JP2010035446A - 草本系バイオマスの糖化前処理方法 - Google Patents

草本系バイオマスの糖化前処理方法 Download PDF

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茂信 光澤
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Abstract

【課題】草本系バイオマスのリグニンを十分に除去して、酵素によるセルロースの糖化反応を容易にすることができる草本系バイオマスの糖化前処理方法を提供する。
【解決手段】草本系バイオマスに白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを植菌し、該草本系バイオマスと共に培養することにより、該草本系バイオマスのリグニンを分解する。前記草木系バイオマスは、80〜120℃の範囲の温度で滅菌処理した後、前記培養に供する。前記草木系バイオマスは、70〜90重量%の範囲の含水率で前記培養に供する。前記培養は、20〜35℃の範囲の温度で行う。前記培養は、pH2.0〜7.0の範囲で行う。白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを培養した後、前記草本系バイオマスを湿式摩砕処理する。前記草本系バイオマスは、70重量%以上の範囲の含水率で前記湿式摩砕処理に供する。前記湿式摩砕処理は、ディスクミルを用いて行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、バイオエタノールの原料として用いられる草本系バイオマスの糖化前処理方法に関するものである。
近年、地球温暖化防止の観点から、その原因の一つと考えられている二酸化炭素排出量を削減することが求められている。そこで、ガソリン等の液体炭化水素とエタノールとの混合燃料を自動車燃料に用いることが検討されている。前記エタノールとしては、植物性物質の発酵により得たバイオエタノールを用いることができる。前記植物性物質は、原料となる植物自体が既に光合成により二酸化炭素を吸収しているので、かかる植物性物質から得られたエタノールを燃焼させたとしても、排出される二酸化炭素の量は前記植物自体が吸収した二酸化炭素の量に等しい。即ち、総計としての二酸化炭素の排出量は理論的にはゼロになるという所謂カーボンニュートラル効果を得ることができる。
従来、前記バイオエタノールの原料として、例えばサトウキビ、トウモロコシ等の農作物の食用部分が用いられている。ところが、前記農作物は、エタノールの原料として大量に消費されると、食料として供給される量が減少するという問題がある。
そこで、前記植物性物質として、前記農作物に代えて、食用ではない草本系バイオマスを用いてエタノールを製造する技術が検討されている。前記草本系バイオマスは、セルロースを含んでいるので、該セルロースを酵素糖化によりグルコースに分解し、さらに得られたグルコースを発酵させることによりバイオエタノールを得ることができる。前記草本系バイオマスとしては、例えば、イナワラ、ムギワラ、バガス、竹、コーンストーバー、スイッチグラス、芝等を挙げることができる。
ところが、前記草本系バイオマスでは、セルロースがリグニンにより被覆されており、そのままでは該セルロースに対する酵素糖化反応が阻害されるので、該草本系バイオマスのセルロースを効率よく酵素糖化反応させるに、予め、該リグニンを除去することが望まれる。前記草本系バイオマスからリグニンを除去する前処理として、粉砕、水蒸気爆砕、アンモニア爆砕、蒸煮等の方法が知られている。しかし、これらの方法はいずれも大きなエネルギーを必要とする。そこで、前記草本系バイオマスからリグニンを低エネルギーで除去する方法の1つとして、該草本系バイオマスを白色腐朽菌で処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
しかしながら、従来公知の白色腐朽菌では、前記草本系バイオマスのリグニンを十分に除去することが難しいとの不都合がある。
特開2007−37469号公報 特開2008−6372号公報
本発明は、かかる不都合を解消して、草本系バイオマスのリグニンを十分に除去して、酵素によるセルロースの糖化反応を容易にすることができる草本系バイオマスの糖化前処理方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明の草本系バイオマスの糖化前処理方法は、草本系バイオマスに白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを植菌し、該草本系バイオマスと共に培養することにより、該草本系バイオマスのリグニンを分解することを特徴とする。
