本発明は、熱交換装置に、特に、2次の、即ち作用する空気流(working air stream)内での液体の蒸発により、1次の、即ち生成用の空気流(product air stream)を冷却することができる形式の蒸発冷却装置に関する。
蒸発冷却装置は、冷却するために液体の蒸発の潜熱を利用する装置である。蒸発冷却の原理は、数世紀に渡って知られている。例えば、対象物を覆って置かれた湿った布は、この布からの液体の蒸発によって、物体を冷却し続けるであろう。布に液体を連続的に加えることによって、冷却効果は、電気エネルギを加えずに無限に維持されることができる。このようにして、空気流への水分の蒸発によって達し得る最も低い温度が、この空気に対する湿球温度を規定している。間接蒸発冷却装置も、このような原理を利用している。熱交換器の1次の面を通過した生成用の空気流は、作用する空気流が、この熱交換装置の2次の湿った面を通過し、水分を吸収することによって、冷却されることができる。
理論的には、空気が、直接的な蒸発により冷却されると、この空気の絶対湿度は、水分の吸収により増加する。この空気の相対湿度も、この空気が水蒸気で完全に飽和した湿球温度まで下げられた温度により、増加する。しかし、空気が、直接的な蒸発なしで冷却されると、この空気の絶対湿度は、変化しない。空気の温度が下がるにつれて、相対湿度は、いわゆる露点に達し空気が完全に飽和するまで増加する。従って、露点は、湿球温度よりも低く、実際、空気が飽和、即ち100%の相対湿度に達するように冷却されるべき温度として、規定される。空気中の水蒸気は、露点に達すると、凝縮される。
蒸発が起こる前に、作用する空気流を冷却する、もしくは乾燥する間接蒸発冷却の原理に基づいて、装置を改良する試みが行われている。特に、作用する空気流の簡便な冷却方法は、冷却された生成用の空気の一部をフィードバックすることである。このような装置は、湿球温度以下に、また、露点近くに、生成用の空気の温度を下げることができるので、露点冷却装置としてよく参照される。空気流が熱を交換する面を最適化することによって、高効率の熱伝達が果され得る。このような最適化は、湿った2次の面からの熱伝達の場合に、特に重要であることが分かっている。作用する空気流に水分を与えるために、湿った2次の面は、例えば親水層の形態で、液体供給部の形態を有していても良い。しかし、このような層の存在は、作用する空気流から2次の面への熱の遮断を増加させてしまう可能性があり、従って、熱伝達が減少してしまう。
露点冷却装置の特に効率的な形態は、PCT公開公報の第03/091633号により知られており、これら全体の内容は、参照として含まれている。この装置は、1次並びに2次の面に熱交換器を有するメンブレンを使用している。このような熱交換器は、フィンの形態であり、1次の面から2次の面への熱伝達を改良すると考えられる。これらフィンは、メンブレンに熱を直接伝導することと、流れを形成するように様々な境界層を壊すこととの両方の役割を果す。これらフィンは、関連する面での熱交換のために利用可能な全体の領域を増やすようにも機能する。湿った2次の面のさらなる重要な特徴は、前述並びにPCT公開公報の第05/019739号により知られており、これら全体の内容は、参照として含まれている。従って、水保持層として使用される材料を注意深い選択により、最適な蒸発が、作用する空気流から2次の面の熱を遮断することなく果されることができる。
このような形式の蒸発冷却装置の1次並びに2次の流れの間の駆動温度差は、露点に冷却されるために非常に低くなければならない。結果として、良い熱伝達が生じるように、熱交換装置全体に渡る熱伝達率は、高くなければならない。国際公開第03/091633号の場合、フィンの取着点が、熱伝達しにくい領域であると考えられる。PCT公開公報の第03/091648A号では、メンブレンの対向している両側に、このメンブレンを通してフィンを直接接続することにより熱伝達を改良しようという試みがなされている。PCT公開公報の第01/57461号では、フィンが、メンブレン自体の中で回動するように形成されている。
金属は、一般的に熱の良い伝導体である。PCT公開公報の第04/040219号に記載されている装置は、フィンとメンブレンとの両方により形成するための熱封止可能な金属積層を使用している。これらフィン並びにメンブレンは、一緒になって熱を封止させる。しかし、この積層の接着成分が、対向しているメンブレンの面上のフィン間の熱伝達に、好ましくない影響を与えてしまうと考えられる。さらに、接続処理の間、メンブレンを係合するように実際に押圧されるフィンの領域が、より少ないことが望ましい。この内容で、メンブレンに沿った熱伝達は、入口と出口との間の温度降下の好ましくない影響が現れてしまうので、望ましくない。このような理由のために、金属のメンブレンは、これまでの露点冷却装置では避けられてきている。
