JP2009528373A - チアジアゾール化合物および光線療法のためのその使用 - Google Patents
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Abstract
本願は、化学式(1)のチジアゾール誘導体、その組成物およびそれらの標的部位における標的化および光活性化のための使用を開示する。チアジアゾール化合物、バイオ共役体、組成物、およびin vitroおよびin vivoの生物学的処置において該化合物およびバイオ共役体を用いる方法が記載されている。該方法の一実施形態において、該化合物およびバイオ共役体は、光化学活性化合物が腫瘍または病変等の標的部位にある場合、結果として細胞に創傷または死をもたらしうるフリーラジカル等の反応中間体を生じることができる1型機構を介して作用する。該化合物は、電磁スペクトルの低エネルギー紫外線(UV−A)、可視または近赤外(NIR)領域の放射線を吸収し、腫瘍、炎症および他の病変の光診断、光線療法等に有用である。
Description
発明の分野
本発明は、一般に、新規なチアジアゾール化合物、組成物および方法に関する。
本発明は、一般に、新規なチアジアゾール化合物、組成物および方法に関する。
背景
臨床診療における可視光線および近赤外(NIR)線の使用は、急激に増加している。電磁スペクトルの可視、NIRまたは長波長(UV−A、>350nm)領域で吸収または発光する化合物は、光学断層撮影画像、内視鏡透視および光線療法に有用となる可能性がある。しかしながら、生物医学光学の主な利点は、その治療可能性にある。光線療法は、外部および内部両方のさまざまな表層病変の治療のための安全で効果的な処置であることが立証されている。その有効性は、放射線治療の有効性に匹敵するが、臨床の非標的臓器に有害な放射線毒性を与えない。
臨床診療における可視光線および近赤外(NIR)線の使用は、急激に増加している。電磁スペクトルの可視、NIRまたは長波長(UV−A、>350nm)領域で吸収または発光する化合物は、光学断層撮影画像、内視鏡透視および光線療法に有用となる可能性がある。しかしながら、生物医学光学の主な利点は、その治療可能性にある。光線療法は、外部および内部両方のさまざまな表層病変の治療のための安全で効果的な処置であることが立証されている。その有効性は、放射線治療の有効性に匹敵するが、臨床の非標的臓器に有害な放射線毒性を与えない。
光線療法は、何世紀もの間、存在し、さまざまな皮膚表層の疾患の治療に用いられている。紀元前1400年の初期に、インドで、太陽光と併用して植物の抽出物(ソラレン)を用い、白斑を治療した。1903年に、Von TappeinerとJesionekは、皮膚癌、皮膚の狼瘡および女性性器のコンジロームの治療に光増感剤としてエオシンを用いた。長年にわたって、ソラレンおよび紫外線A(低エネルギー)放射線の併用は、乾癬、類乾癬、皮膚T細胞リンパ腫、湿疹、白斑、限局性疾患、および新生児ビリルビン血症を含む多種多様の皮膚病の治療に用いられている。癌の光線療法の可能性は、1900年代初期以来、認識されているが、安全性および有効性を立証するための系統的な研究は、乳癌の治療とともに1967年に始まったにすぎない。その後、Doughertyらは、長期の治癒が、光線力学療法(PDT)を用いて可能となることを結果的に確立した。現在、光線療法の方法は、また、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄等の一部の心血管疾患治療、関節リウマチの治療、およびクローン病等の一部の炎症性疾患の治療に対して研究されている。
光線療法処置は、高い吸収性を有する光増感剤(すなわち、発色団)を必要とする。これらの化合物は、化学的に不活性で、適切な波長の光線で照射した時にだけ活性化されることが好ましい。これらの光増感剤が標的組織に結合すると、光線が引き起こす選択的な組織創傷を、直接または生体活性担体に対する結合を介してのいずれかで誘導することができる。さらに、光増感剤が、また、化学療法剤(例えば、アントラサイクリン抗腫瘍剤)であるなら、高い治療効果が達成できる。
効果的な光線療法剤は、以下の特性を有する:(a)大きなモル吸光係数;(b)長い三重項寿命;(c)高収率の一重項酸素および/または他の反応中間体、すなわち遊離ラジカル、ナイトレン、カルベン、カルボニウムイオン等の開殻イオン種等;(d)細胞成分への効率的なエネルギー移動または電子移動;(e)水性環境において凝集が生じる傾向が低い;(f)病変の効率的かつ選択的な標的化;(g)血液と非標的組織からの急速な浄化;(h)低い全身毒性;および(i)変異原性の欠如。
光増感剤は、1型および2型という2つの明確な経路を経て作用する。1型の機構を以下の図式に示す。
