JP2010066115A - レーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳鉄製の部品に対して行われるレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層について、切断を行うことなく、割れやピンホール等の表面的な欠陥のほか、内部品質である硬質粒子による欠陥についても検査することができ、検査品質を向上することができるレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法を提供する。
【解決手段】クラッド層の表面を渦流探傷することによって得られる検出信号として、互いに位相角が90°異なるX軸およびY軸からなるX−Y平面上において位相角および振幅を有する波形で表される波形信号を用い、クラッド層の表面に存在する割れおよびピンホールのそれぞれに対応する波形信号(7a、7b)に対して、位相角について所定のずれを有する波形信号(7c)の振幅に基づいて、クラッド層に分散する硬質粒子の存在領域の大きさを測定する。
【選択図】図4

Description

本発明は、レーザクラッド加工によって鋳鉄製の部品に形成されるクラッド層(肉盛層)の検査方法に関する。
従来、例えば自動車エンジンを構成するシリンダヘッドのバルブシート等に対して、耐摩耗性や耐熱性等の向上を目的として、いわゆるレーザクラッド加工が行われている。レーザクラッド加工は、加工対象部分の表面(加工対象面)に、耐摩耗性等に優れたクラッド層(肉盛層)を形成するための加工である。
具体的には、レーザクラッド加工においては、加工対象面に対して、肉盛材料として所定の成分組成の混合粉末(金属粉末)が供給される。この供給される混合粉末に対して、熱源となるレーザ光が照射される。レーザ光の照射を受けた混合粉末は、加熱されて溶かされ、加工対象面に溶着する。これにより、加工対象面に対する肉盛り、つまりクラッド層の形成が行われる。例えば加工対象面がバルブシートの場合、レーザクラッド加工によって形成されたクラッド層の部分が、吸気バルブや排気バルブが接触する部分(当たり面)となる。
このようなレーザクラッド加工によって形成されるクラッド層については、品質保証の観点から、欠陥の有無等の検査が必要とされる場合がある。クラッド層において生じる欠陥としては、クラッド層の表面部分にて生じる割れやピンホール等がある。また、クラッド層においては、他の部分よりも相対的に硬い粒子状の部分である硬質粒子が分布して存在する。このようにクラッド層において点在する硬質粒子の大きさ(粒径)は、クラッド層の部分の摩耗特性に大きな影響を与える。すなわち、硬質粒子の粒径が大きくなるほど、クラッド層の部分の耐摩耗性は向上するが、クラッド層に摩耗を生じさせる相手材への攻撃性が高くなる(相手材が摩耗しやすくなる)。このような硬質粒子は、その粒径によってはクラッド層における欠陥部分となる。
ところで、前記のようなクラッド層を含む肉盛品や接合品や熱処理品等の検査としては、従来、渦流探傷法や超音波探傷法等による表面検査が、一般的に実施されている。しかし、これらの多くは、検査対象の部分における表面の割れやピンホール等の外観上の欠陥を測定することが主で、硬質粒子の粒径等の内部の品質を測定して検査するには使用されていない。例えば、特許文献1では、渦流探傷法において、亀裂信号の電気的性質が亀裂の種類によって異なることを利用して、亀裂の種類の識別を行うことが開示されている。
このため、従来においては、前述したような硬質粒子の粒径等の、クラッド層の内部品質を測定して検査するためには、切断検査をするしか方法がなかった。したがって、シリンダヘッドのバルブシートに形成されたクラッド層については、硬質粒子の粒径が、前記のとおり摩耗特性に大きな影響を与えることから、重要な要素であり、切断検査が必須となっている。かかる切断検査においては、シリンダヘッドが、切断面にクラッド層の部分が含まれるように切断され、その切断面によってクラッド層の部分の内部組織が顕微鏡等によって観察されることで、クラッド層の内部品質の測定や検査が行われる。このような切断検査は、生産性や作業性の面から好ましくない。