他の多くの形態が、蒸発冷却装置のために提案されてきているが、全てのこのような装置は、メンブレンを通る熱伝達を必要とする。このようなメンブレンは、乾いた領域と、液体が蒸発するために与えられる湿った領域とを分ける。Maisotsenkoらが、米国特許第6581402号に示している複数の構成では、プレート全体に渡って、1次および作用する流れが、チャネルガイドによって分離されている。2次の流れは、プレートの対向している側に向けられ、蒸発によって、並びにプレートからの熱伝達によって、熱を受ける。
1次並びに2次の流れの間の熱伝達を改良するために、本発明に係る蒸発冷却装置は、ほぼ平行に、間隔をおいて配置されている1対の熱伝導プレートと、これらプレートを互いに分離し、かつこれらプレート間に、夫々複数の1次並びに2次フローチャネルを規定しているスペーシング部材とを有する。この構成では、1次並びに2次チャネル間の熱伝達は、前記1次チャネルに関連する領域から前記2次チャネルに関連する領域に、プレートに沿って伝達されることによって、主として起こり得る。これとは対照的に、通常の構成体では、流体間の熱伝達は、流体を分離しているメンブレンを通して起こる。前記第1並びに第2の流れを方向付けるために、この装置には、1組の1次フローチャネルに空気を与えるように入口の流体接続を形成している1次の入口ダクトと、1組の2次チャネルに空気を与えるように入口の流体接続を形成している2次の入口ダクトとが設けられている。これら入口ダクトは、プレート自体により、もしくは付加的な部材により形成されることができる。前記2次チャネルの壁を湿らせるために、この2次チャネルに水を与えるための水分配システムが、さらに設けられることができる。このようにして、前記1次チャネルを通る1次空気の流れが、前記プレートに沿った熱伝導によって冷却されることが可能であるように、前記2次チャネルを通る2次空気の流れの中へと、水の蒸発をもたらし得る。本願の内容では、特記されない限り、1次並びに2次チャネルの参照は、これら両チャネルと、装置内の夫々のチャネルの部分との両方を含むことを意図している。
本発明のさらなる実施の形態では、前記伝導プレートは、境界層分裂構造体を有することができる。このような構成体、即ち部材は、前記チャネル、特に前記2次チャネルに沿って層流が生じるのを防ぐために重要である。層流は、このプレートの表面からの良い熱伝達のためには、一般的に好ましくない。境界層を分裂させることによって、局所的な乱流と飽和された空気の良い混合物とが、高い熱伝達率を導くように促進され得る。熱交換装置の至る所での乱流は、前記チャネルを通る圧力降下の増加が、熱伝達の増加による降下よりも勝ってしまうので、通常は好ましくないことが注意される。このような構成は、前記プレートの表面に設けられることができ、もしくは、プレート自体の局所的な湾曲、または外形により形成されても良い。
好ましくは、この装置は、ほぼ平行に、間隔をおいて配置されている複数の熱伝導プレートを有する。また、スペーシング部材が、各々の隣接している1対のプレートの間に、1次並びに2次フローチャネルを規定している。このようにして、複数のフローチャネルが、簡単に形成されることができる。
より好ましくは、このような積層されたプレート構造体に対して、第1の1対のプレート間の前記1次の流れの領域は、隣接している1対のプレート間の隣接している1次の流れの領域に、ほぼアライメントされている。この場合、開口部が、前記夫々隣接している1次の流れのチャネルの間と、夫々隣接している2次の流れのチャネルの間とに、前記プレート間を通る流れを向けるために、これらプレートに設けられることができる。これら開口部は、多くの重要な機能を有し得る。第1に、これら開口部は、境界層を分裂させ、局所的な層流を乱すように機能する。第2に、水、もしくは水保持層が、これら面の一方に設けられたならば、プレートの両面に渡って2次の流れを方向付けることによって、前記第2の流れは、代わって熱および潜熱の伝達を受けるであろう。前記開口部は、好ましくはルーバ、もしくは同様に流れを向ける通風孔の形態である。これらルーバは、境界層から離れて、前記チャネルの内部へと、飽和した空気を向けるために最も効果的であることが分かっており、また、過度の乱流による圧力降下を最小にする。
