JP2009535412A - ストレス関連疾患および症状を伴う疾患を治療するための方法 - Google Patents

ストレス関連疾患および症状を伴う疾患を治療するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、体外フォトフェレーシス(ECP)のための独特の作用様式を提供する。
【解決方法】ECPは環境ストレスに反応する(すなわち、感染に対する反応、および種々の栄養利用性、肥満、生体異物に対する反応)ための進化的に保存されたメカニズムで特徴付けられる細胞ストレス反応の調整を通じて作用しうる。特異的な経路、ヘキソサミン代謝経路は、細胞O関連糖タンパク組成物を変化させることによりこのストレス反応を調節するように思われる。
【選択図】図16

Description

開示の内容
〔発明の背景〕
細胞および臓器は、恒常性を維持するメカニズムとして進化的に保存された方法で、環境ストレスに反応する。異常な、または、長期のストレス反応が、100を超える重度の疾患の根底にあり[Xu et al. (2005)参照]、多くの医療方法の成功に影響を与えている。
環境ストレスに反応するための進化的に保存されたメカニズムを特徴とする細胞性ストレス反応(すなわち、感染、および、多様な栄養利用性、肥満、生体異物に対する反応)には、いわゆる「熱ショックタンパク質(HSP)」が関与するものが含まれる。HSPは、植物界、動物界全体を通じて広く分布している、高度に保存されたタンパク質のファミリーを形成する。HSPは元々熱ストレスにさらされた細胞において明らかにされたが、それらは多くの他のストレスの形態(例えば、感染)と関連していることがわかっており、それゆえに「ストレスタンパク質(SP)」として、より一般的に知られている。
タンパク質の生物学的機能は、その三次元構造に依存しており、大部分はアミノ酸配列により決定されるが、環境によっても決定される。実際、タンパク質構造は、タンパク質機能の制御に関わる可能性がある他の因子との相互作用を支配している。ポリペプチドが適切なタンパク質折り畳みを通じた適切な構造を採ることができず、その構造を維持できないことは、細胞の機能や生存力に対する重大な脅威である。結果的に、誤って折り畳まれたタンパク質の有害な影響から細胞を防護するために、精妙なシステムが進化してきた。
結果的に、タンパク質折り畳み、オリゴマー化、凝集、または、沈殿の異常は、慢性的に進行する変性疾患の多様な集合の病態生理学において、重要な役割を果たすかもしれない。このような疾患の非限定的な例として、パーキンソン病(PD)、びまん性レヴィー小体認知症(DLBD)、多系統萎縮症(MSA)、筋緊張性ジストロフィー、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DLBD)、フリードライヒ失調症、脆弱性X症候群、脆弱性X精神遅滞(fragile XE mental retardation)、マシャド・ジョセフ病、球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病としても知られている)、脊髄小脳失調、ハンチントン病(HD)、ニューロセルピン封入体による家族性脳症(FENIB)、ピック病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上麻痺(PSP)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ダウン症候群、加齢性黄斑変性症、白内障、ウィルソン病が含まれる。多くの場合、これらの疾患の家族性の形態の根底にある、遺伝的変異が明らかにされてきた。しかしながら、ほとんどの場合、標的タンパク質の構造変化を容易にし、または、きっかけとなる、突発的な開始事象は未知であるが、究極的には、タンパク質の異常なプロセシング、誤った折り畳み、オリゴマー化、または、凝集を結果的に生じ、そのことが細胞毒性の引き金となる。細胞解毒、防御戦略の一部として、または、異常に折り畳まれたタンパク質を分解させる試みとして、このような異常タンパク質はしばしば、様々な型の細胞封入体、すなわち、アグリソームに蓄積される。したがって、これらの封入体すなわちアグリソームは、この多様な変性状態の集合の病理学的指標の1つになる。このような治療薬剤、および、これらの疾患に対して完全に有効な治療法は、今日利用可能ではない。
光照射または光線治療は、化学的、生物的科学において、長い間、広く用いられてきた。血液の紫外線(UV)光照射は、1930年代、40年代、50年代に、多くの症状の治療法として用いられた。これらの症状には、敗血症のような細菌性疾患、肺炎、腹膜炎、創傷感染、急性肝炎および慢性肝炎を含むウイルス感染、灰白髄炎、はしか、流行性耳下腺炎、単核球症が含まれる。また、光線治療または光照射には、光活性化標的または光感受性標的(例えば、細胞、血液産物、体液、化学分子、組織、ウイルス、薬剤化合物)を、その標的中、または、標的に対して変化を誘導する光エネルギーに暴露する過程が含まれる。近年、光線治療の適用は、医療分野において広がっている。これらの適用には、血液または血液産物を汚染しているウイルスの不活性化、血小板濃縮物の注入により誘導されるすべての免疫付与反応の予防治療、ならびに、自己免疫およびT細胞介在性の疾患の両方の治療が含まれる。なぜならば、多くのヒト疾患状態、特に血液のような生体液と関連した疾患状態は、可視光またはUV光照射による処置により好ましく反応するからである。
また、照射の適用には、望ましくない微生物(例えば、細菌またはウイルス)を含む液体の照射による殺菌が含まれる。また、光照射は、細胞の免疫原性を除去し、選択した細胞を不活性化または殺し、ウイルスまたは細菌を不活性化し、あるいは、望ましい免疫反応を活性化するためにも有効かもしれない。光線治療は、特定の血液成分または全血についての抗ウイルス治療として用いられてもよい。例えば、献血された血小板濃縮物における病原性ウイルスを、UV光照射によって不活性化してもよい。国際公開第97/36634号参照。
光照射は、外部薬剤または化合物がなくとも、それ自体で効果的かもしれないが、特異的な薬剤または触媒(例えば、光活性化可能剤)の導入を伴ってもよい。ある適用では、多くのヒト疾患状態が、全血を正常に含む細胞の他の集団と比較して、特定の型の白血球(リンパ球を含む)の過剰産生によって特徴付けられるかもしれないことが、よく知られている。過剰な異常リンパ球集団は、しばしば究極的には死に至るような、肉体臓器の機能障害、白血球介在性自己免疫疾患、白血病関連疾患を含む、患者における数多くの悪影響を生ずる。実際に、これらの光活性化可能剤の使用には、疾患状態の結果として、特異的な血液細胞が病原性となる場合、病気に侵された患者の血液を処理することを伴ってもよい。方法には概して、病原性血液細胞(例えば、リンパ球)を、光活性化可能剤(例えば、ソラレン)で処理することを伴ってもよい。その光活性化可能剤は、UV放射にさらした場合、リンパ球DNAに光付加物を形成することができるものである。
ソラレン(例えば、メトキサレン)を用いたフォトフェレーシスは、異常(CTCLの場合、がん性)T細胞に対して免疫付与を引き起こすことがある。フォトフェレーシス中、メトキサレンは、白血球核中に入り、二本鎖DNAらせんに挿入される。体外サーキットにおいて、長波紫外線光により、白血球が濃縮された血液量を生ずる。メトキサレンは、紫外線エネルギーに反応して、DNAらせん中のチミジン塩基に結合する。このことによりチミジン塩基の架橋が生じ、転写中DNAのゆるみが妨げられる。紫外線A光(UVA)は、異常T細胞に損傷を与え、それらをより免疫原性にする。他のソラレンまたはソラレン誘導体は、別の経路を通じて作用することもある。それにも関わらず、細胞を光活性化した後、変化したこれらのT細胞の再注入することにより、同一の表面抗原を運ぶT細胞を標的とした免疫性反応を引き起こす。Edelson (1991) Ann NY Acad Sci 636:154-64参照。これにより、異常細胞(がんクローン、または、もしかしたら、その表面にウイルス抗原を発現したT細胞のいずれか)に対する非常に特異的な免疫反応を生成する。フォトフェレーシスの実行(連続2日計画)当たり、およそ25〜50%の全末梢血単核球が処理されると推定される。
〔発明の概要〕
本発明は体外フォトフェレーシス(ECP)についての独特の作用様式を提供する。ECPは、環境ストレス(すなわち、感染、および、多様な栄養利用性、肥満、生物異物に対する反応)に反応するための進化的に保存されたメカニズムを特徴とする細胞ストレス反応の調節を通じて機能するかもしれない。特異的な経路、ヘキソキサミン代謝経路は、細胞O結合糖タンパク質組成物を変化させることにより、このストレス反応を調節することが明らかである。本明細書で説明するデータは、この経路が、アポトーシス細胞死のセンサーとして作用し、ECPの後に続いて起きるストレス反応に関与しうるという主張を支持する。もし2つの酵素のみがこの経路に影響することが知られており、この経路が糖尿病の発症および病理学に関係するならば、この経路は、ECP治療の新しい標的を提供する。
〔発明の詳細な説明〕
糖尿病を含む最もよく見られる慢性疾患の多くは、ストレスに対する不適応な反応により引き起こされる。ストレスは、ここでは恒常性が脅かされている状態として広義に定義するが、心理的、環境的、生理的欲求を含む一連の刺激によって誘発される。体外フォトフェレーシス(ECP)は現在、ストレス反応を調節し、適応を容易にすることができる治療法として示されている。この過程は、細胞および組織修復を高め、疾患病状の解決を早める。したがって、この治療法は、現在難治性であり、一般的に死に至る疾患を治療するための、安全で、新規なアプローチである。ECPは、数多くの炎症症状において実用性が示されてきた安全で効果的な免疫調節治療である。ECPの治療上の利益は、制御性T細胞(Treg)が部分的に誘導されることによる、免疫耐性の誘導に起因することのように思われる。本発明は、T1DMを含む炎症疾患のin vivoのモデルによって確認されるように、in vitroにおけるECP機能を調節するシグナル伝達経路を提供する。
動物モデルおよび患者において、より良い転帰が、一般的に、数多くのECP処理の後生じる。実際に、いくつかの疾患については、いくつかの治療サイクルの後にまで、反応が見られることはまれである。
免疫抑制治療に対して、ECPを受けた患者は、感染症またはがんの割合が全く増加していない。動物モデルから得られた結果は、免疫反応が保存されており、未処理対照と実質的に等しい速度および強度で生じてはいるが、それらはECP処理とともにより急速に解決する。
広く別々のクラスの薬剤で細胞および動物を治療することにより、in vitroおよびin vivoでは、ECPの治療効果が高まる。細胞ストレス反応および異なるシグナル伝達経路に対して重要なシステムに影響を与える薬剤と、相乗効果が見られる。
ECPの遺伝子発現プロファイリングは、ECPが、ストレス反応性遺伝子の転写量における変化を導くことを示した。それらの遺伝子には、典型的な、プログラムストレス反応と関係するものの多くが含まれる。
我々の遺伝子アレイデータと同じく、免疫耐性についての2つの特異的な制御点(1つは既知であり、1つは新規である)が、ECPによって調節されている。両方の経路、ヘキソサミン生合成経路(HBP)およびmTORシグナル伝達カスケードは、栄養センシングおよび糖尿病と関係している。両方とも、通常、細胞を後の誘発試験(subsequent challenge)に対してより耐性のあるものにする、低いレベルのストレスに反応するものであり、このことは、ECP誘導性ストレス調整効果を示唆している。
ECPは、急性ストレス条件下で防護的であって、骨髄破壊的骨髄移植の後の臨床転帰を改善し、アポトーシス誘発発作から培養中の細胞を保護し、遺伝的、化学的に誘導されたマウスのモデルにおける糖尿病の進行を停止する。
これらの観察は、ストレスにより誘導された調整反応と一致し、虚血性の事前調整により最もよく特徴付けられる。事前調整は、後のストレス因子による損傷を低減または予防することができる適応的な機能的、構造的な変化を導く。このような「ストレス調整」から生ずる後成的な変化により、遺伝子発現パターンが変化し、急性ストレス反応およびその解決の両方に影響を与え、持続的防護を確立する。本発明は、ECPがこのような反応を導き、ストレスに対する細胞許容量および生物的許容量を増強することができることを示している。前から存在する疾患を治療する際に、ECPは、事後調整の形態を通じて、病状のより早い解決を導くが、生理学的変化は、恒常性の修復およびより早い回復を可能にする調整療法によって導かれる。
免疫反応のストレス調整についての実施例が報告されている。実験データは、外因性ストレス因子による調整は可能であるが、その選択肢は遺伝的に危険性が高いことを示している。例えば、動物モデルおよび数例の臨床試験において、虚血、放射線、高体温法または低体温法、麻酔、内毒素暴露、アジュバント暴露、または、病原体暴露、および、相対毒性の薬剤が、効果的であることが示されている。
調整を「安全に」達成しうる手段から、研究者および臨床医は、何十年間も遠ざかっていた。このたび、ECPがこの目的を達成する手段を提供することを示している。