特開2005−315823号公報
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、鋳鉄製の部品に対して行われるレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層について、切断を行うことなく、割れやピンホール等の表面的な欠陥のほか、内部品質である硬質粒子による欠陥についても検査することができ、検査品質を向上することができるレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、鋳鉄製の部品が有する所定の加工対象面に対してレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層についての検査を行うレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法であって、前記クラッド層の表面を渦流探傷することによって得られる検出信号として、互いに位相角が90°異なるX軸およびY軸からなるX−Y平面上において位相角および振幅を有する波形で表される波形信号を用い、前記クラッド層の表面に存在する割れおよびピンホールのそれぞれに対応する前記波形信号に対して、前記位相角について所定のずれを有する前記波形信号の前記振幅に基づいて、前記クラッド層に分散する硬質粒子の存在領域の大きさを測定するものである。
請求項2においては、前記所定のずれが、前記割れに対応する前記波形信号に対しては70°であり、前記ピンホールに対応する前記波形信号に対しては45°であるものである。
請求項3においては、前記波形信号の前記位相角に基づいて、前記割れ、前記ピンホール、および前記硬質粒子の識別を行い、前記波形信号の前記振幅に基づいて、前記割れ、前記ピンホール、および前記硬質粒子の存在領域の大きさを測定するものである。
請求項4においては、前記鋳鉄製の部品は、エンジンを構成する部品であるシリンダヘッドであり、前記所定の加工対象面は、前記シリンダヘッドにおけるバルブシートであるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、鋳鉄製の部品に対して行われるレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層について、切断を行うことなく、割れやピンホール等の表面的な欠陥のほか、内部品質である硬質粒子による欠陥についても検査することができ、検査品質を向上することができる。
本発明は、鋳鉄製の部品が有する所定の加工対象面に対してレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層についての検査を行うものである。そして、クラッド層について、渦流探傷法を用いることにより、割れ等の表面的な欠陥に加えて、クラッド層に存在する硬質粒子の粒径等の内部品質(内部組織)を検査しようとするものである。
すなわち、例えばアルミニウムを材料とする部品に対して形成されるクラッド層については、渦流探傷の検出信号となる起電力の問題から、渦流探傷法によっては内部品質を検査することができなかったところ、本発明は、鋳鉄製の部品に対して形成されるクラッド層については、渦流探傷においてクラッド層の内部品質について独自の起電力が得られることに着目したものである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るレーザクラッド加工によるクラッド層の検査装置(以下単に「検査装置」という。)10は、渦流探傷法により、レーザクラッド加工によるクラッド層5についての検査を行うためのものである。
まず、本実施形態において検査対象となるクラッド層5について説明する。図2に示すように、クラッド層5は、例えば自動車エンジン等のエンジンを構成するシリンダヘッド1のバルブシート2を加工対象面として形成される。
