JP2010014256A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の直進走行時における転がり抵抗を抑えると共に、旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、アウター側のボール8b列のピッチ円直径PCDoがインナー側のボール8a列のピッチ円直径PCDiよりも大径に設定され、大径側のボール8b列のボール個数が小径側のボール8a列のボール個数よりも多く設定されると共に、小径側のボール8a列が鋼球で構成され、大径側のボール8b列がセラミック製ボールで構成され、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されている。
【選択図】図8

Description

本発明は、自動車等の車両の車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置、詳しくは、複列アンギュラ玉軸受で構成され、車両の直進走行時における転がり抵抗を抑えると共に、旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置に関するものである。
自動車の懸架装置に対して車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置は、低コスト化は言うまでもなく、燃費向上のための軽量・コンパクト化が進んでいる。これらの車輪用軸受装置は、ハブ輪と複列の転がり軸受とがユニット化して構成されており、その代表的なものとして、内方部材と外方部材共にフランジを一体に有し、複列の転がり軸受における一方の内側転走面がハブ輪に直接形成され、他方の内側転走面がハブ輪に圧入された別体の内輪に形成された、所謂第3世代と称される車輪用軸受装置が知られている。
図9に示すものは駆動輪側における第3世代の車輪用軸受装置であって、外方部材51と内方部材52およびこれら両部材間に収容された複列のボール53とからなる。内方部材52は、一端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ54を一体に有し、外周に内側転走面55aと、この内側転走面55aから軸方向に延びる円筒状の小径段部55bが形成されたハブ輪55、およびこのハブ輪55の小径段部55bに圧入され、外周に内側転走面56aが形成された内輪56とからなる。また、車輪取付フランジ54の円周等配位置には車輪を固定するためのハブボルト57が植設されている。そして、ハブ輪55の小径段部55bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部55cにより、ハブ輪55に対して内輪56が軸方向へ抜けるのを防止している。
外方部材51は、外周に懸架装置58に固定される車体取付フランジ51bを一体に有し、内周に複列の外側転走面51a、51aが一体に形成されている。この複列の外側転走面51a、51aと、これら複列の外側転走面51a、51aと対向する内方部材52の内側転走面55a、56aの間に保持器59を介して複列のボール53、53が転動自在に収容されている。
ここで、内輪56は、加締部55cによってその外端面56bが軸方向に押し込まれ、軸受に所定の予圧が付与されている。そして、ハブ輪55の肩部55dと内輪56の内端面56cとの間に所要の軸方向隙間60が確保された状態で、内輪56の外端面56bと加締部55cとの間に金属リング61が弾性復元可能に軸方向に圧縮された状態で介装されている。
この金属リング61は鉄系材料を素材として、環状本体61aの軸方向両端縁に径方向外向きの一対のフランジ61bを備えた形状に形成され、軸方向に圧縮力がかからない非圧縮状態では軸方向に長い非圧縮形態をなし、圧縮状態では、環状本体61aは弾性変形域の範囲で径方向外向きに弾性復元可能に湾曲変形される。この金属リング61により、各転走面が摩耗しても軸受に付与された初期の予圧を適正に保つことができ、耐荷重能力や寿命確保が図れる。
特開2002−21847号公報
然しながら、こうした従来の車輪用軸受装置にあっては、車両の旋回時に金属リング61により付勢される予圧よりも大きなモーメント荷重が軸受に作用した場合、初期の予圧を確保することができず、所謂予圧抜けが発生して必要な耐荷重能力、すなわち、軸受剛性を得ることは難しい。したがって、この予圧抜けを防止するために、初期の予圧を高く設定する必要がある。この場合、旋回時の軸受剛性は確保できるが、車両の定常走行、すなわち、直進時での転がり抵抗が過度に大きくなって軸受異常昇温を招来せしめると共に、予圧量が過剰となって軸受の寿命が著しく低下してしまう恐れがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車両の直進走行時における転がり抵抗を抑えると共に、旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することを目的としている。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の円弧状の内側転走面が形成された内方部材と、これら内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、前記複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されている。
このように、複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置において、複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されているので、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することができると共に、セラミック製ボールとしてこのような焼結体を採用することにより、充分な耐久性を安定して確保することが可能となる。
