JP2010023007A - ホウ素含有排水の処理方法および装置 - Google Patents

ホウ素含有排水の処理方法および装置 Download PDF

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章弘 山崎
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淳 飯塚
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Abstract

【課題】排水のpHがホウ酸のイオン化が起こるpHであることに拘泥されず、共存する強酸の陰イオンを事前に除去することなくホウ素成分の回収を十分に実現でき、しかもホウ素成分の回収を低エネルギー消費量で、かつコンパクトな装置によって実現可能な、ホウ素含有排水の処理方法を提供することにある。
【解決手段】ホウ素含有排水を第1のバイポーラ膜により生じた水酸化物イオンと反応させて、排水中にホウ酸イオンを生成する工程、陰イオン交換膜に上記ホウ酸イオンを通過させて、上記排水から上記ホウ酸イオンを分離する工程、陰イオン交換膜を通過したホウ酸イオンを、第2のバイポーラ膜により生じた水素イオンと反応させて、濃縮ホウ酸を生成する工程、および上記濃縮ホウ酸を回収する工程を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホウ素含有排水の処理方法に関する。より詳しくは、本発明のホウ素含有排水の処理方法は、排水中のホウ素成分の濃縮、回収を極めて高効率に行うことができる方法に関する。本発明は、このような方法に用いる装置に関する。
ホウ素およびその化合物は、様々な健康障害を引き起こす有害物質として知られており、飲料水の場合には、ホウ素含有量を0.5mg/L以下とすることが好適であるとのガイドラインが、世界保健機関(WHO)によって設けられている。
日本国内でも、平成15年に水質環境基準として、ホウ素含有量を1.0mg/L以下とすることが推奨され、さらに、平成17年に水質汚濁防止法による産業排水の一律排水基準として、ホウ素含有量を10mg/L以下とすることが定められた。
このような排水中のホウ素含有量低減の要請に伴い、ホウ素成分の回収を目的とした各種技術が研究されているが、既存のホウ素成分回収技術を用いて上記の各種排水基準を達成するには、コストおよび二次廃棄物の観点から種々の問題があり、より実用的なホウ素成分回収技術の開発が望まれている。
排水からホウ素成分を回収する技術のうち、実用化に近い例としては、凝集沈殿法が挙げられ、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献1には、300mg/L以下のホウ素を含有する排水に、硫酸アルミニウム及び消石灰を添加し、アルカリ性に調整する反応工程と、生成した不溶性析出物を固液分離する固液分離工程とを含み、上記反応工程におけるアルミニウム、カルシウムの存在量を1:4〜1:6の重量比に調整し、かつpHを9以上に調整するホウ素含有排水の処理方法が開示されている。
特許文献2には、ホウ酸を含有する排水を過酸化物によって処理した後に、ヒドロキシ多価カルボン酸およびアルカリ土類金属化合物の共存下で沈殿物を析出させたのち、該沈殿物を排水中から分離することによって、排水中のホウ素濃度を低下させる、排水の処理方法が開示されている。
特許文献3には、過酸化物および多価金属化合物の共存下にてpHを8以上に調整することによってホウ素含有化合物の沈殿物を形成させたのち、該沈殿物を排水中から分離あるいは回収することによって、排水中のホウ素濃度を低下させるホウ素含有排水の処理方法が開示されている。
特許文献4には、ホウ素を含有する排水に、フェノール性水酸基含有化合物および不溶化剤を添加してホウ素を含む沈殿物を生成させるホウ素含有排水の処理方法が開示されている。
