本発明は、本明細書でシステインに富む分泌性タンパク質(Cysteine−Rich Secreted Proteins)(「CRSP」もしくは「CRSPタンパク質」)と称される分泌性タンパク質の新規の一ファミリーをコードする核酸分子の発見を少なくとも部分的に基礎とする。本発明のCRSP分子は、多様な細胞過程の調節(regulating)でのモジュレーター(modulating agent)として有用である。従って、一局面において、本発明は、CRSPタンパク質もしくはその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子、ならびに、CRSPをコードする核酸の検出のためのプライマーもしくはハイブリダイゼーションプローブとして適する核酸断片を提供する。
一態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号1、配列番号3に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補物(complement)に60%相同である。なお別の態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号4、配列番号6に示されるヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補物に80%相同である。なお別の態様においては、C
RSP核酸分子は、配列番号7、配列番号9に示されるヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補物に60%相同である。なお別の態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号7、配列番号9に示されるヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補物に85%相同である。なお別の態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号10、配列番号12に示されるヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補物に70%相同である。好ましい一態様においては、単離されたCRSP核酸分子は、配列番号3に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する。別の態様においては、CRSP核酸分子は配列番号1のヌクレオチド1〜37をさらに含んで成る。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は配列番号1のヌクレオチド1088〜2479をさらに含んで成る。別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は配列番号1に示されるヌクレオチド配列を有する。
別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は、配列番号6に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する。別の態様においては、CRSP核酸分子は配列番号4のヌクレオチド1〜125をさらに含んで成る。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は配列番号4のヌクレオチド797〜848をさらに含んで成る。別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は配列番号4に示されるヌクレオチド配列を有する。
別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は、配列番号9に示されるヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補物を有する。別の態様においては、CRSP核酸分子は配列番号7のヌクレオチド1〜92をさらに含んで成る。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は配列番号7のヌクレオチド891〜1529をさらに含んで成る。別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は配列番号7に示されるヌクレオチド配列を有する。
別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は配列番号12に示されるヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する。別の態様においては、CRSP核酸分子は配列番号10のヌクレオチド538〜702をさらに含んで成る。なお別の好ましい態様においては、単離されたCRSP核酸分子は配列番号10に示されるヌクレオチド配列を有する。
別の態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸分子を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列に最低60%相同なアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。さらに別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号5のアミノ酸配列に最低60%相同なアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号8のアミノ酸配列に最低60%相同なアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号8のアミノ酸配列に最低75%相同なアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。なお別の好ましい態様においては、CRSP核酸分子は、配列番号11のアミノ酸配列に最低65%相同なアミノ酸配列を有
するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する。
別の態様においては、本発明の単離された核酸分子は、シグナル配列および最低1個のシステインに富むドメインを包含しかつ分泌されるCRSPタンパク質をコードする。別の態様においては、本発明の単離された核酸分子は、シグナル配列および最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくは1個のシステインに富む領域を包含しかつ分泌されるCRSPタンパク質をコードする。なお別の態様においては、CRSP核酸分子はCRSPタンパク質をコードし、そして天然に存在するヌクレオチド配列である。
本発明の別の態様は、非CRSPタンパク質をコードする核酸分子に関してとりわけCRSP核酸分子を検出するCRSP核酸分子を特色とする。例えば、一態様においては、CRSP核酸分子は、緊縮条件下で、配列番号1に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド470〜2479を含んで成る核酸分子、配列番号4に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜475、もしくは配列番号7に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1〜600にハイブリダイゼーションするか、または、緊縮条件下で、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする。別の態様においては、CRSP核酸分子は長さが最低500ヌクレオチドであり、かつ、緊縮条件下で、配列番号1、配列番号4、配列番号7もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、またはそれらの相補物を含んで成る核酸分子にハイブリダイゼーションする。
本発明の別の局面はCRSP核酸分子を含んで成るベクターを提供する。ある態様においてはベクターは組換え発現ベクターである。別の態様において、本発明は本発明のベクターを含有する宿主細胞を提供する。本発明はまた、CRSPタンパク質が産生されるような組換え発現ベクターを含有する本発明の宿主細胞を適する培地中で培養することによるCRSPタンパク質の製造方法も提供する。
本発明の別の局面は、単離されたもしくは組換えのCRSPタンパク質およびポリペプチドを特色とする。一態様においては、単離されたCRSPタンパク質は、シグナル配列および最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくはシステインに富む領域を有しかつ分泌される。別の態様においては、単離されたCRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有する。好ましい一態様においては、CRSPタンパク質は配列番号2のアミノ酸配列に最低約60%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は配列番号5のアミノ酸配列に最低約60%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は配列番号8のアミノ酸配列に最低約60%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は配列番号8のアミノ酸配列に最低約75%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は配列番号11のアミノ酸配列に最低約65%相同なアミノ酸配列を有する。別の態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列を有する。
本発明の別の態様は、配列番号1のヌクレオチド配列に最低約60%相同なヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。本発明の別の態様は、配列番号4のヌクレオチド配列に最低約80
%相同なヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。本発明の別の態様は、配列番号7のヌクレオチド配列に最低約60%相同なヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。本発明の別の態様は、配列番号7のヌクレオチド配列に最低約85%相同なヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。本発明の別の態様は、配列番号10のヌクレオチド配列に最低約70%相同なヌクレオチド配列もしくはその相補物を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。本発明は、さらに、緊縮ハイブリダイゼーション条件下で配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10のヌクレオチド配列もしくはそれらの相補物を含んで成る核酸分子にハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列を有する核酸分子によりコードされる単離されたCRSPタンパク質を特色とする。
本発明のCRSPタンパク質、もしくはその生物学的に活性の部分は、CRSP融合タンパク質を形成するように非CRSPポリペプチドに操作可能に(operatively)連結され得る。本発明は、さらに、モノクローナルもしくはポリクローナル抗体のような、CRSPタンパク質を特異的に結合する抗体を特色とする。加えて、CRSPタンパク質もしくはその生物学的に活性の部分は、場合によっては製薬学的に許容できる担体を包含する製薬学的組成物に組み込まれ得る。
別の局面において、本発明は、CRSPの核酸分子、タンパク質もしくはポリペプチドの存在が生物学的サンプル中で検出されるような、CRSPの核酸分子、タンパク質もしくはポリペプチドを検出することが可能な作用物質と生物学的サンプルを接触させることによる、生物学的サンプル中のCRSP発現の検出方法を提供する。
別の局面においては、本発明は、CRSP活性の存在が生物学的サンプル中で検出されるような、CRSP活性の指標を検出することが可能な作用物質と生物学的サンプルを接触させることによる、生物学的サンプル中のCRSP活性の存在の検出方法を提供する。
別の局面においては、本発明は、細胞中のCRSP活性が調節されるような、CRSP活性を調節する作用物質と細胞を接触させることを含んで成る、CRSP活性の調節方法を提供する。一態様においては、作用物質はCRSP活性を阻害する。別の態様においては、作用物質はCRSP活性を刺激する。一態様においては、作用物質はCRSPタンパク質に特異的に結合する抗体である。別の態様においては、作用物質は、CRSP遺伝子の転写もしくはCRSPのmRNAの翻訳を調節することによりCRSPの発現を調節する。なお別の態様においては、作用物質は、CRSPのmRNAもしくはCRSP遺伝子のコーディング鎖に対しアンチセンスであるヌクレオチド配列を有する核酸分子である。
一態様においては、本発明の方法は、CRSPのモジュレーター(modulator)である作用物質を被験体に投与することにより、異常型のCRSPのタンパク質もしくは核酸の発現もしくは活性を特徴とする障害を有する被験体を治療するのに使用される。一態様においては、CRSPのモジュレーターはCRSPタンパク質である。別の態様においては、CRSPのモジュレーターはCRSP核酸分子である。なお別の態様においては、CRSPのモジュレーターは、ペプチド、ペプチド疑似物(peptidomimetic)もしくは他の小さな分子である。好ましい一態様においては、異常型のCRSPのタンパク質もしくは核酸の発現を特徴とする障害は、発生、分化もしくは増殖の障害である。
本発明は、(i)CRSPタンパク質をコードする遺伝子の異常型の修飾もしくは突然変異;(ii)前記遺伝子の誤った調節(mis−regulation);および(i
ii)CRSPタンパク質の異常型の翻訳後修飾、の最低1個を特徴とする遺伝的変化の存在もしくは非存在を同定するための診断アッセイもまた提供し、ここで前記遺伝子の野生型の形態はCRSP活性をもつタンパク質をコードする。
別の局面において、本発明は、CRSP活性を有するCRSPタンパク質を含んで成る指標(indicator)組成物を提供すること、指標組成物を試験化合物と接触させること、そして指標組成物中でのCRSP活性に対する試験化合物の影響を測定してCRSPタンパク質の活性を調節する化合物を同定すること、による、CRSPタンパク質に結合するもしくはその活性を調節する化合物の同定方法を提供する。
ヒトCRSP−1のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号1の核酸1ないし2479に対応する。アミノ酸配列は配列番号2のアミノ酸1ないし350に対応する。
図1Aの続き。
ヒトCRSP−2のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号4の核酸1ないし848に対応する。アミノ酸配列は配列番号5のアミノ酸1ないし224に対応する。
ヒトCRSP−3のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号7の核酸1ないし1529に対応する。アミノ酸配列は配列番号8のアミノ酸1ないし266に対応する。
図3Aの続き。
ヒトCRSP−4のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号10の核酸1ないし702に対応する。アミノ酸配列は配列番号11のアミノ酸1ないし179に対応する。
ヒトCRSP様−N(CRSP−like−N)のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号13の核酸1ないし928に対応する。アミノ酸配列は配列番号14のアミノ酸1ないし242に対応する。
ヒトCRSP−1、ヒトCRSP−2、ヒトCRSP−3およびヒトCRSP−4のアミノ酸配列、ならびにこれらの配列の整列から生じられるコンセンサス配列を描く。この図は本発明のCRSPタンパク質間の関係を詳述する。
本発明のCRSPタンパク質間の関係を描く図解である。この図はヒトCRSPの生物学的および機能的ドメインを描く。シグナルペプチドは塗りつぶされた四角により示される。CRSPのシステインに富む領域のシステインに富むドメインはCRD−1およびCRD−2として描かれる。
マウスCRSP−1のcDNA配列および推定アミノ酸配列を描く。ヌクレオチド配列は配列番号16の核酸1ないし928に対応する。アミノ酸配列は配列番号17のアミノ酸1ないし349に対応する。
図8Aの続き。
CRSP−1のヌクレオチド配列と、RIGおよびRIG様7−1(RIG−like 7−1)のもの(それぞれ受託番号U32331およびAF034208)との間の関係を描く図解である。
<発明の詳細な記述>
本発明は、本明細書でCRSPタンパク質および核酸分子と称される新規分子の発見を基礎とし、これらはある保存された構造および機能の特徴を有する分子の一ファミリーを含んで成る。本発明のタンパク質および核酸分子を指す場合の「ファミリー」という用語
は、共通の構造ドメインを有しかつ本明細書で定義されるような十分なアミノ酸もしくはヌクレオチドの配列の相同性を有する2種もしくはそれ以上のタンパク質もしくは核酸分子を意味することを意図される。こうしたファミリーの構成員は天然に存在し得、そして同一もしくは異なる種のいずれかからであり得る。例えば、あるファミリーはヒト起源の第一のタンパク質ならびにヒト起源の他の別個のタンパク質を含有し得るか、もしくは、あるいは、非ヒト起源の相同物を含有し得る。ファミリーの構成員は共通の機能的特徴もまた有しうる。
一態様においては、CRSPファミリーの構成員は、タンパク質もしくは対応する核酸分子中の最低1個の「システインに富むドメイン」の存在を基礎として同定される。本明細書で定義されるところの「システインに富むドメイン」は、システイン残基が豊富である、すなわち、最低約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個のアミノ酸がシステイン残基であるCRSPタンパク質(例えばCRSP−1)の一部分を指す。好ましくは、「システインに富むドメイン」は、その最低約3〜20、好ましくは約5〜15、もしくはより好ましくは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個のアミノ酸がシステイン残基である、約30〜100アミノ酸、好ましくは約35〜95アミノ酸、より好ましくは約40〜90アミノ酸、より好ましくは約45〜85アミノ酸、なおより好ましくは約50〜80アミノ酸、そしてなおより好ましくは約55〜75、60〜70もしくは65アミノ酸のアミノ酸配列を有するタンパク質ドメインである。
好ましいシステインに富むドメインは、配列番号2を有するヒトCRSP−1中のシステイン残基と同一の相対的アミノ酸位置に配置された最低約10、最低約15、16、17、18、19もしくは好ましくは20個のシステイン残基を有する。例えば、図6に示されるように、CRSP−2は、配列番号2を有するヒトCRSP−1のシステイン残基と同一の相対的アミノ酸位置に配置された最低約10個のシステイン残基を有する(例えば、CRSP−2、配列番号5のcys151はCRSP−1、配列番号2のcys214と同一の相対的アミノ酸位置に配置され;CRSP−2、配列番号5のcys156はCRSP−1、配列番号2のcys219と同一の相対的アミノ酸位置に配置され;そしてCRSP−2、配列番号5のcys157はCRSP−1、配列番号2のcys220と同一の相対的アミノ酸位置に配置される)。同様に、図6に示されるとおり、CRSP−3は、配列番号2を有するヒトCRSP−1のシステイン残基と同一の相対的アミノ酸位置に配置された最低約10個のシステイン残基を有する。図6にまた示されるとおり、CRSP−4は、配列番号2を有するヒトCRSP−1のシステイン残基と同一の相対的アミノ酸位置に配置された最低約10個のシステイン残基を有する。
本発明の好ましいCRSPタンパク質は(例えば、天然に存在するヒト遺伝子に対応するヌクレオチド配列によりコードされる)ヒトタンパク質である。例えば、一態様においては、あるCRSP−1タンパク質(ヒトCRSP−1)は、10個のシステイン残基を有する配列番号2のアミノ酸147〜195周辺を含有する第一のシステインに富むドメイン、および、10個のシステイン残基を有する配列番号2のアミノ酸201〜284周辺を含有する第二のシステインに富むドメインを含有する(システイン残基の位置は図6に描かれる)。別の態様においては、あるCRSP−2(ヒトCRSP−2)タンパク質は、10個のシステイン残基を有する配列番号5のアミノ酸41〜90周辺を含有する第一のシステインに富むドメイン、および、10個のシステイン残基を有する配列番号5のアミノ酸41〜218周辺を含有する第二のシステインに富むドメインを含有する(システイン残基の位置は図6に描かれる)。別の態様においては、あるCRSP−3タンパク質(ヒトCRSP−3)は、10個のシステイン残基を有する配列番号8のアミノ酸85〜138周辺を含有する第一のシステインに富むドメイン、および、10個のシステイン残基を有する配列番号8のアミノ酸182〜263周辺を含有する第二のシステインに富
むドメインを含有する(システイン残基の位置は図6に描かれる)。別の態様においては、あるCRSP−4タンパク質(ヒトCRSP−4)は、8個のシステイン残基を有する配列番号11のアミノ酸1〜47周辺を含有する第一のシステインに富むドメイン、および、10個のシステイン残基を有する配列番号11のアミノ酸96〜176周辺を含有する第二のシステインに富むドメインを含有する(システイン残基の位置は図6に描かれる)。
好ましいCRSPタンパク質は1個以上のシステインに富むドメインを有し、より好ましくは最低2個のシステインに富むドメインを有し、そして、従って1個のシステインに富む領域を有する。本明細書で使用されるところの「システインに富む領域」という用語は、最低2個のシステインに富むドメインを包含しそしてそのアミノ酸の最低約10〜30、好ましくは約15〜20、そしてより好ましくは約16、17、18もしくは19個がシステイン残基である、約120〜200、好ましくは約130〜190、より好ましくは約140〜180アミノ酸残基、そしてなおより好ましくは最低約135〜175アミノ酸のアミノ酸配列を有するタンパク質ドメインを指す。好ましい一態様においては、システインに富む領域はCRSPタンパク質のC末端領域に配置される。例えば、一態様においては、CRSP−1タンパク質は、図6に示される位置に20個のシステイン残基を有する、配列番号2のアミノ酸147〜284周辺を含有するシステインに富む領域を含有する。別の態様においては、CRSP−2タンパク質は、図6に示される位置に20個のシステイン残基を有する、配列番号5のアミノ酸41〜218周辺を含有するシステインに富む領域を含有する。別の態様においては、CRSP−3タンパク質は、図6に示される位置に20個のシステイン残基を有する、配列番号8のアミノ酸85〜263周辺を含有するシステインに富む領域を含有する。別の態様においては、CRSP−4タンパク質は、図6に示される位置に18個のシステイン残基を有する、配列番号2のアミノ酸1〜176周辺を含有するシステインに富む領域を含有する。
別の態様においては、システインに富むドメインに加え、システインに富む領域は、第一および第二のシステインに富むドメインを分離するスペーサー領域を含有する。本明細書で使用されるところの「スペーサー領域」は、システインに富む領域の第一と第二のシステインに富むドメインの間に配置されるアミノ酸残基を指し、そして、第一のシステインに富むドメインのC末端かつ第二のシステインに富むドメインのN末端に配置されるアミノ酸残基を包含する。本明細書で定義されるところの「スペーサー領域」は、約5〜70アミノ酸、好ましくは約10〜65アミノ酸、より好ましくは約15〜60アミノ酸、なおより好ましくは約20〜55アミノ酸、そしてなおより好ましくは約25〜50、30〜45もしくは35〜40アミノ酸のタンパク質ドメインを指す。例えば、CRSP−1タンパク質は配列番号2のアミノ酸196〜200周辺のスペーサー領域を含有し;CRSP−2タンパク質は配列番号5のアミノ酸91〜137周辺のスペーサー領域を含有し;CRSP−3タンパク質は配列番号8のアミノ酸139〜181周辺のスペーサー領域を含有し;そしてCRSP−4タンパク質は配列番号11のアミノ酸48〜95周辺のスペーサー領域を含有する。
本発明の別の態様においては、CRSPタンパク質は最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくはシステインに富む領域、およびシグナル配列を有する。本明細書で使用されるところの「シグナル配列」は、分泌性かつ不可欠な膜タンパク質のN末端に存在しかつ多数の疎水性アミノ酸残基を含有する約20アミノ酸を含有するペプチドを指す。例えば、シグナル配列は、最低約14〜28アミノ酸残基、好ましくは約16〜26アミノ酸残基、より好ましくは約18〜24アミノ酸残基、そしてより好ましくは約20〜22アミノ酸残基を含有し、また、最低約40〜70%、好ましくは約50〜65%、そしてより好ましくは約55〜60%の疎水性アミノ酸残基(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンもしくはプロリン)
を有する。当該技術分野で「シグナルペプチド」ともまた称されるこうした「シグナル配列」は、こうした配列を含有するタンパク質を脂質二重層に向けるようにはたらく。例えば、一態様においては、CRSP−1タンパク質は配列番号2のアミノ酸1〜23周辺のシグナル配列を含有する。別の態様においては、CRSP−2タンパク質は配列番号5のアミノ酸1〜19周辺のシグナル配列を含有する。別の態様においては、CRSP−3タンパク質は配列番号8のアミノ酸1〜20周辺のシグナル配列を含有する。
本発明のCRSPタンパク質は付加的なCRSPファミリー構成員を同定するのに使用され得る。例えば、CRSP−1に対する相同性を有するタンパク質は、タンパク質配列データベースを検索するためのCRSP−1のN末端の独特の領域をコードするヌクレオチド配列を使用して同定された。本明細書で「CRSP様−N」と称されるこうしたタンパク質が図5に描かれる。CRSP様−Nのヌクレオチド配列(配列番号13)は242アミノ酸を有するタンパク質(配列番号14)をコードする。CRSP様−Nのヌクレオチド配列は、配列番号13のヌクレオチド1〜74を含有する5’非翻訳領域、配列番号13のヌクレオチド75〜800を含有するコーディング領域(配列番号15のヌクレオチド1〜726に対応する)、および配列番号13のヌクレオチド801〜928を含有する3’非翻訳領域を包含する。
従って、本発明の一態様は、最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくは最低1個のシステインに富む領域を有するCRSPタンパク質を特色とする。別の態様は、最低1個のシステインに富む領域を有するCRSPタンパク質を特色とし、ここでシステインに富む領域は最低1個のシステインに富むドメインを包含する。別の態様は最低1個のシステインに富む領域を有するCRSPタンパク質を特色とし、ここでシステインに富む領域は最低2個のシステインに富むドメインを包含する。別の態様は、本発明のCRSPタンパク質のシステインに富むドメインに対する20、30、40、50、60、70、80、90、95もしくは99%の相同性を有するタンパク質(例えば、CRSP−1、CRSP−2、CRSP−3もしくはCRSP−4)を特色とする。
本発明のなお別の態様は、最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくは最低1個のシステインに富む領域、およびシグナルペプチドを有するCRSPタンパク質を特色とする。別の態様は、最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくは最低1個のシステインに富む領域、およびシグナルペプチドを有するCRSPタンパク質を特色とし、ここでシステインに富む領域は最低2個のシステインに富むドメインを包含する。別の態様は、最低1個のシステインに富むドメイン、好ましくは最低1個のシステインに富む領域、およびシグナルペプチドを有するCRSPタンパク質を特色とし、ここでシステインに富む領域は最低2個のシステインに富むドメインおよびスペーサーを包含する。
本発明の好ましいCRSP分子は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有する。本明細書で使用されるところの「十分に相同な」という用語は、第一および第二のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列が共通の構造ドメインおよび/もしくは共通の機能的活性を共有するような、十分なもしくは最小限の数の、第二のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列に同一もしくは同等な(例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基)アミノ酸残基もしくはヌクレオチドを含有する第一のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列を指す。例えば、そのドメインのアミノ酸配列全体で最低約40%の相同性、好ましくは50%の相同性、より好ましくは60%〜70%の相同性を有する共通の構造ドメインを共有し、そして、最低1、好ましくは2、より好ましくは3、そしてなおより好ましくは4、5もしくは6個の構造ドメインを含有するアミノ酸もしくはヌクレオチド配列が、本明細書で十分に相同と定義される。さらに、最低40%、好ましくは50%、より好ましくは60、70もしくは80%の相同性を共有しかつ共通の機能的活性を共有するアミノ酸もしくはヌクレオチド配列が、本明細書
で十分に相同と定義される。
本明細書で交換可能に使用されるところの「CRSP活性」、「CRSPの生物学的活性」もしくは「CRSPの機能的活性」は、標準的技術によりインビボもしくはインビトロで測定されるような、CRSP応答性細胞に対してCRSPのタンパク質、ポリペプチドもしくは核酸分子により発揮される活性を指す。一態様においては、CRSP活性はCRSPを標的とする分子(CRSP−target molecule)との会合のような直接の活性である。本明細書で使用されるところの「標的分子」は、それとCRSPタンパク質が結合するかもしくは性質において相互作用して、その結果CRSPに媒介される機能が達成される分子である。CRSPの標的分子は、非CRSP分子、または本発明のCRSPタンパク質もしくはポリペプチドであり得る。例示的一態様においては、CRSPの標的分子は膜結合タンパク質(例えば細胞表面レセプターもしくは「CRSPレセプター」)、または当該タンパク質が可溶性であるように変えられた(例えば、当該タンパク質が膜結合ドメインを発現しないように組換え的に産生された)こうしたタンパク質の修飾された形態である。別の態様においては、CRSPの標的は第二の可溶性タンパク質分子(例えば「CRSPの結合パートナー」もしくは「CRSPの基質」)である。こうした例示的一態様においては、CRSPの結合パートナーは第二の可溶性の非CRSPタンパク質、もしくは本発明の第二のCRSPタンパク質分子であり得る。あるいは、CRSPの活性は、第二のタンパク質(例えばCRSPレセプター)とのCRSPタンパク質の相互作用により媒介される細胞のシグナリング活性のような間接的活性である。本明細書で使用されるところの「CRSPレセプター」という用語は、それにCRSPタンパク質、例えばヒトCRSPが結合し得るタンパク質もしくはタンパク質複合体を指す。レセプターは細胞表面レセプター、例えば核ホルモンレセプターであり得る。CRSPレセプターは、当該技術分野で既知かつ本明細書でさらに記述される方法により単離され得る。CRSPレセプターとのCRSPタンパク質の相互作用は、細胞表面から核までのシグナルの伝達をもたらし得る。伝達されるシグナルは、細胞内カルシウムの増加、ホスファチジルイノシトールもしくは他の分子の増加であり得、そして、例えば特定のタンパク質のホスホリル化、遺伝子転写の調節、および本明細書で述べられる他の生物学的活性のいずれかをもたらし得る。
