JP2010055827A - 放電灯点灯装置及び前照灯、車両 - Google Patents

放電灯点灯装置及び前照灯、車両 Download PDF

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Abstract

【課題】回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる放電灯点灯装置及び前照灯、車両を提供する。
【解決手段】制御部6は、出力電流(ランプ電流)が最も大きくなる放電開始直後には増大量ΔIlaを低減することで電力変換部2や極性反転部3などの回路部品に加わるストレスを低減するとともに、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが大きいときには増大量ΔIlaを大きくする。故に、輻射ノイズのレベルが相対的に低い放電灯5の安定点灯時に直流出力の一時的な増大量が過大になることがなく、しかも、輻射ノイズのレベルが相対的に高い放電灯5の始動期間には直流出力の一時的な増大量を安定点灯時よりも大きくすることで輻射ノイズを効果的に低減することができるから、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができる
【選択図】 図1

Description

本発明は、放電灯点灯装置、及び放電灯点灯装置を用いた前照灯、並びに当該前照灯を搭載した車両に関するものである。
メタルハライドランプなどの高圧放電灯を点灯する放電灯点灯装置においては、音響的共鳴現象を回避するため、直流出力の極性を低周波(数百ヘルツ〜数キロヘルツ)で反転させることによって放電灯を矩形波点灯している。ところが、放電灯を矩形波点灯した場合、極性反転の半周期毎に放電灯の電極が陽極フェーズと陰極フェーズに交互に切り換わるため、電極の温度が一時的に低下することになる。そして、電極温度が低下することで陰極スポット(輝点)が電極表面を移動し、その結果、放電の安定性が低下するとともに輻射ノイズが増大するという問題があった。
これに対して従来は、放電灯点灯装置の出力極性を反転する前(あるいは、反転前と反転後の双方)に出力を一時的に増大させることにより、極性反転に伴う電極温度の低下を抑制して放電の安定性向上と輻射ノイズの低減が図られていた(例えば、特許文献1,2参照)。
特表平10−501919号公報 特開2002−110392号公報
ところで、放電開始直後のランプ電圧が定格ランプ電圧に比べて非常に低いので、定格ランプ電力を供給するためには定格値よりも大きいランプ電流を出力する必要がある。図20は放電灯点灯装置の出力特性を示しており、放電開始時点からランプ電圧が定格値に達するまでの数秒乃至十数秒間は出力電流(ランプ電流)を増大させている。例えば、自動車の前照灯に用いられるHIDランプを例に挙げると、定格ランプ電圧が85ボルト、定格ランプ電流が0.4アンペアである場合、放電開始時点のランプ電圧は20ボルト程度であり、前記数秒乃至十数秒間における出力電流は定格ランプ電流の6倍程度(約2.6アンペア)の出力電流を流している。ここで、放電開始時点から安定点灯に至るまでの期間において放電灯から発生する輻射ノイズは、図21に示すように出力電流(ランプ電流)が定格値よりも大きい前記期間では低いレベルに抑えられており、当該期間が経過した後にレベルが増大し、放電灯の点灯が安定するに従ってレベルが低下していることが判った。ここで、輻射ノイズ低減のために極性反転時における出力電流(ランプ電流)を一時的に増大させることは、放電灯点灯装置にとっては負荷が増大することになる。したがって、極性反転に同期して出力を一時的に増大させる場合の増大量を、上述のように放電開始から安定点灯に至るまでの輻射ノイズのレベルに見合った値にすると、安定点灯時においては過大な電力が放電灯に供給されるために回路規模が必要以上に増大してコストアップを招くという弊害が生じる。一方、従来例では極性反転に同期して出力を一時的に増大させる場合の増大量を安定点灯時における輻射ノイズのレベルに見合った固定値としているので、上述のような放電開始時点から安定点灯に至る期間では輻射ノイズを十分に低減することができない虞がある。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる放電灯点灯装置及び前照灯、車両を提供することにある。
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、直流電源から供給される直流電力を所望の直流電力に変換する電力変換部と、電力変換部から出力される直流出力の極性を低周波数で反転させる極性反転部と、電力変換部を制御して電力変換部から出力される直流電力を調整する制御部とを備え、極性反転部で極性反転された直流電力を放電灯に供給することで放電灯を矩形波点灯させるとともに、極性反転部による極性反転の前若しくは後の少なくとも何れか一方において放電灯に供給する直流出力を一時的に増大させるように制御部が電力変換部を制御する放電灯点灯装置において、制御部は、放電灯が放電開始してから安定点灯に至るまでの始動期間内において当該放電開始時点から所定時間が経過するまでの期間に、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して電力変換部から出力される直流出力を、放電灯が安定点灯しているときに極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して電力変換部から出力される直流出力よりも大きくすることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、輻射ノイズのレベルが相対的に低い放電灯の安定点灯時に直流出力の一時的な増大量が過大になることがなく、しかも、輻射ノイズのレベルが相対的に高い放電灯の始動期間には直流出力の一時的な増大量を安定点灯時よりも大きくすることで輻射ノイズを効果的に低減することができる。その結果、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる放電灯点灯装置を提供できる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記所定時間は、放電開始後に放電灯の電極温度が安定するまでの時間であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、制御部は、電力変換部の直流出力が所定の出力目標値と一致するように電力変換部を制御してなり、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる際、前記出力目標値に所定の増大量を加算することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、制御部は、電力変換部の直流出力が所定の出力目標値と一致するように電力変換部を制御してなり、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる際、前記出力目標値に1よりも大きな所定の増大率を乗算することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