腫瘍光線療法剤がもたらす組織創傷の生物学的基礎は、集中的な研究の対象となっている。これらの研究で用いた光増感剤の種類や数が比較的少なくても、組織損傷に対するさまざまな適正な生化学機構を前提としてきた。これらの生化学機構は、以下の通りである:a)癌細胞は、低濃度のリポタンパク質(LDL)受容体の発現を上方に調整し、PDT剤がLDLおよびアルブミンに選択的に結合する;(b)増殖性新生血管系によってポルフィリン様物質を選択的に吸収する;(c)腫瘍は、増大した数の脂質体を含有することが多いので、疎水性の光増感剤に結合することができる;(d)「漏出性」腫瘍血管系および減少したリンパ排液が組み合わさって、ポルフィリンの蓄積を引き起こす;(e)腫瘍細胞は、ポルフィリン凝集体の食作用または飲作用に対する能力を増加させる可能性がある;(f)腫瘍関連のマクロファージは、腫瘍中の光増感剤の濃度に対して大きく関っている可能性がある;そして(g)癌細胞は、光増感剤によって誘導されるアポトーシスを経る可能性がある。これらの機構のなかで、(f)および(g)は、最も一般的であり、これらの2つの選択肢のうち、(f)がポルフィリン様化合物の光線療養効果がもたらされる最も有望な機構であるという一般的な合意がある。
現在公知の光増感剤の多くは、通常、PDT剤と呼ばれ、2型機構を経て作用する。例えば、ヘマトポルフィリン誘導体であるフォトフリンIIは、膀胱癌、食道癌および後期肺癌の治療に対して米国食品医薬品局によって認可された。しかしながら、フォトフリンIIは、いくつかの欠点があることが示された:低モル吸光率(e=3000M−1)、低い一重項酸素量子収率(j=0.1)、化学不均一性、凝集、および長期の皮膚感光性。そのため、フォトフリンIIと較べて、改善された吸光度特性、より良い浄化値および低下した皮膚感光性を示す、PDTにより安全でより効果的な光増感剤の開発には相当な努力がなされてきた。これらの光増感剤には、モノマーポルフィリン誘導体、コリン、シアニン、フタロシアニン、フェノチアジン、ローダミン、ヒポクレリン等が含まれる。しかしながら、これらの光線療法剤もまた、2型機構を経て主に作用する。
驚くことに、1型機構は、2型機構より本質的にさらに効果的であるように思われる事実にもかかわらず、1型の光線療法剤の開発にあまり注意が向けられていなかった。第1に、2型と違って、1型の光増感剤は、細胞創傷を引き起こす酸素を必要としない。第2に、1型機構は、2工程(光励起および直接エネルギー移動)を含むが、2型機構は、3工程(光励起、一重項酸素の発生およびエネルギー移動)を含む。さらに、腫瘍には、2型機構を無効にする低酸素領域を有するものがある。しかしながら、2型機構と関連した欠点にもかかわらず、1型機構を経て作用するほんのわずかな化合物、例えば、アントラサイクリン抗腫瘍剤が開発されている。
以下の一般式:
発明の化合物、組成物および方法に関するこれらのおよび他の実施形態は、以下の図面、説明および実施例に照らし合わせて明らかになるだろう。
詳細な説明
チアジアゾール化合物、バイオ共役体、組成物、およびin vitroおよびin vivoの生物学的処置において該化合物およびバイオ共役体を用いる方法が記載されている。該方法の一実施形態において、該化合物およびバイオ共役体は、光化学活性化合物が腫瘍または病変等の標的部位にある場合、結果として細胞に創傷または死をもたらしうるフリーラジカル等の反応中間体を生じることができる1型機構を介して作用する。該化合物は、電磁スペクトルの低エネルギー紫外線(UV−A)、可視または近赤外(NIR)領域の放射線を吸収し、腫瘍、炎症および他の病変の光診断、光線療法等に有用である。
チアジアゾール化合物、バイオ共役体、組成物、およびin vitroおよびin vivoの生物学的処置において該化合物およびバイオ共役体を用いる方法が記載されている。該方法の一実施形態において、該化合物およびバイオ共役体は、光化学活性化合物が腫瘍または病変等の標的部位にある場合、結果として細胞に創傷または死をもたらしうるフリーラジカル等の反応中間体を生じることができる1型機構を介して作用する。該化合物は、電磁スペクトルの低エネルギー紫外線(UV−A)、可視または近赤外(NIR)領域の放射線を吸収し、腫瘍、炎症および他の病変の光診断、光線療法等に有用である。
発明のチアジアゾール化合物は、選択的に光活性化できる標的実体に提供できる小分子である。活性化合物は、in vitroまたはin vivoにおいて1型機構を介して作用し、病変等を切除するのに用いてもよい。一般に、小分子の小さなペプチドまたは他の小分子担体への共役は、受容体結合力を保持する。
光診断、光線療法および他の処置において標的結合のための光化学剤としてアジド、スルフェン酸塩、アゾ基を含有する発明の化合物が、先に開示されている。アジド、スルフェン酸塩、アゾ分子が、それぞれ光切断を受けて、その結果としてナイトレンまたはフリーラジカルを生じる。ナイトレンおよびフリーラジカルは、細胞死を引き起こす。アジド、スルフェン酸塩、アゾ基を特定の対象の組織に標的化すると、その結果生じたナイトレンおよびフリーラジカルは、標的部位の細胞死を引き起こす。
