本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の窒化物系半導体光素子、窒化物系半導体光素子のためのエピタキシャルウエハ、及び半導体発光素子を製造する方法に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
図1は、本実施の形態に係る窒化物系半導体光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物系半導体光素子としては、例えば半導体レーザ、発光ダイオード等がある。図1を参照すると、座標系Sが示されている。基板11の主面11aは、Z軸の方向を向いており、またX方向及びY方向に延びている。X軸はa軸の方向に向いている。引き続く説明では、例えば<0001>軸に対して逆向きの結晶軸は、<000−1>で表される。
窒化物系半導体光素子LE1は、発光ダイオードに好適な構造を有する。窒化物系半導体光素子LE1は、第1の窒化ガリウム系半導体領域13と、発光領域15と、第2の窒化ガリウム系半導体領域17を備える。発光層15は、活性層19を含み、活性層19は、交互に配列された井戸層21及び障壁層23とを含む。発光層15は、第1の窒化ガリウム系半導体領域13と第2の窒化ガリウム系半導体領域17との間に設けられている。第1の窒化ガリウム系半導体領域13は一又は複数のn型窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、窒化ガリウム系半導体層25、27、29)を含むことができる。第2の窒化ガリウム系半導体領域17は、障壁層のバンドギャップよりも大きな窒化ガリウム系半導体層31と、一又は複数のp型窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、窒化ガリウム系半導体層33、35)とを含む。
窒化物系半導体光素子LE1では、井戸層21は、c軸方向に延びる基準軸(ベクトルVC1で示される)に直交する面に対して傾斜角αで傾斜した基準平面SR1に沿って延びている。傾斜角αは59度以上80度未満の範囲であることができる。また、傾斜角αは150度より大きく180度未満の範囲であることができる。井戸層21は歪みを内包しており、井戸層21におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と逆向きの成分を有する。第2の窒化ガリウム系半導体領域17の窒化ガリウム系半導体層31は発光層15に隣接している。井戸層21は六方晶系の窒化ガリウム系半導体からなり、井戸層21は例えばInGaNといった、インジウムを含む窒化ガリウム系半導体からなることができる。障壁層23は
窒化ガリウム系半導体からなり、障壁層23は、例えば、GaN、InGaN、AlGaN、AlGaInN等であることができる。
この窒化物系半導体光素子LE1によれば、井戸層21及び障壁層23が上記の角度範囲の傾斜角αで傾斜した基準平面SR1に沿って延びるので、井戸層21におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と逆向きの成分(Z軸の正の方向)を有する。一方、第2の窒化ガリウム系半導体領域17の窒化ガリウム系半導体層31におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と同じ向き(Z軸の負の方向)の成分を有する。窒化ガリウム系半導体層31は発光層15に隣接しているので、この窒化ガリウム系半導体層31と発光層15との界面でJ1では、伝導帯ではなく価電子帯にディップが生じる。したがって、ディップが伝導帯ではなく価電子帯に生じるので、電子のオーバフローを低減できる。
第2の窒化ガリウム系半導体領域17内の窒化ガリウム系半導体層31は、電子ブロック層及びクラッド層のいずれか一方である。電子ブロック層は活性層からの電子をブロックし、クラッド層はキャリアの閉じ込め及び光の閉じ込めを行う。第2の窒化ガリウム系半導体領域17の窒化ガリウム系半導体層31は例えばp型AlGaNからなることができる。
InNのa軸及びc軸方向の格子定数はGaNのa軸及びc軸方向の格子定数より大きいので、井戸層21がInGaNからなるとき、InGaN井戸層は障壁層から応力(圧縮歪み)を受けて、歪みを内包することになる。
傾斜角αは、62度以上80度未満の範囲にあることができる。この窒化物系半導体光素子によれば、ブルーシフトを小さくできる。また、傾斜角αは、150度より大きく170度以下の範囲にあることができる。この窒化物系半導体光素子によれば、ブルーシフトを小さくできる。
図2は、歪みを内包する発光層におけるピエゾ電界の向きを説明する図面である。図2(a)〜図2(c)は、極性面(c面)上に形成された発光層におけるピエゾ電界を説明する図面である。図2(d)〜図2(e)は、非極性面(a面、m面)上に形成された発光層におけるピエゾ電界を説明する図面である。図2(f)〜図2(g)は、半極性面上に形成された発光層におけるピエゾ電界を説明する図面である。
