しかしながら、上記従来の特許文献1に記載された大気圧水素プラズマを用いた膜製造方法及び装置においても、一般的な金属級Siを用いた場合には、上記の工程を多段階に亘り繰り返さなければ、基板104に堆積したSiを太陽電池級Siのレベルにできないという問題点を有している。
尚、例えば、特許文献2及び特許文献3では、SiH4 ガス中からB2 H6 を除去するために、酸化銅及び酸化亜鉛の混合物を主成分とする処理剤を使用している。詳細には、先にSiH4 で吸着飽和させた後、B2 H6 を吸着除去するようになっている。
この点、特許文献1の技術は効率が良いので、従来技術よりも多段階の繰り返し数を少なくすることができるものとなっているが、それでも、少なくとも2段階の工程を経なければ、太陽電池級Siにおける所望のボロン(B)濃度まで低減することができないという問題点を有している。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、例えば金属級Siから太陽電池級Siを製造すべく、低純度Siから高純度Siへの精製を効率良く行い得るSi精製方法、Si精製装置及びSi精製膜製造装置を提供することにある。
本発明のSi精製方法は、上記課題を解決するために、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する工程と、上記水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体表面に衝突させることにより、除去したい元素を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去して、上記低純度Siよりも純度の高い高純度Siを得る工程とを含むことを特徴としている。
本発明のSi精製装置は、上記課題を解決するために、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する水素化ガス母集団発生手段と、上記水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体表面に衝突させることにより、除去したい元素を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去する不純物水素化ガス除去手段とを備えていることを特徴としている。
上記の発明によれば、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する。
すなわち、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、例えば、SiH4 、及びB2 H6 等の水素化ガスが混合状態となった水素化ガス母集団が生成される。尚、このとき、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)等の金属は、原子状水素と化学反応させて水素化しても揮発しないため、原料としての低純度Siの表面に残留し、低純度Siからは出てこない。
ここで、SiH4 、及びB2 H6 等の混合状態となった水素化ガス母集団から、高純度Siのみを採取するためには、除去したい元素からなる水素化ガスであるB2 H6 の水素化ガスを除去する必要がある。
そこで、本発明では、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体表面に衝突させることにより、除去したい元素を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去する。
すなわち、本発明では、各種の水素化ガスが呈する熱分解温度の差異を利用し、除去したい元素を水素化ガス母集団から除去する。つまり、本発明では、例えば、SiH4 、及びB2 H6 等の混合状態となった水素化ガス母集団から、SiH4 以外の水素化ガスを除去するために、熱分解反応の温度依存性を積極的に利用している。
この結果、従来では、一度の工程で、例えば、低純度Si中に含有されるボロン(B)を1/2〜1/10までしか除去することができなかったが、本発明では、一度の工程で、例えば、低純度Si中に含有されるボロン(B)を1/1000以下に除去することができる。
したがって、例えば金属級Siから太陽電池級Siを製造すべく、低純度Siから高純度Siへの精製を効率良く行い得るSi精製方法及びSi精製装置を提供することができる。
本発明のSi精製方法では、前記低純度Siは、金属級Siであることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記低純度Siは、金属級Siであることが好ましい。
これにより、不純物濃度が1000ppmwt以上である廉価な金属級Siから、例えば、不純物濃度が1ppmwt以下の太陽電池級Siを効率的に製造することができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記除去したい元素からなる水素化ガスはB2 H6であり、Siからなる水素化ガスはSiH4 であることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記除去したい元素からなる水素化ガスはB2 H6であり、Siからなる水素化ガスはSiH4 であることが好ましい。
これにより、水素化ガス母集団中に含まれる各種水素化ガスに熱分解温度の差異が存在するので、具体的に、太陽電池級Siを形成することができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記温度制御された加熱物体は、多孔質体からなっていることが好ましい。尚、多孔質体は、例えば、絶縁体、金属又は半金属を用いることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記温度制御される加熱物体は、多孔質体からなっていることが好ましい。尚、温度制御される加熱物体は、導電性の多孔質体からなっていることがさらに好ましい。
これにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとが比表面積の大きな多孔質体の内部を通過することにより、固体表面との衝突回数を、小さな体積にて十分に確保することができる。また、加熱物体を導電性の多孔質体とした場合には、直接通電加熱し多孔質体自体を発熱体として利用することができ、その内部においても、温度を精度良く一定に保つことができる。したがって、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に容易かつ精度良く温度制御すること、さらには装置体積のコンパクト化が可能となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記多孔質体は、カーボン多孔質体からなっていることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記多孔質体は、カーボン多孔質体からなっていることが好ましい。
