JP2010023780A - 負圧倍力装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定出力より大きい出力領域での入力部材のストロークを短縮して、操作フィーリングを向上しつつ、より一層効果的にコンパクトに形成できる負圧倍力装置を提供する。
【解決手段】筒状の真空弁座部材30の内周側に真空弁座13が設けられ、真空弁座部材30の外周側に真空弁座部材30を前方に付勢する第2弁制御スプリング32が設けられる。また、真空弁15の有効径、大気弁16の有効径、および弁体12のバルブボディ4との摺動部の有効径が互いにほぼ等しく設定されている。このように構成することで、バルブボディ4の外径をコンパクトに形成することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、比較的大きな出力領域での入力ストロークを短縮する負圧倍力装置の技術分野に関し、特に、車両のブレーキシステムにおいて、車両重量が大きい車両等の通常ブレーキ作動時の中高減速度領域でのペダルストロークを短縮するブレーキ倍力装置等に用いられる負圧倍力装置の技術分野に関するものである。
従来、乗用車等の自動車のブレーキシステムにおいては、ブレーキ倍力装置に負圧を利用した負圧倍力装置が用いられている。このような従来の一般的な負圧倍力装置では、パワーピストンで通常時負圧が導入される定圧室と圧力が変わる変圧室とに区画されている。そして、ブレーキペダルの通常の踏み込みによる通常ブレーキ作動時に、入力軸の前進で制御弁が切り換わり、変圧室に大気が導入される。すると、変圧室と定圧室との間に差圧が生じてパワーピストンが前進するので、負圧倍力装置が入力軸の入力(つまり、ペダル踏力)を所定のサーボ比で倍力して出力する。この負圧倍力装置の出力により、マスタシリンダがマスタシリンダ圧を発生し、このマスタシリンダ圧でホイールシリンダが作動して通常ブレーキが作動する。
ところで、1BOX車やRV車等の車輌においては、近年、車両重量や積載荷重が増加する傾向にある。このため、このような車輌では、これらの車両重量や積載荷重の増加に伴い、通常ブレーキ作動時に必要とするブレーキ操作量(ペダルストローク量)が増加することになる。このように、通常ブレーキ作動時において運転者のブレーキ操作量が増加するため、ブレーキフィーリングが良好であるとは言えない。
そこで、所定出力(所定減速度)より大きい出力領域での入力部材のストロークを短縮して、操作フィーリングを向上した負圧倍力装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示の負圧倍力装置によれば、通常ブレーキ作動において大きなブレーキ力を必要とした場合に、ブレーキペダルのペダルストロークを増大させなく、大きなブレーキ力を得ることができ、良好な操作フィーリングを得ることができる。
国際公開2004−101340号公報。
しかしながら、特許文献1に開示の負圧倍力装置では、バルブボディに相対摺動可能に設けられた、所定出力より大きい出力領域での入力部材のストロークを短縮するための筒状の真空弁座部材の内周側に、真空弁座部材の移動開始を制御する弁制御スプリングが真空弁座部材と同芯状にかつ並列に設けられている。このため、真空弁座部材の外径が大きくなっているとともに、真空弁部および大気弁部を有する弁体および大気弁座の径も大きくならざるを得ないものとなっている。
また、特許文献1に開示の負圧倍力装置では、入力部材のストロークを短縮する、所定出力より大きい出力領域が単純に設定されているだけであり、この出力領域が効果的に設定されているとは言えない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、所定出力より大きい出力領域での入力部材のストロークを短縮して、操作フィーリングを向上しつつ、より一層効果的にコンパクトに形成できる負圧倍力装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、入力部材のストロークを短縮する、所定出力より大きい出
力領域を効果的に設定して操作フィーリングをより一層向上することのできる負圧倍力装置を提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明の負圧倍力装置は、シェル内に対して進退自在に配設されたバルブボディと、前記シェル内に設けられた定圧室と変圧室との間の連通および遮断を制御する真空弁と、前記真空弁に直列に配設されて、前記変圧室と少なくとも大気との間を連通および遮断する大気弁とを少なくとも備え、前記真空弁が、真空弁座を有する筒状の真空弁座部材と、弁体に設けられて前記真空弁座に着離座可能な真空弁部とを有し、前記真空弁座部材が、前記変圧室の圧力が前記真空弁座を前記真空弁部に当接する方向に作用されるとともに、付勢手段の付勢力が前記真空弁座を前記真空弁部から遠ざける方向に作用されるように構成されている負圧倍力装置において、前記付勢手段が前記筒状の真空弁座部材の外周側と前記バルブボディとの間に前記真空弁座部材と直列に設けられているとともに、前記真空弁部は前記筒状の真空弁座部材の内周側に設けられており、更に、前記真空弁の有効径と前記大気弁の有効径と前記弁体の前記バルブボディとの摺動部の有効径とがそれぞれ互いにほぼ等しく設定されていることを特徴としている。
また、請求項2の発明のブレーキ倍力装置は、車両のブレーキシステムに用いられ、ブレーキペダルのペダル踏力を倍力して出力する負圧倍力装置からなるブレーキ倍力装置において、前記負圧倍力装置が請求項1記載の負圧倍力装置であり、前記真空弁座部材が前記バルブボディに対して相対移動開始するときの車両の減速度が、通常ブレーキ作動時において発生する可能性のある減速度より大きな減速度に設定されていることを特徴としている。
このように構成された本発明に係る負圧倍力装置によれば、所定出力より大きい出力領域では変圧室の圧力が所定圧力を越えることで、真空弁座部材が移動して弁体を後方に移動するので、大気弁の開弁量を大きくすることができる。これにより、サーボ比を通常作動時のサーボ比より大きくすることができ、大きな出力を得ることができる。
また、真空弁座部材により弁体が後方に移動することで、真空弁と大気弁のバランス位置が後方に移動するので、所定出力より大きい出力領域での出力軸の大きなストロークを得る場合、入力軸のストローク量を、バランス位置が後方に移動する分、所定出力より小さい出力領域での出力に対する入力軸の操作ストローク量の変化率で変化した場合においてこの出力軸の大きなストロークを得るために必要なストローク量より短縮させることができる。