チアジアゾールは、2つの窒素原子と1つの硫黄原子を含有する5員環を有する芳香族複素環化合物種の一員である。さらに、チアジアゾールは、他の炭素酸または複素環と縮合して多環式チアジアゾールを形成する。電子供与性基、電子求引性基、親油性基または親水性基等のさまざまな置換基は、当業者に公知の物理化学的および/または生物学的特性を変える各炭素原子に結合することができる。置換基は、また、所望の組織または病変に選択的に結合する標的基を場合により含む。標的は、生体受容体、酵素等であってもよい。化合物を生体部位に標的化するために、チアジアゾール化合物自体が標的組織に優先的に蓄積しなければ、標的基Eを結合してもよい。
発明のチアジアゾールは、1,2および3−位に、それぞれ窒素、窒素および硫黄を含有する。光分解時に、1,2,3−チアジアゾールは、図1に示すようにジラジカルを生成するため、1型光線療法に有用である。
図1に概略したプロセスにおいて、芳香族発色団の光励起は、チアジアゾール基に急速な分子間のエネルギー移動をもたらし、結果として分子窒素の同時押し出しおよびジラジカルの形成に伴うS−N結合の破断が起こる。ジラジカルは、それらの空間配向が最適であるという条件で、互いに結合して中性分子を形成することもできる。しかしながら、チアジアゾールによって生成したジラジカルは、結果として大きく歪んだシクロプロペン環を生じる1,3−ジラジカルである。この歪みを避けるために、これらのジラジカルが、それら自体と再結合するよりむしろ、その代わりに環境、すなわち組織成分と反応する。
光切断時に放出される窒素は、振動励起状態にある。励起状態から緩和されると、熱の形態のエネルギーが周囲の組織に放出されて、結果として熱が組織損傷をもたらす。
一実施形態において、式I:
他の実施形態において、式Iは、直鎖の三環式チアジアゾール構造(式II):
他の実施形態において、式Iは、角状の三環式チアジアゾール構造(式III):
他の実施形態において、式Iは、角状の三環式チアジアゾール構造(式IV):
他の実施形態において、式Iは、直鎖の三環式チアジアゾール構造(式V):
チアジアゾールの一般的合成は、図2に示すように、当該分野で公知の方法によって調製できる。本発明の式Vの特定のチアジアゾール誘導体は、その内容全体が参考として本明細書で援用されるZeller et al., Jusuts Liebigs. Annalen der Chemie 1972,766,32およびGirard et al., J. Med. Chem.1989,32,1556に記載されるように調製することができる。合成の重要な工程は、アニリン(ヘルツ反応:Heustis et al., J. Org. Chem.1965,30,2763)またはオルト−アルキルチオ−置換ジアゾニウム塩の酸化環化による1,2,3−チアジアゾール環の構築であった。
チアジアゾールへの標的基の結合は、それぞれ、その内容全体が参考として本明細書で援用されるHnatowich et al., Radiolabeling of Antibodies: A simple and efficient method, Science, 1983, 220, p.613; Pelegrin et al., Photoimmunodiagnostics with antibody−fluorescein conjugates: in vitro and in vivo preclinical studies, Journal of Cellular Pharmacology, 1992,3,pp.141−145;および米国特許第5,714,342号に記載されているように、当該分野で公知の方法によって達成できる。ソマトスタチン、ボンベシン、コレシストキニン、バクテリオエンテロトキシン、ステロイド等の生体分子のチアジアゾールへの結合は、図3に示すように、スクシンイミド活性エステルの使用により達成できる。例えば、カルボキシル基を含有するチアジアゾールは、イソブチルクロロホルメートとin situで混合した無水物を作成して活性化させてから、アミノ基を有する生体分子と反応させる。あるいは、カルボキシル基は、N‐ヒドロキシスクシンイミドでエステル化してアミノ基と反応させてアミドを形成することができる。
