以下の詳細な説明では、説明を目的として限定的でなく、本発明の教示の完全な理解を提供するために、多くの詳細事項が説明される。しかしながら、当業者には、本発明が本願明細書に記載された特定の詳細事項とは別の他の実施例の利点を有することが明らかだろう。更に、良く知られた装置、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、方法及びシステムの説明は、実施例の記載を不明瞭にすることを避けるため、省略される。しかしながら、当業者の範囲内にあるこのようなハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、装置、方法及びシステムは、実施例に従い用いられてよい。最後に、同様の参照符号は同様の機能を表す。
記載される実施例は主にAスキャンに関する。Aスキャンは、トランスデューサが力学的波を患者へ送信し、反射された力学的波が時間の関数として記録される測定技術である。通常、トランスデューサは患者の片面に位置付けられ、力学的波の伝搬方向に沿った構造のみが応答する。反射波(エコー)が患者又は組織内の接触面から返送されると、トランスデューサは力学的波をエコー強度に比例する電圧に変換する。
図1は、ある実施例による装置100の断面図である。装置100はトランスデューサ101及び電子機器(図1に示されない)を有する。トランスデューサ101は、例として、例えば約1.0MHz乃至約20.0MHzの範囲の周波数を有する力学的波を送信する超音波トランスデューサである。特定の実施例では、トランスデューサは焦点が合っていない。代案として、トランスデューサ101は焦点の合っているトランスデューサである。
示された実施例では、トランスデューサ101は、パルス・モードで動作する単一要素のトランスデューサである。従って、約25%より大きい比較的広い帯域幅が望ましい。更に、トランスデューサの周波数は通常比較的高く、測定精度を上げる。特定の実施例では、トランスデューサ101は約5.0MHz乃至約20.0MHzの範囲で動作するよう適応される。代案の実施例では、比較的低い周波数のトランスデューサがトランスデューサ101として実施されてよい。
トランスデューサ101は、医療用途で有用であり当業者に知られている種々のトランスデューサの1つであってよい。例えば、トランスデューサ101は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)素子のような圧電素子であってよい。別の例として、トランスデューサは圧電微小機械超音波トランスデューサ(PMUT)であってよい。強調すべき点は、PZT及びPMUTトランスデューサは単なる例であり、他のトランスデューサも考えられることである。
トランスデューサ101は患者の角質層102と接触する。知られている結合材料(例えば結合ジェル)は、接触が行われる層102の位置に塗られる。この層102は、約0.010mm乃至約0.020mmの厚さのミード(Mead)スキンの層を有する。任意的に、トランスデューサは患者の体の生きている表皮層103に突出しているが、層102に穴を開けない。生きている表皮層103は比較的薄いか、又は約0.030mm乃至約0.130mm程度である。
患者は人間であってよい。また装置は医療試験装置であってよい。装置は、脱水症に関し水分レベルの測定を必要とする、動物の獣医学的試験に用いられてもよい。
表皮層103の下は真皮層104である。例えば、真皮層は約1.1mmの厚さである。本願明細書により詳細に記載されるように、示された実施例の装置及び方法は、真皮層104の厚さを測定するのに有用であり、これらの測定は患者毎の水分測定の比較測定値を集める。
真皮層104の下は皮下脂肪(SF)層105である。例えば、この層は約1.2mm程度の厚さである。本願明細書に記載されるように、ある実施例では、力学的波(例えば、超音波)の真皮層104とSF層105との間の反射は、真皮層104の厚さを定めるために用いられる。
最後に、SF層105の下は、筋肉層106若しくは骨、又はそれらの両方である。
強調すべき点は、以上に記載された層の厚さは、単なる例であることである。このため、層の厚さは、体の位置により及び患者により大きく変化しうる。更に、患者の姿勢はいくつかの層の厚さに影響しうる。更に、病状は層の厚さに影響しうる。特に、真皮層は、人間の体の流体(例えば、水分)貯蔵所のように機能する。体が脱水症になるにつれ、真皮層内の体液の量は減る。このように、真皮層の厚さは減少し、脱水症レベルの指標を提供する。実施例は、真皮層のこの特性を利用し、この層の厚さを測定し及びこれを許容水分レベルの基礎値と比較することにより脱水症レベルを決定する。
