JP2009523712A - 電気的輸送適用における薬剤リザーバーとしての乾燥マトリックス - Google Patents
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Abstract
本発明は、薬剤リザーバーとしてポリマー電解質マトリックスを利用する有益作用剤の電気的輸送送達のための方法および装置を提供する。本発明のある種の態様において、有益作用剤は加水分解に不安定であり、そして加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置の長期貯蔵中にそして加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達中に加水分解に不安定な有益作用剤の安定性を高める方法が提供される。
Description
本願は、2006年12月20日に出願された米国出願第11/613,327号および2005年12月22日に出願された米国出願第60/753,359号の利益を請求し、それらの各々はその全部が引用することにより本明細書に組み込まれる。
本発明は、ポリマー電解質リザーバーを利用する有益作用剤(beneficial agent)の電気的輸送(electrotransport)送達のための装置および方法に関する。本発明のある種の態様において、有益作用剤は加水分解に不安定であるが、電気的輸送装置の貯蔵中にそして電気的輸送送達中に安定なままである。
表皮を通した拡散による治療薬の経皮送達は、皮下注射および経口送達のようなより伝統的な薬剤送達方法に比べてある種の改善を提供する。経皮薬剤送達は経口薬剤送達で起きる肝臓初回通過効果を回避し、そしてまた皮下注射と関連する患者の不快感も取り除く。さらに、経皮送達は、経皮送達装置のある種のタイプの長期制御送達プロフィールのために経時的に患者の血流における薬剤のより均一な濃度を提供することができる。
皮膚は体内への物質の経皮透過に対する第一障壁として機能し、そして薬剤のような治療薬の経皮送達に対する身体の主要な抵抗を表す。これまで、受動拡散による薬剤の送達のために物理的抵抗を軽減することもしくは皮膚の透過性を高めることに努力は集中している。最も顕著には化学的フラックスエンハンサーを用いて、経皮薬剤フラックスの速度を増大するための様々な方法が試みられている。経皮薬剤送達の速度を増大するための他の方法には、治療薬の経皮送達を電気的に助けるための、電気エネルギーおよび超音波エネルギーのようなエネルギー源の使用が包含される。
親水性ポリマーベースのゲル、すなわちヒドロゲルは、電気的輸送薬剤送達装置における薬剤リザーバーとして一般に使用される。ヒドロゲルは、典型的に、治療薬を含有するそれらの最終的な加工形態において約80%の水を含有し、そして水は電気的輸送による作用剤の輸送のための伝導媒体および経路を提供する。従って、ヒドロゲルは十分な水安定性を有する治療薬の優れた生体適合性リザーバーである。しかしながら、加水分解に不安定な治療薬が電気的輸送送達のためにヒドロゲルにおいて調合される場合には、化学的安定性の問題が起こり得る。そのような安定性の問題は、電気的輸送送達中そして送達装置の長期貯蔵中の両方で起こり得る。さらに、電子機器および治療薬製剤が単一の区画において組み立てられる電気的輸送装置において、電子機器はヒドロゲルと関連する湿気および相対湿度により悪影響を受ける可能性がある。従って、加水分解に不安定な治療薬で用いることができそして装置の電子機器成分に悪影響を与えない電気的輸送薬剤送達装置用の薬剤リザーバーの必要性が当該技術分野においてある。
[発明の要約]
本発明のある種の態様は、実質的に無溶媒のポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリ、対電極アセンブリ、ならびにドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源を含んでなる有益作用剤の電気的輸送送達用の装置に関する。本発明の好ましい態様において、ポリマー電解質は酸化剤およびイオン性不純物を実質的に含まず且つ装置の長期貯蔵中にそして電気的輸送中に安定なままである有益作用剤を含有する。
本発明のある種の態様は、実質的に無溶媒のポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリ、対電極アセンブリ、ならびにドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源を含んでなる有益作用剤の電気的輸送送達用の装置に関する。本発明の好ましい態様において、ポリマー電解質は酸化剤およびイオン性不純物を実質的に含まず且つ装置の長期貯蔵中にそして電気的輸送中に安定なままである有益作用剤を含有する。
本発明の別の態様は、加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置の長期貯蔵中にそして加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達中に加水分解に不安定な有益作用剤の安定性を高める方法に関する。そのような方法は、好ましくは、酸化剤およびイオン性不純物を実質的に含まず且つ加水分解に不安定な有益作用剤を含有するポリマー電解質マトリックスを含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリ;対電極アセンブリ;ならびにドナーおよび対電極アセンブリに電気的に接続されるように適応される電源を含んでなる加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置を準備することを含んでなる。好ましい態様において、そのような方法は6ヶ月までの間該装置を貯蔵すること;および該装置を用いて加水分解に不安定な有益作用剤を患者に投与することをさらに含んでなり、ここで、加水分解に不安定な有益作用剤は貯蔵中にそして電気的輸送中に安定なままである。
[実施態様の詳細な記述]
本発明のある種の態様は、電気的輸送薬剤送達装置における薬剤リザーバーとして使用することができるポリマー電解質マトリックスに関する。ポリマー電解質は、荷電分子およびイオンを輸送することができる無溶媒のイオン伝導性極性ポリマーである。ポリマー電解質は、孤立電子対を有する極性基のようなカチオン配位部位を含有し、非常に不定形の形態を有し、そして高度にフレキシブルなポリマー骨格をもたらす低いガラス転移温度を有する。
