JP2010057704A - 針状体製造方法、針状体、および研削刃 - Google Patents

針状体製造方法、針状体、および研削刃 Download PDF

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Abstract

【課題】微細構造を有する針状体の加工時および転写成形時の欠損を抑制することが可能な針状体製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の針状体製造方法によれば、段差を備えた研削刃を用いることにより、多段構造の針状体が簡易な工程で作製可能となる。また、特に転写成形時の欠損が発生しやすい針状体先端の近傍のみ接触面積を低減させた構造を作製することができることから、転写時に版と成形品とが張り付くことによって生じる先端欠損を低減させることが可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、研削刃を用いた針状体製造方法および該針状体製造方法に適した研削刃に関する。
皮膚上から薬剤を浸透させ体内に薬剤を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に薬剤を投与することが出来る方法として用いられているが、薬剤の種類によっては経皮吸収法で投与が困難な薬剤が存在する。これらの薬剤を効率よく体内に吸収させる方法として、ミクロンオーダーの微細な針状体を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に直接薬剤を投与する方法が注目されている。この方法によれば、投薬用の特別な機器を用いることなく、簡便に薬剤を皮下投薬することが可能となる(特許文献1参照)。
この際に用いる微細な針状体の形状は、皮膚を穿孔するための十分な細さと先端角、および皮下に薬液を浸透させるための十分な長さを有していることが必要とされ、直径は数μmから数百μm、長さは皮膚の最外層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、具体的には数十μmから数百μm程度のものであることが望ましいとされている。
より具体的には、最外皮層である角質層を貫通することが求められる。角質層の厚さは部位によっても若干異なるが、平均して20μm程度である。また、角質層の下にはおよそ200μmから350μm程度の厚さの表皮が存在し、さらにその下層には毛細血管が張りめぐる真皮層が存在する。このため、角質層を貫通させ薬液を浸透させるためには少なくとも20μm以上の針が必要となる。また、採血を目的とする針状体を製造する場合には、上記の皮膚の構成から少なくとも350μm以上の高さの針状体が必要となる。
また、針状体を構成する材料としては、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼしにくい材料であることが必要であり、この材料としては医療用シリコーンや、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、キチン、キトサン、ポリカーボネート等の生体適合樹脂が有望視されている(特許文献2参照)。
微細な針状体の製造方法の例として、研削加工技術を用いる手法が提案されている(特許文献3参照)。
また、医療用の生体適合性のある針状体の作製方法として、原版から複製版を起こし、その複製版を用いて転写成形を行う手法が提案されている(特許文献4参照)。
米国特許第6,183,434号明細書 特開2005−21677号公報 国際公開第08/013282号パンフレット 特表2007−523771号公報
このような微細構造を低コストかつ大量に製造するためには、射出成形法、インプリント法、キャスティング法に代表される転写成形方法が有効であるが、いずれの方法においても成形を行うためには所望の形状を有する原版が必要である。
しかしながら、機械加工等を用いて原版を作製した場合、その加工面は大きな表面粗さを持つ。そのため、このような原版をもとに転写成形を行った場合、枠型と成形品が張り付く現象が発生するという問題がある。特に、強度面で比較的脆弱となる針状体先端部の領域では、枠型からの剥離時に先端部が欠損する現象が発生するという問題も生じる。
