JP2010007618A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃焼割合を用いて点火時期を最適な時期に近づけるとともに燃焼割合を用いてEGR量を最大値(許容限界値)近傍に制御することが可能な制御装置を提供すること。
【解決手段】本装置は、各気筒の圧縮上死点後8度クランク角での燃焼割合(第一燃焼割合、MFB8)が目標第一燃焼割合(MFB8tgt)に一致するように、各気筒の点火時期SA(#n)を制御する。更に、本装置は、各気筒の圧縮上死点後30度クランク角での燃焼割合(第二燃焼割合、MFB30)に基づいて得られる「EGR制御用第二燃焼割合(MFB30EGR)」が、目標第二燃焼割合である「目標30deg燃焼割合MFB30tgt」に一致するようにEGRバルブ56の開度を調整する。この結果、点火時期をMBT近傍に制御し、且つ、EGR量を機関10のトルク変動を発生させない範囲において増大することができるので、燃費を改善することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関の点火時期及びEGR量を燃焼割合に基づいて制御する内燃機関の制御装置に関する。
従来から、燃焼割合MFB(Mass Fraction Burnt)に基づいて点火時期を制御することにより、点火時期をMBT(Minimum Advance For Best Torque、機関が発生するトルクが最大となる点火時期)に設定する点火時期制御装置が知られている。そのような点火時期制御装置の一つは、圧縮上死点後クランク角θ(例えば、θ=8)度における実際の燃焼割合MFBθ(=MFB8)を取得し、その実際の燃焼割合MFBθが所定の目標燃焼割合(例えば、60%)となるように点火時期を制御するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2006−144645号公報
ところで、既燃ガスの量であるEGR量を増大させるほど、各気筒が新気を吸入する際のポンピングロス(吸気損失)を低減させることができる。従って、EGR量が増大されるほど燃費は改善される。その一方、EGR量が過大になると燃焼速度が過度に低下する等の要因により、燃焼が不安定になる。燃焼が不安定になると燃費が悪化する。従って、EGR量は、燃焼の悪化を招かない範囲において増大させられることが望ましい。
他方、内燃機関は同一機種であっても製造上の個体差を有するから、EGRバルブの開度に対する実際のEGR量は「同一機種の機関の間において同一である」とは限らない。このため、従来の制御装置は、機関に個体差が存在するという前提下にてEGR量を制御している。即ち、EGR量は、「個体差に起因してEGR量が最も大きくなる機関(EGRにより燃焼が最も不安定になりやすい機関)」に対して「安定した燃焼が行われる範囲」を逸脱することがないように適合されている。この結果、従来の制御装置は、制御対象の機関が「EGR量を増大することによってポンピング損失を更に低減できる機関」であっても、EGR量を増大することができないので、燃費を更に向上することができない。
本発明は上記課題に対処するために為されたものである。即ち、本発明の目的の一つは、燃焼状態を燃焼割合によって監視しながらEGR量及び点火時期を制御することにより、燃焼が不安定にならない範囲においてEGR量を極限近くにまで増大し且つ点火時期がMBTの近傍になるように点火時期を制御し、もって、機関が個体差を有する場合であっても各機関の燃費を一層改善することができる制御装置を提供することにある。
本発明の内燃機関の制御装置は、複数の気筒を有する多気筒内燃機関に適用され、燃焼割合取得手段と、EGR制御用第二燃焼割合決定手段と、EGR量制御手段と、点火時期制御手段と、を備える。
前記燃焼割合取得手段は、前記複数の気筒のそれぞれについて、圧縮上死点後第一クランク角における実際の燃焼割合を第一燃焼割合として取得する。圧縮上死点後第一クランク角は燃焼が開始した時点から燃焼が終了する時点までの燃焼期間内であって燃焼期間の初期〜中期に相当するクランク角に設定される。例えば、圧縮上死点後第一クランク角は圧縮上死点後8度クランク角(ATDC8°)である。更に、前記燃焼割合取得手段は、前記複数の気筒のそれぞれについて、前記圧縮上死点後第一クランク角よりも遅角側である圧縮上死点後第二クランク角における実際の燃焼割合を第二燃焼割合として取得する。圧縮上死点後第二クランク角は、燃焼が実質的に終了する直前の時点(即ち、燃焼期間の後期)のクランク角に設定される。例えば、圧縮上死点後第二クランク角は圧縮上死点後30度クランク角(ATDC30°)である。
図1は、ある内燃機関について、点火時期SAと、第一燃焼割合(この場合、圧縮上死点後8度クランク角における燃焼割合MFB8)と、その機関の発生トルクTRQと、の関係を示したグラフである。図1から理解されるように、発生トルクTRQが最大となる第一燃焼割合(MFB8)は約60%である(図1の領域Aを参照。)。
ある気筒において所定の点火時期にて混合気を燃焼させた場合の第一燃焼割合は、他の気筒において同所定の点火時期にて混合気を燃焼させた場合の第一燃焼割合と一致するとは限らない。これは、ある気筒の「燃焼室の形状、デポジットの付着の仕方及び量、吸気弁の移動軌跡、点火プラグ性能、燃焼室の冷却効率、並びに、ガスの流れ方」等の燃焼状態に影響を及ぼす「気筒性能」が、他の気筒の「気筒性能」と完全には一致しないからである。更に、同一機種の内燃機関であっても、各機関は製造上の個体差を有する。従って、それぞれの気筒の点火時期は、それぞれの気筒の第一燃焼割合が目標第一燃焼割合に近しくなるように独立して制御されることが望ましい。更に、目標第一燃焼割合は、発生トルクTRQが最大となる場合の第一燃焼割合又はその近傍の割合に設定されることが望ましい。
図2は、吸入空気量及び燃料噴射量が一定である場合にEGR量(従って、EGR率)を変化させたときの燃焼割合をクランク角に対して示したグラフである。図2において点火時期Aigは一定である。図2において、破線はEGR量が第一の量である場合、実線はEGR量が第一の量よりも大きい第二の量である場合、一点鎖線はEGR量が第二の量よりも大きい第三の量である場合の燃焼割合を示す。
図2に示したように、EGR量が大きくなるほど、燃焼割合の変化率(即ち、燃焼速度に相当する値)は減少する。従って、点P1a、P1b及びP1cにより示されるように、第一燃焼割合(図2においては圧縮上死点後8度クランク角における燃焼割合MFB8)は、EGR量が大きいほど小さくなる。更に、点P2a、P2b及びP2cにより示されるように、第二燃焼割合(図2においては圧縮上死点後30度クランク角における燃焼割合MFB30)は、EGR量が大きいほど小さくなる。
以上のことから、第二燃焼割合が目標第二燃焼割合よりも大きい場合、EGR量を大きくすれば、第二燃焼割合は目標第二燃焼割合に近づくことが理解される。更に、第二燃焼割合が目標第二燃焼割合よりも小さい場合、EGR量を小さくすれば、第二燃焼割合は目標第二燃焼割合に近づくことが理解される。加えて、EGR量を大きくすれば第一燃焼割合は小さくなり、EGR量を小さくすれば第一燃焼割合は大きくなることが理解される。
図3は、吸入空気量、燃料噴射量及びEGR量を変化させることなく、点火時期を変化させた場合における燃焼割合をクランク角に対して示したグラフである。図3において、破線は点火時期が第一点火時期Aig1である場合の燃焼割合を示し、実線は点火時期が第一点火時期Aig1よりも遅角側の第二点火時期Aig2である場合の燃焼割合を示し、一点鎖線は点火時期が第二点火時期Aig2よりも遅角側の第三点火時期Aig3である場合の燃焼割合を示す。
図3に示したように、点火時期が遅角側に移行するほど、燃焼割合の立ち上がり開始時期が遅くなる。従って、点P1d、P1e及びP1fにより示されるように、第一燃焼割合(図3の例における燃焼割合MFB8)は、点火時期が遅角側に移行するほど小さくなる。更に、点P2d、P2e及びP2fにより示されるように、第二燃焼割合(図3の例における燃焼割合MFB30)は、点火時期が遅角側に移行するほど小さくなる。
以上のことから、第一燃焼割合が目標第一燃焼割合よりも大きい場合、点火時期を遅角側に変化させれば、第一燃焼割合は目標第一燃焼割合に近づくことが理解される。更に、第一燃焼割合が目標第一燃焼割合よりも小さい場合、点火時期を進角側に変化させれば、第一燃焼割合は目標第一燃焼割合に近づくことが理解される。加えて、点火時期を進角側に変化させれば第二燃焼割合は大きくなり、点火時期を遅角側に変化させれば第二燃焼割合は小さくなることが理解される。
以上の観点に立ち、本制御装置のEGR制御用第二燃焼割合決定手段は、前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合に基づいてEGR制御用第二燃焼割合を決定する。EGR制御用第二燃焼割合は、例えば、それぞれの気筒に対して取得された前記第二燃焼割合の平均値、それぞれの気筒に対して取得された前記第二燃焼割合のうちの最小値を除いた残りの前記第二燃焼割合の平均値、それぞれの気筒に対して取得された前記第二燃焼割合のうちの最小値及び最大値を除いた残りの前記第二燃焼割合の平均値、及び、それぞれの気筒に対して取得された前記第二燃焼割合のうちの最小値等である。