図2(a)を参照すると、発光層Pは、極性面(c面)上に形成された障壁層B1、B2及び井戸層W1を含む。井戸層W1は障壁層B1、B2に挟まれている。井戸層W1におけるピエゾ電界EPZの向きは、p層からn層への方向を向いている。井戸層では、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底がn層からp層への方向に下がっている。記号EC0は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示している。図2(b)を参照すると、発光層Pに小さな順方向電圧が印加されている。この発光層Pでは、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底の傾斜が電圧印加により大きくなっている。記号EC1は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示しており、エネルギ差EC0は、エネルギ差EC1よりも大きい。図2(c)を参照すると、発光層Pに大きな順方向電圧が印加されている。この発光層Pでは、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底の傾斜が、スクリーニングにより小さくなっている。記号EC2は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示しており、エネルギ差EC2は、エネルギ差EC0よりも大きい。印加電圧により引き起こされるエネルギ差の変化が、ブルーシフトの原因である。
図2(d)を参照すると、発光層NPは、非極性面(a面、m面)上に形成された障壁層B3、B4及び井戸層W2を含む。井戸層W2は障壁層B3、B4に挟まれている。井戸層W2が非極性面上に形成されているので、ピエゾ電界EPZはゼロである。井戸層W2では、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底がp層からn層への方向に下がっている。記号ENP0は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示している。図2(e)を参照すると、発光層NPに順方向電圧が印加されている。この発光層NPでは、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底の傾斜が電圧印加によりほとんどなくなっている。記号ENP1は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示しており、エネルギ差ENP0はエネルギ差ENP1よりも小さい。発光層NPにはピエゾ電界がゼロであるので、井戸層のキャリア量が増加しても、スクリーニングが生じることもない。故に、印加電圧により引き起こされるエネルギ差の変化が無いので、ブルーシフトが観測されない。
図2(f)を参照すると、発光層SP−は、特定のオフ角で傾斜した半極性面上に形成された障壁層B5、B6及び井戸層W3を含む。井戸層W3は障壁層B5、B6に挟まれている。井戸層W3が半極性面上に形成されているので、ピエゾ電界EPZは極性面上における値よりも小さい。井戸層W3では、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底がp層からn層への方向に下がっている。記号ESP0は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示している。図2(g)を参照すると、発光層SP−に順方向電圧が印加されている。この発光層SP−では、伝導帯のバンド底及び価電子のバンド底の傾斜が電圧印加により小さくなっている。記号ENP1は、伝導帯のバンド底と価電子のバンド底との間のエネルギ差を示しており、エネルギ差ESP0はエネルギ差ESP1よりも大きい。発光層SP−のピエゾ電界がp層からn層への方向と逆方向の成分を有するので、スクリーニングが生じることもない。故に、印加電圧により引き起こされるエネルギ差の変化が小さいので、ブルーシフトが非常に小さい。
本実施の形態に係る傾斜角の面方位を有する井戸層(発光層SP−)は、図2(f)及び図2(g)に示されるように振る舞う。一方、本実施の形態に係る傾斜角の面方位と異なる半極性面上の井戸層(発光層SP+)は、図2(a)〜図2(c)に示されるように振る舞う。
次いで、半極性面上に形成された発光層について更に説明する。図3は、歪みを内包する発光層におけるピエゾ電界の向きを説明する図面である。図3(a)及び図3(b)は正のピエゾ電界を有する発光層SP+を示している。発光層SP+は、障壁層B7、B8及び井戸層W4を含む。井戸層W4は障壁層B7、B8に挟まれている。発光層SP+に隣接して、障壁層のバンドギャップより大きなバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体層Pが示されている。窒化ガリウム系半導体層Pは、例えばp型電子ブロック層またはp型クラッド層であることができる。井戸層W4におけるピエゾ電界の向きはp層からn層への方向であり、窒化ガリウム系半導体層Pにおけるピエゾ電界の向きはn層からp層への方向である。このため、発光層SP+と窒化ガリウム系半導体層Pとの界面には、伝導帯にディップDIP1が形成される。故に、ディップDIP1により、窒化ガリウム系半導体層Pの電子障壁が低くなる。ディップDIP1の大きさは、例えば0.2eV程度である。
一方、図3(c)及び図3(d)は負のピエゾ電界を有する発光層SP−を示している。発光層SP−に隣接して、障壁層のバンドギャップより大きなバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体層Pが示されている。井戸層W3におけるピエゾ電界の向きはn層からp層への方向であり、窒化ガリウム系半導体層Pにおけるピエゾ電界の向きはp層からn層への方向である。このため、発光層SP−と窒化ガリウム系半導体層Pとの界面には、伝導帯ではなく価電子帯にディップが形成される。故に、発光層からの電子に対する障壁が伝導帯のディップDIP2により低くなることなく、窒化ガリウム系半導体層Pは、発光層からの電子を十分に阻止できる。ディップDIP2の大きさは例えば0.1eV程度である。
