JP2010024510A - 温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼 - Google Patents

温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性および熱伝導率が高く、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、0.03%≦C≦0.25%、0.01%≦Si≦0.40%、0.10%≦Mn≦1.50%、P≦0.30%、S≦0.050%、0.05%≦Cu≦0.20%、0.05%≦Ni≦1.50%、5.0 %≦Cr≦10.0%、0.10%≦Mo≦2.00%、0.01%≦V≦0.10%、N≦0.10%、O≦0.01%、Al≦0.05%であり、且つ、式(Cr+Mo)≦10%、および式7≦(Cr+3.3Mo)を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物から成る組成を有する鋼から成る、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
【選択図】図2

Description

本発明は、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼に関するものである。
プラスチック製の日用雑貨品、家電製品のプラスチック製外装・内装部品、OA機器のプラスチック製外装・内装部品、携帯電話のプラスチック製外装部品、自動車やオートバイ等のプラスチック製内装部品や外装部品、ライト類のプラスチック製反射板、プラスチック製光学レンズ、プラスチック製食品容器、プラスチック製医療用部品、プラスチック製化粧容器、プラスチック製精密成型品(受板,ペットボトル成型母型,ゴム型類)、プラスチック製導光板、プラスチック製治工具などのプラスチック部品が知られている。そのようなプラスチック部品は射出成形機で代表される成形機においてプラスチック成形金型を用いて成形される。
プラスチック製品の不良の一つに、金型内で樹脂が合流する部分に凹凸ができるウエルドラインと呼ばれる不良がある。近年、プラスチック製品を塗装レスで使用できるようにするなどのためにウエルドラインの無い表面品質が求められる。このウエルドラインは、成形金型の温度を加熱して樹脂の流れをよくすることで解消されるため、樹脂の注入時に金型の温度を上昇させる必要がある一方で、成形金型からプラスチック製品を取り出すときには、そのプラスチック製品が変形しない程度に冷却させる必要がある。そのため、プラスチック成形金型には、加熱用のヒータが埋設されまたは加熱用蒸気などを流通させる流路が形成されるとともに、冷却用流体を流通させる流路が形成される場合がある。
上記プラスチック成形金型には、析出硬化系、SUS系などの鋼種が使用されているが、いずれにしても金型として使用可能な強度および耐磨耗性を確保できる硬さが求められるとともに、加熱冷却流路或いはヒータの埋設のための切削加工を可能とする被削性が求められ、さらに成形時のヒートサイクルを短縮して生産性を高めるために熱伝導性が求められる。
これに対して、特許文献1には、焼入れ時にオーステナイトから生じるマルテンサイト組織や焼入れ焼戻し過程での金属間化合物や炭化物の析出挙動を制御して靱性を損なうことなく被削性に優れた高強度金型用鋼材が提案されている。また、特許文献2および3には、耐食性に優れたプラスチック金型用鋼が提案されている。
特開2000−297353号公報 特開平2−175845号公報 特開平11−140591号公報
しかしながら、特許文献1に提案された析出硬化系の鋼種では加熱孔や冷却孔内に錆が発生するために熱伝達係数が低下して使用時の冷却能が低下するため、サイクルタイムの長時間化が問題となる。これに対して、特許文献2および3で提案されたSUS系の鋼種を使用すると錆の発生はないが十分な熱伝導率が得られないという不都合があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、耐食性および熱伝導率が高く、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼を提供することにある。