シリンダヘッド1は、鋳鉄製の部品である。図2に示すように、シリンダヘッド1には、吸気ポート3および排気ポート4が形成される。吸気ポート3および排気ポート4は、シリンダヘッド1において、シリンダヘッド1とともにエンジンを構成するシリンダブロック(図示略)に対する取付面1aに開口する孔部である。なお、吸気ポート3および排気ポート4は、例えば図2(a)に示すように、エンジンの一気筒に対して二個ずつ設けられる。また、取付面1aにおいては、吸気ポート3と排気ポート4との間の位置に、エンジンに備えられる燃料噴射ノズルが収容される孔部1bが形成される。
吸気ポート3および排気ポート4それぞれの開口端部に、バルブシート2が形成される。バルブシート2は、エンジンに備えられる吸気バルブまたは排気バルブが着座する面部である。つまり、吸気ポート3のバルブシート2には、吸気バルブが着座し、排気ポート4のバルブシート2には、排気バルブが着座する。したがって、各ポートにおけるバルブシート2の部分は、エンジンの運転中において、吸気バルブまたは排気バルブが繰り返し着座する部分となり、また、エンジンの燃焼室内での混合気の爆発によって発生する熱にさらされる部分となる。このため、図2(b)に示すように、バルブシート2に対して、耐摩耗性や耐熱性等に優れた肉盛層としてのクラッド層5が形成される。
クラッド層5は、いわゆるレーザクラッド加工により形成される。具体的には、レーザクラッド加工においては、バルブシート2に対して、肉盛材料として所定の成分組成の混合粉末が供給される。肉盛材料としては、例えば、Cu−Ni−Si−Mo−Fe系の銅合金の金属粉末が採用される。バルブシート2に供給される混合粉末に対して、例えばYAGレーザ等の、熱源となるレーザ光が照射される。ここで、レーザ光は、シリンダヘッド1が回転させられたり、レーザ光を照射する部分となるレーザヘッドが移動させられたりすることで、バルブシート2に対してその形状に沿って相対移動する。
レーザ光の照射を受けたバルブシート2上の混合粉末は、加熱されて溶かされ、バルブシート2に溶着する。これにより、バルブシート2に対する肉盛り、つまりクラッド層5の形成が行われる。クラッド層5は、バルブシート2において全周にわたって形成される。このようにバルブシート2に形成されたクラッド層5の部分が、吸気バルブや排気バルブが接触する部分(当たり面)となる。
以上のようにして、レーザクラッド加工によってバルブシート2に形成されたクラッド層5が、検査装置10によって検査される。検査装置10は、渦流探傷法により、クラッド層5の検査を行うためのものである。
渦流探傷法とは、導電性を有する試験体に交流が流れるコイルを近づけることで、電磁誘導現象によって試験体に発生する渦電流の変化を抽出して探傷試験を行うものである。すなわち、交流が流れるコイルが試験体に近づけられると、コイルの周囲に生じる磁界が試験体に作用し、電磁誘導による起電力が生じる。この起電力により、試験体の表面近傍に、コイルによる磁束と逆向きの磁束を生じさせる渦電流が発生する。
渦流探傷法では、前記のとおり試験体に発生する渦電流の変化が検出され、探傷試験が行われる。つまり、試験体を流れる渦電流の変化を検出することによって、試験体に存在する割れ等の欠陥が検出される。このような原理を利用して欠陥を検出するための装置は、渦流探傷装置と称される。したがって、本実施形態の検査装置10は、渦流探傷装置として構成される。
図1に示すように、本実施形態の検査装置10は、渦流探傷器20と、プローブ30とを備える。検査装置10による渦流探傷においては、プローブ30によって、検査対象となるクラッド層5に渦電流が生じさせられるとともに、クラッド層5で発生した渦電流の変化が検出される。プローブ30による検出信号は、渦流探傷器20に入力され、処理される。渦流探傷器20とプローブ30とは、ケーブル25により接続される。
プローブ30は、励磁コイル31と検出コイル32とを有し、いわゆる渦流センサとして構成される。励磁コイル31および検出コイル32は、共通の磁芯(ボビン)33に巻回された状態で設けられる。励磁コイル31および検出コイル32が磁芯33に巻回された構成は、適宜合成樹脂等により構成されるケース34内に収容される。
