JP2009518006A - 化学薬品の検出および生分解のための識別的蛍光の酵母バイオセンサー - Google Patents

化学薬品の検出および生分解のための識別的蛍光の酵母バイオセンサー Download PDF

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デイビッド アレキサンダー スコフィールド,
オーガスティン アンソニー ディノボ,
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    • C12Q1/00Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
    • C12Q1/02Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms
    • C12Q1/025Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving viable microorganisms for testing or evaluating the effect of chemical or biological compounds, e.g. drugs, cosmetics

Abstract

本開示は、化学薬品を検出および/または改変するための方法、装置、システムおよび組成物を提供する。幾つかの実施形態では、バイオセンサーは、化学薬品の検出、その薬品の低毒性形態への改変、および/または化学薬品の該低毒性形態の検出を行うように構成し得る。該バイオセンサーは第1のレポーターをコードする第1の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステルが存在する場合に該第1のレポーターの発現を推進する第1の発現制御配列、第2のレポーターをコードする第2の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステル加水分解生成物が存在する場合に該第2のレポーターの発現を推進する第2の発現制御配列;および該有機リン酸エステルを加水分解して有機リン酸エステル加水分解生成物を生成する、少なくとも1種の酵素;を含む。

Description

(関連出願)
本願は、2005年11月30日に出願された米国仮特許出願第60/740,887号に利益を主張し、その内容は、本明細書中の全体にわたって参考として援用される。
(技術分野)
本開示は、検体および/または検体変換生成物(複数も)を感知するシステム、生物および方法に関する。
(背景)
ほぼ100年前に開発されたものであるが、有機リン酸エステル(OP)神経ガスなどの化学兵器は、軍人、文民の双方にとって今なお重大な脅威である。神経ガスは、1980年代のイラク・イラン戦争中に、1994年の松本攻撃において日本オウム真理教により、また1995年の東京地下鉄攻撃において使用された。この最後の事件では、テロリストらは、地下鉄列車上に揮発性神経ガスのサリン入りプラスチック袋を置き去りにし、傘の先端でその袋を突き刺して逃走した。発生した蒸気のために3796人が傷害を受け、12人が死亡し、大パニックを起こした。OP神経ガスは、概して安価であり、開発途上国やテロリストにより比較的製造し易いので、大量破壊兵器として特に適している。神経ガスは、容易に分散し得ること、容易に隠し得ること、および少量で致死性になり得ることのために、特に危険になり得る。例えば、幾つかの計算によれば、250mの飛行機客室内で空気を循環すれば、茶さじ1杯の液体サリンからの蒸気により、約2.5分間で致死的となる恐れがある。発生するその蒸気は、容易に皮膚から吸収され、または吸入されるため、速やかに活動不能および死亡を起こす恐れがある。サリンほど揮発性はないが、VX(O−エチル S−[2−ジイソプロピルアミノエチル]メチルホスホノチオレート)などの他のOP神経ガスは、致死量に要する液量が微量に過ぎないので致命的となる恐れがはるかに高い。エアゾール化VX液滴は、単純な噴霧(例えば、農薬散布機を用いて)により、またはより常套的なミサイル攻撃により分散することができよう。神経ガスは、酵素のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を阻害することにより作用し得る。AChEは、1秒当たりアセチルコリン(ACh)分子約10000個を加水分解する非常に効率的な酵素である。したがって、神経ガスによるAChE阻害は、殆ど直ちにAChの氾濫を起こす。この結果、呼吸器症状、胸苦しさ、眼のかすみおよび痛みを起こし、重度の暴露例では嘔吐、腹痛、膀胱・腸の過活動、失禁、痙攣、呼吸不全、麻痺および死亡を起こす恐れがある。
OP神経ガスの脅威は、一部の国が大量の貯蔵品を有しているという事実によって高まっている。世界の貯蔵量は200キロトンを超えると報告されており、米国の備蓄量だけで30キロトンに達する。その上、OP化合物は、殺虫剤などの農業害虫および家害虫の防除に広く使用されている。例えば、米国ではOP殺虫剤4千万kg強が毎年使用され、更に2千万kgが輸出用に毎年生産されている。この過剰使用に伴い、土壌系および水系のOP汚染に関する公衆衛生上の懸念が当然存在する。OP殺虫剤への意図せざる暴露(水、食物、土壌)のために、毎年世界全体で殺虫剤被毒が百万例から3百万例起こる恐れがある。
(要旨)
したがって、こうした人工的有毒化合物を処置する安全で有効な方法、および自立可能な検出システムに対する必要性が存在する。本開示は、(1)1種もしくは複数の検体(例えば、化学薬品)、および/または(2)1種もしくは複数の検体(例えば、化学薬品)の変換(例えば、分解)を検知するバイオセンサーに関する。本開示のバイオセンサーは、対象とする化学種の検出および/または変換(例えば、除去)が望ましい場合の任意の用途において有用となり得る。例えば、幾つかの実施形態によれば、バイオセンサーは、ある製造工程および/または有害環境における化学汚染物質の検出および/または除去に使用し得る。
幾つかの実施形態では、バイオセンサーは微生物を含み得る。例えば、本開示のバイオセンサーは、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))の遺伝子操作株を含み得る。酵母は、(i)検体の存在下(例えば、神経ガス兵器薬品および/または殺虫剤との接触)で、検体の非存在下より強い蛍光を発し、(ii)検体を変換(例えば、加水分解)し、および/または(iii)検体を変換した際に示差的に蛍光を発し得るものである。
幾つかの実施形態では、酵母は、1種または複数の検体を変換(例えば、分解)するためのプロモーター、コード配列、タンパク質および/または他の成分を含み得る。酵母は、1種または複数の検体を検出するためのプロモーター、コード配列、タンパク質および/または他の成分も含み得る。例えば、酵母は、(i)通常は酵母中に見出されない酵素の発現により、化学薬品を分解する能力を付与し、(ii)その化学薬品汚染物質の存在下ではある波長で、またはその分解生成物の存在下では別の波長で蛍光を発するように示差的に活性化される酵母プロモーターに、転写性に融合した二重蛍光レポーター系を保有するように、遺伝子操作をしてもよい。
極限環境に耐性を示す頑健な非病原性微生物である酵母、S.セレビシエは、本開示の幾つかの実施形態に従って、内蔵式バイオセンサーとして使用し得る。外因性の基質および/または消費物質は不要とし得る。その上、二重蛍光レポーター系を用いる実施形態では、単純な手持ち式照明具によって、化学薬品汚染物質および分解生成物の識別的な肉眼検出が可能となり得る。
本開示は、更に検体の変換の検出にも関する。本開示の幾つかの実施形態では、検体の変換は、検体の部分的および/または完全な分解(例えば、加水分解)を包含し得る。変換は、検体を別の形態へ転換する(例えば、同化または異化により)ことを包含し得る。例えば、検体は、別の分子との複合および/または大型分子への統合を受けてもよい。検体変換生成物は、親検体より害がない(例えば、低毒性)こともある。
幾つかの実施形態では、検体には有機リン酸エステルがなり得る。
幾つかの実施形態では、本開示は、(a)第1のレポーターをコードする第1の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステルが存在する場合に該第1のレポーターの発現を推進する第1の発現制御配列、(b)第2のレポーターをコードする第2の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステル加水分解生成物が存在する場合に該第2のレポーターの発現を推進する第2の発現制御配列、および(c)有機リン酸エステルを加水分解して有機リン酸エステル加水分解生成物を生成する、少なくとも1種の酵素を含む、酵母バイオセンサーに関する。第1および/または第2のレポーターは、蛍光タンパク質、発光タンパク質、酵素および/または氷核タンパク質(inaZ)をコードする核酸を含み得る。蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくはその変異体(例えば、強化GFP(EGFP)、酵母強化GFP(YeGFP)、Aequorea coerelescens GFP(AcGFP))、DsRedもしくはその変異体(例えば、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス)、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1を包含し得る。発光タンパク質は、昆虫ルシフェラーゼ(luc)、細菌ルシフェラーゼ(luxAB)、細菌生物発光(luxCDABE)および/またはレニラルシフェラーゼ(ruc)を包含し得る。酵素は、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ(cobA)、分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)、β−ガラクトシダーゼおよび/またはβ−グルクロニダーゼ(GUS)を包含し得る。
第1および第2のレポーターは、幾つかの実施形態によれば相互に異なり得る。第1の発現制御配列は、受入番号YGR035C、受入番号YHR139C、受入番号YOR186W、受入番号YGR213C、受入番号YLR346C、受入番号YIR017Cおよび受入番号YLL056Cからなる群から選択される遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチド(例えば、−1000〜−1位のヌクレオチド)を含み得る。第2の発現制御配列は、受入番号YGL205W、受入番号YJL219W、受入番号YGR287Cおよび受入番号YHL012Wからなる群から選択される遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチド(例えば、−1000〜−1位のヌクレオチド)を含み得る。幾つかの実施形態では、第1および/または第2の発現制御配列は、前記の例より大なる、または小なるプロモーター断片を含み得る。発現制御配列の活性がその完全な配列の特定ドメイン(例えば、上流活性化配列、上流抑制化配列および/またはTATA配列)に起因する場合、該小なる断片が望ましいものとなり得る。
幾つかの実施形態によれば、有機リン酸エステル分解酵素は、有機リンヒドロラーゼ(OPH)、ホスホトリエステラーゼ、OpdA、有機リン酸アンヒドロラーゼ(OPAA)、DFPaseおよびパラオキソナーゼ(PON)からなる群から選択し得る(表15)。これらの酵素は、1種または複数の有機リン酸エステル結合を加水分解し得る(表16および17)。酵素は、幾つかの実施形態では、細胞内にあってもよく、細胞表面に提示されてもよく、および/または分泌されてもよい。酵母バイオセンサーは、外因性の薬品(例えば、アルコール)の適用で透過性にし得る。幾つかの実施形態では、酵母バイオセンサーは、エルゴステロール生合成遺伝子中に変異を含み得る。幾つかの実施形態では、酵母バイオセンサーは、(a)細胞壁の合成、維持もしくは分解、(b)細胞膜の合成、維持もしくは分解、(c)細胞修復、および/または(d)細胞輸送(例えば、薬物の移出ポンプもしくは移入ポンプ)において、欠陥(例えば、変異)を含み得る。例えば、酵母バイオセンサーは、該センサー中に化学薬品を能動的に移入できる1種もしくは複数のタンパク質、および/または1種もしくは複数の該タンパク質をコードする核酸(複数も)を含み得る。
本開示は、部分的に、有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する方法であって、(a)酵母を有機リン酸エステルと接触させる工程、(b)酵母からRNAを収集する工程、(c)相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、該RNAとを接触させる工程、(d)各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、有機リン酸エステルと接触していない酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程、(e)有機リン酸エステルと接触していない酵母より、有機リン酸エステルと接触した酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程、および(f)同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程を含む方法に関する。
幾つかの実施形態では、有機リン酸エステルに感応する酵母バイオセンサーは、(a)有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程、(b)同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程、(c)レポーターをコードする核酸と該発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程、および(d)作動可能に連結した核酸を、核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程により調製し得る。作動可能に連結した核酸は、酵母プラスミド中に含み得るか、または酵母染色体の遺伝子座中に組み込み得る。レポーターは、強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、またはこれらの組合せからなる群から選択し得る。
本開示は、有機リン酸エステル加水分解生成物により上方調節される酵母遺伝子を同定する方法、および/または有機リン酸エステル加水分解のプロセスにも関する。幾つかの実施形態では、この方法は、(a)有機リン酸エステル加水分解生成物と酵母を接触させる工程、および(b)有機リン酸エステルの存在下、組換えOPH+酵母の転写プロファイルを野生型酵母と比較する工程を含み得る。幾つかの実施形態では、この方法は、(a)有機リン酸エステル加水分解生成物と酵母を接触させ、酵母からRNAを収集する工程、(b)相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、該RNAとを接触させる工程、(c)各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、有機リン酸エステル加水分解生成物と接触していない酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程、(d)有機リン酸エステル加水分解生成物と接触していない酵母より、有機リン酸エステル加水分解生成物と接触した酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程、および(e)同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程を含み得る。この方法は、定量的逆転写PCRにより示差的発現を確認する工程を更に含み得る。