更に、本制御装置のEGR量制御手段は、前記決定されたEGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合に一致するように前記機関の気筒に供給される既燃ガスの量であるEGR量を制御する。目標第二燃焼割合は、例えば、85〜95%のうちの適値である。目標第二燃焼割合は、EGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合に一致しているとき燃焼が安定して行われる範囲内のEGR量の最大値に相当する値に選択される。換言すると、目標第二燃焼割合は、EGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合よりも小さいときにはEGR量が過大であって燃焼が不安定となっている可能性が高く、EGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合よりも大きいときには燃焼が安定しているから、更にEGR量を増大しても燃焼が不安定にはならない可能性が高い値に選択される。この結果、EGR量は、燃焼を不安定にすることがない範囲内において最大値近傍の値に維持される。
加えて、本制御装置の点火時期制御手段は、それぞれの気筒の第一燃焼割合が目標第一燃焼割合に近しくなるようにそれぞれの気筒の点火時期を制御する。この結果、各気筒は最大トルクに近しいトルクを発生することができる。目標第一燃焼割合は、例えば、45〜65%のうちの適値である。
この結果、本発明の制御装置によれば、各気筒の点火時期はMBTの近傍の時期となり、EGR量は燃焼の悪化を招かない範囲内の最大値(許容限界値)へと近づく。従って、それぞれの機関が固有の実力を最大限近くにまで発揮することができるので、優れた燃費を実現することができる。
この場合、前記EGR制御用第二燃焼割合決定手段は、
「前記複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間」において「同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合(複数の第二燃焼割合)」のうちの最小の第二燃焼割合を「前記EGR制御用第二燃焼割合」として採用するように構成されることが好適である。
各気筒に供給されるEGR量は、サージタンクの形状、吸気ポートの形状及びEGR用配管の吸気通路への接続位置等に依存する。即ち、EGR量は各気筒間において互いに等しくなるとは限らない。加えて、本制御装置はEGR量を許容限界値近傍に制御する。即ち、EGR量は非常に大きい量となる。従って、ある気筒においてはEGR量が適値となってその気筒において安定した燃焼が発生しても、別の気筒においてはEGR量が過大となってその別の気筒において燃焼が不安定となる場合が発生する虞がある。
そこで、上記構成のように、前記複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る期間(例えば、720°クランク角が経過する期間)において、「その複数の気筒のそれぞれについて取得された第二燃焼割合のうちの最小の第二燃焼割合」を前記EGR制御用第二燃焼割合として採用する。これによれば、EGR量が最も多量となっている気筒(EGR率が最大となっている気筒)の燃焼が安定して行われるようにEGR量が制御される。従って、EGR量を「総ての気筒において燃焼の悪化を招かない範囲内の最大値(許容限界値)」へとより確実に近づけることができる。
代替として、
前記EGR制御用第二燃焼割合決定手段は、
「前記複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間において同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合に基づいて決定される値」であって「同所定期間において同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの最小値よりも大きい値」を「前記EGR制御用第二燃焼割合」として決定するように構成され得る。
これによれば、「前記所定期間において得られた複数の第二燃焼割合のうちの最小値」よりも大きい値が「EGR制御用第二燃焼割合」として採用される。このような値の例として、以下のような値が挙げられる。
(1)前記所定期間において前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合の総ての平均値、又は、
(2)前記所定期間において前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの最小の第二燃焼割合を除いた第二燃焼割合(残りの第二燃焼割合)に基づいて決定される値(例えば、残りの第二燃焼割合の平均値)。
このように、EGR制御用第二燃焼割合として採用される値が前記所定期間において得られた第二燃焼割合のうちの最小値よりも大きい値であると、そのEGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合に一致している場合であっても、EGR量(EGR率)が過大であって燃焼が不安定になる気筒が発生し得る。即ち、第二燃焼割合が最小値である気筒の燃焼が不安定となる場合が生じる。
そこで、前記EGR量制御手段は、
前記複数の気筒のそれぞれについての実際のEGR率である気筒別EGR率を取得するとともに同取得された気筒別EGR率に基づいて気筒間のEGR率の差が所定値以上であると判定したとき前記EGR量を前記EGR制御用第二燃焼割合に関わらず減少するように構成されることが望ましい。
これによれば、気筒毎の実際のEGR率(気筒別EGR率)が取得され、その取得された気筒別EGR率に基づいて気筒間のEGR率の差が所定値以上であると判定されたとき、EGR量が「EGR制御用第二燃焼割合」の大小に関わらず減少される。この結果、EGR量(EGR率)が過大であって燃焼が不安定になる気筒が発生することを回避することができる。
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の制御装置について図面を参照しつつ説明する。
<第一実施形態>
(構成)
図4は、第一実施形態に係る内燃機関の制御装置(以下、「第一制御装置」と称呼することもある。)をピストン往復動型・火花点火式・ガソリン燃料・多気筒(4気筒)・4サイクル内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。なお、図4は、特定の気筒の断面のみを図示しているが、他の気筒も同様な構成を備えている。
この内燃機関10は、シリンダブロック、シリンダブロックロワーケース及びオイルパン等を含むシリンダブロック部20と、シリンダブロック部20の上に固定されるシリンダヘッド部30と、シリンダブロック部20にガソリン混合気を供給するための吸気系統40と、シリンダブロック部20からの排ガスを外部に放出するための排気系統50と、を含んでいる。
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23及びクランク軸24を含んでいる。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランク軸24に伝達され、これによりクランク軸24が回転するようになっている。シリンダ21とピストン22のヘッドは、シリンダヘッド部30とともに燃焼室25を形成している。
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を開閉駆動する吸気弁制御装置33、燃焼室25に連通した排気ポート34、排気ポート34を開閉する排気弁35、排気弁35を駆動するエキゾーストカムシャフト36、点火プラグ37、点火プラグ37に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ38及び燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)39を備えている。
吸気弁制御装置33は、インテークカムシャフトとインテークカム(図示せず)との相対回転角度(位相角度)を油圧により調整・制御する周知の構成を備え、吸気弁32の開弁時期(吸気弁開弁時期)VTを変更することができるようになっている。
本例において、吸気弁の開弁期間(開弁クランク角度幅)は一定である。従って、吸気弁開弁時期が所定角度だけ進角又は遅角させられると、吸気弁閉弁時期も同所定角度だけ進角又は遅角させられる。また、排気弁35の開弁時期及び閉弁時期は一定である。従って、吸気弁制御装置33によって吸気弁開弁時期が変更されることに伴ってバルブオーバーラップ期間(吸気弁32及び排気弁35が共に開弁している期間)が変化する。バルブオーバーラップ期間が大きいほど、そのバルブオーバーラップ期間中に吸気ポート31に排出される既燃ガス(燃焼ガス、内部EGRガス)の量が増大するので、バルブオーバーラップ期間後において吸気弁32が開弁しているときに燃焼室25内に流入する既燃ガスの量(内部EGR量)も増大する。