また、排水からホウ素成分を回収する技術のうち、実用化に近い他の例としては、イオン交換樹脂法が挙げられ、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献5には、少なくとも多価陽イオンを含むホウ素含有排水を処理してホウ素を吸着したホウ素選択性樹脂から、該吸着したホウ素を鉱酸溶液により溶離させて得た溶離液を、遊離塩基形弱塩基性陰イオン交換樹脂層に通液し、ホウ素溶液と鉱酸溶液に分画してホウ素溶液を回収し、該溶離液を該陰イオン交換樹脂層に対して上向流で通液するホウ素の回収方法が開示されている。
さらに、排水からホウ素成分を回収する技術のうち、実用化に近いさらに他の例としては、吸着法が挙げられ、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献6には、排水中に含まれるホウ素を吸着するためのホウ素吸着材であって、セリウム水酸化物と、セリウム以外の少なくとも一種の希土類金属の水酸化物と、シリカとからなるホウ素吸着材が開示されている。
特許文献7には、ホウ素含有水を逆浸透膜分離装置に通し、膜を透過して装置を出た水を、次いでホウ素やその化合物に対してキレート形成能を有するキレート形成性繊維を充填した装置に通して、膜透過水中に残存するホウ素含有量を低減させて飲用に適した水を製造する方法が開示されている。
上述のように、実用的なホウ素成分の回収技術としては、凝集沈殿法、イオン交換樹脂法、および吸着法が存在するが、これらの技術には、以下のような欠点がある。
即ち、凝集沈殿法を用いた場合には、ホウ素濃度に関する排水基準を達成するに際し、多量のスラッジが発生する。また、イオン交換樹脂法を用いた場合には、樹脂等が高価であり、しかもその再生に多量の酸およびアルカリを要するため、低廉にホウ素を回収することが困難である。さらに、吸着法を用いた場合には、ホウ素を特異的に吸着する材料が存在しないため、ホウ素を捕捉する際に他の元素をも捕捉するおそれがあり、高効率にホウ素を回収することが困難である。
このような諸事情に鑑み、排水中のホウ素を、特に高効率に回収できる技術として、電気透析法を用いた技術の開発が盛んに行われており、例えば、以下の技術が開示されている。
特許文献8には、カチオン交換材料で満たされた電気化学セルの1つの希釈コンパートメントで行われる電気泳動によって、強く解離されたアニオンを分離する工程と、上記コンパートメントでイオン交換/電気泳動によってLi+などの解離したカチオンを分離する工程と、アニオン交換材料だけをまたはアニオン交換材料とカチオン交換材料の混合物または互いに離隔したアニオン材料とカチオン材料の層が充填された別のコンパートメントで行われる電気化学/化学解離、イオン交換/吸着および電気泳動によってホウ素を分離する工程と、電気化学セルの陰極液コンパートメント内に分離されたカチオンを回収する工程と、電気化学セルの陽極液コンパートメント内に分離されたホウ素を回収する工程と、陽極液コンパートメント内の陽極液を再循環する工程と、陰極液コンパートメント内の陰極液を再循環する工程と、必要に応じて希釈コンパートメントの希釈された溶液を再循環する工程とを含むホウ素を含む水性溶液からホウ素を分離、回収する方法が開示されている。
特許文献9には、陽極と陰極との間にイオン交換膜によって濃縮室と脱塩室とが区画され、濃縮水が該濃縮室に流通され、被処理水が脱塩室に導入されて生産水として取り出される電気脱イオン装置を複数備えてなり、前段側の電気脱イオン装置の生産水が後段側の電気脱イオン装置の脱塩室へ被処理水として導入され、各電気脱イオン装置は、その脱塩室からの生産水の一部を濃縮水としてその濃縮室に対し脱塩室出口に近い側から流入させ、脱塩室入口に近い側から流出させるよう構成されており、最下段側の該電気脱イオン装置の脱塩室へ流入する被処理水のイオン負荷を増大させるイオン負荷増大手段を備えた電気脱イオンシステムが開示されている。