力学的波はトランスデューサ101から発せられ、組織層102−104を通じて伝搬する。本実施例では、力学的波はSF層105の表面で反射され、組織を横切る。反射波(又はエコー)はトランスデューサ101に入射する。或いは、力学的波は層106で反射される。何れの場合も、力学的波はトランスデューサ101により電気信号に変換され、以下により詳細に記載されるように処理される。
特定の実施例では、装置100は、非常に薄い層102、103を無視して真皮層104の厚さを表す距離107を計算する。代案の実施例では、装置100は、真皮層104及びSF層105の厚さを表す厚さ108を測定する。
距離107及び108は、それぞれ層102−104及び層102−105内の力学的波の速度を、トランスデューサからの力学的波の送信と力学的波の反射の受信との間の時間で単に乗算することにより計算される。特に、層102−105内の力学的波の速度は実質的に一定であり、力学的波の周波数、皮膚及び組織の温度、並びに皮膚及び組織の水分レベルと実質的に独立である。更に、距離107、108は、推定一定速度を用いて計算されてよい。
温度、力学的波の周波数、及び水分レベルは、速度を決定するのに考慮されると考えられる。例えば、特定の温度における皮膚及び組織内の基準速度、及び皮膚及び組織内の基準水分レベルから、力学的波の速度は約0.10%/℃、及び体重の1.0%の水分損失に対し約0.20%だけ調整されてよい。これらの調整を行った後、単純な計算が行われ、距離107、及び従って真皮層104の厚さ、又は距離108、及び従って真皮層104及びSF層105の厚さを決定する。
簡単のため、装置101の機能の説明は距離107の測定に焦点を当てる。勿論、記載される原理は距離108の測定にも直ちに適用できる。
ある実施例によると、距離107に関し複数の測定が行われる。別の実施例では、測定は複数の位置で行われる。有利なことに、測定は、変形可能な組織が少ない場所があればそのような場所で行われる。この目的のため、トランスデューサ101と皮膚102との間の適正な結合を保証するため、圧力が加えられなければならない。しかしながら、測定されている素材が正確且つ一貫した測定するには非常に変形しやす過ぎる場合、圧力は測定される厚さを変化させうる。従って、人間の額、胸骨、及び頸骨のような位置は、距離107の正確な測定を要求する場合には有用である。
更に、トランスデューサに圧力センサーを含め、各測定で同一の圧力が身体に加えられることを保証することにより、又はトランスデューサの重さを身体の位置に加えさせることにより、又はこれらの両方により、厚さ測定の誤差は有利に回避されうる。
本願明細書に更に詳細に記載されるように、測定された距離107は特定の患者の同一の位置の基準距離と比較される。距離107が基準距離より小さい場合、水分レベルが現れる。理解されるように、真皮の測定された厚さを基準距離と比較することにより、測定は患者の過剰体液状態を評価するために用いられうる。
図2は、ある実施例による装置200の概略ブロック図である。装置200の多くの特徴は、図1の実施例に関して記載された装置の特徴と共通している。本実施例の説明が不明瞭になることを回避するため、これらの共通した詳細は繰り返されない。
トランスデューサ101は、パルス生成器及び受信機(PGR)201と接続される。PGR201は、有限期間且つ選択された周期性でトランスデューサ101へ電気パルスを送信する。電気パルスは、トランスデューサ101から層102−104へ放射される機械的パルスに変換される。
反射された力学的波は、トランスデューサ101により電気信号に変換され、PGR201へ送信される。PGR201は、受信回路、フィルター、及び増幅器を有する。増幅器は、力学的波が比較的高い周波数であるとき、層102−105内の力学的波の減衰が増加周波数で増大するので、特に有用である。適切な受信回路、フィルター回路、及び増幅回路は、アナログ信号処理分野の当業者に良く知られている。
装置200はデータ取得モジュール202も有する。モジュール202は、例示的に抵抗器、又はPGR202から受信した受信信号データを格納するメモリーを有する。例えば、モジュール202は、各送信パルスに対し、送信された力学的波の飛行時間を計算するエンジンであってよい。これらのデータは次に距離107を計算するために格納される。
プロセッサー/マイクロプロセッサー203は、装置200の種々の機能を達成するために設けられる。マイクロプロセッサー203は、Intel社のPentium(登録商標)のような市販のマイクロプロセッサー、又は他の適切なマイクロプロセッサーであってよい。プロセッサー203は、任意的にオペレーティング・システム(OS)ソフトウェアを有してよい。プロセッサー203は、本願明細書に記載されたアルゴリズムを達成するために書かれたアプリケーション・コードを有してよい。このようなコードは、当業者の能力の範囲内に含まれる。
