JP2010019688A - 化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、及び、化学物質センシング素子の製造方法 - Google Patents

化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、及び、化学物質センシング素子の製造方法 Download PDF

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Yasuaki Murashi
泰章 村司
Mikihiro Yamanaka
幹宏 山中
Katsutoshi Takao
克俊 高尾
Shuji Nishiura
修司 西浦
Atsushi Kudo
淳 工藤
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Abstract

【課題】 カーボンナノ構造体と基板との密着性に優れ、かつ、耐久性及び検出感度に優れる化学物質センシング素子を提供する。
【解決手段】 表面に形成された熱酸化膜135を有する基板130と、熱酸化膜135表面に形成され、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素からなるバッファ層136と、バッファ層136表面に形成され、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子142からなる触媒層137と、触媒層137表面に形成され、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層138とを備え、バッファ層136は、スパッタ法によって形成されるようにする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、雰囲気中の特定物質を検出するための化学物質センシング素子に関し、特には、耐久性及び検出感度を改善する技術に関する。
わが国は高齢化及び少子化が進んでおり、近い将来に国民の3人に1人が65歳以上になるという超高齢化社会の到来が予測されている。このような状況下において急務とされているのが、国民医療費の抑制である。このため、予防医療の充実が注目されている。予防医療が充実することで病気になる人が減少すれば、医療費を軽減させることができるからである。
予防医療を充実させるためには、身近な機器で測定した健康情報を活用して健康管理を行なうことができるシステムが必要である。手軽に個人の健康状態を把握するための指標として、血液、尿、汗、唾液及び呼気等の生体試料がある。このような生体試料中には、血液における血糖値のように、疾病又はその兆候に起因して数値が変化する物質(以下「マーカ」と記す。)が複数含まれている。したがって、マーカの変化量を測定することによって個人の健康状態を把握できる可能性が高く、マーカの測定を常時行なうことで、健康管理及び疾病の早期発見が可能になる。
非特許文献1には疾病とマーカとの関係が示されている。テーブル1にこの一部を引用する。
Figure 2010019688
上述の生体試料の中でも、呼気は、複数種のマーカを含む点、迅速かつ簡便にサンプリング及び測定ができる点、並びに、測定対象がガス状であり非侵襲で測定できるため肉体的なダメージが小さい点等から、測定に最適な生体試料であると言える。
呼気中のマーカの測定方法として、酸化スズ等の酸化物半導体ガスセンサによる測定が知られているが、検出限界が10ppmレベルと感度が低く、ppbからppmオーダーの濃度である呼気中のマーカの測定には適していない。更に、ガスセンサとして作動するためには300℃に加熱する必要があるため実用的ではない。
また、非特許文献2には、カーボンナノチューブ(以下、「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す場合がある。)を利用したガス分析用のガスセンサが提案されている。CNTは直径がナノオーダーのチューブ状炭素材料であり、グラフェンシートを円筒状に丸めた構造によりなる。このグラフェンシートとは、6つの炭素原子が正六角形の板状構造を形成して結合したグラファイト構造が二次元に連続して形成されたものである。CNTは高い導電性を有し、かつナノオーダーの材料であるため、非特許文献2に開示されるガスセンサは、超小型化、低消費電力及び可搬性を実現可能であり、簡便で実用的な健康チェック手段として最適である。しかしながら、測定対象ガスに対する選択性が低いために、どのような分子が接近しても同じように抵抗変化を起こしてしまい、雰囲気中に存在する化学物質の定性分析ができないという問題がある。
このような問題を解決するための方法として、特許文献1には、化学的センサ及び生物学的センサとして利用可能な、少なくとも1個のCNTを含むナノチューブデバイスについて開示されている。特許文献1に開示されるナノチューブデバイスは、特定分子種に対する感度を付与する、金属原子、ポリマー又は生物種を含む1個以上の検出剤でCNT表面を修飾することにより、測定対象ガスに対する選択性を向上させている。
特許文献1に開示される技術のように、CNT等のカーボンナノ構造体の表面を検出剤によって修飾する方法の一つとして、検出剤を含む溶液中にカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する湿式法がある。この湿式法によって、基板上に成長させたカーボンナノ構造体の表面を修飾しようとすると、カーボンナノ構造体と基板との密着性が低い場合には、超音波による衝撃によって基板上からカーボンナノ構造体が脱落してしまうという問題が生じる。カーボンナノ構造体と基板との密着性を向上させる技術として、例えば、特許文献2には、CNT成長後に、その下端部分を溶融金属で被覆して固定する技術について開示されている。また、非特許文献3には、CNTと基板との間に窒化チタン(TiN)からなる層を設ける技術について開示されている。
特表2003−517604号公報 特開2007−76925号公報 ウェンチン・ツァオら、「呼気分析:臨床診断及び曝露評価の可能性」、クリニカル・ケミストリ、第52巻:5、p.800−p.811、2006年(Wenqing Cao et al.、"Breath Analysis:Potential for Clinical Diagnosis and Exposure Assessment"、Clinical Chemistry、vol.52:5、p.800−p.811、2006) 齋藤理一郎、「カーボンナノチューブの概要と課題」、機能材料、vol.21、No.5、p.6−p.14、2001年5月号 平松美根男、堀勝、「マイクロ波プラズマCVDを用いた高密度配向カーボンナノチューブ膜の高速成長」、技術情報誌、アルバック、第63巻、p.1−p.5、2005年
特許文献2及び非特許文献3に開示される技術では、カーボンナノ構造体と基板との密着性は充分ではなく、湿式法において基板上からのカーボンナノ構造体の脱落を完全に防ぐことはできない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カーボンナノ構造体と基板との密着性に優れ、かつ、耐久性及び検出感度に優れる化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、及び、化学物質センシング素子の製造方法を提供することである。
本発明の第1の局面に係る化学物質センシング素子は、表面に形成された熱酸化膜を有する基板と、熱酸化膜表面に形成され、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素からなるバッファ層と、バッファ層表面に形成され、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子からなる触媒層と、触媒層表面に形成され、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層とを備え、バッファ層は、スパッタ法によって形成される。
これにより、バッファ層の緻密性が熱酸化膜及び窒化チタンからなるスパッタ膜よりも低くなるので、熱酸化膜表面に触媒層が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタンからなるスパッタ膜表面に触媒層が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子の一部がバッファ層内部に埋め込まれ易くなり、金属触媒微粒子の一部をバッファ層に固定することが可能になる。そのため、バッファ層と触媒層とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子表面に成長するカーボンナノ構造体が基板から脱落しにくくなり、導電層を構成するカーボンナノ構造体と基板との密着性に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。したがって、超音波照射による衝撃に耐えることができ、耐久性に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。また、金属触媒微粒子が凝集するのを防ぐことができるので、高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層を得ることができ、検出感度に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。