本発明者は、以上の事情を背景として耐食性および熱伝導性を両立させるために種々検討を重ねた結果、加工能率および鏡面性のバランスから40HRC程度のプリハードンを前提として、耐食性および熱伝導に影響するCrおよびMoの相対的な添加割合を工夫すると、耐食性および熱伝導率が高く、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼が得られることを見いだした。本発明は係る知見に基づいて成されたものである。
すなわち、請求項1に係る発明の温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼の要旨とするところは、質量%で、C:0.03%〜0.25%、Si:0.01%〜0.40%、Mn:0.10%〜1.50%、P:≦0.30%、S:≦0.050%、Cu:0.05%〜0.20%、Ni:0.05%〜1.50%、Cr:5.0 %〜10.0%、Mo:0.10%〜2.00%、V:0.01%〜0.10%、N:≦0.10%、O:≦0.01%、Al≦0.05%であり、且つ、(Cr+Mo)≦10%、および7≦(Cr+3.3Mo)を満足し、残部がFe及び不可避的不純物から成る組成を有することを特徴とする。
上記の請求項1に係る発明の温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼によれば、δフェライトの発生は鏡面性の低下、衝撃値の低下を招くのでフェライト生成元素(Cr、Mo)とオーステナイト生成元素(Mn、Ni)の相互の割合が調整されているので、鏡面性および衝撃値がバランスよく両立させられるとともに、(Cr+Mo)≦10%、および7≦(Cr+3.3Mo)を満足するように耐食性および熱伝導に影響するCrおよびMoの相対的な添加割合を工夫されているので、耐食性および熱伝導率が高く、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼が得られる。
ここで、好適には、前記プラスチック成形金型用鋼は、質量%で、Se:0.001%〜0.3%、Te:0.001%〜0.3%、Ca:0.0002%〜0.10%、Pb:0.001%〜0.20%、Bi:0.001%〜0.30%のうちの少なくとも1つをさらに含む。このようにすれば、一層高い被削性が得られる。
また、好適には、前記プラスチック成形金型用鋼は、質量%で、Nb:0.001%〜0.30%、Ta:0.001%〜0.30%、Ti:≦0.20%、Zr:0.001%〜0.30%のうちの少なくとも1つをさらに含む。このようにすれば、金属組成内の結晶粒の粗大化が抑制され、靭性の低下を防止できる。
また、好適には、前記プラスチック成形金型用鋼は、たとえば40HRC程度の所定の硬さを有し且つ被削性の高いプリハードン鋼材である。この耐食性および熱伝導率が高く、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼は、加工能率と鏡面性とにおいてバランスよく両立する。さらに高い硬度を必要とする場合には、焼戻しを追加的に施すことも可能である。
前記プラスチック成形金型用鋼中のC(炭素)は、強度、耐磨耗性を確保するのに必要な元素であって、Cr、Mo、W、V、Nb等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成する元素である。また、Cは、焼入れ時にマトリックスに固溶し、マルテンサイト組織化することによって硬度を確保する元素である。Cの添加量が増加するとCr、Mo、W、V、Nb等の炭化物形成元素と結合して炭化物を形成し、母相のCr、Moの固溶量を低下させ、耐食性が低下する。このためにCの添加量は、0.03質量%以上、0.25質量%以下とされる。Cの添加量が0.03質量%を下まわると、硬度が不足して強度、耐磨耗性が十分に得られない。Cの添加量が0.25質量%を越えると、耐食性が十分に得られない。このような観点から、Cの好適な添加量は、0.10〜0.25質量%である。