本開示は、有機リン酸エステル加水分解により、またはその間に上方調節される酵母遺伝子を同定する方法にも関する。幾つかの実施形態では、この方法は、(a)有機リン酸エステル加水分解を可能にする条件下で、有機リン酸エステルと組換えOPH+酵母を接触させる工程、(b)組換えOPH+酵母からRNAを収集する工程、(c)相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、その差引き済みRNAとを接触させる工程、(d)各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、OPHを欠如し、有機リン酸エステルと接触した酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程、(e)OPHを欠如し、有機リン酸エステルと接触した酵母より、有機リン酸エステルと接触した組換えOPH+酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程、および(f)同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程を含み得る。この方法は、定量的逆転写PCRにより示差的発現を確認する工程を更に含み得る。
有機リン酸エステル加水分解生成物および/または有機リン酸エステル加水分解に感応する酵母バイオセンサーは、幾つかの実施形態によれば、(a)有機リン酸エステル加水分解生成物により上方調節される酵母遺伝子を同定する工程、(b)同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程、(c)レポーターをコードする核酸と該発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程、および(d)作動可能に連結した核酸を、核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程により調製し得る。作動可能に連結した核酸は、酵母プラスミド中に含み得るか、または酵母染色体の遺伝子座中に組み込み得る。レポーターは、強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、またはこれらの組合せからなる群から選択し得る。
有機リン酸エステル、有機リン酸エステル加水分解生成物の双方に感応する酵母バイオセンサーは、(a)有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程、(b)同定した有機リン酸エステル感応性遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程、(c)レポーターをコードする核酸と有機リン酸エステル発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程、(d)作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程、(e)有機リン酸エステル加水分解生成物および/または有機リン酸エステル加水分解のプロセスにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程、(f)同定した有機リン酸エステル加水分解感応性遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程、(g)レポーターをコードする核酸と有機リン酸エステル加水分解生成物発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程、ならびに(h)作動可能に連結した有機リン酸エステル加水分解生成物核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程により調製し得る。作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸および/または作動可能に連結した有機リン酸エステル加水分解生成物核酸は、1つもしくは複数のプラスミド中に含み得るか、または酵母染色体中に組み込み得る。発現制御配列は、プロモーターを含み得る。幾つかの実施形態では、発現制御配列は、同定された遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含み得る。レポーターは、強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、またはこれらの組合せからなる群から選択し得る。
本開示の具体的な例示的実施形態は、以下の説明および付随する図面を部分的に参照することにより理解し得る。
(詳細な説明)
神経ガスを検出する現行の手法には、イオン移動度分光分析、電気化学センサー、気液クロマトグラフィー、質量分析、赤外分光、光イオン化検出器、弾性表面波センサー、化学的変色などが挙げられる。こうした方法は、一般に手がかかり、高価な実験装置および複雑な手法を要する恐れがある。神経ガスおよびOP殺虫剤の加水分解に使用される方法には、化学的加水分解と、細菌、哺乳動物、イカ、二枚貝および原虫由来の天然酵素を用いる酵素的加水分解とが含まれる。精製酵素を使用する欠点には、面倒および/または高価な単離・調製法が必要なことと、精製酵素の不安定性とが含まれる。
幾つかの実施形態では、バイオセンサーは微生物を含み得る(例えば、細菌または酵母)。例えば、opd(有機リン酸エステル分解性)遺伝子を異種的に発現し、有機リン酸エステル化合物を加水分解する全細胞細菌生体触媒を調製し得る。幾つかの実施形態では、細胞における酵素配置が反応速度に影響し得るので、その配置に注意しなければならない。例えば、細胞表面上に発現したOPHは、OPHが細胞質内に留まっている全細胞生体触媒より有効にOP化合物を加水分解し得る。本開示の任意の実施形態を特定の任意の作用機構に限定することなく、このことは、細菌細胞外被の透過性障壁機能と関係し得る。溶媒、凍結・融解法を用いてその外膜を透過性にし、および/または外膜透過性変異体を使用すると、幾つかの実施形態では、こうした問題が緩和され、受動拡散速度および加水分解速度が増加し得る。
幾つかの実施形態では、酵母バイオセンサーは、(a)有機リン酸エステル化合物、および(b)例えば、有機リン酸エステルの分解生成物の検出による、有機リン酸エステルの加水分解を検出できる二重レポーター系を含み得る。酵母バイオセンサーは、有機リン酸エステル化合物を分解するための生化学系を更に含み得る。酵母は、化学薬品汚染物質を生分解する異種酵素の発現により、こうした薬品を生分解できるように遺伝子操作を行い、示差誘導性のプロモーター・蛍光タンパク質融合体を用いて、化学薬品およびその生分解産物を検出するようにも操作を行い得る。幾つかの実施形態によれば、化学薬品を改変、分解および/または解毒できる能力により、センサーは、自浄または自動リセット特性を獲得し得る。他の実施形態では、この能力により、バイオセンサーは、化学薬品を検出するだけでなく、その薬品を空間から一掃するためにも使用できるようにし得る。
酵母S.セレビシエを本開示の幾つかの実施形態で使用し得る理由は、(i)極限環境に耐性であること、(ii)サッカロミセスゲノム欠失プロジェクト(スタンフォード)を介して入手できる多数の変異体を用いて、遺伝学的に良く確定されていること、(iii)有機リン酸アンヒドロラーゼのコード遺伝子を含め、異種タンパク質の発現に使用し得ること、(iv)非病原性であること、(v)凍結乾燥が容易で、10年間保存後の生存率が良好なこと、および(vi)酵母の遺伝毒性物質誘導可能遺伝子は、一部の細菌より広範囲の損傷性薬品に応答することである。このことは、異なるOP薬品で誘導し得る遺伝子の同定にとって重要となり得る。
幾つかの実施形態では、バイオセンサーにとって、細菌の相対的に迅速な倍加時間が有益になり得る(例えば、酵母の70分に対して20分)。他の実施形態では、遅めの増殖は、例えば、OP殺虫剤(例えば、アジンホスメチル、ジアジノン、ジメトエート、ピリミホスメチル)などの大きな基質が酵母細胞に進入できること、および基質透過性を高める特異的変異体が入手できることを考えると許容される。その上、酵母バイオセンサーの作製は、時間が主な制約でない場合、研究室で行い得る。
特定の実施形態では、フラボバクテリウム種/シュードモナス・ディミヌータ(Pseudomonas diminuta)のOPHコード遺伝子をS.セレビシエ中で異種的に発現させることにより、VXやVXモデル疑似物質のパラオキソンなどの1種または複数のOP化合物を加水分解できる酵母生体触媒を創製し得る。細胞への基質進入を最大限とするために、多孔度が増加し、大きな分子の受動拡散を可能にするS.セレビシエの細胞壁変異株を使用し得る。例えば、変異株(MATa his3D1 leu2DO met15DO ura3DO DSM11)(ATCC4005882)は、(1,3)−β−グルカン合成およびキチンシンターゼ発現に関与する遺伝子のSM11(KNR4としても知られている)が欠失しているが、こうしたものは酵母細胞壁の主成分である。SM11が欠失すると、(1,3)−β−グルカンの総含量が減少し、(1,3)−β−グルカンシンターゼの活性が低下し、細胞壁キチン含量が増加する。該変異体ではSDS感受性が高まっており、細胞壁が弱化したことを示唆している。細胞透過性アッセイでは、該変異体は、野生株より基質に対して透過性が高いことが示された。酵母生体触媒のOP化合物に対する加水分解能は、VXやパラオキソンなどのVX疑似物質を用いて試験し得る。
全細胞細菌生体触媒を用いる基質の加水分解における律速段階には、その化合物の細胞への進入がなり得る。したがって、細菌触媒の効率は、基質が受動拡散により細胞に進入できる効率が増加している透過性変異体の使用によって、有意に改善し得る。OP基質は非特異的機構により酵母に進入することができるが、透過性が増加した酵母変異体を使用し得る。オープンリーディングフレーム(ORF)6200個の95%の欠失に成功したサッカロミセスゲノム欠失プロジェクトから、豊富な情報が研究者に提供されてきた。必要とあれば、他の酵母変異体を容易に入手し、OP基質の細胞進入能について分析し得る。
予備的な結果では、未処置の酵母細胞は、未処置の生体触媒として作用し、モデル基質のパラオキソンを加水分解できることが示された。とは言え、特定の実験では、酵母細胞膜がパラオキソンの進入を制限し、したがって透過性障壁として作用することが示された。ジギトニンなどの透過促進剤で酵母細胞を処理すると、酵母によるパラオキソン加水分解が3〜4倍増加した。このことから、酵母細胞膜の破壊によりパラオキソンの進入速度が増加し、その結果酵母の生体触媒活性が増加することが示唆された。その上、エルゴステロール(膜)生合成に特定の欠陥があるerg6変異体は、パラオキソンに対して超感受性を示した。このことから、膜欠陥が基質透過性を増大させ、パラオキソンの進入速度を変えることが示唆される。したがって、幾つかの実施形態では、erg6変異のようにエルゴステロール生合成に変異を潜ませたものなどの酵母変異体は、それを使用して異なる基質に対する膜透過性を増大させ得る(Gaber RFら、(1989年)Mol Cell Biol 9巻、3447〜56頁;Hemenway CS & Heitman J(1996年)J Biol Chem 271巻、18527〜34頁)。別の実施形態では、酵母(または精選した宿主種)を、活性のあるOP/化学薬品膜輸送物質の発現により化学薬品を活発に取り込むように特異的に操作し、それにより細胞内化学薬品の濃度を増加させ得る。
OPHのOP基質との相互作用は、特定の流出ポンプで媒介される該薬品の能動的移出の速度からも影響を受け得る。例えば、広範囲の薬物および化合物の能動的流出に関与する、推定上のABC輸送タンパク質をコードする22個の酵母遺伝子が同定された(Rogers Bら、(2001年)J Mol Microbiol Biotechnol 3巻、201〜214頁)。その主要な輸送物質3種は、PDR5(多面発現的薬物耐性)、YOR1(酵母のオリゴマイシン耐性)およびSNQ2(4−ニトロキノリン−N−オキシドに対する感受性)である。幾つかの実施形態では、酵母バイオセンサーは、薬物流出変異を単独で、あるいは酵母透過性変異(複数も)および/または細胞の化学薬品感受性を高める、例えば、その基質の細胞内酵素との相互作用を高める変異(複数も)と組み合わせて含み得る。
幾つかの実施形態によれば、OPH酵素は、基質の進入および/または流出の制約を回避するために、分泌させるか、または細胞表面に提示してもよい。同様の戦略は、細菌全細胞触媒に対しても採用されてきた。OPH酵素と氷核タンパク質との融合により、OPH酵素が細胞表面に誘導され、そこで表示され、効率的にOP薬品を触媒した(Mulchandani Aら、(1999年)Biotechnol Bioeng 63巻、216〜23頁;Shimazu Mら、(2003年)Biotechnol Prog 19巻、1612〜4頁;Mulchandani Pら、(2001年)Biosens Bioelectron 16巻、433〜7頁)。酵母におけるタンパク質分泌は、分泌経路を通して該タンパク質を差し向けるのに必要なシグナルを含有する、合成リーダーペプチドとの融合により媒介し得る(Parekh Rら、(1995年)Protein Expr Purif 6巻、537〜45頁)。該リーダーペプチドのウシ膵臓トリプシン阻害剤(BPTI)との融合により、140μg/mlの活性BPTI分泌が可能となった(Parekh RNら、(1996年)Biotechnol Prog 12巻、16〜21頁)。同様に幾つかの実施形態では、OPH酵素は、分泌経路シグナルを有するリーダーペプチドを含み得る。OPH酵素の移出は、酵母が、親化合物の1種または複数の加水分解生成物より、親化合物に対して浸透性が低い場合に、望ましくなり得る。
OPHによる加水分解速度は変動し得るが、幾つかの実施形態では、異なる化学薬品に対して触媒活性が増加した酵素を使用し得る。その上、各々が異なる形態のOPH酵素を発現する、酵母生体触媒の異なる配合物を併用することにより、特定のOP標的に対して最適の基質特異性を実現し得る。
幾つかの実施形態では、VX(またはパラオキソン)で転写性に誘導したS.セレビシエ遺伝子、およびその加水分解生成物で誘導した遺伝子を同定し得る。例えば、VXなどの化学薬品の存在下または非存在下でのS.セレビシエSM11、およびVXの存在下または非存在下でのOPHを発現する組換えS.セレビシエSM11について、全体的な転写プロファイル作成(マイクロアレイ分析)を行ってもよい。VXとインキュベートした野生型細胞と、VXとインキュベートしたOPHを発現する組換え細胞との比較によって、VXの加水分解により誘導される1種または複数の酵母遺伝子の同定を促進し得る。OPHを発現する酵母株を用いたVXの加水分解により、VXの加水分解能を欠いた細胞とは異なる転写プロファイルが生成し得る。次いで、様々な濃度のVXを用いた優先的標的についてリアルタイムRT−PCRを用いることにより、低濃度で用量依存的に誘導される酵母遺伝子を同定し得る。
優先的遺伝子のプロモーター領域は、サッカロミセスプロモーターデータベース(SCPD)(Cold Spring Harbor Laboratories、Cold Spring Harbor、NYが維持)、文献解析および/または5’プロモーター分析を用いてマッピングし得る。このようなマッピングは、VX、VX加水分解生成物および/またはVX加水分解過程に対する感受性を付与する、1種または複数のプロモーター領域の同定を補助し得る。プロモーターは、クローニングし、異なる分光特性を示す強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)またはDsRedエキスプレス(Clontech)と融合することにより、VX汚染の検出および分解中に示差的に蛍光を発する二重レポーター酵素バイオセンサーを創製し得る。幾つかの実施形態では、単一のプロモーター−レポーター融合で、遺伝毒性物質の検出に成功し得る。他の実施形態では、OP薬品の識別にプロモーター−レポーター融合のサイン(signature)が必要となり得る。