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の円弧状の内側転走面が形成された内方部材と、これら内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、前記複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されている。
このように、複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置において、複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されているので、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することができると共に、セラミック製ボールとしてこのような焼結体を採用することにより、容易に焼結体の気孔率を低下させることが可能となり、充分な耐久性を安定して確保することが可能となる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記複列のボール列のピッチ円直径が異なり、大径側のボール列のボール個数が小径側のボール列のボール個数よりも多く設定されていれば、軸受剛性を増大させることができ、軸受の長寿命化を図ることができる。
好ましくは、請求項4に記載の発明のように、前記大径側のボール列がセラミック製ボールで構成されていれば、一層軸受剛性を増大させることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記セラミック製ボールの表面に内部よりも緻密性の高い層である緻密層が形成されていれば、セラミック製ボールの転動疲労寿命を向上させることができる。
また、請求項6に記載の発明のように、前記緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が7%以下に設定されていれば、緻密性が高く、転動疲労寿命が向上する。
また、請求項7に記載の発明のように、前記緻密層の表面を含む領域に、前記緻密層内の他の領域よりもさらに緻密性の高い層である高緻密層が形成されていれば、転動疲労寿命がより一層向上する。
また、請求項8に記載の発明のように、前記高緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が3.5%以下に設定されていれば、転動疲労寿命がより一層向上する。
本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の円弧状の内側転走面が形成された内方部材と、これら内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、前記複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されているので、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することができると共に、セラミック製ボールとしてこのような焼結体を採用することにより、充分な耐久性を安定して確保することが可能となる。
外周にナックルに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する円弧状の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に所定のシメシロを介して圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する円弧状の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、前記複列のボール列のうちアウター側のボール列のピッチ円直径がインナー側のボール列のピッチ円直径よりも大径に設定され、前記大径側のボール列のボール個数が小径側のボール列のボール個数よりも多く設定されると共に、前記小径側のボール列が鋼球で構成され、前記大径側のボール列がセラミック製ボールで構成され、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
この車輪用軸受装置は、内方部材1と外方部材10、および両部材1、10間に転動自在に収容された複列のボール8a、8bとを備えている。内方部材1は、ハブ輪2と、このハブ輪2に圧入された内輪3とからなる。
ハブ輪2は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ4を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面2aと、この内側転走面2aから軸方向に延びる円筒状の小径段部2bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)5が形成されている。車輪取付フランジ4の円周等配位置には車輪を取り付けるハブボルト6が植設されている。
ハブ輪2はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面2aをはじめ、アウター側のシール11が摺接するシールランド部から小径段部2bに亙り高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化層が形成されている。そして、ハブ輪2の小径段部2bに内輪3が所定のシメシロを介して圧入され、小径段部2bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部7によって、所定の軸受予圧が付与された状態で内輪3が軸方向に固定されている。なお、加締部7は鍛造後の表面硬さのままの未焼入れ部とされている。また、内輪3はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、外周に他方(インナー側)の内側転走面3aが形成されてズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材10は、外周に車体(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ10bを一体に有し、内周には前記内方部材1の内側転走面2a、3aに対向する複列の外側転走面10a、10aが一体に形成されている。外方部材10はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面10a10aが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、それぞれの転走面10a、2aと10a、3a間に複列のボール8a、8bが保持器9、9を介して転動自在に収容されている。また、外方部材10の端部にはシール11、12が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩を防止すると共に、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。