本発明の第1の実施の形態では、全ての前記フローチャネルは、前記プレートにほぼアライメントされ、また、前記1次チャネル内での流れの方向は、前記2次チャネル内での流れとは逆向きの方向である。逆向きの流れの形態は、効率的な露点冷却のために最も適していると考えられる。
本発明の第2の実施の形態では、前記1次チャネル内での流れの方向は、前記2次チャネル内での流れの方向とは逆向きの方向であり、前記プレートの主平面にほぼ垂直である。前記ルーバ、もしくは前記プレートを貫通している開口部が、流れがこれらプレートを通って起こるために十分に大きければ、このような形態がなされ得る。このような形態の重要な効果は、前記スペーシング部材が、前記1次の流れの方向への熱伝導を防ぐように、伝導バリアとして機能し得ることである。この形態は、前記1次並びに2次の流れのための入口並びに出口の接続を与えるのにも効果的であり得る。
代わりの実施の形態では、前記第1のチャネル内での流れの方向は、前記2次のチャネル内での流れにほぼ垂直であり得る。この装置は、クロスフローで動作するであろう。一方の流れが、前記プレートに平行となることができ、他方の流れが、前記プレートを通過して、開口部またはルーバの効果を受けることができる。代わって、両流れが、前記プレートを部分的に通り、これらプレートに部分的に平行であっても良い。本発明の効果は、異なる流れの形態を可能にする用途の広さであることが注意される。
本発明の重要な態様では、この装置は、前記2次チャネル内で前記プレートを少なくとも部分的に覆っている親水層をさらに有する。この親水層は、水保持および放出層として機能する。この内容では、水分の参照は、蒸発冷却装置としての装置の動作で使用され得る他の蒸発流体を覆っていると理解される。より好ましくは、この親水層は、前記プレートの一方の面のみに設けられている。この親水層は、分離された層である必要はないが、親水性を向上させるために、このプレートの前処理として形成されることができる。ポルトランドセメントのようなセメント材料が、より好ましいことが分かっている。代わって、繊維材料が使用されても良い。水保持層は、前記2次の流れから前記プレートを断熱することにより、このプレートからの熱伝達を妨げるべきではないことが、より重要であることが分かっている。
好ましい実施の形態では、前記スペーシング部材は、熱絶縁材でできている。従って、これらスペーシング部材は、前記1次と2次の流れとの領域間を分割しているメンブレンを形成するように考えられ得る。しかし、これらスペーシング部材は、従来技術の構成のような熱交換メンブレンとして機能しない。これらスペーシング部材は、前記プレートの適切な支持を確実にするように、構造上の機能も有する。
代わりの実施の形態では、前記スペーシング部材は、前記プレートの主平面にほぼ垂直に延びている、このプレートの一部分を有することができる。各々のスペーシング部材は、直接、もしくは接着剤の補間、もしくは他の接続部材の形態のいずれかで、隣接するプレートを支持することができる。
前記スペーシング部材の機能は、前記プレート間に断熱性を与えるように記載されてきたが、他の伝導バリアの形態では、前記1次の流れの方向への熱伝達を減少させるように設けられることができる。もちろん、このような熱伝導は、1次の流れに対して選択される方向に依存している。前記プレートに沿った流れのために、前記伝導バリアは、ルーバによって、もしくは他の小さなスリットによって与えられることができる。特に、流れを通過させることはできないが、熱伝導を分離することができる狭いスリットが使用されても良い。
本発明の重要な態様では、前記プレートは、良い熱伝導体であることが好ましい。好ましくは、これらプレートは、軽く、容易に製造できるアルミニウムでできている。これらプレートは、特に合金のような他の金属でできていても良い。必要であれば、このプレートは、例えば腐食または汚れを防ぐように、保護層を有しても良い。
本発明の好ましい実施の形態では、前記1次チャネルからの出口は、前記2次チャネルへの入口に流体接続されている。このようにして、前記1次チャネルを通る流れの部分が、続いて前記2次チャネルを通ることができる。このようにして、露点での動作が、高い動作効率および前記1次チャネルからの最も低い出口の温度を果すように効果を奏すると考えられる。前記1次の出口と2次の入口との間の流体接続は、1つの2次チャネルに流れる入口を与える1つの1次チャネルに関して、1つの基部に対して1つであることができる。代わって、前記組み合わせの1次の流れは、分割され、この流れの一部が、戻り、前記2次チャネルに分配される。さらに、代わって、所定の1次チャネルが、全ての前記2次チャネルに2次空気を与えることのみに向けられても良い。この内容では、前記1次チャネルからの出口の参照は、適切な接続を含むことを意図し、内部もしくは外部が、前記2次チャネルを通って流れを与えるように、前記1次の流れの一部を吐出することができる。