1又は2の発明において、制御部は、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる時間を、前記所定時間が経過した後の期間に比べて前記所定時間が経過するまでの期間において長くすることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1項の発明において、制御部は、放電開始時点のランプ電圧が定格ランプ電圧よりも低い期間における直流出力を定格ランプ電力の2倍以上とし且つ前記始動期間内において直流出力を定格ランプ電力まで徐々に減少させるとともに、直流出力が定格ランプ電力よりも大きい場合においては、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を当該直流出力が大きいときほど大きくなるように電力変換部を制御することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れか1項の発明において、制御部は、電力変換部の出力電圧が低いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1〜6の何れか1項の発明において、制御部は、電力変換部の出力電流が低いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1〜6の何れか1項の発明において、制御部は、放電灯の放電開始時点からの経過時間が短いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1〜9の何れか1項の発明において、制御部は、放電灯を点灯する際に当該放電灯の温度状態を推定する機能を有し、放電灯の温度が高いときほど、前記所定時間を短くすることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1〜10の何れか1項の発明において、制御部は、放電灯が放電を開始した直後から前記所定時間よりも短い時間においては、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期した直流出力の一時的な増大を行わないことを特徴とする。
請求項12の発明は、上記目的を達成する目他に、請求項1〜11の何れかの放電灯点灯装置と、放電灯と、放電灯と放電灯点灯装置を電気的に接続するソケットと、灯具とを有することを特徴とする。
請求項12の発明によれば、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる前照灯を提供できる。
請求項13の発明は、上記目的を達成するために、請求項12の前照灯を備えたことを特徴とする。
請求項13の発明によれば、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる車両を提供できる。
本発明によれば、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯から生じる輻射ノイズを低減することができる放電灯点灯装置及び前照灯、車両が提供できる。
以下、自動車の前照灯に用いる高輝度放電灯(HIDランプ)を点灯する放電灯点灯装置及び当該前照灯、車両(自動車)に本発明の技術思想を適用した実施形態について説明する。
(実施形態1)
図2に本実施形態の放電灯点灯装置の回路構成図を示す。直流電源1は車両(自動車)に搭載されたバッテリからなり、電力変換部2によって直流電源1の直流出力電力が所望レベルの直流電力に変換される。電力変換部2は、従来周知のDC/DCコンバータの1種であるフライバックコンバータからなり、トランスT1の1次側に接続されているスイッチング素子Q1をPWM制御することによって直流電源1の直流出力電圧を所望の直流電圧へ昇圧及び降圧するものである。
電力変換部2の出力端間には、一対のスイッチング素子Q2,Q4及びQ3,Q5の直列回路を互いに並列接続してなるフルブリッジ構成の極性反転部3が接続されている。そして、極性反転部3の出力端(一対のスイッチング素子Q2,Q4及びQ3,Q5の接続点)間にイグナイタ部4を介して放電灯(高輝度放電灯)5が接続されている。イグナイタ部4は、コンデンサCs、パルストランスT2、スパークギャップSG1で構成されており、パルストランスT2の1次巻線P2とスパークギャップSG1の直列回路がコンデンサCsとともに極性反転部3の出力端に並列接続され、パルストランスT2の2次巻線S2が放電灯5に直列接続されている。
制御部6はマイクロコンピュータやメモリなどで構成され、電力変換部2並びに極性反転部3を制御するものであって、電流目標演算部61、電力目標記憶部62、誤差アンプ63、反転判断部64、電流目標上昇部65を有している。但し、電力目標記憶部62を除く各部は、マイクロコンピュータに専用のプログラムを実行させることで実現される。
電力目標記憶部62は不揮発性の半導体メモリからなり、始動時や安定点灯時などの放電灯5の状態に対応した電力変換部2の直流出力電力の目標値(出力電力目標値)を記憶している。電流目標演算部61は、電力変換部2の出力電圧を検出し、電力目標記憶部62から読み出した出力電力目標値を出力電圧検出値で除算することによって出力電流目標値を演算するとともに、当該出力電流目標値を電流目標上昇部65に出力する。また、反転判断部64は極性反転部3のスイッチング素子Q2〜Q5をスイッチング制御するものであって、対角辺の位置に在る一対のスイッチング素子Q2,Q5を同時にオンするとともに同じく対角辺の位置に在る一対のスイッチング素子Q3,Q4を同時にオフする期間と、一対のスイッチング素子Q2,Q5を同時にオフするとともに一対のスイッチング素子Q3,Q4を同時にオンする期間とを低周波(数百ヘルツ〜数キロヘルツ)で交互に反転させている。ここで、極性反転部3は各スイッチング素子Q2〜Q5を個別に駆動する駆動回路(図示せず)を有しており、反転判断部64から当該駆動回路に反転命令を与えることで上記反転動作を行わせている。さらに、反転判断部64は極性反転部3に与える反転命令に同期した反転同期信号を電流目標上昇部65に出力する。
電流目標上昇部65は、電流目標演算部61から受け取る出力電流目標値を誤差アンプ63に出力するが、後述するように反転判断部64から反転同期信号が入力されている期間においては電流目標演算部61から受け取る出力電流目標値に所定の電流値を加算した出力電流目標値を誤差アンプ63に出力する。誤差アンプ63は、電流目標上昇部65から出力される出力電流目標値と、電力変換部2の出力電流を検出して得られる出力電流検出値とを比較し、両者の差分に応じた出力制御信号を電力変換部2に出力する。電力変換部2においては、制御部6(誤差アンプ63)から受け取った出力制御信号によって前記差分を減少させるようにスイッチング素子Q1がPWM制御される。
