JP2009538154A - 医療用デバイスへの内皮細胞系細胞の付着を促進するための組成物および方法 - Google Patents

医療用デバイスへの内皮細胞系細胞の付着を促進するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、医療用デバイスの改善された被覆のための組成物および方法を提供する。提供するのは、医療用デバイスの金属性表面材料に対して結合特異性を有する少なくとも1つの結合ドメイン、および内皮細胞系細胞に対して結合特異性を有する少なくとも1つの結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物である。医療用デバイスの金属性表面を被覆する方法、および医療用デバイスを製造する方法は、被覆される予定の金属性表面を、被膜を形成するのに有効な量の生体機能性被覆材料と接触させることを含み、被覆された表面を内皮細胞系細胞と接触させて、被覆された表面に内皮細胞系細胞を結合させることをさらに含むことができる。

Description

(発明の分野)
本発明は、血管内デバイスに対する内皮細胞系細胞の付着を促進するための組成物および方法に関する。
(発明の背景)
アテローム性動脈硬化症は、動脈の狭窄および閉塞を引き起こす。ステント留置およびバイパス手術は、小口径動脈(直径が6mm未満として定義される)における重症疾患を治療するのにしばしば使用される。動脈バイパス処置は、内胸動脈または伏在静脈などの血管導管の入手可能性によって制約される。残念ながら、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)から作られた合成導管は、それらの付着性、静止性内皮の欠如のため、小口径グラフトにおける受け入れ難く高率の血栓症を経験する。それゆえ、非血栓形成性小口径動脈置換術を開発することが、高齢者集団における心血管インターベンションの最も重要な目標の1つとして出現した。
血管内デバイスは、身体の脈管構造内、典型的には、血管または心臓中の閉塞部位に留置されるか、あるいは心臓の血管または部分を置換または維持するように留置される。血管内デバイスは、ステンレス鋼、チタン、ポリマー、またはこれらの組合せなどの異質物を脈管構造内に挿入することからの合併症を低減することを意図した生物学的に不活性な材料から製造されるのが通常である。しかし、血栓症、新生内膜形成、および再狭窄を含む数多くの問題が、これらのデバイスに関連していることが報告されている。血管内デバイスの合併症を低減または排除するための試みがなされてきた。例えば、血栓症の問題に取り組むために、血管内デバイスをもつ個体は、チクロピジンまたはアスピリンなどの抗凝血薬および抗血小板薬を服用することができる。
血管内デバイスと関連する合併症を克服するための1つのアプローチは、脈管構造および/または血液と接触しているデバイス表面の迅速な内皮化(endothelialization)を促進するための戦略である。それに関して、特許文献1には、医療用デバイスへの内皮細胞の付着を促進するために、内皮細胞抗原に対して結合特異性を有する抗体をマトリックスに架橋することによって作製されるマトリックス被覆を有する医療用デバイスが記載されている。特許文献2には、ピペラジン誘導体の金属錯体が開示されており、該錯体は、再内皮化を促進すると記載されているが、デバイスに直接的に結合するとは思われず、効果的であるためには大量の血中循環組成物に頼っていると思われる。特許文献3には、細胞をステントに接着するために、ポリマー層を塗布すること、ピリジンおよび塩化トレシルを塗布すること、および5つのアミノ酸からなるペプチド(グリシン−アルギニン−グルタミン酸−アスパラギン酸−バリン;配列番号50)を塗布することによって、ステントを被覆する方法が記載されている。特許文献4には、ステロイドDHEAの誘導体が開示されており、該誘導体は、再内皮化に有用と記載されている。特許文献5には、グラフトされる予定の器官または組織の血管を、内皮細胞に由来する部分重合細胞外マトリックス調合物で被覆することが開示されており、該調合物は、再内皮化を促進する表面として役立つ可能性がある。デバイスの設計を変更して再内皮化の発現を促進できる。特許文献6には、血管中の狭窄領域を治療するための腔内プロステーシスが開示されている。ステントの開口部は、血管の再上皮化を可能にすると言われている。
内皮細胞系細胞には、内皮細胞および内皮前駆細胞が含まれる。内皮細胞は、脈管構造全体の内側を覆い、そこで、凝血、炎症、血管透過性、および血管と間質の間での栄養素交換を統制している。内皮が局所的に裸出された区域では、凝血が急速に起こる。血管の局所性凝血は、血栓症および血管閉塞、またはその他の血栓塞栓症につながる場合がある。内皮前駆細胞は、種々のモデル系での血管新生および脈管形成に寄与し、さらに動物モデルにおける血管内グラフトの内皮化に寄与することが示されている。しかし、血管内グラフトの自発的内皮化は、ヒト患者において稀であり、多分、グラフト材料が、分子接着および凝血に抵抗するように作られ、かつ内皮前駆細胞がこのような材料上に接着し、生き残り、増殖する能力をもたないためであろう。したがって、処理されたデバイス上で新生内皮のコロニー形成および/または増殖を促進するようにデバイスを処理することなどによって、血管内デバイスの内皮化を促進する方法に対する必要性がなお存在する。
末梢血液から少なくとも2つのタイプの内皮前駆細胞、すなわち、インビトロで2〜4週間生存し、強力な血管新生促進因子を分泌する「初期」内皮前駆細胞、および3週間の時点で発生し、100倍の集団まで複製できる「後期」内皮前駆細胞を単離できる。初期内皮前駆細胞は、血管内皮増殖因子(VEGF)の影響下にある骨髄血管芽細胞に由来する。初期内皮前駆細胞は、表現型CD133+/−、CD34+、VEGFR−2+、CD31+、vWF−、VE−カドヘリン−、E−セレクチン−、eNOS−、およびテロメラーゼ+を有する。後期内皮前駆細胞は、表現型CD133+/−、CD34+、VEGFR−2+、CD31+、vWF+、VE−カドヘリン+、E−セレクチン+、eNOS+、およびテロメラーゼ+を有する。分化した内皮前駆細胞は、それがCD133(−)およびテロメラーゼ(−)であること以外は後期内皮前駆細胞と同様である。その他の内皮前駆細胞の亜集団およびそれらの表現型マーカーが、当技術分野で発表されている。
米国特許第7,037,332号明細書 米国特許第6,897,218号明細書 米国特許第6,140,127号明細書 米国特許第5,929,060号明細書 米国特許第5,643,712号明細書 米国特許第6,436,132号明細書
望まれているのは、血管内デバイスの表面で内皮細胞系細胞の新生層を付着、補充、支援、分化することの中の1つまたは複数を行うことのできるアプローチである。例えば、そのタイプの血管内デバイスに関連する血栓症、新生内膜形成、および再狭窄などの合併症の発現を低減することの利益を意図して、循環している内皮細胞系細胞を捕捉してそれらを血管内デバイスの表面に播種する能力のある被覆を備えた血管内デバイスを取得することが望まれる。
(要旨)
本発明は、内皮細胞系細胞に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン(言及を容易にするため、本明細書中ではこの結合ドメインを「内皮結合ドメイン」と呼ぶ)に連結されている、医療用デバイスの金属性表面に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン(言及を容易にするため、本明細書中ではこの結合ドメインを「表面結合ドメイン」と呼ぶ)を含む生体機能性被覆組成物を提供し、この表面結合ドメインおよび内皮結合ドメインは、それぞれ本明細書中の表1および3に例示されるアミノ酸配列から本質的になる。表面結合ドメインおよび内皮細胞結合ドメインは、互いに直接的に連結されることができ(例えば、合成中に、または化学的手段で)、あるいはリンカーを介して連結され、本発明の生体機能性被覆組成物の単一分子を形成できる。
本発明は、また、配列番号1〜8から本質的になるペプチドから構成される表面結合ドメイン、およびこのような表面結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを提供する。
本発明は、また、配列番号9〜46からなるペプチドから構成される内皮結合ドメイン、およびこのような内皮結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを提供する。
本発明による組成物を使用して、本発明は、また、被覆された表面に内皮細胞系細胞を接触させた場合に、被覆された表面が内皮細胞系細胞(例えば、内皮細胞および内皮前駆細胞のうちの1種または複数)に接着することを可能にするように医療用デバイスの金属性表面を被覆する方法;医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面への内皮細胞系細胞の接着を促進する方法;および少なくとも1つの表面を内皮細胞系細胞の付着を促進するように被覆することによって、医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面の内皮化を促進する方法を提供する。これらの方法は、医療用デバイスの少なくとも1つの被覆される予定の金属性表面を、本発明の少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結された本発明の少なくとも1つの表面結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物(「界面生体材料」としても知られている)と接触させることを含む。生体機能性被覆組成物を、医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面と接触させ、表面に塗布して、医療用デバイス上に被覆を形成するが、ここで、少なくとも1つの内皮結合ドメインは、被覆中に、内皮細胞系細胞を医療用デバイスの少なくとも1つの被覆された表面に接着するのに効果的な、および好ましくはその被覆された表面の内皮化を促進するのに有効量で存在する。該方法は、被覆されたデバイスを内皮細胞系細胞と接触させ、付着、接着、増殖支援、および分化支援の中の1つまたは複数を促進する工程をさらに含むことができる。この最後の工程は、インビトロで行うことができ(例えば、デバイスの埋め込みに先立って内皮細胞を付着させる)、あるいはインビボで行うことができる(例えば、いったん埋め込んだ後に、個体の内皮細胞が、無傷の内皮の隣接した動脈区域から移動して、または循環細胞として、生体機能性被覆組成物で被覆されたデバイス表面と接触し、そのデバイス表面に接着する)。
本発明による方法および組成物に関して、少なくとも1つの内皮結合ドメインは、1つのタイプ(例えば、内皮細胞系細胞の1つのサブセット、例えば内皮細胞にだけに特異的に、または広範な特異性で(例えば、一般に、内皮細胞および内皮前駆細胞の双方に対して)結合する)からなることができ、あるいは複数のタイプ(例えば、内皮細胞に特異的に結合する1つのタイプ;および内皮前駆細胞に特異的に結合する別のタイプ)からなることができる。
本発明は、また、本発明による組成物を使用する、医療用デバイスへの、およびより好ましくは血管内デバイスへの内皮細胞系細胞の接着を促進する方法に関する。また、医療用デバイスの製造方法も提供する。これらの方法は、医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面を生体機能性被覆組成物(内皮細胞系細胞に特異的に結合する)と接触させて少なくとも1つの被覆された金属性表面を形成すること、および少なくとも1つの被覆された表面を内皮細胞系細胞と接触させること(例えば、少なくとも1つの被覆された表面に対する内皮細胞系細胞の接着を促進するために)を含み、ここで、生体機能性被覆組成物は、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインを含み、かつ少なくとも1つの表面結合ドメインと少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインは、互いに連結されている。内皮細胞系細胞を医療用デバイス上の生体機能性被覆組成物と接触させることは、例えば、生体機能性被覆組成物を含む医療用デバイス上で内皮細胞系細胞を含む溶液をインキュベートすること、ディッピングすること、噴霧すること、または刷毛塗りすることなど、親和性分子とそのリガンドとの間の結合相互作用を促進するための当技術分野で周知の任意の方法によることができる。また、有効量の生体機能性被覆組成物を医療用デバイスの金属性表面に塗布して、医療用デバイスを内皮細胞の付着に対して、より好ましくは被覆された表面の内皮化が後に続く内皮細胞の付着に対して適合するものにすることによって形成される被覆を含む医療用デバイスが提供される。
別法として、いったん表面が被覆され、デバイスが埋め込まれたら、デバイスの選択された金属性表面に対する内皮細胞系細胞の接着が促進されるような、血管用デバイスの内皮化を促進する方法が提供される。該方法は、(a)本明細書に記載の生体機能性被覆組成物を血管用デバイスの少なくとも1つの内皮化される予定の金属性表面に、該生体機能性被覆組成物が少なくとも1つの金属性表面に結合するように接触させて、血管用デバイス上に被覆された金属性表面を形成する工程(ここで、生体機能性被覆組成物は、配列番号9〜46からなるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインに連結された配列番号1〜8からなるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの表面結合ドメインを含む)、および(b)該デバイスを必要とする個体(ヒトまたは非ヒト)中に該デバイスを埋め込んで(ここで、(該個体によって産生される)内皮細胞系細胞は、(生体機能性被覆組成物の少なくとも1つの内皮結合ドメインに結合する細胞によって主として介在されて)デバイスの被覆された表面に接触、付着および接着する)、デバイスの被覆された金属性表面を覆う内皮細胞系細胞の拡がりを促進し、かつ血管用デバイスの内皮化を促進する工程を含む。埋め込まれたデバイス上での内皮化を促進することは、さらに、埋め込まれたデバイスに隣接する組織または脈管構造の1つまたは複数の治癒を促進し、隣接する組織中への埋め込まれたデバイスの組み込み(統合化)を促進し、かつ埋め込まれたデバイスに関連するような血栓症の発現を低減することができる。
本発明は、医療用デバイス用の改善された被覆のための組成物、医療用デバイスのそれらの組成物を使用する被覆方法、および医療用デバイスの本発明の生体機能性被覆組成物で被覆された金属性表面を提供する。