本発明のさらなる様態では、上述のような熱交換装置と、この熱交換装置を受けるためのハウジングと、前記1次チャネルに接続される入口ダクトと、前記1次並びに2次チャネルから接続される出口ダクトと、これら1次並びに2次チャネルを通って空気を循環させるための空気循環装置と、前記水分配システムに水を与えるための水供給部と、このクーラの動作を制御するための制御器とを有する蒸発クーラが与えられる。このような露点クーラは、独立機能する装置として動作でき、また、比較的大きな熱および換気システムに組み込まれることができる。加えて、温度センサ、圧力センサ、湿度センサ並びに他のこのようなセンサが、前記制御器に必要なフィードバックを与えるモニタ操作のために、前記ハウジング内に設けられても良い。
図1Aは、PCT公開公報の第04/040219号に記載されている従来技術の熱交換器で現在使用されている形式の熱交換器1の一部分を示し、この内容は、参照としてここに含まれている。この熱交換器1は、第1の面12並びに第2の面14を備えたメンブレン10を有する。矢印A並びに矢印Bは、露点冷却装置として使用する間の、空気の流れの方向を表す。矢印Aは、前記第1の面12での1次空気の流れを表す。矢印Bは、この第2の面14での2次空気の流れを表す。前記メンブレン10は、薄い厚さのアルミニウムシートにより形成されている。このメンブレン10の両側には、複数のストリップ18により夫々形成されている複数のフィン16が設けられている。これらフィン16は、熱シール接着剤で、フィンの基部28で前記メンブレン10に取着されている。このために、これらフィン16はまた、熱シール接着剤が積層されたアルミニウムにより形成されている。この形式の蒸発冷却装置では、熱交換は、前記メンブレン自体でよりも、第2の面14上の前記フィン16の面で、主として起こる。この熱は、第1の面12上の前記フィン16からこのフィンの材料内への伝導によって、与えられる。
前記フィン16には、前記積層を貫通している細長いスロットの形態の複数のルーバ20が夫々設けられている。これらルーバ20は、夫々グループをなして配置されている。第1のグループ22は、面の中へと流れを向けるように機能し、一方、第2のグループ24は、面の外へと流れを向ける。前記フィン16の両面間にこのようにして流れを向けることによって、前記ルーバ20は、発生される境界層を乱して熱伝達率を増加させるように機能する。この機能に加えて、前記第2の面14で、2次空気Bは、前記フィン16の外面を代わって最初に流れるように与えられることができる。この外面は、温度を上げるために直接の熱エネルギを受けることができるこのフィン16の内面によって起こる、液体保持層からの蒸発による水分を受けることができる。前記フィン16には、伝導ブリッジ30が夫々設けられている。これらブリッジ30は、実質的にフィン16の全高さに渡って、フィンを切り開いた形態である。これらブリッジは、入口と出口との間の温度差を減らすであろう空気の流れの方向のフィン16に沿った好ましくない熱輸送を減らす。
図1Bは、この構成を形成している異なる複数の層を示している。このメンブレン10は、軟質のアニーリングされたアルミニウムの基層42と、この基層に設けられたプライマー層44と、これらプライマー層を覆うように設けられ、フィン16との接合のために、熱並びに圧力によって活性化された耐腐食性の接着層46とを有する。前記フィン16も、プライマー層50を備えた、軟質のアニーリングされたアルミニウム層48を有する。これらフィン16は、フィンの外面に液体保持層26が設けられており、この液体保持層26は、蒸発させる水を、保持し、順次放出するように機能する。
露点冷却装置として効果的に機能するために、前記第1の面12と第2の面14との上の前記フィン16間の熱伝達は、適切な接合技術を確実にすることによって、最大にされなければならない。また、前記メンブレン10を通る熱伝達の領域を最大にするために、フィン16の前記基部、即ち樋28は、できるだけ幅広く、かつ平らに形成されなければならない。しかし、前記メンブレン10にフィン16を接合する際に細心の注意を払っているにもかかわらず、接触領域が十分でないことが分かっている。さらに、前記フィン/メンブレン/フィン構造での、接着剤およびプライマーの存在が、このメンブレンを通る熱伝達率を減少させてしまう。
