JP2010035329A - 回転子並びにこれを用いた電動機及び圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】電源の投入タイミングや電圧の位相によって変化する固定子磁束の発生位置に関わらず、安定した始動トルクを発生できる電動機及び圧縮機を提供する。
【解決手段】回転軸であるシャフトを挿入した回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に並べて設けた複数のスロットに埋設した始動用導体バーと、この始動用導体バーを前記回転子鉄心の両端面で短絡する短絡環とを含み、かご型巻線を形成する回転子を具備し、前記回転子鉄心は、前記始動用導体バーの設置位置より前記回転子の回転中心軸側に配置した少なくとも1つ以上の永久磁石を具備し、前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくする。
【選択図】図1
【解決手段】回転軸であるシャフトを挿入した回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に並べて設けた複数のスロットに埋設した始動用導体バーと、この始動用導体バーを前記回転子鉄心の両端面で短絡する短絡環とを含み、かご型巻線を形成する回転子を具備し、前記回転子鉄心は、前記始動用導体バーの設置位置より前記回転子の回転中心軸側に配置した少なくとも1つ以上の永久磁石を具備し、前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくする。
【選択図】図1
Description
本発明は、回転子並びにこれを用いた電動機及び圧縮機に関する。
誘導電動機の長所は、堅牢な構造である上、商用電源による直入れ始動が可能なため、速度制御を必要としない一定速駆動の機械の駆動源として低コストに構成できる点にある。
また、自己始動型永久磁石同期電動機は、誘導電動機と同様に、商用電源での直入れ始動が可能であり、インバータを付加することなく駆動部を構成できる上、定常運転時の二次銅損が僅少となるため、誘導電動機に対して駆動システムの高効率化に大きく貢献できるメリットがある。
一方、自己始動型永久磁石同期電動機の短所として、かご型巻線の内周側に永久磁石が配置されているため、回転子の磁束軸がすでに固定されていることが挙げられる。すなわち、始動時に回転子に生じる始動トルクは、かご型巻線に生じる誘導トルクと、永久磁石磁束と電源印加によって生じる固定子磁束との吸引力との合成となる。商用電源による直入れ始動では、インバータ駆動時のように回転子位置を特定できない(電圧位相を制御できない)ことから、始動時に印加される電圧の位相によっては、磁石磁束と固定子磁束とが反発する場合や、正規の回転方向と逆方向に吸引され、負のトルクを生じる場合がある。
このことから、投入される電圧の位相、すなわち固定子磁束が発生する位置によって、始動時のトルクに大きな差異が生じる問題がある。
従来、このような始動時のトルクの差異に対する具体的な解決策は提案されていなかったが、特許文献1に記載のように固定子から生じる偶数次、特に低次の高調波成分を抑制し、トルク変動を抑える手段が開示されている。すなわち、特許文献1には、固定子と回転子間の空隙面の磁束分布に生じる高調波成分を低減し、かつ固定子巻線のコイルエンドを小型化することを目的として、固定子が軸方向に分割された複数個の分割固定子からなり、1つの分割固定子は他の分割固定子に対して周方向に所定の角度だけずらして配置され、分割固定子の1つのティース毎に固定子巻線のコイルが巻かれている回転電機が開示されている。
特許文献2には、構造の複雑化や経済性を低下させることなく、始動時のトルク特性を改善することを目的として、固定子鉄心に集中巻きした固定子巻線を備え、回転子鉄心に回転子導体を備え、この回転子導体を短絡する短絡リングを周方向に2n(nは整数)分割した駆動用電動機が開示されている。
本発明の目的は、電源の投入タイミングや電圧の位相によって変化する固定子磁束の発生位置に関わらず、安定した始動トルクを発生できる電動機及び圧縮機を提供することにある。
本発明の回転子は、回転軸であるシャフトを挿入した回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に並べて設けた複数のスロットに埋設した始動用導体バーと、この始動用導体バーを前記回転子鉄心の両端面で短絡する短絡環とを含み、かご型巻線を形成する回転子を具備し、前記回転子鉄心は、前記始動用導体バーの設置位置より前記回転子の回転中心軸側に配置した少なくとも1つ以上の永久磁石を具備し、前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくしたことを特徴とする。