前記プラスチック成形金型用鋼中のSi(珪素)は、主に脱酸剤または被削性を向上するために必要な元素であるとともに、熱伝導率を低下させる元素でもある。このためにSiの添加量は、0.01質量%以上、0.40質量%以下とされる。Siの添加量が0.01質量%を下まわると、十分な被削性が得られない。Siの添加量が0.40質量%を上まわると、十分な熱伝導率が得られない。このような観点から、Siの好適な添加量は、0.10〜0.30質量%である。
前記プラスチック成形金型用鋼中のMn(マンガン)は、焼入れ性を向上させ、またはオーステナイトを安定化させる元素として添加される。また不回避的にS(硫黄)が含有された場合にMnSを形成し靱性の低下を防止するが、添加とともに熱間加工性を低下させる元素である。このために、Mn(マンガン)の添加量は、0.10質量%以上、1.50質量%以下とされる。Mn(マンガン)の添加量が0.10質量%を下まわると焼入れ性や靭性が低下したりオーステナイトが不安定となる。Mn(マンガン)の添加量が1.50質量%を越えると、熱間加工性が低下する。
前期プラスチック成形金型用鋼中のP(リン)は、鋼中に不回避に含まれる。結晶粒界に偏析し、衝撃値を低下させるため0.30%以下とする。
前期プラスチック成形金型用鋼中のS(硫黄)は、鋼中に不回避に含まれる。硫化物を生成し、異方性を助長し衝撃値を低下させるため、0.050%以下とする。
前記プラスチック成形金型用鋼中のCu(銅)は、オーステナイトを安定化させるが、過度の添加は熱間加工性を低下させる元素である。このため、Cuの添加量は0.05質量%以上、0.20質量%以下とされる。Cuの添加量が0.05質量%を下まわると、オーステナイトが不安定となり、0.20質量%を越えると十分な熱間加工性が得られない。
前記プラスチック成形金型用鋼中のNi(ニッケル)は、オーステナイトを生成させるオーステナイト生成元素であるが、過度の添加は焼なまし性を低下させて硬度の調整が困難となる。このため、Niの添加量は、0.05質量%以上、1.50質量%以下とされる。Niの添加量が0.05質量%を下まわると、オーステナイトが不足し、1.50質量%を越えると焼なまし性が低下して硬度が得られ難くなる。
前記プラスチック成形金型用鋼中のCr(クロム)は、耐食性を向上させる元素であるが、熱伝導性を低下させる元素でもある。このため、Crの添加量は、5.0質量%以上、10.0質量%以下とされる。Crの添加量が5.0質量%を下まわると、耐食性が不十分となり、10.0質量%を越えると十分な熱伝導率が得られにくくなる。
前記プラスチック成形金型用鋼中のMo(モリブデン)は、耐食性を向上させるとともに、炭素を結合することで材料の二次硬化すなわち高温焼戻し性に寄与する元素である。このため、Moの添加量は、0.10質量%以上、2.00質量%以下とされる。Moの添加量が0.10質量%を下まわると耐食性が不十分となり硬度の調整が困難となる。また、Moは高価な金属であるため、その上限値は好適には2.00質量%とされる。
前記プラスチック成形金型用鋼中のV(バナジウム)は、結晶粒粗大化を抑制するために寄与する元素である。このため、Vの添加量は、0.01質量%以上、0.10質量%以下とされる。Vの添加量が0.01質量%を下まわると粗大な結晶粒が発生し、0.10質量%を越えると粗大な炭化物を形成する。
前記プラスチック成形金型用鋼中のN(窒素)は、マルテンサイト組織の硬さの向上に寄与する元素であり、同じ侵入型元素である炭素Cに比較してγ安定化性能が高い。また、固溶状態で耐食性の向上に寄与する元素である。しかし、多量に添加すると、凝固中の窒素の濃度変化により窒素ガス噴出限界を越えてしまい、インゴットにボイド(気泡)が発生する。このため、Nの添加量は、0.1質量%以下とされる。
前記プラスチック成形金型用鋼中のO(酸素)は、何らの方策を取らなければ溶鋼中に不可避的に含まれる元素である。Oが多いとAl、Siと粗大な酸化物粒子を形成して鋼中の介在物となり、鋼の靱性や鏡面性を低下させる。このため、Oの添加量は、積極的に0.0100質量%以下とされる。
前記プラスチック成形金型用鋼中のAl(アルミニウム)は、脱酸剤として添加される元素である。多量に添加すると、介在物を形成して鏡面性を低下させる。このため、Alの添加量は、0.05質量%以下とされる。
