JP2010048660A - 励起光強度最適化方法及び蛍光相互相関分光装置用プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】光学系を変えずに、FCCSにおける分子間相互作用解析の精度を向上させる方法及び該方法に用いられるプログラムの提供。
【解決手段】互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法における励起光強度を最適化する方法において、(a)第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する工程と、(b)第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する工程と、(c)工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、(d)工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程とを有する励起光強度最適化方法。
【選択図】なし
【解決手段】互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法における励起光強度を最適化する方法において、(a)第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する工程と、(b)第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する工程と、(c)工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、(d)工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程とを有する励起光強度最適化方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法における励起光強度を最適化する方法、及び、該方法のための蛍光相互相関分光装置用プログラムに関する。
近年の光計測技術の発展は目覚ましく、蛍光一分子からの蛍光を測定・解析することができる一分子蛍光分析技術が多くの分野で応用されつつある。このような一分子蛍光分析技術には、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)や蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross Correlation Spectroscopy:FCCS)等がある。
一分子蛍光分析技術は、レーザ共焦点顕微鏡の光学系と、フォトンカウンティング(1光子検出)可能な超高感度の光検出装置とを用いて、試料溶液中の微小空間内の蛍光一分子レベルの蛍光シグナルを測定し、その蛍光シグナルの揺らぎや強度を、種々の方法により解析することにより、該蛍光分子の大きさや明るさ等の情報を得ることができる。このため、生物科学、医学、薬学等の分野では、一分子蛍光分析技術が、生体分子等の状態や運動の検出・観測に応用されており、例えば、タンパク質と核酸の結合反応や抗原抗体反応を解明する試みがなされている。
FCSは、検出された蛍光シグナルから、蛍光分子の並進拡散時間を求めることができる解析法である。並進拡散時間は分子の大きさによって異なるため、分子の相互作用や分解、凝集等の大きさの変化をモニターするために主に用いられる解析法である。例えば、分子間相互作用により複数の分子が結合している反応体は、相互作用していない分子よりも大きくなるため、該反応体の並進拡散時間はより長くなる。このため、並進拡散時間を求めることにより、分子間相互作用の有無を判別することができる。このように、FCSは、相互作用前後での分子サイズの変化が大きい場合、例えば約3倍以上あるような場合の解析に好適である。
一方、FCCSは、それぞれ分光特性の異なる蛍光物質を用いて標識した分子同士の相互作用を解析する方法である。つまり、試料に対し、各蛍光物質に対応した励起光を同時に照射し、それぞれの分子から検出された蛍光シグナルの相互相関を解析することにより、異なる分子の動きに同時性があるかどうかを確認することができる。このように、FCCSは、FCSとは異なり、相互作用前後での分子サイズの変化に全く依存せずに分子間の相互作用を解析することが可能である。このため、相互作用前後での分子サイズの変化が小さい場合であっても好適に分子間相互作用を解析することができる。実際に、相互作用前後での分子サイズの変化が2倍程度しかないような場合にもFCCSによる解析は可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
シュウィル(Schwille)、外2名、バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)、第72巻、第1878〜1886ページ参照。
シュウィル(Schwille)、外2名、バイオフィジカル・ジャーナル(Biophysical Journal)、第72巻、第1878〜1886ページ参照。
上述するように、一分子蛍光分析技術では、試料溶液中の微小空間内の蛍光シグナルを検出する。このため、FCCSのように、波長の異なる励起光を使用する場合には、微小空間である一の観測領域に、両方の波長の励起光を照射する必要がある。しかしながら、実際には、使用する対物レンズ等の軸上色収差により、それぞれの波長の励起光の共焦点領域は完全には一致しない。このため、FCCSでは、たとえ異なる蛍光物質を用いて標識した分子同士が100%結合しているサンプルを測定した場合であっても、算出される両分子の結合率は50〜60%程度と、本来よりも低く算出されてしまい、目的の分子間相互作用の検出感度や精度が低下してしまうという重大な課題がある。
本発明は、光学系を変えることなく、FCCSにおける分子間相互作用解析の精度を向上するための方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、各励起光のレーザ強度の組み合わせを適宜調整することにより、両波長のそれぞれの共焦点領域が重なる割合を大きくし得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法における励起光強度を最適化する方法において、(a)第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する工程と、(b)前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する工程と、(c)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、下記工程(c−1)〜(c−3)をそれぞれ行い、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、(d)前記工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、を有することを特徴とする励起光強度最適化方法を提供するものである;(c−1)前記工程(a)において調製された試料に、前記工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した前記第1励起光と前記第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する工程、(c−2)前記工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する工程、(c−3)前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出し、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程。
また、本発明は、前記工程(c)が、(c’)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、下記工程(c−1)〜(c−4)をそれぞれ行い、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、であり、前記工程(d)が、
(d’)前記工程(c’)において算出したみかけの結合率及び一分子当たりの明るさに基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、
