JP2009516711A - 糖尿病の処置のための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、式:(Xaa)n1-Xaa1-His-Thr-Asp-(Xaa)n2のペプチド(式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;Xaa1が疎水性アミノ酸であり;n1が0〜10であり;かつn2が0〜10である);およびその誘導体;ならびにインスリンを含む組成物に関する。インスリンおよびペプチドの複合体、多量体インスリン複合体を分散させる方法、ならびに特に糖尿病の処置における、インビボの血糖値を調節する方法も記載する。
Description
発明の分野
本発明は、ある部類の血糖降下性ペプチドおよびインスリンを含む組成物に関する。具体的には本発明は、インスリンおよび血糖降下性ペプチドを含む超短時間作用型インスリンの組成物に関する。インスリンおよび血糖降下性ペプチドの複合体ならびに多量体インスリン複合体を分散させる方法も開示する。血糖降下性ペプチドおよびインスリンを含む組成物は、特にインスリンによる処置を必要とする糖尿病被験体における糖尿病の制御における使用のための潜在的可能性を有する。
本発明は、ある部類の血糖降下性ペプチドおよびインスリンを含む組成物に関する。具体的には本発明は、インスリンおよび血糖降下性ペプチドを含む超短時間作用型インスリンの組成物に関する。インスリンおよび血糖降下性ペプチドの複合体ならびに多量体インスリン複合体を分散させる方法も開示する。血糖降下性ペプチドおよびインスリンを含む組成物は、特にインスリンによる処置を必要とする糖尿病被験体における糖尿病の制御における使用のための潜在的可能性を有する。
発明の背景
本明細書における任意の先行技術に対する言及は、その先行技術がオーストラリアにおける共通の一般的知識の一部を形成するという承認または任意の形態の示唆ではなく、またその先行技術がオーストラリアにおける共通の一般的知識の一部を形成するという承認または任意の形態の示唆として解されるべきではない。
本明細書における任意の先行技術に対する言及は、その先行技術がオーストラリアにおける共通の一般的知識の一部を形成するという承認または任意の形態の示唆ではなく、またその先行技術がオーストラリアにおける共通の一般的知識の一部を形成するという承認または任意の形態の示唆として解されるべきではない。
糖尿病は、膵臓が十分な量のインスリンを産生することができないためにまたは細胞が利用可能なインスリンを利用することができないために慢性の高血糖症を結果的にもたらす。膵臓がもはやインスリンを産生しない場合(1型糖尿病)または膵臓によって不十分な量のインスリンが産生される場合(2型糖尿病)、多くの患者はインスリンによる処置を必要とする。
インスリンは、インビボおよびインビトロの両方において亜鉛イオンの存在下で六量体複合体を形成することが公知である。しかしながら、インスリン六量体は、それらが吸収されおよび循環に入ることができる前に、二量体または単量体へと解離しなければならず、ならびにインスリン単量体のみが体内でインスリン受容体に結合する。インスリンが体内で有用であるためには、六量体複合体が分散し、インスリン二量体または単量体を提供しなければならない。六量体インスリン複合体の分散は体内で自然に生じるが、生じるのに幾らか時間がかかり、インスリン活性の開始を遅延させる可能性がある。インスリンは、六量体の形態では体内で吸収および利用されないので、ピークの血漿インスリン濃度を達成するのに、六量体インスリン調製物の投与の時間から2〜4時間かかる。
インスリンは、超短時間作用型インスリン(例えば、Lispro(商標))、レギュラーインスリンとしても公知の短時間作用型および、中間作用型またはレンテインスリンという、3種類で利用可能である。多くの場合、日中に、食事の前および後に、ならびに一晩中生じる長い絶食期間中に、血糖の正常なレベルが維持されるのを確実にするために、糖尿病患者はより短く作用するインスリンおよびより長く作用するインスリンの組み合わせを必要とする。
超短時間作用型インスリンは食前15分以内に使用され、および血糖レベルのより良い制御を可能にすることができる。レギュラーインスリンに必要とされる30〜60分以内よりも15分以内に食べる時間を見積る方が容易である。レギュラーインスリンを使用する場合、患者は食べるのが早過ぎてまたは遅過ぎて、最良の血糖制御を提供することができない可能性がある。超短時間作用型インスリンの別の有利な点は、食事間の低血糖症のリスクの低下である。
例えば、NovoRapid(商標)およびLispro(商標)などの、幾つかの超短時間作用型の合成インスリン類似体は、安定な六量体複合体を形成するようには会合しない。しかしながら、改善された超短時間作用型インスリン産物、特に自然または合成のインスリン組成物の必要性がある。
生物活性ペプチドが血糖降下性効果を有すると国際公開公報第03/002594号(特許文献1)に記載されている。インスリン増感因子(ISF)Gly-His-Thr-Asp-NH2およびその類似体が調製され、ならびにインスリン増感活性を有することが示されている(国際公開公報第03/002594号(特許文献1))。
本発明に至る研究において、ISFおよびその類似体が、六量体インスリン複合体を分散させ、インスリンが吸収されて循環に入りかつインビボでその受容体と相互作用することができる速度を増加させるということが分かった。ISFがインスリン単量体と結合し、多量体インスリン複合体を単量体の形態に分散させるのも助け得る、インスリン-ペプチド複合体を形成することができるということも分かった。それゆえに、インスリンとISFおよびその類似体の組み合わせは、インスリン治療を必要とする糖尿病被験体の処置において、特に超短時間作用型インスリンが必要とされる場合に有用である。
発明の概要
ある局面において、本発明は、下記式のペプチドおよびその誘導体ならびにインスリンを含む組成物を提供する:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
ある局面において、本発明は、下記式のペプチドおよびその誘導体ならびにインスリンを含む組成物を提供する:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