特許文献10には、陽極と陰極との間にイオン交換膜によって濃縮室と脱塩室とが区画され、濃縮水を該濃縮室に流通させると共に、原水を被処理水として脱塩室に流通させ、生産水として該脱塩室から取り出し、該濃縮室から流出する濃縮水のホウ素濃度を生産水のホウ素濃度の500倍以下または10ppb以下とする電気脱イオン装置の運転方法が開示されている。
特開2007−301456号公報 特開2007−283217号公報 特開2007−283216号公報 特開2007−29925号公報 特開2006−326488号公報 特開2007−237168号公報 特開2006−192422号公報 特開2007−534453号公報 特開2006−51423号公報 特開2004−261643号公報
ところで、特許文献8〜10に記載の電気透析法によるホウ素成分の回収技術では、ホウ素成分は共存イオンが除去された結果としてイオン化したのちに電気的に除去されて,ホウ酸として回収される。このため、排水のpHは、ホウ酸のイオン化が起こる9.14以上に調製する必要がある。
また、これらの技術においては、排水中に、弱酸であるホウ酸に対してpHの低い強酸の陰イオンが共存する場合には、排水のpHを上昇させることが困難であり、ひいてはホウ素のイオン化が阻害される。このため、共存する強酸の陰イオンを事前に除去しておかなければ、ホウ素のイオン化が実現できず、ひいては、ホウ素成分を高効率に回収できないおそれがある。
さらに、近年においては、環境問題等の観点から、排水中のホウ素成分をできるだけ低いエネルギー消費量によって回収でき、しかも当該回収を簡易な装置によって実現可能な電気透析技術の開発が要請されている。
従って、本発明の目的は、排水のpHがホウ酸のイオン化が起こるpHであることに拘泥されず、共存する強酸の陰イオンを事前に除去することなくホウ素成分の回収を十分に実現でき、しかもホウ素成分の回収を低エネルギー消費量で、かつコンパクトな装置によって実現可能な、ホウ素含有排水の処理方法を提供することにある。また、本発明は、このような方法を実施することのできるホウ素含有排水の処理装置を提供することにある。
本発明は、ホウ素含有排水を第1のバイポーラ膜により生じた水酸化物イオンと反応させて、排水中にホウ酸イオンを生成する工程(第1工程)、陰イオン交換膜に上記ホウ酸イオンを通過させて、前記排水中から前記ホウ酸イオンを分離する工程(第2工程)、陰イオン交換膜を通過したホウ酸イオンを、第2のバイポーラ膜により生じた水素イオンと反応させて、濃縮ホウ酸を生成する工程(第3工程)、および上記濃縮ホウ酸を回収する工程(第4工程)を含む、ホウ素含有排水の処理方法に関する。本発明のホウ素含有排水の処理方法は、産業排水等からホウ素成分を回収するとともに、ホウ素成分を除去した処理済溶液を灌漑用水等として利用する技術等の、排水処理技術に用いることができる。
このようなホウ素含有排水の処理方法においては、上記第1工程において、上記ホウ素含有排水のpHを10以上とすることが望ましい。また、上記第2工程において、上記排水からホウ酸イオンが分離された溶液を回収することが望ましい。
本発明は、排水処理槽と、上記排水処理槽に複数の空間を画成するために配設された第1のバイポーラ膜、陰イオン交換膜、および第2のバイポーラ膜と、上記排水処理槽の対抗する面にそれぞれ配設された陰極および陽極とを備える、ホウ素含有排水の処理装置を包含する。本発明のホウ素含有排水の処理装置は、上記の処理方法を好適に実施することができる装置である。
このような装置においては、上記陰極と上記陽極との間の通電電流が20mA/cm2以上であることが望ましい。