本発明によれば、白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを用いることにより、草本系バイオマスのリグニンを十分に分解して除去することができる。従って、本発明により処理された草本系バイオマスを用いることにより、該草本系バイオマスに含まれるセルロースを酵素により容易に糖化することができる。
前記草本系バイオマスは、5〜90重量%の範囲の含水率で前記培養に供する。さらに、前記草本系バイオマスは、前記白色腐朽菌の生育が可能な好気的条件とするために、70〜90重量%の範囲の含水率で前記培養に供することが好ましい。前記草本系バイオマスの含水率が70重量%未満では、前記白色腐朽菌が該草本系バイオマスの全体に均一に行き渡らず、リグニンの分解が部分的になることがある。また、前記草本系バイオマスの含水率が90重量%を超えると、前記白色腐朽菌の生育が可能な好気的条件を維持することができない。尚、前記「含水率」との用語は、湿量基準含水率を意味する。
また、前記草木系バイオマスは、80〜120℃の範囲の温度で滅菌処理した後、前記培養に供することが好ましい。前記草本系バイオマスの滅菌処理温度は、80℃未満では該草本系バイオマス中に元々存在していた微生物を滅菌することができず、前記白色腐朽菌の生育に適した条件を維持できないことがある。また、前記草本系バイオマスの滅菌処理温度が120℃を超えると必要とするエネルギー量が過大になることがある。
前記草本系バイオマスの滅菌処理温度は、80〜100℃の範囲の温度とすることがさらに好ましい。80〜100℃の範囲の温度とすることにより、常圧蒸気滅菌を行うことが可能となり、滅菌処理装置を簡単な構成のものとすることができる。
また、前記培養は、前記白色腐朽菌の生育に適した条件とするために、20〜35℃の範囲の温度で行うことが好ましい。前記範囲外の温度では、前記白色腐朽菌によるリグニンの分解が十分に行われないことがある。
本発明において、前記白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを培養した後の前記草本系バイオマスは、そのまま酵素による糖化に供してもよいが、さらに湿式摩砕処理することが好ましい。前記草本系バイオマスは、前記湿式摩砕処理により、その含有するセルロースが酵素によりさらに容易に糖化されるようになる。
前記白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを培養した後の前記草本系バイオマスは、70重量%以上の範囲の含水率で前記湿式摩砕処理に供することが好ましい。前記草本系バイオマスの含水率が70重量%未満では、前記湿式摩砕処理により前記草本系バイオマスが過熱されて、酵素による糖化が困難になることがある。
また、前記湿式摩砕処理は、ディスクミルを用いて行うことが好ましい。前記草本系バイオマスは、前記白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaによりリグニンが分解されているので、前記ディスクミルによる前記湿式摩砕処理に要するエネルギーを低減することができる。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の糖化前処理方法を示すフローチャート、図2は各菌株の糖化効率改善作用を示すグラフ、図3は各菌株の培養中のイナワラの重量減少を示すグラフ、図4は腐朽イナワラの還元糖生成量を示すグラフ、図5は腐朽イナワラのグルコース生成量を示すグラフ、図6は腐朽イナワラの可溶化量を示すグラフ、図7は酸性溶液に浸漬した後の腐朽イナワラの還元糖生成量を示すグラフ、図8は湿式摩砕処理した腐朽イナワラのグルコース生成量を示すグラフ、図9は腐朽イナワラの湿式摩砕に要する摩砕エネルギーを示すグラフである。
本実施形態の糖化前処理方法は、草本系バイオマスに白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを植菌し、該草本系バイオマスと共に培養することにより、該草本系バイオマスのリグニンを分解するものである。次に、図1を参照して、本実施形態の糖化前処理方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態の糖化前処理方法では、まず、原料となる草本系バイオマスを粗粉砕する(STEP1)。前記草本系バイオマスとしては、例えば、イナワラ、ムギワラ、バガス、竹、コーンストーバー、スイッチグラス、芝等を用いることができる。また、前記粗粉砕は、例えば、乾式法により行うことができる。
次に、粗粉砕された原料が含有する水分の調整を行う(STEP2)。水分調整は、前記白色腐朽菌が生育可能な環境とするために行うものであり、粗粉砕された原料を水中に浸漬した後、引き上げ、自然乾燥することにより行うことができる。前記水分調整は、粗粉砕された原料が、70〜90重量%の範囲の含水率となるように行うことが好ましい。