別の局面において、本発明は、Xaa1がValである時、n1およびn2のうちの1つは0以外であるという条件で、下記式のペプチドおよびその誘導体ならびにインスリンを含む組成物を提供する:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本発明のまた別の局面において、インスリンが下記式のうちの少なくとも1つのペプチドおよびその誘導体と会合する、インスリン-ペプチド複合体が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
幾つかの態様において、インスリン-ペプチド複合体は、1:1または2:1のインスリン:ペプチド比を有する。
幾つかの態様において、組成物中のペプチドは、テトラペプチドGly-His-Thr-Asp(ISF401)またはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体である。
本発明のまた別の局面において、下記式のペプチドおよびその誘導体と多量体インスリン複合体を混合する工程を含む、超短時間作用型インスリン組成物を調製する方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本発明の別の局面において、下記式のペプチドおよびその誘導体に多量体インスリン複合体を曝露させる工程を含む、多量体インスリン複合体を分散させる方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
好ましい態様において、多量体インスリン複合体は二量体または六量体複合体、とりわけ六量体複合体である。
本発明のさらなる局面において、インスリンならびに下記式のペプチドおよびその誘導体を含む組み合わせの投与を含む、ヒトまたはその他の哺乳動物におけるインビボの血糖値を調節する方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本発明のまたさらなる局面において、インスリンならびに下記式のペプチドおよびその誘導体を含む組み合わせを、ヒトまたはその他の動物に投与する工程を含む、ヒトまたはその他の哺乳動物における糖尿病を処置する方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
幾つかの態様において、糖尿病は1型糖尿病である。その他の態様において、糖尿病は、インスリンの投与を必要とする2型糖尿病である。
好ましくは、ペプチドは、
Val-His-Thr-Asp(ISF402);ならびに
Gly-His-Thr-Asp(ISF401);
またはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体
から選択されるテトラペプチドである。
Val-His-Thr-Asp(ISF402);ならびに
Gly-His-Thr-Asp(ISF401);
またはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体
から選択されるテトラペプチドである。
本発明のまた別の局面において、インスリンならびに下記式のペプチドおよびその誘導体の、ヒトまたはその他の動物において糖尿病を処置するための医用製剤の製造における使用が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
幾つかの態様において、本発明の方法および組成物において使用されるペプチドのC末端および/またはN末端を好適なキャッピング基でキャッピングしてもよい。例えば、ペプチドのC末端をアミド化し、および/またはペプチドのN末端をアシル化、例えば、アセチル化してもよい。好ましい態様において、ペプチドのC末端をアミド化する。
以下に続く本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、記載の一つの整数もしくは工程または記載の整数もしくは工程の群の含有を意味するが、任意のその他の一つの整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の排除を意味するものではないということが理解されると考えられる。
発明の詳細な説明
本発明は、インビボで超短時間作用型インスリンを提供するのに使用し得るインスリンおよびある部類の血糖降下性ペプチドの組み合わせに関する。血糖降下性ペプチドは、容易に吸収されて循環に入りかつインスリン受容体への速やかな結合に好適であるインスリンを提供するように、多量体インスリン複合体を分散させるのを助ける可能性がある。血糖降下性ペプチドは、インスリン増感効果を有し、それによってインスリン抵抗性を低下させる可能性もある。本発明の組み合わせは、特にヒトにおける、インスリンによる処置を必要とする糖尿病を処置する際に有用である。
本発明は、インビボで超短時間作用型インスリンを提供するのに使用し得るインスリンおよびある部類の血糖降下性ペプチドの組み合わせに関する。血糖降下性ペプチドは、容易に吸収されて循環に入りかつインスリン受容体への速やかな結合に好適であるインスリンを提供するように、多量体インスリン複合体を分散させるのを助ける可能性がある。血糖降下性ペプチドは、インスリン増感効果を有し、それによってインスリン抵抗性を低下させる可能性もある。本発明の組み合わせは、特にヒトにおける、インスリンによる処置を必要とする糖尿病を処置する際に有用である。
ある局面において、本発明は、下記式のペプチドおよびその誘導体ならびにインスリンを含む組成物を提供する:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本組成物の幾つかの態様において、Xaa1がValでありかつn1およびn2が0であるペプチドを排除する。
幾つかの態様においておよび「誘導体」という用語によって包含される場合、ペプチドのC末端および/またはペプチドのN末端を好適なキャッピング基でキャップしてもよい。例えば、ペプチドのC末端をアミド化してもよく、および/またはペプチドのN末端をアシル化、例えば、アセチル化してもよい。好ましい態様において、ペプチドのC末端をアミド化する。
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、アミノ基およびカルボン酸基を有する化合物を指す。アミノ酸は、天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸であってもよく、およびタンパク質新生アミノ酸または非タンパク質新生アミノ酸であってもよい。本発明のアミノ酸配列に取り込まれるアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、α-アミノ酸、β-アミノ酸、および/またはその混合物であってもよい。