なお、吸気弁制御装置33によって吸気弁開弁時期が最も遅角側に設定されている場合を基準値0とし、その基準値から実際に制御されている吸気弁開弁時期までのクランク角度を吸気弁進角度VTと称呼する。従って、吸気弁進角度VTはバルブオーバーラップ期間に応じた値となる。即ち、吸気弁進角度VTが大きいほどバルブオーバーラップ期間は長くなり、圧縮行程開始時に燃焼室25内に含まれる既燃ガス量も増大する。但し、第一制御装置において、内部EGR量は一定に維持される。
吸気系統40は、インテークマニホールド41、吸気管(吸気ダクト)42、エアフィルタ43、スロットル弁44及びスロットル弁アクチュエータ44aを備えている。
インテークマニホールド41は、各気筒の吸気ポート31に接続されている。より詳細には、インテークマニホールド41は各吸気ポート31に接続された複数の枝部41aと、それらの枝部が集合したサージタンク部41bと、を備えている。吸気管42はサージタンク部41bに接続されている。インテークマニホールド41及び吸気管42は吸気通路を構成している。エアフィルタ43は吸気管42の端部に設けられている。スロットル弁44は吸気管42に回動可能設けられ、回動することにより吸気管42が形成する吸気通路の開口断面積を変更するようになっている。スロットル弁アクチュエータ(スロットル弁駆動手段)44aは、DCモータからなり、指示信号に応答してスロットル弁44を回転駆動するようになっている。
排気系統50は、各排気ポート34に連通した枝部とそれらの枝部が集合した集合部とを有するエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51に接続されたエキゾーストパイプ(排気管)52、上流側の三元触媒53及び下流側の三元触媒54を備えている。上流側の三元触媒53は、エキゾーストパイプ52に配設されている。下流側の三元触媒54は、上流側の三元触媒53の下流においてエキゾーストパイプ52に配設されている。排気ポート34、エキゾーストマニホールド51及びエキゾーストパイプ52は、排気通路を構成している。
更に、排気系統50は、排気還流管55と、EGRバルブ56と、を備えている。
排気還流管55の一端は、エキゾーストマニホールド51の集合部に連通している。排気還流管55の他端は、インテークマニホールド41のサージタンク部41bに連通している。
EGRバルブ56は、排気還流管55に配設されている。EGRバルブ56は指示信号に応答して排気還流管55が形成する通路(排気還流路)の断面積を変更するようになっている。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ61、スロットルポジションセンサ62、カムポジションセンサ63、クランクポジションセンサ64、各気筒に設けられた筒内圧センサ65、冷却水温センサ66、第1触媒53の上流の排気通路に配設された上流側空燃比センサ67、第1触媒53の下流であって第2触媒54の上流の排気通路に配設された下流側空燃比センサ68、アクセル開度センサ69及び電気制御装置70を備えている。
熱線式エアフローメータ61は、吸気管42内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量を検出し、質量流量Gaを表す信号を出力するようになっている。
スロットルポジションセンサ62は、スロットル弁44の開度を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
カムポジションセンサ63は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。
クランクポジションセンサ64は、クランク軸24が10度回転する毎にパルスを出力するようになっている。クランクポジションセンサ64から出力されるパルスは機関回転速度NEを表す信号に変換されるようになっている。更に、カムポジションセンサ63及びクランクポジションセンサ64からの信号に基いて、各気筒のクランク角θが求められるようになっている。
筒内圧センサ65は、対応する燃焼室25内の圧力を検出し、筒内圧Pを表す信号を出力するようになっている。各気筒の筒内圧Pはクランク角が微小角度Δθだけ変化する毎に電気制御装置70により取得され、その筒内圧Pが取得された気筒のクランク角θとともに後述するRAM73に筒内圧P(θ)の形式にて格納されて行く。
上流側空燃比センサ67及び下流側空燃比センサ68は、触媒53の上下流の空燃比を検出し、その上下流の空燃比を表す信号をそれぞれ出力するようになっている。
アクセル開度センサ69は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を検出し、アクセルペダル81の操作量Accpを表す信号を出力するようになっている。
電気制御装置70は、互いにバスで接続された「CPU71、CPU71が実行するルーチン(プログラム)、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)及び定数等を予め記憶したROM72、CPU71が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM73、図示しないイグニッション・キー・スイッチがオン位置にあるときデータを書き込むことが可能であり且つイグニッション・キー・スイッチの位置に拘らず書き込まれたデータを保持するバックアップRAM74、並びに、ADコンバータを含むインターフェース75等」からなるマイクロコンピュータである。インターフェース75は、前記センサ61〜69と接続され、CPU71にセンサ61〜69からの信号を供給するようになっている。インターフェース75は、CPU71の指示に応じて吸気弁制御装置33、各気筒の燃料噴射弁39、スロットル弁アクチュエータ44a及びEGRバルブ56に駆動信号(指示信号)を送出するとともに、各気筒のイグナイタ38に点火信号を送出するようになっている。
(第一制御装置の作動の概要)
第一制御装置は、燃焼割合に基づいて機関10を制御する。以下、第一制御装置の作動の概要について説明する。
<燃焼割合の取得>
燃焼割合は、機関10の燃焼状態を示す燃焼状態指標値である。燃焼割合は図示熱量の割合と実質的に等価な値である。図示熱量の割合は、一回の燃焼行程に関して、「燃焼室において燃焼した総ての燃料によって発生した熱のうちピストンに対する仕事に変換された熱の総量Qtotalに対する、所定のタイミング(圧縮上死点後クランク角θ)までに同燃焼室において燃焼した燃料によって発生した熱のうちピストンに対する仕事に変換された熱の積算量Qsumの割合Qsum/Qtotal」と定義される。燃焼割合は、「燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対する、所定のタイミング(圧縮上死点後クランク角θ)までに同燃焼室において燃焼した燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の積算量の割合」と定義される。
このように定義される燃焼割合は図示熱量の割合Qsum/Qtotalを表す値として推定(取得)される。燃焼割合を「筒内圧センサ65によって検出された筒内圧Pc」に基づいて求める手法の詳細は、例えば、特開2006−144645号公報に開示されているので、以下、その概略について述べる。
本例において、燃焼割合は所定のタイミングを表すクランク角θに対応して求められる。クランク角θにおける燃焼割合をMFBθと表す。このクランク角θは圧縮上死点において「0」となり、圧縮上死点から圧縮上死点前に向って進角するほど絶対値が大きくなる負の値をとり、圧縮上死点から圧縮上死点後に向って遅角するほど絶対値が大きくなる正の値をとるように定義される。即ち、燃焼割合MFBθにおいてθが−θ1度クランク角(=−θ1°、θ1>0)であるとき、その燃焼割合MFBθは「BTDCθ1°における燃焼割合」である。燃焼割合MFBθにおいてθがθ2度クランク角(=θ2°、θ2>0)であるとき、その燃焼割合MFBθは「ATDCθ2°における燃焼割合」である。
クランク角θにおける燃焼割合MFBθは、下記の(1)式により推定される。(1)式において、Pc(θ)は圧縮上死点後クランク角θにおける筒内圧、V(θ)は圧縮上死点後クランク角θにおける燃焼室25の容積、κは混合ガスの比熱比(例えば、1.32)である。なお、(1)式の分母はMFBの100%に相当する値である。クランク角θs(θs<0)は、対象とする燃焼行程(膨張行程)に向う圧縮行程において吸気弁32及び排気弁35の両方が閉じた状態にあり且つ点火時期よりも十分に進角した時期(例えば、θs=−60°、即ち、BTDC60°)である。クランク角θe(θe>0)は、対象とする燃焼行程における燃焼が実質的に終了する最も遅い時期よりも遅い所定の時期且つ排気弁開弁時期よりも進角した時期(例えば、θe=60°、即ち、ATDC60°)である。
