JP2010069952A - 航空機による低重力環境の生成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】航空機を放物線軌道で飛行させ且つ高重力環境が生命現象に与える影響を抑制できる低重力環境の生成方法を提供すること。
【解決手段】航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する低重力環境の生成方法は、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にすることを特徴とする。
【選択図】図5
【解決手段】航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する低重力環境の生成方法は、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にすることを特徴とする。
【選択図】図5
Description
本発明は、航空機による低重力環境の生成方法に関する。
従来、現行の宇宙ステーションや将来の有人月面基地又は火星探査等、人類の宇宙進出を念頭に、約1/6G(G=9.8m/s2)の月面等、約1/3Gの火星表面等の模擬した低重力環境を、地球上で生成する技術の開発が進められてきた。
例えば、落下塔を用いる技術は、比較的簡便に実施できるため、汎用されている。また、同様の技術として、落下カプセルを用いる技術が挙げられる。しかし、これらの技術は、落下後の物体に著しい衝撃が負荷されるため、ヒトや高等動物等への適用が事実上不可能である。
そこで、航空機を放物線軌道で飛行(パラボリックフライト)させることで、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を航空機内に生成する技術が着目されている。この技術は、低重力環境で物体に負荷される衝撃が軽減されるため、宇宙飛行士の訓練や低重力環境で使用される装置の検証等に使用されている。
しかし、パラボリックフライトでは、低重力環境の生成前に高重力環境が不可避的に存在する。ここで、本発明者らが既に報告しているように、ヒトを含む動物を高重力に数秒間曝すと、脳内視床下部における多数の神経細胞が、ストレス応答反応を惹起する(非特許文献1及び2)。このため、従来の飛行条件で低重力環境下での生命現象を観察したところで、そこで検出される生命現象は、低重力環境による影響のみならず、高重力環境による影響も受けたものになり、純粋に低重力環境による影響を観察することができなかった。また、このような問題は、動物に限られたものではなく、生物学的試料一般に通じる問題である。
Kumei,Y. et al. Neuronal events of rat hippocampus in a 2G−centrifuge. European Low Gravity Research Association ELGRA Biennial Symposium and General Assembly, Santorini, Greece, 9/21−25/2005. ELGRA News vol 24, pp115, 2005 Kumei, Y. et al. Gravity stress elevates the nociceptive threshold level with immunohistochemical changes in the rat brain. Acta Astronautica 49:381−390, 2001
Kumei,Y. et al. Neuronal events of rat hippocampus in a 2G−centrifuge. European Low Gravity Research Association ELGRA Biennial Symposium and General Assembly, Santorini, Greece, 9/21−25/2005. ELGRA News vol 24, pp115, 2005 Kumei, Y. et al. Gravity stress elevates the nociceptive threshold level with immunohistochemical changes in the rat brain. Acta Astronautica 49:381−390, 2001
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、航空機を放物線軌道で飛行させ且つ高重力環境が生命現象に与える影響を抑制できる低重力環境の生成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、重力が1.5G未満になると、生命現象に与える影響が激減することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する低重力環境の生成方法であって、
前記低重力環境の生成前における前記航空機内の高重力を1.5G未満にする生成方法。
前記低重力環境の生成前における前記航空機内の高重力を1.5G未満にする生成方法。
(2) 更に、前記低重力環境の生成後における前記航空機内の高重力を1.5G未満にし、
その後、前記低重力環境を再生成する(1)記載の生成方法。
その後、前記低重力環境を再生成する(1)記載の生成方法。
(3) 前記高重力を1.3G以下にする(1)又は(2)記載の生成方法。