これにより、カーボン多孔質体は電気伝導性を有するので、カーボン多孔質体に直接電圧を印加して、加熱物体として温度調整することが容易である。
また、カーボン多孔質体は、Siからなる水素化ガスの分解に対して触媒作用がなく、かつ耐薬品性が高いので、カーボン多孔質体に除去したい元素が固着した場合においても、薬液等による再生処理が可能となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記温度制御された加熱物体は、配管からなっていることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記温度制御された加熱物体は、配管からなっていることが好ましい。
すなわち、加熱物体として多孔質体を用いない場合、加熱物体に、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとの混合体を効率良く接触させることは容易ではない。この場合、加熱物体として配管を用いることにより、ガス通過流路体積に対する固体表面積を大きくとれるため、多数回の衝突回数を保持できるので、装置体積をコンパクトにすることが可能となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記多孔質体として導電性物質を用いることにより、直接、多孔質体に通電加熱して温度制御することが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記多孔質体は、導電性物質からなっていると共に、上記多孔質体に通電加熱して温度制御する温度制御手段が設けられていることが好ましい。
これにより、多孔質体は電気伝導性を有するので、多孔質体に直接電圧を印加して、加熱物体として温度調整することが容易となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記多孔質体として電磁波吸収物質を用いることにより、電磁波吸収による加熱作用を利用して温度制御することが可能である。
この方法によっても、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に容易かつ精度良く温度制御することが可能となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記多孔質体に付着した除去したい元素の目詰まり再生法として、フッ硝酸による薬液を用いることが好ましい。
これにより、カーボン多孔質体に除去したい元素が固着した場合においても、フッ硝酸による薬液を用いることによって、容易に、再生処理が可能となる。
また、本発明のSi精製方法では、前記多孔質体は、前記水素化ガス母集団に含有される微粒子をトラップするフィルタ機能を有していることが好ましい。
すなわち、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する場合には、除去したい元素からなる水素化ガス及びSiからなる水素化ガスの他に、金属及びシリコン凝集体等の微粒子が含まれることもある。
この点、本発明では、前記多孔質体が、前記水素化ガス母集団に含有される微粒子をトラップするフィルタ機能を有しているので、多孔質体の孔径を調整することにより、所望の大きさの微粒子をも多孔質体にて除去することができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記原子状水素の生成方法として、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、生起させたプラズマを用いることが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記水素化ガス母集団発生手段は、プラズマを生起させるプラズマ手段を備えていることが好ましい。
これにより、容易に、水素化ガス母集団を発生させることができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記原子状水素の生成方法として、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、加熱した媒体を設置し、該媒体表面で生じる触媒分解反応を利用して原子状水素を発生させることが可能である。
すなわち、本発明では、前記原子状水素の生成方法として、プラズマを用いたものに限らず、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、加熱した媒体を設置し、該媒体表面で生じる触媒分解反応を利用して原子状水素を発生させることも可能である。
また、本発明のSi精製方法では、前記加熱物体の温度を150℃〜650℃とすることが好ましい。
これにより、具体的に、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御することができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記加熱物体の温度を制御することにより、除去したい元素の前記加熱物体表面に固着させる量を調整することが好ましい。
本発明のSi精製装置では、前記多孔質体は、導電性物質からなっていると共に、上記多孔質体に通電加熱して温度制御する温度制御手段が設けられていることが好ましい。
これにより、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御することができると共に、反応速度を容易に調整することができる。
また、本発明のSi精製方法では、前記除去したい元素を水素化ガス母集団から除去した後、前記Siからなる水素化ガスを基板に分解付着させて、固体Siを形成することが好ましい。
本発明のSi精製膜製造装置は、上記課題を解決するために、上記記載のSi精製装置を備えたSi精製膜製造装置であって、前記除去したい元素を水素化ガス母集団から除去した後の前記Siからなる水素化ガスを基板に分解付着させて、固体Siを形成するSi成膜手段と備えていることを特徴としている。
