JP2009530312A - トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するためのトロンビン変異体の使用 - Google Patents

トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するためのトロンビン変異体の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、それを必要とする患者におけるトロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法を提供するものであり、該方法は、トロンビン阻害剤に結合することができ、かつ凝固促進活性が低下しているバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの治療有効量の投与を含む。本発明の方法に有用なバリアント型プロトロンビン又はトロンビンとしては、トロンビン変異体W215A、W215A/E217A、すなわちアミノ酸の215位及び/又は217位がアラニンであるこれらのバリアント等を挙げることができる。また、トロンビン変異体を追加的な活性薬剤、特に、活性化第VII因子又は活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤などの止血剤と共に投与することを含む方法も提供する。本発明の一実施形態においては、方法は、直接トロンビン阻害剤、特にアルガトロバンが投与された患者の処置に有用である。本発明はさらに、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンの滴定アッセイを用いた、患者の血漿又は全血中の抗凝固剤濃度を定量する方法を提供する。

Description

連邦支援による研究又は開発
本発明は国立衛生研究所により認められた認可番号HL49413、HL58141及びHL73813に基づく政府の支援を受けて発明された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
本発明は、トロンビン変異体、特にトロンビン変異体W215A/E217A又はW215Aを用いた、トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法に関する。本発明はまた、患者の血漿又は全血中のトロンビン阻害剤濃度を定量するためのトロンビン変異体の使用方法に関する。
ヘパリン、クマリンなどの抗凝固剤は、血栓塞栓症の治療及び予防、並びに輸血及びその後の外科手技中の血液凝固の予防のためにしばしば使用される。しかし、このような薬物(drug)の投与によって、最悪の場合は四肢欠損に至ることもある合併症であるヘパリン起因性血小板減少症−血栓症及びクマリン誘発性皮膚壊死等の合併症を生じることがある。したがって、抗凝固剤を患者に投与する場合、合併症が発症したときに特定の抗凝固剤の作用を逆転させる(reverse)ことができる解毒剤が手元にあることが非常に望ましい。このような合併症としては、外科的切開による傷口における出血性副作用、腹膜、胸膜、心膜及び軟膜の血管領域における出血性副作用等がある。
抗凝固薬剤は一般的に、間接トロンビン阻害剤及び直接トロンビン阻害剤(DTI)に分類することができる。ヘパリン、デルマタンなどの直接トロンビン阻害剤は、アンチトロンビン(AT)、ヘパリンコファクターII(HCII)などの内生のトロンビン阻害因子の活性化を触媒することでトロンビンを不活化する。対照的に、ヒルジンなどの直接トロンビン阻害剤の効果は、トロンビンに直接結合することで仲介される。
間接トロンビン阻害剤には、硫酸プロタミンを用いて抗凝固効果を速やかに逆転することができるという利点を有するヘパリンがよく使用される。しかしながら、稀にではあるがプロタミン投与によって重篤な心血管虚脱が生じることがあり(非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3)、プロタミンにより誘発される血行動態の不安定化は術後の有害な転帰に関連している(非特許文献4及び非特許文献5)。現在のところ、プロタミンアレルギー患者に対してヘパリンを逆転させる安全な代替方法はない。
従来の抗凝固剤に付随する制限及びリスクから、DTIの臨床使用が急速に進んでいる。全てのDTIは強力な抗血栓剤であり、大きな出血のリスクは0.7〜1.9%であり、これは未分画ヘパリンに匹敵するかそれよりも小さい値である(非特許文献6)。現在利用可能なDTIとしては、アルガトロバン(ノバスタン(登録商標))、ビバリルジン(アンジオマックス(登録商標))、レピルジン(レフルダン(登録商標))等があり、さらに欧州ではキシメラガトラン(エグザンタ(登録商標))等などがある(非特許文献6)。静脈内DTIの主な適応症はヘパリン起因性血小板減少症−血栓症であるが、待機的経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス形成手術等の適応症が現在評価中である(非特許文献7及び非特許文献8)。キシメラガトランは深部静脈血栓症を予防するための最初の経口薬である。
しかし、解毒剤が利用できないこと及び信頼性の高い実験モニタリング(laboratory monitoring)がされていないことから、特定のDTIの使用は限定されることがある(非特許文献9)。抗凝固剤を過少量投与すると制御不能なトロンビン生成及び/又は消費性凝固障害を生じることがあり、一方、抗凝固剤を過剰投与すると重篤の出血性素因が引き起こされる。凝血検査は、血液希釈、低体温及び外科的settingsにおけるその他の変動による影響を特に受けやすい(非特許文献10))。心臓外科患者では、臓器機能不全を同時に有する患者には大量のDTIが使用されるため、出血は重要な懸案事項となり得る。腎機能不全はヒルジンの代謝、及びそれより程度は低いがビバリルジンの代謝に影響を与え、心肺バイパス後の重篤の出血発症が報告されている(非特許文献11、非特許文献12及び非特許文献13)。
DTI(特にヒルジン)に対する様々な解毒剤が過去に実験的に研究されており、例えば、DFPトロンビン又はベンゾイルトロンビンのようなガンマ−トロンビン標品((非特許文献14);プロトロンビン中間体メイゾトロンビン(特許文献1及び非特許文献15)などがある。発色基質であるクロモザイムTH(Roche, Mannheim)も、インビボでの有効性についてのデータはないものの、インビトロではメラガトランの潜在的な解毒剤であると考えられている(非特許文献16)。今日まで、このような標品は毒性が強過ぎるか又は液相で有効でないため、実用上の成功は得られていない。
米国特許第5817309号明細書 Morel et al. (1987) Anesthesiology, 66:597-604 Weiss et al. (1989) New England Journal of Medicine, 320:886-892 Panos et al. (2003) European Journal of Cardio-Thoracic Surgery, 24:325-327 Kimmel et al. (2002) Anesthesia & Analgesia, 94:1402-1408 Welsby et al. (2005) Anesthesiology, 102:308-314 Di Nisio et al. (2005) New England Journal of Medicine, 353:1028-1040 Lincoff et al. (2004) JAMA, 292:696-703 Merry et al. (2004) Annals of Thoracic Surgery, 77:925-931 Warkentin et al. (2005) Thrombosis & Haemostasis, 94:958-964 Siegel (2002) New England Journal of Medicine, 347:1030-1034 Nowak et al. (1992) Thrombosis Research, 66:707-715 Koster et al. (2000) Annals of Thoracic Surgery, 69:37-41 Hein et al. (2005) Artificial Organs, 29:507-510 Bruggener et al. (1989) Pharmazie, 44:648-9 Nowak and Bucha (1995) Thromb. Res., 80:317-25 Bodendiek et al. (2000) Hamostaseologie, 23:97-8
上記の制限から、ヘパリン及びDTIの両方を安全かつ効率的に逆転させる改善された方法が必要とされている。
インビボ及びインビトロで抗凝固剤の効果を阻害する方法を提供する。特に、それを必要とする患者においてトロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法を提供し、この方法は、トロンビン阻害剤に結合することができかつ凝固促進活性が低下しているバリアント型プロトロンビン又はトロンビンを治療有効量投与することを含む。本発明の方法に有用なバリアント型プロトロンビン又はトロンビンとしては、トロンビン変異体W215A、W215A/E217A、すなわち215位及び/又は217位のアミノ酸がアラニンであるそのバリアント等を挙げることができる。本発明の別の実施形態においては、追加的な活性薬剤、特に止血剤(例えば、活性化第VII因子又は活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤)と共にトロンビン変異体を投与することを含む方法が提供される。本発明の一実施形態において、本方法は、直接トロンビン阻害剤(特にアルガトロバン)が投与されている患者の治療に有用である。
また、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンの滴定アッセイを用いた、患者の血漿又は全血中の抗凝固剤濃度を定量する方法を提供する。特に、本発明は患者の血漿又は全血中におけるトロンビン阻害剤、特にDTIの濃度を定量する方法を提供する。本方法は、トロンビン阻害剤を含有する血漿又は全血試料を、様々な濃度のトロンビン変異体に個別に添加することができる同体積の試験試料に分けて、各試験試料について凝血開始までの時間(onset to clotting time)を比較することを含む。凝血開始までの時間が最も短い試験試料を選択することで、対応するトロンビン変異体の濃度を用いて血漿又は全血試料中のトロンビン阻害剤濃度を評価することができる。これらの方法に使用するのに好ましいトロンビン変異体としてはW215A/E217A若しくはW215A又はそのバリアント等を挙げることができる。
本発明は、インビボ又はインビトロにおける抗凝固剤の効果を阻害する方法を提供する。特に、本発明はそれを必要とする患者におけるトロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法を提供し、この方法は、トロンビン阻害剤に結合することができかつ凝固促進活性が低下しているバリアント型プロトロンビン又はトロンビンを治療有効量投与することを含む。本発明の方法に有用なバリアント型プロトロンビン又はトロンビンとしては、トロンビン変異体W215A、W215A/E217A、すなわち215位及び/又は217位のアミノ酸がアラニンであるそのバリアント等を挙げることができる。また、追加的な活性薬剤、特に止血剤(例えば、活性化第VII因子又は活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤)と共にトロンビン変異体を投与することを含む方法を提供する。本発明の一実施形態においては、この方法は、直接トロンビン阻害剤、特にアルガトロバンを投与された患者の処置に有効である。