本発明のある種の態様は、電気的輸送薬剤送達装置における薬剤リザーバーとして使用することができるポリマー電解質マトリックスに関する。ポリマー電解質は、荷電分子およびイオンを輸送することができる無溶媒のイオン伝導性極性ポリマーである。ポリマー電解質は、孤立電子対を有する極性基のようなカチオン配位部位を含有し、非常に不定形の形態を有し、そして高度にフレキシブルなポリマー骨格をもたらす低いガラス転移温度を有する。
ポリマー電解質のイオン伝導性およびイオン輸送特性は、電気的摂動の際に起こるポリマーの大振幅セグメント運動に起因する。ポリマー電解質にはポリエチレンオキシドが包含され、カチオンを輸送するために電解質として働くその能力は、バッテリー、ガスセンサーおよび燃料電池のような電気化学的装置と関連して詳細に研究されている。実質的に無溶媒のポリマー電解質マトリックスは、長期の貯蔵中にそして電気的輸送中に加水分解に不安定である治療薬の送達に用いられる電気的輸送装置の理想的なリザーバーになる。電気的輸送装置のための乾燥ポリマー電解質リザーバーの使用はまた、水和したリザーバーからの湿気が電気的輸送装置の電子機器成分に浸透する場合に起こり得る、腐食もしくは電気的短絡のような問題も取り除く。さらに、低いオーム抵抗を有する乾燥ポリマー電解質リザーバーの使用は、水和可能なドナーマトリックスを使用する場合に必要とされる水和の余分な工程を除く。さらに、ポリマー電解質マトリックスは、電気的輸送有益作用剤送達装置、特に有益作用剤リザーバーの小型化を促進する。
本発明のある種の態様は、薄膜の形態である電気的輸送薬剤送達装置用の乾燥した実質的に無溶媒のポリマー電解質マトリックスに関する。
本明細書において用いる場合、「電気的輸送」、「イオン導入」(iontophoresis)および「イオン導入の(iontophoretic)」という用語は、体表面(皮膚、粘膜、目もしくは爪のような)を通した製薬学的に有効な作用剤(荷電、非荷電もしくはその混合物)の送達をさし、ここで、該送達は電位の適用により少なくとも部分的に誘導されるかもしくは促進される。作用剤は、エレクトロマイグレーション、電気穿孔、電気浸透もしくはその任意の組み合わせにより送達されることができる。エレクトロマイグレーション(イオン導入とも呼ばれる)は、体表面を通した荷電イオンの電気的に誘導される輸送を含む。電気浸透はまた、エレクトロヒドロキネシス(electrohydrokinesis)、電気対流および電気誘導浸透とも呼ばれている。一般に、組織への種(species)の電気浸透は、治療種リザーバーへの起電力の適用の結果として、該種が含まれる溶媒の移動、すなわち、他のイオン種のエレクトロマイグレーションにより誘導される溶媒フローによって生じる。電気的輸送プロセス中に、「電気穿孔」とも呼ばれる、皮膚において一時的に存在する孔の形成のような皮膚のある種の改変もしくは変化が起こり得る。体表面の改変もしくは変化(例えば、皮膚における孔の形成)により高められる種の任意の電気的に支援される輸送もまた、本明細書において用いる場合に「電気的輸送」という用語に包含される。従って、本明細書において用いる場合、「電気的輸送」、「イオン導入」および「イオン導入の」という用語は、(1)エレクトロマイグレーションによる荷電薬剤もしくは作用剤の送達、(2)電気浸透のプロセスによる非荷電薬剤もしくは作用剤の送達、(3)電気穿孔による荷電もしくは非荷電薬剤の送達、(4)エレクトロマイグレーションと電気浸透の組み合わされたプロセスによる荷電薬剤もしくは作用剤の送達、ならびに/または(5)エレクトロマイグレーションと電気浸透の組み合わされたプロセスによる荷電および非荷電薬剤もしくは作用剤の混合物の送達をさす。
電気的輸送装置において、少なくとも2個の電極が用いられる。これらの電極は両方とも、皮膚、爪、粘膜もしくは身体の他の表面のいくらかの部分と密接に電気的に接触するように配置される。「活性」もしくは「ドナー」電極と呼ばれる一方の電極は、それから薬剤が体内に送達される電極である。「対(counter)」もしくは「対(return)」電極と呼ばれるもう一方の電極は、身体を通した電気回路を閉じる働きをする。患者の皮膚とつないで、電源、例えばバッテリーへの、そして通常は装置を通過する電流を制御することができる回路への電極の接続により回路は完成される。体内に駆動されるイオン性物質が正に荷電している場合には、正電極(アノード)はドナー電極であり、そして負電極(カソード)は対電極として働き、回路を完成する。送達されるイオン性物質が負に荷電している場合、カソード電極はドナー電極であり、そしてアノード電極は対電極である。アニオン性およびカチオン性治療薬イオンの両方が送達される場合、もしくは非荷電治療薬が送達される場合、アノードおよびカソードの両方がドナー電極であることができる。
電気的輸送装置はさらに、「ドナーリザーバー」と呼ばれる、体内に送達されるかもしくは導入される製薬学的に有効な作用剤のリザーバーもしくは供給源を必要とする。ドナーリザーバーの例には、小袋もしくは腔(cavity)、多孔性スポンジもしくはパッド、および親水性ポリマーもしくはゲルマトリックスが包含される。そのような薬剤リザーバーは、1つもしくはそれ以上の所望の種もしくは作用剤の固定されたもしくは再生可能な供給源を提供するために、電気的輸送装置のドナー電極と体表面に連結され、そしてその間に配置される。従って、「ドナー電極アセンブリ」という用語は、ドナー電極およびドナーリザーバーをさす。同様に、「対電極アセンブリ」という用語は対電極および対リザーバーをさし、それは1つもしくはそれ以上の生体適合性電解質を含有する。
電気的輸送装置は、1つもしくはそれ以上のバッテリーのような電源により電力が供給される。典型的には、任意のある時点で、電源の一方の極はドナー電極に電気的に接続され、一方、反対極は対電極に電気的に接続される。電気的輸送薬剤送達の速度は装置によって適用される電流におおよそ比例することが示されているので、多くの電気的輸送装置は、典型的に、電極を通して適用される電圧および/もしくは電流を制御しそれにより薬剤送達の速度を調節する電気制御器を有する。これらの制御回路は、電源により供給される電流および/もしくは電圧の電気的シグナル、すなわち、振幅、極性、時間的調節、波形形状などを制御するために様々な電気成分を使用する。その全部が引用することにより本明細書に組み込まれる、McNichols,et al.への米国特許第5,047,007号は、いくつかの適当なパラメーターおよび特徴を開示する。
そのドナーおよび対電極を有する電気的輸送装置もしくは系は、2個の電極を有する電気化学電池と考えられることができ、各電極は関連する半電池反応を有し、それらの間に電流が流れる。回路の導電性(例えば金属)部分を通って流れる電流は電子により運ばれ(電子伝導)、一方、装置の液体含有部分(すなわち、ドナー電極における薬剤リザーバ