そこで、本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、微細構造を有する針状体の加工時および転写成形時の欠損を抑制することが可能な針状体製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の本発明は、研削加工を用いて基板に第1の方向に沿って互いに平行な複数の第1の線状溝を形成する工程と、研削加工を用いて基板に第1の方向と交差する第2の方向に沿って互いに平行な複数の第2の線状溝を形成する工程と、を備え、前記研削加工に用いる研削刃の断面形状は、先端面と側面との間に傾斜面が形成された形状であり、前記傾斜面に段差段面を有する研削刃であることを特徴とする針状体製造方法である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の針状体製造方法を用いて製造された針状体を原版とした複製版を形成し、該複製版を用いて転写加工成形を行うことを特徴とした針状体製造方法である。
請求項3に記載の本発明は、微細加工に用いる研削刃であって、研削刃の断面形状は、先端面と側面との間に傾斜面が形成された形状であり、前記傾斜面に段差段面を有することを特徴とする研削刃である。
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の研削刃であって、前記段差段面の前後で、傾斜面の傾斜角度が異なることを特徴とする研削刃である。
請求項5に記載の本発明は、 傾斜面に段差段面を備え、該段差により先鋭部側の傾斜面と根元部側の傾斜面とが区別され、前記先鋭部側の傾斜面の傾斜角度と前記根元部側の傾斜面の傾斜角度とが異なることを特徴とした針状体である。
本発明の針状体製造方法によれば、段差段面を備えた研削刃を用いることにより、多段構造の針状体が作製可能となる。
<研削刃>
以下、本発明の研削刃について、具体的に説明を行う。
一般的に、研削加工は、高速で回転するスピンドルの先端に取り付けられた研削刃による精密機械加工であって、被加工基材に切溝を微細加工する。研削刃は、円盤状の支持体の外周部に形成される。研削刃の材質としては高い硬度を有することが望ましく、一般にダイヤモンドを用いることが多い。本発明においても、円盤状の支持体の外周部全面にダイヤモンドから成る研削刃が形成された、ダイヤモンドホイールを用いることが出来る。ダイヤモンドホイールは、半導体産業における基板の断裁工程で広く用いられており、安価で入手が容易な部材である。
図1に研削刃先端の部分断面図を示す。図1(a)は、従来の研削刃の断面図であり、図1(b)は本発明の研削刃の断面図である。
図1(a)に示すように、従来の研削刃10の断面形状は、研削刃側壁面4と研削刃先端面5が90°の角を成して交わり、直交頂点6を形成している。
このため、従来の研削刃を用いて研削加工を行っても、傾斜面を備えた構造体を形成できないことから、錐形状の針状体を形成することは出来ない。
図1(b)に示すように、本発明の研削刃11の断面形状は、研削刃側壁面4と研削刃先端面5との間に傾斜面7を有し、傾斜面7に段差段面14を有する。また、段差断面14により、傾斜面7は斜面A12と斜面B13との範囲を区切る。
傾斜面を備えた研削刃を用いることにより、加工対象に傾斜面を形成することが出来ることから、錐形状の針状体を形成することが出来る。
また、本発明の研削刃は、傾斜面に段差段面を備えることから、特に、図4に示すような、多段の針状体を好適に形成することが出来る。多段の針状体形状は、転写成形時の欠損が発生しやすい針状体先端の近傍のみ接触面積を低減させた構造であるから、転写時に複製版と成形品とが張り付くことによって生じる先端欠損を低減させることが可能であり、転写加工成形を行うときの針状体原版として、好適である。
本発明の研削刃において、段差の数量は制限されず、所望する針状体の設計に応じて、複数の段差を設けても良い。
また、段差段面の前後で、傾斜面の傾斜角度が異なった研削刃であってもよい。例えば、図1(b)において、斜面A12と斜面B13との斜面の傾斜角度が異なっていてもよい。
段差段面の前後で傾斜面の傾斜角度が異なることにより、形成される針状体の各段の傾斜角度を各段ごとに異ならせることが出来る。これにより、例えば、針状体の先端部形状の傾斜角度を狭め、針状体の根元形状の傾斜角度を広げた、針状体を形成することが出来る。このような針状体は、先端が鋭利なことから穿刺が容易であり、根元が広がっていることから穿刺するときの応力を拡散することが出来る。
また、当然のことながら、所望する針状体形状によっては、本発明の研削刃の一形態は、斜面A12と斜面B13との斜面の傾斜角度が同等程度であっても良い。