本明細書において「抗凝固剤」とは、インビトロ及び/又はインビボの血栓形成を予防する又は遅延させることができる任意の薬剤を意味する。本明細書において「凝固」とは、血液又は血漿を液相からゲル相へと変化させるフィブリンモノマーのポリマー化のプロセスを意味する。液体血液の凝固は、インビトロ、血管内、又は露出若しくは損傷した組織の表面において起こることもある。インビトロでの血液凝固はゲル化した血液を生じ、これは非凝固血液と本質的に同じ比率で細胞及びその他の血液成分を保持しており、フィブリノーゲン含量の減少とそれに対応するフィブリンの増加だけが異なる。「血餅」とは、液体血液におけるのと同じ比率の血液成分からなり、かつ全ての血液成分を含有する粘性ゲルを意図している。
本明細書において「抗凝固効果を阻害する」とは、抗凝固剤が血栓形成を予防するか又は遅らせる能力を低下させることを意味する。抗凝固剤の抗凝固効果が阻害されているかどうかを調べる方法は、血漿又は全血試料中の血塊の強度及び/又は血塊形成までの時間の長さを測定するアッセイの使用を含む。したがって、本明細書において、抗凝固剤の抗凝固効果を阻害するとは、抗凝固剤の効果を少なくとも部分的に逆転させること、例えば少なくとも5%の逆転、少なくとも10%の逆転、少なくとも20%の逆転、少なくとも30%の逆転、少なくとも40%の逆転、少なくとも50%の逆転、少なくとも60%の逆転、少なくとも70%の逆転、少なくとも80%の逆転、少なくとも90%の逆転、及び最大で100%を含む逆転を意味する。本明細書において「逆転」とは、血塊形成の開始までの時間の短縮又は血塊強度の増大を意味する。血塊形成の開始及び血塊強度を測定するアッセイは当該技術分野で周知であり、例えば活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))、Thrombinoscope(登録商標)システムを用いたトロンビン生成の連続モニタリング(例えば、後述の実験セクション参照。また、Banez et al. (1980) Am. J. Clin. Pathol.,74:569-574、van den Besselaar et al. (1990) hromb. Haemost.,63:16-23、Kawasaki et al. (2004) Anesthesia & Analgesia, 99:1440-1444及びHemker et al. (2003) Pathophysiology of Haemostasis & Thrombosis, 33:4-15参照。)がある。
本発明の一実施形態では、抗凝固剤の抗凝固効果を阻害するためのバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの使用方法が提供される。ヒトトロンビンは、約579成熟アミノ酸(潜在的な対立遺伝子変異(allelic variation)又はN末端微小不均一性を受ける)と約43残基のプレ配列とからなる前駆体ポリペプチドであるプロトロンビンから生成される(Degen et al. (1993) Biochemistry 22:2087)。このプレ配列はプロトロンビンの発現及び分泌の間にタンパク質分解により(proteolytically)除去される。
プロトロンビンはチモーゲン(すなわち不活性なプロテアーゼ)であり、一連のタンパク質切断によって活性化される。切断は少なくとも3箇所で行われる。インビボにおいてプロトロンビンはVa因子、リン脂質及びカルシウムイオンの存在下で第Xa因子によってR271とT272残基(Degen et al. (1993) Biochemistry 22:2087に記載の残基番号)の間で切断されてプロトロンビン2及びフラグメント1.2を生じる。プロトロンビンは同じシステムによってR320とI321残基の間でさらにタンパク質切断されてメイゾトロンビンを生じる。次いで、このメイゾトロンビンはR155とS156の間で自己分解してフラグメント1(1−155)及びメイゾトロンビンdes1(プロトロンビンの156番目の残基からカルボキシ末端に延び、R323で切断されている、ジスルフィド結合したジペプチド)を生成する。最後に、プレトロンビン2のR320とI321の間のタンパク質切断によって、又はメイゾトロンビンdes1のR271とT272の間のタンパク質切断によって、トロンビンが生成される。その後、トロンビンは自身をT284とT285の間で自己切断し、成熟A鎖N末端を生成する。
本明細書において「トロンビン」とは、多機能性プロトロンビン由来酵素を意味する。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンにタンパク質切断することで凝固促進剤として作用する。またトロンビンは、凝血を持続させる凝固第V、VIII、XI及びXIII因子を活性化して血塊を持続させ、また、血小板トロンビン受容体PAR1を活性化して血小板を活性化する。トロンビンの生成及び活性は多くの抗トロンビン機序により制限されている。トロンビンは、血管内皮細胞上の膜内在性タンパク質であるトロンボモジュリン(TM)に結合するとコンフォメーション変化して凝固促進活性を失い、プロテインC(PC)を活性化プロテインC(APC)に変換する活性を獲得する。APCはセリンプロテアーゼであり、凝血又は凝固カスケードにおける2つの重要な補因子である活性化FV(FVa)及びFVIII (FVIIIa)を不活化することで、強力な抗凝固剤として作用する。また、APCは組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の主要な物理的阻害剤であるプラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PAI−1)を不活化し、通常の線溶を促進する。
本明細書において「凝固カスケード」とは、例えばManolin in Wilson et al. (eds): Harrison's Principle of Internal Medicine, 14th Ed. New York. McGraw-Mill, 1998, p. 341に記載されている、相互に交わる3つの酵素経路を指す。この文献の全体を参照により本願に組み込んだものとする。内因系凝固経路は第IXa因子を形成させ、これが第VIIIa及び第X因子、リン脂質並びにCa2+と共に第Xa因子を生じさせる。外因系経路では、組織因子と第VII因子が組み合わさった後、第Xa及びIXa因子が生じる。共通系凝固経路は血液凝固第V、VIII、IX及びX因子と相互作用してプロトロンビンをトロンビン(第IIa因子)に切断し、トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに切断する。
Degen et al.(Degen et al. (1993) Biochemistry, 22:2087)によるDNAに基づくシステムの他に、アミノ酸に番号を付ける2つの異なるシステムがトロンビンに使用されている。1つ目は、Bode et al.に記載されているキモトリプシノーゲンとのアラインメントに基づくものであり、プロテアーゼの分野で最も広く用いられている番号付けシステムである(Bode et al. (1989) EMBO. J., 8:3467-3475)。2つ目のSadlerによる番号付けスキームでは、トロンビンのB鎖はI1から始まりE259までであり、A鎖はT1a〜R36aのように後ろに「a」を付して表される。例えば、Wu et al.はSadlerのスキームに基づいて番号を付けた様々なトロンビン変異体を開示している(Wu et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:6775-6779)。このWu et al.による変異体の残基番号とそれに対応するキモトリプシノーゲンの残基番号及びDegen et al.による残基番号をそれぞれ以下にこの順番で示す:H43(57、363)、K52(60f、372)、N53(60g、373)、R62(67、382)、R68(73、388)、R70(75、390)D99(102、419)及びS205(195、525)。
本明細書を通して、トロンビン及びトロンビン変異体のアミノ酸残基への言及には、Bode et al.による番号付けシステムを用いている。しかし、ヒトトロンビン変異体W215A/E217A(配列番号1)、ヒトトロンビン変異体W215A(配列番号2)、及びヒトトロンビン(配列番号3)に対応する配列表についてはsequentialな番号システムを用いた。したがって、Bode et al.のシステムを用いた本明細書に記載のトロンビン及びトロンビン変異体のアミノ酸番号215及び217は、配列番号1、2、及び3におけるシーケンシャル番号システムではトロンビン及びトロンビン変異体のアミノ酸番号263及び265に相当する。トロンビンのアミノ酸配列を、Bode et al.のシステムを用いたものと配列番号1、2及び3に用いたシーケンシャル番号システムを用いたものを並べて比較し、表1に示す。表1に記載のように、シーケンシャル番号システムではトロンビンA鎖はアミノ酸番号1から始まり、トロンビンB鎖はアミノ酸番号37から始まる。
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本明細書において「バリアント」又は「バリアント型プロトロンビン又はトロンビン」とは、プロトロンビン又はトロンビンのアミノ酸配列に由来する修飾アミノ酸配列であって、トロンビンの残基番号215及び/又は217にアミノ酸置換を有するものを意味する。このようなバリアントをトロンビン変異体と呼ぶこともある。通常、本発明の方法に使用するためのこのようなバリアントは、プロトロンビン又はトロンビンのアミノ酸配列に由来しトロンビンの残基番号215及び/又は217にアミノ酸置換を有するアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有する。この配列同一性は、本明細書に別途記載の配列アラインメントプログラム及びパラメータを用いて決定される。本発明の方法に使用するための、このような生物学的活性バリアントは、プロトロンビン又はトロンビンとアミノ酸残基が1〜15個異なるだけでもよく、1〜10個だけ、例えば6〜10個、5、4、3、2又はたった1個異なるだけでもよい。
本明細書において「パーセント配列同一性」又は「パーセント配列類似性」とは、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264(Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877で改変)のアルゴリズムを用いて決定される2つの配列間の配列同一性の程度を意味する。このようなアルゴリズムはAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラム、スコア=50、語長=3を用いて、参照ポリペプチドに相同なアミノ酸配列を得るものである。比較のためのギャップ入りアラインメントを得るためには、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されているGapped BLASTが利用される。BLAST及びGapped BLASTを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)のデフォルトのパラメータが使用される(http://www.ncbi.nlm.nih.gov参照)。その他のアルゴリズム、同等のプログラム、及びデフォルト設定も好適である。「同等のプログラム」とは、目的の任意の2つの配列について、GAP Version 10により作成される対応するアラインメントと比較したときに同じアミノ酸残基マッチ及び同じパーセント配列同一性を有するアラインメントを作成する任意の比較プログラムを意図する。