ー、対電極における電解質リザーバーおよび患者の身体)を通って流れる電流はイオンにより運ばれる(イオン伝導)。電流は、金属部分(例えば金属電極)と液相(例えば薬剤溶液)の間の界面で典型的に起こる酸化および還元電荷移動反応を用いて金属部分から液相に運ばれる。電気的に支援される薬剤輸送に関与するタイプの電気化学的酸化および還元電荷移動反応の詳細な記述は、J.S.Newman,Electrochemical Systems(Prentice Hall,1973)およびA.J.Bard
and L.R.Faulkner,Electrochemical Methods,Fundamentals and Applications(John Wiley & Sons,1980)のような電気化学テキストに見出されることができる。
ー、対電極における電解質リザーバーおよび患者の身体)を通って流れる電流はイオンにより運ばれる(イオン伝導)。電流は、金属部分(例えば金属電極)と液相(例えば薬剤溶液)の間の界面で典型的に起こる酸化および還元電荷移動反応を用いて金属部分から液相に運ばれる。電気的に支援される薬剤輸送に関与するタイプの電気化学的酸化および還元電荷移動反応の詳細な記述は、J.S.Newman,Electrochemical Systems(Prentice Hall,1973)およびA.J.Bard
and L.R.Faulkner,Electrochemical Methods,Fundamentals and Applications(John Wiley & Sons,1980)のような電気化学テキストに見出されることができる。
本明細書において用いる場合、「経皮投与」および「経皮的に投与すること」という用語は、皮膚、爪、粘膜もしくは身体の他の表面へのもしくはそれを通した通過による物質もしくは作用剤の送達をさす。
本明細書において用いる場合、「マトリックス」という用語は、有益作用剤が存在するために十分に大きい孔もしくはスペースを有する、例えばポリマー材料もしくはゲルのような、多孔性の複合固体もしくは半固体物質をさす。マトリックスは、有益作用剤がその中に含まれる貯蔵所として働く。
本明細書において用いる場合、「酸化剤および不純物を実質的に含まない」という語句は、微量のもしくはわずかな量の酸化剤およびイオン性不純物しか含有しないポリマー電解質をさす。
本明細書において用いる場合、「長期貯蔵」という語句は、少なくとも2週である期間にわたる電気的輸送有益作用剤送達装置の貯蔵をさす。例えば、「長期」と考えられる期間にわたる電気的輸送送達装置の貯蔵には、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月もしくは少なくとも12ヶ月にわたる貯蔵が包含される。
本明細書において用いる場合、「有益作用剤」という用語は、単独であろうと他の製薬学的賦形剤もしくは不活性成分と組み合わせてであろうと、ヒトもしくは動物への投与の際に所望の有益な、しばしば薬理的な、効果を引き出す任意の作用剤をさす。
本明細書において用いる場合、「ポリマー電解質」という用語は、イオンを伝導することができる任意のポリマー材料をさす。ポリマー電解質は溶媒を実質的に含まないことができ、もしくはポリマー電解質の膜をキャスティングする(cast)ために用いられる微量の溶媒を含有することができる。
本明細書において用いる場合、「加水分解に不安定な」という用語は、加水分解により分解を受ける物質をさす。「加水分解」という用語は、水の添加により分子が2つもしくはそれ以上の部分に切断される任意の化学プロセスをさす。
本明細書において用いる場合、「安定なままである有益作用剤」という語句は、有益作用剤を含有する電気的輸送送達装置の長期貯蔵中にそして有益作用剤の電気的輸送送達中に実質的に損なわれないままでありそして有意な程度まで加水分解を受けない有益作用剤をさす。「安定性」という用語は、本明細書において用いる場合、有益作用剤が加水分解に耐性である程度をさす。
本明細書において用いる場合、「加水分解に不安定な有益作用剤の安定性を高める方法」という語句は、加水分解に不安定な有益作用剤の安定性の任意の測定可能な増加をもたらす方法をさす。
本明細書において用いる場合、「薄膜」という用語は、約0.2mm〜約2.0mmの厚さであるポリマー電解質膜をさす。本発明のある種の態様において、薄いポリマー電解質膜の層を用いて約1.59mmの厚さであるポリマー電解質膜を得ることができる。
本発明の特定の態様は、有益作用剤の電気的輸送送達用の装置に関する。本発明の好ましい態様において、該装置は酸化剤および不純物を実質的に含まずそして装置の長期貯蔵中にそして電気的輸送中に安定なままである有益作用剤を含有するポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリを含んでなる。好ましくは、該装置は対電極アセンブリならびにドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源をさらに含んでなる。
本発明の他の態様は、加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置の長期貯蔵中にそして加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達中に加水分解に不安定な有益作用剤の安定性を高める方法に関する。本発明の好ましい態様において、そのような方法はドナー電極アセンブリを含んでなる加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置を準備することを含んでなる。ドナー電極アセンブリは、好ましくは、酸化剤および不純物を実質的に含まずそして加水分解に不安定な有益作用剤を含有するポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなる。該装置はさらに好ましくは、対電極アセンブリならびにドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源を含んでなる。該方法はさらに好ましくは、6ヶ月までの間該装置を貯蔵することおよび該装置を用いて加水分解に不安定な有益作用剤を患者に投与することを含んでなる。本発明の好ましい態様において、加水分解に不安定な有益作用剤は貯蔵中にそして電気的輸送中に安定なままである。