再び、図1を参照しながら、半導体発光素子LE1を説明する。第1の窒化ガリウム系半導体領域13内のn型窒化ガリウム系半導体層25は、Siドープn型AlGaNバッファ層であり、その厚さは例えば50nmである。n型窒化ガリウム系半導体層27は、Siドープn型GaN層であり、その厚さは例えば2000nmである。n型窒化ガリウム系半導体層29は、Siドープn型InGaN緩衝層であり、インジウム組成は例えば0.02である。n型窒化ガリウム系半導体層29の厚さは例えば100nmである。
また、第2の窒化ガリウム系半導体領域17のp型窒化ガリウム系半導体層31は、例えばMgドープp型AlGaN層であり、アルミニウム組成は例えば0.07である。p型窒化ガリウム系半導体層31の厚さは例えば20nmである。p型窒化ガリウム系半導体層33は、Mgドープp型GaN層であり、その厚さは例えば25nmである。p型窒化ガリウム系半導体層35は、Mgドープp+型GaNコンタクト層であり、その厚さは例えば25nmである。
活性層19上には、アンドープGaN層37を成長する。GaN層37の厚さは例えば15nmである。
半導体積層(13、15、17)上に電極を形成する。第1の電極(例えば、アノード電極)41aがコンタクト層35上に形成されると共に、第2の電極(例えば、カソード電極)41bが基板裏面11b上に形成される。これらの電極を介して活性層19にキャリアが注入されると、光Lが生成される。活性層19のピエゾ電界は小さいので、ブルーシフトが小さい。また、発光層19と窒化ガリウム系半導体31との界面において伝導帯にディップが形成されないので、発光素子LE1は、電子の閉じ込め性に優れる。
窒化物系半導体光素子LE1は基板11を更に備えることができる。基板11は、六方晶系半導体InSAlTGa1−S−TN(0≦S≦1、0≦T≦1、0≦S+T≦1)からなる。六方晶系半導体としては、例えばGaN、InGaN、AlGaN等であることができる。基板11の主面11aは、該六方晶系半導体のc軸(例えばベクトルVC2で示される)に直交する平面から59度以上80度未満の範囲及び150度より大きく180度未満の範囲の傾斜角βで傾斜した平面に沿って延びている。傾斜角βは、発光層15の歪みによる結晶軸のわずかな傾斜を除けば、傾斜角αに実質的に等しい。また、ベクトルVC2は、発光層15の歪みによる結晶軸のわずかな傾斜を除けば、ベクトルVC1に実質的に等しい。
第1の窒化ガリウム系半導体領域13、発光層15、及び第2の窒化ガリウム系半導体領域17は、基板11の主面11a上において所定の軸Axの方向(例えばZ軸の方向)に配列されている。所定の軸Axの方向は、基板11のc軸の方向と異なる。
この基板11を用いることによって、井戸層21におけるピエゾ電界が第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と逆向きの成分を有するように、発光層15内の井戸層の面方位を向きづけることができる。
図4は、本実施の形態に係る窒化物系半導体光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物系半導体光素子LD1としては、例えば半導体レーザ等がある。図4を参照すると、座標系Sが示されている。基板13の主面13aは、Z軸の方向を向いており、またX方向及びY方向に延びている。Y軸はm軸の方向に向いている。
窒化物系半導体光素子LD1は、半導体レーザに好適な構造を有する。窒化物系半導体光素子LD1は、第1の窒化ガリウム系半導体領域13と、発光領域15と、第2の窒化ガリウム系半導体領域17を備える。発光層15は、活性層19を含み、活性層19は、交互に配列された井戸層21及び障壁層23とを含む量子井戸構造を有する。発光層15は、第1の窒化ガリウム系半導体領域13と第2の窒化ガリウム系半導体領域17との間に設けられている。第1の窒化ガリウム系半導体領域13は一又は複数のn型窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、窒化ガリウム系半導体層55、57)を含むことができる。第2の窒化ガリウム系半導体領域17は、障壁層のバンドギャップよりも大きな窒化ガリウム系半導体層31と、一又は複数のp型窒化ガリウム系半導体層(本実施例では、窒
化ガリウム系半導体層51、53)とを含む。
窒化物系半導体光素子LD1では、井戸層21は、c軸方向に延びる基準軸(ベクトルVC1で示される)に直交する面に対して傾斜角αで傾斜した基準平面SR1に沿って延びている。傾斜角αは59度以上80度未満の範囲であることができる。また、傾斜角αは150度より大きく180度未満の範囲であることができる。井戸層21は歪みを内包しており、井戸層21におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と逆向きの成分を有する。第2の窒化ガリウム系半導体領域17の窒化ガリウム系半導体層31は発光層15に隣接している。
この窒化物系半導体光素子LD1によれば、井戸層21及び障壁層23が上記の角度範囲の傾斜角αで傾斜した基準平面SR1に沿って延びるので、井戸層21におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と逆向きの成分(Z軸の正の方向)を有する。一方、この窒化ガリウム系半導体層31におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向と同じ向き(Z軸の負の方向)の成分を有する。第2の窒化ガリウム系半導体領域17の窒化ガリウム系半導体層31は発光層15に隣接しているので、この窒化ガリウム系半導体層31と発光層15との界面でJ2では、伝導帯ではなく価電子帯にディップが生じる。したがって、ディップが伝導帯ではなく価電子帯に