好ましい一態様においては、CRSP活性は以下の活性の最低1種もしくはそれ以上である。すなわち、(i)第二の分子(例えば、CRSPレセプター、可溶性の形態のCRSPレセプター、シグナリングタンパク質のwntファミリーの構成員のレセプター、もしくは非CRSPシグナリング分子のようなタンパク質)とのCRSPタンパク質の相互作用および/もしくはそれとの結合;(ii)膜結合CRSPレセプターを介する細胞内タンパク質とのCRSPタンパク質の相互作用;(iii)可溶性CRSPタンパク質と第二の可溶性のCRSPの結合パートナー(例えば、非CRSPタンパク質分子もしくは第二のCRSPタンパク質分子)との間の複合体形成;(iv)他の細胞外タンパク質との相互作用(例えば、細胞外マトリックス成分へのwnt依存性の細胞接着の調節);(v)所望されない分子に結合しそして排除すること(例えば解毒活性もしくは防御機能);ならびに/または(vi)酵素活性。なお別の好ましい態様においては、CRSP活性は以下の活性の最低1種もしくはそれ以上である。すなわち(1)インビトロもしくはインビボのいずれかでの細胞のシグナル伝達の調節(例えば、分泌性タンパク質のwntファミリーの構成員の活性の拮抗作用、もしくはwnt依存性のシグナル伝達の抑制);(2)細胞の間の連絡の調節(例えば、wnt依存性の細胞−細胞相互作用の調節);(3)その発現がCRSP(例えばCRSP−1)のレセプターへの結合により調節される遺伝子の発現の調節;(4)インビトロもしくはインビボのいずれかでの発生もしくは分化に関与する細胞での遺伝子転写の調節(例えば細胞分化の誘導);(5)発生もしくは分化に関与する細胞での遺伝子転写の調節であって、ここで最低1種の遺伝子が分化特異的タンパク質をコードし;(6)発生もしくは分化に関与する細胞での遺伝子転写の調節で
あって、ここで最低1種の遺伝子が第二の分泌性タンパク質をコードし;(7)発生もしくは分化に関与する細胞での遺伝子転写の調節であって、ここで最低1種の遺伝子がシグナル伝達分子をコードし;(8)インビトロもしくはインビボのいずれかでの細胞増殖の調節(例えば、細胞増殖の誘導もしくは腫瘍発生の抑制の場合でのような増殖の阻害(例えば膠芽腫形成の抑制));(9)成体および胚双方の脊椎動物での分化された組織の整然とした空間的配置の形成および維持(例えば、脊椎動物の造血前駆細胞の発生もしくは維持の間の頭部形成の誘導);(10)細胞の生存の刺激のような細胞死の調節;(11)細胞移動を調節すること;ならびに/または(12)免疫調節。
本明細書で称されるところの「分化特異的タンパク質」は、未分化から分化の表現型への細胞の移行に関与するタンパク質を包含する。例えば、こうしたタンパク質は分化特異的構造タンパク質もしくは分化特異的転写因子であり得る。こうした分化特異的タンパク質は、一般に、未分化から分化の表現型への移行をなしている(例えば、胚の発生の間、もしくは成体動物での成熟組織の再生の間)細胞でより高レベルで発現されるか、または、完全に分化されたもしくは終末に分化された細胞で、それらの未分化の対照物(counterpart)に比較してより高レベルで発現される。また、本明細書で称されるところの「分化特異的遺伝子」は、分化特異的タンパク質をコードする核酸分子を包含する。
従って、本発明の別の態様は、CRSP活性を有する単離されたCRSPのタンパク質およびポリペプチドを特色とする。好ましいCRSPタンパク質は最低1個のシステインに富む領域およびCRSP活性を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、最低1個のシステインに富む領域(ここでシステインに富む領域は最低1個のシステインに富むドメインを含んで成る)およびCRSP活性を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、最低1個のシステインに富む領域(ここでシステインに富む領域は最低2個のシステインに富むドメインを含んで成る)およびCRSP活性を有する。なお別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質はシグナル配列をさらに含んで成る。さらに別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、システインに富む領域、CRSP活性、および、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を有する。
長さがおよそ2479ヌクレオチドであるヒトCRSP−1のcDNAは、長さがおよそ350アミノ酸残基であるタンパク質をコードする。このヒトCRSPタンパク質は、N末端シグナル配列、および2個のシステインに富むドメインを含んで成る1個のシステインに富む領域を含有する。CRSPのシステインに富む領域は、少なくとも、例えば、配列番号2のアミノ酸147〜284周辺から見出され得る。CRSP−1のシステインに富む領域は、配列番号2のアミノ酸147〜195周辺からの第一のシステインに富むドメイン、および配列番号2のアミノ酸201〜284周辺からの第二のシステインに富むドメインを含んで成る。ヒトCRSP−1タンパク質は、配列番号2のアミノ酸1〜23周辺にシグナル配列をさらに含有する分泌性タンパク質である。こうしたシグナルペプチドの予測は、例えば、コンピューターのアルゴリズムSIGNALP(ヘンリック(Henrik)ら(1997)Protein Engineering 10:1−6)を利用してなされ得る。
長さおよそ848ヌクレオチドであるヒトCRSP−2のcDNAは、長さおよそ224アミノ酸残基であるタンパク質をコードする。このヒトCRSPタンパク質は、N末端シグナル配列、および2個のシステインに富むドメインを含んで成る1個のシステインに富む領域を含有する。CRSPのシステインに富む領域は、少なくとも、例えば、配列番号5のアミノ酸41〜218周辺から見出され得る。CRSP−2のシステインに富む領域は、配列番号5のアミノ酸41〜90周辺からの第一のシステインに富むドメイン、お
よび配列番号5のアミノ酸138〜218周辺からの第二のシステインに富むドメインを含んで成る。ヒトCRSP−2タンパク質は、配列番号5のアミノ酸1〜19周辺にシグナル配列をさらに含有する分泌性タンパク質である。
長さおよそ1529ヌクレオチドであるヒトCRSP−3のcDNAは、長さおよそ266アミノ酸残基であるタンパク質をコードする。このヒトCRSPタンパク質は、N末端シグナル配列、および2個のシステインに富むドメインを含んで成る1個のシステインに富む領域を含有する。CRSPのシステインに富む領域は、少なくとも、例えば、配列番号8のアミノ酸85〜263周辺から見出され得る。CRSP−3のシステインに富む領域は、配列番号8のアミノ酸85〜138周辺からの第一のシステインに富むドメイン、および配列番号8のアミノ酸182〜263周辺からの第二のシステインに富むドメインを含んで成る。ヒトCRSP−3タンパク質は、配列番号8のアミノ酸1〜20周辺にシグナル配列をさらに含有する分泌性タンパク質である。
長さおよそ702ヌクレオチドであるヒトCRSP−4のcDNAは、長さおよそ179アミノ酸残基であるタンパク質をコードする。このヒトCRSPタンパク質は、2個のシステインに富むドメインを含んで成る1個のシステインに富む領域を含有する。CRSPのシステインに富む領域は、少なくとも、例えば、配列番号11のアミノ酸1〜176周辺から見出され得る。CRSP−4のシステインに富む領域は、配列番号11のアミノ酸1〜47周辺からの第一のシステインに富むドメイン、および配列番号11のアミノ酸96〜176周辺からの第二のシステインに富むドメインを含んで成る。
本発明の多様な局面は以下の小区分でさらに詳細に記述される。すなわち
I.単離された核酸分子
本発明の一局面は、CRSPタンパク質もしくはその生物学的に活性の部分をコードする単離された核酸分子、ならびに、CRSPをコードする核酸(例えばCRSPのmRNA)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用に十分な核酸断片およびCRSP核酸分子の増幅もしくは突然変異のためのPCRプライマーとしての使用のための断片に関する。本明細書で使用されるところの「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えばcDNAもしくはゲノムDNA)およびRNA分子(例えばmRNA)、ならびにヌクレオチド類似物を使用して生じられるDNAもしくはRNAの類似物を包含することを意図される。核酸分子は一本鎖もしくは二本鎖であり得るが、しかし好ましくは二本鎖DNAである。
「単離された」核酸分子は、その核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されるものである。好ましくは、「単離された」核酸は、当該核酸が由来する生物体のゲノムDNA中で当該核酸に本来隣接する配列(すなわち当該核酸の5’および3’端に配置される配列)を含まない。例えば、多様な態様においては、単離されたCRSP核酸分子は、当該核酸が由来する細胞のゲノムDNA中で当該核酸分子に本来隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbもしくは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有し得る。さらに、cDNA分子のような「単離された」核酸分子は、他の細胞性物質、もしくは組換え技術により生じられる場合は培養培地を本質的に含み得ないか、または、化学的に合成される場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を本質的に含み得ない。
本発明の核酸分子、例えば、配列番号1、配列番号4、配列番号7もしくは配列番号10のヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託され
たプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはそれらの一部分を有する核酸分子は、標準的な分子生物学技術および本明細書に提供される配列情報を使用して単離され得る。配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10の核酸配列、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の全部もしくは部分をハイブリダイゼーションプローブとして使用して、CRSP核酸分子が、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、サンブルック(Sambrook,J.)、フリッチュ(Fritsh,E.F.)とマニアティス(Maniatis,T.)Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989に記述されるような)を使用して単離され得る。
さらに、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の全部もしくは一部分を包含する核酸分子が、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10の配列、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列を基礎として設計される合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離され得る。
本発明の核酸は、鋳型としてのcDNA、mRNAもしくは、あるいはゲノムDNA、および標準的なPCR増幅技術に従った適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅され得る。そのように増幅された核酸が適切なベクター中にクローニングされ得、そしてDNA配列決定分析により特徴づけられ得る。さらに、CRSPのヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドが、標準的合成技術により、例えば自動化DNA合成機を使用して製造され得る。
好ましい一態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含んで成る。配列番号1の配列はヒトCRSP−1のcDNAに対応する。このcDNAは、ヒトCRSP−1タンパク質をコードする配列(すなわちヌクレオチド38〜1087からの「コーディング領域」)、ならびに5’非翻訳配列(ヌクレオチド1ないし37)および3’非翻訳配列(ヌクレオチド1088ないし2479)を含んで成る。あるいは、当該核酸分子は配列番号1のコーディング領域(例えば、配列番号3に対応する、ヌクレオチド38ないし1087)のみを含み得る。CRSP−1をコードする完全長のヌクレオチド配列を含有する1種のプラスミドが、1998年6月11日に、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)、メリーランド州ロックヴィル、に寄託され、そして受託番号98452を割り当てられた。CRSP−1をコードする完全長のヌクレオチド配列を含有する1種のプラスミドが、1998年1月16日に、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture
Collection)(ATCC)、メリーランド州ロックヴィル、に寄託され、そして受託番号98634を割り当てられた。
別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号4に示されるヌクレオチド配列を含んで成る。配列番号4の配列はヒトCRSP−2のcDNAに対応する。このcDNAは、ヒトCRSP−2タンパク質をコードする配列(すなわちヌクレオチド126〜796からの「コーディング領域」)、ならびに5’非翻訳配列(ヌクレオチド1ないし125)および3’非翻訳配列(ヌクレオチド797ないし848)を含んで成る。あるいは、当該核酸分子は、配列番号4のコーディング領域(例えば、配列番号6に対応する、ヌクレオチド126ないし796)のみを含み得る。
別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含んで成る。配列番号7の配列はヒトCRSP−3のcDNAに対応する。このcDNAは、ヒトCRSP−3タンパク質をコードする配列(すなわちヌクレオチド93〜890からの「コーディング領域」)、ならびに5’非翻訳配列(ヌクレオチド1ないし92)および3’非翻訳配列(ヌクレオチド891ないし1529)を含んで成る。あるいは、当該核酸分子は配列番号7のコーディング領域(例えば、配列番号9に対応する、ヌクレオチド93ないし890)のみを含み得る。CRSP−3をコードする完全長のヌクレオチド配列を含有するプラスミドが、1998年1月16日に、アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture
Collection)(ATCC)、メリーランド州ロックヴィル、に寄託され、そして受託番号98633を割り当てられた。
別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号10に示されるヌクレオチド配列を含んで成る。配列番号10の配列はヒトCRSP−4のcDNAに対応する。このcDNAは、ヒトCRSP−4タンパク質をコードする配列(すなわちヌクレオチド1〜537からの「コーディング領域」)、ならびに3’非翻訳配列(ヌクレオチド538ないし702)を含んで成る。あるいは、当該核酸分子は配列番号10のコーディング領域(例えば、配列番号12に対応する、ヌクレオチド1ないし537)のみを含み得る。
別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分の相補物である核酸分子を含んで成る。配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に相補的である核酸分子は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に対し十分に相補的であるものであり、その結果、それは、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、または受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションし得
、それにより安定な二本鎖を形成する。
なお別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、もしくは配列番号10に示されるヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分に、最低約30〜35%、好ましくは約40〜45%、より好ましくは約50〜55%、なおより好ましくは約60〜65%、そしてなおより好ましくは最低約70〜75%、80〜85%、90〜95%もしくはそれ以上相同であるヌクレオチド配列を含んで成る。
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10の核酸配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の一部のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用され得る断片、またはCRSPタンパク質の生物学的に活性の部分をコードする断片を含み得る。ヒトCRSP遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他の細胞型、例えば他の組織からのCRSP相同物、ならびに他の哺乳動物からのCRSP相同物の同定および/もしくはクローニングでの使用のため設計されるプローブおよびプライマーの発生を見込む。当該プローブ/プライマーは、典型的には、本質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含んで成る。当該オリゴヌクレオチドは、典型的には、緊縮条件下で、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列のセンス配列、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列のアンチセンス配列、または、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の天然に存在する突然変異体の、最低約12、好ましくは約25、より好ましくは約40、50もしくは75個の連続的なヌクレオチドとハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列の一領域を含んで成る。例示的一態様においては、本発明の核酸分子は、緊縮ハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1のヌクレオチド470〜2479を含んで成る核酸分子、もしくは配列番号4のヌクレオチド1〜475を含んで成る核酸分子にハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列を含んで成る。
ヒトCRSPのヌクレオチド配列を基礎とするプローブが、同一のもしくは相同なタンパク質をコードする転写物もしくはゲノム配列を検出するのに使用され得る。例えば、配列番号1もしくは3で表わされる核酸を基礎とするプライマーが、CRSP相同物(例えばCRSP−1相同物)をクローニングするためのPCR反応で使用され得る。本発明の好ましい一態様においては、CRSP相同物が、CRSPのシステインに富むドメインをコードするヌクレオチド配列の一部分にハイブリダイゼーションするプライマーを使用するPCR増幅(例えばRT−PCR)によりクローニングされる。同様に、主題のCRS
P配列を基礎とするプローブが、同一のもしくは相同なタンパク質をコードする転写物もしくはゲノム配列を検出するのに使用され得る。好ましい態様においては、当該プローブは、それに結合された標識基をさらに含んで成り、例えば、標識基は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素もしくは酵素補助因子であり得る。こうしたプローブは、被験体からの細胞のサンプル中のCRSPをコードする核酸のレベルを測定すること、例えば、CRSPのmRNAレベルを検出すること、もしくはゲノムCRSP遺伝子が突然変異されているか欠失されているかを決定することによるような、CRSPタンパク質を誤って発現する(misexpress)細胞もしくは組織を同定するための診断試験キットの一部として使用され得る。
「CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分」をコードする核酸断片は、CRSPの生物学的活性(CRSPタンパク質の生物学的活性は前に記述された)を有するポリペプチドをコードする、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の一部分を単離すること、CRSPタンパク質のコードされた部分を発させること(例えばインビトロでの組換え発現により)、そしてCRSPタンパク質のコードされた部分の活性を評価すること、により調製され得る。
本発明は、さらに、遺伝暗号の縮重のため、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10に示されるヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列と異なり、そしてかように配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10に示されるヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列によりコードされるものと同一のCRSPタンパク質をコードする核酸分子を包含する。別の態様においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10に示されるヒトCRSPのヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に加えて、CRSPタンパク質のアミノ酸配列の変化につながるDNA配列の多形がある集団(例えばヒト集団)内で存在しうることが当業者により真価を認められるであろう。CRSP遺伝子中のこうした遺伝的多形性は、天然の対立遺伝子の変異によりある集団内の個体の間で存在しうる。本明細書で使用されるところの「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、CRSPタンパク質、好ましくは哺乳動物のCRSPタンパク質をコードする読取り枠を含んで成る核酸分子を指す。こうした天然の対立遺伝子の変異は、典型的には、CRSP遺伝子のヌクレオチド配列中の1〜5%の変動をもたらす。いずれかのおよび全部のこうしたヌクレオチドの変異、および天然の対立遺伝子の変異の結果でありかつCRSPタンパク質の機能的活性を変えないCRSP遺伝子中の生じるアミノ酸の多形は、本発明の範囲内にあることが意図される。
さらに、他の種からのCRSPタンパク質をコードし、そして従って、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10のヒト配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子が、本発明の範囲内にあることが意図される。例えば、マウスのCRSP−1のcDNAはヒトCRSP−1のヌクレオチド配列を基礎として同定された。マウスCRSP−1のヌクレオチド配列(配列番号16)は349アミノ酸を有するCRSP−1タンパク質をコードする。マウスCRSP−1のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列が図8に描かれる。マウスCRSP−1のコーディング領域は配列番号18により表わされる。
本発明のCRSPのcDNAの天然の対立遺伝子の変異体および相同物に対応する核酸分子は、緊縮ハイブリダイゼーション条件下での標準的ハイブリダイゼーション技術に従ったハイブリダイゼーションプローブとしてヒトcDNAもしくはその一部を使用して、本明細書に開示されるヒトCRSP核酸に対するそれらの相同性を基礎として単離され得る。主題の核酸の単離に適する組織および/もしくはライブラリーの例は、胸腺、リンパ節および炎症組織を包含する。CRSPタンパク質(例えばCRSP−1タンパク質)をコードするcDNAは、全mRNAを細胞、例えば脊椎動物細胞、哺乳動物細胞もしくは胚細胞を包含するヒト細胞から単離することにより得られることができる。二本鎖cDNAが、その後、全mRNAから調製され得、そしてその後、多数の既知の技術のいずれか一を使用して適するプラスミドもしくはバクテリオファージベクターに挿入され得る。CRSP−1タンパク質をコードする遺伝子は、本発明により提供されるヌクレオチド配列情報に従って、確立されたポリメラーゼ連鎖反応技術を使用してもまたクローニングされ得る。本発明の核酸は、DNAもしくはRNA、またはその類似物であり得る。
従って、別の態様においては、本発明の単離された核酸分子は、長さが最低15ヌクレオチドであり、かつ、緊縮条件下で、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10のヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列を含んで成る核酸分子にハイブリダイゼーションする。他の態様においては、当該核酸は長さが最低30、50、100、250もしくは500ヌクレオチドである。本明細書で使用されるところの「緊縮(ストリンジェント)条件下でハイブリダイゼーションする」という用語は、相互に最低60%相同なヌクレオチド配列が典型的に相互とハイブリダイゼーションされたままである、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記述することを意図される。好ましくは、条件は、相互に最低約70%、より好ましくは最低約80%、なおより好ましくは最低約85%もしくは90%相同な配列が典型的に相互とハイブリダイゼーションされたままであるようである。こうした緊縮条件は当業者に既知であり、かつ、Current Protocols in Molecular Biology、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(1989)、6.3.1−6.3.6に見出され得る。緊縮ハイブリダイゼーション条件の好ましい制限しない例は、約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、次いで50〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回もしくはそれ以上の洗浄である。好ましくは、緊縮条件下で配列番号1の配列にハイブリダイゼーションする本発明の単離された核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。本明細書で使用されるところの「天然に存在する」核酸分子は、天然に存在する(例えば天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAもしくはDNA分子を指す。
集団中に存在しうるCRSP配列の天然に存在する対立遺伝子の変異体に加え、当業者は、変化が、突然変異により、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10のヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に導入され得、それによりCRSPタンパク質の機能的能力を変えることなくコードされたCRSPタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらすことをさらに真価を認めるであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基でのアミノ酸置換(とりわけ保存的アミノ酸置換)をもたらすヌクレオチド置換が、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10の配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列でなされ得る。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変えることなくCRSPの野生型配列(例えば、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11の配列)から変えられ得る残基である一方、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性に必要とされる。例えば、本発明のCRSPタンパク質の間で保存されるアミノ酸残基(例えば、システインに富むドメイン内のシステイン残基)は、変化に対しとりわけ修正がきかないことが予測される。さらに、CRSPタンパク質と、システインに富むドメインを有する他のタンパク質との間で保存されるアミノ酸残基は、変化に対し修正可能であるようでない。
従って、本発明の別の局面は、活性に必須でないアミノ酸残基の変化を含有するCRSPタンパク質をコードする核酸分子に関する。こうしたCRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11とアミノ酸配列において異なるが、しかしそれでも生物学的活性を保持する。一態様においては、単離された核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んで成り、ここでこのタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に最低約60%相同なアミノ酸配列を含んで成る。好ましくは、当該核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約65〜70%相同、より好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低75〜80%相同、なおより好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約85〜90%相同、そして最も好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約95%相同である。