標的化の目的で、チアジアゾール化合物自体が標的組織に優先的に蓄積し、さらなる結合基の必要性がなくならなければ、通常、標的指向部分の外部結合が用いられる。例えば、ポルフィリン生合成における中間体であるデルタ−アミノレブリン酸の投与は、正常組織と較べて、腫瘍において2倍のポルフィリンの取り込みが結果として起こる。同様に、メラニン生合成における中間体であるジヒドロキシインドール−2−カルボン酸の投与は、正常な細胞と較べて、黒色腫細胞において実質的に高レベルのメラニンを生成する。そのため、発明の化合物は、これらの種類の生合成中間体に結合して病変部位に送達されてもよい。そのため、Eは存在しなくてもよいし、あるいは水素または他の基であってもよいし、あるいは標的指向部分であってもよい。標的指向部分には、特定の抗原結合部位に結合する抗体の領域における特定のアミノ酸配列等の、特定の相補部位に結合する分子の1つ以上の特定部位が含まれるが、これに限定されるものではない。Eは抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、ペプチド、擬ペプチド、炭水化物、擬糖、薬物、ホルモン、核酸、脂質、アルブミン、受容体結合分子、シクロデキストリン等の包接化合物の全てまたは一部であってもよい。本発明で用いられるように、標的指向部分は、特定の配列または部位に限定されないが、発明の化合物および/または組成物を特定の解剖学的および/または生理学的部位に標的化するもの全てを含む。Eの標的指向部分として用いられてもよい化合物の例には、全体の受容体結合化合物または受容体結合化合物の断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
in vitroまたはin vivoの生物学的方式において、哺乳類に投与される場合を含めて、発明の化合物は1型機構を介して作用する。先に述べたように、光増感剤単位、すなわち芳香族部分からチアジアゾール単位への分子間のエネルギー移動があり、その結果としてS−N結合の破断が起こり、続いて窒素が押し出しされ、2つのフリーラジカルが生成する。
一実施例において、発明の化合物の標的指向部分は、ステロイドホルモンまたはステロイド受容体結合化合物の全てまたは一部を含有してもよいので、ステロイドホルモン感受性受容体を標的化してもよい。本実施例において、化合物が投与され、胸および/または前立腺病変等の所望の部位を標的化し、光活性化され、この部位にフリーラジカルを形成して、所望の標的部位に細胞創傷または細胞死をもたらす。同様の標的結合化合物と使用は、当業者に理解される。例えば、標的基は、ソマトスタチン、ボンベシン、CCKおよび/またはニューロテンシン受容体結合分子を標的化し、それらに結合する化合物であってもよく、あるいは発癌性胎児抗原に結合する発癌性胎児抗原結合化合物であってもよい。これらは、例えば、CCK受容体結合化合物により肺癌細胞で、ST受容体および癌胎児性抗原(CEA)結合化合物により結腸直腸癌細胞で、ジヒドロキシインドールカルボン酸により黒色腫細胞で、インテグリン受容体結合化合物によりアテローム斑の血管部位で、アミロイド斑結合分子により脳病変で、光活性化されてラジカルを形成する。
腫瘍の診断画像用の抗体およびペプチドを用いた蛍光染料の腫瘍に対して成功した特定の標的化は、本発明者、および、それぞれその内容全体が参考として本明細書で援用されるAchilefu et al., Novel receptor−targeted fluorescent contrast agents for in vivo imaging of tumors, Investigative Radiology, 2000,35,pp.479−485;Bellou et al., Tumor labeling in vivo using cyanine conjugated monoclonal antibodies, Cancer Immunology and Immunotherapy, 1995,41,pp.257−263;およびLicha et al., New contrast agent for optical imaging: acid cleavable conjugates of cyanine dyes with biomolecules, in Biomedical Imaging: Reportors, Dyes and Instrumentation, Proceedings of SPIE, 1999,3600,pp.29−35に記載されるように、他者によって立証されている。そのため、受容体標的化光化学物質は、さまざまな病変の部位への到達、あるいはさまざまな病変の部位での活性化に有効である。
発明の化合物と組成物を用いて光化学処置を行なう方法も、また開示されている。一実施形態では、動物の標的組織に、生体適合性組成物中、式E−L−Ar(式中、Arは、式I、II、III、IVまたはVのような二環式または三環式チアジアゾールで;Eは、存在すれば、水素または標的に結合する標的指向部分のいずれかで;Lは、単結合、またはEの標的作用を実質的に低下させず、Arの感光性または光活性化を実質的に低下させない結合部分である)を有する化合物を有効量投与し、約300nm〜約950nmの間の波長を有する電磁放射線を標的組織に露光して化合物を光活性化する。