(4) 前記高重力を1.2G超にする(1)から(3)いずれか記載の生成方法。
(5) 低重力環境における生物学的試料の実験方法であって、
(1)から(4)いずれか記載の生成方法を用い、前記航空機内に生物学的試料を搭載して行う実験方法。
(1)から(4)いずれか記載の生成方法を用い、前記航空機内に生物学的試料を搭載して行う実験方法。
(6) 内部に生物学的試料が搭載された航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する際、前記低重力環境の生成前における前記航空機内の高重力を1.5G未満にすることで、前記高重力が前記生物学的試料に与える影響を抑制する方法。
本発明によれば、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にしたので、高重力による生体ストレス応答の惹起が抑制される。このため、高重力環境が生命現象に与える影響を抑制できる。
低重力環境の生成方法は、航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を航空機内に生成する工程を有する。これにより、低重力環境が生命現象に与える影響を検出できる。
図1は、一般的なパラボリックフライトの飛行軌道及び航空機内の上下方向の重力を示すグラフである。図1における点C−点D間が、航空機内に低重力環境が生成される期間である。航空機実験では、航空機が推力を落とすことで放物線を描いて飛行する。この放物線軌道の開始から終了までの約20秒間、機内は低重力状態になる。この低重力状態を可及的に長くするためには、低重力開始時点における航空機速度を最大化する必要がある。
そこで、低重力状態に突入する約1分前から、航空機は、いったん降下しその後上昇するという飛行姿勢を取る。具体的には、点Cの前に降下(点A−点B間)及び上昇(点B−点C間)を行う。しかし、点A−点C間、特に点B−点C間では高重力が生じるため、この高重力が生命現象に影響を与え、点C−点D間の低重力が生命現象に与える影響をマスクしてしまうことが懸念される。
本発明の生成方法は、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にすることを特徴とする。驚くべきことに、高重力を1.5G未満という低い値に設定することで、高重力により惹起される生体ストレス応答が抑制されるため、高重力環境が生命現象に与える影響を抑制できる。なお、本明細書で「高重力」とは、生成工程における航空機内の重力の最高値を指し、「航空機」とは空中を飛行する能力を備え且つ所定容積の内部空間を有する任意の輸送機を指す。
高重力は、多様な生物学的試料に関してより確実に影響を抑制できる点で、1.3G以下であることが好ましい。また、高重力が過小になると、低重力環境が発生する期間が不充分になることを考慮し、高重力は通常1.0G以上、好ましくは1.2G超である。
このように、高重力が従来の1.8〜2G程度から、1.5G未満という低い値に変更されるに伴い、放物線軌道上の飛行開始点における航空機の上昇角度、航行速度、又は重力値を適宜調節する必要がある。また、低重力環境が形成される期間の長さは、航空機の性能(失速速度、最大運用速度等)を考慮し、放物線軌道上の飛行開始点における航空機の上昇角度及び航行速度、放物線軌道上の飛行終了時の降下角度及び航行速度を調節することで、適宜設定できる。
低重力は、目的に応じて適宜設定されてよく、特に限定されるものではないが、例えば月面環境を模擬したい場合には約1/6Gであってよく、火星表面環境を模擬したい場合には約1/3Gであってよい。
再び図1に戻って、低重力環境の後にも高重力が生じる。特に、点D−点E間の重力は高いため、放物線軌道での飛行を複数回繰り返す場合、点D−点E間の高重力による影響が、次の放物線軌道における点C−点D間の低重力環境による影響をマスクすることが懸念される。
そこで、本発明の生成方法では、放物線軌道での飛行を複数回繰り返す場合、低重力環境の生成後における航空機内の高重力も1.5G未満にし、その後に低重力環境を再生成することが好ましい。これにより、高重力環境が生命現象に与える影響を抑制された状態で、生命現象を繰り返して観察できる。
低重力環境の生成後における航空機内の高重力は、多様な生物学的試料に関してより確実に影響を抑制できる点で、1.3G以下であることが好ましい。また、高重力が過小になると、航空機の落下が終了するまでの距離が嵩むため、結果的に低重力環境を発生できる期間を制限せざるを得ないことを考慮し、低重力環境の生成後における航空機内の高重力は通常1.0G以上、好ましくは1.2G超である。
本発明は、以上の生成方法を用い、航空機内に生物学的試料を搭載して行う工程を有する低重力環境における生物学的試料の実験方法も包含する。これにより、高重力が生物学的試料の生命現象に与える影響が抑制され、低重力環境が生物学的試料の生命現象に与える影響を高精度で観測できる。
