JP2009517690A - 分析物を検出する電気化学的方法 - Google Patents

分析物を検出する電気化学的方法 Download PDF

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Abstract

電気活性な化合物Ru(PD)2Cl2を標識として使用することを含む、試料中の分析物を検出する電気化学的な方法を、本明細書に提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2005年11月30日に出願された米国特許仮出願第60/740,675号(その内容は参照により本明細書に組み入れられる)の恩典および優先権を主張する。
発明の分野
本発明は、一般には、試料中の分析物分子(例えば、ペプチド、タンパク質または核酸)を検出および定量するための方法に関し、具体的には、そのための電気化学的な方法に関する。
発明の背景
試料中の様々なタイプの分析物分子の検出が、臨床分野、環境分野、農業分野および生化学分野を含む広範囲の様々な分野で通常使用されている。現在、様々な技術が試料中の分析物分子の検出および定量のために利用可能であり、これらには、タンパク質を検出するための免疫アッセイ、核酸分子を検出するためのPCR法、およびより小さいオリゴヌクレオチドを検出するためのブロッティング技術が含まれる。
高感度で、かつ使用が簡便である、試料中の分析物分子を検出するための方法が求められている。短い核酸分子を容易かつ効率的に検出および/または定量することができるそのような方法が特に求められている。
発明の概要
1つの局面において、Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を形成するために、試料中の分析物分子をRu(PD)2Cl2により標識する工程;Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を試料から捕獲するために、捕獲分子が配置されている表面を有する作用電極と試料とを接触させる工程;レドックス基質の酸化または還元を可能にする条件下で、捕獲されているRu(PD)2Cl-分析物分子の錯体とレドックス基質とを接触させる工程;および、作用電極における電流を検出する工程を含む、試料中の分析物分子を検出する方法が提供される。
本発明の具体的な態様の下記の説明を添付の図面と併せて検討したとき、本発明の他の局面および特徴は当業者には明らかになる。
詳細な説明
本発明は、試料中の生物学的な分析物分子を検出するための電気化学的アッセイ方法に関する。本方法では、レドックス活性な電気触媒作用成分のRu(PD)2Cl2(式中、PDは1,10-フェナントロリン-5,6-ジオンを示す)を利用する。多くのルテニウム錯体が、タンパク質およびペプチドにおけるヒスチジン成分に存在するイミン官能基、ならびに核酸分子におけるプリン成分に存在するイミン官能基に、選択的に結合することができる。従って、本発明は、イミン官能基に結合し、かつ分析物分子の検出を可能にするためのレドックス媒介物として機能するためのRu(PD)2Cl2の使用に関する。
Ru(PD)2Cl2錯体は、周囲条件下では安定であるが、高い温度で配位子交換を受け、それによりペプチド分子、タンパク質分子、核酸分子または小分子とルテニウム中心の配位が可能になるか(ただしそのような分子がイミン官能基(例えば、ヒスチジン残基またはアデニン塩基またはグアニン塩基)を含有する条件で)、またはイミン官能基を含む分子を使用して、Ru(PD)2Cl2錯体を検出または認識することができるという事実を、本発明は活用する。イミン官能基とのRu(PD)2Cl2錯体の錯体形成には、加熱が要求されるので、イミン基を含有する分子はその必要な温度への加熱に耐えることができなければならないことが理解される。例えば、Ru(PD)2Cl2錯体をタンパク質と直接錯体形成する場合、そのようなタンパク質は、Ru(PD)2Cl2と錯体形成するために処理された場合に、変性して表面に非特異的に付着するような熱感受性であってはならない。
本方法は、分析物分子によるRu(PD)2Cl2錯体の会合に基づき、この会合は、ルテニウム中心によって触媒されるレドックス反応により生じる電流を検出することによって分析物分子の検出を可能にする。ルテニウム中心はレドックス基質の酸化または還元を触媒する;電流の流れを測定することができる検出器に回路を介して接続される作用電極とルテニウム中心との間を、電子が移動する。Ru(PD)2Cl2錯体の濃度が分析物分子の濃度に正比例するので、本方法は、溶液中の分析物分子の濃度の定量化を可能にするために標準化することができる。
Ru中心と作用電極との間での電子交換は、Ru中心の酸化状態をリセットすることで、多数回のレドックス反応および電子移動に関与するために利用可能にし、これは分析物分子の検出に関連するシグナルの増幅をもたらす。本方法のそのような特徴により、試料中の非常に少量の分析物分子を検出することが可能になる。
本方法の増幅特徴はまた、本方法を、試料中の小さいオリゴヌクレオチドを検出するために特に有用にする。オリゴヌクレオチドが短すぎる場合、そのようなオリゴヌクレオチドはプライマーがアニーリングするためのテンプレートとして作用することができないので、現在の増幅検出法(例えば、PCRなど)は短いオリゴヌクレオチドには適していない。本方法では、短いオリゴヌクレオチドを試料からの捕獲によって検出することを可能にし、かつ検出シグナルの増幅を組み合わせ、その結果、非常に低い濃度のオリゴヌクレオチドの検出を可能にする。例えば、長さが5ヌクレオチドほどの短いオリゴヌクレオチドを、本方法を使用して検出することができる。しかし、同定が短いヌクレオチド配列に基づく場合、交差反応性の危険性がより大きくなるので、オリゴヌクレオチドが長いほど、本方法の特異性が大きくなることが理解される。
本方法は、ミクロRNA分子を検出または定量するために特に適している。ミクロRNA(「miRNA」)は、非翻訳18ヌクレオチド〜25ヌクレオチドのRNAのファミリーを含む8。miRNA研究における近年の進歩は、miRNAが、細胞増殖から癌の進行までの広範囲の様々な生物学的機能を調節することを示している8、9。miRNAの発現分析は、その生理学的機能に対する手がかりを提供する可能性があると広く考えられている。従って、miRNAの発現分析のための確実かつ超高感度な方法が差し迫って求められている。
ノーザンブロットは現在、遺伝子発現の定量化およびmiRNAのサイズ決定を可能にすることから、成熟miRNAおよび前駆体miRNAの両方の発現分析において最も一般的に使用されている方法である10、11、12、13。しかしながら、ノーザンブロットは、限定された感度が欠点であり、かつ手間のかかる手順を伴っており、これによりノーザンブロットは日常的な核酸定量には扱いにくい方法となっている。
RT-PCRは、理論的には1つだけの核酸分子を数百万倍増幅することができ、従って、非常に小さい試料サイズおよび存在量が低い遺伝子については非常に有用である。残念なことに、miRNAの短い長さおよび特有性は、プライマーがそのような短いmiRNAテンプレートと結合することができないために、PCRに基づくツールを有効なものにしていない14、15。RT-PCRはmiRNA前駆体の検出に限定される16。miRNA前駆体はいくつかの利点をmiRNA転写物調節の研究にもたらすが、miRNA前駆体は、活性な成熟miRNAの正確な発現プロフィルを反映していない。ミクロRNA前駆体は、生物学的に活性な形態になる前にいくつかのプロセスを受けなければならず、miRNA前駆体のレベルを成熟miRNAと同等と見なすことは、誤った解釈をもたらし得る。従って、成熟miRNAを直接定量することがより望ましく、かつ信頼できる。