好適な天然のタンパク質新生アミノ酸を、それらの1文字記号および3文字記号と一緒に表1に示す。
好適な非タンパク質新生または非天然のアミノ酸を側鎖修飾によってまたは全合成によって調製してもよい。本発明によって企図される側鎖修飾の例として、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化、それに続くNaBH4による還元;メチルアセチミデートによるアミジノ化;無水酢酸によるアシル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸および無水テトラハイドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;およびピリドキサル-5-リン酸によるリジンのピリドキシル化、それに続くNaBH4による還元によるようなアミノ基の修飾が含まれる。リジンのアミノ基はまた、アミノ基をカルボン酸基と反応させる公知の方法によって、脂肪酸、その他のアミノ酸もしくはペプチド、または標識基との反応によって誘導体化してもよい。
アルギニン残基のグアニジン基を2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサル、およびグリオキサルなどの試薬との複素環縮合産物の形成によって修飾してもよい。
カルボキシル基をO-アシルイソ尿素形成、それに続く、例えば、対応するアミドへのその後の誘導体化を介したカルボジイミド活性化によって修飾してもよい。
スルフィドリル基を、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ヨウ素酸酸化;その他のチオール化合物による混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、またはその他の置換マレイミドとの反応;4-塩化第二水銀安息香酸、4-塩化第二水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-塩化第二水銀-4-ニトロフェノール、およびその他の水銀剤を用いる水銀誘導体の形成;アルカリpHでのシアネートによるカルバモイル化などの方法によって修飾してもよい。
トリプトファン残基を、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロマイドもしくはスルフェニルハライドによるインドール環のアルキル化によって修飾してもよい。他方、チロシン残基をテトラニトロメタンによるニトロ化によって変化させ、3-ニトロチロシン誘導体を形成してもよい。
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾をヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカルボネートによるN-カルボエトキシ化によって遂行してもよい。
タンパク質合成の間に自然に存在しないアミノ酸および誘導体を取り込ませることの例として、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、および/またはアミノ酸のD-異性体の使用が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において企図される好適な非タンパク新生または非天然のアミノ酸の例を表2に示す。
好適なβ-アミノ酸として、L-β-ホモアラニン、L-β-ホモアルギニン、L-β-ホモアスパラギン、L-β-ホモアスパラギン酸、L-β-ホモグルタミン酸、L-β-ホモグルタミン、L-β-ホモイソロイシン、L-β-ホモロイシン、L-β-ホモリジン、L-β-ホモメチオニン、L-β-ホモフェニルアラニン、L-β-ホモプロリン、L-β-ホモセリン、L-β-ホモスレオニン、L-β-ホモトリプトファン、L-β-ホモチロシン、L-β-ホモバリン、3-アミノ-フェニルプロピオン酸、3-アミノ-クロロフェニル酪酸、3-アミノ-フルオロフェニル酪酸、3-アミノ-ブロモフェニル酪酸、3-アミノ-ニトロフェニル酪酸、3-アミノ-メチルフェニル酪酸、3-アミノ-ペンタン酸、2-アミノ-テトラヒドロイソキノリン酢酸、3-アミノ-ナフチル-酪酸、3-アミノ-ペンタフルオロフェニル-酪酸、3-アミノ-ベンゾチエニル-酪酸、3-アミノ-ジクロロフェニル-酪酸、3-アミノ-ジフルオロフェニル-酪酸、3-アミノ-ヨードフェニル-酪酸、3-アミノ-トリフルオロメチルフェニル-酪酸、3-アミノ-シアノフェニル-酪酸、3-アミノ-チエニル-酪酸、3-アミノ-5-ヘキサン酸、3-アミノ-フリル-酪酸、3-アミノ-ジフェニル-酪酸、3-アミノ-6-フェニル-5-ヘキサン酸、および3-アミノ-ヘキシン酸が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「疎水性アミノ酸」という用語は、疎水性側鎖を持つまたは側鎖を持たないアミノ酸を指す。好適な疎水性アミノ酸として、グリシン、L-アラニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-メチオニン、L-チロシン、D-バリン、D-フェニルアラニン、D-イソロイシン、D-ロイシン、D-メチオニン、D-チロシン、L-β-ホモフェニルアラニン、L-β-ホモイソロイシン、L-β-ホモロイシン、L-β-ホモバリン、L-β-ホモメチオニン、L-β-ホモチロシン、シクロヘキシルアラニン、L-ノルロイシン、およびL-ノルバリンが含まれるが、これらに限定されない。好ましい疎水性アミノ酸は、グリシン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-イソロイシン、およびL-ロイシン、とりわけL-バリンおよびグリシンである。