定義の部
以下の用語は、当業者にとって十分に理解されているものと考えられるが、本発明の説明を容易にするために以下の定義を提示する。
用語「有効量」は、本明細書中で、本発明による生体機能性被覆組成物に関して、および明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、(a)医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面への生体機能性被覆組成物の結合を仲介して被覆を形成するために、かつ(b)被覆された表面への内皮細胞の接着を、より好ましくは被覆された表面の内皮化を促進するために、被覆される予定の少なくとも1つの金属性表面に(生体機能性被覆に対する少なくとも1つの表面の接解を介して)塗布される生体機能性被覆組成物の有効量を意味する。
用語「内皮細胞系細胞」は、本明細書中で、明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、任意の成長段階の内皮細胞(例えば、内皮幹細胞または前駆細胞などの成長段階の初期から、完全に分化した組織特異的内皮細胞などの成熟した成長段階まで及ぶ)を意味し、内皮前駆細胞および/または内皮細胞に分化する能力のある幹細胞が含まれ、このような幹細胞は、内皮細胞(例えば、骨髄血管芽細胞、心臓Sca−1+幹細胞(白血病阻害因子(LIF)、脂肪由来幹細胞の存在下で内皮細胞に分化できる))またはその組合せと同じような少なくとも1つの表面分子または受容体を共有する。したがって、内皮細胞系細胞には、内皮細胞、内皮前駆細胞、ならびに内皮細胞および/または内皮前駆細胞に分化する能力のある幹細胞が含まれる。本発明により、好ましい内皮細胞系細胞を使用して、好ましい内皮細胞系細胞以外の内皮細胞系細胞を排除できる。
用語「内皮化」は、別途に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、本発明による有効量の生体機能性被覆組成物で被覆された医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面上のまたは金属性表面を覆う内皮細胞の成長(望ましくは増殖を含む)および内皮細胞の分化の1つまたは複数を意味する。好ましくは、内皮細胞系細胞が、有効量の生体機能性被覆組成物で被覆された医療用デバイスの表面に付着したら、内皮細胞の増殖および成長が促進され、内皮組織層が準備される。したがって、用語「内皮化」は、なんらかの生物学的または機械的過程のためその内皮を失ったまたは除去された血管グラフトの再内皮化を意味することができ、あるいは、内皮化は、新たな内皮細胞を成長させて、内皮細胞で前以て覆われていない、埋め込まれたもしくは埋め込み可能なグラフトの金属性表面、あるいは埋め込まれたもしくは埋め込み可能な医療用デバイスの金属性表面を覆うことを含むことができる。
用語「医療用デバイス」は、本明細書中で、明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、血管系に曝露される血管内デバイス、血管用デバイス、血管グラフト、リードもしくはリードチップ(例えば、心臓ペースメーカーまたは心臓除細動器からの)を指す。好ましい実施形態において、本明細書中の「医療用デバイス」の範囲および意味には、ステントを含むデバイスが包含される(当技術分野で周知のように、ステントは、脈管(例えば血管)を開けた状態で保持するために使用される、金属系および/または高分子系のケージ様またはチューブ状支持デバイスである)。用語「血管内デバイス」および「血管用デバイス」は、本明細書中で、明細書および特許請求の範囲に関する目的で互換的に使用され、傷害された、または病気にかかった、または遮断された組織の機能を取り戻すためにヒトまたは動物の脈管構造中に導入される構造体を指し、人工デバイス、および血管グラフトが含まれる。好ましい実施形態において、本明細書中の「血管内デバイス」または「血管用デバイス」の範囲および意味には、ステントを含むデバイスが包含される。用語「血管用デバイス」には、本明細書中で使用される場合、デバイスと関連し、かつ該デバイスと一体になってヒトまたは動物の体内に導入されるデバイスに関連した材料も含まれる。代表的な血管用デバイスには、限定はされないが、心臓パッチ、人工心臓弁、弁輪形成リング、輪状リング、機械的アシストデバイス、血管封止デバイス、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、ペースメーカー、除細動器、ガイドワイヤー、塞栓防止フィルター、塞栓デバイス(例えば、コイル)、埋め込み可能な点滴ポンプ、および血管縫合糸が含まれる。血管グラフトには、冠状動脈バイパスグラグト、人工心臓バルブ、末梢血管バイパスグラフト、血管アクセスグラフト、および合成グラフトが含まれる。本発明による好ましい医療用デバイスを使用して、好ましい医療用デバイス以外の医療用デバイスを排除できる。
医療用デバイスは、限定はされないが、金属、金属酸化物、非金属酸化物、セラミック、ゴム、プラスチック、アクリル、シリコーン、ポリマー、およびこれらの組合せを含む各種材料からなる1つまたは複数の表面から構成され、したがってそれらを有することができる。血管内デバイスは、任意の生体適合性材料を使用して作ることができるが、脈管構造における生体適合性に伴う難点のため、生体適合性材料は比較的不活性であることが好ましい。このようなデバイスは、当技術分野で周知の各種材料で作製できるが、最も典型的には、生物学的に不活性なポリマーまたは金属である。医療用デバイスの製造で使用される金属は、当技術分野で周知であり、限定はしないが、ステンレス鋼、タンタル、金、白金、銀、タングステン、チタン、チタン合金(例えば、ニチノールなどのチタン記憶合金)、遷移金属、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属(後の3つのそれぞれは、周期表中で類別されるように構造および機能に関して関連のある金属を含む)が含まれる。これらの群のそれぞれからなる金属合金(例えば、コバルト−クロム合金)および金属酸化物が、個別的かつ別個に含まれる。本発明において、本発明の生体機能性被覆組成物が結合されることになる好ましい表面材料は、金属、より好ましくはステンレス鋼である。本発明による医療用デバイスの好ましい表面材料を使用して、好ましい表面材料以外の医療用デバイスの表面材料を排除できる。
用語「表面」が、本明細書中で医療用デバイスと一体的に使用される場合、一般に、それは、生物学的溶液および/または生物学的組織に曝露されているまたは曝露されることになり、好ましくは血液と接触するおよび/または個体の脈管構造中に導入される、医療用デバイスの1つまたは複数の金属性表面を指し、それゆえ、このような表面は、血栓症、新生内膜形成、再狭窄の中のいずれか1つまたは複数に敏感である。「金属性表面」は、金属、金属合金、金属酸化物、およびこれらの組合せからなる表面材料を意味する。
用語「個体」は、本明細書中で、明細書および特許請求の範囲に関して使用される場合、ヒトまたは動物を指す。
用語「生物学的血管(vascular biologic)」は、本明細書中で使用される場合、特に手術後または血管内デバイスの埋め込み時の血管系内での血管用デバイスの修復または統合、および内皮化促進の1つまたは複数において特定の生物学的有用性を有する生物学的物質を指す。生物学的血管は、コラーゲン(例えば、IV型および/またはV型)、ビトロゲン、ラミニン、エンタクチン、フィブロネクチン、グリカン(例えば、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン)、内皮細胞増殖を支える1つまたは複数の増殖因子(例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF))、ヘパリン結合性上皮様増殖因子、アンギオポイエチン1(ang−1)、アンギオポイエチン2(ang−2)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、LIF)、アンギオポイエチン(例えば、ang−3、ang−4)およびこれらの組合せからなる群より選択される生物学的物質を含むことができる。本発明による好ましい生物学的血管を使用して、好ましい生物学的血管以外の生物学的血管を排除できる。
本明細書中で明細書および特許請求の範囲の目的に関して使用される用語「表面結合ドメイン」は、医療用デバイスの金属性表面に特異的に結合する、より詳細にはステントのステンレス鋼に対する結合特異性を有し、配列番号1〜8(表1も参照のこと)からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを指す。本発明と共に好ましい表面結合ドメイン(特異性を伴って結合するタイプの表面を含む)を使用して、好ましい表面結合ドメイン以外の表面結合ドメインを排除することができる。本発明の生体機能性被覆組成物中の表面結合ドメインは、医療用デバイスの被覆されることが望まれる少なくとも1つの表面の金属系材料に特異的に結合(例えば、典型的には、非共有結合的に、イオン的に、または静電的に)するように選択され、ここで、このような少なくとも1つの表面は、一般に、医療用デバイスを必要とする個体に医療用デバイスを埋め込む場合に、脈管構造と関連した生物学的組織および/または生物学的液体に曝露されることになる。
用語「結合するのに十分な時間」は、当業者にとって周知であるように、一般には、本明細書に記載の結合ドメインを、該結合ドメインが結合特異性を有する基材に特異的に結合するのに十分な時間の継続期間を指す。
本明細書中で明細書および特許請求の範囲の目的に関して使用される用語「内皮結合ドメイン」は、1つまたは複数の内皮細胞系細胞に特異的に結合するペプチドを指し、ここで、該ペプチドは、配列番号9〜46(表3も参照のこと)からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になる。このような内皮細胞結合ドメインは、特定タイプの内皮細胞系細胞(例えば、内皮細胞、内皮前駆細胞、または特定の組織、器官の内皮細胞(例えば、心臓内皮細胞))に、あるいは2つ以上のタイプの内皮細胞系細胞に特異的に結合できる(例えば、内皮細胞結合ドメインによって結合された共通の表面分子を共有して)。別法として、本発明の生体機能性被覆組成物は、2つ以上のタイプの内皮結合ドメイン(例えば、それぞれ、異なる内皮細胞系細胞に対して結合特異性を有する2つ以上の異なるペプチド)から構成できる。したがって、このような場合、各タイプの内皮結合ドメインは、生体機能性被覆組成物中に存在する別のタイプの内皮結合ドメインの結合特異性とは異なる、内皮細胞系細胞に対する結合特異性を有する。「内皮結合ドメイン」の定義から排除されるのは、抗体、より詳細には内皮細胞に対して結合特異性を有する抗体である。本発明による好ましい内皮結合ドメイン(特異性を伴って結合するタイプの内皮細胞系細胞を含む)を使用して、好ましい内皮結合ドメイン以外の内皮結合ドメインを排除することができる。したがって、好ましい内皮結合ドメインのペプチドは、配列番号9〜46からなる群より選択されるアミノ酸配列からなり、内皮結合ドメインの配列番号9〜46からなる群より選択される配列以外のアミノ酸配列から本質的になるペプチドは排除される。
用語「生体機能性被覆組成物」および「界面用生体材料」は、本発明に関して、および明細書および特許請求の範囲に関する目的に関して互換的に使用され、配列番号1〜8からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの表面結合ドメイン、および配列番号9〜46からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの内皮結合ドメインを含む組成物を指し、ここで、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインは、(例えば、物理的、化学的、合成的または生物学的結合(例えば、組換え発現を介して)のうちの1つまたは複数により)、各結合ドメインがそのそれぞれの機能を保持して、それが結合特異性を有するそれぞれの分子に結合するように互いに連結される。このような連結は、互いに連結される2つ以上の表面結合ドメインを有する多量体分子を含むことができ、ここで、内皮結合ドメインは、多量体分子からなる表面結合ドメインの全部またはいくつかのみに連結される。例えば、ペプチド化学の技術分野で周知の標準的な試薬および方法を使用して、側鎖−側鎖の結合(例えば、それぞれのペプチドが側鎖アミン(例えば、リシンのε−アミンなど)を有する場合)、側鎖−N末端の結合(例えば、あるペプチドのN末端アミンを他のペプチドの側鎖アミンと連結する)、側鎖−C末端の結合(例えば、あるペプチドのC末端化学部分(例えば、カルボキシル)を他のペプチドの側鎖アミンと連結する)、N末端−N末端の結合、N末端−C末端の結合、C末端−C末端の結合、またはこれらの組合せを介して、2つの結合ドメインを連結できる。合成または組換え発現では、双方のペプチドを単一のペプチドとして合成または発現することによって、表面結合ドメインのペプチドを内皮結合ドメインのペプチドに直接的に連結できる。リンカーを介して表面結合ドメインを内皮結合ドメインに連結して、生体機能性被覆組成物を形成することもできる。
本発明の生体機能性被覆組成物または界面用生体材料は、(a)本発明による少なくとも1つの表面結合ドメインを、少なくとも1つの表面結合ドメインが結合特異性を有する医療用デバイスの金属性表面材料への生体機能性被覆組成物または界面用生体材料の結合を仲介するのに有効量で、および(b)本発明による少なくとも1つの内皮結合ドメインを、被覆された医療用デバイスに内皮細胞系細胞に付着または接着する、より好ましくかつ付加的には医療用デバイスの被覆された表面の内皮化を促進する能力を付与するのに有効量で含み、ここで、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインは、互いに連結される。好ましい実施形態では、リンカーを使用して、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインを互いに連結する。