幾つかの実施形態では、検出系は生物発光成分(例えば、luxAB)を含み得る。生物発光は過渡的シグナルとし得る。例えば、luxABタンパク質は、高めた温度(30℃)に感応し得るもので、活性のために追加の基質を必要としてもよい。幾つかの実施形態では、検出系は蛍光成分(例えば、蛍光タンパク質)を含み得る。検出系に使用する蛍光タンパク質は、安定であり、多様な分光特性の1種または複数を有し得る。バイオセンサーは、幾つかの実施形態によれば、研究室外の苛酷な条件下での使用に適した検出系(例えば、蛍光)で構成し得る。
幾つかの実施形態では、バイオセンサーは、内蔵式にし得るもので、外因性の基質および/または消費物質は不要とし得るものであり、安価に大量生産し得るものであり、ならびに/あるいは単純な手持ち式照明具を用いて視覚的に確認し得る。
幾つかの実施形態では、バイオセンサーは、VX、ソマン、サリン、デメトンS、パラオキソン、タブン、DFP、アセフェート、クロルピリホス、クマホス、コロキソン、パラチオン、ダイアジノン、dMUPなどの有機リン酸エステル神経ガスおよび殺虫剤の検出および分解のために使用し得る。
しかし、異なる化学薬品を分解できる変異酵素(変異性PCRによる、もしくはDNAシャフリングなどの定向進化による)または天然酵素を用いて、酵素の基質特異性を変えることにより、本開示の実施形態は、Hクラス薬品(例えば、マスタードガス)などの他の標的を検出し、生分解するより広い特異性の実現に使用し得る。
OPHは加水分解を行い、その結果、P−O、P−FおよびP−S含有結合の切断により、多様なOP殺虫剤および化学兵器薬品の毒性を低下させる。しかし、OPHによるこうした結合の切断効率は異なっている。例えば、OPHの触媒作用は、パラオキソン、パラチオンおよびクマホスのP−O結合に対してkcatsが67〜5000/秒であり、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、サリンおよびソマンのP−F結合に対してkcatsが0.01〜500/秒であり、VX、デメトンS、マラチオンおよびアセフェートのP−S結合に対してkcatsが0.0067〜167/秒である。したがって、P−S結合に対するOPHの加水分解効率は、より低く、例えば、VXはパラオキソンの1/1000の効率で切断される。OPHのこの触媒効率および特異性を改善するために、設計手法およびランダム手法によりOPH変異体が生成された(Watkins LMら、(1997年)J Biol Chem 272巻、25596〜601頁;Yang Hら、(2003年)Protein Eng 16巻、135〜45頁;Cho CMら、(2002年)Appl Environ Microbiol 68巻、2026〜30頁;Chen−Goodspeed Mら、(2001年)Biochemistry 40巻、1325〜31頁)。両手法とも、opd遺伝子の変異誘発と、その後の精選した標的のスクリーニングに依拠することにより、その特定の標的に対する変異酵素を最適化している。こうした研究から、「切断困難な」基質を用いて反応効率が3桁増加できることが示された(Hill CMら、(2003年)J Am Chem Soc 125巻、8990〜1頁;Cho CMら、(2004年)Appl Environ Microbiol 70巻、4681〜5頁)。更に、変異体の加水分解活性は、最も効率的な加水分解を受ける基質のパラオキソンで得られた活性に匹敵していた。このことは、OPH配列の合理的およびランダムな変化により、加水分解し難い基質を標的とした効率的酵素を生成できることを示している。
そのままの組換えOPH酵母細胞は、パラオキソンを加水分解し得る。幾つかの実施形態では、OPH酵素の効率を改善するために、OPHの変異誘発を設計通り、およびランダム化して行い得る。例えば、酵素活性部位のアミノ酸変化を設計通りおよびランダムを併用してスクリーニングした後、特定の有機リン酸エステルに対するランダム定向進化(DNAシャフリング)を行うことによって、OP薬品に対する触媒効率が有意に改善されたOPH変異体を単離し得る。広範な基質類縁体を用いたOPHの三次元構造解析により、該酵素の活性部位内に異なる3種の結合ポケットが特定された。これらの結合部位は、小サブサイト(Gly60、Ile106、Leu303、Ser308、Cys59およびSer61の側鎖により規定される)、大サブサイト(His254、His257、Leu271およびMet317)、ならびに脱離基サブサイト(Trp131、Phe132、Phe306およびTyr309)と呼称されてきた(Vanhooke JLら、(1996年)Biochemistry 35巻、6020〜5頁)。こうした部位のアミノ酸変化で、OPHの立体選択性および反応性は激変する(Chen−Goodspeed Mら、(2001年)Biochemistry 40巻、1325〜31頁)。例えば、活性部位のアミノ酸残基(Ile106、Try131、Phe132、Ser308およびTyr309)をランダム化すると、既に効率的に加水分解される基質のパラオキソンに対するOPH活性が63倍増加した(Griffiths AD & Tawfik DS(2003年)Embo J 22巻、24〜35頁)。同様にして、Hillら(Hill CMら、(2003年)J Am Chem Soc 125巻、8990〜1頁)は、アミノ酸3個(His254、His257およびLeu303をそれぞれグリシン、トリプトファンおよびスレオニンへ)を変えただけで、ソマン類縁体に対するOPH触媒活性を3桁増加させた。後者の研究は、アミノ酸のランダム変化と、その後の精選するOP基質に対する包括的スクリーニングに依拠していた。
適合性の増した酵素を見出すために、定向進化またはDNAシャフリングを用いてタンパク質配列全体をスクリーニングしてもよい(Stemmer WP(1994年)Proc Natl Acad Sci 91巻、10747〜51頁;Stemmer WP(1994年)Nature 370巻、389〜91頁)。プールした単一または関連遺伝子のランダム断片化の後、その断片をプライマーなしPCRで再構成することによって行われる、この組換え・変異プロセスにより、緑色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼおよびβ−ラクタマーゼの活性が、それぞれ45倍、1000倍および32000倍改善された(Zhang JHら、(1997年)Proc Natl Acad Sci 94巻、4504〜9頁;Crameri Aら、(1996年)Nat Biotechnol 14巻、315〜9頁)。DNAシャフリングにより、OPHの触媒活性の増加にも成功することが証明された(Yang Hら、(2003年)Protein Eng 16巻、135〜45頁;Cho CMら、(2002年)Appl Environ Microbiol 68巻、2026〜30頁)。特に、野生型酵素によって好ましい基質パラオキソンのほぼ1/1000の速度で加水分解される殺虫剤、クロロピリホスに対するDNAシャフリングの結果、kcat/K値が725倍増加した(Cho CMら、(2004年)Appl Environ Microbiol 70巻、4681〜5頁)。
幾つかの実施形態では、フラボバクテリウム種のopd遺伝子を、異なる種由来の有機リンヒドロラーゼまたは類似の加水分解性酵素をコードする関連遺伝子とシャフリングしてもよい。例えば、フラボバクテリウム種のopd遺伝子は、近縁のアグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)のopdA遺伝子とシャフリングすること(Horne Iら、(2002年)Appl Environ Microbiol 68巻、3371〜6頁)により、定向進化を「加速」し得る。近縁遺伝子同士のシャフリングは、単一遺伝子のシャフリングと比較して変異体が改良される可能性を高めることができる(Crameri Aら、(1998年)Nature 391巻、288〜91頁)。該opdA遺伝子は、ヌクレオチド段階でopdと約88%同一であり、opdより、広い基質範囲と一部の基質に対する優れた速度とを有することが示された。
幾つかの実施形態によれば、効率的な酵母生体触媒/バイオセンサーは、研究室外で機能し得る。こうした実施形態の幾つかでは、バイオセンサーは、(i)高度の発現を実現するために、最適な発現シグナルを使用し、(ii)opd遺伝子/レポーター遺伝子の多重コピーを酵母ゲノム中に組み込み、次いで発現を増加させ、および/または(iii)選択圧の非存在下でもopd遺伝子/レポーター遺伝子を安定に維持し得る。本開示の実施例は、酵母の2μプラスミドからのOPHタンパク質および蛍光レポーターのプラスミドのエピソーム発現に関する。この戦略は、外来遺伝子の異種発現に対する単純化した汎用的な手法を提供し得る。この2μプラスミドは、低い分離安定性を有する恐れがある、即ちこのプラスミドは、酵母集団中で安定に維持されない恐れがある(Murray AW & Szostak JW(1983年)Cell 34巻、961〜70頁)。この結果、選択圧下でも酵母集団が不均質になり得る。例えば、予備的結果では、酵母細胞の約25%だけしか、選択圧下でOPH発現ベクターを安定に維持しないことが示された。このことは、酵母細胞の大半がOPHプラスミドを含有していなかったことであり、したがって非最適条件下で作用していた恐れがあることを意味している。
エピソームのプラスミド不安定性は、幾つかの実施形態によれば、対象とするプラスミド/遺伝子を酵母ゲノム中に組み込むことにより克服し得る。この結果、選択圧がない場合でも多世代に亘り挿入DNA配列を維持する、安定なクローン酵母集団が得られる(Lopes TSら、(1989年)Gene 79巻、199〜206頁;Parekh RNら、(1996年)Biotechnol Prog 12巻、16〜21頁)。組込み配列は、エピソームのプラスミド(30〜50)と比較して少ないコピー数(1〜5)で維持し得る(Orr−Weaver TL & Szostak JW(1983年)Mol Cell Biol 3巻、747〜9頁)。しかし、組込みコピー数は、酵母ゲノム中の標的部位数に比例する(Wilson JHら、(1994年)Proc Natl Acad Sci 91巻、177〜81頁)ので、組込みDNAの多重コピーを保持する酵母細胞は、該挿入配列が多重コピーで存在する場合に生成し得る。例えば、リボソームDNA(rDNA)は、染色体XII上に縦列に9.1kb単位のコピー約140個を包含している(Petes TD(1979年)Proc Natl Acad Sci 76巻、410〜4頁)。rDNA遺伝子座を標的とすることにより、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)は、細胞1個当たり100〜200コピーで組み込まれ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターから発現したとき、全可溶性タンパク質の約50%を占めた。同様に、細胞1個当たり約150〜200コピーで存在する相同組換え用のTyδ配列を標的とすることにより、組込み配列のコピーを最大で30個得ることができる。2μプラスミドの使用と比較して、タンパク質発現2〜10倍の増加を実現し得る。したがって、幾つかの実施形態では、opd遺伝子/レポーター遺伝子を酵母ゲノム中に組み込むことにより、安定な酵母の生体触媒/バイオセンサーを創製し得る。
フラボバクテリウム種細菌から元々誘導されたopd遺伝子は、酵母(もしくは特定の宿主株)中ではめったに使用されないコドンを含有し、またはそのコード配列内に発現制限的調節要素を含有し得る。幾つかの実施形態では、OPHコードopd遺伝子は、コドンを最適化することにより、酵母/特定の宿主種中で効率的な発現を保証し得る。レポーター遺伝子も、その改変により、最適なコドン認識を保証し、発現制限的調節要素を除去することによって、精選した宿主中での効率的な発現を保証し得る。(例えば、コドンを最適化したopdおよびYDsRed遺伝子が、図4Aおよび4Bに示されている)。
pGAL調節性プロモーターを本開示の実施例で使用して、外来opd遺伝子の発現を推進したが、それは、デキストロースまたはガラクトースの存在で、発現を各々抑制または誘発することができたからである。しかし、構成的に強力に発現するプロモーターは、それを用いてopd遺伝子を発現し得る。例えば、グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーターは、強力にも構成的にも発現するので、それを常套的に用いてS.セレビシエにおいて高度の外来遺伝子発現を実現する(Edens Lら、(1984年)Cell 37巻、629〜33頁;Imamura Tら、(1987年)J Virol 61巻、3543〜9頁)。したがって、幾つかの実施形態では、GAPDHプロモーターまたは同様に高度発現性の構成プロモーターを用いて、酵母中に外来遺伝子発現を推進し得る。例えば、GAPDHプロモーターは、opd遺伝子が構成的に発現するように、opd遺伝子に作動可能に連結(例えば、隣接して配置)し得る。
幾つかの実施形態では、パラオキソンおよびパラオキソン加水分解生成物に感応する遺伝子を同定するために、マイクロアレイ分析を使用し得る。本開示の実施例に例示するように、マイクロアレイ分析により、パラオキソン誘導可能遺伝子およびパラオキソン加水分解に関連する遺伝子をおよそ1900種同定した。したがって、他の有機リン酸エステルまたは他の化学薬品に感応する遺伝子および対応プロモーターを同定するために、マイクロアレイ分析を使用し得る。マイクロアレイ分析は、他の有機リン酸エステルまたは化学薬品の分解生成物に感応する遺伝子および対応プロモーターを同定するためにも、使用し得る。
化学薬品の存在下または非存在下での野生型S.セレビシエ(または精選種)、および化学薬品の存在下または非存在下での、酵素/代謝化剤を発現し、化学薬品を加水分解し得る組換えS.セレビシエについて、全体的な転写プロファイル作成(マイクロアレイ分析)を行ってもよい。別の実施形態では、化学薬品の加水分解で誘導される遺伝子を同定する代替手法は、化学薬品を加水分解するその細胞に依拠するのではなく、その細胞を加水分解生成物と直接インキュベートすることである。例えば、OP神経ガスVXの酵素的加水分解により、2−(ジイソプロピル)アミノエタンチオールが産生する(Bonierbale Eら、(1997年)J Chromatogr B Biomed Sci Appl 688巻、255〜64頁;Joshi KAら、(2006年)Anal Chem 78巻、331〜6頁)。マイクロアレイ分析は、2−(ジイソプロピル)アミノエタンチオール塩酸塩の存在下でインキュベートした細胞から調製したRNAを用いて行い得る。
幾つかの実施形態では、加水分解生成物により過渡的に誘導される遺伝子を同定するために、類似の手法を用い得る。過渡的誘導可能遺伝子は、除染過程の進行のモニターを可能とするために、望ましいものとなり得る。細胞は、加水分解生成物に60分曝し、等分した後、RNA調製のために使用するか、または洗浄し、加水分解生成物が欠けた媒体中に再懸濁してもよい。代謝物質により当初誘導されるが、後に基準の非誘導量に戻る遺伝子が、過渡的誘導可能遺伝子である。
別の実施形態では、明確な異なる波長で発光する「発光」(生物発光)遺伝子を、レポーターシグナルとして用いてもよい。例えば、ビブリオ・ハルベイイluxAB遺伝子は、酵母中で使用し得る(Szittner Rら、(2003年)Biochem Biophys Res Commun 309巻、66〜70頁)。LuxAB酵母細胞は、0.5%Z−9テトラデセナールの存在下で生存でき、n−デカナールで得られるものと類似の生物発光シグナルを生じる。その上、生物発光シグナルは、該アルデヒド基質を更に添加せずに24時間強力に持続する。制限基質FMNHをコードするビブリオ・ハルベイイ(Vibrio harveyi)のオキシドレダクターゼ遺伝子(frp)を共発現すると、生物発光シグナルは原核系に匹敵する量まで更に増加した。こうした実験の結果、生物発光シグナルは、バックグランド量のほぼ9×10倍に達した(Gupta RKら、(2003年)Fems Yeast Res 4巻、305〜13頁)。「過渡的」発光シグナルは、除染過程の経時的モニタリングを可能にし得る。