ここで、イグナイタ部4の動作を簡単に説明する。放電灯5の放電開始前は無負荷の状態であるから、電力変換部2の出力電圧が定格ランプ電圧よりも十分に高い電圧まで上昇する。一方、極性反転部3はスイッチング素子Q2,Q5がオン、スイッチング素子Q3,Q4がオフの状態に固定されている。その結果、電力変換部2の出力電圧が上昇するにつれてイグナイタ部4のコンデンサCsの両端電圧も上昇し、コンデンサCsの両端電圧が所定のしきい値を超えた時点でスパークギャップSG1がブレークダウンする。スパークギャップSG1がブレークダウンすれば、コンデンサCsの充電電荷が放電され、スパークギャップSG1を介してパルストランスT2の1次巻線P2に放電電流が流れ、その結果、スパークギャップSG1の2次巻線S2に数十キロボルトの高電圧パルスが発生し、当該高電圧パルスが電極間に印加されることによって放電灯5が放電を開始する。放電灯5が放電を開始すると電力変換部2から放電灯5に出力電流が流れ、放電灯5がアーク放電に移行する。
ここで、放電灯5の放電開始からアーク放電に移行するまでの期間(始動期間)においては、従来技術で説明したように出力電流(ランプ電流)を定格ランプ電流の6倍程度まで増大させている。つまり、始動期間における出力電力目標値として定格ランプ電力よりも高い値(定格ランプ電力の2倍以上の値)が電力目標記憶部62に記憶されており、制御部6から出力される出力制御信号によって電力変換部2が制御され、定格ランプ電流の6倍程度の出力電流が放電灯5に供給されることになる。そして、放電灯5のランプ電圧が上昇するにつれて制御部6によって制御された電力変換部2の出力電流が減少し、始動期間の終わりには定格ランプ電流に等しくなる(図20参照)。尚、始動期間に続く安定点灯期間における出力電力目標値として、放電灯5の定格ランプ電力に等しい値が電力目標記憶部62に記憶されており、安定点灯期間では、制御部6によって電力変換部2が定電力制御される。
次に、図1のフローチャートを参照して制御部6の動作をさらに詳しく説明する。
放電灯5が消灯している場合、制御部6は無負荷時の制御を実行する。すなわち、反転判断部64が極性反転部3のスイッチング素子Q2,Q5をオン、スイッチング素子Q3,Q4をオフの状態に固定し、電力変換部2に出力制御信号を出力することでイグナイタ部4を動作させて放電灯5を始動する(ステップS1)。尚、制御部6は電力変換部2の出力電圧(出力電圧検出値)などに基づいて放電灯5が放電開始したか否かを判断し(ステップS2)、放電灯5が放電開始するまで無負荷時制御を継続する。
制御部6の電流目標演算部61では、所定のサンプリング周期で放電灯5のランプ電圧に対応した電力変換部2の出力電圧検出値を読み込んでメモリに記憶し(ステップS3)、最新の出力電圧検出値と過去数回分の出力電圧検出値をメモリから読み出し、これらの値を算術平均することで出力電圧検出値(ランプ電圧)を平均化する(ステップS4)。さらに電流目標演算部61は、電力目標記憶部62から現在の放電灯5の状態(例えば、始動時や安定点灯時など)に対応した出力電力目標値を読み出し(ステップS5)、当該出力電力目標値を平均化した出力電圧検出値で除算することによって出力電流目標値を演算し(ステップS6)、当該出力電流目標値を電流目標上昇部65に出力する。
また、放電灯5が放電を開始すると極性反転部3に対して反転判断部64より周期的に反転命令が出力され、当該反転命令に応じて極性反転部3が電力変換部2の直流出力を極性反転するとともに、反転命令に同期した反転同期信号が反転判断部64から電流目標上昇部65に出力される。電流目標上昇部65は反転判断部64から反転同期信号が出力されているか否かを判断し(ステップS7)、反転同期信号が出力されていなければ電流目標演算部61から受け取った出力電力目標値をそのまま誤差アンプ63に出力するが、反転同期信号が出力されていればステップS8,S9の処理を実行し、電流目標演算部61から受け取った出力電力目標値に所定の電流値(増大量)ΔIlaを加算した出力電力目標値を誤差アンプ63に出力する。
ここで、従来は出力電流目標値に加算される電流値(増大量)が放電灯5の状態に関わらず常に一定値であったが、本実施形態では放電灯5の状態、特に放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルに応じて電流値(増大量)を調整しており、かかる点に本発明の特徴がある。
既に説明したように、放電灯5の始動開始時点から10秒間程度においては出力電流(ランプ電流)が定格ランプ電流の6倍程度まで増大されているために放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが相対的に低いレベルに抑えられており、放電灯5の始動開始時点から10〜50秒程度の期間においては出力電流が徐々に定格ランプ電流まで減少しているために輻射ノイズのレベルが相対的に高くなっている(図21参照)。従って、放電灯5の始動開始時点から10秒間程度の期間においては、増大量ΔIlaによる電流増加分の輻射ノイズ低減に対する寄与度は低いと考えられるから、この期間における増大量ΔIlaを低く(例えば、ゼロ)とすることで電力変換部2や極性反転部3あるいは放電灯5に加わるストレスを低減することができる。一方、輻射ノイズのレベルが相対的に高くなっている期間(放電灯5の放電開始時点から10〜50秒程度の期間)においては増大量ΔIlaによる電流増加分の輻射ノイズ低減に対する寄与度が高いと考えられるので、この期間における増大量ΔIlaを大きくすることで輻射ノイズを低減することができる。ここで、本実施形態においては、放電灯5の放電開始時点からの経過時間が50秒程度までの時間、つまり、放電灯5の電極温度が安定して陰極スポットの移動が無くなるまでの所定時間(請求項における「所定時間」)における増大量ΔIlaを、放電灯5が安定点灯(定格点灯)しているときにおける増大量ΔIlaよりも大きくしている。
例えば、放電灯5の定格ランプ電流が0.4アンペアである場合、図3に示すように放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までは増大量ΔIlaをゼロとし、10秒〜50秒の期間では増大量ΔIlaを定格ランプ電流に等しい0.4アンペアから定格ランプ電流の2分の1の0.2アンペアまで直線的に減少させ、放電灯5が安定点灯状態となる50秒経過以降では増大量ΔIlaを0.2アンペアに固定すればよい。尚、図3に示した放電灯5の放電開始時点からの経過時間と増大量ΔIlaとの対応関係が予め制御部6のメモリに記憶されている。
而して、制御部6では図示しないタイマによって放電灯5の放電開始時点からの経過時間をカウントしており、電流目標上昇部65は、タイマでカウントされる経過時間に対応した増大量ΔIlaをメモリから読み出し(ステップS8)、電流目標演算部61から受け取った出力電流目標値にメモリから読み出した増大量ΔIlaを加算してなる出力電流目標値を誤差アンプ63に出力する(ステップS9)。
誤差アンプ63は、所定のサンプリング周期で放電灯5のランプ電流に対応した電力変換部2の出力電流検出値を読み込んでメモリに記憶し(ステップS10)、最新の出力電流検出値と過去数回分の出力電流検出値をメモリから読み出し、これらの値を算術平均することで出力電流検出値(ランプ電流)を平均化する(ステップS11)。さらに誤差アンプ63は、電流目標上昇部65から出力される出力電流目標値と平均化した出力電流検出値とを比較し(ステップS12)、両者の差分に応じた出力制御信号を電力変換部2に出力する(ステップS13)。電力変換部2においては、制御部6(誤差アンプ63)から出力される出力制御信号でスイッチング素子Q1がPWM制御されることにより、直流出力電力(直流出力電流)が出力電力目標値(出力電流目標値)に一致するように出力調整される。