更に、真空弁および大気弁を直列に配設するとともに、大気弁の有効径、真空弁の有効径、および弁体のバルブボディとの摺動部の有効径を互いにほぼ等しく設定しているので、真空弁座部材および弁体に作用しかつこれらの真空弁座部材および弁体の受圧面積が異なることに起因する差圧をほとんどなくすことができる。これにより、真空弁座部材の付勢手段の付勢力を小さく設定することができる。しかも、付勢手段を筒状の真空弁座部材の外周側で真空弁座部材と直列に設けることで、付勢手段のサイズを真空弁座部材によって大きく左右されるのを抑制することができる。これにより、負圧倍力装置1のサーボ比SRをその設定に大きく関与する付勢手段の付勢力を種々変えることによって大小変化させることが可能となり、サーボ比設定の自由度を大きくすることができる。したがって、負圧倍力装置の1つの形式で種々の車種のブレーキ倍力装置にその車種に応じて容易にかつより的確に適用可能となる。
更に、直列に配設された大気弁および真空弁の径を均一にコンパクトにできるので、こ
れら弁を内蔵するバルブボディの径も小さくできる。これにより、バルブボディの径方向のコンパクト化を効果的に図ることが可能となる。特に、筒状の真空弁座部材の外周側に付勢手段を設けかつ真空弁座部材の内周側に真空弁座を設けているので、大気弁および真空弁の直列配置、および大気弁の有効径、真空弁の有効径、および弁体のバルブボディとの摺動部の有効径の等径化に相俟って、バルブボディの径方向のコンパクト化をより一層効果的に図ることができる。
更に、本発明の負圧倍力装置を、車両のブレーキシステムに用いられるブレーキ倍力装置に適用することで、中高減速度(中高G)領域で出力軸の大きなストロークを得る場合、入力軸のストローク量を、低減速度(低G)領域での出力に対する前記入力軸の操作ストローク量の変化率で変化した場合においてこの大きなストロークを得るために必要なストローク量より短縮させることができる。これにより、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時の減速度よりも大きな減速度を得る場合に、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時のサーボ比でこの大きな減速度を得るために必要なブレーキペダルの踏込み量より小さなペダル踏込み量で、所望の大きな減速度を得ることができる。したがって、車両重量が大きい車輌等の中高減速度(中高G)領域での通常ブレーキ作動時に低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時より大きなブレーキ力を必要とする車輌に対して、ブレーキフィーリングをより効果的に良好にできる。
更に、ブレーキ倍力装置の入力(ペダル踏力)−減速度特性および入力ストローク(ペダルストローク)−減速度特性において、真空弁座部材の作動開始点でのブレーキシステムの車両の減速度を、通常ブレーキ作動時において発生する可能性のある減速度より大きな減速度に設定しているので、低減速度(低G)領域での従来のブレーキ作動の良好なペダルフィーリングを確保するとともに、中高減速度(中高G)領域でのペダルストロークを短縮して小さなペダルストロークで大きなブレーキ力を得ることができる。
以下、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係る負圧倍力装置の実施の形態の、ブレーキシステムに用いられるブレーキ倍力装置に適用した例を非作動状態で示す断面図、図2は図1における真空弁および大気弁の部分を拡大して示す部分拡大断面図である。なお、以下の説明において、「前」および「後」はそれぞれ各図において「左」および「右」を示す。
まず、この例の負圧倍力装置において、特許文献1に記載の従来の負圧倍力装置と同じ構成部分および特許文献1に記載の負圧倍力装置と構成が異なるが、本発明に直接関係しない構成部分について簡単に説明する。図1および図2において、1は負圧倍力装置、2はフロントシェル、3はリヤシェル、4はバルブボディ、5はバルブボディ4に取り付けられたパワーピストン部材6とバルブボディ4および両シェル2,3間に設けられたダイヤフラム7とからなるパワーピストン、8は両シェル2,3内の空間をパワーピストン5で区画された2つの室の一方で、通常時負圧が導入される定圧室、9は前述の2つの室の他方で、負圧倍力装置1の作動時大気圧が導入される変圧室、10は弁プランジャ、11は図示しないブレーキペダルに連結され、かつ弁プランジャ10を作動制御する入力軸、12はバルブボディ4に気密にかつ摺動可能に設けられ、かつ大気弁部12aと真空弁部12bとこれらを一体移動可能に連結する連結具12cとを有する弁体、13は環状の真空弁座、14は弁プランジャ10に形成された環状の大気弁座、15は真空弁部12bと真空弁座13とにより構成される真空弁、16は大気弁部12aと大気弁座14とにより構成される大気弁、17は互いに直列に配設された真空弁15と大気弁16とからなり、変圧室9を定圧室8と大気とに選択的に切り換え制御する制御弁、18は弁体12を真空弁部12bが真空弁座13に着座する方向に常時付勢する第1弁制御スプリング、19はバルブディ4の外周側通路19aとこれに連通する内周側通路19bとからなる大気導入
通路、20はリヤシェル3と入力軸11との間に取り付けられかつ大気導入口20aを有するブーツ、21は大気導入口20aに設けられて制御弁17で発生する音を低減するサイレンサ、22は真空通路、23はバルブボディ4に形成されたキー孔4aに挿通されてこのバルブボディ4に対する弁プランジャ10の相対移動を、キー孔4aの軸方向幅により規定される所定量に規制し、かつバルブボディ4および弁プランジャ10の各後退限を規定するキー部材、24は間隔部材、25はリアクションディスク、26は出力軸、27はリターンスプリング、28は図示しない負圧源からの負圧を定圧室8に導入する負圧導入口である。
なお、負圧倍力装置1の非作動時、この間隔部材24の前端面とこの間隔部材24の前端面に対向するリアクションディスク25の後端面との間には、軸方向の所定の間隙Cが設定されている。
また、図示しないが従来の一般的な負圧倍力装置と同様に、フロントシェル2を貫通してマスタシリンダの後端部が定圧室8内に進入しかつマスタシリンダのピストンが出力軸26で作動されるようになる。なお、マスタシリンダのフロントシェル2貫通部は図示しない適宜のシール手段でシールされていて、定圧室8が大気と気密に遮断される。また従来と同様に、バルブボディ4がリヤシェル3を移動可能に貫通しているとともに、変圧室9がこの貫通部において図示したシール部材29で大気と気密に遮断されている。