励磁コイル31は、クラッド層5に対して所定の交流励磁信号(励磁用交流電圧信号)を印加するためのコイルである。つまり、励磁コイル31には、所定の交流励磁信号として、所定の周波数の励磁電圧が供給される。これにより、プローブ30が近づけられたクラッド層5の表面近傍に渦電流が生じる。
検出コイル32は、励磁コイル31によって交流励磁信号が印加されたクラッド層5から渦電流による検出信号を検出するためのコイルである。つまり、検出コイル32により、クラッド層5における渦電流発生にともなう誘起電圧が検出される。なお、検出コイル32を流れる電流または電圧の変化として、検出コイル32のインピーダンスの変化が用いられてもよい。
渦流探傷器20は、励磁コイル31に対する交流励磁信号の印加を行う。つまり、渦流探傷器20は、ケーブル25を介して励磁コイル31に対して所定の周波数の励磁電圧を供給する励磁電圧供給部を有する。ここで、励磁コイル31に供給される励磁電圧の周波数は、クラッド層5に存在する欠陥が検出できるように設定される。
また、渦流探傷器20は、検出コイル32からの検出信号(渦電流信号)を処理し解析する。検出コイル32からの検出信号は、互いに位相角が90°異なるX軸成分とY軸成分とに分離され、これらの各成分が別々に処理され、互いに直交するX軸とY軸とからなるX−Y平面(二次元直交座標平面)で表される(図4参照)。
具体的には、検出コイル32からの検出信号は、位相角および振幅を有する波形(起電力波形)として出力される。ここで、x:X軸成分の電圧値、y:Y軸成分の電圧値とすると、渦電流信号の位相である位相角(θ)は、θ=tan−1(y/x)で表され、渦電流信号の電圧値(起電力の大きさ)である振幅(A)は、A=√(x+y)で表される。
このように、位相角(θ)および振幅(A)を有する波形として解析される渦電流信号は、渦流探傷器20において、CRT(ブラウン管)等により構成される表示部21に表示される(図1参照)。なお、渦流探傷器20において、表示部21が設けられる側には、渦流探傷器20の電源の入切を行うための電源スイッチ22、および渦流探傷器20による渦流探傷における各種設定を行うための設定スイッチ23が設けられている。
以上のように、本実施形態のレーザクラッド加工によるクラッド層5の検査方法(以下単に「検査方法」という。)においては、クラッド層5の表面を渦流探傷することによって得られる検出信号として、互いに位相角が90°異なるX軸およびY軸からなるX−Y平面上において位相角(θ)および振幅(A)を有する波形で表される波形信号(以下「検出波形信号」という。)が用いられる。つまり、ここで用いられる検出波形信号は、表示部21において起電力波形として表示される。そして、本実施形態の検査方法では、検出波形信号の位相角(θ)および振幅(A)に基づいて、クラッド層5に存在する欠陥の種類の識別および欠陥の存在領域の大きさが測定される。
クラッド層5において生じる欠陥としては、クラッド層5の表面部分にて生じる割れおよびピンホール、ならびにクラッド層5に分布して存在する硬質粒子がある。ここで、硬質粒子とは、クラッド層5において他の部分よりも相対的に硬い粒子状の部分である。例えば、肉盛材料としてCu−Ni−Si−Mo−Fe系の銅合金の金属粉末が採用されて形成されたクラッド層5においては、硬質粒子は、Cu基マトリックス中にFe−Mo−Si(Fe、Moのシリサイド)として分散した組織となる。
図3に、クラッド層5に存在する各種欠陥の一例についての写真を示す。図3の(a)〜(c)の各図においては、左右に異なる二種類の組織部分が表れており、右側の部分は、シリンダヘッド1を構成する鋳鉄の部分であり、中央から左側にかけての部分が、クラッド層5の部分である。そして、図3の各図において、破線で示される楕円形状で囲まれた部分が、欠陥が存在する部分である。
具体的には、図3(a)において、破線で囲まれる部分6aは、クラッド層5の欠陥としての割れが生じている部分である。また、図3(b)において、破線で囲まれる部分6bは、クラッド層5の欠陥としてのピンホールが生じている部分である。また、図3(c)において、破線で囲まれる部分6cは、クラッド層5の欠陥としての硬質粒子が生じている部分である。