本発明によれば、電源の投入タイミングや電圧の位相によって変化する固定子磁束の発生位置に関わらず、安定した始動トルクを発生できる電動機及びこれを用いた圧縮機を提供することができる。
自己始動型永久磁石同期電動機の始動時において、投入される電圧の位相により、始動トルクに差異が生じることは上述した。この理由及び問題点について、下記に述べる。
電源電圧の印加によって生じる固定子磁束が、永久磁石磁束に対し、正規の回転方向に対し遅れ側に発生した場合、回転子には正規の回転方向と逆方向に吸引される磁石トルクが生じる。回転子は軸受けにより回転自在に支持されていることから、負の回転方向へと移動する。この場合、固定子回転磁界は正転方向に回転をしているため、誘導電動機のすべり−トルク特性としてみると、すべりが1以上の領域から始動を開始するため、誘導トルクとしては所望の値に対し過大に発生する。
この場合、電動機の軸受けに過大な応力がかかり、軸受け寿命が短くなってしまう問題や、出力軸端に取り付けられた機器に対し、大きなねじり応力が加えられ破壊に至るなど多大な悪影響を及ぼす恐れがある。
一方、電源電圧の印加によって生じる固定子磁束が、永久磁石磁束に対し、正規の回転方向に対し進み側に発生した場合については、回転子には正転方向の磁石トルクが生じることから、かご型巻線に生ずる誘導トルクへの影響は比較的小さく、始動に対する大きな問題は発生しない。このような理由により、電源の投入位相によって、発生し得る始動トルクに大きな差異が生じる。
本発明の自己始動型永久磁石同期電動機は、その一面において、自己始動型永久磁石同期電動機において、回転子鉄心両端面に有する短絡環の周方向における少なくとも1箇所以上の電気抵抗を局部的に大きくした構成を特徴とする。
本発明の自己始動型永久磁石同期電動機は、他の一面において、自己始動型永久磁石同期電動機において、回転子鉄心両端面に有する短絡環の周方向における少なくとも1箇所以上に切り欠き部を設けた構成を特徴とする。
以下、本発明による実施例について図面を参照して説明する。
図1は、本発明による第1の実施例を示す自己始動型永久磁石同期電動機の回転子の側面図である。また、図2は、図1におけるA−A’矢視図であり、本発明による第1の実施例を示す自己始動型永久磁石同期電動機の回転子短絡環の上面図である。図3は、図1におけるB−B’矢視図であり、本発明による第1の実施例を示す断面図である。
図1〜図3に示すように、回転子1は、回転軸であるシャフト6を挿入して設置された回転子鉄心2の内部に、多数の回転子スロット8を回転子鉄心2の周方向に並べて設け、その内部に始動用導体バー3が設けてある。そして、磁石挿入孔7に埋設した永久磁石4を、磁極数が2極となるように配置して構成している。回転子鉄心2は、鉄板を積層して貼り合わせた構成である。
ここで、永久磁石4は、希土類を主成分とする焼結磁石であり、厚み方向の断面形状が略台形状をしてあり、複数のセグメント(図では4枚:4A、4B、4C、4D)に分けて1箇所の磁石挿入孔7に並べて埋設されている。本実施例では、磁石挿入孔7が2箇所設けてあり、それぞれの磁石挿入孔7に4枚の永久磁石4A〜4Dが埋設されている。
なお、永久磁石4のセグメント数は、少なくとも1つ以上であれば構成可能であり、4枚以下あるいは4枚以上でもよく、永久磁石4の断面形状が略方形となるものでも構成可能である。また、永久磁石4の略円弧状の断面形状を有していても良い。磁石の主成分としては、フェライト系でも構成できるが、磁気エネルギー積が高い希土類が好ましく、焼結磁石の他にボンド磁石で形成することも可能である。また、磁極間には空孔5(5A、5Bからなる)を設け、磁極間に生ずる漏洩磁束の防止に配慮している。
図1および2において、回転子鉄心2の両端面には、回転子端板9(9A、9B)を配置している。この端板9を介して、アルミダイカスト又は銅ダイカストにより短絡環10(10A、10B)を形成し、この短絡環10が始動用導体バー3を周方向に短絡させることで、かご型巻線が形成される。
これらの図において、短絡環10は、出力軸側の短絡環10A、出力側と反対側の短絡環10Bとで異なる形状としている。具体的には、出力軸側の短絡環10Aに切り欠き部101が設けてあり、この切り欠き部101は、永久磁石4によって構成された磁極中心軸をd軸、d軸から電気角で90°ずれた軸をq軸とした場合、q軸に位置し、かつ磁極ピッチで対角する部分に一対設けてある。すなわち、回転子鉄心2の両端面に配置する短絡環10A、10Bのうち、一方の端面に配置した短絡環10Aに切り欠き部101を設けている。これにより、短絡環10Aの周方向と直交する断面の断面積は局部的に小さくなり、短絡環10Aの周方向の電気抵抗は局部的に大きくなる。