配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のタンパク質に相同なCRSPタンパク質をコードする単離された核酸分子は、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10のヌクレオチド配列、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に1個もしくはそれ以上のヌクレオチドの置換、付加もしくは欠失を導入することにより創製され得、その結果、1個もしくはそれ以上のアミノ酸の置換、付加もしくは欠失がコードされたタンパク質中に導入される。突然変異が、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発のような標準的技術により、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列に導入され得る。好ましくは、保存的アミノ酸置換が、1個もしくはそれ以上の予測された非必須アミノ酸残基でなされる。「保存的アミノ酸
置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基の一族(family)は当該技術分野で定義されている。これらの一族は、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電していない極性の側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝状の側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を包含する。従って、CRSPタンパク質中の予測される非必須アミノ酸残基(例えば、システインに富むドメイン中に配置されないもの)は、好ましくは、同一の側鎖の一族からの別のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、別の態様においては、突然変異は、飽和突然変異誘発によるようにCRSPコーディング配列の全部もしくは一部に沿って無作為に導入され得、そして、生じる突然変異体が、活性を保持する突然変異体を同定するためにCRSPの生物学的活性についてスクリーニングされる。配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列の突然変異誘発の後、コードされるタンパク質が組換え的に発現され得、そしてタンパク質の活性が測定され得る。
好ましい一態様においては、突然変異体のCRSPタンパク質は、細胞内カルシウム、ホスファチジルイノシトールもしくは他の分子の増加についてアッセイされ得、そして、例えば特定のタンパク質のホスホリル化、遺伝子転写の調節、および本明細書で述べられる他の生物学的活性のいずれかをもたらし得る。
好ましい一態様においては、突然変異体のCRSPタンパク質は、(1)インビトロもしくはインビボのいずれかで、細胞のシグナル伝達を調節する:(2)細胞間の連絡を調節する;(3)その発現がレセプターへのCRSP(例えばCRSP−1)の結合により調節される遺伝子の発現を調節する;(4)インビトロもしくはインビボのいずれかで、発生もしくは分化に関与する細胞での遺伝子転写を調節する;(5)インビトロもしくはインビボのいずれかで、細胞増殖を調節する;(6)脊椎動物の分化した組織の整然とした空間的配置を形成および/もしくは維持する;(7)細胞死(例えば細胞の生存)を調節する;(8)細胞の移動を調節する;そして/または(9)免疫系の機能を調節する能力についてもまたアッセイされ得る。
上述されたCRSPタンパク質をコードする核酸分子に加え、本発明の別の局面は、それに対しアンチセンスである単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸はタンパク質をコードする「センス」の核酸に相補的、例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補的もしくはmRNA配列に相補的であるヌクレオチド配列を含んで成る。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合し得る。アンチセンス核酸は、CRSPコーディング鎖全体、もしくはその一部分のみに対して相補的であり得る。一態様においては、アンチセンス核酸分子は、CRSPをコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「コーディング領域」に対しアンチセンスである。「コーディング領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含んで成るヌクレオチド配列の領域を指す(例えば、ヒトCRSP−1のコーディング領域は配列番号3に対応し、ヒトCRSP−2のコーディング領域は配列番号6に対応し、ヒトCRSP−3のコーディング領域は配列番号9に対応し、ヒトCRSP−4のコーディング領域は配列番号12に対応し、そしてヒトCRSP様−Nのコーディング領域は配列番号15に対応する)。別の態様においては、アンチセンス核酸分子はCRSPをコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「非
コーディング領域」に対しアンチセンスである。「非コーディング領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されない、コーディング領域に隣接する5’および3’配列を指す(すなわち、5’および3’非翻訳領域ともまた称される)。
本明細書に開示されるCRSPをコードするコーティング鎖の配列(例えば配列番号3、配列番号6、配列番号9もしくは配列番号12)を考えれば、本発明のアンチセンス核酸はワトソン(Watson)およびクリック(Crick)の塩基対形成の規則に従って設計され得る。アンチセンス核酸分子はCRSPのmRNAのコーディング領域全体に相補的であり得るが、しかし、より好ましくは、CRSPのmRNAのコーディングもしくは非コーディング領域の一部分のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはCRSPのmRNAの翻訳開始部位を取り囲む領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、長さが約5、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50ヌクレオチドであり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野で既知の手順を使用する化学合成および酵素的連結反応を使用して構築され得る。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然に存在するヌクレオチド、または、当該分子の生物学的安定性を増大させる、もしくはアンチセンスとセンスの核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を増大させるよう設計された、多様に修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成され得、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドが使用され得る。アンチセンス核酸を生じさせるのに使用され得る修飾ヌクレオチドの例は、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル,3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンを包含する。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンスの向きにサブクローニングされた発現ベクターを使用して生物学的に製造され得る(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、以下の小区分にさらに記述される、目的の標的核酸に対しアンチセンスの向きのものであることができる)。
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、それらがCRSPタンパク質をコードする細胞のmRNAおよび/もしくはゲノムDNAとハイブリダイゼーションするかもしくはこれに結合して、それにより例えば転写および/もしくは翻訳を阻害することによりタンパク質の発現を阻害するように、被験体に投与されるかもしくはインシトゥで生じられる。ハイブリダイゼーションは、安定な二本鎖を形成するための慣習的なヌクレオチドの相補性、もしくは、例えば、DNA二本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には二本鎖の主溝における特異的相互作用によることができる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の一例は組織部位での直接注入を包含する。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするよう修飾され得、そしてその後全身的に投与され得る。例えば、全身投与のためには、アンチセンス分子は、それらが、例えばアンチセンス核
酸分子を、細胞表面のレセプターもしくは抗原に結合するペプチドもしくは抗体に結合することにより、選択された細胞表面上で発現されるレセプターもしくは抗原に特異的に結合するように修飾され得る。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記述されるベクターを使用して細胞に送達もされ得る。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するためには、その中でアンチセンス核酸分子が強いpolIIもしくはpolIIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物が好ましい。
なお別の態様においては、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、ここでは通常のβ単位と反対に鎖が相互に平行に走る(ゴルティエ(Gaultier)ら(1987)Nucleic Acids.Res.15:6625−6641)。アンチセンス核酸分子は、2’−O−メチルリボヌクレオチド(イノウエ(Inoue)ら(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)もしくはキメラのRNA−DNA類似物(イノウエ(Inoue)ら(1987)FEBS Lett.215:327−330)もまた含み得る。
さらに別の態様においては、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それに対しそれらが相補的領域を有するmRNAのような一本鎖核酸を切断することが可能であるリボヌクレアーゼ活性をもつ触媒的RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッドリボザイム(ハゼルホフ(Haselhoff)とゲルラッハ(Gerlach)(1988)Nature 334:585−591に記述される))が、CRSPのmRNA転写物を触媒的に切断してそれによりCRSPのmRNAの翻訳を阻害するのに使用され得る。CRSPをコードする核酸に対し特異性を有するリボザイムは、本明細書に開示されるCRSPのcDNAのヌクレオチド配列(すなわち、配列番号1、配列番号4、配列番号7、配列番号10、受託番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列、もしくは受託番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入物のヌクレオチド配列)を基礎として設計され得る。例えば、テトラヒメナ(Tetrahymena)L19IVSのRNAの誘導体が構築され得、ここでは活性部位のヌクレオチド配列はCRSPをコードするmRNA中の切断されるべきヌクレオチド配列に相補的である。例えば、チェック(Cech)ら米国特許第4,987,071号;およびチェック(Cech)ら米国特許第5,116,742号を参照。あるいは、CRSPのmRNAが、特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒的RNAをRNA分子のプールから選択するのに使用され得る。例えばバーテル(Bartel,D.)とスゾスタク(Szostak,J.W.)(1993)Science 261:1411−1418を参照。
あるいは、CRSP遺伝子発現は、標的細胞中のCRSP遺伝子の転写を予防する三重らせん構造を形成するように、CRSPの調節領域(例えばCRSPプロモーターおよび/もしくはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とすることにより阻害され得る。一般に、ヘレネ(Helene,C.)(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569−84;ヘレネ(Helene,C.)ら(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27−36;およびマハー(Maher,L.J.)(1992)Bioassays 14(12):807−15を参照。
なお別の態様においては、本発明のCRSP核酸分子は、例えば当該分子の安定性、ハイブリダイゼーションもしくは溶解性を向上させるように、塩基部分、糖部分もしくはリン酸基幹(backbone)で修飾され得る。例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸基幹が、ペプチド核酸(peptide nucleic acid)を生じさせるように修飾され得る(ハイラップ(Hyrup B.)ら(1996)Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5−23を参照)。本
明細書で使用されるところの「ペプチド核酸」もしくは「PNA」という用語は、デオキシリボースリン酸基幹が偽ペプチド基幹により置き換えられそして4個の天然の核塩基(nucleobase)のみが保持される核酸模倣物(mimics)、例えばDNA模倣物を指す。PNAの中性の基幹は低イオン強度の条件下でDNAおよびRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションを見込むことが示されている。PNAオリゴマーの合成は、ハイラップ(Hyrup B.)ら(1996)上記;ペリー・オキーフ(Perry−O’Keefe)らPNAS 93:14670−675に記述されるような標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用して実施され得る。
CRSP核酸分子のPNAは治療および診断の応用に使用され得る。例えば、PNAは、例えば転写もしくは翻訳の停止を誘導することまたは複製を阻害することによる遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンスもしくは抗遺伝子(antigene)作用物質として使用され得る。CRSP核酸分子のPNAはまた、遺伝子中の単一の塩基対突然変異の分析において(例えば、PNAに向けられたPCR制限(clamping)により);他の酵素(例えばS1ヌクレアーゼ(ハイラップ(Hyrup B.)(1996)上記)と共同して使用される場合は「人工的制限酵素」として;またはDNAの配列決定もしくはハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして(ハイラップ(Hyrup B.)ら(1996)上記;ペリー・オキーフ(Perry−O’Keefe)上記)も使用され得る。
別の態様においては、CRSPのPNAが、PNAに親油性もしくは他のヘルパー基を付加すること、PNA−DNAキメラの形成、または、リポソームもしくは当該技術分野で既知の薬物送達の他の技術の使用により、(例えばそれらの安定性もしくは細胞取り込みを高めるように)修飾され得る。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を組み合わせうるCRSP核酸分子のPNA−DNAキメラが生じられ得る。こうしたキメラは、DNA認識酵素(例えばRNアーゼHおよびDNAポリメラーゼ)がDNA部分と相互作用することを可能にする一方、PNA部分は高い結合親和性および特異性を提供することができる。PNA−DNAキメラは、塩基の積み重なり、核塩基の間の結合の数、および方向に関して選択された適切な長さのリンカーを使用して結合され得る(ハイラップ(Hyrup B.)(1996)上記)。PNA−DNAキメラの合成は、ハイラップ(Hyrup B.)(1996)上記およびフィン(Finn P.J.)ら(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357−63に記述されるように実施され得る。例えば、DNA鎖が、標準的ホスホロアミダイトカップリングの化学を使用して固体支持体上で合成され得、そして修飾されたヌクレオシド類似物、例えば5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシチミジンホスホロアミダイトが、PNAとDNAの5’端との間として使用され得る(マグ(Mag,M.)ら(1989)Nucleic Acid Res.17:5973−88)。PNAモノマーがその後、段階的様式で結合されて、5’のPNA区分および3’のDNA区分をもつキメラ分子を生じさせる(フィン(Finn P.J.)ら(1996)上記)。あるいは、キメラ分子は、5’のDNA区分および3’のPNA区分をもち合成され得る(ピーターサー(Peterser,K.H.)ら(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119−1124)。
他の態様においては、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞のレセプターを標的とするための)、または、細胞膜(例えば、レツィンガー(Letsinger)ら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.US.86:6553−6556;ルマトル(Lemaitre)ら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:648−652;1988年12月15日に刊行されたPCT刊行物第WO88/09810号を参照)もしくは血液脳関門(例えば、1988年4月25日に刊行されたPCT刊行物第WO89/10134号を参照)を横断する輸
送を助長する作用物質のような他の付属された基を包含しうる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションに誘発される切断剤(hybridization−triggered cleavage agent)(例えば、クロール(Krol)ら(1988)BioTechniques 6:958−976を参照)もしくは挿入剤(例えば、ゾン(Zon)(1988)Pharm.Res.5:539−549を参照)を用いて修飾され得る。この目的には、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーションに誘発される架橋剤、輸送剤、もしくはハイブリダイゼーションに誘発される切断剤)に結合されうる。
II.単離されたCRSPタンパク質および抗CRSP抗体
本発明の一局面は、単離されたCRSPタンパク質およびその生物学的に活性の部分、ならびに抗CRSP抗体を生じさせるための免疫原としての使用に適するポリペプチド断片に関する。一態様においては、天然のCRSPタンパク質は、標準的タンパク質精製技術を使用する適切な精製計画により、細胞もしくは組織の供給源から単離され得る。別の態様においては、CRSPタンパク質は組換えDNA技術により製造される。組換え発現に代わり、CRSPタンパク質もしくはポリペプチドは、標準的ペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
「単離された」もしくは「精製された」タンパク質もしくはその生物学的に活性の部分は、細胞性物質、またはCRSPタンパク質が由来する細胞もしくは組織の供給源からの他の汚染するタンパク質を本質的に含まないか、あるいは、化学的に合成される場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を本質的に含まない。「細胞性物質を本質的に含まない」という言語は、その中でタンパク質が、それからそれが単離もしくは組換え的に産生される細胞の細胞性成分から分離される、CRSPタンパク質の調製物を包含する。一態様においては、「細胞性物質を本質的に含まない」という言語は、約30%(乾燥重量)未満の非CRSPタンパク質(「汚染するタンパク質」ともまた本明細書で称される)、より好ましくは約20%未満の非CRSPタンパク質、なおより好ましくは約10%未満の非CRSPタンパク質、そして最も好ましくは約5%未満の非CRSPタンパク質を有するCRSPタンパク質の調製物を包含する。CRSPタンパク質もしくはその生物学的に活性の部分が組換え的に生じられる場合、それはまた、好ましくは、培養培地を本質的に含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、そして最も好ましくは約5%未満に相当する。
「化学的前駆体もしくは他の化学物質を本質的に含まない」という言語は、その中でタンパク質がタンパク質の合成に関与する化学的前駆体もしくは他の化学物質から分離されるCRSPタンパク質の調製物を包含する。一態様においては、「化学的前駆体もしくは他の化学物質を本質的に含まない」という言語は、約30%(乾燥重量)未満の化学的前駆体もしくは非CRSP化学物質、より好ましくは約20%未満の化学的前駆体もしくは非CRSP化学物質、なおより好ましくは約10%未満の化学的前駆体もしくは非CRSP化学物質、そして最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体もしくは非CRSP化学物質を有するCRSPタンパク質の調製物を包含する。
CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分は、CRSPタンパク質のアミノ酸配列に十分に相同もしくはこれ由来のアミノ酸配列、例えば、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列を含んで成るペプチドを包含し、これらは完全長のCRSPタンパク質より少ないアミノ酸を包含し、かつCRSPタンパク質の最低1種の活性を表わす。典型的には、生物学的に活性の部分は、CRSPタンパク質の最低1種の活性をもつ1個のドメインもしくはモチーフを含んで成る。CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分は、例えば、長さが10、25、50、100もしくはそれ以上のアミノ酸であるポリペプチドであり得る。
一態様においては、CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分は最低1個のシステインに富む領域を含んで成る。別の態様においては、CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分は最低1個のシステインに富む領域を含んで成り、ここでシステインに富む領域は最低1個のシステインに富むドメインを包含する。なお別の態様においては、CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分は最低1個のシグナル配列を含んで成る。
代替の一態様においては、CRSPタンパク質の生物学的に活性の部分はシグナル配列を欠くCRSPのアミノ酸配列を含んで成る。
本発明のCRSPタンパク質の好ましい生物学的に活性の部分は上で同定された構造ドメインの最低1個を含有しうることが理解されるべきである。CRSPタンパク質のより好ましい生物学的に活性の部分は、上で同定された構造ドメインの最低2個を含有しうる。CRSPタンパク質のなおより好ましい生物学的に活性の部分は上で同定された構造ドメインの最低3個を含有しうる。本発明のCRSPタンパク質のとりわけ好ましい生物学的に活性の部分は上で同定された構造ドメインの最低4個を含有しうる。
さらに、その中で当該タンパク質の他の領域が欠失される他の生物学的に活性の部分が組換え技術により製造され得、そして天然のCRSPタンパク質の機能的活性の1種もしくはそれ以上について評価される。
好ましい一態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列、もしくは配列番号2に最低約55%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列、もしくは配列番号5に最低約35%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号8に示されるアミノ酸配列、もしくは配列番号8に最低約85%相同なアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号11に示されるアミノ酸配列、もしくは配列番号11に最低約35%相同なアミノ酸配列を有する。なお別の好ましい態様においては、本発明のCRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列に、最低約30〜35%、好ましくは約40〜45%、より好ましくは約50〜55%、なおより好ましくは約60〜65%、そしてなおより好ましくは最低約70〜75%、80〜85%、90〜95%もしくはそれ以上相同であるアミノ酸配列を含んで成る。
他の態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に本質的に相同であり、そして、好ましくは、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のタンパク質の機能的活性を保持するが、しかしそれでも上の小区分Iで詳細に記述されたとおり、天然の対立遺伝子の変異もしくは突然変異誘発のため、アミノ酸配列が異なる。従って、別の態様においては、CRSPタンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のアミノ酸配列に最低約60%相同なアミノ酸配列を含んで成り、そして、好ましくは、それぞれ配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11のCRSPタンパク質の機能的活性を保持するタンパク質である。好ましくは、当該タンパク質は、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約70%相同、より好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約80%相同、なおより好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約90%相同、そして最も好ましくは配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に最低約95%もしくはそれ以上相同である。
2種のアミノ酸配列もしくは2種の核酸の相同性のパーセントを決定するためには、配
列が、至適の比較の目的上整列される(例えば、ギャップが、第二のアミノ酸もしくは核酸の配列との至適の整列のために第一のアミノ酸の配列もしくは核酸の配列に導入され得る)。対応するアミノ酸位置もしくはヌクレオチド位置のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドがその後比較される。第一の配列中のある位置が第二の配列中の対応する位置と同一のアミノ酸残基もしくはヌクレオチドにより占有される場合には、それらの分子はその位置で相同である(すなわち、本明細書で使用されるところのアミノ酸もしくは核酸の「相同性」は、アミノ酸もしくは核酸の「同一性」に同等である)。2種の配列の間の相同性のパーセントは、それらの配列により共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一の位置の数/位置の総数×100)。2種の配列の間の相同性のパーセントの決定は数学的アルゴリズムを使用して成し遂げられ得る。2種の配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい、制限しない一例は、カーリン(Karlin)とアルチュール(Altschul)(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−77でのように改変される、カーリン(Karlin)とアルチュール(Altschul)(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−68のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、アルチュール(Altschul)ら(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索が、本発明のCRSP核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、点数(score)=100、語長=12のNBLASTプログラムを用いて実施され得る。BLASTタンパク質検索は、本発明のCRSPタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、点数=50、語長=3のXBLASTプログラムを用いて実施され得る。比較の目的上ギャップをつけられた(gapped)整列を得るためには、ギャップをつけられたBLASTが、アルチュール(Altschul)ら、(1997)Nucleic Acids Research 25(17):3389−3402に記述されるように利用され得る。BLASTおよびギャップをつけられたBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータが使用され得る。{HYPERLINK http://www.ncbi.nlm.nih.gov,http://www.ncbi.nlm.nih.gov}を参照。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい制限しない例は、マイヤース(Myers)とミラー(Miller)、CABOIS(1989)のアルゴリズムである。こうしたアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表(weight residue table)、12というギャップ長罰点(penalty)および4というギャップ罰点が使用され得る。
本発明はCRSPのキメラもしくは融合タンパク質もまた提供する。本明細書で使用されるところのCRSPの「キメラタンパク質」もしくは「融合タンパク質」は、非CRSPポリペプチドに有効に結合されるCRSPポリペプチドを含んで成る。「CRSPポリペプチド」はCRSPに対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す一方、「非CRSPポリペプチド」は、CRSPタンパク質に本質的に相同でないタンパク質、例えばCRSPタンパク質と異なりかつ同一もしくは異なる生物体由来であるタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。CRSP融合タンパク質内では、CRSPポリペプチドはCRSPタンパク質の全部もしくは一部分に対応し得る。好ましい一態様においては、CRSP融合タンパク質はCRSPタンパク質の最低1個の生物学的に活性の部分を含んで成る。別の好ましい態様においては、CRSP融合タンパク質はCRSPタンパク質の最低2個の生物学的に活性の部分を含んで成る。別の好ましい態様においては、CRSP融合タンパク質はCRSPタンパク質の最低3個の生物学的に活性の部分を含んで成る。融合タンパク質内では、「操作可能に結合される」という用語は、CRSPポリペプチドおよび非CRSPポリペプチドが相互に対し同じ読み枠で融合されること