図2は、本発明に係る蒸発冷却装置のための熱交換器100の一部分の断面を示している。従来技術の構成体と直接比較できるようにするために、この熱交換器100の一断面のみが、図1Bに示されている装置に対応し、かつ同じ向きで示されている。
図2では、複数の熱伝導プレート102が、ほぼ平行に、間隔をおいて配置されている。複数のスペーシング部材104が、これら熱伝導プレート102を互いに離間させ、かつプレート102間に1次並びに2次フローチャネル106、108を、プレート102と一緒になって規定している。これらプレート102は、アルミニウム、もしくは他の適した熱伝導材料により形成されている。図1のフィン16とは異なり、これらプレート102には、接着層もプライマー層も設けられていない。これらプレート102は、プレートの一方の面の側の前記2次チャネル108の領域に、水保持層110が設けられている。複数のルーバ112が、前記2次チャネル108の領域で、前記プレート102に設けられている。前記スペーシング部材104は、形状安定樹脂材料により形成されている。これらスペーシング部材104の機能は、所定の間隔をおいて前記プレート102を維持することと、前記1次チャネル106から2次チャネル108への空気の流れを防ぐことのみであるので、これらスペーシング部材は、熱伝導性である必要がない。実際、これらスペーサ104は、流れの方向での熱伝導を減少させるために、断熱性であることが望ましいと考えられる。
図2に係るこの装置の動作が、さらに詳細に説明される。水または他の蒸発可能な液体が、図示されていない手段によって、前記水保持層110に与えられる。2次空気の流れBが、前記2次チャネル108を通るように流される。この2次空気が、前記水保持層を通るのに従って、この水保持層は、蒸発による水を受ける。前記ルーバは、前記プレート102を通るように空気を向け、この空気は、このプレート102の面からの直接の熱伝達によって暖められる。1次空気の流れAが、前記2次の流れとは逆向きに、前記1次チャネル106を通るように流される。この1次の流れは、前記プレート102への直接の熱伝達によって冷却される。前記1次チャネルの領域でこのプレート102に伝達される熱は、矢印Hに従って、前記2次チャネル108の領域のこのプレート102内に伝導される。従って、これらプレート102は、熱交換メンブレンとしてよりも、熱伝導部材として機能することが理解され得る。
図3は、図2の熱交換器100の斜視図であり、前記複数のプレート102の延びた状態が見られることができる。図3は、この熱交換器100が、どのようにして露点冷却装置120を構成させることができるかも示している。この熱交換器100は、動作上の位置へと、図2対して90°だけ回転されていることも注意されなければならない。
図3に見られ得るように、プレート102は、図2に示されている1次並びに2次チャネル106、108を超えて、さらに1次並びに2次チャネル106、108へと延びている。流れの方向への、これらプレート102の延びた状態も示されている。前記複数のフィン16が、ストリップ18に配置されている図1の従来技術の装置とは異なり、本発明のプレート102は、熱交換器100の一端から他端に延びている。図3では、簡便化のために、32の短いチャネルのみが示されているが、実際には、これらプレート102は、これらチャネル106、108の長さと数との両方を増やすために、さらにあらゆる方向に、かなり延びても良いことが理解される。
図3は、前記1次チャネル106のための複数の入口ダクト114も示している。これら入口ダクト114は、前記プレート102を超えて延びており、前記スペーシング部材104の材料により形成されている。かくして、この材料は、閉じた入口ダクト114と適した成形技術により形成することができる。これら入口ダクト114は、循環装置115から前記1次チャネル106に、入口の空気の流れAを導き、かつ2次のチャネル中の空気の流れBから、前記2次チャネル108を出る空気を分離するように機能する。使用の際、この流れBは、通常は蒸気で飽和されて、排出されるであろう。前記1次チャネル106または2次チャネル108に、入口または出口としてダクトを形成する他の方法が、必要に応じて使用されても良いことが理解されるであろう。