生じるので、電子の溢れを低減できる。
半導体発光素子LD1では、第1の窒化ガリウム系半導体領域13内のn型窒化ガリウム系半導体層55は、例えばSiドープn型AlGaNクラッド層であり、その厚さは例えば2300nmである。そのAl組成は例えば0.04である。n型窒化ガリウム系半導体層55は例えばSiドープn型GaN層であり、その厚さは例えば50nmである。発光層15は、第1及び第2の光ガイド層59a、59bを含むことができる。活性層19は光ガイド層59a、59bの間に設けられている。光ガイド層59a、59bは、例えばアンドープInGaNからなることができ、インジウム組成は例えば0.06である。光ガイド層59a、59bの厚さは、例えば100nmである。
また、第2の窒化ガリウム系半導体領域17のp型窒化ガリウム系半導体層31は、例えばMgドープp型AlGaN層であり、アルミニウム組成は例えば0.18である。p型窒化ガリウム系半導体層31の厚さは例えば20nmである。p型窒化ガリウム系半導体層51は、Mgドープp型AlGaNクラッド層であり、アルミニウム組成は例えば0.06である。Mgドープp型窒化ガリウム系半導体層51の厚さは例えば400nmである。p型窒化ガリウム系半導体層53はMgドープp+型GaNコンタクト層であり、その厚さは例えば50nmである。
活性層19上には、アンドープGaN層61を成長する。GaN層61の厚さは例えば50nmである。半導体積層(13、15、17)上に、ストライプ窓を有する絶縁膜63を形成する。絶縁膜63及び半導体積層(13、15、17)上に電極を形成する。第1の電極(例えば、アノード電極)65がコンタクト層53上に形成されると共に、第2の電極(例えば、カソード電極)67が基板裏面13b上に形成される。これらの電極を介するキャリアの注入に応答して活性層19はレーザ光を生成する。活性層19のピエゾ電界は小さいので、ブルーシフトが小さい。また、発光層19と窒化ガリウム系半導体31との界面において伝導帯にディップが形成されないので、発光素子LD1は、電子の閉じ込め性に優れる。
窒化物系半導体光素子LE1、LD1では、基準平面SR1はa軸の方向に傾斜していることができる。傾斜がa軸の方向なので、m面劈開が可能である。また、基準平面SR1はm軸の方向に傾斜していることができる。傾斜がm軸の方向であれば、a面劈開が可能である。
図5〜図7は、本実施の形態に係る窒化物系半導体光素子を製造する方法及びエピタキシャルウエハを製造する方法における主要な工程を示す図面である。図5(a)に示されるように、工程S101では、窒化物系半導体光素及びエピタキシャルウエハを製造するための基板71を準備する。基板71は、例えば六方晶系半導体InSAlTGa1−S−TN(0≦S≦1、0≦T≦1、0≦S+T≦1)からなることができる。基板71は主面71a及び裏面71bを有する。図5(a)を参照すると、基板71の六方晶系半導体のc軸方向を示すベクトルVC及び主面71aの法線ベクトルVNが記載されており、ベクトルVC2は{0001}面の向きを示している。この基板71によれば、成長用の主面が傾斜角(オフ角)βを有する半極性を提供できる。基板71の主面71aの傾斜角は、該六方晶系半導体の{0001}面を基準にして、59度より大きく80度未満の範囲及び150度より大きく180度未満の範囲である。主面71aの傾斜角が59度以上80度未満であるとき、または、150度より大きく、180度未満であるとき、基板71の主面上に形成された窒化物系半導体光素子内の井戸層におけるピエゾ電界が第2の窒化ガリウム系半導体領域から第1の窒化ガリウム系半導体領域へ向かう方向と逆向きの成分を有し、第2の窒化ガリウム系半導体領域の窒化ガリウム系半導体層におけるピエゾ電界は第2の窒化ガリウム系半導体領域から第1の窒化ガリウム系半導体領域へ向かう方向と同じ向きの成分を有するので、電子の閉じ込め性に優れる窒化物系半導体光素子を製造可能である。
基板71のエッジ上に2点間の距離の最大値Diaは45mm以上であることができる。このような基板は例えばウエハと呼ばれている。基板71の裏面11bは、基板71と実質的に平行であることができる。また、基板71はGaNからなるとき、良好な結晶品質のエピタキシャル成長が可能である。
引き続く工程では、井戸層に負のピエゾ電界を発生させるように選択されたオフ角を有する基板71の主面71a上に、半導体結晶がエピタキシャルに成長される。上記の傾斜角の主面71aの基板71は、活性層内に井戸層がc面から上記の角度範囲内で傾斜するように、エピタキシャル半導体領域を形成することを可能にする。
また、基板71の主面71aの傾斜の方向に関しては、主面71aが基板71の六方晶系半導体のa軸方向に傾斜するとき、基板71上に作製されたエピタキシャル基板は、m面における劈開が可能になる。また、基板71の主面71aが基板71の六方晶系半導体のm軸方向に傾斜するとき、基板71上に作製されたエピタキシャル基板は、a面における劈開が可能になる。また、主面71aが基板71の六方晶系半導体のa軸方向に傾斜するときのm軸方向のオフ角は−3度以上+3度以下の範囲にあることが好ましい。また、主面71aが基板71の六方晶系半導体のm軸方向に傾斜するときのa軸方向のオフ角は−3度以上+3度以下の範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、窒化物系半導体光素子LD1におけるレーザキャビティの端面傾斜による反射率低下が小さいため、発振しきい値を小さくすることが出来る。