を示すことを意図される。非CRSPポリペプチドはCRSPポリペプチドのN末端もしくはC末端に融合され得る。
例えば、一態様においては、融合タンパク質はGST−CRSP融合タンパク質であり、ここではCRSP配列がGST配列のC末端に融合される。こうした融合タンパク質は組換えCRSPの精製を助長し得る。
別の態様においては、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含有するCRSPタンパク質である。例えば、天然のCRSPのシグナル配列(すなわち、配列番号2のアミノ酸1ないし23周辺)が除去され得、そして別のタンパク質からのシグナル配列で置き換えられ得る。ある宿主細胞(例えば哺乳動物宿主細胞)においては、CRSPの発現および/もしくは分泌が異種シグナル配列の使用により増大され得る。
なお別の態様においては、融合タンパク質はCRSP−免疫グロブリン融合タンパク質であり、ここでは主としてCRSPのシステインに富む領域を含んで成るCRSP配列が、免疫グロブリンタンパク質ファミリーの一構成員由来の配列に融合される。可溶性の誘導体もまた、免疫グロブリンの定常(Fc)領域に融合された細胞表面糖タンパク質の細胞外ドメインから成る免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの細胞表面糖タンパク質から作成されている(例えば、ケイポン(Capon,D.J.)ら(1989)Nature 337:525−531ならびにケイポン(Capon)米国特許第5,116,964および5,428,130号[CD4−IgG1構築物];リンズレイ(Linsley,P.S.)ら(1991)J.Exp.Med.173:721−730[CD28−IgG1構築物およびB7−1−IgG1構築物];ならびにリンズレイ(Linsley,P.S.)ら(1991)J.Exp.Med.174:561−569および米国特許第5,434,131号[CTLA4−IgG1]を参照)。こうした融合タンパク質はレセプター−リガンドの相互作用を調節するのに有用と判明している。免疫グロブリンの定常(Fc)領域に融合された細胞表面レセプターの細胞外ドメインから成る、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)スーパーファミリーのタンパク質の細胞表面タンパク質の可溶性の誘導体が作成されている(例えば、モアランド(Moreland)ら(1997)N.Engl.J.Med.337(3):141−147;ファン・デル・ポル(van der Poll)ら(1997)Blood 89(10):3727−3734;およびアンマン(Ammann)ら(1997)J.Clin.Invest.99(7):1699−1703を参照)。
本発明のCRSP−免疫グロブリン融合タンパク質は製薬学的組成物中に組み込まれ得、そしてCRSPリガンドと細胞の表面上のCRSPレセプターとの間の相互作用を阻害してそれによりインビボでCRSP媒介性のシグナル伝達を抑制するように被験体に投与され得る。CRSP−免疫グロブリン融合タンパク質は、CRSPコグネイトレセプターの生物学的利用性に影響を及ぼすのに使用され得る。CRSPリガンド/CRSPの相互作用の阻害は、分化もしくは増殖性障害の治療、ならびに発生応答、細胞接着および/もしくは細胞の運命を調節(例えば促進もしくは阻害)することの双方に治療上有用でありうる。さらに、本発明のCRSP−免疫グロブリン融合タンパク質は、被験体において抗CRSP抗体を産生させるための免疫原として、CRSPリガンドを精製するため、そしてスクリーニングアッセイでCRSPリガンドとのCRSPの相互作用を阻害する分子を同定するために使用され得る。
好ましくは、本発明のCRSPのキメラもしくは融合タンパク質は標準的な組換えDNA技術により製造される。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片が、慣習的技術に従って、例えば、平滑末端にされたもしくは付着末端にされた末端をライゲーションに使用すること、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切なように付着
末端を埋めること(filling−in)、所望されない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結により、同じ読み枠で一緒に連結される。別の態様においては、融合遺伝子は自動化DNA合成機を包含する慣習的技術により合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅が、その後アニーリングされ得そしてキメラ遺伝子配列を生じさせるように再増幅され得る2個の連続する遺伝子断片の間に相補的突出(overhang)を生じさせるアンカープライマーを使用して実施され得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、アウスベル(Ausubel)ら編、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons):1992を参照)。さらに、融合部分(例えばGSTポリペプチド)を既にコードする多くの発現ベクターが商業的に入手可能である。CRSPをコードする核酸は、融合部分がCRSPタンパク質に同じ読み枠で結合されるようにこうした発現ベクター中にクローニングされ得る。
本発明はまた、CRSPアゴニスト(模倣物(mimetics))もしくはCRSPアンタゴニストのいずれかとして機能するCRSPタンパク質の変異体にも関する。CRSPタンパク質の変異体は、突然変異誘発、例えば別個の点突然変異もしくはCRSPタンパク質の短縮(truncation)により生じられ得る。CRSPタンパク質のアゴニストは、天然に存在する形態のCRSPタンパク質の生物学的活性の同一物もしくはサブセット(subset)を本質的に保持し得る。CRSPタンパク質のアンタゴニストは、例えば、CRSPタンパク質を包含する細胞のシグナル伝達カスケードの下流もしくは上流の構成員に競争的に結合することにより、天然に存在する形態のCRSPタンパク質の活性の1種もしくはそれ以上を阻害し得る。従って、特異的な生物学的影響が、制限された機能のある変異体での処理により導き出され得る。一態様においては、天然に存在する形態のタンパク質の生物学的活性のサブセットを有する変異体での被験体の処理は、被験体において、天然に存在する形態のCRSPタンパク質での処理に関してより少ない副作用を有する。
一態様においては、CRSPアゴニスト(模倣物)もしくはCRSPアンタゴニストのいずれかとして機能するCRSPタンパク質の変異体は、CRSPタンパク質の突然変異体、例えば短縮突然変異体の組み合わせライブラリーをCRSPタンパク質のアゴニストもしくはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることにより同定され得る。一態様においては、CRSP変異体の多彩なライブラリーは、核酸レベルでの組み合わせ突然変異誘発により生じられ、そして多彩な遺伝子ライブラリーによりコードされる。CRSP変異体の多彩なライブラリーは、例えば、潜在的なCRSP配列の縮重した組が別個のポリペプチドとして、もしくは、あるいは、その中にCRSP配列の組を含有する一組のより大きな融合タンパク質(例えばファージディスプレイ(phage display)のため)として発現可能であるように、遺伝子配列中に合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的に連結することにより生じられ得る。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なCRSP変異体のライブラリーを生じさせるのに使用され得る多様な方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成が自動DNA合成機で実施され得、そして合成遺伝子がその後、適切な発現ベクターに連結され得る。遺伝子の縮重した組の使用は、潜在的CRSP配列の所望の組をコードする配列の全部の1混合物での供給を見込む。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当該技術分野で既知である(例えば、ナラング(Narang,S.A.)(1983)Tetrahedron 39:3;イタクラ(Itakura)ら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;イタクラ(Itakura)ら(1984)Science 198:1056;アイク(Ike)ら(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照)。
加えて、CRSPタンパク質コーディング配列の断片のライブラリーが、CRSPタンパク質の変異体のスクリーニングおよびその後の選択のためにCRSP断片の多彩な集団
を生じさせるのに使用され得る。一態様においては、コーディング配列断片のライブラリーが、CRSPコーディング配列の二本鎖PCR断片を、切れ目形成(nicking)が1分子あたり約1回のみ起こる条件下でヌクレアーゼで処理すること、二本鎖DNAを変性させること、DNAを復元させて異なる切れ目を入れられた(nicked)産物からのセンス/アンチセンスの対を包含し得る二本鎖DNAを形成させること、一本鎖部分をS1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二本鎖から除去すること、そして生じる断片のライブラリーを発現ベクターに連結することにより生じられ得る。この方法により、発現ライブラリーが生じられ得、これはCRSPタンパク質のN末端、C末端および多様な大きさの内部断片をコードする。
点突然変異もしくは短縮により作成された組み合わせライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野で既知である。こうした技術は、CRSPタンパク質の組み合わせ突然変異誘発により生じられた遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適応可能である。高スループット分析に敏感に反応する、大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに最も幅広く使用される技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター中にクローニングすること、ベクターの生じるライブラリーで適切な細胞を形質転換すること、そして所望の活性の検出がその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を助長する条件下で組み合わせ遺伝子を発現することを包含する。ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を高める新しい技術、Recrusive 集団突然変異誘発(recrusive ensemble mutagenesis)(REM)が、CRSPの変異体を同定するためのスクリーニングアッセイと共同して使用され得る(アーキン(Arkin)とユルヴァン(Yourvan)(1992)PNAS 89:7811−7815;デルグレイヴ(Delgrave)ら(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
一態様において、細胞を基礎とするアッセイが多彩なCRSPライブラリーを分析するのに活用され得る。例えば、発現ベクターのライブラリーが、CRSP依存性の様式で特定のリガンドに普通に応答する細胞系にトランスフェクションされ得る。トランスフェクションされた細胞はその後、リガンドと接触され、そして、リガンドによるシグナル伝達に対する突然変異体の発現の影響が、例えば多数の免疫細胞応答のいずれかを測定することにより検出され得る。プラスミドDNAがその後、阻害、もしくは、あるいは、リガンド誘導の強化に成功する(score)細胞から回収され得、そして個々のクローンがさらに特徴づけられ得る。
単離されたCRSPタンパク質またはその一部もしくは断片が、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のための標準的技術を使用してCRSPを結合する抗体を生じさせるための免疫原として使用され得る。完全長のCRSPタンパク質が使用され得るか、もしくは、あるいは、本発明は免疫源としての使用のためのCRSPの抗原性ペプチド断片を提供する。CRSPの抗原性ペプチドは、配列番号2、配列番号5、配列番号8もしくは配列番号11に示されるアミノ酸配列の最低8アミノ酸残基を含んで成り、また、当該ペプチドに対し生じられた抗体がCRSPと特異的免疫複合体を形成するようなCRSPの抗原決定基を包含する。好ましくは、当該抗原性ペプチドは、最低10アミノ酸残基、より好ましくは最低15アミノ酸残基、なおより好ましくは最低20アミノ酸残基、そして最も好ましくは最低30アミノ酸残基を含んで成る。
抗原性ペプチドにより包含される好ましい抗原決定基は、CRSPの表面に配置されるこのタンパク質の領域、例えば親水性領域である。
CRSP免疫原は、典型的には、適する被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスもしくは他の哺乳動物)を当該免疫原で免疫することにより抗体を調製するのに使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え的に発現されたCRSPタンパク質もしくは化学的に合成されたCRSPポリペプチドを含有し得る。当該調製物は、フロイントの完全もしくは不完全アジュバントのようなアジュバント、または類似の免疫刺激剤をさらに包含し得る。免疫原性のCRSP調製物での適する被験体の免疫はポリクローナル抗CRSP抗体応答を誘導する。
従って、本発明の別の局面は抗CRSP抗体に関する。本明細書で使用されるところの「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子すなわちCRSPのような抗原を特異的に結合する(これと免疫反応する(immunoreact))抗原結合部位を含有する分子の免疫学的に活性の部分を指す。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性の部分の例はF(ab)およびF(ab’)2断片を包含し、これらは抗体をペプシンのような酵素で処理することにより生じられ得る。本発明はCRSPを結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用されるところの「モノクローナル抗体」もしくは「モノクローナル抗体組成物」という用語は、CRSPの特定の抗原決定基と免疫反応することが可能な抗原結合部位のただ1種を含有する抗体分子の集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、従って、典型的には、それが免疫反応する特定のCRSPタンパク質に対する単一の結合親和性を表わす。
ポリクローナル抗CRSP抗体は、適する被験体をCRSP免疫原で免疫することにより上述されたとおり調製され得る。免疫された被験体における抗CRSP抗体の力価は、固定されたCRSPを使用する酵素免疫測定法(ELISA)でのような標準的技術により時間にわたって監視され得る。所望の場合は、CRSPに対し向けられる抗体分子がその哺乳動物から(例えば血液から)単離され得、そしてIgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーのような公知の技術によりさらに精製され得る。免疫後適切な時点で、例えば抗CRSP抗体の力価が最高である場合に、抗体産生細胞が被験体から得られることができ、そして、コーラー(Kohler)とミルシュテイン(Milstein)(1975)Nature 256:495−497により元は記述されたハイブリドーマ技術(ブラウン(Brown)ら(1981)J.Immunol.127:539−46;ブラウン(Brown)ら(1980)J.Biol.Chem.255:4980−83;イェ(Yeh)ら(1976)PNAS 76:2927−31;およびイェ(Yeh)ら(1982)Int.J.Cancer 29:269−75もまた参照)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(コズボル(Kozbor)ら(1983)Immunol Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(コール(Cole)ら(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、アラン・R・リス・インク(Alan R.Liss,Inc.)、pp.77−96)もしくはトリオーマ(trioma)技術のような標準的技術によりモノクローナル抗体を調製するのに使用され得る。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生するための技術は公知である(一般に、ケネス(R.H.Kenneth)、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses中、プレナム・パブリッシング・コープ(Plenum Publishing Corp.)、ニューヨーク州ニューヨーク(1980);ラーナー(E.A.Lerner)(1981)Yale J.Biol.Med.、54:387−402;ゲフター(M.L.Gefter)ら(1977)Somatic Cell Genet.3:231−36を参照)。簡潔には、不死細胞系(典型的には骨髄腫)が、上述されたとおりCRSP免疫原で免疫された哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)に融合され、そして生じるハイブリドーマ細胞の培養上清が、CRSPを結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングされる。
リンパ球および不死化された細胞系を融合するために使用される多くの公知のプロトコルのいずれかが、抗CRSPモノクローナル抗体を生じさせるという目的上適用され得る(例えば、ガルフレ(G.Galfre)ら(1977)Nature 266:55052:ゲフター(Gefter)らSomatic Cell Genet.、上記に引用された;ラーナー(Lerner)、Yale J.Biol.Med.、上記に引用された;ケネス(Kenneth)、Monoclonal Antibodies、上記に引用された、を参照)。さらに、当業者は、また有用であることができるこうした方法の多くの変法が存在することを真価を認めるであろう。典型的には、不死細胞系(例えば骨髄腫細胞系)はリンパ球と同一の哺乳動物種由来である。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明の免疫原性調製物で免疫されたマウスからのリンパ球を不死化されたマウス細胞系と融合することにより作成され得る。好ましい不死細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性であるマウス骨髄腫細胞系である。多数の骨髄腫細胞系のいずれか、例えばP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653もしくはSp2/O−Ag14骨髄腫系統が、標準的技術に従って融合パートナーとして使用され得る。これらの骨髄腫系統はATCCから入手可能である。典型的には、HAT感受性のマウス骨髄腫細胞が、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウス脾細胞に融合される。この融合から生じるハイブリドーマ細胞がその後、HAT培地を使用して選択される。これは融合されない、および非生産的に融合された骨髄腫細胞を殺す(融合されない脾細胞は、それらは形質転換されないため数日後に死ぬ)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的ELISAアッセイを使用して、CRSPを結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより検出される。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製する代わりに、モノクローナル抗CRSP抗体は、組換えの組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をCRSPでスクリーニングしてそれによりCRSPを結合する免疫グロブリンライブラリーの構成員を単離することにより、同定かつ単離され得る。ファージディスプレイライブラリーを生じさせそしてスクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である(例えば、ファルマシア(Pharmacia)の組換えファージ抗体系(Recombinant Phage Antibody System)、カタログ番号27−9400−01;およびストラタジーン(Stratagene)のサーフザップ[SurfZAP](商標)ファージディスプレイキット(Phage
Display Kit)、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイライブラリーの発生およびスクリーニングでの使用にとりわけ敏感に反応する方法および試薬の例は、例えば、ラドナー(Ladner)ら米国特許第5,223,409号;カング(Kang)らPCT国際刊行物第WO92/18619号;ドワー(Dower)らPCT国際刊行物第WO91/17271号;ウィンター(Winter)らPCT国際特許刊行物第WO92/20791号;マークランド(Markland)らPCT国際刊行物第WO92/15679号;ブライトリンク(Breitling)らPCT国際刊行物WO93/01288;マキャファーティ(McCafferty)らPCT国際刊行物第WO92/01047号;ガラード(Garrard)らPCT国際刊行物第WO92/09690号;ラドナー(Ladner)らPCT国際刊行物第WO90/02809号;フーフス(Fuchs)ら(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;ヘイ(Hay)ら(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;ヒューズ(Huse)ら(1989)Science
246:1275−1281;グリフィス(Griffiths)ら(1993)EMBO J 12:725−734;ホーキンス(Hawkins)ら(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;クラークソン(Clarkson)ら(1991)Nature 352:624−628;グラム(Gram)ら(1992)PN
AS 89:3576−3580;ガラド(Garrad)ら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;ホーゲンボーム(Hoogenboom)ら(1991)Nuc.Acid Res.19:4133−4137;バルバス(Barbas)ら(1991)PNAS 88:7978−7982;およびマキャファーティ(McCafferty)らNature(1990)348:552−554に見出され得る。
加えて、標準的組換えDNA技術を使用して作成され得る、ヒトおよび非ヒト双方の部分を含んで成るキメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗CRSP抗体は本発明の範囲内にある。こうしたキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の組換えDNA技術により、例えば、ロビンソン(Robinson)ら国際出願番号PCT/US86/02269:アキラ(Akira)ら欧州特許出願184,187;タニグチ(Taniguchi,M.)、欧州特許出願171,496;モリソン(Morrison)ら欧州特許出願173,494;ノイバーガー(Neuberger)らPCT国際刊行物第WO86/01533号;キャビリー(Cabilly)ら米国特許第4,816,567号;キャビリー(Cabilly)ら欧州特許出願125,023;ベター(Better)ら(1988)Science 240:1041−1043;リウ(Liu)ら(1987)PNAS 84:3439−3443;リウ(Liu)ら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;サン(Sun)ら(1987)PNAS 84:214−218;ニシムラ(Nishimura)ら(1987)Canc.Res.47:999−1005;ウッド(Wood)ら(1985)Nature 314:446−449;ならびにショー(Shaw)ら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;モリソン(Morrison,S.L.)(1985)Science 229:1202−1207;オイ(Oi)ら(1986)BioTechniques 4:214;ウィンター(Winter)米国特許第5,225,539号;ジョーンズ(Jones)ら(1986)Nature 321:552−525;フェルヘイヤン(Verhoeyan)ら(1988)Science 239:1534;およびバイドラー(Beidler)ら(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記述される方法を使用して産生され得る。
抗CRSP抗体(例えばモノクローナル抗体)は、アフィニティークロマトグラフィーもしくは免疫沈降法のような標準的技術によりCRSPを単離するのに使用され得る。抗CRSP抗体は、細胞からの天然のCRSPおよび宿主細胞で発現される組換え的に産生されるCRSPの精製を助長し得る。さらに、抗CRSP抗体は、CRSPタンパク質の発現の存在量(abundance)およびパターンを評価するために、(例えば細胞ライセートもしくは細胞上清中の)CRSPタンパク質を検出するのに使用され得る。抗CRSP抗体は、例えば、例えば所定の治療計画の有効性を決定するための臨床的試験処置の一部として組織中のタンパク質レベルを監視するのに診断的に使用され得る。検出は抗体を検出可能な基質に結合する(coupling)(すなわち物理的に結合する(linking))ことにより助長され得る。検出可能な基質の例は、多様な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射活性物質を包含する。適する酵素の例は、ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼもしくはアセチルコリンエステラーゼを包含し;適する補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを包含し;適する蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドもしくはフィコエリトリンを包含し;発光物質の一例はルミノールを包含し;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを包含し、そして適する放射活性物質の例は125I、131I、35Sもしくは3Hを包含する。
III.組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の別の局面は、CRSP(もしくはその一部分)をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で使用されるところの「ベクター」という用語は、それが結合されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。1個の型のベクターが「プラスミド」であり、これは付加的DNA区分が連結され得る環状二本鎖DNAのループを指す。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでは付加的DNA区分がウイルスゲノム中に連結され得る。あるベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自律的複製が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノム中に組込まれ、そしてそれにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、あるベクターは、それらが操作可能に結合される遺伝子の発現を指図することが可能である。こうしたベクターは本明細書で「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技術において役に立つ発現ベクターはしばしばプラスミドの形態にある。本明細においては、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが最も普遍的に使用される形態のベクターであるため、交換可能に使用され得る。しかしながら、本発明は、同等の機能を供給する、ウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターのこうした他の形態を包含することを意図される。
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞での本発明の核酸の発現に適した形態で当該核酸を含んで成り、これは、組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列に有効に結合される、発現に使用されるべき宿主細胞を基礎として選択された1種もしくはそれ以上の調節配列を包含することを意味する。組換え発現ベクター内では、「操作可能に(operably)結合される」は、目的のヌクレオチド配列がそのヌクレオチド配列の発現を見込む様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳系で、もしくはベクターが宿主細胞に導入される場合は宿主細胞中で)調節配列(1種もしくは複数)に結合されることを意味することを意図される。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えばポリアデニル酸化シグナル)を包含することを意図される。こうした調節配列は、例えば、ゲデル(Goeddel);Gene Expression