機能に関して、医療用デバイスの金属性表面に生体機能性被覆組成物を塗布する(生体機能性被覆組成物を金属と接触させることによって)場合、金属性表面への生体機能性被覆組成物の結合は、主として、本発明による少なくとも1つの表面結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物の領域によって仲介され、付着、接着、内皮化、またはこれらの組合せに関連するような生体機能性被覆組成物の特性、または生体機能性組成物に付随する特性は、主として、本発明による少なくとも1つの内皮結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物の領域によって仲介される。したがって、医療用デバイスを本発明の生体機能性被覆組成物で被覆し、次いで被覆された医療用デバイスを個体中に導入または適用する場合には、その生体機能性被覆組成物は、次いで、医療用デバイスと個体の生物学的組織および/または生物学的液体との間のインターフェース(つまり、「界面用生体材料」)になる。したがって、内皮細胞系細胞の医療用デバイスへの付着および接着を促進する方法が提供され、該方法は、医療用デバイスの1つまたは複数の金属性表面を本発明による少なくとも1つの表面結合ドメイン、および本発明による少なくとも1つの内皮結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物または界面用生体材料で被覆することを含み、ここで、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインは、互いに連結されている。別の実施形態では、医療用デバイスの金属性表面上での内皮化を促進する方法が提供され、該金属性表面は、脈管構造と関連した1つまたは複数の生物学的組織(例えば、血管)または生物学的流体(例えば、血液)を接触させるのに適切であり、該方法は、医療用デバイスの1つまたは複数の金属性表面を本発明による少なくとも1つの表面結合ドメインおよび本発明による少なくとも1つの内皮結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物または界面用生体材料で被覆することを含み、ここで、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインは互いに連結され、かつ少なくとも1つの内皮結合ドメインは、内皮細胞系細胞に結合されている。
用語「リンカー」は、明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、少なくとも2つの異なる分子を連結する(例えば、本発明について言えば、表面結合ドメインを内皮結合ドメインに連結すること、または2つ以上の表面結合ドメインを連結して2つ以上の表面結合ドメインから構成される多量体分子を形成すること、あるいは2つ以上の内皮結合ドメインを連結して2つ以上の内皮結合ドメインから構成される多量体分子を形成すること)ための分子橋として機能する化合物または部分を指す。したがって、例えば、リンカーの一部は、本発明による表面結合ドメインに結合し、該リンカーの別の部分は、本発明による内皮結合ドメインに結合する。当業者に周知のように、当技術分野で周知の方法を使用して、表面結合ドメインおよび内皮結合ドメインを、段階的手法でリンカーに連結して、あるいは、リンカーに同時に連結して、本発明による生体機能性被覆組成物または界面用生体材料を形成できる。リンカーが分子橋としてのその目的を達成することができ、かつ生体機能性被覆組成物の結合特異性が実質的に保持される限り、リンカーに関して大きさおよび内容についての特定の制約はない。
リンカーは、当業者に周知であり、限定はされないが、化学的な鎖、化合物(例えば、試薬)などが含まれる。リンカーとしては、限定はされないが、ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーを挙げることができる。ヘテロ二官能性リンカーは、当業者に周知であり、第1分子に特異的に連結するための第1反応性官能基(または化学部分)を有する1つの末端、および第2分子に特異的に連結するための第2反応性官能基を有する反対側の末端を含む。ホモ−およびヘテロ官能性の双方の各種の二官能性または多官能性試薬(Pierce Chemical社、Rockford、イリノイ州のカタログに記載されているような)、アミノ酸リンカー(典型的には、アミノ酸が3〜15個の短いペプチド、およびグリシンおよび/またはセリンなどのアミノ酸を含むことが多い)、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)を本発明に関するリンカーとして採用できることは、当業者にとって明白であろう。一実施形態において、代表的なペプチドリンカーは、結合ドメインに連結され得る多数の反応性部位を含む(例えば、ポリリシン、ポリオルニチン、ポリシステイン、ポリグルタミン酸およびポリアスパラギン酸)か、あるいは実質上不活性なペプチドリンカー(例えば、リポリグリシン、ポリセリン、ポリプロリン、ポリアラニン、およびアラニル、セリニル、プロリニル、またはグリシニルアミノ酸残基を含むその他のオリゴペプチド)を含む。アミノ酸リンカーが選択されるいくつかの実施形態において、本発明の生体機能性被覆組成物は、表面結合ドメイン、リンカー、および内皮結合ドメインを含む単一の連続したペプチドであるように合成できる。したがって、リンカー連結装置は、単純に単一の連続したペプチドの結合による。
適切な高分子リンカーは、当技術分野で周知であり、合成ポリマーまたは天然ポリマーを含むことができる。代表的な合成ポリマーには、限定はされないが、ポリエーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)(「PEG」))、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸(PLA)およびポリグリコール酸(PGA))、ポリアミン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリウレタン、ポリメタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート;PMMA)、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリヘキサン酸、EDTA、EGTAなどの柔軟なキレート化剤、および好ましくは約20ダルトン〜約1000キロダルトンの分子量を有するその他の合成ポリマーが含まれる。代表的な天然ポリマーには、限定はされないが、ヒアルロン酸、アルギン酸、硫酸コンドロイチン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、アルブミン、コラーゲン、カルモジュリン、および好ましくは約200ダルトン〜約20000キロダルトン(構成モノマーに関して)の分子量を有するその他の天然ポリマーが含まれる。高分子リンカーは、ジブロックポリマー、マルチブロックコポリマー、櫛型ポリマー、星型ポリマー、樹状または分枝状ポリマー、線状−樹状混成ポリマー、リシンから構成される分枝鎖、またはランダムコポリマーを含むことができる。リンカーは、また、メルカプト(アミド)カルボン酸、アクリルアミドカルボン酸、アクリルアミド−アミドトリエチレングリコール酸、7−アミノ安息香酸、およびこれらの誘導体を含むことができる。リンカーは、当技術分野で周知であり、開裂できるリンカー、および架橋の目的で他の分枝部分に向かってまたはそれら自身に向かって反応性にすることのできるリンカーが含まれる。
連結される予定の分子、および連結が実行される条件などの因子に応じて、リンカーは、生物学的機能、安定性、特定の化学および/または温度パラメーターに対する耐性、および十分な立体的選択性または大きさの保存のような諸特性を最適にするために、長さおよび組成を異にすることができる。例えば、リンカーは、生体機能性被覆組成物中で表面結合ドメインが機能する能力を有意に妨げるべきではない(すなわち、目的のために適切な親和力を伴って、医療用デバイスのための本発明による特異性を有する表面に有意に結合するように)。同様に、リンカーは、生体機能性被覆組成物中で内皮結合ドメインが機能する能力を有意に妨げるべきではない(すなわち、目的のために適切な親和力を伴って、本発明による特異性を有する内皮細胞系細胞に有意に結合するように)。好ましいリンカーは、本発明の生体機能性被覆組成物の効果を増強または補完する活性を有することのできる分子でよい。例えば、リンカーとしてポリエチレングリコールもしくはその他の高分子またはタンパク質(例えば、アルブミン)を使用することは、本発明による生体機能性被覆組成物で被覆された医療用デバイスの表面への非特異的なタンパク質および/または望ましくない細胞の接着を防止するのを助けるのに役立つ可能性がある。本発明中の好ましいリンカーを使用して、好ましいリンカー以外のリンカーを排除できる。
本明細書中で使用される用語「特異的に結合する」または「結合特異性」などは、明細書および特許請求の範囲に関する目的で、互換的に使用され、(本明細書中で説明されるような)結合ドメインが、結合されるべく選択されたある標的分子または表面材料(「標的表面材料」)に対して、(標的分子または標的表面材料以外の)別の分子または表面材料を超えるより大きな結合親和性を有する能力、例えば、他の基材からなる不均一集団中の所定の基材に対する、非特異的吸着に帰すことのできる親和力よりも大きな親和力を指す。例えば、表面結合ドメインが、医療用デバイス中の別の構成要素または材料(ポリマーなど)に対する結合に比較して金属に対して優先的な結合を示す場合、該表面結合ドメインは、医療用デバイス中の金属性表面、より好ましくはステンレス鋼表面に対して結合特異性を有する。このような優先的結合は、結合ドメインが結合特異性を有する分子または材料の上または内部の特定の立体配座、構造、および/または電荷の存在によって決まる可能性があり、その結果、結合ドメインは、一般の分子または材料というよりはむしろその分子または材料を認識し、それに結合する。
いくつかの実施形態において、特定の表面、材料または組成物に特異的に結合する結合ドメインは、該結合ドメインが、例えば、異なる材料または表面、またはこのような比較のために典型的に使用されるウシ血清アルブミンのようなタンパク質などの適切な対照に結合するよりも、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、またはそれ以上の高い比率で結合する。例えば、結合特異性は、ペプチドと非標的細胞と比較した場合のペプチドと標的との間の相対的結合量を意味するシグナル(例えば、蛍光または比色)を定量するアッセイ法で測定できる。したがって、このようなアッセイ法において、結果が、アッセイ中に存在する内皮細胞(標的細胞として)の約40%がペプチドで結合され、アッセイ中に存在するその他の細胞(例えば、平滑筋細胞、「非標的細胞」)の10%未満がペプチドで結合されるなら、該ペプチドは、内皮細胞に対して結合特異性を有すると言われる。好ましい実施形態において、結合ドメインは、10μM以下、より好ましくは1μM未満のEC50によってさらに特徴付けられる結合特異性を有する。EC50は、そのペプチドが結合特異性を有する既知量の材料または細胞でそのペプチド濃度を滴定する結合アッセイ法から濃度応答曲線を作成することなどによる、いくつかの当技術分野で周知のなんらかの方法を使用して測定できる。(例えば、本明細書の実施例2および3に記載の方法を参照のこと)。このような場合、EC50は、アッセイ中に該ペプチドについて観察される最大結合の50%を生じさせるペプチド濃度を意味する。
用語「ペプチド」は、本明細書中で、明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用され、アミノ酸が約3個以上でかつアミノ酸残基が約500個を超えない長さのアミノ酸鎖を指し、ここで、アミノ酸鎖は、天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、遺伝的にコードされたアミノ酸、遺伝的にコードされていないアミノ酸、およびこれらの組合せを含むことができるが、抗体は、本明細書における「ペプチド」の範囲および定義から明確に除外される。好ましくは、本発明による結合ドメインを含むペプチドは、アミノ酸が7個以上でかつ約60個を超えない長さの連続した配列を含む。本発明により使用されるペプチドは、化学合成、組換え発現、より大きな分子の生化学的または酵素的断片化、より大きな分子の化学的開裂、前述の組合せによって生じさせること、あるいは一般には、当技術分野の任意のその他の方法によって調製することができ、好ましくは単離される。用語「単離される」は、該ペプチドが、例えば、組換え技術で生じさせた場合に細胞材料または培養培地を実質的に含まないこと、生化学的または化学的方法を使用して化学的に合成または生じさせた場合に化学前駆体またはその他の化学薬品を実質的に含まないことなど、ペプチド自体の不可欠な構造の一部にならない成分を実質的に含まないことを意味する。本発明では、好ましいペプチドを使用して、好ましいペプチド以外のペプチドを排除できる。
ペプチドは、L型アミノ酸、D型アミノ酸、またはこれらの組合せを含むことができる。遺伝的にコードされていない代表的なアミノ酸には、限定はされないが、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸(ピペリジン酸)、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン(サルコシン)、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、および3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(「DOPA」)が含まれる。代表的な誘導体化されたアミノ酸には、例えば、その中の遊離アミノ基が、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基を形成するように誘導体化された分子が含まれる。遊離カルボキシル基は、塩、メチルおよびエチルエステルまたはその他のタイプのエステル、あるいはヒドラジドを形成するように誘導体化することができる。遊離ヒドロキシル基は、O−アシルまたはO−アルキル誘導体を形成するように誘導体化することができる。ヒスチジンのイミダゾール窒素は、N−im−ベンジルヒスチジンを形成するように誘導体化することができる。好ましい実施形態において、および本発明による生体機能性被覆組成物において、少なくとも1つの表面結合ドメインは、N末端アミノ酸、C末端アミノ酸、またはこれらの組合せを含み、ここで、このようなアミノ酸は、医療用デバイス中の結合特異性を有する表面に対する表面結合ドメインの結合親和力(結合相互作用の強さ)を高める、遺伝的にコードされていないアミノ酸である。このようなアミノ酸を、固相および/または液相合成に関する当技術分野で周知の標準的方法を用いて、表面結合ドメインを含むペプチド中に組み込むことができる。例えば、一実施形態において、DOPA、ヒドロキシアミノ酸(例えば、1つまたは複数のヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリンなど)またはこれらの組合せの中の約1個〜約4個の残基が、合成中にペプチドのアミノ酸配列の末端アミノ酸として添加され、ここで、該ペプチドは、生体機能性被覆組成物と医療用デバイスの被覆される予定の少なくとも1つの金属性表面との間の結合相互作用(例えば、静電またはイオン性相互作用を介する)の強さを高めるために本発明による生体機能性被覆組成物中で使用される表面結合ドメインを含む。