これにより、例えば金属級Si等の低純度Siから精製された高純度SiH4 を用いてSiを成膜することにより、例えば、太陽電池級Si原材料等の高純度Siの膜を形成することができる。
本発明のSi精製膜製造装置では、前記Si成膜手段から排出された水素ガスを、前記水素化ガス母集団発生手段の入り口側に戻す循環手段を備えていることが好ましい。
これにより、Si成膜手段から排出された水素ガスは、循環手段によって、前記水素化ガス母集団発生手段の入り口側に戻されるので、水素化ガス母集団発生手段では、この水素ガスを原子状水素のために再利用することができる。
本発明のSi精製方法は、以上のように、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する工程と、上記水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体表面に衝突させることにより、除去したい元素を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去して、上記低純度Siよりも純度の高い高純度Siを得る工程とを含む方法である。
本発明のSi精製装置は、以上のように、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素からなる水素化ガスとSiからなる水素化ガスとを含む水素化ガス母集団を生成する水素化ガス母集団発生手段と、上記水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体表面に衝突させることにより、除去したい元素を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去する不純物水素化ガス除去手段とを備えているものである。
本発明のSi精製膜製造装置は、以上のように、上記記載のSi精製装置を備えたSi精製膜製造装置であって、前記除去したい元素を水素化ガス母集団から除去した後の前記Siからなる水素化ガスを基板に分解付着させて、固体Siを形成するSi成膜手段と備えているものである。
それゆえ、低純度Siから高純度Siへの精製を効率良く行い得るSi精製方法、Si精製装置及びSi精製膜製造装置を提供するという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態で説明するシリコン(Si)精製方法は、金属級Si(MG−Si:Metallurgical Grade Si)中に含有されるボロン(B)等の不純物を高効率に除去して、太陽電池級Si(SOG−Si:Solar grade Si)のボロン(B)濃度にまで低減するシリコン(Si)(以下、単に、「Si」と記載する。)の精製方法である。尚、金属級Siとは、不純物濃度が1000ppmwt以上であるSiをいう。また、太陽電池級Siとは、不純物濃度が1ppmwt以下であるSiをいう。
最初に、本実施の形態のSi精製方法の原理について説明する。
金属級Siの精製をより高効率に行うため、重要となるのは、まず、大気圧水素プラズマと金属級Siとの間の水素化反応である。本実施の形態のSi精製方法では、金属級Siが大気圧水素プラズマに暴露された場合、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)等の金属不純物は、大気圧水素プラズマにより水素化されても揮発しないため、金属級Si表面に残留し易いことを利用している。
そして、上記金属級Siを大気圧水素プラズマに暴露した際、金属級Siを構成するシリコン(Si)は、シラン(SiH4 )(以下、単に「SiH4 」と記載する。)系の水素化物となって気化すると同時にボロン(B)についても、Siとは異なる確率ながらもジボラン(B2 H6 )(以下、単に「B2 H6 」と記載する。)系の水素化物となって気化する。
ここで、SiH4 及びB2 H6 の分解反応における活性化エネルギーは、それぞれ2eV、1.11eVであり、B2 H6 の活性化エネルギーが約0.9eV低いことがわかる。このことは、B2 H6がより低温で分解し易いことを意味している。例えば、ある温度に保たれた物質表面にSiH4 及びB2 H6 の混合気体が接触した場合を考える。
まず、図1(a)に示すように、物質表面の温度が十分低ければSiH4 及びB2 H6 共に分解されることなく物質表面から再飛散する。一方、図1(b)に示すように、物質表面の温度が非常に高温である場合、SiH4 及びB2 H6 共に物質表面にて分解し、固着してしまうため、100%の分解率であれば、物体接触後のガスには、SiH4 及びB2 H6のいずれもが含有されないこととなる。そこで、SiH4 及びB2 H6がそれぞれ異なる分解活性化エネルギーを有することを利用し、SiH4 の分解が顕著でなくかつB2 H6 が効率良く分解される領域の温度に物体表面温度を設定する。この場合、ある混合比をもって到達したSiH4 及びB2 H6 混合ガスは、B2 H6 がSiH4 に比較して分解固着し易い。
このため、固体表面衝突後の混合ガスでは、図1(c)に示すように、SiH4 の比率が大きくなる。ここで、分子1個が熱分解反応により、固体表面へ固着する固着速度定数rは、以下のアレニウスの式(1)によって与えられる。
r=A・exp(−Ea/k・T) ………(1)
ただし、Aは頻度因子、Tは絶対温度、kはボルツマン定数である。
この式に、先に挙げた各ガスの活性化エネルギーを代入し、各温度における固着速度定数rを求め、その速度定数の比を算出することにより、定量的な推量を行った。
ここで、係数Aは、厳密には、温度の関数となるが、指数関数の項の変化に比較し、非常に緩やかな変化しか示さないため、ここでは一定とした。
それぞれのガスのAxをASiH4 、AB2 H6 と与えた場合、
AB2 H6 =(200,1,0.2,0.0002)×ASiH4
の4通りで計算した。尚、ここでは、規格化のためASiH4=1としている。結果を図2に示す。
図2に示すように、物体表面の温度が低温になれば、反応レートである固着速度定数rの比(以下、単に「反応レート比」という。)が格段に上昇することがわかる。
一般的な熱CVDの実験では、550℃以上の温度にてSiH4 の熱分解・固着現象が顕著になるが、550℃の温度において、SiH4 とB2 H6 との反応レート比は、同等の頻度因子を有する場合、10万倍以上、B2 H6 が分解固着し易いことがわかる。また、図2に示すように、B2 H6 の頻度因子がSiH4 の1/5000となっても、100倍以上、B2 H6 が固体表面へ固着し易い。このことは、B2 H6 の熱分解が生じ易く、SiH4 が略分解しない温度として適切に設定した物体表面へSiH4 とB2 H6 の混合ガスを接触させることによって、B2 H6 のみが100倍以上の選択比にて固体表面に固着していくため、混合気体中のSiH4 濃度は、相対的に上昇することとなる。