このようにクラッド層5に生じる各種欠陥については、クラッド層5の検査において所定の基準(許容値)が定められる。つまり、クラッド層5の検査としては、クラッド層5に生じる各種欠陥が、その欠陥の種類に応じた基準を満たすか否かが判定される。クラッド層5の検査において定められる基準としては、例えば、割れについては、存在しないこと、ピンホールについては、孔径が0.数mm以下であること、硬質粒子については、1000μm以下であること等として、適宜定められる。そして、クラッド層5に生じた欠陥が所定の基準を満たさない場合は、そのクラッド層5はNG判定を受ける。
そこで、本実施形態の検査方法では、前記のような判定を行うため、渦流探傷法が用いられ、クラッド層5に存在する欠陥の種類の識別および欠陥の存在領域の大きさが測定される。すなわち、前述したような渦流探傷法によれば、クラッド層5に存在する各種欠陥の寸法や形状や材質等によって渦電流の大きさや分布、つまり検出波形信号の位相角および振幅が変化する。かかる渦電流の変化が検出されることで、クラッド層5に存在する欠陥の測定等が行われる。
本実施形態では、鋳鉄製のシリンダヘッド1のバルブシート2に形成されるクラッド層5の表面状態が渦流計測されることで、クラッド層5に存在する硬質粒子についての識別および大きさの測定が行われる。つまり、本実施形態の検査方法においては、クラッド層5の表面に存在する割れおよびピンホールのそれぞれに対応する検出波形信号に対して、位相角(θ)について所定のずれを有する検出波形信号の振幅(A)に基づいて、クラッド層5に分散する硬質粒子の存在領域の大きさが測定される。
図4に、クラッド層5の表面を渦流探傷することで得られた検出波形信号(起電力波形)の一例を示す。つまり、図4は、クラッド層5の検査結果として出力される表示部21(図1参照)における表示内容の一例である。
図4において、X−Y平面に表される検出波形信号のうち、検出波形信号7aは、クラッド層5に存在する割れに対応する検出波形信号であり、破線で示される検出波形信号7bは、クラッド層5に存在するピンホールに対応する検出波形信号であり、太線で示される検出波形信号7cは、クラッド層5に存在する硬質粒子に対応する検出波形信号である。以下では、便宜上、割れに対応する検出波形信号7aを「割れ波形信号7a」とし、ピンホールに対応する検出波形信号7bを「ピンホール波形信号7b」とし、硬質粒子に対応する検出波形信号7cを「硬質粒子波形信号7c」とする。
図4に示すように、X−Y平面に表される各検出波形信号について、原点(X軸とY軸の交点)を中心とする回転方向の位置が、位相角(θ)に対応する。したがって、各検出波形信号の位相角(θ)については、基準線が存在する(割れ波形信号7aについての基準線8a、ピンホール波形信号7bについての基準線8b参照)。
また、同じくX−Y平面に表される各検出波形信号について、原点からの距離が、振幅(A)に対応する。したがって、各検出波形信号について、原点からの距離の最大値が、欠陥の存在領域の大きさに対応する。ここで、欠陥について、存在領域の大きさとは、割れについては、割れの長さであり、ピンホールについては、ピンホールの最大径であり、硬質粒子については、粒径の最大値である。つまり、各種欠陥について検出される起電力の大きさが、X−Y平面における波形の大きさ(領域の大きさ)となって表れる。
図4に示すX−Y平面においては、欠陥の存在領域の大きさについての指標が、原点を中心とする正方形として表されている。図4では、欠陥の存在領域の大きさとして0.5mm、1.0mm、および2.0mmのそれぞれに対応する正方形が表されている。したがって、図4に示される本例の各検出波形信号については、割れ波形信号7aから、割れの存在領域の大きさが約2.0mmであることがわかる。同様に、ピンホール波形信号7bおよび硬質粒子波形信号7cから、ピンホールおよび硬質粒子の存在領域の大きさがそれぞれ1.0mm以内であることがわかる。