Figure 2010007618
図5の(A)はクランク角θに対する筒内圧Pの変化の様子を示したグラフである。図5の(B)はクランク角θに対するP(θ)・V(θ)κの変化の様子を示したグラフである。図5の(A)及び(B)において、クランク角0は「圧縮上死点」を示し、クランク角θが負の値である領域は圧縮上死点前(BTDC)を示し、クランク角θが正の値である領域は圧縮上死点後(ATDC)を示す。
図5の(B)においては、P(θ)・V(θ)κは実線により示され、燃焼室25において発生した熱のうちピストンに対する仕事に寄与した熱の積算量Q(累積加熱量Q)は破線により示されている。この両者の比較から、累積加熱量Qの変化パターンはP(θ)・V(θ)κの変化パターンと概ね一致することが理解される。上記(1)式は、この「累積加熱量Qの変化パターンがPc(θ)V(θ)κの変化パターンと概ね一致する。」という知見に基いている。
第一制御装置は、点火時期及びEGR量の制御を行うために、各気筒に対して第一燃焼割合及び第二燃焼割合を取得する。
第一燃焼割合は、圧縮上死点後第一クランク角における燃焼割合である。圧縮上死点後第一クランク角は燃焼が開始した時点から燃焼が終了する時点までの燃焼期間内であって燃焼期間の初期から中期までの間の所定のクランク角(燃焼の重心に相当するクランク角)に設定される。本例において、圧縮上死点後第一クランク角はATDC8°である。よって、以下、第一燃焼割合は8deg燃焼割合MFB8(又は単にMFB8)とも表記される。8deg燃焼割合MFB8は、上記(1)式においてPc(θ)にPc(8°)を代入し、V(θ)にV(8°)を代入することにより取得される。
第二燃焼割合は、圧縮上死点後第二クランク角における燃焼割合である。圧縮上死点後第二クランク角は圧縮上死点後第一クランク角よりも遅角側のクランク角である。即ち、圧縮上死点後第二クランク角は、燃焼が実質的に終了する直前の時点(即ち、燃焼期間の後期)のクランク角に設定される。本例において、圧縮上死点後第二クランク角はATDC30°である。よって、以下、第二燃焼割合は30deg燃焼割合MFB30(又は単にMFB30)とも表記される。30deg燃焼割合MFB30は、上記(1)式においてPc(θ)にPc(30°)を代入し、V(θ)にV(30°)を代入することにより取得される。
<点火時期制御及びEGR量(EGR率)制御>
図1は、機関10について、点火時期SAと、第一燃焼割合(8deg燃焼割合MFB8)と、その機関の発生トルク(図示トルク)TRQと、の関係を示したグラフである。図1から理解されるように、発生トルクTRQが最大となる第一燃焼割合(8deg燃焼割合MFB8)は約60%である(図1の領域Aを参照。)。
ある気筒において所定の点火時期にて混合気を燃焼させた場合の第一燃焼割合は、他の気筒において同所定の点火時期にて混合気を燃焼させた場合の第一燃焼割合と一致するとは限らない。これは、ある気筒の「燃焼室の形状、デポジットの付着の仕方及び量、吸気弁の移動軌跡、点火プラグ性能、燃焼室の冷却効率、並びに、ガスの流れ方」等の燃焼状態に影響を及ぼす「気筒性能」が、他の気筒の「気筒性能」と完全には一致しないからである。更に、同一機種の内燃機関であっても、各機関は製造上の個体差を有する。従って、それぞれの気筒の点火時期は、それぞれの気筒の第一燃焼割合が目標第一燃焼割合に近しくなるように独立して制御されることが望ましい。更に、目標第一燃焼割合は、発生トルクTRQが最大となる場合の第一燃焼割合又はその近傍の割合に設定されることが望ましい。
図2は、吸入空気量及び燃料噴射量が一定である場合にEGR量(従って、EGR率)を変化させたときの燃焼割合をクランク角に対して示したグラフである。図2において点火時期Aigは一定である。図2において、破線はEGR量が第一の量である場合、実線はEGR量が第一の量よりも大きい第二の量である場合、一点鎖線はEGR量が第二の量よりも大きい第三の量である場合の燃焼割合を示す。
図2に示したように、EGR量が大きくなるほど、燃焼割合の変化率(即ち、燃焼速度に相当する値)は減少する。従って、点P1a、P1b及びP1cにより示されるように、第一燃焼割合(8deg燃焼割合MFB8)は、EGR量が大きいほど小さくなる。更に、点P2a、P2b及びP2cにより示されるように、第二燃焼割合(30deg燃焼割合MFB30)は、EGR量が大きいほど小さくなる。
以上のことから、第二燃焼割合(MFB30)が目標第二燃焼割合(MFB30tgt)よりも大きい場合、EGR量を大きくすれば、第二燃焼割合(MFB30)は目標第二燃焼割合(MFB30tgt)に近づくことが理解される。更に、第二燃焼割合(MFB30)が目標第二燃焼割合(MFB30tgt)よりも小さい場合、EGR量を小さくすれば、第二燃焼割合(MFB30)は目標第二燃焼割合(MFB30tgt)に近づくことが理解される。
図3は、吸入空気量、燃料噴射量及びEGR量を変化させることなく、点火時期を変化させた場合における燃焼割合をクランク角に対して示したグラフである。図3において、破線は点火時期が第一点火時期Aig1である場合の燃焼割合を示し、実線は点火時期が第一点火時期Aig1よりも遅角側の第二点火時期Aig2である場合の燃焼割合を示し、一点鎖線は点火時期が第二点火時期Aig2よりも遅角側の第三点火時期Aig3である場合の燃焼割合を示す。
図3に示したように、点火時期が遅角側に移行するほど、燃焼割合の立ち上がり開始時期が遅くなる。従って、点P1d、P1e及びP1fにより示されるように、第一燃焼割合(MFB8)は、点火時期が遅角側に移行するほど小さくなる。更に、点P2d、P2e及びP2fにより示されるように、第二燃焼割合(MFB30)は、点火時期が遅角側に移行するほど小さくなる。
以上の観点に立ち、第一制御装置は、それぞれの気筒の第一燃焼割合(MFB8)が目標第一燃焼割合(MFB8tgt)に一致するようにそれぞれの気筒の点火時期を制御する。目標第一燃焼割合(MFB8tgt)は、例えば、45〜65%のうちの適値である。この結果、第一制御装置によれば、各気筒の点火時期はMBTの近傍の時期となるから、各気筒は最大トルクに近しいトルクを発生することができる。
更に、第一制御装置は、それぞれの気筒の第二燃焼割合(MFB30)に基づいてEGR制御用第二燃焼割合を決定する。より具体的には、第一制御装置は、それぞれの気筒について取得された最新の第二燃焼割合(MFB30)の中の最小値MINをEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして採用する。そして、第一制御装置は、そのEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標第二燃焼割合MFB30tgtに一致するようにEGR量を制御する。即ち、第一制御装置は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標第二燃焼割合MFB30tgtよりも大きいとき、EGRバルブ56の開度を増大させることによりEGR量を増大させる。更に、第一制御装置は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標第二燃焼割合MFB30tgtよりも小さいとき、EGRバルブ56の開度を減少させることによりEGR量を減少させる。
目標第二燃焼割合MFB30tgtは、例えば、85〜95%のうちの適値である。目標第二燃焼割合MFB30tgtは、ある気筒の第二燃焼割合MFB30が目標第二燃焼割合MFB30tgtに一致しているとき、その気筒のEGR量が「その気筒における燃焼が安定して行われる範囲内のEGR量の最大値」と略一致するように選択される。
換言すると、目標第二燃焼割合MFB30tgtは、第二燃焼割合MFB30が目標第二燃焼割合MFB30tgtよりも小さいときにはEGR量が過大であって燃焼が不安定となっている可能性が高く、第二燃焼割合MFB30が目標第二燃焼割合MFB30tgtよりも大きいときには燃焼が安定しているから、更にEGR量を増大しても燃焼が不安定にはならない可能性が高い値に選択される。
前述したように、第一制御装置は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして、それぞれの気筒について取得された最新の第二燃焼割合(MFB30)のうちの最小値MINを採用する。換言すると、第一制御装置は、EGRバルブ56のある開度に対してEGR量(従って、EGR率)が最も大きくなっていて燃焼が最も不安定となり易い気筒の第二燃焼割合MFB30を目標第二燃焼割合MFB30tgtに一致させるように、EGRバルブ56の開度を制御する。従って、EGR量を「EGR量が最も大きくなる気筒における燃焼を不安定にすることがない範囲内において最大値近傍」に設定することができる。その結果、全体のEGR量も許容限界値近傍となるので、ポンピングロスが低減される。