この現象は、混合ガスからのボロン(B)成分の除去、つまりSiH4 の精製に他ならず、このような熱分解による固着を利用した手法により、ガス中のボロン(B)水素化物の除去が可能となる。
そこで、金属級Siを大気圧水素プラズマに暴露することにより生じたシリコン(Si)及びボロン(B)を含む水素化混合ガスに対し、本原理を適用することによって、ガス中のボロン(B)濃度を劇的に低減することができる。
この劇的にボロン(B)が低減された混合ガスを利用して、熱CVD等の一般的な成膜法によりSi膜を形成すれば、金属級Si中の初期ボロン(B)濃度に対して、極度にボロン(B)濃度が低減されたSiを形成することができる。つまり、金属級Siからの金属除去(水素化反応の選択性)、及びボロン(B)除去(熱分解反応の選択性)が可能となる。
上記の原理によるボロン(B)除去効果を実証するために、図3に示すSi精製装置10を用いた検証実験を行ったので、以下に説明する。
上記のSi精製装置10は、図3に示すように、例えば容積400Lの真空チャンバー1と、各ガスの流量制御を行うマスフローコントローラ2と、プラズマを生成すると共にプラズマ内へガス供給を行う焼結ガラス状カーボン製の多孔質カーボン電極3と、この多孔質カーボン電極3にガス供給を行うためのガス供給室4と、Si基板5を載置する基板ヒータ6と、電力を供給するためのマッチングボックス7及びプラズマ用電源8等からなっている。尚、本実施の形態では、基板にはSi(001)基板を用いている。
上記Si精製装置10において、まず、基板温度を570℃とし、電力密度を40W/cm2 、SiH4 流量を35sccmで一定として、B2 H6 流量を0.01、0.03、0.1sccmの3通りの流量で供給し、プラズマによる分解によりSi膜を作製した。ここで、多孔質カーボン電極3の厚さは、5mmとした。また、多孔質カーボン電極3の加熱は、Si基板5が570℃に加熱される際の輻射熱、及び生成したプラズマからの熱によって行っている。Si基板5と多孔質カーボン電極3の表面との距離、即ちプラズマが生起されるギャップは、0.7mmである。
このような加熱多孔質体を通過した原料ガスを用いて大気圧プラズマCVDにより作製したSi膜中のボロン(B)濃度をSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer:二次イオン質量分析計)により測定した。尚、作製したSi膜は、単結晶化していた。そこで、結晶シリコン(Si)の原子数密度に対するSi膜中のボロン(B)原子数密度の比(Γfilm=(CB/CSi))を算出すると共に、多孔質体を通過する前の原料ガス中に含まれるSi原子数に対するボロン(B)原子数の比(Γgas=(CB/CSi))についても算出し、ΓgasとΓfilmとの関係を調べた。その結果を、図4に示す。
図4に示すように、ΓgasとΓfilmとは、線形の関係にあることがわかる。図中にはフィッティングした直線も示した。
ここで、フィッティングにより得られた直線の傾きは0.001であった。このことは、多孔質体を通過したガスを利用して成膜することにより、ガス中に含まれるSiに対するボロン(B)の比率に対し、作製された膜中のボロン(B)の比率が1/1000になることを示している。つまり、原料ガスが多孔質体を通過することによって、ボロン(B)元素を含むガス成分が除去されたため、供給した原料ガスのボロン(B)濃度よりも顕著にボロン(B)濃度の低減されたSi膜が形成できていることを示している。また。先に述べたように、ΓgasとΓfilmとが、いずれのΓgasにおいても良い線形関係を示していることから、供給ガス中の初期ボロン濃度が今回の条件以下にまで低減した場合でも、
Γfilm=1/1000xΓgas
という関係式により、膜中のボロン(B)の濃度を低減できることがわかる。
そこで、この比例係数1/1000が、どのような物理現象により決定されているのかを調べるため、SiH4 流量35sccm、B2 H6 流量0.1sccm、さらには投入電力密度を40W/cm2 一定とし、基板温度を370℃、470℃、570℃と変化させ、Γfilm及びΓgasが示す一次関数の傾きの変化を調べた。その結果を、図5に示す。図5は、アレニウスプロットにより表記されている。
図5から明らかなように、Γfilm/Γgasで求められる傾きは、温度の上昇に対して指数関数的に減少することがわかる。基板温度が570℃の時に約1/1000、470℃の時には約1/300、そして、370℃のとき約1/10であった。
このことは、基板温度を上昇させる、すなわち、多孔質体の温度を上昇させることによって、より高い確率でB2 H6 ガスが分解固着し、Si膜中へのボロン(B)の混入が抑制できていることを示している。これは、加熱した多孔質体を用いてB2 H6 及びSiH4 混合ガスから、より純度の高いSiを作製できたことに他ならない。そこで、このB2 H6 除去現象の主原因を特定するため、図5にて得られたアレニウスプロットの傾きから、ボロン(B)除去現象の活性化エネルギーを算出した。その結果、約1.04±0.009eVが得られた。この値は、先に述べたB2 H6 の分解活性化エネルギー1.11eVに対して、誤差の範囲において非常に近い値を示している。このことは、観察されたボロン(B)除去現象が、B2 H6 の熱分解により支配されている現象であることを示している。
以上の検討結果から、前述した原理の説明で述べた、各種水素化ガスの熱分解挙動の差異を利用した不純物の除去法の有効性を実証できたといえる。
本実施の形態で提唱する原理により、Si精製装置10を用いることにより、B2 H6 及びSiH4 等の水素化混合ガスから、SiH4 のみを優先的に取り出し、純度の高い固体Siを作製できることが明らかになった。
ここで、本実施の形態のSi精製方法の原理を用いてB2 H6 の除去率を高めるためには、B2 H6 と固体表面の接触確率を増加させておくことが好ましい。この条件を満足させるため、実用においては、例えば、図6に示すように、混合ガスを、表面積を稼ぐために長い配管11の中を通す方法、又は図7に示すように、適当な温度に加熱された多孔質体12中を通過させる方法等が考えられる。