また、X−Y平面において、硬質粒子波形信号7cは、割れ波形信号7aおよびピンホール波形信号7bのそれぞれに対して、位相角(θ)についての所定のずれ(以下「位相ずれ」という。)を有する。これは、クラッド層5に存在する割れおよびピンホールが空間部分であるのに対し、硬質粒子はクラッド層5を形成する材料の部分であることによる、渦流探傷における起電力の相違に基づく。
このように、鋳鉄製の部品であるシリンダヘッド1に対して形成されるクラッド層5については、渦流探傷による検出波形信号において、硬質粒子に対応する検出波形信号は、割れおよびピンホールに対応する検出波形信号に対して、X−Y平面上において位相ずれを有する。つまり、渦流探傷においては、割れおよびピンホールによって生じる起電力と、硬質粒子によって生じる起電力との相違が、検出波形信号の位相角(θ)の違いとなって検出される。そして、このように他の欠陥から位相角(θ)の違いによって検出される硬質粒子についての検出波形信号から、硬質粒子の存在領域の大きさ(粒径)が測定される。
言い換えると、鋳鉄製の部品であるシリンダヘッド1に対して形成されるクラッド層5については、検出波形信号の位相角(θ)の違いから、割れおよびピンホールとは別に、硬質粒子のみの起電力特性が抜き出される。そして、硬質粒子に対応する検出波形信号の位相が特定され、その起電力の大きさから、硬質粒子の存在領域の大きさ(粒径)が測定される。
また、本実施形態では、硬質粒子波形信号7cが有する位相ずれが、割れ波形信号7aに対しては70°であり、ピンホール波形信号7bに対しては45°である。すなわち、図4に示すように、本実施形態では、X軸が位相角(θ)の基準とされ、硬質粒子波形信号7cの位相角(θ)が0°となるように(硬質粒子波形信号7cについての基準線がX軸に一致するように)、検出波形信号についての位相が設定されている。
したがって、硬質粒子波形信号7cが有する位相ずれは、X−Y平面において、X軸に対する角度として表れる。そして、割れ波形信号7aの位相角(割れ波形信号7aについての基準線8aのX軸に対する角度)が70°であり、ピンホール波形信号7bの位相角(ピンホール波形信号7bについての基準線8bのX軸に対する角度)が45°である。
このように、X−Y平面における検出波形信号についての位相が設定されることにより、表示部21に表れる各欠陥に対応する検出波形信号の識別が容易となる。ただし、検出波形信号の位相は、任意に変更することが可能である。つまり、表示部21に表される検出波形信号の位相は、各欠陥に対応する検出波形信号の識別が容易となるように適宜設定される。
以上のように、本実施形態の検査方法においては、検出波形信号の位相角(θ)に基づいて、割れ、ピンホール、および硬質粒子の識別が行われる。すなわち、本実施形態では、前述したように、硬質粒子波形信号7cは、割れ波形信号7aおよびピンホール波形信号7bそれぞれに対して、70°および45°の位相ずれを有する。したがって、割れ波形信号7aとピンホール波形信号7bとは、25°の位相ずれを有する。このように、X−Y平面において互いに位相ずれを有する各検出波形信号の位相角(θ)に基づいて、割れ、ピンホール、および硬質粒子の欠陥の種類の判別が行われる。
また、本実施形態の検査方法においては、検出波形信号の振幅に基づいて、割れ、ピンホール、および硬質粒子の存在領域の大きさが測定される。すなわち、前記のとおり検出波形信号の位相角(θ)に基づいて欠陥の種類が特定されることから、各欠陥の種類に対応する検出波形信号のX−Y平面における分布(波形の大きさ)から、欠陥の存在領域の大きさが測定される。
以上のように、本実施形態の検査方法によれば、鋳鉄製の部品であるシリンダヘッド1に対して行われるレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層5について、切断を行うことなく、割れやピンホール等の表面的な欠陥のほか、内部品質である硬質粒子による欠陥についても検査することができ、検査品質を向上することができる。