反転判断部64は、前回の反転命令出力から極性反転の周期が経過しているか否かを判断し(ステップS14)、経過していれば極性反転部3に対して反転命令を出力し(ステップS15)、経過していなければ反転命令を出力しない。さらに反転判断部64は、極性反転に同期した増大量ΔIlaの加算が必要か否かを判断し(ステップS16)、必要と判断すれば反転同期信号を出力し(ステップS17)、不要と判断すれば反転同期信号の出力を停止する(ステップS18)。尚、増大量ΔIlaの加算要否の判断基準は、例えば、前回の反転命令出力時点からの経過時間が、次回の反転命令出力時点よりも200マイクロ秒前のタイミングから次回の反転命令出力時点から50マイクロ秒が経過するまでの期間内は増大量ΔIlaの加算を必要とし、当該期間外は増大量ΔIlaの加算を不要とする。
図4は極性反転部3から放電灯5に供給される出力電流(ランプ電流)の波形図を示しており、制御部6が上述のような制御動作を行うことによって、極性反転の前後における電流値を増大量ΔIlaの分だけ上昇させて輻射ノイズの低減を図ることができる。
また本実施形態においては、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが相対的に小さい期間(放電灯5の放電開始時点から約10秒間)における増大量ΔIlaをゼロとし、輻射ノイズのレベルが相対的に大きい期間(放電灯5の放電開始時点からの経過時間が10秒〜50秒までの期間)における増大量ΔIlaを安定点灯時における増大量ΔIlaよりも大きく且つ徐々に低減するように制御部6が電力変換部2並びに極性反転部3を制御している。これにより、出力電流(ランプ電流)が最も大きくなる放電開始直後には増大量ΔIlaを低減することで電力変換部2や極性反転部3などの回路部品に加わるストレスを低減するとともに、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが大きいときには増大量ΔIlaを大きくすることで輻射ノイズを低減し且つノイズレベルに応じて増大量ΔIlaを調整することができる。つまり、本実施形態によれば、輻射ノイズのレベルが相対的に低い放電灯5の安定点灯時に直流出力の一時的な増大量が過大になることがなく、しかも、輻射ノイズのレベルが相対的に高い放電灯5の始動期間には直流出力の一時的な増大量を安定点灯時よりも大きくすることで輻射ノイズを効果的に低減することができるから、回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができるのである。
ここで、本実施形態では放電灯5の放電開始時点からの経過時間に基づいて放電灯5の状態(輻射ノイズのレベル)を判断しているが、経過時間の代わりに、電力変換部2の出力電圧(ランプ電圧)や出力電流(ランプ電流)に基づいて判断することも可能である。例えば、定格ランプ電圧が85ボルトであるHIDランプを例に挙げると、図5に示すように出力電圧(ランプ電圧)が放電開始時のランプ電圧(約20ボルト)に達するまでは増大量ΔIlaをゼロとし、放電開始時のランプ電圧に達してから定格ランプ電圧(85ボルト)に至るまでの期間における増大量ΔIlaを安定点灯時における増大量ΔIlaよりも大きく且つ徐々に低減し、ランプ電圧が定格ランプ電圧に達した後は増大量ΔIlaを固定すればよい。あるいは、図6に示すように出力電流(ランプ電流)が放電灯5の始動時の電流値(約2.6アンペア)以上であれば増大量ΔIlaをゼロとし、始動時の電流値未満となったときに増大量ΔIlaを定格ランプ電流の電流値(0.4アンペア)と等しくし、それ以降、出力電流(ランプ電流)が定格ランプ電流に近付くにつれて増大量ΔIlaを徐々に低減し、出力電流が定格ランプ電流に達した後は増大量ΔIlaを固定すればよい。
また、図7(a)に示すように放電灯5の状態(輻射ノイズのレベル)と放電灯5の電極温度との間に相関関係があるので、従来周知の技術を利用して検出した放電灯5の電極温度に基づいて放電灯5の状態を判断し、図7(b)に示すように電極温度が相対的に低い第1のしきい値T1に達するまでは増大量ΔIlaをゼロとし、第1のしきい値T1に達してから第1のしきい値よりも高い第2のしきい値T2に至るまでの期間における増大量ΔIlaを安定点灯時における増大量ΔIlaよりも大きく且つ徐々に低減するようにすればよい。あるいは、放電灯5から発生する輻射ノイズをアンテナなどの検出手段を用いて直接検出し、検出したノイズレベルに応じて増大量ΔIlaを調整するようにしても構わない。
ところで、上述したように増大量ΔIlaをゼロから最大値(例えば、定格ランプ電流の電流値)まで一気に変化させると極性反転時に放電灯5のちらつき(フリッカ)が知覚されてしまう可能性がある。故に、図8に示すように輻射ノイズのレベルが低い期間においても増大量ΔIlaをゼロとしなければ、上述のような放電灯5のちらつきを抑えることができる。尚、この場合においても、放電灯5の放電開始時点からの経過時間が10〜50秒の期間や放電灯5が安定点灯している期間といった放電開始直後の10秒間よりも遙かに長い期間、つまり輻射ノイズの低減に対する寄与度が低い期間における増大量ΔIlaを低減することができる。但し、増大量ΔIlaをゼロから徐々に増大させることで放電灯5のちらつきを抑えるようにしても構わない。
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置は、実施形態1と共通の構成を有している。よって、実施形態1と共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
実施形態1においては、放電灯5の放電開始時点からの経過時間に対応した増大量ΔIlaを予め制御部6のメモリに記憶しておき、電力目標上昇部65がメモリに記憶されている増大量ΔIlaを読み出してそのまま出力電流目標値に加算する処理を行っていた(図1におけるステップS8,S9参照)。これに対して本実施形態は、放電灯5の放電開始時点からの経過時間に対応した増大率α(≧1)を制御部6のメモリに記憶しておき、電力目標上昇部65がメモリに記憶されている増大率αを読み出し、電流目標演算部61から出力される出力電流目標値に増大率αを乗算することで出力電流目標値を補正する処理を、図1のフローチャートにおけるステップS8,S9で行う点に特徴がある。尚、本実施形態における制御部6が行う処理は、上述したステップS8,S9の処理内容を除いて、図1に示した実施形態1と共通であるから、フローチャートの図示及び共通の処理内容の説明は省略する。