であることを特徴とする前記記載の励起光強度最適化方法を提供するものである;(c−1)前記工程(a)において調製された試料に、前記工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した前記第1励起光と前記第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する工程、(c−2)前記工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する工程、(c−3)前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出し、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程、(c−4)前記工程(c−3)の後、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ、及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを、それぞれ算出する工程。
また、本発明は、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように、試料中に照射可能であり、各励起光の励起光強度を調整する励起光調整部、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出部とを有する共焦点光学系、並びに、第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせデータ、及び前記第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と前記第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とのみかけの結合率データを記憶する記憶部、を有する蛍光相互相関分光装置のためのプログラムであって、前記記憶部に、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の2以上の組み合わせデータを記憶する組み合わせデータ記憶手段、前記記憶部に記憶された組み合わせデータの中に、対応するみかけの結合率データが記憶されていない組み合わせがある場合には、記憶された組み合わせデータの中から、対応するみかけの結合率データが記憶されていない1の組み合わせデータを選択し、前記第1励起光及び前記第2励起光の励起光強度を、この選択された組み合わせデータの励起光強度となるように、前記励起光調整部を制御する励起光強度制御手段、前記共焦点光学系により、前記励起光強度制御手段により制御された励起光強度である前記第1励起光及び前記第2励起光を、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域とが重複領域を有するように、同時に前記試料に照射させた後、前記蛍光検出部により、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出手段、前記蛍光検出手段において検出された第1蛍光の蛍光強度及び第2蛍光の蛍光強度の、それぞれの自己相関関数及び相互相関関数を求める相関解析手段、前記相関解析手段により求められた相関関数から、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出する平均分子数算出手段、前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を用いて、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する結合率算出手段、前記結合率算出手段により算出されたみかけの結合率を、前記記憶部に、記憶された組み合わせデータに対応させて記憶する結合率記憶手段、前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、全てのみかけの結合率データの中から最大値を決定する最大結合率決定手段、前記最大結合率決定手段において決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、最適値とする励起光強度最適化手段、として機能させることを特徴とする蛍光相互相関分光装置用プログラムを提供するものである。
また、本発明は、前記記憶部に、一分子当たりの明るさの下限値を記憶する明るさ下限値記憶手段、前記相関解析手段において求められた相関関数と、前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)及び第2共焦点領域中の平均分子数(N2)とを用いて、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを算出する明るさ算出手段、前記明るさ算出手段により算出された一分子当たりの明るさを、前記記憶部に、記憶された組み合わせデータに対応させて記憶する明るさ記憶手段、としてさらに機能させるものであり、前記最大結合率決定手段が、前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、対応する一分子当たりの明るさが、前記記憶部に記憶された下限値よりも大きい組み合わせデータを選抜し、これらの選抜された組み合わせデータに対応するみかけの結合率データの中から最大値を決定する手段であること、を特徴とする前記記載の蛍光相互相関分光装置用プログラムを提供するものである。
また、本発明は、前記工程(c)が、(c’)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、下記工程(c−1)〜(c−4)をそれぞれ行い、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、であり、前記工程(d)が、
(d’)前記工程(c’)において算出したみかけの結合率及び一分子当たりの明るさに基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、
であることを特徴とする前記記載の励起光強度最適化方法を提供するものである;(c−1)前記工程(a)において調製された試料に、前記工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した前記第1励起光と前記第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する工程、(c−2)前記工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する工程、(c−3)前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出し、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程、(c−4)前記工程(c−3)の後、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ、及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを、それぞれ算出する工程。
また、本発明は、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように、試料中に照射可能であり、各励起光の励起光強度を調整する励起光調整部、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出部とを有する共焦点光学系、並びに、第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせデータ、及び前記第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と前記第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とのみかけの結合率データを記憶する記憶部、を有する蛍光相互相関分光装置のためのプログラムであって、前記記憶部に、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の2以上の組み合わせデータを記憶する組み合わせデータ記憶手段、前記記憶部に記憶された組み合わせデータの中に、対応するみかけの結合率データが記憶されていない組み合わせがある場合には、記憶された組み合わせデータの中から、対応するみかけの結合率データが記憶されていない1の組み合わせデータを選択し、前記第1励起光及び前記第2励起光の励起光強度を、この選択された組み合わせデータの励起光強度となるように、前記励起光調整部を制御する励起光強度制御手段、前記共焦点光学系により、前記励起光強度制御手段により制御された励起光強度である前記第1励起光及び前記第2励起光を、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域とが重複領域を有するように、同時に前記試料に照射させた後、前記蛍光検出部により、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出手段、前記蛍光検出手段において検出された第1蛍光の蛍光強度及び第2蛍光の蛍光強度の、それぞれの自己相関関数及び相互相関関数を求める相関解析手段、前記相関解析手段により求められた相関関数から、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出する平均分子数算出手段、前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を用いて、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する結合率算出手段、前記結合率算出手段により算出されたみかけの結合率を、前記記憶部に、記憶された組み合わせデータに対応させて記憶する結合率記憶手段、前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、全てのみかけの結合率データの中から最大値を決定する最大結合率決定手段、前記最大結合率決定手段において決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、最適値とする励起光強度最適化手段、として機能させることを特徴とする蛍光相互相関分光装置用プログラムを提供するものである。