すなわち、クラッド層5が形成される加工対象面が、鋳鉄製の部品が有するものである場合、非破壊の検査である渦流探傷において、クラッド層5に存在する硬質粒子について独自の起電力が得られる。このため、鋳鉄製の部品における所定の加工対象面に対して形成されるクラッド層5について、渦流探傷を行うことにより、切断検査を行うことなく、クラッド層5において表面部に存在する欠陥である割れおよびピンホールに加え、クラッド層5の内部品質(内部組織)である硬質粒子の存在領域の大きさ(粒径)の測定が可能となる。
本実施形態の検査方法では、クラッド層5が形成される所定の加工対象面を有する鋳鉄製の部品は、エンジンを構成する部品であるシリンダヘッド1であり、所定の加工対象面は、シリンダヘッド1におけるバルブシート2である。そこで、バルブシート2にクラッド層5を形成する肉盛材料(バルブシート材料)について、バルブシート材料中に存在する硬質粒子の粒径(硬質粒子径)と摩耗量との関係の一例を、図5に示す。
本例に係る硬質粒子径と摩耗量との関係は、硬質粒子径が異なる三種類のバルブシート材料について、摩耗試験を行うことによって得られたものである。本例において、試験対象となるバルブシート材料は、Cu−Ni−Si−Mo−Fe系の銅合金の金属粉末が用いられてレーザクラッド加工により形成されたテストピースである。かかるテストピースにおいては、硬質粒子として、Fe−Mo−Si(Fe、Moのシリサイド)が存在する。
そして、本例の摩耗試験は、テストピースの相手材として、材質がSUE3の窒化品が用いられ、テストピースが相手材に対して摺動させられることで行われたものである。本例では、テストピースの相手材に対する摺動が、エンジンの運転状況に対応する400℃程度の高温の状況下において、摺動速度0.3m/s、荷重5.75kg/cm、時間20分(摺動距離360m)の試験条件のもとで行われた。
図5に示すように、本例の摩耗試験の試験結果として、横軸が硬質粒子径(mm)、縦軸がバルブシート材料の摩耗量(mg)のグラフGが得られた。グラフGは、硬質粒子径が比較的小さい(0.2mm程度)のテストピースについての計測点B1と、硬質粒子径が比較的中程度(0.5mm程度)のテストピースについての計測点B2と、硬質粒子径が比較的大きい(0.8mm程度)のテストピースについての計測点B3とに基づいて得られたものである。
図5に示されるグラフGからわかるように、硬質粒子径が大きくなるほど、バルブシート材料の摩耗量は減少し、バルブシート材料自体の摩耗特性は向上する。そこで、バルブシート材料の摩耗量との関係から、硬質粒子径の下限についての目標が定められる。すなわち、本例の摩耗試験によれば、バルブシート材料の摩耗量としては、約0.007mgよりも少ないことが目標とされる(矢印A1参照)。したがって、バルブシート材料の摩耗特性を確保する観点からは、グラフGにより、硬質粒子径は約0.55mmよりも大きいことが好ましいとされる。
一方で、硬質粒子径が大きくなるほど、バルブシート材料に摩耗を生じさせる相手材への攻撃性が高くなる(相手材が摩耗しやすくなる)。そこで、バルブシート材料の相手材への攻撃性の許容範囲を規定する硬質粒子径の上限としては、1.0mmが好ましいとされる。したがって、硬質粒子径については、前述のバルブシート材料の摩耗特性を確保する観点を踏まえ、約0.55〜1.0mmの範囲が、好ましい範囲とされる(矢印範囲D1参照)。
また、硬質粒子については、その粒径が大きくなるほど、バルブシート材料の凝固にともなう残留応力等との関係から、バルブシート材料において硬質粒子の部分を基点とする割れが発生しやすくなる。具体的には、図5に示すように、硬質粒子径が、約0.67mmよりも大きくなると、バルブシート材料に割れが発生しやすくなる傾向にある(矢印A2参照)。そこで、硬質粒子径については、約0.67〜1.0mmの範囲が、より好ましい範囲とされる(矢印範囲D2参照)。