具体的に、この方法は、生物学的に許容される配合物に含まれる発明の組成物の有効量を、患者に投与することを含む。組成物を、直ちにあるいは間隔をあけて活性化し、標的部位に蓄積させた後、300〜1200nm、好ましくは350〜850nmの波長の光を病変の部位に照射する。病変が、皮膚表面、あるいは口腔、膣または鼻腔の粘膜表面等の皮膚以外の光接近可能な表面にある場合、病変に直接照射してもよい。病変が、腔内または腔上にあるなら、光源を具備した内視鏡カテーテルで照射してもよい。このような適用は、例えば、血管、肺、心臓、咽喉、耳、直腸、膀胱、胃、腸または食道の病変に用いてもよい。肝臓、脳、前立腺、胸、膵臓等の内蔵の病変には、照射装置を含むまたはそれを配置した外科用器具(鉗子、メス等)を用いて組織の光化学化合物を照射することができる。このような器具は、BioSpec(モスクワ、11991、ロシア)市販のファイバー光学器具、例えば、間質腫瘍を照射する細針先端を有する光力学療法用TC−Iファイバー光学工具等の当業者に公知である。そのため、処置を行なう外科医は、処置中に、腫瘍または他の標的組織に、所望の波長、出力およびフルエンス率の光をあてることができる。照射の強度、出力、持続時間と光の波長は、病変の位置および部位によっておおきく変化する。フルエンス率は、常にとは限らないが、熱の影響を最小にするために200mW/cm2以下に保つのが好ましい。適した出力は、病変の大きさ、深さおよび病状に左右される。発明の組成物は、腫瘍、炎症過程および損なわれた脈管構造の光線療法を含むが、これらに限定されない幅広い臨床的有用性がある。
特定の組成物を用いた光線療法を達成するための光活性化に必要な特定の波長は、さまざまな方法で決定してもよい。一例として、この特定の波長は、変化する波長の光を合成した化合物に露光して実験的に決定した後、分析して標的部位の組織損傷度を決定してもよい。また、特定の発色団に対する公知の光活性化の最大値を基に決定してもよい。一般に、1型機構を介して働く薬剤は、約300nm〜約950nmの広い波長スペクトルにわたって活性化できる。そのため、1型成分または組成物の活性化は、この範囲の活性化波長を用いて達成されてもよい。
発明の組成物は、腸内(経口または直腸の)、非経口、局所または皮膚投与用に配合できる。局所または皮膚送達には、またエアロゾル、クリーム、ゲル、溶液等が含まれてもよい。組成物は、所望の目的を達成するのに効果的な用量で投与される。このような用量は、用いる特定の複合体、調べる臓器または組織、臨床処置に用いる機器、達成する処置の効力等によって大きく変動する。これらの組成物は、検討される投与の種類に適した従来の製薬担体および賦形剤とともに有効量の光線療法剤を含有する。これらの組成物は、また、安定剤および皮膚浸透向上剤を含んでもよいし、薬学的に許容される緩衝剤、乳化剤、界面活性剤と、場合により塩化ナトリウム等の電解質を含有してもよい。
腸内投与用の配合物は、当該分野で公知のように大きく変動してもよい。一般に、そのような配合物は、水溶液または懸濁液中に有効量の組成物を含む液体である。このような腸内組成物は、場合により緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、チキソトロープ剤等を含んでもよい。経口投与用の組成物は、また香味剤およびそれらの官能特性を高める他の構成成分を含有してもよい。局所適用は、薬剤の特定の性質および標的化される組織の種類によって溶液、水/油エマルジョンまたは粒子の懸濁液として配合することができる。
チアジアゾール化合物が水溶性なら、例えば、水中の溶液を標的組織にまたは標的組織中に適用してもよい。皮膚中へのまたは皮膚を介しての送達は、公知の方法、および経皮浸透向上剤、例えば、「azone」、N−アルキル環状アミド、ジメチルスルホキシド、長鎖脂肪酸(C10)等の薬剤を用いて向上させてもよい。チアジアゾール化合物が水溶性でないならば、生体適合性の油(大豆油、魚油、ビタミンE、亜麻仁油、植物油、グリセリドエステル、長鎖脂肪酸エステル等)に溶解させて、表面活性化合物(植物または動物リン脂質、レシチン、長鎖脂肪塩と長鎖脂肪アルコール、ポリエチレングリコールエステルおよびエーテルであるPluronics等)を水中で乳化して標的領域に送達または適用される、局所クリーム、懸濁液、水/油エマルジョン、水/油マイクロエマルジョンまたはリポソーム懸濁液を作成してもよい。リポソームの場合、チアジアゾール化合物を層状材料に結合してもよいし、層状材料中に含有してもよい。
化合物の用量は、約0.1mg/kg体重〜約500mg/kg体重まで変動してもよい。一実施形態において、用量は、約0.5〜2mg/kg体重の範囲にある。一例として、非経口で投与される組成物には、光感剤の無菌水溶液または懸濁液が約1nM〜約0.5Mの範囲の濃度で、通常、約1mM〜約10mMの濃度で存在してもよい。