(第一制御装置による制御の詳細)
次に、第一制御装置による制御の詳細について説明する。
1.スロットル弁制御
CPU71は、図示しないスロットル弁制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。CPU71は、そのルーチンにおいて、アクセルペダル操作量Accpを取得し、アクセルペダル操作量Accpが大きいほど大きくなる目標スロットル弁開度TAtgtを取得する。そして、実際のスロットル弁開度TAが目標スロットル弁開度TAtgtに一致するように、スロットル弁アクチュエータ44aに指示信号を送出する。
2.燃料噴射制御
CPU71は、図示しない燃料噴射制御ルーチンを「各気筒のクランク角が吸気上死点前の所定クランク角度(例えば、吸気上死点前90°)に一致する毎」に繰り返し実行するようになっている。以下、クランク角が吸気上死点前の前記所定クランク角に一致した気筒を燃料噴射気筒とも称呼する。
CPU71は、エアフローメータ61が検出する流量Gaと別途算出されている機関回転速度NEとに基づいて、燃料噴射気筒に吸入される空気量(筒内吸入空気量Mc)を求める。その後、CPU71は、筒内吸入空気量Mcを目標空燃比Abyfref(通常は、理論空燃比)により除した量を燃料噴射量Fiとして求める。CPU71は、この燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に対応する燃料噴射弁39から噴射されるように、その燃料噴射弁39に指示信号を送出する。
3.点火時期制御
CPU71は、図6に示した点火時期制御ルーチンを所定の微小時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ600から処理を開始してステップ610に進み、変数nの値を「1」に設定する。次いで、CPU71はステップ620に進み、現時点のクランク角が「第n気筒(この場合、第1気筒)の圧縮上死点後60度クランク角」であるか否かを判定する。
このとき、現時点のクランク角が「第n気筒(この場合、第1気筒)の圧縮上死点後60度クランク角」であると、CPU71はステップ620にて「Yes」と判定し、後述するステップ630乃至ステップ660の処理を順に行うことにより、第n気筒の点火時期SA(#n)を設定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ステップ620の処理の実行時点において、現時点のクランク角が「第n気筒(この場合、第1気筒)の圧縮上死点後60度クランク角」でないと、CPU71は以下に述べるステップ670及びステップ680の処理を実行する。
ステップ670:CPU71は変数nの値を「1」だけ増大する。
ステップ680:CPU71は変数nの値が「4(機関10の気筒数)」よりも大きいか否かを判定する。変数nの値が「4」よりも大きいと、CPU71はステップ680にて「Yes」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、変数nの値が「4」以下であると、CPU71はステップ680にて「No」と判定し、ステップ620に戻る。
このステップ670及びステップ680の処理により、現時点が「第1気筒乃至第4気筒のうちの何れかの気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点後60度クランク角」である場合に、以下に述べるステップ630乃至ステップ660の処理が行われることになる。
ステップ630:CPU71は、上記(1)式に従って第n気筒の8deg燃焼割合MFB8(#n)を取得する。即ち、CPU71は、上記(1)式のPc(θ)に第n気筒の筒内圧センサ65の出力に基づいて得られたPc(8°)を代入し、V(θ)にV(8°)を代入することにより、第n気筒の8deg燃焼割合MFB8(#n)を算出する。このステップ630は、機能ブロック図である図7に示した「実燃焼割合MFB8算出手段A1」の機能に対応している。V(8°)は予めROM72に記憶されている。
ステップ640:CPU71は、上記(1)式に従って第n気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)を取得する。即ち、CPU71は、上記(1)式のPc(θ)に第n気筒の筒内圧センサ65の出力に基づいて得られたPc(30°)を代入し、V(θ)にV(30°)を代入することにより、第n気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)を算出する。V(30°)は予めROM72に記憶されている。この第n気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)は、後述するEGR量制御ルーチンにおいて使用される。
ステップ650:CPU71は、ステップ630にて取得した8deg燃焼割合MFB8(#n)が、目標第一燃焼割合である「目標8deg燃焼割合MFB8tgt」と一致するように、第n気筒の点火時期SA(#n)を決定する。
このステップ650の処理について、図7を参照しながらより具体的に説明する。図7に示した目標値設定手段A2は目標8deg燃焼割合MFB8tgtを出力する。目標8deg燃焼割合MFB8tgtは一定値である。ここでは、目標8deg燃焼割合MFB8tgtは50%(又は、50〜60%の適値)に設定されている。但し、目標値設定手段A2は目標8deg燃焼割合MFB8tgtを機関10の運転状態に応じて変更してもよい。偏差算出手段A3は、この「目標8deg燃焼割合MFB8tgt」から「実燃焼割合MFB8算出手段A1により算出された第n気筒の8deg燃焼割合MFB8(#n)」を減じることにより、これらの差ΔMを算出する。点火時期補正量算出手段A4は、下記(2)式に示したように、差ΔMに対してPI(比例・積分)処理を行うことにより第n気筒の点火時期補正量ΔSA(#n)を求める。(2)式のKpは比例定数であり、Kiは積分定数である。SΔMは差ΔMの積分値であり、下記(3)式に基いて求められる。
Figure 2010007618
Figure 2010007618
更に、CPU71は、点火時期モデルFSAを用いて基本点火時期SAbを求める。即ち、CPU71は、図7に示した運転状態量取得手段A5によって取得された実運転状態量(NE(k),KL(k))を図7に示した基本点火時期決定手段A6に相当する「点火時期モデルFSA」に適用する。これにより、CPU71は、今回の燃焼に対する基本点火時期SAbを算出する。NE(k)は現時点におけるエンジン回転速度NEであり、KL(k)は現時点における負荷率である。負荷率KL(k)は、下記の(4)式により求められる。(4)式において、Mc(k)は筒内吸入空気量であり、エアフローメータ61の検出する質量流量Ga及びエンジン回転速度NEに基づいて求められる。ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。点火時期モデルFSAは、下記の(5)式の形の関数によって表される。(5)式において、θ0〜θ3、a、b、c及びdは予め定められた定数である。
Figure 2010007618
Figure 2010007618
なお、筒内吸入空気量Mc(k)は、空気の挙動を記述した周知の空気モデルにより取得されてもよい。運転状態量取得手段A5は、負荷KL(k)として、アクセルペダル81の操作量Accpを取得するように構成されていてもよい。
更に、CPU71は図6のステップ650において、基本点火時期SAbに第n気筒の点火時期補正量ΔSA(#n)を加え、第n気筒の点火時期SA(#n)を決定する。この処理は、図7に示した点火時期設定手段A7の機能に相当している。
ステップ660:CPU71は、第n気筒の実際の点火時期が第n気筒の点火時期SA(#n)と一致するように、第n気筒のイグナイタ38に点火指示信号を送出する。
4.EGR量制御(EGRバルブ制御)
CPU71は、図8に示したEGR量制御ルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPU71はステップ800から処理を開始し、ステップ810に進んで、各気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)の最新値を読み込む。即ち、CPU71は、第1気筒の30deg燃焼割合MFB30(#1)、第2気筒の30deg燃焼割合MFB30(#2)、第3気筒の30deg燃焼割合MFB30(#3)及び第4気筒の30deg燃焼割合MFB30(#4)を読み込む。これらの値は、先に説明した図6のステップ640において更新される毎にRAM73に格納されている。このように、ステップ810は、「機関10が有する複数の気筒のそれぞれ(第1気筒〜第4気筒)が少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間(720度クランク角)」において「その複数の気筒のそれぞれについて取得された第二燃焼割合MFB30(#n)(nは1〜4の整数)」を取得する手段に相当している。