本発明の方法に使用されるバリアント型プロトロンビン又はトロンビンは生物学的活性を有する。すなわち、本明細書に別途記載しているように、抗凝固剤の抗凝固効果を阻害する望ましい生物学的活性を有する。さらに、このようなバリアント型プロトロンビン又はトロンビンはトロンビン阻害剤(特にDTI)などの抗凝固剤に結合する特性を呈し、一般的にトロンビンに比べて低下した凝固促進活性を有する。
トロンビン阻害剤(DTIを含む)などの抗凝固剤へのバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの結合を測定する結合アッセイは当該技術分野で周知である(例えば後述の実験セクション、並びにKelly et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:6040-6044、Hosokawa et al. (2001) Biochemical Journal. 354:309-313、Schmitz et al. (1991) Europ. J. Biochem., 195:251-256及びOkamoto et al. (1981) Biochem. & Biophys. Res. Comm., 101:440-446を参照)。本発明の一実施形態においては、バリアント型プロトロンビン及びトロンビンは、DTIとの結合に利用可能な活性(触媒)部位及びエキソサイトIの両方を有する。トロンビンの活性部位間隙には2つの突出した挿入ループ(すなわち、60−ループ及び148−ループ)が隣接し、これらのループは基質及び阻害剤と活性部位との相互作用を部分的に制御している(Bode et al. (1989) EMBO J., 8:3467-3475、Le Bonniec et al. (1993) J. Biol. Chem., 268:19055-19061及びLe Bonniec et al. (1992) J. Biol. Chem., 267:19341-19348)。エキソサイトI及びIIはトロンビン表面のほぼ反対に位置する電気的陽性部位であり、複数の基質と結合することが知られている(Stubbs and Bode (1993) Thromb. Res., 69:1-58及びBode et al. (1992) Protein Sci., 1:26-471)。例えば、エキソサイトIはフィブリノーゲン並びにフィブリンI及びIIに結合することが知られており(例えばNaski et al. (1990) J. Biol. Chem., 265:13484-13489及びNaski and Shafer (1991) J. Biol. Chem., 266:13003-13010参照)、一方エキソサイトIIはヘパリン及びその他のグリコサミノグリカンに結合することが知られている(Bode et al. (1992) Protein Sci., 1:26-471及びGan et al. (1994) J. Biol. Chem., 269:1301-1305)。
本明細書において「凝固促進剤」とは、可溶性の循環フィブリノーゲンを不溶性の架橋されたフィブリン網に変化させて血液凝固プロセスを開始又は加速させる薬剤を意味する。凝固促進剤の例としては、フィブリノーゲンをフィブリンに切断することができるタンパク質分解活性を有する、天然トロンビン又はそのバリアントを挙げることができる。インビトロにおいて、凝固促進剤は最終的に血餅を生じさせる。インビボにおいて、凝固促進剤は最終的に病的な状態で血栓を生じさせる。本明細書において「血栓」とは、動物又はヒトの病的状態から生じる、血液成分から形成される血管内の凝固塊を意味する。通常、血栓の構成要素の比率は、循環血液の同一成分の組成比とは異なる。血栓はフィブリノーゲンのフィブリンへの切断、血小板の活性化及び架橋されたフィブリン網への血小板の粘着を含む動的プロセス(dynamic process)によってインビボで生じる。
本明細書において低下した凝固促進活性は、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンに対して、そのPA/FC比率(「相対抗凝固力価(relative anticoagulant potency)」又は「RAP」とも呼ばれる)を計算することで決定することができる(例えばDi Cera (1998) Trends Cardiovasc. Med., 8:340-350及びDang et al. (1997) Nat. Biotechnol., 15:146-149参照)。本明細書において「PA/FC比率」とは、トロンビンと比較したときに、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンに残っている野生型プロテインC活性化(PA)活性のパーセントとバリアント型プロトロンビン又はトロンビンに残っている野生型フィブリノーゲン凝固(FC)活性のパーセントとの比率を意味する。1.0より大きいPA/FC値は、プロテインC活性化により生じる残留抗凝固活性と比較して、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンの凝固促進的なフィブリノーゲン切断活性が低下していることを示す。
本発明の一実施形態においては、方法は、トロンビン変異体W215A/E217A(配列番号1)及びW215A(配列番号2)又はこれらのバリアント(米国特許第6706512号参照。その全体を本願に組み込んだものとする)などのバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの使用を含む。これらのトロンビン変異体は、インビトロ及びインビボにおける抗凝固剤/抗血栓剤として以前から研究されている。下記の実験セクションに詳述するように、本発明は、これらのトロンビン変異体が上述した抗凝固剤の抗凝固効果を阻害する生物学的活性を示すという発見に関する。W215A/E217A及びW215Aは共に、トロンビンと比較して実質的に低下したdフィブリノーゲン切断活性を示し、一方でトロンボモジュリン存在下におけるプロテインC活性化能は保存されている。W215A/E217A及びW215Aは、単体の薬剤として静脈内投与されると、内皮トロンボモジュリンと協調して血漿プロテインCを活性化し、抗凝固剤として機能する。しかし、これらのトロンビン変異体をDTIなどのトロンビン阻害剤存在下で投与すると、トロンビン変異体はトロンビン阻害剤に直接結合する。この結合により、W215A/E217A及びW215Aに本来存在する(APC活性化を介した)抗凝固剤としての活性がブロックされる。その結果、内因的に生成された天然トロンビンでDTIに結合しているものの比率を減少させ、血小板及びフィブリノーゲンが活性化される(図1参照)。
本発明の方法に使用するためのトロンビン変異体W215A/E217A及びW215Aのバリアントの例としては、配列番号1に示されるW215A/E217Aのアミノ酸配列及び配列番号2に示されるW215Aのアミノ酸配列に対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有し、配列番号1又は2の263及び/又は265位に相当する位置にアラニン残基を有するトロンビン変異体を挙げることができる。上記の通り、このようなバリアントは生物学的活性を有し(すなわち、これらは抗凝固剤の抗凝固効果を阻害する)、トロンビン阻害剤(特にDTI)などの抗凝固剤に結合する特性を示し、通常、トロンビンと比較して低下した凝固促進活性を有する。
本発明の別の実施形態では、方法は、本明細書に記載のバリアント型プロトロンビン又はトロンビンのいずれかのフラグメントが、生物学的活性を有し(すなわち、これらは抗凝固剤の抗凝固効果を阻害する)、トロンビン阻害剤(特にDTI)などの抗凝固剤に結合する特性を示し、通常、トロンビンと比較してreduced凝固促進活性を有する限り、そのようなフラグメントの使用を含む。「フラグメント」とは、アミノ酸配列の一部を意図し、通常、少なくとも15、25、30、50、100、150、200、又は250個の連続したアミノ酸を含むか、又は本明細書に記載のバリアント型プロトロンビン又はトロンビンに存在するアミノ酸の総数までのアミノ酸を含む。
本発明の一実施形態においては、方法は抗凝固剤の抗凝固効果を阻害することを含む。抗凝固剤の例はトロンビン阻害剤であり、間接トロンビン阻害剤及びDTIの両方が含まれる。間接トロンビン阻害剤の例としては、ヘパリン、クマリン、デルマタン、及びトロンボモジュリンを挙げることができる。DTIの例としては、アルガトロバン又はその誘導体若しくはアナログ、ヒルジン又はその組換え若しくは合成誘導体若しくはアナログ、トリペプチドPhe−Pro−Argの誘導体、クロロメチルケトン誘導体、キシメラガトラン又はその誘導体、代謝産物、若しくはアナログ、トリアビン(Triabin)などのアニオン結合エキソサイト阻害剤、及びRNA/DNAアプタマーを挙げることができる(例えばNoeske-Jungblut et al. (1995) J. Biol. Chem., 270:28629-28634及びJeter et al. (2004) FEBS Letters, 568:10-14参照)。ヒルジンの組換え又は合成の、誘導体又はアナログ(「ヒルログ」)は、特に限定されないが、ビバリルジン、レピルジン、デシルジン等を挙げることができる。キシメラガトランの代謝産物は特に限定されないが、メラガトラン等を挙げることができる。
特定の実施形態においては、DTIはアルガトロバンである。アルガトロバンは合成抗凝固剤であって、その効果はトロンビンの触媒ドメイン(活性部位とも呼ばれる)との化学的複合体の形成に基づいている。アルガトロバンが結合するとトロンビンの触媒作用が消失し、それにより血小板の活性化及びフィブリン形成が阻害される。アルガトロバンはアルギニン由来の小さなトロンビン阻害剤であり、その分子量は526.66である。トロンビンへの強い親和性(Ki値:0.04μmol/l)及び直接的な作用機序から、ヘパリン起因性血小板減少症患者への抗凝固などに臨床応用されている。しかしながら、その有用な効果にも関わらず、アルガトロバンには利用可能な解毒剤がないため、臨床における使用は一部制限されている。そこで、本発明の好ましい実施形態においては、それを必要とする患者にバリアント型プロトロンビン又はトロンビン、特にトロンビン変異体W215A/E217A、W215A、及びそのバリアントを投与することを含む、アルガトロバンの抗凝固効果を阻害する方法を提供する。
本発明の別の実施形態においては、DTIは合成トロンビン阻害剤キシメラガトランである。キシメラガトランは肝臓でその活性型であるメラガトランに代謝される。アルガトロバン同様、メラガトランも触媒部位指向型のトロンビン阻害剤であり、(アルガトロバン、ビバリルジン、及び組換えヒルジンなど従来の静注薬物と対照的に)最初の経口剤型のトロンビン阻害剤である。そこで、本発明の好ましい実施形態においては、それを必要とする患者にバリアント型プロトロンビン又はトロンビン、特にトロンビン変異体W215A/E217A、W215A、及びそのバリアントを投与することを含む、キシメラガトラン及び/又はその代謝産物メラガトランの抗凝固効果を阻害する方法を提供する。
上述のように本発明は、それを必要とする患者においてトロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法であって、患者に本明細書に記載のトロンビン変異体を治療有効量投与することを含む方法を提供する。「治療有効量」とは、本明細書に別途定義しているように抗凝固剤の抗凝固効果を阻害するのに十分なトロンビン変異体の量を意図する(すなわち、抗凝固剤の効果を少なくとも一部逆転(〜100%の逆転まで含む)させるのに十分な量)。