本発明の方法のある種の態様において、加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置は、加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達の前に6ヶ月までの間貯蔵され、そして有益作用剤はそれが電気的輸送送達装置において貯蔵される期間を通して安定なままである。本発明の別の態様において、加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置は、少なくとも6ヶ月の任意の期間にわたって貯蔵され、そして有益作用剤はそれが電気的輸送送達装置において貯蔵される期間を通して安定なままである。
本発明の装置および方法の好ましい態様において、電気的輸送によって送達される有益作用剤は正味の正もしくは負電荷を有する。本発明の別の態様において、有益作用剤は加水分解に不安定であり、そして水にさらされると加水分解もしくは構造劣化を受ける。本発明のある種の態様において、加水分解に不安定な有益作用剤は加水分解に不安定なタンパク質もしくはポリペプチドである。
本発明の特定の態様は、電気的輸送によって送達される有益作用剤が塩酸リドカイン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、塩酸アポモルフィンもしくは塩酸フェタニルである電気的輸送装置および方法に関する。本発明の別の態様において、有益作用剤は黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアナログ(例えば、ゴセレリン、ロイプロリド、ブセレリン、トリプトレリン、ゴナドレリンおよびナプファレリン)、メノトロピン(尿性卵胞性刺激ホルモン(FSH)およびLH)、バソプレッシン、デスモプレッシン、コルチコトロピン(corticotrophin)(ACTH)、ACTHアナログ、例えばACTH(1−24)、カルシトニン、バソプレッシン、デアミノ[Val4,D−Arg8]アルギニンバソプレッシン、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン−10(IL−10)、グルカゴン、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インシュリン、インシュリノトロピン、カルシトニン、オクトレオチド、エンドルフィン、TRN、NT−36(化学名:N[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、aANF、bMSH、ソマトスタチン、ブラジキニン、ソマトトロピン、血小板由来増殖因子放出因子、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性ゴナドトロピン、エポプロステノール(血小板凝集阻害薬)、グルカゴン、ヒルログ、インターフェロン、インターロイキン、メノトロピン(尿性卵胞性刺激ホルモン(FSH)およびLH)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、ANP、ANPクリアランス阻害薬(ANP a clearance inhibitor)、BNP、VEGF、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、ブラジキニンアンタゴニスト、セレダーゼ、CSI、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチドサプレッサー(IgE a peptide suppressor)、IGF−1、神経栄養因子、コロニー刺激因子、副甲状腺ホルモンおよびアゴニスト、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害薬、サイモシンアルファ−1、血栓溶解薬、TNF、バソプレッシンアンタゴニストアナログ、アルファ−1抗トリプシン(組換え体)、TGF−ベータ、フォンダパリヌクス、アルデパリン、ダルテパリン、デフィブロチド、エノキサパリン、ヒルジン、ナドロパリン、レビパリン、チンザパリン、ペントサンポリ硫酸、オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド誘導体、例えばフォルミビルセン(formivirsen)、アレンドロン酸、クロドロン酸、エチドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、パミドロン酸、リセドロン酸、チルドロン酸、ゾレドロン酸、アルガトロバン、RWJ 445167、RWJ−671818、フェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニルならびにその混合物である。
本発明の特定の態様において、電気的輸送有益作用剤送達装置は、ポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリを含んでなる。ポリマー電解質は、酸化剤および不純物を実質的に含まない。特定の態様において、酸化防止剤を含有するポリマー電解質が好ましい。
本発明のある種の態様において、電気的輸送有益作用剤送達装置のドナーリザーバーを含んでなるポリマー電解質は薄膜の形態であり、そしてポリマー電解質は好ましくはポリエチレンオキシド、親水性側鎖を有するポリシロキサンもしくは親水性側鎖を有するポリホスファゼンである。本発明の特に好ましい態様において、ポリマー電解質はポリエチレンオキシドである。ポリエチレンオキシドは様々な分子量(100,000〜8x106)において利用可能であり、そして200〜500ppmの酸化防止剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を有する4x106の分子量を有するポリエチレンオキシドが特に好ましい。ポリシロキサンは、以下の構造において見られるように、フレキシブルなSi−O骨格を有する。Rの代わりに例えばエトキシもしくはメトキシ基のような親水性側鎖を使用すると、ポリシロキサンはポリマー電解質として機能することができる。好ましいシロキサンベースのポリマー電解質は、Rがヒドロキシル、メトキシもしくはエトキシ基で置換されるポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
メトキシもしくはエトキシのような親水性側鎖を含有するポリホスファゼン(以下の構造において示される)はポリマー電解質として機能し、そしてフレキシブルなホスファゼン骨格のために向上した伝導性を示す。