miRNAの極めて小さいサイズを考慮して、miRNA自体を直接標識することを用いる方法がより好都合である可能性がある。近年、Babakおよび共同研究者は、miRNAのための、シスプラチンに基づく化学的標識化手法を提案した17。miRNAは、miRNA内のG塩基との配位結合によってシスプラチン-蛍光体のコンジュゲートにより、直接標識された。3'末端における別の直接的な標識化手法が最近、Liangらによって開発され18、この手法では、miRNAは最初にビオチンによりタグ付加された。ハイブリダイズしたmiRNAに対する量子ドットを量子ドット-アビジンのコンジュゲートとの反応によって導入した後で、miRNAが156pM〜20nMのダイナミックレンジで蛍光検出された。Thomsonらは、miRNAの3'末端を蛍光団タグ付加リボジヌクレオチドにカップリングするために、T4 RNAリガーゼを使用した19。RNAリガーゼの不良な再現性および差のあるライゲーション効率は、データの品質を損なう可能性がある。とはいえ、直接的なライゲーション手法のほとんどはmiRNA発現分析のための十分な感度を提供していない。
感度をさらに高め、かつ検出限界をさらに低下させるために、化学的増幅スキームが本方法では用いられる。核酸の増幅された電気化学的検出の感度が、PCRに基づく蛍光アッセイの感度に匹敵し得ることが示されている20、21。しかしながら、多くの提案されている増幅された電気化学的スキームのなかで、ほんの少数の報告がRNA(具体的にはmRNA)の検出を取り扱っているだけである22、23。今日まで、電気化学的なmiRNAアッセイは何ら試みられていない。本方法は標識化手法を伴い、この標識化手法は、miRNAをレドックス活性および触媒作用性のRu(PD)2Cl2成分により直接標識するために、化学的ライゲーションを利用する。穏和な条件下での一段階の非酵素反応において、miRNAが総RNA混合物中で標識される。得られた標識miRNAは、ハイブリダイゼーション後、超高感度な検出を可能にする。化学的な増幅機構により、アッセイの感度が非常に高くなり、それにより、miRNAについての検出限界が約0.50pMに低下する。
本方法は迅速であり、超高感度であり、非放射性であり、かつ生物学的ライゲーションを必要とすることなく、分析物分子を直接検出することができる。Ru(PD)2Cl2を用いることによって、比較的穏和な条件下でレドックス成分および電気触媒作用成分により、分析物分子を直接標識することができる。特定のmiRNAの検出に適用された場合、これらの分子を高い特異性でサブピコモル濃度のレベルでアンペロメトリーによって検出することができる。
従って、本発明は、試料中の分析物分子を検出するための方法を提供する。本方法は、Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を形成するために、試料をRu(PD)2Cl2錯体により標識する工程を含む。Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を、作用電極の表面に配置された捕獲分子を有する作用電極と接触させることで、Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体の捕獲が可能になる。レドックス基質の酸化または還元を可能にする条件下で、レドックス基質を、捕獲されているRu(PD)2Cl-分析物分子の錯体と接触させる。その後、対向電極、バイアス供給源、および電流の流れを測定するためのデバイスとともに回路内にある作用電極で、電流の流れを検出する。
試料は、何らかの分析物分子が検出されることが所望される任意の試料であり、生体液、組織培養物または組織培養上清、調製された生化学的試料(例えば、調製されたRNA試料などの調製された核酸試料、または調製されたタンパク質試料が含まれる)、野外試料、細胞溶解物または細胞溶解物の画分を含む生体試料を含むことができる。
本明細書において使用される「ルテニウム中心」または「Ru中心」は、Ru2+イオンへレドックス反応で還元される場合も含めて、Ru(PD)2Cl2錯体についての金属配位中心を形成するRu3+イオンを示す。
分析物分子は、試料において検出されることが所望され、かつRu(PD)2Cl2錯体により直接的または間接的のいずれかで標識することができる、任意の分析物分子であり得る。分析物分子を直接標識する場合、分析物分子は、ルテニウム中心による配位のために接近可能であるイミン官能基を含有し、そのためルテニウム中心との配位が捕獲分子による分析物分子のその後の捕獲を妨害しない。
「官能基」は、特定の化学的特徴または反応性特徴を分子に与える分子内の原子または原子団を示すために、その通常の意味で本明細書において使用される。用語「イミン」または用語「イミン官能基」は、酸以外の二価基(例えば、炭素-窒素の二重結合)と一緒になった二価のNH基によって定義される分子内の化学基を示すために、その通常の意味で本明細書において使用される。
様々な態様において、分析物分子は、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA(これには、mRNAおよびミクロRNAが含まれる)、または小分子を含む。上記で言及したように、分析分子は、Ru(PD)2Cl2錯体と錯体形成した際に検出を可能にするような標識化条件下で、十分に安定でなければならない。従って、本方法は、熱感受性であり得る分子(例えば、Ru(PD)2Cl2錯体と錯体形成するために要求される温度まで加熱したときに変性し、それによって捕獲分子によって認識されない、および/または表面に非特異的に付着する可能性のある、特定のタンパク質)には適さない場合がある。特定の態様において、分析物分子はlet-7bミクロRNAである。
一つの態様において、分析物分子は、下記の配列:
Figure 2009517690
を含むRNA分子である。別の態様において、分析物分子は、SEQ ID NO:1の配列から本質的になるRNA分子である。別の態様において、分析物分子は、SEQ ID NO:1の配列からなるRNA分子である。
本明細書において使用される「から本質的になる」は、分子が、記載した以上のさらなる特徴または要素を有してもよいことを意味する。ただし、そのようなさらなる特徴または要素が、場合によっては、分析物分子または捕獲分子として機能することができるその分子の能力に実質的に影響を及ぼさないという条件である。すなわち、分子は、分析物分子および捕獲分子との間における結合相互作用を妨害しないさらなる特徴または要素を有することができる。例えば、指定された配列から本質的になるペプチドまたはタンパク質は、1個、2個、3個、4個、5個以上のさらなるアミノ酸を、そのようなさらなるアミノ酸が、ペプチドまたはタンパク質と、その標的分子(分析物分子または捕獲分子のいずれか)との間における結合を阻害、阻止、中断または妨害しない場合、配列の一方の端または両方の端に含有することができる。さらなる例において、指定されたヌクレオチド配列から本質的になる核酸分子は、1個、2個、3個、4個、5個以上のヌクレオチドを、核酸分子が依然としてその標的分析物分子または捕獲分子を認識し、かつその標的分析物分子または捕獲分子に結合することができる場合、指定された配列の一方の端または両方の端に含有することができる。同様に、そのような化学基の条件で、ペプチド分子、タンパク質分子、または核酸分子は、一つまたは複数の官能基により化学的に修飾することができる。
分析物分子は、捕獲分子によるその後の認識および捕獲を可能にするために、標識化の条件下で、十分に安定でなければならない。例えば、分析物分子を直接標識するタンパク質を含む場合、そのタンパク質は、捕獲分子による分析物分子の捕獲のために要求され得る何らかの構造的特徴を維持するために、標識化条件下で、十分に安定でなければならない。
そのうえ、捕獲分子によるその後の捕獲が、二本鎖核酸の一方の鎖の少なくとも一部分に対して相補的である配列による捕獲を伴う場合、分析物分子が二本鎖の核酸を含む試料は、標識化の前に、二本鎖核酸を融解するための十分な温度に加熱されなければならないことが理解される。
分析物分子は、分析物分子を試料からの単離を必要とすることなく、Ru(PD)2Cl2錯体により直接標識することができる。Ru(PD)2Cl2錯体は周囲条件下で安定であるが、多くの他の類似するルテニウム錯体の場合のように、高い温度で他の配位子との配位子交換を受ける。多くのルテニウム錯体は、生体分子内のイミン部位に選択的に結合する傾向があることが知られている27。例えば、ルテニウム錯体は、タンパク質上のヒスチジルイミダゾール窒素、およびプリンヌクレオチドのイミダゾール環上のN7部位との配位結合を、選択的に形成することができる28。核酸によるクロリドの置換は、シスプラチンの置換に類似していると考えられる22