幾つかの態様においておよび「誘導体」という用語によって包含される場合、His-Thr-Asp配列中のHis、Thr、もしくはAspアミノ酸の1つまたは複数は、非天然のHis、Thr、またはAspであってもよい。例えば、His、Thr、もしくはAspはD-アミノ酸であってもよく、または、例えばN-メチル化などのN-アルキル化もしくはα-メチル化などのα-アルキル化によって誘導体化されていてもよい。誘導体化されたHis、Thr、およびAspの例として、N-メチル-His、N-メチル-Thr、N-メチル-アスパラギン酸、α-メチル-ヒスチジン、α-メチル-スレオニン、またはα-メチルアスパラギン酸が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、His、Thr、およびAspはL-アミノ酸であり、かつ誘導体化されていない。
その他の誘導体として、薬学的に許容される塩が含まれる。好適な塩の例として、塩化物塩、酢酸塩、乳酸塩、およびグルタミン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。 塩を調製するための従来の手順は当技術分野において公知である。
上記のような本発明の組成物および複合体に取り込まれるペプチドを従来の液体相または固体相合成技術を用いて合成してもよい。例えば、Nicholsonによって編集されおよびBlackwell Scientific Publicationsによって出版された「Synthetic Vaccines」と題された刊行物に含まれる、Atherton and Shephardによる「Peptide Synthesis」と題された、第9章で記載されたような溶液合成または固体相合成を参照してもよい。好ましくは、Merrifield合成法(Methods in Enzymology, 第289巻, 44-66の中の、Wellings & Atherton(1997);Merrifield(1963), J Am. Chem. Soc., 85, 2149)などの、Fmoc化学反応を用いる固体相ペプチド合成技術を使用する。
あるいは、これらのペプチドを標準的な組換えDNA技術を用いて組換えペプチドとして調製してもよい。したがって、例えば、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology, 185, Academic Press, San Diego, CA(1990)、およびSambrook et al, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)に記載されたように、ペプチドをコードする核酸配列および発現されるべき核酸配列に機能的に連結される1つまたは複数の調節配列を含む組換え発現ベクターを、好適な原核または真核宿主細胞に導入しおよび発現させてもよい。
また、ペプチドGly-His-Thr-Aspを、好ましくは逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いる、標準的なタンパク質精製手順によってヒト尿から単離してもよい。これらの手順を用いて、Gly-His-Thr-Aspが単離された形態で得られる。「単離された」によって、少なくとも1つの精製またはその他の処理工程によって、そのネイティブな状態ではヒト尿中で通常それに付随する構成要素、特にその他のタンパク質およびペプチドから実質的にまたは本質的に遊離されているペプチド材料が意味される。
また、そのような単離されたペプチド材料を実質的に純粋と記載してもよい。本明細書において使用される場合の「実質的に純粋」という用語は、自然にそれに付随する構成要素から分離されたペプチド材料を説明する。典型的には、(容量で、湿重量もしくは乾燥重量で、またはモルパーセントもしくはモル比で)全ペプチド材料の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%、または99%さえもが関心被験体のペプチドである場合、ペプチド材料は実質的に純粋である。純度は、任意の適切な方法で、例えば、ペプチド材料の場合、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはHPLC解析によって、測定することができる。
本発明において有用なインスリンは、動物またはヒト起源であってもよく、および合成のものまたは誘導体化されたものであってもよい。ヒト起源のインスリンは、ヒト膵臓によって産生されるインスリンと同一であってもよく、および当技術分野において公知のような合成のものまたは組換え体であってもよい。あるいは、ヒト起源のインスリンは、誘導体化されたインスリンが安定なまたは不安定な多量体インスリン複合体を形成することが可能であるならば、誘導体化されていてもよい。動物起源のインスリンは、ブタおよびウシから産生されるものなどの、当技術分野において公知の動物源のインスリン産物のいずれかであってもよい。好ましい態様において、インスリンはヒト起源である。本発明は、単量体インスリンの形成または維持を増大させることによって、任意の種類のインスリンで有用である可能性がある。好適な形態のインスリンとして、Lantus(商標)、Humulin UL(商標)、Humulin 50/50(商標)、Humulin L(商標)、Humalog(商標)、Humulin R(商標)、Humulin NPH(商標)、Humalog Mix 25(商標)、Humulin 30/70(商標)、Ultratard(商標)、Monotard(商標)、NovoRapid(商標)、Actrapid(商標)、Protaphane(商標)、Novomix(商標)、Mixtard 30/70(商標)、Mixtard 50/50(商標)、Mixtard 20/80(商標)、およびLevemir(商標)が含まれるが、これらに限定されない。
治療での使用のために、ペプチドおよびインスリンの組み合わせをその他の添加物なしで投与し得ることが可能であるものの、1つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤、ならびに任意でその他の治療的および/または予防的薬剤と一緒に該組み合わせを提示することが好ましい。担体および/または希釈剤は、組成物のその他の成分と適合し、かつレシピエントにとって有害でないという意味において「許容される」ものでなければならない。