本発明の好ましい態様において、電気的輸送有益作用剤送達装置におけるドナーリザーバーとして用いられるポリマー電解質は、溶媒キャスト法として知られている方法により製造され、ここで、ポリマー電解質の乾燥形態を含有する溶液は最初に溶媒に溶解される。溶媒キャスト法に使用することができる溶媒には、高い蒸気圧もしくは低い標準沸点を有しそして経皮投与に適当な製薬学的溶媒として規制認可を受けている有機溶媒が包含される。有益作用剤が加水分解に不安定である場合には非水性溶媒が好ましい。好ましい溶媒には、例えば、単独でもしくは組み合わせて、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、低級アルキルアルコール、例えばイソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルアセトンおよびヘプタンが包含される。
いったんポリマー電解質が溶媒に溶解されると、次に、ポリマー電解質に対する有益作用剤の所望のモル比に基づいて、有益作用剤の必要とされる量が加えられる。ポリマー電解質に対する有益作用剤の比率は、典型的に、ポリマー電解質の骨格における極性基(酸素のような)当たりの薬剤分子の数に関して表される。典型的なポリマー電解質:有益作用剤比は、有益作用剤および必要とされる有益作用剤装填により、5〜25の間である。より高い有益作用剤濃度は、得られる膜において結晶性を誘導する可能性があり、それは伝導性に好ましくない影響を有する。
次に、有益作用剤およびポリマー電解質を含有する溶液は40℃〜60℃の範囲の温度(キャスティング(casting)に使用する溶媒の沸点未満の温度)に加熱され、そして鋳型に流し込まれる。鋳型は典型的にデルリンもしくはテフロン製であり、そしてそれらの寸法は所望の厚さの膜をもたらすように設計されることができる。次に、キャスティングに使用した溶媒は真空の適用によるかもしくは穏やかな加熱により除かれ、有益作用剤を含有するポリマー電解質の薄いフレキシブルな膜をもたらす。
あるいはまた、有益作用剤を含有するポリマー電解質膜は、有益作用剤が除かれること以外は、上記の方法に従ってポリマー電解質膜を最初に形成することにより製造することができる。次に、適当な溶媒に溶解した有益作用剤を得られる膜に吸収することができる。
ポリマー電解質は、任意の適当な電気的輸送有益作用剤送達装置においてドナーリザーバーとして用いることができる。適当な電気的輸送装置には、好ましくは銀を含んでなるアノードドナー電極、および好ましくは塩化銀を含んでなるカソード対電極が含まれる。ドナー電極は、有益作用剤を含有するポリマー電解質ドナーリザーバーと電気的に接触している。対リザーバーは、例えばポリビニルアルコールゲルのような任意の伝導性電解質を含んでなることができ、そしてクエン酸緩衝食塩水のような生体適合性電解質を含有する。アノードおよびカソードリザーバーは、好ましくは各々約1〜5cm2、そしてより好ましくは約2〜3cm2の皮膚接触面積を有する。アノードおよびカソードリザーバーは、好ましくは約0.05〜0.25cm、そしてより好ましくは約0.15cmの厚さを有する。適用した電気的輸送電流は約150μA〜約240μAである。最も好ましくは、適用した電気的輸送電流は、投与間隔の間は実質的に一定の直流である。
カソード電極およびアノード電極は、金属のような導電性材料を含んでなる。例えば、電極は金属箔、金属スクリーンまたは適当な裏打ち(backing)上に付着されるかもしくは塗られる金属から、またはカレンダー法、膜蒸発、もしくはポリマー結合剤マトリックスに導電性材料を混合することにより形成することができる。適当な導電性材料の例には、炭素、グラファイト、銀、亜鉛、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金およびチタンが包含される。例えば、上記のように、アノード電極は、電気化学的に酸化可能でもある銀からなることができる。カソード電極は炭素および電気化学的に還元可能な塩化銀からなることができる。銀は、哺乳類へのその比較的低い毒性のために他の金属よりも好ましい。カソードで起こっている電気化学的還元反応(AgCl+e−→Ag0+Cl−)は、大部分の動物において一般的でありそして無毒である塩化物イオンを生成するので、塩化銀は好ましい。
アノードおよびカソードに電気的に接続される電源は、任意の種類のものであることができる。例えば、対およびドナー電極が異なる金属のものであるかもしくは異なる半電池反応を有する場合、系はそれ自体の電力を発生することが可能である。ガルバニック対を提供する典型的な材料には、亜鉛−銀ドナー電極および塩化銀対電極が包含される。亜鉛−銀の組み合わせは、約1ボルトの電位を生成する。ガルバニック対が用いられる場合、ドナー電極および対電極は発電プロセスの不可欠な部分である。何らかの制御手段がない、そのようなガルバニック対電力供給系は、身体組織および/もしくは体液が系と完全な回路を形成する場合に自動的に作動する。本発明において潜在的に有用なガルバニック対系の多数の他の例が存在する。
ある場合において、ガルバニック電極対により供給される電力を増大させることが必要である可能性があり、それは別個の電源の使用で成し遂げることができる。そのような電源は、典型的に、直列にもしくは並列につながれそして一方の電極が電源の一方の極につながれそしてもう一方の電極が反対極につながれるようにカソード電極とアノード電極の間に配置される、1個のバッテリーもしくは複数個のバッテリーである。一般に、1個もしくはそれ以上の3ボルトボタン電池が電気的輸送装置に電力を供給するために適当である。好ましいバッテリーは、3ボルトリチウムボタン電池である。
電源には、電気的輸送装置の操作を制御するための電子回路を包含することができる。従って、電源には、オンデマンド薬剤投与計画でのような、患者が系を手動でオンオフすること、もしくは例えば身体の自然もしくは概日パターンに適合させるために、ある所望
の周期性で系をオンオフすることを可能にするように設計された回路を包含することができる。さらに、制御手段は、患者に投与することができる投与の回数を限定することができる。比較的簡単な制御装置もしくはマイクロプロセッサーは、時間の関数として電流を制御することができ、またはパルスもしくは正弦波のような複雑な電流波形を生成することができる。制御回路にはまた、生体シグナルをモニターし、治療の評価を提供し、そしてそれに応じて薬剤送達を調整するバイオセンサーおよびあるタイプのフィードバック系を包含することもできる。