基板71を成長炉10に配置する。図5(b)に示されるように、工程S102では、成膜に先立って、成長炉10にガスG0を供給しながら基板71に熱処理を行って、改質された主面71cを形成する。この熱処理は、アンモニア及び水素を含むガスの雰囲気中で行われることができる。熱処理温度T0は、例えば摂氏800度以上1200度以下であることができる。熱処理時間は、例えば10分程度である。この工程によれば、主面71aの傾斜によって、半極性の主面にはc面主面とは異なる表面構造が形成される。成膜に先立つ熱処理を基板71の主面71aに施すことによって、c面主面では得られない半導体主面に改質が生じる。窒化ガリウム系半導体からなるエピタキシャル成長膜が、基板71の改質された主面71c上に堆積される。
図5(c)に示されるように、工程S103では、熱処理の後に、第1導電型窒化ガリウム系半導体領域73を基板71の表面71c上にエピタキシャルに成長する。この成長のために有機金属気相成長法が用いられる。成長用の原料ガスとしては、ガリウム源、インジウム源、アルミニウム源及び窒素源が使用される。ガリウム源、インジウム源及び窒素源は、それぞれ、例えばTMG、TMI、TMA及びNH3である。この成長のために、原料ガスG1を成長炉10に供給する。窒化ガリウム系半導体領域73の主面73aは、窒化ガリウム系半導体のc面から59度以上80度未満、または150度より大きく180度未満の範囲の角度で傾斜している。第1導電型窒化ガリウム系半導体領域73aは、一又は複数の窒化ガリウム系半導体層(例えば窒化ガリウム系半導体層25、27、29)を含むことができる。例えば、窒化ガリウム系半導体層25、27、29は、それぞれ、n型AlGaN層、n型GaN層およびn型InGaN層であることができる。窒化ガリウム系半導体層25、27、29は、基板71の主面71c上に順にエピタキシャルに成長される。n型AlGaN層25は例えば基板71の全表面を覆う中間層であり、例えば摂氏1100度で成長される。n型AlGaN層25の例えば厚さは50nmである。n型AlGaN層25上にn型GaN層27を摂氏950度で成長される。n型GaN層27は例えばn型キャリアを供給するための層であり、n型GaN層27の厚さは2000nmである。n型GaN層27上にn型InGaN層29を摂氏840度で成長される。n型InGaN層29は例えば活性層のための緩衝層であり、n型InGaN層29の厚さは100nmである。
次の工程では、図6〜図7に示されるように、窒化物系半導体発光素子の活性層75を作製する。活性層75は、370nm以上650nm以下の波長領域にピーク波長を有する発光スペクトルを生成するように設けられる。
工程S104では、図6(a)に示されるように、窒化ガリウム系半導体からなり活性層75の量子井戸構造のための障壁層77を形成する。成長炉10に原料ガスG2を供給して、障壁層77は緩衝層上に成長温度TBで成長される。この障壁層77はInYGa1−YN(インジウム組成Y:0≦Y≦0.05、Yは歪み組成)からなる。障壁層77の成長は、例えば摂氏700度以上摂氏1000度以下の温度範囲内の成長温度TBで行われる。本実施例では、ガリウム源及び窒素源を含む原料ガスG2を成長炉10に供給してアンドープGaNを成長温度TBで成長する。GaN障壁層の厚さは例えば15nmである。障壁層77は、主面73a上に成長されるので、障壁層77の表面は、主面73aの表面構造を引き継ぐ。
障壁層77の成長終了後に、ガリウム原料の供給を停止して窒化ガリウム系半導体の堆積を停止させる。障壁層77を成長した後に、井戸層を成長する前に成長温度TBから成長温度TWに成長炉の温度を変更する。この変更期間中に、例えばアンモニアといった窒素源ガスを成長炉10に供給する。
工程S105では、図5(b)に示されるように、成長炉10の温度を井戸層成長温度TWに保ちながら、障壁層77上に量子井戸構造のための井戸層79を成長する。井戸層79はInXGa1−XN(インジウム組成X:0<X<1、Xは歪み組成)といった、インジウムを含む窒化ガリウム系半導体からなる。井戸層79は、障壁層77のバンドギャップエネルギより小さいバンドギャップエネルギを有する。井戸層79の成長温度TWは成長温度TBより低い。本実施例では、ガリウム源、インジウム源及び窒素源を含む原料ガスG3を成長炉10に供給してアンドープInGaNを成長する。井戸層79の膜厚は、1nm以上10nm以下であることができる。また、InXGa1−XN井戸層79のインジウム組成Xは、0.05より大きいことができる。井戸層79のInXGa1−XNは0.5より小さいことができる。この範囲のインジウム組成のInGaNの成長が可能となり、波長370nm以上650nm以下の発光素子を得ることができる。井戸層79の成長は、例えば摂氏600度以上摂氏900度以下の温度範囲内の成長温度TWで行われる。InGaN井戸層の厚さは例えば3nmである。井戸層79の主面は、障壁層77の主面上にエピタキシャルに成長されるので、井戸層79の表面は、障壁層77の表面構造を引き継ぐ。また、障壁層77の主面の傾斜角に応じて、窒化ガリウム系半導体のc面から所定の範囲の角度で傾斜する。