本実施例において、切り欠き部101はクサビ形状であり、短絡環10Aの露出面(シャフト6側の面)に、短絡環10の高さ方向の深さを有する形状としてある。そして、短絡環10Aの外周側から内周側に貫いた形状となっている。すなわち、切り欠き部101を設けた部位は、短絡環10の軸方向の長さ(厚さ)が短く(薄く)なっている。
本実施例においては、短絡環10Aに切り欠き部101を設けているが、短絡環10Aに切り欠き部101を設けずに、反対側の端面に配置した短絡環10Bだけに切り欠き部101を設けてもよい。
また、出力側と反対側の短絡環10Bの軸方向長L2に対し、出力軸側の短絡環10Aの軸方向長L1を短くすると共に、短絡環断面積が出力軸側で小、出力側と反対側で大となるように構成している。これにより、出力側と反対側の短絡環10Bに冷却用のフィンやバランスウェイト(いずれも図示せず)を取り付ける寸法を確保できる。
このように自己始動型永久磁石同期電動機の回転子を構成した場合、次のような効果がある。
図4は、本実施例における電源投入位相に対する始動トルクの測定結果を示したグラフである。本図において、横軸の電源投入位相は、固定子のコイルによって生じる磁界の位相である。
図4に示す通り、電源の投入位相による始動トルクの関係を測定したところ、切り欠き部のない従来構造において発生する始動トルクは、図中の点線で示すように、投入位相によって大きな差異が生じる。すなわち、投入位相0°近傍が顕著であり、必要始動トルクの約2倍以上のトルクが発生する。
この理由は、電源電圧の印加によって生じる固定子磁束が、永久磁石磁束に対し、正規の回転方向に対して遅れ側に発生し、回転子には正転方向と逆方向に吸引される磁石トルクが生じていることが挙げられる。つまり、回転子は軸受けにより回転自在に支持されていることから、負の回転方向へと移動を始めるため、誘導電動機のすべり−トルク特性としてみると、すべりが1以上の領域から始動を開始することとなり、誘導トルクとして過大に発生するためである。この場合、電動機の軸受けに過大な応力がかかり、軸受け破損や寿命の短縮等の問題がある。
そこで、図1〜3に示す構成の回転子を適用した電動機に対し、同様の試験を実施したところ、図4における実線で示す特性となり、投入位相に対する始動トルクの差異を大幅に低減することができた。この現象は、図1〜3で述べたように、q軸に位置する短絡環10に切り欠き部101を設けることで生じる事が分かった。
この理由は、この切り欠き部を設けた短絡環は始動時にかご型巻線に誘導される電流が抑制されること、切り欠き部によりかご型巻線の回路が擬似的に2分されるため、誘導電流が見かけ上、多極化されることにより始動時にかご型巻線に発生する誘導磁界を一時的に低減でき、投入位相0°近傍における始動トルクを低減できることにある。
図5は、切り欠き部高さに対する始動トルクの測定結果を示したグラフである。
短絡環10の切り欠き部高さを変化させて始動トルクを測定した結果、本図に示す特性を得た。すなわち、切り欠き部高さ(切り欠き部の軸方向の長さ)をh2、他の短絡環高さ(切り欠き部以外の軸方向の長さ)をh1とした場合、h2/h1が18%未満となると、必要始動トルクを下回る特性となることが分かった。本図から、切り欠き部高さと短絡環高さとの比率(h2/h1)は、百分率で18%以上とすることが望ましいと言える。
言い換えると、短絡環10に設けた切り欠き部の軸方向の長さは、短絡環10の切り欠き部以外の部位における軸方向の長さに対する、切り欠き部における軸方向の長さの百分率が18%以上とすることが望ましい。
さらに、短絡環10に設ける切り欠き部101の位置や個数について、始動トルクが増大する傾向にある電源投入位相の条件下で、種々実験によるパラメータサーベイを実施したところ、次のことが確認された。
(1)切り欠き部は、q軸に磁極ピッチで一対配置した場合に始動トルクは最も低減し、同様にd軸に一対配置した場合に最も大きくなる。また、d軸から回転方向に対し遅れ側にq軸に近付けるに従って減少傾向を示す。
(2)切り欠き部は、磁極数をPとすると、nP本で構成するのが好ましく(nは整数)、その本数を増やすにつれ、始動トルクが低減する。この場合、切り欠き部の配置ピッチは等ピッチとするのが望ましい。
この結果を鑑み、図1、2に示す回転子構造とすることで、電源投入位相に対する始動トルクの差異を低減でき、安定した始動トルクを発生させることができる。また、切り欠き部の配置や本数を変更することで、機器に応じた始動トルクを調整できる自己始動型永久磁石同期電動機を提供できる。
図6は、本発明による第2の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。図6において、図2と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図2と異なる点は、切り欠き部101をd軸最寄りで、かつ回転方向に対して遅れ側に角度θだけずらして配置していることである。