例えば、放電灯5の定格ランプ電流が0.4アンペア,定格ランプ電圧が85ボルトのHIDランプを例に挙げると、図9(a)に示すように放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までは増大率αを2とし、10秒〜50秒の期間では増大率αを2〜1.5まで直線的に減少させ、放電灯5が安定点灯状態となる50秒経過以降では増大率αを1.5に固定すればよい。あるいは、図9(b)に示すように出力電圧(ランプ電圧)が放電開始時のランプ電圧(約20ボルト)に達するまでは増大率αを2とし、放電開始時のランプ電圧に達してから定格ランプ電圧(85ボルト)に至るまでの期間における増大率αを2〜1.5まで直線的に減少させ、ランプ電圧が定格ランプ電圧に達した後は増大率αを1.5に固定すればよい。若しくは、図9(c)に示すように出力電流(ランプ電流)が放電灯5の始動時の電流値(約2.6アンペア)以上であれば増大率αを2とし、始動時の電流値から定格ランプ電流に低下するまでの期間における増大率αを2〜1.5まで直線的に減少させ、ランプ電流が定格ランプ電流に達した後は増大率αを1.5に固定すればよい。但し、放電灯5の放電開始直後の期間における増大率αを1、すなわち、増大量ΔIlaをゼロとしてもよいし、あるいは当該機関における増大率αを1から段階的に大きくしてもよい。
而して、本実施形態においても実施形態1と同様に、ストレスの低減によって回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができる。
ここで、実施形態1,2では電力変換部2の出力電流を極性反転部3による極性反転に同期して増大させる場合を例示しているが、出力電圧や出力電力を増大させる場合でも同様の効果を奏することは言うまでもない。
(実施形態3)
実施形態1,2の放電灯点灯装置では電力変換部2の出力電流を極性反転部3による極性反転に同期して増大させるときの増大量を調整していたが、本実施形態の放電灯点灯装置は、増大量を調整する代わりに極性反転時に出力電流を増大させる期間(時間)を調整する点に特徴がある。但し、本実施形態の回路構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
実施形態1では、制御部6の反転判断部64において、前回の反転命令出力時点からの経過時間が、次回の反転命令出力時点よりも200マイクロ秒前のタイミングから次回の反転命令出力時点から50マイクロ秒が経過するまでの期間内は増大量ΔIlaの加算を必要とし、当該期間外は増大量ΔIlaの加算を不要とする判断処理を行い、加算要と判断した場合に反転同期信号を出力し、加算不要と判断した場合に反転同期信号の出力を停止している。
これに対して本実施形態では、反転前において増大量ΔIlaの加算要否を判断するための判断基準となるタイミング(判断タイミング)を放電灯5の状態(輻射ノイズのレベル)に応じて調整している。例えば、放電灯5の輻射ノイズが図21に示すような特性を有している場合、図11(a)に示すように放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までは判断タイミングをゼロ(この場合、増大量ΔIlaの加算は実質的に行われない)とし、10秒〜50秒の期間では判断タイミングを100マイクロ秒から50マイクロ秒まで直線的に減少させ、放電灯5が安定点灯状態となる50秒経過以降では判断タイミングを50マイクロ秒に固定すればよい。あるいは、図11(b)に示すように出力電圧(ランプ電圧)が放電開始時のランプ電圧(約20ボルト)に達するまでは判断タイミングをゼロとし、放電開始時のランプ電圧に達してから定格ランプ電圧(85ボルト)に至るまでの期間では判断タイミングを100マイクロ秒から50マイクロ秒まで直線的に減少させ、ランプ電圧が定格ランプ電圧に達した後は判断タイミングを50マイクロ秒に固定すればよい。若しくは、図11(c)に示すように出力電流(ランプ電流)が放電灯5の始動時の電流値(約2.6アンペア)以上であれば判断タイミングをゼロとし、始動時の電流値未満となったときに判断タイミングを100マイクロ秒とし、それ以降、出力電流(ランプ電流)が定格ランプ電流に近付くにつれて判断タイミングを100マイクロ秒から50マイクロ秒まで徐々に低減し、出力電流が定格ランプ電流に達した後は判断タイミングを50マイクロ秒に固定すればよい。尚、極性反転後の判断タイミングについても同様に調整することができる。また、判断タイミングの値(時間)については、0〜200マイクロ秒に限定されるものではなく、反転周期の4分の1よりも小さい値(時間)とすることで増大量ΔIlaを加算しない期間に出力電流(ランプ電流)が過度に低下することを防ぐことが望ましい。
図10は本実施形態における制御部6の処理を説明するためのフローチャートである。但し、図10におけるステップS1〜S7,S8,S9〜S14,S16〜S18の処理は、図1(実施形態1)におけるステップS1〜S7,S9,S10〜S15,S16〜S18と各々共通であって、図10のフローチャートが実施形態1における図1のフローチャートと異なる点は、放電灯5の状態に応じて増大量ΔIlaを調整する処理(図1におけるステップS8)が無い点と、上述した判断タイミングの調整処理(図10におけるステップS15)をステップS13とステップS16の間で行う点である。
而して、本実施形態においては、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが相対的に小さい期間(放電灯5の放電開始時点から約10秒間)における増大量ΔIlaの加算期間をゼロとし、輻射ノイズのレベルが相対的に大きい期間(放電灯5の放電開始時点からの経過時間が10秒〜50秒までの期間)における増大量ΔIlaの加算期間を安定点灯時における加算期間よりも長く且つ徐々に短くするように制御部6が極性反転部3を制御している。これにより、出力電流(ランプ電流)が最も大きくなる放電開始直後には増大量ΔIlaの加算期間を短縮することで電力変換部2や極性反転部3などの回路部品に加わるストレスを低減するとともに、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが大きいときには増大量ΔIlaの加算期間を延長することで輻射ノイズを低減し且つノイズレベルに応じて増大量ΔIlaの加算期間を調整することができる。その結果、ストレスの低減によって回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができる。
ところで、上述したように増大量ΔIlaをゼロから最大値(例えば、定格ランプ電流の電流値)まで一気に変化させると極性反転時に放電灯5のちらつき(フリッカ)が知覚されてしまう可能性がある。故に、輻射ノイズのレベルが低い期間においても判断タイミングをゼロとせずに増大量ΔIlaを加算すれば、上述のような放電灯5のちらつきを抑えることができる。尚、この場合においても、放電灯5の放電開始時点からの経過時間が10〜50秒の期間や放電灯5が安定点灯している期間といった放電開始直後の10秒間よりも遙かに長い期間、つまり輻射ノイズの低減に対する寄与度が低い期間における増大量ΔIlaを低減することができる。但し、増大量ΔIlaをゼロから徐々に増大させることで放電灯5のちらつきを抑えるようにしても構わない。
また、本実施形態を実施形態1や実施形態2と組み合わせることで増大量ΔIlaを放電灯5の状態(輻射ノイズのレベル)に応じて調整すれば、ストレスの低減や放電灯5から生じる輻射ノイズの低減をさらに向上することができる。
(実施形態4)
