JP2010024729A - 落石防止工法及び落石防止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】落石防止線材の緩衝線材部を略均一に圧接し、安定したエネルギー吸収効果が得られる落石防止工法及び落石防止装置を提供する。
【解決手段】傾斜面1上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材3を設けて傾斜面1を覆い、該落石防止線材3を地盤に設けた固定具4,4A,5に接続した落石防止工法において、落石防止線材3に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材3の緩衝線材部3Yの摺動を許容する緩衝器具11を設け、この緩衝器具11は、緩衝線材部3Yに3方向以上から圧接する。従来の上下2方向からのように緩衝線材部が扁平に変形することがなく、緩衝線材部3Yを均一に挟持することができ、緩衝線材部3Yに所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部3Yの表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
【選択図】図1
【解決手段】傾斜面1上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材3を設けて傾斜面1を覆い、該落石防止線材3を地盤に設けた固定具4,4A,5に接続した落石防止工法において、落石防止線材3に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材3の緩衝線材部3Yの摺動を許容する緩衝器具11を設け、この緩衝器具11は、緩衝線材部3Yに3方向以上から圧接する。従来の上下2方向からのように緩衝線材部が扁平に変形することがなく、緩衝線材部3Yを均一に挟持することができ、緩衝線材部3Yに所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部3Yの表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、落石防止工法及び落石防止装置に関するものである。
従来、浮き石等と称せられる落下のおそれがある岩石が点在する傾斜面上に複数のワイヤーロープを張設し、これらワイヤーロープを傾斜面に打ち込んだアンカーにより傾斜面に係止させた工法や、傾斜面における落石発生防止として傾斜面の全体を金網で覆って、この金網で落石の発生を防止する工法が公知である(例えば特許文献1)。
また、耐衝撃性を向上するために、落石の衝撃力を網体および横ロープ材の伸張を伴う衝撃部の緩衝作用により吸収する落石防止工法も提案され、緩衝部金具は、2個の挟持本体と挟持ボルトと、ナットと、フック体とから構成される。挟持本体は、長板状で一方面に長手方向に且つ板厚方向にウエーブしたロープ挟持溝を形成し、他方面両端にフック用貫通孔(フック体連結部)を設けた突部を突設してなる。更に長手方向両側に表裏貫通するボルト孔を穿設したものである。
実開平5−42309号公報
特開2003−129425号公報
そして、前記緩衝部金具は、ロープを2個の挟持本体を対面させたロープ挟持溝に装着し、挟持ボルト及びナットの挾圧でロープを挟持し、フック体を適宜な箇所と連結して、ロープに一定以上の張力が加わると、ロープを緩衝部金具で一定の挟持力で保持した状態で、当該ロープが伸長する際の摩擦力で衝撃力を吸収することができる。
しかし、前記緩衝部金具のように、一対の挟持本体によりロープを上下から挟持すると、上下方向からロープが押し潰され、扁平になり、強度を損ねると共に、均一な力で挟持できないため、一定の力で衝撃力を吸収できない場合がある。
解決しようとする問題点は、落石防止線材の緩衝線材部を略均一に圧接し、安定したエネルギー吸収効果が得られる落石防止工法及び落石防止装置を提供する点である。
請求項1の発明は、傾斜面上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材を設けて該傾斜面を覆い、前記落石防止線材を地盤に設けた固定具に接続した落石防止工法において、前記落石防止線材に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材の緩衝線材部の摺動を許容する緩衝器具を設け、この緩衝器具は、前記緩衝線材部に3方向以上から圧接する落石防止工法である。