本発明のホウ素含有排水の処理方法は、ホウ素含有排水を水酸化物イオンと反応させ、排水のpHを上昇させることで、ホウ酸のイオン化を行い、次いでホウ酸イオンを陰イオン交換膜に通し、さらにホウ酸イオンを水素イオンと反応させて、濃縮ホウ酸を得、これを回収する方法である。このため、幅広いpHの排水からホウ素成分の回収を実現することができる。
また、本発明のホウ素含有排水の処理方法によれば、たとえ弱酸であるホウ酸に対してpHの低い強酸の陰イオンが共存する場合であっても、水酸化物イオンの十分な供給により、排水のpHを所望の程度に高めることができるため、ホウ素成分の濃縮、回収を高効率に行うことができる。
本発明のホウ素含有排水の処理装置は、幅広いpHの排水からホウ素成分の回収を高効率に行うことができる上記方法の実施に好適に用いられる装置である。本発明の装置においては、バイポーラ膜を用いて水を水素イオンと水酸化物イオンとに直接分離することから、水の電気分解のような電極反応を伴う場合とは異なり、水素等の気体の発生を伴わない。このため、低いエネルギー消費量によりホウ素成分を回収することができる。
また、本発明のホウ素含有排水の処理装置によれば、バイポーラ膜の使用により、当該装置自体を複数積層して用いることが可能であり、例えば、特許文献8に記載された電極反応を伴う装置に比べて装置自体を簡易なものとすることができる。
以下に、本発明のホウ素含有排水の処理方法および装置を、図面に従い詳細に説明する。なお、以下に示す例は本発明の単なる例示であり、当業者であれば適宜設計変更することができる。
<ホウ素含有排水の処理方法>
図1は、本発明のホウ素含有排水の処理法方法の各工程を順次示すフローチャートである。同図によれば、本発明のホウ素含有排水の処理方法は、ホウ酸イオンの生成工程(第1工程)、ホウ酸イオンの分離工程(第2工程)、濃縮ホウ酸の生成工程(第3工程)、ならびに濃縮ホウ酸の回収工程(工程4)を含む。
(第1工程)
本工程は、排水中にホウ酸イオンを生成する工程である。具体的には、ホウ素含有排水と水酸化物イオンとを反応させて、排水中にホウ酸イオンを生成する。
まず、水の解離反応により、水酸化物イオンを生成する(下記(式1))。
2O → H+ + OH- (式1)
次に、ホウ素含有排水を水酸化物イオンと反応させて、ホウ酸イオンを生成する(下記(式2))。
3BO3 + OH- → B(OH)4 - (式2)
このように、上記2つの反応を伴う第1工程においては、ホウ素含有排水のpHを10以上とすることが、ホウ酸の電離を促進し、ホウ酸イオンの生成を高効率に行うことができる点で好ましい。これは、酸解離定数が9.14であるホウ酸をホウ酸イオンに十分に電離することができるからである。
(第2工程)
本工程は、排水からのホウ酸イオンの分離工程である。例えば、ホウ酸イオンをイオン交換膜に通して、ホウ酸イオンを排水が収容されている槽とは別の槽に分離する。
このように、排水からホウ酸イオンを分離する際には、イオン交換膜がホウ酸イオンを選択的に吸収、透過する性質を有することが、ホウ素除去を効率的に行うことができる点で好ましい。
このような排水からのホウ酸イオンの分離工程においては、ホウ酸イオンが分離された処理済溶液を回収することが好ましい。この処理済溶液の回収により、排水からのホウ酸イオンの分離が連続的に可能となる。
(第3工程)
本工程は、濃縮ホウ酸の生成工程である。具体的には、本工程では、ホウ酸イオンと水素イオンとを反応させて濃縮ホウ酸を生成する。
まず、水の解離反応により、水素イオンを生成する(下記(式3))。
2O → H+ + OH- (式3)
次に、ホウ酸イオンを水素イオンと反応させて、濃縮ホウ酸を生成する(下記(式4))。
B(OH)4 - + H+ → H3BO3 + H2O (式4)
(第4工程)
本工程は、濃縮ホウ酸の回収工程である。本工程では、第3工程で得られた濃縮ホウ酸を回収する。