発光の考え得る欠点は、上昇した温度での熱不安定性である(Escher Aら、(1989年)Proc Natl Acad Sci 86巻、6528〜32頁)。しかし、ゼノルハドブス・ルミネセンス(Xenorhadbus luminescence)由来の熱安定LuxABが、必要または所望とあれば使用してもよい。X.ルミネセンス由来のルシフェラーゼ活性は、高い熱安定性(45℃での半減期3時間)を示し、より高い温度で使用するバイオセンサーにとって選りすぐりの生物発光系となり得る。加えて、異なる発光色を有する異なるルシフェラーゼ(Lin LYら、(2004年)Biochemistry 43巻、3183〜94頁)に融合するプロモーターの「サイン」を用いて、長期間に亘る除染過程をモニターし得る。
別の実施形態では、化学薬品を生分解し、化学薬品の毒性を直接低下させるのではなく、それが化学的加水分解を受け易くなるように、生体触媒は化学薬品を改変してもよい。
別の実施形態では、生体触媒は、異なる化学薬品を検出し、生分解するために、多重の生分解酵素および多重のプロモーター・レポーター遺伝子融合体を潜ませてもよい。
別の実施形態では、特定の薬品に対して特定の生分解酵素および特定のレポーター検出系を各々が潜ませた各クローン細胞は、混合することにより、異なる化学薬品を一群として検出し、生分解することができる不均質集団にしてもよい。
別の実施形態では、デオキシリボ核酸(例えば、DNAザイム)もしくはリボ核酸、または生細胞中で産生できる類似物などの加水分解能を有する分子(酵素以外)を用いて、化学薬品を加水分解または生分解してもよい。
当業者なら理解されようが、本開示の実施形態によれば、化学薬品を検出および/または改変する他の等価または代替のシステム、装置および方法を、その本質的特性から乖離せずに想定することができる。例えば、本開示の装置は、手持ち式または卓上式構成に製造し、散発的、間歇的および/または連続的に操作し得る。その上、バイオセンサーは、1つもしくは複数の温度および/または圧力下で使用するように構成し得る。しかも、当業者であれば、標的化学薬品を検出および/または改変するために、多数の自己および異種核酸を使用し得ることを認識されよう。また、本開示は、任意の特定の光源および/または発光光学装置に限定されず、所望の波長(複数も)に適切に調節し得る任意タイプの発光装置の使用を広く想定している。同様に、本開示は、任意タイプの光検出器および/または光検出装置の使用を想定している。本開示のシステムの全部または一部は、使い捨ておよび/または再使用ができるように構成し得る。時々は、再使用型部品を浄化、修理および/または改造することが望ましい場合もある。更にまた、いずれの実施形態、使用および/または利点も、他の実施形態、使用および/または利点を普遍的に抑制または除外することを意図していないことは、当業者ならば理解されよう。明白な変更および改変を伴うこうした等価物および代替物は、本開示の範囲内に包含されることを意図している。したがって、上記の開示は、以下の特許請求の範囲で明らかにされるように、本開示の範囲に関して例示的なものであって、制限的なものではないことを意図している。
本開示の幾つかの実施形態は、以下の実施例の1つまたは複数により例示し得る。
実施例1〜9は、細菌opd遺伝子を含有する酵母用発現ベクターの構築およびS.セレビシエ中への形質転換を詳述する。opd遺伝子が酵母内で発現されたことを確認するために、逆転写PCRを用いた。組換えOPH酵母から調製した酵素溶解物を用いるパラオキソナーゼアッセイにより、opd遺伝子が、パラオキソンを加水分解する機能性OPHタンパク質を産生することが示された。未処置全細胞のパラオキソナーゼアッセイにより、酵母細胞はパラオキソンを加水分解し、生体触媒として機能できることが示された。選択培地および非選択培地での酵母コロニーの計数により、酵母エピソームのOPHを発現するプラスミドは、酵母集団により安定に維持されていないことが示された。このことは、酵母生体触媒の最適機能のために、opd遺伝子を酵母ゲノム中に組み込むことにより、安定なクローン酵母集団を創製し得ることを示唆する。試験および最適化研究を行った結果、(i)酵母膜の破壊で全細胞のパラオキソン加水分解が増加すること、(ii)低濃度のエタノールで前処理すると、全細胞活性が増加すること、および(iii)erg6酵母膜変異体はパラオキソンに超感受性であり、erg6変異がパラオキソンの進入速度を増加させることを示唆することを示した。
実施例10〜12は、パラオキソン、パラオキソンの加水分解過程、および/またはパラオキソンの加水分解生成物により転写性に誘導される、S.セレビシエ遺伝子の同定を詳述する。パラオキソンにより誘導される酵母遺伝子、およびパラオキソン加水分解により誘導される遺伝子を同定するために、マイクロアレイ分析を用いた。相当程度かつ実質的に誘導された多数のパラオキソン誘導可能遺伝子を同定した。パラオキソン誘導可能遺伝子のYLR346CおよびYGR035Cを優先的に更に分析したところ、定量的リアルタイムPCRによって、この両遺伝子は速やかに(7.5分)かつ感度良くパラオキソンで誘導されることが実証された。したがって、YLR346CおよびYGR035Cは、バイオセンサーに組み込むために所望の特性を示し、優先的に実施例13〜14に用いた。マイクロアレイ分析により、パラオキソンの加水分解後に少なくとも2倍誘導される遺伝子33種も同定した。リアルタイムPCRによって、この中の2種の遺伝子(POX1およびYGR287C)だけしか、パラオキソンの存在下、OPH株中で誘導されないことが立証された。したがって、POX1およびYGR287Cも優先的に実施例13〜14に用いた。こうした知見の各々を支持する実験は、以下の本文中で説明する。
実施例13〜14は、酵母蛍光バイオセンサーの例示的実施形態の構築を詳述する。酵母コドンを最適化したYeGFPおよびYDsRedレポーターベクターを構築した。2種のパラオキソン誘導プロモーター(YLR346CおよびpYGR035C)をYeGFPと融合し、パラオキソン加水分解に関連する2種のプロモーター(POX1およびYGR287C)をYDsRedと融合した。YLR346C−YeGFPを潜ませた酵母バイオセンサーは、パラオキソンの存在下、YeGFP誘導を最大5倍示した。その上、このバイオセンサーは、速やかに誘導され(15分の暴露後に2倍)、パラオキソンにより用量依存的に誘導された。YDsRedと融合したパラオキソン加水分解プロモーター(POX1)を潜ませた組換えOPH酵母も、パラオキソンの存在下、誘発蛍光を示した。YDsRed誘発は、OPHを発現する酵母株だけに起こったが、このことは、その誘発にOPH、パラオキソンの両方が必要であることを示した。このことは、YDsRed誘発がパラオキソン加水分解と厳密に関係していたことを示唆する。YDsRedは、パラオキソンにより用量依存的に誘発されたが、このことは、バイオセンサーがパラオキソンの加水分解量に応答したことを示唆する。こうした知見の各々を支持する実験は、以下の本文で詳細に説明する。
(実施例1)S.セレビシエにおける酵母opd発現プラスミドおよびopd mRNA発現
酵母GAL1プロモーターの転写制御下にあるopd遺伝子、および酵母リボソーム結合部位を含有する酵母発現プラスミドを構築した。酵母コドン最適化opd発現プラスミドを同時に構築した。opd発現プラスミドをS.セレビシエ中に形質転換し、形質転換酵母細胞のopd発現能を相対的RT−PCRを用いて試験した。
プラスミドpJK33中のフラボバクテリウムopd遺伝子、即ちpUC18構築体を使用した。フラボバクテリウムopd遺伝子は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)opd遺伝子と同一である(Mulbry WW & Karns JS.、(1989年)J Bacteriol 171巻、6740〜6頁)。1kb opd断片は、プルーフリーディング熱安定ポリメラーゼを用いてPCRで増幅した(図1)。5’プライマーは、最適な翻訳開始を保証するために、酵母リボソーム結合部位を組み込むように設計した(Looman AC & Kuivenhoven JA.、(1983年)Nuc Acids Res 21巻。4268〜71頁)。5’および3’プライマーは、それぞれ制限エンドヌクレアーゼ部位BamHIおよびHindIIIを組み込むようにも設計された。該opd遺伝子は、標準的な分子生物学技法を用いて、S.セレビシエ発現ベクターpESC−URAの対応部位中に一方向にクローニングする(表1)ことにより、pOPD−ESC−URAを創製した。診断的な制限エンドヌクレアーゼ消化(BamHIおよびHindIII)およびアガロースゲル電気泳動によって、適正なクローンが選択されたことを確認した(図2)。PCR増幅opd遺伝子の配列は、ダイデオキシターミネーター配列決定法で立証した。pOPD−ESC−URAプラスミドは、酵母2μ起点とS.セレビシエにおける増殖および選択のためのURA3栄養要求性マーカー遺伝子、ColE1起点と大腸菌における増殖および選択のためのβ−ラクタマーゼ遺伝子、S.セレビシエにおける発現の抑制(デキストロース)または誘発(ガラクトース)用のGAL1調節性プロモーター、ならびにopd遺伝子の下流にある転写終止配列(TCYC1)を含有していた(図3)。酵母コドン最適化opd遺伝子を含有する酵母発現プラスミドも、同時に構築した。コドン最適化は、Bio S&T(ケベック、カナダ)により行われた。コドン最適化opd遺伝子の配列は(図4A)に列挙されている。野生型opd遺伝子と同じクローニング戦略を用いて、コドン最適化opd遺伝子をpESC−URA中にクローニングすることによりpYOPD−ESC−URAを創製した。
LiAc形質転換手順を用いて(Ito Hら、(1983年)J Bacteriol 153巻、163〜8頁)、S.セレビシエを対照プラスミド(pESC−URA)および試験プラスミド(pOPD−ESC−URA)で形質転換した(エピソーム発現)ところ、酵母形質転換体が容易に得られた。opd mRNAが十分に発現されることを立証するために、相対的RT−PCR分析を行った(図5)。対照プラスミド(pESC−URA)および試験プラスミド(pOPD−ESC−URA)を潜ませた形質転換体は、GAL1プロモーターからの発現を抑制(デキストロース培地)または誘発(ガラクトース培地)させる条件下で、合成ドロップアウト培地(SD)中で増殖させた。総RNAは、Tri試薬(Ambion)を用いて当製造業者の教示に従って調製し、DNase1で処理した。レトロスクリプトキット(Ambion)を用いて等量のRNA(約1μg)をcDNAに逆転写した。各試料に対して等量のcDNAが使用されることを保証するために、S.セレビシエハウスキーピング遺伝子のアクチン(ACT1、547bp産物)と対照させて設計したプライマーで、PCRを最初に行った。次いで必要であれば、cDNA量をそれに応じて調節し、その後opdを分析した。PCR生成物は、ゲル電気泳動を用いて分離し、分析した。PCR分析は、逆転写酵素が欠如した試料(RNA試料)についても行ったが、こうした試料からはRT−PCR生成物が予想通り全く検出されなかった。opd RT−PCR分析の結果、(i)対照プラスミドを潜ませた形質転換酵母細胞からは、RT−PCR生成物が検出されないこと(予想通り)、(ii)pOPD−ESC−URAを潜ませた酵母細胞からは、RT−PCR生成物が検出され、したがってこの酵母細胞は、形質転換に成功しており、opd遺伝子を発現していること、および(iii)opd発現量は、Galプロモーターから発現を誘発する条件(ガラクトースの存在)の方が高いことが示された。
酵母の転写および翻訳シグナルを含有する酵母opd発現プラスミドは、その構築に成功した。酵母opd発現プラスミドを潜ませた形質転換酵母細胞は、opd mRNAを発現した。
(実施例2)opd発現のS.セレビシエ増殖に対する効果
対照プラスミド(pESC−URA)および試験プラスミド(pOPD−ESC−URA)を潜ませた組換えS.セレビシエW3031Aを、抑制(2%デキストロース)または誘発(2%ガラクトース)条件下で、ウラシルが欠けたSD培地中37℃で増殖させ、その増殖を分光光度法でモニターした。
対照、試験の両培養物共、ガラクトースを含有する最小培地中で、デキストロース含有の場合と比較して増殖が遅かった。opdプラスミドを潜ませたS.セレビシエは、「空の」対照プラスミドと比較して、僅かに増殖が減少した(図6)。これは、細胞の代謝活性を「排出」し、そのために増殖速度を低下させたタンパク質の過剰発現に単に起因し得る。
opd発現はS.セレビシエにとって有毒ではないが、誘発条件下では、opdプラスミドを潜ませた酵母細胞の増殖速度がやや抑制された。
(実施例3)パラオキソンのS.セレビシエ増殖に対する効果
複合YPDブロース(酵母エキス、ペプトン、デキストロース)中、またはウラシルおよび2%ガラクトースを補充したSD培地(SDgal)中37℃で、S.セレビシエを定常期まで終夜増殖させた。0時間で培養物を等分し、0.5、1.0、2.0および4.0mMパラオキソンの非存在下または存在下でインキュベートした。増殖をOD600の分光光度法でモニターした。
0.5mMパラオキソンは、S.セレビシエの増殖を有意に抑制しなかった(図7A)が、より高い濃度では、パラオキソンは増殖遅延を起こした。したがって予想通り、パラオキソンは、恐らくOPの遺伝毒作用のために用量依存的に酵母の増殖を抑制した。
組換えOPH細胞が、パラオキソンの毒作用に「耐性」を示す否かを調べるために、野生型細胞および組換えOPH細胞の増殖を、1mMパラオキソンの非存在下または存在下でモニターした。野生型細胞、OPH細胞のいずれの増殖も、1mMパラオキソンにより同程度に抑制された(図7B)。このことから、OPH細胞は、パラオキソンの毒作用に対する耐性を高めていないことが示唆された。特定の作用機構に何ら限定されるわけではないが、この原因には、(i)パラオキソンの加水分解生成物が酵母に有毒であること、および/または(ii)(一部の)酵母細胞が、不均質なOPH集団のためにパラオキソンを加水分解できないこと、即ち、OPHプラスミドは、不安定であり、酵母中で安定に維持されなかったこと(セクション1.4、表2)が、考え得る。
パラオキソンは、用量依存的にS.セレビシエの増殖を抑制した。高濃度のパラオキソン(4.0mM)は、誘導期の延長を起こした。
(実施例4)酵母酵素溶解物のパラオキソンに対する加水分解能
pESC−URA(空のプラスミド対照)およびpOPD−ESC−URAプラスミドを潜ませたS.セレビシエW3031Aを、2%ガラクトース(pGAL1誘発条件)を含有するSD培地中で増殖させた。対数増殖期中に酵母細胞を遠心分離で収集し、細胞ペレットの凍結乾燥を行った。その細胞をY−MER透析性溶解緩衝液(Pierce Biotechnology)0.5mlと室温(RT)で20分インキュベートした後、24000×gで4℃、15分遠心分離することにより、酵素溶解物を調製した。細胞質ゾル内パラオキソナーゼ活性を測定するために、その上清25μlを反応緩衝液(50mM HEPES pH7.5、0.5mMパラオキソン、2%メタノール)975μlと混合した。トリトン抽出性酵素のアッセイ(膜結合型)のために、遠心分離工程から得られた膜ペレットを50mM HEPES pH7.5中の1%トリトン×100の100μl中に再懸濁し、RTで20分インキュベートした後、15000rpmで2分遠心分離した。生成した上清を細胞質ゾル画分の場合と同様に適用した。分光光度計を用いて、基準線が安定化した後、405nmでp−ニトロフェノール放出量を5分間測定した。試料1個当たり、少なくとも3点の測定を繰り返した。パラオキソナーゼ活性は、1.7×10−1cm−1の抽出係数を用いて計算し、μmolパラオキソン加水分解量/分/mgタンパク質として示した。酵母溶解物の活性は、細菌opdの最適化発現プラスミドを潜ませた大腸菌から調製した溶解物と比較した。