Technology:Methods in Enzymology 185、アカデミック プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)に記述される。調節配列は、多くの型の宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的発現を指図するもの、および、ある宿主細胞中でのみヌクレオチド配列の発現を指図するもの(例えば組織特異的調節配列)を包含する。発現ベクターの設計は、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような因子に依存し得ることが当業者により真価を認められるであろう。本発明の発現ベクターは、本明細書に記述されるような核酸によりコードされる融合タンパク質もしくはペプチドを包含するタンパク質もしくはペプチド(例えば、CRSPタンパク質、突然変異体の形態のCRSP、融合タンパク質、など)をそれにより産生するために、宿主細胞中に導入され得る。
本発明の組換え発現ベクターは、原核生物もしくは真核生物の細胞でのCRSPの発現のため設計され得る。例えば、CRSPは、大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞もしくは哺乳動物細胞中で発現され得る。適する宿主細胞は、ゲデル(Goeddel)、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、アカデミック プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)においてさらに論考される。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用してインビトロで転写および翻訳され得る。
原核生物でのタンパク質の発現は、最もしばしば、融合もしくは非融合タンパク質のいずれかの発現を指図する構成もしくは誘導可能なプロモーターを含有するベクターを用いて大腸菌(E.coli)中で実施される。融合ベクターは、その中でコードされるタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。こうした融合ベクターは、典型的には、3つの目的にかなう。すなわち1)組換えタンパク質の発現を増大させること;2)組換えタンパク質の溶解性を増大させること;そして3)アフィニティー精製でリガンドとして作用することにより組換えタンパク質の精製で補助すること。しばしば、融合発現ベクターにおいては、タンパク質分解性の切断部位が融合部分および組換えタンパク質の接合部に導入されて融合タンパク質の精製後の融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。こうした酵素、およびそれらのコグネイト認識配列は、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼを包含する。典型的な融合発現ベクターは、標的組換えタンパク質にそれぞれグルタチオンS−トランスフェラーぜ(GST)、マルトースE結合タンパク質もしくはプロテインAを融合する、pGEX(ファルマシア バイオテック インク(Pharmacia Biotech Inc.);スミス(Smith,D.B.)とジョンソン(Johnson,K.S.)(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(ニュー イングランド バイオラブス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州ビバリー)およびpRIT5(ファルマシア(Pharmacia)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を包含する。
精製された融合タンパク質は、例として、CRSP活性のアッセイで、CRSPリガンド結合で(例えば、詳細に下述される直接アッセイもしくは競争的アッセイ)、CRSPタンパク質に特異的な抗体を生じさせるために利用され得る。好ましい一態様においては、本発明のレトロウイルス発現ベクターで発現されたCRSP融合物(fusion)は、照射されたレシピエントにその後移植される骨髄細胞を感染させるのに利用され得る。被験体レシピエントの病理がその後、十分な時間が過ぎた(例えば6週間)後に検査される。
適する誘導可能な非融合大腸菌(E.coli)発現ベクターの例は、pTrc(アマン(Amann)ら、(1988)Gene 69:301−315)およびpET 11d(シュトゥディエール(Studier)ら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、アカデミック プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)60−89)を包含する。pTrcベクターからの標的遺伝子の発現は、ハイブリッドのtrp−lac融合プロモーターからの宿主のRNAポリメラーゼ転写を頼る。pET 11dベクターからの標的遺伝子の発現は、共発現されるウイルスのRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介されるT7 gn10−lac融合プロモーターからの転写を頼る。このウイルスのポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子をもつ内在性λプロファージから宿主株BL21(DE3)もしくはHMS174(DE3)により供給される。
大腸菌(E.coli)での組換えタンパク質発現を最大にする一戦略は、その組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する損なわれた能力をもつ宿主細菌中でタンパク質を発現することである(ゴッテスマン(Gottesman,S.)、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology
185、アカデミック プレス(Academic Press)、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)119−128)。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌(E.coli)中で優先的に利用されるものであるように発現ベクター中に挿入されるべき核酸の核酸配列を変えることである(ワダ(Wada)ら、(1992)Nu
cleic Acids Res.20:2111−2118)。本発明の核酸配列のこうした変化は標準的DNA合成技術により実施され得る。
別の態様においては、CRSP発現ベクターは酵母の発現ベクターである。酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)での発現のためのベクターの例は、pYepSec1(バルダリ(Baldari)ら、(1987)Embo J.6:229−234)、pMFa(クルジャン(Kurjan)とヘルスコヴィッツ(Herskowitz)、(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(シュルツ(Schultz)ら、(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(インヴィトロジェン コーポレーション(Invitrogen Corporation)、カリフォルニア州サンディエゴ)、およびpicZ(インヴィトロジェン コープ(Invitrogen Corp.)、カリフォルニア州サンディエゴ)を包含する。
あるいは、CRSPは、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞で発現され得る。培養された昆虫細胞(例えばSf9細胞)中でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAc系統(スミス(Smith)ら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVL系統(ルクロウ(Lucklow)とサマーズ(Summers)(1989)Virology 170:31−39)を包含する。
なお別の態様においては、本発明の核酸は哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞で発現される。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(シード(Seed,B.)(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(カウフマン(Kaufman)ら(1987)EMBO J.6:187−195)を包含する。哺乳動物細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしば、ウイルスの調節要素により提供される。例えば、普遍的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびSV40由来である。原核生物および真核生物双方の細胞のための他の適する発現系については、サンブルック(Sambrook,J.)、フリッチュ(Fritsh,E.F.)とマニアティス(Maniatis,T.)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring harbor Laboratory)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989の第16および17章を参照。
別の態様においては、組換え哺乳動物発現ベクターは、優先的に特定の細胞型での核酸の発現を指図することが可能である(例えば、組織特異的調節要素が核酸を発現するのに使用される)。組織特異的調節要素は当該技術分野で既知である。適する組織特異的プロモーターの制限しない例は、アルブミンプロモーター(肝特異的;ピンカート(Pinkert)ら(1987)Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(カレーム(Calame)とイートン(Eaton)(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、とりわけT細胞レセプター(ウィノート(Winoto)とボルティモア(Baltimore)(1989)EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(バネリ(Banerji)ら(1983)Cell 33:729−740;クィーン(Queen)とボルティモア(Baltimore)(1983)Cell 33:741−748)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば神経細糸プロモーター;バーン(Byrne)とラドル(Ruddle)(1989)PNAS 86:5473−5477)、膵特異的プロモーター(エドルンド(Edlund)ら(1985)Science 230:912−916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば乳清プロモーター;米国特許第4,873,31
6号および欧州出願刊行物第264,166号)を包含する。発生的に調節されるプロモーター、例えばマウスhoxプロモーター(ケッセル(kessel)とグラス(Gruss)(1990)Science 249:374−379)およびαフェトプロテインプロモーター(カンペス(Campes)とティルフマン(Tilghman)(1989)Genes Dev.3:537−546)もまた包含される。
本発明は、さらに、発現ベクター中にアンチセンスの向きでクローニングされた本発明のDNA分子を含んで成る組換え発現ベクターを提供する。すなわち、DNA分子は、CRSPのmRNAに対しアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を見込む様式で調節配列に有効に結合される。多様な細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続的発現を指図する、アンチセンスの向きでクローニングされた核酸に有効に結合される調節配列が選ばれ得、例えば、アンチセンスRNAの構成的な組織特異的もしくは細胞型特異的発現を指図するウイルスのプロモーターおよび/もしくはエンハンサーまたは調節配列が選ばれ得る。アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミドもしくは弱毒化ウイルスの形態にあり得、それらの中でアンチセンス核酸が高効率調節領域の制御下に産生され、その活性はベクターが導入される細胞型により決定され得る。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の論考については、ヴァイントラウプ(Weintraub,H.)ら、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis、Reviews−
Trends in Genetics、Vol.1(1)1986を参照。
本発明の別の局面は本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は本明細書で交換可能に使用される。こうした用語は特定の被験体細胞のみならずしかしこうした細胞の子孫もしくは潜在的な子孫を指すことが理解される。ある改変(modification)が、突然変異もしくは環境の影響のいずれかのために、続く世代で起こりうるため、こうした子孫は、実際のところ、親細胞と同一でなくてもよいが、しかし本明細書で使用されるところの用語の範囲内になお包含される。
宿主細胞はいずれかの原核生物もしくは真核生物細胞であり得る。例えば、CRSPタンパク質は、大腸菌(E.coli)のような細菌細胞、昆虫細胞、酵母もしくは(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞のような)哺乳動物細胞中で発現され得る。他の適する宿主細胞は当業者に既知である。
ベクターDNAは、慣習的な形質転換もしくはトランスフェクション技術を介して原核生物もしくは真核生物細胞中に導入され得る。本明細書で使用されるところの「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクチンもしくは電気穿孔法を包含する、宿主細胞中に外来核酸(例えばDNA)を導入するための多様な当該技術で認識された(art−recognized)技術を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換もしくはトランスフェクションするのに適する方法は、サンブルック(Sambrook,J.)ら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring harbor Laboratory)、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989)および他の実験室マニュアルに見出され得る。
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのためには、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、細胞の小画分のみが外来DNAをそれらのゲノ
ム中に組込みうることが既知である。これらの組込み体(integrants)を同定かつ選択するために、選択可能なマーカー(例えば抗生物質に対する抵抗性)をコードする遺伝子が、一般に、目的の遺伝子と一緒に宿主細胞中に導入される。好ましい選択可能なマーカーは、G418、ヒグロマイシンおよびメトトレキセートのような薬物に対する抵抗性を与えるものを包含する。選択可能なマーカーをコードする核酸が、CRSPをコードするものと同一のベクター上で宿主細胞中に導入され得るか、もしくは、別個のベクター上で導入され得る。導入された核酸で安定にトランスフェクションされた細胞が薬物選択により同定され得る(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存することができる一方、他の細胞は死ぬ)。
培養物中の原核生物もしくは真核生物の宿主細胞のような本発明の宿主細胞がCRSPタンパク質を産生(すなわち発現)するのに使用され得る。従って、本発明は、さらに、本発明の宿主細胞を使用するCRSPタンパク質の産生方法を提供する。一態様において、当該方法は、CRSPタンパク質が産生されるに適する培地中で(CRSPをコードする組換え発現ベクターが導入されている)本発明の宿主細胞を培養することを含んで成る。別の態様においては、当該方法はCRSPを培地もしくは宿主細胞から単離することをさらに含んで成る。
本発明の宿主細胞はまた、非ヒトのトランスジェニック動物を生じさせるのにも使用され得る。例えば、一態様においては、本発明の宿主細胞は、CRSPをコードする配列が導入されている受精卵もしくは胚幹細胞である。こうした宿主細胞は、その後、外因性のCRSP配列がそれらのゲノム中に導入された非ヒトトランスジェニック動物、もしくは内因性のCRSP配列が変えられた相同的組換え動物を創製するのに使用され得る。こうした動物は、CRSPの機能および/もしくは活性を研究する、ならびにCRSP活性のモジュレーター(moculator)を同定および/もしくは評価するのに有用である。本明細書で使用されるところの「トランスジェニック動物」は、非ヒトの動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはラットもしくはマウスのようなげっ歯類であり、ここでその動物の細胞の1個もしくはそれ以上がトランスジーンを包含する。トランスジェニック動物の他の例は、非ヒトの霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類の動物などを包含する。トランスジーンは、それからトランスジェニック動物が発生する細胞のゲノム中に組込まれかつ成熟動物のゲノム中に留まってそれによりトランスジェニック動物の1種もしくはそれ以上の細胞型もしくは組織中でのコードされた遺伝子産物の発現を指図する外因性DNAである。本明細書で使用されるところの「相同的組換え動物」は、非ヒトの動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスであり、ここでは内因性のCRSP遺伝子が内因性遺伝子と動物の細胞、例えば動物の発生前の動物の胚細胞中に導入された外因性DNA分子との間の相同的組替えにより変えられている。
本発明のトランスジェニック動物は、例えば微小注入法、レトロウイルス感染により受精卵の雄性前核にCRSPをコードする核酸を導入すること、そして卵細胞を偽妊娠雌性里親動物中で発生させることにより創製され得る。配列番号1、配列番号4、配列番号7もしくは配列番号10のヒトCRSPのcDNA配列が、トランスジーンとして非ヒトの動物のゲノム中に導入され得る。あるいは、マウスCRSP遺伝子のようなヒトCRSP遺伝子の非ヒトの相同物が、ヒトCRSPのcDNAに対するハイブリダイゼーションを基礎として(上の小区分Iにさらに記述される)単離され得、そしてトランスジーンとして使用され得る。イントロン配列およびポリアデニル酸化シグナルもまた、トランスジーンの発現効率を増大させるためにトランスジーンに包含され得る。組織特異的調節配列(1種もしくは複数)が、CRSPタンパク質の発現を特定の細胞に向かわせるようにCRSPトランスジーンに操作可能に結合され得る。胚の操作および微小注入法を介する、トランスジェニック動物、とりわけマウスのような動物を生じさせる方法は当該技術分野で慣習的になっており、そして、例えば、双方ともレダー(Leder)らによる米国特許
第4,736,866および4,870,009号、ワグナー(Wagner)らによる米国特許第4,873,191号、ならびにホーガン(Hogan,B.)、Manipulating the Mouse Embryo、(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス(Cold Spring harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1986)に記述される。類似の方法が他のトランスジェニック動物の産生に使用される。トランスジェニックの創始体(founder)動物が、そのゲノム中のCRSPトランスジーンの存在、および/またはその動物の組織もしくは細胞中でのCRSPのmRNAの発現を基礎として同定され得る。トランスジェニックの創始体動物がその後、トランスジーンを運搬する付加的動物を繁殖させるのに使用され得る。さらに、CRSPをコードするトランスジーンを運搬するトランスジェニック動物は、他のトランスジーンを運搬する他のトランスジェニック動物にさらに繁殖され得る。
相同的組換え動物を創製するために、それによりCRSP遺伝子を変える、例えば機能的に妨害するように欠失、付加もしくは置換が導入されているCRSP遺伝子の最低一部分を含有するベクターが調製される。CRSP遺伝子はヒト遺伝子(例えば、配列番号3、配列番号6、配列番号9もしくは配列番号12のcDNA)であり得るが、しかし、より好ましくは、ヒトCRSP遺伝子の非ヒトの相同物である。例えば、配列番号16のマウスCRSP遺伝子が、マウスゲノム中の内因性CRSP遺伝子を変えるのに適する相同的組換えベクターを構築するのに使用され得る。好ましい一態様においては、当該ベクターは、相同的組換えに際して内因性のCRSP遺伝子が機能的に妨害される(すなわちもはや機能的タンパク質をコードしない;「ノックアウト」ベクターともまた称される)ように設計される。あるいは、当該ベクターは、相同的組換えに際して、内因性のCRSP遺伝子が突然変異されるかもしくは別の方法で変えられるがしかしなお機能的タンパク質をコードする(例えば、上流の調節領域が、それにより内因性のCRSPタンパク質の発現を変えるように変えられ得る)ように設計され得る。相同的組換えベクターにおいては、CRSP遺伝子の変えられた部分が、ベクターにより運搬される外因性のCRSP遺伝子と胚幹細胞中の内因性のCRSP遺伝子との間で相同的組換えが起こることを見込むように、CRSP遺伝子の付加的核酸によりその5’および3’端で隣接される。付加的な隣接するCRSP核酸は、内因性遺伝子との成功する相同的組換えに十分な長さのものである。典型的には、数キロ塩基対の隣接するDNA(5’および3’双方の端で)がベクターに包含される(相同的組換えベクターの記述については、例えば、トーマス(Thomas,K.R.)とカペッキ(Capecchi,M.R.)(1987)Cell 51:503を参照)。当該ベクターは、胚幹細胞系に(例えば電気穿孔法により)導入され、そして、導入されたCRSP遺伝子が内因性のCRSP遺伝子で相同的に組換えられた細胞が選択される(例えば、リ(Li,E.)ら(1992)Cell 69:915を参照)。選択された細胞が、その後、動物(例えばマウス)の胚盤胞に注入されて集合胚キメラを形成する(例えば、Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach、ロバートソン(E.J.Robertson)編、(IRL、オックスフォード、1987)pp.113−152中のブラッドレイ(Bradley,A.)を参照)。キメラ胚がその後、適する偽妊娠雌性里親動物に体内埋植され得、そして胚が分娩日にもたらされ得る。それらの生殖細胞中に相同的に組換えられたDNAをもつ子孫が、動物を繁殖させるのに使用され得、その中で、動物の全細胞がトランスジーンの生殖細胞系列の伝達により相同的に組換えられたDNAを含有する。相同的組換えベクターおよび相同的組換え動物の構築方法は、ブラッドレイ(Bradley,A.)(1991)Current Opinion in Biotechnology 2:823−829およびPCT国際刊行物番号:ルモレ(Le Mouellec)らによるWO90/11354;スマイジーズ(Smithies)らによるWO91/01140;ジルストラ(Zijlstra)らによるWO92/0968;およびバーンズ(Berns)らによるWO93
/04169にさらに記述される。
別の態様においては、トランスジェニックの非ヒトの動物が生じられ得、これはトランスジーンの調節された発現を見込む選択された系を含有する。こうした系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxP組換え酵素系である。cre/loxP組換え酵素系の記述については、例えば、ラクソ(Lakso)ら(1992)PNAS 89:6232−6236を参照。組換え酵素系の別の例は、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLP組換え酵素系である(オゴーマン(O’Gorman)ら(1991)Science 251:1351−1355)。cre/loxP組換え酵素系がトランスジーンの発現を調節するのに使用される場合は、Cre組換え酵素および選択されたタンパク質の双方をコードするトランスジーンを含有する動物が必要とされる。こうした動物は、例えば、選択されたタンパク質をコードするトランスジーンを含有する一方および組換え酵素をコードするトランスジーンを含有する他方の2匹のトランスジェニック動物を交配することによる、「二重」トランスジェニック動物の構築により提供され得る。
本明細書に記述される非ヒトのトランスジェニック動物のクローンもまた、ヴィルムート(Wilmut,I.)ら(1997)Nature 385:810−813に記述される方法に従って生じられ得る。簡潔には、トランスジェニック動物からの細胞、例えば体細胞が単離され得、そして、成長周期を出かつG0期に入るよう誘導され得る。休止細胞がその後、例えば電気的パルスの使用により、その休止細胞が単離される同一の種の動物からの除核された卵細胞に融合され得る。再構築された卵細胞がその後、それが桑実胚もしくは未分化胚芽細胞に発生するように培養され、そしてその後、偽妊娠雌性里親動物に移される。この雌性里親動物から生まれた子孫が、細胞、例えば体細胞が単離される動物のあるクローンとなることができる。
IV.製薬学的組成物
本発明のCRSP核酸分子、CRSPタンパク質および抗CRSP抗体(本明細書で「有効成分」ともまた称される)は、投与に適する製薬学的組成物に組み込まれ得る。こうした組成物は、典型的には、核酸分子、タンパク質もしくは抗体、および製薬学的に許容できる担体を含んで成る。本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という言語は、製薬学的投与と適合性の、いずれかのおよび全部の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含することを意図される。製薬学的に活性の物質のためのこうした媒体および作用物質の使用は当該技術分野で公知である。いずれかの慣習的媒体もしくは作用物質が当該有効成分と不適合性である範囲を除いて、当該組成物におけるその使用が企図される。補足の有効成分もまた当該組成物に組み込まれ得る。
本発明の製薬学的組成物はその意図される投与経路に適合性であるよう処方される。投与経路の例は、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与を包含する。非経口、皮内もしくは皮下適用に使用される溶液もしくは懸濁液は、以下の成分、すなわち注射用水、生理的食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくは他の合成溶媒のような滅菌希釈剤;ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩のような緩衝剤および塩化ナトリウムもしくはブドウ糖のような張性(tonicity)の調節のための作用物質を包含し得る。pHが、塩酸もしくは水酸化ナトリウムのような酸もしくは塩基で調節され得る。非経口製剤は、ガラスもしくはプラスチックから作成されるアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量のバイアル中に封入され得る。
注入可能な使用に適する製薬学的組成物は、滅菌の注入可能な溶液もしくは分散液の即座の調製のための滅菌の水性溶液(水溶性の場合)もしくは分散液および滅菌粉末を包含する。静脈内投与については、適する担体は、生理学的生理的食塩水、静菌性水、クレモフォア[Cremophore]EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)もしくはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を包含する。全部の場合で、組成物は滅菌でなくてはならず、また、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなくてはならず、また、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対し保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの適する混合物を含有する溶媒もしくは分散媒であり得る。適正な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒子径の維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。微生物の作用の予防は、多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に包含することが好ましいことができる。注入可能な組成物の持続性の吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に包含することによりもたらされ得る。
滅菌の注入可能な溶液は、必要とされる量の有効成分(例えば、CRSPタンパク質もしくは抗CRSP抗体)を、必要とされるように、上に列挙された材料の1種もしくは組み合わせを含む適切な溶媒中に組み込むこと、次いで濾過滅菌により製造され得る。一般に、分散液は、有効成分を、基本的分散媒および上に列挙されたものからの必要とされる他の材料を含有する滅菌ベヒクル中に組み込むことにより製造される。滅菌の注入可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合は、好ましい製造方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これは、前に滅菌濾過されたその溶液からのいずれかの付加的な所望の材料を含む有効成分の粉末を生じる。
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤もしくは可食担体を包含する。それらはゼラチンカプセル中に封入され得るか、もしくは錠剤に圧縮され得る。経口の治療的投与の目的上、有効成分は賦形剤とともに組み込まれ得、そして錠剤、トローチ剤もしくはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物は口内洗浄剤としての使用のために液体担体を使用してもまた製造され得、ここでは液体担体中の化合物が経口で適用され、そしてシューっと音をたてられ(swished)かつ吐き出されもしくは飲み込まれる。製薬学的に適合性の結合剤および/もしくは補助物質が組成物の一部として包含され得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の材料もしくは類似の性質の化合物のいずれかを含有し得る。すなわち、微晶質セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンのような結合剤;デンプンもしくは乳糖のような賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはトウモロコシデンプンのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテス(Sterotes)のような滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素のような滑り剤(glidant);ショ糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはハッカ、サリチル酸メチルもしくはオレンジ調味料のような調味料。