等速自在継手13は、外側継手部材14と継手内輪15とケージ16およびトルク伝達ボール17を備えている。外側継手部材14は、カップ状のマウス部18と、このマウス部18の底部をなす肩部19と、この肩部19から軸方向に延びるステム部20を一体に有している。また、マウス部18の内周および継手内輪15の外周には軸方向に延びる曲線状のトラック溝18a、15aがそれぞれ形成され、固定型の等速自在継手13を構成している。外側継手部材14はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼で形成され、トラック溝18aをはじめ、肩部19からステム部20の基部に亙る外周面が高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
ステム部20は、外周にハブ輪2のセレーション5に係合するセレーション(またはスプライン)20aと、このセレーション20aの端部に雄ねじ20bが形成されている。組立は、加締部7に肩部19が衝合するまで、内方部材1にこのステム部20が嵌挿され、加締部7と肩部19とが突き合わせ状態で、雄ねじ20bに固定ナット21が螺合され、内方部材1と外側継手部材14が軸方向に分離可能に締結されている。
ここで、複列のボール列のうちアウター側のボール列のボールが、SUJ2等の高炭素クロム鋼製等からなる鋼球8aで構成されると共に、インナー側のボール列のボールが、窒化ケイ素等からなるセラミック製ボール8bで構成されている。本実施形態では、このセラミック製ボール8bがβサイアロン焼結体で構成されている。窒化ケイ素やサイアロン等からなるセラミックスは、鋼に比べ製造コストが高いため、近年、転がり軸受の構成部品としてβサイアロン焼結体が注目されている(例えば、特開2004−91272号、特開2005−75652号、特開2005−194154号参照)。
本実施形態では、このβサイアロン焼結体が、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されている。前記不純物は、原料に由来するもの、あるいは製造工程において混入するものを含む不可逆的不純物を含んでいる。
なお、セラミック製ボール8bが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されていても良い。焼結助剤としては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、希土類元素の酸化物、窒化物、酸窒化物のうち少なくとも一種類以上を選択することができる。また、焼結助剤は、焼結体のうち20質量%以下とすることが望ましい。
この焼結体は、前述したzの値(以下、z値という)が、0.1以上となる種々の組成を有するものが製造可能であるが、一般的に、転動疲労寿命に大きな影響を与える表面硬さは、製造の容易なz値4.0以下の範囲において殆ど変化しない。然しながら、βサイアロンを主成分とするセラミック製ボール8bの転動疲労寿命と、βサイアロンの組成との関係を詳細に調査した結果、後述するβサイアロンを主成分とする焼結体からなるセラミック製ボール8bにおいては、z値が3.5を超えると転動疲労寿命が大幅に低下することが判った。
具体的には、z値が0.1以上3.5以下の範囲においては、転動疲労寿命はほぼ同等で、転がり軸受の運転時間が所定時間を越えると、セラミック製ボール8bの表面に剥離が発生して破損に至る。これに対し、z値が3.5を超えるとセラミック製ボール8bが摩耗し易くなり、これに起因して転動疲労寿命が大幅に低下する。すなわち、z値が3.5を超えると転動疲労寿命が大幅に低下するという現象が明らかとなった。
次に、複列のボールの素材となる窒化ケイ素、高炭素クロム鋼(SUJ2)、およびβサイアロン焼結体の特性を比較したものを表1に示す。この表から判るように、窒化ケイ素およびβサイアロン焼結体は、高炭素クロム鋼に比べヤング率、表面硬さが高く、また、線膨張係数が著しく小さい。すなわち、複列のボールの素材として採用した場合、高い剛性が得られると共に、軸受昇温時の寸法変化量を抑えることができる。
本出願人は、通常の鋼球と比べてセラミック製ボールが、線膨張係数をはじめこれらの特性が異なることに着目し、複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されることにより、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することができる。
具体的には、鋼球8aとセラミック製ボール8bの外径をそれぞれd1、d2とし、初期状態を同一径とした場合、車両の停止状態から直進時(〜100km/h)、すなわち、軸受に負荷される荷重が小さく、温度上昇が小さい時には、鋼球8aとセラミック製ボール8bの外径の径差は初期の状態のままのd1=d2となり、荷重は鋼球8aとセラミック製ボール8bの両方で負荷されることになる。
一方、車両の旋回時、すなわち、大きなモーメント荷重が軸受に負荷され、温度上昇が大きくなる時には、鋼球8aとセラミック製ボール8bの線膨張係数の差によって鋼球8aの方がセラミック製ボール8bに比べて大きく膨張し、d1>d2の状態となる。この場合、軸受すきまが減少して荷重は鋼球8aとセラミック製ボール8bの両方で負荷されることになる。すなわち、鋼球8aの膨張によって外方部材10がアウター側に微動し、アウター側の外側転走面10aとセラミック製ボール8bとのすきまが減少し、鋼球8aとセラミック製ボール8bと複列の外側転走面10a、10aとが均等に接触することになる。