以上に示す、第1〜第4工程を含むホウ素含有排水の処理方法は、ホウ酸イオンの生成時にホウ素含有排水と水酸化物イオンとを反応させて排水のpHを大きくするため、当初の排水のpHに拘泥されることなく、有利に濃縮ホウ酸の回収を行うことができる。
また、図1に示すホウ素含有排水の処理方法は、ホウ酸に対してpHの低い強酸の陰イオンが共存する場合であっても、水酸化物イオンの十分な供給により、排水のpHを所望の程度に高めることができるため、ホウ素成分の濃縮、回収を高効率に行うことができる。
<ホウ素含有排水の処理装置>
本発明のホウ素含有排水の処理装置は、上述のホウ素含有排水の処理方法を好適に実施するための装置である。図2は、本発明のホウ素含有排水処理装置を示す側方断面図である。同図によれば、装置10は、排水処理槽12と、排水処理槽12に複数の空間を画成するために配設された第1のバイポーラ膜14、陰イオン交換膜16、および第2のバイポーラ膜18と、排水処理槽12の対抗する面にそれぞれ配設された陰極20および陽極22とを備える。
(排水処理層12)
排水処理槽12は、ホウ素含有排水を好適に処理するための槽である。排水処理槽12は、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ塩化ビニルから形成することができる。特に、排水による腐食等の耐久性を考慮した場合には、ポリ塩化ビニルから形成することが好ましい。
(第1のバイポーラ膜14)
第1のバイポーラ膜14は、一対のアニオン交換層とカチオン交換層とからなり、排水処理槽12内の後述する陰極側に配設され、電気的に水の解離を引き起こすための膜である。第1のバイポーラ膜14は、このような機能を発揮するものであれば、特に限定されない。第1のバイポーラ膜14の構成要素である両交換層は、例えば、膜素材としてスチレン-ジビニルベンゼンポリマー、アクリルポリマー等を用い、カチオン交換基としてスルホン酸等を導入するとともに、アニオン交換基として四級アミン等を導入して形成することができる。
(陰イオン交換膜16)
陰イオン交換膜16は、イオン交換樹脂等からなり、排水処理槽12内のほぼ中央に配設され、陰イオンを交換するための膜である。陰イオン交換膜16は、このような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、膜素材としてスチレン−ジビニルベンゼンポリマー、アクリルポリマー等を用い、アニオン交換基として四級アミン等を導入することにより形成することができる。
排水からホウ酸イオンを分離する際には、イオン交換膜がホウ酸イオンを選択的に吸収、透過する性質を有することが、ホウ素除去を効率的に行うことができる点で好ましい。例えば,ポリビニルアルコールのようにホウ酸イオンを選択的に吸着する材料を組み合わせて用いることができる。
(第2のバイポーラ膜18)
第2のバイポーラ膜18は、一対のアニオン交換層とカチオン交換層とからなり、排水処理槽12内の後述する陽極側に配設され、電気的に水の解離を引き起こすための膜である。第2のバイポーラ膜18は、このような機能を発揮するものであれば、特に限定されず、その構成要素である両交換膜は、例えば、膜素材としてスチレン−ジビニルベンゼンポリマー、アクリルポリマー等を用い、カチオン交換基としてスルホン酸等を導入するとともに、アニオン交換基として四級アミン等を導入して形成することができる。
(陰極20および陽極22)
陰極20および陽極22は、排水処理槽12の対向する面に配設され、排水処理槽12内に配設された第1および第2のバイポーラ膜14,18、ならびに陰イオン交換膜16を好適に稼動させるために用いる一対の電極である。陰極20および陽極22は、このような稼動を実現できるものであれば、特に限定されず、例えば、陰極20は白金板、白金メッキチタン、炭素等から、陽極21は白金板、白金メッキチタン、炭素、ステンレス等から形成することができる。特に、電極の耐久性とコスト等を考慮した場合には、陰極20は白金メッキチタン、陽極21はステンレスから形成することが好ましい。