吸入による投与のためには、当該組成物は、適する噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含有する加圧容器もしくは分注器、または噴霧器からのエアゾルスプレーの形態で送達される。
全身性投与はまた経粘膜もしくは経皮の手段にもより得る。経粘膜もしくは経皮投与のためには、浸透されるべき障壁に適切な浸透剤が製剤中で使用される。こうした浸透剤は
一般に当該技術分野で既知であり、そして、例えば、経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を包含する。経粘膜投与は鼻スプレーもしくは坐薬の使用により成し遂げられ得る。経皮投与のためには、有効成分は、当該技術分野で一般に既知のとおり、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)、ゲルもしくはクリームに処方される。
化合物は、直腸送達のための坐薬(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドのような慣習的坐薬基材を含む)もしくは保持浣腸(retention enemas)の形態でもまた製造され得る。
一態様においては、有効成分は、埋込物および微小被包化送達系を包含する制御放出製剤のように、化合物を身体からの迅速な排除に対し保護することができる担体とともに製造される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生物分解性の生物適合性ポリマーが使用され得る。こうした製剤の製造方法は当業者に明らかであることができる。材料はまた、アルザ
コーポレーション(Alza Corporation)およびノヴァ ファーマシューティカルズ インク(Nova Pharmaceuticals,Inc,)から商業的に得られることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞に標的を向けられたリポソームを包含する)もまた製薬学的に許容できる担体として使用され得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記述されるような、当業者に既知の方法に従って製造され得る。
経口もしくは非経口組成物を、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために投薬単位形態で処方することがとりわけ有利である。本明細書で使用されるところの投薬単位形態は、治療されるべき被験体のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は必要とされる製薬学的担体と共同して所望の治療効果を生じさせるよう算出された、予め決められた量の有効成分を含有する。本発明の投薬単位形態についての明細は、有効成分の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個人の治療のためにこうした有効成分の配合(compounding)の当該技術分野に固有の制限により指図され、また、これらに直接依存する。
こうした化合物の毒性および治療の有効性は、例えばLD50(集団の50%に対し致死的な用量)およびED50(集団の50%で治療上有効な用量)を決定するための細胞培養物もしくは実験動物での標準的製薬学処置により決定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、そしてそれは比LD50/ED50として表わされ得る。大きな治療師数を表わす化合物が好ましい。毒性の副作用を表わす化合物が使用されうる一方、注意が、感染していない細胞に対する潜在的損傷を最小限にしそしてそれにより副作用を低減するために、こうした化合物を冒されている組織の部位に標的を向ける送達系を設計するように、払われるべきである。
細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られるデータが、ヒトでの使用のための投薬量の範囲を系統立てて計画する(formulate)ことにおいて使用され得る。こうした化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどもしくは全くないED50を包含する循環濃度の範囲内に存する。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動してよい。本発明の方法で使用されるいかなる化合物についても、治療上有効な用量が細胞培養物アッセイから最初に推定され得る。ある用量が、細胞培養物で決定されるようなIC50(すなわち、症状の最大の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を包含する循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで系統立てて計画されうる。こうした情報がヒトでの有用な用量をより正確に決定するのに使用され得る。血漿中濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定されうる。
本発明の核酸分子はベクターに挿入され得、そして遺伝子治療ベクターとして使用され得る。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注入、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照)もしくは定位注入(例えば、チェン(Chen)ら(1994)PNAS
91:3054−3057を参照)により被験体に送達され得る。遺伝子治療ベクターの製薬学的製剤は、許容できる希釈剤中に遺伝子治療ベクターを包含し得るか、もしくは、その中に遺伝子送達ベヒクルが埋込まれる遅延放出マトリックスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターが組換え細胞から無傷で生じられ得る、例えばレトロウイルスベクターの場合は、製薬学的製剤は遺伝子送達系を産生する1個もしくはそれ以上の細胞を包含し得る。
当該製薬学的組成物は、投与のための説明書と一緒になって容器、包み(pack)もしくは分注器に包含され得る。
V.本発明の使用及び方法
本発明の分子(例えば本明細書に記載する核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体及び抗体)を以下の方法の1つ又はそれより多くで用いることができる:a)スクリーニングアッセイ;b)予報医学(predictive medicine)(例えば診断アッセイ、予後アッセイ、臨床試験の監視及び薬理遺伝学);ならびにc)処置の方法(例えば治療的及び予防的)。本明細書に記載する通り、本発明のCRSPタンパク質は以下の活性:細胞内カルシウム、ホスファチジルイノシトールもしくは他の分子の増加の1つ又はそれより多くを有しており、例えば特定のタンパク質のリン酸化、遺伝子転写のモジュレーション(または調節)及び本明細書に示す他の生物学的活性のいずれかを生ずることができる。
好ましい実施態様の場合、CRSP活性は以下の活性:(i)第2の分子、(例えばタンパク質、例えばCRSP(例えばCRSP−1)レセプター、CRSPレセプターの可溶性形態、シグナリングタンパク質のwnt群のメンバーに関するレセプター又は非−CRSPシグナリング分子)とのCRSPタンパク質の相互作用及び/又はそれらへの結合;(ii)膜−結合CRSPレセプターを介する分子内タンパク質とのCRSPタンパク質の相互作用;(iii)可溶性CRSPタンパク質と第2の可溶性CRSP結合パートナー(例えば非−CRSPタンパク質分子又は第2のCRSPタンパク質分子)の間の錯体形成;(iv)他の細胞外タンパク質との相互作用(例えば細胞外マトリックス成分へのwnt−依存性細胞接着の調節);(v)望ましくない分子への結合及びその除去(例えば解毒活性又は防御機能);ならびに/あるいは(vi)酵素活性の少なくとも1つ又はそれより多くであり、かくして例えば(1)試験管内もしくは生体内における細胞シグナルの導入のモジュレーション(例えば分泌タンパク質のwnt群のメンバーの活性の拮抗作用あるいはwnt−依存性シグナル伝達の抑制);(2)細胞間の伝達(communication)の調節(例えばwnt−依存性細胞−細胞相互作用の調節);(3)その発現がCRSP(例えばCRSP−1)のレセプターへの結合によりモジュレーションされる遺伝子の発現の調節;(4)試験管内又は生体内における発育もしくは分化に含まれる細胞中の遺伝子転写の調節(例えば細胞分化の誘導);(5)少なくとも1つの遺伝子が分化−特異的タンパク質をコードしている場合の発育もしくは分化に含まれる細胞中の遺伝子転写の調節;(6)少なくとも1つの遺伝子が第2の分泌タンパク質をコードしている場合の発育もしくは分化に含まれる細胞中の遺伝子転写の調節;(7)少なくとも1つの遺伝子がシグナル伝達分子をコードしている場合の発育もしくは分化に含まれる細胞中の遺伝子転写の調節;(8)試験管内もしくは生体内における細胞増殖の調節(例えば細胞増殖の誘導又は腫瘍発生の抑制(例えば神経膠芽腫形成の抑制)の場合のような増殖の阻害);(9)成人及び胚の両方の脊椎動物における分化組織の規定された空間配置の形成及び保持(例えば脊椎動物の発育の間の頭形成の誘導あるいは造血先祖細胞(h
ematopoietic progenitor cells)の保持);(10)細胞死のモジュレーション、例えば細胞生存の刺激;(11)細胞移動の調節;ならびに/あるいは(12)免疫モジュレーションにおいて用いることができる。
従って本発明の1つの実施態様は、前記の活性(すなわち前節における活性(i)〜(vi)及び(1)〜(12))のいずれかが示されている疾患及び/又は状態の診断、予後及び/又は処置のために本発明の分子(例えばCRSPタンパク質、CRSP核酸又はCRSPモジュレーター)が用いられる使用法(例えば診断アッセイ、予後アッセイ又は処置の予防的/治療的方法)を含む。別の実施態様の場合、本発明は例えば前記の活性のいずれかにより病理学的に乱されている患者、好ましくはヒトの患者の診断、予後及び/又は処置のために本発明の分子(例えばCRSPタンパク質、CRSP核酸又はCRSPモジュレーター)が用いられる使用法(例えば診断アッセイ、予後アッセイ又は処置の予防的/治療的方法)を含む。好ましい実施態様の場合、使用法(例えば診断アッセイ、予後アッセイ又は処置の予防的/治療的方法)は、診断、予後及び/又は治療的処置のために本発明の分子(例えばCRSPタンパク質、CRSP核酸又はCRSPモジュレーター)を患者、好ましくはヒトの患者に投与することを含む。別の実施態様の場合、使用法(例えば診断アッセイ、予後アッセイ又は処置の予防的/治療的方法)は、本発明の分子(例えばCRSPタンパク質、CRSP核酸又はCRSPモジュレーター)をヒトの患者に投与することを含む。
本発明の他の実施態様は、例えば下記にさらに記載する通り、CRSPタンパク質を発現させるため(例えば遺伝子療法用途において宿主細胞中で組み換え発現ベクターを介して)、CRSP mRNA(例えば生物試料中の)又はCRSP遺伝子における遺伝子改変の検出のためならびにCRSP活性をモジュレーションするための本発明の単離された核酸分子の使用に関している。さらにCRSP活性をモジュレーションする薬物又は化合物をスクリーニングするためならびに不十分もしくは過剰なCRSPタンパク質の生産あるいはCRSP野生型タンパク質と比較して活性が低下しているか又は異常であるCRSPタンパク質形態の生産を特徴とする障害(例えば発育障害もしくは増殖性疾患、例えばガンならびに異常な細胞分化及び/又は生存、異常な細胞外構造又は防御機構における異常を特徴とする疾患、状態もしくは障害)の処置のためにCRSPタンパク質を用いることができる。さらに、CRSPタンパク質の検出及び単離のため、CRSPタンパク質の生物利用性の調節のためならびにCRSP活性のモジュレーションのために本発明の抗−CRSP抗体を用いることができる。CRSP(例えばCRSP−1)などのタンパク質の活性に適用される「異常な活性」という用語は、野生型もしくは本来のタンパク質の活性と異なるかあるいは健康な被験者におけるタンパク質の活性と異なる活性を言う。タンパク質の活性は、その本来の対応するタンパク質の活性よりそれが強いために異常となり得る。別の場合、活性はそれがその本来の対応するタンパク質の活性に対してそれより弱いか又は不在である故に異常となり得る。異常な活性は活性における変化でもあり得る。例えば異常なタンパク質はその本来の対応するタンパク質に対して異なるタンパク質と相互作用し得る。細胞はCRSPをコードする遺伝子の過剰発現又は不足発現(underexpression)の故に異常なCRSP(例えばCRSP−1)活性を有し得る。
A.スクリーニングアッセイ:
本発明はモジュレーター、すなわちCRSPタンパク質に結合するかあるいは例えばCRSP発現又はCRSP活性に刺激もしくは阻害効果を有する候補もしくは試験化合物又は薬剤(例えばペプチド、ペプチド疑似物(peptidomimetics)、小分子又は他の薬物)を同定するための方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)を提供する。モジュレーターには例えばCRSPアゴニスト及び/又はCRSPアンタゴニストが含まれ得る。本明細書で用いられる場合、「アゴニスト」という用語はCRSP(例えばCRSP−1)生物活性を模するか又は上方調節する(upreg
ulates)(例えば増強もしくは補足する)薬剤を言うものとする。CRSPアゴニストは、例えばCRSP−1レセプターとの相互作用によるCRSPレセプターからのシグナルの伝達などのCRSPタンパク質の生物活性を模する化合物であることができる。CRSPアゴニストはCRSP遺伝子の発現を上方調節する化合物であることもできる。CRSPアゴニストは、CRSPレセプターの下流に位置するタンパク質の発現又は活性をモジュレーションし、それによりCRSPレセプターへのCRSPの結合の効果を模するか又は強化する化合物であることもできる。
本明細書で用いられる場合、「アンタゴニスト」はCRSP(例えばCRSP−1)生物活性を阻害するか減少させるか又は抑制する薬剤を言うものとする。アンタゴニストはCRSPタンパク質からのシグナリングを減少させる化合物、例えばCRSP−1又はCRSP−1レセプターに結合することができる化合物であることができる。好ましいCRSPアンタゴニストはCRSPタンパク質と他の分子、例えばCRSPレセプターの間の相互作用を阻害する。別の場合、CRSPアンタゴニストはCRSP遺伝子の発現を下方調節する(downregulates)化合物であることができる。CRSPアンタゴニストはCRSPレセプターの下流に位置するタンパク質の発現もしくは活性をモジュレーションし、それによりCRSPレセプターへのCRSPの結合の効果と拮抗する化合物であることもできる。
1つの実施態様において、本発明はCRSPタンパク質もしくはポリペプチドもしくはその生物学的に活性な一部に結合するか又はその活性をモジュレーションする候補もしくは試験化合物のスクリーニングのためのアッセイを提供する。別の実施態様において、本発明はCRSPレセプターに結合するか又はその活性をモジュレーションする候補もしくは試験化合物のスクリーニングのためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は:生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;デコンボリューションが必要な合成ライブラリー法;「一ビーズ一化合物」ライブラリー法(one−bead one−compound library method);ならびにアフィニフィクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法を含む当該技術分野において既知の組合わせライブラリー法における多数の方法のいずれを用いても得ることができる。生物学的ライブラリー法はペプチドライブラリに限られるが、他の4つの方法はペプチド、非−ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに適用可能である(Lam,K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
分子ライブラリーの合成のための方法の例は文献中で、例えば:De Witt et
al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sce.USA 91:11422;Zuckermann et al.(1994),J.Med.Chem.37:2678;Cho et al.(1993)Science 261:1303;Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;及びGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233に見いだすことができる。
化合物のライブラリーは溶液中で(例えばHoughten(1992)Biotechnoques 13:412−421)あるいはビーズ上で(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ上で(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、バクテリア上で(Ladner USP 5,223,409)、胞子上で(Ladner USP ’409)、プラスミド上で(Cull et
al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865
−1869)又はファージ上で(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390);(Devlin(1990)Science 249:404−406);(Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382);(Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310);(Ladner 同上)与えることができる。
1つの実施態様の場合、アッセイは細胞に基づくアッセイであり、そのアッセイにおいては細胞表面上でCRSPレセプターを発現する細胞を試験化合物と接触させ、CRSPレセプターに結合する試験化合物の能力を決定する。細胞は例えば哺乳類起源のものあるいは酵母細胞であることができる。CRSPレセプターに結合する試験化合物の能力の決定は、例えば複合体中における標識化合物の検出によりCRSPレセプターへの試験化合物の結合を決定することができるように試験化合物を放射性同位体もしくは酵素標識と結合させることによって行うことができる。例えば試験化合物を直接的もしくは間接的に125I、35S、14C又は3Hで標識し、放射線放射の直接カウンティング又はシンチレーションカウンティングにより放射性同位体を検出することができる。別の場合、試験化合物を例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はルシフェラーゼを用いて酵素的に標識し、適した基質の産物への転換の決定により酵素標識を検出することができる。
相互作用物質のいずれも標識することなくCRSPレセプターと相互作用する試験化合物の能力を決定することも本発明の範囲内である。例えば試験化合物又はレセプターのいずれも標識せずにCRSPレセプターとの試験化合物の相互作用を検出するためにマイクロフィシオメーター(microphysiometer)を用いることができる。McConnell,H.M.et al.(1992)Science 257:1906−1912。本明細書で用いられる場合、「マイクロフィシオメーター」(例えばCytosensorTM)は、光−アドレス可能な電位差計型センサー(LAPS)を用いて細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化をリガンドとレセプターの間の相互作用の指標として用いることができる。
好ましい実施態様においてアッセイは、細胞表面上でCRSPレセプターを発現する細胞をCRSPタンパク質又は生物学的に活性なその一部と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、CRSPレセプターと相互作用する試験化合物の能力を決定することを含み、ここでCRSPレセプターと相互作用する試験化合物の能力の決定は、CRSP又は生物学的に活性なその一部がレセプターに結合する能力と比較して優先的にCRSPレセプターに結合する試験化合物の能力を決定することを含む。
別の実施態様においてアッセイは、CRSP標的分子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、CRSP標的分子の活性をモジュレーションする(例えば刺激するか又は阻害する)試験化合物の能力を決定することを含む細胞に基づくアッセイである。CRSP標的分子の活性をモジレーションする試験化合物の能力の決定は、例えばCRSP標的分子に結合するか又はそれと相互作用するCRSPタンパク質の能力の決定により行うことができる。
CRSP標的分子に結合するか又はそれと相互作用するCRSPタンパク質の能力の決定は、直接結合の決定に関して上記で記載した方法の1つにより行うことができる。好ましい実施態様において、CRSP標的分子に結合するか又はそれと相互作用するCRSPタンパク質の能力の決定は、標的分子の活性の決定により行うことができる。例えば標的の細胞性第2メッセンジャー(すなわち細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3
など)の誘導の検出、適した基質への標的の触媒的/酵素的活性の検出、リポーター遺伝子(検出可能なマーカー、例えばルシフェラーゼをコードする核酸に操作可能的に結合しているCRSP−応答性調節要素を含む)の誘導の検出あるいは細胞応答、例えば発育、分化又は増殖の速度の検出により標的分子の活性を決定することができる。
さらに別の実施態様において本発明のアッセイは、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部に結合する試験化合物の能力を決定する無細胞アッセイである。CRSPタンパク質への試験化合物の結合は上記の通りに直接的もしくは間接的に決定することができる。好ましい実施態様の場合、アッセイは、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部をCRSPに結合する既知の化合物と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を決定することを含み、CRSPタンパク質と相互作用する試験化合物の能力の決定は、既知の化合物と比較してCRSPもしくは生物学的に活性なその一部に優先的に結合する試験化合物の能力を決定することを含む。
他の実施態様の場合、アッセイは、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質もしくは生物学的な活性なその一部の活性をモジュレーション(例えば刺激もしくは阻害)する試験化合物の能力を決定する無細胞アッセイである。CRSPタンパク質の活性をモジレーションする試験化合物の能力の決定は、例えば直接結合の決定に関して上記で記載した方法の1つによりCRSP標的分子に結合するCRSPタンパク質の能力を決定することにより行うことができる。CRSP標的分子に結合するCRSPタンパク質の能力の決定は、実時間生物分子相互作用分析(Biomolocular Interaction Analysis)(BIA)などの方法を用いても行うことができる。Sjolander,S.and Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345及びSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705。本明細書で用いられる場合、「BIA」は相互作用物質(例えばBIAcoreTM)のいずれも標識せずに実時間で生物特異的相互作用を研究するための方法である。光学現象表面プラスモン共鳴(SPR)における変化を生物分子の間の実時間反応の指標として用いることができる。
別の実施態様の場合、CRSPタンパク質の活性をモジュレーションする試験化合物の能力の決定を、CRSPタンパク質がCRSP標的分子の活性をさらにモジュレーションする能力の決定により行うことができる。例えば前に記載した通り、適した基質への標的分子の触媒的/酵素的活性を決定することができる。
さらに別の実施態様の場合、無細胞アッセイは、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部をCRSPタンパク質に結合する既知の化合物と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質と相互作用する試験化合物の能力を決定することを含み、CRSPタンパク質と相互作用する試験化合物の能力の決定は優先的にCRSP標的分子に結合するかもしくはその活性をモジュレーションするCRSPタンパク質の能力を決定することを含む。
化合物及び天然抽出物のライブラリーを調べる多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、与えられた時間内に調査される化合物の数を最大にするために高処理量アッセイが望ましい。精製もしくは半−精製タンパク質を用いて誘導することができるもののような無細胞系で行われるアッセイは、試験化合物により媒介される分子標的における改変の迅速な出現及び比較的容易な検出を可能にするようにそれを作ることができる点で、多くの場合に「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに試験管内の系においては試験化
合物の細胞毒性及び/又は生物利用性の影響を一般に無視することができ、その代わりにアッセイは上流もしくは下流要素との結合親和性の改変に現れ得る分子標的への薬物の影響に主に集中している。従って本発明の代表的スクリーニングアッセイの場合、問題の化合物をCRSP(例えばCRSP−1)タンパク質もしくはCRSP(例えばCRSP−1)結合パートナー、例えばレセプターと接触させる。レセプターは可溶性であるか又はレセプターは細胞表面上に存在していることができる。化合物とCRSPタンパク質もしくはCRSP結合パートナーの混合物に次いでそれぞれCRSP結合パートナーもしくはCRSPタンパク質を含有する組成物を加える。CRSPタンパク質とCRSP結合パートナーの複合体の検出及び定量は、CRSPと結合パートナーの間の複合体形成の阻害(もしくは増強)における化合物の効力の決定のための手段となる。化合物の効力は種々の濃度の試験化合物を用いて得るデータから用量応答曲線を作成することにより評価することができる。さらに比較のためのベースラインを与えるために標準アッセイを行うこともできる。標準アッセイでは、単離されて精製されたCRSPポリペプチド又は結合パートナーをCRSP結合パートナー又はCRSPポリペプチドを含有する組成物に加え、複合体の生成を試験化合物の不在下で定量する。
本発明の無細胞アッセイを、可溶性及び/又は膜−結合形態の単離タンパク質(例えばCRSPタンパク質又は生物学的に活性なその一部あるいはCRSP標的分子)の両方の使用に従わせることができる。膜−結合形態の単離タンパク質(例えばCRSP標的分子もしくはレセプター)が用いられる無細胞アッセイの場合、膜−結合形態の単離タンパク質が溶液中に保持されるように可溶化剤を用いるのが望ましいことがあり得る。そのような可溶化剤の例には非−イオン性洗剤、例えばn−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、TritonRX−100、TritonRX−114、ThesitR、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)又はN−ドデシル=N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネートが含まれる。
上記の本発明のアッセイ法の1つより多い実施態様において、CRSP又はその標的分子のいずれかを固定化し、タンパク質の1つもしくは両方の非複合化形態からの複合化形態の分離を容易にし、アッセイの自動化に適応させるのが望ましいことがあり得る。CRSPタンパク質への試験化合物の結合又は候補化合物の存在下及び不在下における標的分子とのCRSPタンパク質の相互作用は、反応物を含有するために適したいずれの容器中でも行うことができる。そのような容器の例にはマイクロタイタープレート(microtitre plates)、試験管及び微量遠心管が含まれる。1つの実施態様の場合、タンパク質の1つもしくは両方がマトリックスに結合することを可能にするドメインが加わっている融合タンパク質を与えることができる。例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/CRSP融合タンパク質又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質をグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,MO)又はグルタチオン誘導マイクロタイタープレート上に吸着させ、それを次いで試験化合物あるいは試験化合物と非−吸着標的タンパク質もしくはCRSPタンパク質と合わせ、混合物を複合体生成に誘導性の条件下で(例えば塩及びpHに関する生理的条件で)インキュベーションすることができる。インキュベーションに続き、ビーズ又はマイクロタイタープレートウェルを洗浄して非結合成分、ビーズの場合は固定化マトリックスを除去し、例えば上記の通りに直接的もしくは間接的に複合体を決定する。別の場合、複合体をマトリックスから分離させ、CRSP結合又は活性のレベルを標準的方法を用いて決定することができる。
本発明のスクリーニングアッセイにおいてマトリックス上にタンパク質を固定化するための他の方法を用いることもできる。例えばCRSPタンパク質又はCRSP標的分子のいずれかをビオチンとストレプタビジンの複合を用いて固定化することができる。当該技術分野において周知の方法(例えばビオチニル化キット、Pierce Chemicals,Rockford,IL)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)からビオチニル化CRSPタンパク質もしくは標的分子を調製し、ストレプタビジン−コーテッド96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルにおいて固定化することができる。別の場合CRSPタンパク質もしくは標的分子と反応性であるがCRSPタンパク質のその標的分子への結合を妨げない抗体をプレートのウェルに誘導化し、非結合標的もしくはCRSPタンパク質を抗体複合によりウェル中に捕獲することができる。GST−固定化複合体に関して上記で記載した方法の他に、そのような複合体の検出のための方法には、CRSPタンパク質もしくは標的分子と反応性の抗体を用いる複合体の免疫検出ならびにCRSPタンパク質もしくは標的分子に関連する酵素活性の検出に頼る酵素−結合アッセイが含まれる。