本明細書において使用される場合、「ペプチドおよびインスリンの組み合わせ」という用語は、ペプチドおよびインスリンを含む組成物を指す。治療のための投与の方法に関して、「ペプチドおよびインスリンの組み合わせ」という用語は、本発明の組成物の投与を含み、ならびに投与後インビボで、ペプチドおよびインスリンが互いに相互作用し、インスリン多量体の分散を可能にするように、同時的にかまたは連続的にかのいずれかで、ペプチドを含む組成物およびインスリンを含む組成物を別々に投与することも含む。好ましい態様において、ペプチドおよびインスリンの組み合わせは1つの組成物中にある。
そのような治療組成物の製剤化は当業者に周知である。好適な薬学的に許容される担体および/または希釈剤として、任意のおよび全ての従来の溶媒、分散剤、フィルター、固体担体、水性溶液、コーティング剤、抗菌薬剤および抗真菌薬剤、等張薬剤および吸収遅延薬剤、ならびにそれらと同様のものが含まれる。そのような媒体および薬剤の薬学的に活性のある物質への使用は当技術分野において周知であり、ならびに例として、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing Company, Pennsylvania, USAに記載されている。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と適合しない場合を除き、本発明の薬学的組成物におけるその使用が企図される。補足の活性成分も組成物中に取り込ませることができる。
投与の容易さおよび投薬の均一性のために、そのような組成物を投薬単位形態で製剤化することがとりわけ好都合である。本明細書において使用される場合の投薬単位形態は、処置されるべきヒトまたはその他の哺乳動物被験体のための一体の投薬として合わされた物理的に別個の単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的担体および/または希釈剤と関連して所望の治療効果を産生するように計算された所定の量の活性成分を含む。本発明の新規の投薬単位形態の仕様は、(a)活性成分の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)特定の処置のためにそのような活性成分を調合する技術分野に固有の限界によって指示され、なたびに直接左右される。
本発明の別の局面において、インスリンが下記式のうちの少なくとも1つのペプチドおよびその誘導体と会合する、インスリン-ペプチド複合体が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
幾つかの態様において、インスリン-ペプチド複合体は、1:1または2:1のインスリン:ペプチド比を有する。
本明細書において使用される場合、インスリン-ペプチド複合体に言及する時の「会合する」という用語は、インスリンおよび少なくとも1つのペプチドが、親水性もしくは疎水性相互作用、水素結合、イオン相互作用、または金属イオンを介した極性基もしくは荷電基の架橋などのペプチド-ペプチド相互作用を通じて連結されているということを意味する。
別の局面において、下記式のペプチドおよびその誘導体と多量体インスリン複合体を混合する工程を含む、超短時間作用型インスリン組成物を調製する方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本明細書において使用される場合、「超短時間作用型インスリン組成物」という用語は、投与後1〜20分以内に血糖値に影響を及ぼし始め、および投与の1時間以内に最大限のまたはピークのインスリンレベルを提供するインスリン組成物を指す。超短時間作用型インスリン組成物は、約1〜5時間の間、血糖を低減させる効果を提供する。そのような短時間作用型インスリン組成物は、食前約15分以内の投与に好適である。
本明細書において使用される場合、「多量体インスリン複合体」という用語は、インスリン分子が互いに会合している複合体を指す。幾つかの態様において、多量体インスリン複合体は、2つのインスリン分子が互いに会合している二量体である。インスリン分子は、疎水性もしくは親水性相互作用、水素結合、イオン相互作用、または金属イオンを介する極性基もしくは荷電基の架橋などの相互作用によって会合していてもよい。多量体インスリン複合体の別の例は、6つのインスリン分子が、第二酸化状態で少なくとも1つの金属イオンと会合している六量体インスリン複合体である。インスリン多量体複合体は、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Fe(II)、Cd(II)、およびPb(II)などのイオンで形成されてもよい(Hill et al, Biochemistry, 1991, 30, 917-924)。好ましい態様において、金属イオンはZn(II)である。通常のインビボ条件下では、インスリンは合成され、および2つの亜鉛(II)(Zn++)イオンを含む安定な六量体複合体として必要とされるまで膵臓で貯蔵されるということが公知である。六量体複合体は、カルシウム(Ca(II))結合部位も有し、それゆえにカルシウムイオンも存在する可能性がある。糖尿病の処置において使用される合成または組換えインスリンも安定または不安定な多量体複合体を形成する。
本発明の別の局面において、下記式のペプチドおよびその誘導体に多量体インスリン複合体を曝露させる工程を含む、多量体インスリン複合体を分散させる方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
「多量体インスリン複合体を曝露させる」という用語は、ペプチドがインビトロまたはインビボのいずれかで多量体インスリンと接触するようにさせることを含む。理論に束縛されることを望まないが、多量体インスリン複合体、特に六量体複合体との接触によって、ペプチドが複合体の中核を成す金属イオンに結合し、複合体を不安定化するということが提案されている。あるいは、ペプチドが複合体内部のインスリン分子に結合し、およびインスリン分子間の会合を不安定化する可能性がある。多量体インスリン複合体とペプチドの間の接触は、例えば超短時間作用型インスリン組成物の調製の間に、インビトロで生じる可能性がある。あるいは、多量体インスリン複合体とペプチドの間の接触は、例えば多量体インスリンおよびペプチドの別々の組成物の投与後にまたは投与されたペプチドがインビボで内因性の六量体インスリンに作用し、それによって天然のインスリン増感ペプチド(ISF)の任意の欠陥を修正することを可能にする場合に、インビボで生じる可能性がある。ある好ましい態様において、多量体インスリン複合体を、投与前、超短時間作用型インスリン組成物の調製の間にペプチドに曝露させる。好ましくは、インスリン複合体は六量体インスリン複合体である。