従って、直接標識する場合、一つまたは複数のイミン官能基を有する分析物分子を含有する試料を、Ru(PD)2Cl2錯体と接触させ、その後、分析物分子内のイミン官能基と、Ru(PD)2Cl2錯体からのCl-イオンとの配位子交換を促進させるのに十分な時間加熱することで、Ru(PD)2Cl/分析物分子の錯体が形成される。例えば、試料を、約30分間〜約90分間、約70℃〜約90℃の温度まで加熱することができる。
あるいは、分析物分子がイミン官能基を含有しない場合、分析物分子は標識化分子の使用によって間接的に標識することができる。イミン官能基を含有する分析物分子について上記で記載されたのと同じ様式で、ルテニウム中心との配位結合を形成することができるように、標識化分子は一つまたは複数のイミン官能基を含有する。そのうえ、標識化分子は、分析物分子に対する親和性が、試料に存在し得る他の分子に対する親和性よりも大きいので、試料内の分析物分子を認識し、その分析物分子と結合する。標識化分子は、作用電極に配置された捕獲分子による分析物分子の捕獲を妨害しないような様式で、分析物分子に結合しなければならないことが理解される。
標識化分子は、タンパク質、ペプチド、リガンド、抗体、核酸と結合するタンパク質もしくはタンパク質ドメインもしくはオリゴヌクレオチド、またはイミン官能基を含有する小分子を含むことができる。
試料の体積が十分に大きい場合、Ru(PD)2Cl2錯体を試料に直接加えることができる。あるいは、Ru(PD)2Cl2錯体および分析物分子の両方が安定である好適な緩衝液中で、Ru(PD)2Cl2錯体および試料のそのような緩衝液中での混合により、標識化を行うことができる。例示的な態様において、緩衝液は塩を約1mM〜約2Mの濃度で含有してもよく、約4〜約11のpHを有してもよい。選択された正確な緩衝液は、試料の性質、ならびに分析物分子および/または捕獲分子の性質に依存する。
分析物分子または標識化分子が1つより多いイミン官能基を含有する場合、例えば、多数のプリン塩基を含む核酸分子の場合、必ずしもすべてのイミン官能基がRu(PD)2Cl2錯体により標識される必要はない。生じる標識化の密度は、部分的には、標識される分子におけるイミン官能基の分布および配置に依存する。例えば、ミクロRNAは、場合により、より高密度の標識化が生じることを妨げる立体的障害のために、約30%のイミン基が標識されるという効率で標識され得る。しかしながら、所与の分子は、Ru(PD)2Cl2錯体の一貫した密度により標識される傾向を有することが見出されており、このことから、本方法を使用して標準化および定量化が可能である。
そのうえ、Ru(PD)2Cl2錯体は、両方のRu-Clの配位結合との配位子交換を受けないようである。このことは、2つの分析物分子もしくは標識化分子との間での架橋、または、同じ分析物分子内もしくは標識化分子内での架橋が観察される傾向がないことを意味する。つまりこのことは、おそらく同じRu中心による2つのイミン官能基の配位を妨げる立体的制約に起因する。
試料中の分析物分子を標識した時点で、試料を、捕獲分子が配置される作用電極と接触させる。捕獲分子は、分析物分子を認識し、その分析物分子に特異的に結合する分子である。「特異的に結合する」または「特異的な結合」は、捕獲分子が可逆的かつ測定可能な様式で分析物分子に結合し、かつ試料中の他の分子に対するよりも分析物分子に対する大きい親和性を有することを意味する。捕獲分子は、Ru(PD)2Cl2/分析物分子の錯体を形成するために、直接的または間接的のいずれでも、分析物分子が標識されているときでさえ分析物分子を認識し、かつ分析物分子に結合しなければならない。
捕獲分子には、タンパク質、ペプチド、核酸(これには、DNA、RNAおよびオリゴヌクレオチドが含まれる)、リガンド、受容体、抗体、または小分子を含まれてもよい。一つの態様において、捕獲分子は、一本鎖核酸の分析物分子の配列に対する相補的な配列を有する一本鎖のオリゴヌクレオチドである。一つの態様において、捕獲分子は、試料内で検出されるミクロRNAの配列に相補的な配列を有する一本鎖のオリゴヌクレオチドである。特定の態様において、捕獲分子は、let-7bミクロRNAの配列に相補的である配列を含む一本鎖のオリゴヌクレオチドである。一つの態様において、捕獲分子は、下記の配列:
Figure 2009517690
を含む。別の態様において、捕獲分子はSEQ ID NO:2の配列から本質的になる。別の態様において、捕獲分子はSEQ ID NO:2の配列からなる。
捕獲分子は作用電極の表面に配置される。このことは、捕獲分子が、作用電極表面を覆うか、または作用電極表面に固定化されるか、またはそうでない場合には、作用電極表面に塗布されることを意味する。配置は、捕獲分子と作用電極表面との間の静電的相互作用、疎水的相互作用、共有結合性相互作用、または他の化学的もしくは物理的な相互作用を伴うことができる。例えば、捕獲分子を電極に化学的にカップリングすることができる。あるいは、捕獲分子は、例えば、自己集合によって、電極の表面に単分子層を形成することができる。
捕獲分子は、捕獲分子が分析物分子を容易に認識し、かつ分析物分子と結合することができるような密度で、作用電極表面に配置されなければならない。例えば、捕獲分子がオリゴヌクレオチドである場合、捕獲分子は、約6.0×10-12mol/cm2以上の密度で、または約8.5×10-12mol/cm2以下の密度で、または約6.0×10-12mol/cm2〜約8.5×10-12mol/cm2の密度で、作用電極表面に配置することができる。
用語「作用電極」は、捕獲分子が配置される電極を示し、この電極が、レドックス反応時にRu中心との電子移動に関与する電極であることを意味する。作用電極は任意の電気伝導性材料から構成され得る。そのような電気伝導性材料には、カーボンペースト、炭素繊維、グラファイト、グラッシーカーボン、電極として一般に使用される任意の金属(例えば、金、銀、銅、白金またはパラジウムなど)、金属酸化物(例えば、インジウムスズ酸化物など)、または導電性ポリマー物質(例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)またはポリアニリン)が含まれる。
捕獲分子が分析物分子を認識し、その分析物分子と結合するために十分な条件および期間、試料を作用電極の表面における捕獲分子と接触させる。例えば、捕獲分子が、一本鎖の核酸を溶液から捕獲するための一本鎖のオリゴヌクレオチドである場合、試料を好適なハイブリダイゼーション緩衝液と一緒に作用電極表面に加え、かつ相補的なオリゴヌクレオチド捕獲分子による分析物のミクロRNA分子の認識および結合を可能にするための穏和〜ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、十分な時間にわたり、試料を捕獲分子とインキュベートする。
例えば、試料を、0.15MのNaClおよび20mMのNaClからなるリン酸塩緩衝化生理的食塩水(pH8.0)を含有するハイブリダイゼーション緩衝液中で、約30℃の温度で約60分間、捕獲プローブとインキュベートしてもよい。
Ru(PD)2Cl2/分析物分子の錯体が、捕獲分子によって作用電極の表面に捕獲されれば、過剰な試料またはハイブリダイゼーション緩衝液を除くために、任意で作用電極を、例えば好適な緩衝液により、3回〜5回すすぎ洗浄してもよい。すすぎ洗浄緩衝液は、捕獲分子と分析物分子との間の相互作用を妨害しないように、または乱さないように、適切なpHおよび緩衝液および塩濃度でなければならない。
Ru(PD)2Cl2/分析物分子の錯体が捕獲分子によって捕獲された後、Ru中心によるレドックス基質の酸化または還元のために好適な緩衝液および条件下で、レドックス基質が作用電極表面に加えられる。レドックス基質は、Ru中心によって酸化または還元され得る分子である。レドックス基質がRu中心によって酸化される場合、レドックス基質は、Ru中心よりも正でないレドックス電位を有する。同様に、レドックス基質がRu中心によって還元される場合、レドックス基質は、Ru中心よりも正であるレドックス電位を有する。
従ってレドックス基質は、レドックス反応においてRu中心によって酸化または還元できる任意の分子であり得る。特定の態様において、レドックス基質はヒドラジンである。別の特定の態様において、レドックス基質はアスコルビン酸である。