とりわけ多孔質体12は、小さな体積で大きな表面積を担保することが可能であることから最適であると考えられる。例えば、AH3 及びBH4 の多孔質体表面と1回当たりの衝突による表面反応確率をx、yとし、それぞれの初期濃度をCA0、CB0とすれば、衝突回数Z回だけ多孔質体12を構成する内部微細穴の内壁に衝突し、ガスが多孔質体12を通過した場合、通過後の濃度CA 、CB は、それぞれ、
CA =CA0(1−x)z
CB =CB0(1−y)z
と記述できる。
以上の式は、x≠yである場合、通過後の濃度CA と濃度CB との濃度比を、衝突回数Z乗だけ増幅(指数関数的な増幅)できることを意味している。
そこで、N回衝突後のガス濃度比率CA /CB をとると、図8に示すようになる。ここで、初期濃度は、CA0=CB0とした。
図8に示すように、濃度比の衝突回数依存性は、元素Aの反応確率に非常に敏感であり、元素Bを含むガスの反応確率が1〜2桁程度変動してもあまり影響がない。また、図8に示すように、比較的少ない衝突確率にて、濃度CB の濃度CA に対する濃度比率を上昇させるためには、元素Aの反応確率が十分高い(図8では10%程度)温度に設定する必要があることがわかる。元素Aに関連する気体の反応確率を10%とした場合、元素Bに関する気体の反応確率が元素Aの1/100であったとしても、僅か50回の衝突を繰り返すことによって、元素Bの元素Aに対する濃度比を100倍まで高めることが可能になることがわかる。
この結果、それぞれの熱分解挙動の温度依存性の差異を利用して、SiH4 とB2 H6 との混合気体からB2 H6 を除去することが可能なことがわかる。
このように、本実施の形態のSi精製方法は、SiH4 及びB2 H6 等の水素化混合ガスからSiH4 のみを採取する方法である。より具体的には、温度依存性を利用して、B2 H6 を分解固着し、SiH4 は分解せずに通過させ、B2 H6 をガス中から除去する。ガスB2 H6 を含有するSiH4 ガスの経路に、適切に温度管理されたガス接触部を設け、ガス分子の分解固着反応の接触部は、意図した長い配管や、多孔質体等の形態を用いる。
これにより、金属級Siを原料とした水素化ガスの混合物に対し、本手法を用いれば、僅か1工程にて金属級Si中に含有されるボロン(B)を1/1000以下まで容易に除去することができる。
ここで、従来法(酸化除去法)では、1工程で高々1/2程度であり、この値と比較した場合、本手法は500倍以上の精製能力を有することがわかる。また、一般的なシーメンス法等により生成された水素化ガスの混合ガスに対しても、本手法によるボロン(B)除去能力は有効に作用する。さらに、例えばAPECT法(Atmospheric-pressure Plasma Enhanced Chemical Transport:大気圧プラズマ援用化学輸送法)により、金属級Siを原料に生成された水素化混合ガスに対して用いれば、同様に、金属級Siからのボロン(B)、及び金属元素の除去が可能となる。このことは、APECT法と本手法とを併用することによって、従来容易でなかった太陽電池級Si製造工程でのボロン(B)除去を容易ならしめるのみならず、シーメンス法等を経て精製・製造されるSiH4 を用いずに、高純度なSi膜を作製することができることを意味している。つまり、廉価な金属級Siを原料として、太陽電池級Siバルク基板、及び薄膜Siを作製することが可能となるため、太陽電池製造分野にとってSi原材料の供給に左右されないメリットを有する。
また、本実施の形態においては、熱分解反応を効率良く生じさせるため、ボロン除去装置には、加熱制御が可能な多孔質体を用いている。この多孔質体は、SiH4 分解に対し触媒作用が無く、耐薬性が高い、電気伝導性を有するという観点からカーボンの焼結体が望ましい。
そして、上記材質からなる多孔質体を用いることにより、通電加熱による温度調整が可能になるのみならず、多孔質体が除去物質で詰まった際に薬液等による再生処理が可能となる。
さらに、多孔質体は、不要な水素化物除去の役割以外にも、金属級Siの水素化過程で生成されるパーティクルつまり微粒子の除去にも大きな役割を果たす。このような本実施の形態で用いるフィルタ機能付きの熱分解型多孔質フィルタは、例えば、直径が80μm程度のガラス状カーボン球体を焼結し、ガス通過厚みを5mm、気孔率を30%程度としたものとすることができる。しかし、必ずしもこれに限らず、実際の運用条件においてこれら数値の組み合わせを適宜変更しても構わない。ただし、気孔率が低下すれば、多孔質体による圧力損失が大きくなること、目詰まりの頻度が大きくなること、さらには再生処理の際の再生時間が長くなることが予想されるため過度の低気孔率化は望ましくない。以上の観点から、気孔率は5%〜70%程度が望ましいといえる。
さらに、除去対象となる水素化物の分解温度にもよるが、熱分解型多孔質フィルタの温度は、粒径80μm、30%の気孔率を有する条件においては、SiH4 の分解が顕著となる温度650℃以下が望ましい。また、水素化ガス母集団に混入したB2 H6 の除去を行う場合には、150℃以上に設定する必要がある。上記の温度範囲において、熱分解型多孔質フィルタを上限温度に近い温度に設定した場合、ガスが通過する多孔質体の長さを短くすることが必要となる。これは、多孔質体長さが長くなることにより、精製対象となるSiH4 の通過をも妨げてしまうためである。一方、下限温度に近い温度に設定した場合、多孔質体の長さを長く確保する必要がある。
尚、本発明において、SiH4 との熱分解反応温度の違いがあれば、B2 H6 に限定される技術では無い。
また、金属級Siの水素化方法は、プラズマを用いたものに限定されない(例えば高温の金属加熱体による原子状水素の利用)が、気体が粘性流的性質を示す顕著な領域(10Torr〜)での運用が望ましい。
さらに、従来の、一般的な高純度SiH4 の製造では、SiHCl3 を出発原料とした不均化反応によるSiH4 の製造が行われるが、この際には、再処理に大きなコストを必要とするSiCl4が反応副生成物として発生する。一方、本実施の形態のSi精製方法によれば、直接的にSiH4 を製造可能とすることができるので、上記副生成物処理の問題を回避できる。すなわち、環境配慮型のプロセスである。
以上のように、本実施の形態のSi精製方法は、原料としての金属級Siを原子状水素と化学反応させることにより、例えば、SiH4 、及びB2 H6 等の水素化ガスが混合状態となった水素化ガス母集団が生成される。尚、このとき、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)等の金属は、原子状水素と化学反応させて水素化しても揮発しないため、原料としての金属級Siの表面に残留し、金属級Siからは出てこない。