好ましくは、金属触媒微粒子の粒径は、1nm〜30nmである。これにより、カーボンナノ構造体の直径を好ましい値に制御することができるとともに、金属触媒微粒子をより一層高分散かつ高密度にバッファ層に固定することが可能になるので、より一層高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層を得ることができる。したがって、検出感度に更に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。また、金属触媒微粒子間における電気抵抗が大きくなるので、導電性を示す金属からなるにもかかわらず、触媒層全体が絶縁性を示すようになる。したがって、ガス分析時において触媒層に電流が流れるのを防ぐことができるようになり、より一層正確なガス分析が可能になる。
更に好ましくは、カーボンナノ構造体は、雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質により表面修飾される。これにより、導電層における電気抵抗の変化が、表面に修飾された物質の挙動に連動するようになるので、特定化学物質を選択的に検出できる化学物質センシング素子を得ることができる。したがって、雰囲気中の特定化学物質を高選択的かつ高感度に検出できるようになる。
本発明の第2の局面に係る化学物質センシング装置は、上述の化学物質センシング素子と、化学物質センシング素子に電気的に接続され、化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含む。このように、化学物質センシング装置は、上述の化学物質センシング素子を含むので、耐久性に優れ、ガス分析を高感度に行なうことができる。
本発明の第3の局面に係る化学物質センシング素子の製造方法は、表面に形成された熱酸化膜を有する基板において、熱酸化膜表面にバッファ層を形成する第1のステップと、バッファ層表面に、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子からなる触媒層を形成する第2のステップと、触媒層表面に、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層を形成する第3のステップとを含む。そして、第1のステップにおいて、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素をターゲットとして用いたスパッタ法によりバッファ層を形成する。
これにより、バッファ層の緻密性が熱酸化膜及び窒化チタンからなるスパッタ膜よりも低くなるので、熱酸化膜表面に触媒層が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタンからなるスパッタ膜表面に触媒層が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子の一部がバッファ層内部に埋め込まれ易くなり、金属触媒微粒子の一部をバッファ層に固定することが可能になる。そのため、バッファ層と触媒層とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子表面に成長するカーボンナノ構造体が基板から脱落しにくくなるので、導電層を構成するカーボンナノ構造体と基板との密着性に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。したがって、超音波照射による衝撃に耐えることができ、耐久性に優れる化学物質センシング素子を製造することができる。また、金属触媒微粒子が凝集するのを防ぐことができるので、高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層を形成することができ、検出感度に優れる化学物質センシング素子を製造することができる。
好ましくは、化学物質センシング素子の製造方法は、雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質と溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製する第4のステップと、表面修飾用溶液に対して、導電層が形成された基板を浸漬した後、超音波を照射する第5のステップとを更に含み、第4のステップ及び前記第5のステップによって、カーボンナノ構造体を上述の物質により表面修飾する。
このように、超音波を用いることで、カーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面を雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質により均一に修飾することができる。したがって、雰囲気中の特定物質をより高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質センシング素子を製造することができる。また、超音波照射により発生する熱を利用して溶剤を蒸発させて除去することができるので、カーボンナノ構造体の表面修飾及び溶剤の除去を単一の工程で行なうことができ、短時間で化学物質センシング素子を製造することができる。
好ましくは、第1のステップ及び第2のステップにおいて、開口の形状が所望のパターンに形成されたメタルマスクを用いてバッファ層及び触媒層のパターニングを行なう。これにより、高い生産効率でかつ低コストで化学物質センシング素子を製造することができる。
更に好ましくは、第2のステップにおいて、アークプラズマガン法により触媒層を形成する。これにより、金属触媒微粒子がより一層正確にナノメータオーダで微粒子化できるようになるので、金属触媒微粒子間の電気抵抗を確実に大きくすることができる。したがって、触媒層全体が確実に絶縁性を示すようになるので、ガス分析時において触媒層に電流が流れるのを確実に防ぐことができ、より一層正確なガス分析が可能な化学物質センシング素子を製造することができる。また、金属触媒微粒子を高分散かつ高密度にバッファ層に固定することが可能になるので、高分散かつ高密度に成長するカーボンナノ構造体をより一層容易に形成することができ、検出感度に更に優れる化学物質センシング素子を製造することができる。
更に好ましくは、第3のステップにおいて、マイクロ波プラズマCVD法により導電層を形成する。これにより、カーボンナノ構造体の集合体を高密度かつ均一な長さで形成することができるので、雰囲気中の化学物質を均一に吸着することができ、より一層正確なガス分析が可能な化学物質センシング素子を製造することができる。
本発明によれば、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素からなるバッファ層がスパッタ法によって形成され、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子からなる触媒層がバッファ層表面に形成され、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層が触媒層表面に形成される。これにより、バッファ層の緻密性が熱酸化膜及び窒化チタンからなるスパッタ膜よりも低くなるので、熱酸化膜表面に触媒層が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタンからなるスパッタ膜表面に触媒層が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子の一部がバッファ層内部に埋め込まれ易くなり、金属触媒微粒子の一部をバッファ層に固定することが可能になる。そのため、バッファ層と触媒層とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子表面に成長するカーボンナノ構造体が基板から脱落しにくくなるので、導電層を構成するカーボンナノ構造体と基板との密着性に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。したがって、超音波照射による衝撃に耐えることができ、耐久性に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。また、金属触媒微粒子が凝集するのを防ぐことができるので、高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層を得ることができ、検出感度に優れる化学物質センシング素子を得ることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