次に、この例の負圧倍力装置1の特徴部分の構成について説明する。
図2に示すように、この例の負圧倍力装置1では、バルブボディ4の軸方向の内孔4bに筒状の真空弁座部材30が摺動可能に嵌合されており、前述の真空弁座13はこの真空弁座部材30の後端の内周側に設けられている。したがって、真空弁座13もバルブボディ4に対して相対移動可能となっている。
そして、真空弁座部材30の外周面に設けられたカップシール等のシール部材31により、バルブボディ4の内孔4bの内周面と真空弁座部材30の外周面との間が少なくとも真空弁座部材30の前端から後端に向かう空気の流れを阻止するように気密に保持されている。更に、真空弁座部材30の前端面30aは常時変圧室9に連通されていて、これらの前端面30aには常時変圧室9の圧力が作用するようになっている。
また、弁体12の真空弁部12bが真空弁座13に着座した状態において、真空弁座部材30の後端面30bにおける、真空弁部12bの着座位置より外周側の環状の外側後端面部分は常時定圧室8に連通されていて、この外側後端面には常時定圧室8の圧力(負圧)が作用するようになっている。したがって、負圧倍力装置1の作動時、変圧室9の圧力と定圧室8の圧力とに圧力差が生じると、この圧力差による力が真空弁座部材30に後方に向けて加えられるようになる。
更に、真空弁座部材30には延長アーム部30cがこの真空弁座部材30の前端面30aから軸方向前方に延びるようにして設けられている。この延長アーム部30cには、軸方向孔30dが穿設されている。
真空弁座部材30の後端面30bの外周側とバルブボディ4との間には、環状の板ばねからなる第2弁制御スプリング32(本発明の付勢手段に相当)が真空弁座部材30と直列に縮設されており、この第2弁制御スプリング32により真空弁座部材30が常時前方に付勢されている。
次に、この例の真空弁座部材30の作動について説明する。真空弁座部材30の作動は前述の特許文献1に記載の真空弁座部材と同じであり特許文献1を参照すれば容易に理解できるので、ここでは簡単に説明する。
負圧倍力装置1の非作動時には、真空弁座部材30はその前端面30aがバルブボディ
4の段部4cに当接した、図2に示す位置に位置決めされる。このように位置決めされた状態の真空弁座13は、従来の一般的な負圧倍力装置のバルブボディ4に形成された真空弁座と同じ状態になるように設定されている。したがって、負圧倍力装置1の非作動時での真空弁座部材30のこの位置では、真空弁部12bが真空弁座13に着座しなく、真空弁15は開くようになる。
また、ブレーキペダルの踏込みにより入力軸11に入力が加えられて負圧倍力装置1が作動すると、従来の一般的な負圧倍力装置と同様に変圧室9に大気が導入されて、変圧室9と定圧室8との間に圧力差が生じる。このため、真空弁座部材30にもこの圧力差による力が後方に向けて加えられるようになる。この力は、変圧室9と定圧室8との間の圧力差、つまり入力軸11に加えられる入力の大きさに応じた大きさになっている。なお、負圧倍力装置1の作動時は真空弁部12bが真空弁座13に着座している。
そして、この圧力差による力が第2弁制御スプリング32のばね荷重とこのときの弁体12の第1弁制御スプリング18のばね荷重との和以下である(つまり、入力軸11に加えられる入力が予め設定された設定入力F0以下(F0は図4(b)に示す)である)と、真空弁座部材30はバルブボディ4に対して移動しなく、図1および図2に示す非作動位置を保持するようになる。また、圧力差による力が前述の両ばね荷重との和より大きくなる(つまり、入力軸11に加えられる入力が設定入力F0より大きくなる)と、真空弁座部材30が弁体12の真空弁部12bを押しながらバルブボディ4に対して相対的に後方に移動するようになっている。したがって、この真空弁座部材30の後方移動により、真空弁座13が通常時の位置より後方に突出する。
ところで、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して後方へ相対的にストロークすると、大気弁16の大気弁部12aもバルブボディ4に対して真空弁座部材30の相対ストローク量と同じだけ後方へ相対ストロークする。したがって、真空弁15および大気弁16がともに閉じた制御弁17のバランス位置が後方に移動する。このため、大気弁部12aと大気弁座14との間の開弁量が真空弁座部材30の相対ストロークしないと仮定した場合に比べて、入力軸11の入力ストローク量が同じであるとすると、真空弁座部材30の相対ストローク量だけ大きくなる。すなわち、真空弁15と大気弁16とがともに閉じてバランスした中間負荷状態では、入力軸11の入力ストローク量が同じである場合、バルブボディ4およびパワーピストン5のピストン部材6の各ストロークは、真空弁座部材30の相対移動しないと仮定した場合に比べて、真空弁座部材30の相対ストローク量だけ大きくなる。換言すると、真空弁座部材30の相対ストロークした場合と相対ストロークしないと仮定した場合とで、バルブボディ4およびパワーピストン5のピストン部材6の各ストローク量が同じであるとすると、真空弁座部材30の相対ストロークした場合の方が、入力軸11のストロークは真空弁座部材30の相対ストローク量だけ短縮される。
一方、前述の真空弁座部材30の相対ストローク時における出力軸26の出力ストロークも、前述のように入力軸11の入力ストローク量が同じであるとしたときに、バルブボディ4およびパワーピストン5のピストン部材6の各ストロークが増大することで増大する。しかし、中間負荷状態では従来の負圧倍力装置と同様にリアクションディスク25が間隔部材24の方へ膨出してこのリアクションディスク25の軸方向の厚みが薄くなるため、前述のバルブボディ4およびパワーピストン5のピストン部材6の各ストロークの増大した相対ストローク量より小さくなる。
そして、真空弁座部材30が弁体12の真空弁部12bを押しながら後方に突出することから、弁体12が後方に移動し、かつ弁体12の大気弁部12aも後方に移動するようになる。このため、通常ブレーキ作動時の大気弁16が閉じている状態より、大気弁部12aが大気弁座14から更に大きく離座する。つまり、大気弁16の開弁量が大きくなる
ようにされている。このようにして、真空弁座部材30の作動は変圧室9の圧力と定圧室8の圧力との圧力差により制御される。