ここで、生物学的試料は、生体分子で構成された任意の試料を指し、具体的には、動物又は植物の全体、器官、組織又は細胞、細菌、ウイルス等を包含する。動物としては、マウス、ラット、モルモット等のゲッ歯類、イヌ、ブタ、更にヒト、サル等の霊長類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。植物としては、コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物、藻類等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、本発明は、航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を航空機内に生成するようコンピュータに実現するためのプログラムへの応用も可能である。このプログラムは、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にする機能を実現する。これにより、コンピュータによる自動運転制御が可能になる。
かかるプログラムは、低重力環境の生成後における航空機内の高重力を1.5G未満にし、その後、前記低重力環境を再生成する機能を実現することが好ましい。また、プログラムは、高重力を1.3G以下にする機能及び/又は高重力を1.2G超にする機能を実現することがより好ましい。
4匹の5週齢の雄ウィスターラットを用い、麻酔下、タングステンマイクロワイヤ(直径1μm)記録電極を視床下部に埋めた。電極を、マイクロアンテナ及びバッテリを備えるトランスミッタ(20×15×3mm)にリードワイヤを介して接続した。このようなラットを航空機「MU−300」(ダイヤモンドエアサービス社)内におき、航空機を図1に示す軌道でパラボリックフライトさせた。
(比較例1)
放物線飛行中、低重力状態前の上昇フライト(点B〜点C)及び回復フライト(点D〜点E)における加速度を1.5Gまで上げた。このときの各ラットの脳神経活動を図2に示す。図2に示されるように、搭載した計4匹のラットのうち1匹(ラット2)について、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境(点C〜点D)になる前に、脳神経活動(ニューロン発火頻度)が急上昇してしまっていた。また、5.0×10−2Gの低重力環境を脱して1.0Gの定常フライト(点E以降)に戻った20〜30秒後にも、遅発型の脳神経活動の上昇が生じている。この現象は、明らかに、5.0×10−2G直前及び直後、特に直前の1.5Gの高重力によって脳神経活動が惹起されたことによる副次的影響に起因し、本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動が妨害されることを示す。
放物線飛行中、低重力状態前の上昇フライト(点B〜点C)及び回復フライト(点D〜点E)における加速度を1.5Gまで上げた。このときの各ラットの脳神経活動を図2に示す。図2に示されるように、搭載した計4匹のラットのうち1匹(ラット2)について、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境(点C〜点D)になる前に、脳神経活動(ニューロン発火頻度)が急上昇してしまっていた。また、5.0×10−2Gの低重力環境を脱して1.0Gの定常フライト(点E以降)に戻った20〜30秒後にも、遅発型の脳神経活動の上昇が生じている。この現象は、明らかに、5.0×10−2G直前及び直後、特に直前の1.5Gの高重力によって脳神経活動が惹起されたことによる副次的影響に起因し、本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動が妨害されることを示す。
(試験例1)
ラット計4匹を航空機に搭載して、1.0Gの定常フライトから、旋回飛行を開始し、最終的に旋回による遠心力によって1.5G高重力を発生させた。このときの各ラットの脳神経活動を図3に示す。図3に示されるように、搭載したラット4匹のうち1匹(ラット7)について、5秒間に亘る1.5Gの飛行直後に脳神経活動が3〜5倍に急上昇した。また別の1匹(ラット8)では、図2のラット2と同様に、1.5Gという高重力への曝露20〜30秒後に、遅発型の脳神経活動上昇が生じていた。
ラット計4匹を航空機に搭載して、1.0Gの定常フライトから、旋回飛行を開始し、最終的に旋回による遠心力によって1.5G高重力を発生させた。このときの各ラットの脳神経活動を図3に示す。図3に示されるように、搭載したラット4匹のうち1匹(ラット7)について、5秒間に亘る1.5Gの飛行直後に脳神経活動が3〜5倍に急上昇した。また別の1匹(ラット8)では、図2のラット2と同様に、1.5Gという高重力への曝露20〜30秒後に、遅発型の脳神経活動上昇が生じていた。
比較例1及び試験例1の結果から、1.5Gという高重力への曝露は、25〜50%の確率で、ラットのストレス中枢における脳神経活動を惹起することが分かった。これにより、低重力による脳神経活動を正確に調査するためには、目的とする低重力状態の前、好ましくは前後に発生する高重力を少なくとも1.5G未満にすることが必要であることが確認された。
<実施例1>
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.4Gに設定した点を除き、比較例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図4に示す。図4に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約12秒間に亘り維持できていた。また、機内温度は19〜23℃、機内湿度は10〜40%に維持した。
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.4Gに設定した点を除き、比較例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図4に示す。図4に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約12秒間に亘り維持できていた。また、機内温度は19〜23℃、機内湿度は10〜40%に維持した。