請求項2の発明は、前記緩衝器具は、前記緩衝線材部を装着する本体と、該緩衝金具を前記固定具に接続する連結具とを備え、前記本体に装着した緩衝線材部を圧接した後、前記連結具により前記緩衝金具を前記固定具に連結する落石防止工法である。
請求項3の発明は、傾斜面上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材を設けて該傾斜面を覆い、前記落石防止線材を地面に設けた固定具に接続した落石防止装置において、前記落石防止線材に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材の緩衝線材部の摺動を許容する緩衝器具を設け、この緩衝器具は、前記緩衝線材部に3方向以上から圧接する圧接部を備える落石防止装置である。
請求項4の発明は、前記緩衝器具は、前記緩衝線材部を挿通するテーパ孔部と、このテーパ孔部と前記緩衝線材部の外周との間に配置された3つ以上の前記圧接部と、前記圧接部を前記緩衝線材部の外周に当てる当て部とを備える落石防止装置である。
請求項5の発明は、前記圧接部は球状体からなる落石防止装置である。
請求項6の発明は、圧接状態において、円周方向に隣合う前記球状体が接する落石防止装置である。
請求項1及び3の発明によれば、緩衝線材部に3方向以上から圧接するから、従来の上下2方向からのように緩衝線材部が扁平に変形することがなく、緩衝線材部を均一に挟持することができ、緩衝線材部に所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部の表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
請求項2の発明によれば、従来、現場で作業員が時間と労力を費やして組み立てていた緩衝器具を、工場などで本体に緩衝線材部を挿通し、緩衝線材部を圧接し、調整検査を行った後、現場は、緩衝金具と固定具とを連結具により連結でき、現場作業の軽減、品質及び安全性の向上を図ることが可能となる。
請求項4の発明によれば、当て部によってテーパ孔内の圧接部を3方向以上から緩衝線材部に圧接することにより、従来の上下2方向からのように緩衝線材部が扁平に変形することがなく、緩衝線材部を均一に挟持することができ、緩衝線材部に所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部の表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
請求項5の発明によれば、球状体が緩衝線材部に均一に圧接する。
請求項6の発明によれば、緩衝線材部の全周で複数の球状体同士が接した時点で、当て部を使っても、それ以上、球状体の圧接力が上がることがなく、作業者の熟練度に係わらず、均一な圧接力に設定することができる。
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
図1〜図7は実施例1を示しており、傾斜面1上に点在する落下のおそれがある浮き石(図示せず)の表面を覆うように、ワイヤーロープ等のロープ部材からなる浮き石に接して該浮き石の落下を防止する落石防止線材3,3を縦横に複数格子状に配設し、その横方向の落石防止線材3の両側の端部3T,3Tを傾斜面1(地盤)に打ち込んで固定したアンカー等の一端側固定具4及び他端側固定具5にそれぞれ接続して浮き石の道路等への落下を防止している。一方、縦方向の落石防止線材3の上端たる端部3Tを傾斜面1(地盤)に打ち込んで固定したアンカー等の一端側固定具4Aにそれぞれ接続して浮き石の道路等への落下を防止している。尚、格子状に配置された落石防止線材3における交点においては連結部材たるクロス金具6によって落石防止線材3相互を固定接続しており、また落石防止線材3は金網などによって形成してもよい。また、縦方向の落石防止線材3の下端たる端部3Tは、最下段の横方向の落石防止線材3に端末金具7により連結されている。
また、縦方向,横方向の落石防止線材3,3の間には、それぞれ縦方向,横方向の補助落石防止線材8,8が設けられ、縦方向,横方向の落石防止線材3,3と縦方向,横方向の補助落石防止線材8,8との交差部は、連結部材たるクロスクリップ6Aにより連結され、また、縦方向,横方向の補助落石防止線材8,8の端部は、端末金具7Aにより、縦方向,横方向の落石防止線材3,3に連結されている。また、縦方向,横方向の落石防止線材3,3に、金網などの網体9を設ける。