また、研削刃11の加工面形状は、研削刃の先端面5と傾斜面7とが角を成して交わらないように面取り加工により、角取り面8が成されていることが望ましい(図1(b))。このとき、角取り面8は、最終的に形成される針状体の基底部の形状を決定する。つまり、角取り面8を設けることで、基底部に緩やかな裾の形状を有する針状体を製造することが出来る(例えば、図3の断面14を参照)。これにより、穿刺時の針状体基底部に集中する応力を緩和し、その結果穿刺時の針状体の破損を抑制するのに適した形状の針状体を製造することが可能となる。
研削刃先端部の加工方法は特に制限されないが、砥石による研磨加工を好適に用いることが出来る。また、上記の研削刃を用いた針状体の製造装置を針状体の製造に良好に利用することができる。
<針状体製造方法>
以下、本発明の針状体製造方法について、具体的に説明を行う。
まず、図2(a)に示す通り、基材1を準備する。
このとき、基材としては、材質は特に制限されず、加工適正や、材料の入手容易性などから材質を選択してよい。例えば、具体的には、アルミナ、窒化アルミニウム、マシナブルセラミックスなどのセラミックス、また、シリコンやガラスなどの硬脆性材料、アクリルやポリアセタールなどの有機材料、を用いても良い。
次に、図2(b)に示す通り、研削刃11を回転させながら基材1の表面を研削加工し、所定の長さだけ線状に溝Aを形成する。
このとき、溝Aは直線状に形成するのに限定されず、曲線状に形成してもよい。曲線状に溝Aを設けた場合、底面が曲線で閉じられた多角形の形状である針状体を製造することが可能となる。
また、研削刃の回転数や研削速度などの研削条件は特に制限されず、研削刃11および基材1の材質を考慮したうえで、所望する形状の加工性に優れた条件に最適化することが望ましい。
上記研削加工によって、図2(c)に示す通り、溝A21が形成される。溝A21の側壁面の傾きは、図1(b)に示す研削刃11の先端に形成された傾斜面7の傾きに一致する。同様に、溝A21の側壁面と底面が交わる部分は、図1(b)に示す研削刃11の先端に形成された角取り面8に対応した裾をもった形状となる。
次に、前述した溝Aと交わらず、平行となるように少なくとも一つ以上の溝A´を形成する工程を行う。
図2(d)に示すように、溝A21の隣に、研削刃11によって溝A´22を加工する。このとき、研削刃11は、溝A21に対して、一部に重なりを持つようにして溝を加工することが望ましい。これにより、研削加工されてできる凸部の先端部が平坦となることがなく、鋭利にすることが出来、穿刺性に優れた針状体を製造することが可能となる。
凸部2の高さは、研削加工深さ、研削刃11の傾斜面7の角度、および溝A21と、溝A´22の重なり距離によって決定する。
次に、溝A´22を形成したのと同様に順次溝を形成していき、図2(f)に示す通り、凸部2を所望の数だけ形成して、段差を有する錐体である凸部2が表面に形成された基材3を得る。
このとき、形成する凸部2の数により、製造されるアレイ状に配列された針状体の列数が決定する。
図3に示す通り、凸部2の断面形状は、研削刃11の先端に形成された傾斜面(斜面A12および斜面B13および段差面14)の傾きに一致する側壁形状を有し、側壁面と底面が交わる部分は、図2研削刃11の先端に形成された角取り面8に対応した裾を持った形状14となる。
また、針状体は用いられる研削面の形状によって様々な側面形状を形成することが可能となる。図3では、二段の段差形状を持つ針状体の例を示したが、もちろんこれに限定されるわけではない。あらかじめ研削刃の形状を多段構造に加工することで、針状体もそれに準じた多段構造を形成することができる。
加えて、この研削面の斜面間はエッジが存在しない滑らかな形状によって繋がっていても良い。この場合、底面から頂点にかけて曲線的な形状変化を持った針状体を形成することができ、これも用いる研削刃の形状によって適宜選択することが可能である。
図3では、凸部2の断面形状において側壁面と底面が交わる部分が、円弧状の裾の形状になる例を示したが、側壁面と底面とが交わる角度よりも小さい角度で交わるように少なくとも1つの補助平面を形成することでも、穿刺時に針状体基底部に集中する応力を緩和することが出来る。この場合、研削刃11の先端加工時に、傾斜面7と研削刃先端面5が交わって成す頂点部分を面取りするように、少なくとも1つの補助平面を形成した研削刃を用いる。
次に、前記溝Aと交差するように溝Bを設け、前記交差溝Bと平行となるように交差溝B’を設ける。このとき、溝A21および溝A´22を設けて凸部が表面に形成された基材3を回転させることで、溝A21および溝A´22を設けた条件と同等に交差溝Bおよび交差溝B’を形成することが出来る。上述の場合、溝Aおよび溝A´と、交差溝Bおよび交差溝B’との交差角度は凸部が表面に形成された基材3の回転角度と同等となる。
