36 第2のターゲット、 211,241,251,261,271,281 イオン衝突板、 212,242,252,262,272,282 基板、 261a,271a,282a スパッタ粒子衝突板、 213 接触熱抵抗改善部材。

Claims (12)

  1. 真空容器、この真空容器内に互いに間隙をおいて配置され、前記真空容器の一側にイオンエンジンからイオンが放出される第1の空間と、前記真空容器の他側に前記第1の空間と前記間隙を介して連通した第2の空間とを形成すると共に、前記イオンの放出方向に対して傾斜した入射面により前記イオンのエネルギーを吸収する複数の第1のターゲット、および前記真空容器の前記第1および第2の空間にそれぞれ設けられた第1および第2のクライオパネルを備えたイオンエンジン試験装置。
  2. 前記第1のクライオパネルは、前記第1の空間を取り囲むように設けたことを特徴とする請求項1に記載のイオンエンジン試験装置。
  3. 前記第2のクライオパネルは、前記第1のターゲットと対向して設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオンエンジン試験装置。
  4. 前記第2のクライオパネルの内側面は、その全面が前記第1のターゲットの投影面によって覆われたことを特徴とする請求項3に記載のイオンエンジン試験装置。
  5. 前記第1のターゲットは、前記真空容器の軸心に対して対称に配置したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
  6. 第1のクライオパネルの内側に、前記真空容器の軸心方向に互いに所定間隔をおいて配置され、前記イオンの放出方向に対して傾斜した入射面により前記イオンのエネルギーを吸収する複数の第2のターゲットを設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
  7. 第1および第2のターゲットは、前記入射面が形成されたイオン衝突板と、このイオン衝突板が一側に装着された基板と、この基板の他側に装着された冷却手段とで構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
  8. 前記イオン衝突板と前記基板との間に接触熱抵抗改善部材を介在したことを特徴とする請求項7に記載のイオンエンジン試験装置。
  9. 前記イオン衝突板をグラファイトで形成したことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のイオンエンジン試験装置。
  10. 前記基板を銅または銅合金で形成したことを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
  11. 前記冷却手段は、前記基板に低温ろう付けにより接合したことを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
  12. 前記第1のターゲットの基板は、前記第2の空間側に形成されたスパッタ粒子衝突板を有することを特徴とする請求項7ないし請求項11のいずれか1項に記載のイオンエンジン試験装置。
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