また、本発明は、前記記憶部に、一分子当たりの明るさの下限値を記憶する明るさ下限値記憶手段、前記相関解析手段において求められた相関関数と、前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)及び第2共焦点領域中の平均分子数(N2)とを用いて、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを算出する明るさ算出手段、前記明るさ算出手段により算出された一分子当たりの明るさを、前記記憶部に、記憶された組み合わせデータに対応させて記憶する明るさ記憶手段、としてさらに機能させるものであり、前記最大結合率決定手段が、前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、対応する一分子当たりの明るさが、前記記憶部に記憶された下限値よりも大きい組み合わせデータを選抜し、これらの選抜された組み合わせデータに対応するみかけの結合率データの中から最大値を決定する手段であること、を特徴とする前記記載の蛍光相互相関分光装置用プログラムを提供するものである。
本発明の励起光強度最適化方法を用いることにより、光学系を変更することなく、FCCSに用いられる互いに波長の異なる2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化することができる。このため、本発明の励起光強度最適化方法により最適化された組み合わせの励起光強度によりFCCSを行うことにより、目的の分子間相互作用を正確かつ高感度で検出することが可能となる。
また、本発明の蛍光相互相関分光装置用プログラムを用いることにより、FCCSに用いられる励起光の励起光強度を簡便に最適化することができる。
また、本発明の蛍光相互相関分光装置用プログラムを用いることにより、FCCSに用いられる励起光の励起光強度を簡便に最適化することができる。
本発明は、分子間相互作用の解析精度を向上させるために、励起光強度を最適化する方法に係る発明である。励起光強度を最適化することにより、光学系を変更することなく、分子間相互作用の解析精度を向上させることができる理由は明らかではないが、次のように推察される。
図1は、FCCSに用いられる共焦点光学顕微鏡において、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光を同時に照射した場合の、対物レンズ等の軸上色収差により生じる共焦点領域のズレを示した概念図である。図中、「V1」が第1励起光による第1共焦点領域であり、「V2」が第2励起光による第2共焦点領域であり、「V12」が第1励起光による第1共焦点領域と第2励起光による第2共焦点領域との重複領域である。励起光強度を変更することにより、共焦点領域の位置や広さを若干変動させることができるため、第1励起光と第2励起光のそれぞれの強度を調整することにより、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレを小さくし、重複領域を広げることができるためと推察される。
図1は、FCCSに用いられる共焦点光学顕微鏡において、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光を同時に照射した場合の、対物レンズ等の軸上色収差により生じる共焦点領域のズレを示した概念図である。図中、「V1」が第1励起光による第1共焦点領域であり、「V2」が第2励起光による第2共焦点領域であり、「V12」が第1励起光による第1共焦点領域と第2励起光による第2共焦点領域との重複領域である。励起光強度を変更することにより、共焦点領域の位置や広さを若干変動させることができるため、第1励起光と第2励起光のそれぞれの強度を調整することにより、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレを小さくし、重複領域を広げることができるためと推察される。
本発明の励起光強度最適化方法は、互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法(FCCS)における励起光強度を最適化する方法において、(a)第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する工程と、(b)前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する工程と、(c)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせにおける、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、(d)前記工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、前記第1の励起光と前記第2の励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、を有するものである。
図2は、本発明の励起光強度最適化方法の一態様における工程(c)及び(d)のフローチャートである。図2中、左列はみかけの結合率のみから励起光強度を最適化する場合、右列はみかけの結合率に加えて、一分子当たりの明るさを考慮して励起光強度を最適化する場合である。以下、各工程について説明する。
図2は、本発明の励起光強度最適化方法の一態様における工程(c)及び(d)のフローチャートである。図2中、左列はみかけの結合率のみから励起光強度を最適化する場合、右列はみかけの結合率に加えて、一分子当たりの明るさを考慮して励起光強度を最適化する場合である。以下、各工程について説明する。
まず、工程(a)として、第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する。蛍光標識に用いられる蛍光物質としては、例えば、各種類の分子を蛍光標識する場合に通常用いられる蛍光物質を用いることができる。該蛍光物質として、例えば、TAMRA、フルオレセイン、ローダミングリーン、NBD、TMR(テトラメチルローダミン)、EVOblue(登録商標)シリーズ(メルクバイオサイエンス社製)、Alexa Fluor(登録商標)dyeシリーズ(インビトロジェン社製)、Cy dyeシリーズ(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、ATTO dyeシリーズ(ATTO−TEC社製)等がある。長時間安定して検出できることから、TAMRA、ローダミングリーン、EVOblue(登録商標)50、ATTO633等の一般的に退色しにくい蛍光物質であることがより好ましい。
第1蛍光物質と第2蛍光物質は、互いに分光特性が異なる、すなわち、異なる波長の励起光により異なる波長の蛍光を発する蛍光物質の組み合わせであればよく、上記で例示した蛍光物質の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、488nmの励起光により蛍光を発し得るローダミングリーン、Alexa Fluor(登録商標)488等を第1蛍光物質とし、633nmの励起光により蛍光を発し得るEVOblue(登録商標)50、Alexa Fluor(登録商標)647等を第2蛍光物質とすることができる。
本発明において用いられる標的分子は、蛍光物質を用いて標識し得る分子であって、FCCS解析に供され得る分子であれば、特に限定されるものではない。例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、低分子化合物等を用いることができ、該標的分子を蛍光物質により修飾することにより、本発明において用いられる第1標的分子及び第2標的分子を得ることができる。