−構成−
図1は、本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子128を含む化学物質センシング装置20の構成図である。図1を参照して、化学物質センシング装置20は、直流電源30と、直流電源30のプラス端子に一端が接続される、本実施の形態に係る化学物質センシング素子128と、化学物質センシング素子128の他端と直流電源30のマイナス端子との間に接続される負荷抵抗34と、化学物質センシング素子128と負荷抵抗34との間の接点に入力が接続され、この接点の電位変化を増幅するための増幅器36とを含む。雰囲気中、すなわち測定対象ガス中の化学物質の検出時には、この電位変化を測定するために、増幅器36の入力とは反対側にある他方の端子に直流電圧計(図示せず。)が接続される。
図2は、化学物質センシング素子128の構成を示す図であり、図2(A)は、斜視図であり、図2(B)は上面図であり、図2(C)は図2(B)に示す化学物質センシング素子128における矢視方向のC−C線断面図である。図2(A)及び図2(B)を参照して、化学物質センシング素子128は、平板状の基板130と、基板130表面に櫛型形状に形成されるパターン部132とを含む。ここで、パターン部132における櫛型形状とは、予め定められるX方向に沿って伸びるように形成される直方体部132aと、直方体部132aの中間部から間隔を有して突出し、X方向と直交する方向であるY方向に沿って伸びるように形成される複数の凸部132bとを含む形状である。パターン部132において、直方体部132aのX方向一端部には接点139が接続され、X方向他端部には接点140が接続される。以下、図2(C)を参照して、化学物質センシング素子128を構成する基板130、パターン部132、及び、接点139,140について詳細に説明する。
[基板130]
基板130は、固体基板134と、固体基板134表面に形成される熱酸化膜135とを含む。固体基板134としては、絶縁体からなる基板であれば特に限定されず、シリコン、石英、又は、酸化亜鉛及びチタン等の酸化物半導体等からなる基板を使用できる。固体基板134の厚みとしては、適度な機械的強度を有するものであれば特に限定されないが、10μm〜1000μmであることが好ましい。固体基板134の形状及びサイズとしては、化学物質センシング装置20に設置可能な形状及びサイズであれば特に限定されない。本実施の形態では、固体基板134として、上面の形状が、一辺の長さが0.5cm〜210cmの正方形状又は長方形状のものを使用する。熱酸化膜135は、後述する触媒層137を構成する金属触媒微粒子142と固体基板134との反応、例えば、固体基板134がシリコン基板である場合におけるシリサイド化等を防ぐ役割をする。熱酸化膜135としては、絶縁体からなる膜であれば特に限定されず、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化窒素(SiN)、又は、それらの混合物(SiOxNy)からなる膜を使用できる。熱酸化膜135の膜厚としては、上記の役割を達成できる程度であれば特に限定されないが、1nm〜5000nmであることが好ましい。基板130としては、上述した熱酸化膜135により得られる効果をより顕著に発現できる点から、二酸化ケイ素(SiO)からなる熱酸化膜135が形成されたシリコン(Si)固体基板134を使用することが特に好ましく、例えば、市販品(商品名:熱酸化膜シリコン、山中セミコンダクター株式会社製等)を使用することができる。
[パターン部132]
パターン部132は、熱酸化膜135表面に、櫛型形状にパターン化されて形成されるバッファ層136と、バッファ層136表面に形成され、金属触媒微粒子142からなる触媒層137と、触媒層137表面に形成され、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層138とを含む。
バッファ層136は、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸化膜(SiO)、又は、それらを組合わせたシリコン酸窒化膜からなり、かつスパッタ法によって形成される膜(以下「スパッタ膜」と記す場合がある。)である。このようなスパッタ膜の緻密性は、2.2g/cm未満であり、熱酸化法等によって形成される熱酸化膜135(緻密性:2.2g/cm〜2.3g/cm)よりも緻密性が低い。また、窒化チタン(TiN)からなるスパッタ膜よりも緻密性が低い。したがって、熱酸化膜135表面に触媒層137が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタン(TiN)からなるスパッタ膜表面に触媒層137が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子142の一部がバッファ層136内部に埋め込まれ易くなる。これにより、触媒層137を構成する金属触媒微粒子142の一部をバッファ層136に固定することが可能になる。そのため、バッファ層136と触媒層137とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子142表面に成長するカーボンナノ構造体が基板130から脱落しにくくなり、導電層138を構成するカーボンナノ構造体と基板130との密着性に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。また、金属触媒微粒子142が凝集するのを防ぐことができるので、基板130表面に対して高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層138を得ることができる。
触媒層137は、カーボンナノ構造体の成長を促進する触媒である金属触媒微粒子142からなる膜である。触媒層137としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、コバルト(Co)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、又は、ニッケル(Ni)等の金属触媒微粒子142からなる膜を、単層で又は積層して使用できる。金属触媒微粒子142の構成材料としては、上述の中でも、バッファ層136内により一層埋め込まれ易くなる点から、コバルト(Co)が使用されることが特に好ましい。金属触媒微粒子142の粒径(平均粒径)としては、1nm〜30nmであることが好ましい。金属触媒微粒子142の粒径が上述の範囲内であることにより、導電層138を構成するカーボンナノ構造体の直径を好ましい値である1nm〜30nmに制御することができる。これは、カーボンナノ構造体は、その直径が金属触媒微粒子142の直径と相関を持って成長するためである。また、金属触媒微粒子142をより一層高分散かつ高密度にバッファ層136に固定することが可能になるので、より一層高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層138を得ることができる。したがって、検出感度に更に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。更に、金属触媒微粒子142の粒径が上述のようにナノメータオーダで微粒子化されることにより、金属触媒微粒子142間における電気抵抗が大きくなるので、導電性を示す金属からなるにもかかわらず、触媒層137全体が絶縁性を示すようになる。したがって、ガス分析時において触媒層137に電流が流れるのを防ぐことができるようになり、より一層正確なガス分析が可能になる。金属触媒微粒子142の粒径が30nmより大きいと、カーボンナノ構造体であるカーボンナノチューブが生成しない、又は、カーボンナノファイバーが生成し易くなるおそれがある。また1nmよりも小さい場合は、熱処理で凝集させることで金属触媒微粒子142を所望の粒径とすることができるが、粒径の制御が困難であり、手間がかかるおそれがある。
導電層138は、カーボンナノ構造体の集合体からなる。カーボンナノ構造体としては、カーボンナノチューブ(以下「CNT(Carbon NanoTube)」と記す場合がある。)、カーボンナノファイバー又はフラーレン等の炭素系導電性材料からなるものを使用できる。これらの中でも特に、CNTからなるものが好ましい。カーボンナノ構造体は、その形状がナノオーダーの微細構造であることから、応答性及び検出下限が従来の化学物質センシング素子と比較して大幅に向上する。すなわち、化学物質がカーボンナノ構造体表面に付着してからカーボンナノ構造体の電気抵抗変化が発生するまでの時間は、カーボンナノ構造体の導電性及びナノ構造に起因して非常に短くなる。また、カーボンナノ構造体における、表面積が大きいという特徴点、及び、全ての構成原子が表面を構成しているという特徴点に起因して、化学物質による付着の影響が電気抵抗に反映される際の電子散乱等による損失が非常に少なくなる。したがって、上述のカーボンナノ構造体は、従来のセンシング素子では困難であった、例えば10ppb〜100ppb程度の雰囲気中の微量の特定化学物質の存在確認が可能になる。カーボンナノ構造体がCNTからなる場合には、上述の効果がより顕著に発現する。