図4に、凸部2が表面に形成された基材3を90°回転して、前記の溝形成工程と同じ条件で研削加工を実施した例を斜視図で示す。この場合、研削されずに残る部分が、図4に示す通り、アレイ状の多段四角錐24となり、支持基板23上にアレイ状の針状体25が得られる。図4では多段四角錐24と支持基板23が角を成して接続されているが、前述した面取り加工を施した研削刃11を用いることで、角錐の基底部に緩やかな裾の形状を持たせることが出来る。また、溝斜面は選択した研削刃の粒径に依存した表面粗さの分布を持つ。
また、交差溝Bおよび交差溝と平行な交差溝B’を設ける工程は複数回行っても良い。前記工程の施工回数、および、溝同士が交差する角度を制御することにより、多様な底面の形状を有する錐状の針状体を製造することが出来る。
例えば、交差溝Bおよび交差溝と平行な交差溝B’を設ける工程を一回行い、2方向の研削加工をそれぞれ60°ずらして実施する場合、底面がひし形である四角錐形状が得られる。このとき、ひし形の頂角は、対向する頂点が60°および120°に成る。
また、交差溝および交差溝と平行な交差溝’を設ける工程を二回行い、3方向に研削加工を行えば、底面が六角錐形状の針状体が得られる。
また、上記の工程で得られた針状体群の周辺には、場合によっては針状体ではない凸部が残留する。これを除去する必要がある場合には、追加加工で凸部を除去すればよい。
以上より、研削刃の断面形状、工程の施工回数、および、溝同士が交差する角度を制御することにより、任意の表面形状かつ任意の多角底面を成した錐状の針状体を製造することが出来る。また、線状に溝を設けることで、列毎に針状体を作成することが出来るため、特に、アレイ状に配列された針状体を製造する場合、一括で形成することが可能となる。
<転写加工成形>
本発明の針状体製造方法は、更に、形成された針状体を原版として転写加工成形を行っても良い。
以下、転写加工成形について図5を用いながら具体的に、説明を行う。
図5(a)では、原版30に複製材料31を充填する。このとき添加剤等を加えて良い。複製材料硬化の後、図5(b)のように、複製材料31を原版30から剥離することで凹型の複製版33を形成する。複製版を作製することで、同一の複製版から多量の針状体を製造することが出来るため、生産コストを抑制し、生産性を高めることが可能となる。
また、複製版作製工程に於いては、微細領域での再現性を高めるために脱泡工程を行うことが好ましい。脱泡工程は公知の脱泡法を用いて良い。例えば、真空脱泡、遠心脱泡、攪拌脱泡等の脱泡方法を用いて行うことが出来る。
複製材料は、特に制限されるものではないが、原版を転写し得る形状追従性、後述する転写加工成型における転写性、耐久性および離型性を考慮した材質を選択することが出来る。例えば、ニッケルやシリコーン樹脂材を用いることが出来る。しかし、これのみに限定されるものでは無い。ニッケルを選択した場合の複製方法としては、メッキ法、PVD法等が挙げられる。また、複製材料中の不純物を除去するために精製工程を加えても良い。
複製版作製の際には、樹脂の複製材料に対して任意の添加剤を加えることで硬化時間や硬化形状の制御等の機能を持たせることが可能である。ここで用いられる添加剤は特に制限されず、複製材料との反応により弊害が生じない材料を選択的に用いても良い。用いられる材料の例として、無機材料や水、有機溶剤が挙げられるが、複製版表面形状の形成に影響を及ぼすことができる他の材料であっても良く、これに限定されるもではない。添加剤を加えるタイミングは特に限定されず、充填前から複製材料が硬化するまでの間に添加可能である。好ましくは充填前であり、これにより添加剤の均一な分散を促すことが出来る。また、使用される添加剤は一種のみに限定されず、種類の異なる添加剤を複数用いても良い。また、その添加量は任意の表面形状とするために、適宜その加減を変更することが出来るものである。また、添加剤を完全に除去するために、複製版硬化後に複製版の洗浄工程を加えても良い。
このとき、添加剤混入前の複製材料の粘度は1Pa・sから100Pa・sであることが好ましい。粘度が低すぎる場合には添加剤を複製材料中に固定することが出来ず、二層化してしまう。また、粘度が高すぎる場合は、複製材料中に添加剤を均等に分散させることができず塊として存在してしまう事となる。
次に、複製版を用いた転写加工成型について説明する。