理解されるように、作用電極は電気化学的セルの一部を形成する。電気化学的セルは典型的には作用電極および対向電極を含む。2電極システムの場合、対向電極は参照電極として機能する。3電極システムでは、電気化学的セルはさらに、別の参照電極を含む。
様々な態様において、参照電極は、Ag/AgCl電極、水素電極、カロメル電極、水銀/酸化水銀電極、または水銀/硫酸水銀電極であり得る。
電気化学的セル内の電極は、回路内でバイアス供給源に接続され、それによって電位が系に提供される。そのうえ、電流を測定するためのデバイス(例えば、電流計など)が直列に接続される。電極は、酸化または還元されるレドックス基質だけでなく、溶液における電荷蓄積を電極のそれぞれで中和するための支持電解質を含有する溶液と接触している。レドックス反応を開始させるために、電位差がバイアス供給源によって加えられる。電流は、対向電極と作用電極との間を流れることができ、これが参照電極に対して測定される。
典型的には、加えられた電位差は、酸化または還元されている分析物に依存して、Ru中心のレドックス電位よりも正側に少なくとも50mVであるか、またはRu中心のレドックス電位よりも負側に少なくとも50mVである。
Ru中心によって触媒された電子移動の結果として生じた電流は、Ru中心の濃度に正比例し、従って、捕獲されている分析物分子の濃度に正比例し、このことにより、分析物分子の濃度を定量することが可能になる。作用電極を流れる電流は、捕獲されている分析物分子に特異的に関連するRu中心に由来する。当業者は、検出された電流のレベルを分析物分子の所与の濃度の検出と相関させるために、特定の分析物分子の既知濃度を用いて、本明細書において示す実施例に記載するように、標準曲線を達成する方法を理解している。このようにして、本方法は、試料中の分析物分子のレベルを定量するために使用することができる。
レドックス基質(例えば、ヒドラジン)が本方法では過剰に存在するので、レドックス基質分子との相互作用により、特定のRu中心が還元または酸化されると、そのRu中心を電極との電子交換によって酸化または還元することができる。これにより、そのRu中心がリセットされ、そのRu中心が、別のレドックス基質分子との続くレドックス反応のために利用可能になる。
従って、本方法は高感度であり、試料中の非常に少量の分析物分子を検出することができる。例えば、試料中のミクロRNAを検出するために、本方法は約1.0pM〜約300pMの検出範囲を有する可能性があり、検出下限が2.5μlの体積において約0.5pMである。このことは、約1.0アトモルもの少ないミクロRNAが、本方法を使用して検出され得ること、およびミクロRNAを検出するための試料として、総RNA調製物の約50ngのみが要求され得ることを意味する。
上記工程のそれぞれについて、当技術分野において公知であるように、液体セル(フローセルであってよい)を使用して、または手作業もしくは自動化システムの使用のいずれかで作用電極の表面に直接分注することによって、適切な溶液を作用電極の表面に加えることができる。液体セルは、フロースルー液体セルまたはスタンドスチル(stand-still)液体セルのいずれかを形成することができる。
電極の小型化を可能にする電極技術の結果、小さい体積、例えば1μlもの小さい体積で行うように、上記の方法を設計することができる。非常に低い検出限界との組み合せにおいて、これは本方法を、試料中の分析物分子を検出するための非常に高感度な方法にし、このような方法は、疾患の診断および処置、環境モニターリング、法医学的適用および分子生物学的研究適用を含めて、ポイント・オブ・ケア(point-of-care)適用および野外適用における使用に適用可能である。
本方法は、非常に多数の試料の容易な取り扱いおよびハイスループットプロセシングに十分に適する。この電気化学的なmiRNAアッセイは、50個〜100個の作用電極の低密度アレイ形式に容易に拡張可能である。低密度の電気化学的バイオセンサーアレイの利点には、(i)光学的なバイオセンサーアレイよりも費用効果的であること;(ii)電気触媒作用とカップリングされた場合、超高感度であること;(iii)濁っていても迅速、直接的であり、かつ光吸収に対して抵抗性であること;ならびに(iv)野外検査および在宅医療使用に好適な、携帯可能で、丈夫で、低コストで、かつ取り扱いが容易な電気的成分であることが含まれる。
従って、試料の大量処理を助けるために、作用電極は電極アレイで使用してもよい。上記で記載するようなハイスループット検出方法での使用のために、多数の作用電極をアレイにしてもよい。アレイにおけるそれぞれの作用電極が、多数の異なる分析物分子を同時に検出するために、異なる捕獲分子を含むことができる。あるいは、アレイにおけるそれぞれの作用電極は、同じ分析物分子について多数の異なる試料をスクリーニングするのに用いるために、同じ捕獲分子を含んでもよい。
各作用電極の各表面に、同じまたは異なる試料を容易に加えるために、それぞれの作用電極を離れた区画に存在させてもよい。あるいは、それぞれの作用電極を、1つのバルク溶液に接触するようにアレイにしてもよい。流体および試料をそれぞれの作用電極に加えるため、ならびに流体および試料を除くために、自動化されたシステムを使用してもよい。
試料に含まれる特定の分析物分子を検出するための異なる捕獲分子を、各作用電極に配置してもよい。その後、1つの試料に含まれる多数の分析物分子を一度に検出するように、各作用電極を同じ試料と接触させてもよい。
あるいは、それぞれ個々の作用電極が、その表面に配置された同じ捕獲分子を有するように、多数の作用電極をアレイで配置してもよい。その後、異なる試料をそれぞれ個々の作用電極と接触させてもよい。このようにして、非常に多数の試料を、特定の分析物分子についてスクリーニングすることができる。
実施例
材料:
別途言及されない限り、試薬をSigma-Aldrich(St Louis、MO)から得て、さらに精製することなく使用した。Ru(PD)2Cl2を文献の手順に従ってRuCl3から合成した24。リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS、pH8.0)は0.15MのNaClおよび20mMのリン酸塩緩衝液からなり、これを洗浄および電気化学的測定のために使用した。miRNAの安定性に対するRNaseの影響を最小限に抑えるために、すべての溶液をジエチルピロカルボナートで処理し、表面をRNASEZAP(商標)(Ambion、TX)により除染した。3つのヒトmiRNA、すなわち、let-7b、mir-92およびmir-32025を、本発明者らの標的miRNAとして選択した。本研究で使用されたアルデヒド修飾オリゴヌクレオチド捕獲プローブはInvitorogen Corporation(Carlsbad、CA)によって特注製造され、PCR純度のすべての他のオリゴヌクレオチドはProligo(Boulder、CO)によって特注製造された。インジウムスズ酸化物(ITO)被覆されたガラススライドをDelta Technologies Limited(Stillwater、MN)から得た。
装置:
電気化学的実験を、CH Instrumentsモデル660A電気化学的ワークステーション(CH Instruments、Austin、TX)を使用して行った。ITO作用電極と、ノンリークAg/AgCl(3.0M NaCl)参照電極(Cypress Systems、Lawrence、KS)と、白金線対向電極とからなる従来型の3電極システムをすべての電気化学的測定において使用した。本研究で報告されたすべての電位はAg/AgCl電極を参照した。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)実験を、Finnigan/MAT LCQ質量分析計(ThermoFinnigan,San Jose,CA)を用いて行った。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を、Elan DRC II ICP-MS分光計(PerkinElmer,Wellesley,MA)を用いて行った。UV-VisスペクトルをV-570 UV/VIS/NIR分光光度計(JASCO Corp.,日本)で記録した。すべての実験を、別途言及されない限り、室温で行った。
総RNA抽出および標識化:
ヒトHeLa-60細胞からの総RNAを、TRIzol試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA)を製造者の推奨プロトコルに従って使用して抽出した。総RNA中のミクロRNAを、MontageスピンカラムYM-50カラム(Millipore Corporation)を使用して濃縮した。RNA濃度をUV-Vis分光光度法によって求めた。典型的には、1.0μgの総RNAを標識化反応のそれぞれで使用した。0.10MのpH6.0の酢酸緩衝液における0.25mMのRu(PD)2Cl2の20μlを5.0μlの総RNA溶液に加えた。混合物を80℃で30分間〜40分間インキュベートし、氷上で冷却した。標識されたRNAを、5.0μlの3.0M KClを加えた後、-20℃で保存した。
電極調製、ハイブリダイゼーションおよび検出:
ITO電極の前処理、シラン化およびオリゴヌクレオチド捕獲プローブ固定化を以前に記載されたように行った26。固定化された捕獲プローブの表面密度は6.0〜8.5×10-12mol/cm2であった。miRNAアッセイを下記のように行った。最初に、電極を、30℃で維持された水分飽和環境チャンバーに入れた。2.5μlアリコートのハイブリダイゼーション溶液(所望量の標識されたmiRNAを含有する)を電極上に一様に広げ、その後、電極を、60分のハイブリダイゼーション期間の後、30℃でブランクハイブリダイゼーション溶液により徹底的にすすぎ洗浄した。ヒドラジンの電気酸化電流を、5.0mMのヒドラジンを含有する激しく撹拌されたPBSにおいてアンペロメトリーにより測定した。低いmiRNA濃度では、スムージンングを、ランダムなノイズおよび電磁干渉を除くためにそれぞれのアンペロメトリー測定の後で加えた。
図の説明:
図1
Ru(PD)2Cl2処理されたヌクレオチドの質量スペクトル(実線)および計算された同位体分布パターン(点線)。
図2
オリゴヌクレオチドのゲル電気泳動。処理されていない(1)ポリ(A)30およびポリ(U)30、ならびに(2)ポリ(G)30およびポリ(C)30;Ru(PD)2Cl2と室温で30分間インキュベートされた(3)ポリ(A)30およびポリ(U)30、ならびに(4)ポリ(G)30およびポリ(C)30;Ru(PD)2Cl2と80℃で30分間インキュベートされ、それらの処理されていない相補的なオリゴヌクレオチドとそれぞれハイブリダイズされた(5)ポリ(A)30、(6)ポリ(U)30、(7)ポリ(G)30および(8)ポリ(C)30
図3
(1)3.3μMのポリ(A)30のUV-Visスペクトル、(2)100μMのRu(PD)2Cl2のUV-Visスペクトル、および(3)100μMのRu(PD)2Cl2で処理された3.3μMのポリ(A)30のUV-Visスペクトル。
図4
let-7bに相補的な電極における、(1)50nMのlet-7bで処理されたRu(PD)2Cl2のボルタンモグラム、(2)10nMのlet-7bで処理されたRu(PD)2Cl2のボルタンモグラム、および(3)50nMのmir-92で処理されたRu(PD)2Cl2のボルタンモグラム。支持電解質がPBS緩衝液であり、電位掃引速度が100mV/sであった。
図5
(A)(1)捕獲プローブ被覆電極における、その相補的な50nM let-7bへのハイブリダイゼーション前(1)およびハイブリダイゼーション後(3)における0.10mMヒドラジン溶液のサイクリックボルタンモグラム、ならびに(2)ブランクPBSにおけるハイブリダイズした電極のサイクリックボルタンモグラム。(B)(1)ブランクITO電極における1.0mMヒドラジンのサイクリックボルタンモグラム、および(2)0.10mMのRu(PD)2Cl2の存在下における1.0mMヒドラジンのサイクリックボルタンモグラム、および(3)ブランクITO電極におけるRu(PD)2Cl2のサイクリックボルタンモグラム。支持電解質がPBSであり、電位掃引速度が100mV/sであった。
図6
(A)let-7bに相補的な捕獲プローブ被覆電極にハイブリダイズした(1)25pMのlet-7bのアンペロメトリー曲線、(2)25pMのlet-7cのアンペロメトリー曲線、および(3) 25pMのmir-92のアンペロメトリー曲線。(B)(1)mir-92についての検量線、(2)let-7bについての検量線、および(3)mir-320についての検量線。
結果:
miRNAをRu(PD)2Cl2により直接標識することの実現可能性:
ヌクレオチド-Ru(PD)2Cl2付加物の形成の直接的な証拠は質量分析であると考えられる。従って、本発明者らは最初に、Ru(PD)2Cl2処理のヌクレオチド(最も単純なRNAモデル化合物)に対する一連の質量分析試験を行った。イオン化プロセスが穏和であるので、ESI-MSを、Ru(PD)2Cl2およびヌクレオチドの間における化学を特徴づけるために使用した。図1に示すように、試験された4つのヌクレオチドの中で、グアノシン5'-一リン酸(GMP)およびアデノシン5'-一リン酸(AMP)のみが868および884のm/zでの新しいイオンクラスターをもたらし、これらのイオンクラスターを、本発明者らは、付加物の実験での同位体分布パターンおよび計算による同位体分布パターンにおける優れた一致ならびに付加物の分子量(図1)に基づいて、[GMP-Ru(PD)2]+および[AMP-Ru(PD)2]+としてそれぞれ帰属した。
ESI-MS試験では、AMPおよびGMPのみがRu(PD)2Cl2におけるクロリドとの配位子交換を容易に受けることが示唆された。そのうえ、二重に交換されたRu(PD)2Cl2-ヌクレオチド付加物の分子クラスターは80℃での長期間のインキュベーションの後でさえ認められなかった。このことは、Ru(PD)2Cl2が、2つのcis配位している不安定なクロリド配位子を有するとしても、この実験条件下ではモノ置換のみを受けることを示している。二重の配位子交換ができないことは、類似するルテニウム錯体において以前に認められたように29、1つより多いプリン塩基が結合することを妨げるRu(PD)2Cl+の立体的制約のためであることが最も考えられる。立体的により大きく妨げられる6配位の八面体ルテニウム錯体との二重の配位子交換は、正方形平面型の白金錯体(例えば、シスプラチンなど)の場合よりも明らかにはるかに困難である22。しかしながら、モノ置換は、miRNAアッセイのための化学的ライゲーション手法を開発することにおける望ましい特徴である。モノ置換では、ライゲーションプロセスを上回る優れた制御がもたらされ、かつmiRNA分子間の何らかの可能な「架橋」(分子間架橋)、および同じmiRNA分子のプリン塩基の間での何らかの可能な「架橋」(分子内架橋)が妨げられる。分子間架橋はハイブリダイゼーション効率に影響し、分子内架橋は、「ループ」をmiRNA鎖において生じさせることによってmiRNA配列を変化させることが予想される。
上記で議論されたように、質量分析データは、Ru(PD)2Cl2が穏和な条件下での配位子交換によりヌクレオチドにグラフト化し得ることを明瞭に示していた。しかしながら、Ru(PD)2Cl2をオリゴヌクレオチド上に導入することはハイブリダイゼーション効率に大きな影響を及ぼす可能性がある。標識されたオリゴヌクレオチドがその生物学的一体性を保持することを保証するために、一連のゲル電気泳動試験をRu(PD)2Cl2処理後のオリゴヌクレオチドに対して行った。図2においてレーン1〜レーン4に例示されるように、違いが、未処理のオリゴヌクレオチドと、室温でのRu(PD)2Cl2との長期間のインキュベーションによって処理されたオリゴヌクレオチドとの間にはほとんど認められなかった。このことは、配位子交換が室温では起こっておらず、かつRu(PD)2Cl2はオリゴヌクレオチドの電気泳動移動度に対する影響をほとんど有しないことを意味する。他方で、明瞭な変化が、80℃におけるRu(PD)2Cl2との30分のインキュベーションの後で、4つのオリゴヌクレオチドの中で得られた。処理されたポリ(A)30およびポリ(G)30の電気泳動移動度はポリ(U)30およびポリ(C)30よりも遅い(レーン5〜レーン8)。このことは、さらなる質量および/または正電荷がこれらのオリゴヌクレオチドに付加されていることを示唆する;ゲル電気泳動により、Ru(PD)2Cl2がポリ(A)30およびポリ(G)30に首尾良くグラフト化することが確認された。