実施形態1〜3の放電灯点灯装置では、スイッチング素子Q1を一定のスイッチング周波数でPWM制御することによって電力変換部2の出力調整を行っており、極性反転に同期した出力電流(ランプ電流)の一時的な増大もスイッチング素子Q1のオンデューティ比を高くすることで行っている。これに対して本実施形態の放電灯点灯装置は、基本的な出力調整は実施形態1〜3と同様にPWM制御で行い、極性反転に同期した出力電流(ランプ電流)の一時的な増大についてはスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を変化させることで行う点に特徴がある。但し、本実施形態の回路構成は、制御部6から電流目標上昇部65が削除され、反転判断部64から出力される反転同期信号によって誤差アンプ63が出力する出力制御信号の周波数を可変とする点を除いて実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して図示並びに説明を省略する。
実施形態1においては、電流目標上昇部65から出力される出力電流目標値と、電力変換部2の出力電流を検出して得られる出力電流検出値との差分に応じてオンデューティ比の調整された出力制御信号が誤差アンプ63から電力変換部2に出力される。これに対して本実施形態では、極性反転に同期して出力電流を一時的に増大させる際、前記差分に応じて周波数(スイッチング周波数)の調整された出力制御信号(但し、オンデューティ比は出力電流目標値に応じた値)が制御部6(誤差アンプ63)から電力変換部2に出力される。尚、オンデューティ比が固定された状態でスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を変化させた場合、スイッチング周波数を高くするに従って電力変換部2の出力も増大し、スイッチング周波数を低くするに従って電力変換部2の出力が減少することになる。
例えば、放電灯5の輻射ノイズが図21に示すような特性を有している場合、図12に示すように放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までは、出力制御信号の周波数(スイッチング素子Q1のスイッチング周波数)fを基本周波数(実施形態1〜3において固定された周波数であって、例えば、280キロヘルツ)に一致させ(この場合、出力電流の増大は実質的に行われない)、10秒〜50秒の期間では出力制御信号の周波数fを基本周波数よりも高い周波数範囲(例えば、500キロヘルツから300キロヘルツの範囲)において直線的に下降させ、放電灯5が安定点灯状態となる50秒経過以降では出力制御信号の周波数fを基本周波数よりも僅かに高い周波数(例えば、300キロヘルツ)に固定すればよい。
図13は本実施形態における制御部6の処理を説明するためのフローチャートである。但し、図13におけるステップS1〜S6,S7〜S13の処理は、図1(実施形態1)におけるステップS1〜S6,S10〜S16と各々共通であって、図13のフローチャートが実施形態1における図1のフローチャートと異なる点は、放電灯5の状態に応じて増大量ΔIlaを調整する処理(図1におけるステップS7〜S9)が無い点と、上述した出力制御信号の周波数fを調整する処理(図13におけるステップS13〜S16)を行う点である。
すなわち、反転判断部64にて極性反転に同期した出力電流(ランプ電流)の増大が必要か否かを判断し(ステップS13)、必要と判断すれば反転同期信号を出力し、不要と判断すれば反転同期信号の出力を停止する。誤差アンプ63では、図12に示すように放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までであれば周波数fを基本周波数(280キロヘルツ)に一致させた出力制御信号を電力変換部2に与え、10秒〜50秒の期間であれば周波数fを基本周波数よりも高い周波数範囲(例えば、500キロヘルツから300キロヘルツの範囲の値)に一致させた出力制御信号を電力変換部2に与え、50秒経過以降であれば周波数fを基本周波数よりも僅かに高い周波数(例えば、300キロヘルツ)に一致させた出力制御信号を電力変換部2に与える(図13におけるステップS13〜S16参照)。
而して、本実施形態においては、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが相対的に小さい期間(放電灯5の放電開始時点から約10秒間)における出力電流の増大量をゼロとし、輻射ノイズのレベルが相対的に大きい期間(放電灯5の放電開始時点からの経過時間が10秒〜50秒までの期間)における出力電流の増大量を安定点灯時における増大量よりも大きくするように制御部6が極性反転部3を制御している。これにより、出力電流(ランプ電流)が最も大きくなる放電開始直後には増大量を小さくすることで電力変換部2や極性反転部3などの回路部品に加わるストレスを低減するとともに、放電灯5から発生する輻射ノイズのレベルが大きいときには増大量を大きくすることで輻射ノイズを低減し且つノイズレベルに応じて増大量を調整することができる。その結果、ストレスの低減によって回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができる。尚、実施形態1における増大量ΔIlaの場合と同様に、放電灯5の放電開始時間からの経過時間ではなく、電力変換部2の出力電圧(ランプ電圧)や出力電流(ランプ電流)あるいは電極温度に応じて出力電流の増大量を調整するようにしても構わない。また、本実施形態における制御部6の動作を実施形態3における制御部6の動作と組み合わせることも可能である。
(実施形態5)
本実施形態の放電灯点灯装置の回路構成を図14に示す。但し、基本的な回路構成は実施形態1と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態1〜4においてはマイクロコンピュータを主構成要素とする制御部6からPWM信号(出力制御信号)を出力し、当該PWM信号によって電力変換部2のスイッチング素子Q1を直接制御(駆動)している。ここで、電力変換部2の出力を細かく調整しようとした場合、PWM信号の分解能を高くする必要があるが、そのためにはビット数の大きい高性能なマイクロコンピュータを用いなければならず、コストアップを招いてしまう。
そこで本実施形態では、制御部6が出力する出力制御信号を、電流目標上昇部65から出力される出力電流目標値と電力変換部2の出力電流を検出して得られる出力電流検出値との差分に応じたレベル(アナログ値)を有する電圧信号とし、スイッチング素子Q1に流れる電流を一次側電流検出回路7で検出した検出値(鋸歯状に周期的に変化する検出値)Vxと出力制御信号のアナログ値を比較器CPで比較することによって、前記差分に応じてオンデューティ比が変化するパルス信号(PWM信号)を比較器CPからスイッチング素子Q1のゲートに与えている。ここで、性能の低いマイクロコンピュータで制御部6を構成した場合でも、例えば、マイクロコンピュータの複数の出力ポートから出力するそれぞれのパルス信号(PWM信号)に異なるビットを受け持たせて加重加算し、その加算値をD/A変換することによって高分解能のアナログ値を得ることができる。
而して、出力制御信号のレベル(アナログ値)が大きくなるほど、比較器CPから出力されるPWM信号のオンデューティ比が大きくなって電力変換部2の出力が増大し、反対に出力制御信号のレベル(アナログ値)が小さくなるほど、比較器CPから出力されるPWM信号のオンデューティ比が小さくなって電力変換部2の出力が減少するので、極性反転部3の極性反転に同期して制御部6から出力する出力制御信号のアナログ値を一時的に増加させることによって電力変換部2の出力電流を極性反転に同期して一時的に増大させるとともに、アナログ値のレベル増加量ΔVaに応じて増大量ΔIlaを調整することができる。