(排水処理槽12内に画成される各室30〜36)
各構成要素12〜22からなるホウ素含有排水の処理装置10には、以下に示す各室が画成されている。即ち、図2に示すように、排水処理槽12に、第1および第2のバイポーラ膜14,18、ならびに陰イオン交換膜16を配設することで、排水処理槽12内には、水素イオン生成室30、ホウ酸イオン生成室32、濃縮ホウ酸生成室34、および水酸化物イオン生成室36が画成される。
これらの室30〜36は、第1および第2のバイポーラ膜14,18と、陰イオン交換膜16との相対的な配設位置により、これらの室の大きさを適宜変更できる。
(装置10の動作)
以上に示す各構成要素12〜22からなり、かつ各室30〜36が画成された装置10は、以下のように稼動する。
まず、水素イオン生成室30には、硫酸ナトリウム等の水溶液を供給し、ホウ酸イオン生成室32には、四ホウ酸ナトリウム等の水溶液を供給し、濃縮ホウ酸生成室34には水酸化物ナトリウム等の水溶液を供給し、水酸化物イオン生成室35には、硫酸ナトリウム等の水溶液を供給する。この状態で両極20,22間に電圧を印加すると、第1のバイポーラ膜14と第2のバイポーラ膜18のそれぞれの両側においては、陰極20側(水素イオン生成室30および濃縮ホウ酸生成室34)では水素イオンが発生し、陽極22側(ホウ酸イオン生成室32および水酸化物イオン生成室36)では水酸化物イオンが生成する(上記の(式1)および(式3))。
ここで、陰極20と陽極22との間の通電電流は、20mA/cm2以下であることが、濃度分極を防止し、装置に印加すべき電圧値の上昇を抑制してエネルギー消費量を低く抑えることができる点で好ましい。このような通電電流に関する閾値は、限界電流密度と称され、装置系に依存する値である。
この状態から、図2に示すように、ホウ酸イオン生成室32にホウ素含有排水Xを導入すると、ホウ素含有排水中のホウ酸が水酸化物イオンと反応してホウ酸イオンが生成する(上記の(式2))。
次いで、上記の通電状態を維持して、陰イオン交換膜16にホウ酸イオンを通す。これにより、ホウ酸イオンは、負極側から正極側へ、即ちホウ酸イオン生成室32から濃縮ホウ酸生成室34へと移動する。
なお、図2に示すように、ホウ酸イオンの陰イオン交換膜16への通過と同時に、ホウ素成分が除去されてホウ酸イオン生成室32内に残留している処理済溶液Yを、外部に取り出し、回収することが連続的に処理を行うことができる点で好ましい。
さらに、上記の通電状態を維持すると、濃縮ホウ酸生成室34に導入されたホウ酸イオンは、水素イオンと反応して濃縮ホウ酸Zとなる(上記の(式4))。
最後に、図2に示すように、濃縮ホウ酸生成室34中に収容されている濃縮ホウ酸Zを、外部に取り出し、回収する。この回収態様としては、回収溶液をホウ酸水溶液として行うことができ、特に、高度に濃縮された水溶液を回収することが、回収後に当該ホウ酸を再利用し易い点で好ましい。
以上に示す、構成要素12〜22を含む装置は、ホウ酸イオンの生成に際し、pHの制御に、第1のバイポーラ膜14を用いて水を解離させている。このため、pH調整剤等の各種薬品を別途用いる必要がなく、低廉な装置構成を実現することができる。また、各種薬品の使用をしないことで、二次廃液の発生を防止することもできる。
また、図2に示す装置は、排水から除去されたホウ素成分を濃縮ホウ酸として回収できる。このため、連続的な濃縮ホウ酸回収操作、即ち、連続的なホウ素含有排水の処理が可能である。