この真空弁座部材30の移動について具体的に説明する。真空弁座部材30が移動しかつ真空弁15および大気弁16がともに閉じて制御弁17がバランス状態にある中間負荷状態で、真空弁座部材30に加えられる圧力差による力を考える。この制御弁17のバランス状態は、真空弁座部材30と弁体12とが互いに当接して一体となるため、図3に示すように互いに一体になった真空弁座部材30および弁体12に加えられる力の等価状態としてみなすことができる。
いま、図3において、真空弁座部材30および弁体12に加えられる圧力差による力をFP、定圧室8の圧力をPV0、変圧室9の圧力をPVとすると、真空弁座部材30および弁体12に加えられる圧力差による力FPは、
P = (PV−PV0)・(真空弁座部材30の有効受圧面積差)
で与えられ、この力FPが真空弁座部材30および弁体12を後方に向けて押圧するようになる。
一方、第2弁制御スプリング32のばね荷重FSおよび第1弁制御スプリング18のばね荷重fSが前方に向けて押圧している。したがって、前述の力FPがこれらのばね荷重の和(FS+fS)以下であると、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して移動しなく、また力FPがばね荷重の和(FS+fS)より大きくなると、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して後方に移動するようになる。ここで、第1弁制御スプリング18のばね荷重fSはその絶対値が小さくしかも第2弁制御スプリング32のばね荷重FSに比べてきわめて小さく(FS≫fS)設定されることで、実質的に力FPがばね荷重FSより大きいとき(FP >FS)に、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して後方に移動し、力FPがばね荷重FS以下であるとき(FP ≦FS)に、真空弁座部材30はバルブボディ4に対して後方に移動しない。すなわち、真空弁座部材30の作動開始は実質的に第2弁制御スプリング32によって決定されるようになる。したがって、変圧室9の圧力が上昇して、力FPがセットばね荷重より大きくなると、真空弁座部材30が後方に移動開始するようになる。
そして、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して後方に移動しない力FPの領域つまり変圧室9の圧力PVの領域は、負圧倍力装置1の出力(車両の減速度)Gが図4(b)に示す入力(ペダル踏力)−出力(減速度)特性(F−G特性)において所定出力(所定減速度)GO1以下の出力領域であり、この領域では、入力が所定入力F0以下で比較的小さい。入力が所定入力F0以下の領域における負圧倍力装置1のサーボ比SRは従来の一般的な負圧倍力装置の通常ブレーキ作動時でのサーボ比とほぼ同じサーボ比SR1に設定される。このサーボ比SR1の領域は、ブレーキによる減速度が従来の比較的低重量(積載荷重を含む)の車輌における通常ブレーキ作動時と同じであり、比較的高重量(積載荷重を含む)の車輌に対しては低減速度(低G)領域として設定されている。
図4(a)に示すように、負圧倍力装置1のサーボ比SR1の領域においては、入力ストローク(ペダルストローク)−出力(減速度)特性(S−G特性)は、入力ストロークSが小さい間は出力Gの上昇率が小さく出力Gは徐々に上昇し、入力ストロークSが大きくなるにしたがって出力Gの上昇率が大きくなって出力Gは比較的速く上昇する湾曲線状の特性となる。この特性は、出力(車両の減速度)Gが所定出力(所定減速度)GO1になるまでの特性となる。
また、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して後方に移動する力FPの領域つまり変圧室9の圧力PVの領域は、負圧倍力装置1の出力が図4(b)に示す入出力特性にお
いて所定出力FO1より大きい出力領域であり、この領域では、入力が所定入力F0より大きい。入力が所定入力F0より大きい領域におけるサーボ比SR2は、大気弁16の開弁量が同じ入力で通常ブレーキ作動時より大きくなることから、前述のサーボ比SR1より大きいサーボ比SR2(SR2>SR1)となる。このサーボ比SR2の領域は、ブレーキによる減速度が比較的高重量(積載荷重を含む)の車輌に対して中高減速度(中高G)領域として設定されている。
図4(a)に示すように、負圧倍力装置1のサーボ比SR2の領域においては、入力ストローク−出力特性(S−G特性)は、出力Gの上昇率が比較的大きく、出力Gはほぼ直線状に上昇する特性となる。この特性は、出力(車両の減速度)Gが、負圧倍力装置1がサーボ比による倍力作動を行わなくなる全負荷状態になる所定出力(所定減速度)GO2となるまでの特性となる。
ところで、この例の負圧倍力装置1では、F−G特性およびS−G特性における前述の所定出力(所定減速度)GO1が4m/sec2に設定され、また所定出力(所定減速度)GO2が8m/sec2に設定されている。このように、サーボ比SR2の領域を減速度4m/sec2から8m/sec2に設定する理由は次の通りである。すなわち、実際に起こり得る車両のブレーキ状況は、大部分の車両が低重量(積載荷重を含む)の車輌でありしかもブレーキ作動がほとんどこの種の車両の通常ブレーキ作動であることから、このブレーキ状況では、小さなサーボ比SR1の低G領域を減速度4m/sec2以下の領域に設定し、また高重量(積載荷重を含む)の車輌における中高減速度でのブレーキ作動等の起こり得る可能性がそれほど多くない車両のブレーキ状況では、大きなサーボ比SR2の中高G領域を減速度4m/sec2ないし8m/sec2の領域に設定することにより、低G領域での従来のブレーキ作動の良好なペダルフィーリングを確保するとともに、中高G領域でのペダルストロークを短縮して小さなペダルストロークで大きなブレーキ力を得るようにしている。
そして、負圧倍力装置1が全負荷状態になると、負圧倍力装置1のS−G特性は従来の負圧倍力装置1の全負荷状態でのS−G特性と同じになる。このとき、この例の負圧倍力装置1における中間負荷から全負荷に変わるときの入力ストロークは、従来のサーボ比が一定の負圧倍力装置における中間負荷から全負荷に変わるときの入力ストロークより図4(a)に示すSSMAXだけ短縮される。このストローク短縮量SSMAXの大きさは、前述の特許文献1に記載されているので、この特許文献1を参照すれば容易に理解できる。