次に、水分調整された原料を滅菌する(STEP3)。前記滅菌により、雑菌の繁殖を抑制して、前記白色腐朽菌のみを生育させることができる。前記滅菌は、例えば、120℃の温度で20分間の高圧蒸気滅菌により行うことができるが、80℃の温度で20分間の常圧蒸気滅菌により行ってもよい。また、前記滅菌は、pHを調整することにより行ってもよい。
次に、滅菌された原料に、予め前培養した種菌を植菌する(STEP4)。前記植菌は、例えば、前記原料の表面に前記種菌を振りかけるか、前記原料と前記種菌とを混合することにより行うことができる。また、前記植菌は、前記原料に穴を開け、該穴に前記種菌を充填することにより行うこともできる。前記植菌に用いる種菌としては、例えば、液体種菌、穀粒種菌、おがくず種菌、寒天種菌等を挙げることができる。
次に、植菌された原料を培養に供する(STEP5)。前記培養は、通常4〜45℃の範囲の温度で、相対湿度を30%以上に保持して行うことができる。前記培養は好ましくは15〜37℃、さらに好ましくは20〜35℃の温度で行う。培養時間は、原料となる草本系バイオマスの種類や、培養条件により異なるが、通常3日以上、好ましくは7〜180日、さらに好ましくは14〜60日である。
前記原料は、前記培養の結果、前記白色腐朽菌によりリグニンが分解される。前記培養によりリグニンが分解された前記原料は、酵素による糖化処理に供される(STEP6)。このとき、前記培養によりリグニンが分解された前記原料は、そのまま酵素による糖化処理に供されてもよいが、前記白色腐朽菌の成長を停止させるための蒸気滅菌処理(STEP7、湿式摩砕処理(STEP8)の後、酵素による糖化処理に供されることが好ましい。尚、本明細書では、リグニンが分解されることを「腐朽」と記載することがある。また、リグニンが分解された原料を、その原料名を付して例えば「腐朽イナワラ」のように記載し、あるいはリグニンの分解に用いた菌株名を付して「Phanerochaete flavido-alba腐朽イナワラ」のように記載することがある。また、リグニンが分解されていない原料を、その原料名を付して、例えば「未腐朽イナワラ」のように記載することがある。
前記原料は、前記湿式摩砕処理に供される際には、70重量%以上の含水率とされていることが好ましい。また、前記湿式摩砕処理は、例えば、増幸産業株式会社製マスコライザー(商品名)のようなディスクミルにより行うことができる。
次に、本発明の実施例を示す。
〔腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラの糖化率測定(簡易法)〕
腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラの糖化率測定(簡易法)は、以下の方法で行った。菌体培養後の腐朽イナワラ(乾燥重量0.8g相当)を蒸留水35.6mlと共に市販ミキサー(トステム社製、商品名:フードミルTML17)を用いて摩砕した。摩砕条件は15秒に統一した。摩砕後、スラリー状になった試料全量を糖化反応に供した。糖化反応は、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)、乾燥重量0.8gの摩砕イナワラ、及び10FPU(濾紙崩壊活性;Filter Paper Unit)量のセルラーゼ溶液(Novozyme社製、Novoclast1.5L(商品名)とNovo188(商品名)との30:1(容積比)混合物)を含む反応液中で実施した。尚、イナワラ試料の含水量も考慮に入れて添加する酢酸ナトリウムバッファーの量を調整し、反応液を40mlとし、さらに抗菌剤としてアジ化ナトリウム(最終濃度0.02重量%)を加えた。反応はシェーカーを用い、100rpm、45℃で48時間行った。48時間後、遠心分離して得た上清中の還元糖をジニトロサリチル酸法で定量した。ジニトロサリチル酸法においては、濃度既知のグルコース溶液を用いて検量線を作成し、還元糖に由来する赤色反応物の吸光度を元に還元糖量を測定した。以上の方法を用いて腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラから得られた還元糖重量を定量した。各菌株の糖化効率改善作用は以下の式:
(腐朽イナワラ由来還元糖重量(mg)/未腐朽イナワラ由来還元糖重量(mg))
によって数値化した。
〔腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラの糖化率測定(ボールミル法)〕
腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラの糖化率測定(ボールミル法)は、以下の方法で行った。菌体培養後の腐朽イナワラ(乾燥重量0.4g相当)を蒸留水10mlと共にボールミル法で摩砕した。ボールミル処理はRetsch社製MM-301(商品名)を用い、摩砕条件は15往復/秒、2minに統一した。摩砕後、スラリー状になった試料全量を糖化反応に供した。糖化反応は、50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)、乾燥重量0.4gの摩砕イナワラ、及び16FPU(濾紙崩壊活性;Filter Paper Unit)量のメイセラーゼ(商品名、明治製菓株式会社製)を含む反応液中で実施した。尚、イナワラ試料の含水量も考慮に入れて添加する酢酸ナトリウムバッファーの量を調整し、反応液を20mlとし、さらに抗菌剤として2重量%アジ化ナトリウム(最終濃度0.02重量%)を加えた。反応はシェーカーを用い、170rpm、45℃で48時間行った。48時間後、遠心分離して得た上清中の還元糖をソモギネルソン法で定量した。ソモギネルソン法においては、濃度既知のグルコース溶液を用いて検量線を作成し、還元糖に由来する青色反応物の吸光度を元に還元糖量を測定した。以上の方法を用いて腐朽イナワラ、及び未腐朽イナワラから得られた還元糖重量を定量した。各菌株の糖化効率改善作用は以下の式:
(腐朽イナワラ由来還元糖重量(mg)/未腐朽イナワラ由来還元糖重量(mg))
によって数値化した。
福島県内で収集したイナワラを水道水に一晩浸漬した。翌日水を切り、イナワラの乾燥率が80重量%程度になるように自然乾燥させた。乾燥重量4.0g相当をグラスボトル(100ml容)に詰め、120℃で、20分間蒸気滅菌を行った。なお、雑菌汚染によるコンタミネーションの可能性を低減するため、フスマ、米ぬか等の栄養源は添加しなかった。次に、白色腐朽菌としてPhanerochaete flavido-alba(ATCC 60997)、Phanerochaete flavido-alba(ATCC 60998)、ヒラタケ(ATCC 34675)をPDB(ポテトデキストロース寒天培地)上で前培養し、菌糸片(1cm角)を4片ずつ1本のグラスボトルに植菌した。グラスボトルは、蓋の中央に直径15mmの孔をあけ、通気性のある紙(タイペスト紙)の貼付によって雑菌の侵入を防ぐとともに通気を確保し、28℃にて静置培養を行った。糖化率の平均値、及び標準偏差を算出するため各試験区は3連(3本のグラスボトルを各試験系に使用)で行った。30日培養後、105℃で15分間の蒸気滅菌によって菌の成長を停止させ、糖化率測定に供するまで4℃で保存した。30日後、全菌株について、腐朽イナワラの糖化率測定(簡易法)を行った。結果を図2に示す。
図2から、Phanerochaete flavido-alba(ATCC 60997)及びPhanerochaete flavido-alba(ATCC 60998)は、ヒラタケ(ATCC 34675)に比べて、優れた糖化効率改善作用を示すことが明らかである。
〔Phanerochaete flavido-alba、ヒラタケの培養過程におけるイナワラ消費量(イナワラ重量減少率)測定〕
次に、白色腐朽菌としてPhanerochaete flavido-alba(ATCC 60998)及びヒラタケ(ATCC 34675)を再度イナワラ分解に用い、Phanerochaete flavido-alba(以下、「P. flavido-alba」と略記する)によるイナワラ糖化効率改善作用の検証を行った。従来、微量金属を含む溶液中に浸漬したイナワラにおいては、ヒラタケによるイナワラ糖化効率改善作用が若干向上することが知られている(Taniguchi M, Suzuki H, Watanabe D, Sakai K, Tanaka T.: Evaluation of pretreatment with Pleurotus ostreatus for enzymatic hydorolysis of rice straw.1: J Biosci Bioeng., 100, 637-643(2005))。そこで、実施例3で使用した乾燥イナワラを、各種微量金属を含む塩溶液(50倍希釈Kirk's salt solution、Tien, M. and Kirk, T. K.: Lignin peroxidase of Phanerochaete chrysosporium, p.238-249. In Wood, W. A. and Kellogg, S. T. (ed.), Methods in enzymology, vol. 161. Academic Press, San Diego(1988))に12時間浸漬した。翌日イナワラを塩溶液から引き上げ、含水率が80重量%程度になるように自然乾燥させた。