標的分子を蛍光物質により標識する方法としては、特に限定されるものではなく、蛍光物質を用いて修飾する場合に通常用いられている方法により行うことができる。例えば、標的分子として、蛍光物質により修飾された核酸を用いる場合には、(i)光やプラチナを用いて、核酸の塩基に蛍光物質を共有結合させる方法、(ii)1種類の標的核酸に対して、それぞれ異なる蛍光物質で標識された2種類のプライマーを用いてPCRを行い、両末端に蛍光物質が結合したPCR産物を得る方法、(iii)蛍光物質を結合させたヌクレオチドを用いて、PCR等の核酸増幅反応を行う方法、(iv)ターミナルデオキシジルトランスフェラーゼを用いて、蛍光物質を結合させたヌクレオチドを核酸の3’末端にテーリングする方法等がある。また、標的分子として、蛍光物質により修飾されたタンパク質やペプチドを用いる場合には、例えば、水溶性カルボジイミドでカルボン酸同士を結合させるEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル) −カルボジイミド塩酸塩)法や、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)とNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)とを予め混合してカルボン酸とアミノ基とを結合させる方法等がある。
このようにして調製された標的分子を、適当な溶媒に溶解させたものを、本発明においてFCCSに供される試料とすることができる。該溶媒は、FCCSにおいて測定可能な溶媒であれば特に限定されるものではないが、バッファーであることが好ましい。蛍光物質の中には、pHの影響を受けやすいものもあるためである。該バッファーとして、例えば、リン酸バッファー、トリスバッファー、HEPESバッファー等が挙げられる。
本発明において用いられる第1標的分子及び第2標的分子は、実際に相互作用を検出する対象である分子であってもよく、励起光強度最適化のための分子であってもよい。励起光強度最適化のための分子としては、結合率が高いことが予め判明している組み合わせの2種類の分子、好ましくは結合率が100%である組み合わせの2種類の分子を、それぞれ互いに分光特性の異なる蛍光物質により標識したものを用いることができる。その他、第1標的分子と第2標的分子とは一の分子であってもよく、具体的には、第1蛍光物質と第2蛍光物質の両方が結合している分子を用いてもよい。
例えば、第1蛍光物質と第2蛍光物質の両方が結合している分子を標的分子として用いた場合や、結合率がほぼ100%である第1標的分子及び第2標的分子を用いた場合には、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレがない理想的な条件下でFCCSにより解析すると、第1励起光により検出された蛍光分子数と、第2励起光により検出された蛍光分子数は一致することが期待できる。
例えば、第1蛍光物質と第2蛍光物質の両方が結合している分子を標的分子として用いた場合や、結合率がほぼ100%である第1標的分子及び第2標的分子を用いた場合には、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレがない理想的な条件下でFCCSにより解析すると、第1励起光により検出された蛍光分子数と、第2励起光により検出された蛍光分子数は一致することが期待できる。
FCCSを行った場合の、第1標的分子と第2標的分子のみかけの結合率(第1励起光と第2励起光の少なくとも一方により検出された標的分子全体に対する、第1励起光と第2励起光の両方により検出された標的分子の割合、以下、単に「みかけの結合率」ということがある。)は、第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域の広さの指標とすることができる。例えば、みかけの結合率が十分に大きい場合には、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレが小さくて重複領域が広く、このような測定条件でFCCSによる解析を行うことにより、相互作用の解析精度を向上させることができる。一方、みかけの結合率が小さい場合には、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレが大きく、このような測定条件では、目的の分子間相互作用を十分に検出し解析することが困難であると判断できる。
次に、工程(b)として、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する。この決定された組み合わせの、全ての組み合わせの励起光強度において、以下の工程(c)においてそれぞれFCCSを行い、算出されたみかけの結合率を比較検討する。これにより、第1蛍光物質を用いて標識された分子と第2蛍光物質を用いて標識された分子との分子間相互作用を、第1励起光と第2励起光を用いたFCCSにより解析する場合に最適な第1励起光の励起光強度と第2励起光の励起光強度を決定することができる。
励起光強度の上限値及び下限値、並びにその組み合わせは、使用する共焦点光学顕微鏡の光学系の仕様、励起光の波長や光源の種類、FCCS装置の機能、検出対象である蛍光物質の種類等を考慮して、適宜決定することができる。励起光強度が小さすぎる場合には、測定される標的分子の一分子当たりの明るさが暗くなりすぎ、FCCS解析における精度が低下するおそれがある。逆に、励起光強度が大きすぎる場合には、標的分子の蛍光が退色しやすく、やはり、FCCS解析の精度に影響を及ぼすおそれがある。より具体的には、各励起光の励起光強度を、10〜300μW、好ましくは25〜300μWの範囲内で複数の測定点を決定し、各波長の測定点を総当りで組み合わせることにより、第1励起光と第2励起光の励起光強度の組み合わせを決定することができる。なお、励起光強度の測定点の範囲は、第1励起光と第2励起光において同じ範囲であってもよく、異なる範囲であってもよい。例えば、第1励起光と第2励起光をいずれも25〜300μWの範囲内で測定点を決定してもよく、第1励起光を25〜300μWの範囲内で決定し、第2励起光を10〜200μWの範囲内で決定してもよい。なお、第1蛍光物質や第2蛍光物質として、退色しやすい蛍光物質を用いる場合には、励起光強度を比較的小さい範囲で測定点を決定することが好ましい。
工程(b)において、組み合わせと共に、各組み合わせの工程(c)において測定する順番を決定してもよい。例えば、各組み合わせをランダムに測定してもよく、一方の励起光の励起光強度を一の測定点に固定し、他方の励起光の励起光強度を順次変更して全ての測定点を測定した後、固定していた励起光の励起光強度を他の測定点に固定し、同様に測定していくこともできる。なお、複数の組み合わせに係る測定を、一の試料を用いて行う場合には、励起光強度が小さい組み合わせから先に行うことが好ましい。励起光強度が小さい組み合わせから先に行うことにより、複数回励起光を照射することによる、試料中の標的分子中の蛍光物質に対する影響をより低く抑えることができるためである。
次に、工程(c)として、工程(b)において決定した全ての組み合わせにおける、第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を算出する。励起光強度を工程(b)において決定した組み合わせの強度とした測定条件とした以外は、常法によりFCCSを行い、みかけの結合率を算出する。具体的には、工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、以下の(c−1)〜(c−3)工程を行う。以下、各工程について説明する。
まず、工程(c−1)として、工程(a)において調製された試料に、工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した第1励起光と第2励起光とを、第1励起光による第1共焦点領域と第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する。次に、工程(c−2)として、工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する。第1励起光が照射されることにより、試料中の第1共焦点領域に存在する第1標的分子中の第1蛍光物質から蛍光(第1蛍光)が発生する。一方で、第2励起光が照射されることにより、試料中の第2共焦点領域に存在する第2標的分子中の第2蛍光物質から蛍光(第2蛍光)が発生する。これらの発生した第1蛍光及び第2蛍光を、それぞれ別個に検出して得られた蛍光強度のデータに基づき、工程(c−3)として、FCCS解析を行い、みかけの結合率を算出する。
具体的には、工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出する。