次に、このセラミック製ボール8bの製造方法について説明する。セラミック製ボール8bの製造方法においては、転動疲労寿命を低下させる欠陥の発生を抑制する目的で、熱間静水圧焼結法(Hot Isostatic Press;HIP)やガス圧焼結法(Gas Pressured Sintering;GPS)等の加圧焼結法(通常10MPa以上の圧力下で焼結を行う方法)による焼結が採用されるのが一般的であるが、加圧焼結法を採用した製造方法では、製造コストの上昇が懸念されると共に、セラミック製ボール8bの表層部に材質が変質した異常層が形成される恐れがある。そのため、セラミック製ボール8bの仕上げ加工において、当該異常層を除去する必要が生じ、製造コストが上昇する。一方、加圧焼結法を採用しない場合、セラミック製ボール8bの気孔率が増加して欠陥が発生し、転動疲労寿命が低下するという問題点があった。
こうした問題に対し、本出願人は、βサイアロンからなる成形体を1MPa以下の圧力下で焼結して製造することにより、充分な耐久性を安定して確保することが可能なセラミック製ボール8bを安価に製造することができる。すなわち、図2に示すように、まず、βサイアロンの粉末を準備するβサイアロン粉末準備工程が実施される。このβサイアロン粉末準備工程においては、例えば、焼結合成法を採用した製造工程により、安価にβサイアロンの粉末を製造することができる。
次に、βサイアロン粉末準備工程において準備されたβサイアロンの粉末と焼結助剤を添加して混合する混合工程が実施される。この混合工程は、焼結助剤を添加しない場合は省略することができる。
そして、βサイアロンの粉末と焼結助剤との混合物を、セラミック製ボール8bの概略形状に成形する成形工程が実施される。具体的には、βサイアロンの粉末と焼結助剤との混合物に、プレス成形、鋳込み成形、押出し成形、転動造粒等の成形手法を適用することにより、セラミック製ボール8bの概略形状に成形された成形体が作製される。
その後、成形体の表面が加工されることにより、焼結後に所望のボール形状に近い形状になるよう成形される焼結前加工工程が実施される。具体的には、グリーン体加工等の加工手法を適用することにより、ボール形状により近い形状になるよう成形される。この焼結前加工工程は、成形工程において、成形体が形成された段階で、焼結後に所望のボール形状により近い形状が得られる状態である場合には省略することができる。
次に、成形体が、1MPa以下の圧力下で焼結される焼結工程が実施される。具体的には、成形体が、ヒータ加熱、マイクロ波やミリ波による電磁波加熱等の加熱方法により加熱されて焼結されることにより、略球形の焼結体が作製される。焼結は、不活性ガス雰囲気中または窒素と酸素との混合ガス雰囲気中において、1550℃以上1800℃以下の温度領域に成形体が加熱されることにより実施される。これにより、βサイアロンの分解や組織変化を抑制することができる。また、このβサイアロンからなる成形体が焼結される工程では、1550℃以上1800℃以下の温度領域で行われるが、1550℃未満では、焼結による緻密化が進み難いため、成形体が焼結される温度は1550℃以上が好ましい。一方、1800℃を超えると、βサイアロン結晶粒の粗大化による焼結体の機械的特性の低下が懸念されるため、1800℃以下が好ましい。なお、不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等が採用可能であるが、製造コスト低減の観点から、窒素が採用されることが好ましい。
次に、焼結工程において作製された焼結体の表面が加工され、当該表面を含む領域が除去される仕上げ加工が実施されることにより、セラミック製ボール8bを完成させる仕上げ工程が実施される。具体的には、焼結工程において作製された焼結体の表面を研削およびラッピング等によって所望の形状・寸法あるいは表面粗さに仕上げ加工される。
ここで、焼結工程における焼結により、焼結体の表面から厚み500μm程度の領域には、図3に模式的に示すように、内部8b0よりも緻密性が高く、断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が7%以下である緻密層8b1が形成される。すなわち、焼結体において、気孔率の低い(密度の高い)層が形成される。さらに、焼結体の表面から厚み150μm程度の領域には、緻密層内の他の領域よりもさらに緻密性が高く、断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される白色領域の面積率が3.5%以下である高緻密層8b2が形成されている。したがって、仕上げ工程においては、除去される焼結体の厚みは、特に、転動面となるべき領域において150μm以下とすることが好ましい。これにより、高緻密層8b2を残存させ、セラミック製ボール8bの転動疲労寿命を向上させることができる。
本出願人は、前述したz値のうち種々の値を有するβサイアロン焼結体からなるとセラミック製ボールを有する深溝玉軸受を作製し、z値と転動疲労寿命(耐久性)との関係を検証する試験を行った。試験の手順は以下の通りである。
まず、試験の対象となる試験軸受の作製方法について説明する。はじめに、焼結合成法でz値を0.1〜4.0の範囲で作製したβサイアロンの粉末を準備し、前述の図2に基づいて説明したセラミック製ボールの製造方法と同様の方法で、z値が0.1〜4.0であるセラミック製ボールを作製した。具体的には、まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Strarck社製、Yttrium oxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤーにて造粒を実施して造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で球体に成形し、さらに冷間静水圧成形(CIP)で加圧を行って球体の成形体を得た。