乾燥重量4.0g相当をグラスボトル(100ml容)に詰め、120℃で、20分間の高圧蒸気滅菌を行った。また、高圧蒸気滅菌では設備が大型化するため、常圧における滅菌の可能性も検討した。すなわち、120℃で、20分間の高圧蒸気滅菌の代わりに、80℃で20分間の常圧蒸気滅菌を行ったイナワラ試料も調製した。それぞれにPDB寒天培地上で前培養したP. flavido-alba、及びヒラタケ菌株菌糸片(1cm角)を3片ずつグラスボトルに植菌した。糖化率の平均値、及び標準偏差を算出するため各試験区は4連(4本のグラスボトルを各試験系に使用)で行った。蓋を半開放状態にして通気を確保し、28℃にて静置培養を行った。28日間培養後、菌自体の成長に伴うイナワラの消費量(イナワラ重量減少率)を測定するため、腐朽イナワラの湿重量、及び含水率を測定した。結果を図3に示す。
図3から、両菌株のイナワラ重量減少率はいずれも20重量%程度であった。
〔P. flavido-alba腐朽イナワラのセルラーゼ処理によって得られた還元糖、グルコース量の測定〕
実施例4によって得られたP. flavido-alba腐朽イナワラ、ヒラタケ(ATCC 34675)腐朽イナワラ、未腐朽イナワラにつき、ボールミル法を用いて糖化効率を評価した。結果を図4に示す。
図4から、120℃で、20分間の高圧蒸気滅菌を行ったイナワラ、80℃で20分間の常圧蒸気滅菌を行ったイナワラの双方において、P. flavido-alba腐朽イナワラは、ヒラタケ(ATCC 34675)腐朽イナワラより有意に高い還元糖生成率を示すことが明らかである。
また、還元糖の主成分であるグルコース含量についても測定を行った。グルコース濃度は、和光純薬株式会社製グルコースCII−テストワコーキット(商品名)を用いて測定した。結果を図5に示す。
図5から、グルコース含量についても、P. flavido-alba腐朽イナワラは、ヒラタケ(ATCC 34675)腐朽イナワラより有意に高い糖化効率を示すことが明らかである。
また、図3では、両菌株のイナワラ重量減少率はいずれも20重量%程度であるが、図4、図5では、P. flavido-albaの方が高い糖化効率を示している。これは、P. flavido-albaがヒラタケ(ATCC 34675)よりもセルロース近傍のリグニンを効率よく分解し、セルロースの酵素糖化に有利に働いていることを示唆するものである。
〔P. flavido-alba腐朽イナワラのセルラーゼ処理による可溶化率測定〕
P. flavido-albaが腐朽したイナワラ全体が、どの程度セルラーゼによって可溶化するかを調べた。実施例4において行った糖化試験後のイナワラ残渣を回収し乾燥後の全重量を測定した。結果を図6に示す。
図6から、P. flavido-alba腐朽イナワラは、、ヒラタケ(ATCC 34675)腐朽イナワラ、未腐朽イナワラに比べて有意に高い糖化効率を示すことが明らかである。
〔酸性溶液浸漬イナワラの腐朽処理〕
腐朽処理中に雑菌汚染が生じる可能性を低減するため、特にバクテリアの繁殖を抑制する酸性条件下におけるP. flavido-albaのイナワラ糖化効率改善作用を調べた。乾燥イナワラを水道水に一晩浸漬した翌日水を切り、含水イナワラ(湿重量250g)を再び、20mMリン酸(pH2.07)、20mM酒石酸(pH2.42)、20mMクエン酸(pH2.49)、20mM乳酸(pH2.70)、20mM酢酸(pH3.32)2.5リットルに各々一晩浸漬した。比較対象として、湿イナワラ(湿重量250g)を再度水道水、及び50倍希釈Kirk's salts solutionに浸漬した。一晩浸漬後、各溶液のpHはわずかに上昇し、20mMリン酸(pH2.30)、20mM酒石酸(pH2.72)、20mMクエン酸(pH2.80)、20mM乳酸(pH3.22)、20mM酢酸(pH4.032)となった。また、水道水はpH6.38、50倍希釈Kirk's salts solutionはpH6.18であった。各イナワラの水を切り、含水率が80重量%程度になるように自然乾燥させた。以後の腐朽処理は実施例3と同様に、また糖化率測定は実施例1と同様に行った。結果を図7に示す。
図7から、ヒラタケは、リン酸及び酒石酸に浸漬したイナワラ上では成長が認められず、他の酸に浸漬したイナワラ上でも酸性度の低下に従い菌糸の成長が低下したため、腐朽イナワラの糖化効率が大幅に減少することが明らかである。一方、P. flavido-albaは、強い酸性条件である酒石酸に浸漬したイナワラ(pH2.72)においても良好な生育を示し、比較対象である水道水、及び50倍希釈Kirk's salts solutionに浸漬したイナワラと比較しての糖化効率減少はわずかであることが明らかである。