ここで、出力電流の増大量ΔIlaは、実施形態1と同様に放電灯5の放電開始時点からの経過時間(図3参照)や、出力電圧(図5参照)あるいは出力電流(図6参照)の他、図15(a)に示すように出力電力(ランプ電力)に応じて調整すればよい。すなわち、自動車用の前照灯においては点灯時における光束の立ち上がりを早くする必要があるため、放電灯点灯装置においては、図15(b)に示すように放電灯5の放電開始直後における出力電力目標値を定格ランプ電力(例えば、35ワット)の2倍以上の値(例えば、75ワット)に設定することで放電灯5に多くのランプ電流を流して光束を速やかに立ち上げ、放電灯5の放電開始時点から時間が経過するにつれて徐々に出力電力目標値を定格ランプ電力に近付けるような制御が行われている。したがって、放電灯5が図21に示す特性を有する場合、図15(a)に示すように出力電力目標値が光束立ち上げ時の75ワットである間、つまり、放電灯5の放電開始時点(0秒)から10秒経過時点までは出力制御信号のレベル増加量ΔVaをゼロとし、出力電力目標値が光束立ち上げ時の75ワットから定格値の35ワットに徐々に低下する期間、つまり、10秒〜50秒の期間ではレベル増加量ΔVaを所定範囲(例えば、0.4ボルト〜0.2ボルト)で直線的に減少させ、放電灯5が安定点灯状態となる50秒経過以降ではレベル増加量ΔVaを前記所定範囲の下限値(例えば、0.2ボルト)に固定すればよい。
而して、本実施形態においても実施形態1と同様に、ストレスの低減によって回路規模の増大やコストアップを抑えながら放電灯5から生じる輻射ノイズを低減することができる。尚、実施形態1における増大量ΔIlaの場合と同様に、放電灯5の放電開始時間からの経過時間ではなく、電力変換部2の出力電圧(ランプ電圧)や出力電流(ランプ電流)あるいは電極温度に応じて出力電流の増大量(出力制御信号のレベル増加量ΔVa)を調整するようにしても構わない。また、本実施形態における制御部6の動作を実施形態3における制御部6の動作と組み合わせることも可能である。
(実施形態6)
ところで、直流電源1の電源電圧が瞬間的に大きく低下した後に極めて短い時間(例えば、数百ミリ秒)で元の電源電圧に復帰するような事態(以下、瞬時低電という。)が生じた場合などには、放電灯5の電極温度や発光管内の温度がある程度高い温度に維持されているので、電極温度や発光管内の温度が雰囲気温度(常温)程度まで低下している状態から放電灯5を始動する(以下、「初始動」と呼ぶ。)場合と比較して、放電灯5が放電を開始して安定点灯状態に移行するまでに供給すべき電力が少なくて済む。一方、実施形態1〜5で説明した制御部6の動作は初始動時を想定しており、上述のように消灯から短時間で再度点灯する(以下、「再始動」と呼ぶ。)時に初始動時と同じ動作を行った場合、放電灯5に過剰な電力が供給されて放電灯5の寿命が短くなってしまう虞がある。
そこで本実施形態の放電灯点灯装置では、制御部6が電力変換部2の出力電流を極性反転に同期して一時的に増大させる際、再始動時には初始動時と比較して出力電流の増大量を小さくするようにして、過大な電力が放電灯5に供給されることに起因した短寿命化を防止している。
そのために本実施形態では、図16に示すように制御電源Vccから電流制限用の抵抗Rc及びスイッチSWを介してコンデンサCtと放電用の抵抗Rdの並列回路を接続してなるタイマ回路を制御部6に設けることで放電灯5の温度状態を推定している。このタイマ回路は、制御部6の主構成要素であるマイクロコンピュータMCによってスイッチSWがオン・オフされるとともに、抵抗RcとスイッチSWの接続点がマイクロコンピュータMCの入力ポートに接続されている。放電灯5が点灯している間はマイクロコンピュータMCによってスイッチSWがオンされるために制御電源VccによってコンデンサCが充電され、放電灯5が消灯するとマイクロコンピュータMCによってスイッチSWがオフされることでコンデンサCtの充電電荷が抵抗Rdを介して放電される。つまり、マイクロコンピュータMCの入力ポートに取り込まれる電圧(コンデンサCtの両端電圧)は、放電灯5の点灯時には制御電源Vccの電圧(5ボルト)にほぼ等しくなり、放電灯5の消灯後は消灯時点からの経過時間に応じて徐々に低下することになるので、入力ポートに取り込まれる電圧(以下、「タイマ電圧」と呼ぶ。)が最大値(制御電源電圧Vcc=5ボルト)に近いほど消灯から再始動までの時間が短いために電極温度や発光管内の温度が高い温度に維持されていると推定できる。
そこで、図18(a)に示すように初始動時における放電灯5の放電開始時点からの経過時間(横軸)に対応した出力電力目標値が制御部6の電力目標記憶部62に記憶されている場合において、図17に示すようにタイマ電圧(横軸)と前記経過時間(縦軸)との対応関係を制御部6のメモリに格納しておき、制御部6の制御をタイマ電圧に応じた経過時間から開始すれば、再始動時に過大な電力が放電灯5に供給されることがなくなり、その結果、放電灯5の短寿命が防止することができる。
例えば、放電灯5の放電開始時点におけるタイマ電圧が1ボルトであった場合、制御部6ではメモリに記憶した対応関係(図17参照)に基づいて経過時間を30秒と判断する。そして、電流目標演算部61は電力目標記憶部62に記憶されている出力電力目標値のうちから経過時間が30秒のときの出力電力目標値を読み込み、当該出力電力目標値から出力電流目標値を演算する。故に、電力変換部2の出力電流が、実際の経過時間よりも長い時間が経過したときの出力電流目標値に一致するように調整されるため(図18(b)参照)、電極温度や発光管内の温度が十分に高い状態にある放電灯5に過大な電力が供給されることがないものである。この場合、極性反転に同期して出力電流が増大されるときの増大量ΔIlaも低減される。
尚、実施形態1〜6では直流電源1を自動車に搭載されるバッテリとしているが、商用交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータなどを直流電源1としても構わない。
(実施形態7)
図19は本発明に係る車両(自動車)AM並びに前照灯HLを示す概略構成図である。
前照灯HLは、実施形態1〜6の何れかの放電灯点灯装置と、HIDランプからなる放電灯5と、放電灯5が着脱自在に装着されるとともに放電灯点灯装置と放電灯5を電気的に接続するソケット(図示せず)と、ソケットを保持する保持体(図示せず)や反射鏡(図示せず)、透明なカバー等を有する灯具(図示せず)とを有し、自動車AMのフロントにおける左右両端部に配設されている。
また、本実施形態の自動車AMにおいては、ECU(電子制御ユニット)100に制御されて、ステアリングの操作向き及び操作角度に応じて前照灯HLの配光特性を変化させる前照灯制御装置CTが搭載されている。尚、このような前照灯制御装置CTについては従来周知であるから詳細な構成の図示並びに説明は省略する。
そして、本実施形態の前照灯HL及び車両(自動車AM)においては、実施形態1〜6の放電灯点灯装置を用いていることによって安全性の向上を図ることができる。