このように構成すれば、投入位相が0°近傍において、図1で述べた構成とは逆に始動トルクを大きくすることができる。つまり、外部回路(図示せず)等を用いて投入位相を制御することで、始動時のみ大トルクを有する負荷に対応できる効果がある。
図7は、本発明による第3の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図1〜図3と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図1〜図3と異なる点は、切り欠き部101を磁極数Pに対して2P個(2極構造であるため4個)具備し、q軸上を基点として等ピッチに配置した点にある。
このように構成した場合、d軸、q軸での切り欠き部101の配置の効果が各々相殺されるが、かご型巻線の電気的な回路数が倍に分割されることから、誘導電流がさらに多極化し、更に始動トルク低減範囲を増やすことができる。
図8は、本発明による第4の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図7と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図7と異なる点は、切り欠き部101をd軸あるいはq軸を基準に回転方向に対して遅れ側に任意の角度θだけずらして配置している点にある。
このように構成した場合、図7で相殺されたd軸、q軸での切り欠き部101の配置の効果を活用できるため、始動トルクを増やす方向へ調整が可能となる。
図9は、本発明による第5の実施例を示す同期電動機の回転子の側面図である。
本図において、図1と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図1と異なる点は、出力軸側の短絡10Aに設けた切り欠き部101に加え、出力側と反対側の短絡環10Bに対しても切り欠き部102を設けている点にある。
このように構成した場合、図1と同様の効果が得られるとともに、始動トルクの調整範囲が拡大できる。
図10は、本発明による第6の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図2と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図2と異なる点は、短絡環10の高さ方向ではなく、短絡環10の内周側に切り欠き部103を設けた点にある。
このように構成しても、図2と同様の効果が得られる。
図11は、本発明による第7の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図6と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本図の切り欠き部103の形状は、図10と同様であり、切り欠き部103の配置を図6と同様にしている。
このように構成しても、図6と同様の効果が得られる。
図12は、本発明による第8の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図7と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本実施例においては、図7と同様に、4箇所に切り欠き部103を設けている。図7と異なる点は、切り欠き部103の形状であり、図11と同様にした点にある。
このように構成しても、図7と同様の効果が得られる。
図13は、本発明による第9の実施例を示す同期電動機の回転子短絡環の上面図である。
本図において、図10と同一の構成要素には同一符号を付け、重複説明は避ける。
本構成が図10と異なる点は、短絡環10の外周側に切り欠き部104を設けた点にある。
このように構成しても、図10と同様の効果が得られる。
さらに、実施例1〜9の変形例を、図16〜20を用いて説明する。
図16〜20は、本発明による短絡環の変形例を示すものである。
図16においては、短絡環10の側面に開口部が円形の穴150を設けている。この穴150が上述の切り欠き部と同様の作用をもたらす。穴150は、短絡環10の外周面から内周面に貫通していてもよい、貫通していなくてもよい。また、穴150は、短絡環10の外周面でなく、内周面に設けてもよい。
図17においては、短絡環10の側面に開口部が矩形の穴151を設けている。穴151は、短絡環10の外周面から内周面に貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。また、穴151は、短絡環10の外周面でなく、内周面に設けてもよい。
図18においては、短絡環10の下面に切り欠き部152を設けている。