ここで、SiH4 、及びB2 H6 等の混合状態となった水素化ガス母集団から、太陽電池級Siのみを採取するためには、除去したいボロン(B)からなるB2 H6 の水素化ガスを除去する必要がある。
そこで、本実施の形態では、水素化ガス母集団を、除去したい元素であるボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体である多孔質カーボン電極3、配管11又は多孔質体12の表面に衝突させることにより、除去したいボロン(B)を上記加熱物体表面に固着させて水素化ガス母集団から除去する。
すなわち、本実施の形態では、各種の水素化ガスが呈する熱分解温度の差異を利用し、除去したいボロン(B)を水素化ガス母集団から除去する。つまり、本実施の形態では、例えば、SiH4 、及びB2 H6 等の混合状態となった水素化ガス母集団から、B2 H6 の水素化ガスを除去するために、熱分解反応の温度依存性を積極的に利用している。
この結果、従来では、一度の工程で、例えば、低純度Si中に含有されるボロン(B)を1/2〜1/10までしか除去することができなかったが、本実施の形態では、一度の工程で、例えば、低純度Si中に含有されるボロン(B)を1/1000以下に除去することができる。このように、とりわけ水素化ガス母集団に含まれるB2 H6 を効率よく除去することができる。
したがって、例えば金属級Siから太陽電池級Siの精製を効率的に行うべく、低純度Siから高純度Siへの精製を効率良く行い得るSi精製方法及びSi精製装置10を提供することができる。すなわち、一切の薬液、高温溶融処理、及び酸化性雰囲気を必要とせずに、金属級Siから太陽電池級Siの精製が可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、低純度Siは、金属級Siであることが好ましい。
これにより、不純物濃度が1000ppmwt以上である廉価な金属級Siから、例えば、不純物濃度が1ppmwt以下の太陽電池級Siを効率的に製造することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、除去したいボロン(B)を水素化ガス母集団から除去した後、Siからなる水素化ガスSiH4 をSi基板5に分解付着させて、固体Siを形成することが好ましい。
これにより、例えば金属級Si等の低純度Siから精製された高純度SiH4 を用いてSiを成膜することにより、例えば、太陽電池級Si等の高純度Siの膜を形成することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスはB2 H6 であり、Siからなる水素化ガスはSiH4 であることが好ましい。
これにより、水素化ガス母集団中に含まれる各種水素化ガスに熱分解温度の差異が存在するので、具体的に、太陽電池級Si原材料を形成することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、温度制御された加熱物体は、多孔質体12からなっていることが好ましい。尚、多孔質体12は、例えば、絶縁体、金属又は半金属を用いることができる。
これにより、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 とSiからなる水素化ガスSiH4 とが多孔質体12の内部を通過することにより、その内部では、温度を精度良く一定に保つことができる。したがって、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に容易かつ精度良く温度制御することが可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、多孔質体12は、例えば多孔質カーボン電極3等のカーボン多孔質体からなっていることが好ましい。
これにより、カーボン多孔質体は電気伝導性を有するので、カーボン多孔質体に直接電圧を印加して、加熱物体として温度調整することが容易である。
また、カーボン多孔質体は、Siからなる水素化ガスSiH4 の分解に対して触媒作用がなく、かつ耐薬品性が高いので、カーボン多孔質体に除去したいボロン(B)が固着した場合においても、薬液等による再生処理が可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置10では、温度制御された加熱物体は、配管11からなっているとすることができる。
すなわち、加熱物体として多孔質体を用いない場合、加熱物体に、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6とSiからなる水素化ガスSiH4との混合体を効率良く接触させることは容易ではない。この場合、加熱物体として配管11を用いることにより、ガス通過流路体積に対する固体表面積を大きくとれるため、多数回の衝突回数を保持できるので、装置体積をコンパクトにすることが可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、多孔質体として導電性物質を用いることにより、直接、多孔質体12に通電加熱して温度制御することが好ましい。
また、本実施の形態のSi精製装置10では、多孔質体は、導電性物質である多孔質カーボン電極3からなっていると共に、多孔質体に通電加熱して温度制御する温度制御手段としてのプラズマ用電源8が設けられている。
これにより、多孔質体は電気伝導性を有するので、多孔質体に直接電圧を印加して、加熱物体として温度調整することが容易となる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、多孔質体としてラジオ波から紫外に至る電磁波吸収物質を用いることにより、電磁波吸収による加熱作用を利用して温度制御することが可能である。
この方法によっても、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に容易かつ精度良く温度制御することが可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、多孔質体に付着した除去したい元素の目詰まり再生法として、フッ硝酸による薬液を用いることができる。
これにより、カーボン多孔質体に除去したいボロン(B)が固着した場合においても、フッ硝酸による薬液を用いることによって、容易に、再生処理が可能となる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、多孔質体は、水素化ガス母集団に含有される微粒子をトラップするフィルタ機能を有していることが好ましい。