引き続き当該成形体に対して一次焼結として常圧焼結を行った後、圧力200MPaの窒素雰囲気中でHIP処理することで焼結球体を製造した。次に、当該焼結球体にラッピング加工を行い、3/8インチセラミック球(JIS等級 G5)とした。そして、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪との組み合わせで、JIS規格6206型番の深溝玉軸受を作製した。すなわち、z値が0である鋼球もβサイアロンからなるセラミック球と同様の方法で作製し、同様に深溝玉軸受として組み立てた(比較例A)。
次に、試験条件について説明する。前述のように作製されたJIS規格6206型番の深溝玉軸受に対し、最大接触面圧Pmax:3.2GPa、軸受回転数:2000rpm、潤滑:タービン油VG68(清浄油)の循環給油、試験温度:室温の条件下で運転する疲労試験を行った。そして、振動検出装置により運転中の軸受の振動を監視し、各ボールに破損が発生して軸受の振動が所定値を超えた時点で試験を中止すると共に、運転開始から中止までの時間を当該軸受の寿命として記録した。また、試験中止後、軸受を分解して各ボールの破損状態を確認した。その結果を表2に示す。
表2においては、各実施例および比較例における寿命が、比較例A(窒化ケイ素)における寿命を1とした寿命比で表されている。また、破損形態は、ボールの表面に剥離が発生した場合「剥離」、剥離が発生することなく表面が摩耗して試験が中止された場合「摩耗」と記載されている。
表2を参照して、z値が0.1以上3.5以下となっている本発明の実施例A〜Hでは、比較例Aと比較して遜色ない寿命を有している。また、破損形態も窒化ケイ素の場合と同様に、「剥離」となっている。これに対し、z値が3.5を超え、本発明の範囲外となっている比較例Bでは、寿命が大幅に低下すると共に、ボールに摩耗が観察される。すなわち、ボールにおける摩耗が影響し、寿命が大幅に低下したものと考えられる。さらに、z値が4.0である比較例Cにおいては、極めて短時間にボールの摩耗が進行し、軸受の耐久性が著しく低下しているのが判る。
このように、z値が0.1以上3.5以下の範囲においては、βサイアロン焼結体からなるボールを備えた転がり軸受の耐久性は、窒化ケイ素の焼結体からなるボールを備えた転がり軸受とほぼ同等であることが判る。これに対し、z値が3.5を超えるとボールが摩耗し易くなり、これに起因して転動疲労寿命が大幅に低下する。さらに、z値が大きくなると、βサイアロンからなるボールの破損原因が「剥離」から「摩耗」に変化し、転動疲労寿命が著しく低下することが明らかとなった。すなわち、z値を0.1以上3.5以下とすることにより、安価でありながら、充分な耐久性を安定して確保することができる。
なお、表2を参照して、z値が3を超える3.5の実施例Hにおいては、ボールには僅かな摩耗が発生しており、寿命も実施例A〜Gに比べて低下している。このことから、充分な耐久性を安定して確保するためには、z値は3以下とすることが望ましいと言える。
また、前述した試験結果から、窒化ケイ素からなるボールと同等以上の耐久性を得るには、z値は2以下とすることが好ましく、1.5以下とすることがより好ましい。一方、焼結合成を採用した製造工程による、βサイアロン粉体の作製の容易性を考慮すると、充分に自己発熱による反応が期待できるz値である0.5以上とすることが好ましい。
次に、本発明のボールの断面における緻密層および高緻密層の形成状態を調査する試験を行なった。試験の手順は以下の通りである。
はじめに、焼結合成法で作製した組成が、SiAlzONであるβサイアロンの粉末(株式会社イスマンジェイ製、商品名メラミックス)を準備し、図2に基づいて説明した製造方法と同様の方法で、一辺が略10mmの立方体試験片を作製した。具体的な製造方法は以下の通りである。
まず、サブミクロンに微細化されたβサイアロン粉末と、焼結助剤としての酸化アルミニウム(住友化学株式会社製、AKP30)および酸化イットリウム(H.C.Strarck社製、Yttrium oxide grade C)とをボールミルを用いて湿式混合により混合した。その後、スプレードライヤーにて造粒を実施して造粒粉を製造した。当該造粒粉を金型で球体に成形し、さらにCIPで加圧を行って球体の成形体を得た。
引き続き当該成形体を圧力4MPaの窒素雰囲気中で1650℃に加熱して焼結することで立方体試験片を作製した。その後、当該試験片を切断し、この切断された面をダイヤモンドラップ盤でラッピングした後、酸化クロムラップ盤による鏡面ラッピングを実施することにより、立方体の中心を含む観察用の断面を形成した。そして、当該断面を光学顕微鏡(株式会社ニコン製、マイクロフォト−FXA)の斜光で観察し、倍率50倍のインスタント写真(フジフィルム株式会社製 FP−100B)を撮影した。その後、得られた写真の画像を、スキャナーを用いて(解像度300DPI)パーソナルコンピューターに取り込んだ。そして、画像処理ソフト(三谷商事株式会社製 WinROOF)を用いて輝度閾値による2値化処理を行って白色領域の面積率を測定した(2値化分離閾値:140)。
次に、試験結果について説明する。図4は、試験片の観察用の断面を光学顕微鏡の斜光で撮影した写真である。また、図5は、図4の写真の画像を、画像処理ソフトを用いて輝度閾値により2値化処理した状態を示す一例である。また、図6は、図4の写真の画像を、画像処理ソフトを用いて輝度閾値により2値化処理する際に、画像処理を行う領域(評価領域)を示す図である。図4において、写真上側が試験片の表面側であり、上端が表面である。
図4および図5を参照して、本発明の球体と同様の製造方法により作製された試験片は、表面を含む領域に内部よりも白色領域の少ない層が形成されていることが判る。そして、図6に示すように、撮影された写真の画像を試験片の最表面からの距離に応じて3つの領域(最表面からの距離が150μm以内の領域、150μmを超え00μm以内の領域、500μmを超え800μm以内の領域)に分け、領域毎に画像解析を行って白色領域の面積率を算出したところ、表3に示すような結果が得られた。表3においては、図6に示した各領域を1視野として、無作為に撮影された5枚の写真から得られる5視野における白色領域の面積率の、平均値と最大値とが示されている。
表3を参照して、白色領域の面積率は、内部において18.5%であったのに対し、表面からの深さが500μm以下である領域においては3.7%、表面からの深さが150μm以下の領域においては1.2%となっていた。このことから、試験片は、表面を含む領域に内部よりも白色領域の少ない緻密層および高緻密層が形成されていることが確認された。