本発明によるペプチドは、化学部分の付加、またはアミノ酸の置換、挿入、および削除などによって修飾することができ、ここで、このような修飾は、そのペプチドが配列番号1〜47のいずれかに例示されたアミノ酸配列から本質的になるなら、その使用において特定の利点を提供する。本明細書中で、本発明に関して、および明細書および特許請求の範囲に関する目的で使用される場合、術語「から本質的になっている」または類似の用語(例えば、「から本質的になる」)は、本明細書に記載のペプチドのアミノ酸配列を含むペプチド、あるいはそれら(本明細書中でより詳細に説明するような)に対して少なくとも70%の同一性(好ましくは少なくとも90%の同一性)を有し、かつカルボキシルおよび/またはアミノ末端にさらなるアミノ酸(例えば、末端ごとに約1個〜約20個のアミノ酸)を含んでもよく、かつ本明細書に記載の結合ドメインとしてのペプチドの本来の活性を維持するペプチドを指す。一例で、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドとしては、配列番号1のアミノ酸配列が挙げられる(後者は、N末端に20個のさらなるアミノ酸を有することによって異なるが、やはり金属表面に対する結合特異性を維持している。例えば、実施例2および表2を参照されたい)。別の非制限的例において、配列番号9〜46として示されるアミノ酸配列の中のいずれか1つからなるペプチドを含む内皮結合ドメインは、本明細書で提供されるような結合特異性を伴って内皮細胞系細胞を結合する活性を所持し、内皮結合ドメインとしてのペプチドの基本的および新たな特性への本質的変化を構成するいかなる特性も所持しない(例えば、したがって、上述の例で、本明細書に記載の結合ドメインとしての活性以外の重要な活性を有し、かつ本発明に記載のペプチドを含む結合ドメインのアミノ酸配列を含む、完全な長さの天然に存在するポリペプチドまたは遺伝子操作されたポリペプチドは、本発明に記載のペプチドまたはアミノ酸配列「から本質的になる」ペプチドを構成しない)。
したがって、用語「ペプチド」は、例えば、アミド、タンパク質との複合体、サイクロン(cyclone)ペプチド、重合したペプチド、保存的に置換された変異体、類似体、フラグメント、化学的に修飾されたペプチド、およびペプチド模擬体を含む、任意の各種形態のペプチド誘導体を包含する。本発明の実施では、本発明による結合ドメインの所望の結合特性を有する任意のペプチド誘導体を使用できる。例えば、ペプチドのアミノ末端の化学反応性を封鎖するためにペプチドのN末端アミノ酸に付加される化学基は、N末端基を構成する。ペプチドのアミノ末端を保護するためのこのようなN末端基は、当技術分野で周知であり、限定はされないが、低級アルカノイル基、アシル基、スルホニル基、およびカルバメート形成基が含まれる。好ましいN末端基としては、アセチル、Fmoc、およびBocを挙げることができる。ペプチドのカルボキシ末端の化学反応性を封鎖するために合成ペプチドのC末端アミノ酸に付加される化学基は、C末端基を構成する。ペプチドのカルボキシ末端を保護するためのこのようなC末端基は、当技術分野で周知であり、限定はされないが、エステルまたはアミノ基が含まれる。ペプチドの末端修飾は、プロテイナーゼ消化に対する感受性を低減し、したがってプロテアーゼが存在できる生物学的流体の存在下でのペプチドの半減期を延長するのに役立つことが多い。本明細書に記載のような結合ドメインを含むペプチドは、任意選択で、ペプチドをリンカー分子に連結することを容易にする1つまたは複数の化学基(例えば、フッ素、臭素、またはヨウ素などの反応性官能基)を含むように修飾された1つまたは複数のアミノ酸を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、1つまたは複数のペプチド結合が、限定はされないが、カルバ結合(CH−CH)、デプシ結合(CO−O)、ヒドロキシエチレン結合(CHOH−CH)、ケトメチレン結合(CO−CH)、メチレン−オキシ結合(CH−O)、還元された結合(CH−NH)、チオメチレン結合(CH−S)、N−修飾結合(−NRCO−)、およびチオペプチド結合(CS−NH)を含む擬似ペプチド結合で置換されたペプチドを包含する。
生体機能性被覆組成物中で結合ドメインとして有用であるペプチド、または本発明による生体機能性被成物の使用方法には、元々の典型的なペプチドの結合特性が実質的に維持される限り、本明細書中の表1および3ならびに配列番号1〜47中の任意の1つまたは複数に開示された典型的なペプチドの配列に関係する残基の1つまたは複数を置換、付加および/または削除したペプチドも含まれる。したがって、本発明による結合ドメインには、例えば、本明細書に開示の典型的な配列とは典型的なペプチドのアミノ酸配列の約1%〜約25%まで異なるが、特定の材料に結合する対応する典型的な配列の能力、または本明細書に記載するような結合特異性を有する結合ドメインとして作用する対応する典型的な配列の能力を依然として維持する(例えば、適切なアッセイ方法を使用して測定した場合に、本明細書で開示される典型的な配列による結合特異性の少なくとも50%、75%、100%またはそれ以上を維持する)ペプチドが含まれる。すなわち、本発明による結合ドメインは、好ましくは、本明細書に開示の典型的な配列と、少なくとも50%〜約99%またはそれ以上の配列同一性の範囲で配列同一性を共有するペプチドを含む。配列同一性は、手で計算することができ、あるいは、数学的アルゴリズムからなるコンピュータ手段、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA,およびTFASTA、または当技術分野で周知のその他のプログラムもしくは方法を使用して計算できる。これらのプログラムを使用する整合は、デフォルトパラメーターを使用して実施できる。
例えば、配列番号3および4のような表1で識別されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む表面結合ドメインを考えられたい。共通配列は、配列番号5として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドとして記述できる(標準的な1文字アミノ酸命名を使用して)。したがって、これらのアミノ酸配列(配列番号3および4)は、かなりの配列相同性を(本明細書中に記載のように)共有するが、約50%未満である配列同一性を共有し、金属、特にステンレス鋼に対する結合特異性を依然として実質的に維持する。
本明細書に開示の典型的なペプチドの配列に実質的に同一なアミノ酸配列を有するペプチドは、典型的なペプチド配列中のアミノ酸残基を機能的に類似のアミノ酸残基で置換すること(「保存的置換」)の結果として、1つまたは複数の異なるアミノ酸残基を有することができ、ただし、保存的置換を含むペプチドは、保存的置換を含まない典型的なペプチドの結合特異性を実質的に維持する。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどのある非極性(疎水性)残基を別のもので置換すること、トリプトファン、チロシン、またはフェニルアラニンなどのある芳香族残基を別のもので置換すること、ある極性(親水性)残基を別のもので、例えば、アルギニンとリシンの間、グルタミンとアルパラギンの間、トレオニンとセリンの間で置換すること、リシン、アルギニンまたはヒスチジンなどのある塩基性残基を別のもので置換すること、またはアスパラギン酸またはグルタミン酸などのある酸性残基を別のもので置換することが含まれる。
本発明のさらに別の実施形態において、結合ドメインは、本発明で有用なペプチド(および/またはそのアミノ酸配列)から本質的になるペプチドを含むものとして本明細書に記載されることができる。
[公式的定義の部の終わり]
本発明は、生体機能性被覆組成物(または界面用生体材料)、内皮結合ドメインを含むペプチド、表面結合ドメインを含むペプチド、医療用デバイスの被覆方法、医療用デバイスの製造方法、および被覆された医療用デバイスを提供し、すべては、配列番号1〜8およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの表面結合ドメイン、ならびに配列番号9〜46およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの内皮結合ドメインを含む生体機能性被覆組成物に関連し、ここで、少なくとも1つの表面結合ドメインは、少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結される。少なくとも1つの表面結合ドメインは、少なくとも1つの表面結合ドメインが結合特異性を有する医療用デバイス中の選択された金属性表面に対する生体機能性被覆組成物の結合を仲介するのに有効な量で存在し、かつ少なくとも1つの内皮結合ドメインは、本発明による生体機能性被覆組成物で被覆された医療用デバイスの表面を内皮細胞系細胞の付着、接着、および内皮化のうち1つまたは複数を促進する能力があるようにするのに有効な量で存在する。本発明を以下の実施例により例示するが、実施例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
この実施例では、本発明による生体機能性被覆組成物のための表面結合ドメインおよび内皮結合ドメインの各種生成方法を説明する。本発明による生体機能性被覆組成物中の結合ドメイン(すなわち、表面結合ドメインおよび内皮結合ドメイン)を構成するペプチドの多くは、ファージディスプレイ技術を使用して創り出した。
ファージディスプレイ技術は、当技術分野で周知であり、本発明による界面結合材料中の結合ドメインとして使用するためのさらなるペプチドを識別するのに使用できる。一般には、ファージディスプレイを使用して、標的基質に対して多様なペプチドのライブラリーを提示することができ、該基質に特異的に結合するペプチドを選択して結合ドメインとして使用することができる。「パニング」と呼ばれる多数の逐次的な繰り返し選択を使用できる。当技術分野で周知のように、種々のライブラリーおよびパニング法のいずれか1つを採用して、本発明による生体機能性被覆組成物中で有用な結合ドメインを識別できる。パニング法としては、例えば、溶液相スクリーニング、固相スクリーニング、または細胞をベースにしたスクリーニングを挙げることができる。候補の結合ドメインを識別したら、配列の定方向またはランダム突然変異誘発を使用して結合ドメインの結合特性(特異性および親和力の中の1つまたは複数を含む)を最適化することができる。
例えば、種々の異なるファージディスプレイライブラリーを、選択された標的基質(例えば、本発明で有用な結合ドメインを見つけるために選択された基質)に結合するペプチドについてスクリーニングした。基質を96穴のマイクロタイタープレートのウェル中に(選択した基質に応じて)結合または配置した。ポリスチレン製マイクロタイタープレートのウェル表面の非特異的結合部位を、4℃で一夜インキュベートした後、1%ウシ血清アルブミンを含む緩衝液でブロックした。次いで、ウェルを、Tween(商標)20を含むリン酸緩衝化生理食塩水を含む緩衝液(「PBS−T」)で5回洗浄した。各ライブラリーを、PBS−Tで希釈し、1010pfu/mlの濃度で添加して100μlの総容積とした。50rpmで振盪しながら室温で3時間インキュベートした後、PBS−Tを用いる多回洗浄により結合していないファージを除去した。結合しているファージを、pH2.2の0.1Mグリシン緩衝液を用いる変性によって回収した。溶出したファージをリン酸緩衝液で中和し、次いで、増殖培地中の大腸菌(E.coli)細胞に添加した。細胞およびファージを含む培地を、200rpmの振盪器中、37℃で一夜インキュベートして培養した。培養物を遠心分離した後、培養物からファージを含む上清液を採取した。投入物として前回からの増幅されたファージを使用して、第2および第3回目の選択を第1回目の選択と同様の手法で実施した。選択された基質に特異的に結合するファージを検出するために、検出分子と複合された抗ファージ抗体を使用して酵素結合免疫吸着(ELISA型)アッセイ測定法を実施し、続いて、アッセイ中に結合した検出分子を検出、定量した。次いで、選択された基質に特異的に結合するファージから、ペプチドをコードするDNA配列を決定した。すなわち、ペプチドをコードするDNA配列は、ファージゲノム中の挿入断片として配置され、そのDNA配列を決定して、ファージの表面に提示された対応アミノ酸の配列を得ることができる。
当業者におよび当技術分野で周知の方法にとって周知のように、本発明による結合ドメインを含むペプチドは、限定はされないが、固相合成、溶液相合成、およびこれらの組合せを含む任意のペプチド合成法によって合成することができる。例えば、本発明で有用な結合ドメインを含むペプチドは、標準的な固相合成技術を使用し、かつ標準的なFMOCペプチド化学を使用するペプチド合成機で合成した。すべての残基を連結した後、当技術分野で周知の標準的な方法および試薬を使用して、切り出しおよび側鎖の脱保護を同時に実施した。樹脂から切り出した後、ペプチドを沈殿させ、沈殿物を凍結乾燥した。次いで、逆相高速液体クロマトグラフィーを使用してペプチドを精製し、質量分光法でペプチドの同一性を確認した。
(実施例2)
この実施例では、ステントのステンレス鋼表面など、医療用デバイスの金属性表面に対して結合特異性を有するペプチドを含む表面結合ドメインの発見および特徴付けについて説明する。
A.ファージのスクリーニングおよび選択