井戸層79の成長が完了する後に、障壁層を成長する前に成長温度TWから成長温度TBに成長炉10の温度を変更する。この変更期間中に、例えばアンモニアといった窒素源ガスを成長炉10に供給する。成長炉10の昇温が完了した後に、図5(c)に示されるように、工程S106では、成長炉10の温度を成長温度TBに保ち、原料ガスG4を成長炉10に供給しながら、窒化ガリウム系半導体からなる障壁層81を成長する。本実施例では、障壁層81は例えばGaNからなり、障壁層81の厚さは例えば15nmである。障壁層81の主面は、井戸層79の主面上にエピタキシャルに成長されるので、障壁層81の表面は、井戸層79の表面構造を引き継ぐ。
工程S107で同様に繰り返し成長を行って、図7(a)に示されるように量子井戸構造の活性層75を成長する。活性層75は3つの井戸層79と4つの障壁層77、81を含む。この後に、工程S108では、原料ガスG5を供給して必要な半導体層を成長して発光層83を形成する。活性層75と第2導電型窒化ガリウム系半導体領域85との間にある発光層83内の半導体層のバンドギャップは、第2導電型窒化ガリウム系半導体領域85内にあり発光層83に隣接する窒化ガリウム系半導体層のバンドギャップより小さい。
図7(c)に示されるように、工程S109では、発光層83上に、原料ガスG6を供給して第2導電型窒化ガリウム系半導体領域85をエピタキシャルに成長する。この成長は、成長炉10を用いて行われる。第2導電型窒化ガリウム系半導体領域84は、例えば電子ブロック層31、第1のp型コンタクト層33及び第2のp型コンタクト層35を含むことができる。電子ブロック層31は例えばAlGaNからなることができる。p型コンタクト層33、35はp型GaNからなることができる。第2のp型コンタクト層35のドーパント濃度N37は第1のp型コンタクト層33のドーパント濃度N35よりも大きい。本実施例では、電子ブロック層31、p型コンタクト層33、35の成長温度は、例えば摂氏1100度である。第2導電型窒化ガリウム系半導体領域31の形成の後に、図7(c)に示されるエピタキシャルウエハEが完成する。必要な場合には、半導体レーザの光ガイドのために一対の光ガイド層を成長することができる。一対の光ガイド層は活性層を挟む。これらの光ガイド層は、例えばInGaNまたはGaNからなることができる。
エピタキシャルウエハEにおいて、第1導電型窒化ガリウム系半導体領域73、発光層83、及び第2導電型窒化ガリウム系半導体層85は、基板71の主面71aの法線軸の方向に配列されていることができる。該六方晶系半導体のc軸の方向は基板71の主面71aの法線軸の方向と異なる。エピタキシャル成長の成長方向はc軸方向である一方で、この成長方向は半導体層73、83、85の積層方向と異なる。
次の工程では、エピタキシャウエハE上に電極を形成する。第1の電極(例えば、アノード電極)がコンタクト層35上に形成されると共に、第2の電極(例えば、カソード電極)が基板裏面71b上に形成される。
電極の形成の後に、劈開を行って共振器面として作製することができる。劈開によって形成された端面を共振器面とする半導体レーザの作製が可能となる。なお、基板71の主面71aの傾斜の方向が窒化ガリウム系半導体のa軸の方向であれば、m面を劈開面として使用できる。また、基板71の主面71aの傾斜の方向が窒化ガリウム系半導体のm軸の方向であれば、a面を劈開面として使用できる。
図8は、実施の形態において使用可能なGaN基板の一構造を示す図面である。基板11は、c軸方向に伸びる貫通転位密度が第1の貫通転位密度より大きい複数の第1の領域12aと、c軸方向に伸びる貫通転位密度が第1の貫通転位密度より小さい複数の第2の領域12bとを含むことができる。基板11の主面11aには第1および第2の領域12a、12bが現れている。基板11の主面11aにおいて、第1および第2の領域12a、12bの幅は、例えば500マイクロメートル、5000マイクロメートルである。第1および第2の領域12a、12bは所定の方向に交互に配置されている。基板が窒化ガリウムからなるとき、所定の方向は該窒化ガリウムのa軸の方向であることができる。
第1の領域12aは高転位密度の欠陥集中領域の半導体部であり、第2の領域12bは低転位密度の欠陥低減領域の半導体部である。基板11の低転位密度の領域に窒化物系半導体発光素子を作製することによって、発光素子の発光効率、信頼性を向上させることができる。第2の領域12bの貫通転位密度は1×107cm−2未満であると、実用に十分な信頼性をもつ半導体レーザが得られる。
(実施例1)
いくつのかオフ角を有する主面の窒化ガリウム系半導体ウエハを準備して、発光層におけるピエゾ電界の向きを見積もる方法を行った。図9は、井戸層のピエゾ電界の向き及び大きさの見積もり手順を示す工程フローを示す図面である。
引き続く説明では、GaNウエハを用いる。工程S201では、発光層におけるピエゾ電界の向きを見積もるために発光層の面方位を選択する。
工程S202では、発光層におけるピエゾ電界の向きを見積もるための量子井戸構造を、選択された面方位で形成すると共にp型及びn型窒化ガリウム半導体を成長して、エピタキシャルウエハを作製した。これらのウエハ上に、該成長の後にカソード電極及びアノード電極を形成して基板生産物を作製した。
例えば、GaNのc面(デバイス名:C)、m軸方向に75度オフ面(デバイス名:M75_1、M75_2)、a軸方向に58度オフ面(デバイス名:A58_1、A58_2、A58_3)のGaNウエハ上に、図1に示される構造の発光素子を成長した。m軸方向に75度オフ面は(20−21)面である。a軸方向に58度オフ面は(11−22)面である。
作製された基板生産物の構造例ウエハ:n型GaN単結晶