さらに、図2に示す装置は、水の電気分解のような電極反応を伴わないため、水素等の気体が発生せず、低いエネルギー消費量によりホウ素成分の回収を実現でき、しかも、バイポーラ膜の使用により、当該装置自体を複数積層して用いることも可能であり、装置自体を比較的簡易なものとすることができる。なお、装置自体を簡易なものとできることから、特に、これまで困難であった小規模排水原からのホウ素回収が可能となり、結果的に環境中へのホウ素の排出を抑制することができる。
以下に、本発明の実施例を説明し、本発明の効果を実証する。
(実施例1)
図2に示すホウ素含有排水の処理装置を用いてホウ素含有排水からホウ素の回収を行った。装置の具体的構成は、最も外側に位置する両電極にそれぞれ隣接した水素イオン生成室と水酸化物イオン生成室との間に、バイポーラ膜、ホウ酸イオン生成室、陰イオン交換膜、および濃縮ホウ酸生成室をこの順に備えるユニットを3組とさらにバイポーラ膜とを直列に配置した構成とした。装置のバイポーラ膜には、Neosepta BP−1E((株)アストム製)を用いるとともに、陰イオン交換膜には、Selemion AMV(AGCエンジニアリング(株)製)を用いた。
処理装置中の陰イオン交換膜の有効膜面積は117.5cm2とし、バイポーラ膜と陰イオン交換膜とのそれぞれの距離は、1.5mmとした。
水素イオン生成室には、0.1M硫酸ナトリウム水溶液を供給し、ホウ酸イオン生成室には、100ppmの四ホウ酸ナトリウム水溶液を供給し、濃縮ホウ酸生成室には0.001Mの水酸化物ナトリウム水溶液を供給し、水酸化物イオン生成室には、0.1M硫酸ナトリウム水溶液を供給した。
このような条件の下、通電電流値を0.5Aの一定値としてホウ素の回収を120分間行った。なお、ホウ素の回収率は、ホウ酸イオン生成室中における初期ホウ素濃度に対する各時刻のホウ素濃度の割合として算出した。その結果を図3に示す。
(実施例2)
ホウ酸イオン生成室に100ppmの四ホウ酸ナトリウム水溶液を供給するとともに、0.01Mの塩化ナトリウム溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様にしてホウ素の回収を行い、その回収率を算出した。その結果を図3に併記する。本例は、ホウ素含有排水中に共存する他の強酸の陰イオンの存在がホウ素回収率に与える影響について考察するものである。
(実施例3)
ホウ酸イオン生成室に100ppmの四ホウ酸ナトリウム水溶液を供給するとともに、0.005Mの硫酸ナトリウム溶液を供給したこと以外は、実施例1と同様にしてホウ素の回収を行い、その回収率を算出した。その結果を図3に併記する。本例も、実施例2と同様に、ホウ素含有排水中に共存する他の強酸の陰イオンの存在がホウ素回収率に与える影響について考察するものである。
図3に示すように、本発明の装置を用いて本発明の方法を実施した場合(実施例1〜3)には、いずれも、120分経過時においては、ホウ素の約6割から8割の回収率が達成されていることが判る。具体的には、共存強酸陰イオンを含まない実施例1においては80%、共存強酸陰イオンを含む実施例2,3においては67.3%、72.9%のホウ素回収率が達成されていることが判る。
また、実施例1においては、120分経過時における電流効率(供給した電荷量(mol)に対する回収されたホウ素(mol)の割合)は8.4%であり、 電力消費量は10.8Wh/g−Bであった。実施例2においては、120分経過時における電流効率は6.6%であり、 電力消費量は2.72Wh/g−Bであった。実施例3においては、120分経過時における電流効率は6.8%であり、 電力消費量は2.61Wh/g−Bであった。
以上の結果から、ホウ素含有排水中に他の強酸の陰イオンの存在している場合(実施例2,3)も含めて、本発明の装置を用いて本発明の方法を実施した場合には、いずれも優れたホウ素回収率を達成できるといえる。