具体的な実例となる実施例として、ポリスチレン製マイクロタイタープレート中にステンレス鋼製ステント材料を含むウェル中の非特異的結合部位を、1%ウシ血清アルブミンを含む緩衝液を用いて室温で2時間ブロックした。次いで、ウェルおよびステンレス鋼製ステント材料をPBS−Tで3回洗浄した。プレートを、50rpmで振盪しながら室温で1時間インキュベートした。17の異なるファージディスプレイのそれぞれを、PBS+1%BSAで希釈し、1010pfu/mlの濃度で添加して250μlの総容積とした。50rpmで振盪しながら室温で1時間インキュベートした後、70μlのウシ血清を添加し、次いで、振盪しながらプレートを37℃で1時間インキュベートした。300μlのPBS−Tで3回洗浄することによって、結合されていないファージを除去した。最終洗浄の後に、ステントに結合したファージを、大腸菌細胞に感染させるのに使用した。感染した細胞を、ウェルあたり1mlの増殖培地(例えば、2xYT+5μg/mlテトラサイクリン)を含む96深穴プレート中、振盪しながら37℃で一夜インキュベートした。各ウェルから、増幅されたファージ含有上清液を遠心分離によって採取した。第2、第3および第4回目の選択を、投入物として150μlのPBS−T+1%BSAで希釈した前回からの増幅されたファージ上清液150μlを使用して、第1回目と同様の手法で実施した。次いで、第4回目の選択から、340の個々のクローンファージを、単離し、単一プラークを得るためにファージプールの希釈液を播種することによって試験した。ステンレス鋼などの金属に特異的に結合されたファージを検出するために、西洋ワサビペルオキシダーゼと複合した抗M13ファージ抗体を使用し、続いて発色剤ABTS(2,2’−アジノビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)を添加して通常のELISAを実施した。ファージの相対的結合力は、西洋ワサビペルオキシダーゼと複合した抗M13ファージ抗体を使用し、続いて発色剤ABTSを添加し、405nmで吸光度を測定するELISAにおいて、段階希釈のファージをステンレス鋼に対する結合について試験することによって測定した。相対的結合力を測定するためのELISAにおいて、ファージの滴定は、緩衝液単独、または20%の全血を含む緩衝液中で行った。金属性表面に特異的に結合されるペプチドをコードするDNA配列を決定した。ペプチド挿入断片をコードする配列は、ファージゲノム中に配置され、翻訳されて、ファージ表面に提示される対応アミノ酸配列を産生する。
ファージの滴定実験から、3つの個々のファージが、所望の相対的結合特異性を示した。これら3つの個々のファージ中の核酸挿入断片のアミノ酸測定は、表1に示すように、ファージは、2つの異なるペプチド配列を代表する(すなわち3つの中の2つが同じアミノ酸配列を共有する)ことを示した。したがって、表1は、ステントのステンレス鋼などの金属に対して結合特異性を有し、かつ配列番号1および配列番号2からなるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む、このような表面結合ドメインを示している。
Figure 2009538154
B.表面結合ドメインの特徴付けと修飾
2つの表面結合ドメインのアミノ酸配列(配列番号1および配列番号2)の調査は、それぞれにおいて、ペプチドのC末端側の半分が、リシンおよびヒスチジンなどの塩基性アミノ酸に富むことを示した。したがって、ステンレス鋼に対する結合特異性が、主として、アミノ酸配列のC末端側半分のアミノ酸によるのか、あるいはN末端領域も結合に影響を与えるのかを判定するために、配列番号3および配列番号4に示したアミノ酸配列から本質的になるペプチドを合成した。表2に配列番号1、3および4として挙げたようなペプチドを、ビオチンタグを付してそれぞれ合成し、次いで、ペプチドを提示しているファージの相対的結合力を測定するために用いられた方法と同様の方法を使用するELISAによって相対的結合力について分析した(本明細書中で前に説明したように)。このアッセイでは、それぞれのペプチドの段階希釈液(0μM〜10μM)を、ステンレス鋼製ステントと共にインキュベートし、PBS−Tで洗浄し、相対的結合特異性を、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(ビオチンで標識されたペプチドに結合するストレプトアビジン部分)の発色基質との反応から生じる比色シグナルを検出することによって定量した。滴定曲線からEC50を決定した。表2に示すように、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、配列番号1または配列番号4のアミノ酸配列から本質的になるペプチドに比較して、最も強力な結合特異性(または、代わりに結合親和性)を有する。加えて、これらの結果は、リシンおよびヒスチジンに富むC末端側半分中のアミノ酸(例えば、配列番号3で示される、配列番号1の21〜39番目のアミノ酸、および配列番号2の21〜39番目のアミノ酸(配列番号4として示される))が、金属(例えば、チタン、および酸化物層を有するその他の金属)およびより優先的にはステンレス鋼に対するこれらペプチドの結合特異性の主な原因であることを支持している。
Figure 2009538154
これらの実験、ならびに鍵となる位置のアミノ酸およびそれらアミノ酸のステンレス鋼などの金属への結合特異性を仲介することに関する貢献を考慮することから、配列番号1、2、3、または4のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドのペプチド変異体または誘導体を含む好ましい表面結合ドメインは、次のような配列番号5のモチーフ
配列番号5:X−H−X−X−X−X−X−K−X−X−X−K−X−X−N−K;(ここで、
Xは、任意のアミノ酸、
は、K、N、またはSであるが、好ましくは、KまたはNであり、かつ
は、K、N、またはHである)を有する少なくとも1つのペプチドを含む。したがって、医療用デバイス中のステンレス鋼などの金属に対する結合特異性を有する、本発明による好ましい表面結合ドメインは、配列番号5で示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む。
配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドをエチレンオキシド滅菌(642mg/Lで2時間)にかけた実験からさらなる滴定曲線を作成した。結果は、エチレンオキシドでの滅菌が、ステンレス鋼に対するペプチドの相対的結合特異性にほとんどまたはまったく影響を与えなかったことを示している。(エチレンオキシド滅菌にかけられていない同様のペプチドの滴定曲線からとほぼ同様のEC50、<50nm)。
配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む表面結合ドメインを、さらに修飾して、結合特異性に対するpHの影響、および(例えば、血漿中に存在するプロテアーゼの存在下での)血漿中での安定性のようなパラメーターを評価した。ある例では、配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを、L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を用いて合成した(配列番号6)。別の例では、配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドの多量体(二価型(配列番号7)および四価型(配列番号8))を含む表面結合ドメインを合成した。配列番号3からなるこれらの多量体は、次のように示される。
Figure 2009538154
これらの多量体、配列番号7および8は、次のように合成した。簡潔には、多量体は、リシンMAPコア上に建て増しされ、それぞれ、2つおよび4つの配列番号3のペプチドモジュールから構成される。このコアマトリックスを使用して配列番号3の二量化および四量化分枝を生成させた。多量体は、ペプチド合成機上での固相化学を利用して逐次的に合成した。合成は、合成中の最大のカップリング収率を確実にする0.05ミリモルの規模で実施した。ビオチンレポーター部分を、分子のC末端に配置し、短いGly−Gly−リンカーによってリシンコアに付け加えた。カップリング試薬としてAA/HBTU/HOBt/NMM(1:1:1:2)を使用する標準的なFmoc/t−Buの化学を採用した(AAはアミノ酸、HOBtはO−Pfpエステル/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、HBTUはN−[1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)(ジメチルアミノ)メチレン]−N−メチル−メタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド、NMMはN−メチルモルホリンである)。合成サイクルでは、アミノ酸を5〜10倍の過剰で使用し、すべての残基を、連結される残基の複雑さに応じて二重、三重、さらには四重にカップリングさせた。カップリング反応は、Kaiserニンヒドリン試験でモニターした。Fmocの脱保護反応は、20%ピペリジン/ジメチルホルムアミドを使用して実施した。樹脂からのペプチドの切り出しは、トリフルオロ酢酸(TFA:HO:トリイソプロピルシラン=95:2.5:2.5)を使用し、室温、4時間で完遂された。粗生成物を冷エーテル中で沈殿させた。遠心分離後に得られたペレットを冷エーテルで3回洗浄し、凍結乾燥して、所望の粗生成物として白色固体を得た。粗生成物を、C−18カラム上で移動相(A=HO/TFA(0.1%TFA)およびB=アセトニトリル/TFA(0.1%TFA)を使用する分析高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。多量体は、また、質量分光法でさらに分析し、その後、それぞれをHPLCによる最終精製に供した。所望の生成物を含む画分を一緒にし、凍結乾燥して綿毛状白色粉末を得た(純度>98%)。
結合特異性に対するpHの影響を判定するために、相対的結合力を測定するためのアッセイ(ELISAによる)を、pH2〜pH12の範囲でpHを異にする様々な緩衝液の存在下で実施した。例えば、グリシンおよび水を含む緩衝液はHClを使用してpH2に調整し、酢酸緩衝液はpH4.0(約0.001Mのイオン強度)に調整し、リン酸緩衝液(NaHPO)はpH6.0(約0.012Mのイオン強度)に調整し、リン酸緩衝液(NaHPO)はpH7.0(約0.019Mのイオン強度)に調整し、トリス緩衝液はpH8.0(約0.006Mのイオン強度)に調整し、エタノールアミン緩衝液はpH10.0(約0.003Mのイオン強度)に調整し、リン酸緩衝液(NaHPO)はpH12.0(約0.044Mのイオン強度)に調整した。このアッセイにおける各ペプチドの最終濃度は1μMであった。このアッセイで、配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチド、およびその多量体(二価型(配列番号7)および四価型(配列番号8))を含む表面結合ドメインを試験した。結合曲線は、3種のペプチド(配列番号3のアミノ酸配列からなる一価、二価および四価型)のすべてが、pH6.0〜pH8.0のpH値範囲にわたって十分に結合し、結合のための最適pHはpH7.0であり、pH6.0またはpH8.0での結合の低下は20%を超えないことを示した。
配列番号3のアミノ酸配列の一価型または四価型(配列番号8)からなるペプチド、およびそのD−アミノ酸型を含むペプチド(配列番号6)を、血漿の存在下でステンレス鋼ビーズを用いて実施したことを除けば、本質的に本明細書に記載のELISA結合アッセイ法ですべて試験して、安定性(血漿中に存在するプロテアーゼに対する1つまたは複数の感受性、またはステンレス鋼への結合において血漿の構成成分と競合する能力)を評価した。配列番号3のアミノ酸配列からなる四価型(配列番号8)、および配列番号6で示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドの双方が、血漿の存在下で、配列番号3として示されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドよりも、タンパク質分解酵素による分解に対するより低い感受性を含む、有意により良好な安定性(例えば、約1.5〜約4倍以上結合されたペプチドを維持する)を示した。
(実施例3)
この実施例では、内皮細胞系細胞に対して結合特異性を有するペプチドを含む内皮結合ドメインの発見および特徴付けについて説明する。
A.ファージのスクリーニングおよび選択
ファージライブラリーを4群にプールし、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に結合するペプチドについてスクリーニングした。4つのプールを、まず、非標的細胞(例えば、内皮細胞系細胞以外の細胞)上で前処理(pre−clear)した。各プールについて、10μlのファージ(1010のファージ)を、1×10個の次の細胞型、すなわち、HEL−293細胞、大動脈血管平滑筋細胞(AoSMC)、および血小板のそれぞれに添加した。ファージおよび細胞を室温で1時間インキュベートした。細胞および付着ファージを遠心分離でペレットとした。上清液中に残存しているファージを、後に続くHUVEC上での選択に使用した。HUVEC上での選択は、分画遠心を含む細胞との1回以上のバイオパニング、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を含む当技術分野で周知の方法、および細胞上単分子膜を使用して実施した。
HUVEC上での選択に続いて、細胞を、緩衝液中ですすぎ、遠心分離した。ファージが接着したHUVECを、2mlの2xYT細菌培養培地に再懸濁し、DH5αF’細胞と共に培養した。ファージを、細菌培養培地から分離し、次いで、蛍光活性化細胞選別法(FACS)を使用して非標的および標的細胞について試験し、特異性を確認した。細胞および接着したファージを、フィコエリトリンと複合した抗M13ファージ抗体を含む培地に再懸濁した。洗浄後、細胞を緩衝液+1%BSAに再懸濁し、FACSを用いて相対的陽性度について分析した。この方法を使用して、平滑筋細胞および血小板よりも内皮細胞に結合するための特異性を有するペプチドを提示するファージ(例えば、FACSで平滑筋細胞および血小板に対して10%未満の陽性度を示す)を識別した。内皮細胞に特異的に結合したペプチドをコードするファージDNA配列の挿入断片を、決定し、次いで、翻訳して、ファージ表面に提示される対応アミノ酸配列を得た(隣接するファージ配列、例えばSSまたはSRなしに)。表3に、配列番号9〜46のアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含むこのような内皮結合ドメインを示す。表3に配列番号39〜46として示されたアミノ酸配列は、アミノ酸システインの存在を好む特定のファージライブラリーに由来する。しかし、その他のファージライブラリーから発見されたアミノ酸配列(すなわち、配列番号9〜38)から、ほとんどは、構造−機能関係の指標であり得る、アミノ酸グリシン(G)、バリン(V)、およびアラニン(A)の豊富な濃度(例えば、配列中に10%以上でかつ約75%を超えない該アミノ酸残基を含む)により配列における近親性を提示する。それに関して、グリシン、アラニン、バリン、およびアスパラギン酸から形成されるペプチドは、潜在的触媒機能を備えた三次構造を有することが報告されている。