本発明は、ストレス反応を安全に調節することができ、何百万人もの世界中の人々に影響を与える新規治療アプローチおよび新しい薬物標的を明らかにすることを示しており、そして、ストレス反応と免疫系との間の新しい関連を示している。ECPにおけるような、アポトーシス細胞(AC)注入が、Tregおよび寛容原性樹状細胞を誘導することが知られているが、ACの強制的な除去(エフェロサイトーシス(efferocytosis))を克服するような誘導メカニズムは不明である。本発明は、いくつかのクラスの化合物、特に、ラパマイシン、抗酸化剤、セラストロール(Celastrol)が、in vitroでACと相乗作用することを示している。これらの薬剤がストレス反応を改善し、本発明では、エフェロサイトーシスも同様に可能であることが示しされている。実際、AC注入は、in vivoおよびin vitroでの樹状細胞における、ストレス反応性、代謝遺伝子の発現プロファイルを変化させた。1つの例は、細胞外タンパク質thrombospodin-1である。TSP-1はストレス反応性であり[Zebo et al. (2005)、Favier et al. (2005)参照]、アポトーシス細胞および食細胞の両方によって放出され、特異的なレセプター相互作用を通じて、in vitroで寛容原性APCおよびTregを生成することが示されている。Krispin et al. (2006)、Grimbert et al. (2006)参照。in vitroでのこれらの発見を確認したところ、効果がアポトーシスの誘導方法に独立であることを示している。代謝制御遺伝子も同様に試験した。遺伝子発現およびエネルギー代謝における変化によって明らかにされたように、ストレス因子は免疫系に対して明らかに効果を有するため[Fox et al. (2005)参照]、本明細書では、エネルギー代謝の血清マーカーが、ECPに対する反応における変化を示している。実際、処理マウスでは、インスリン、グルカゴン、IGF-1が、用量、時間依存的な方法でECPによって調節されていた。制御不全の代謝を有する動物が、異常な事前調整反応を有する[Katakam et al. (2006)参照]可能性がある場合、ヘキソサミン生合成経路(HBP)の酵素を含む関連経路における遺伝子発現を試験した。O-GlcNAcase発現は、エフェロサイトーシスに対して反応性であり、エフェロサイトーシスの抑制または対応する制御性HBP酵素O-GlcNAcトランスフェラーゼの抑制は、in vitroでの寛容原性を明らかに変化させる。Kudlow (2006)、Dauphinee et al. (2005)参照。具体的に、O−GluNAcase阻害剤であるPUGNAcおよびストレプトゾトシンは、ACの治療効果を高めるが、アロキサンによるOGT阻害は完全にそれを逆転する。HBPはストレス反応性であり、好中球走化性に関係している。Zachara et al. (2004)、Kneass et al. (2005)参照。HBPによる免疫耐性およびストレス反応の同時調節は、これまで未知であったし、代謝疾患、神経疾患、心臓疾患における共通の病状に対する新規の洞察を含む遠大な関係を有している。Lehman et al. (2005)、Katakam et al. (2006)、Mattson et al. (1999)、Hashizume et al. (2006)参照。
用語「被験者」または「患者」は、ほぼ同じ意味に用いられ、動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトについて言う。
「細胞集団」には概して、血液中に見られる細胞型が含まれる。その用語には、1つ以上の血液細胞型、具体的には赤血球、血小板、白血球が含まれてもよい。細胞集団は、白血球のサブタイプ、例えば、T細胞、樹状細胞、B細胞等を含んでいてもよい。1つの実施態様では、細胞集団は、細胞型の混合物または集合を含んでいてもよい。あるいは、細胞集団は、実質的に精製された細胞の型、例えば、T細胞または樹状細胞(DC)を含んでいてもよい。
「ECP法」または「ECP」は、体外フォトフェレーシスを言い、体外光線療法としても知られている。それは、UVA光と光活性化可能化合物とにさらした細胞の集団の治療法である。好ましくは、細胞の集団は臓器または組織由来であり、より好ましくは、細胞の集団は血液の一部であり、最も好ましくは、細胞の集団はバフィーコートである。DNA架橋剤(例えば、ソラレン[好ましくは、8-MOP])の存在下でのUVA光によるアポトーシス誘導法に、細胞集団をさらす過程を言うために、ECPが時折用いられる。
本発明で最も好まれる実施態様では、ECPが用いられる。アポトーシスを誘導するためにECPを用いる方法および細胞の使用は、米国特許出願第20050163778号に記載されている。これには、生体外(ex vivo)で細胞集団に添加される光活性化可能化合物が必要である。場合によっては、被験者、受容者、または、提供者からの採血の結果得られる血液細胞を含む細胞集団に、紫外線照射に先立って、または、それと同時に、光感受性化合物を投与してもよい。また、標的血液細胞または血液成分が光感受性化合物を受容する場合、全血またはその区画を含む細胞集団に、光感受性化合物を投与してもよい。別の実施態様では、被験者の血液の一部、受容者の血液の一部、または、提供者の血液の一部を、まず、実質的に赤血球を除去するための既知の方法を用いて処理することができ、その後、濃縮された白血球区画を含む結果的な細胞集団に、光活性化化合物を投与してもよい。
代替的な実施態様では、光活性化可能化合物をin vivoで投与してもよい。被験者の血液、受容者の血液、または、提供者の血液を含む細胞集団に投与する場合、場合によっては、光感受性化合物をin vivoで投与してもよく、経口投与してもよく、静脈内投与してもよく、および/または、他の慣用的な投与経路により投与してもよい。光活性化化合物の経口用量は、約0.3〜約0.7 mg/kgの範囲であってよく、より具体的には、約0.6 mg/kgである。経口投与する場合、光感受性化合物を、フォトフェレーシス処理に先立つ、少なくとも約1時間前に投与してもよく、フォトフェレーシス処理に先立つ、わずか約3時間前に投与してもよい。
本発明とともに用いるための光活性化可能な化合物には、ソラレン(または、フロクマリン)として知られる化合物、ならびに、例えば、米国特許第4,321,919号、同第5,399,719号で説明されているようなソラレン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。好まれる化合物には、8−メトキシソラレン、4,5’8−トリメチルソラレン、5−メトキシソラレン、4−メチルソラレン、4,4−ジメチルソラレン、4−5’−ジメチルソラレン、4’−アミノメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン、4’−ヒドロキシメチル−4,5’,8−トリメチルソラレン、4’,8−メトキシソラレン、および4’−(ω−アミノ−2−オキサ)アルキル−4,5’8−トリメチルソラレンが含まれる。4’−(4−アミノ−2−オキサ)ブチル−4,5’,8−トリメチルソラレンが含まれるが、これに限定されない。1つの実施態様では、用いられてもよい光感受性化合物は、ソラレン誘導体、アモトサレン(S-59)(Cerus, Corp., Concord, CA)を含む。別の実施態様では、光感受性化合物は、8−メトキシソラレン(8-MOP)を含む。
光活性化可能化合物を添加した細胞集団を、光活性化可能化合物が活性化される波長の光で処理する。好ましくは、長波紫外光(UVA)、例えば、320〜400 nmの範囲の波長を用いて、光活性化可能化合物を活性化する治療ステップを実行する。フォトフェレーシス処理中の紫外光への暴露を、好ましくは、細胞集団に、約1〜2 J/cm2送達するのに十分な時間投与する。
本発明の方法で有用な体外フォトフェレーシス装置には、UVAR(商標)の名称でTherakos, Inc.(Exton, Pa.)により製造された装置が含まれる。このような装置の説明が、米国特許第4,683,889号に見られる。UVAR(商標)システムは、治療システムを用いるものであり、(1)(白血球が濃縮された)バフィーコート区画の収集、(2)収集されたバフィーコート区画の照射、(3)処理した白血球の再注入、の3つの段階から構成される。収集段階は、6サイクルの血液採取、遠心分離、再注入ステップを有する。各サイクルの間、全血を遠心分離し、フェレーシスボールの中に分離する。この分離により、各収集サイクルで、血漿[各サイクルにおける容量を、UVAR(商標)Instrument operatorにより決定する]および40 mLのバフィーコートを、保存する。赤血球および余分な血漿のすべてを、次の収集サイクルが始まる前に患者に再注入する。最終的に、全部で240 mLのバフィーコートと300 mLの血漿を分離し、UVA照射用に保存する。
照射サーキット中の白血球濃縮血液の照射を、最初の収集サイクルにおけるバフィーコート収集の間に開始する。収集した血漿およびバフィーコートを、200 mLのヘパリン化生理食塩水および200 mgのUVADEX(商標)(水溶化8−メトキシソラリン)と混合する。この混合物は、PHOTOCEPTOR(商標)光活性化チャンバーを通って1.4 mm厚の層の中を流れるもので、チャンバーは、PHOTOSETTE(商標)UVAランプの2つの溝(banks)の間に挿入されている。PHOTOSETTE(商標)UVAランプは、このUVA透過性PHOTOCEPTOR(商標)チャンバーの両側を照射し、紫外線A光に180分間暴露させて、リンパ球当たり1〜2 J/cm2の平均照射を生ずる。最終的なバフィーコート準備物は、全体の末梢血単核球成分のおよそ20%〜25%を含み、2.5%〜7%のヘマトクリットを有する。光活性化期間の後、30〜45分間かけて、容量を患者に再注入する。米国特許出願公開第20030181305号は、ECP投与で使用される別のシステムを説明する。また、米国特許第5951509号、同第5985914号、同第5984887号、同第4464166号、同第4428744号、同第4398906号、同第4321919号、国際公開第WO97/36634号、同第WO97/36581号には、この点で有用な機器および方法についての記載が含まれる。
米国特許第6793643号には、本発明の方法に有用かもしれない別のシステムが記載されている。そのシステムには、ECP中に、被験者から収集し、または、取り除いた正味液量を減らすことのできる機器が含まれている。米国特許第6219584号に記載の方法およびシステムを用いて、細胞集団に送達される光エネルギーの有効量を決定してもよい。
細胞集団でアポトーシスを誘導するための様々な他の方法が周知であり、本発明で使用するために、それらの方法を採用してもよい。このような1つの処理には、電離放射線(γ線、X線等)、および/または、非電離性電磁放射線(紫外光を含む)、加熱、冷却、血清涸渇、成長因子涸渇、酸性化、希釈、アルカリ化、イオン強度変化、血清涸渇、照射、もしくは、それらの組み合わせに、細胞集団をさらすことが含まれる。あるいは、細胞集団を超音波にさらすことにより、アポトーシスを誘導してもよい。
更に、アポトーシスを誘導する別の方法は、酸化ストレスを体外で細胞集団へ適用することを含む。懸濁液の中で、化学的酸化剤(例えば、過酸化水素、他の過酸化物およびヒドロペルオキシド、オゾン、過マンガン酸塩、過ヨウ素酸塩、ならびに、同様のもの)により、細胞集団を処理することによって、これを達成してもよい。生物学的に許容できる酸化剤を、残基に関連する電位の問題、および、形成されたアポトーシスを誘導した細胞集団の汚染を減少させるために用いてもよい。
アポトーシスを誘導した細胞集団を準備する際に、酸化ストレス、放射線、薬剤処理等を過剰なレベルで適用しないように注意しなければならない。さもなければ、処理中に、少なくともいくつかの細胞のネクローシスを引き起こすような、重大な危険性があるからである。ネクローシスは、細胞膜の破裂、細胞内容物の放出を引き起こし、生物学的に有害な結果(特に炎症)をしばしば招くため、ネクローシス細胞とその成分を、アポトーシス細胞を含む細胞集団とともに存在させることは、避けることが最も良い。アポトーシスを誘導するための細胞集団の処理の適切な程度、および、アポトーシスを誘導するために選択される処理の種類を、当業者は容易に決定することができる。
本発明の1つの過程には、被験者由来の、または、適合性のある哺乳類細胞株由来の細胞の培養が必要である。それから、アポトーシスを誘導し、細胞集団を形成するために、体外で培養細胞を処理してもよい。体外処理は、抗体、化学療法剤、放射線照射、体外フォトフェレーシス、超音波、タンパク質、酸化剤からなる群から選択されてもよい。それから、被験者の血漿または別の適当な懸濁培地(例えば、生理食塩水、または、調整された哺乳類細胞培養培地)に懸濁された細胞を、患者に投与してもよい。
本発明において被験者に投与するための準備物中のアポトーシスの存在およびその濃度を決定するために、アポトーシスを検出し、定量化するための方法が有用である。被験者において求められる臨床的有益性を得るために必要な、細胞集団でのアポトーシス細胞数は、細胞の出所、被験者の状態、被験者の年齢および体重、ならびに、周知の方法により容易に決定することのできる他の関連のある因子に応じて、変動してもよい。好ましくは、患者に投与されるアポトーシス細胞数は、1億〜500億個であり、より好ましくは、10億〜100億個、最も好ましくは、25億〜75億個である。