の周期性で系をオンオフすることを可能にするように設計された回路を包含することができる。さらに、制御手段は、患者に投与することができる投与の回数を限定することができる。比較的簡単な制御装置もしくはマイクロプロセッサーは、時間の関数として電流を制御することができ、またはパルスもしくは正弦波のような複雑な電流波形を生成することができる。制御回路にはまた、生体シグナルをモニターし、治療の評価を提供し、そしてそれに応じて薬剤送達を調整するバイオセンサーおよびあるタイプのフィードバック系を包含することもできる。
ここで、本発明のある種の態様に従って使用することができる典型的な電気的輸送装置を示す図8について言及する。図8は、押しボタンスイッチ12の形態の作動スイッチおよび発光ダイオード(LED)14の形態のディスプレイを有する電気的輸送装置10の分解斜視図を示す。装置10は、上部ハウジング16、回路基板アセンブリ18、下部ハウジング20、アノード電極22、カソード電極24、アノードリザーバー26、カソードリザーバー28および皮膚適合性接着剤30を含んでなる。上部ハウジング16は、患者の皮膚上に装置10を保持するのを助ける側方翼15を有する。上部ハウジング16は、好ましくは、射出成形可能なエラストマー(例えばエチレン酢酸ビニル)からなる。印刷された回路基板アセンブリ18は、分離した電気成分40に連結された集積回路19およびバッテリー32を含んでなる。回路基板アセンブリ18は、開口部13aおよび13bを通る支柱(図8において示されない)によりハウジング16に取り付けられ、それらの支柱の末端は、回路基板アセンブリ18をハウジング16に加熱固定するために加熱/融解される。下部ハウジング20は、接着剤30を用いて上部ハウジング16に取り付けられ、接着剤30の上部表面34は、下部ハウジング20および翼15の底部表面を含む上部ハウジング16の両方に取り付けられる。
回路基板アセンブリ18の下側に示される(部分的に)のはバッテリー32であり、それは好ましくはボタン電池、そして最も好ましくはリチウム電池である。他のタイプのバッテリーもまた、装置10に電力を供給するために用いることができる。
回路基板アセンブリ18の回路出力(図8において示されない)は、導電性接着剤ストリップ42、42’を用いて、下部ハウジングに形成されるくぼみ(depressions)25、25’における開口部23、23’を通して電極24および22と電気的接触を行う。電極22および24は、次に、リザーバー26および28の上側44’、44と直接機械的および電気的に接触する。リザーバー26、28の底側46’、46は、接着剤30における開口部29’、29を通して患者の皮膚に接触する。押しボタンスイッチ12を押し下げると、回路基板アセンブリ18上の電子回路は、既定の長さ、例えば約10分の送達間隔にわたって電極/リザーバー22、26および24、28に既定のDC電流を送る。好ましくは、装置は発光するLED14および/もしくは例えば「ビーパー」からの可聴音響シグナルを用いて有益作用剤送達もしくはボーラス間隔の開始の視覚的および/もしくは可聴確認を使用者に伝える。次に、有益作用剤は既定(例えば10分)の送達間隔にわたって患者の例えば腕の皮膚を通して送達される。実際には、使用者は視覚的(LED14が発光する)および/もしくは可聴シグナル(「ビーパー」からのビープ音)により有益作用剤送達間隔の開始に関してフィードバックを受ける。
アノード電極22は好ましくは銀を含んでなり、そしてカソード電極24は好ましくは塩化銀を含んでなる。ドナーリザーバーは、好ましくはポリマー電解質を含んでなる。電極22、24およびリザーバー26、28は、下部ハウジング20により保持される。
押しボタンスイッチ12、回路基板アセンブリ18上の電子回路およびバッテリー32は、上部ハウジング16と下部ハウジング20の間に接着的に「シールされる」。上部ハウジング16は、好ましくは、ゴムもしくは他のエラストマー材料からなる。下部ハウジ
ング20は、好ましくは、くぼみ25、25’を形成するために容易に成形されそして開口部23、23’を形成するために切断されることができるプラスチックもしくはエラストマーシート材料(例えばポリエチレン)からなる。組み立てられた装置10は好ましくは耐水性(すなわち、防沫)であり、そして最も好ましくは防水性である。系は、身体に容易に適合する低いプロフィールを有し、それにより着用部位でそしてその周りで運動の自由度を可能にする。アノード/薬剤リザーバー26およびカソード/塩リザーバー28は装置10の皮膚接触側に位置し、そして通常の取り扱いおよび使用中に偶発的な電気的短絡を防ぐために十分に離される。
ング20は、好ましくは、くぼみ25、25’を形成するために容易に成形されそして開口部23、23’を形成するために切断されることができるプラスチックもしくはエラストマーシート材料(例えばポリエチレン)からなる。組み立てられた装置10は好ましくは耐水性(すなわち、防沫)であり、そして最も好ましくは防水性である。系は、身体に容易に適合する低いプロフィールを有し、それにより着用部位でそしてその周りで運動の自由度を可能にする。アノード/薬剤リザーバー26およびカソード/塩リザーバー28は装置10の皮膚接触側に位置し、そして通常の取り扱いおよび使用中に偶発的な電気的短絡を防ぐために十分に離される。
装置10は、上側34および身体接触側36を有する周辺接着剤30を用いて患者の体表面(例えば皮膚)に接着する。接着側36は、通常の使用者活動の間に装置10が身体上の適所にとどまることを保証する接着性を有し、そしてそれでもなお既定(例えば24時間)の着用期間の後に合理的な除去を可能にする。上部接着剤側34は下部ハウジング20に接着し、そして電極および薬剤リザーバーをハウジングくぼみ25、25’内に保持し、ならびに上部ハウジング16に取り付けられた下部ハウジング20を保持する。
押しボタンスイッチ12は装置10の上面上に位置し、そして衣類を通して容易に作動される。好ましくは、短期間、例えば3秒以内の押しボタンスイッチ12の二度押しを用いて薬剤の送達のために装置10を作動させ、それにより装置10の不用意な作動の可能性を最小にする。
スイッチ作動の際に可聴アラームは有益作用剤送達の開始を伝え、その時点で回路は既定(例えば10分)の送達間隔にわたって電極/リザーバーに既定レベルのDC電流を供給する。LED14は送達間隔を通して「オン」のままであり、装置10が動作中の有益作用剤送達モードであることを示す。バッテリーは、好ましくは、全(例えば24時間)着用期間にわたって既定レベルのDC電流で装置10に連続して電力を供給するために十分な容量を有する。
以下の実施例は本発明のある種の態様を例示し、そして本発明の範囲を限定すると考えられるべきではない。
[実施例]