導電層138において、個々のカーボンナノ構造体は、基板130表面に対して垂直方向に立ち上がるように形成され、これらのカーボンナノ構造体の集合体の密度としては、1×1010本/cm〜1×1013本/cmであることが好ましい。このように、個々のカーボンナノ構造体同士が基板130の表面に対して垂直方向に高密度で並んでいるので、カーボンナノ構造体同士が互いに接触しあっていなくても、接点139,140間に、すなわち基板130の表面に対して平行な方向である水平方向に電界がかけられることで、導電層138全体が高い導電性を示すようになる。これはトンネル効果によるものであると考えられる。したがって、ガス分析時において導電層138に電流がより一層流れ易くなるので、より一層正確なガス分析が可能になる。
カーボンナノ構造体は、雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質(以下「表面修飾物質」と記す。)により表面修飾されることが好ましい。これにより、雰囲気中の特定化学物質を高選択的かつ高感度に検出できるようになる。図3は、カーボンナノ構造体88における表面修飾の様子を模式的に示す図である。図3を参照して、例えばCNTからなるカーボンナノ構造体88の表面は、雰囲気中、すなわち測定対象ガス中の特定化学物質を選択的に吸着する表面修飾物質94によって表面修飾される。ここでは、表面修飾物質94として、ペンタン(C12)95及び一酸化窒素(NO)96、並びに、VOCs(Volatile Organic Compounds)ガスであるトルエン及びキシレンを選択的に吸着する金属フタロシアニンの一例であるコバルトフタロシアニン(以下「CoPc」と記す。)の分子構造を図示したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、アセトンを選択的に吸着する2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(以下「DNPH(2,4-Dinitrophenylhydrazine)」と記す。)等を表面修飾物質94として使用することもできる。
このようなカーボンナノ構造体88の表面に何らかの化学物質が付着すると、電子移動が起こり、起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体88の2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定化学物質を選択的に吸着する表面修飾物質94によりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面に修飾された表面修飾物質94の挙動に連動するようになるので、特定化学物質を選択的に検出できる化学物質センシング素子128を得ることができる。したがって、雰囲気中の特定化学物質を高選択的かつ高感度に検出できるようになる。例えば、表面修飾物質94であるCoPcによりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、呼気中のペンタン(C12)95及び一酸化窒素(NO)96がCoPcに吸着される。その結果、前述のようにカーボンナノ構造体88の電気抵抗が変化する。この変化量は、カーボンナノ構造体88表面に吸着したペンタン95及び一酸化窒素96の量に応じて変わる。したがって、導電層138に電界をかけたときの抵抗値の変化を測定することにより、測定対象ガス中のペンタン95及び一酸化窒素(NO)96の濃度を検出することができる。
なお、カーボンナノ構造体には、表面修飾物質による表面修飾を行ないやすくするために紫外線照射により表面改質されたものを使用することもできる。また、不純物除去のために塩酸等により表面処理されたものを使用することもできる。
[接点139及び接点140]
接点139及び接点140は導電層138とそれぞれ電気的に接続されており、接点139は、化学物質センシング装置20における直流電源30のプラス端子に接続され、接点140は、負荷抵抗34に接続される。
−化学物質センシング素子128の製造方法−
以下、図2(C)を参照して、化学物質センシング素子128の製造方法について説明する。化学物質センシング素子128の製造方法は、後述する第1のステップ〜第5のステップを含む。
第1のステップでは、例えば、熱酸化法等の公知の方法によって、固体基板134表面に熱酸化膜135を形成する。ここで、熱酸化法とは、基板130表面を、例えば850℃以上の高温で酸素と反応させて酸化膜を形成する方法である。この際、例えば市販品(商品名:シリコン熱酸化膜、山中セミコンダクター株式会社製)等の、予め表面に熱酸化膜135が形成された固体基板134を基板130として使用することで第1のステップを省略することもできる。
第2のステップでは、熱酸化膜135表面にバッファ層136を形成する。バッファ層136の形成は、少なくとも窒化ケイ素(SiN)又は二酸化ケイ素(SiO)をターゲットとして用いたスパッタ法により行なう。これにより、バッファ層136の緻密性が熱酸化膜135及び窒化チタンからなるスパッタ膜よりも低くなるので、熱酸化膜135表面に触媒層137が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタンからなるスパッタ膜表面に触媒層137が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子142の一部がバッファ層136内部に埋め込まれ易くなり、金属触媒微粒子142の一部をバッファ層136に固定することが可能になる。そのため、バッファ層136と触媒層137とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子142表面に成長するカーボンナノ構造体が基板130から脱落しにくくなり、導電層138を構成するカーボンナノ構造体と基板130との密着性に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。したがって、超音波照射による衝撃に耐えることができ、耐久性に優れる化学物質センシング素子128を製造することができる。また、金属触媒微粒子142が凝集するのを防ぐことができるので、高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層138を形成することができ、検出感度に優れる化学物質センシング素子128を製造することができる。
バッファ層136のパターニング方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、例えば、開口の形状が所望のパターンに形成されたメタルマスク又はフォトリソグラフを使用する方法等がある。これらの中でも、生産効率の点から、メタルマスクを使用する方法が特に好ましい。バッファ層136の形成に使用するスパッタ装置としては、当該分野において一般的に使用される装置であれば特に限定されない。このような高周波スパッタ装置としては、例えば、市販品(商品名:SBR2304、ULVAC社製、周波数:13.56MHz、電力:200W)等を使用できる。バッファ層136の膜厚としては、金属触媒微粒子142を固定可能な程度であれば特に限定されないが、1nm〜5000nmであることが好ましい。バッファ層136の製膜時間は、バッファ層136の膜厚が上記範囲内となるように適宜設定されればよい。
第3のステップでは、バッファ層136表面に触媒層137を形成する。触媒層137の形成方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されず、電子ビーム蒸着法(EB(electron−beam)蒸着法)、スパッタ法又はアークプラズマガン法等を使用できる。これらの中でも、金属触媒微粒子142がより一層正確にナノメータオーダで微粒子化できる点から、アークプラズマガン法を使用することが特に好ましい。ここで、アークプラズマガン法とは、金属触媒微粒子142のターゲット材料に対してパルス的にアーク放電を行なうことにより、ターゲット材料を微粒子化して放出させ、これをバッファ層136に当てて金属触媒微粒子142からなる触媒層137を形成するものである。このようなアークプラズマガン法を使用することにより、金属触媒微粒子142間の電気抵抗を確実に大きくすることができるので、触媒層137全体が確実に絶縁性を示すようになる。これにより、ガス分析時において触媒層137に電流が流れるのを確実に防ぐことができ、より一層正確なガス分析が可能な化学物質センシング素子128を製造できる。また、金属触媒微粒子142を高分散かつ高密度にバッファ層136に固定することが可能になるので、高分散かつ高密度に成長するカーボンナノ構造体をより一層容易に形成することができ、検出感度に更に優れる化学物質センシング素子128を製造することができる。