一般的に、共焦点領域を縦長の回転楕円体とした場合に、単一の蛍光物質で標識された蛍光分子から検出された蛍光強度信号からは、下記式(1)のような自己相関カーブG(t)を得ることができる。式(1)中、Nは共焦点領域中の平均分子数を、tDは分子の拡散時間を、Wは共焦点領域の横方向の半径を、Zは共焦点領域の縦方向の半径を、それぞれ示している。平均分子数Nは、式(2)で表される自己相関カーブの縦軸切片(t=0)から算出することができる。
FCCSによる解析においては、下記式(3)及び式(4)に示すように、第1蛍光の蛍光強度の自己相関カーブG1(t)の縦軸切片(t=0)から第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を、第2蛍光の蛍光強度の自己相関カーブG2(t)の縦軸切片(t=0)から第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を、それぞれ算出することができる。
一方、下記式(5)に示すように、第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関カーブG12(t)の縦軸切片(t=0)、第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、及び第2共焦点領域中の平均分子数(N2)から、第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出することができる。
このようにして算出した第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)から、例えば下記式(6)に示すように、第1共焦点領域と第2共焦点領域中の標的分子の数に対する、第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の標的分子の数が占める割合(みかけの結合率)を算出することができる。
なお、本発明において算出されるみかけの結合率は、蛍光強度の組み合わせごとに比較できるものであればよく、必ずしも厳密に算出されなければならないものではない。たとえば、みかけの結合率を算出するための式として、上記式(6)以外にも、下記式(7)や(8)を用いてもよい。
図2のフローチャートに示すように、工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、前記工程(c−1)〜(c−3)を行い、それぞれの蛍光強度におけるみかけの結合率を算出する。具体的には、まず、工程(b)において決定した組み合わせのうちの1つを選択し、工程(c−1)〜(c−3)を行い、みかけの結合率を算出する。その後、工程(b)において決定した組み合わせのうち、みかけの結合率を算出していない組み合わせの中から1つを選択し、工程(c−1)〜(c−3)を行い、みかけの結合率を算出する。この操作を、工程(b)において決定した全ての組み合わせにおけるみかけの結合率を算出するまで繰り返す。
なお、工程(c−1)〜(c−3)を行う場合に、工程(b)において決定した全ての組み合わせに係る測定を1の試料で行ってもよく、複数の組み合わせに係る測定ごとに1の試料で行ってもよく、1の組み合わせに係る測定を1の試料で行ってもよい。全ての組み合わせに係る測定を1の試料に対して行うことにより、工程(a)において調製すべき試料の量を抑えることができる。また、測定ごとに試料を取り替える操作が不要となり、測定をより簡便に行うことができる。一方、1の試料に対しては1の組み合わせに係る測定のみを行うことにより、励起光の連続照射による蛍光物質の退色等の影響を抑えることができ、組み合わせの測定の順番等を考慮せずとも、より精度の高い測定が可能となる。
その後、工程(d)として、工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、第1の励起光と第2の励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する。なお、「組み合わせを最適化する」とは、工程(b)において決定した組み合わせの中から、第1蛍光物質により標識された分子と第2蛍光物質により標識された分子との相互作用を、第1励起光及び第2励起光を用いたFCCSにより解析する場合に、対物レンズ等の軸上色収差による影響、すなわち第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレの影響を最小にし得る第1励起光と第2励起光の励起光強度の組み合わせを決定することを意味する。
具体的には、例えば、工程(b)において決定した全ての組み合わせのうち、工程(c)において最も大きいみかけの結合率が算出された組み合わせが最適であると判断することができる。標的分子の検出感度が十分である場合には、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレが小さく、重複領域が広ければ広いほど、みかけの結合率は大きくなる。このため、工程(b)において決定した全ての組み合わせにおけるみかけの結合率の中から、最も大きいみかけの結合率が得られた組み合わせの場合に、第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレが最も小さく、重複領域が最大となることが期待できるためである。
FCCS解析においては、一般的に、一分子当たりの明るさが十分な明るさとなるように、第1の励起光と第2の励起光の励起光強度を調整することが好ましい。一分子当たりの明るさが暗すぎる場合には、標的分子の検出感度が低下し、FCCSによる解析精度も低下するおそれがあるためである。本発明の励起光強度最適化方法においても、工程(c−3)において算出されたみかけの結合率に加えて、標的分子の一分子当たりの明るさを考慮して、第1の励起光と第2の励起光の励起光強度の組み合わせを最適化してもよい。
具体的には、まず、工程(c−3)の後、工程(c−4)として、第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ、及び第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを、それぞれ算出する。標的分子の一分子当たりの明るさは、FCSやFCCSにおいて一般的に行われている演算方法により求めることができる。例えば、工程(c−2)で検出された蛍光強度を、工程(c−3)で算出された平均分子数で除することにより、一分子当たりの明るさを算出することができる。
その後、工程(c−3)において算出したみかけの結合率及び工程(c−4)において算出した一分子当たりの明るさに基づき、第1励起光と第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する。具体的には、図2のフローチャートに示すように、一分子当たりの明るさの制限が必要である場合に、下限値を予め設定し、工程(b)において決定した組み合わせのうち、一分子当たりの明るさが設定した下限値以上である組み合わせをまず選抜し、この選抜された組み合わせの中で、最も大きいみかけの結合率が算出された組み合わせが、最適な組み合わせであると判断することができる。
標的分子の一分子当たりの明るさの下限値は、特に限定されるものではなく、FCCSに用いられる共焦点光学系や蛍光検出手段の仕様、第1蛍光物質や第2蛍光物質の種類、第1励起光や第2励起光の波長等を考慮して、適宜決定することができる。一般的には、一分子当たりの明るさが10kHz以上であれば、十分な感度で検出することができるため、例えば、一分子当たりの明るさの下限値を10kHzとしてもよい。一方で、退色しやすい蛍光物質を用いた場合には、一分子当たりの明るさを明るくするために励起光強度を大きくすると、退色により逆に検出感度が低下するおそれがあるため、例えば、一分子当たりの明るさの下限値を5kHz程度としてもよい。なお、標的分子の一分子当たりの明るさの下限値は、第1励起光と第2励起光において同じ値を設定してもよく、異なる値を設定してもよい。
このように、本発明の励起光強度最適化方法により、第1励起光及び第2励起光の励起光強度を最適化することにより、共焦点光学系を変更することなく、簡便かつ効果的に、対物レンズ等の軸上色収差による第1共焦点領域と第2共焦点領域のズレの影響を抑制し得る。このため、第1蛍光物質により標識された分子と第2蛍光物質により標識された分子との相互作用を、これらの分子を含む試料に第1励起光及び第2励起光を照射し、FCCSにより解析する場合に、第1励起光と第2励起光を、本発明の励起光強度最適化方法により最適化された励起光強度、すなわち、工程(d)において最適化された組み合わせの励起光強度とすることにより、解析精度を向上させることができる。