また、十分な耐食性を得つつ熱電導率を低下性させるために、上記CrとMoとの相対的割合は、(Cr+Mo)≦10%を満足するものとされるとともに、7≦(Cr+3.3Mo)を満足するものとされる。熱伝導率は合金添加量が多いほど低下傾向を示す。このため、熱伝導率を向上させるには合金添加量を下げるほうが良く、(Cr+Mo)≦10%とする。一方で必要とされる耐食性は孔食指数=Cr+3.3Moで整理し、7≦(Cr+3.3Mo)とする。
好適には、前記プラスチック成形金型用鋼中には、被削性を向上させるために、Se、Te、Ca、Pb、Biのうちの少なくとも1つの元素が選択的に添加される。それらの元素の過度の添加は靱性の低下を招く。このため、Seは0.30質量%以下、Teは0.30質量%以下、Caは0.10質量%以下、Pbは0.20質量%以下、Biは0.30質量%以下とされる。
好適には、前記プラスチック成形金型用鋼中には、CおよびNと結合して炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制に寄与するために、Ti、Nb、Ta、Zrのうちの少なくとも1つの元素が選択的に添加される。それら元素の過度の添加は被削性の劣化を招く。このため、Nbは0.30質量%以下、Taは0.30質量%以下、Tiは0.20質量%以下、Zrは0.30質量%以下とされる。
以下において、本発明の実施例を説明する。
図1は、プラスチック成形金型10が装着された射出成形装置8の要部を示している。図1において、プラスチック成形金型10は、射出成形装置8に固定された固定金型12と、図示しない型締め装置によって型開き位置と型締め位置との間で往復移動させられる可動金型14と、型締めされたときに固定金型12と稼働金型14との間に形成される成形キヤビティ16とを備えている。上記射出成形装置8は、上記固定金型12に接続された射出ユニット18を備え、溶融樹脂がその射出ユニット18から上記成形キヤビティ16内へ射出されるようになっている。たとえば上記可動金型14内には、プラスチック成形金型10を積極的に加熱および冷却するための流体を循環させる流路20が切削加工等によって形成されている。
上記射出成形装置8には、プラスチック成形金型10を加熱するための加熱装置22と、プラスチック成形金型10を冷却するための冷却装置24と、切換弁26および28とが設けられている。加熱装置22は、溶融樹脂を射出する際にプラスチック成形金型10を加熱してウエルドラインの発生を抑制するためのものであり、高熱蒸気を出力して、切換弁26、流路20、切換弁28を経て循環させる。冷却装置24は、型開き時のプラスチック製品の変形を防止するために短時間でプラスチック成形金型10を冷却するためのものであり、冷媒(冷却水)を出力して、切換弁26および切換弁28を経て循環させる。図示しない制御装置は、予め設定された時間に基いて切り換える制御により、或いは検出温度に基づいて切り換える制御により、切換弁26および切換弁28の切換位置を所定の成形サイクルで同時に切り換え、プラスチック製品のウエルトラインの発生および取り出し時の変形を防止しつつ可及的に短い成形サイクルが得られるように、作業プラスチック成形金型10を所定のヒートサイクルで繰り返し温度制御する。
上記プラスチック成形金型10は、質量%で、0.03%≦C≦0.25%、0.01%≦Si≦0.40%、0.10%≦Mn≦1.50%、P≦0.30%、S≦0.050%、0.05%≦Cu≦0.20%、0.05%≦Ni≦1.50%、5.0 %≦Cr≦10.0%、0.10%≦Mo≦2.00%、0.01%≦V≦0.10%、N≦0.10%、O≦0.01%、Al≦0.05%であり、且つ、式(Cr+Mo)≦10%、および7≦(Cr+3.3Mo)を満足し、残部がFe及び不可避的不純物から成る組成を有する鋼から構成されている。この鋼によれば、温度調節性に優れたプラスチック成形金型10が得られる。
以下において、プラスチック成形金型10を構成する鋼は、以下に説明する実験によってその組成および成分比が定められたものである。以下において、その実験例を説明する。