本発明のホウ素含有排水の処理方法は、ホウ素イオンの生成時に排水のpHを上昇させるため、排水の当初のpHに拘泥させることなく故に幅広いpHの排水からホウ素成分の回収を実現することができる。また、ホウ酸に対してpHの低い強酸の陰イオンが共存する場合であっても、水酸化物イオンの十分な供給により、排水のpHを所望の程度に高め、ホウ素成分の濃縮、回収を高効率に行うことができる。
本発明のホウ素含有排水の処理装置は、このような方法の実施に好適に用いられ、バイポーラ膜の使用により水を水素イオンと水酸化物イオンとに直接分離することから、水素等の気体の発生を伴わず、低いエネルギー消費量によりホウ素成分を回収することができる。また、バイポーラ膜の使用により、当該装置自体を複数積層して用いることが可能であり、従来の電極反応を伴う装置に比べて装置自体を簡易なものとすることができる。
本発明は、このような利点を有するため、排水処理のみならず、海水の淡水化プロセス等の淡水製造の分野においても適用の可能性があり、安全な水資源の確保に貢献できる。また、本発明は、灌漑用水に含まれるホウ素が作物の生育に重大な影響を及ぼすことから、灌漑用水の前処理に適用することもできる。さらに、排水等から回収されたホウ素は高濃縮溶液として回収されるところ、ホウ素はガラス産業、メッキ工業等における重要な工業原料であるため、回収したホウ素化合物は、さらなる精製工程を経て、工業原料としての再利用することができる。
従って、本発明は、今後益々種々の目的の下、柔軟な適用が要請される、産業排水の清浄化等の技術分野において好適に適用でき、特に、装置の簡易化により、小規模排出源からのホウ素の回収が可能となり、ひいては、市場への導入が加速されるものと考えられる点で有望である。
本発明のホウ素含有排水の処理法方法の各工程を順次示すフローチャートである。 本発明のホウ素含有排水処理装置を示す側方断面図である。 ホウ素回収率の経時的変化を示すグラフである。
符号の説明
10 ホウ素含有排水の処理装置
12 排水処理槽
14 第1のバイポーラ膜
16 陰イオン交換膜
18 第2のバイポーラ膜
20 陰極
22 陽極
30 水素イオン生成室
32 ホウ酸イオン生成室
34 濃縮ホウ酸生成室
36 水酸化物イオン生成室
X ホウ素含有排水
Y 処理済溶液
Z 濃縮ホウ酸

Claims (5)

  1. ホウ素含有排水を第1のバイポーラ膜により生じた水酸化物イオンと反応させて、排水中にホウ酸イオンを生成する工程(第1工程)、
    陰イオン交換膜に前記ホウ酸イオンを通過させて、前記排水から前記ホウ酸イオンを分離する工程(第2工程)、
    陰イオン交換膜を通過したホウ酸イオンを、第2のバイポーラ膜により生じた水素イオンと反応させて、濃縮ホウ酸を生成する工程(第3工程)、および
    前記濃縮ホウ酸を回収する工程(第4工程)
    を含むことを特徴とする、ホウ素含有排水の処理方法。
  2. 前記第1工程において、前記ホウ素含有排水のpHを10以上とすることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素含有排水の処理方法。
  3. 前記第2工程において、前記排水からホウ酸イオンを含まない溶液を回収することを特徴とする、請求項1または2に記載のホウ素含有排水の処理方法。
  4. 排水処理槽と、
    前記排水処理槽に複数の空間を画成するために配設された第1のバイポーラ膜、陰イオン交換膜、および第2のバイポーラ膜と、
    前記排水処理槽の対抗する面にそれぞれ配設された陰極および陽極と
    を備える、ホウ素含有排水の処理装置。
  5. 前記陰極と前記陽極との間の通電電流が20mA/cm2 以下であることを特徴とする、請求項4に記載のホウ素含有排水の処理装置。
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