次に、当該成形体に対して焼結後の加工代が所定の寸法となるようにグリーン加工を行い、引き続き当該成形体を圧力0.4MPaの窒素雰囲気中で1650℃に加熱して焼結することで焼結球体を製造した。次に、当該焼結球体にラッピング加工を行い、3/8インチセラミック球(JIS等級 G5)とした。そして、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪との組み合わせで、JIS規格6206型番の深溝玉軸受を作製した。ここで、焼結球体に対するラッピング加工により除去される焼結球体の厚み(加工代)を8段階に変化させ、8種類の軸受を作製した(実施例A〜H)。一方、比較のため、窒化ケイ素および焼結助剤からなる原料粉末を用いて、前述した方法と同様、ラッピング加工を行い、別途準備した軸受鋼(JIS規格SUJ2)製の軌道輪と組み合わせて、JIS規格6206型番の深溝玉軸受を作製した(比較例A)。なお、ラッピング加工による加工代は0.25mmとした。
次に、試験条件について説明する。前述のように作製されたJIS規格6206型番の深溝玉軸受に対し、最大接触面圧Pmax:3.2GPa、軸受回転数:2000rpm、潤滑:タービン油VG68(清浄油)の循環給油、試験温度:室温、の条件下で運転する疲労試験を行った。そして、振動検出装置により運転中の軸受の振動を監視し、各ボールに破損が発生して軸受の振動が所定値を超えた時点で試験を中止すると共に、運転開始から中止までの時間を当該軸受の寿命として記録した。なお、試験数は実施例、比較例ともに15個ずつとし、そのL10寿命を算出した上で、比較例Aに対する寿命比で耐久性を評価した。表4にその試験結果を示す。ここで、L10寿命とは、一群の同じ軸受を同じ条件で個々に運転したとき、そのうちの90%の軸受が材料の転がり疲れによる損傷を起こさずに回転できる総回転数、あるいは、一定回転速度では総回転時間をいう。
表4から判るように、実施例の軸受寿命は、その製造コスト等を考慮するといずれも良好であると言える。そして、加工代を0.5mm以下とすることにより、ボールの表面に緻密層を残存させた実施例D〜Gの軸受寿命は、比較例Aの軸受寿命の1.5〜2倍程度となっていた。さらに、加工代を0.15mm以下とすることにより、ボールの表面に高緻密層を残存させた実施例A〜Cの軸受寿命は、比較例Aの3倍程度となっていた。このことから、本発明のボールを備えた軸受は、耐久性において優れていることが確認された。そして、ボールの加工代を0.5mm以下として、表面に緻密層を残存させることによって寿命が向上し、ボールの加工代を0.15mm以下として、表面に高緻密層を残存させることによって寿命がさらに向上することが判った。
図7は、本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的には軸受部の構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
この車輪用軸受装置は、ハブ輪23と複列の転がり軸受24および等速自在継手25とがユニット化され第4世代構造を構成している。複列の転がり軸受24は、外方部材10と内方部材22と複列のボール8a、8bとを備えている。
内方部材22は、ハブ輪23と、このハブ輪23に内嵌された後述する外側継手部材26を指している。ハブ輪23は、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、外周にアウター側の内側転走面2aと、この内側転走面2aから軸方向に延びる円筒状の小径段部23bが形成されると共に、内周に凹凸部23aが形成され、熱処理によって表面硬さを54〜64HRCの範囲に硬化層が形成されている。熱処理としては、局部加熱ができ、硬化層深さの設定が比較的容易にできる高周波誘導加熱による焼入れが好適である。なお、凹凸部23aはアヤメローレット状に形成され、旋削等により独立して形成された複数の環状溝と、ブローチ加工等により形成された複数の軸方向溝とを略直交させて構成した交叉溝、あるいは、互いに傾斜した螺旋溝で構成した交叉溝からなる。また、凹凸部23aの凸部は良好な食い込み性を確保するために、その先端部が三角形状等の尖塔形状に形成されている。
等速自在継手25は、外側継手部材26と継手内輪15、ケージ16、およびトルク伝達ボール17とからなる。外側継手部材26はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼からなり、カップ状のマウス部18と、このマウス部18の底部をなす肩部27と、この肩部27から軸方向に延びる円筒状のステム部28が一体に形成されている。このステム部28は、ハブ輪23の小径段部23bに所定の径方向すきまを介して円筒嵌合するインロウ部28aと、このインロウ部28aの端部に嵌合部28bがそれぞれ形成されている。
また、肩部27の外周にはインナー側の内側転走面27aが直接形成され、この内側転走面27aおよびステム部28に亙って高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化層が形成されている。ここで、嵌合部28bは鍛造後の生のままとされている。
外側継手部材26の肩部27にハブ輪23の小径段部23bの端面が衝合され、突合せ状態になるまでハブ輪23にステム部28が内嵌される。そして、このステム部28における嵌合部28bの内径にマンドレル等の拡径治具を押し込んで嵌合部28bを拡径し、この嵌合部28bをハブ輪23の凹凸部23aに食い込ませて加締め、ハブ輪23と外側継手部材26とを一体に塑性結合させている。なお、中空のステム部28にはエンドキャップ29が装着され、マウス部18内に封入されたグリースが外部に漏洩するのを防止している。また、図示はしないが、ハブ輪23の開口端部にもエンドキャップが装着され、塑性結合部に雨水等が浸入してその部位が発錆するのを防止している。