この局面の別の態様において、下記式のペプチドおよびその誘導体を投与する工程を含む、内因性の六量体インスリン複合体を分散させる方法が提供される:
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
式中、Xaaが任意のアミノ酸であり;
Xaa1が疎水性アミノ酸であり;
n1が0〜10であり;かつ
n2が0〜10である。
本発明はまた、上記のような本発明のペプチドおよびインスリンの組み合わせをヒトまたはその他の哺乳動物に投与することによってヒトまたはその他の哺乳動物におけるインビボの血糖値を調節する方法にまで及ぶ。
本明細書において使用される場合、「ヒトまたはその他の哺乳動物」という用語は、血糖の調節を必要とし得るヒトまたはその他の温血動物を指す。例えば、哺乳動物として、イヌ、ネコ、ウマ、およびそれらと同様の動物などの家畜動物、ウシ、ヒツジ、ブタ、およびそれらと同様の動物などの畜産動物、マウス、ラット、ウサギ、およびそれらと同様の動物などの実験動物、ならびに動物園で飼われている動物のような捕獲動物が含まれる。好ましい態様において、被験体はヒトである。
本発明のこの局面において、理論に束縛されることを望まないが、ペプチドは、多量体インスリン複合体を分散させ、インスリンの循環への速やかな吸収および単量体インスリンのインスリン受容体への速やかな結合を可能にすることによって、その効果を発揮することができる。多量体インスリン複合体を分散させることに加えて、幾つかの態様において、ペプチドはまた、インスリン増感効果を提供し、それによってインスリン抵抗性を低下させおよび単量体インスリンがより効果的であるようにしてもよい。幾つかの態様において、インスリン増感効果をインスリン-ペプチド複合体によって提供してもよい。
本発明の幾つかの局面において、インビボの血糖値を調節する方法を、ヒトまたはその他の哺乳動物における、糖尿病を処置する方法において使用する。1型糖尿病は、インスリンによる処置の必要性を特徴とする。2型糖尿病は、内因性のインスリン産生が低過ぎて患者の必要を満たすことができない場合に、インスリンによる処置を必要とする可能性がある。
1型糖尿病では、インスリン産生の欠如がある。これは、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が、最も多くの場合、自己免疫を介する破壊によって破壊されているためである。1型糖尿病のあるそれらの被験体は、通常は膵臓で産生されると考えられるインスリンを取り替えるためにインスリンによる処置を必要とする。インスリンが産生されないので、未処置のまたは制御が十分でない1型糖尿病のある被験体は、高血糖症を有すると考えられる。
2型糖尿病では、少なくとも疾患の始めには、膵島細胞は大量のインスリンを作ることができる。細胞膜を横断するグルコースの輸送が、インスリンシグナリング経路の一部としてのそのインスリン受容体へのインスリン結合によって刺激される。しかしながら、2型糖尿病では、インスリンシグナリング経路がうまく機能せず、インスリン抵抗性と呼ばれる状態を引き起こす。豊富なインスリンが循環中にあり得るものの、グルコースの細胞内への不十分な輸送および肝臓による過剰なグルコース産生がある。これは高血糖症だけでなく、高インスリン血症も引き起こす可能性がある。疾患が進行するにつれて、インスリン受容体の下方調節および場合によってはβ細胞の枯渇がある可能性がある。ひとたびβ細胞が枯渇すれば、産生されるインスリンの量が低過ぎる可能性がありまたは切れる可能性があり、および血糖値を制御するための十分なインスリンレベルを提供するために、外来性インスリンによる処置が一時的にまたは事によると恒久的に必要である可能性がある。
本発明の組み合わせをその他の治療薬剤なしで投与してもよくまたはその他の治療薬剤が多量体インスリン複合体を分散させるペプチドの能力に影響を及ぼさないならば、単一の組成物として、もしくは別々に、同時にもしくは連続的に、その他の治療薬剤、例えば、その他の形態のインスリンもしくはインスリン増感剤と共に投与してもよい。その他の形態のインスリンの例として、Lispro(商標)およびInsulin Aspart(商標)(NovoRapid)などの超短時間作用型インスリン、Actrapid(商標)、Hypurin Neutral(商標)、およびHumulin(商標)などの短時間作用型インスリン、ならびにインスリングラルジンおよびレンテインスリンなどの中間作用型インスリンが含まれる。好適なインスリン増感剤として、メトフォルミン(Glucophage(商標))ならびにGlaxoSmithKlineによるAvandia(商標)(ロシグリタゾン)およびTakeda/Eli LillyによるActos(商標)(ピオグリタゾン)などの(グリタゾンとしても公知の)チアゾリジンジオンが含まれるが、これらに限定されない。
ペプチドおよびインスリンの組み合わせは、糖尿病と関連する合併症の進行を低下させ、防ぎ、または遅らせる可能性もある。そのような合併症として、心血管疾患および糖尿病性脂質異常症などの関連合併症;高い血圧(高血圧症);神経障害および神経損傷;腎疾患;ならびに緑内障、白内障、および網膜症などの眼疾患が含まれる。
様々な投与経路が利用可能である。選択される特定の様式は、勿論、処置されている特定の状態および治療効力に必要とされる投薬量によると考えられる。一般的に言って、本発明の方法を、臨床的に許容されない逆の効果をもたらすことなく本発明の活性構成要素の治療レベルを産生する任意の様式を意味する、医学的に許容されている任意の投与の様式を用いて実施してもよい。そのような投与の様式として、非経口(例えば、皮下、筋肉内、および静脈内)、経口、直腸、局所、経鼻、ならびに経皮経路が含まれる。好ましくは、インスリンまたはインスリンおよびペプチドの組み合わせを非経口注射によって投与する。
活性構成要素を単位投薬形態で便宜的に提示してもよく、および投与のための好適な組成物を薬理学の技術分野において周知の方法のいずれかによって調製してもよい。そのような方法は、活性構成要素を1つまたは複数の補助成分を含み得る担体および/または希釈剤との会合に至らせる工程を含む。一般に、活性構成要素を液体担体、微細に分割された固体担体、または両方との均一でかつ緊密な会合に至らせ、その後必要ならば、産物を成形することによって組成物を調製する。