一般に、配合したチアジアゾール化合物は、光の露光時に、標的組織の細胞を傷つけるまたは殺すように標的組織でまたは生物媒体内でラジカルを発生させるのに効果的な用量または濃度で投与される。標的組織で1型破壊を生じる染料の活性化に効果的な波長の光に、一定期間、生物媒体を露光する。標的組織のチアジアゾール化合物の濃度は、組織における受動的または能動的取り込みプロセスのいずれかの結果である。受動的取り込みの一例は、チアジアゾール化合物が特定の担体内で結合しているまたは特定の担体内に含有されているものである。担体が、約100nm〜約1000nmの範囲の適切な大きさであれば、血管腫瘍の灌流境界中に漏出する。能動的取り込みの一例は、受容体を基体とする結合が標的組織に発現する特定の受容体を結合するものである。そのため、チアジアゾールの効果的な濃度は、配合物の性質、送達方法、標的組織、活性化方法および周囲の正常組織に対する毒性に左右される。
一般に、配合したチアジアゾール化合物は、光の露光時に、標的組織の細胞を傷つけるまたは殺すように標的組織でまたは生物媒体内でラジカルを発生させるのに効果的な用量または濃度で投与される。標的組織で1型破壊を生じる染料の活性化に効果的な波長の光に、一定期間、生物媒体を露光する。標的組織のチアジアゾール化合物の濃度は、組織における受動的または能動的取り込みプロセスのいずれかの結果である。受動的取り込みの一例は、チアジアゾール化合物が特定の担体内で結合しているまたは特定の担体内に含有されているものである。担体が、約100nm〜約1000nmの範囲の適切な大きさであれば、血管腫瘍の灌流境界中に漏出する。能動的取り込みの一例は、受容体を基体とする結合が標的組織に発現する特定の受容体を結合するものである。そのため、チアジアゾールの効果的な濃度は、配合物の性質、送達方法、標的組織、活性化方法および周囲の正常組織に対する毒性によって左右される。局所送達のための配合物は、また、液体または半固体の賦形剤を含有し、光感剤の浸透を補助してもよい。組成物は、また、エアゾールスプレーで送達されてもよい。
他の実施形態において、薬剤は、ミセル、リポソーム、マイクロカプセルまたは他の微粒子として配合されてもよい。これらの配合物は、送達、局所化、標的特異性、投与等を向上させる。一例として、発明の化合物のリポソーム配合物は、化合物が特定の標的指向部分を含有しない場合(例えば、Eが水素の場合)に有利である。他の例として、発明の化合物のリポソーム配合物は、化合物が溶解度に限界がある場合に有利である。これらの調製および充填は、当該分野で公知である。
一例として、リポソームは、この脂質は熱転移が低いため、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)または卵ホスファチジルコリン(PC)から調製されてもよい。リポソームは、当業者に公知の標準的手順(例えば、Braun−Falco et al., (Eds), Griesbach Conference, Liposome Dermatics, Springer−Verlag, Berlin (1992))を用いて作成する。ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ無水物または脂質は、微小球として配合されてもよい。実例として、光薬剤をポリビニルアルコール(PVA)と混合し、その混合物を乾燥し酢酸エチレンビニルで被覆した後、PVAで再度冷却してもよい。リポソームにおいて、光薬剤は、二層間の水性中、脂質二層の一方または両方の内部、あるいは中心または芯の内部にあってもよい。リポソームを他の分子と脂質で改質し、カチオン性リポソームを形成してもよい。リポソームを、また、脂質で改質してそれらの表面をさらに親水性にし、それらの血流中での循環時間を増加させてもよい。このように改質されたリポソームは、それぞれ、その内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,277,403号、6,610,322号、5,631,018号、5,395,619号および6,258,378号,およびStealth Liposomes, Lasic and Martin (Eds.) 1995, CRC Press, London, specifically pages 1−6,13−62,93−126,139−148,197−210 and 233−244に記載の「ステルス」リポソームまたは長寿命リポソームと呼ばれている。カプセル封入方法は、当業者に公知で、例えば、その内容全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,406,713号に記載の界面活性剤透析、凍結乾燥、被膜形成および注入を含む。
リポソーム、マイクロカプセル等で配合されるチアジアゾールは、先に述べた経路のいずれかによって投与されてもよい。局所的に適用される配合物において、時間をかけて光薬剤を徐々に放出する。注入可能な配合物において、リポソームカプセルを血流に循環させ、所望の部位に送達する。リポソーム、マイクロカプセルまたは他の微粒子の使用により、組成物中に異なる種類と性能をもつ2つ以上の発明の化合物を取り込むことを可能とする。