[実施例]
インビトロ皮膚フラックス実験
特注のDelron水平拡散セルを全てのインビトロ皮膚フラックス実験に使用した。薬剤と同じ極性を有する消耗Ag電極をドナーセルとして機能するセルの一方の端に接着した。対電極を反対の端で接着した。セルを横切って直流を流す電流発生器(Maccor)にこれらの電極を接続した。Maccorユニットは、一定のイオン導入電流を維持する20ボルトまでの内蔵コンプライアンス電圧を有する装置であった。
特注のDelron水平拡散セルを全てのインビトロ皮膚フラックス実験に使用した。薬剤と同じ極性を有する消耗Ag電極をドナーセルとして機能するセルの一方の端に接着した。対電極を反対の端で接着した。セルを横切って直流を流す電流発生器(Maccor)にこれらの電極を接続した。Maccorユニットは、一定のイオン導入電流を維持する20ボルトまでの内蔵コンプライアンス電圧を有する装置であった。
全てのインビトロ電気的輸送実験に、熱で分離したヒト表皮を使用した。典型的な実験において、表皮を適当な円形(2.38cm)に打ち抜き、そして使用直前に冷蔵した。Delronハウジングアセンブリの中央部に適合するスクリーン(2.38cm)上に皮膚を置いた。スクリーンの下には、直径1.27cm、深さ1.59mmでありそして約250μlの受容体溶液を保持することができる小型リザーバーがあった。皮膚の表皮側を薬剤含有リザーバーに面して置き、そして角質層側は受容体リザーバーに面した。受容体溶液(食塩水、リン酸塩もしくは薬剤と適合する他の緩衝溶液)を注射器/ポンプアセンブリの末端に連結されるポリマーチューブ(Upchurch Scientific)を介してリザーバーに連続して送りこんだ。ポンプは、任意の所望の流速に設定することができた。典型的な実験において、1/10希釈したダルベッコの(Dubecco
s)リン酸緩衝食塩水受容体溶液をリザーバー液として使用し、そして1ml/時間で受容体溶液リザーバーに送り込んだ。薬剤含有リザーバーをドナー電極と熱で分離した表皮の間に置いた。全アセンブリを一緒に組み立てた場合に、薬剤リザーバーが皮膚に穴を開けないように薬剤層を入れるために特注のDelronスペーサーを使用した。全てのDelron部品間に密封をもたらすためにそして実験中に漏れがないことを保証するために両面粘着テープを使用した。皮膚温度を複製するために32℃に設定した2個の加熱ブロックの間に全アセンブリを置いた。
s)リン酸緩衝食塩水受容体溶液をリザーバー液として使用し、そして1ml/時間で受容体溶液リザーバーに送り込んだ。薬剤含有リザーバーをドナー電極と熱で分離した表皮の間に置いた。全アセンブリを一緒に組み立てた場合に、薬剤リザーバーが皮膚に穴を開けないように薬剤層を入れるために特注のDelronスペーサーを使用した。全てのDelron部品間に密封をもたらすためにそして実験中に漏れがないことを保証するために両面粘着テープを使用した。皮膚温度を複製するために32℃に設定した2個の加熱ブロックの間に全アセンブリを置いた。
実験の開始時に電流をオンにする時に、実験装置と連結される収集システム(Hanson Research MicroetteTM収集システム)を作動させ、そして薬剤を含有する受容体溶液を直接HPLCバイアルに集めるようにした。収集システムは、実験の長さにより、特定の時間間隔でサンプルを集めるようにプログラミングされた。典型的な実験において、Hansen MicroetteTM収集システムは、24時間の送達実験の間に1 1/2時間ごとに16の間隔にわたってサンプルを集めるようにプログラミングされた。Hansonシステムは、それが12個までのセルからサンプルを集めることができるように設計された。これらのセルから、1つのチューブが受容体溶液をMicroetteTMに移し、そしてそれをHPLCバイアルに分注し、それらは144個のバイアルもしくは各セルについて12個のバイアルまで保持することができる回転ホイール上に載せられた。次に、サンプルをHPLCによって分析して製剤における薬剤の送達の効率を決定した。
塩酸リドカインのインビトロフラックス
様々なリザーバーを用いた塩酸リドカインのインビトロフラックスを実施例1に記述される方法を用いて決定し、そして結果を図1に示す。実験は、ポリエチレンオキシド(PEO)リザーバーおよびポリビニルアルコール(PVOH)ヒドロゲルリザーバーを用いて行った。PEOリザーバーは、溶媒混合物としてアセトニトリル−エタノールを用いて製造されたPEO膜(タイプA)もしくは水を用いて製造されたPEO膜(タイプB)のいずれかであった。PEO膜をキャスティングするための溶媒として水を使用した場合、40℃で10〜12時間真空乾燥させることにより残留する水を除いた。
様々なリザーバーを用いた塩酸リドカインのインビトロフラックスを実施例1に記述される方法を用いて決定し、そして結果を図1に示す。実験は、ポリエチレンオキシド(PEO)リザーバーおよびポリビニルアルコール(PVOH)ヒドロゲルリザーバーを用いて行った。PEOリザーバーは、溶媒混合物としてアセトニトリル−エタノールを用いて製造されたPEO膜(タイプA)もしくは水を用いて製造されたPEO膜(タイプB)のいずれかであった。PEO膜をキャスティングするための溶媒として水を使用した場合、40℃で10〜12時間真空乾燥させることにより残留する水を除いた。
PVOHおよびPEOマトリックスにおけるヘミコハク酸ヒドロコルチゾンの安定性の測定
PVOHヒドロゲルおよびPEOマトリックスにおける、加水分解によってヒドロコルチゾンとコハク酸を形成する加水分解に不安定な化合物、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン(HCHS)の安定性を調べた。図2は、PVOHヒドロゲルからのそして溶媒としてアセトニトリルを用いて製造されたPEO膜からのHCHSのHPLCクロマトグラムを示す。図から見られるように、HCHSはPVOHヒドロゲルにおけるよりもPEOマトリックスにおいて安定であった。
PVOHヒドロゲルおよびPEOマトリックスにおける、加水分解によってヒドロコルチゾンとコハク酸を形成する加水分解に不安定な化合物、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン(HCHS)の安定性を調べた。図2は、PVOHヒドロゲルからのそして溶媒としてアセトニトリルを用いて製造されたPEO膜からのHCHSのHPLCクロマトグラムを示す。図から見られるように、HCHSはPVOHヒドロゲルにおけるよりもPEOマトリックスにおいて安定であった。