この例の負圧倍力装置1では、前述のように真空弁座部材30に移動開始を決定する第2弁制御スプリング32のばね定数およびセットばね荷重は、ともに任意に設定可能である。したがって、この例の負圧倍力装置1の図4(b)に示す入出力特性において、小さなサーボ比SR1から大きなサーボ比SR2に変わる変化点(レシオ点)γ、つまりこの変化点γの入力である設定入力F0は、第2弁制御スプリング32のセットばね荷重を変えることで上下させることができる。また、負圧倍力装置1のサーボ比SRは、第2弁制御スプリング32のばね定数を変えることによって大小変化させることが可能となる。
したがって、この例の負圧倍力装置1は、第2制御弁スプリング32のばね定数およびセットばね荷重を搭載される車両に応じて設定することで、1つの形式で種々の車種のブレーキ倍力装置にその車種に応じて容易にかつより的確に適用可能となる。
ところで、この例の負圧倍力装置1では、図3に示すように大気弁部12aが大気弁座14に着座する位置の直径である大気弁16の有効径DAVと、真空弁部12bが真空弁座13に着座する位置の直径である真空弁15の有効径DVVと、弁体12のバルブボディ4との摺動部の有効径DPVとが、互いにほぼ等しく設定されている(DAV≒DVV≒DPV)。
大気弁16の有効径DAVと弁体12の摺動部の有効径DPVとがほぼ等しく(DAV≒DPV)設定されると、弁体12に作用する圧力の差圧が有効受圧面積差に起因して発生する荷重がほとんど発生しなくなる。これにより、第1弁制御スプリング18のばね荷重を、負圧倍力装置1の非作動時に大気弁部12aが大気弁座14に着座するのに必要な最小限に設定可能となる。
また、大気弁16の有効径DAVと真空弁15の有効径DVVとがほぼ等しく(DAV≒DVV)設定されると、真空弁15および大気弁16がともに閉じたバランス状態で、弁体12および真空弁座部材30に作用する圧力の差圧が有効受圧面積差に起因して発生する荷重がほとんど発生しなくなる。これにより、負圧倍力装置1の作動時に真空弁座部材30に作用する差圧による力が小さくなり、第2弁制御スプリング32のばね荷重をその分小さく設定可能となる。
なお、弁体12および真空弁座部材30に作用する圧力の差圧が有効受圧面積差に起因して発生する荷重が効果的に小さくするためには、各有効径DAV,DVV,DPVは、互いに等しく(DAV=DVV=DPV)設定することが望ましい。しかし、各有効径DAV,DVV,DPVをこのように設定することは難しいので、各有効径DAV,DVV,DPVは、弁体12および真空弁座部材30に作用する圧力の差圧が有効受圧面積差に起因して発生する荷重を効果的に小さくできる範囲内でほぼ等しく設定することがよい。
バルブボディ4の軸方向孔内には、BA機構の筒状部材33がバルブボディ4に対して相対摺動可能に配設されている。この筒状部材33の後端部には、外側に突出する環状のフランジ33aが形成されているとともに、筒状部材33の中央部には軸方向孔33bが穿設され、更に筒状部材33の前端部にも軸方向孔33cが穿設されている。フランジ33aとバルブボディ4との間には、BA作動用スプリング34が縮設されており、このBA作動用スプリング34のばね力により筒状部材33が常時後方に付勢されている。筒状部材33がバルブボディ4に対して後方に所定ストローク以上ストロークすると、筒状部材33の後端面33eが真空弁座部材30の前端面30aに当接して真空弁座部材30を後方に第2弁制御スプリング32のばね力に抗して押圧することで、筒状部材33は第2弁制御スプリング32を縮小して真空弁座部材30をバルブボディ4に対して後方に移動するようになっている。
そして、キー部材23が筒状部材33の軸方向孔33bおよび延長アーム部30cの軸方向孔30dをも貫通して設けられる。図2に拡大して示すように、負圧倍力装置1の非作動時には、リヤシェル3に当接して後退限に位置決めされたキー部材23に、真空弁座部材30における軸方向孔30dより前方の前端部30eおよび筒状部材33における軸方向孔33cより前方の前端部33dが当接することで、真空弁座部材30および筒状部材33がともにそれらの後退限に位置決めされる。
更に、通常ブレーキ作動時に筒状部材33をバルブディ4に対して軸方向に位置決めする筒状部材位置決め部材35がバルブボディ4のキー孔4a、筒状部材33の軸方向孔33c、およびバルブボディ4の径方向孔4dに貫通されている。そして、詳細に示さないが、通常ブレーキ作動時に筒状部材33の前端部33dがキー部材23から離れると、BA作動用スプリング34のばね力により筒状部材33がバルブボディ4に対して後方に移動しようとしたとき、筒状部材33は筒状部材位置決め部材35に係止して後方移動が阻止され、バルブディ4に対して軸方向に位置決めされる。これにより、通常ブレーキ作動時には、筒状部材33の後端面33eが真空弁座部材30の前端面30aに当接するのを阻止される。
弁プランジャ10には、筒状部材33と筒状部材位置決め部材35との係止を解除する
ためのテーパ状の係止解除部10aが設けられている。緊急ブレーキ作動のためブレーキペダルが通常ブレーキ作動時より迅速に踏み込まれて、弁プランジャ10がバルブボディ4に対して所定量以上前方へ移動すると、この係止解除部10aが筒状部材位置決め部材35のエッジ部35aに当接することで、筒状部材33と筒状部材位置決め部材35との係止が解除され、前述のように筒状部材33が真空弁座部材30を押圧してバルブボディ4に対して後方へ移動するようになる。
次に、この例の負圧倍力装置1の作動について説明する。
(負圧倍力装置の非作動時)
負圧倍力装置1の定圧室8には負圧導入口28を通して常時負圧が導入されている。また、図1および図2に示す負圧倍力装置1の非作動状態では、キー部材23がリヤシェル3に当接して後退限となっている。したがって、このキー部材23によってバルブボディ4および弁プランジャ6が後退限にされ、更にパワーピストン5、入力軸11および出力軸26も後退限となっている。また、真空弁座部材30の前端面30aが第2弁制御スプリング32のばね力でバルブボディ4の段部4cに当接して真空弁座部材30が図2に示す位置に位置決めされているとともに、筒状部材33の前端部33dがBA作動用スプリング34のばね力でキー部材23に当接して筒状部材33が図2に示す位置に位置決めされている。
この非作動状態では、弁体12の大気弁部12aが大気弁座14に着座して大気弁16が閉じ、かつ弁体12の真空弁部12bが真空弁座13から離座して真空弁15が開いている。したがって、変圧室9は大気から遮断されかつ定圧室8に連通して変圧室9に負圧が導入されており、変圧室9と定圧室8との間に実質的に差圧が生じていない。このため、真空弁座部材30には圧力差による力が後方に向けて加えられていない。