空のプラスミドを潜ませた酵母細胞から調製した対照酵素溶解物は、パラオキソンを加水分解することができなかった。対照的に、opd発現プラスミドを潜ませた酵母細胞は、パラオキソンを加水分解する機能的OPHタンパク質を産生した(表1)。S.セレビシエにおける酵素活性の大半(75%)は膜結合型(トリトン抽出性)であり、その他は細胞質ゾル画分中にあった。この分布は、野生型フラボバクテリウム種に対応していた(Mulbry WW & Karns JS.、(1989年)J Bacteriol 171巻、6740〜6頁)。野生型opd遺伝子または酵素コドン最適化opd遺伝子を潜ませた酵母細胞から調製した酵素溶解物に、パラオキソナーゼ活性の差は検出されず、このため、コドンの偏りは、酵母における効率的opd発現に対する制限的な決定因子ではないことが示唆される。
Figure 2009518006
酵素溶解物と比較して、最適化opd細菌発現プラスミドを潜ませた大腸菌溶解物の方が、パラオキソナーゼ活性の高いことは明白であった。この活性増加の原因は、遺伝子の用量効果であると考え得る。例えば、大腸菌プラスミド(ColE1複製起点)のコピー数が、細胞1個当たり通常300〜500プラスミドであるのに対して、酵母2μプラスミドの対応コピー数は、細胞1個当たり約30〜50プラスミドである(Orr−Weaver TL & Szostak JW(1983年)Mol Cell Biol 3巻、747〜9頁)、即ち約10分の1である。加えて、この酵母プラスミドは、不安定であり、酵母集団中で一貫して維持されることがないと判明した。該酵母プラスミドを潜ませた酵母細胞を選択培地および非選択培地上に播種した結果、酵母細胞の20〜25%しかプラスミドを維持していないことが示された(表2)。したがって、酵母溶解物の比活性は、大腸菌に比較して過少評価されている恐れがある。酵母2μプラスミドの不安定性即ち低分離安定性は、以前に報告されていた(Murray AW & Szostak JW(1983年)Cell 34巻、961〜70頁)。この問題は、opd遺伝子をS.セレビシエゲノム中に安定に組み込むことにより、修正することができる。その組込み配列を最大100コピー有する安定な酵母細胞は、標的相同組換えにより生成することができる(Parekh Rら、(1995年)Protein Expr Purif 6巻、537〜45頁;Parekh RNら、(1996年)Biotechnol Prog 12巻、16〜21頁)。
Figure 2009518006
opd発現プラスミドを潜ませた組換え酵母細胞は、パラオキソンを加水分解できる機能的OPHタンパク質を産生した。酵素活性の大半は、野生型フラボバクテリウム酵素と同様の膜結合型である。酵母2μプラスミドからのopdの発現は、プラスミド不安定性のために、ほぼ間違いなく不均質OPH集団を生じる。
(実施例5)未処置組換え酵母のパラオキソンに対する加水分解能
pESC−URA(対照)またはpOPD−ESC−URAプラスミドを潜ませた、対数増殖期中のS.セレビシエW3031Aを、2%ガラクトース(pGAL1誘発条件)を含有するSD培地中で増殖させた。酵母細胞を遠心分離により収集し、未処置細胞を用いてパラオキソナーゼアッセイを行った。比較として、細菌opd最適化発現プラスミドを潜ませた培養大腸菌の全細胞パラオキソナーゼ活性も測定した。
opd発現プラスミドを潜ませた未処置酵母細胞は、パラオキソンを加水分解することができた(表3)。酵母細胞は、未処置大腸菌細胞より3〜4倍高いパラオキソナーゼ活性を示した。酵母の酵素溶解物および未処置細胞は異なる量のパラオキソナーゼ活性を示し、未処置細胞は全細胞活性の2〜3%しか示さなかった。特定の作用機構に何ら限定されるわけではないが、未処置酵母細胞のパラオキソンに対する加水分解能の制約には、パラオキソンの細胞中への進入速度がなり得る(Mulchandani Aら、(1999年)Biotechnol Bioeng 63巻、216〜23頁;Shimazu Mら、(2003年)Biotechnol Prog 19巻、1612〜4頁)。細胞への進入速度を制限する障壁には、細胞壁、細胞膜のいずれかがなり得る。
Figure 2009518006
未処置組換え酵母細胞は、パラオキソンを加水分解し、酵母生体触媒として機能することができた。未処置酵母細胞は、酵母溶解物と比較して少量のパラオキソン加水分解を示したが、その理由は、律速段階が細胞内へのパラオキソンの拡散速度であると推定される。
(実施例6)スフェロプラストのパラオキソンに対する加水分解能
pOPD−ESC−URAを潜ませた対数増殖期中のS.セレビシエW3031Aを、2%ガラクトース(pGAL1誘発条件)を含有するSD培地中で増殖させた。酵母細胞を遠心分離で収集し、等分し、β−メルカプトエタノール1μl/mlおよびザイモリアーゼ15μl/ml(5単位/μl、細胞壁除去酵素)の存在下または非存在下、スフェロプラスト緩衝液(1.2Mソルビトール、50mM EDTA、50mMリン酸カリウム、pH7.5)中37℃でインキュベートした。20分後、スフェロプラスト形成が、0.2%SDSの添加(1:1混合)による溶解細胞の顕微鏡検査によって、また、選択培地上で48時間後にスフェロプラストがコロニーを形成できないことによって確認された。対照細胞およびスフェロプラストを1Mソルビトール、50mM HEPES、pH7.5で4回洗浄(1800×g、5分)した後、パラオキソン加水分解のアッセイを行った。
細胞壁を欠いているスフェロプラストのパラオキソン加水分解を、未処置酵母細胞と比較した。未処置酵母細胞とスフェロプラストとの間に、パラオキソン加水分解に実質的な差はなかった(表4)。したがって、幾つかの実施形態では、細胞壁の除去により、細胞内へのパラオキソンの進入速度は増加せず、そのため酵母生体触媒のパラオキソン加水分解も増加しない。したがって、こうした実施形態の1つまたは複数において、パラオキソン進入に対して考え得る障壁は、酵素の細胞膜である。
Figure 2009518006
幾つかの実施形態では、細胞壁の除去により、全細胞によるパラオキソン加水分解は改善されなかった。このことから、パラオキソンの細胞進入は、細胞壁により阻害し得ないことが示唆される。
(実施例7)透過性増加酵母のパラオキソンに対する加水分解能
pOPD−ESC−URAプラスミドを潜ませたS.セレビシエW3031Aを、2%ガラクトース(pGAL1誘発条件)を含有するSD培地中で増殖させた。OD600が0.5の時点で、酵母細胞を遠心分離で収集し、等分し、0.1%ジギトニンを含有するジメチルスルホキシドの存在下または非存在下、TE緩衝液(1mM EDTA、10mM Tris−HCl、pH7.5)中30℃でインキュベートした(Becker JMら、(1988年)Biochim Biophys Acta 968巻、408〜17頁)。15分間振とう後、透過性増加細胞の存在を0.4%トリパンブルーの添加(1:1混合)により評価した。顕微鏡検査により、ジギトニン処理細胞の99%は青色に見える(視野当たり)が、対照細胞は不透明のままであることが示された。「青色」酵母細胞の外観は、損傷した、または透過性が増加した膜を示している。ジギトニン処理細胞は、選択培地上でのインキュベーション48時間後に、10分の1の生細胞も予想通り示した。対照細胞および透過性増加細胞をTE緩衝液で4回洗浄した(2000×g、10分)後、パラオキソナーゼ活性のアッセイを行った。
透過促進剤のジギトニンによる該細胞の処理により、パラオキソン加水分解が、対照細胞と比較して3〜4倍増加した(表5)。このことから、酵母膜の破壊で細胞内へのパラオキソン進入速度、したがって酵母の生体触媒活性が増加することが示唆される。これは、細菌の細胞外皮が、基質に対する透過性障壁として作用することを示した、細菌生体触媒を用いた研究と一致している。例えば、細菌の細胞表面上に発現したOPHは、OPHが細胞質内に留まっている全細胞生体触媒より、有効にOP化合物を加水分解する。溶媒を用いた外膜の透過性促進は、こうした問題を克服し、受動拡散および加水分解の速度を増加させることができるが、こうした方法の実施に当たっては、細胞死を回避するように注意を払うことが必要となり得る。
Figure 2009518006
酵母膜の透過性増加は、恐らく、その膜を破壊した結果、細胞内へのパラオキソンの進入速度を増加させることにより、酵母生体触媒の効率を増加させた。この結果から、酵母膜は、パラオキソンの進入に対する主要な障壁であることが示唆される。
(実施例8)エタノールなどの膜透過剤のパラオキソン加水分解に対する効果
pOPD−ESC−URAプラスミドを潜ませた酵母細胞を、2%ガラクトース(pGAL1誘発条件)および2%、4%、6%、8%いずれかのエタノール(最終濃度)を含有するSD培地中で増殖させた。増殖をOD600で分光光度法によりモニターし、細胞生存率をトリパンブルー染色で調べた。致死量未満のエタノール濃度で前処理した酵母細胞の能力を、全細胞によるパラオキソン加水分解について調べた。
2%または4%エタノールでインキュベーションすると、S.セレビシエの増殖速度は減少し、より高いエタノール濃度(6〜8%)でインキュベーションすると、増殖が激しく抑制された(図8)。しかし、3.75時間の処理後、対照と4%エタノール処理細胞との間に生存率の差はなかった。したがって、pOPD−ESC−URAプラスミドを潜ませた酵母細胞を、2%または4%エタノールで4.5時間、前処理した後、パラオキソナーゼアッセイを行った。致死量未満のエタノール濃度で前処理すると、全細胞のパラオキソン加水分解が増加した(表6)。2%エタノールによる前処理後のアッセイで、全細胞活性が、対照細胞と比較して1.29倍増加する一方、4%エタノールによる前処理で活性が1.46倍増加した。
Figure 2009518006
致死量未満のエタノール濃度で前処理した結果、ほぼ間違いなくパラオキソンに対する膜透過性の増加により、全細胞のパラオキソン加水分解が増加した。エタノールの前処理は、酵母生体触媒の活性を増加させることができる。
(実施例9)酵母膜変異体のパラオキソンに対する感受性
エルゴステロール生合成に特定の変異を有する酵母変異体は、酵母膜の変化を介したパラオキソン拡散の増加のために、パラオキソンに超感受性となり得る。したがって、酵母膜変異株のパラオキソンに対する感受性増加を調べるために、低濃度のパラオキソンの存在下または非存在下での増殖曲線を実行した。S.セレビシエ野生型BY4741と、膜変異株erg3、erg4およびerg6とを、複合YPDブロース(変異株に対しては200μg/mlのG418を追加)中37℃で、定常期まで終夜増殖させた。0時間で培養物を等分し、0.5mMパラオキソンの非存在下または存在下でインキュベートした。培養物の増殖は、OD600での分光光度法でモニターした。
0.5mMパラオキソンの存在下または非存在下、野生型とerg3またはerg4株との間に増殖速度の差はなかった(図9AおよびB)。このことから、ERG3およびERG4における変異は、パラオキソンに対する感受性の増加を付与しないことが示された。対照的に、0.5mMパラオキソンにより、野生株と比較してerg6の増殖速度は有意に減少した(図9C)。
パラオキソンに対するerg6の感受性の程度を調べるために、パラオキソン濃度を下げて(0.25mMおよび0.125mM)、追加の増殖曲線を実行した。erg6の増殖速度は0.125mMパラオキソンで抑制されたが、この濃度は野生株には無効であった(図10AおよびB)。したがって、この結果は、erg6がパラオキソンに超感受性であり、酵母生体触媒中に組み込むために有用となり得ることを示すが、erg6変異体使用の考え得る欠点は、野生株と比較してYPD培地中での増殖速度が損なわれていることである(Welihnda AAら、(1994年)Biochim Biophys Acta 1193巻、107〜17頁)。
特定の膜変異体erg6は、パラオキソンに対して超感受性であるが、その原因は、恐らくパラオキソンに対するその防御膜の透過性増加である。erg6などの酵母膜変異体の使用は、生体触媒の効率を増加させ得る。
(実施例10)野生型および組換えOPH酵母遺伝子のマイクロアレイ分析
パラオキソンの存在下または非存在下でのS.セレビシエ、およびパラオキソンの存在下または非存在下での組換えOPH酵母に関して、全体的な転写プロファイル作成(マイクロアレイ分析)を行った。パラオキソンとインキュベートした野生型細胞と、パラオキソンとインキュベートした、OPHを発現する組換え細胞とを比較した結果、パラオキソンの加水分解で誘導される酵母遺伝子が同定された。
3mMパラオキソンの存在下または非存在下、S.セレビシエW3031AをSDgal(発現誘発)中、37℃で60分増殖させた。こうした試料を用いて、パラオキソンの存在下で上方調節される酵母遺伝子を同定した。3mMパラオキソンの存在下または非存在下、60分で組換えOPH株の培養物も調製した。こうした試料により、パラオキソン加水分解に特異的な誘導可能遺伝子の同定が可能となった。TRI試薬(Ambion)を用い、その製造業者の教示に従って、RNAを繰り返し3回の培養物から調製した。RNA調製物は、DNase1で処理後、RNeasyカラム(Qiagen)にRNAを通すことにより、更に精製した。
Affymetrix GeneChip System(Santa Clara、CA)に対して確立された標準的手順を用いて、総RNA10μgからビオチン標識断片化cRNA標的を調製した。単一アレイ上にS.セレビシエゲノム全体(ORFおよそ6200個)を含有するAffymetrix GeneChip(登録商標)Yeast Genome S98 Arrayと、標的とのハイブリッドを形成した。ハイブリッド形成は、独自の培養物3点に由来するRNA調製物3点を用いて、繰り返し3回行った。ハイブリッド形成後の洗浄、染色およびスキャンは、Affymetrixが開発した標準的条件を用いて行った。マイクロアレイのハイブリッド形成データ(CELファイル)は、GCRMAのBioconductor実施(Gentleman RCら、(2004年)Genome Biol 5巻、R80頁)を用いて規格化し、規格化ハイブリッド形成データを、処理に関する2つ1組の比較のために分析プログラムdChip中にインポートした。パラオキソン誘導可能遺伝子は、次の規準:即ち、野生型の処理対非処理および組換え体の処理対非処理に対して、4倍超の発現増加および統計的差(対応のないt−検定、p<0.01)により定義した。パラオキソン加水分解に関連する候補遺伝子は、次の規準:即ち、組換え体のパラオキソン処理対組換え体の非処理に対して、2倍超の発現増加および統計的差(対応のないt−検定、p<0.01)により定義し、パラオキソン誘導可能遺伝子は除外した。相関係数1および連鎖の距離測定基準を有し、重心法で計算した標準化発現値(z規格化)を用いて、dChipにより各集合の候補遺伝子に関して階層的クラスタ分析を行った。
まとめると、パラオキソンで誘導された遺伝子の個数および発現量の変化は、大きかった。例えば、パラオキソン処理および非処理対照細胞間の比較を目的とした、t−検定を用いた倍率変化(p<0.01)に対する2つ1組の比較によって、示差的に発現する遺伝子が約1900種同定された。示差的発現の誤発見率(FDR)は低く(0.3%)、該遺伝子1900種のうち、誤りは僅か約6種に過ぎないと推定されることを示した。65種の遺伝子は、パラオキソン暴露のために示差的に発現することが確認され、(i)4倍以上の示差的発現、(ii)p値<0.01のt−検定に基づく統計的有意性、(iii)発現の増加だけ(抑制されない)、および(iv)両方の処理集合(野生型および組換え酵母)からパラオキソンで誘導されること、により選択された。誘導倍率に基づくパラオキソン誘導可能遺伝子7種の選択リストを表7に示してある。示差的発現量は、誘導倍率18倍から1700倍まで(YGR035Cの場合)にも及んでおり、したがって発現量の大きな増加を示した。パラオキソン誘導可能遺伝子7種のうち4種は、未知の機能を有するが、遺伝子機能割付けの共通テーマは、予想されるような薬物耐性である。