別個の一組の実験(図3Aおよび3B)において、PVOHヒドロゲルおよびPEOマトリックスにおけるHCHSの安定性を3日の期間にわたって23℃および40℃で調べた。PEOマトリックスにおけるHCHSの向上した安定性は、40℃で認められた。
アポモルフィンの安定性およびインビトロフラックス
アポモルフィンは、カテコール(cetechol)部分の存在のために水溶液において非常に不安定である。アポモルフィンの水溶液は、30分以内に迅速な酸化を受ける。PEOマトリックスにおけるアポモルフィンの安定性を評価するために実験を行った。2
:1のアセトニトリル:メタノール溶媒混合物を用いてPEO膜をキャスティングした。図4において示されるように、アポモルフィンを含有するPEOの製剤は4週までの間安定であった。使用したPEOは、酸化的不純物の形成を防ぐために低ホルメート(low
formate)もしくは非放射線架橋された。
アポモルフィンは、カテコール(cetechol)部分の存在のために水溶液において非常に不安定である。アポモルフィンの水溶液は、30分以内に迅速な酸化を受ける。PEOマトリックスにおけるアポモルフィンの安定性を評価するために実験を行った。2
:1のアセトニトリル:メタノール溶媒混合物を用いてPEO膜をキャスティングした。図4において示されるように、アポモルフィンを含有するPEOの製剤は4週までの間安定であった。使用したPEOは、酸化的不純物の形成を防ぐために低ホルメート(low
formate)もしくは非放射線架橋された。
アポモルフィンのインビトロフラックスをPEO膜もしくはPVOHヒドロゲルのいずれかからなるマトリックスを用いて実施例1に記述される方法に従って決定した。図5Aおよび5Bにおいて見られるように、両方のタイプのマトリックスにおけるアポモルフィンのインビトロフラックスは同程度であった。
塩酸フェンタニルのインビトロフラックス
塩酸フェンタニルのインビトロフラックスをPEO膜マトリックスを使用して実施例1に記述される方法を用いて決定し、そして結果を図6に示す。塩酸フェンタニルのインビトロフラックスはまたPVOHマトリックスを使用して実施例1に記述される方法を用いても決定し、そして図7はPEOマトリックスにおけるそしてPVOHヒドロゲルにおける塩酸フェンタニルのインビトロフラックスの比較を示す。PEOマトリックスのフラックスプロフィールは、定常状態への速やかな発現、続いて約120μg/cm2時間の経皮定常状態フラックスを示し、それはPVOHヒドロゲルで得られるものに匹敵する。
塩酸フェンタニルのインビトロフラックスをPEO膜マトリックスを使用して実施例1に記述される方法を用いて決定し、そして結果を図6に示す。塩酸フェンタニルのインビトロフラックスはまたPVOHマトリックスを使用して実施例1に記述される方法を用いても決定し、そして図7はPEOマトリックスにおけるそしてPVOHヒドロゲルにおける塩酸フェンタニルのインビトロフラックスの比較を示す。PEOマトリックスのフラックスプロフィールは、定常状態への速やかな発現、続いて約120μg/cm2時間の経皮定常状態フラックスを示し、それはPVOHヒドロゲルで得られるものに匹敵する。
本書類に引用されるかもしくは記述される各特許、特許出願および公開の全開示は、本明細書に引用することにより本明細書に組み込まれる。
Claims (17)
- 酸化剤および不純物を実質的に含まず且つ装置の長期貯蔵中にそして電気的輸送(electrotransport)中に安定なままである有益作用剤(beneficial agent)を含有するポリマー電解質を含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリ;
対電極アセンブリ;ならびに
ドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源
を含んでなる有益作用剤の電気的輸送送達用の装置。 - 有益作用剤が正味の正電荷を有する請求項1の装置。
- 有益作用剤が加水分解に不安定である請求項1の装置。
- 有益作用剤が加水分解に不安定なタンパク質もしくはポリペプチドである請求項3の装置。
- 有益作用剤が塩酸リドカイン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、塩酸アポモルフィンもしくは塩酸フェタニルである請求項1の装置。
- ポリマー電解質が薄膜の形態である請求項1の装置。
- ポリマー電解質がポリエチレンオキシド、親水性側鎖を有するポリシロキサンもしくは親水性側鎖を有するポリホスファゼンである請求項6の装置。
- ポリマー電解質がポリエチレンオキシドである請求項7の装置。
- 酸化剤および不純物を実質的に含まず且つ加水分解に不安定な有益作用剤を含有するポリマー電解質マトリックスを含んでなるドナーリザーバーを含んでなるドナー電極アセンブリ;
対電極アセンブリ;ならびに
ドナーおよび対電極アセンブリに接続される電源;
を含んでなる加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置を準備すること;
該装置を6ヶ月までの間貯蔵すること;ならびに
該装置を用いて加水分解に不安定な有益作用剤を患者に投与すること、
ここで、加水分解に不安定な有益作用剤は貯蔵中および電気的輸送中に安定なままである、
を含んでなる加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達用の装置の長期貯蔵中および加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達中の加水分解に不安定な有益作用剤の安定性を高める方法。 - 有益作用剤が正味の正電荷を有する請求項12の方法。
- 有益作用剤が加水分解に不安定である請求項12の方法。
- 有益作用剤が加水分解に不安定なタンパク質もしくはポリペプチドである請求項14の方法。
- 有益作用剤が塩酸リドカイン、ヘミコハク酸ヒドロコルチゾン、塩酸アポモルフィンもしくは塩酸フェタニルである請求項12の方法。
- ポリマー電解質が薄膜の形態である請求項12の方法。
- ポリマー電解質がポリエチレンオキシド、親水性側鎖を有するポリシロキサンもしくは親水性側鎖を有するポリホスファゼンである請求項17の方法。
- ポリマー電解質がポリエチレンオキシドである請求項18の方法。
- 加水分解に不安定な有益作用剤の送達用の装置が加水分解に不安定な有益作用剤の電気的輸送送達の前に1〜3ヶ月間貯蔵される請求項12の方法。
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