(負圧倍力装置の低減速度領域での通常ブレーキ作動時)
通常ブレーキを行うためにブレーキペダルが通常ブレーキ作動時での踏込速度で踏み込まれると、入力軸11が前進して弁プランジャ10が前進する。弁プランジャ10の前進により、弁体12の真空弁部12bが真空弁座13に着座して真空弁15が閉じるとともに大気弁座14が弁体12の大気弁部12aから離れて、大気弁16が開く。すなわち、変圧室9が定圧室8から遮断されるとともに大気に連通される。したがって、大気圧の空気が大気導入口20a、外周側通路19a、内周側通路19b、開いている大気弁16、およびキー孔4aを通って変圧室9に導入される。その結果、変圧室9と定圧室8との間に差圧が生じてパワーピストン5が前進し、更にバルブボディ4を介して出力軸26が前進して図示しないマスタシリンダのピストンが前進する。このとき、弁体12、真空弁座部材30、および筒状部材33等のバルブボディ4に支持されている部材は、バルブボディ4と一体に移動する。
また、弁プランジャ10の前進で間隔部材24も前進するが、まだ間隔部材24は間隙Cによりリアクションディスク25に当接するまでには至らない。したがって、出力軸26から反力がリアクションディスク25から間隔部材24に伝達されないので、この反力は弁プランジャ10および入力軸11を介してブレーキペダルにも伝達されない。入力軸11が更に前進すると、パワーピストン5も更に前進し、バルブボディ4および出力軸26を介してマスタシリンダのピストンが更に前進する。
マスタシリンダ以降のブレーキ系のロスストロークが消滅すると、負圧倍力装置1は実質的に出力を発生し、この出力でマスタシリンダがマスタシリンダ圧(液圧)を発生し、このマスタシリンダ圧でホイールシリンダが作動してブレーキ力を発生する。
このとき、マスタシリンダから出力軸26に加えられる反力によってリアクションディ
スク25が後方に膨出し、間隙Cが消滅してリアクションディスク25が間隔部材24に当接する。これにより、出力軸26からの反力はリアクションディスク25から間隔部材24に伝達され、更に弁プランジャ10および入力軸11を介してブレーキペダルに伝達されて運転者に感知されるようになる。すなわち、図4(b)に示すように負圧倍力装置1は通常ブレーキ作動時のジャンピング特性を発揮する。このジャンピング特性は、従来の一般的な負圧倍力装置のジャンピング特性とほぼ同じである。
低減速度(低G)領域内で通常ブレーキが作動される場合には、負圧倍力装置1の入力(つまり、ペダル踏力)が比較的小さい。この低減速度(低G)領域では、出力が所定出力以下の出力領域であり、前述のように変圧室9の圧力PVと定圧室8の圧力PV0との差圧により真空弁座部材30を押圧する力FPが第1および第2弁制御スプリング18,32の各ばね力の和より小さい。このため、真空弁座部材30はバルブボディ4に対して後方に移動しなく、サーボ比は従来の通常ブレーキ作動時とほぼ同じ比較的小さなサーボ比SR1となる。したがって、負圧倍力装置1の出力がペダル踏力による入力軸11の入力をこのサーボ比SR1で倍力した大きさになると、大気弁部12aが大気弁座14に着座して大気弁16も閉じて中間負荷のバランス状態となる(真空弁15は、真空弁部12bが真空弁座13に着座して既に閉じている)。こうして、図4(b)に示すように低減速度(低G)領域においては、通常ブレーキ作動時のペダル踏力をサーボ比SR1で倍力したブレーキ力で通常ブレーキが作動する。
通常ブレーキ作動時での負圧倍力装置1の大気弁16および真空弁15がともに閉じている状態から、通常ブレーキを解除するために、ブレーキペダルを解放すると、入力軸11および弁プランジャ10がともに後退するが、バルブボディ4および真空弁座部材30は変圧室9に空気(大気)が導入されているので、直ぐには後退しない。これにより、弁プランジャ10の大気弁座14が弁体12の大気弁部12aを後方に押圧するので、真空弁部12bが真空弁座13gから離座し、真空弁15が開く。すると、変圧室9が開いた真空弁15および真空通路22を介して定圧室8に連通するので、変圧室9に導入された空気は、開いた真空弁15、真空通路22、定圧室8および負圧導入口28を介して真空源に排出される。
これにより、変圧室9の圧力が低くなって変圧室9と定圧室8との差圧が小さくなるので、リターンスプリング27のばね力により、パワーピストン5、バルブボディ4および出力軸26が後退する。バルブボディ4の後退に伴い、マスタシリンダのピストンのリターンスプリングのばね力によってマスタシリンダのピストンおよび出力軸26も後退し、通常ブレーキが解除開始される。
キー部材23が図1に示すようにリヤシェル3に当接すると、キー部材23は停止してそれ以上後退しなくなる。しかし、バルブボディ4、弁プランジャ10および入力軸11が更に後退する。そして、弁プランジャ10が図2に示すようにキー部材23に当接してそれ以上後退しなくなり、更に、バルブボディ4のキー孔4aの前端4a1が図2に示すようにキー部材23に当接して、バルブボディ4がそれ以上後退しなくなる。こうして、負圧倍力装置1は図1および図2に示す初期の非作動状態になる。したがって、マスタシリンダが非作動状態になってマスタシリンダ圧が消滅するとともに、ホイールシリンダも非作動状態になってブレーキ力が消滅して、通常ブレーキが解除される。
(負圧倍力装置の中高減速度領域での通常ブレーキ作動時)
通常ブレーキ作動時において低減速度(低G)より大きな減速度の中高減速度領域で通常ブレーキ作動を行う場合には、負圧倍力装置1の入力(つまり、ペダル踏力)が低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時より大きく設定される。入力が大きくなると変圧室9の圧力PVも大きくなるが、図4(b)に示すように入力が、変圧室9の圧力PVが式
(7)を満たすような設定入力F0以上になると、負圧倍力装置1の入出力特性は中高減速度(中高G)領域となり、出力が所定出力より大きい出力領域となる。