すなわち、原料としての金属級Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 とSiからなる水素化ガスSiH4 とを含む水素化ガス母集団を生成する場合には、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 及びSiからなる水素化ガスSiH4 の他に、金属やシリコン凝集体等の微粒子が含まれることもある。
この点、本実施の形態では、多孔質体の、水素化ガス母集団に含有される微粒子をトラップするフィルタ機能を有しているので、多孔質体の孔径を調整することにより、所望の大きさの金属やシリコン凝集体等の微粒子をも多孔質体にて除去することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、原子状水素の生成方法として、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、生起させたプラズマを用いることが好ましい。
さらに、本実施の形態のSi精製装置10では、水素化ガス母集団発生手段は、プラズマを生起させるプラズマ手段としてのプラズマ用電源8を備えていることが好ましい。
これにより、容易に、水素化ガス母集団を発生させることができる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、原子状水素の生成方法として、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、図示しない加熱した媒体を設置し、該媒体表面で生じる触媒分解反応を利用して原子状水素を発生させることが可能である。
すなわち、本実施の形態では、原子状水素の生成方法として、プラズマを用いたものに限らず、水素を含む全圧10〜1520Torrの雰囲気において、加熱した媒体を設置し、該媒体表面で生じる触媒分解反応を利用して原子状水素を発生させることも可能である。
また、本実施の形態のSi精製方法では、加熱物体の温度を150℃〜650℃とすることが好ましい。
これにより、具体的に、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に温度制御することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、加熱物体の温度を制御することにより、除去したい元素の前記加熱物体表面に固着させる量を調整することができるようになっている。
さらに、本実施の形態のSi精製装置10では、多孔質体は、導電性物質である多孔質カーボン電極3からなっていると共に、多孔質体に通電加熱して温度制御する温度制御手段が設けられていることが好ましい。
これにより、水素化ガス母集団を、除去したい元素からなる水素化ガスの分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスの分解温度以下となる範囲に温度制御することができると共に、反応速度を容易に調整することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態のSi精製装置20は、図9に示すように、水等の手段により冷却されている水冷電極21に、低純度Si22を設置し、接地された多孔質電極との間に水素プラズマを生成するものとなっている。すなわち、Si精製装置20は、前記実施の形態1のSi精製装置10とは、低純度Si22を用いている点が異なっている。
上記Si精製装置20は、詳細には、図9に示すように、例えば、金属級Si等の低純度Si22を設置して冷却可能な水冷電極21と、接地された不純物除去用多孔質体23と、この不純物除去用多孔質体23を通してガスを図示しないポンプにて吸引するためのガス吸引陰圧室24と、不純物除去用多孔質体23の温度制御のための熱電対25及び多孔質体温調用電源26と、水素を一定流量にて供給するガス供給システム27とを備えている。
上記Si精製装置20でのプラズマの生成は、一般的な手法を用いればよい。例えば直流方式でも良いし、マッチングボックス7を介した高周波方式、さらにはマイクロ波方式でも可能である。
また、水冷電極21の冷却方式は、水には限らないが、経済的には水が好ましい。水冷温度は、例えば、0〜40℃である。
本実施の形態のSi精製装置20では、図9に示すように、不純物除去用多孔質体23と低純度Si22との間にプラズマを生成し、低純度Si22から水素化され発生するガスを、不純物除去用多孔質体23を通して吸引する。このとき、不純物除去用多孔質体23の温度は、除去すべき元素からなる水素化物の熱分解が顕著になる温度に設定しておく。具体的には、例えば、発生した水素化ガス中にSiH4 、及びB2 H6 が含有される場合、B2 H6 が分解し易い温度である例えば150℃〜650℃に設定しておく。
本実施の形態のSi精製装置20では、ガス吸引陰圧室24内に流れ込むガス中のB2 H6 濃度は、プラズマ中のB2 H6 濃度に比較して著しく低減された状態となる。このガス吸引陰圧室24に流れ込んだガスには、Siからなる水素化ガスSiH4 が多く含まれるため、この不純物除去用多孔質体23を通過した後のガスを利用して成膜を行えば、初期に用いた低純度Si22のボロン(B)濃度に比較して、著しくボロン(B)濃度が低減されたSi膜を形成することが可能となる。
また、50Torr以上の高圧力にてプラズマを生起させた場合には、原子、分子さらにはイオン等の平均自由行程が著しく減少するため、プラズマ中で生成されるイオンの持つ運動エネルギーが低減される。これにより物理的なスパッタリング現象が抑制され、水素と原料シリコンとの水素化気化反応が顕著となり、この水素化反応の元素選択性から、低純度Si22に含有される金属は、低純度Siに取り残される形で、水素化混合ガスから除去されるため、ボロン(B)のみならず他の金属不純物濃度についても低減されたSi膜を形成することが可能になる。すなわち、低純度Si22に含有される金属である、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、クロム(Cr)等の金属は、原子状水素と化学反応させて水素化しても揮発しないため、原料としての低純度Siの表面に残留し、低純度Si22からは出てこない。