1つの実施態様では、アガロースゲル電気泳動で見られる特徴的なDNAの「はしご化(laddering)」によって、アポトーシスを経験した細胞を同定してもよい。その「はしご化」は、DNAが一連のフラグメントへと分解した結果生ずるものである。別の実施態様では、アポトーシスが誘導された細胞集団を同定、および/または、定量化するために、細胞上のホスファチジルセリンの表面発現を用いてもよい。ミトコンドリア膜電位の変化はミトコンドリア膜透過性の変化を反映するものであるが、これを測定することは、細胞集団の同定方法として認識されている別の方法である。また、アポトーシスを経験した細胞、および、細胞集団の他の多くの同定方法は、多くが細胞集団特異的なマーカーに対するモノクローナル抗体を用いるものであり、それらもまた科学文献に記載されている。
おそらくヘキソサミン経路を経由するストレス反応におけるECPの効果を最適化するためのECP治療法の改良は、新しい治療機会を提供するだろう。最も良く調節するようにECPを最適化することによって、この「統合ストレス反応」(ISR;「折り畳まれていないタンパク質」、「小胞体(ER)ストレス」、および他の名称でも知られている)を通じた免疫システムが、このストレス反応が病理生物学的役割を果たすと信じられている、これまでに試験されていない疾患状態へと、ECPを拡大させる。これらの疾患には、ほとんどの器官系の病状が含まれ、現在難治性であり、一般的に致死的なものである。この作用様式には、免疫系に対する低レベルストレス因子として利用するアポトーシス細胞の適当な量を一回または反復して投与することを通じて、細胞をストレスに対して耐えさせるような調整が含まれる。従来の研究では、他のストレス因子は、このような事前調整を誘導することができると示しているが、これらのストレス因子は治療のためには安全ではないように思われた。したがって、安全で効果的な市販される治療法であるECPは、特異的にストレス反応を改善し、疾患の進行または持続可能性を変化させる方法を提供する。
刺激時間で取り扱うよう準備されるのではないERに対して、要求を配置することにより、ERストレスを示しているシグナルを呼び起こす数多くの刺激によって、このストレス反応は誘導される。これらのストレス因子には、タンパク質発現の宿主/患者細胞対照の消失が起こるような調整が含まれる。このことには、ER機能不全を導く数多くの細胞シグナル伝達事象が含まれる(すなわち、改善し、さもなければ適切にタンパク質を加工するような細胞能力を上回る、タンパク質輸送速度)。アポトーシス細胞を食菌する細胞におけるのみならず、高められたストレスが存在するというシグナルを増幅する方法で、このような細胞から他の組織にシグナル伝達する結果としても、このストレス反応調整が誘導されるようである。そのストレス下では系が侵されそうなきっかけとなるストレスまたは後のストレスから適切に回復するように、影響を与えられた組織による適応変化を、このような反応は必要とする。したがって、本発明は、ウイルス感染(すなわち、病理的に、または治療的に誘導された二本鎖RNA暴露)を含む感染症および関連治療に対し、また、形質転換が、ERストレスを誘導し、正常細胞死および回復反応を覆すようながん治療に対し、また、タンパク質の誤った折り畳みまたは過剰発現に関連する腎臓疾患、ならびに、様々な刺激が細胞外マトリックスタンパク質の過剰発現および細胞の過剰成長を誘導する線維症に対して、ECPの使用を拡張する。
本発明は、タンパク質凝集疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病を含むが、これらに限定されない)、および、消耗性疾患[プリオン感染による海綿状脳症、遺伝性変異型クロイツフェルトヤコブ病(“vCJD”)を含むが、これらに限定されない]を含む疾患状態に対して、現存する治療的療法の使用を拡張する。インスリン耐性を伴い、分泌細胞に欠陥がある代謝、免疫ストレス関連疾患(糖尿病、メタボリックシンドローム、および、他の肥満関連病状を含む)が、折り畳まれていないタンパク質反応に関連しており、ECP治療法に対して扱いやすい。これには、細胞のタンパク質過剰産生が、タンパク質の病理学的沈殿およびその凝集を招くアテローム性動脈硬化症および関連した心血疾患、ならびに、正常な、または、病理学上の自然経過の一部としてタンパク質を過剰産生する任意の分泌細胞の疾患が含まれるが、これらに限定されない。この分泌カテゴリーのうち、しばしば考慮される細胞には、すい臓β細胞、前立腺組織、免疫グロブリン(すなわち、血漿細胞)または他のタンパク質(すなわち、樹状細胞インターフェロンγ産生)の有意な量を分泌する免疫細胞、粘膜分泌細胞(すなわち、消化管および気管におけるムチン分泌細胞)が含まれるが、これらに限定されない。
増加したタンパク質量を産生するような表現型を変化させるために刺激される細胞は、このストレスにより影響される可能性があり、そのストレスに対する病理学的な反応の結果この産生能力の機能不全が生ずる疾患は、ECPが治療上の利点を提供する追加的な標的組織を提供する。このことには、肝臓および胃の酵素産生細胞、ペプチドを分泌するニューロン、および神経内分泌組織、ならびに、傷に反応して(すなわち、創傷治癒において、放射線損傷に反応して)、細胞外マトリックスおよび組織リモデリングタンパク質を分泌するよう刺激される細胞が含まれるが、これらに限定されない。
温度ストレスまたは酸化ストレスにさらされた任意の細胞は、適当なストレス反応を必要とし、ここでECP調整は、多くのこのような場合に利益がありうる。なぜならば、このような調整は、損傷に対して、または、このようなストレスの結果生ずる損傷の回復を高めるために抵抗性を提供しうる。したがって、反応性酸素種、ペルオキシ亜硝酸、または、他の酸化ストレスを生ずる環境障害への様々な暴露が、ECP治療の標的である。中毒(すなわち、パラコートのような農薬による)、放射線照射、過度の運動、化学治療、麻酔、高圧暴露、反応性酸素種を導く遺伝的事前調整[すなわち、血小板由来成長因子(“PDGF”)レセプターシグナル伝達系により産生されるもの]、および外傷が含まれるが、これらに限定されない。
ストレス反応の結果生ずる細胞内代謝における変化が、タンパク質輸送を変化させるのに加えて、小分子の細胞移送に影響を与えることが知られている。遺伝子発現プロファイルは、ECPが、複数薬剤耐性(“MDR”)トランスポーターの発現を有利に変化させることを示している。最適化されたECPは、MDRポンプおよびトランスポーターの発現を制限、または、変化させることによって、細胞からの薬剤の排出を変化させ、それにより、薬剤耐性に影響を与える(すなわち、がん化学治療または抗生物質/抗ウイルス治療において)。他の場合では、ECPは、細胞への薬剤の摂取を高めるように最適化される可能性がある。
広く受け入れられている仮説は、生物に対する酸化ストレスの蓄積効果によって、加齢の過程が促進することと推測している。酸化ストレスに対する細胞反応、または、正常もしくは過剰な代謝によるそのストレスの生成、を変化させることによって、カロリー制限が、ある程度寿命を延ばすことが示されている。ECPにより誘導されたストレス反応が、カロリー制限によって誘導されたものと同様のメカニズムを伴うならば、ECPは加齢の効果を改善する。
ECPのこの最適化を可能にするために、現存する方法を用いることができる。第1に、統合されたストレス反応は、いくつもの既知の転写物での選択的スプライシングを誘導する。この転写物には、このストレス反応を特徴付ける修復過程および翻訳停止に直接関与する転写物、ならびに、細胞がERストレスを克服できない場合、後に起こる修復のためのアポトーシス選択物が含まれる。
Xbp-1 mRNAの選択的スプライシングが、ストレス反応において起こることが示されており、本分野で任意の既知の方法によって測定されうる。その方法には、末梢血または細組織生検を用いた定量PCRが含まれるが、これに限定されない。あるいは、mTOR活性を観察することが、ストレス反応のバイオマーカーとして役立つ。なぜならば、ストレス反応は、mTOR経路を通じた日付シグナル(date signal)を特徴付けたからである。mTORの直下の基質であるS6キナーゼのリン酸化は、ラパマイシン治療を受けた患者における免疫抑制を観察するための薬力学マーカーとして用いられている。発表された報告はウェスタンブロット法について説明していたが、細胞株におけるmTOR活性のフローサイトメトリー分析で有用であることが示されている試薬が利用可能である。末梢血におけるmTOR活性を観察することは、本分野で既知の方法を用いて可能である。その方法には、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学が含まれるが、これに限定されない。
本明細書中に提示された実施例のように、ストレス反応およびアポトーシスのバイオマーカーを用いて、異なるECP条件に対する反応を観察することは、ストレスに関連した疾患および条件におけるECPの有効性を決定するための方法を提供する。これらのバイオマーカーを用いて、細胞用量および投与療法を変えることによって、従来の達成不可能な臨床精度を有するECPを送達することが可能である。このことは、独立した治療法としてのECPの治療可能性を最大化し、ECPを他の免疫調節薬剤治療および治療療法を組み合わせたものを最適化することができる。
バイオマーカーは、指定されたマーカー遺伝子の発現レベルの任意の兆候である。その兆候は、直接的または間接的でありうるし、生理学的パラメーターが与えられた場合、また、内部標準、正常組織、または、別のがんと比較して、遺伝子の過剰発現または不足発現を測定しうる。バイオマーカーには、核酸(過剰発現、不足発現と、直接、間接ともに)が含まれるが、これに限定されない。核酸をバイオマーカーとして用いることには、本分野で既知の任意の方法が含まれうる。その方法には、DNA増幅、RNA、マイクロRNA、ヘテロ接合性欠乏(LOH)、一塩基多型[SNPs;Brookes (1999)参照]、マイクロサテライトDNA、DNAハイポメチル化またはDNAハイパーメチル化を測定することが含まれるが、これらに限定されない。タンパク質をバイオマーカーとして用いることには、本分野で既知の任意の方法が含まれる。その方法には、量、活性、修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、ADPリボシル化、ユビキチン化等)、または、免疫組織化学(IHC)を測定することが含まれるが、これらに限定されない。他のバイオマーカーには、イメージング、細胞計数、アポトーシスマーカーが含まれる。
マーカー核酸は、その配列を含む場合、配列番号により指定された配列に対応する。遺伝子断片またはフラグメントは、参照配列またはその相補配列の一部を、その遺伝子の配列であると識別できるほど十分に含む場合、このような遺伝子の配列に対応する。遺伝子発現産物は、そのRNA、mRNA、miRNA、または、cDNAが、このような配列を有する組成物(例えば、プローブ)とハイブリダイズする場合、あるいは、ペプチドまたはタンパク質の場合、このようなmRNAによりコードされる場合、このような配列に対応する。遺伝子発現産物の断片またはフラグメントは、参照遺伝子発現産物またはその相補物を、その遺伝子の配列または遺伝子発現産物であると識別できるほど十分に含む場合、このような遺伝子の配列または遺伝子発現産物に対応する。
本明細書で説明し、特許請求の範囲に記載した発明の方法、組成物、物品、キットには、1つ以上のマーカー遺伝子が含まれる。「マーカー」または「マーカー遺伝子」は、本明細書を通じて、ストレスまたは炎症に関連した反応と関連して、過剰発現または不足発現する任意の遺伝子に対応するような遺伝子および遺伝子発現産物を言うために用いられる。
本発明は、本明細書で説明する方法を実行するためのマイクロアレイまたは遺伝子チップを、更に提供する。
本発明は、その組み合わせが、生物由来サンプルにおける遺伝子発現を測定し、特徴付けるのに十分であると、本明細書で説明する遺伝子の組み合わせのバイオマーカー(例えば、単離核酸配列、その相補配列、それらの部分配列)を測定するのに適した試薬を含む診断的/予後的ポートフォリオを、更に提供する。
本発明で説明する任意の方法は、サンプルにおいて構成的に発現する少なくとも1つの遺伝子の発現を測定することを更に含む。
本発明は、本明細書で説明する方法にしたがって、ストレスまたは炎症に関連した反応を明らかにし、適切な治療法を明らかにすることにより、治療の方針を提供するための方法を、更に提供する。
本発明は、本明細書で説明する方法にしたがって、ストレスまたは炎症に関連した反応を明らかにし、対応する予後を明らかにすることにより、予後を提供するための方法を、更に提供する。
本発明は、マーカー遺伝子の発現レベルを決定すること、その発現を決定するために、マーカー遺伝子についてのバイオマーカーを測定すること、本明細書で説明する方法にしたがって、マーカー遺伝子の発現を分析すること、マーカー遺伝子がストレスまたは炎症に関連した反応に有効に特異的であるかどうか決定することを含む、バイオマーカーを見出すための方法を、更に提供する。
本発明は、本明細書で説明する解析を実施するための、キット、物品、マイクロアレイまたは遺伝子チップ、診断的/予後的ポートフォリオ、および、本願の方法により得られた結果を報告する患者報告を、更に提供する。