この中高減速度(中高G)領域では、変圧室9の圧力PVと定圧室8の圧力PV0との差圧により真空弁座部材30を押圧する力FPが第1および第2弁制御スプリング18,32の各ばね力の和より大きくなるので、真空弁座部材30は第1および第2弁制御スプリング18,32を縮小して弁体12を押しながらバルブボディ4に対して後方に移動する。このため、大気弁部12aが大気弁座14から通常時より大きく離間し、大気弁16が大きく開く。したがって、図4(b)に示すように中高G領域においては、前述のようにサーボ比は従来の通常ブレーキ作動時より大きなサーボ比SR2となる。すなわち、負圧倍力装置1の出力が入力軸11の入力をこのサーボ比SR2で倍力した大きさになると、前述と同様に大気弁部12aが大気弁座14に着座して大気弁16も閉じて制御弁17は中間負荷のバランス位置となる(真空弁15は、真空弁部12bが真空弁座13に着座して既に閉じている)。したがって、制御弁17のバランス位置は後方に移動する。こうして、中高減速度(中高G)領域において、ペダル踏力をサーボ比SR2で倍力した低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時より大きなブレーキ力でブレーキが作動する。その場合、負圧倍力装置1は、この中高減速度(中高G)領域においては、ペダル踏力つまり負圧倍力装置1の入力が大きいが、サーボ比SR1の通常ブレーキ作動時での入力と同じ入力で、通常ブレーキ作動時より大きな出力が得られるようになる。
また、中高減速度(中高G)領域の作動時では、真空弁座部材30が低減速度(低G)領域での作動時よりバルブボディ4に対して後方にストローク量だけ移動することから、出力ストロークがこのストローク量に応じて大きくなる。すなわち、入力軸11のストロークつまりブレーキペダルのストロークが短縮される(詳細は、特許文献1を参照)。
真空弁座部材30の作動時での負圧倍力装置1の大気弁16および真空弁15がともに閉じている状態から、通常ブレーキを解除するために、ブレーキペダルを解放すると、前述と同様にして真空弁15が開き、変圧室9に導入された空気が、開いた真空弁15、真空通路22、定圧室8および負圧導入口28を介して真空源に排出される。
これにより、前述と同様に変圧室9の圧力が低下し、リターンスプリング27のばね力により、パワーピストン5、バルブボディ4および出力軸26が後退する。バルブボディ4の後退に伴い、マスタシリンダのピストンのリターンスプリングのばね力によってマスタシリンダのピストンおよび出力軸26も後退し、ブレーキが解除開始される。
変圧室9と定圧室8との差圧が小さくなって、真空弁座部材30を押圧する力FPが変圧室9の圧力PVが第1および第2弁制御スプリング18,32のばね荷重FS,fSの和より小さくなると、真空弁座部材30がバルブボディ4に対して前方に相対的に移動して、真空弁座部材30は図2に示す非作動位置になる。これにより、真空弁部12bが真空弁座13gから大きく離座して真空弁15が大きく開くので、変圧室9内の空気は多く排出されて、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動状態になる。これ以後、前述の低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動の場合と同様であり、最終的に負圧倍力装置1の移動した部材はすべて図2に示す非作動位置になり、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時より大きな入力によるブレーキが解除される。
真空弁座部材30の非作動位置への戻り過程(真空弁座部材30のバルブボディ4に対する前方移動)で、真空弁座部材30がスティックを起こして第2弁制御スプリング32のばね力では前方へ移動しなくなった場合には、バルブボディ4の後退移動により真空弁座部材30の前端部30eが、リヤシェル3に当接して後退移動しないキー部材23に当接する。したがって、真空弁座部材30も後退移動が阻止される。しかし、バルブボディ
4の更なる後退移動で、スティックを起こしている真空弁座部材30はバルブボディ4に対して強制的に前方へ移動するようになる。このため、真空弁座部材30は確実に図2に示す非作動位置となって真空弁が開き、負圧倍力装置1は確実に非作動位置となり、ブレーキが解除される。
(負圧倍力装置のBA作動時)
ブレーキペダルが通常ブレーキ作動時より迅速に踏み込まれてBA作動が行われると、バルブボディ4に対する入力軸11および弁プランジャ10の前方移動が大きくなる。すると、弁プランジャ10の係止解除部10aが筒状部材位置決め部材35のエッジ部35aに当接して筒状部材位置決め部材35を押し開くので、筒状部材33と筒状部材位置決め部材35との係止が解除される。これにより、筒状部材33が真空弁座部材30を押圧してバルブボディ4に対して後方へ移動するので、負圧倍力装置1のサーボ比が大きなサーボ比SR2となる。このとき、リアクションディスク25は間隔部材24にまだ当接していないので、出力軸26からの反力でリアクションディスク25が膨出して間隔部材24に当接したときは、負圧倍力装置1の出力は、大きくなっている。したがって、BA作動時のジャンピング特性のジャンピング量が大きくなるとともにサーボ比が大きくなるので、小さなペダル踏力および小さなペダルストロークで大きなブレーキ力が発生する。こうして、緊急ブレーキ作動時等においてBA作動が行われる。
BA作動後、ブレーキペダルを解放すると、バルブボディ4、パワーピストン5、弁プランジャ10,入力軸11,出力軸26等は後退して、前述の通常ブレーキ作動の解除時と同様に図1および図2に示す非作動位置に戻る。その場合、弁プランジャ10の係止解除部10aが筒状部材位置決め部材35のエッジ部35aから離れるので、筒状部材位置決め部材35は筒状部材33と係止可能な状態となる。一方、筒状部材33はバルブボディ4の後退移動により筒状部材33の前端部33dが、リヤシェル3に当接して後退移動しないキー部材23に当接する。したがって、筒状部材33も後退移動が阻止される。しかし、バルブボディ4の更なる後退移動で、筒状部材33はキー部材23によりバルブボディ4に対して強制的に前方へ移動し、非作動位置に戻る。
このようにブレーキシステムに適用したこの例の負圧倍力装置1によれば、中高減速度(中高G)領域で出力軸26の大きなストロークを得る場合、入力軸11のストローク量を、低減速度(低G)領域での出力に対する前記入力軸の操作ストローク量の変化率で変化した場合においてこの大きなストロークを得るために必要なストローク量より短縮させることができる。これにより、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時の減速度よりも大きな減速度を得る場合に、低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時のサーボ比SR1でこの大きな減速度を得るために必要なブレーキペダルの踏込み量より小さなペダル踏込み量で、所望の大きな減速度を得ることができる。したがって、車両重量が大きい車輌等の中高減速度(中高G)領域での通常ブレーキ作動時に低減速度(低G)領域での通常ブレーキ作動時より大きなブレーキ力を必要とする車輌に対して、ブレーキフィーリングをより効果的に良好にできる。