本明細書において「患者」とは任意の動物、好ましくはヒトを指し、家畜、農業用動物、又は希少動物を含む。特定の実施形態においてはヒトは成人(18歳以上)であり、別の実施形態においてはヒトは子供(18歳未満)である。子供は新生児, 乳児, 幼児、思春期前、又は思秋期後の子供であってもよく、年齢で言うとほぼ出生時、1ヶ月〜約2歳、約1歳〜5歳、約4歳〜約9歳、約8歳〜約14歳、又は約13歳〜約18歳の子供であってもよい。さらに、ヒトは約55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95歳であってもよい。
本発明の方法に使用するためのトロンビン変異体は、薬学的に有用な組成物(例えば薬学的に許容される輸送担体との混合物)の周知の調製方法に従って処方することができる。好適な担体及びその処方については、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (16th ed., Osol, A. (ed.), Mack, Easton PA (1980)に記載されている。効果的投与に適した薬学的に許容される組成物を調製するために、そのような組成物は、有効量のトロンビン変異体を単独又は好適な量の輸送担体と一緒に含んでもよい。
本明細書において「薬学的に許容される」とは、生物学的に活性でありながら、それを受容するヒト又は動物の生理にその生存能力に損傷を与える程のダメージを与えないトロンビン変異体又はその他の治療薬剤若しくは治療化合物を意味する。
本発明の方法に使用するために、本明細書に記載のトロンビン変異体は、それ自体を投与してもよく、薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。薬として使用する場合、トロンビン変異体の塩は薬学的及び薬理学的に許容されるものであるべきであるが、薬学的に許容されない塩も、遊離活性化合物又はその薬学的に許容される塩を調製するために適宜使用することができ、本発明の範囲から排除されるものではない。このような薬理学的及び薬学的に許容される塩は、本明細書に記載しているように、文献に詳述されている標準的な方法を用いて、本明細書に記載のトロンビン変異体と有機酸又は無機酸との反応により調製することができる。薬学的に許容される塩の例としては、トスグレート(tosglate)、メテンスルホネート(methenesulfurate)アセテート、シトレート、マロネート、タータレート、スクシネート、ベンゾエート等の生理学的に許容されるアニオンから形成される有機酸塩を挙げることができる。無機酸塩は、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、炭酸塩等から形成することができる。また、薬学的に許容される塩はアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として調製することができる(例えばカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩)。
医薬組成物は、好適な担体、希釈剤、又は滅菌水、生理食塩水、グルコース等の賦形剤との混合物として投与してもよい。組成物は望ましい投与経路及び製剤に応じて、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化剤又は粘度増強剤、保存剤、着香料、着色料などの補助剤を含有してもよい
トロンビン変異体を含む医薬組成物は、特定の患者の年齢、性別、体重、種、及び状態、並びに投与経路などの要素を考慮して、医学又は獣医学分野の当業者に周知の用量及び技術で投与することができる。投与経路は、安全かつ治療に有効な投与量で本発明の組成物を動物又はヒトの血液に送達する任意の経路であってよい。投与形態は特に制限されないが、局所、腸内、非経口等の投与経路を挙げることができる。腸内経路の例としては、経口投与及び胃腸投与を挙げることができる。非経口投与の例としては、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、経粘膜投与等を挙げることができる。その他の投与経路としては、硬膜外投与、鞘内投与等を挙げることができる。
投与に有効な用量及び経路は、化合物の治療域及び性質によって決定され、また、患者の年齢、体重、及び状態などの周知の要素、並びにLD50及びその他の公知のスクリーニング手法によっても決定され、これらは周知であり、過度な実験を要しない。
本明細書において「用量」とは、動物又はヒトに投与されるバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの量を意味する。受容者への治療薬剤の送達は、ボーラス又は持続性(連続的又は断続的)の送達であってよい。ある用量の送達が一定期間(数分〜数日、数週間、数ヶ月であってもよく、数年の長期間にわたって投与されてもよい)にわたって持続される場合、用量は治療薬剤の重量/患者のkg体重/送達単位時間として表すことができる。
本発明の一実施形態においては、トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するために、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンを、それを必要とする患者に約0.1ng〜約500mg/kg体重、約10ng〜約300mg/kg体重、約100ng〜約200mg/kg体重、約1mg〜約100mg/kg体重、約1mg〜約50mg/kg体重、又は約1mg〜約1mg/kg体重の投与量でボーラス投与する。あるいは、治療有効量を得るために投与するバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの量は約0.1ng、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、30mg、40mg、若しくは50mg/kg体重又はそれ以上である。本発明の一態様では、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンはW215A/E217A若しくはW215A、又はそのバリアントであり、非経口投与、好ましくは静脈内投与される。
本発明の別の実施形態においては、トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するために、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンを、それを必要とする患者に約0.1ng、1ng、10ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μg、又は1mg/kg体重/分、又はそれ以上の投与量で持続投与する。本発明の一態様においては、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンはW215A/E217A若しくはW215A、又はそのバリアントであり、非経口投与、好ましくは静脈内投与される。
本発明のさらに別の実施形態においては、トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するために、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンを、それを必要とする患者に0.1ng/ml、1ng/ml、10ng/ml、100ng/ml、200ng/ml、300ng/ml、400ng/ml、500ng/ml、600ng/ml、700ng/ml、800ng/ml、900ng/ml、1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、4μg/ml、5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/ml、11μg/ml、12μg/ml、13μg/ml、14μg/ml、15μg/ml、16μg/ml、17μg/ml、18μg/ml、19μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/ml、若しくは100μg/ml又はそれ以上の血漿濃度を得るのに十分な投与量で投与する。本発明の一態様においては、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンはW215A/E217A若しくはW215A、又はそのバリアントであり、非経口投与、好ましくは静脈内投与される。
本発明の別の実施形態においては、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンを主要な活性薬剤として、追加的な活性薬剤と一緒にそれを必要とする患者に投与する、トロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害するための併用療法が提供される。このような併用療法の実施は、異なる活性薬剤を単一組成物で投与するか、異なる活性薬剤を別々の組成物で同時に投与するか、又は異なる活性薬剤を順次投与することで行ってもよい。この併用療法には、バリアント型プロトロンビン又はトロンビンが既に投与されている患者においてその患者の薬物投与計画に別の活性薬剤が追加される状況も含まれ、また、別の人間(例えば、医師又は医療専門家)によってその組合せの個別の成分が患者に投与される場合も含まれる。
この追加的な活性薬剤は、常にではないが一般的に、トロンビン阻害剤の抗凝固効果の阻害に有効な薬剤及び/又はバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの効果を亢進するか増強する薬剤である。好ましい実施形態においては、追加的な活性薬剤は止血剤、すなわち止血を促進する薬剤である。
本明細書において「止血」とは、血管系傷害後の血液循環の整合性を維持する協調的機序を意味する。血管に傷害のない正常な循環では、血小板は活性化されていなく、遊離して循環している。血管の傷害は内皮細胞下組織を露出させ、血小板がそこに粘着することができる。粘着血小板は他の循環血小板を誘引し、予備的な栓を形成する。この栓は毛細管又はその他の小血管の漏出を閉じるのに特に有用である。これらのイベントを一次止血という。通常、一次止血のすぐ後に、連鎖した酵素反応のカスケードを含む二次止血が続き、これにより血漿凝固が起こり、血小板による一次の栓(primary platelet plug)が強化される。したがって、止血剤とは、血管壁の収縮、形成された血液要素の粘着及び凝集、血液又は血漿の凝固などの止血に関わる生理的プロセスのいずれかを促進又は亢進することで出血を遅らせる又は止める任意の薬剤である。
本発明の併用療法での使用に特に好ましい止血剤の例としては、活性化第VII因子 (FVIIa)又は活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤(APCC)を挙げることができる。FVIIa及びAPCCはどちらも、インヒビターが出現した血友病患者の出血を処置するための止血剤として開発された(Scharrer (1999) Haemophilia, 5:253-259;Shapiro et al. (1998) Thromb. Haemost., 80:773-778、Lusher et al. (1980) N. Engl. J. Med., 303:421-425、Sjamsoedin et al. (1981) N. Engl. J. Med., 305:717-21及びNegrier et al. (1997) Thromb. Haemost., 77:1113-1119)。APCCの主要な活性成分はプロトロンビンであり、止血及び血栓成長の両方に寄与する(Akhavan et al. (2000) Thromb. Haemost., 84:989-997及びXi et al. (1989) Thromb. Haemost., 62:788-791)。一方、FVIIaの血漿濃度の上昇は、TF/FVIIa複合体が第IX及び第X因子を活性化する組織因子(TF)依存的経路を介して、主にトロンビン生成を増加させると考えられる(Hoffman and Monroe (2001) Thromb. Haemost., 85:958-965)。