次に、CPU71はステップ820に進み、ステップ810にて読み込んだ第n気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)(即ち、第1気筒の30deg燃焼割合MFB30(#1)乃至第4気筒の30deg燃焼割合MFB30(#4))の中から最小値MINを選択し、その最小値MINをEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして採用する。
次いで、CPU71はステップ830に進み、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標第二燃焼割合である「目標30deg燃焼割合MFB30tgt」よりも大きいか否かを判定する。CPU71は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標30deg燃焼割合MFB30tgtよりも大きい場合、ステップ830にて「Yes」と判定し、ステップ840に進んでEGRバルブ56の目標開度EGRVtgtを微小量ΔEGRだけ増大させる。その後、CPU71はステップ850に進み、EGRバルブ56の開度が目標開度EGRVtgtに一致するようにEGRバルブ56に指示信号を送出する。
一方、ステップ830の処理の実行時点において、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標30deg燃焼割合MFB30tgt以下である場合、CPU71はステップ830にて「No」と判定し、ステップ860に進んでEGRバルブ56の目標開度EGRVtgtを微小量ΔEGRだけ減少させる。その後、CPU71はステップ850に進み、EGRバルブ56の開度が目標開度EGRVtgtに一致するようにEGRバルブ56に指示信号を送出する。
この結果、30deg燃焼割合MFB30(#n)が最小値MINであった第p気筒(pは1〜4の整数のうちの何れか)の30deg燃焼割合MFB30(#p)が目標30deg燃焼割合MFB30tgtに一致させられる。従って、第p気筒以外の気筒の30deg燃焼割合MFB30(#m)(mは1〜4の整数のうちpを除いた値)は目標30deg燃焼割合MFB30tgtよりも大きくなる。
この結果、各気筒における燃焼を不安定にすることがない範囲内においてEGR量を最大値近傍に設定することができる。従って、ポンピングロスが低減する。更に、各気筒の点火時期補正量ΔSA(#n)は、各気筒の8deg燃焼割合MFB8(#n)が目標8deg燃焼割合MFB8tgtと一致するように制御される。この結果、各気筒の点火時期SA(#n)はMBTの近傍の時期となる。従って、機関10は良好な燃費にて運転され得る。
図9は、第一制御装置による制御結果と、燃焼割合を用いない従来の制御装置による制御結果と、を示したグラフである。
図9の(A)に示されているように、従来の制御装置によれば、第一燃焼割合(8deg燃焼割合MFB8)は気筒間において大きくばらついている。これに対し、第一制御装置によれば、第一燃焼割合(8deg燃焼割合MFB8)は目標第一燃焼割合(MFB8tgt=50%)に略一致するように制御されている。従って、各気筒は最大トルクに近いトルクを出力している。
図9の(B)に示されているように、従来の制御装置によれば、EGR率は略15%程度である。これに対し、第一制御装置によれば、EGR率は略19%となっている。即ち、第一制御装置によれば、EGR率を従来の制御装置に比べ格段に大きくすることができる。従って、ポンピングロスが低減する。
図9の(C)は、横軸に「単位出力あたりに消費される燃料の量(燃料消費量)」をとり、縦軸に機関10のトルク変動量をとったグラフである。この図に示されているように、第一制御装置により制御した場合のトルク変動量と従来の制御装置により制御した場合のトルク変動量とは殆ど差がない。その一方、第一制御装置により制御した場合の燃料消費量は、従来の制御装置により制御した場合の燃料消費量よりもかなり小さくなっている。
このように、第一制御装置は、点火時期をMBT近傍に制御し、且つ、EGR量を機関10のトルク変動を発生させない範囲において増大することができるので、ドライバビリティを犠牲にすることなく燃費を改善することができる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態に係る制御装置(以下、「第二制御装置」と称呼する。)について説明する。第二制御装置は、第一制御装置と同様の点火時期制御を行う。即ち、第二制御装置は、各気筒の8deg燃焼割合MFB8(#n)を目標8deg燃焼割合MFB8tgtと一致させるように各気筒の点火時期SA(#n)を制御する。
ところで、第一制御装置は、それぞれの気筒について取得された30deg燃焼割合MFB30(#n)の中の最小値MINを「EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR」として採用していた。これに対し、第二制御装置は、それぞれの気筒について取得された30deg燃焼割合MFB30(#n)の平均値MFB30aveを「EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR」として採用する。そして、第二制御装置は、その「EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR」が目標30deg燃焼割合MFB30tgtに一致するようにEGR量を制御する。
但し、30deg燃焼割合MFB30(#n)の平均値MFB30aveを「EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR」として採用すると、そのEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRは、それぞれの気筒について取得された30deg燃焼割合MFB30(#n)のうちの最小値よりも大きい値となる。従って、そのEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標30deg燃焼割合MFB30tgtに一致している場合であっても、EGR量(EGR率)が過大であって燃焼が不安定になる気筒が発生し得る。
そこで、第二制御装置は、それぞれの気筒のEGR率α(#n)を求め、得られたEGR率α(#n)のうちの最大値と最小値との差(EGR率気筒間差)Δαが閾値Δαthよりも大きいとき、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRと目標30deg燃焼割合MFB30tgtとの大小関係に関わらず、EGR量を減少させる。同時に、その場合、第二制御装置は目標30deg燃焼割合MFB30tgtを低下させる。これにより、各気筒における燃焼を安定させながら、EGR量を許容限界値近傍にまで増大させることができる。
(第二制御装置による制御の詳細)
第二制御装置のCPU71は、第一制御装置のCPU71と同様、図6に示した点火時期制御ルーチンを実行する。更に、第二制御装置のCPU71は、図8に示したルーチンに代え、図10及び図11にフローチャートによりそれぞれ示したEGR量制御ルーチン及びEGR率取得ルーチンを実行する。図6に示したルーチンは説明済みである。よって、以下、図10及び図11に示したルーチンに沿って第二制御装置の作動の詳細について説明する。
第二制御装置のCPU71は、図10に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図10のステップ1000から処理を開始し、以下に述べるステップ1005乃至ステップ1025の処理を順に行ってステップ1030に進む。
ステップ1005:CPU71は、図8のステップ810と同様、各気筒の30deg燃焼割合MFB30(#n)の最新値を読み込む。このように、ステップ1005は、「機関10が有する複数の気筒のそれぞれ(第1気筒〜第4気筒)が少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間(720度クランク角)」において「その複数の気筒のそれぞれについて取得された最新の第二燃焼割合MFB30(#n)(nは1〜4の整数)」を取得する手段に相当している。
ステップ1010:CPU71は、ステップ1005にて読み込んだ複数の第二燃焼割合MFB30(#n)(nは1〜4の整数)の平均値MFB30aveを求める。そして、CPU71は、求めた平均値MFB30aveをEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして採用する。