図5(c)では、複製版33に成形材34を充填する。成形材は特に制限されないが、穿刺部となる複製針状体においては生体適合性材料である医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、キチン、キトサン、糖質、ポリカーボネート等を用いることが好ましい。生体適合性材料を用いれば、針状体が折れて体内に取り残された場合も、無害であるという効果を有する。このときの成形材34の充填方法についての制限は無いが、生産性の観点から、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、押し出し成形法およびキャスティング法を好適に用いることが出来る。
成形材34充填の後、これを複製版33から剥離し、任意の複製針状体35を得る。このとき、複製版の剥離性を向上させるために、複製針状体の材料の充填前に、複製版の表面上に離型効果を増すための離型層を形成してもよい(図示せず)。離型層としては、例えば広く知られているフッ素系の樹脂を用いることができる。また、離型層の形成方法としては、PVD法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法等の薄膜形成手法を好適に用いることができる。
転写成形方法はその充填材料を選択することで、機械的もしくは化学的な直接加工を用いて針状体を作製することが困難である材料においても形成が可能となり、尚且つ、大量の製品を効率良く低コストで製造することが可能である。しかも、転写成形のための材料には生体適合材料を用いた場合、生体に低負荷の材料を用いた複製針状体を製造することが可能となる。生体適合材料を用いれば、微細な針状体が折れて、体内に取り残された場合も、無害であるという効果を有する。
以下、本発明の針状体の製造方法について、具体的に一例を挙げながら説明を行う。当然のことながら、本発明の針状体の製造方法は下記実施例に限定されず、各工程において類推できる他の製造方法をも含むものとする。
まず、ダイヤモンド砥粒を含有した研削刃の先端部を、ダイヤモンド砥石による研磨加工によって、後述する所望の形状に加工した。
図1は円盤状の研削刃先端の部分断面図である。図1(a)に示す通り、研磨加工前の研削刃12の断面形状は、研削刃側壁面4と研削刃先端面5が90°の角を成して交わり、頂点6を形成している。
この研削刃12を、ダイヤモンド砥石を用いて加工し、研削刃11を得た。
研削刃11は、図1(b)に示す通り、斜面A12および斜面B13および段面14を有し、且つ傾斜面7と研削刃先端面5が交わって成す頂点部分は概角取り面8を有する形状に加工された。
本実施例では、厚みが1mmの研削刃を用い、研削刃先端面5が幅180μmとなり、研削刃側壁面4と傾斜面7との成す角度が160°となるように、研削刃の先端を研磨加工した。このとき、段面14の幅は10μmとなるように加工した。また、斜面Aの角度15と斜面Bの角度16は同一の角度となるようにした。
次に、前記の通り先端を加工した研削刃による研削加工で、セラミックス基材の表面に溝Aを形成する工程を実施した。
まず図2(a)に示す通り、一辺が30mmの正方形で、厚さ3mmのセラミックス基材を準備し、続いて図2(b)に示す通り、研削刃を回転させながらセラミックス基材の表面を深さ300μmとなるように研削加工し、長さ30mmの溝を形成した。
上記研削加工によって、図2(c)に示す通り、溝Aが形成された。溝Aの開口上部の幅は約418μm、深さは300μmとなった。
溝Aの側壁面の傾きは、研削刃の先端に形成された傾斜面の傾きに対応し、本実施例ではセラミックス基材の表面と溝Aの側壁面との成す角度は110°となった。同様に、溝Aの側壁面と底面が交わる部分は、研削刃の先端に形成された角取り面に対応した裾を持った形状となった。
次に溝A´を基材1の表面に加工する工程を実施した。
図2(d)に示すように、溝Aの隣に、溝Aと同一の条件で研削刃によって溝を加工した。このとき、溝Aに対して、平行に研削した。これにより、図2(e)に示す通り、深さ300μmで長さ3mmの溝A´が、溝Aに隣接して形成された。溝Aと溝A´の間には、先端形状が先鋭な凸部が形成された。
凸部2の高さは、研削加工深さ、研削刃の先端傾斜面の角度、および溝Aと溝A´重なり距離によって決定する。本実施例における凸部2の高さは約290μm、根元の幅は約231μmとなった。研削刃先端の傾斜面の重なりで形成された凸部の先端は、角度40°の頂点となった。