チアジアゾールは、抗菌剤としても使用でき、その内容全体が参考として本明細書で援用されるHamblin et al., in ”Targeted photodynamic therapy for infected wounds in mice” in Optical Methods for Tumor Treatment and Detection: Mechanism and Techniques in Photodynamic Therapy XI (Proceedings of SPIE 2002)に記載の感染症と傷の治療、および火傷の治癒に使用できる。この点で、化合物の送達ビヒクルとしてのリポソーム等の使用が、望ましい。
例えば、チアジアゾールは、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、ナノ粒子またはナノカプセルで部分的または全体的にカプセル封入されてもよい。Eは、先に述べたような水素部分または標的指向部分であってもよい。化合物は、患者に投与されて、感染部位で局所化される。光線療法処置を行なって感染部位で化合物を検出し、続いて化合物を活性化して病原菌を殺し、感染部分を治療する。
実施例1
5−クロロ−6,7,8,9−テトラヒドロ[1,2,3]チアジアゾロ[5,4−h]イソキノリンの調製
5−クロロ−6,7,8,9−テトラヒドロ[1,2,3]チアジアゾロ[5,4−h]イソキノリンの調製
本明細書に示し、記載した本発明の実施形態は、特定の実施形態にすぎず、決して限定されるものではないことは理解されるべきである。従って、本発明の趣旨および以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対してさまざまな変更、変更または改変がなされてもあるいは行なわれてもよい。
Claims (19)
- 式I:
bおよびcは、それぞれ独立して0〜3に変化し;
Xは、−O−、−NR11−、−S−、−SO−および−SO2−から選択され;
R5〜R11は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR12、−(CH2)aCO2R12、−(CH2)aNR12R13、−NR13COR12、−(CH2)aCONR12R13、−(CH2)aSR12、−(CH2)aSOR12、−(CH2)aSO2R12、−(CH2)aCON(R12)E、−(CH2)aN(R12)COE、−(CH2)aN(R12)CON(R13)Eおよび−(CH2)aN(R12)CSN(R13)Eから独立して選択され;
aは、0〜10に変化し;
R12およびR13は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、C5−C10ヘテロアリールおよびC1−C10アシルから独立して選択され;そして
Eは、それぞれ独立して水素または標的に結合する標的指向部分のいずれかである)の化合物。 - 式Iが、式II:
R1およびR4は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR5、−(CH2)aCO2R5、−(CH2)aNR5R6、−NR6COR5、−(CH2)aCONR5R6、−(CH2)aSR5、−(CH2)aSOR5、−(CH2)aSO2R5、−(CH2)aCON(R5)E、−(CH2)aN(R5)COE、−(CH2)aN(R5)CON(R6)Eおよび−(CH2)aN(R5)CSN(R6)Eから独立して選択される)の構造を形成する、請求項1に記載の化合物。 - 式Iが、式III:
R3およびR4は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR5、−(CH2)aCO2R5、−(CH2)aNR5R6、−NR6COR5、−(CH2)aCONR5R6、−(CH2)aSR5、−(CH2)aSOR5、−(CH2)aSO2R5、−(CH2)aCON(R5)E、−(CH2)aN(R5)COE、−(CH2)aN(R5)CON(R6)Eおよび−(CH2)aN(R5)CSN(R6)Eから独立して選択される)の構造を形成する、請求項1に記載の化合物。 - 式Iが、式IV:
R1およびR2は、独立して水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR5、−(CH2)aCO2R5、−(CH2)aNR5R6、−NR6COR5、−(CH2)aCONR5R6、−(CH2)aSR5、−(CH2)aSOR5、−(CH2)aSO2R5、−(CH2)aCON(R5)E、−(CH2)aN(R5)COE、−(CH2)aN(R5)CON(R6)Eまたは−(CH2)aN(R5)CSN(R6)Eから選択され;そして