また、真空弁15および大気弁16を直列に配設するとともに、大気弁16の有効径DAV、真空弁15の有効径DVV、および弁体12のバルブボディ4との摺動部の有効径DPVを互いにほぼ等しく(DAV≒DVV≒DPV)設定しているので、前述のように第1および第2弁制御スプリング18,32の各ばね荷重を、ともに小さく設定することができる。
しかも、第2弁制御スプリング32を筒状の真空弁座部材30の外周側で真空弁座部材30と直列に設けることで、第2弁制御スプリング32のばね定数Kおよび外径等のサイズを真空弁座部材30によって大きく左右されるのを抑制することができる。これにより、負圧倍力装置1のサーボ比SRをその設定に大きく関与する第2弁制御スプリング32
のばね力を種々変えることによって大小変化させることが可能となり、サーボ比設定の自由度を大きくすることができる。したがって、負圧倍力装置1の1つの形式で種々の車種のブレーキ倍力装置にその車種に応じて容易にかつより的確に適用可能となる。
更に、直列に配設された大気弁16および真空弁15の径を均一にコンパクトにできるので、これら弁15,16を内蔵するバルブボディ4の径も小さくできる。これにより、バルブボディ4の径方向のコンパクト化を効果的に図ることが可能となる。特に、筒状の真空弁座部材30の外周側に第2弁制御スプリング30を設けかつ真空弁座部材30の内周側に真空弁座13を設けているので、大気弁16および真空弁15の直列配置、および大気弁16の有効径DAV、真空弁15の有効径DVV、および弁体12のバルブボディ4との摺動部の有効径DPVの等径化に相俟って、バルブボディ4の径方向のコンパクト化をより一層効果的に図ることができる。
更に、ブレーキ倍力装置の入力(ペダル踏力)−減速度特性(F−G特性)および入力ストローク(ペダルストローク)−減速度特性(S−G特性)において、真空弁座部材30の作動開始点でのブレーキシステムの所定出力(所定減速度)GO1を4m/sec2に設定するとともに、中間負荷から全負荷への切替点でのブレーキシステムの所定出力(所定減速度)GO2を8m/sec2に設定しているので、低G領域での従来のブレーキ作動の良好なペダルフィーリングを確保するとともに、中高G領域でのペダルストロークを短縮して小さなペダルストロークで大きなブレーキ力を得ることができる。
なお、前述の例では、変圧室9の圧力と定圧室の圧力との圧力差により真空弁座部材30の作動制御しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、変圧室9の圧力のみあるいは変圧室9の圧力と他の一定圧力との圧力差により、真空弁座部材30の作動を制御することもできる。更に、変圧室9の圧力に代えて、入力軸11に加えられる入力に応じた圧力により、真空弁座部材30の作動を制御することもできる。
また、前述の例では、本発明を1つのパワーピストン5を有するシングル型の負圧倍力装置に適用しているが、本発明は複数のパワーピストン5を有するタンデム型の負圧倍力装置に適用することもできる。
更に、前述の例では、本発明の負圧倍力装置をブレーキシステムに適用しているが、負圧倍力装置を用いる他のシステムや装置に適用することができる。
本発明に係る負圧倍力装置は、比較的大きな出力領域での入力ストロークを短縮する負圧倍力装置に利用することができ、特に、車両のブレーキシステムにおいて、車両重量が大きい車両等の通常ブレーキ作動時の中高減速度領域でのペダルストロークを短縮するブレーキ倍力装置に好適に利用することができる。
本発明に係る負圧倍力装置の実施の形態の、ブレーキ倍力装置に適用した例を非作動状態で示す断面図である。 図1における真空弁および大気弁の部分を拡大して示す部分拡大断面図である。 図1に示す例の負圧倍力装置における真空弁座部材の作動を説明し、力学的に等価状態を示す図である。 図1に示す例の負圧倍力装置の特性を説明し、(a)は入力ストローク−出力ストローク特性を示す図、(b)は入力−出力特性を示す図である。
符号の説明
1…負圧倍力装置、2…フロントシェル、3…リヤシェル、4…バルブボディ、5…パワーピストン、8…定圧室、9…変圧室、10…弁プランジャ、11…入力軸、12…弁体、12a…大気弁部、12b…真空弁部、13…真空弁座、14…大気弁座、15…真空弁、16…大気弁、17…制御弁、18…第1弁制御スプリング、23…キー部材、24…リアクションディスク、25…出力軸、30…真空弁座部材、32…第2弁制御スプリング、33…筒状部材

Claims (2)

  1. シェル内に対して進退自在に配設されたバルブボディと、
    前記シェル内に設けられた定圧室と変圧室との間の連通および遮断を制御する真空弁と、
    前記真空弁に直列に配設されて、前記変圧室と少なくとも大気との間を連通および遮断する大気弁とを少なくとも備え、
    前記真空弁は、真空弁座を有する筒状の真空弁座部材と、弁体に設けられて前記真空弁座に着離座可能な真空弁部とを有し、
    前記真空弁座部材は、前記変圧室の圧力が前記真空弁座を前記真空弁部に当接する方向に作用されるとともに、付勢手段の付勢力が前記真空弁座を前記真空弁部から遠ざける方向に作用されるように構成されている負圧倍力装置において、
    前記付勢手段は前記筒状の真空弁座部材の外周側と前記バルブボディとの間に前記真空弁座部材と直列に設けられているとともに、前記真空弁部は前記筒状の真空弁座部材の内周側に設けられており、
    更に、前記真空弁の有効径と前記大気弁の有効径と前記弁体の前記バルブボディとの摺動部の有効径とがそれぞれ互いにほぼ等しく設定されていることを特徴とする負圧倍力装置。
  2. 車両のブレーキシステムに用いられ、ブレーキペダルのペダル踏力を倍力して出力する負圧倍力装置からなるブレーキ倍力装置において、
    前記負圧倍力装置は請求項1記載の負圧倍力装置であり、前記真空弁座部材が前記バルブボディに対して相対移動開始するときの車両の減速度が、通常ブレーキ作動時において発生する可能性のある減速度より大きな減速度に設定されていることを特徴とする負圧倍力装置。
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