より重要なことに、オリゴヌクレオチド上におけるRu(PD)2Cl+標識の存在は、ハイブリダイゼーション効率に対する障害をほとんどもたらしておらず、このことから、超高感度なmiRNAアッセイの開発への道が開かれる。
同一実験条件下で、違いが、Ru(PD)2Cl2標識されたポリ(A)30およびポリ(G)30の間にはほとんど認められなかった。このことは、ポリ(A)30およびポリ(G)30におけるプリン塩基が80℃において等しく反応性であることを示している。より低い温度および/または短い反応時間では、ポリ(G)30がポリ(A)30よりもわずかに反応性であり、これは、わずかに遅くなった移動によって反映される。対照的に、ポリ(U)30およびポリ(C)30はそれらの未処理の対応物との違いをほとんど示さなかった(レーン6&レーン8)。このことは、Ru(PD)2Cl2がこれらのオリゴヌクレオチドに結合しなかったことを意味する。
ICP-MSを使用した定量的分析では、オリゴヌクレオチド内のG塩基およびA塩基の28%〜32%が首尾良く標識されたことが示された。その後の実験により、この標識化効率は超高感度なmiRNAアッセイのために十分であることが示された。上記のデータから、Ru(PD)2Cl2は、約30%の効率で、miRNA配列内にG塩基およびA塩基を有するmiRNAを優先的に標識するので、標識化効率がmiRNA配列依存的であることが明らかである。
図3は、ポリ(A)を例として使用して、出発物質および標識されたオリゴヌクレオチドのUV-Vis吸収スペクトルを例示する。標識化前のヌクレオチドのスペクトルは260nm付近での複素環オリゴヌクレオチドの典型的な遷移を示す(図3、曲線1)。Ru(PD)2Cl2のスペクトルは、程度の差はあるが、Ru-PD錯体についてのスペクトルに特徴的である24。Ru(PD)2Cl2のスペクトルは、配位子に局在化したπ-π*遷移に起因するUV領域における2つの強いバンドを示した。同じ遷移が遊離のPDにおいて見出される24。330nm〜400nmおよび430nm〜600nmの領域における2つの広いバンドは、スピン許容のRu(dπ)→PD(π*)の、金属から配位子への電荷移動(MLCT)遷移に起因する(図3、曲線2)。標識されたオリゴヌクレオチドのスペクトルは、430nm〜600nmの領域における約15nmのいくらかの赤方偏移を伴う、ヌクレオチドおよびRu(PD)2Cl2の重なりとして現れた(図3、曲線3)。これは、配位子交換の直接の結果である可能性が高い。プリン塩基は共役しており、このために、錯体のクロリドと比較して、この配位子についてはより低いπ*レベルが生じている。再度ではあるが、このことから、Ru(PD)2Cl2-ポリ(A)付加物の形成が確認される。
次に、熱融解を、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの安定性を評価するために20℃〜70℃の間で行った。相補的なヌクレオチド鎖の混合物を最初に70℃に加熱し、その後、室温にゆっくり冷却した。オリゴヌクレオチドにおけるRu(PD)2Cl+の存在は、その標識されてない対応物と比較したとき、二重鎖をわずかに脱安定化させることが見出された(ポリ(G)30についてはΔTm=-1.0℃、ポリ(A)30についてはΔTm=-2℃)。いくつかの要因が、標識されたオリゴヌクレオチドのわずかに低下した安定性におそらくは寄与している可能性がある。そのような要因には、静電的相互作用、立体的障害および溶媒和が含まれる。カチオン性Ru(PD)2Cl+の導入は、2つの鎖の間における正味の静電的反発を低下させることによって二重鎖を安定化することが予想される;主溝における嵩高い標識および芳香族配位子の存在は、水分子および結合した小さいカチオンを反発することによって二重鎖の安定性を低下させる可能性がある。熱融解実験から、脱安定化影響のほとんどが静電的相互作用によって補償されることが明らかである。
ハイブリダイゼーションおよびmiRNA検出の実現可能性研究:
電気触媒作用性の標識を用いた核酸アッセイが以前から報告されている30、31。そのような標識は、非常に高まった分析シグナルを、ハイブリダイズしていない電極と比較して、ハイブリダイズした電極に与える。アンペロメトリー電流における差が定量目的のために使用される。類似した様式で、Ru(PD)2Cl+を、超高感度なmiRNAアッセイにおける可能な適用のための新規な電気触媒作用性の標識として評価した。
最初のハイブリダイゼーション試験では、let-7bに相補的な捕獲プローブにより被覆された電極を、let-7bおよびmir-92(非相補的、対照)を分析するために使用した。ハイブリダイズしたとき、相補的なlet-7bが捕獲プローブに選択的に結合し、電極表面に固定された。それに反して、非相補的なmir-92は、捕獲されたとしても、ほんのわずかしか、ハイブリダイゼーション時に捕獲されず、従って、電極の微小なボルタンメトリー応答が予想された。中性のRu(PD)2Cl2と、電極表面のオリゴヌクレオチドとの間には相互作用がほとんどないので、0.10mMのアスコルビン酸を含有するNaCl飽和のリン酸塩緩衝液(pH6.0)による徹底的な洗浄により、標識化溶液からのmiRNA非関連のRu(PD)2Cl2取り込みのほとんどが除かれたことが見出された。let-7bおよびmir-92に対するハイブリダイゼーションの後における電極についてのサイクリックボルタンモグラムが図4に示される。明白なボルタンメトリー活性がmir-92に対するハイブリダイゼーションの後では全く認められなかった(図5、曲線1)。このことは、mir-92のハイブリダイゼーション非関連の取り込みがほとんどないことを示している。
図5において曲線2および曲線3に示されるように、種々の量のlet-7b miRNAに対するハイブリダイゼーションの後において、2対のボルタンメトリーピークが認められ、ピーク電流が溶液中のlet-7bの濃度に正比例している。-0.10V付近の電流ピークは、配位したPD配位子のレドックスプロセスに起因し、0.40Vにおける電流ピークは金属中心のレドックスプロセスに起因する24。これらの結果から、標識されたmiRNAが、交差ハイブリダイゼーションをほとんど伴うことなく、電極表面のその相補的な捕獲プローブと選択的にハイブリダイズすることが明瞭に明らかにされた。
結果として、Ru(PD)2Cl+をmiRNAの直接的な検出のためのレドックス活性な指示体として使用することが評価された。2.0nMの検出限界および500nMまでのダイナミックレンジが得られた。ダイナミックレンジの上端側でのハイブリダイゼーション効率を、miRNAにおけるRu(PD)2Cl2標識を使用して電気化学的に評価した。観測された電流を生じさせるRu(PD)2Cl+分子の数を、最初の酸化電流ピークの下での電荷から推定した。4個の電子が1つの標識あたり移動するので、相補的な標的miRNAの500nMに対するハイブリダイゼーションの後における0.49μAの観測された電流は、従って、1.9pmolの活性な標識されたRu(PD)2Cl+から生じた。Ru(PD)2Cl+/RNA塩基対の比率が約1/3であることを仮定すると、ハイブリダイゼーション効率は約18%であることが見出された。この値は試料液滴における標的miRNAの約20%に対応し、文献に見出される値に匹敵する21、30、32
2番目の試験では、ハイブリダイゼーションの前後における電極を、0.10mMのヒドラジンを含有するPBSにおいてボルタンメトリーおよびアンペロメトリーによって評価した。図5Aは、ハイブリダイゼーション前の電極におけるヒドラジンのサイクリックボルタンモグラム(図5A、曲線1)、およびハイブリダイゼーション後の電極におけるヒドラジンのサイクリックボルタンモグラム(図5A、曲線3)を示す。比較のために、ブランクPBSにおけるハイブリダイズした電極のボルタンモグラムもまた示される(図5A、曲線2)。
両方の電極はヒドラジンについての全体的に不可逆的な酸化プロセスを示した。ハイブリダイゼーションの前では、主として、酸化過電圧、ならびにMDおよびアニオン性オリゴヌクレオチド捕獲プローブの存在のために、ヒドラジンの酸化についてのアノードピーク電位(Ep)が0.80Vを越えている。それらはともに、下に存在する電極と、ヒドラジンとの間における電子交換を実質的に妨げる。Ru(PD)2Clの存在はヒドラジンの酸化過電圧を大きく低下させ、これにより、Ep値を-0.050Vにまで負側に850mVも大きく変化させたことを認めることができる。