Figure 2009518006
この特定の実施例において、パラオキソン加水分解に関連する遺伝子の個数および示差的に調節される遺伝子のレベルは、パラオキソン誘導可能遺伝子ほど大規模ではなかった。同定された遺伝子がより少なかった理由は、(i)パラオキソンのインキュベーション時間60分が、転写プロファイルを変えるほどにパラオキソンを加水分解するには不十分であったこと、または(ii)OPHプラスミドが不安定なため、パラオキソン加水分解生成物を産生できない集団中の比率(%)が高かったことに起因し得る。とは言え、示差的に発現した遺伝子33種が、パラオキソン加水分解に関連していた。遺伝子は、次の規準:(i)2倍以上の示差的発現、(ii)p値<0.01のt−検定に基づく統計的有意性、(iii)発現の増加だけ(抑制されない)、および(iv)パラオキソンだけで誘導された遺伝子の除外に則って選択した。パラオキソン加水分解に関連する遺伝子4種の選択リストを表8に示してある。示差的発現は、誘導倍率4〜7倍に亘っていた。遺伝子産物4種のうち2種の機能は、不明である。
Figure 2009518006
マイクロアレイ分析により、パラオキソン誘導酵母遺伝子およびパラオキソン加水分解に関連する酵母遺伝子が同定された。これら遺伝子の幾つかは、大量に誘導され、プロモーター−レポーター遺伝子融合体の理想的候補である。
(実施例11)パラオキソン誘導可能遺伝子の優先順位決定
マイクロアレイ分析で単離した遺伝子の示差的発現は、相対的RT−PCRおよび定量的リアルタイムRT−PCRによって個別に立証した。パラオキソン誘導可能遺伝子は、表7に列挙されている。誘導倍率に基づく優先的遺伝子は、低濃度のパラオキソンにより用量依存的(0.05〜1.0mM)に誘導されるか否かを調べるために分析した。パラオキソンで感受性良好に誘導された優先的遺伝子は、様々な暴露時間(7.5、15および30分)後に調べた。酵母バイオセンサーの構築に優先される特性を示した遺伝子を優先させた。こうした遺伝子には、(i)最大の誘導倍率、(ii)マイクロアレイ分析に用いた濃度(3mM)より低濃度のパラオキソンに対する感受性、および(iii)速やかな誘導応答時間を示すものが含まれていた。
相対的RT−PCRは、マイクロアレイ分析で同定した遺伝子が、パラオキソンに応答して示差的に発現するか否かを立証するために使用した。ハウスキーピング遺伝子のアクチンと対照させて設計したプライマーは、各PCR反応に対して類似量のcDNAが使用されていることを立証するために、内部負荷対照として使用した。YGR035C、YLR346C、SPS100、YOR186W、RTA1、MET28およびYLL056Cの発現量増加は、3mMパラオキソンの存在下、60分増殖させた野生型および組換えOPH酵母細胞について、検出された(図11のレーンCPおよびTP)。したがって、相対的RT−PCRは、マイクロアレイ分析で同定した遺伝子が、パラオキソンに応答して示差的に発現することを個別に立証することができた。YLR346CおよびYGR035Cは、マイクロアレイ分析、相対的RT−PCRの双方で相当程度誘発されることが示されたので、更なる分析のために優先した。
リアルタイムRT−PCRは、パラオキソンに応答する優先遺伝子YGR035CおよびYLR346Cの変化を定量するために、使用した。YGR035Cは、非処理対照と比較して、パラオキソン処理細胞において35倍〜190倍誘導された。YLR346Cは、同等の実験試料について17倍〜31倍誘導された。したがって、リアルタイムRT−PCRにより、YGR035CおよびYLR346Cが相当程度誘発されることを確認された。
パラオキソン遺伝子が、マイクロアレイ分析に用いた濃度(3mMパラオキソン)より低いパラオキソン濃度で感受性良好に誘導されるか否かを調べるために、pESC−URAを潜ませたS.セレビシエW3031Aを0.05、0.1、0.25、0.5および1.0mMのパラオキソンに60分間暴露した。遺伝子発現量の変化を調べるために、相対的およびリアルタイムRT−PCRを行った。相対的RT−PCRにより、YOR186W、SPS100およびRTA1の遺伝子発現量に、より低い試験濃度では明白な変化が見られないことが示された(図12)。対照的に、YGR035Cは、0.5および1.0mMのパラオキソンで各々18倍および31倍誘導された。同様に、YLR346Cは、0.5および1.0mMのパラオキソンで各々8倍および10倍誘導された(図13)。したがって、YGR035CおよびYLR346Cは、YOR186W、SPS100およびRTA1と比較して、ある範囲のパラオキソン濃度に感受性良く応答し、更なる分析のために優先された。
マイクロアレイ分析では、60分の暴露でパラオキソンにより誘導される遺伝子を同定した。速やかにパラオキソンにより誘導される遺伝子が好ましいと見込まれるので、YGR035CおよびYLR346Cに対して、短期パラオキソンインキュベーションに応答して誘発されるその能力を調べた。pESC−URAを潜ませたS.セレビシエを、2.5mMのパラオキソンに7.5、15、30および60分暴露し、相対的およびリアルタイムRT−PCRを用いて遺伝子発現量の変化を調べた。YGR035C、YLR346Cは共に、7.5分後に相当程度であって、最大限(各々98倍および32倍)に誘導された(図14)。暴露を継続する(60分まで)と、7.5分の初期値と比較して誘導倍率が減少した。
リアルタイムRT−PCRを用いて遺伝子発現量の変化を定量し、マイクロアレイ分析で同定したパラオキソン誘導可能遺伝子候補の示差的調節を確認した。YGR035CおよびYLR346Cは、(i)各々190倍および32倍まで相当程度に誘導され、(ii)ある範囲のパラオキソン濃度に感受性を示し、(iii)パラオキソン暴露の7.5分後に誘導されるので、実施例13〜14において使用するために優先された。
(実施例12)パラオキソン加水分解に関連する遺伝子の優先順位決定
マイクロアレイ分析で同定した遺伝子(表8)の示差的発現は、リアルタイムRT−PCRによって個別に立証した。
リアルタイムRT−PCRを用いて、パラオキソン非存在下または存在下での野生型酵母細胞(各々CおよびCP)、およびパラオキソン非存在下または存在下での組換えOPH酵母(各々TおよびTP)から、YHL012W、HXT9、POX1およびYGR287Cの発現を調べた。YHL012の発現には、パラオキソン存在下もしくは非存在下で、または野生型酵母と組換え酵母との間に差がなかった(表9)。HXT9の発現は、パラオキソンにより約3倍誘導された。しかし、野生型、組換えOPH双方の酵母細胞におけるパラオキソン誘導HXT9発現からは、HXT9誘導が、opd発現、したがってパラオキソン加水分解に関連していないことが示された。これは、リアルタイムPCRでは、候補遺伝子YHL012およびHXT9に対するマイクロアレイの結果を立証できなかったことを示している。対照的に、POX1発現量の増加(2.4倍)は、パラオキソン存在下の組換えOPH酵母でしか検出されなかったため、POX1発現がパラオキソン加水分解に関連していることを示した。同様に、YGR287Cの発現は、パラオキソン存在下の組換えOPH酵母細胞中で9倍増加した。しかし、パラオキソンは、程度ははるかに低いとはいえ(2倍)、野生型細胞中でもYGR287Cを誘導した。
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リアルタイムRT−PCRから、POX1およびYGR287Cは、パラオキソン存在下の組換えOPH酵母中で優先して発現されることが確認されたが、このことは、誘導がパラオキソン加水分解に関連していることを示唆した。したがって、POX1およびYGR287Cは、実施例13〜14で使用するために優先された。
(実施例13)パラオキソンを検知する酵母YeGFPバイオセンサー
酵母コドン最適化・強化GFP(YeGFP)遺伝子を含有するプラスミドを構築した。実施例11で同定した優先的パラオキソン誘導可能遺伝子2種(YGR035CおよびYLR346C)のプロモーター領域(−500bpおよび−1000bp上流の断片)は、クローニングし、YeGFPと融合し、野生型S.セレビシエ中に形質転換した。YGR035C−FI−YeGFPの配列は示してある(図15Aの太字はプロモーター配列、下線はYeGFP遺伝子配列)。pYLR346C−FI−YeGFPの配列は示してある(図15Bの太字はプロモーター配列、下線はYeGFP遺伝子配列)。酵母バイオセンサーの機能性を、様々な濃度のパラオキソン存在下、様々な時間パラオキソンに暴露した後、YeGFP蛍光の測定により調べた。
YeGFP無プロモーター酵母ベクターの構築:YeGFPは、アミノ酸の変更2個を有し、野生型GFPより蛍光強度が75倍増加しているエクオリア・ビクトリア(Aequorea victoria)GFP変異体である。加えて、YeGFPは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)酵母中に発現させるために、コドンが最適化されており、S.セレビシエ中でも高度の蛍光を示す(Cormack BPら、(1997年)Microbiology 143巻、303〜11頁)。YeGFPを含有するC.アルビカンスの株を使用した。700bpのYeGFP遺伝子は、プルーフリーディングポメラーゼと、鋳型としてC.アルビカンスYeGFPゲノムDNAとを用いてPCRで増幅した。PCRプライマーは、BamHIおよびSpeIのエンドヌクレアーゼ部位を含有することにより、pESC−HISの各部位内にクローニングできるように設計した。生成した「無プロモーター」YeGFP−HISプラスミドは、パラオキソン誘導プロモーターをクローニングするための多重クローニング部位(MCS、BamHI、SmaI、SalI、XhoIおよびSacI)を含有していた。クローニングおよび増殖は、大腸菌ER2738中で行った。YeGFPの同一性は、DNAの配列決定により立証した。
パラオキソン誘導プロモーター−YeGFP融合レポータープラスミドの構築:プロモーター配列は、サッカロミセスプロモーターデータベース(SCPD)(Cold Spring Harbor Laboratories、Cold Spring Harbor、NYが維持)を用いて当初マッピングした。このSCPDは、調節領域が既にマッピングされた酵母遺伝子に関する広範な情報を有し、全酵母遺伝子の注釈付き推定調節部位を有し、対象とする遺伝子に対するプロモーター配列および既知の調節要素を検索するための広範なツールを有している。優先的パラオキソン誘導可能遺伝子2種(YGR035CおよびYLR346C)のプロモーターは、文献中で以前にはマッピングされなかったが、SCPDを用いた5‘上流プロモーター領域を分析した結果、薬物耐性およびストレス耐性に関与する推定プロモーター調節部位が、予想通り特定された。YGR035CおよびYLR346Cのプロモーターを包含するために、−1000bpおよび−500bp上流の配列(ATGに対して)を含有する、各遺伝子用の推定プロモーター断片2個をYeGFPの前方にクローニングした。推定プロモーター領域は、鋳型としてのS.セレビシエW3031AゲノムDNAと、プルーフリーディング熱安定DNAポリメラーゼとを用いてPCRでクローニングした。5‘および3‘プライマーは、pYeGFP−HISの同じ部位内に一方向クローニングをするために、各々SalIおよびBamHI部位を含有することにより、プロモーター−レポーター遺伝子融合体を生成した。生成したプラスミドは、−1000および−500プロモーター断片に対して、それぞれF1およびF2と命名した(表11)。
パラオキソン誘導プロモーター−YeGFPバイオセンサーのアッセイ:プロモーター領域がパラオキソンに対する感受性を付与するか否かを試験するために、YeGFP蛍光アッセイを行った。S.セレビシエBY4741をプロモーター−レポーター構築体および空の「無プロモーター」対照ベクターで形質転換した。S.セレビシエBY4741をS.セレビシエW3031Aより好んで使用したのは、W3031AがBY4741より強い自己蛍光を示したからである。パラオキソンの存在下または非存在下、ヒスチジンを欠くSDgal/suc(3%ガラクトース、1%スクロース)中で、細胞を15、30、60および120分、37℃で増殖させた。細胞を遠心分離で収集し、PBS中で洗浄し、10mM Tris−HCl、pH8.5中に再懸濁し、試料2点のYeGFP蛍光(励起および発光極大値が485および520nm)をFLUOstar OPTIMA(BMG)を用いて測定した。GFPがpH感受性であるため、試料はアルカリ性緩衝液中に懸濁した。GFPは、pH7〜11.5で安定であるが、他のpHでは活性を失う恐れがある(例えば、pH6では50%低下)。したがって、幾つかの実施形態では、培地およびpH配合物を最適化することにより、酵母培養物のpHを中性pHまたはその近くに維持し得る。全ての結果は、存在細胞数(OD600)、「無プロモーター」対照ベクター(YeGFP−HIS)に対して規格化した後、パラオキソンを欠いた細胞と比較した誘導倍率として提示している。パラオキソンの存在下でインキュベートした酵母細胞は、パラオキソンを欠いた細胞と比較してYeGFP蛍光の増加を示した(図16)。pYLR346C−YeGFPおよびpYGR035C−YeGFPを潜ませた酵母細胞は、3mMパラオキソンとの2時間のインキュベーション後、各々5倍および3倍誘導された。パラオキソンとのインキュベーションが2時間を超えても(4、6、8および24時間)、誘導倍率は増加しなかった(データは示されていない)。経時分析から、YeGFP蛍光はパラオキソンで速やかに誘導されることが示された。例えば、pYLR346を潜ませた酵母株は、パラオキソンに僅か15分暴露した後2倍に誘導された。
このアッセイの感度を決定し、組換え酵母が異なるパラオキソン濃度に応答するか否かを調べるために、用量応答曲線を実行した。pYLR346C−F1−YeGFPを潜ませたS.セレビシエを0.1、0.25、0.5、1.0および3mMのパラオキソンと2時間インキュベートした後、YeGFP蛍光のアッセイを行った。プロモーター断片YLR346C−F1を潜ませたこの構築体は、3mMのパラオキソンに非常に良く応答したため、この実験に対して選択した(図16の5倍)。パラオキソン濃度が増加するにつれ、YeGFPの誘導量も増加した(図17)。加えて、蛍光量は、最低試験濃度でも(0.1mMパラオキソン)、僅かではあるが(1.3倍)増加した。したがって、この結果から、酵母バイオセンサーは、パラオキソンに対して用量応答を示し、0.1mMパラオキソンに応答することが示された。
YeGFP蛍光は、パラオキソンの存在下で5倍まで誘発された。しかし、YeGFP誘導量は、同一条件下で観察された遺伝子発現量の変化倍率(YLR346Cについて30倍)より低かった。特定の作用機構に何ら限定されるわけではないが、これは、YeGFP発現を推進するプロモーター断片が最適でないことに起因し得る。各遺伝子に対して僅か2個のプロモーター断片(ATGに対しておよそ−500および−1000)しか、試験しなかった。幾つかの実施形態では、追加のプロモーター特性決定には、5’プロモーター欠失分析を含めることにより、パラオキソン誘導性の付与に必要なプロモーター断片を更に同定し得る。追加のプロモーター特性決定には、調節転写モチーフをやはり含有し得るATG開始部位の3’側配列の同定も含めてもよい。
その上、YeGFP蛍光とYeGFP発現との差異は、多重コピープラスミド上にあるプロモーターから発現を誘導するのに必要な追加の転写因子(複数も)の供給により、減少させ得る。YLR346Cプロモーターが、多重コピープラスミド上で細胞1個当たり約20〜50コピーで維持されているのに対し、染色体には内因性プロモーターが単一コピーしかない。したがって、パラオキソン誘導に必要な内因性転写因子は、多重の転写因子結合部位の存在により飽和している恐れがある。追加の転写因子(複数も)の供給には、プラスミドコピー数の減少を含み得る、または必要な転写因子(既知の場合)の共発現が、この制約を克服し得る。酵母のバックグランド自己蛍光は、一部の状況下では示差的な誘導発現量を低下させる恐れがある。このような場合には、バックグランド自己蛍光が比較的弱い酵母株、例えばS.セレビシエBY4741の使用で、自己蛍光を相殺または克服し得る。例えば、S.セレビシエW3031Aは、S.セレビシエBY4741より強いバックグランド自己蛍光を示した。したがって、バイオセンサー蛍光アッセイ用の宿主増殖株としてBY4741を使用した。