そして、縦方向と横方向の落石防止線材3,3に緩衝金具11を設け、この例では、横方向の落石防止線材3の両側の端部3T,3Tと、縦方向の落石防止線材3の上端である端部3Tに設ける。
落石防止線材3の端部3Tに、連結受部たる輪部12を形成し、この輪部12に前記緩衝器具11を連結具13により連結し、落石防止線材3の余長部である緩衝線材部3Yの端部にストッパ14を設け、このストッパ14側を連結具15により前記固定具4,4A,5に連結する。
前記緩衝器具11は、本体16と、この本体16に設けられ前記緩衝線材部3Yを挿通する貫通孔17と、この貫通孔17に設けられたテーパー孔部18と、このテーパー孔部18内に挿入される圧接部たる複数の球状体19と、テーパー孔部18内の球状体19を緩衝線材部3Yに押し当てる係入部材たるテーパープラグ20と、このテーパープラグ20に設けられ前記テーパー孔部18に挿入される当て部20Aと、前記テーパープラグ20を押し込む押込み部材たる押込みプラグ21と、前記本体16に螺合して前記押込みプラグ21を前記テーパー孔部20A側に移動させる連結手段たる連結ソケット22とを備え、前記球状部19は鋼球などの硬質な球からなる。
前記本体16は、段部31により外形を小さく形成した一側に、前記連結具15に連結する連結部32を設け、他側に段部33により外形を大きくした雌螺子部34を設け、雌螺子部34側に前記テーパー孔部18が形成されている。尚、本体16の各部の外形形状は略円形である。また、連結部32には雌螺子部32Aが形成されている。
前記テーパープラグ20の当て部20Aは、前記テーパー孔部18に係入するように裁頭円錐型に形成され、その当て部20Aのテーパーの角度は、前記テーパー孔部18と略等しく、他側に外形の大きな鍔部20Bが設けられている。また、テーパープラグ20には、前記貫通孔17に対応して、貫通孔20Cが穿設されている。尚、テーパープラグ20の各部の外形形状は略円形である。
前記押込みプラグ21は、前記テーパープラグ20の鍔部20Bを押す凹部である当接部35Aを形成した鍔部35と、この鍔部35の段部36により外形形状が小さく形成された挿入部37と、前記貫通孔17に対応して、穿設された貫通孔38とを備える。尚、前記鍔部20Bは当接部35A内に挿入される。また、前記鍔部35は前記雌螺子部34より径小である。
前記押込みプラグ21は、前記雌螺子部34に螺合する雄螺子部39を有する筒状部40と、他側に位置して前記押込みプラグ21の挿入部37を挿入する挿入孔41と、この挿入孔41の周囲に設けられ前記鍔部35を押す押え部42とを備える。
前記本体16の連結部32には、雌螺子部32Aが形成され、この雌螺子部32Aにナット43が螺合する。
次に、前記緩衝器具11の組立方法について説明する。図3中、右側から、挿入孔41及び貫通孔38,20C,17に、ワイヤーロープなどからなる緩衝線材部3Yを挿通し、テーパー孔部18に複数の球状体19を挿入し、これら球状部19を緩衝線材部3Yの外周とテーパー孔部18との間に配置する。そして、テーパープラグ20の当て部20Aをテーパー孔部18に挿入し、そのテーパープラグ20の鍔部20Bの一部を収納するようにして、押込みプラグ21の当接部35Aを当接し、この状態で、雌螺子部34に雄螺子部39を螺合していくと、テーパープラグ20に押されて球状部19,19・・・がテーパー孔部18に沿って他側に移動すると共に、緩衝線材部3Yの中心に向かって移動し、圧接し、円周方向で隣り合う球状体19同士が当たるまで移動し、この後は、連結ソケット22を回してねじ込むことはできなくなる。また、この状態で、鍔部20B,35と雌螺子部34との間には隙間があり、円周方向で隣り合って接した複数の球状体19,19・・・が、緩衝線材部3Yの中心に向かって、該緩衝線材部3Yに均等に圧力を加える。
このようにして、図4に示すように、球状体19,19・・・画互いに接触するまで、緩衝線材部3Yを圧縮し、この際の圧縮する圧力は均等であり、圧力のかかる方向は全て緩衝線材部3Yの断面中心に向かうことになる。