ある実施例では、プロセッサー203はデータをキャプチャするため、及び相関アルゴリズムを実行するために用いられる。例示的に、データ・キャプチャは、受信した電気信号のアナログ−デジタル(A/D)変換、及びデータの格納を含む。例示的に、飛行時間は相関アルゴリズムに基づき決定される。
代案として、飛行時間は、知られている正/負の勾配、ゼロ交差技術のような境界検出を通じて決定されてよい。特に、選択されたアルゴリズムを用いて分かった距離に対し構成手順を実行することは有益である。これは、測定を大幅に正確且つ一貫したものにする。
強調されるべき点は、記載されたアルゴリズムは当業者に知られていること、及び飛行時間、距離/厚さの測定値を決定する他のアルゴリズムの使用が考えられることである。
動作中には、操作者から入力を受信すると、プロセッサー203はPGR202によるパルス送信を開始し、試験を開始する。プロセッサー203は、アルゴリズム上、パルスの飛行時間を検索し、当該時間を速度で乗算することにより距離107を決定する。プロセッサー203は、同一位置における複数の測定値から平均距離を、又は異なる位置における複数の測定値から合計距離を、又は複数の位置のそれぞれからの複数の測定値から平均合計距離を決定してよい。
例示的に、送信され反射されたパルスからの多くの測定値が、同一の位置で生じ、これらから距離107の平均が決定されてよい。特定の実施例では、5個より多い測定値が、平均を計算するために用いられる。
或いは、パルスは、1つより多い場所(例えば、額、胸骨、及び頸骨)で送信され、合計の厚さが決定される。複数の測定が行われてよく、総平均が計算されてよい。特定の実施例では、5個より多い測定値が、各位置に対し平均を計算するために用いられる。平均値及び平均値の平均(総平均として参照される)も、データ取得モジュール202に格納されてよい。
理解されるように、患者の姿勢は測定に影響を与えうる。このため、身体のある位置における皮膚の厚さは姿勢により影響されうる。例えば、患者の中間部分の皮膚の厚さは、立っているときより座っているときのほうが詰まっており、結果として異なる測定値になる。有利なことに、身体の複数の位置からの合計の厚さを集めることにより、姿勢により生じた皮膚厚の変化にある程度の補償がもたらされる。
ある実施例では、プロセッサー203は、皮膚102及び組織の温度、又は送信された力学的波の周波数、又は最近の測定からの水分レベル、又はこれらの変数の組み合わせを受信し、これらの変数を考慮して速度を調整する。
距離107又は上述の平均距離を計算した後に、プロセッサー203はアルゴリズム上、距離107又は直近の測定の平均距離を基準と比較する。これらの比較から、水分レベルの相対的測定が行われうる。代案として、プロセッサーは、アルゴリズム上、測定データを基準レベルと比較することにより、体液水分レベルを決定してよい。
ある実施例によると、患者毎の特定の位置における皮膚厚の変化と水分レベルとの間の関係を決定する際に有用なデータベースを蓄積するために複数の測定が実行される。これらの測定は、測定値を患者の体液水分レベルに割り付けるために用いられる許容可能な(例えば、健全な)水分レベルにおける基準水分値を提供する。代案として又は追加で、当該基準は、多数の患者のグループからのデータから決定されてよい。これらの人口に基づく基準は、人口統計学的に更に蓄積されてよい。従って、特定の患者の水分レベルは、類似した身長、体重、年齢、及び他の類似した基準の人々の許容可能な体液レベルと比較されうる。
図3は、ある実施例による装置300の断面図である。装置300の多くの特徴は、図1及び図2の実施例に関して記載された装置の特徴と共通している。本実施例の説明が不明瞭になることを回避するため、これらの共通した詳細は繰り返されない。
装置は、複数のトランスデューサ301を有する。トランスデューサ301は、トランスデューサ101と実質的に同一であり、PRG201とマルチプレクサ(示されない)を介して又は複数入力を有するPRG201を介して結合されてよい。トランスデューサからのデータは上述のように個々に処理される。
各トランスデューサ101は、患者の片面に置かれ、力学的波を身体へ送信する。これらの波は層102、103を横切り、SF層104で反射される。上述のように、真皮103は身体の水分レベルの比較的正確な測定値をもたらす。従って、装置は真皮の厚さの測定値、及び従って患者の水分レベルをもたらす。
本実施例では、各トランスデューサ301は真皮の個々の厚さ107を測定する。測定は、上述のような力学的波の送信、反射、及び受信を含む。測定された飛行時間から、プロセッサー203により各トランスデューサの位置で距離107及び従って真皮104の厚さが決定される。特に、厚さ108も同様の技術により測定されてよい。
任意的に、複数の測定が行われ、プロセッサーで平均近似が蓄積されてよい。更に、複数のトランスデューサ301が複数の位置で用いられてよく、任意的に複数の測定が各位置で行われてよい。