他の実施態様の場合、細胞を候補化合物と接触させ、細胞中におけるCRSP mRNA又はタンパク質の発現を決定する方法でCRSP発現のモジュレーターを同定する。候補化合物の存在下におけるCRSP mRNAもしくはタンパク質の発現のレベルを候補化合物の不在下におけるCRSP mRNAもしくはタンパク質の発現のレベルと比較する。次いでこの比較に基づいて候補化合物をCRSP発現のモジュレーターとして同定することができる。例えばCRSP mRNAもしくはタンパク質の発現が候補化合物の不在下よりその存在下において多い場合(統計的に有意に多い)、候補化合物はCRSP mRNAもしくはタンパク質発現の刺激剤として同定される。代わってCRSP mRNAもしくはタンパク質の発現が候補化合物の不在下よりその存在下において少ない場合(統計的に有意に少ない)、候補化合物はCRSP mRNAもしくはタンパク質発現の阻害剤として同定される。細胞中におけるCRSP mRNAもしくはタンパク質発現のレベルは、CRSP mRNAもしくはタンパク質の検出に関して本明細書で記載する方法により決定することができる。
本発明のさらに別の側面において、CRSPに結合するか又はそれと相互作用し(「CRSP−結合タンパク質」又は「CRSP−bp」)、CRSP活性をモジュレーションする他のタンパク質の同定のために2−ハイブリッドアッセイ又は3−ハイブリッドアッセイ(例えば米国特許第5,283,317号;Zervos et al.(1993)Cell 72:223−232;Madura et al.(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054;Bartel et al.(1993)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi et al.(1993)Oncogene 8:1693−1696;及びBrent WO94/10300を参照されたい)において「ベイトタンパク質(bait proteins)」としてCRSPタンパク質を用いることができる。そのようなCRSP−結合タンパク質はおそらく、例えばCRSP−媒介シグナリング経路の下流要素として、CRSPタンパク質によるシグナルの伝達にも含まれる。別の場合そのようなCRSP−結合タンパク質はおそらく非−CRSP発現細胞に伴う細胞−表面分子であり、この場合そのようなCRSP−結合タンパク質はシグナル伝達に含まれる。
2−ハイブリッド系はほとんどの転写因子のモジュール性に基づいており、それは分離可能なDNA−結合及び活性化ドメインから成る。簡単に記載すると、アッセイは2種のDNA構築物を利用する。1つの構築物においては、CRSPタンパク質をコードする遺伝子が既知の転写因子(例えばGAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合している。他の構築物においては、DNA配列のライブラリーからの未同定タンパク質(「えさ(prey)」又は「試料」)をコードするDNA配列が既知の転写因子の活
性化ドメインをコードする遺伝子に融合している。「ベイト」及び「えさ」タンパク質が生体内で相互作用してCRSP−依存性複合体を形成することができる場合、転写因子のDNA−結合及び活性化ドメインは密接状態とされる。この近接は転写因子に応答性の転写調節部位に操作可能的に結合しているリポーター遺伝子(例えばLacZ)の転写を可能にする。リポーター遺伝子の発現を検出し、機能性転写因子を含有する細胞コロニーを単離し、CRSPタンパク質と相互作用するタンパク質をコードするクローニングされた遺伝子を得るために用いることができる。
本発明はさらに上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規な薬剤ならびにこれらのアッセイの使用によりそのような薬剤を製造するための方法に関する。従って1つの実施態様の場合、本発明は前記のスクリーニングアッセイ(例えば細胞に基づくアッセイ又は無細胞アッセイ)のいずれか1つという段階を含む方法により得ることができる化合物又は薬剤を含む。例えば1つの実施態様の場合、本発明はCRSP標的分子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、CRSP標的分子に結合するか又はその活性をモジュレーションする試験化合物の能力を決定することを含む方法により得ることができる化合物もしくは薬剤を含む。別の実施態様の場合、本発明はCRSP標的分子を発現する細胞をCRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、CRSP標的分子と相互作用するかもしくはその活性をモジュレーションする試験化合物の能力を決定することを含む方法により得ることができる化合物もしくは薬剤を含む。他の実施態様の場合、本発明はCRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部に結合するか又はその活性をモジュレーション(例えば刺激もしくは阻害)する試験化合物の能力を決定することを含む方法により得ることができる化合物もしくは薬剤を含む。さらに別の実施態様の場合、本発明はCRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部をCRSPタンパク質に結合する既知の化合物と接触させてアッセイ混合物を形成し、アッセイ混合物を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質と相互作用するか又はその活性をモジュレーションする試験化合物の能力を決定することを含む方法により得ることができる化合物もしくは薬剤を含む。
従って本明細書に記載する通りに同定される薬剤を適した動物モデルにおいてさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば本明細書に記載する通りに同定される薬剤(CRSPモジュレーション剤、アンチセンスCRSP核酸分子、CRSP−特異的抗体又はCRSP−結合パートナー)を動物モデルで用い、そのような薬剤を用いる処置の効力、毒性又は副作用を決定することができる。別の場合、本明細書に記載する通りに同定される薬剤を動物モデルで用い、そのような薬剤の作用の機構を決定することができる。
本発明は、本明細書に記載するような診断、予後及び処置のための上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規な薬剤の使用にも関する。従って本明細書に記載するような診断、予後又は処置において用いるための薬物もしくは製薬学的組成物の設計、調製、合成、製造及び/又は生産におけるそのような薬剤の使用は本発明の範囲内である。例えば1つの実施態様の場合、本発明は上記のスクリーニングアッセイの1つにより得ることができる化合物の構造及び/又は性質を参考にすることにより薬物又は製薬学的組成物を合成もしくは生産する方法を含む。例えばCRSP標的分子を発現する細胞を試験化合物と接触させ、CRSP標的分子に結合するか又はその活性をモジュレーションする試験化合物の能力を決定する方法により得られる化合物の構造及び/又は性質に基づいて薬物もしくは製薬学的組成物を合成することができる。他の代表的実施例の場合、本発明はCRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部を試験化合物と接触させ、CRSPタンパク質もしくは生物学的に活性なその一部に結合するか又はその活性をモジュレーション(例えば刺激もしくは阻害)する試験化合物の能力を決定する方法により得ることができる化合物の構造及び/又は性質に基づいて薬物もしくは製薬学的組成物を合成又は生
産する方法を含む。
B.検出アッセイ
本明細書で同定されるcDNA配列の一部もしくは断片(及び対応する完全な遺伝子配列)を多数の方法においてポリヌクレオチド試薬として用いることができる。例えばこれらの配列を:(i)染色体上でそのそれぞれの遺伝子をマッピングし;かくして遺伝病に関連する遺伝子領域の位置決定をする;(ii)小さい生物試料から個体を同定する(組織型);ならびに(iii)生物試料の法的同定を助けるために用いることができる。これらの用途を下記の小区分で記載する。
1.染色体マッピング
遺伝子の配列(もしくは配列の一部)が単離されたら、この配列を用いて染色体上で遺伝子の位置をマッピングすることができる。この方法は染色体マッピングと呼ばれる。従って本明細書に記載するCRSPヌクレオチド配列の一部もしくは断片を用い、染色体上でCRSP遺伝子の位置をマッピングすることができる。染色体へのCRSP配列のマッピングはこれらの配列の疾患に関連する遺伝子との関連付けにおける重要な第1段階である。
簡単に記載すると、CRSPヌクレオチド配列からPCRプライマー(好ましくは長さが15〜25bp)を調製することにより、CRSP遺伝子を染色体にマッピングすることができる。CRSP配列のコンピューター分析を用い、ゲノムDNA中の1つのエキソンより長くに及んで増幅法を複雑にしないプライマーを予測することができる。次いでこれらのプライマーをそれぞれのヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングに用いることができる。CRSP配列に対応するヒト遺伝子を含有するハイブリッドのみが増幅された断片を与えるであろう。
体細胞ハイブリッドは種々の哺乳類からの体細胞(例えばヒト及びマウス細胞)を融合させることにより調製される。ヒト及びマウス細胞のハイブリッドを生育させ、分裂させると、それらは徐々にヒト染色体を無作為な順序で失うが、マウス染色体を保持する。特定の酵素がないためにマウス細胞が生育できないがヒト細胞が生育できる媒体を用いることにより、必要な酵素をコードする遺伝子を含有する1つのヒト染色体は保持されるであろう。種々の媒体を用いることにより、ハイブリッド細胞系のパネルを確立することができる。パネルにおけるそれぞれの細胞系は1つのヒト染色体又は少数のヒト染色体及び完全な1組のマウス染色体を含有し、それぞれの遺伝子の特定のヒト染色体への容易なマッピングを可能にする。(D’Eustachio P.et al.(1983)Science 220:909−924)。ヒト染色体の断片のみを含有する体細胞ハイブリッドも転座及び欠失を有するヒト染色体を用いることにより生産することができる。
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは特定の配列を特定の染色体に指定するための迅速な方法である。1つの熱サイクラーを用いて1日当たり3つ又はそれより多くの配列を指定することができる。オリゴヌクレオチドプライマーの設計にCRSPヌクレオチド配列を用い、特定の染色体からの断片のパネルを用いて細分位置決定(sublocalization)を行うことができる。9o、1p又は1v配列をその染色体にマッピングするために同様に用いることができる他のマッピング戦略にはその場ハイブリッド形成(Fan,Y.et al.(1990)PNAS,87:6223−27に記載)、標識されフローソーティングされた染色体を用いる予備−スクリーニングならびに染色体特異的cDNAライブラリへのハイブリッド形成による予備−選択が含まれる。
さらに中期染色体スプレッド(chromosomal spread)へのDNA配列の蛍光その場ハイブリッド形成(FISH)を用い、1段階で正確な染色体位置を与え
ることができる。染色体スプレッドは、細胞分裂紡錘体を崩壊させるコルセミドなどの化学品によりその分裂が中期で妨害された細胞を用いて作ることができる。染色体をトリプシンを用いて短時間処理し、次いでGiemsaで染色することができる。それぞれの染色体上に明及び暗バンドのパターンが現れ、染色体をそれぞれ同定することができる。FISH法は500もしくは600塩基のような短いDNA配列で用いることができる。しかしながら1,000塩基より大きいクローンは、簡単な検出のための十分なシグナル強度で独特の染色体位置に結合する可能性がより高い。好ましくは1,000塩基そしてもっと好ましくは2,000塩基が合理的な時間で良い結果を得るために十分であろう。この方法の精査のために、Verma et al.,Human Chromosomes:A Manual of Basic Techniques(Pergamon Press,New York 1988)を参照されたい。
染色体マッピングのための試薬を個別に用いて1つの染色体又はその染色体の上の1つの部位をマークすることができるかあるいは複数の部位及び/又は複数の染色体のマーキングのために試薬のパネルを用いることができる。実際には遺伝子の非コード領域に対応する試薬がマッピング目的に好ましい。コード配列は遺伝子ファミリー内で保存される傾向がより高く、かくして染色体マッピングの間の交差ハイブリッド形成の機会が増加する。
配列が正確な染色体位置にマッピングされたら、染色体上における配列の物理的位置を遺伝地図データと関連付けることができる。(そのようなデータは例えばV.McKusick,Mendelian Inheritance in Man,available on−line through Johns Hopkins University Welch Medical Libraryにおいて見いだされる)。同じ染色体領域にマッピングされる遺伝子と疾患の間の関係を、次いで例えばEgeland,J.et al.(1987)Nature,325:783−787に記載されている結合分析(物理的に隣接する遺伝子の共−遺伝(co−inheritance))を介して同定することができる。
さらにCRSP遺伝子に関連する疾患に冒されている個体と冒されていない個体の間のDNA配列における差を決定することができる。冒されている個体のいくらか又はすべてにおいて突然変異が観察され、冒されていない個体において観察されない場合、おそらく突然変異は特定の疾患の原因であろう。冒されている個体と冒されていない個体の比較は一般に、最初に染色体スプレッドから見えるかあるいはDNA配列に基づくPCRを用いて検出することができる染色体における構造的改変、例えば欠失又は転座を探すことを含む。最後にいくつかの個体からの遺伝子の完全な配列決定を行い、突然変異の存在を確証し、突然変異を多型性から区別することができる。
2.組織型
本発明のCRSP配列を用いて小さい生物試料から個体を同定することもできる。例えば合衆国陸軍は、その隊員の識別のために制限断片長多型性(RFLP)を用いることを考慮中である。この方法では、個体のゲノムDNAを1つもしくはそれより多い制限酵素で消化し、サザンブロット上で精査して同定のための独特のバンドを得る。この方法は、失われるか、切り替えられるかあるいは盗まれて明確な同定を困難にし得る「ドッグタグ(Dog Tags)」という現在の制限に苦しめられることはない。本発明の配列はRFLPのための追加のDNAマーカーとして有用である(米国特許第5,272,057号に記載)。
さらに、本発明の配列を用い、個体のゲノムの選ばれた部分の実際の塩基毎のDNA配列を決定する別の方法を与えることができる。かくして本明細書に記載するCRSPヌク
レオチド配列を用い、配列の5’及び3’末端から2つのPCRプライマーを調製することができる。次いでこれらのプライマーを用いて個体のDNAを増幅し、続いてそれを配列決定することができる。
この方法で調製される個体からの対応するDNA配列のパネルは独特の個体同定を提供することができ、それは各個体が対立遺伝子の相違の故にそのようなDNA配列の独特の組を有するからである。本発明の配列を用いて個体から及び組織からそのような同定配列を得ることができる。本発明のCRSPヌクレオチド配列はヒトゲノムの一部を独特に示している。対立遺伝子の変異はこれらの配列のコード領域においてある程度そして非コード領域においてもっと大きい程度まで存在する。個々のヒトの間の対立遺伝子の変異は500塩基毎に大体1つの頻度で存在すると推定される。本明細書に記載する配列のそれぞれをある程度まで標準として用いることができ、それに対して個体からのDNAを同定の目的で比較することができる。非コード領域ではより多数の多型性が存在するので、個体の区別に必要な配列がより少ない。配列番号:1、配列番号:4、配列番号:7又は配列番号:10の非コード配列は、それぞれ100塩基の増幅された非コード配列を与えるおそらく10〜1,000個のプライマーのパネルを用いて個体の明確な同定を楽に与えることができる。配列番号:3、配列番号:6、配列番号:9又は配列番号:12中のもののような推定コード配列を用いる場合、個体の明確な同定のためにもっと適したプライマーの数は500〜2,000であろう。
個体のための独特の同定データベースの作成に本明細書に記載するCRSPヌクレオチド配列からの試薬のパネルを用いると、後にその個体からの組織の同定にこれらの同じ試薬を用いることができる。独特の同定データベースを用い、生存しているか又は死亡した個体の明確な同定を非常に小さい組織試料から行うことができる。
3.法生物学(forensic biology)における部分的CRSP配列の使用
DNAに基づく同定法を法生物学において用いることもできる。法生物学は、犯罪の現場で発見される生物学的証拠の遺伝子型を例えば犯罪の犯人を明確に識別するための手段として用いる科学分野である。そのような識別を行うために、PCR法を用い、犯罪の現場で発見される毛髪又は皮膚を例とする組織あるいは血液、唾液又は精液を例とする体液などの非常に小さい生物学的試料から採取されるDNA配列を増幅することができる。次いで増幅された配列を標準と比較し、それにより生物学的試料の源の同定を可能にすることができる。
本発明の配列を用いてヒトゲノム中の特定の遺伝子座を標的とするポリヌクレオチド試薬、例えばPCRプライマーを得ることができ、それは例えばもう1つの「同定マーカー」(すなわち特定の個体に独特のもう1つのDNA配列)を与えることによってDNAに基づく法的同定の信頼性を増すことができる。上記の通り、実際の塩基配列情報を、制限酵素により生成する断片によって形成されるパターンの正確な代用物として同定のために用いることができる。配列番号:1、配列番号:4、配列番号:7又は配列番号:10の非コード領域を標的とする配列はこの使用に特に適しており、それは非コード領域にはより多数の多型性が存在し、この方法を用いて個体を区別するのをより容易にするからである。ポリヌクレオチド試薬の例にはCRSPヌクレオチド配列又はその一部、例えば少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも30塩基の長さを有する配列番号:1、配列番号:4、配列番号:7又は配列番号:10の非コード領域から誘導される断片が含まれる。
本明細書に記載するCRSPヌクレオチド配列をさらに、脳組織を例とする特定の組織を同定するための例えばインサイチュー・ハイブリダイゼーションで用いることができるポリヌクレオチド試薬、例えば標識されたもしくは標識可能なプローブを得るために用い
ることができる。これは未知の起源の組織と共に法病理学者が存在する場合に非常に有用であり得る。そのようなCRSPプローブのパネルを用い、種によって及び/又は臓器型によって組織を同定することができる。
類似のやり方でこれらの試薬、例えばCRSPプライマーもしくはプローブを用い、組織培養物を汚染に関してスクリーニングすることができる(すなわち培養物中における異なる型の細胞の混合物の存在に関するスクリーニング)。
C.予報(Predictive)医学:
本発明は、予後(予報)目的に診断アッセイ、予後アッセイ及び臨床試験の監視を用い、それにより個体を予防的に処置する予報医学の分野にも関する。従って本発明の1つの側面は生物試料の範囲内で(例えば血液、血清、細胞、組織)CRSPタンパク質及び/又は核酸発現ならびにCRSP活性を決定し、それにより個体が異常なCRSP発現もしくは活性、例えば神経変性病もしくはガンを生ずる異常な細胞増殖、分化及び/又は生存と関連する疾患もしくは障害に冒されているか否かあるいは障害が現れる危険状態にあるか否かを決定するための診断法に関する。本発明は個体がCRSPタンパク質、核酸発現もしくは活性と関連する障害が現れる危険状態にあるか否かを決定するための予後(又は予報)アッセイも提供する。例えば生物試料においてCRSP遺伝子中の突然変異を検定することができる。そのようなアッセイを予後もしくは予報目的に用い、それによりCRSPタンパク質、核酸発現もしくは活性を特徴とするかあるいはそれと関連する障害の開始の前に個体を予防的に処置することができる。
本発明の他の側面は、臨床試験におけるCRSPの発現もしくは活性への薬剤(例えば薬物、化合物)の影響の監視に関する。
これらの薬剤及び他の薬剤を下記の部分でさらに詳細に記載する。
1.診断アッセイ
生物試料中におけるCRSPタンパク質又は核酸の存在又は不在を検出するための代表的方法は、被験者から生物試料を得、CRSPタンパク質又はCRSPタンパク質をコードする核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出することができる化合物又は薬剤と生物試料を接触させ、CRSPタンパク質又は核酸の存在を生物試料中で検出することを含む。CRSP mRNA又はゲノムDNAの検出のための好ましい薬剤はCRSP mRNA又はゲノムDNAにハイブリッド形成することができる標識された核酸プローブである。核酸プローブは例えば全長CRSP核酸、例えば配列番号:1、配列番号:4、配列番号:7、配列番号:10の核酸、受け入れ番号98634としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入片、受け入れ番号98633としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入片、受け入れ番号98452としてATCCに寄託されたプラスミドのDNA挿入片あるいはそれらの一部、例えば長さが少なくとも15、30、50、100、250もしくは500ヌクレオチドであり、緊縮条件下でCRSP mRNAもしくはゲノムDNAに特異的にハイブリッド形成するのに十分なオリゴヌクレオチドであることができる。本発明の診断アッセイにおいて用いるのに適した他のプローブは本明細書に記載されている。
CRSPタンパク質の検出のための好ましい薬剤はCRSPタンパク質に結合することができる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナルあるいはもっと好ましくはモノクローナルである。無損傷の抗体又はその断片(例えばFabもしくはF(ab’)2)を用いることができる。プローブ又は抗体に関して「標識された」という用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体に結合させる(すなわち物理的に連結させる)ことによるプローブ又は抗体の直接的標識ならびに直接的に標識された他
の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識を包含するものとする。間接的標識の例には、蛍光標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出ならびに蛍光標識されたストレプタビジンを用いて検出され得るようにDNAプローブをビオチンで末端−標識することが含まれる。「生物試料」という用語は被験者から単離された組織、細胞及び生物学的液体ならびに被験者内に存在する組織、細胞及び液体を含むものとする。すなわち本発明の検出法を試験管内ならびに生体内において生物試料中のCRSP mRNA、タンパク質又はゲノムDNAを検出するために用いることができる。例えばCRSP mRNAの検出のための試験管内法にはノザンハイブリッド形成及びその場ハイブリッド形成が含まれる。CRSPタンパク質の検出のための試験管内法には酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISAs)、ウェスターンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光法が含まれる。CRSPゲノムDNAの検出のための試験管内法にはサザンハイブリッド形成が含まれる。さらにCRSPタンパク質の検出のための生体内法には標識された抗−CRSP抗体を被験者内に導入することを含む。例えば抗体を放射性マーカーで標識することができ、被験者内におけるその存在及び位置を標準的画像形成法により検出することができる。
1つの実施態様の場合、生物試料は被験者からのタンパク質分子を含有する。別の場合、生物試料は被験者からのmRNA分子又は被験者からのゲノムDNA分子を含有していることができる。好ましい生物試料は被験者から通常の手段により単離される血清試料である。
他の実施態様の場合、方法はさらに標準被験者から標準生物試料を得、標準試料をCRSPタンパク質、mRNAもしくはゲノムDNAを検出することができる化合物もしくは薬剤と接触させ、生物試料中においてCRSPタンパク質、mRNAもしくはゲノムDNAの存在を検出し、標準試料中におけるCRSPタンパク質、mRNAもしくはゲノムDNAの存在を試験試料中におけるCRSPタンパク質、mRNAもしくはゲノムDNAの存在と比較することを含む。
本発明は生物試料中のCRSPの存在の検出のためのキットも包含する。例えばキットは生物試料中のCRSPタンパク質もしくはmRNAを検出することができる標識された化合物又は薬剤;試料中のCRSPの量を決定するための手段;ならびに試料中のCRSPの量を標準と比較するための手段を含んでいることができる。化合物又は薬剤を適した容器中に包装することができる。キットはさらにCRSPタンパク質もしくは核酸の検出にキットを用いるための指示を含むことができる。
2.予後アッセイ
本明細書に記載する診断法をさらに、異常なCRSP発現もしくは活性と関連する疾患もしくは障害を現す危険を有するかその危険状態にある被験者を識別するために用いることができる。例えば先の診断アッセイ又は後のアッセイなどの本明細書に記載するアッセイを用い、CRSPタンパク質、核酸発現又は活性と関連する障害、例えば増殖性障害、分化もしくは発育障害、造血障害ならびに異常な細胞生存、異常な細胞外構造又は防御機構における異常を特徴とする疾患、状態もしくは障害を現す危険を有するか又はその危険状態にある被験者を識別することができる。別の場合、予後アッセイを用い、分化もしくは増殖疾患(例えばガン)を現す危険を有するか又はその危険状態にある被験者を識別することができる。かくして本発明は異常なCRSP発現もしくは活性と関連する疾患もしくは障害を同定するための方法を提供し、その方法では被験者から試験試料を得、CRSPタンパク質もしくは核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出し、ここでCRSPタンパク質もしくは核酸の存在は異常なCRSP発現もしくは活性と関連する疾患もしくは障害を現す危険を有するかもしくはその危険状態にある被験者の場合の兆候である。本明細書で用いる場合、「試験試料」は問題の被験者から得られる生物試料を言う。例えば試験試料は生物学的液体(例えば血清)、細胞試料又は組織であることができる。
さらに本明細書に記載する予後アッセイを用い、異常なCRSP発現もしくは活性と関連する疾患もしくは障害の処置のために薬剤(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド疑似物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子又は他の候補薬物)を患者に投与できるか否かを決定することができる。例えばそのような方法を用い、増殖障害、分化もしくは発育障害、造血障害などの障害ならびに異常な細胞製造、異常な細胞外構造もしくは防御機構における異常を特徴とする障害のための薬剤を用いて患者を有効に処置できるか否かを決定することができる。別の場合、そのような方法を用い、分化もしくは増殖性疾患(例えばガン)のための薬剤を用いて患者を有効に処置できるか否かを決定することができる。かくして本発明は異常なCRSP発現もしくは活性と関連する障害のための薬剤を用いて患者を有効に処置できるか否かを決定するための方法を提供し、その方法では、試験試料を得、CRSPタンパク質もしくは核酸発現もしくは活性を検出する(例えばここで多量のCRSPタンパク質もしくは核酸発現又は活性は、異常なCRSP発現もしくは活性と関連する障害の処置のための薬剤を投与できる患者の場合の兆候である)。
本発明の方法を用い、CRSP遺伝子における遺伝子改変を検出し、それにより改変された遺伝子を有する被験者が異常な発育、異常な細胞分化、異常な細胞増殖又は異常な造血応答を特徴とする障害の危険状態にあるか否かを決定することもできる。好ましい実施態様の場合、該方法は、改変の少なくとも1つがCRSP−タンパク質をコードする遺伝子の統合性(integrity)又はCRSP遺伝子の誤−発現に影響することを特徴とする遺伝子改変の存在もしくは不在を被験者からの細胞の試料中で検出することを含む。例えば1)CRSP遺伝子からの1つもしくはそれより多いヌクレオチドの欠失;2)CRSP遺伝子への1つもしくはそれより多いヌクレオチドの付加;3)CRSP遺伝子の1つもしくはそれより多いヌクレオチドの置換、4)CRSP遺伝子の染色体転位;5)CRSP遺伝子のメッセンジャーRNA転写物のレベルの改変、6)ゲノムDNAのメチル化パターンなどのCRSP遺伝子の異常な修飾、7)CRSP遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非−野生型スプライシングパターンの存在、8)CRSP−タンパク質の非−野生型レベル、9)CRSP遺伝子の対立遺伝子損失ならびに10)CRSP−タンパク質の不適切な翻訳後修飾の少なくとも1つの存在を突き止めることによりそのような遺伝子改変を検出することができる。本明細書に記載する通り、CRSP遺伝子の改変を検出するために用いることができる当該技術分野において既知の多数のアッセイ法がある。好ましい生物試料は通常の手段で被験者から単離される組織もしくは血清試料である。
いくつかの実施態様において、改変の検出はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば米国特許第4,683,195及び4,683,202号を参照されたい)、例えばアンカーPCRもしくはRACE PCRにおいてあるいは別の場合、連結連鎖反応(LCR)(例えばLandegran et al.(1988)Science 241:1077−1080;及びNakazawa et al.(1994)PNAS 91:360−364を参照されたい)においてプローブ/ブライマーを用いることを含み、その後者はCRSP−遺伝子における点突然変異の検出に特に有用であり得る(Abravaya et al.(1995)Nucleic Acids Res.23:675−682を参照されたい)。この方法は患者から細胞の試料を集め、試料の細胞から核酸(例えばゲノム、mRNAもしくは両方)を単離し、核酸試料をCRSP遺伝子に特異的にハイブリッド形成する1種もしくはそれより多いプライマーと、CRSP−遺伝子(存在するなら)のハイブリッド形成及び増幅が起こるような条件下で接触させ、増幅産物の存在もしくは不在を検出するかあるいは増幅産物のサイズを検出して長さを標準試料と比較する段階を含むことができる。PCR及び/又はLCRは、本明細書に記載する突然変異検出に用いられる方法のいずれかと組み合わされた予備的増幅段階として用いるのが望ましいことがあり得ると予測される。