先ず、たとえば50kgの高周波真空溶解炉を用いて図2に示した15種類の成分の溶湯を作成し鋳造によりインゴットを作製した。インゴットを角柱状に鋼材に鍛伸した後に熱処理を施して焼戻しマルテンサイト組織を生成し、試料1乃至15を作成した。上記熱処理で試料1〜11、13、14、15は、40HRC程度の硬度(40±2HRC)が得られるように、たとえば1000℃で1時間保持の加熱後に急冷され、次いで焼戻しのために450〜600℃の温度で再加熱した後に空冷される。試料12については650℃前後の温度で焼戻ししたものを試料12−1、510℃前後の温度で焼戻ししたものを12−2とした。なお、より高い耐食性が要求される場合には低温(200℃から400℃)で焼戻しを行なっても良い。
図2の表に示される試料1乃至15の硬度は、前記角柱状の鋼材から1辺が10mmの立法体を切り出し、測定面と設置面とを#400まで研磨した後で、その研磨された測定面をロックウエルCスケールで測定した。また、試料1乃至15の被削性は、5mmφのドリルを用いて試料11(比較鋼)を1000m切削した回転速度を基準とし、ドリルが折損または溶着するまでに切削できた切削距離(m)を測定した。試料1乃至15の鏡面性は、前記角柱状の鋼材から50mm×45mm×12mmtの板材を加工し、熱処理を行った後に#8000までの機械研磨を施して試験片を作成し、JISB0633の規定に従ってその試験片の表面粗さRy(μm)を測定し、鏡面性の評価とした。また、試料1乃至15の錆の面積率は、前記角柱状の鋼材から切り出した図3に示す8mmφの縦通穴h1付の長手状試験片(20mm×20mm×120mml)TP1を用い、水温40℃、流速3.5l/min、24時間通水後に、試験片を縦割りで切断して縦通穴の内周面を写真撮影し、錆の発生面積割合(%)を画像解析により測定した。試料1乃至15の耐食性は、上記錆の発生面積割合が30%までは○印、30%を越えると△印、80%を越えると×印と評価した。試料1乃至15の熱伝導率は、試料12−1(比較鋼)の値を100としたときの相対値で評価した。試料1乃至15の試料1つあたりの冷却にかかる時間(サイクルタイム)は、前記角柱状の鋼材から切り出した図4に示す15mmφの縦通穴h2付の直方体状試験片(55mm×55mm×30mm)TP2を用い、その試験片表面を高周波加熱コイルを用いて300℃まで加熱した後に通水により冷却したとき、加熱開始から100℃まで冷却に要した時間(sec)を、1日目と30日目とでそれぞれ測定した。
図5は、試料1乃至15の測定結果或いは評価結果を示している。硬度HRCでは、40±2.5の範囲内が合格、ドリル切削性は900mm以上が合格、耐食性は○印が合格、発錆面積率は30%以下が合格、鏡面性は0.065μm以下が合格、熱伝導率は115以上が合格、サイクルタイムは80sec以下が合格と評価した。図5において、網かけで示す数値は不合格を示している。
これによれば、開発鋼である試料1乃至10はいずれの項目においても満足すべき性能を備えたものである。しかし、比較鋼である、試料11は耐食性において不合格であり、試料12−1はドリル切削性、熱伝導率、およびサイクルタイムにおいて不合格であり、試料12−2はドリル切削性、熱伝導率、およびサイクルタイムにおいて不合格であり、試料13は耐食性において不合格であり、試料14は耐食性において不合格であり、試料15は熱伝導率およびサイクルタイムにおいて不合格であった。
図6は、試料1乃至15についての図2および図5の値から、熱伝導率に関与する元素であるCrおよびMoの添加量(Cr+Mo、質量%)と熱伝導率との関係を示すグラフである。図6において、CrおよびMoの添加量が、10質量%を境にして、その10質量%よりも少なくなると判断基準115よりも高い熱伝導率が得られることを示している。図6中の10質量%よりも多い不合格領域内のプロットには試料番号が示されている。上記の結果から(Cr+Mo)≦10%の式の有用性が確認できた。
図7は、試料1乃至15についての図2および図5の値から、錆の発生に関与する元素であるCrおよびMoの添加量(Cr+3.3Mo)と発錆面積率との関係を示すグラフである。図7において、CrおよびMoの添加量(Cr+3.3Mo)が、7を境にして、その7よりも多くなると急激に錆の発生が少なくなることを示している。図7中の7よりも少ない不合格領域内のプロットには試料番号が示されている。なお、試料13は、CrおよびMoの添加量(Cr+3.3Mo)が7よりも大きいものであるが、Crが5%未満のものである。上記の結果から7≦(Cr+3.3Mo)の式の有用性が確認できた。