次に、前記連結具13,15について説明すると、連結具15は、前記輪部12に連結するUボルト51と、このUボルト51の端部を挿通する連結板52と、連結板52に挿通したUボルト51の端部に着脱可能に螺合するナット53と、Uボルト51の端部に挟まれた連結板52の中央側に穿設され前記連結部32を挿通する連結孔54とを備え、この連結孔53に挿通した前記連結部32の雌螺子部32Aに、前記ナット43を螺合することにより、緩衝器具11を端部に位置する輪部12に着脱可能に連結する。一方、連結具15は、固定具4,4A,5の連結受部たる輪部8に連結する連結するUボルト51と、このUボルト51の端部を挿通する連結板52と、連結板52に挿通したUボルト51の端部に着脱可能に螺合するナット53と、Uボルト51の端部に挟まれた連結板52の中央側に穿設され緩衝線材部3Yを挿通する連結孔54Aとを備え、連結孔54Aに緩衝線材部3Yを挿通し、前記ストッパ14が連結板52に係止する。
そして、落石が発生し、格子状に配置した落石防止線材3,3に所定以上の張力が発生すると、端部に設けた緩衝器具11において、本体16に対して、緩衝線材部3Yが移動し、この際、緩衝線材部3Yと複数の球状体19との摩擦摺動により、落石の衝撃エネルギーを吸収でき、落石防止線材3の破断を防止し、アンカーである固定具4,4A,5に作用する負荷を一定限度に制御し、それらの破損などを回避することができる。
また、上述した摩擦摺動を利用する緩衝器具11と連結具13,15のユニットにより、岩塊の落下エネルギーを吸収しながら、岩塊を斜面1上で停止させたり、岩塊を本防止構造化端部の安全な場所まで誘導し、岩塊の道路上への飛び出しや、施設などへの衝突を回避することができる。
このように本実施例では、傾斜面1上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材3を設けて傾斜面1を覆い、該落石防止線材3を地盤に設けた固定具4,4A,5に接続した落石防止工法において、落石防止線材3に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材3の緩衝線材部3Yの摺動を許容する緩衝器具11を設け、この緩衝器具11は、緩衝線材部3Yに3方向以上から圧接し、また、このように本実施例では、傾斜面1上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材3を設け、該落石防止線材3を地面に設けた固定具4,4A,5に接続した落石防止装置において、落石防止線材3に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材3の緩衝線材部3Yの摺動を許容する緩衝器具11を設け、この緩衝器具11は、緩衝線材部3Yに3方向以上から圧接する圧接部たる球状体19を備えるから、従来の上下2方向からのように緩衝線材部が扁平に変形することがなく、緩衝線材部3Yを均一に挟持することができ、緩衝線材部3Yに所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部3Yの表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
また、このように本実施例では、緩衝器具11は、緩衝線材部3Yを装着する本体16と、該緩衝金具11を固定具4,4A,5に接続する連結具15とを備え、本体16に装着した緩衝線材部3Yを圧接した後、連結具15により緩衝金具11を固定具4,4A,5に連結するから、従来、現場で作業員が時間と労力を費やして組み立てていた緩衝器具11を、工場などで本体に緩衝線材部3Yを挿通し、緩衝線材部3Yを圧接し、調整検査を行った後、現場は、緩衝金具11と固定具4,4A,5とを連結具15により連結でき、現場作業の軽減、品質及び安全性の向上を図ることが可能となる。
また、このように本実施例では、緩衝金具11は、緩衝線材部3Yを挿通するテーパ孔部18と、このテーパ孔部18と緩衝線材部3Yの外周との間に配置された3つ以上の圧接部たる球状体19と、この球状体19を緩衝線材部3Yの外周に当てる当て部20Aとを備えるから、当て部によりテーパ孔内の圧接部を3方向以上から緩衝線材部に圧接することにより、従来の上下2方向からのように緩衝線材部3Yが扁平に変形することがなく、緩衝線材部3Yを均一に挟持することができ、緩衝線材部3Yに所定以上の張力が発生した場合に、緩衝線材部3Yの表面で略均一に摩擦抵抗力が発生し、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