次に、溝A´を形成したのと同様に順次溝を形成していき、図2(f)に示す通り、凸部を所望の数だけ形成して、概ね三角形の断面形状を有する凸部が表面に形成された基材を得た。本実施例においては、合計6本の溝を作製した。6本の溝形成によって、5本の凸部が形成された。図3に示す通り、凸部の断面形状は、研削刃の先端に形成された傾斜面の傾きに一致する側壁傾斜を有し、側壁面と底面が交わる部分は、図1研削刃の先端に形成された角取り面に対応した裾を持った形状となった。
次に、前期6本の溝形成工程によって5本形成された凸部が表面に形成された基材を、90°回転し、前記の溝形成工程と同じ条件で研削加工を実施した。これにより、交差溝Bおよび交差溝B’が併せて5本形成され、その結果研削されずに残る部分が、図4に示す通り、アレイ状の正四角錐となり、支持基板上にアレイ状の配列された針状体が得られた。本実施例においては、針状体は5列5行のアレイ状に並んだ25の針状体が得られた。このとき得られた針状体は四角錐であり、先端角が40°、高さが約162μm、底面の一辺の幅が231μmとなった。また、角錐側面には表面粗さの差によって生じた境界線が確認でき、先端部が基底部に比べ表面粗さが低減された構造を持つ針状体となった。
次に、作製した針状体を複製するため、作製した針状体を母型とし、前記母型から複製版を作り、転写加工成形を行う工程を実施した。
まず、メッキ法によって、針状体の表面にニッケル膜を600μm形成した。次に前記ニッケル膜を針状体から剥離し、複製版を作製した。次に、上記複製版に対し、インプリント法を用いて複製針状体の作製を行った。充填する複製針状体材料として、生体適合性材料であるポリカーボネートを用いた。以上の工程により、生体適合性樹脂であるポリカーボネートで構成された先鋭な複製針状体を製造することが出来た。
本発明の針状体製造方法は、医薬創薬に用いる針状体のみならず、錐形状の3次元構造パターンを形成することが求められる広範な分野に利用することが期待される。
前記広範な分野としては、例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、化粧品用途マイクローニードル、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどが挙げられる。
図1(a)は従来の研削刃の概略断面図であり、図1(b)は本発明の研削刃の概略断面図である。。 本発明の針状体製造方法の一実施形態の概略断面工程図である。 本発明の針状体製造方法における針状体の断面構造の一例を示す概略断面図である。 本発明の針状体製造方法によって製造された針状体の斜視図である。 本発明の針状体製造方法の一実施形態の概略断面工程図である。
符号の説明
1…基材
2…凸部
3…凸部が表面に形成された基材
4…研削刃側壁面
5…研削刃先端面
6…研削刃先端部の直行頂点
7…傾斜面
8…部分的円弧形状
10…従来の研削刃先端部断面
11…先端を加工した研削刃先端部断面
12…斜面A
13…斜面B
14…段差段面
15…斜面Aの角度
16…斜面Bの角度
21…溝A
22…溝A´
23…針状体の支持基板、
24…針状体、
25…アレイ状に配列された針状体
30…原版金型
31…複製材料
33…複製版
34…成形材
35…針状体

Claims (5)

  1. 研削加工を用いて基板に第1の方向に沿って互いに平行な複数の第1の線状溝を形成する工程と、
    研削加工を用いて基板に第1の方向と交差する第2の方向に沿って互いに平行な複数の第2の線状溝を形成する工程と、を備え、
    前記研削加工に用いる研削刃の断面形状は、先端面と側面との間に傾斜面が形成された形状であり、前記傾斜面に段差段面を有する研削刃であること
    を特徴とする針状体製造方法。
  2. 請求項1に記載の針状体製造方法を用いて製造された針状体を原版とした複製版を形成し、該複製版を用いて転写加工成形を行うこと
    を特徴とした針状体製造方法。
  3. 微細加工に用いる研削刃であって、
    研削刃の断面形状は、先端面と側面との間に傾斜面が形成された形状であり、
    前記傾斜面に段差段面を有する断面形状であること
    を特徴とする研削刃。
  4. 請求項3に記載の研削刃であって、
    前記段差段面の前後で、傾斜面の傾斜角度が異なること
    を特徴とする研削刃。
  5. 傾斜面に段差段面を備え、
    該段差により先鋭部側の傾斜面と根元部側の傾斜面とが区別され、
    前記先鋭部側の傾斜面の傾斜角度と前記根元部側の傾斜面の傾斜角度とが異なることを
    特徴とした針状体。
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