SiドープAl0.12Ga0.88N:50nm、
SiドープGaN層:2000nm、
SiドープIn0.02Ga0.98N層:100nm、
アンドープIn0.20Ga0.80N井戸層:3nm
アンドープGaN障壁層:15nm、
MgドープAl0.16Ga0.84N層:20nm、
MgドープGaN層:25nm、
高MgドープGaN層:25nm。
工程S203で、作製したデバイスにバイアスを印加しながらPLスペクトルを測定可能なPL測定装置を準備した。図10(a)は、PL測定装置の一構造例を示す図面である。PL測定装置は、デバイスDEVに励起光を照射する励起光源93、デバイスDEVからのフォトルミネッセンスを検出するPL検出器95、デバイスDEVに可変バイアスを印加する装置97を含む。
工程S204では、基板生産物にバイアスを印加しながら、フォトルミネッセンスのバイアス依存性を測定した。バイアス依存性を測定結果は、例えば図10(b)に示されるグラフ上の特性線になる。ある程度の大きさの順方向のバイアス電圧が印加されると、デバイスDEVは、エレクトロルミネッセンスを発する。エレクトロルミネッセンスは、小さい順バイアス及び逆バイアスの電圧では生じない。
ある範囲のオフ角を有する半極性面及びGaNウエハのc面上に作製されるデバイスは、発光層に正のピエゾ電界が生じる。このデバイスの特性は、図9(b)の特性線PLB(+)によって表される。PL発光のピーク波長は、EL発光電圧まではバイアスが増加するにつれて長波長にシフトする。EL発光電圧を超えると、バイアスが増加するにつれて短波長にシフトする。
GaNウエハの非極性面上に作製されるデバイスは、発光層のピエゾ電界はゼロである。このデバイスの特性は、図10(b)の特性線PLB(NP)によって表される。PL発光のピーク波長は、ゼロバイアス電圧までは、わずかであるがバイアスが増加するにつれて短波長にシフトする。正のバイアスでは、ピーク波長のシフトはほとんど生じない。
本実施の形態に係る特定のオフ角範囲を有する半極性面上に作製されるデバイスは、発光層に負のピエゾ電界が生じる。このデバイスの特性は、図10(b)の特性線PLB(−)によって表される。PL発光のピーク波長は、EL発光電圧までは、バイアスが増加するにつれて僅かに短波長にシフトする。
工程205では、測定されたバイアス依存性から、発光層におけるピエゾ電界の向きを見積もる。発光層におけるピエゾ電界の向きは、図10(b)に基づいて判定される。
工程206では、選択されや面方位で発光層を作製可能な主面を有するウエハを準備する。工程S207では、このウエハ主面上に、半導体発光素子のための半導体積層を形成する。半導体積層は、図1及び図4に示されるように、第1の窒化ガリウム系半導体領域13、発光層15及び第2の窒化ガリウム系半導体領域17を含むことができる。発光層15は井戸層及び障壁層とを含む。井戸層及び障壁層の各々は、c軸、a軸及びm軸方向に延びる基準軸に直交する面から傾斜した基準平面に沿って延びている。発光層15は、第1の窒化ガリウム系半導体領域13と第2の窒化ガリウム系半導体領域17との間にある。ピエゾ電界の向きは、第2の窒化ガリウム系半導体領域17から第1の窒化ガリウム系半導体領域13へ向かう方向を基準にして規定される。バイアスを印加しながらPLスペクトルのバイアス依存性を測定するので、エレクトロルミネッセンスにより発光が生じる印加電圧よりも小さい正及び負の電圧範囲におけるフォトルミネッセンスを測定可能である。フォトルミネッセンスのバイアス依存性を用いて、発光層内の内部電界の大きさ及び向きを見積もることができる。
図11は、実施例において作製された半導体発光素子のELスペクトルの測定結果を示す。図11を参照すると、GaNc面(デバイス名:C)の120mAまでのブルーシフト量は30nm程度であり、m軸方向に75度オフ面(デバイス名:M75_1、M75_2)のブルーシフト量は4〜7nm程度である。a軸方向に58度オフ面(デバイス名:A58_1、A58_2、A58_3)のブルーシフト量は7〜16nm程度である。
c面上のデバイスは非常に大きなブルーシフトを示すのに対し、m方向75度オフ面上やa方向58度オフ面上のブルーシフト量は小さい。m方向75度オフ面上では、特にブルーシフトを小さくできる。したがって発光ダイオードの色調が電流によって変化しないことや、レーザダイオードの発振波長を長波化する上で有利である。
c面、m軸方向75度オフ面、a軸方向58度オフ面を準備し、上記同様の発光ダイオード(LED)を作製した。LEDに通電しながらLEDの温度を変化させ、ELスペクトルを測定した。
図12に示されるように、積分強度の温度依存性では、c面上LED(特性線:c)においては温度150K以下で急激に減少する。一方、m軸方向75度オフ面上のLED(特性線:m75)とa軸方向58度オフ面上のLED(特性線:a50)では、低温における積分強度の低下は見られない。ELスペクトルを比較すると、図13に示されるように、温度300Kでは3種類(図13における3つの特性線をm75(300)、a58(300)、c(300)として参照する)とも発光層での発光のみのシングルピークを示す。これに対し、図14に示されるように、温度10Kでも3種類(図14における3つの特性線をm75(10)、a58(10)、c(10)として参照する)が示されており、c面上LEDのみ380nm付近に別のピークが現れる。このピークは、発光層からオーバーフローした電子がp型層でホールと再結合して発光が生ずることを示している。すなわち、c面上LEDでは低温でアクセプタの活性化率が下がるので、発光層とp型層の界面における伝導体のディップがより深くなり、電子のオーバーフローが顕著となっている。m軸方向75度オフ面上LEDとa軸方向58度オフ面上のLEDでは、このような現象は観測されず、電子のオーバーフローが少ない。