このときの各ラットの脳神経活動を図5に示す。図5に示されるように、搭載した計4匹のラットのいずれにおいても、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境前後において、図2に示すような脳神経活動の上昇は一切見られなかった。1.4Gという高重力による妨害も見られず、本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動データの取得に成功した。
(試験例2)
ラット計4匹を航空機に搭載し、1.0Gでの定常フライトから、旋回飛行を開始し、旋回による遠心力によって最終的には1.4Gという高重力を発生させた。このときの各ラットの脳神経活動を図6に示す。図6に示されるように、搭載したラット4匹のいずれにおいても、図3に示すような1.5Gで観察された脳神経活動の上昇は1.4Gでは一切見られなかった。
ラット計4匹を航空機に搭載し、1.0Gでの定常フライトから、旋回飛行を開始し、旋回による遠心力によって最終的には1.4Gという高重力を発生させた。このときの各ラットの脳神経活動を図6に示す。図6に示されるように、搭載したラット4匹のいずれにおいても、図3に示すような1.5Gで観察された脳神経活動の上昇は1.4Gでは一切見られなかった。
実施例1及び試験例2の結果から、1.4Gという高重力へ曝露されても、ラットのストレス中枢における脳神経活動が惹起されないことが分かった。これにより、低重力による脳神経活動を正確に調査するためには、目的とする低重力状態の前、好ましくは前後に発生する高重力を1.4G以下にすることが好ましいことが確認された。
<実施例2>
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.3Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図7に示す。図7に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約12秒間に亘り維持できていた。
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.3Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図7に示す。図7に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約12秒間に亘り維持できていた。
このときの各ラットの脳神経活動を図8に示す。図8に示されるように、搭載した計4匹のラットのいずれにおいても、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境前後において、図2のラット2で見られたような脳神経活動の上昇は一切見られなかった。1.3Gという高重力による妨害もほとんど見られず、本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動データの取得に成功した。なお、多数のラットについて行った実験において、1.4Gでは何匹かのラットで脳神経活動の上昇が確認されたのに対し、1.3Gではいずれのラットにおいても脳神経活動の上昇が確認されなかった(データ示さず)。
<実施例3>
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.2Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図9に示す。図9に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約11秒間に亘り維持できていた。
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.2Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図9に示す。図9に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約11秒間に亘り維持できていた。
このときの各ラットの脳神経活動を図10に示す。図10に示されるように、搭載した計4匹のラットのいずれにおいても、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境前後において、図2のラット2で見られたような脳神経活動の上昇は一切見られなかった。1.2Gという高重力による妨害もほとんど見られず、本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動データの取得に成功した。
<実施例4>
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.0Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図11に示す。図11に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約7秒間しか維持されていなかった。一般に、脳神経活動のデータを正確に得るためには、7秒間以上の計測が最低限必要とされていることから、低重力環境の生成前における航空機内の高重力は、1.0G以上であることが好ましいことが確認された。