特定の核酸配列が組織サンプルに単に存在するかしないかということだけでは、診断価値または予後価値を有するかどうかまではわからない。一方、様々なタンパク質、ペプチド、または、mRNAの発現についての情報は、ますます重要なものと見なされている。ゲノム内に、タンパク質、ペプチド、または、mRNAを発現する可能性がある核酸配列(このような配列を「遺伝子」というが)が単に存在するということ、それ自体は、タンパク質、ペプチド、または、mRNAが所与の細胞において発現するかどうか決定するものではない。タンパク質、ペプチド、または、mRNAを発現することができる所与の遺伝子かそうでないかということ、そして、たとえそうであっても、どの程度このような発現が起こるかということは、様々な複合的要因によって決定される。これらの要因を理解し、評価することの難しさにも関わらず、遺伝子発現を解析することは、ストレスまたは炎症による反応、他の臨床上関連のある現象のような、重要な事象の発生についての有用な情報を提供しうる。遺伝子が活性であるか不活性であるかの程度についての相対的な指標は、遺伝子発現プロファイルの中に見出すことができる。
遺伝子発現プロファイルを確立するための好まれる方法には、タンパク質またはペプチドをコードしうる遺伝子により産生されるRNA量を決定することが含まれる。これは、逆転写PCR(RT-PCR)、競合RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、ディファレンシャルディスプレイRT-PCR、ノーザンブロット分析、および、他の関連する試験によって達成される。個々のPCR反応を用いて、これらの技術を実施することが可能であるが、mRNAから生成される相補的DNA(cDNA)または相補的RNA(cRNA)を増幅し、マイクロアレイで分析することが最も良い。多くの異なるアレイ配置、および、それらを作る方法が、本分野の当業者に既知であり、例えば、米国特許第5445934号、同第5532128号、同第5556752号、同第5242974号、同第5384261号、同第5405783号、同第5412087号、同第5424186号、同第5429807号、同第5436327号、同第5472672号、同第5527681号、同第5529756号、同第5545531号、同第5554501号、同第5561071号、同第5571639号、同第5593839号、同第5599695号、同第5624711号、同第5658734号、同第5700637号に記載されている。
マイクロアレイ法は、何千もの遺伝子の定常状態のmRNAまたはmiRNAレベルを同時に測定することを可能にし、それによって、ストレスまたは炎症に関連した反応の開始、もしくは、調節といった効果を明らかにするための強力なツールを提示する。2つのマイクロアレイ法、cDNAアレイ、オリゴヌクレオチドアレイ、が現在広く用いられている。これらのチップ構成には違いが存在するが、本質的にすべての下流のデータ分析および出力は、同じものである。これらの分析の産物は、一般的に、サンプル由来のcDNA配列を検出するために用いられる標識プローブから受け取られるシグナルの強度を測定することであり、そのプローブは、マイクロアレイ上の既知の位置で核酸配列にハイブリダイズする。一般的に、シグナルの強度は、サンプル細胞で発現するcDNA、したがって、mRNAの量と比例する。多くのこのような技術が利用可能であり有用である。好ましい方法は、米国特許第6271002号、同第6218122号、同第6218114号、同第6004755号、Keene et al. (2006) RIP-Chip: the isolation and identification of mRNAs, microRNAs and protein components of ribonucleoprotein complexes from cell extracts Nature Protocols 1 :302-307に見られる。
発現レベルの分析は、このようなシグナル強度を比較することによって実施される。このことは、対照サンプルでの遺伝子の発現強度に対する、試験サンプルでの遺伝子の発現強度についての比例行列(ratio matrix)を生成することによりなされるのが最も良い。例えば、異常組織由来の遺伝子発現強度を、同じ種類の正常組織から生成される発現強度と比較することができる。これらの発現強度の比率は、試験サンプルと対照サンプル間との遺伝子発現が、倍数的に異なることを示している。
選択は統計的検定に基づきうる。この統計的検定は、ランク付けしたリストを作り出し、そのランク付けしたリストは、ストレスまたは炎症に関連した反応に関係する因子間で、各遺伝子が特異な発現をすることについての有意性の証拠に関係する。このような検定の例には、ANOVAおよびクラスカル・ウォリスが含まれる。カットオフまでのこのような重みの総計を、他のクラスよりも1つのクラスに有利になるように、証拠の優越として解釈するように設計したモデルにおいて、そのランキングを重み付けとして用いることができる。また、文献に記載されたような従来の証拠を、その重み付けを調整するために用いてもよい。
遺伝子発現プロファイルを、多くの方法で表わすことができる。最も一般的な方法は、生の蛍光強度または比例行列を、縦軸が試験サンプルを、横軸が遺伝子を示す図形的な系統樹に配置することである。よく似た発現プロファイルを有する遺伝子が互いに近位にあるように、データを配置する。各遺伝子の発現率は、色により視覚化される。例えば、1より低い発現率(ダウンレギュレーション)は、スペクトルの青の部分に現れ、1より高い発現率(アップレギュレーション)は、スペクトルの赤の部分に現れる。市販のコンピュータソフトウェアプログラムが、このようなデータを表示するために利用でき、それらには“GeneSpring”(Silicon Genetics, Inc.)、“Discovery”および“Infer”(Partek, Inc.)が含まれる。
遺伝子発現を決定するためにタンパク質レベルを測定する場合、結果的に適当な特異度と感度とをもたらすならば、本分野で既知の任意の方法が適している。例えば、タンパク質レベルは、タンパク質特異的な抗体または抗体フラグメントを結合させ、抗体結合タンパク質の量を測定することによって測定することができる。検出を容易にするために、放射性物質、蛍光物質、または、他の検出可能な試薬で、抗体を標識することができる。検出方法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫ブロット法が含まれるが、これらに限定されない。
また、本発明の遺伝子発現プロファイルを、診断、予後、または、治療観察で有用な、他の非遺伝的診断法とあわせて用いることもできる。例えば、いくつかの環境では、上記で説明した方法に基づいた遺伝子発現の診断力を、血清タンパク質マーカーのような従来マーカーからのデータと組み合わせることが有用である。このような方法の1つにおいて、血液を治療患者から定期的に採取し、その後、アルブミンのような血清マーカーについて酵素免疫測定を行う。マーカーの濃度が、ストレスまたは炎症に関連した反応の見込みを示唆する場合、遺伝子発現分析に適しているサンプル原料を採用する。このアプローチは他の試験法があいまいな結果を生じる場合に、特に有用でありうる。
本発明にしたがって作られるキットには、バイオマーカーの発現を決定するためのフォーマット化された解析が含まれる。これらには、バイオマーカーを解析する試薬、使用説明書、媒体のような、解析を実施するために必要とされる材料のすべて、または、一部が含まれうる。
本発明の物品には、疾患を治療し、診断し、予後し、さもなければ、評価するために有用なバイオマーカー発現の説明が含まれる。これらのプロファイルの説明は、コンピュータで読み取り可能な媒体(磁気的、光学的、同様の媒体)のような、機械により自動的に読むことができる媒体へ変換される。物品には、このような媒体で遺伝子発現プロファイルを評価するための使用説明書も含まれうる。例えば、物品は、上記の遺伝子ポートフォリオについての遺伝子発現プロファイルを比較するためのコンピュータの使用説明書を有するCD-ROMを備えてもよい。物品はまた、デジタルに記録した遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それらを患者サンプルの遺伝子発現データと比較してもよい。あるいは、プロファイルを異なる表現フォーマットで記録することができる。図形的な記録はこのようなフォーマットの1つである。例えば、上記のPartek, Inc.の“DISCOVERY”および“INFER”ソフトウェアに組み込まれているような、クラスタリングアルゴリズムは、このようなデータの視覚化に、最も良く役立つ可能性がある。
本発明にしたがった異なる種類の製造物品は、遺伝子発現プロファイルを明らかにするために用いられる媒体、または、フォーマット化された解析である。これらは、例えば、マイクロアレイを含むことができ、そのマイクロアレイにおいて、相補配列またはプローブは、マトリックスに貼り付けられる。そのマトリックスには、目的の遺伝子を示す配列が結合して、それらの存在の読み取り可能な決定因子を生成する。あるいは、本発明による物品を、ストレスまたは炎症に関連した反応を予測し、または、観察するための目的遺伝子の発現レベルを示すハイブリダイゼーション、増幅、シグナル形成を実施するための試薬キットへと作り上げることができる。
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した発明を例示するものであるが、限定するものではない。本明細書において引用されたすべての参照文献は、参照により本明細書に組み入れる。
〔実施例1〕
体外フォトフェレーシスは、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の緩和治療のために米国で許可され、CTCL、および、免疫介在性病状(移植片対宿主病、全身硬化症、関節リウマチ、クローン病、HIV、および、固形臓器移植を含む)の治療のために欧州で許可された革新的な免疫細胞治療である。Suri et al. (2006)参照。Therakosフォトフェレーシスは、閉じたループで、無菌の患者に連結した点の治癒アフェレーシス機器を採用しており、その機器は、循環末梢血単核球(PBMC)の約3〜5%を採取し、単離する。収集した細胞は、ex vivoでUV感作薬剤8−メトキシソラレン[UVADEX(登録商標)]とともに処理されて、その後、UV-A暴露によって活性化され、患者に迅速に戻される(図1を参照のこと)。ECP処理細胞は、その後アポトーシスにより(プログラム細胞死の形態で)死滅する。アポトーシス細胞(AC)の静脈内再注入は、サイトカインの調節、寛容原性樹状細胞(DC)の生成、およびTregの生成を通じた免疫反応をダウンレギュレーションすることが示されている。Meloni et al. (2007)参照。
〔実施例2〕
≪マウスのモデルにおけるECPの抗炎症作用≫
マウスでは、ECPがOVAにより誘導される気管超反応性と関連する炎症過程を低減することを示している。図2で示されているように、ECP処理細胞の用量を増やすことは、OVA感作マウスへの抗原誘発試験後、気管制限(左パネル)、および、炎症性病状(免疫細胞浸潤物、右パネル)を低減するような用量依存的な能力を有する。これらのマウスのモデルの両方について、ECP用量および治療頻度が、研究されている。収集的にデータは、特に、明らかな免疫反応の確立の前にECPを行う場合、ECP細胞用量および治療頻度を増加させることがより良い転帰と関連していることを示している。
〔実施例3〕
≪マウスの糖尿病のモデルにおけるECP≫
マウスの糖尿病モデルでは、ECPの有効性が報告されている。Marks et al. (1991)参照。前者の研究は、ECP処理細胞の週当たりの送達を用いて、NOD/Ltマウス、および、シクロホスファミド処理NOD/Wehiでは糖尿病の発生率が低減することを示した。ネズミ科の糖尿病モデルにおけるECPによる我々の実験も同様であった。すい臓損傷が確立し、マウスが明らかな糖尿病の症状を見せ始めた後、NOD/LtJマウスを、11週齢から、週当たりに1度1000万細胞により処理した。Turley et al. (2003)参照。それにも関わらず、ECP処理動物は、未処理NOD対照よりも低いグルコース濃度を有している(図3、上パネル)。この図のはめこみは、20週齢の未処理動物における糖尿病率は60%であるが、ECP処理動物9体中2体のみ(22%)が糖尿病であるということを示している。ECP処理動物は、他の点でもより健康的である。多渇症およびポリ尿素は、ECP処理マウスで低減するか、不存在であり、ECP処理動物は体重が正常に増加する。しかしながら、未処理NOD/LtJマウスは、顕著な体重減少を示している(図3、下パネル;最大平均体重の平均8%未満まで減少)。
〔実施例4〕
T1DMの複数の低用量ストレプトゾトシン(STZ)モデルで、すい臓の損傷を妨げるようなECPの能力を試験するための研究を行った。NODモデルのように、STZの最初の用量の投与と相対的に-7、-3、0日、または、-3、0、+2日に、1000万個のECP処理細胞で処理したマウスでは、血液グルコース濃度が対照よりも低い。この実験結果は、化学的に誘導した糖尿病に対して、ECPが実質的な防護を提供しうることを示している(p=0.1、n=5〜7)。図4参照。