また、水分配システム116が、図3に示されている。この水分配システム116は、前記2次チャネル108に水滴124を射出するために、水供給部119から出口122へ水を導く一連の導管118の形態である。前記ルーバ112は、水滴124から、プレート102を通り、下側に位置しているさらなる2次チャネルへと入ることを可能にする。代わりに、複数の水分配システム116が使用されても良い。好ましい構成は、国際特許公開公報の第04/076931号に実質的に記載されているような、Oxycell Rooftop 400蒸発冷却装置で現在使用されているシステムであり、この内容は、参照としてここに含まれている。前記水供給部119と、前記循環装置115との両方が、制御器130によって制御される。この循環装置は、適切なハウジング(図示されていない)で囲まれていても良い。
蒸発冷却装置の効率的な動作のための重要なファクタは、前記液体保持層の特性である。液体保持層が参照されるが、実際、この層は、液体保持および放出層であることが明確に理解される。このような層に要求されることは、この層が、蒸発に対する耐性を含まないように、水を容易に放出することである。全ての関連する面に、素早くかつ効果的に水を分配することも重要である。従って、吸湿性の、好ましくは主に表面張力効果によって保持される水がなく、親水性であるべきである。
図2並びに図3の実施の形態では、前記液体保持層110は、繊維材料により形成されている。この層110は、前記プレート102の金属が、この層110の繊維間のスペースに明らかに見られることができるように、非常に開口した構造を有するように、概略的に図示されている。この構造は、このプレート102を覆うことなく、プレート102からの直接の熱伝達を促進すると考えられる。厚いウィッキング層(wicking layer)を使用した従来技術の装置は、暖かい熱伝達を防ぐような断熱性の熱伝達層を効果的に有する。前記水保持層110を形成するための材料の一例は、20g/m2のポリエステル/ビスコースの50/50混合物であり、オランダのLantor B.V.から入手可能である。他の材料の例は、30g/m2のポリエステル繊維で覆われたポリアミドであり、オランダのColbond N.V.からColback(商標)の名前の下で入手可能である。合成繊維を含む同様の特性を有する他の材料およびウールのような天然繊維が使用されても良い。ここで必要なのは、前記液体保持層110が、覆われるか、そうでなければ、抗菌性を与えるように処理される、もしくは他の防汚性を有し得ることである。
前記液体保持層110は、前記プレート102に接着して取着されることができる。前述のように、アルミニウム並びにLantorの繊維を使用する際、2μmの2成分ポリウレタン接着層が、優れた結果を与えることが知られている。このような薄層として与えられたとき、熱伝達の効果は、無視できる。この液体保持層の存在は、前記プレート102から前記2次の流れBへの熱伝達にのみ影響し、前記1次並びに2次チャネル106、108の間のプレート102内の熱伝導に何ら重要な影響を与えない。前述の繊維層は、連続的な工程で、ルーバおよび他の形状に形成されることができる積層として与えられることができるので、製造の目的のために理想的であることが分かっている。また、ポルトランドセメントのような他の液体保持層が使用されても良く、実際、優れた特性を与えることが明らかになっている。しかし、このような製品は、熱交換器を形成する前に設けられると、ひび割れする、もしくは剥げてしまう傾向にあるので、より複雑である。それにもかかわらず、アルミニウム酸化物のような他の表面仕上げ自体は、必要とされる水の保持並びにウィッキングを与えるために適切であると考えられる。
露点冷却装置の形態で図3に示されているような装置120の動作が、図2に関連して記載されている原理に基づいて説明される。1次空気の流れAは、所定の温度T1で入口114に入り、1次チャネル106を通って流れる。この流れAは、循環装置115によって駆動される。この流れAは、前記プレート102へ熱を伝達することによって、露点に近い温度T2に冷却される。前記1次チャネル106から出る側の冷却された前記1次の流れAは、冷却され生成された流れCと2次の流れBとを形成するように分割される。この生成された流れCは、前記冷却された空気が必要とされる適切な複数のダクトによって、吐出される。前記2次の流れBは、前記2次チャネル108を通って戻される。前記2次の流れが戻るのに従って、この空気の流れは、前記プレート102からの熱伝達によって暖められ、前記水保持層110からの蒸発による水分を受ける。前記2次チャネル108から出る側の前記流れBは、元の温度T1の近くに戻るであろうが、この空気の流れBは、ほぼ100%飽和されるであろう。これら流れAとBとのエンタルピーの違いは、生成された流れCに利用できる冷却の総量を表している。