R5〜R11は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C1−C10ヒドロキシルアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR12、−(CH2)aCO2R12、−(CH2)aNR12R13、−NR13COR12、−(CH2)aCONR12R13、−(CH2)aSR12、−(CH2)aSOR12、−(CH2)aSO2R12、−(CH2)aCON(R12)E、−(CH2)aN(R12)COE、−(CH2)aN(R12)CON(R13)Eおよび−(CH2)aN(R12)CSN(R13)Eから独立して選択される)の構造を形成する、請求項1に記載の化合物。 - 式Iが、式V:
R4は水素であり;
R1は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロアリール、C1−C10アシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−(CH2)aOR5、−(CH2)aCO2R5、−(CH2)aNR5R6、−NR6COR5、−(CH2)aCONR5R6、−(CH2)aSR5、−(CH2)aSOR5、−(CH2)aSO2R5、−(CH2)aCON(R5)E、−(CH2)aN(R5)COE、−(CH2)aN(R5)CON(R6)Eまたは−(CH2)aN(R5)CSN(R6)Eであり;そして
R5、R6およびR11は、水素、C1−C10アルキル、C5−C10アリール、C1−C10ヒドロキシルアルキルおよびC1−C10アルコキシアルキルから独立して選択される)の構造を形成する、請求項1に記載の化合物。 - Eが、存在すれば、全体または断片のソマトスタチン受容体結合分子、全体または断片のST受容体結合分子、全体または断片のニューロテンシン受容体結合分子、全体または断片のボンベシン受容体結合分子、全体または断片のCCK受容体結合分子、全体または断片のステロイド受容体結合分子、および全体または断片の炭水化物受容体結合分子から独立して選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
- 電子供与性基、電子求引性基、親油性基または親水性基の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の化合物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物および生体適合性賦形剤を含む、生体適合性組成物。
- 前記賦形剤が、緩衝剤、乳化剤、界面活性剤または電解質の少なくとも1つである、請求項8に記載の組成物。
- 動物の標的組織に、式E−L−Ar(式中、Arは、二環式または三環式チアジアゾールであり;Eは、水素または標的に結合する標的指向部分のいずれかであり;Lは、単結合、またはEの標的作用を実質的に低下させず、かつArの感光性を実質的に低下させない結合部分である)で表わされる化合物を含む生体適合性組成物を有効量投与すること;および
約300nm〜約950nmの間の波長を有する電磁放射線に標的組織を露光して化合物を光活性化すること
を含む、生物学的光活性化方法。 - 前記化合物が請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物である、請求項10に記載の方法。
- 前記組織に光をあてる前に、前記化合物を前記標的組織に蓄積させることをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
- 投与される前記組成物が、約0.1mg/kg体重〜約500mg/kg体重の範囲にある、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、約0.5mg/kg体重〜約2mg/kg体重の範囲で投与される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、非経口、腸内、局所、エアロゾル、皮下(subdermal)、皮下(subcutaneous)、吸入およびそれらの組み合わせから選択される経路によって投与される、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
- 壊死効果、抗菌性効果、アポトーシス効果またはその組み合わせを結果として生じる、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記化合物が、リポソーム、ミセル、マイクロカプセルまたは微粒子の少なくとも1つから選択される形態にある、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、1nM〜0.5Mの範囲の濃度で標的組織に非経口的に投与される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記組成物が、エアゾールスプレー、クリーム、ゲル、溶液から選択される形態で投与される、請求項10〜12、13、14、16および17のいずれか1項に記載の方法。
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