ステップ1015:CPU71は、各気筒のEGR率α(#n)(nは1〜4の整数)の最新値を読み込む。なお、EGR率α(#n)は、図11に示した後述するルーチンにより算出されている。
ステップ1020:CPU71は、第n気筒のEGR率α(#n)(即ち、第1気筒のEGR率α(#1)乃至第4気筒のEGR率α(#4))の中から最大値を選択し、その最大値を最大EGR率αmaxとして格納する。更に、CPU71は、第n気筒のEGR率α(#n)(即ち、第1気筒のEGR率α(#1)乃至第4気筒のEGR率α(#4))の中から最小値を選択し、その最小値を最小EGR率αminとして格納する。
ステップ1025:CPU71は、最大EGR率αmaxから最小EGR率αminを減じた値を求め、その値をEGR率気筒間差Δαとして格納する。
次に、CPU71はステップ1030に進み、EGR率気筒間差Δαが閾値Δαthよりも大きいか否かを判定する。このとき、EGR率気筒間差Δαが閾値Δαth以下であると、CPU71はステップ1030にて「No」と判定してステップ1035に進み、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR(この場合、ステップ1010にて得られた平均値MFB30ave)が目標第二燃焼割合である「目標30deg燃焼割合MFB30tgt」よりも大きいか否かを判定する。
CPU71は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標30deg燃焼割合MFB30tgtよりも大きい場合、ステップ1035にて「Yes」と判定してステップ1040に進み、EGRバルブ56の目標開度EGRVtgtを微小量ΔEGRだけ増大させる。その後、CPU71はステップ1050に進み、EGRバルブ56の開度が目標開度EGRVtgtに一致するようにEGRバルブ56に指示信号を送出する。
一方、ステップ1035の処理の実行時点において、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRが目標30deg燃焼割合MFB30tgt以下である場合、CPU71はステップ1035にて「No」と判定し、ステップ1045に進んでEGRバルブ56の目標開度EGRVtgtを微小量ΔEGRだけ減少させる。その後、CPU71はステップ1050に進み、EGRバルブ56の開度が目標開度EGRVtgtに一致するようにEGRバルブ56に指示信号を送出する。その後、CPU71はステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。
この結果、EGR率気筒間差Δαが閾値Δαth以下である場合、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR(平均値MFB30ave)が目標30deg燃焼割合MFB30tgtに一致するようにEGR量が制御される。
これに対し、ステップ1030の処理の実行時点において、EGR率気筒間差Δαが閾値Δαthよりも大きい場合、EGR率(各気筒に供給される外部EGR量)の気筒間差が過大であり、従って、ある気筒においてはEGR量が過大であるが故に安定した燃焼が行われていないと推定することができる。
そこで、この場合、CPU71はステップ1030にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、目標30deg燃焼割合MFB30tgtを微小量Δ30tgtだけ減少させる。次いで、CPU71はステップ1045に進み、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGR(平均値MFB30ave)が目標30deg燃焼割合MFB30tgtよりも大きいか否かに関わらず、EGRバルブ56の目標開度EGRVtgtを微小量ΔEGRだけ減少させる。その後、CPU71はステップ1050に進み、EGRバルブ56の開度が目標開度EGRVtgtに一致するようにEGRバルブ56に指示信号を送出する。その後、CPU71はステップ1095に進み、本ルーチンを一旦終了する。以上の処理により、EGR量が制御される。
(EGR率αの取得)
次に、図10のステップ1015にて読み込まれるEGR率α(#n)の取得方法について説明する。いま、新気(大気)の比熱比をκair、既燃ガス(排ガス)の比熱比をκex、ある気筒に吸入されるガス(新気と既燃ガスとの混合ガス)の比熱比をκinとする。このとき、EGR率αに関して下記(6)式が成立する。更に、(6)式を変形することにより(7)式が得られる。
Figure 2010007618
Figure 2010007618
新気の比熱比κairは既知であり、例えば1.4である。既燃ガスの比熱比κexも既知であり、例えば、1.2である。従って、ある気筒に流入したガスの比熱比κinを知ることができれば、上記(7)式からEGR率αを求めることができる。
一方、吸気弁32が閉弁して燃焼室25内のガスが圧縮され始めた後であって点火時期SAよりも前の圧縮行程は断熱圧縮過程であると考えることができる。断熱圧縮行程においてPVκは一定である。そこで、図5の点XaにおけるP(θa)・V(θa)κinと点XbにおけるP(θb)・V(θb)κinに関して下記(8)式が成立する。
Figure 2010007618
そこで、第二制御装置は、この(8)式に基づいて第n気筒に流入するガスの比熱比κinを求め、その比熱比κinを(7)式に適用することによって第n気筒のEGR率α(#n)を取得する。以下、第n気筒のEGR率α(#n)を求めるための第二制御装置の具体的な作動について図11を参照しながら説明する。
CPU71は、図11に示したルーチンを所定時間の経過毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU71は図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、変数nの値を「1」に設定する。次いで、CPU71はステップ1120に進み、現時点のクランク角が「第n気筒(この場合、第1気筒)の圧縮上死点前θx(例えば30度)クランク角」であるか否かを判定する。このθxは点火時期SAよりも前のクランク角に設定されている。
このとき、現時点のクランク角が「第n気筒の圧縮上死点前θxクランク角」であると、CPU71はステップ1120にて「Yes」と判定し、後述するステップ1130乃至ステップ1160の処理を順に行うことにより、第n気筒のEGR率α(#n)を取得し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ステップ1120の処理の実行時点において、現時点のクランク角が「第n気筒の圧縮上死点前θxクランク角」でないと、CPU71は以下に述べるステップ1170及びステップ1180の処理を実行する。
ステップ1170:CPU71は変数nの値を「1」だけ増大する。
ステップ1180:CPU71は変数nの値が「4(機関10の気筒数)」よりも大きいか否かを判定する。変数nの値が「4」よりも大きいと、CPU71はステップ1180にて「Yes」と判定し、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、変数nの値が「4」以下であると、CPU71はステップ1180にて「No」と判定し、ステップ1120に戻る。
このステップ1170及びステップ1180の処理により、現時点が「第1気筒乃至第4気筒のうちの何れかの気筒のクランク角がその気筒の圧縮上死点前θxクランク角」である場合に、以下に述べるステップ1130乃至ステップ1160の処理が行われることになる。
ステップ1130:CPU71は、第n気筒の圧縮上死点前θaクランク角における筒内圧P(θa)及び燃焼室容積V(θa)をRAM73及びROM72からそれぞれ読み出すことにより取得する。圧縮上死点前θaクランク角は圧縮上死点前θxクランク角よりも進角側であって、吸気弁閉弁時期よりも遅角側のクランク角である。
ステップ1140:CPU71は、第n気筒の圧縮上死点前θbクランク角における筒内圧P(θb)及び燃焼室容積V(θb)をRAM73及びROM72からそれぞれ読み出すことにより取得する。圧縮上死点前θbクランク角は圧縮上死点前θxクランク角よりも進角側であって、圧縮上死点前θaクランク角よりも遅角側のクランク角である。
ステップ1150:CPU71は、上記(8)式に上記ステップ1130及び上記ステップ1140にて取得した各値を適用し特定気筒に吸入されたガスの比熱比をκinを算出する。
ステップ1160:CPU71は、上記(7)式に、新気の比熱比κair(=1.4)、既燃ガスの比熱比κex(=1.2)、及び、上記ステップ1150にて算出した比熱比κin、を適用することにより、第n気筒のEGR率α(#n)を算出する。その後、CPU71は、ステップ1195に進み本ルーチンを一旦終了する。