また、このように本実施例では、圧接部は球状体19からなるから、球状体19が緩衝線材部3Yに均一に圧接する。
また、このように本実施例では、圧接状態において、円周方向に隣合う前記球状体が接するから、緩衝線材部3Yの全周で複数の球状体19,19同士が接した時点で、当て部20Aを使っても、それ以上、球状体19の圧接力が上がることがなく、作業者の熟練度に係わらず、均一な圧接力に設定することができる。
上記のような構成により、従来のようにワイヤーロープを上下に挟む機構と違い、ワイヤーロープ断面が押し潰されて扁平になるような状態は生じない。
その結果、落石防止線材の張力で緩衝線材部3Yが摺動する際に生じる摩擦抵抗力は常に緩衝線材部3Yの表面に均一に発生するため一定であり、安定したエネルギー吸収効果を発揮することができる。
このように緩衝線材部3Yを複数方向から均等な圧力でしかも同時に圧縮することができるため、静的荷重に対しても、圧縮力以上の静的荷重が緩衝線材部3Yに働いた場合でも、従来と違い、スムーズにその緩衝機能を発揮することができることが実験で確認された。
また、球状体19が互いに接した時点で連結ソケット22が締まらなくなると機構的な確実性を有しているため、従来工法のように、緩衝具のボルト締付作業において、人的要因が原因での個々の緩衝具間に性能不均一が発生する懸念要素を会場することができる。
また、従来のように、緩衝具のナット締付力確認のための軸力管理が構造上不要となり、施工管理上の負担を軽減することができる。しかも、連結ソケット22を雌裸子部34に螺合する力も小さく済む。
さらに、球状体19の数や直径を調整することで様々なサイズの落石防止線材3に対応することや、落石防止線材3に発生する張力を調整することが可能であり、状況に即した柔軟な対応が可能となる。
そして、従来では、緩衝装置を現場の傾斜面1上で、大変な労力と時間を費やして施工しており、作業員が現場で大変は労力と時間を要して施工するにも係わらず、現場条件が難しかったり、季節、天候、現場を取り巻く自然環境などにより、施工性の向上を図ることが困難であった。
これに対して、固定具4,4A,5及び連結具15のUボルト51及びナット53を除いた状態で防護構造の部材を工場で組み立て、検査,検品を行った後、各施工現場に搬入する。施工現場では、固定具4,4A,5の箇所まで部材を持ち上げて、Uボルト51及びナット53を用いて、固定具4,4A,5に、緩衝器具11を介して、落石防止線材3を連結する。
本工法の特徴は、施工方法の簡略化を考慮し、落石エネルギーを吸収するための装置をユニット化し、工場生産を可能にしたことにある。前記ユニットとしては、少なくとも、緩衝器具11とストッパ14を有する緩衝線材部3Yを備える。
従来工法では、斜面上で緩衝器具を組み立てた後に緩衝器具を挟んだワイヤーロープを緩衝器具のボルトによって規定のトルクまで締め付けなければならなく、その作業は斜面上の不安定な状態で大型のトルク表示レンチを用いて設定のトルクまで締付作業を行わなければならず、大変な労力と時間を必要としていた。また、緩衝器具のボルトのトルク管理は非常に重要な項目であるが、現場条件や作業員の熟練度などによるばらつきが予想される。
本工法では、緩衝器具11を含む部分をユニット化することにより、前持ってユニットを工場で生産した後、検査・検品を行った均一な品質のユニットを現場に搬送し、施工することで、施工の合理化と、品質及び安全性の向上を図ることができる。
そもそも、従来工法では、緩衝器具のワイヤーロープ(本実施例の緩衝線材部3Y)が1m摺動するときのエネルギー吸収量を基準にして施工箇所ごとに緩衝器具の設計数量を決定しており、ワイヤーロープの設計長さは、ワイヤーロープの摺動長さを設計摺動長さの3倍程度に設定して横方向,縦方向のワイヤーロープの長さを決定し、施工していた。
本工法では、従来工法と同様に、施工箇所ごとにワイヤーロープの摺動長さを設計に寄り算出することができるものであるため、予め緩衝器具11を含むユニットを工場で生産し、検査・検品を行った安全なユニットを現場に搬入して施工する工法とするため、従来工法と比較して合理的で信頼性の高い工法となる。
さらに、落石防止線材3の端部に、該落石防止線材3の一部を構成する緩衝線材部3Yを切り離して設けたことにより、緩衝線材部3Yの長さだけ、残りの落石防止線材3が短く済み、短くなった分だけ落石防止線材3の施工性が向上する。