本発明の励起光強度最適化方法は、FCCS解析を行うことが可能な共焦点光学系及び演算手段を有する装置を用いることにより行うことができる。このような装置としては、波長の異なる2種類の励起光を同時に共焦点領域に照射し、各励起光により発生した蛍光を別個に検出し得る共焦点光学顕微鏡と、検出された蛍光の蛍光強度から、自己相関関数及び相互相関関数を求めることができる演算手段を有していれば、特に限定されるものではなく、市販のFCCS装置等を用いることもできる。
本発明の励起光強度最適化方法は、例えば、図3に示すような構成を有するFCCS装置によって実行されてもよい。該FCCS装置により、本発明の励起光強度最適化方法における工程(c)及び(d)を全て自動的に行うことができる。該装置は、第1励起光を発する光源2a、第2励起光を発する光源2b、光源2aから発された励起光(レーザ光)の強度を調整する励起光調整部3a、光源2bから発されたレーザ光の強度を調整する励起光調整部3b、対物レンズ4、試料をのせるステージ5、及び励起光照射により試料から発される蛍光を波長ごとに検出する蛍光検出部8を有する共焦点レーザ顕微鏡1を備える。励起光調整部3としては、一般的なレーザ顕微鏡等において、レーザ光量を調整するために用いられているものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ND(Neutral Density)フィルター等を用いることにより、簡便に所望の励起光強度に調整することができる。
該FCCS装置は、さらに、通過するレーザ光が所望の強度となるように励起光調整部を制御する励起光強度制御部9、蛍光検出部8により検出された蛍光の強度から相関解析を行う相関解析部10、相関解析部10により求められた相関関数から各共焦点領域中の平均分子数を算出する平均分子数算出部11、平均分子数算出部11により算出された平均分子数から、試料中の第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を算出する結合率算出部12、相関解析部10により求められた相関関数と平均分子数算出部11により算出された平均分子数から各共焦点領域中の一分子当たりの明るさを算出する明るさ算出部13、第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の2以上の組み合わせデータ、結合率算出部12により算出されたみかけの結合率、及び明るさ算出部12により算出された一分子当たりの明るさを記憶する記憶部14、記憶部14に記憶されたみかけの結合率の中から最大値を決定する最大結合率決定部15、及び最大結合率決定部15において決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を最適値とする励起光強度最適化部16を有する相関解析装置17を備える。
その他、例えば、試料用容器としてマルチウェルプレートを用いて、複数のウェルに分注した試料を共焦点顕微鏡のステージに設置し、該ステージを測定ごとに自動的に移動させることにより、1の組み合わせに係る測定を1の試料で行う場合のように、一連の測定において複数の試料を用いる場合であっても、工程(c)及び(d)を全て自動的に行うことにより、一分子当たりの明るさを考慮した励起光強度の最適化を自動的に行うことができる。
図4は、該FCCS装置のフローチャートを示した図である。まず、予め、工程(b)において決定された組み合わせを、記憶部14に記憶させる。記憶された組み合わせデータの中から、対応するみかけの結合率データが記憶されていない1の組み合わせデータを選択し、第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、この選択された組み合わせデータの励起光強度となるように、励起光調整部3を制御する。これにより、2つの光源2a、2bから発されたレーザ光は、選択された組み合わせとなるように励起光強度を調整された後、第1励起光又は第2励起光として対物レンズを通過して試料に照射される。
第1励起光及び第2励起光を、第1共焦点領域と第2共焦点領域とが重複領域を有するように、同時に試料に照射させた後、第1励起光の照射に応じて試料から発生した第1蛍光と、第2励起光の照射に応じて試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する。検出された蛍光強度のデータは相関解析部に送られ、相関解析部により、検出された第1蛍光の蛍光強度及び第2蛍光の蛍光強度の、それぞれの自己相関関数及び相互相関関数を求められる。平均分子数算出部によって、求められた相関関数から、上述した演算により、第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)が算出される。結合率算出部により、算出された平均分子数から、第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する。算出されたみかけの結合率は、記憶部に、励起光強度制御に用いた選択された組み合わせデータに対応させて記憶する。記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶された後、全てのみかけの結合率データの中から最大値を決定し、この決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、最適値とする。
また、図5のフローチャートのように、一分子当たりの明るさを考慮した励起光強度の最適化を自動的に行うことができる。具体的には、記憶部に、予め設定した一分子当たりの明るさの下限値を記憶させ、相関関数を求めた後、第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ及び第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを、それぞれ算出し、記憶部に、算出された一分子当たりの明るさを、選択された組み合わせデータに対応させて記憶する。記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶された後、対応する一分子当たりの明るさが、設定した明るさの下限値よりも大きい組み合わせデータを選抜し、これらの選抜された組み合わせデータに対応するみかけの結合率データの中から、最大値を決定し、この決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、最適値とする。
なお、図3中の相関解析装置17が有する各機能を、コンピュータで実現するようにしても良い。その場合、これらの各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
第1励起光として488nm、第2励起光として633nm、第1蛍光物質としてローダミングリーン、第2蛍光物質としてEVOblue50を用いて、FCCS解析における励起光強度の最適化を行った。FCCSは、488nm用Arレーザと633nm用He−Neレーザを光源とし、488nmと633nmを、互いの共焦点領域が重複領域を有するように試料中に同時に照射可能な共焦点系と、各励起光の照射に応じて発生した蛍光を別個に検出する蛍光検出部と、各励起光の励起光強度を調整する励起光調整部とを有する共焦点レーザ顕微鏡と、相関解析可能な演算部を有するFCCS装置を用いて行った。
まず、5’末端にローダミングリーンを標識したオリゴDNAを第1標的分子とし、このオリゴDNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有し、かつ5’末端にEVOblue50を標識したオリゴDNAを第2標的分子とし、両者をハイブリダイゼーションさせ、エキソヌクレアーゼI(EPICENTRE社製)を用いて1本鎖DNAのみを分解した後、MERmaid SPIN Kit(Qbiogene社製)を用いて精製した二重蛍光標識2本鎖DNAを作製した。該二重蛍光標識2本鎖DNAを最終的に2nMに調製したものを、第1標的分子と第2標的分子とを含む測定サンプル(試料)とした。すなわち、該測定サンプル中では、第1標的分子と第2標的分子とがほぼ100%結合している。
488nmと633nmの励起光強度の組み合わせとしては、各レーザ強度をそれぞれ25、50、100、200、300μWの5点とする計25通りの組み合わせとした。
各組み合わせのレーザ強度において、FCCSを行い、488nmによる共焦点領域中の平均分子数(N488)、633nmによる共焦点領域中の平均分子数(N633)、両共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N488+633)、及び各共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、それぞれ求めた。さらに、求めた平均分子数を用いて上記式(6)に従って第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を求めた。なお、FCCSにおける1回の測定時間は10秒とし、それぞれ3回ずつ測定した。