触媒層137のパターニング方法としては、バッファ層136と同じ形状にパターニングできるものであれば特に制限されないが、バッファ層136のパターニングに使用したメタルマスクと同じものを使用して行なうことがコスト面等の点から好ましい。このように、開口の形状が所望のパターンに形成された同一のメタルマスクを用いてバッファ層136及び触媒層137のパターニングを行なうことにより、高い生産効率でかつ低コストで化学物質センシング素子128を製造することができる。触媒層137の形成に使用する装置としては、当該分野において一般的に使用される装置であれば特に限定されない。例えば、アークプラズマガン法を使用する場合には、市販品(商品名:APG(Arc Plasma Gun)装置、ULVAC社製、放電電圧:60V、アノード―基板間距離:90mm)等を使用できる。触媒層137の膜厚としては、カーボンナノ構造体の成長が可能な程度であれば特に限定されないが、1nm〜5000nmであることが好ましい。触媒層137形成後、パターニングに使用したメタルマスク又はフォトリソグラフ等を熱酸化膜135表面から除去する。
第4のステップでは、触媒層137表面に、カーボンナノ構造体を成長させて導電層138を形成する。導電層138の形成方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されず、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、又は、リモートプラズマCVD法等を使用できる。これらの中でも、カーボンナノ構造体を高密度かつ均一な長さで形成可能な点からプラズマCVD法を使用することが好ましく、前述の効果をより顕著に得られる点からマイクロ波プラズマCVD法を使用することが更に好ましい。これにより、測定対象ガス中における化学物質を均一に吸着することができ、より一層正確なガス分析が可能な化学物質センシング素子128を製造することができる。なお、触媒層137を構成する金属触媒微粒子142は、形成された時点において膜状であっても、上述のようなCVDプロセス時において微粒子化される。カーボンナノ構造体の基板130表面に対する垂直方向の長さとしては、より高感度なガス分析が可能になる点から、1nm〜5000nmであることが好ましい。また、カーボンナノ構造体の直径としては、より高感度なガス分析が可能になる点から、1nm〜30nmであることが好ましい。導電層138の形成に使用する装置としては、当該分野において一般的に使用される装置であれば特に限定されない。例えば、マイクロ波プラズマCVD法を使用する場合には、市販品であるマイクロ波プラズマ化学気相合成(MW−CVD(MicroWave plasma−enhanced Chemical Vapor Deposition))装置(商品名:AX5200、セキテクノトロン株式会社製)等を使用できる。また、マイクロ波プラズマCVD法を使用する場合におけるカーボンナノ構造体の成長時の条件としては、圧力が0.1Torr〜50Torrであることが好ましく、温度が500℃〜1000℃であることが好ましい。これにより、上述の好ましい密度及び長さで基板130表面に対して垂直方向に成長したカーボンナノ構造体を得ることができる。温度が500℃より低い場合には、カーボンナノ構造体の長さが所望のものよりも短く形成されるおそれがある。一方、1000℃より高い場合には、アモルファスカーボンが生成しやすくなるおそれがある。また、プラズマ化させる原料ガスとしては、メタン、エチレン、アセチレン、一酸化炭素、アルコールガス又はこれらのガスの少なくとも1種を含む混合ガス等から選ばれた炭化水素系ガスと、水素原子含有ガス(例えば、水素ガス又はアンモニア等)との混合ガスを用いることが好ましい。例えば、H:CH=90sccm:10sccm〜10sccm:90sccmの混合割合となるように水素ガス(H)で希釈したメタンガス(CH)等を使用できる。
また、上述のようにして成長したカーボンナノ構造体は、第5のステップの前に、紫外線照射によって表面改質されることが好ましい。カーボンナノ構造体に対して紫外線を照射すると、カーボンナノ構造体表面に凹凸が生じ、表面修飾物質がカーボンナノ構造体表面に物理的に付着しやすくなる。したがって、より一層効果的に表面修飾物質による表面修飾を行なうことができるようになる。また、上述のようにして成長したカーボンナノ構造体は、第5のステップの前に、塩酸等によって表面処理されることが好ましい。塩酸等によって表面処理されることによって、カーボンナノ構造体表面に存在する不純物を除去することができる。したがって、より一層効果的に表面修飾物質による表面修飾を行なうことができるようになる。なお、本実施の形態においては、第4のステップの前に、パターニングに使用したメタルマスク又はフォトリソグラフ等を熱酸化膜135表面から除去しているので、上述の表面改質又は表面処理をカーボンナノ構造体全面に対して行なうことができる。
第5のステップでは、カーボンナノ構造体の表面修飾を行なう。カーボンナノ構造体の表面修飾は、雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する表面修飾物質と溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製するステップと、この表面修飾用溶液に対して、導電層138が形成された基板130を浸漬した後、超音波を照射するステップにより達成される。超音波を照射する時間としては、表面修飾物質による表面修飾が確実になされる時間であれば特に限定されないが、10秒〜5000秒程度が好ましく、特には、表面修飾用溶液の濃度が変化しない程度に照射することが好ましい。これによって、表面修飾物質により表面修飾されたカーボンナノ構造体(以下、「表面修飾カーボンナノ構造体」と記す。)からなる導電層138を有する化学物質センシング素子128を作製できる。このように、超音波照射を用いて表面修飾を行なう方法を、以下、溶剤除去法と呼ぶ。
表面修飾用溶液において表面修飾物質を溶解させる溶剤としては、超音波照射によって蒸発するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、テトラヒドロフラン(以下「THF(Tetrahydrofuran)」と記す場合がある。)、アセトン、メタノール又はエタノール等がある。これらの中でも、表面修飾物質に対する溶解性に優れ、かつ沸点が低く揮発性の高いTHFが特に好ましい。照射する超音波の周波数としては、表面修飾が可能な程度に適宜設定されればよい。超音波の照射は、一般的に用いられる超音波洗浄器(例えば、市販品(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製))等の超音波発生装置を用いて行なうことができる。表面修飾用溶液における表面修飾物質の濃度としては、使用する表面修飾物質及び溶剤、並びに所望の表面修飾量に応じて適宜設定されればよいが、例えば、表面修飾物質としてCoPcを使用し、溶剤としてTHFを使用する場合には、0.1mol/L〜25mol/Lであることが好ましい。上述のようにして作製された表面修飾カーボンナノ構造体からなる導電層138を有する化学物質センシング素子128は、乾燥させることが好ましい。
このように、超音波を用いた溶剤除去法により表面修飾を行なうことで、カーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面を表面修飾物質により均一に修飾することができる。したがって、雰囲気中の特定物質をより高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質センシング素子128を製造することができる。また、超音波照射により発生する熱を利用して溶剤を蒸発させて除去することができるので、カーボンナノ構造体の表面修飾及び溶剤の除去を単一の工程で行なうことができ、短時間で化学物質センシング素子128を製造することができる。
−動作−
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る化学物質センシング装置20は以下のように動作する。通常、ユーザは、最初に導電層138の再生処理を行ない、次いで、ガス分析を行なう。
すなわち、まず、直流電源30からかけられる電圧を上げることにより導電層138の温度を200℃に上昇させることで導電層138に吸着した化学物質を脱離させて導電層138の再生処理を行う。
次いで、直流電源30により、化学物質センシング素子128と負荷抵抗34とを直列接続したものの両端に一定電圧をかけながら、特定化学物質を含む測定対象ガスを化学物質センシング素子128表面に導入する。このとき、電界は、接点139,140間の導電層138を介してかけられている。そして、化学物質センシング素子128に含まれる、導電層138を構成する表面修飾カーボンナノ構造体の表面に測定対象ガス中の何らかの化学物質が付着すると、接点139,140間の電気抵抗が変化する。その変化を増幅器36の出力電圧の変化として直流電圧計(図示せず。)により検出する。このように出力電圧変化を知ることによって、測定対象ガス中の何らかの化学物質の存在を確認することができる。