このように、第二制御装置は、各気筒の第二燃焼割合(30deg燃焼割合MFB30)の平均値MFB30aveをEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして採用する。従って、このEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRは、各気筒の第二燃焼割合に基づいて決定される値であって所定期間(複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る期間)において複数の気筒のそれぞれについて取得された第二燃焼割合のうちの最小値よりも大きい値である。更に、第二制御装置は、そのEGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRを目標30deg燃焼割合MFB30tgtに一致させるようにEGR量を制御する。但し、第二制御装置は、それぞれの気筒のEGR率α(#n)を求め、得られたEGR率α(#n)のうちの最大値と最小値との差(EGR率気筒間差)Δαが閾値Δαthよりも大きいとき、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRと目標30deg燃焼割合MFB30tgtとの大小関係に関わらず、EGR量を減少させる。更に、第二制御装置は、差(EGR率気筒間差)Δαが閾値Δαthよりも大きいとき、目標第二燃焼割合(目標30deg燃焼割合MFB30tgt)を減少させる。従って、各気筒における燃焼を安定させながら、EGR量を許容限界値近傍にまで増大させることができる。
以上、説明したように、本発明の各実施形態は、燃焼割合を用いて点火時期及びEGR量を制御する。その結果、燃焼の悪化を招かない範囲においてEGR量を増大せしめ、もって、ポンピングロスを低減するとともに、点火時期をMBT近傍に制御し、もって、最大トルクに近しいトルクを機関10に発生させることができる。
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記各実施形態は、燃焼割合MFB(従って、図示熱量の割合Qsum/Qtotal)を筒内圧に基いて取得していたが、燃焼割合MFBをWiebe関数と呼ばれる燃焼モデル(例えば、特開2006−9720号公報を参照。)により求めるように構成することもできる。
また、第一及び第二制御装置は、アクセルペダル操作量Accpが大きいほど実際のスロットル弁開度TAが大きくなるようにスロットル弁開度を制御し、得られる筒内吸入空気量Mcに基づいて燃料噴射量Fiを決定していた。
これに対し、第一及び第二制御装置は、現時点のアクセルペダル操作量Accp及び現時点のエンジン回転速度NEを「噴射量決定用テーブルMapTAU及び目標スロットル弁開度決定用テーブルMapTAtgt」に適用することにより今回の燃料噴射量Fi及び目標スロットル弁開度TAtgtをそれぞれ決定するように構成することもできる。
この場合、噴射量決定用テーブルMapTAUは、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEにより定まる「要求トルク」を発生するために必要な「燃料噴射量Fi」を算出するためのルックアップテーブルである。また、目標スロットル弁開度決定用テーブルMapTAtgtは、アクセルペダル操作量Accp及びエンジン回転速度NEにより定まる「要求トルク」を発生するために必要な「吸入空気量」を気筒に流入させるのに必要な目標スロットル弁開度TAtgtを決定するためのルックアップテーブルである。
更に、第二制御装置は、EGR制御用第二燃焼割合MFB30EGRとして、
(1)前記所定期間において前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの最小の第二燃焼割合を除いた第二燃焼割合(残りの第二燃焼割合)に基づいて決定される値(例えば、残りの第二燃焼割合の平均値)、及び
(2)前記所定期間において前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの「最小の第二燃焼割合及び最大の第二燃焼割合」を除いた第二燃焼割合(残りの第二燃焼割合)に基づいて決定される値(例えば、残りの第二燃焼割合の平均値)等、の何れかを採用することもできる。
なお、上記第一制御装置及び第二制御装置は、排気通路(排気通路の集合部)と吸気通路(吸気通路の集合部)とを連通する排気還流管55と、その排気還流管に配設され且つ指示信号に応答して排気還流管の流路断面積を変更するEGRバルブ56と、からなるEGR量制御手段を備えていると表現することもできる。
点火時期と、クランク角が圧縮上死点後第一クランク角であるときの実際の燃焼割合と、機関の発生トルクと、の関係を示したグラフである。 EGR量を変更した各場合における、燃焼割合のクランク角に対する変化の様子を示したグラフである。 点火時期を変更した各場合における、燃焼割合のクランク角に対する変化の様子を示したグラフである。 本発明の第一実施形態に係る制御装置(第一制御装置)を適用した内燃機関の概略図である。 クランク角に対する筒内圧及びP・Vκの変化の様子を示した図である。 図4に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 第一制御装置の点火時期制御を行うための機能ブロック図である。 図4に示したCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 第一制御装置の制御結果を示したグラフである。 本発明の第二実施形態に係る制御装置(第二制御装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。 第二制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
符号の説明
10…内燃機関、25…燃焼室、31…吸気ポート、34…排気ポート、37…点火プラグ、38…イグナイタ、39…燃料噴射弁、41…インテークマニホールド、41b…サージタンク部、42…吸気管、44…スロットル弁、51…エキゾーストマニホールド、52…エキゾーストパイプ、55…排気還流管、56…EGRバルブ、63…カムポジションセンサ、64…クランクポジションセンサ、65…筒内圧センサ、69…アクセル開度センサ、70…電気制御装置、71…CPU。

Claims (3)

  1. 複数の気筒を有する多気筒内燃機関に適用され、
    前記複数の気筒のそれぞれについて圧縮上死点後第一クランク角における実際の燃焼割合を第一燃焼割合として取得するとともに前記第一クランク角よりも遅角側である圧縮上死点後第二クランク角における実際の燃焼割合を第二燃焼割合として取得する燃焼割合取得手段と、
    前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合に基づいてEGR制御用第二燃焼割合を決定するEGR制御用第二燃焼割合決定手段と、
    前記決定されたEGR制御用第二燃焼割合が目標第二燃焼割合に一致するように前記機関の気筒に供給される既燃ガスの量であるEGR量を制御するEGR量制御手段と、
    前記複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第一燃焼割合が前記目標第二燃焼割合よりも小さい目標第一燃焼割合に一致するように同複数の気筒のそれぞれの点火時期を制御する点火時期制御手段と、
    を備えた内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記EGR制御用第二燃焼割合決定手段は、
    前記複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間において同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの最小の第二燃焼割合を前記EGR制御用第二燃焼割合として採用するように構成された制御装置。
  3. 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
    前記EGR制御用第二燃焼割合決定手段は、
    前記複数の気筒のそれぞれが少なくとも一回の燃焼行程を経る所定期間において同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合に基づいて決定される値であって同所定期間において同複数の気筒のそれぞれについて取得された前記第二燃焼割合のうちの最小値よりも大きい値を前記EGR制御用第二燃焼割合として決定するように構成され、
    前記EGR量制御手段は、
    前記複数の気筒のそれぞれについての実際のEGR率である気筒別EGR率を取得するとともに同取得された気筒別EGR率に基づいて気筒間のEGR率の差が所定値以上であると判定したとき前記EGR量を前記EGR制御用第二燃焼割合に関わらず減少するように構成された制御装置。
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