以上のように、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製装置20では、加熱物体の温度を150℃〜650℃とする。これにより、具体的に、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に温度制御することができる。
また、本実施の形態のSi精製方法では、加熱物体としての不純物除去用多孔質体23の温度を制御することにより、除去したいボロン(B)の加熱物体表面に固着させる量を調整することができるようになっている。
すなわち、本実施の形態のSi精製装置20では、多孔質体は、導電性物質である不純物除去用多孔質体23からなっていると共に、多孔質体に通電加熱して温度制御する温度制御手段としての多孔質体温調用電源26が設けられている。
これにより、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に温度制御することができると共に、反応速度を容易に調整することができる。
すなわち、このように、加熱物体としての不純物除去用多孔質体23の温度を制御することにより、除去したいボロン(B)の加熱物体表面に固着させる量を調整する方法を採用することによって、基板上へ分解付着させることにより形成される固体Siのボロン(B)濃度を任意に制御可能となる。ここでボロン(B)は、p型シリコンを形成する際の重要なドーパント元素でもある。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態のSi精製装置30は、図10に示すように、不純物除去のための多孔質体が、プラズマに直接触れることがないようになっている。
すなわち、Si精製装置30は、図10に示すように、電極側及び接地側共に水等により冷却された水冷電極31・31と、電極側と接地側とにそれぞれ設置された低純度Si32・32と、水素を一定流量にて供給可能なガス供給システム33と、さらには不純物除去のための不純物除去用多孔質体34と、その多孔質体温調用電源35とを備えている。
上記構成のSi精製装置30では、プラズマの生成は、前記実施の形態2の図9に示すSi精製装置20と同様に、一般的な手法を用いればよい。
上記Si精製装置30では、図10に示すように、例えば、金属級Si等の低純度Si32から生成された水素化混合ガスは、下流側に設置された加熱された不純物除去用多孔質体34を通過することによって、ガス中に含有されるB2 H6 を除去することができる。不純物除去用多孔質体34を通過した後のガスを用いて成膜を行えば、用いた低純度Si32に比較して純度の高いSiを作製することができる。
ここで、本実施の形態において用いるガスについては、純粋な水素ガスである必要はなく、水素を主体とした不活性な希ガスとの混合体を用いても実施可能である。希ガスは、例えば、ヘリウム(He)又はネオン(Ne)、アルゴン(Ar)を用いることができる。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態のSi精製膜製造装置40は、図11に示すように、前記実施の形態1〜実施の形態3に示すSi精製装置10・20・30を利用するものであって、除去したい元素であるボロン(B)を水素化ガス母集団から除去した後のSiからなる水素化ガスであるSiH4 をSi基板5に分解付着させて、固体Siを形成するSi成膜手段としてのSi成膜部43を備えたものとなっている。
また、本実施の形態のSi精製膜製造装置40では、水素ガスの使用量を節約するため、図11に示すように、循環精製システムを構成したものとなっている。
すなわち、本実施の形態のSi精製膜製造装置40は、図11に示ように、例えば金属級Si等の低純度Si32から水素化ガスを発生させる水素化ガス発生部41、B2 H6 除去のための多孔質部42、Si成膜部43、及び循環ポンプ44等から構成されている。
上記のSi精製膜製造装置40では、低純度Si32から発生した水素化ガスを、一旦、多孔質部42においてB2 H6 等の不純物を除去した後、後段に設置されたSi成膜部43にてSiH4 を熱等により分解し、高純度なSi膜を作製する。この場合、成膜領域を通過後のガスの組成は、略水素のみであるため、循環ポンプ44により再度、水素化ガス発生部41の入り口側へ水素ガスを循環供給する。これにより反永続的に水素(H)を浪費することなくSiの純化成膜が可能になる。
このように、本実施の形態のSi精製方法では、除去したい元素であるボロン(B)を水素化ガス母集団から除去した後、Siからなる水素化ガスSiH4 をSi基板5に分解付着させて、固体Siを形成する。
また、本実施の形態のSi精製膜製造装置40は、原料としての低純度Siを原子状水素と化学反応させることにより、除去したい元素であるボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 とSiからなる水素化ガスSiH4 とを含む水素化ガス母集団を生成する水素化ガス母集団発生手段としての水素化ガス発生部41と、水素化ガス母集団を、除去したいボロン(B)からなる水素化ガスB2 H6 の分解温度以上、かつSiからなる水素化ガスSiH4 の分解温度以下となる範囲に温度制御された加熱物体としての不純物除去用多孔質体34の表面及び孔内表面に衝突させることにより、除去したいボロン(B)を不純物除去用多孔質体34の表面及び孔内表面に固着させて水素化ガス母集団から除去する不純物水素化ガス除去手段としての多孔質部42と、除去したいボロン(B)を水素化ガス母集団から除去した後のSiからなる水素化ガスSiH4 をSi基板5に分解付着させて、固体Siを形成するSi成膜手段としてのSi成膜部43を備えている。
したがって、例えば金属級Siから太陽電池級Siの精製を効率的に行うべく、低純度Si32から高純度Siへの精製を効率良く行い得るSi精製方法及びSi精製膜製造装置40を提供することができる。
すなわち、本実施の形態のSi精製方法及びSi精製膜製造装置40を用いれば、一切の薬液、高温溶融処理、及び酸化性雰囲気を必要とせずに、金属級Siから太陽電池級Siの精製が可能となる。
また、本実施の形態のSi精製膜製造装置40では、Si成膜部43から排出された水素ガスを、水素化ガス発生部41の入り口側に戻す循環手段としての循環ポンプ44を備えている。
これにより、Si成膜部43から排出された水素ガスは、循環ポンプ44によって、水素化ガス発生部41の入り口側に戻されるので、水素化ガス発生部41では、この水素ガスを原子状水素のために再利用することができる。
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。