本工法ではそれらを複合的に考慮した結果、ストッパ14を有する緩衝線材部3Y,緩衝器具11,アンカー接続部材たる連結具15,端部接続部材たる連結具13を1つのセットとしてユニット化した。その結果、本工法は従来工法に比較して、施工の合理化,品質の向上,安全性の向上,工期の短縮,その結果のコストの削減が可能となる。
さらに、従来工法では、落石が実際に発生してワイヤーロープに滑りが起きた場合に、滑り箇所のワイヤーロープ素線の損傷が避けられないため、ワイヤーロープの張替えが必要になることが予想される。その場合、滑りの生じたワイヤーロープを緩衝器具ごと張り替えることになり、多くの時間と工事費が必要となる。
本工法では、緩衝線材部3Yを除く落石防止線材3は、滑りとは全く無関係であり、張替えの必要がなく、滑りの生じた当該箇所の緩衝線材部3Yを新しい緩衝線材部3Yと交換するだけで済むため、低コストで落石後の補修工事を行うことができる。
図8〜図13は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例は、クロス金具6の変形例を示し、同図に示すように、クロス金具60は、一対の第1金具61と第2金具71とを備え、これら第1及び第2金具61,71により、交差方向の落石防止線材3,3をそれぞれ挟持する。
図10中、下方に図示した前記第1金具61は、略直交する一側部62と他側部63とを一体に有し、同様に前記第2金具72は、略直交する一側部72と他側部73とを一体に有し、第1金具の一側部62と他側部63は、それぞれ合わせ面62M,63Mを有すると共に、これら合わせ面62M,63Mに対応して、第2金具の他側部73と一側部72は、それぞれ合わせ面73M,72Mを有する。そして、合わせ面62M,73Mに対して、合わせ面63M,72Mは略直交する。
前記第1金具61には、前記一側部62と他側部63の間で、前記合わせ62M,63Mと交差する方向に貫通孔61Kが形成され、この貫通61Kに対応して、前記第2金具71には、前記一側部72と他側部73の間で、前記合わせ72M,73Mと交差する方向に貫通孔71Kが形成されている。尚、貫通孔61K,71Kと合わせ面62M,63M,72M,73Mとはそれぞれ略45度の角度をなす。
前記第1金具61の一側部62には、前記合わせ面62Mに沿って、ガイド突条64,65,64が外側に突設され、中央の前記ガイド突条65の両側に間隔を置いて、前記ガイド突条64,64を設けている。これに対して、前記第2金具71の他側部73には、前記合わせ面73Mに沿って、ガイド突条64,64が外側に突設され、これらガイド突条64,64は、間隔を置いて、前記合わせ面62Mのガイド突条64,65及びガイド突条65,64の間に対応する位置に配置されている。
一方、前記第2金具71の一側部72には、前記合わせ面72Mに沿って、ガイド突条64,65,64が外側に突設され、中央の前記ガイド突条65の両側に間隔を置いて、前記ガイド突条64,64を設けている。これに対して、前記第1金具61の他側部63には、前記合わせ面63Mに沿って、ガイド突条64,64が外側に突設され、これらガイド突条64,64は、間隔を置いて、前記合わせ面72Mのガイド突条64,65及びガイド突条65,64の間に対応する位置に配置されている。
図12示すように、前記ガイド突条64は、凹部64Aの底部に湾曲状の摺動面64Bを有し、また、図13に示すように、前記ガイド突条65は、凹部65Aの底部に湾曲状の摺動面65Bを有する。また、組立状態で、一方の摺動面64B,65B,64Bと他方の摺動面64B,64Bの間隔は落石防止線材3の直径より狭い。
図中81は前記貫通孔61K,71Kに挿通するボルトであり、先端にナット82が螺合される。
合わせ面62M,73M同士を合わせるようにして、合わせ面62M側のガイド突条64,65,64と、合わせ面73M側のガイド突条64,64の間に一側方向の落石防止線材3を挟み、合わせ面63M,72M同士を合わせるようにして、合わせ面63M側のガイド突条64,64と、合わせ面72M側のガイド突条64,65,64の間に他側方向の落石防止線材3を挟み、貫通孔61K,71Kにボルト81を挿通し、ナット82を締めると、図8及び図9に示すように、合わせ面62M,73M同士及び合わせ面63M,72M同士が接近する方向に移動し、一方の摺動面64B,65B,64Bと他方の摺動面64B,64Bとにより落石防止線材3が湾曲するように変形し、摺動面64B,65Bと落石防止線材3との間に高い摩擦力が生じる。尚、12及び図13に示すように、締付状態で、合わせ面62M,73M同士及び合わせ面63M,72M同士の間には隙間が介在し、したがって、ナット82の締付トルクを調整することにより、任意の摩擦力で落石防止線材3を把持することができる。