Figure 2009538154
B.結合ドメインの特徴付け
望ましい結合特異性をもつ表3に列挙した内皮結合ドメインのいくつか(例えば、配列番号9〜18、23〜28、30〜32、および35)は、全血中の各種細胞型への結合に関してFACSによって、C末端ビオチンタグをもつペプチドを合成することによってさらに特徴付けられた。細胞は、トリプシン/EDTAを使用して細胞培養フラスコから採取した。細胞を、完全培地(血清を含む)で中和し、37℃で少なくとも20分間回収することを可能にした。各細胞型を、下の表4に示すようなその対応する抗体で標識し、室温で20分間インキュベートした。
Figure 2009538154
抗体で標識した細胞を洗浄緩衝液(HBSS+1%BSA+0.1%アジ化ナトリウム、滅菌濾過済み)を使用する遠心分離により2回すすいだ。100μLの全血をポリプロピレン製深穴プレートの各ウェルに等分した。各ウェルにペプチドを添加して所望のペプチド濃度を達成した。最小量の細胞(典型的には10μlの細胞またはほぼ50000個の細胞)を各ウェルに添加した。内皮細胞および血小板に対するペプチドの相対的結合を比較する実験で、2セットのサンプルを調製した。サンプルの最初のセットは全血中の抗体標識内皮細胞からなり、次のセットは、全血中の非標識内皮細胞および抗体標識血小板からなる。プレートを覆い、振盪しながら室温で20分間インキュベートした。赤血球細胞を、1mLのFACS溶解液を添加することによって溶解し、プレートを覆い、室温で15分間振盪した。室温の洗浄緩衝液1mLを各ウェルに添加し、次いで、室温の遠心分離機中、1500rmp未満で遠心分離した。ウェルを、吸引し、そして1.5mLの洗浄緩衝液で満たし、次いで、再び、遠心、吸引した。細胞を、500μLのストレプトアビジン−AlexaFluor532を1:500の希釈で添加することによって室温の培地に再懸濁した。プレートを覆い、室温で20分間インキュベートし、次いで、室温の洗浄緩衝液を用い1500rpm未満で遠心することによって2回すすいだ。250μLの洗浄緩衝液+50μLの4%パラホルムアルデヒド中で最終の細胞懸濁液を調製した。サンプルを分析プレートに移し、FACSを使用して細胞結合について分析した。この分析では、各細胞型に対する対照(表4の通りの関連抗体、しかしペプチドを含まない)を使用してバックグラウンド蛍光を評価した。「ペプチド不含」の対照を超える任意の信号をパーセント陽性集団と考えた。
結合の特徴付けの結果は、特に好ましい内皮結合ドメインが、配列番号10、14〜18、23、25〜28、および30〜32のアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含むことを示している。これらの内皮結合ドメインは、ヒト冠状動脈内皮細胞、ブタ冠状動脈内皮細胞、および内皮前駆細胞の中の1つまたは複数に対して、FACsで陽性が40%に近いまたはそれを超える結合特異性および選択性を伴う結合を示し、かつ血小板および平滑筋細胞での陽性度で10%未満(およびしばしば5%未満の陽性度)であった。これらの内皮結合ドメインのいくつかは、内皮細胞に比較して、内皮前駆細胞への結合を優先すると思われる結合特異性を有し(例えば、アミノ酸配列配列番号14)、一方、他のものは、内皮細胞に結合する優先を示した(例えば、アミノ酸配列配列番号32)。結合特異性を特徴付けるさらなるアッセイは、これらの好ましい内皮結合ドメインの1つまたは複数が10μM未満のEC50を有することを示している(例えば、配列番号19)。
(実施例4)
本明細書中で既に説明したように、いくつかの例で、本発明によるペプチドを含む結合ドメインは、また、修飾を包含し、そのN末端および/またはC末端においてブロックされ、かつ/または他のペプチドに連結された。これらの方法を使用して、例えば、医療用デバイスの金属性表面に対して結合特異性を有する表面結合ドメインを内皮結合ドメインに連結して、本発明による生体機能性被覆組成物を形成することができる。当業者にとって明らかなように、リンカー分子を結合ドメインに連結するのに好ましい方法は、各分子上に存在する反応基により異なる。反応基を使用して2つの分子を共有結合で連結するためのプロトコールは、当業者に周知である。本明細書中で既に説明したように、当業者に周知の方法を使用して、2つの結合ドメインをリンカーで連結して、第1結合ドメイン(例えば、表面結合ドメイン)、3個以上のアミノ酸を含むリンカー(例えば、GSS)、および第2結合ドメイン(例えば、内皮結合ドメイン)を含む単一の連続したペプチドを合成することによって、本発明による生体機能性被覆組成物を形成できる。用語「第1」および「第2」は、説明を平易にするためにのみ使用され、合成の順序を制約するものとして解釈されることを意図しない。つまり、第1結合ドメインが内皮結合ドメインを含み、第2結合ドメインが表面結合ドメインを含んでいてもよい。代わりの方法では、(ストレプトアビジン、アビジン、またはこれらの官能性誘導体、および当技術分野で周知の方法を使用して)アビジン化された少なくとも1つの第1結合ドメインを、(ビオチン、および当技術分野で周知の方法を使用して)ビオチン化された少なくとも1つの第2結合ドメインに連結して、本発明による生体機能性被覆組成物を形成することができる。この例で、アビジン−ビオチン分子は、少なくとも1つの表面結合ドメインを少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結して本発明による界面用生体材料を形成するためのリンカーとして役立つ。
本発明による生体機能性被覆組成物の例示的作製例として、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの表面結合ドメインを、配列番号19のアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結した。一例では、表面結合ドメインを、10単位のポリエチレングリコールリンカー(「PEG」)を含むリンカーを介して内皮結合ドメインに連結し、配列番号47として示されるアミノ酸配列を含む生体機能性被覆組成物を形成した(本明細書中で説明するように、ビオチンタグは、生体機能性被覆組成物を特徴付ける際の検出を容易にするためだけにPEGリンカーの一部として含められ、遊離C末端アミノ酸はアミド化した)。
配列番号47
SSFYGEVGYVGASLYAGGASSRG−PEG−SSHRTNHKKNNPKKKNKTRG
簡潔には、生体機能性被覆組成物は、ペプチド合成機で、リニアー型に、かつ1つの連続鎖として次の順序、すなわち配列番号3のアミノ酸配列、PEGリンカー、および配列番号19の順で合成した。カップリング試薬としてAA/HBTU/HOBt/NMM(1:1:1:2)を使用する標準的なFmoc/t−Buの化学を採用した。合成サイクルで、アミノ酸は5倍過剰で使用し、すべての残基を2回繰り返して連結した。カップリング反応は、Kaiserニンヒドリン試験でモニターした。ペプチドの凝集を抑えるために、シュードプロリンFmoc−Ala−Ser(Psi Me、Me Pro)−OHを採用し、また、5倍過剰で2回繰り返してカップリングした。ビオチンタグをもつPEGリンカーを生成させるために、前記のカップリング条件をマニュアルで使用してFmoc−Lys(ビオチン)−OHおよびFmoc−NH−(Peg)10−COOHを2回繰り返してカップリングした。Fmocの脱保護反応は、20%ピペリジン/DMFを使用して実施した。試薬K(TFA:EDT:HO:フェノール:チオアニソール=82.5:2.5:5:5:5)を室温で4時間使用することによって、樹脂から生体機能性被覆を切り出し、粗生成物を得た。粗生成物を冷水中で沈殿させた。遠心分離後に得られたペレットを冷エーテルで3回洗浄し、次いで、凍結乾燥して粗生成物として白色固体を得た。粗生成物を、分析HPLCおよび質量分光法で分析し、次いで、緩衝液B(アセトニトリル/TFA(0.1%TFA))をグラジエントで使用するHPLCによって精製した。所望の生成物、生体機能性被覆組成物をプールし、凍結乾燥して綿毛状白色粉末を得た(純度>95%)。
本明細書の実施例2および3に記載したのと同様の方法を使用して生体機能性被覆組成物の濃度を滴定することおよびステンレス鋼を含む金属に対する相対的結合を測定することによる結合特異性のアッセイ法において、配列番号47のアミノ酸配列を含む生体機能性被覆組成物を試験した。簡潔には、ステンレス鋼ビーズを、緩衝液(1%BSAを含むPBS−T)でブロックし、洗浄し、次いで、0〜10μMの濃度の生体機能性被覆組成物と共に室温で1時間インキュベートした。洗浄後、生体機能性被覆組成物の量を、発色基質を含むストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(ストレプトアビジン部分はビオチンで標識した生体機能性被覆組成物に結合している)で検出した。滴定曲線からEC50を判定した。配列番号47として示されるアミノ酸配列を含む生体機能性被覆組成物は、ステンレス鋼に、該被覆組成物の基になった表面結合ドメイン(配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む表面結合ドメイン)と同様の結合活性(例えば、EC50)で結合した。
次いで、配列番号47として示されるアミノ酸配列を含む生体機能性被覆組成物を、内皮細胞系細胞を医療用デバイスの表面金属に選択的に接着するその能力について試験した。この例では、医療用デバイスの金属性表面を代表するものとして、ステンレス鋼ディスクを使用した。ディスクを、10μMの濃度で生体機能性被覆組成物を含む緩衝化された溶液と室温で1時間接触させた。非特異的結合に対する対照として、ディスクを被覆しないか、あるいは配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチド、あるいは関連性のないペプチド(金属もしくはステンレス鋼または内皮細胞に対する周知の結合特異性を有さない)を含む表面結合ドメインで被覆した。ディスクをPBSで洗浄し、次いで、10%ウシ血清を含む細胞培地中に25000個の内皮細胞を添加し、室温で15分間インキュベートした。ディスクをPBS中で洗浄し、次いで、蛍光読み取りを使用して細胞内ATPを測定する市販の蛍光細胞生存アッセイ装置を使用して、細胞を定量した。蛍光は、プレートリーダーを使用して検出した。任意の対照と比較した場合の、ディスクに結合される内皮細胞数の数倍の増加を明らかにすることによって、配列番号47として示されるアミノ酸配列を含む生体機能性被覆組成物は、内皮細胞を金属性表面に結合する能力を示した。
(実施例5)
この実施例では、本発明による方法、すなわち(a)医療用デバイスを製造する方法、(b)内皮細胞系細胞に接着する能力のある被覆された表面を付与するように医療用デバイス金属性表面を被覆する方法、(c)医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面の内皮化を促進する方法、および(d)医療用デバイスに対する内皮細胞系細胞の接着を促進する方法を説明する。該方法は、医療用デバイスの少なくとも1つの金属系(より好ましくはステンレス鋼)表面を有効量の生体機能性被覆組成物と、金属性表面に被覆を形成するのに適した条件下で接触させることを含み、ここで、該生体機能性被覆組成物は、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインを含み、少なくとも1つの表面結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、少なくとも1つの内皮結合ドメインは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、かつ少なくとも1つの表面結合ドメインは、少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結されている。好ましくは、少なくとも1つの表面結合ドメインは、リンカーを介して少なくとも1つの内皮結合ドメインに共有結合で連結されている。少なくとも1つの表面結合ドメインは、医療用デバイスの被覆される予定の1つまたは複数の表面に生体機能性被覆組成物を結合する主な原因である、生体機能性被覆組成物の構成要素である。
本発明によるこれらの方法に関して、および本発明による生体機能性被覆組成物に関して、医療用デバイスの被覆される予定の少なくとも1つの表面は、1種を超える金属系材料(例えば、2種の異なる金属、金属と金属酸化物、金属と金属合金など)を含み、生体機能性被覆中の少なくとも1つの表面結合ドメインは、複数(2つ以上)のタイプの表面結合ドメインを含むことができ、ここで、各タイプの表面結合ドメインは、生体機能性被覆組成物を含むその他の表面結合ドメインに比較した場合、被覆される予定の種々の表面材料に対して結合特異性を有する。また、本発明によるこの方法に関して、および本発明による生体機能性被覆組成物に関して、少なくとも1つの内皮結合ドメインは、2つ以上のタイプを含むことができる(例えば、内皮結合ドメインの各タイプの結合特異性で判定した場合、例えば、2つ以上の異なるペプチドは、一方のペプチドが内皮細胞に対して結合特異性を有し、他方のペプチドは内皮前駆細胞に対して結合特異性を有する)。
本発明によるこれらの方法において、生体機能性被覆組成物を医療用デバイスの被覆される予定の少なくとも1つの金属性表面と接触させた場合、(a)少なくとも1つの内皮結合ドメインは、内皮細胞系細胞に結合され、あるいは(b)少なくとも1つの内皮結合ドメインは、内皮細胞系細胞に未だ結合されていない。後者に関して、次いで、さらなる被覆工程で、医療用デバイスの被覆された表面を少なくとも1つの内皮結合ドメインが結合特異性を有する有効量の内皮細胞系細胞と、内皮細胞系細胞が少なくとも1つの内皮結合ドメインに結合するのに適切な条件下で(インビトロまたはインビボで)接触させる。一例で、医療用デバイスを内皮細胞系細胞(自家組織またはドナーからの)(例えば、同種または異種の)とインビトロで接触させて、細胞をデバイスの被覆された表面に結合および接着させることができる。