(実施例2)
図15に示す構造を有する半導体レーザLD0を作製した。m軸方向に75度オフしたGaNウエハ90を準備した。GaNウエハ90を成長炉に配置した後に、アンモニア及び水素の雰囲気中で熱処理を行った。熱処理温度は摂氏1100度であり、熱処理時間は約10分であった。
熱処理の後に、TMG(98.7μmol/分)、TMA(8.2μmol/分)、NH3(6slm)、SiH4を成長炉に供給して、クラッド層のためのn型AlGaN層91をGaNウエハ90上に摂氏1150度で成長した。n型AlGaN層91の厚さは2300nmであった。n型AlGaN層91の成長速度は46.0nm/分であった。n型AlGaN層91のAl組成は0.04であった。
次いで、TMG(98.7μmol/分)、NH3(5slm)、SiH4を成長炉に供給して、n型AlGaN層91上にn型GaN層92を摂氏1150度で成長した。n型GaN層92の厚さは50nmであった。n型GaN層92の成長速度は58.0nm/分であった。
TMG(24.4μmol/分)、TMI(4.6μmol/分)、NH3(6slm)を成長炉に供給して、光ガイド層のためのアンドープInGaN層93aをn型GaN層94上に摂氏840度で成長した。n型InGaN層93aの厚さは65nmであった。n型InGaN層93aの成長速度は6.7nm/分であった。アンドープInGaN層93aのIn組成は0.05であった。
次いで活性層94を形成した。TMG(15.6μmol/分)、TMI(29.0μmol/分)、NH3(8slm)を成長炉に供給して、アンドープInGaN井戸層を摂氏745度で成長した。InGaN層の厚さは3nmであった。InGaN層の成長速度は3.1nm/分であった。
次いで、成長炉の温度を摂氏745度に維持しながら、TMG(15.6μmol/分)、TMI(0.3μmol/分)、NH3(8slm)を成長炉に供給して、アンドープGaN層をInGaN層上に摂氏745度で成長した。GaN層の厚さは1nmであった。GaN層の成長速度は3.1nm/分であった。アンドープGaN層を成長した後に、成長炉の温度を摂氏745度から摂氏870度に変更した。TMG(24.4μmol/分)、TMI(1.6μmol/分)、NH3(6slm)を成長炉に供給して、障壁層のためのアンドープInGaN層をアンドープInGaN井戸層上に摂氏870度で成長した。InGaN層の厚さは15nmであった。InGaN層の成長速度は6.7nm/分であった。アンドープInGaN層のIn組成は0.02であった。
次いで、成長炉の温度を摂氏870度から摂氏745度に変更した。この後に、TMG(15.6μmol/分)、TMI(29.0μmol/分)、NH3(8slm)を成長炉に供給して、アンドープInGaN井戸層をInGaN層上に摂氏745度で成長した。InGaN層の厚さは3nmであった。InGaN層の成長速度は3.1nm/分であった。アンドープInGaN層のIn組成は0.25であった。
井戸層、保護層及び障壁層の成長を2回繰り返し3回目は保護層まで形成した。この後に、TMG(13.0μmol/分)、TMI(4.6μmol/分)、NH3(6slm)を成長炉に供給して、光ガイド層のためのアンドープInGaN層93bを活性層94上に摂氏840度で成長した。InGaN層93bの厚さは65nmであった。InGaN層93bの成長速度は6.7nm/分であった。次いで、TMG(98.7μmol/分)、NH3(5slm)を成長炉に供給して、アンドープGaN層96をInGaN層93b上に摂氏1100度で成長した。GaN層96の厚さは50nmであった。GaN層96の成長速度は58.0nm/分であった。アンドープInGaN層93bのIn組成は0.05であった。
次いで、TMG(16.6μmol/分)、TMA(2.8μmol/分)、NH3(6slm)、Cp2Mgを成長炉に供給して、p型AlGaN層97をGaN層96上に摂氏1100度で成長した。AlGaN層97の厚さは20nmであった。AlGaN層97の成長速度は4.9nm/分であった。p型AlGaN層97のAl組成は0.15であった。
TMG(36.6μmol/分)、TMA(3.0μmol/分)、NH3(6slm)、Cp2Mgを成長炉に供給して、p型AlGaN層98をp型AlGaN層97上に摂氏1100度で成長した。AlGaN層98の厚さは400nmであった。Alの組成は0.06であった。AlGaN層98の成長速度は13.0nm/分であった。また、TMG(34.1μmol/分)、NH3(5slm)、Cp2Mgを成長炉に供給して、p型GaN層99をp型AlGaN層98上に摂氏1100度で成長した。GaN層99の厚さは50nmであった。p型GaN層99の成長速度は18.0nm/分であった。これらの工程によってエピタキシャルウエハが作製された。このエピタキシャルウエハ上にアノード及びカソードを形成した。図に示される半導体ダイオードが得られた。アノード電極は、10マイクロメートル幅のストライプ窓を有する絶縁膜を介してp型GaN層に電気的に接続される。アノード電極はNi/Auからなり、カソードはTi/Al/Ti/Auからなる。a面において劈開して、600マイクロメートル長のレーザバーを作製した。発振波長は520nmであり、しきい値電流は900mAであった。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。