これは以下のような理由によって達成できる。すなわち、導電層138においては、個々のカーボンナノ構造体同士が基板130の表面に対して垂直方向に高密度に成長した状態で並んでいるので、接点139,140間に電界をかけるとトンネル効果により導電層138全体が高い導電性を示し、電流が流れるようになる。このような導電層138を構成する、個々のカーボンナノ構造体の表面に何らかの物質が付着すると、それぞれの電気抵抗が変化し、それらの総和が出力電圧変化として出力される。したがって、導電層138の両端部に設けられる接点139,140間の電気抵抗の変化を知ることにより、導電層138に何らかの物質が付着したことが判るので、測定対象ガス中に何らかの化学物質が存在することを確認することができる。また、導電性を示す材料からなる触媒層137は、アークプラズマガン法等によりナノメータオーダで微粒子化されているので、金属触媒微粒子142間の電気抵抗が大きく、触媒層137全体が絶縁性を示す。これにより、ガス分析時において触媒層137に電流が流れるのを防ぐことができるので、より一層正確なガス分析が可能になる。
また、図3を参照して、表面修飾カーボンナノ構造体88にペンタン95及び一酸化窒素96が接近すると、表面修飾物質94による選択能によりペンタン95及び一酸化窒素96が選択的に表面修飾物質94に吸着される。このように、カーボンナノ構造体に表面修飾された表面修飾物質94は、ペンタン95及び一酸化窒素96を選択的に捕捉するので、ペンタン95及び一酸化窒素96が吸着されたときとそうでないときとの差が、導電層138の全体の電気抵抗の変化として顕著に現れる。したがって、導電層138の電気抵抗の変化を測定することによって、特定物質であるペンタン95及び一酸化窒素96の存在の有無、及び、その存在量を他の物質と比較してより高感度に検出することができる。
[変形例]
図4は、本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子128の変形例の構成を示す図であり、図4(A)は、斜視図であり、図4(B)は上面図であり、図4(C)は図4(B)に示す化学物質センシング素子128の変形例における矢視方向のC−C線断面図である。図4を参照して、化学物質センシング素子128の変形例は、パターン部133が設けられる点、及び、接点140の接続位置が異なる点以外は、化学物質センシング素子128と同一の構成である。化学物質センシング素子128の変形例において、化学物質センシング素子128と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。なお、化学物質センシング素子128の変形例は、第2のステップ及び第3のステップにおけるパターニングに使用するメタルマスク又はフォトリソグラフ等の開口の形状が異なる点、すなわち所望のパターン形状が異なる点以外は、化学物質センシング素子128と同一の製造方法により製造できる。
図4(A)及び図4(B)を参照して、化学物質センシング素子128の変形例は、基板130表面に櫛型形状に形成されるパターン部133を含む。パターン部133は、パターン部132と形状が異なる点以外は同一の構成を有する。ここで、パターン部133における櫛型形状とは、予め定められるX方向に沿って伸びるように形成される直方体部133aと、直方体部133aの中間部から間隔を有して突出し、X方向と直交する方向であるY方向に沿って、凸部132bが伸びる方向とは逆方向に伸びるように形成される複数の凸部133bとを含む形状である。パターン部133の凸部133bは、パターン部132において間隔を有して形成される複数の凸部132bの間に挟まれるように、すなわち、凸部132bと凸部133bとが交互に並んで配置されるように形成される。したがって、凸部132bと凸部133bとの間には、バッファ層136、触媒層137及び導電層138が形成されない部分(以下「基板露出部」と記す。)144が形成される。
パターン部132において、直方体部132aのX方向一端部には接点139が接続され、パターン部133において、直方体部133aのX方向他端部には接点140が接続される。接点139は、パターン部132の導電層138と電気的に接続され、接点140は、パターン部133の導電層138と電気的に接続される。
パターン部132及びパターン部133にそれぞれ設けられる導電層138においては、個々のカーボンナノ構造体は、基板130表面に対して垂直方向に立ち上がるように形成されるとともに、パターン部132の導電層138とパターン部133の導電層138とを連結するように、基板130表面に対して平行な方向である水平方向に伸びるように形成されるカーボンナノ構造体146も存在する。このようなカーボンナノ構造体146により、パターン部132の導電層138とパターン部133の導電層138とは互いに電気的に接続される。したがって、パターン部132とパターン部133との間に基板露出部144が形成されていても、接点139,140間に、すなわち基板130表面に対して平行な方向である水平方向に電界がかけられることにより、パターン部132及びパターン部133の導電層138全体が高い導電性を示すようになるとともに、パターン部132,133間に電流が流れるので、接点139,140間に電流が流れるようになる。また、カーボンナノ構造体146は非常に細いので、カーボンナノ構造体146表面に何らかの化学物質が付着することによって生じる導電層138の電気抵抗の変化に対する影響が極めて大きくなる。そのため、カーボンナノ構造体146が存在することにより、より一層高感度なガス分析を行なうことができるようになる。
−動作−
化学物質センシング素子128の変形例の動作においては、接点139,140間に電流が流れる理由の一部が異なる点以外は、化学物質センシング素子128の動作と同じである。
すなわち、パターン部132及びパターン部133における導電層138においては、個々のカーボンナノ構造体同士が基板130の表面に対して垂直方向に高密度に成長した状態で並んでいるので、接点139,140間に電界をかけるとトンネル効果によりパターン部132及びパターン部133の導電層138全体が高い導電性を示すようになる。そして、カーボンナノ構造体146は、パターン部132及びパターン部133の導電層138を電気的に接続するので、接点139,140間に電流が流れるようになる。このようなパターン部132及びパターン部133における導電層138を構成する、個々のカーボンナノ構造体の表面に何らかの物質が付着すると、それぞれの電気抵抗が変化し、それらの総和が出力電圧変化として出力される。したがって、導電層138の両端部に設けられる接点139,140間の電気抵抗の変化を知ることにより、パターン部132及びパターン部133の導電層138に何らかの物質が付着したことが判るので、測定対象ガス中に何らかの化学物質が存在することを確認することができる。また、カーボンナノ構造体146は非常に細いので、カーボンナノ構造体146表面に何らかの化学物質が付着することによって生じる導電層138の電気抵抗の変化に対する影響が極めて大きくなり、より一層正確なガス分析が可能になる。
[他の変形例]
−構成−
図5は、本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子128の他の変形例の構成を示す上面図である。図5を参照して、化学物質センシング素子128の他の変形例は、パターン部132,133及び接点139,140が複数設けられる点、並びに、それぞれのパターン部132,133に対する接点139,140の接続位置が異なる点以外は、化学物質センシング素子128及びその変形例と同一の構成である。化学物質センシング素子128の他の変形例において、化学物質センシング素子128及びその変形例と同一又は類似の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さず、異なる点のみ説明する。なお、化学物質センシング素子128の他の変形例は、第2のステップ及び第3のステップにおけるパターニングに使用するメタルマスク又はフォトリソグラフ等の開口の形状が異なる点、すなわち所望のパターン形状が異なる点以外は、化学物質センシング素子128及びその変形例と同一の製造方法により製造できる。
図5を参照して、化学物質センシング素子128の他の変形例では、基板130における固体基板134として、上面の形状が、例えば、直径0.5cm〜210cmの円形状のものを使用する。