別の例では、血管用デバイスの内皮化を促進するための本発明による方法において、いったんデバイスを個体中に埋め込んだら脈管構造に曝露されるであろうデバイスの1つまたは複数の金属性表面は、一般に、本発明による生体機能性被覆組成物によって被覆されるように所望され選択されたデバイスの1つまたは複数の表面である。該方法は、(a)本発明による生体機能性被覆組成物(ここで、該生体機能性被覆組成物は少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインに連結された少なくとも1つの表面結合ドメインを含む)を内皮化されることを所望される血管用デバイスの少なくとも1つの表面に、該生体機能性被覆組成物が少なくとも1つの金属性表面に結合されるように接触させて、被覆された表面をデバイス上に形成するする工程、および(b)デバイスを、デバイスを必要とする個体中に埋め込む工程を含み、ここで、(個体により産生され、個体の脈管構造中を循環している)内皮細胞系細胞は、デバイスの被覆された表面に(生体機能性被覆組成物を介して)接触、付着し、このような接触および付着は、デバイスの被覆された表面上での内皮細胞系細胞の拡がりを促進して血管用デバイスの内皮化を促進する。埋め込まれたデバイス上での内皮化の促進は、埋め込まれたデバイスに隣接した組織または脈管構造の1つまたは複数の治癒をさらに促進し、組み込まれたデバイスの隣接組織中への組み込み(統合)を促進し、埋め込まれたデバイスに関連するような血栓症の発現を低減する。
当技術分野で周知の通常的方法を使用して、本発明による生体機能性被覆組成物を、医療用デバイスの被覆される予定の1つまたは複数の金属性表面に塗布できる(生体機能性被覆組成物を1つまたは複数の表面と接触させることで)。このような方法には、限定はされないが、ディッピング、刷毛塗り、噴霧、蒸着、および電着が含まれることが知られている。本発明による生体機能性被覆組成物の製剤は、医療用デバイスを被覆するのに使用される方法に応じて決めることができる。例えば、生体機能性被覆組成物を含む溶液または懸濁液を、噴霧装置の噴霧ノズルを通して、医療用デバイスの被覆される予定の金属性表面を被覆する液滴を作り出して、塗布することができる。医療用デバイスを乾燥させ、次いで、使用に先立ってさらに処理することができる(例えば、過剰の生体機能性被覆組成物を除去するために(水または等張緩衝液などの)溶液中で洗浄して;医療用デバイスを滅菌するための当技術分野で周知のいずれか1つの方法を使用する滅菌によって)。別法として、生体機能性被覆組成物および医療用デバイスは、すべて、処理に先だって滅菌することができ、該処理は滅菌条件下で実施される。
医療用デバイスの被覆される予定の1つまたは複数の金属性表面に生体機能性被覆を塗布するための別の方法では、医療用デバイスの被覆される予定の表面を、該表面を被覆するのに有効な量の生体機能性被覆組成物を含む液体(例えば、溶液または懸濁液、水性または溶媒)中にディッピングする。例えば、表面を、生体機能性被覆組成物を含む浴中にディッピング、または浸漬する。生体機能性被覆組成物を塗布するのに適した条件には、被覆される予定の表面を、生体機能性被覆組成物を含む液体と適切な温度(10℃〜約50℃の範囲、より好ましくは室温〜37℃の範囲)で、適切な時間(例えば、約5分〜約12時間の範囲、より好ましくは15分〜60分の範囲)接触状態に維持することを可能にすることが含まれる。使用に必要な場合には、次いで、被覆された医療用デバイスをさらに処理できる(洗浄、滅菌など)。
生体機能性被覆組成物を医療用デバイスの被覆される予定の1つまたは複数の金属性表面に塗布するための別な方法では、本発明による生体機能性被覆組成物を、(生体機能性被覆組成物を気流乾燥または凍結乾燥することによって)乾燥粉末の状態で製剤する。次いで、生体機能性被覆組成物を含む粉末を、当技術分野で周知の粉体塗装法を使用して医療用デバイスの被覆される予定の表面に塗布する。典型的には、いったん塗布したら、このような粉末被覆を、次いで(例えば赤外加熱の手段を使用して)熱処理し、塗布処理を完了する。
しかし、生体機能性被覆組成物を医療用デバイスの表面に塗布するためのこれらの例示的方法は、その他の被覆および安定化方法を採用できる場合には(当業者は、個々のデバイスおよび目的の必要性に適合するように使用する組成物および方法を選択することが可能なので)、他の方法を排除するものではない。例えば、医療用デバイスの被覆される予定の表面が本質的に金属系である場合には、医療用デバイス中の金属性表面上の生体機能性被覆組成物が、内皮細胞系起源の細胞に結合するその機能を実質的に維持して、被覆された表面上での1つまたは複数の接着および内皮化を促進する限り、(本明細書中で前により詳細に説明したような)親水性ポリマーを合わせて(本発明による生体機能性被覆組成物の塗布と同時に、または連続して塗布して)使用できる。この説明を継続すると、親水性ポリマーのエラストマー的性質のため、機械的な力または応力を受けるに違いない医療用デバイスの表面に結合された生体機能性被覆組成物の安定性のために、親水性ポリマーを付加できる。したがって、本発明による方法および組成物を、本発明による生体機能性被覆組成物によって提供されない医療用デバイスに対して1つまたは複数の機能上の利益を提供する、薬物溶出デバイスまたはその他の被覆技術と合わせて使用することもできる。
加えて、本発明による方法では、生体機能性被覆組成物を含む被覆を、例えば、気流乾燥または凍結乾燥によって安定化することができる。しかし、これらの処理は、他の処理を排除するものではなく、他の被覆および安定化方法も採用できる。適切な被覆および安定化方法は、当技術分野で周知である。例えば、血管用デバイス中の本発明による生体機能性被覆組成物で被覆される予定の少なくとも1つの金属性表面を、被覆工程に先立って、被覆される予定の表面を含む材料に対する表面結合ドメインの1つまたは複数の結合を、および被覆のコンシステンシーおよび均一性を高めるように前処理することができる。例えば、このような前処理は、デバイス中の被覆される予定の表面材料を、表面をより親水性にして、結合特異性の相互作用の一部として表面の親水性部分と相互作用するそのアミノ酸配列中のいくつかの疎水性アミノ酸を含む表面結合ドメインの結合を高めるために、エッチングすることまたはプラズマ処理することを含むことができる。
加えて、または代わりに、さらなる工程において、血管用デバイス中の本発明の生体機能性被覆組成物で被覆された少なくとも1つの金属性表面を、被覆に続いてではあるが個体への埋め込みに先立って、被覆された表面の内皮化を高めるために処理することができる。例えば、内皮化、および特に、被覆された表面に接着している内皮細胞の成長(増殖を含む)を支える生物学的基材のマトリックスまたは層を、被覆された表面に(例えば、上塗りして、かつ/または吸着させて)付加することができる(例えば、被覆された表面への内皮細胞系細胞の結合および付着に先立ってまたは続いて)。このような層またはマトリックスの成分としては、コラーゲン(例えば、IV型および/またはV型)ビトロゲン、ラミニン、エンタクチン、フィブロネクチン、グリカン(例えば、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン)、および内皮細胞の増殖を支える増殖因子(例えば、VEGF、EGF、FGF、ヘパリン結合性表皮様増殖因子など)の中の1つまたは複数を含む生物学的血管を挙げることができる。
したがって、本発明のこれらの方法によれば、医療用デバイスを、まず、デバイスの少なくとも1つの処理された表面に対する生体機能性被覆組成物の結合を高める方法(例えば、デバイスの少なくとも1つの金属性表面の親水性、または分子接着性を増加させる)によって処理し、生体機能性被覆を少なくとも1つの処理された表面と接触させて、生体機能性被覆組成物を少なくとも1つの処理された表面に結合し、被覆された表面を形成することができる。該方法は、生物学的血管を、被覆された表面上での内皮化を促進するのに有効な量の被覆された表面と接触させることをさらに含むことができる。該方法は、デバイスの埋め込みに先立って、被覆されたデバイスを内皮細胞系細胞と接触させて、内皮細胞系細胞の付着または接着の中の1つまたは複数を促進し、内皮細胞の増殖を支援し、かつ内皮細胞の分化を支援することができる。例えば、内皮細胞系細胞は、当技術分野で周知の方法を使用して精製、単離することができる。例えば、前駆内皮細胞は、CD34に対する抗体で被覆された磁気ビーズを含む磁気分離を使用してヒト末梢血から単離できる。別の例では、臍帯からヒト臍帯静脈内皮細胞を、内皮細胞を放出させるための血管壁のコラゲナーゼ処理によって単離し、次いで、内皮細胞を当技術分野で周知の適切な支持培養培地中で培養できる。
(実施例6)
本発明により使用される好ましい内皮結合ドメインおよび/または表面結合ドメインを含むペプチドのアミノ酸配列をベースにして、このようなペプチド(または、本明細書中で説明したような変異体)をコードするポリヌクレオチド(核酸分子)を合成または構築できること、およびこのようなペプチドを、製造手段としての組換えDNA技術(例えば、培養)、および/またはこのようなポリヌヌレオチドをインビボで導入することによるインビボでの産生によって作り出すことができることは、当業者にとって明らかである。例えば、2つ以上のポリヌクレオチド配列が、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドをコードすることができること、ならびにこのようなポリヌクレオチドを、配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるペプチドのアミノ酸をコードすることが知られているトリプレットコドン、第三塩基の縮重、およびその中での発現が望まれる宿主細胞、典型的には原核細胞または真核細胞(インビトロまたはインビボのいずれに置かれても、例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、および昆虫細胞)によって好まれるトリプレットコドンの使用を基本にして合成できることは、当業者にとって明らかである。例えば、個々の宿主のためのコドン発現を最適にするために前述の縮重変異体を作り出す(例えば、細菌mRNAのコドンを哺乳動物、植物、または大腸菌などのその他の細菌宿主によって好まれるコドンに変える)ことは、当業者にとって定型的手順である。
単に例示の目的のためであり、限定はしないが、配列番号3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号48として準備され、当業者にとって明らかであるように、それから、コドンの使用は、一般に、配列番号3中に示されたアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む好ましい表面結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに応用される。また、配列番号19のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49として準備され、それから、当業者にとって明らかであるように、それから、コドンの使用は、一般に、配列番号19中に示されたアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む好ましい内皮結合ドメインをコードするポリヌクレオチドに応用される。したがって、例えば、配列番号3に関して配列番号48を、および配列番号19に関して配列番号49を使用して、当業者は、配列番号3または配列番号19に例示されたアミノ酸配列の変異体をコードする、または本発明により提供されるその他のアミノ酸配列(配列番号1〜2、および4〜18、および20〜47)の任意の1つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを容易に構築できる可能性がある。
1つの例示的実施形態では、本発明により使用するための結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む原核生物発現ベクター、および該結合ドメインを含むペプチドの組換え産生のためのその使用が提供される。一例で、該ポリヌクレオチドは、原核生物発現ベクター中に、細菌宿主細胞中でペプチドを産生した場合にそのペプチドが他のアミノ酸配列(例えば、ペプチドの精製を助ける、または本発明による別の結合ドメインに組換え的に連結されるような)との融合タンパク質として産生されるように配置される。例えば、発現されることが所望されるペプチドとの融合タンパク質の一部として、発現のために使用される原核細胞の細胞質中に見出される封入体中での産生を促進し、かつ/またはこのような配列を含む融合タンパク質の精製を助ける、当業者に周知の配列が存在する。封入体は、他の原核細胞成分から、変性剤および分画(例えば、遠心分離、カラムクロマトグラフィーなど)を含む当技術分野で周知の方法により分離できる。別の例では、発現するとそのようなタンパク質またはペプチドとして発現されるはずの所望する注目の核酸配列が挿入された市販のベクターが存在し、その遺伝子産物は、当技術分野の標準的方法を使用して遺伝子産物を精製する際に利用できる複数の末端ヒスチジン残基(「Hisタグ」)も含む。
本発明により使用するためのペプチドを含む結合ドメイン(内皮結合ドメインまたは表面結合ドメイン、あるいはこれらの組合せ)をコードする核酸配列は、プラスミド、またはプラスミド以外のベクターを構成する核酸分子中に挿入され、かつ核酸分子の一部となり、限定はされないが、バクテリオファージベクターまたはコスミドDNAで形質転換された細菌、酵母ベクターを含む酵母、真菌ベクターを含む真菌、ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、およびその中にプラスミドまたはウイルス発現ベクターを(例えば、トランスフェクトまたは穿孔処理して)導入した、または組換えウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系を含むその他の発現系を使用できることは、当業者にとって明らかである。ペプチドの発現を成功させるには、ペプチドのコード配列を含む組換え核酸分子またはベクター自体が、発現のために使用される個々の宿主系と適合性があり、かつ宿主系によって認識される、転写および翻訳のために必要な制御要素を含むことが要求される。
ペプチド発現の増強が、使用される個々の宿主細胞系と適合性がある(例えば、宿主細胞系に対して無毒)なら、前述の方法を含め、分子生物学の技術分野で周知の方法を使用して、種々のプロモーターおよびエンハンサーを、コードしている配列を含むベクターまたは組換え核酸分子中に組み込んで、ペプチドの発現を増強できる。当業者にとって明らかなように、プロモーターの選択は、使用される発現系によって決まる。プロモーターは、強度を、すなわち、転写を促進する能力を異にする。一般に、クローン化遺伝子を発現させる目的の場合、遺伝子の高レベルの転写および遺伝子産物への発現を獲得するために、強力なプロモーターを使用することが望ましい。例えば、大腸菌(E.coli)を含む宿主細胞系中で高レベルの転写が観察されている当技術分野で周知の細菌、ファージ、またはプラスミドのプロモーターには、lacプロモーター、trpプロモーター、T7プロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、P.sub.RおよびP.sub.Lプロモーター、lacUV5、ompF、bla、lppなどが含まれ、それらのプロモーターを使用して、合成ペプチドをコードする挿入核酸配列の転写を提供できる。哺乳動物の発現系のための発現ベクターで通常的に使用される哺乳動物プロモーターは、哺乳動物ウイルス遺伝子に由来するプロモーターである。例には、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびCMVプロモーターが含まれる。