複数のトランスデューサ301の使用は、複数の測定が局部的に行われるので、精度のレベルを大幅に向上する。この精度は、複数の測定を行うことにより更に向上されうる。他の利点に加え、真皮302の厚さの局部的変化は、以下に記載される比較的直接的な平均処理を通じて考慮されてよい。
図4は、個々のトランスデューサ301の位置に対する距離107のグラフ表示である。線401は、測定されている身体の領域全体の距離データの機械的「近似」(例えば、最小二乗近似)を表す。この近似は、複数のトランスデューサにより検査されている身体の領域に対する平均値及び平均からの標準偏差をもたらす。特に、複数の測定が行われ、合成近似が決定されてよい。更に、複数の位置で複数の測定が行われ、各位置に対し合成近似が決定されてよい。これらの測定データはデータ取得モジュール202に格納されてよい。
適切な水分補給での各患者の基準値は、同様にトランスデューサ304を用いて計算されてよい。有利なことに、被験者が水又は他の液体を飲むことにより、又は点滴注射により良好に水分補給しているときに、基準が決定される。液体の量は、正常な状況下で栄養士又は他の医療専門家により推奨されてよい。特定の実施例では、基準測定は所定の日数に亘り実行され、信頼性を確保する。全ての測定値の平均は、基準として用いられてよい。
モジュール202に格納された測定データは、患者の脱水症レベルの決定のための基準値と比較されてよい。ある実施例では、複数の位置からの測定データが脱水症レベルの決定に用いられてよい。更に、前述の種々の距離測定値の平均が、脱水症レベルの決定に用いられてよい。
トランスデューサ301を用い、複数の厚さ測定が行われ、図4に示される測定値が得られる。各測定からの距離データの個々の平均又は近似が平均され、合成平均が提供される。この合成平均は、身体の特定の領域に渡り複数の測定を同一の位置で行うことにより、測定の不正確さを低減する。有利なことに、局所的な変動は適切に考慮される。
図5は、ある実施例による脱水症センサー501の上面図である。センサー501の特徴は、図1乃至図4の実施例に関して記載された装置の特徴と共通している。本実施例の説明が不明瞭になることを回避するため、これらの共通した詳細は繰り返されない。
センサー501は、基板503に配置された複数のトランスデューサ502を有する。ある実施例では、トランスデューサ502は、前述のトランスデューサ101、303と実質的に同一である。基板503は、トランスデューサ502の間の機械的及び電気的干渉を防ぐ種々の知られている材料の1つであってよい。有利なことに、基板503は、トランスデューサ502と皮膚との間の均一な接触を保証する層である。基板503は、実質的に音響上透過であり(つまり、皮膚と同一の音響インピーダンスを有する)、比較的薄い。
センサー501は、図3及び図4の実施例と関連して記載された方法と同様の方法で、身体のある領域に渡り複数の測定を行う。センサー501のトランスデューサ502は、PRG201とマルチプレクサ(示されない)を介して又は複数入力を有するPRG201を介して結合されてよい。トランスデューサからのデータは上述のように個々に処理される。
各トランスデューサ502は、患者の片面に置かれ、力学的波を身体へ送信する。これらの波は表皮102、及び真皮104を横切り、下側の組織層、SF層105で反射される。上述のように、真皮104は身体の水分レベルの比較的正確な測定値をもたらす。従って、装置は真皮の厚さの測定値、及び従って患者の水分レベルをもたらす。
特定の実施例では、各トランスデューサ502は真皮の個々の厚さ104を測定する。測定は、上述のような力学的波の送信、反射、及び受信を含む。測定された飛行時間から、プロセッサー203により各トランスデューサの位置で距離107及び従って真皮104の厚さが決定される。
センサー501は、記載されたように身体上の多数の位置からの測定値を蓄積してもよい。更に、各位置で複数の測定が行われ、各測定について平均が計算され、上述のように総平均を蓄積してよい。
モジュール202に格納された測定データは、患者の脱水症レベルの決定のための基準値と比較されてよい。ある実施例では、複数の位置からの測定データが脱水症レベルの決定に用いられてよい。更に、前述の距離測定値の平均が、脱水症レベルの決定に用いられてよい。
本願明細書で留意すべき点は、本願明細書に記載された種々の方法及び装置がハードウェア及びソフトウェアで実施されてよいことである。更に、種々の方法及びパラメータは、単なる例であり、如何なる限定的意味に解されるべきではない。本願明細書を読むことにより、当業者は、彼らの技術を決定する際に本願の教示を実施し、これらの技術を達成しうる。これらの技術は本願明細書に添付された請求の範囲に包含される。