以上のことから、試料1乃至10は、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼であるということができる。したがって、それら試料1乃至10の鋼の成分の組成比を示す図2の数値に示すように、質量%で、0.03%≦C≦0.25%、0.01%≦Si≦0.40%、0.10%≦Mn≦1.50%、P≦0.30%、S≦0.050%、0.05%≦Cu≦0.20%、0.05%≦Ni≦1.50%、5.0 %≦Cr≦10.0%、0.10%≦Mo≦2.00%、0.01%≦V≦0.10%、N≦0.10%、O≦0.01%、Al≦0.05%であり、且つ、式7≦(Cr+3.3Mo)、および式(Cr+Mo)≦10%を満足し、残部がFe(不可避的不純物を含む)から成る組成を有する鋼であれば、温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼が得られる。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えた態様で実施し得る。
本発明の一実施例のプラスチック成形金型用鋼から構成されたプラスチック成形金型を説明する図である。 本発明の一実施例のプラスチック成形金型用鋼(試料1乃至10)の組成を、試料11乃至15(比較鋼)と対比して示す図表である。 耐食性評価のために用いた試験片の形状を示す斜視図である。 サイクルタイムの測定のために用いた試験片の形状を示す斜視図である。 本発明の一実施例のプラスチック成形金型用鋼(試料1乃至10)の評価結果を、試料11乃至15(比較鋼)の評価結果と対比して示す図表である。 試料1乃至15についての図2および図5の値から、熱伝導率に関与する元素であるCrおよびMoの添加量(Cr+Mo、質量%)と熱伝導率との関係を示すグラフである。 試料1乃至15についての図2および図5の値から、錆の発生に関与する元素であるCrおよびMoの添加量(Cr+3.3Mo)と発錆面積率との関係を示すグラフである。
符号の説明
10:プラスチック成形金型

Claims (4)

  1. 質量%で、C :0.03%〜0.25%、
    Si:0.01%〜0.40%、
    Mn:0.10%〜1.50%、
    P :≦0.30%、
    S :≦0.050%、
    Cu:0.05%〜0.20%、
    Ni:0.05%〜1.50%、
    Cr:5.0 %〜10.0%、
    Mo:0.10%〜2.00%、
    V :0.01%〜0.10%、
    N :≦0.10%、
    O :≦0.01%、
    Al≦0.05%であり、且つ、次式
    (Cr+Mo)≦10%、および7≦(Cr+3.3Mo)を満足し、残部がFe及び不可避的不純物から成る組成を有することを特徴とする温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  2. 質量%で、Se:0.001%〜0.3%、
    Te:0.001%〜0.3%、
    Ca:0.0002%〜0.10%、
    Pb:0.001%〜0.20%、
    Bi:0.001%〜0.30%のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1の温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  3. 質量%で、Nb:0.001%〜0.30%、
    Ta:0.001%〜0.30%、
    Ti:≦0.20%、
    Zr:0.001%〜0.30%のうちの少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする請求項1または2の温度調節性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載された組成から成り、所定の硬さに調質された温度調節性に優れたプリハードンプラスチック成形金型用鋼。
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