ペプチドの発現が宿主細胞にとって致死的または有害である場合には、宿主細胞株/系および発現ベクターを、プロモーターの作用が、特異的に誘導されるまで阻害されるように選択される。例えば、特定のオペロンにおいて、特定の誘導物質を添加することが、挿入されたDNAの効率的な転写のために必要である(例えば、lacオペロンは、乳糖またはイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(「IPTG」)の添加によって誘導され、trpオペロンは、増殖培地中にトリプトファンが存在しない場合に誘導され、tet感受性プロモーターを有する哺乳動物発現ベクター中ではテトラサイクリンを使用できる)。したがって、ペプチドの発現は、形質転換されたまたはトランスフェクトされた細胞を、コードしている配列からの発現を調節するプロモーターが誘導されないような条件下で培養することによって調節することができ、細胞が、増殖培地中で適切な密度に到達する場合には、コードしている配列からの発現のためにプロモーターを誘導できる。効率的な遺伝子転写またはメッセージ翻訳のためのその他の調節要素には、エンハンサー、転写または翻訳開始シグナル、転写終結およびポリアデニル化配列などが含まれることが当技術分野で周知である。
本発明の具体的な実施形態に関する前記説明を、例示の目的で詳細に説明してきた。該説明および例示から考えて、当業者は、現在の知見を適用することによって、本発明の基本的概念から逸脱しないで各種の応用のために本発明を容易に修正および/または改作することができ、したがって、このような修正および/または改作は、添付された特許請求の範囲の意味および範囲内にあると解釈される。

Claims (43)

  1. 医療用デバイスの金属性表面材料に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン(「表面結合ドメイン」)および内皮細胞系細胞に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン(「内皮結合ドメイン」)を含む生体機能性被覆組成物であって、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、該少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結されている、生体機能性被覆組成物。
  2. 前記少なくとも1つの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞に結合される、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  3. 前記生体機能性被覆組成物が、2つ以上のタイプの内皮結合ドメインを含み、かつ各タイプの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞に対して、該生体機能性被覆組成物中に存在する別のタイプの内皮結合ドメインとは異なる結合特異性を有する、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  4. 前記少なくとも1つの内皮結合ドメインが結合特異性を有する内皮細胞系細胞が、内皮細胞、内皮前駆細胞、およびこれらの組合せからなる群より選択される細胞を含む、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  5. 前記生体機能性被覆組成物が、2つ以上のタイプの表面結合ドメインを含み、各タイプの表面結合ドメインが、前記医療用デバイスの異なる表面材料に結合し得る、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  6. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインが結合特異性を有する金属性表面材料が、金属、金属酸化物、金属合金、およびこれらの組合せからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  7. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインが結合特異性を有する金属性表面材料が、ステンレス鋼を含む、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  8. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  9. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインおよび前記少なくとも1つの内皮結合ドメインが、リンカーを介して互いに連結されている、請求項1に記載の生体機能性被覆組成物。
  10. 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む内皮結合ドメイン。
  11. 配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む表面結合ドメイン。
  12. 前記表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項11に記載の表面結合ドメイン。
  13. 医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面を被覆するための方法であって、該方法は、該医療用デバイスの該少なくとも1つの金属性表面を生体機能性被覆組成物と接触させて該少なくとも1つの表面上に被覆を形成する工程を含み、該生体機能性被覆組成物が、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮結合ドメインを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、該少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結されており、かつ該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞を該少なくとも1つの金属性表面に付着させるための該被覆中に有効量で存在する、方法。
  14. 前記医療用デバイスが血管用デバイスを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記血管用デバイスがステントを含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインおよび前記少なくとも1つの内皮結合ドメインが、リンカーを介して連結されている、請求項13に記載の方法。
  17. 前記表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項13に記載の方法。
  18. 医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面の内皮化を促進するための方法であって、該方法は、該医療用デバイスの該少なくとも1つの金属性表面を生体機能性被覆組成物と接触させて該少なくとも1つの金属性表面上に被覆を形成する工程を含む、該生体機能性被覆組成物が、少なくとも1つの内皮結合ドメインに連結された少なくとも1つの表面結合ドメインを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞を該少なくとも1つの表面に付着させるための被覆中に有効量で存在し、該少なくとも1つの表面を内皮細胞系細胞と、内皮細胞系細胞が該被覆に付着して該少なくとも1つの表面の内皮化を促進するように接触させる、方法。
  19. 前記医療用デバイスが血管用デバイスを含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記血管用デバイスがステントを含む、請求項19に記載の方法。
  21. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインおよび前記少なくとも1つの内皮結合ドメインがリンカーを介して連結されている、請求項18に記載の方法。
  22. 前記表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項18に記載の方法。
  23. 前記少なくとも1つの表面を内皮細胞系細胞と接触させる工程が、インビボで、かつ前記医療用デバイスを必要とする個体中に該医療用デバイスを埋め込む工程に続いて行われる、請求項18に記載の方法。
  24. 医療用デバイスを製造するための方法であって、該方法は、医療用デバイスの少なくとも1つの金属性表面を生体機能性被覆組成物と接触させて少なくとも1つの被覆された表面を形成する工程、および該少なくとも1つの被覆された表面を内皮細胞系細胞と接触させる工程を含み、該生体機能性被覆組成物が、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインを含み、少なくとも1つの表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの内皮結合ドメインが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインおよび該少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインが互いに連結されている、方法。
  25. 前記医療用デバイスが血管用デバイスを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記血管用デバイスがステントを含む、請求項25に記載の方法。
  27. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインおよび前記少なくとも1つの内皮結合ドメインがリンカーを介して連結されている、請求項24に記載の方法。
  28. 前記表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項24に記載の方法。
  29. 前記生体機能性被覆組成物が2つ以上のタイプの表面結合ドメインを含み、かつ各タイプの表面結合ドメインが、前記医療用デバイスの異なる表面材料に結合し得る、請求項24に記載方法。
  30. 前記生体機能性被覆組成物が2つ以上のタイプの内皮結合ドメインを含み、かつ各タイプの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞に対して、該生体機能性被覆組成物中に存在する別のタイプの内皮結合ドメインとは異なる結合特異性を有する、請求項24に記載の方法。
  31. 前記少なくとも1つの被覆された表面を生物学的血管と接触させる工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
  32. 生体機能性被覆組成物で被覆された、少なくとも1つの金属性表面を含む医療用デバイスであって、該生体機能性被覆材料が、少なくとも1つの表面結合ドメインおよび少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインを含み、該少なくとも1つの表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、少なくとも1つの内皮結合ドメインが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含み、かつ該少なくとも1つの表面結合ドメインおよび該少なくとも1つの内皮細胞結合ドメインが互いに連結されている、医療用デバイス。
  33. 前記医療用デバイスが血管用デバイスを含む、請求項32に記載の医療用デバイス。
  34. 前記血管用デバイスがステントを含む、請求項33に記載の医療用デバイス。
  35. 前記少なくとも1つの表面結合ドメインおよび前記少なくとも1つの内皮結合ドメインがリンカーを介して連結されている、請求項32に記載の医療用デバイス。
  36. 前記表面結合ドメインが、前記ペプチドの多量体を含む、請求項32に記載の医療用デバイス。
  37. 前記生体機能性被覆組成物が2つ以上のタイプの表面結合ドメインを含み、かつ各タイプの表面結合ドメインが、前記医療用デバイスの異なる表面材料に結合し得る、請求項32に記載の医療用デバイス。
  38. 前記生体機能性被覆組成物が2つ以上のタイプの内皮結合ドメインを含み、かつ各タイプの内皮結合ドメインが、内皮細胞系細胞に対して、該生体機能性被覆組成物中に存在する別のタイプの内皮結合ドメインとは異なる結合特異性を有する、請求項32に記載の医療用デバイス。
  39. 前記少なくとも1つの被覆された表面を生物学的血管と接触させる工程をさらに含む、請求項32に記載の医療用デバイス。
  40. 表面結合ドメインをコードする核酸分子を含むポリヌクレオチドであって、該表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む、ポリヌクレオチド。
  41. 表面結合ドメインをコードする核酸分子を含む組換えベクターであって、該表面結合ドメインが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む、組換えベクター。
  42. 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む内皮結合ドメインをコードする核酸分子を含むポリヌクレオチド。
  43. 配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、およびこれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になるペプチドを含む内皮結合ドメインをコードする核酸分子を含む組換えベクター。
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