また、本発明は、バリアント型プロトロンビン又はトロンビン滴定アッセイを用いた、患者の血漿又は全血中の抗凝固剤濃度を定量する方法を提供する。特に、本発明は患者の血漿又は全血中のトロンビン阻害剤、特にDTIの濃度を定量する方法を提供する。下記の実験セクションに詳述するように、このような方法は全血又は血漿試料における血塊形成の開始と試料中に存在するトロンビン阻害剤及びバリアント型プロトロンビン又はトロンビンの相対濃度との関係に基づいている。凝血開始までの時間は、トロンビン阻害剤とバリアント型プロトロンビン又はトロンビンのモル比が1.0に近いとき、最も短いと予想される。バリアント型プロトロンビン又はトロンビンが過剰の場合、これらのトロンビン変異体はトロンボモジュリンに結合してプロテインCを活性化し、凝血開始までの時間が長くなると予想される。
一実施形態において、抗凝固剤濃度を定量する方法は、トロンビン阻害剤、特にDTIの濃度の定量を含む。この方法は、a)患者から血漿又は全血試料を採取するステップ;b)血漿又は全血試料にトロンボモジュリンを添加するステップ;c)一連の試験チャンバーに、様々な濃度に上昇させた(increasing concentrations of)トロンビン変異体をロードするステップ;d)各試験チャンバーに血漿又は全血試料を等量添加するステップ;e)各試験チャンバーにおいて血漿又は全血試料の凝血開始までの時間を測定するステップ;f)凝血開始までの時間が最も短い試験チャンバーを選択するステップ;及びg)血漿又は血液中の直接トロンビン阻害剤濃度が、選択しなかった試験チャンバーにおけるトロンビン変異体濃度と比較して、選択した試験チャンバーにおけるトロンビン変異体濃度に最も近い濃度であると評価するステップ、を含む。これらの方法に使用するトロンビン変異体としては、W215A/E217A若しくはW215A、又はそのバリアントが好ましい。
本発明に基づく抗凝固剤濃度の定量方法に関して、凝血開始までの時間は、血塊形成の開始を測定するための任意の標準的な試験を用いて測定することができ、そのような試験は当該技術分野で周知であり、例えば、上述のAPTT又は活性化凝血時間(ACT;Hattersley (1966) J. Am. Med. Assoc., 196:436-440参照)がある。
本明細書において「試験チャンバー」とは、血塊形成の開始について血漿又は全血試料を試験することができる任意の装置又はデバイスを意味し、例えばマルチウェル・ディッシュ、フラスコ、ボトル、スライド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以上、本発明について一般的に記述してきたが、本明細書に記載の特定の具体例を参照することでさらによく理解されるであろう。これらの具体例は説明のためだけのものであり、特に明示しない限り、本発明を限定することを意図するものではない。
実験
トロンビン変異体W215A/E217Aは、インビトロ及びインビボにおける抗凝固剤/抗血栓剤としてこれまで研究されてきた。W215A/E217Aは、触媒ドメインへの二重変異により、血小板活性化及びフィブリノーゲン切断が大きく低下しているが、トロンボモジュリン存在下でプロテインCを活性化する能力は保持したままである。W215A/E217Aは、DTIへの親和性を保持しているため、DTIに対する逆転薬剤として使用し得るであろうと考えられていた。特に、W215A/E217Aは、間接又は直接トロンビン阻害剤に添加されると、最初にこれらのトロンビン阻害剤と複合体を形成し、トロンビン阻害剤と結合した、内生的に生成した天然トロンビンの程度を低下させ、血小板及びフィブリノーゲンが活性化されると考えられていた(例えば図2参照)。
ビバリルジン(1〜10μg/ml)、レピルジン(0.1〜5μg/ml)、アルガトロバン(0.5〜1.0μg/ml)、又は未分画ヘパリン(0.2〜0.5U/ml)で前処理した血漿及び全血試料中のW215A/E217Aの効果を評価した。DTI又はヘパリンの中和を、本明細書に別途記載している活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))、及びトロンビン生成の持続モニタリング(Trombinoscope(登録商標))を用いて評価した。ヘパリンについては、比較のための標準として硫酸プロタミンを用いた。
トロンビン阻害剤の効果を逆転するためのトロンビン変異体W215A/E217Aの使用
材料及び方法
材料
組換えトロンビン変異体W215A/E217Aを、以前に記述の通りに作製した(Cantwell and Di Cera (2000) Journal of Biological Chemistry, 275: 39827-39830)。可溶性トロンボモジュリンはAsahi Kasei Pharma(Oh-hito, Japan)から贈呈された。組織因子(TF)はDade-Behring(Innovin(登録商標)、Dade Behring, Marburg, Germany)から購入した。試験した直接トロンビン阻害剤には、アルガトロバン (GlaxoSmithKline, Research Triangle Park, NC)、ビバリルジン(アンジオマックス(登録商標)、Medicines Company, Parsippany, NJ)、及びレピルジン(レフルダン(登録商標)、Berlex, Montville, NJ)が含まれる。また、アンチトロンビン依存性間接阻害剤であるヘパリンナトリウム(Elkins-Sinn, Cherry Hill, NJ)についても、トロンビン変異体W215A/E217Aを評価した。ヘパリンの逆転についての標準として硫酸プロタミン(Pharmaceutical Partners, East Schaumburg, IL)を用いた。
トロンビン生成アッセイのための蛍光基質(Z−Gly−Gly−Arg−AMC HCl、分子量616.07)はBachem(Switzerland)から入手した。HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン-N’−2−エタンスルホン酸)、CaCl、BSA(ウシ血清アルブミン)及びDMSO(ジメチルスルホキシド)はSigma (Sigma, St Louis, MO)から入手した。組織因子を滅菌水10mlに溶かし、さらに有効な(working)HEPES緩衝液(20mM HEPES、140mM NaCl、5mg/ml BSA)で希釈した(1:75)。1.75mlのFluca緩衝HEPES緩衝液(pH7.35、20mM HEPES、60mg/ml BSA)をガラス試験管中の0.2mlの1M CaClに添加し、混合した後、37℃で数分間温めた。使用直前にDMSO中の100mMの蛍光基質をHEPES−CaCl溶液に50μl添加し、混合して溶解させた。これにより、この緩衝液には2.5mMの基質及び100mMのCaClが含まれる。
血漿採取のため、機関からの許可及び2週間以内にどのような投薬も受けていない6人のボランティアから書面による説明及び同意を得た後、全血試料(5ml、3.2%クエン酸三ナトリウム中)を得た。APTT及びトロンビン生成実験のために、血液を3000×g、20分間遠心分離し、乏血小板血漿(PPP)を得た。PPPはすぐに使用したか、又は−20℃で最大で2日まで保存した。TEG(登録商標)を用いた測定には、クエン酸中の全血を、採取から5分以内にカルシウムを再添加(recalcification)して使用した。全ての実験において、組換えトロンビン変異体の終濃度は5μg/mlとした。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定
また、トロンビン変異体の効果は、PTT Automate(登録商標)とSTart(登録商標)4機器(Diagnostica Stago, Asnieres, France)を用いて従来のAPTTアッセイでも評価した。APTTの測定(秒単位)は、乏血小板血漿を使い捨てキュベット(Diagnostica Stago, Parsippany, NJ)に50マイクロリットルずつ取り、APTT試薬を加えて37℃でプレインキュベートした後、試料の測定を繰り返し行った。治療濃度のDTI(0.5〜1μg/mlのアルガトロバン;0.1〜1μg/mlのレピルジン;1〜10μg/mlのビバリルジン)、及びヘパリン(0.2〜0.5U/ml))を用いて、試料の前処理を行った。トロンビン変異体を添加した後(終濃度5μg/ml)、DTI処置血漿のAPTTに対するトロンビン変異体の効果を評価した。いくつかの実験で、比較のために、触媒部位をブロックされたトロンビン(クロロメチルケトン(FPRck)で飽和されたトロンビン)を100μg/mlで使用した。
トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))
トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標), Haemoscope, Niles, IL)を用いて血塊形成の粘弾性測定を評価した。全血試料(1ml、3.2%クエン酸三ナトリウム中)にDTI(ビバリルジン5μg/ml、レピルジン1μg/ml、又はアルガトロバン0.5μg/ml)又は0.5U/mlのヘパリンのいずれかを添加(spike)した。TEG(登録商標)の測定用に、10μlの0.4M CaClを含む使い捨てカップに試料を360μlずつ取った。各試料にW215A/E217Aを添加(終濃度5μg/ml)した後、TEG(登録商標)の変動に対するこのトロンビン変異体の効果を評価した。TEG(登録商標)の変動、血塊形成の開始を表す反応時間(分)、及び血塊の強度を表す最大振幅(mm)を異なる群で比較した(Kawasaki et al. (2004) Anesthesia & Analgesia, 99:1440-1444)。
Thrombinoscope(登録商標)によるトロンビン生成のモニタリング
トロンビン生成のこの複雑な制御を評価するために、Thrombinoscope(登録商標)システムを使用した。このシステムは、多血小板血漿又は乏血小板血漿中におけるトロンビン生成のタイムコースを自動で収集することができる(Hemker et al. (2003) Pathophysiology of Haemostasis & Thrombosis, 33:4-15)。市販の蛍光基質(Z−GlyGly−Arg−AMC)を用いて内生トロンビンポテンシャルを自動評価する方法は別に詳述されている(Hemker et al. (2003) Pathophysiology of Haemostasis & Thrombosis, 33:4-15)。簡潔には、トロンビン生成実験用に、80μlのPPP及び20μlのトロンビン生成トリガーを96ウェルのマイクロタイタープレート(Microfluor2, Labsystems, Finland)のウェルに添加し、さらに20μlの基質−塩化カルシウム緩衝液を添加する。 反応は、390nm(励起波長)及び460nm(発光波長)にセットしたマイクロプレート蛍光光度計(Fluoroskan Ascent, Labsystems, Finland)を用いてモニターする。反応の進行の表示とトロンビン生成のパラメータ(ピークトロンビンレベル)の計算とを行う市販のThrombinoscopeソフトウェア(Synapse B.V)によって、発光は20秒毎に90分間記録され、得られたデータは自動的に処理される。トロンビン変異体の効果を、トロンビン変異体(5μg/ml)存在下又は非存在下で治療濃度のDTI(アルガトロバン0.5〜1μg/ml;レピルジン0.1〜5μg/ml;ビバリルジン1〜10μg/ml)で前処理したPPPで試験した。さらに、ヘパリン(0.2又は0.5U/ml)も評価した。適当な濃度のプロタミンによるヘパリンの逆転を比較のために用いた(ヘパリン100ユニット(1mg)毎にプロタミン1mg)。プロテインC活性化に対するトロンビン変異体の効果を評価するために(Regnault et al. (2003) Thrombosis and Haemostasis, 89:208-212)、可溶性トロンボモジュリン(終濃度0.75μg/ml)を、トロンビン変異体を含有する試料血漿に添加した。