菌処理後のイナワラをオートクレーブを用いて105℃で15分間の滅菌処理を施した。処理後のイナワラから約1gを秤り取り、電子水分計(ザルトリウス社製、商品名:MA40)を用いて含水率を測定した結果、約80重量%であった。比較用として、菌処理を施していない粗粉砕イナワラチップを含水率が80重量%となるように加水し、ミキサーで混合した後、オートクレーブを用いて100℃で10分間の滅菌処理を施した。
次に、前記滅菌処理後のイナワラを、ディスクミルとして増幸産業株式会社製マスコロイダーMKZA10−15(商品名)を使用して湿式摩砕した。使用砥石はMKE型砥石#46であり、砥石回転数1000rpm、砥石隙間設定140μmの条件にて、前記イナワラを粉砕した。粉砕したイナワラを採取し、前記電子水分計を用いて含水率を測定した。含水率は80重量%であった。
次に、摩砕したイナワラをセルラーゼ(ジェネンコア社製、商品名:GC220)による糖化処理に供した。糖化処理条件は、次のとおりである。
(1)処理時間・・・24時間
(2)処理温度・・・50℃、180rpm、旋回振盪緩衝液・・・0.1−0.2M酢酸緩衝液(pH4.0−pH5.0)
(3)Total 25m基質濃度・・・イナワラ5%w/v
(4)酵素濃度・・・ジェネンコアGC220 0.5%v/v(=125μl/25ml)
結果を図8に示す。
図8から、P. flavido-alba腐朽イナワラは、ヒラタケ腐朽イナワラ、未腐朽イナワラに比較して、グルコース生成量において優れていることが明らかであり、湿式摩砕したP. flavido-alba腐朽イナワラは、湿式摩砕しないものよりもさらにグルコース生成量において優れていることが明らかである。
実施例8の湿式摩砕の際に要する摩砕エネルギーを測定した。まず、松下電工株式会社製エコパワーメーターKW4M(商品名)を、実施例8で用いたディスクミルの200V3相の電源制御ボックス内に設置して瞬間電力(kW)及び積算電力(kWh)を測定した。摩砕処理エネルギーは、電力測定対象時間での摩砕した原料を回収して全重量(kg)を測定し、測定時間での累積電力(kWh)をkJに単位変換し、原料1kgあたりの摩砕エネルギーkJ/kgとして算出した。結果を図9に示す。
図9から、P. flavido-alba腐朽イナワラは、ヒラタケ腐朽イナワラ、未腐朽イナワラに比較して、摩砕エネルギーが低いことが明らかである。これは、硬質なリグニンがP. flavido-albaにより分解除去されているためと考えられる。
本発明の糖化前処理方法を示すフローチャート。 各菌株の糖化効率改善作用を示すグラフ。 各菌株の培養中のイナワラの重量減少を示すグラフ。 腐朽イナワラの還元糖生成量を示すグラフ。 腐朽イナワラのグルコース生成量を示すグラフ。 腐朽イナワラの可溶化量を示すグラフ。 酸性溶液に浸漬した後の腐朽イナワラの還元糖生成量を示すグラフ。 湿式摩砕処理した腐朽イナワラのグルコース生成量を示すグラフ。 腐朽イナワラの湿式摩砕に要する摩砕エネルギーを示すグラフ。
符号の説明
なし。

Claims (7)

  1. 草本系バイオマスに白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを植菌し、該草本系バイオマスと共に培養することにより、該草本系バイオマスのリグニンを分解することを特徴とする草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  2. 前記草木系バイオマスは、80〜120℃の範囲の温度で滅菌処理した後、前記培養に供することを特徴とする請求項1記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  3. 前記培養は、20〜35℃の範囲の温度で行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  4. 前記培養は、pH2.0〜7.0の範囲で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  5. 白色腐朽菌Phanerochaete flavido-albaを培養した後、前記草本系バイオマスを湿式摩砕処理することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  6. 前記草本系バイオマスは、70重量%以上の範囲の含水率で前記湿式摩砕処理に供することを特徴とする請求項5記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
  7. 前記湿式摩砕処理は、ディスクミルを用いて行うことを特徴とする請求項5または請求項6記載の草本系バイオマスの糖化前処理方法。
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