当業者には正しく理解されると考えられるが、ペプチド活性を含む任意の製剤の調製において、ペプチドの活性が過程において破壊されないことおよびペプチドが破壊されることなくその作用の部位に達することを確実にするように注意が払われるべきである。場合によっては、マイクロカプセル化などの、当技術分野において公知の手段によって、ペプチドを保護することが可能である場合がある。同様に、ペプチドがその作用の部位に達するように、投与の経路を選択すべきである。
非経口投与に好適な組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性構成要素の滅菌水性調製物を便宜的に含む。この水性調製物をそれらの好適な分散薬剤または湿潤薬剤および懸濁薬剤を用いる公知の方法に従って製剤化してもよい。滅菌注射可能調製物はまた、例えばポリエチレングリコールおよび乳酸中の水溶液のような、無毒で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液または懸濁であってもよい。利用し得る許容される媒体および溶媒の中には、水、リンガー溶液、および等張の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌した、固定油を溶媒または懸濁剤として便宜的に利用する。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の刺激の少ない固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能物の調製における使用を見出す。
血糖降下性ペプチドの経口投与に好適な本発明の組成物を、各々が所定の量の活性構成要素を含む、カプセル、カシェ剤、錠剤、もしくは薬用キャンデーなどの別個の単位として、リポソームで、またはシロップ、エリキシル、もしくはエマルジョンなどの水性液もしくは非水性液体中の懸濁として提示してもよい。
その他の送達系は持続放出送達系を含むことができる。好ましい持続放出送達系は、持続放出ペレットまたはカプセル中で本発明の活性構成要素の放出を提供することができる送達系である。多くの種類の持続放出送達系が利用可能であり;これらには(a)活性構成要素がマトリックス内部に含まれる浸食系、および(b)活性構成要素が制御された割合でポリマーの中を通って浸透する拡散系が含まれるが、これらに限定されない。
インスリンおよびペプチドの組み合わせを、インスリンを送達するのに使用される周知の装置で送達してもよい。例えば、本発明の組み合わせをインスリン注射器、インスリン送達ペン、およびインスリンポンプを用いて送達してもよい。
活性構成要素を治療的有効量で投与する。治療的有効量とは、少なくとも部分的には高血糖症を制御し、または高血糖症の開始を遅延させるのに必要な量を意味する。そのような量は、処置されている高血糖症または糖尿病の種類、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、体重、インスリン抵抗性および併用処置の程度などの個々の患者パラメーター、ならびに例えば、食事の直前または重篤な高血糖症事象の時などの、治療のタイミングによると考えられる。1型糖尿病患者によって使用されるインスリンの典型的な日用量は、0.1〜2.5単位/kg、より典型的には0.5〜1単位/kg/日の範囲にある。2型糖尿病では、増強治療のためのインスリンの出発用量は0.15単位/kg/日であり、治療は多くの場合1日当たり15〜20単位までの範囲にある。インスリンをペプチドと組み合わせて投与する場合、より低い用量のインスリンを利用してもよい。担当医などの、当業者は、投与および食物摂取後の患者の血糖をモニターすることによって、インスリンおよびペプチドの好適な量を決定してもよい。
通常、血糖上昇性ペプチドの日用量は、1日当たり約0.01mg/kg〜1日当たり1000mg/kgであると考えられる。最初に小用量(0.01〜1mg)を投与し、それに続いて1日当たり約1000mg/kgまで用量を増加させてもよい。被験体における応答がそのような用量では不十分である事象において、さらにより高い用量(または異なる、より限局された送達経路による有効でより高い用量)を、患者の忍耐が許す程度まで利用してもよい。血糖降下性ペプチドの適切な全身レベルを達成するように、1日当たり複数回の用量が企図されている。
幾つかの態様において、ペプチド分子対インスリン分子の比は、1:6〜6:1、好ましくは2:6〜5:1、2:6〜4:1、2:6〜3:1、2:6〜2:1、または2:6〜1:1の範囲にある。その他の態様において、インスリンに対するペプチドの比は、単位のインスリン当たり0.5mg〜5mgペプチド、とりわけ1単位のインスリンに対して約1.5〜4mgペプチド、よりとりわけ1単位のインスリンに対して約3mgペプチドである。
本発明のさらなる特色を以下の実施例においてより完全に記載する。しかしながら、この詳細な説明は、単に本発明を例示する目的のために含まれ、および決して上で記されたような本発明の大まかな説明に対する制限として理解されるべきではないということが理解されるべきである。
実施例
ペプチド
Fmoc化学反応を用いる標準的なタンパク質合成法によってISF401(Gly-His-Thr-Asp-NH2)およびISF402(Val-His-Thr-Asp-NH2)を合成した。逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で決定した場合、ペプチドは>95%純粋であった。
ペプチド
Fmoc化学反応を用いる標準的なタンパク質合成法によってISF401(Gly-His-Thr-Asp-NH2)およびISF402(Val-His-Thr-Asp-NH2)を合成した。逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で決定した場合、ペプチドは>95%純粋であった。
インスリン
0.6%亜鉛を含むインスリン(ウシ膵臓)はSigmaより購入した。インスリン(亜鉛を含まないインスリン)のナトリウム塩は、Calbiochemより購入したウシインスリンであった。Lispro(Humalog)は、Eli Lilly(Eli Lilly, NSW, Australia)より入手した。