データ分析
各実験は少なくとも3人の異なる人間の試料で行った。トロンビン生成のトレース(Thrombinoscope(登録商標))及びTEG(登録商標)は、3回行った測定のうち、代表的1セットを示す。統計解析には、対応のあるt検定(両側検定)を用いて、W215A/E217Aの存在下及び非存在下で測定された変動差を決定した
結果
APTTに対するW215A/E217Aの効果
全てのDTI及びヘパリンは、濃度依存的にAPTTを延長させる(図3、パネルA〜D)。血漿にW215A/E217Aを添加すると、APTT値は正常範囲内にシフトした。活性部位をブロックされたトロンビン(FPR−TH)は、DTI又はヘパリンで延長されたAPTTに対して影響を与えなかった。
TEG(登録商標)に対するW215A/E217Aの効果
実験に用いた全ての試薬で、反応時間はコントロール値(5.9分)の少なくとも2倍延長された(図4A)。ヘパリンは45分の期間中に実質的に血塊形成を消失させた。振幅(mm)で表される血塊の強度は、レピルジン及びビバリルジンではほとんど影響されなかった(minimally affected)が、アルガトロバンで減少した(図4B)。全てのDTIで、W215A/E217A(5μg/ml)を添加すると、反応時間及び振幅変動の両方が正常に逆転された(図4A、5A)。ヘパリンでは、W215A/E217Aによって反応時間が顕著に短縮された(45分から14分、p<0.01)が、振幅は硫酸プロタミンと比較して中程度(不完全)の回復を示した(図5B)。可溶性トロンボモジュリン(0.75μg/ml)存在下において、5μg/mlのW215A/E217Aは開始を遅らせ、血塊強度を低下させた(図5A)。
トロンビン生成に対するW215A/E217Aの効果
血漿にW215A/E217A(5μg/ml)を添加すると、トロンビン生成のピークが減少し、この効果は可溶性トロンボモジュリン(0.75μg/ml)の添加により実質的に増強された(図6A)。ビバリルジン及びレピルジンはトロンビン生成の開始を遅らせたが、ピークレベルは減少させなかった(それぞれ図6B及び6C)。W215A/E217Aは、延長されたトロンビン生成の潜伏期間を短縮する効果を有していた。 血漿にアルガトロバンを添加すると、投与量依存的に、発症が延長し、トロンビン生成のピークが減少した(図6D)。W215A/E217Aを添加すると、開始は短縮されたが、ピークトロンビン生成は減少しなかった。しかし、0.5及び1μg/mlのアルガトロバンでは、ピークトロンビンレベルが中程度の量(>100nM)になることが観察された(図6D)。ヘパリン(0.2U/ml)存在下ではトロンビン生成は鈍化し、5μg/mlのW215A/E217A又は2μg/mlの硫酸プロタミンを添加すると開始が早まり、硫酸プロタミンだけがトロンビン形成のピークレベルを逆転した。
要約
実験に用いた全てのアンチトロンビン薬剤が濃度依存的にAPTTを延長させ(46.6〜180秒vsコントロール36秒)、この延長は5μg/mlのW215A/E217Aで逆転された。DTI及びヘパリンは血塊形成の開始を遅らせ(>14分vsコントロール5.9分)、TEG(登録商標)において血塊強度を減少させた。トロンビン変異体W215A/E217Aは、ヘパリン及びDTIによって延長されたAPTT、トロンビン生成、及びTEG(登録商標)の遅延時間を短縮させた。トロンビンの生成量及びその後の血塊形成は、W215A/E217Aによって、DTIで抗凝固処置した試料においては完全に回復し、ヘパリン処置試料では部分的に回復した。5μg/mlのW215A/E217Aは、DTI存在下ではTEG(登録商標)変動を効果的に逆転したが、ヘパリンに対してはプロタミンと比較して中程度の効果だった。トロンビン生成アッセイでは、5μg/mlのW215A/E217Aは、ビバリルジン及びレピルジンの両方で遅延及びピークトロンビンを回復させた。アルガトロバンに大して、W215A/E217Aは遅延を顕著に短縮させたが、ピークトロンビンは減少させなかった。硫酸プロタミンの方がヘパリンの中和に効果的であったが、W215A/E217Aの方が遅延は短かった。これらの結果は、W215A/E217AがDTIを逆転するための薬剤として治療に使用可能であり、ヘパリンによる抗凝固を逆転するための二次治療としても潜在的に使用可能であることを示している。
トロンビンは、止血のための血小板及びフィブリノーゲンの活性化並びに抗凝固因子であるプロテインCの活性化において重要な生理的役割を果たしている。W215A/E217Aは内皮トロンボモジュリン存在下でプロテインCを活性化し、血小板PAR−1、フィブリノーゲン及びアンチトロンビンに対する触媒活性が顕著低下している新規のトロンビン変異体である(Cantwell and Di Cera (2000) Journal of Biological Chemistry, 275:39827-39830及びGruber et al. (2002) Journal of Biological Chemistry, 277:27581-27584)。W215A/E217Aは、単体薬剤として静脈内投与されると、内皮トロンボモジュリンと協調して血漿プロテインCを活性化する抗凝固剤として機能する。しかし、DTI存在下で投与されると、W215A/E217Aはトロンビン阻害剤に直接結合し、W215A/E217Aの本来の抗凝固活性(APC活性化)がDTIによってブロックされる(Linder et al. (1999) Thrombosis Research, 95:117-125)。その結果、損傷部位において、DTIに結合した、内生的に生成した天然トロンビンの比率が低下し、血小板及びフィブリノーゲンが活性化される(図2参照)。
W215A/E217Aに関する利用可能なデータから、アミノ末端がFPRPでカルボキシル末端がヒルジンドデカペプチドに類似のビバリルジンの結合が強く支持されている(Kelly et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:6040-6044)。レピルジン及びビバリルジンの作用機序は、トロンビンの触媒ドメイン及びエキソサイトIへのトロンビン阻害剤の2価の結合である。FPRck−結合W215A/E217Aの結晶構造研究は、ビバリルジンのアミノ末端の結合を支持しており、modulateされていないエキソサイトIはカルボキシル末端のドデカペプチドの結合に利用可能である。FPRck−結合天然トロンビンが有効性を示さなかったこと及び本来の抗凝固作用を有していることから、トロンビン変異体の触媒ドメイン及びエキソサイトIの両方が利用可能であることが、DTIの逆転に重要であると考えられる(Hosokawa et al. (2001) Biochemical Journal, 354:309-313)。この知見は、アミノ末端のトリペプチドFPR及びカルボキシル末端のドデカペプチドのどちらもビバリルジンほどのアンチトロンビン効果を示さなかったことから(Kelly et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:6040-6044)、2つの異なるトロンビン部位における2価DTIの結合の向上(Schmitz et al. (1991) European Journal of Biochemistry, 195:251-256)を説明するものである。
対照的に、アルガトロバン、メラガトラン(キシメラガトランの活性型)などの小分子トロンビン阻害剤はトロンビンの活性部位にのみ結合する(Okamoto et al. (1981) Biochemical & Biophysical Research Communications, 101:440-446)。今回のアルガトロバンに関するデータは、W215A/E217Aの触媒ドメインに、FPRckと同様に1価の阻害剤がアクセスできることを示唆している。
ヘパリンは、アンチトロンビン(AT)によるトロンビン阻害を仲介する。アンチトロンビンは、DTIと全く(uniquely)異なる内生SERPINである。このグリコサミノグリカンはATのコンフォメーション変化を誘導し(Johnson and Huntington (2003) Biochemistry, 42:8712-8719及びO'Keeffe et al. (2004) Journal of Biological Chemistry, 279:50267-50273)、ATの反応センターループによりトロンビンの触媒部位が不可逆的に阻害される。これらの阻害反応は、トロンビンエキソサイトIIへのヘパリンの結合により支持される。このようなW215A/E217Aとヘパリンの間のエキソサイト相互作用は、この変異体のエキソサイトが調節されていないために起こるのかも知れない。しかし、DTIとの相互作用とは対照的に、W215A/E217Aは、TEG(登録商標)において、AT−ヘパリン存在下でピークトロンビン生成をほとんど上昇させず(minimally increased)、血塊強度を一部回復させただけであった。ヘパリン存在下のW215A/E217AによるAPTTの回復は顕著であったが、APTTの終点はトロンビン生成の初期段階(5〜10nM)であり、したがってトロンビンの総量は反映されない(Rand et al. (1996) Blood, 88:3432-3445)。W215A/E217AはATへの親和性が大きく低下しており(Cantwell and Di Cera (2000) Journal of Biological Chemistry, 275:39827-39830)、他のトロンビン変異体(例えばE192Q、desETW)も、ヘパリンで回復されたATへの親和性の欠失を示している(Le Bonniec et al. (1995) Biochemistry, 34:12241-12248)。今回のデータは、ヘパリン化した血液にW215A/E217Aを添加すると内生トロンビン生成が少しだけ上昇することを示していた。このことは、W215A/E217Aを非常に特異性の高いDTI逆転薬剤とし、かつAT−ヘパリン複合体の吸着が実際にAT欠乏症及び血栓形成促進状態になることがある(Petaja et al. (1996) Journal of Thoracic & Cardiovascular Surgery, 112:665-671)ことから、W215A/E217Aはインビボの安全性を高める可能性が高いと考えられる。
現在、ヘパリンは心臓手術で使用される主流の抗凝固剤である。凝固はプロタミンで速やかに逆転されるものの、心肺バイパスを使用する心臓手術を受ける患者の3〜5%で重篤な術後出血が起こる(Dacey et al. (1998) Archives of Surgery, 133:442-447)。プロタミンにアレルギーのある患者では重度の有害事象が発現することがあり、ヘパリンを逆転する代わりのプロトコールはない(Williams et al. (1994) Journal of Thoracic & Cardiovascular Surgery, 108:975-983及びStafford-Smith et al. (2005) Anesthesiology, 103:229-240)。もし、今回のデータで実証されたように、手術の終局にDTIを逆転させることができれば、これらの薬剤はヘパリン又はプロタミンが禁忌の場合に使用することができる。