図19においては、短絡環10の上面に開口部が円形の穴153を設けている。穴153は、短絡環10の上面から下面に貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。また、穴153は、短絡環10の上面でなく、下面、すなわち回転子端板9に接する面に設けてもよい。
図20においては、短絡環10の上面に設けた切り欠き(溝)に樹脂部材154を設置している。これにより、短絡環10が細くなって強度が低くなる部分を補強することができる。樹脂部材154は、耐熱性樹脂が望ましく、ポリイミドなどが好適である。
図14は、本発明による第10の実施例を示す固定子の横断面図である。
本図において、固定子11は、固定子鉄心12に設けられた多数の固定子スロット(本実施例では30個)に、U相コイル14(14A〜14E)、V相コイル16(16A〜16E)、W相コイル15(15A〜15E)の三相のコイル(電機子巻線)を埋設して形成している。また、各々の相において、巻装されるコイルの巻数の関係は、A、B、D、Eは等しく、Cのみ他の巻数より少なくなるように巻装している。あるいは、A=E>B=D=Cのように構成することも可能である。
このように構成した固定子は、巻線の配置によって生ずる起磁力高調波を低減でき、かつ一相あたりの巻線数を厳密に調整できることから、上述した全ての回転子と組合せることで、始動時に生ずる高調波非同期トルクを低減できると同時に、回転子導体本数と固定子巻数との比を厳密に調整できる。これにより、始動トルクの調整範囲をさらに広げることができる。
図15は、本発明による第11の実施例を示す圧縮機の縦断面図である。
以下、本図を用いて圧縮機82の構造を説明する。
圧縮機構部83は、固定スクロール部材60の端板61に直立する渦巻状ラップ62と、旋回スクロール部材63の端板64に直立する渦巻状ラップ65とを噛み合わせて形成されている。
そして、旋回スクロール部材63をクランクシャフト6によって旋回運動させることで圧縮動作を行う。
固定スクロール部材60及び旋回スクロール部材63によって形成される圧縮室66a、66bのうち、最も外周側に位置している圧縮室66a、66bは、旋回運動に伴って両スクロール部材60、63の中心に向かって移動し、容積が次第に縮小する。
両圧縮室66a、66bが両スクロール部材60、63の中心近傍に達すると、両圧縮室66内の圧縮ガスは圧縮室66と連通した吐出口67から吐出される。
吐出された圧縮ガスは、固定スクロール部材60及びフレーム68に設けられたガス通路(図示せず)を通ってフレーム68下部の圧力容器69内に至り、圧力容器69の側壁に設けられた吐出パイプ70から圧縮機82外に排出される。
図1〜図14にて説明した固定子12と回転子1とを含む自己始動型永久磁石同期電動機18が、圧力容器69内に設置されている。この自己始動型永久磁石同期電動機18を稼動することにより、圧縮機82の圧縮動作を行う。
電動機18の下部には、油溜め部71が設けられている。油溜め部71内の油は回転運動により生ずる圧力差によって、クランクシャフト6内に設けられた油孔72を通って、旋回スクロール部材63とクランクシャフト6との摺動部、滑り軸受け73等の潤滑に供される。
このように、圧縮機駆動用電動機として、図1〜14及び図16〜20で述べた自己始動型永久磁石同期電動機を適用すれば、圧縮機の高効率化を実現できるとともに、電源投入位相によって過大に生じる始動トルクが軽減できるため、軸受け73や旋回スクロール部材63の応力破壊を防止できるなど、信頼性の向上に寄与することができる。
また、図6、図11の回転子を適用した電動機を用いれば、瞬時的にトルクが必要な場合に対応できる。
以上、本発明によれば、電源の投入タイミングや電圧の位相によって変化する固定子磁束の発生位置に関わらず、安定した始動トルクを発生でき、かつ始動トルクを任意に調整できる自己始動型永久磁石同期電動機及びこれを用いた圧縮機を提供できる。
さらに、上記の圧縮機は、空気調和機、冷蔵庫、除湿機などのヒートポンプに適用することができる。
1:回転子、2:回転子鉄心、3:始動用導体バー、4:永久磁石、5:空孔、6:シャフト又はクランクシャフト、7:磁石挿入孔、8:回転子スロット、9:回転子端板、10:短絡環、11:固定子、12:固定子鉄心、13:固定子スロット、14:U相コイル、15:W相コイル、16:V相コイル、17:絶縁部、18:自己始動型永久磁石同期電動機、60:固定スクロール部材、61:端板、62:渦巻状ラップ、63:旋回スクロール部材、64:端板、65:渦巻状ラップ、66:圧縮室、67:吐出口、68:フレーム、69:圧力容器、70:吐出パイプ、71:油溜部、72:油孔、73:滑り軸受け、82:圧縮機、83:圧縮機構部101〜104:切り欠き部。