基板130表面には、5つの凸部132bと6つの凸部133bとが交互に並んで配置されるように形成されるパターン部132,133の組合せが複数、本変形例では12個設けられる。このうち4個のパターン部132,133の組合せは、基板130の中央部に円形状に並ぶように設けられ、残りの8個のパターン部132,133の組合せは、中央部の外側である円周部に円形状に並ぶように設けられる。中央部に設けられる、4個のパターン部132,133の組合せにおいて、各直方体部132aのX方向中央部は共通の接点139にそれぞれ接続され、各直方体部133aのX方向中央部は共通の接点140に接続される。また、円周部に設けられる、8個のパターン部132,133の組合せにおいて、直方体部132aのX方向中央部には接点139がそれぞれ接続され、直方体部133aのX方向中央部には接点140がそれぞれ接続される。各接点139は、パターン部132の導電層138と電気的に接続され、各接点140は、パターン部133の導電層138と電気的に接続される。以下、円周部に設けられる1個のパターン部132,133の組合せと、これらにそれぞれ接続される接点139,140とを含む部分を円周センサ部200と呼ぶ。すなわち、円周部には8個の円周センサ部200が円形状に並ぶように設けられる。また、中央部に設けられる4個のパターン部132,133の組合せと、これらに接続される共通の接点139,140とを含む部分を中央センサ部210と呼ぶ。
本変形例では、これら8個の円周センサ部200及び中央センサ部210に対応して、9個の化学物質センシング装置20が設けられる。8個の円周センサ部200及び中央センサ部210のそれぞれにおいて、接点139は、対応する化学物質センシング装置20における直流電源30のプラス端子にそれぞれ接続され、接点140は、負荷抵抗34にそれぞれ接続される。また、8個の円周センサ部200において、パターン部132,133の導電層138を構成するカーボンナノ構造体は、それぞれ異なる表面修飾物質によって表面修飾される。これによって、測定対象ガス中の複数種の特定化学物質の分析が可能になる。中央センサ部210においては、4個のパターン部132,133の導電層138を構成するカーボンナノ構造体は、全て同一の表面修飾物質によって表面修飾される。これによって、測定対象ガス中の一種の特定化学物質の分析をより一層高精度に行なうことが可能になる。
−動作−
化学物質センシング素子128の他の変形例では、8個の円周センサ部200及び中央センサ部210のそれぞれが、異なる特定化学物質を選択的に検出する点以外は、化学物質センシング素子128の変形例と同じように動作する。
すなわち、8個の円周センサ部200のそれぞれにおいて、化学物質センシング素子128の変形例と同様の動作がなされて、測定対象ガス中の複数種の特定化学物質の分析が行われる。また、中央センサ部210においては、4個のパターン部132,133の組合せを使用して化学物質センシング素子128の変形例と同様の動作がなされて、測定対象ガス中の一種の特定化学物質の分析がより一層高精度に行われる。
〈作用・効果〉
本実施の形態によれば、化学物質センシング素子128は、表面に形成された熱酸化膜135を有する基板130と、熱酸化膜135表面に形成され、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素からなるバッファ層136と、バッファ層136表面に形成され、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子142からなる触媒層137と、触媒層137表面に形成され、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層138とを備え、バッファ層136は、スパッタ法によって形成される。
これにより、バッファ層136の緻密性が熱酸化膜135及び窒化チタンからなるスパッタ膜よりも低くなるので、熱酸化膜135表面に触媒層137が直接形成される従来の化学物質センシング素子、及び、窒化チタンからなるスパッタ膜表面に触媒層137が形成される従来の化学物質センシング素子と比較して、金属触媒微粒子142の一部がバッファ層136内部に埋め込まれ易くなり、金属触媒微粒子142の一部をバッファ層136に固定することが可能になる。そのため、バッファ層136と触媒層137とがより一層強固に密着するようになるので、金属触媒微粒子142表面に成長するカーボンナノ構造体が基板130から脱落しにくくなり、導電層138を構成するカーボンナノ構造体と基板130との密着性に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。したがって、超音波照射による衝撃に耐えることができ、耐久性に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。また、金属触媒微粒子142が凝集するのを防ぐことができるので、高分散かつ高密度に並ぶカーボンナノ構造体からなる導電層138を得ることができ、検出感度に優れる化学物質センシング素子128を得ることができる。
また本実施の形態によれば、化学物質センシング装置20は、化学物質センシング素子128と、化学物質センシング素子128に電気的に接続され、化学物質センシング素子128の電気抵抗の変化を検出するための増幅器36及び直流電圧計とを含む。このように、化学物質センシング装置20は、化学物質センシング素子128を含むので、耐久性に優れ、ガス分析を高感度に行なうことができる。
なお、上記実施の形態においては、パターン部132,133は櫛型形状にパターニングされたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、化学物質センシング素子128の使用用途に合わせた形状に適宜パターニングされればよい。このように、パターン部132,133をパターニングすることによって、小さな面積の基板130に対して比較的大量のカーボンナノ構造体を配置できる。これにより、分析可能な化学物質の量が多くなるので、より一層正確なガス分析が可能になる。
また、上記実施の形態においては、直流電源30からかけられる電圧を上げることにより導電層138の温度を200℃に上昇させることで化学物質センシング素子128の再生処理を行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、半導体レーザが更に設けられ、導電層138に対してレーザ光を照射することによって化学物質センシング素子128の再生処理が行なわれてもよいし、減圧装置が更に設けられ、化学物質センシング素子128の周辺環境を真空状態にすることによって化学物質センシング素子128の再生処理が行なわれてもよい。また、これらの再生処理が予め定められる一定期間経過毎に周期的に行なわれるように設定されてもよいし、導電層138の温度が150℃になるように設定されてもよい。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
(実施例)
[化学物質センシング素子の製造]
化学物質センシング素子(図4参照)を以下に述べる方法により製造した。はじめに、カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層138を形成するための前準備を行なった。まず、表面に膜厚300nmの熱酸化膜135が形成された2インチのシリコン(Si)固体基板134からなる基板130(商品名:シリコン熱酸化膜、山中セミコンダクター株式会社製)を準備した。次いで、この基板130の熱酸化膜135表面に、開口の形状が所望の櫛型形状のパターン(図4参照)に形成されたメタルマスクを載せ、高周波スパッタ装置(商品名:SBR2304、ULVAC社製、周波数:13.56MHz、電力:200W)により二酸化ケイ素(SiO)ターゲットで2200秒製膜することで、熱酸化膜135表面にバッファ層136として膜厚200nm程度の二酸化ケイ素(SiO)からなるスパッタ膜を製膜した。メタルマスクはそのまま維持して、APG装置(商品名、ULVAC社製、放電電圧:60V、アノード―基板間距離:90mm)により、膜厚1nmのコバルト(Co)からなる膜と、膜厚0.2nmのチタン(Ti)からなる膜とをこの順番で製膜して触媒層137を形成した。
次いで、以下のようにして導電層138を形成した。まず、マイクロ波プラズマ化学気相合成(MW−CVD)装置(商品名:AX5200、セキテクノトロン株式会社製)により、真空チャンバー内の圧力を15Torr程度になるように圧力コントロールバルブにて調整しながら、基板130、バッファ層136及び触媒層137の温度を800℃程度に保持し、マスフローコントローラを通じて真空チャンバー内にHガスを80sccm程度導入した。次に、2.45GHzのマイクロ波(350W)を導入することによって水素ガス(H)をプラズマ化し、5分程度、基板130上に設置された触媒層137を構成する種触媒である金属触媒微粒子142の表面をクリーニングした。連続して、水素ガス(H)で希釈したメタンガス(CH)(H:CH=80sccm:20sccm)を原料ガスとして5分間プラズマ化することで、バッファ層136及び触媒層137のパターンに応じたカーボンナノ構造体の集合体からなる導電層138を形成した。得られた導電層138における、カーボンナノ構造体の集合体の密度は、1×1010本/cm〜1×1013本/cmであった。