〔実施例5〕
≪ECPによる免疫耐性の誘導≫
細胞のアポトーシスは、健康な生物においてでさえ、極めて一般的な事象であるし、発生および組織維持における重要な機能に役立っている。Krysko et al. (2006)参照。アポトーシスおよび他のプログラム細胞死の形態は、損傷または感染の結果生じうるネクローシス死から多くの点で区別される。このような区別の1つは、免疫系の観点で、非常に重要である。ネクローシスのように、他の細胞内内容物の放出を伴う細胞死は、炎症反応を引き起こす傾向がある。この過程は「危険シグナル」が炎症を導くものであるが、炎症反応を引き起こすことなく、食細胞がACを除去する恒常性系と対比される。Matzinger (2002)参照。事実、ACの除去は、拮抗反応(opposite response)、すなわち免疫耐性を誘導する。この過程を促進するメカニズムは不明なままであるが、近年のデータは、耐性誘導の2つの鍵となる成分を強調している。
ACは、患者に常在する抗原提示細胞(APC;例えば、iDC、マクロファージ)により除去される。この過程により、急速にACが除去され、DC成熟を活発に抑制するようにシグナル伝達する細胞表面レセプターの関与が導かれ、共刺激分子および炎症誘発性サイトカインの発現が減少する。Mahnke et al. (2003)、Morelli et al. (2003)参照。また、抗炎症性サイトカイン産生における増加、および、Tregの誘導があり、それらのすべてが免疫耐性に介在する。
アポトーシス細胞のこれらの生物学的特性は、日常的に、ECPとともに治療的に利用され、DC活性化/成熟を制限し、それによって有害なT細胞反応をダウンレギュレーションする。ECPの作用メカニズムを説明する最近の仮説は、図5に概説されている。ECPは、免疫調節効果を導くと考えられており、修復および解決に影響を与えるような内因性システムを得る。
〔実施例6〕
≪ECPのMOAのin vitro研究≫
このメカニズムを支持する証拠は、in vitroのECP処理細胞によるDC機能の調節を試験する研究において見られる。in vitroで成熟するようにCD40リガンドで刺激された休眠iDCは、ECP処理細胞とともに共培養し、細菌性リポ多糖類(LPS;図6、左パネル)で刺激された場合、減少したレベルのIL-12を産生する。同様の結果が、IL-1β、IL-6、TNFαを含む他の炎症誘発性サイトカインについて見られる。逆に、活性化したDC培養物へのECP処理細胞の添加は、抗炎症性サイトカインTGFβの産生を刺激して増加させる(図6、右パネル)。このように、抗炎症効果は、両義的であり、炎症誘発プロセスおよび抗炎症プロセスの両方を変化させる。
〔実施例7〕
≪in vivo研究≫
ECPのモデルはマウスで開発されており、生きた動物の研究をin vitroモデルと組み合わせることができる。例えば、ECP処理したACを静脈内に投与されたマウスの脾臓から単離したAPCは、同種T細胞とともに共培養した場合、MLRを刺激する能力が減少することを示している。同様に、同種ヒトT細胞は、未熟DCおよびT細胞をECP処理細胞と共培養した場合、確実には増殖しない。このようなAC「摂取」は、DCにおける寛容原性の表現型を誘導し、T細胞反応を刺激する能力を減少させる(図14、図15を参照のこと)。
マウスおよびヒトにおいて、AC注入がTregを誘導するという証拠がある。Maedaおよび共同研究者は、接触過敏性のモデルにおいて、TregがECPの免疫調節に介在するということを示した。Maeda et al. (2005)参照。Kleinclaussと同僚は、アポトーシス細胞の静脈内送達が、移植片対宿主病のネズミのモデルにおけるTGFβ依存性Treg細胞増加を誘導することを報告した。Kleinclauss et al. (2006)参照。ヒトでは、CD4+CD25+細胞のアップレギュレーションが、ECPで処理した固形臓器移植患者において見られる。Lamioni et al. (2005)参照。我々は、ECP処理細胞が、in vitroのTreg生成を促進しうることを示している。Strobl et al. (2006)参照。Tregは、免疫反応を活発に抑制することにより、末梢耐性を維持する。Tang et al. (2006)参照。6〜8日間のECP処理細胞とナイーブヒトT細胞との共培養は、MLRでのT細胞増殖およびIFNγ産生を抑制することのできるT細胞集団を生成させる。このことを図7に示す。ECPにより生成されたTregは、IL-2の添加により逆転しうる、アネルギー表現型を発現する。
〔実施例8〕
≪全身性ストレス反応およびECP誘導性免疫耐性≫
T1DMは、すい島を浸潤するT細胞およびマクロファージにより、インスリン産生性すい臓β細胞の自己免疫破壊から生ずる。Barker (2006)参照。このβ細胞の破壊において鍵となる因子は、免疫耐性の崩壊である。現在、糖尿病誘発性T細胞反応を標的とする試験された免疫抑制治療が数多く存在する。T細胞を標的とするシクロスポリン、hOKT3γ1(Ala-Ala)、抗CD3、ラパマイシンは、T1DMの患者の臨床研究において効果を示している。Staeva-Vierira et al. (2007)参照。しかしながら、これらの戦略の多くは、慢性的な免疫抑制を誘導するか、またはそれらの使用を制限する毒性と関連付けられている。耐性を誘導し、自己反応性T細胞を特異的に制御する治療法は、T1DMを防ぐための魅力的な選択肢である。Battaglia et al. (2006)参照。特に、in vivoでTregの作用を標的とする治療戦略は、治療のために魅力的な選択肢を提供する。
ここで、ECPは低いレベルの環境ストレス因子として作用し、急性期反応と同種の反応を導くことが示されてきた。この筋書きにおけるECPの治療効果は、「ストレス調整」の形態に起因し、ECPが追加的な損傷を妨げ、回復を目的とするような適応反応を誘導する。1型、2型糖尿病において共通の疾患を引き起こす終点(すなわち、β細胞アポトーシス)にも関わらず、異なる因子が、糖尿病の各発現における最終産物を促進する。Eizirik et al. (2001)、Cnop et al. (2005)参照。環境ストレス因子は、両方の疾患において役割を果たし、増強されたストレス反応性は、細胞内の病原過程を変化させるかもしれないことを示唆している。Dahlquist (2006)、Ludvigsson (2006)、Knip et al. (2005)参照。ECPは、このように、持続したストレスに対する不適応に起因する疾患(糖尿病を含む)を治療することにおいて効果的である。
環境ストレス因子および細胞ストレス因子は、免疫機能において有意な影響を与える。中枢神経系(CNS)は、免疫反応、すい臓機能、糖尿病誘発剤に対する細胞の感受性を調節することが示されており、全身ストレス反応と細胞効果との間の密接な関連性が示されている。Flesner (2005)、Ader et al. (1992)、Morrell et al. (1988)、Coskun et al. (2004)参照。免疫系および中枢神経系間の関連は、よく確立されており、免疫性における慢性ストレスの抑制効果によって、最もしばしば示されている。しかしながら、「炎症反射(inflammatory reflex)」の変化しにくい関連は忘れ去られており、それにより、感染および組織損傷は、闘争または逃走反応の構成要素を急速に活性化し、先天性免疫を一時的に高める。Baumann et al. (1994)、Baumann et al. (1990)参照。主要な調節システム間のこの相互作用は、機能不全および疾患に対する機会を提示するが、介入治療および治癒についての機会も与える。このセクションでは、ECPが全身ストレス反応系を調節することができ、それにより免疫機能を変化させるという証拠を提示する。
典型的な全身ストレス反応は、視床下部の下垂体−副腎系(HPA)軸および他の神経内分泌経路の活性化を伴う。これらは、よく理解された過程であり、闘争または逃走反応の予測可能な全身反応を導く。外部刺激(例えば、戦闘、捕食からの逃走)に対する反応として最も共通に見られるように、これらの経路の活性化は、ストレス因子が内部に起因する場合と、実質的に同一である。例えば、心理学的認知(および、誤認)による神経内分泌ストレス反応の活性化が、ブッシュの中の想像上のライオンに対するのと同一の生理的反応を生み出す可能性があり、同じ方法により免疫システムに影響を与えることができる。Rohleder et al. (2006)、Jara et al. (2006)、Leonard (2005)、Gold et al. (2005)参照。
ストレスおよび炎症は、エネルギー集約的なプロセスである。マウスで、エネルギー代謝の内分泌マーカーに対するECP処置の影響を試験した。Luminexプラットフォーム上で、マルチプレックスイムノアッセイを実施し、59個の検体を一斉に試験した。ストレス調整仮説と同じく、数多くの検体の循環濃度が、ECPにより、治療計画に応じて変動する用量依存的な方法で、影響を受けた。この仕事の大部分は、マウスの肺炎症モデルでなされ、それにより、後の抗原誘発試験由来の炎症を避けるための予防として、ECP「事前前処理」を試験した。
この研究において、喘息様の反応を引き起こすために、動物を感作し、その後OVAで誘発試験した。生理的試験および組織収集を、炎症誘発試験後72時間で実行した(すなわち、ECP処理細胞の最終用量後96時間)。様々なECP療法を、炎症を低減することのできる能力について試験した。これまでに図2において示したように、このモデルでは、ECPが、気管過敏反応性および肺炎症における細胞用量依存性の低減を導く。図8は、別々の実験から得られた結果を示している。週当たり1回の5000万個のECP処理細胞用量を、感作と誘発試験の間、22日間の様々な時期に与えた。ここでは、3つのECP療法すべてが、生理的病状および炎症病状のいくつかの異なる測定を反映した予防治療として、異なる程度で効果的であった。
予期しなかったことに、炎症性バイオマーカーのプロファイルにおけるECPにより誘導される変化は、急性期反応(APR)と似通っていた。血清C反応性タンパク質(CRP)、成長ホルモン(GH)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、およびハプトグロビンは、ECP依存性の方法ですべて変化した。図示していないが、組織損傷、感染症、および、他のストレス因子に反応してアップレギュレーションされる、陽性の急性期タンパク質(APP)レプチン、白血球抑制因子(LIF)、インスリン、フィブリノゲンもまたECPによって影響を受ける。Baumann et al. (1994)参照。レプチンは、脂肪塊および満腹を調節するその役割に加えて、推定される炎症誘発性のアディポカインである。Materese et al. (2005)参照。全身炎症反応により変化することが知られている追加的な炎症誘発性、血管作用性、止血性タンパク質が、組織因子(TF)、第7因子(F7)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)を含むECP反応性を示した。
すべてのECP療法がこれらのAPPに影響すること、また、ECP投与の時期が重要であることは、これらのデータから明らかである。等しい細胞用量の4つの処理が、OVA誘発試験よりすぐ前の連続した日に与えられた場合、感作と誘発試験との間が3週間より長くなった場合よりも、バイオマーカーに対してより大きな影響があった。珍しいことに、OVA誘発試験の日に、また、隣接した2日間にマウスを処理することが、これらのECPバイオマーカーのほとんどに対して、最も大きな影響があった。興味深いことに、より早期の療法のバイオマーカープロファイルは、ECPの6用量までを、感作後11日以内に与えた場合、処理回数に関わらず、週に1度の療法と差がなかった。それらのプロファイルは再び、APRと似通っていた。同様の細胞用量および療法に依存した、血清バイオマーカーに対する効果が、マウスの他の炎症性疾患のモデルにおいても再現された。それらのモデルの変動には、接触過敏感性、低用量LPS、同種気管輪移植、および健康なマウスでさえ含まれていたが、そのことは、所与の炎症性発作のモデルよりもむしろ、ECPの結果生じた現象であることを示唆している。
APRが、代謝要求を増加することが期待される。そのため、増加した代謝を反映するような、関連したAPPバイオマーカーに着目した。Richardson et al. (2003)参照。APPの発現を調節することが知られているインスリン、および、グルカゴン、別のAPPを、肺炎症のモデルにおいて測定した。Campos et al. (1992)参照。未処理マウスと比較して、鼻腔内OVA誘発試験後72時間のECP処理マウスにおいて、血清インスリンおよびグルカゴンが減少した(図9、それぞれ、n=18〜21、p<0.01、0.05)。
OVA誘発試験後72時間の、ECP誘導性バイオマーカープロファイルは、陰性対照とは異なってはいないが、未処理動物では、インスリンとグルカゴンの両方で上昇を示している。これらのバイオマーカープロファイルは、炎症で処理に関連した減少とともに同時に起こるが、72時間後の事後誘発試験サンプルが、対照よりも、より急速に回復するECP処理動物を含むこのモデルにおける処理群の回復期を反映するということを提案させた。同一モデルにおけるより早い時点でのサンプリングにより、この理論を直接試験した(図10)。