別の増幅法には:自立配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelli,J.C.et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh,D.Y.et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi,P.M.et al.,1988,Bio/Technology 6:1197)あるいは他のいずれかの核酸増幅法が含まれ、当該技術分野における熟練者に周知の方法を用いる増幅分子の検出が続く。これらの検出案は核酸分子が非常に少数で存在する場合にそのような分子の検出のために特に有用である。
別の実施態様において、試料細胞からのCRSP遺伝子中の突然変異を制限酵素切断パターンにおける改変により同定することができる。例えば試料及び標準DNAを単離し、増幅し(場合により)、1つもしくはそれより多い制限エンドヌクレアーゼで消化し、ゲル電気泳動により断片長サイズを決定し、比較する。試料及び標準DNAの間の断片長サイズの相違は試料DNA中の突然変異を示す。さらに配列特異的リボザイム(例えば米国特許第5,498,531号を参照されたい)の使用を用い、リボザイム切断部位の出現もしくは喪失による特異的突然変異の存在を評価することができる。
他の実施態様の場合、試料核酸及び標準核酸、例えばDNA又はRNAを数百もしくは数千のオリゴヌクレオチドプローブを含有する高密度アレー(high density
arrays)にハイブリッド形成させることによりCRSP中の遺伝子突然変異を同定することができる(Cronin,M.T.et al.(1996)Human Mutation 7:244−255;Kozal,M.J.et al.(1996)Nature Medicine 2:753−759)。例えばCronin,M.T.et al.同上に記載されているように、光−発生DNAプローブ(light−generated DNA probe)を含有する2次元アレーにおいてCRSP中の遺伝子突然変異を同定することができる。簡単に記載すると、第1のプローブのハイブリッド形成アレーを用いて試料及び標準中の長いDNA(long stretches of DNA)を通して走査し、連続的に重なるプローブの直線状のアレーを形成することにより配列間の塩基の変化を同定することができる。この段階は点突然変異の同定を可能にする。この段階に第2ハイブリッド形成アレーが続き、それは検出されるすべての変異型もしくは突然変異に相補的なもっと小さい特別なプローブアレーを用いることにより特異的な突然変異の特性化を可能にする。それぞれの突然変異アレーは平行プローブセットから成り、1つは野生型遺伝子に相補的であり、他は突然変異遺伝子に相補的である。
さらに別の実施態様では、当該技術分野において既知の多様な配列決定反応のいずれかを用いてCRSP遺伝子を直接配列決定し、試料のCRSPの配列を対応する野生型(標準)配列と比較することにより突然変異を検出することができる。配列決定反応の例にはMaxim and Gilbert((1977 PNAS 74:560)又はSanger((1977)PNAS 74:5463)により開発された方法に基づくものが含まれる。診断アッセイを行う場合、質量分析による配列決定(例えばPCT国際公開No.WO94/16101;Cohen et al.(1996)Adv.Chromatogr.36:127−162;及びGriffin et al.(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147−159を参照されたい)を含む多様な自動化配列決定法((1995)Biotechnoques 19:448)のいずれかを用いることができることも意図されている。
CRSP遺伝子中の突然変異の検出のための他の方法には、切断剤からの保護を用いてRNA/RNA又はRNA/DNAヘテロデュプレックス中の誤対合塩基を検出する方法
が含まれる(Myers et al.(1985)Science 230:1242)。一般に当該技術分野の「誤対合切断」の方法は、野生型CRSP配列を含有する(標識された)RNA又はDNAを組織試料から得られる突然変異の可能性のあるRNA又はDNAとハイブリッド形成させることにより形成されるヘテロデュプレックスを得ることで始まる。標準及び試料の鎖の間の塩基対誤対合の故に存在するようなデュプレックスの一本鎖領域を切断する薬剤で二本鎖デュプレックスを処理する。例えばRNA/DNAデュプレックスをRNアーゼで処理し、DNA/DNAハイブリッドをS1ヌクレアーゼで処理して誤対合領域を酵素的に消化することができる。他の実施態様の場合、誤対合領域を消化するためにDNA/DNA又はRNA/DNAデュプレックスのいずれかをヒドロキシルアミンもしくは四酸化オスミウム及びピペリジンで処理することができる。誤対合領域の消化の後、得られる材料を次いで変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズにより分離し、突然変異の部位を決定する。例えばCotton et al.(1988)Proc.Natl Acad Sci USA 85:4397;Saleeba et al.(1992)Methods Enzymol.217:286−295を参照されたい。好ましい実施態様の場合、標準DNA又はRNAを検出のために標識することができる。
さらに別の実施態様の場合、誤対合切断反応は、細胞の試料から得られるCRSP cDNAs中の点突然変異を検出し、マッピングするために限定された系において二本鎖DNA中の誤対合塩基対を認識する1種もしくはそれより多いタンパク質(いわゆる「DNA誤対合修復」酵素)を用いる。例えばE.コリ(E.coli)のmutY酵素はG/A誤対合においてAを切断し、HeLa細胞からのチミジンDNAグリコシラーゼはG/T誤対合においてTを切断する(Hsu et al.(1994)Carcinogenesis 15:1657−1662)。代表的実施態様に従うと、野生型CRSP配列などのCRSP配列に基づくプローブを試験細胞からのcDNAもしくは他のDNA産物にハイブリッド形成させる。デュプレックスをDNA誤対合修復酵素で処理し、切断産物を、もしあれば、電気泳動案などから検出することができる。例えば米国特許第5,459,039号を参照されたい。
別の実施態様ではCRSP遺伝子中の突然変異を同定するために電気泳動移動度における改変が用いられる。例えば突然変異核酸及び野生型核酸の間の電気泳動移動度の差を検出するために一本鎖コンホメーション多型性(SSCP)を用いることができる。(Orita et al.(1989)Proc Nalt.Acad.Sci USA:86:2766、Cotton(1993)Mutant Res 285:125−144;及びHayashi(1992)Genet.Anal Tech Appl 9:73−79も参照されたい)。試料及び標準CRSP核酸の一本鎖DNA断片を変性させ、復元させる。一本鎖核酸の二次構造は配列に従って変わり、結果として生ずる電気泳動移動度における改変は1つの塩基変化の検出さえ可能にする。DNA断片を標識することができるかあるいは標識されたプローブで検出することができる。二次構造が配列の変化にもっと敏感なRNA(DNAではなく)を用いることにより、アッセイの感度を増強することができる。好ましい実施態様の場合、本方法はヘテロジュプレックス分析を用い、電気泳動移動度における変化に基づいて二本鎖ヘテロデュプレックス分子を分離する(Keen et al.(1991)Trends Genet 7:5)。
さらに別の実施態様の場合、変性剤の勾配を含むポリアクリルアミドゲル中における突然変異断片又は野生型断片の移動を変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を用いて検定する(Myers et al.(1985)Nature 313:495)。分析法としてDGGEを用いる場合、DNAが完全に変性しないことを保証するために、例えば約40bpの高−融点高GC含有DNAのGCクランプをPCRにより付加することによってDNAを修飾する。さらに別の実施態様では、標準DNA及び試料DNAの移動度におけ
る差を同定するために変性勾配の代わりに温度勾配を用いる(Rosenbaum and Reissner(1987)Biophys Chem 265:12753)。
点突然変異の検出のための他の方法の例には選択的オリゴヌクレオチドハイブリッド形成、選択的増幅又は選択的プライマー伸長が含まれるがこれらに限られるわけではない。例えば既知の突然変異が中心に置かれたオリゴヌクレオチドプライマーを調製し、次いで完全な対合が見いだされる場合のみにハイブリッド形成を許す条件下で標的DNAにハイブリッド形成させることができる(Saiki et al.(1986)Nature
324:163);Saiki et al.(1989)Proc.Natl Acad.Sci USA 86:6230)。そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドがハイブリッド形成膜に付着し、標識された標的DNAとハイブリッド形成すると、PCR増幅された標的DNA又は複数の異なる突然変異にハイブリッド形成する。
別の場合、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅法を本発明と組み合わせて用いることができる。特異的増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドは、分子の中心に(増幅が分画ハイブリッド形成(differential hybridization)に依存するように)(Gibbs et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:2437−2448)あるいは適した条件下で誤対合が避けられ得るか又はポリメラーゼ伸長が低下する1つのプライマーの3’末端に(Prossner(1993)Tibtech 11:238)問題の突然変異を保有していることができる。さらに切断に基づく検出を生ぜしめるために突然変異の領域に新規な制限部位を導入するのが望ましいことがあり得る(Gasparini et al.(1992)Mol.Cell Probes 6:1)。ある実施態様では増幅のためのTaqリガーゼを用いて増幅を行うこともできることが予測される(Barany(1991)Proc.Natl Acad.Sci USA 88:189)。そのような場合、5’配列の3’末端に完全な対合がある場合のみに連結が起こり、増幅の存在もしくは不在を探すことにより特定の部位における既知の突然変異の存在を検出することが可能になる。
例えば本明細書に記載する少なくとも1つのプローブ核酸又は抗体試薬を含む予備包装診断キットを用いることにより本明細書に記載する方法を行うことができ、キットを例えばCRSP遺伝子を含む疾患もしくは病気の症状又は家族歴を示す患者を診断するための臨床的状況で簡便に用いることができる。
さらにCRSPを発現するいずれの細胞型もしくは組織も本明細書に記載する予後アッセイにおいて用いることができる。
3.臨床試験中の効果の監視
薬剤(例えば薬物、化合物)が、CRPSの発現または活性に及ぼす影響(例えば細胞性シグナル伝達のモジュレーション、発生または分化に関与する遺伝子転写の調節、細胞増殖の調節)の監視は、基本的な薬物スクリーニングに応用できるだけでなく臨床試験にも応用することができる。例えば、CRPS遺伝子発現、タンパク質レベルを上げ、またはCRPS活性をアップレギュレート(upregulate)するために、本明細書に記載したスクリーニングアッセイにより決定された薬剤の効力は、減少したCRPS遺伝子発現、タンパク質レベル、またはダウンレギレートされた(downregulated)CRPS活性を現す個体の臨床試験で監視することができる。あるいはCRPS遺伝子発現、タンパク質レベルを減少させ、またはCRPS活性をダウンレギレートさせるために、スクリーニングアッセイにより決定された薬剤の効果は、上昇したCRPS遺伝子発現、タンパク質レベル、またはアップレギレートされたCRPS活性を現す個体の臨床
試験で監視することができる。そのような臨床試験では、CRPSの発現または活性、そして好ましくは例えば増殖性障害に関与してきた他の遺伝子が「読み取り」または特定の細胞の表現型のマーカーとして使用され得る。
例えば限定するわけではないが、CRPS活性(例えば本明細書に記載するスクリーニングアッセイで同定された)をモジュレートする薬剤(例えば化合物、薬物または低分子)を用いた処理により細胞中でモジュレートされる遺伝子(CRPSを含む)を同定することができる。このように、薬剤が例えば臨床試験において増殖性障害、発育または分化的障害、造血性障害ならびに異常な細胞分化および/または生存、異常な細胞外構造、あるいは防御機構における異常性を特徴とする障害に及ぼす影響を研究するために、細胞を単離し、そしてRNAを調製し、そしてCRPSおよび増殖性障害、発育または分化的障害、造血性障害ならびに異常な細胞分化および/または生存、異常な細胞外構造あるいは防御機構における異常性を特徴とする障害にそれぞれ関与する他の遺伝子発現レベルを分析することができる。遺伝子発現のレベル(すなわち遺伝子発現パターン)は、本明細書に記載するようにノーザンブロット分析またはRT−PCR、あるいは生産されたタンパク質量を測定することにより、本明細書に記載するような1つの方法により、またはCRPSの活性もしくは他の遺伝子レベルを測定することにより定量することができる。このように遺伝子発現パターンは、薬剤に対する細胞の生理的応答を示すマーカーとして役立ち得る。したがってこの応答状態は薬剤を用いた個々の処置前、および最中の様々な時点で測定できる。
好適な態様では、本発明は薬剤(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド疑似物、タンパク質、ペプチド、核酸、低分子または本明細書に記載のスクリーニングアッセイにより同定される薬物候補)を用いた個体の処置の効果を監視する方法を提供し、この方法は(i)薬剤投与前の個体から投与前の試料を得;(ii)投与前の試料中のCRPSタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現レベルを検出し;(iii)個体から1種以上の投与後の試料を得;(iv)投与後の試料中のCRPSタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性レベルを検出し;(v)投与前の試料中のCRPSタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの発現または活性レベルを、投与後の試料(1種または複数)中のCRPSタンパク質、mRNAまたはゲノムDNAと比較し;そして(vi)これに従い個体への薬剤の投与を変える工程を含んで成る。例えば、CRPSの発現または活性を検出レベルより高いレベルに上げるために、すなわち薬剤の効果を上げるためには薬剤の投与の増加が望ましいかもしれない。あるいはCRPSの発現または活性を検出レベルより低いレベルに下げるために、すなわち薬剤の効果を下げるためには薬剤の投与の減少が望ましいかもしれない。そのような態様に従い、CRPS発現または活性は観察できる表現型の応答が無い場合でさえも薬剤効果の指標として使用とすることができる。
C.処置法
本発明は異常なCRPS発現または活性に関連する障害の危険にあるか(もしくは疑われる)、または障害を有する個体の予防的および治療的処置法の両方を提供する。予防的および治療的処置の両方に関して、そのような処置は薬理遺伝学の分野から得た知識に基づき特別に調整または改質され得る。本明細書で使用する「薬理遺伝学」とは、遺伝子シークエンシング、統計遺伝学および遺伝子発現分析のような遺伝子技術を臨床的開発および市場の薬剤へ応用することを言う。より詳細には、この用語はどのように患者の遺伝子が薬剤に対する彼または彼女の応答を定めるか(例えば、患者の「薬物応答表現型」または「薬物応答遺伝型」)の研究を称する。すなわち本発明の別の観点では、個体の薬物応答遺伝型に従い本発明のCRPS分子またはCRPSモジュレーターのいずれかを用いた個体の予防的または治療的処置の調整法を提供する。薬理遺伝学により、臨床医または内科医は治療から最高の利益を得る患者に対して予防的または治療的処置を目的とし、そし
て毒性の薬物に関連する副作用を経験するだろう患者の処置の回避が可能となる。
1.予防法
1つの観点では、本発明はCRPS発現または少なくとも1種のCRPS活性をモジュレートする薬剤を患者に投与することにより、異常なCRPS発現または活性に関連する疾患または症状の個体を保護する方法を提供する。異常なCRPS発現または活性により引き起こされ、またはそれが一因となる疾患の危険にある個体は、例えば本明細書に記載の診断的または予後アッセイ(またはそれらの組み合わせ)により同定することができる。予防的薬剤の投与は、CRPSの異常性に特徴的な症状が現れる前に行うことができるので、疾患または障害を予防し、またはその進行を遅らせる。CRPSの異常性の種類に依存して、例えばCRPSアゴニストまたはCRPSアゴニスト薬剤を個体の処置に使用することができる。適当な薬剤は、本明細書に記載のスクリーニングアッセイに基づき決定することができる。本発明の予防的方法は、さらに以下のサブセクションで検討する。
2.治療法
本発明の別の観点は、治療目的にCRPS発現または活性をモジュレートする方法に関する。本発明のモジュラトリー法は、細胞を細胞に付随するCRPSタンパク質活性の1種以上の活性をモジュレートする薬剤と接触させることを含んで成る。CRPSタンパク質活性をモジュレートする薬剤は、本明細書に記載するような核酸またはタンパク質、天然に存在するCRPSタンパク質の標的分子、ペプチド、CRPSペプチド疑似物または他の低分子のような薬剤であることができる。1つの態様では、薬剤は1種以上のCRPSタンパク質活性を刺激する。そのような刺激剤の例にはCRPSタンパク質および細胞に導入されたCRPSをコードする核酸分子を含む。別の態様では、薬剤は1種以上のCRPSタンパク質活性を阻害する。そのような阻害剤の例には、アンチセンスCRPS核酸分子および抗−CRPS抗体を含む。これらのモジュラトリー法は、インビトロ(例えば細胞を薬剤と培養することによる)またはインビボ(例えば薬剤を個体に投与することによる)で行うことができる。このように本発明は異常なCRPSタンパク質または核酸分子の発現または活性を特徴とする疾患および障害に冒された個体の処置法を提供する。1つの態様では、この方法には1薬剤(例えば本明細書に記載のスクリーニングアッセイにより同定された薬剤)またはCRPS発現または活性をモジュレート(例えばアップレギレートもしくはダウンレギレート)する複数の薬剤の組み合わせの投与が関与する。別の態様では、この方法には治療として下がった、または異常なCRPS発現または活性を補償するためにCRPSタンパク質または核酸分子を投与することが関与する。
CRPS活性の刺激は、CRPSが異常にダウンレギレートされた、および/または上昇したCRPS活性が有利な効果を有するような状況に望ましい。同様に、CRSP活性の阻害はCRSPが異常にアップレギュレートされた、および/または減少したCRSP活性が有利な効果を有するような状況に望ましい。そのような状況の1例は、個体が異常な発育または細胞分化を特徴とする障害を有する場合である。そのような状況の別の例は個体が増殖性の疾患(例えば癌)または異常な造血反応を特徴とする障害を有する場合である。そのような状況のさらに別の例は、個体中で組織再生を行うことが望まれる場合である(例えば個体が脳または脊髄損傷を受け、そして調節された様式で神経組織の再生が望まれる場合)。
したがって1態様では、疾患は異常な細胞増殖、分化および/または生存を特徴とする疾患である。例えば過−または欠陥増殖性(hyper− or hypoproliferative)疾患であり得る。また本発明は異常なCRPS活性(例えばCRPS−1活性)が特徴ではない個体中の異常な細胞増殖、分化および/または生存を特徴とする疾患の処置法も提供する。実際に、CRPSは細胞の増殖的状態(すなわち細胞の増殖、分化そしてまたは生存状態)をモジュレートすることができると思われるので、CRPS
は異常なCRPS活性以外の欠陥から生じる細胞の異常な増殖状態である疾患を調節することができる。
CRPS(例えばCRPS−1)治療物質を用いて処置できる過増殖性疾患には、種々の形態の癌または白血病および線維増殖性障害のような新形成および過形成障害を含む。本CRPS治療物質(例えばCRPS−1治療物質)を用いて処置または予防することができる他の過増殖性障害は、悪性症状、前悪性症状および良性症状を含む。処置または予防すべき症状は、上皮組織に生じる腫瘍のような充実性腫瘍であり得る。したがってそのような癌の処置は、個体にCRPSとCRPSレセプターとの相互作用を下げるCRPS治療物質を投与することを含んで成る。CRPSタンパク質で処置または予防できる他の癌には、肉腫および癌腫、例えば肺癌、結腸、前立腺、乳房、卵巣、食道の癌、肺癌、黒色腫、精上皮腫および鱗状の腺癌を含む。さらに本発明の範囲内の充実性腫瘍は、医学書に見いだされる腫瘍を含む。
処置または予防する症状は、慢性または急性のいずれかの白血病のような可溶性腫瘍であることができ、慢性または急性の骨髄性白血病、慢性または急性のリンパ性白血病、前骨髄球白血病、単球性白血病、骨髄単球白血病および赤白血病を含む。さらに本発明のCRPS治療物質を用いて処置できる他の増殖性障害には、重鎖疾患、多発性骨髄腫、リンパ腫例えばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む。
充実性または可溶性腫瘍を特徴とする疾患または症状は、異常な細胞増殖が抑制または減少するように、CRPS治療物質を局所的または全身的のいずれかで投与することにより処置することができる。本発明の化合物の投与法をさらに以下に記載する。
また本発明は腫瘍の形成および/または発育を防止するための方法も提供する。例えば腫瘍の発育には前−新形成性損傷、例えば細胞学的手法により検出することができる例えば過形成、化生および異形成のような特別な損傷の存在が先立つ。そのような損傷は例えば上皮組織に見いだすことができる。このように本発明はそのような損傷が新生物損傷に進行することを抑制する方法を提供し、この方法は前新生物性損傷を有する個体に前新生物性損傷が新生物性損傷へ進行するのを抑制するために十分な量のCRPS−1治療物質を投与することを含んで成る。
また本発明は細胞の増殖が望まれる疾患または症状を処置または予防するための方法も提供する。例えばCRPS治療物質は、外科医術後のような組織修復または創傷治癒を刺激し、あるいは火傷からの組織治癒を刺激するために使用することができる。細胞の増殖が望まれる他の疾患は欠陥増殖性疾患、例えば特定の細胞の異常に低い増殖を特徴とする疾患である。
さらに別の態様では、本発明は異常な細胞分化を特徴とする疾患または症状を処置または予防する方法を提供する。したがって本発明は過剰な増殖を伴う、または伴わなくてもよい正常な細胞分化の抑制を特徴とする症状において、細胞性の分化を刺激する方法を提供する。あるいはCRPS治療物質は特別な細胞の分化を抑制するために使用することができる。
好適な態様では、異常に増殖および/または分化している細胞は神経系に存在する細胞である。神経系中でのCRPSの役割は、ヒトのCRPS−1がヒトの胎児脳で発現するという事実から少なくとも一部が提案されている。したがって本発明は中枢または末梢神経系に関連する疾患または症状を処置する方法を提供する。例えば、本発明は以下の任意の細胞の異常な増殖、分化または生存に関連する神経系の損傷を処置するための方法を提
供する:ニューロン、シュワン細胞、グリア細胞および神経細胞の他の種類。神経系の障害には限定するわけではないが、脊髄損傷、脳損傷、外科医術に付随する損傷、虚血損傷、悪性損傷、感染性損傷、変性損傷(パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチングトン舞踏病、筋委縮性側索硬化症)、脱髄疾患(多発性硬化症、ヒト免疫不全付随ミエロパシー、横行ミエロパシー、進行性多病巣性白質脳障害、タンパク質ミエリン溶解)、運動ニューロン損傷、進行性脊髄性筋委縮症、進行性球麻痺、原発性側索硬化症、小児および若年性筋委縮症、子供の進行性球麻痺(Fazio−Londe症候群)、ポリオおよび遺伝性運動感覚ニューロン障害(Charcot−Marie−Tooth 病)を含む。
別の態様では本発明はインビトロで細胞および組織の生存を強化し、かつ/または増殖および/または分化を刺激する方法を提供する。好適な態様では、CRPS治療物質が組織の再生および/または修復を促進するために使用される(例えば神経損傷の処置)。例えば個体から組織を得、そして組織細胞が刺激されて増殖および/または分化するようにインビトロでCRPS治療物質の存在下にて成長させる。次に組織は個体に再度投与することができる。
異常なCRPS活性および/または異常な細胞増殖、分化および/または生存が関与する疾患の症状を改善するために使用され得る方法の中では、例えば上記のアンチセンス、リボザイムおよび三重ヘリックス分子がある。適当な化合物の例には、上記に詳細に記載したアンタゴニスト、アゴニストまたは相同体を含む。
さらに別のCRPS治療物質は、CRPSレセプターに結合できるCRPSペプチドを含んで成る第1ペプチド、および細胞障害性である第2ペプチドから成る。そのような治療物質は、CRPSのレセプターを発現または過剰発現している細胞を特異的に標的とし、そして溶解するために使用できる。
3.薬理遺伝学
本発明のCRPS分子、ならびに薬剤または本明細書に記載のスクリーニングアッセイにより同定されるCRPS活性(例えばCRPS遺伝子発現)に刺激または阻害効果を有するモジュレーターを、異常なCRPS活性に関連する障害(例えば増殖性または発育障害)を処置(予防的または治療的)するために個体に投与することができる。そのような処置と組み合わせて、薬理遺伝学(すなわち個体の遺伝型と個体の外来化合物または薬剤に対する反応との間の関連の研究)を考察することができる。治療物質の代謝における差異は、用量と薬理学的に活性な薬剤の血中濃度との間の関係が変わることにより重篤な毒性または治療的失敗につながり得る。すなわち内科医または臨床医は、CRPS分子またはCRPSモジュレーターを投与するべきかどうかの決定において、ならびにCRPS分子またはCRPSモジュレーターを用いた用量および/または治療的処方の調整において、関連する薬理学的研究から得た知識の適用を考慮することができる。
薬理遺伝学は、影響を受ける人々を対象として、変わった薬剤の傾向および異常な作用による薬剤に対する応答における臨床的に重要な遺伝的変動を扱う。例えばEichelbaum,M.,Clin Exp.Pharmacol Physiol,1996,23(10−11):983−985およびLinder,M.W.,Clin.Chem.1997,43(2):254−266を参照にされたい。一般的に2種類の薬理遺伝学的状態を区別することができる。身体に作用する薬剤の様式を変化させる唯一の因子として伝達される遺伝状態(変わった薬剤作用)、または薬剤に作用する身体の様式を変化させる唯一の因子として伝達される遺伝状態(変わった薬剤代謝)。これらの薬理遺伝学的状態は、稀な遺伝的欠失として、または自然に起こる多型のいずれかとして起こり得る。例えばグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ不全症(G6PD)は、主な臨床的
合併症が酸化薬剤(抗マラリア薬、スルホンアミド、鎮痛剤、ニトロフラン)の消化およびソラマメ摂取後の溶血反応である共通した遺伝的酵素病である。
「ゲノム−ワイドアソシエーション(genome−wide association)」として知られる薬剤応答を予知する遺伝子を同定するための1つの薬理遺伝学的方法は、主に既に知られている遺伝子−関連マーカー(例えば「ヒトのゲノム上に60,000〜100,000の多型性または可変性部位から成る「二対立(bi−allelic)」遺伝子マーカー地図、それぞれが2つの変異体を有する)から成るヒトゲノムの高解像地図に依存する。そのような高解像遺伝子地図は、観察される特定の薬剤応答または副作用に関連するマーカーを同定するためにフェイズII/III薬剤試験に参加した患者の統計的に有意な数のそれぞれのゲノム地図と比較することができる。あるいはそのような高解像地図は、ヒトゲノム中の数千万の既知の単一のヌクレオチド多型(single nucleotide polymorphisms:SNPs)の組み合わせから作成することができる。本明細書で使用するように、“SNP”は、広げたDNA中の1つのヌクレオチド塩基に起こる共通の変化である。例えばSNPはDNAの1000塩基毎に1回生じ得る。SNPは疾患プロセスに関与するかもしれないが、ほとんどの場合疾患には関連していない。そのようなSNPの発生に基づく遺伝子地図を仮定すると、個体はそれらの個々のゲノムに特定のSNPsパターンに依存する遺伝子カテゴリーに分類することができる。そのような様式では、そのような遺伝的に類似する個体間で共通するであろう形質を考慮して、処置処方を遺伝的に類似する個体群に調整することができる。
あるいは「候補遺伝子法」という方法を、薬剤応答を予知する遺伝子の同定に利用することができる。この方法に従い、薬剤標的をコードする遺伝子が知れれば(例えば、本発明のCRSPタンパク質またはCRSPレセプター)、その遺伝子のすべてに共通する変異体をかなり容易に群中で同定することができ、そして他に対して遺伝子の1変更を有することが特定の薬剤応答に関連するかどうかを決定することができる。
説明的な態様として、薬剤を代謝する酵素の活性は薬剤作用の強さおよび期間の両方の主要決定因子である。薬剤を代謝する酵素(例えばN−アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)およびチトクロームP450酵素CYP2D6およびCYP2C19)の遺伝的多型の発見は、標準的かつ安全な薬剤用量を摂取した後に、なぜ幾人かの患者には期待された薬剤効果が得られず、または悪化した薬剤応答および重篤な毒性が示されるのかという説明を提供した。これらの多型は群中2つの表現型、エクステンシブ メタボイライザー(extensive metabolizer:EM)およびプーア メタボイライザー(poor metabolizer:PM)で表された。PMの普及率は様々な群間で異なる。例えばCYP2D6をコードする遺伝子は高度に多型性であり、そしてPMに幾つかの突然変異が同定され、これはすべて機能的CYP2D6の不在を導く。CYP2D6およびCYP2C19のプーア メタボイライザーは、標準的な用量を受容した時に大変しばしば悪化した薬剤応答および副作用が経験された。もし代謝物質が活性な治療的部分であれば、PMはCYP2D6が形成する代謝物質であるモルホリンにより媒介されるコデインの鎮痛効果が証明するような治療的応答を表わさない。最近、超高速代謝の分子学的基礎によりCYP2D6遺伝子増幅によるものと同定された。
あるいは「遺伝子発現プロファイリング」という方法を利用して薬剤応答を予知する遺伝子を同定することができる。例えば、薬剤(本発明のCRSP分子またはCRSPモジュレーター)を投与した動物の遺伝子発現は、毒性に関連する遺伝子経路が通ったか否かの指標を与えることができる。
上記の1種以上の薬理遺伝学的手法から作成される情報を、個体の予防的または治療的処置のための適切な用量および処置処方を決定するために使用することができる。この知
識は、用量および薬剤選択に応用される時、悪い反応または治療的失敗を避けることができ、したがってCRSP分子または本明細書に記載の例示的なスクリーニングアッセイにより同定されるモジュレーターのようなCRSPモジュレーターを用いて個体を処置する時の治療的または予防的効力を増強させる。
本発明は限定することを意図していない以下の実施例によりさらに具体的に説明される。本出願を通して引用したすべての技術文献、特許および特許出願公報の内容は、引用により本明細書に編入する。