図3の構成では、熱が、前記プレート102の両面上で、1つの1次チャネル106から複数のチャネル108に、このプレート102を通って矢印Hの両方向に伝導され得ることが注意される。熱は、一般的に好ましくない流れの方向にも伝達され得る。図3の実施の形態では、ルーバは、前記1次チャネル106の領域には示されていない。しかし、ルーバが、乱流に抗するためと、長手方向への熱伝達を減少させるためとの両方のために、この領域に設けられても良い。
図4は、図3の構成体にほぼ対応した、代わりの本発明の実施の形態を示す。図4での同様の部材は、図3での同じ参照符号によって同一であると見なされる。図4では、ルーバ112が、1次チャネル106の領域にも設けられている。この場合、これらルーバ112は、全体の流れA並びにBが、実質的な抵抗なしで通過するのに十分な程度に大きい。壁126が、前記フローチャネル106、108の両端部に設けられている。入口ダクト114が、最底部の1次チャネル106の底部に形成されている。動作中、1次空気の流れAは、前記入口ダクト114から上方に向けられ、順次、前記ルーバ112を通って各々のプレート102を通過する。最上部の1次チャネル106の領域から出る側の流れは、2次チャネル108の領域で、前記プレート102を通って下方へ戻る、生成された流れCと2次の流れBとを形成するように分割される。ここでの動作は、図3の実施の形態の動作と実質的に同じである。しかし、多くの効果が示され得る。前記流れA並びにBは、前記プレート102にほぼ垂直であるので、流れの方向に熱を伝導できない。さらに、前記2次の流れBは、水の分配の方向にアライメントされているので、水の搬送を改良するために使用されることができる。図4の流れの方向は、前記1次の流れAが下方に向かうように、逆向きにされてもよいことが注意される。代わって、この構成は、一方の側に回転され、水が、前記壁126を通って前記2次チャネル108に与えられても良い。図4の実施の形態のさらなる効果は、前記壁126と前記入口ダクト114(もしくはさらなるダクト)とが、より簡単に形成し接続できることである。
図3並びに図4の両方の実施の形態は、逆向きの流れで作動する。これは、露点冷却装置のために、最も効果的な形態であることが十分に理解される。しかし、所定の環境では、クロスフローの形態が望ましい。図3並びに図4の両構成は、クロスフローの形態での動作に適している。図3では、前記2次の流れBが、前記プレートに垂直な方向に、前記ルーバ112を通って起こっても良い。図4では、両方の流れは、適した入口並びに出口ダクトを設けることによって再び向けられることができる。
図4の実施の形態が、ルーバ112を使用して説明されるとき、前記プレート102を通る適切な通路が使用され得ることが理解される。樹脂により形成されている前記スペーサ部材の材料が、前記プレート間を満たして、このような通路を封止できれば、前記ルーバ、もしくは通路は、夫々のチャネルの領域に限定される必要がないことも、注意される。図5は、プレート202を示し、このプレート202は、1次チャネル206並びに2次チャネル208を形成するように、プレート202上に配置されているスペーサ部材204を有する。また、このプレート202には、プレートの面に渡って、複数の開口部212が設けられている。前記スペーサ部材204の材料は、前記1次チャネル206から前記2次チャネル208への空気の漏れを防ぐように、前記開口部212に入る。従って、前記プレート202の両面上のスペーサ部材204は、実質的に連続的なスペーサ構造体を形成するように、例えば融解等によって、一緒に接合されても良い。前述の例のように、流れは、前記プレートにほぼ沿って、即ち前記プレートをほぼ通って、もしくは斜めに生じても良い。また、これらプレートは、前述のような水保持層(図示されていない)が設けられても良い。