これらの結果は、陰性対照と比較した場合、ECPが循環インスリン(左パネル)およびグルカゴン(右パネル)の増加を誘導することを示している。これらの検体は、陰性対照動物と比較して、陽性対照およびECP処理動物の両方とあわせて生ずる。図9に見られるように、両方のバイオマーカーは、ECP処理マウスでは72時間までに基準に戻るが、その時点の未処理対照動物では、解決のきざしは全く見られない。
エネルギー代謝で拮抗作用を有する、2つのすい臓ホルモンでの、この同時の上昇には、まず矛盾があるように思われた。インスリンは同化ホルモンであることが広く知られているが、グルカゴンは一般的に異化作用の促進因子と考えられている。1970年代初頭の報告が、部分肝切除術のラットの回復を助ける際に、インスリンおよびグルカゴンの相乗効果を示したし、その後の研究は、内毒素注入、または、盲腸結紮および穿刺という2つの敗血症のモデルの後、エピネフリン、ノルエピネフリン、グルカゴン、コルチコステロンの血漿濃度の上昇を示した。Bucher et al. (1973)参照。それらのモデルにおける血漿グルカゴンの増加は、その後のTNF-α、IFN-γ、IL-6の発現と相関しており、高血糖症、および、炎症の間の増加した組織グルコースの摂取のための、同時の必要性を管理するように、グルカゴンが、肝臓グルコース代謝を変化させるかもしれないということを示唆した。Bucher et al. (1975)参照。
また、LPSおよびサイトカインにより、レプチン分泌が増加することが知られている。血清レプチンを試験し、このモデルでは、少なくとも1週間上昇したままの後のピークを有するにも関わらず、増加することが観察された(図11)。血清レプチンに対するこれらのECP依存性効果もまた、APRに似通っている。次に、レプチン放出のタイムコースを決定するために、図10で示したのと同一のサンプルで、レプチンのプロファイルを試験した。レプチンは再び、未処理マウスとECP処理マウスの両方で、基準を超えて増加している。発表されたプロファイルと同じく、IL-1β、およびTNFαのような早期反応遺伝子よりも、APRのレプチンのピークは遅かった。Bornstein et al. (1998)、Granowitz et al. (1999)参照。
したがって、これらの内分泌が、炎症およびその解決の間消費されるエネルギーの単なる反映として影響を与えた。言い換えるとメカニズムに基づく結果というよりむしろ、これらの観察は、ECP活性の単に間接的な結果である。インスリンは、抗炎症ホルモンであると予想されているが、GHおよびレプチンの増加は、抗炎症治療反応と矛盾するように思われた。Viardot et al. (2007)参照。このことから、我々はまた別の仮説を考察した。
これらのデータを考慮すると、ECPそれ自体は、穏やかで一過性の、APRとはちがう、炎症誘発性効果を誘導しており、治療的な「ストレスを調整すること」に役立つかもしれない。このことが実験的に示された。ECP処理細胞を健康マウスに注入し、同一のバイオマーカーを試験した。図12の結果は、インスリン、レプチン、グルカゴンはECP処理マウスでは、陰性対照と比較して、上昇することを示している。これらの変化のタイムコースは、最大濃度が処理後24時間で現れ、48時間までにほとんど完全に分解する。これは、ECPにより誘導された変化が最後のECP処理後48時間でピークに達する炎症モデルで見られるタイムコースとは異なっている。
コルチゾル(CORT;げっ歯類におけるコルチコステロン)は、APRにおいてレプチンと相関する別の急性期反応物である。Faggioni et al. (1999)参照。CORTはまた、この実験で測定され、他の3つのバイオマーカーとあわせて上昇する。ここで示されたようなコルチコステロイド放出は、闘争または逃走反応が活性化されたという典型的な兆候である。Harbuz (2002)参照。CORTはこのように、全身ストレス反応および中枢神経系に重大な関連があり、それにより、末梢循環へのACの注入が、多くの別々の組織および疾患に影響を与えるようなメカニズムを示唆している。
これらのマーカーとECPのMOAとの間の関連を補強するために、次に健康マウスにおけるバイオマーカーの用量反応関係を試験した。図13は、CORT(左パネル)、インスリン(中パネル)、レプチン(右パネル)に対する異なる数のAC注入の影響を示している。すべてのサンプルを、ECP後24時間で収集した。他のメカニズム−近接バイオマーカーとともに生ずるように、これらのホルモンは、暴露に比例して、ここでは、細胞用量を反映して変化する。Colburn (2003)参照。
このように、ECPがマウスにおける、一般的な闘争または逃走および急性期反応を思わせる全身ストレス反応を誘導するという証拠を提供してきた。次のセクションでは、ECPを細胞ストレス反応と関連付け、ECP誘導ストレス調整のための作用メカニズムのモデルを提供する。
〔実施例9〕
≪ECPをストレス反応に関連させる分子的、細胞的な証拠≫
全身性ストレス因子が臓器、組織、細胞における変化に影響を与えうるという考えにはつきものであるが、全身性ストレスが、それらの修復反応を誘導するメカニズムであるということである。豊富な証拠は、ストレスホルモンが闘争または逃走刺激、低い重要性のシステムから離れたエネルギー源に再び接近するということ、に反応して、エネルギー代謝に影響を与えることを示している。カテコールアミンおよび他のストレス介在因子に対するこれらの全身性反応は、細胞レベルでのレセプター介在性事象に起因し、生物レベルにおける適応変化を導く。
個々の細胞は、全身ストレス反応を反映した方法で、局所的環境変化に対して反応する。細胞内の闘争または逃走反応として説明されうるものの所与の誘発試験に最も良く適応するように、細胞は、それらのエネルギー使用および原料配分における根本的な変化を起こす。前者の戦略経路は細胞適応を導き、それにより、新たに変化した環境要求に適合するように、構造的、機能的変化を「戦いへ参加」させる。後者(逃走)は、細胞警告シグナルを誘導し、局所的な、または、全身的な炎症を導く。修復プログラムに加えて、これらの反応は、適切な調整に失敗した細胞のアポトーシス死を導きうる。Marciniak et al. (2004)参照。この「逃走」の形態は、これらの原料を、回復過程のために、生物に利用可能にする。
この反応の全身バージョンは、短期間のエラーの余地を残したままにするが、この点において、細胞は非常に保守的である。損傷反応チェックポイントを通過することにおけるわずかな遅れでさえ、正常細胞にアポトーシスを引き起こす。これは、細胞生物学のサムライ法則と呼ばれており、「悪いよりも死んだ方がよい」というものである。Skulachev (2001)参照。恒常性を維持するために、ECPに対するこれらの回復および適応反応は、影響を受けた細胞ごとに起こるにちがいないし、ストレスにより誘導された環境変化の検出後に生じる。これらの2つの恒常性の終点のいずれかに適合できないことは、糖尿病および他の慢性疾患の根本的な原因である。Marciniak et al. (2006)参照。
タンパク質翻訳の過程、特にリボソーム生合成およびペプチド伸張は、細胞において最もエネルギー集約的な過程である。ストレスに関与し、修復を試みるために、細胞は一般的に、「本質的ではない」タンパク質の翻訳を停止し、異化的なエネルギー使用にむけて移行し、上昇した生合成能力を確立する。資源を節約するために、原料における通常の環境変動に直面して、この機能を実行するシステムは、ストレス因子に直面した恒常性の維持における追加的な役割を果たしているように思われる。少なくとも3つの栄養感受性システムが、この役割を満たすように明らかにされてきた。ER依存性非折り畳みタンパク反応(UPR)および、ラパマイシンの哺乳類の標的(mTOR)およびヘキソサミン生合成経路(HBP)が介在するERから独立した反応は、様々なストレス因子に反応して活性化する。このセクションでは、これらの経路を説明し、ECP活性におけるそれらを示唆する証拠を紹介する。
<非折り畳みタンパク質反応>
T1DMのようなタンパク質折り畳み疾患は、細胞ストレス反応、特に進化的に保存された「非折り畳みたんぱく質反応(UPR)」における機能不全の結果生ずる。Harding et al. (2004)参照。小胞体(ER)ストレス反応と時折呼ばれる、典型的なプログラムは、ER常在タンパク質によって制御され、一般的に細胞の恒常性を逆転することができる。この過程は、所与の組織が影響を受けた細胞でくり返される場合、環境障害からの組織の回復を促進しうる。UPRは、健康な組織においても同様に役割を果たし、正常細胞に対する要求を高める外部シグナルにより、UPRを開始することができる。例えば、急性のB細胞レセプターに結合する抗原は、細胞を活性化し、抗体分泌血漿細胞へと発達させ、増殖させる。このことは、細胞の生合成機構の主要な「一新(re-tooling)」を要求し、UPRを開始するストレス因子として役立つ。Iwakoshi et al. (2003)参照。
UPRは急速反応系であり、eukaryotic initiation factor 2α(EIF2α)のリン酸化を仲介し、翻訳を停止する。Harding et al. (2003)参照。翻訳機構のこの構成因子は、「キャップ依存性翻訳」の開始に必要であり、それは、ほとんどの細胞タンパク質の産生を制御する。Kozak (1999)参照。遺伝子のサブセットは、mRNAを翻訳するために、内部リボソーム侵入部位(IRES)を用いたキャップ独立性システムによって翻訳される。Hellen et al. (2001)参照。このようなIRES翻訳は、UPRを促進する遺伝子に見られ、一般的には、原材料、翻訳の、および、翻訳後の質的制御に関与するタンパク質、抗酸化防御システムの利用可能性を高めるような生合成酵素、膜貫通チャネル、トランスポーターをコードする。Komar et al. (2005)、Lin et al. (2007)参照。
少なくとも4つの異なる経路が、UPRの異なる構成因子を開始するために、EIF2αのリン酸化を導く。例えば、抗酸化能力をアップレギュレートすること、および、特定の下流のUPR反応遺伝子は、統合されたストレス反応(ISR)として知られる過程によって制御されており、activating transcription factor 4(ATF4)が介在する。PERKはEIF2α不活性化キナーゼであり、キャップ依存性翻訳の抑制を促進して、翻訳におけるATPの要求を低減させ、かつ本質的でないタンパク質を折り畳む。タンパク質二次構造調節、および、誤って折り畳まれた翻訳産物の分解に関与する特異的な遺伝子をアップレギュレートするために、IRE1およびATF6は、追加的なUPR反応を開始する。超急性ERストレス、または、これらの経路の長期的な活性化は、過加重の、または、ストレスを受けたすい臓β細胞におけるように、いくつかの異なる経路によってER依存性アポトーシスを導く。Szegezdi et al. (2006)参照。継続したERストレスに直面したこれらの修復およびアポトーシス事象の失敗が、UPR疾患の病状の根底にある因子かもしれない。この提案の1つの目標は、UPRがin vitroでの免疫耐性の調節に果たす役割を、より良く理解することである。
<HBPおよびmTORは、UPR独立性細胞ストレス反応に介在する栄養および環境ストレスセンサーである>
キャップ依存性翻訳はまた、UPRシグナルとは独立した、別のストレス反応性シグナル伝達経路によっても制御される。明らかに、翻訳に対するこれらの代替的な効果のほとんどは、mTORが介在しており、ラパマイシンの標的である、細胞成長および増殖の制御に中心的に機能するホスファチジルイノシトール3-キナーゼ関連タンパク質キナーゼとしても知られている。Sarbassov et al. (2005)参照。mTORは、数多くの栄養および成長因子センシングシグナル伝達経路の下流に存在し、細胞の大きさ、細胞分裂、リボソーム生合成および栄養利用性を変化させるタンパク質生合成機構の重要な要素を制御する。mTORによる翻訳開始複合体の鍵と成る成分のリン酸化は、キャップ依存性翻訳を進行させることができる。
mTORシグナル伝達の栄養およびストレス感受性の性質は、細胞内プロセスがその環境に適切に適合することを確実にすることにおいて鍵となる役割を果たしている。栄養感受性経路は、mTOR活性またはその標的の局在を変化させることが知られており、翻訳制御に別のレベルの複雑さを加えている。上流シグナルには、Akt(インスリンの生存キナーゼエフェクターであり、成長因子レセプター)、および、AMPK(細胞のエネルギー利用可能性のセンサー)が含まれる。Reioling et al. (2006)参照。図14は、AC取り込みを、mTORシグナル伝達に関連付ける証拠を示している。異なるAC:DC比率で、DCをACとともに共培養した(横軸に記載)。細胞を様々な時間でインキュベーションし、S6キナーゼリン酸化、すなわち、mTOR活性の測定を、フローサイトメトリーにより測定した。Hinton et al. (2004)参照。両方のパネルは、iDCおよびmDCにおける細胞用量依存性効果を示している。興味深いことに、これらの反応では、明らかにDC成熟状態依存性の違いが存在する。