次いで、上述のようにして作製したカーボンナノ構造体の表面修飾を以下の要領で行なった。まず、コバルトフタロシアニン(CoPc)粉末をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、表面修飾用溶液を調製した。この表面修飾用溶液中に、上述のようにして作製した導電層138が形成された基板130を浸漬させた後、この溶液に対して超音波洗浄器(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製)にて10kHz、8Wの超音波を照射した。次いで、浸漬した基板130を取出し、乾燥させることで実施例の化学物質センシング素子を製造した。
(比較例)
バッファ層136として二酸化ケイ素(SiO)からなるスパッタ膜を製膜しなかった以外は、実施例と同様にして比較例の化学物質センシング素子を作製した。
[評価]
実施例の化学物質センシング素子の特性評価方法を以下に示す。実施例の化学物質センシング素子を採用した化学物質センシング装置20(図1参照)を、雰囲気が制御できる約20リットルのステンレス(SUS(Stainless Used Steel))製チャンバー内に挿入した後、一旦、チャンバー内における実施例の化学物質センシング素子の周辺雰囲気をダイヤフラムポンプを用いて、10−3Torr程度の真空状態とした。次いで、直流電源30により実施例の化学物質センシング素子に対して200μAの電流を流しながら、この化学物質センシング素子と負荷抵抗34との間の接点の電気抵抗変化を増幅器36において増幅し、増幅した電気抵抗変化を増幅器36の出力電圧変化として直流電圧計(図示せず。)により測定した。測定は、一秒毎の測定頻度で90秒間行なった。このとき測定された実施例の化学物質センシング素子の初期抵抗はRo=50kΩであり、この値を初期値とした。次いで、1リットルのテドラーバッグに封入したペンタン濃度100ppbの測定対象ガスを、チャンバー内へ、圧力ゲージを見ながら少量ずつ導入し、大気圧になったところで導入を停止した。この状態で、初期値測定時と同様の条件で増幅器36の出力電圧変化を測定した。上述の操作と同様の操作を、比較例の化学物質センシング素子を採用した化学物質センシング装置20についても行なった。なお、ペンタン濃度100ppbの測定対象ガスは、1ppmの濃度に窒素で希釈されたペンタン標準ガスと窒素ガスとを1:10の割合で混合することにより作製した。
次いで、上述の操作と同様の操作を、一酸化窒素(NO)濃度100ppbの測定対象ガス、トルエン濃度10ppbの測定対象ガス、及び、キシレン濃度10ppbの測定対象ガスについてそれぞれ行なった。なお、これらの測定対象ガスは、1ppmの濃度に窒素で希釈された所望の標準ガス(一酸化窒素、トルエン又はキシレン)と窒素ガスとを、所望の濃度となる割合で混合することにより作製した。
−評価結果−
実施例の化学物質センシング素子は、バッファ層136として二酸化ケイ素(SiO)からなるスパッタ膜が製膜されているので、カーボンナノ構造体の表面修飾時において超音波が照射されても、カーボンナノ構造体の脱離が確認されなかった。したがって、ペンタン及び一酸化窒素(NO)に対して100ppb以下の検出感度を示し、更に、VOCsガスであるトルエン及びキシレンに対して10ppb以下の検出感度を示す、耐久性に優れ、高感度な化学センシング素子であった。
一方、比較例の化学物質センシング素子は、バッファ層136として二酸化ケイ素(SiO)からなるスパッタ膜が製膜されなかったので、カーボンナノ構造体の表面修飾時において超音波が照射された際に、カーボンナノ構造体の脱離が確認された。したがって、100ppb以下のペンタン及び一酸化窒素(NO)を検出できず、更に、10ppb以下のトルエン及びキシレンを検出できなかった。
本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子を含む化学物質センシング装置の構成図である。 本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子の構成を示す、斜視図、上面図、及び、上面図に示す化学物質センシング素子における矢視方向のC−C線断面図である。 カーボンナノ構造体における表面修飾の様子を模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子の変形例の構成を示す、斜視図、上面図、及び、上面図に示す化学物質センシング素子の変形例における矢視方向のC−C線断面図である。 本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子の他の変形例の構成を示す上面図である。
符号の説明
20 化学物質センシング装置
30 直流電源
34 負荷抵抗
36 増幅器
88,146 カーボンナノ構造体
94 表面修飾物質
95 ペンタン
96 一酸化窒素
128 化学物質センシング素子
130 基板
132 パターン部
134 固体基板
135 熱酸化膜
136 バッファ層
137 触媒層
138 導電層
139,140 接点
142 金属触媒微粒子
144 基板露出部
200 円周センサ部
210 中央センサ部

Claims (9)

  1. 表面に形成された熱酸化膜を有する基板と、
    前記熱酸化膜表面に形成され、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素からなるバッファ層と、
    前記バッファ層表面に形成され、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子からなる触媒層と、
    前記触媒層表面に形成され、前記カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層とを備え、
    前記バッファ層は、スパッタ法によって形成されることを特徴とする化学物質センシング素子。
  2. 前記金属触媒微粒子の粒径は、1nm〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載の化学物質センシング素子。
  3. 前記カーボンナノ構造体は、雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質により表面修飾されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学物質センシング素子。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の化学物質センシング素子と、
    前記化学物質センシング素子に電気的に接続され、前記化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含むことを特徴とする化学物質センシング装置。
  5. 表面に形成された熱酸化膜を有する基板において、前記熱酸化膜表面にバッファ層を形成する第1のステップと、
    前記バッファ層表面に、カーボンナノ構造体の成長を促進するための金属触媒微粒子からなる触媒層を形成する第2のステップと、
    前記触媒層表面に、前記カーボンナノ構造体の集合体からなる導電層を形成する第3のステップとを含み、
    前記第1のステップにおいて、少なくとも窒化ケイ素又は二酸化ケイ素をターゲットとして用いたスパッタ法により前記バッファ層を形成することを特徴とする化学物質センシング素子の製造方法。
  6. 雰囲気中の特定化学物質を選択的に吸着する物質と溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製する第4のステップと、
    前記表面修飾用溶液に対して、前記導電層が形成された前記基板を浸漬した後、超音波を照射する第5のステップとを更に含み、
    前記第4のステップ及び前記第5のステップによって、前記カーボンナノ構造体を前記物質により表面修飾することを特徴とする請求項5に記載の化学物質センシング素子の製造方法。
  7. 前記第1のステップ及び前記第2のステップにおいて、開口の形状が所望のパターンに形成されたメタルマスクを用いて前記バッファ層及び前記触媒層のパターニングを行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の化学物質センシング素子の製造方法。
  8. 前記第2のステップにおいて、アークプラズマガン法により前記触媒層を形成することを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1つに記載の化学物質センシング素子の製造方法。
  9. 前記第3のステップにおいて、マイクロ波プラズマCVD法により前記導電層を形成することを特徴とする請求項5〜請求項8のいずれか1つに記載の化学物質センシング素子の製造方法。
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