DTIに関連する心手技後出血は制御が困難な場合が多い。なぜなら、大量の強力なDTIを、強力な抗血小板剤と併用する(Maroo and Lincoff (2004) Seminars in Thrombosis & Hemostasis, 30:329-336)か又は血小板減少症状態で使用する(Dyke et al. (2005) Annals of Thoracic Surgery, 80:299-303))ためである。最近のオフポンプ冠動脈手術におけるビバリルジン及びヘパリン−プロタミンの治験では、どちらの群も同じ程度の術後12時間の胸腔チューブドレナージ(中央値:793vs805ml)であったが、失血の範囲はビバリルジン群で大きく変化していた(320〜4、909ml、n=50)(Merry et al. (2004) Annals of Thoracic Surgery, 77:925-931)。過失による過剰投与、(アルガトロバンに対する)肝障害(Swan and Hursting (2000) Pharmacotherapy, 20:318-329)、及び(ビバリルジン及びレピルジンに対する)腎障害(Koster et al. (2000) Annals of Thoracic Surgery, 69:37-41、Robson et al. (2002) Clinical Pharmacology & Therapeutics, 71:433-439及びChew et al. (2005) American Journal of Cardiology, 95:581-585)は全て、出血リスクの増大の原因となる。したがって、DTIの新規の解毒剤が必要とされていることは明らかである。
出血リスクを減らすために、様々な解毒原理が、特にレピルジンに対して、探索されてきた。ヒルジン及びその合成アナログの中和薬剤として、ジイソプロピルホスホロトロンビン(DIPトロンビン)又はベンゾイルトロンビンなどのγ−トロンビン標品の使用(Bruggener et al. (1989) Pharmazie, 4:648-649)、及びプロトロンビン中間体であるメイゾトロンビンの使用(Nowak and Bucha (1995) Thrombosis Research, 80:317-325)が提案されてきた。今日まで、これらの標品は毒性が強すぎるか又は液相で効果を発揮しないため、現実的な成功を収めていない。DTI関連出血への別のアプローチとして、組換え活性化第VII因子(ノボセブン(登録商標))(Hein et al. (2005) Artificial Organs, 29:507-510及びMalherbe et al. (2004) Anesthesiology, 100:443-445)及びFEIBA又はAutoplex標品(Irani et al. (1995) American Journal of Cardiology, 75:422-423及びElg et al. (2001) Thrombosis Research, 101:159-170)などの止血因子製品の輸血があるが、活性化血漿製品は血栓形成促進性の合併症が付随することがある(Bui et al. (2002) Journal of Thoracic & Cardiovascular Surgery, 124:852-854及びAledort (2004) Journal of Thrombosis & Haemostasis, 2:1700-1708)。したがって、解毒剤の性質は非血栓形成性であることが合理的である。ヘパリナーゼIがプロタミンに取って変わらなかったのは、低分子ヘパリンが生成されること及び内皮グリコサミノグリカンを分解する可能性があることによるものであろう。逆に、トロンビン変異体W215A/E217Aは静脈内投与されるとプロテインCを全身で活性化するため、W215A/E217Aは安全域を増やすものである。そのため、抗凝固活性(Chu et al. (2001) British Journal of Haematology, 115:392-399)及びプロテインC活性化の増強(Slungaard and Key (1994) Journal of Biological Chemistry, 269:25549-25556)を本来発揮するプロタミンによるヘパリンの急速な逆転を比較的安全なものにする。
今回の実験で使用したヘパリン及びDTIの濃度は、ヘパリン(0.5U/ml;3.3mM)、アルガトロバン(0.5〜1.0μg/ml;1〜2μM)、ビバリルジン(5〜10μg/ml;2.3〜4.6μM)、及びレピルジン(1μg/ml;0.14μM)の治療範囲である。W215A/E217Aのモル濃度(5μg/ml又は0.14μM)は、ほとんどの場合、トロンビン阻害剤のモル濃度より低い(W215A/E217Aを37kDaと仮定)。モル比に加え、トロンビンに対するKi値の相対的差異(レピルジン>>ビバリルジン>アルガトロバン)もW215A/E217Aへの結合に影響し得る。W215A/E217Aは、発現が早く、トロンビン生成が十分(ピークトロンビン100nM超、図6D)であるため、インビボで止血を回復させ得る。 非ヒトモデル霊長類においてW215A/E217Aのインビボ血漿濃度は3.75μg/mlに達することもあり(Gruber et al. (2002) Journal of Biological Chemistry, 277:27581-27584)、ヘパリン及びDTIによる抗凝固剤の存在下でも高投与量の計画で安全に使用することができる。
要約すると、本発明の知見は、凝固促進活性が実質的に低下したバリアント型トロンビン及びプロトロンビンを内生トロンビン機能の回復に使用することができることを実証している。とりわけ、トロンビン変異体W215A/E217Aは静脈注射に好適な形態で利用可能であり(Gruber et al. (2002) Journal of Biological Chemistry, 277:27581-27584)、その臨床的有用性を確認するためのインビボにおけるさらなる研究が進行中である。
患者の血漿又は全血中のDTIを定量するための滴定アッセイ
トロンビン変異体W215A/E217A(WE)を使用した、患者の血漿又は全血中のDTIを定量するアッセイを以下に記載する。Hepcon HMS Plus 6-channel ACT system(Medtronic Perfusion Systems, Minneapolis, MN)に基づき、カートリッジフォーマットを用いて、表2に記載の通り、6チャネルのウェルに所定のレベルのWEを予め挿入しておく。
Figure 2009530312
DTIを含む血漿又は全血試料を患者から採取する。これらの試料を、トロンビンの内生阻害剤であるトロンボモジュリン(終濃度0.03μg/ml)を含むシリンジに入れる。等量の血漿又は全血試料を各ウェルに添加する。各ウェルの試料の凝血開始までの時間を、当業者に周知の方法で、上述したAPTT又は活性化凝血時間(ACT)を用いて測定する(例えばHattersley (1966) J. Am. Med. Assoc., 196:436-440参照)。
DTIは、アンチトロンビン又はトロンボモジュリンなどのトロンビンの内生阻害剤よりもずっと早くトロンビン(又はWE)に結合するため(表3参照)。表2において、konはストップトフロー分光法を用いた結合実験から得られた、前定常状態段階におけるα−トロンビンと阻害剤との会合定数であり、kは阻害定数である。konが大きいほど、阻害剤は速やかにトロンビンに結合する。kが低いほど、トロンビンの阻害はより選択的かつ 堅固(tight)なものとなる。(例えばElg et al. (1997) Thrombosis Haemostasis,78:1286-1292及びAritomi et al. (1993) Thrombosis Haemostasis, 70:418-422参照)。DTIに対するWEのモル比が1.0に近いほど、凝血開始までの時間は最も短くなることが予想される(図7参照)。WEが過剰の場合、WEはトロンボモジュリンに結合して活性化プロテインCを活性化し、凝血開始までの時間を長引かせると予想される。逆に、DTIの方が多く利用可能な場合、存在する全てのWEがDTIで飽和され、プロテインC活性化はブロックされているものの、過剰のDTIによって凝血開始までの時間が長引くことになる。
Figure 2009530312
本明細書中で言及した全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示している。全ての刊行物及び特許出願を、各個別の刊行物及び特許出願が参照により組み込まれることを意図されたものであるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込んだものとする。
前述の発明は、明確な理解のために図示及び例示によりある程度詳細に記載してきたが、添付の請求項の範囲内で特定の変更及び修正を行うことができることは明白である。
図1は、フィブリノーゲン又はトロンビン阻害剤と野生型トロンビン又は変異体トロンビンW215A/E217A(WE)との相互作用を示す図である。図1Aは、触媒部位がフィブリノーゲンをフィブリンに切断する間に、どのようにトロンビンのエキソサイトIが初期のフィブリノーゲン結合に必要であるかを示す図である。図1Bは、ビバリルジン及びヒルジンがどのようにトロンビンの触媒部位及びエキソサイトIの両方をブロックするかを示す図である。図1Cは、アルガトロバン及びFPRck(PPACK)がどのようにトロンビンの触媒部位だけをブロックするかを示す図である。図1Dは、トロンビン触媒ドメインへの2つの変異が、その結果得られた変異体トロンビン(WE)がフィブリノーゲンを切断する能力及び血小板を活性化する能力をどのように減少させるかを示す図である。図1Eは、変異体トロンビン(WE)がどのようにトロンボモジュリン存在下でプロテインCを活性化する能力を維持しているをか示す図である。 図2は、トロンビン変異体が抗凝固剤の効果を逆転することができる機序を示す概略図である。トロンビン変異体は好ましくはDTIに結合し、内生トロンビンがDTIに結合する程度を低下させ、フィブリノーゲンの切断及び血小板の活性化を引き起こす。過剰のトロンビン又はトロンビン変異体が循環中に残ると、トロンボモジュリンとの相互作用によってプロテインCが活性化される。 図3は、トロンビン変異体W215A/E217AによるDTIの逆転を概略的に描いた図である。様々な濃度の各種DTIについて、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の平均値を秒単位で示す。図3Aは5、10、及び15μg/mlのビバリルジンを示す。図3Bは、0.1、1、及び5μg/mlのレピルジンを示す。図3Cは、0.5及び1μg/mlのアルガトロバンを示す。図3Dは、0.2及び0.5U/mlのヘパリンを示す。アスタリスクは各抗凝固剤レベルにおけるW215A/E217Aを使用した試料と使用していない試料との間の統計的差異を表す。各抗凝固剤レベルで、APTT値は5μg/mlのW215A/E217Aによって短縮される。活性部位が占有されたトロンビン(FPR−TH)はAPTTを短縮しない。 図4は、レピルジュイン(lepirduin)又はヘパリン存在下における血塊形成に対するW215A/E217Aの効果を測定するためのトロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))によるトレースを示す代表的な図である。図4Aはレピルジュイン(lepirduin)が血塊形成の反応(遅延)時間(トレース2)を延長させること、及びW215A/E217Aを添加すると血塊開始が正常化すること(トレース1)を示す図である。可溶性トロンボモジュリン(0.75μg/ml)の存在下で、5μg/mlのW215A/E217Aは血塊開始を遅らせ、血塊強度を減少させる(トレース3)。