本実施形態においても前述した実施形態と同様、アウター側のボール列が鋼球8aで構成され、インナー側のボール列がセラミック製ボール8bで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物あるいは残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されているので、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図って軸受寿命向上を達成した車輪用軸受装置を提供することができると共に、セラミック製ボールとしてこのような焼結体を採用することにより、充分な耐久性を安定して確保することが可能となる。
図8は、本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。なお、この実施形態は、従動輪側の第3世代構造の車輪用軸受装置で、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同様の機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
この車輪用軸受装置は、内方部材29と外方部材30、および両部材29、30間に転動自在に収容された複列のボール8a、8bとを備えている。内方部材29は、ハブ輪31と、このハブ輪31に圧入された内輪3とからなる。
ハブ輪31は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ4を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面31aと、この内側転走面31aから軸状部31bを介して軸方向に延びる小径段部31cが形成されている。
ハブ輪31はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面31aをはじめ、アウター側のシール11が摺接するシールランド部から小径段部31cに亙り高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化層が形成されている。そして、ハブ輪31の小径段部31cに内輪3が所定のシメシロを介して圧入され、小径段部31cの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部7によって、所定の軸受予圧が付与された状態で内輪3が軸方向に固定されている。
外方部材30は、外周に車体(図示せず)に取り付けるための車体取付フランジ10bを一体に有し、内周には前記内方部材29の内側転走面31a、3aに対向する複列の外側転走面30a、30bが一体に形成されている。外方部材30はS53C等の炭素0.40〜0.80重量%を含む中高炭素鋼で形成され、複列の外側転走面30a、30bが高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。そして、それぞれの転走面30a、31aと30b、3a間に複列のボール8a、8bが保持器9a、9を介して転動自在に収容されている。
本実施形態では、アウター側のボール8b列のピッチ円直径PCDoがインナー側の転動体8a列のピッチ円直径PCDiよりも大径に設定されている。このピッチ円直径PCDo、PCDiの違いにより、アウター側のボール8b列のボール個数Zoがインナー側のボール8a列のボール個数Ziよりも多く設定されている(Zo>Zi)。これにより、インナー側に比べアウター側部分の軸受剛性を増大させることができ、軸受の長寿命化を図ることができる。
ここで、本実施形態では、アウター側のボール列のピッチ円直径PCDoがインナー側のボール列のピッチ円直径PCDiよりも大径に設定され、アウター側のボール列のボール個数Zoがインナー側のボール列のボール個数Ziよりも多く設定されると共に、アウター側のボール列がセラミック製ボール8bで構成され、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物あるいは残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されているので、軸受剛性を増大させることができ、軸受の長寿命化を図ることができると共に、初期の軸受予圧を確保しながら、転がり抵抗を抑えて回転トルクを低減させると共に、軸受の昇温を抑え、軸受の高剛性化、特に、車両の旋回走行時等の高負荷時における高剛性化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受装置は、複列アンギュラ玉軸受で構成された第1世代乃至第4世代構造の車輪用軸受装置に適用できる。
本発明に係る車輪用軸受装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。 本発明に係るセラミック製ボールの製造方法を示す概略図である。 本発明に係るセラミック製ボールの断面を示す模式図である。 本発明に係るセラミック製ボールの試験片の観察用の断面を光学顕微鏡の斜光で撮影した写真である。 図4の写真の画像を、画像処理ソフトを用いて輝度閾値により2値化処理した状態を示す一例である。 図4の写真の画像を、画像処理送付とを用いて輝度閾値により2値化処理する際に、画像処理を行う領域を示す図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。 本発明に係る車輪用軸受装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。 従来の車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
符号の説明
1、22、29・・・・・・・・・・内方部材
2、23、31・・・・・・・・・・ハブ輪
2a、3a、27a、31a・・・・内側転走面
2b、23b、31c・・・・・・・小径段部
3・・・・・・・・・・・・・・・・内輪
4・・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
5、20a・・・・・・・・・・・・セレーション
6・・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
7・・・・・・・・・・・・・・・・加締部