低重力状態前の上昇フライト及び回復フライトにおける加速度を1.0Gに設定した点を除き、実施例1と同様の手順で、飛行を行った。この間の機内上下方向の重力Gzの経時的変化を図11に示す。図11に示されるように、航空機内部の低重力環境(5.0×10−2G)は、約7秒間しか維持されていなかった。一般に、脳神経活動のデータを正確に得るためには、7秒間以上の計測が最低限必要とされていることから、低重力環境の生成前における航空機内の高重力は、1.0G以上であることが好ましいことが確認された。
また、この条件では、航空機の墜落を防止するべく、低重力環境の生成後における航空機内の高重力が1.6G程度にまで上昇せざるを得ない。このため、放物線軌道での飛行を複数回繰り返し、生命現象を繰り返して観察するためには、低重力環境の生成前における航空機内の高重力は、実施例1〜3のように1.0G超であることが好ましいことが分かった。
このときの各ラットの脳神経活動を図12に示す。図12に示されるように、搭載した計4匹のラットのいずれにおいても、本来目的とする5.0×10−2Gの低重力環境前後において、図2のラット2で見られたような脳神経活動の上昇は一切見られなかった。本来目的とする低重力状態(5.0×10−2G)状態で観察されるべき脳神経活動データの取得に成功した。
以上の実施例により、低重力環境の生成前における航空機内の高重力を1.5G未満にすることで、動物又はその組織について、航空機を放物線軌道で飛行させ且つ高重力環境が生命現象に与える影響を抑制できることが分かった。この動物系における結果は、次の技術常識を踏まえると、生物学的試料一般に妥当することは明らかである。
即ち、細胞内カルシウムイオン及び細胞外ATPは、ともに生物普遍的な情報伝達分子として働いているところ、ATPは、重力を始めとする機械的・物理的刺激(接触、伸展、浸透圧、血流、気流等の変化)によって細胞から放出され、まわりの細胞に伝播し、ATP受容体を活性化するメカニズムが明らかにされている。例えば、神経興奮性組織(Sokabe, M. et al., Plateau pattern of afferent discharge rate from frog muscle spindles. J. Neurophysiol. 70: 275−283, 1993)、ヒト骨(Mizoguchi, F. et al., Transient receptor potential vanilloid 4 deficiency suppresses unloading−induced bone loss. J. Cell Physiol. 216: 47−53, 2008)、ヒト気道の平滑筋細胞(Ito, S. et al., A novel Ca2+ influx pathway activated by mechanical stretch in human airway smooth muscle cells. Am J. Respir. Cell Mol. Biol. 38: 407−413, 2008)から植物全般(Arabidopsis plasma membrane potential crucial for Ca2+ influx and touch sensing in roots. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104: 3639−3644, 2007)や、細菌(Responses of Bacillus subtilis to hypotonic challenges: physiological contributions of mechanosensitive channels to cellular survival. Appl. Environ. Microbiol. 74: 2454−2460, 2008)に至るまで、細胞・組織・個体のレベルで報告されている。このように、重力変化による影響は、動物、植物、細菌等といった生物種に関係なく、ミクロ及びマクロのレベルで生物普遍的な共通のメカニズムで説明できるのである。
Claims (6)
- 航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する低重力環境の生成方法であって、
前記低重力環境の生成前における前記航空機内の高重力を1.5G未満にする生成方法。 - 更に、前記低重力環境の生成後における前記航空機内の高重力を1.5G未満にし、
その後、前記低重力環境を再生成する請求項1記載の生成方法。 - 前記高重力を1.3G以下にする請求項1又は2記載の生成方法。
- 前記高重力を1.2G超にする請求項1から3いずれか記載の生成方法。
- 低重力環境における生物学的試料の実験方法であって、
請求項1から4いずれか記載の生成方法を用い、前記航空機内に生物学的試料を搭載して行う実験方法。 - 内部に生物学的試料が搭載された航空機を落下加速度に相当する放物線軌道で飛行させ、落下加速度及び重力加速度の差に相当する低重力環境を前記航空機内に生成する際、前記低重力環境の生成前における前記航空機内の高重力を1.5G未満にすることで、前記高重力が前記生物学的試料に与える影響を抑制する方法。
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