図4Bは、未分画ヘパリン(0.5U/ml)がコントロール(トレース4)と対照的に血塊形成(トレース7)を消失させることを示す図である。5μg/mlの硫酸プロタミンは、発生を完全に回復させ、それより程度は低いが血塊強度も回復させる(トレース5)。5μg/mlのW215A/E217Aを添加すると、開始が短縮されるが(トレース6)、血塊形成はプロタミン処置試料よりもゆっくりなままである。 図5は、ビバリルジン、レピルジン、又はアルガトロバン存在下における血塊形成に対するW215A/E217Aの効果を測定するためのTEG(登録商標)によるトレースの代表的な図である。凝血までの反応時間の平均値を分単位で測定した。図5Aは、ビバリルジン(5μg/ml)、レピルジン(1μg/ml)、又はアルガトロバン(0.5μg/ml)の存在下で反応時間が延長されることを示す図である。各代表的抗凝固剤において、反応時間の値はW215A/E217Aによって短縮される(:p<0.01)。コントロール(抗凝固剤なし)とW215A/E217Aを含有するコントロールとで統計的な差はなかったが、可溶性トロンボモジュリン(0.75μg/ml)を添加すると反応時間が有意に延長された(:コントロールに対してp<0.01)。硫酸プロタミンはヘパリンを逆転させる(§:ヘパリンのみに対してp<0.01)。図5Bは、最大振幅(mm)の平均値が、アルガトロバン(:p<0.05)及びヘパリン(:p<0.01)では減少されたがビバリルジン及びレピルジンでは減少されなかったことを示す図である。W215A/E217Aを添加すると、全てのDTIの振幅が回復したが、ヘパリンは部分的回復のみであった。(§:硫酸プロタミンに対してp<0.05)。可溶性トロンボモジュリンと共にW215A/E217Aを添加しても振幅は減少した(:コントロールに対してp<0.05)。 図6は、一連のトロンビン生成曲線を表す図である。図6Aは、W215A/E217A(WE、5μg/ml)の添加によって血液血漿中のピークトロンビン生成がわずかに減少し、可溶性トロンボモジュリン(rhsTM、0.75μg/ml)の添加では中程度減少したことを示す図である。W215A/E217A及びトロンボモジュリンの両方を添加するとトロンビン生成はさらに鈍化した。図6Bは、ビバリルジン(Bival、10μg/ml)により誘導される凝血遅延時間の延長をW215A/E217A(WE、5μg/ml)で逆転させることができることを示す図である。図6Cは、1及び5μg/mlのレピルジンがトロンビン形成を鈍化させること及びW215A/E217A(WE、5μg/ml)の添加が発現を短縮し、かつピークトロンビン生成を減少させることを示す図である。図6Dは、0.5及び1μg/mlのアルガトロバンが発現を延長し、ピークトロンビン生成を減少させることを示す図である。W215A/E217A (WE, 5μg/ml)を添加すると、発現は短縮されたが、減少したトロンビン形成のピークレベルは逆転されなかった。図6Eは、0.2U/mlのヘパリンでトロンビン生成が鈍化されたことを示す図である。W215A/E217A(WE、5μg/ml)を添加すると、凝血開始は短縮されたが、硫酸プロタミンで処置した試料とは対照的に、減少したトロンビン形成のピークレベルは逆転しなかった。 図7は、全血又は血漿試料の直接トロンビン阻害剤(DTI)及びW215A/E217A(WE)の相対濃度と活性化凝血時間(ACT)で測定した血塊形成の開始との関係を示す図である。凝血開始までの時間は、DTIに対するWEのモル比が1.0に近いときに最も短いと予想される。WEが過剰のときは、WEはトロンボモジュリンに結合してプロテインCを活性化し、凝血開始までの時間が長くなると予想される。

Claims (28)

  1. それを必要とする患者におけるトロンビン阻害剤の抗凝固効果を阻害する方法であって、治療有効量のトロンビン変異体を前記患者に投与することを含み、前記トロンビン変異体が以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
    a)配列番号1に示されるトロンビン変異体W215A/E217Aのアミノ酸配列;
    b)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、配列番号1の263位及び265位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;
    c)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号1の263位及び265位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;
    d)配列番号2に示されるトロンビン変異体W215Aのアミノ酸配列;
    e)配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、配列番号2の263位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;及び
    f)配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号2の263位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列。
  2. トロンビン阻害剤が直接トロンビン阻害剤である、請求項1に記載の方法。
  3. 直接トロンビン阻害剤が、アルガトロバン又はその誘導体若しくはアナログ、ヒルジン又はその組換え若しくは合成の誘導体若しくはアナログ、トリペプチドPhe−Pro−Argの誘導体、クロロメチルケトン誘導体、キシメラガトラン又はその誘導体、代謝産物、若しくはアナログ、アニオン結合エキソサイト阻害剤、及びRNA/DNAアプタマーからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 直接トロンビン阻害剤がアルガトロバンである、請求項3に記載の方法。
  5. ヒルジンの、組換え又は合成の、誘導体又はアナログが、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  6. キシメラガトランの代謝産物がメラガトランである、請求項3に記載の方法。
  7. トロンビン阻害剤が間接トロンビン阻害剤である、請求項1に記載の方法。
  8. 間接トロンビン阻害剤がヘパリン、クマリン、デルマタン、又はトロンボモジュリンである、請求項7に記載の方法。
  9. トロンビン変異体が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
  10. トロンビン変異体が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
  11. トロンビン変異体が患者に非経口投与される、請求項1に記載の方法。
  12. トロンビン変異体が患者に腹腔内、静脈内、皮下、又は筋肉内投与される、請求項11に記載の方法。
  13. トロンビン変異体が患者に静脈内投与される、請求項12に記載の方法。
  14. トロンビン変異体が、体重1kg当たり約0.1ng〜約500mgの投与量で患者に投与される、請求項13に記載の方法。
  15. トロンビン変異体が、少なくとも3μg/mlの血漿濃度を達成するのに十分な投与量で患者に投与される、請求項13に記載の方法。
  16. トロンビン変異体が、3.75μg/mlの血漿濃度を達成するのに十分な投与量で患者に投与される、請求項15に記載の方法。
  17. 患者に止血剤を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  18. 止血剤が活性化第VII因子又は活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤である、請求項17に記載の方法。
  19. トロンビン変異体及び止血剤が同時投与される、請求項17に記載の方法。
  20. トロンビン変異体及び止血剤が順次投与される、請求項17に記載の方法。
  21. 以下のステップを含む、患者の血漿又は全血中の直接トロンビン阻害剤の濃度を定量する方法。
    a)前記患者から血漿又は全血試料を得るステップ;
    b)前記血漿又は全血試料にトロンボモジュリンを添加するステップ;
    c)一連の試験チャンバーに、様々な濃度に上昇させたトロンビン変異体をロードするステップ;
    d)前記血漿又は全血試料を前記試験チャンバーの各々に等量添加するステップ;
    e)前記試験チャンバーの各々における前記血漿又は全血試料の凝血開始までの時間を測定するステップ;
    f)凝血開始までの時間が最も短い試験チャンバーを選択するステップ;及び
    g)前記血漿又は全血試料中の前記直接トロンビン阻害剤の濃度が、選択しなかった試験チャンバーにおける前記トロンビン変異体の濃度と比較して、選択した試験チャンバーにおける前記トロンビン変異体の濃度に相当する濃度に最も近い濃度であると評価するステップ。
  22. トロンビン変異体が、以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の方法。
    a)配列番号1に示されるトロンビン変異体W215A/E217Aのアミノ酸配列;
    b)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、配列番号1の263位及び265位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;
    c)配列番号1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号1の263位及び265位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;
    d)配列番号2に示されるトロンビン変異体W215Aのアミノ酸配列;
    e)配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し、配列番号2の263位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列;及び
    f)配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、配列番号2の263位に相当する位置にアラニン残基を有するアミノ酸配列であって、前記トロンビン阻害剤に結合するトロンビン変異体をコードするアミノ酸配列。
  23. トロンビン変異体が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
  24. トロンビン変異体が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
  25. 直接トロンビン阻害が、アルガトロバン又はその誘導体若しくはアナログ、ヒルジン又はその組換え若しくは合成の誘導体若しくはアナログ、トリペプチドPhe−Pro−Argの誘導体、クロロメチルケトン誘導体、キシメラガトラン又はその誘導体、代謝産物、若しくはアナログ、アニオン結合エキソサイト阻害剤、及びRNA/DNAアプタマーからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
  26. 直接トロンビン阻害剤がアルガトロバンである、請求項25に記載の方法。
  27. ヒルジンの組換え又は合成の誘導体又はアナログが、ビバリルジン、レピルジン、及びデシルジンからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
  28. キシメラガトランの代謝産物がメラガトランである、請求項25に記載の方法。
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