8a・・・・・・・・・・・・・・・鋼球
8b・・・・・・・・・・・・・・・セラミック製ボール
8b0・・・・・・・・・・・・・・内部
8b1・・・・・・・・・・・・・・緻密層
8b2・・・・・・・・・・・・・・高緻密層
9、9a・・・・・・・・・・・・・保持器
10、30・・・・・・・・・・・・外方部材
10a、30a、30b・・・・・・外側転走面
10b・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
11・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のシール
12・・・・・・・・・・・・・・・インナー側のシール
13、25・・・・・・・・・・・・等速自在継手
14、26・・・・・・・・・・・・外側継手部材
15・・・・・・・・・・・・・・・継手内輪
15a、18a・・・・・・・・・・トラック溝
16・・・・・・・・・・・・・・・ケージ
17・・・・・・・・・・・・・・・トルク伝達ボール
18・・・・・・・・・・・・・・・マウス部
19、27・・・・・・・・・・・・肩部
20、28・・・・・・・・・・・・ステム部
20b・・・・・・・・・・・・・・雄ねじ
21・・・・・・・・・・・・・・・固定ナット
24・・・・・・・・・・・・・・・複列の転がり軸受
28a・・・・・・・・・・・・・・インロウ部
28b・・・・・・・・・・・・・・嵌合部
29・・・・・・・・・・・・・・・エンドキャップ
31b・・・・・・・・・・・・・・軸状部
51・・・・・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・・・・・外側転走面
51b・・・・・・・・・・・・・・車体取付フランジ
52・・・・・・・・・・・・・・・内方部材
53・・・・・・・・・・・・・・・ボール
54・・・・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
55・・・・・・・・・・・・・・・ハブ輪
55a、56a・・・・・・・・・・内側転走面
55b・・・・・・・・・・・・・・小径段部
55c・・・・・・・・・・・・・・加締部
55d・・・・・・・・・・・・・・肩部
56・・・・・・・・・・・・・・・内輪
56b・・・・・・・・・・・・・・外端面
56c・・・・・・・・・・・・・・内端面
57・・・・・・・・・・・・・・・ハブボルト
58・・・・・・・・・・・・・・・懸架装置
59・・・・・・・・・・・・・・・保持器
60・・・・・・・・・・・・・・・軸方向隙間
61・・・・・・・・・・・・・・・金属リング
61a・・・・・・・・・・・・・・環状本体
61b・・・・・・・・・・・・・・フランジ
PCDi・・・・・・・・・・・・・インナー側のボール列のピッチ円直径
PCDo・・・・・・・・・・・・・アウター側のボール列のピッチ円直径
Zi・・・・・・・・・・・・・・・インナー側のボール列のボール個数
Zo・・・・・・・・・・・・・・・アウター側のボール列のボール個数

Claims (8)

  1. 内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の円弧状の内側転走面が形成された内方部材と、
    これら内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、
    これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、
    前記複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部不純物からなる焼結体で構成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 内周に複列の円弧状の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
    外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の円弧状の内側転走面が形成された内方部材と、
    これら内方部材と前記外方部材の両転走面間に収容された複列のボール列と、
    これらボール列のボールを転動自在に収容する保持器とを備えた複列アンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置において、
    前記複列のボール列のうち一方のボール列が鋼球で構成され、他方のボール列がセラミック製ボールで構成されると共に、これらのセラミック製ボールが、Si−zAlzOzN−zの組成式で表され、0.1≦z≦3.5を満たすβサイアロンを主成分とし、残部焼結助剤および不可逆的不純物からなる焼結体で構成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。
  3. 前記複列のボール列のピッチ円直径が異なり、大径側のボール列のボール個数が小径側のボール列のボール個数よりも多く設定されている請求項1または2に記載の車輪用軸受装置。
  4. 前記大径側のボール列が前記セラミック製ボールで構成されている請求項3に記載の車輪用軸受装置。
  5. 前記セラミック製ボールの表面に内部よりも緻密性の高い層である緻密層が形成されている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
  6. 前記緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察される
    白色領域の面積率が7%以下に設定されている請求項5に記載の車輪用軸受装置。
  7. 前記緻密層の表面を含む領域に、前記緻密層内の他の領域よりもさらに緻密性の高い層である高緻密層が形成されている請求項5または6に記載の車輪用軸受装置。
  8. 前記高緻密層の断面を光学顕微鏡の斜光にて観察した場合、白色の領域として観察され
    る白色領域の面積率が3.5%以下に設定されている請求項7に記載の車輪用軸受装置。
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