UPRおよびmTOR経路は直接に栄養利用性によって影響され、ストレスによって間接的に影響を受ける。Carreterp eta (2007)参照。ヘキソサミン生合成経路はこのようなシステムの第3番目のものである。HBPは、グルコースの細胞内濃度に正比例して活性化される。Love et al. (2005)参照。HBP活性化の最終結果である、O-GlcNAcによるタンパク質の修飾における増加は、糖尿病と関連した病状を生ずる。Amdra;o etal (2007)参照。このように細胞は、細胞内グルコースの利用可能性および、この経路を用いた様々な細胞ストレス因子に対して感知し、反応しうる。HBP活性化の1つの結論は適応である。HBPはこの反応を制御し、ストレス調整に介在する。
<栄養感知経路を経由したストレス調整>
ストレス因子およびグルコースはHBP活性を高め、後のストレスに対する耐性を高める。Zachara et al. (2004)参照。グルタミン:フルクトース−6−ホスフェートアミドトランスフェラーゼ(GFAT)はHBPにおける第1の律速酵素であり、グルコースおよび満腹感知において役割を果たしている。Cooksey et al. (2002)参照。UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GluNAc)のGFATを介した生成は、タンパク質の翻訳後N-及びO-結合グリコシル化のための重要な前駆体を提供する。Buse (2006)参照。1つのこのような反応は、成熟タンパク質のセリン残基およびトレオニン残基への単糖GlcNAcの添加を伴う。これは、HBPの鍵となる酵素であるO-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)により促進され、タンパク質の三次構造と、タンパク質キナーゼへの、これらのセリン/トレオニン残基および隣接部位の接触可能性の両方を変化させることができる。Yang (2005)参照。これらの事象は、特定のシグナル伝達カスケードにおけるOGT基質の参加を調節し、細胞内における局在を変化させる。後者の結果は、タンパク質−タンパク質相互作用、特にレクチンと細胞シャペロンとの相互作用の変化のためである。Guinez et al. (2004)参照。このことは、遺伝子制御および/または翻訳における、それらの参加能力に影響を与えることができる。このことの顕著な例は、プロテアソーム活性、および、様々な転写因子の局在での、HBP活性化の抑制効果において見られる。Gao et al. (2003)参照。高血糖症は、HBP活性を高め、すい臓転写因子である神経D1のO-GlcNAc内容物を増加させる。このことが、神経D1の局在に影響し、それにより、インスリン遺伝子転写を高める。
HBPおよびUPRの直接的な関連は説明されていないが、HBPは翻訳を、少なくとも間接的に変化させることができる。HBPは、mTORの下流のシグナル伝達を変化させることが示されており、α4の細胞内局在に影響を与えている。このタンパク質は、mTORの基質であり、p70S6キナーゼおよびJAK/STATシグナル伝達経路の構成要素を調節するために、特定のホスファターゼと複合体形成し、制御するものである。Dauphinee et al. (2005)参照。α4は核局在シグナルを欠いているので、細胞質および核の間の分配は、タンパク質−タンパク質相互作用により制御されている。これらの相互作用の崩壊は、HBP活性化の結果生ずる修飾とともに起こり、α4を細胞質の中に残し、翻訳を調節しないようにすることができる。
これらの栄養感知システムはストレスに感受性であり、UPRのように、材料の必要性および利用性に適合するよう、細胞の機能を変化させることができる。別のERストレス反応システムと同様に、mTORおよびHBPの一過性の調節は、後のストレス因子を防護する。例えば、様々なストレス因子は、in vitroでのHBP活性を変化させ、HBP活性の薬理的擬態は、適応的調整効果を有する。近年、ラパマイシンが、事前調整効果を誘導するのと同様に、おそらくp70S6キナーゼおよび自食作用についての効果を通じて、後のアポトーシス誘発性ストレス因子を防護することが知られている。Ravikumar et al. (2006)参照。このことは、特に、HBPとmTOR活性の両方と関連している糖尿病に関係している。Marshall (2006)参照。mTOR経路は、栄養介在性シグナルのための重要な制御点を占めており、すい臓の発達と機能において役割を果たしている。Bussier et al. (2006)参照。
栄養/ストレス反応を免疫機能に関連させている更なる証拠が、MLRを用いて得られた。HBP、OGT、O-GlcNAc選択性N-アセチル-β-Dグルコサミニダーゼ(O-GlcAcase)(タンパク質からO-GlcNAc部分を添加し、除去する)における2つの鍵となる酵素を抑制することが知られている薬剤を用いた。O-GlcAcaseを抑制し、O-GlcNAc修飾を有する細胞タンパク質量を増加させることが知られている2つの抗生物質であるストレプトゾトシン(STZ)またはPUGNAcのどちらかの存在下でMLRを試験した。Arias et al. (2004)参照。両方の場合において、抑制因子はECPの治療効果を高め、ACの寛容原性性質を高めた。このことは、DCおよびT細胞についての毒性範囲よりかなり下の薬剤濃度で起こる。図15は、PUGNAcを用いた結果を示している。この薬剤は、あらゆる試験用量を通じて、MLRそれ自体に対しては全く感知できるほどの効果を有さず、それは解析における増殖抑制の不存在を反映している。しかしながら、ACが添加されると、ECPにより誘導された「寛容原性(tolerogenesis)」は、この一般的なAC反応よりも約50%まで高められる(30%未満の抑制;0 mM PUGNAc結果を参照のこと)。この発見は、O-GlcNAcaseの別の抑制因子であるSTZを用いて再現された。
免疫機能におけるHBPを示唆する更なる証拠が、拮抗酵素OGTがアロキサン(Allx、図16)を用いて抑制される場合に観察された。アロキサンは、PUGNAcと比較してMLRに対して拮抗効果を有し、mDCおよびiDCに異なる影響を与える。顕著なことに、iDCがAPCとして用いられる場合、AllxはMLRにおける増殖の効果を再現的に高める(左パネル)。mDCを用いた場合、アロキサンは実質的に、MLRに対して全く効果を有さない(不図示)。生存力の測定法として、アラマーブルー減少を分析した追加的な暫定データは、試験範囲の培養において、Allxにより誘導されたT細胞増殖の増加を示していた(図16右パネル)。表1を参照のこと。
Figure 2009535412
ECPの細胞性MOAおよび分子性のMOAにおける追加的な考察を求めて、マウスの炎症モデル由来の様々な組織におけるmRNAプロファイルを試験するために、Affymetrix遺伝子発現アレイおよび標準的なバイオインフォマティクス手法を用いた。二次リンパ器官において、プログラムされた細胞ストレス反応の一部としてしばしば変化する、遺伝子セット内の発現における明らかな変化を観察した。表1に示したように、最後のAC注入後96時間、ECPは、代謝経路に関わる遺伝子、タンパク質合成および加工に関わる遺伝子、および、ストレス反応経路(例えば、O-GlcNAcase)の発現を変化させた。このことは、ストレス反応経路が、ECPにより改善されることを更に示唆しているのだが、ECP反応における個々の遺伝子の役割を評価するために、追加的な実験が必要とされるだろう。
〔実施例10〕
≪治療的ストレス調整≫
タンパク質折り畳み疾患には、最もよく見られる慢性疾患が含まれ、高い程度の疾病率および死亡率と関連している。Xu et al. (2005)参照。これらの条件のほとんどについての効果的な治療法は制限されており、根底にある病因への低い理解の大部分はそのためである。タンパク質折り畳み疾患における衰弱および終局的に死に至る後遺症の多くには、炎症性要素が含まれることがますます明らかになっている。Yoshida (2007)参照。現存の治療法は、根底の原因を変化させることなく、炎症を制限することを一般的に目的としている。この手法の顕著な例には、UPR疾患およびその合併症における、ステロイド、NSAIDsおよび抗サイトカイン治療が含まれる。
より新しい戦略が、この炎症の根底にある原因を標的とするであろう(例えば、タンパク質凝固の予防、または、その除去の加速)。Boyce et al. (2005)参照。これらすべての治療とは限らないが、大部分は、全身毒性と関連するかもしれない外因性の治療化合物または生物由来材料を採用するだろう。ECPは、疾患に起因する機能不全およびその結果の炎症の両方を根本的に変化させる外因性材料を用いるという新しい手法を提供する。我々は、ECPが、ストレス反応経路を改善できる能力を通じて、ストレスと関連したUPR疾患の合併症を予防し、解決することができるという仮説を立てている。
細胞のストレス許容性を高めることにより、損傷した細胞成分を修復し除去することができ、疾患を解決することを助けることができる。Badin et al. (2006)参照。これは、誤って折り畳まれたタンパク質の分泌を助けるために過剰発現させた熱ショックタンパク質すなわち「化学シャペロン」を用いること、および、ER機能を改良するために細胞環境を化学的に改善することによることが示されている。Imaizumi et al. (2001)参照。これらの戦略が、タンパク質過剰発現システムおよび細胞株で成功を示してきたが、所与の誤って折り畳まれたタンパク質に対して、一般的に最適化されなければならない。ストレス調整療法は、同時に細胞ストレスの異なるタイプを緩和するような様々な細胞修復システムを得る、より大規模な手法を提供する。
細胞ストレス反応システムの同時の制御は、確立された実験治療法である。20年間の研究は、虚血性病状のみで、4000報を超える発表を示してきた。一過性の虚血は、最も一般的に研究される調整療法であり、実験は、心臓血管医療、神経学、固形臓器移植において効果を示している。Kuntscher et al. (2005)参照。それらの研究は、虚血および回復の短い期間の事前処理および事後処理によって、虚血/再かん流(I/R)損傷を劇的に減少させうることを示している。この手法はいまだ実験的ではあるが、その価値は疫学によって支持されている。なぜならば、一過性の虚血発作または不安定な狭心症によって進行する場合、卒中または心筋梗塞それぞれの後の組織損傷における減少が見られるからである。Liberato et al. (2005)参照。また異種のストレス因子を採用する場合にも、調整療法が、治療価値を有し、任意の治療調整療法により、種々の一連のストレス因子から防護するかもしれないことを示唆している。明らかに、離れた臓器または組織の調整が、全体の臓器に対して防護を与えることができることも示されてきた(遠隔調整として知られている効果)。調整は、心臓手術における臨床試験において試験されてきたが、おそらく現存の調整試薬および方法には潜在的な危険があるために、外科医が採用することは非常に限定されている。
<ECPはストレス調整療法として機能する>
患者における治療反応の時期、免疫機能の保存、およびTregの生成を示している臨床実験により、ECPが、炎症を軽減する新規の治療手法を提供することが示唆された。本明細書で説明した暫定データは、低いレベルのストレス因子として作用することにより、ECPの治療作用が適応反応を導くということを示唆している。薬理的証拠および生化学的証拠は、免疫耐性を調節する、いくつかは新規のものである、全身性ストレス反応システム、および、細胞内ストレス反応システムと関係している。ECPにより誘導される「ストレス調整」は、したがって、細胞、臓器、および、生物のよく説明されている適応現象ならびに習慣作用に利点がある。調整は、後のより強いストレス因子に対して防護を提供し、細胞および組織の構造ならびに機能において長く残る、保護的な変化を導きうる。これらの持続的な変化は、後のストレスから防護することに加えて、疾患の進行に対し劇的な影響を与え、修復プロセスを加速することができる。
特定の予測がこの仮説に起因し、様々なストレス因子に対して高められた細胞抵抗性、および、生物抵抗性が含まれる。我々は、ECPが、喘息の肺モデルでの抗原誘発試験、接触超感受性、および臓器移植からマウスを保護することを示した。化学ストレス、特にSTZの糖尿病誘発効果(図17、左パネル)に対する抵抗性は、ECPの治療的実用性を劇的に拡大する。細胞レベルでは、アニソマイシン誘導性リボ毒性ストレスに、ACとともに事前処理されたDCが、未処理対照よりもよく耐性を示すことを示している(図17、右パネル)。このように、ECPは、事前調整療法を規定する特徴を示している。注目すべきは、以上に示したNOD/LtJデータは、明らかなすい臓疾患が起こった後でさえ、ECPが保護的であることを示している。それらの実験は、ECPを用いた事後調整の例を提供する。