本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態1における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。 同上の回路構成図である。 同上の動作説明図である。 同上における電力変換部の出力電流の波形図である。 同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。 (a),(b)は同上の動作説明図である。 同上の動作説明図である。 (a)〜(c)は本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態2の動作説明図である。 本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態3における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。 (a)〜(c)は同上の動作説明図である。 本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態4の動作説明図である。 同上における制御部の動作を説明するためのフローチャートである。 本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態5の回路構成図である。 (a),(b)は同上の動作説明図である。 本発明に係る放電灯点灯装置の実施形態6の要部回路構成図である。 同上の動作説明図である。 (a),(b)は同上の動作説明図である。 本発明に係る前照灯及び車両の実施形態7を示す一部省略した構成図である。 従来の放電灯点灯装置の出力特性を示す波形図である。 従来の放電灯点灯装置によって放電灯を点灯させた場合に放電灯から発生する輻射ノイズの波形図である。
符号の説明
1 直流電源
2 電力変換部
3 極性反転部
4 イグナイタ部
5 放電灯
6 制御部

Claims (13)

  1. 直流電源から供給される直流電力を所望の直流電力に変換する電力変換部と、電力変換部から出力される直流出力の極性を低周波数で反転させる極性反転部と、電力変換部を制御して電力変換部から出力される直流電力を調整する制御部とを備え、極性反転部で極性反転された直流電力を放電灯に供給することで放電灯を矩形波点灯させるとともに、極性反転部による極性反転の前若しくは後の少なくとも何れか一方において放電灯に供給する直流出力を一時的に増大させるように制御部が電力変換部を制御する放電灯点灯装置において、
    制御部は、放電灯が放電開始してから安定点灯に至るまでの始動期間内において当該放電開始時点から所定時間が経過するまでの期間に、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して電力変換部から出力される直流出力を、放電灯が安定点灯しているときに極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して電力変換部から出力される直流出力よりも大きくすることを特徴とする放電灯点灯装置。
  2. 前記所定時間は、放電開始後に放電灯の電極温度が安定するまでの時間であることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
  3. 制御部は、電力変換部の直流出力が所定の出力目標値と一致するように電力変換部を制御してなり、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる際、前記出力目標値に所定の増大量を加算することを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
  4. 制御部は、電力変換部の直流出力が所定の出力目標値と一致するように電力変換部を制御してなり、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる際、前記出力目標値に1よりも大きな所定の増大率を乗算することを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
  5. 制御部は、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に直流出力を増大させる時間を、前記所定時間が経過した後の期間に比べて前記所定時間が経過するまでの期間において長くすることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
  6. 制御部は、放電開始時点のランプ電圧が定格ランプ電圧よりも低い期間における直流出力を定格ランプ電力の2倍以上とし且つ前記始動期間内において直流出力を定格ランプ電力まで徐々に減少させるとともに、直流出力が定格ランプ電力よりも大きい場合においては、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を当該直流出力が大きいときほど大きくなるように電力変換部を制御することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  7. 制御部は、電力変換部の出力電圧が低いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  8. 制御部は、電力変換部の出力電流が低いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  9. 制御部は、放電灯の放電開始時点からの経過時間が短いときほど、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期して一時的に増大させる直流出力の増大量を大きくすることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  10. 制御部は、放電灯を点灯する際に当該放電灯の温度状態を推定する機能を有し、放電灯の温度が高いときほど、前記所定時間を短くすることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  11. 制御部は、放電灯が放電を開始した直後から前記所定時間よりも短い時間においては、極性反転の前又は後の少なくとも何れか一方の期間に同期した直流出力の一時的な増大を行わないことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
  12. 請求項1〜11の何れかの放電灯点灯装置と、放電灯と、放電灯と放電灯点灯装置を電気的に接続するソケットと、灯具とを有することを特徴とする前照灯。
  13. 請求項12の前照灯を備えたことを特徴とする車両。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012119061A (ja) * 2010-11-29 2012-06-21 Ushio Inc 高圧放電ランプ点灯装置
JP2015216062A (ja) * 2014-05-13 2015-12-03 岩崎電気株式会社 放電灯点灯装置及び照明装置

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