表1は、各組み合わせにおけるみかけの結合率の平均を示したものである。また、表2は、各組み合わせにおける一分子当たりの明るさの平均を示したものである。表2の各欄中、左値が488nmによる共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、右値が633nmによる共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、それぞれ示している。
第1励起光として488nm、第2励起光として633nm、第1蛍光物質としてローダミングリーン、第2蛍光物質としてEVOblue50を用いて、FCCS解析における励起光強度の最適化を行った。FCCSは、488nm用Arレーザと633nm用He−Neレーザを光源とし、488nmと633nmを、互いの共焦点領域が重複領域を有するように試料中に同時に照射可能な共焦点系と、各励起光の照射に応じて発生した蛍光を別個に検出する蛍光検出部と、各励起光の励起光強度を調整する励起光調整部とを有する共焦点レーザ顕微鏡と、相関解析可能な演算部を有するFCCS装置を用いて行った。
まず、5’末端にローダミングリーンを標識したオリゴDNAを第1標的分子とし、このオリゴDNAの塩基配列に相補的な塩基配列を有し、かつ5’末端にEVOblue50を標識したオリゴDNAを第2標的分子とし、両者をハイブリダイゼーションさせ、エキソヌクレアーゼI(EPICENTRE社製)を用いて1本鎖DNAのみを分解した後、MERmaid SPIN Kit(Qbiogene社製)を用いて精製した二重蛍光標識2本鎖DNAを作製した。該二重蛍光標識2本鎖DNAを最終的に2nMに調製したものを、第1標的分子と第2標的分子とを含む測定サンプル(試料)とした。すなわち、該測定サンプル中では、第1標的分子と第2標的分子とがほぼ100%結合している。
488nmと633nmの励起光強度の組み合わせとしては、各レーザ強度をそれぞれ25、50、100、200、300μWの5点とする計25通りの組み合わせとした。
各組み合わせのレーザ強度において、FCCSを行い、488nmによる共焦点領域中の平均分子数(N488)、633nmによる共焦点領域中の平均分子数(N633)、両共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N488+633)、及び各共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、それぞれ求めた。さらに、求めた平均分子数を用いて上記式(6)に従って第1標的分子と第2標的分子とのみかけの結合率を求めた。なお、FCCSにおける1回の測定時間は10秒とし、それぞれ3回ずつ測定した。
表1は、各組み合わせにおけるみかけの結合率の平均を示したものである。また、表2は、各組み合わせにおける一分子当たりの明るさの平均を示したものである。表2の各欄中、左値が488nmによる共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、右値が633nmによる共焦点領域中の一分子当たりの明るさを、それぞれ示している。
表1記載の結果から、レーザ強度の組み合わせによって算出されるみかけの結合率が異なることがわかった。これらは全て同じサンプルを測定したものであることから、得られたみかけの結合率の差は、488nmによる共焦点領域と633nmによる共焦点領域の重複領域の差によるものと推察される。
分子間相互作用を高感度に検出するためには、このみかけの結合率が出来る限り高い値が得られる測定条件であることが好ましい。本実施例においては、全25通りの組み合わせの中でみかけの結合率の最大値は66.9%であり、488nmと633nmが共に25μWの組み合わせにおけるみかけの結合率であった。したがって、ローダミングリーンにより標識された分子とEVOblue50により標識された分子との相互作用を解析する場合には、488nmと633nmを共に25μWとする条件でFCCSを行うことが好ましいことが明らかとなった。
分子間相互作用を高感度に検出するためには、このみかけの結合率が出来る限り高い値が得られる測定条件であることが好ましい。本実施例においては、全25通りの組み合わせの中でみかけの結合率の最大値は66.9%であり、488nmと633nmが共に25μWの組み合わせにおけるみかけの結合率であった。したがって、ローダミングリーンにより標識された分子とEVOblue50により標識された分子との相互作用を解析する場合には、488nmと633nmを共に25μWとする条件でFCCSを行うことが好ましいことが明らかとなった。
一方、分子間相互作用をより高精度に解析するために、検出される一分子当たりの明るさの下限値を設定してもよい。例えば、本実施例において、検出される一分子当たりの明るさの下限値を両波長ともに10kHzとした場合には、表2の結果から、一分子当たりの明るさが10kHz以上となる組み合わせとして、488nmは25〜300μW、633nmは50〜300μWの計20通りが選抜される。表1の結果から、この選抜された組み合わせの中でみかけの結合率の最大値は65.9%であり、488nmが25μW、633nmが50μWの組み合わせにおけるみかけの結合率であった。したがって、ローダミングリーンにより標識された分子とEVOblue50により標識された分子との相互作用を解析する場合には、488nmを25μW、633nmを50μWとする条件でFCCSを行うことにより、より高精度に解析し得ることが明らかとなった。
これらの結果から、本発明の励起光強度最適化方法を用いることにより、FCCS解析に適した励起光強度の情報を得られることが明らかである。
これらの結果から、本発明の励起光強度最適化方法を用いることにより、FCCS解析に適した励起光強度の情報を得られることが明らかである。
本発明の励起光強度最適化方法を用いることにより、光学系を変更することなく、FCCSに用いられる互いに波長の異なる2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化することができるため、分子間相互作用を解析するような生化学、分子生物学、臨床検査等の分野で利用が可能である。
1…共焦点レーザ顕微鏡、2a…レーザ光源、2b…レーザ光源、3a…励起光調整部、3b…励起光調整部、4…対物レンズ、5…ステージ、6…試料、7…試料用容器、8…蛍光検出部、9…励起光強度制御部、10…相関解析部、11…平均分子数算出部、12…結合率算出部、13…明るさ算出部、14…記憶部、15…最大結合率決定部、16…励起光最適化部、17…相関解析装置
Claims (4)
- 互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光による蛍光相互相関分光法における励起光強度を最適化する方法において、
(a)第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と、第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とを含有する試料を調製する工程と、
(b)前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の、2以上の組み合わせを決定する工程と、
(c)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、下記工程(c−1)〜(c−3)をそれぞれ行い、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、
(d)前記工程(c)において算出されたみかけの結合率に基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、
を有することを特徴とする励起光強度最適化方法。
(c−1)前記工程(a)において調製された試料に、前記工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した前記第1励起光と前記第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する工程、
(c−2)前記工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する工程、
(c−3)前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出し、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程。 - 前記工程(c)が、
(c’)前記工程(b)において決定した全ての組み合わせに対して、下記工程(c−1)〜(c−4)をそれぞれ行い、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程と、