高まった電流が実際にRu(PD)2Clの真の触媒的作用に由来することを保証するために、ボルタンメトリー試験を均一なRu(PD)2Cl2溶液において行った。Ru(PD)2Cl2の0.10mM溶液においてブランクITO電極により記録されたサイクリックボルタンモグラムが図5Bに示される。このボルタンモグラムのいくつかの様相が注目される。最初の酸化ピークが、主にRu(PD)2Cl2の強い吸着(これは、Ansonによって以前に研究された現象である33)のために、他のピークよりもはるかに大きく、かつ鋭い。錯体内のPD配位子の還元によって生じる、-0.10Vにおけるカソードピークは、4個の電子が、それぞれのルテニウム中心に配位した2つのPD配位子の還元に関与するので、Ru(III)/Ru(II)プロセスについてのピーク(約0.30V)よりもはるかに大きい。2つの分離したピークの代わりに、1つだけのカソードピークは、錯体内の2つのPD配位子がほぼ等しく金属中心と相互作用すること、および錯体内の2つのPD配位子は、それらのレドックス電位を実質的に変化させて、その結果、これら2つのPD配位子が、PDの2つの同時2電子還元からなる1つの4電子工程で還元されるように、互いに十分に相互作用しないことを示唆する。理論的には、カソードピーク電流は、Ru(II)からRu(III)への1電子酸化についてのピーク電流の、23/2×2=5.6倍大きいことが予想される34。ピーク電流の実際の比率は理論的値から大きく外れておらず、しかし、厳密な一致は、吸着/脱着プロセスによって引き起こされる複雑さのために予想されない33
ヒドラジンの直接的な酸化は非常に大きい過電圧を欠点として有することが広く報告される。その酸化電位についての報告された値は0.40Vから1.0Vに及ぶ。Ru(PD)2Cl2の存在下、図5Bの曲線3に示されるヒドラジンのボルタンモグラムが得られた。PDのレドックス電位の近くにおける電位での電流が劇的に増大するので、金属錯体による非常に強い触媒的作用が存在することが直ちに明らかである。このことは、錯体がヒドラジンの酸化によって回転中であることを示している。ピーク電流における増大およびアノード過電圧における低下により、ヒドラジンの効率的な電気触媒作用が明らかにされた。過電圧における変化は速度論的影響のためであり、従って、ヒドラジンから電極への電子移動の速度を大きく増大させる。これは、電子移動プロセスの可逆性における改善に起因すると考えられる。電流が、ヒドラジンの濃度を増大させたときに増大するという事実は、電気触媒作用的効果が非常に効率的であり、プロセス全体が電極表面へのヒドラジンの拡散によってもっぱら制御されることを示唆する。
上記のボルタンメトリー研究に基づいて、より良好な分析的特徴がアンペロメトリーにおいて達成され得る可能性が非常に高いと考えられる。特に有望であると思われる電気触媒作用の特徴は、ヒドラジンの酸化が生じる電位が極めて低いことである。著しくより低い操作電位におけるアンペロメトリー検出は、潜在的な妨害物を最小限に抑え、かつバックグラウンドシグナルを低下させ、これらにより、改善されたシグナル/ノイズ比およびより低い検出限界をもたらす。図6において明らかにされるように、5.0mMのヒドラジンをPBSに加えたとき、アンペロメトリーにおける酸化電流が、相補的な標的miRNAの25pMにハイブリダイズした電極において0.10Vで195nAに増大し(図6A、曲線1)、これに対して、標識されていないmiRNAとハイブリダイズした電極は、バックグラウンドノイズから事実上識別することができない酸化電流を与えた。そのうえ、非相補的な標的miRNAが使用された対照実験では、主として、Ru(PD)2Cl2の残存するハイブリダイゼーション非関連の取り込みのために、ヒドラジンの酸化電流におけるわずかに3.2nAの増大が観測されただけであった(図6A、曲線3)。
標的miRNAを検出するためのアッセイの特異性を、let-7bに相補的な捕獲プローブで被覆された電極を用いてlet-7bおよびlet-7cを分析することによってさらに評価した。let-7bおよびlet-7cの間には、22個のヌクレオチドにおいてわずかに1ヌクレオチドの違い(G⇔A)が存在するだけである。すなわち、let-7bについての捕獲プローブは、let-7cについて1塩基のミスマッチが存在する。図6Aにおいて曲線2に示されるように、let-7cが電極で試験されたとき、電流増加量が約80%低下して、36nAほどの低さになった。このことは、完全に一致したmiRNAと、ミスマッチしたmiRNAとの識別を容易に可能にする。アンペロメトリーのデータは、以前に得られたボルタンメトリーの結果とよく一致し、かつアンペロメトリーのデータにより、標的RNAが高い特異性および感度で首尾良く検出されたことが確認された。従って、それぞれの定量化された結果は、ファミリー全体の一緒になった量ではなく、1つだけのmiRNAメンバーの具体的な量を表している。
miRNAについての検量線:
この研究では、既知のヒトmiRNAの(G+A)含有量の範囲全体に及ぶ30%〜80%の(G+A)含有量を有する3つの代表的なmiRNAを選択した。0.10pMから1000pMにまで及ぶ種々の濃度のRu(PD)2Cl2標識されたmiRNAを伴う分析物溶液を試験した。対照実験については、非相補的な捕獲プローブをセンサー調製において使用した。
図6Bに示されるように、ダイナミックレンジは1.0pM〜300pMであり、検出限界は0.50pM(1.0アトモル)であった。化学的ライゲーションに基づく以前のmiRNAアッセイと比較したとき、miRNA分析の感度が、本方法の多重標識化および化学的増幅のスキームを採用することによって大きく改善された。より以前の報告されたアッセイでは、標識および標的miRNA分子の比率は1:1で固定された。センサー表面に固定化された捕獲プローブの量、およびハイブリダイゼーション効率により、表面に結合した標的miRNAの量が決定され、従って、標識の量が決定された。
しかしながら、本発明者らの方法では、1つだけのmiRNA鎖における多数のRu(PD)2Cl+標識は標識の負荷を大きく増大させ、それに応じて、電気触媒作用的酸化からの対応する応答が増大し、従って、miRNAアッセイの感度および検出限界が実質的に改善された。標識:塩基の比率は、個々のmiRNA分子の配列に依存して、1:3〜1:4の範囲にあることが推定された。理論的には、この比率がすべてのmiRNAについて変化しないままである場合、塩基あたりの同じ電流感度がすべてのmiRNAについて得られるはずである。同じモル濃度では、感度は大雑把にはmiRNAにおける塩基の数に比例するはずであり、しかし、この傾向は本発明者らの実験では認められなかった。しかしながら、塩基あたりの感度がmiRNA配列および(G+A)含有量に依存していることは注目された。しかしながら、(G+A)含有量と、電流感度との間における直接の関係は認められなかった。これは、おそらくは、GおよびAが一様に分布していないという事実のためである。センサー表面におけるmiRNA分子の立体的障害および三次元的充填のために、クラスターになっているときには、G塩基およびA塩基を標識することが極めて困難である可能性が高く、従って、より小さい標識化効率が予想される。例えば、mir-320における(G+A)含有量(78%)は、mir-92の(G+A)含有量と比較したときには2倍を超えており、しかし、mir-320についての感度はmir-92の感度よりもわずかに35%高いだけであった。
HeLa細胞から抽出されたmiRNAの分析:
miRNAを実世界の試料で定量することにおける能力を明らかにするために、HeLa細胞から抽出された総RNAにおける3つのmiRNAの分析に、本アッセイを適用した。表1に列挙するように、結果を総RNAに対して正規化した。これらの結果は、同じ試料に対するノーザンブロット分析とよく一致しており、かつmiRNA発現プロファイリングの最近に発表されたデータと矛盾していない35、36、37。成功したmiRNA検出のために必要とされる総RNAの最低量は約50ngであることが見出された。これは約1000個のHeLa細胞に対応する。個々のmiRNAに対するmiRNAアッセイに関連した相対的誤差は一般に、2.0pM〜300pMの濃度範囲において15%未満であった。従って、このことは、2つの状態の間での発現が2倍未満で異なるmiRNAを同定することができる。多くの場合、非常に注目されているmiRNAの多くの発現は異なる状態の間で少し異なるだけであることがある。提案された手法は、示差的に発現したmiRNAを同定する際のより大きな正確さを可能にし、かつ試料を複製することの必要性を小さくする。加えて、大きく改善された感度により、本方法はまた、微生物由来の試料において要求される総RNAの量をナノグラムに著しく減らすことができる。