パラオキソン誘導性プロモーター−YeGFP融合体を潜ませた酵母細胞は、パラオキソン存在下でインキュベートしたとき、対照細胞と比較して最大5倍の蛍光増加を示した。YeGFP量の増加は、パラオキソンに暴露してから15分後に検出された。YeGFPバイオセンサーは、僅か0.1mMのパラオキソンに感応し、パラオキソン濃度の増加につれてYeGFP蛍光を増加させることにより、用量依存特性を示した。この結果は、バイオセンサーとして機能し、パラオキソンの存在を検出する酵母細胞の能力を実証している。
(実施例14)パラオキソン加水分解を検出する酵母YDsRedバイオセンサー
酵母コドン最適化DsRed(YDsRed)遺伝子を含有するプラスミドを構築した。実施例10〜12で同定した優先的パラオキソン誘導可能遺伝子2種(POX1およびYGR287C)のプロモーター領域(−500bpおよび−1000bp上流の断片)は、クローニングし、YDsRedと融合し、野生型および組換えOHPのS.セレビシエ中に形質転換した。YGR287C−FI−YDsRedの配列は示してある(図18Aの太字はプロモーター配列、下線はYDsRed遺伝子配列)。pPOX1−FI−YDsRedの配列は示してある(図18Bの太字はプロモーター配列、下線はYDsRed遺伝子配列)。YDsRed蛍光を増加させる酵母バイオセンサーの能力を、野生型(対照)および組換え酵母の培養物で比較した。YDsRed蛍光は、様々な濃度のパラオキソン存在下、様々な時間パラオキソンに暴露した後に測定した。
YDsRed無プロモーター酵母ベクターの構築:DsRedエキスプレス(Clontech)は、サンゴ礁ディスコマ種の赤色蛍光タンパク質の変異体であって、該タンパク質の溶解度を改善するように改変され、感受性増強のために真核細胞中で高度に発現するようにコドンが最適化された変異体である。これは、EGFPに匹敵する高い蛍光強度を生じる。とは言え、DsRedエキスプレスは、S.セレビシエ中では稀にしか使用されないコドンを幾つも含有している。したがって、DsRedを酵母中で発現するようにコドンを最適化した(Bio S & Tが実施)(図4B)。酵母コドン最適化DsRedのYDsRedは、好ましい酵母リボソーム結合部位と、pESC−LEU(Stratagene)の対応部位にクローニングするためのBamHIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼ部位とを含有するようにも設計した。生成したpYDsRed−LEU無プロモーターベクターは、POX1およびYGR287Cプロモーターをクローニングするための十分なMCSを含有していた。
プロモーター−YDsRed融合レポータープラスミドの構築:POX1およびYGR287Cのプロモーターを包含するために、およそ−1000bpおよび−500bp上流の配列(ATGに対して)を含有する、各遺伝子用の推定プロモーター断片2個をYDsRedの前方にクローニングした。推定プロモーター領域は、鋳型としてのS.セレビシエW3031AゲノムDNAと、プルーフリーディング熱安定DNAポリメラーゼとを用いてPCRでクローニングした。5‘および3‘プライマーは、pYDsRed−LEUの同等部位内に一方向クローニングをするために、各々SalIおよびBamHI部位を含有することにより、プロモーター−レポーター遺伝子融合体を生成した。生成したプラスミドは、−1000および−500プロモーター断片に対して、それぞれF1およびF2と命名した。
プロモーター−YDsRedバイオセンサーのアッセイ:プロモーター領域がパラオキソン加水分解により「スイッチが入る」か否かを分析するために、YDsRed蛍光アッセイを行った。pESC−URA(OPHを欠く対照株)を潜ませたS.セレビシエBY4741を、プロモーター−レポーター構築体および空の「無プロモーター」対照ベクター(pYDsRed−LEU)で形質転換した。組換えOPH(試験株、OPHを発現する)を類似のプラスミドで形質転換した。3mMパラオキソンの存在下または非存在下、ロイシンを欠くSDgal/suc中で、細胞を4.5時間、37℃で増殖させた。細胞を遠心分離で収集し、PBS中で洗浄し、10mM Tris−HCl、pH8.5中に再懸濁し、試料2点のYDsRed蛍光(励起および発光が、各々554および590nm)を測定した。全ての結果は、存在細胞数(OD600)、「無プロモーター」対照ベクター(YDsRed−LEU)に対して規格化した後、パラオキソンを欠いた細胞と比較した誘発倍率として提示している。パラオキソン存在下でインキュベートした組換えOPH細胞は、分析した全構築体について、パラオキソンを欠いた細胞と比較してYDsRed蛍光の誘発を示した(表10)。誘発は2〜8倍に亘っていたが、これは、定量的リアルタイムRT−PCRから得た誘発結果と同等である。重要なことには、OPHを欠いた対照株(pESC−URA空ベクター)では、同じ構築体がパラオキソン誘発性を殆どないし全く示さなかった。したがって、YDsRedはパラオキソン自体には誘発されず、誘発にはOPHを必要としたので、YDsRedの誘発は、パラオキソンの加水分解と厳密に関係していることが示された。
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pPOX1−F2 YDsRed融合構築体を用いて、YDsRed誘発を調べる経時分析を行った。pPOX1−F2−YDsRed融合構築体を潜ませた組換えOPH培養物に、パラオキソンを添加してから30、60、120および260分後にYsDsRed蛍光を測定した(図19)。パラオキソンへの暴露時間が増加するにつれ、YDsRed誘導の着実な増加が認められた。YDsRed蛍光は、パラオキソンに260分暴露後、2.5倍誘発された。このアッセイの感度を決定し、組換え酵母が異なるパラオキソン濃度に応答するか否かを調べるために、用量応答曲線を実行した。pPOX1−F2−YDsRedを潜ませたS.セレビシエOPHを0.1、0.25、0.5、1.0および3mMのパラオキソンと255分インキュベートした後、YDsRed蛍光のアッセイを行った。パラオキソン濃度が増加するにつれ、YDsRedの誘導量も少しではあるが増加した(図20)。したがって、この結果から、酵母バイオセンサーは、パラオキソン加水分解に対して用量応答特性を示したことが示唆される。
蛍光タンパク質DsRedを選択した理由は、(i)酵母中のレポータータンパク質として成功裏に使用されてきたこと(Bevis BJ & Glick BS(2002年)Nat Biotechnol 20巻、83〜7頁)、(ii)安定なタンパク質であること、および(iii)YeGFPと比較して異なる分光特性を放つことであるが、YDsRedを発現する酵母培養物とバックグランド自己蛍光量(YDsRedを欠いている)との間の示差的蛍光量は、最小限であった。YDsRedの低発現量は、更なる実験および最適化に従えば克服し得る。この潜在的制約を克服し、「シグナル対ノイズ比」を上げるために、ビブリオ・ハーベイイluxABレポーター遺伝子を用いることにより、OP加水分解後に生物発光を起こす酵母バイオセンサーを創製し得る。細菌系と類似の光強度を示す生物発光酵母が、生成されてきた(Szittner Rら、(2003年)Biochem Biophys Res Commun 309巻、66〜70頁)。酵母細胞は自然には生物発光を起こさないので、バックグランド量の900000倍近い生物発光シグナルが実現された(Gupta RKら、(2003年)Fems Yeast Res 4巻、305〜13頁)。その上、「過渡的」発光シグナルは(安定なYDsRed蛍光タンパク質と異なり)、発光量の増減の検知を可能とし得る。したがって、生物発光シグナルは、除染過程のモニターに対する適性が高くなり得る。
パラオキソン加水分解に関連するプロモーターを潜ませ、YDsRedと融合した組換えOPH酵母細胞は、パラオキソンの存在下で2.5〜8倍のYDsRed誘発量を示した。YDsRed誘発は野生型酵母細胞(OPHを欠いている)では認められなかったので、YDsRed誘発は、パラオキソンの加水分解と厳密に関係していることが示唆された。YDsRed誘発量はパラオキソン濃度の増加と共に増加したので、この酵母バイオセンサーがパラオキソンの加水分解量に応答したことが示される。
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図1は、opd遺伝子のPCR増幅を例示するゲルの画像である(MはλHindIII DNAマーカー、レーン1は陰性PCR対照、レーン2はopd PCR産物)。 図2は、酵母pESC−URAプラスミド中へのopd遺伝子のクローニングを確認するために、pOPD−ESC−URAの診断的な制限酵素消化(HindIII/BamHI)により、1031bpおよび6554bpの断片(右端レーン)が産生したことを例示するゲルの画像である。 図3は、プラスミド複製用の酵母2μ起点、酵母形質転換細胞選択用のURA3栄養要求性マーカー、発現調節用の酵母pGAL1プロモーター、細菌opd遺伝子、および転写終止用の酵母TCYC1終止配列を有する酵母opd発現プラスミドのスケッチである。 図4Aは、酵母コドン最適化opd遺伝子のDNA配列(配列番号1)を図示し、図4Bは、酵母コドン最適化DsRedエキスプレス遺伝子のDNA配列(配列番号2)を図示する。 図4Aは、酵母コドン最適化opd遺伝子のDNA配列(配列番号1)を図示し、図4Bは、酵母コドン最適化DsRedエキスプレス遺伝子のDNA配列(配列番号2)を図示する。 図5は、opdを発現する酵母形質転換細胞を例示するゲルの画像であり、(i)pESC−URA(対照プラスミド)およびpOPD−ESC−URAをS.セレビシエW3031A中に形質転換し、(ii)RNAを調製し、(iii)RT−PCRを用いてopd mRNA発現を調べ、(iv)アクチンを内部負荷対照として用いた画像である(Dexはデキストロース、Galはガラクトース)。 図6は、抑制(dexはデキストロース)または誘導(galはガラクトース)条件下で、対照(pESC−URA)または試験(pOPD−ESC−URA)プラスミドを潜ませたS.セレビシエの増殖(A600でモニター)を図示するグラフである。 図7Aは、パラオキソン存在下でのS.セレビシエBY4741の増殖(A600でモニター)の用量依存的阻害を図示するグラフであり、図7Bは、1mMパラオキソン存在下でのS.セレビシエW3031A野生型(pESC−URA)および組換えOPH細胞の増殖(A600でモニター)を図示するグラフである。 図7Aは、パラオキソン存在下でのS.セレビシエBY4741の増殖(A600でモニター)の用量依存的阻害を図示するグラフであり、図7Bは、1mMパラオキソン存在下でのS.セレビシエW3031A野生型(pESC−URA)および組換えOPH細胞の増殖(A600でモニター)を図示するグラフである。 図8は、様々なエタノール濃度(2〜8%)の存在下、pOPD−ESC−URAを潜ませたS.セレビシエの増殖(A600でモニター)を図示するグラフである。 図9Aは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg3の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Bは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg4の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Cは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg6の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフである。 図9Aは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg3の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Bは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg4の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Cは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg6の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフである。 図9Aは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg3の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Bは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg4の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフであり、図9Cは、S.セレビシエ野生型(BY4741)および膜変異株erg6の増殖(A600でモニター)に対する0.5mMパラオキソンの効果を図示するグラフである。 図10Aは、S.セレビシエ野生型(BY4741)の増殖に対する500、250および125μMのパラオキソン(para)の効果を図示するグラフであり、図10Bは、S.セレビシエ膜変異株erg6の増殖に対する500、250および125μMのパラオキソン(para)の効果を図示するグラフである。 図10Aは、S.セレビシエ野生型(BY4741)の増殖に対する500、250および125μMのパラオキソン(para)の効果を図示するグラフであり、図10Bは、S.セレビシエ膜変異株erg6の増殖に対する500、250および125μMのパラオキソン(para)の効果を図示するグラフである。 図11は、パラオキソン誘導可能遺伝子(相対的RT−PCRによりモニター)の発現を例示するゲルの画像であり、RNAを、3mMパラオキソンの非存在下または存在下で60分インキュベートした野生型または組換え酵母から調製した画像である(Cはパラオキソンなしの野生型、CPはパラオキソンを用いた野生型、パラオキソンなしの組換え(T)、パラオキソンを用いた組換え(TP))。 図12は、様々な濃度のパラオキソンと60分インキュベートした野生型酵母の遺伝子発現(相対的RT−PCRによりモニター)を例示するゲルの画像である。 図13は、相対的およびリアルタイムRT−PCRによりモニターした遺伝子発現の用量応答変化を例示するゲルの画像であり、RNAを、様々な濃度のパラオキソンと60分インキュベートした野生型酵母から調製した画像である。 図14は、相対的およびリアルタイムRT−PCRによりモニターしたYGR035CおよびYLR346Cの時間経過を例示するゲルの画像であり、RNAを、2.5mMパラオキソンとインキュベートした野生型酵母から調製した画像である。 図15Aは、YGR035C−FI−YeGFPのDNA配列(配列番号3)を図示し、図15Bは、pYLR346C−FI−YeGFPのDNA配列(配列番号4)を図示する。 図15Aは、YGR035C−FI−YeGFPのDNA配列(配列番号3)を図示し、図15Bは、pYLR346C−FI−YeGFPのDNA配列(配列番号4)を図示する。 図16は、3mMパラオキソンの存在下、pYGR035C−F1−YeGFP、pYLR346C−F1−YeGFPのいずれかを潜ませたS.セレビシエにおける、YeGFP誘導の時間経過を例示するグラフである。 図17は、pYLR346C−F1−YeGFPを潜ませたS.セレビシエにおける、パラオキソン0.1〜3.0mM存在下120分でのYeGFP誘導の用量応答を例示するグラフである。 図18Aは、pYGR287C−FI−YDsRedのDNA配列(配列番号5)を図示し、図18Bは、pPOX1−FI−YDsRedのDNA配列(配列番号6)を図示する。 図18Aは、pYGR287C−FI−YDsRedのDNA配列(配列番号5)を図示し、図18Bは、pPOX1−FI−YDsRedのDNA配列(配列番号6)を図示する。 図19は、3mMパラオキソンの存在下、pPOX1−F2−YDsRedを潜ませた組換えOPH酵母における、YDsRed誘導の時間経過を例示するグラフである。 図20は、pPOX1−F2−YDsRedを潜ませたS.セレビシエOPHにおける、パラオキソン0.1〜3.0mM存在下255分でのYDsRed誘導の用量応答を例示するグラフである。