さらなる多くの構成の変化が、考えられ得る。図6は、図2の熱交換器と同様の熱交換器300の一部分を通る断面を示している。図6の実施の形態では、ルーバが設けられていない点で、図2の実施の形態と異なっている。代わりに、プレート302は、乱流を促進するための表面形態312が設けられている。この例では、この表面形態312は、小さな窪みとして示されている。しかし、前記プレート302自体が、さらなる輪郭を描かれる、即ち所望の効果を奏するようにひだを付けられても良い。水保持層310には、空気の流れが、前記プレート302の金属の面並びにこの水保持層310の湿った面に渡って、代わって流れるように、周期的なストリップとして2次チャネル308が設けられている。図6の実施の形態のさらなる特徴は、スペーシング部材304内に設けられている水分配システム316である。各々のスペーシング部材304は、出口322を有する小さな弾性チューブ318の形態である。圧力の下で、これらチューブ318に水を与えることによって、前記水保持層310を湿らせるように、水滴を前記出口322から放出させる。
図2ないし図6の実施の形態では、プレートを離間して維持するために、分離されたスペーサ部材を使用している。図7に断面が示されている本発明のさらなる実施の形態では、スペーサは、プレート自体の材料により形成されている。図7では、複数のプレート402が、各々がジグザグ構造を有するように形成されている。各々のプレート420は、スペーサ領域434によって分離されている1次チャネル領域430並びに2次チャネル領域432を有する。これらスペーサ領域434は、前記1次チャネル領域430並びに2次チャネル領域432にほぼ直交している。この1次チャネル領域430は、2次チャネル領域432よりも大きいことが注意される。この違いは、以下にさらに詳細に説明される理由に因る。前記1次並びに2次チャネル430、432は、ルーバ412を有し、また、この2次チャネル432には、図2ないし図5の前述の実施の形態のような水保持層(図示されていない)が設けられている。前記プレート402は、前記スペーサ領域434が、互いにアライメントされ、隣接する各々のプレート420から感覚をおくように、互いに積み重ねられる。これらプレート間の接触点は、接着剤436で互いに接続されている。この接着剤436も、前述の実施の形態のようにして、スペーサとして機能する。代わって、前記プレートは、例えば機械的なスナップ接続のような、他の適切な方法で互いに接続されても良い。
露点冷却装置としての図7の実施の形態の動作は、前述の実施の形態の動作と実質的に同じである。1次空気の流れAは、1次チャネル領域430を通って流れる。この流れAは、適切なファン(図示されていない)によって駆動されることができる。この流れAは、前記プレート402への熱伝達によって冷却される。前記1次チャネル領域430から出る側の、冷却された1次の流れAは、冷却され生成された流れCと2次の流れBとを形成するように分割される。この2次の流れBは、前記2次チャネル領域432を通って戻される。この2次の流れが戻るのに従って、空気が、前記プレート402からの熱伝達によって加熱され、前記水保持層からの蒸発による水分を受ける。この流れの一部のみが、前記2次チャネルを通って戻るので、これら2次チャネル領域の断面積は、1次チャネル領域の断面積よりも大きい必要はない。このような1次並びに2次チャネル間の流れの領域の違いも、前述の実施の形態で使用されても良い。
前記流れA並びにBは、前記ルーバ410を通過するように、前記プレート402を通って起こっても良い。このような流れの形態では、前記接着剤436は、流れの方向への伝導を防ぐ熱スペーサ即ちブリッジとして機能する。これら流れA並びにBは、流れの一部分のみが前記ルーバ410を通過することによって、前記プレート402にほぼ沿って起こっても良い。
従って、本発明は、前述の所定の実施の形態を参照して記載されている。これら実施の形態は、当業者に周知の様々な変更および代わりの形態に影響を受けることが理解されるであろう。前述の実施の形態に加える多くの変更が、本発明の本質および意図を逸脱しないような構造および技術によりなされても良い。従って、特定の実施の形態が説明されてきたが、これら例示であり、本発明の意図を限定するものではない。
図1Aは、通常の蒸発熱交換装置の一部分の斜視図を示している。
図1Bは、1B−1B線に沿った図1Aの一部分の断面の詳細を示している。
図2は、図1Bと同様の、本発明の第1の実施の形態に係る熱交換器の断面の詳細を示している。
図3は、露点冷却装置として構成されている図2の熱交換器の斜視図を示している。
図4は、図3の実施の形態と同様の、本発明の第2の実施の形態の斜視図である。
図5は、本発明の第3の実施の形態での使用のための代わりの熱交換プレートの斜視図である。
図6は、図2と同様の、本発明の第4の実施の形態を示している。
図7は、本発明の第5の実施の形態の端面図である。