(表1)HeLa細胞から抽出された総RNAにおけるmiRNAの分析
Figure 2009517690
当業者によって理解され得るように、本明細書において記載される例示的な態様に対する多くの改変が可能である。本発明はむしろ、特許請求の範囲によって定義されるように、すべてのそのような改変をその範囲内に包含することが意図される。
本明細書において参照されるすべての文書は全体が参照により組み入れられる。
本発明の様々な態様が本明細書において開示されるが、多くの適合化および改変が、当業者の共通の一般的な知識に従って本発明の範囲内において行うことができる。そのような改変には、同じ結果を実質的に同じ様式で達成するために、公知の均等物を本発明の任意の局面の代わりに使用することが含まれる。本明細書において使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、別途定義されない限り、本発明の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
参考文献
Figure 2009517690
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図面において、例としてだけであるが、本発明の様々な態様を例示する。
Ru(PD)2Cl2処理されたヌクレオチドの質量スペクトル(実線)および計算された同位体分布パターン(点線)である。 オリゴヌクレオチドの電気泳動ゲルの写真を示す。未処理のポリ(A)30およびポリ(U)30(レーン1);未処理のポリ(G)30およびポリ(C)30(レーン2);Ru(PD)2Cl2と室温で30分間インキュベートされたポリ(A)30およびポリ(U)30(レーン3)およびRu(PD)2Cl2と室温で30分間インキュベートされたポリ(G)30およびポリ(C)30(レーン4);Ru(PD)2Cl2と80℃で30分間インキュベートされ、それらの未処理の相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズされたポリ(A)30、ポリ(U)30、ポリ(G)30およびポリ(C)30(それぞれ、レーン5〜レーン8)。 3.3μMのポリ(A)30のUV-Visスペクトル(曲線1)、100μMのRu(PD)2Cl2のUV-Visスペクトル(曲線2)、および100μMのRu(PD)2Cl2で処理された3.3μMのポリ(A)30のUV-Visスペクトル(曲線3)である。 50nMのlet-7bのボルタンモグラム(曲線1)、10nMのlet-7bのボルタンモグラム(曲線2)、および50nMのmir-92のボルタンモグラム(曲線3)を示す。これらはすべてがRu(PD)2Cl2で処理され、let-7b配列に相補的な捕獲プローブにより被覆された電極において検出された(支持電解質がPBS緩衝液であり、電位掃引速度が100mV/sであった)。 (A)は、50nMのlet-7bのハイブリダイゼーション前(曲線1)およびハイブリダイゼーション後(曲線3)での、let-7bに相補的な捕獲プローブにより被覆された電極における0.10mMヒドラジン溶液の酸化のサイクリックボルタンモグラム、ならびにブランクPBSにおけるハイブリダイズした電極のサイクリックボルタンモグラム(曲線2)を示す;(B)は、ブランクITO電極における1.0mMヒドラジン溶液のサイクリックボルタンモグラム(曲線1)、または0.10mMのRu(PD)2Cl2の存在下における1.0mMヒドラジン溶液のサイクリックボルタンモグラム(曲線2)、またはブランクITO電極におけるRu(PD)2Cl2単独のサイクリックボルタンモグラム(曲線3)を示す(支持電解質がPBSであり、電位掃引速度が100mV/sであった)。 (A)は、let-7bに相補的な捕獲プローブ被覆電極にハイブリダイズした25pMのlet-7bのアンペロメトリー曲線(曲線1)、25pMのlet-7cのアンペロメトリー曲線(曲線2)、および25pMのmir-92のアンペロメトリー曲線(曲線3)を示す;(B)は、mir-92についての検量線(曲線1)、let-7bについての検量線(曲線2)およびmir-320についての検量線(曲線3)を示す。

Claims (15)

  1. Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を形成するように、試料中の分析物分子をRu(PD)2Cl2により標識する工程;
    Ru(PD)2Cl-分析物分子の錯体を試料から捕獲するために、捕獲分子が配置されている表面を有する作用電極と試料とを接触させる工程;
    レドックス基質の酸化または還元を可能にする条件下で、捕獲されているRu(PD)2Cl-分析物分子の錯体とレドックス基質とを接触させる工程;および
    作用電極における電流の流れを検出する工程
    を含む、試料中の分析物分子を検出する方法。
  2. 捕獲されているRu(PD)2Cl-分析物分子の錯体とレドックス基質とを接触させる工程の前に、電極をすすぎ洗浄する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. 試料が、生体試料、組織培養物、組織培養上清、調製された生化学的試料、野外試料、細胞溶解物、または細胞溶解物の画分を含む、請求項1または2記載の方法。
  4. 生体試料が生体液を含み、調製された生化学的試料が、調製された核酸試料または調製されたタンパク質試料を含む、請求項3記載の方法。
  5. 試料が、調製されたRNA試料を含む、請求項4記載の方法。
  6. 分析物分子が、タンパク質、ペプチド、DNA、mRNA、ミクロRNA、または小分子を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. 分析物分子がミクロRNAである、請求項6記載の方法。
  8. 捕獲分子が、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、リガンド、受容体、抗体、または小分子を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. 捕獲分子が、ミクロRNAの配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含む、請求項8記載の方法。
  10. レドックス基質がヒドラジンまたはアスコルビン酸である、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
  11. 作用電極が、カーボンペースト、炭素繊維、グラファイト、グラッシーカーボン、金、銀、銅、白金、パラジウム、金属酸化物、または導電性ポリマーを含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
  12. 金属酸化物がインジウムスズ酸化物であり、導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)またはポリアニリンである、請求項11記載の方法。
  13. 分析物分子がRu(PD)2Cl2錯体により直接標識される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  14. 標識化分子が、分析物分子をRu(PD)2Cl2錯体により間接的に標識するために使用される、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
  15. 標識化分子が、タンパク質、ペプチド、リガンド、抗体、核酸に結合するタンパク質またはタンパク質ドメインまたはオリゴヌクレオチドを含む、請求項14記載の方法。
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