であり、前記工程(d)が、
(d’)前記工程(c’)において算出したみかけの結合率及び一分子当たりの明るさに基づき、前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせを最適化する工程と、
であることを特徴とする請求項1記載の励起光強度最適化方法。
(c−1)前記工程(a)において調製された試料に、前記工程(b)において決定された組み合わせのうちの1の組み合わせとなるように励起光強度を調整した前記第1励起光と前記第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように同時に照射する工程、
(c−2)前記工程(c−1)において、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する工程、
(c−3)前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第2蛍光の蛍光強度の自己相関をとり、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)を算出し、前記工程(c−2)において検出した第1蛍光の蛍光強度と第2蛍光の蛍光強度の相互相関をとり、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出し、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する工程、
(c−4)前記工程(c−3)の後、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ、及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを、それぞれ算出する工程。 - 互いに波長の異なる第1励起光と第2励起光とを、前記第1励起光による第1共焦点領域と前記第2励起光による第2共焦点領域とが重複領域を有するように、試料中に照射可能であり、各励起光の励起光強度を調整する励起光調整部、
前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出部とを有する共焦点光学系、並びに、
第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の組み合わせデータ、及び前記第1励起光により蛍光を発し得る第1蛍光物質を用いて標識された第1標的分子と前記第2励起光により蛍光を発し得る第2蛍光物質を用いて標識された第2標的分子とのみかけの結合率データを記憶する記憶部、
を有する蛍光相互相関分光装置のためのプログラムであって、前記記憶部に、
前記第1励起光と前記第2励起光の励起光強度の2以上の組み合わせデータを記憶する組み合わせデータ記憶手段、
前記記憶部に記憶された組み合わせデータの中に、対応するみかけの結合率データが記憶されていない組み合わせがある場合には、記憶された組み合わせデータの中から、対応するみかけの結合率データが記憶されていない1の組み合わせデータを選択し、前記第1励起光及び前記第2励起光の励起光強度を、この選択された組み合わせデータの励起光強度となるように、前記励起光調整部を制御する励起光強度制御手段、
前記共焦点光学系により、前記励起光強度制御手段により制御された励起光強度である前記第1励起光及び前記第2励起光を、前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域とが重複領域を有するように、同時に前記試料に照射させた後、前記蛍光検出部により、前記第1励起光の照射に応じて前記試料から発生した第1蛍光と、前記第2励起光の照射に応じて前記試料から発生した第2蛍光とを別個に検出する蛍光検出手段、
前記蛍光検出手段において検出された第1蛍光の蛍光強度及び第2蛍光の蛍光強度の、それぞれの自己相関関数及び相互相関関数を求める相関解析手段、
前記相関解析手段により求められた相関関数から、前記第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、前記第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び前記第1共焦点領域と前記第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を算出する平均分子数算出手段、
前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)、第2共焦点領域中の平均分子数(N2)、及び第1共焦点領域と第2共焦点領域の重複領域中の平均分子数(N12)を用いて、前記第1標的分子と前記第2標的分子とのみかけの結合率を算出する結合率算出手段、
前記結合率算出手段により算出されたみかけの結合率を、前記記憶部に、励起光強度制御手段において選択された組み合わせデータに対応させて記憶する結合率記憶手段、
前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、全てのみかけの結合率データの中から最大値を決定する最大結合率決定手段、
前記最大結合率決定手段において決定されたみかけの結合率データに対応する組み合わせデータにおける第1励起光及び第2励起光の励起光強度を、最適値とする励起光強度最適化手段、
として機能させることを特徴とする蛍光相互相関分光装置用プログラム。 - 前記記憶部に、
一分子当たりの明るさの下限値を記憶する明るさ下限値記憶手段、
前記相関解析手段において求められた相関関数と、前記平均分子数算出手段において算出された第1共焦点領域中の平均分子数(N1)及び第2共焦点領域中の平均分子数(N2)とを用いて、前記第1共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさ及び前記第2共焦点領域中の標的分子の一分子当たりの明るさを算出する明るさ算出手段、
前記明るさ算出手段により算出された一分子当たりの明るさを、前記記憶部に、励起光強度制御手段において選択された組み合わせデータに対応させて記憶する明るさ記憶手段、
としてさらに機能させるものであり、
前記最大結合率決定手段が、前記記憶部に全ての組み合わせデータに対応するみかけの結合率データが記憶されている場合に、対応する一分子当たりの明るさが、前記記憶部に記憶された下限値よりも大きい組み合わせデータを選抜し、これらの選抜された組み合わせデータに対応するみかけの結合率データの中から最大値を決定する手段であること、
を特徴とする請求項3記載の蛍光相互相関分光装置用プログラム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008212850A JP2010048660A (ja) | 2008-08-21 | 2008-08-21 | 励起光強度最適化方法及び蛍光相互相関分光装置用プログラム |
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JP2008212850A JP2010048660A (ja) | 2008-08-21 | 2008-08-21 | 励起光強度最適化方法及び蛍光相互相関分光装置用プログラム |
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JP2010048660A true JP2010048660A (ja) | 2010-03-04 |
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ID=42065862
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JP2008212850A Withdrawn JP2010048660A (ja) | 2008-08-21 | 2008-08-21 | 励起光強度最適化方法及び蛍光相互相関分光装置用プログラム |
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JP (1) | JP2010048660A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113376099A (zh) * | 2021-06-29 | 2021-09-10 | 安图实验仪器(郑州)有限公司 | 一种基于标准品的qpcr激发光强自动调整方法和系统 |
-
2008
- 2008-08-21 JP JP2008212850A patent/JP2010048660A/ja not_active Withdrawn
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