Claims (31)

  1. 第1のレポーターをコードする第1の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステルが存在する場合に該第1のレポーターの発現を推進する第1の発現制御配列、
    第2のレポーターをコードする第2の核酸に作動可能に連結し、有機リン酸エステル加水分解生成物が存在する場合に該第2のレポーターの発現を推進する第2の発現制御配列;および
    該有機リン酸エステルを加水分解して有機リン酸エステル加水分解生成物を生成する、少なくとも1種の酵素;
    を含む、酵母バイオセンサー。
  2. 前記第1のレポーターが、強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  3. 前記第2のレポーターが、強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  4. 前記第1のレポーターおよび前記第2のレポーターが、相異なる、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  5. 前記第1の発現制御配列が、受入番号YGR035C、受入番号YHR139C、受入番号YOR186W、受入番号YGR213C、受入番号YLR346C、受入番号YIR017Cおよび受入番号YLL056Cからなる群から選択される遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  6. 前記第1の発現制御配列が、受入番号YGR035C、受入番号YHR139C、受入番号YOR186W、受入番号YGR213C、受入番号YLR346C、受入番号YIR017Cおよび受入番号YLL056Cからなる群から選択される遺伝子の−1000〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  7. 前記第2の発現制御配列が、受入番号YGL205W、受入番号YJL219W、受入番号YGR287Cおよび受入番号YHL012Wからなる群から選択される遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  8. 前記第2の発現制御配列が、受入番号YGL205W、受入番号YJL219W、受入番号YGR287Cおよび受入番号YHL012Wからなる群から選択される遺伝子の−1000〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  9. 前記少なくとも1種の酵素が、有機リンヒドロラーゼ(OPH)、ホスホトリエステラーゼ、OpdA、有機リン酸アンヒドロラーゼ(OPAA)、DFPaseおよびパラオキソナーゼ(PON)からなる群から選択される、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  10. 前記少なくとも1種の酵素が細胞内にある、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  11. 前記酵母バイオセンサーが、エルゴステロール生合成遺伝子中に変異を含む、請求項1に記載の酵母バイオセンサー。
  12. 有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する方法であって、
    酵母を該有機リン酸エステルと接触させる工程;
    該酵母からRNAを収集する工程;
    相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、該RNAとを接触させる工程;
    各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、有機リン酸エステルと接触していない酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程;
    該有機リン酸エステルと接触していない該酵母より、該有機リン酸エステルと接触した該酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程;および
    該同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程;
    を含む方法。
  13. 有機リン酸エステルに感応する酵母バイオセンサーを調製する方法であって、
    有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    YeGFP、YDsRed、luxABからなる群から選択されるレポーターをコードする核酸と、該発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;および
    該作動可能に連結した核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    を含む方法。
  14. 前記作動可能に連結した核酸が、酵母プラスミド中に含まれる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記作動可能に連結した核酸の取込みは、該作動可能に連結した核酸の少なくとも1コピーの染色体中への組込みを含む、請求項13に記載の方法。
  16. 前記発現制御配列が、前記同定された遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項13に記載の方法。
  17. 有機リン酸エステル加水分解生成物により上方調節される酵母遺伝子を同定する方法であって、
    該有機リン酸エステル加水分解生成物と酵母を接触させる工程;
    該酵母からRNAを収集する工程;
    相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、該RNAとを接触させる工程;
    各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、該有機リン酸エステル加水分解生成物と接触していない酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程;
    該有機リン酸エステル加水分解生成物と接触していない該酵母より、有機リン酸エステル加水分解生成物と接触した該酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程;および
    該同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程;
    を含む方法。
  18. 有機リン酸エステル加水分解により上方調節される酵母遺伝子を同定する方法であって、
    有機リン酸エステル加水分解を可能にする条件下で、有機リン酸エステルと組換えOPH+酵母を接触させる工程;
    該組換えOPH+酵母からRNAを収集する工程;
    相補配列のハイブリッド形成を可能にする条件下で、酵母遺伝子に対応する特徴遺伝子座を有する酵母マイクロアレイと、その差引き済みRNAとを接触させる工程;
    各特徴遺伝子座における、ある測定基準のそのハイブリッド形成量を、OPHを欠如し、該有機リン酸エステルと接触した酵母由来のRNA用の対応する特徴遺伝子座における、同じ測定基準のハイブリッド形成量と比較する工程;
    OPHを欠如し、該有機リン酸エステルと接触した該酵母より、該有機リン酸エステルと接触した該組換えOPH+酵母の方が、該測定基準のハイブリッド形成量が高い特徴遺伝子座を同定する工程;および
    該同定された特徴遺伝子座を個々の酵母遺伝子と相関させる工程;
    を含む方法。
  19. 有機リン酸エステル加水分解生成物に感応する酵母バイオセンサーを調製する方法であって、
    有機リン酸エステル加水分解生成物により上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択されるレポーターをコードする核酸と、該発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;
    該作動可能に連結した核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    を含む方法。
  20. 前記作動可能に連結した核酸が、酵母プラスミド中に含まれる、請求項19に記載の方法。
  21. 前記作動可能に連結した核酸の取込みは、該作動可能に連結した核酸の少なくとも1コピーの染色体中への組込みを含む、請求項19に記載の方法。
  22. 前記発現制御配列が、同定された遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項19に記載の方法。
  23. 有機リン酸エステルおよび該有機リン酸エステルの加水分解生成物に感応する酵母バイオセンサーを調製する方法であって、
    有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該同定した有機リン酸エステル感応性遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、第1のレポーターをコードする核酸と、該有機リン酸エステル発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;
    該作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    該有機リン酸エステルの加水分解生成物により上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    有機リン酸エステル加水分解生成物感応性の該同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、第2のレポーターをコードする核酸と、該有機リン酸エステル加水分解生成物の発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;ならびに
    該有機リン酸エステル加水分解生成物の作動可能に連結した核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    を含み、該第1のレポーターをコードする核酸および該第2のレポーターをコードする核酸が、相異なる、方法。
  24. 前記作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸が、酵母プラスミド中に含まれる、請求項23に記載の方法。
  25. 前記有機リン酸エステル加水分解生成物の作動可能に連結した核酸が、酵母プラスミド中に含まれる、請求項23に記載の方法。
  26. 前記作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸の取込みは、該作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸の少なくとも1コピーの染色体中への組込みを含む、請求項23に記載の方法。
  27. 前記有機リン酸エステル加水分解生成物の作動可能に連結した核酸の取込みは、該有機リン酸エステル加水分解生成物の作動可能に連結した核酸の少なくとも1コピーの染色体中への組込みを含む、請求項23に記載の方法。
  28. 前記有機リン酸エステル発現制御配列が、前記同定した有機リン酸エステル感応性遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
  29. 前記有機リン酸エステル加水分解生成物の発現制御配列が、前記有機リン酸エステル加水分解生成物感応性の同定された遺伝子の−500位〜−1位のヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
  30. 有機リン酸エステルの加水分解に感応する酵母バイオセンサーを調製する方法であって、
    有機リン酸エステルの加水分解により上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択されるレポーターをコードする核酸と、該発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;
    該作動可能に連結した核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    を含む方法。
  31. 有機リン酸エステルおよび該有機リン酸エステルの加水分解に感応する酵母バイオセンサーを調製する方法であって、
    有機リン酸エステルにより上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該同定した有機リン酸エステル感応性遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、第1のレポーターをコードする核酸と、該有機リン酸エステル発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;
    該作動可能に連結した有機リン酸エステル核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    該有機リン酸エステルの加水分解により上方調節される酵母遺伝子を同定する工程;
    該有機リン酸エステル加水分解生成物感応性の同定された遺伝子の少なくとも1種の発現制御配列を同定する工程;
    強化緑色蛍光タンパク質、酵母強化緑色蛍光タンパク質、Aequorea coerelescens緑色蛍光タンパク質、DsRed単量体、DsRed2、DsRedエキスプレス、RedStar2、ASRed2、HcRed1、AmCyan1、ZsYellow1、ZsGreen1および/またはAmCyan1、昆虫ルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、細菌生物発光、レニラルシフェラーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIメチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、氷核タンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択される、第2のレポーターをコードする核酸と、該有機リン酸エステル加水分解生成物の発現制御配列を含む核酸とを作動可能に連結する工程;ならびに
    該有機リン酸エステル加水分解生成物の作動可能に連結した核酸を、該核酸の取込みを可能とする条件下で細胞と接触させる工程;
    を含み、該第1のレポーターをコードする核酸および該第2のレポーターをコードする核酸が、相異なる、方法。
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