このように、バルブシート材料については、硬質粒子径は、摩耗特性と常に連動するため、非常に重要な要素となる。バルブシート材料中に存在する硬質粒子径は、レーザクラッド加工におけるレーザ光についての諸条件、金属粉末の材料成分、母材の大きさ(冷却速度)等の各種条件により様々に変化する。このため、従来行われている切断検査によれば、前記のような各種条件が変更される都度、検査対象を切断する必要が生じる。この点、本実施形態の検査方法によれば、バルブシート材料について重要な要素となる硬質粒子径を、切断検査を行うことなく測定することが可能となる。
また、本実施形態のように、シリンダヘッド1のバルブシート2に形成されるクラッド層5については、レーザクラッド加工によってクラッド層5が形成された後、クラッド層5の部分を研磨する加工工程が行われる。このため、本実施形態の検査方法によってクラッド層5についての硬質粒子による内部欠陥が検出されることにより、内部欠陥が存在するクラッド層5を有する不良品に対する余分な加工工程を減らすことが可能となる。
以上のように、本実施形態の検査方法は、シリンダヘッド1のバルブシート2に形成されるクラッド層5について効果的に用いられる。なお、本実施形態では、検査対象となるクラッド層が、シリンダヘッド1のバルブシート2に形成されるクラッド層5であるが、これに限定されない。つまり、本発明に係る検査方法は、鋳鉄製の部品が有する所定の加工対象面に対してレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層であれば適用可能である。
本発明の一実施形態に係る検査装置の構成を示す図。 クラッド層についての説明図。(a)はシリンダヘッドの構成を示す図。(b)はクラッド層を示す図。 クラッド層に生じる各種欠陥の一例についての写真を示す図。(a)は割れを示す図。(b)はピンホールを示す図。(c)は硬質粒子を示す図。 CRT等に表示される起電力波形の一例を示す図。 硬質粒子径と摩耗特性との関係の一例を示す図。
符号の説明
1 シリンダヘッド(鋳鉄製の部品)
2 バルブシート(加工対象面)
7a 割れ波形信号
7b ピンホール波形信号
7c 硬質粒子波形信号
10 検査装置
20 渦流探傷器
30 プローブ

Claims (4)

  1. 鋳鉄製の部品が有する所定の加工対象面に対してレーザクラッド加工によって形成されたクラッド層についての検査を行うレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法であって、
    前記クラッド層の表面を渦流探傷することによって得られる検出信号として、互いに位相角が90°異なるX軸およびY軸からなるX−Y平面上において位相角および振幅を有する波形で表される波形信号を用い、
    前記クラッド層の表面に存在する割れおよびピンホールのそれぞれに対応する前記波形信号に対して、前記位相角について所定のずれを有する前記波形信号の前記振幅に基づいて、前記クラッド層に分散する硬質粒子の存在領域の大きさを測定することを特徴とするレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法。
  2. 前記所定のずれが、前記割れに対応する前記波形信号に対しては70°であり、前記ピンホールに対応する前記波形信号に対しては45°であることを特徴とする請求項1に記載のレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法。
  3. 前記波形信号の前記位相角に基づいて、前記割れ、前記ピンホール、および前記硬質粒子の識別を行い、
    前記波形信号の前記振幅に基づいて、前記割れ、前記ピンホール、および前記硬質粒子の存在領域の大きさを測定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法。
  4. 前記鋳鉄製の部品は、エンジンを構成する部品であるシリンダヘッドであり、前記所定の加工対象面は、前記シリンダヘッドにおけるバルブシートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレーザクラッド加工によるクラッド層の検査方法。
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