ともに考えられる場合、上記の現象は、UPR疾患についての新しい治療手法として、ストレス調整の潜在的な価値を指摘する。我々が考えているように、ECPがストレス調整治療法であるならば、ストレス誘導性疾患を予防し治療することにおいて、計り知れない実用性を有するだろう。我々が研究の別々の分野のいくつかを関連づけるつながりを認識した後に、この新規な概念が生じた。近年の発表では、特に、細胞レベルでのストレス調整を、上記で説明した細胞ストレス反応、および全身ストレス反応と関連させている。1つの研究では、例えば、マクロファージ細胞系が、様々なストレス因子に対して事前調整されて、培養中で生存を高め、機能を保存した。Lu et al. (2004)参照。上記に述べられたUPR-HPA軸関係と組み合わせられたこのことは、細胞ストレス反応を改善することが、病状の根底にある原因を解決することに加えて、後の誘発試験から防護することを示唆している。
<調整効果には免疫細胞が介在しうる>
免疫細胞が虚血性損傷の病原性介在因子であることはよく確立されている。しかしながら、虚血性事前調整におけるそれらの役割は不明確である。虚血的に事前調整したマウス由来の脾臓細胞の、T細胞欠損被移植個体への養子移植は、後の虚血性損傷から被移植マウスを保護する。Ascon et al. (2006)参照。これらの研究は、免疫細胞が防護的な虚血性事前調整反応の介在因子であることを強く示唆している。防護的な細胞は、この研究では明らかにされていない。しかしながら、以上に述べたように、全身ストレス反応の結果としてのTregの産生についての先例がある。MacConmara et al. (2006)参照。それゆえに、制御性T細胞集団が初期虚血後に生じて、移植されたTregが被移植個体における防護を提示することを可能にすることを提案することは当然のことである。
〔実施例11〕
≪Thrombospondin-1(TSP-1)が、ストレス反応、Treg、およびECPと関連している≫
組織構造および細胞機能の両方に寄与するマトリックス細胞タンパク質であるThrombospondin-1(TSP-1)は、傷または組織損傷、成長因子、栄養状態、および様々な環境ストレス因子に反応して、ほとんどの細胞で大量にアップレギュレーションされる。Murphy-Ullrich (2001)参照。TSP-1を含むマトリックス細胞タンパク質は、その環境について細胞に状況情報を提供すると考えられている。これは、免疫機能と関係がある。なぜならば、TSP-1は、強力な抗炎症性タンパクであり、抗原提示細胞およびT細胞により分泌され、それらを調節している。Doyen et al. (2003)参照。TSP-1がストレスに反応して細胞から分泌されたという事実と組み合わされたTSP-1の免疫調節特性は、ストレスと免疫性との間に、その分子を位置付けている。ここに、我々は、TSP-1がECPについての可能性のあるエフェクターであることを示す。
TSP-1はAPC上のCD36に結合し、T細胞上のCD47およびα4β1に結合する。Chen et al. (2000)参照。TSP-1は、食細胞がアポトーシス細胞を取り込むことができる能力を高め、その成熟および炎症誘発性サイトカインを産生することができる能力を抑制する。T細胞では、TSP-1は、TCRシグナル伝達を、IL-12に対する反応性と同様にダウンレギュレーションすることが示されている。Li et al. (2002)参照。TSP-1は、TGFβの主要な生理的活性化因子であり、近年、活性化されたヒトCD4+CD25-T細胞においてFoxp3+ Treg表現型を誘導することが示された。Grimbert et al. (2006)参照。Treg誘導は、炎症およびその損傷を含み、解決することができる。TSP-1ヌルマウスでは、創傷治癒の遅れ、抗炎症性反応の低減、TGFβレベルの減少が見られる。Agah et al. (2002)参照。
すい臓において、島細胞はTSP-1を発現し、TSP-1ヌルマウスは、炎症、島細胞過形成、腺房形成不全を示しており、それらはすべてTGFβ活性化の欠如に起因していた。Crawford et al. (1998)参照。TSP-1由来ペプチドで全身処理したTSP-1ヌルマウスのすい臓は、より正常な表現型に逆転した。これらの観察は、TSP-1がすい臓発達の重要な調整因子であり、この微環境内で免疫過程および外分泌過程について重要であるかもしれないということを示唆している。興味深いことに、近年、高血糖症はZucker糖尿病ラットの脈管構造におけるTSP-1の発現と関連していた。Raman et al. (2007)参照。TSP-1のアップレギュレーションは、HBPと直接に関連しており、TBP-1発現がグルコース濃度と比例していた。これらのデータから、TSP-1調節治療が、糖尿病のような疾患における病状の進行に干渉するという強い可能性がある。
TSP-1がアポトーシス細胞から非常にたくさん分泌されていることを我々だけでなく他の研究者達も示してきた。図18に示すように、TSP-1における細胞用量依存性の増加は、PBMCのECP処理後に見られる。単球は、ECP処理PBMC懸濁液中で産生されたTSP-1の大部分を分泌し、ブロッキングされたTSP-1活性は、Treg生成を促進することのできるECPの能力を減少させる。これは、我々自身の、追加的な未発表結果と一致しており、単球はTregのin vitro生成に必須であることを示している。
図19は、図7のように、ECP処理PBMCのナイーブT細胞との共培養物から単離したT細胞が、寛容原性の表現型を示すことを示している。しかしながら、この共培養物が、中和された抗CD36または抗CD47モノクローナル抗体を、単独または組み合わせで含む場合、寛容原性の表現型が弱められる。我々は近年、in vivoでECPにより促進される免疫効果に介在するために、TSP-1が必要かどうか調査しており、糖尿病のモデルでのβ細胞機能のECP防護において、TSP-1が役割を果たすかどうか調査したい。
参照文献

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配列表

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〔実施の態様〕
(1)ストレス調整の方法において、
(a)被験者がさらされるであろう、または、被験者がさらされてきたストレスの多い事象を明らかにすることと、
(b)計画にしたがって、かつ、前記ストレスの多い事象の影響を改善するために効果的な用量で、ECPを実行することと、
を含む、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
前記ストレスの多い事象が、外傷または有害物質暴露である、方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記外傷が、虚血、卒中、減圧、高圧治療(酸かストレス)、事故、手術、日焼け、煙、炎、戦闘、激しい運動、睡眠不足、栄養異常、栄養失調、宇宙旅行、拷問、災害管理、ウイルス感染、細菌感染、がん、または、臓器移植である、方法。
(4)実施態様1に記載の方法において、
前記有害物質暴露が、化学治療、放射線照射、毒薬、薬学的副作用、環境有害物質、超音波、レーザー光、または、抗生物質である、方法。
(5)実施態様1に記載の方法において、
バイオマーカーを測定すること、
をさらに含み、
ECP送達が、前記バイオマーカーの濃度または代謝に基づいて調節される、方法。
(6)実施態様4に記載の方法において、
前記バイオマーカーが、表1に挙げられた遺伝子からなる群から選択される、方法。
(7)実施態様1に記載の方法において、
前記被験者に、mTOR経路に影響を与える物質または環境シグナルを投与すること、
をさらに含む、方法。
(8)実施態様7に記載の方法において、
ラパマイシンを、前記被験者に投与する、方法。
(9)実施態様7に記載の方法において、
前記物質または環境シグナルが、前記被験者における細胞内ストレスを誘導するために十分な、量および間隔で投与される、方法。
(10)実施態様9に記載の方法において、
前記物質が、リコピンまたはセレストラル(celestral)である、方法。
(11)調整効果(conditioning efficacy)を観察する方法において、
表1中のバイオマーカーからなる群から選択されるバイオマーカーの特質的な調節(differential modulation)を明らかにすること、
を含む、方法。
(12)実施態様11の方法において、
バイオマーカーの前記群の調節パターンが、効果的であると知られているバイオマーカーの調節パターンと比較される、方法。
(13)実施態様1にしたがって解析を実施するためのキットにおいて、
バイオマーカー検出試薬、
を含む、キット。
(14)実施態様1の方法を実行するためのマイクロアレイまたは遺伝子チップ。
体外フォトフェレーシスのための臨床的方法を示している。 マウスの喘息モデルでは、ECPにより、炎症が改善されることを示している棒グラフである。 ECPにより、NOD/LtJマウスが、糖尿病、その合併症から保護されることを示しているグラフである。 マウスのT1DMモデルでは、ECPにより、STZの糖尿病誘発効果が弱められることを示している棒グラフである。 ECP作用の免疫メカニズムを示している。 ECP処理細胞と共培養した樹状細胞のサイトカイン分泌パターンを示している棒グラフである。 MLRでのT細胞産生を抑制するためにACを用いて、in vitroで生成されたTregを示している棒グラフである。 急性期たんぱく質に対するECP療法の効果を示している一連の棒グラフである。 マウスの肺炎症モデルでは、ECPがインスリンおよびグルカゴンを調節することを示している棒グラフである。 ECPが長期間にわたってバイオマーカーに影響を与えることを示している棒グラフである(時間に対する基準から倍数的に変化している)。 マウスの肺炎症モデルにおけるECPにより誘導されたレプチン分泌を示している棒グラフである。 健康マウスにおけるバイオマーカーのタイムコースを示している棒グラフである。 ECP処理した健康マウスにおける細胞用量反応関係を示している一連の棒グラフである。 AC取り込み後のDC mTOR活性における用量依存効果が、DCの成熟状態に依存していることを示している一連の棒グラフである。 MLRでのAC寛容原性に対するO-GlcNAc抑制の効果を示している棒グラフである。 T細胞増殖を刺激することで、アロキサンがMLRにおけるECP効果を逆転することを示している。 化学的ストレス因子に対するECP事前処置動物および細胞を示している。 ECP処理により、PBMCではTSP-1分泌が誘導されることを示している。 TSP-1遮断により、MLRではECP寛容原性効果を弱められることを示している。

Claims (14)

  1. ストレス調整の方法において、
    (a)被験者がさらされるであろう、または、被験者がさらされてきたストレスの多い事象を明らかにすることと、
    (b)計画にしたがって、かつ、前記ストレスの多い事象の影響を改善するために効果的な用量で、ECPを実行することと、
    を含む、方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、
    前記ストレスの多い事象が、外傷または有害物質暴露である、方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、
    前記外傷が、虚血、卒中、減圧、高圧治療(酸化ストレス)、事故、手術、日焼け、煙、炎、戦闘、激しい運動、睡眠不足、栄養異常、栄養失調、宇宙旅行、拷問、災害管理、ウイルス感染、細菌感染、がん、または、臓器移植である、方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、
    前記有害物質暴露が、化学治療、放射線照射、毒薬、薬学的副作用、環境有害物質、超音波、レーザー光、または、抗生物質である、方法。
  5. 請求項1に記載の方法において、
    バイオマーカーを測定すること、
    をさらに含み、
    ECP送達が、前記バイオマーカーの濃度または代謝に基づいて調節される、方法。
  6. 請求項4に記載の方法において、
    前記バイオマーカーが、表1に挙げられた遺伝子からなる群から選択される、方法。
  7. 請求項1に記載の方法において、
    前記被験者に、mTOR経路に影響を与える物質または環境シグナルを投与すること、
    をさらに含む、方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、
    ラパマイシンを、前記被験者に投与する、方法。
  9. 請求項7に記載の方法において、
    前記物質または環境シグナルが、前記被験者における細胞内ストレスを誘導するために十分な、量および間隔で投与される、方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、
    前記物質が、リコピンまたはセレストラルである、方法。
  11. 調整効果を観察する方法において、
    表1中のバイオマーカーからなる群から選択されるバイオマーカーの特質的な調節を明らかにすること、
    を含む、方法。
  12. 請求項11の方法において、
    バイオマーカーの前記群の調節パターンが、効果的であると知られているバイオマーカーの調節パターンと比較される、方法。
  13. 請求項1にしたがって解析を実施するためのキットにおいて、
    バイオマーカー検出試薬、
    を含む、キット。
  14. 請求項1の方法を実行するためのマイクロアレイまたは遺伝子チップ。
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