また、それぞれの合わせ面62M,73M間及び合わせ面63M,72M間に、交差方向の落石防止線材3,3を独立して把持するから、従来に比べて、個々の落石防止線材3,3を所定の摩擦力で把持することができる。そして、ガイド突条64,65に対して、落石防止線材3が摺動することにより、衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
1 斜面
3 落石防止線材
3Y 緩衝線材部
4 一側固定具
4A 一側固定具
5 他側固定具
11 緩衝器具
15 連結具
16 本体
18 テーパー孔部
19 球状体(圧接部)
20A 当て部
21 押込みプラグ(押込み部材)
22 連結ソケット(連結手段)
3 落石防止線材
3Y 緩衝線材部
4 一側固定具
4A 一側固定具
5 他側固定具
11 緩衝器具
15 連結具
16 本体
18 テーパー孔部
19 球状体(圧接部)
20A 当て部
21 押込みプラグ(押込み部材)
22 連結ソケット(連結手段)
Claims (6)
- 傾斜面上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材を設けて該傾斜面を覆い、前記落石防止線材を地盤に設けた固定具に接続した落石防止工法において、前記落石防止線材に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材の緩衝線材部の摺動を許容する緩衝器具を設け、この緩衝器具は、前記緩衝線材部に3方向以上から圧接することを特徴とする落石防止工法。
- 前記緩衝器具は、前記緩衝線材部を装着する本体と、該緩衝金具を前記固定具に接続する連結具とを備え、前記本体に装着した緩衝線材部を圧接した後、前記連結具により前記緩衝金具を前記固定具に連結することを特徴とする落石防止工法。
- 傾斜面上に複数のロープ部材やネット等の落石防止線材を設けて該傾斜面を覆い、前記落石防止線材を地面に設けた固定具に接続した落石防止装置において、前記落石防止線材に所定以上の張力が発生した場合に該落石防止線材の緩衝線材部の摺動を許容する緩衝器具を設け、この緩衝器具は、前記緩衝線材部に3方向以上から圧接する圧接部を備えることを特徴とする落石防止装置。
- 前記緩衝器具は、前記緩衝線材部を挿通するテーパ孔部と、このテーパ孔部と前記緩衝線材部の外周との間に配置された3つ以上の前記圧接部と、前記圧接部を前記緩衝線材部の外周に当てる当て部とを備えることを特徴とする請求項3記載の落石防止装置。
- 前記圧接部は球状体からなることを特徴とする請求項3又は4記載の落石防止装置。
- 圧接状態において、円周方向に隣合う前記球状体が接することを特徴とする請求項5記載の落石防止装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008187836A JP2010024729A (ja) | 2008-07-18 | 2008-07-18 | 落石防止工法及び落石防止装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012172306A (ja) * | 2011-02-17 | 2012-09-10 | Civil:Kk | 落石予防施設、落石予防構造及び落石予防工法 |
CN105113523A (zh) * | 2015-09-18 | 2015-12-02 | 四川奥思特边坡防护工程有限公司 | 一种边坡防护缓冲消能装置 |
JP2016118058A (ja) * | 2014-12-22 | 2016-06-30 | 神鋼鋼線工業株式会社 | エネルギー吸収ユニット、およびそれを備えた落下防止装置、エネルギー吸収装置、ならびに落下防止構造 |
-
2008
- 2008-07-18 JP JP2008187836A patent/JP2010024729A/ja active Pending
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