Claims (15)
- 回転軸であるシャフトを挿入した回転子鉄心と、この回転子鉄心の周方向に並べて設けた複数のスロットに埋設した始動用導体バーと、この始動用導体バーを前記回転子鉄心の両端面で短絡する短絡環とを含み、かご型巻線を形成する回転子を具備し、前記回転子鉄心は、前記始動用導体バーの設置位置より前記回転子の回転中心軸側に配置した少なくとも1つ以上の永久磁石を具備し、前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくしたことを特徴とする回転子。
- 前記回転子鉄心の両端面に配置する前記短絡環のうち、少なくとも一方の端面に配置した前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくしたことを特徴とする請求項1記載の回転子。
- 前記永久磁石が磁極数Pの磁極を構成し、少なくともnP箇所以上(nは整数)で前記短絡環の周方向の電気抵抗を局部的に大きくしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転子。
- 前記短絡環の周方向と直交する断面の断面積を局部的に小さくしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転子。
- 前記短絡環に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回転子。
- 前記短絡環に設けた前記切り欠き部が、前記短絡環の軸方向の長さを短くした形状であることを特徴とする請求項5記載の回転子。
- 前記短絡環に設けた前記切り欠き部の軸方向の長さは、前記短絡環の前記切り欠き部以外の部位における軸方向の長さに対する、前記切り欠き部における軸方向の長さの百分率が18%以上であることを特徴とする請求項6記載の回転子。
- 前記短絡環の内周側に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項5記載の回転子。
- 前記短絡環の外周側に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項5記載の回転子。
- 前記短絡環に穴を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の回転子。
- 前記回転子鉄心の両端面に配置する2つの前記短絡環の軸方向長さが異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の回転子。
- 固定子鉄心に設けられた複数の固定子スロットと、この固定子スロット内に設けられた三相の電機子巻線を有し、前記固定子スロットのうち、少なくとも一対の固定子スロットに納められる前記電機子巻線の巻数が、他の一対の固定子スロットに納められる前記電機子巻線の巻数と異なる固定子を具備することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の回転子。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の回転子を具備することを特徴とする電動機。
- 請求項13記載の電動機を具備することを特徴とする圧縮機。
- 請求項14記載の圧縮機を具備することを特徴とするヒートポンプ。
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---|---|---|---|
JP2008194816A JP2010035329A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 回転子並びにこれを用いた電動機及び圧縮機 |
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JP2008194816A JP2010035329A (ja) | 2008-07-29 | 2008-07-29 | 回転子並びにこれを用いた電動機及び圧縮機 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020036518A (ja) * | 2018-08-31 | 2020-03-05 | 日産自動車株式会社 | 可変磁束型回転電機 |
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2008
- 2008-07-29 JP JP2008194816A patent/JP2010035329A/ja not_active Withdrawn
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