0.6%亜鉛を含むインスリン(ウシ膵臓)はSigmaより購入した。インスリン(亜鉛を含まないインスリン)のナトリウム塩は、Calbiochemより購入したウシインスリンであった。Lispro(Humalog)は、Eli Lilly(Eli Lilly, NSW, Australia)より入手した。
円二色性(CD)
0.6%亜鉛を含むウシインスリンを6M HCl中で溶解させ、その後NaOHの添加によってpHを7.2〜7.4まで上昇させることによって、亜鉛-インスリン六量体を調製した。25mM HEPES緩衝剤(pH 7.2)中の1mg/mlインスリンという最終的な溶液を与えるように、HEPES緩衝剤を添加した。Peltier型の温度制御器PFD 423S/Lを装備した分光偏光計Jasco J-810で、20℃で190〜250nmからインスリンまたはISF401のCDスペクトルを測定した。200μLの試料を分光偏光計の中の、1mmの路長のある、石英キュベットの中に置き、およびCDスペクトルを記録した。各スペクトルは、1nmの帯域幅のある100nm/minで行われた3〜5回の走査の平均を表す。EDTA(4mM)のアリコートまたはISF401(100mM)のアリコートを添加し、およびCDスペクトルを測定することによって、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびISF401の効果を測定した。
0.6%亜鉛を含むウシインスリンを6M HCl中で溶解させ、その後NaOHの添加によってpHを7.2〜7.4まで上昇させることによって、亜鉛-インスリン六量体を調製した。25mM HEPES緩衝剤(pH 7.2)中の1mg/mlインスリンという最終的な溶液を与えるように、HEPES緩衝剤を添加した。Peltier型の温度制御器PFD 423S/Lを装備した分光偏光計Jasco J-810で、20℃で190〜250nmからインスリンまたはISF401のCDスペクトルを測定した。200μLの試料を分光偏光計の中の、1mmの路長のある、石英キュベットの中に置き、およびCDスペクトルを記録した。各スペクトルは、1nmの帯域幅のある100nm/minで行われた3〜5回の走査の平均を表す。EDTA(4mM)のアリコートまたはISF401(100mM)のアリコートを添加し、およびCDスペクトルを測定することによって、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびISF401の効果を測定した。
Zucker fa/faラットの静脈内注射
Monash University Animal Ethics Committeeは、実験動物に対して行われる全ての手順を承認した。Zuckerラットは、Monash University Central Animal Facilityより購入した。ラットが麻酔(Pentobarbitone)されている間に、大腿静脈を介してインスリンおよびISF401を注射し、ならびに手順の最後に依然として意識を失っている間に、ラットを人道的に殺した。全てのインビボ実験に使用されたインスリン濃度は、kgの体重当たり1単位であった。血液を尾静脈から回収し、およびMedisenseグルコメーターを用いてグルコース濃度を測定した。製造元の取扱説明書に従ってLinco Rat Insulin RIAキットを用いて、血清試料中でインスリンおよびC-ペプチド濃度を測定した。群サイズは処置当たり5から8匹のラットであった。
Monash University Animal Ethics Committeeは、実験動物に対して行われる全ての手順を承認した。Zuckerラットは、Monash University Central Animal Facilityより購入した。ラットが麻酔(Pentobarbitone)されている間に、大腿静脈を介してインスリンおよびISF401を注射し、ならびに手順の最後に依然として意識を失っている間に、ラットを人道的に殺した。全てのインビボ実験に使用されたインスリン濃度は、kgの体重当たり1単位であった。血液を尾静脈から回収し、およびMedisenseグルコメーターを用いてグルコース濃度を測定した。製造元の取扱説明書に従ってLinco Rat Insulin RIAキットを用いて、血清試料中でインスリンおよびC-ペプチド濃度を測定した。群サイズは処置当たり5から8匹のラットであった。
マイクロフィジオメトリー
C2C12マウス筋管細胞を支持体上に播種しおよび分化させた。その後、細胞を非緩衝pH感受性RPMI1640培地中のCytosensor(Molecular Devices)の中に置いた。ひとたび37℃でRPMI1640培地(ゼロ対照)で細胞を平衡化したら、各処置について、増加する濃度のISF402、インスリン、またはZnCl2を20分の間添加した。Cytosensorは、処置に対する細胞の応答としてpHの変化を測定した。
C2C12マウス筋管細胞を支持体上に播種しおよび分化させた。その後、細胞を非緩衝pH感受性RPMI1640培地中のCytosensor(Molecular Devices)の中に置いた。ひとたび37℃でRPMI1640培地(ゼロ対照)で細胞を平衡化したら、各処置について、増加する濃度のISF402、インスリン、またはZnCl2を20分の間添加した。Cytosensorは、処置に対する細胞の応答としてpHの変化を測定した。
実施例1
1単位/kg体重のインスリンと共にまたはインスリンなしでのいずれかで、ISF401を変化する用量でメスのZucker fa/faラットに注射した。medisenseグルコメーター(Abbott)を用いて、1滴の尾静脈血で血糖を測定した。血糖測定を行い、および注射後の様々な時間で血清を回収し、ならびに血清インスリンおよびC-ペプチドをLinco RIAキットを用いて測定した。インスリンだけを注射された対照と比較した場合、注射30〜90分後に、血糖の有意な低下が観察された(図1A)。注射後10分でのピークのインスリン濃度を伴って、ISF401およびインスリンの投与後に血清インスリン濃度の有意な増加があった。ピークのインスリンレベルは、インスリンを単独で注射する場合に観察されるレベルよりも有意に大きかった(図1B)。
1単位/kg体重のインスリンと共にまたはインスリンなしでのいずれかで、ISF401を変化する用量でメスのZucker fa/faラットに注射した。medisenseグルコメーター(Abbott)を用いて、1滴の尾静脈血で血糖を測定した。血糖測定を行い、および注射後の様々な時間で血清を回収し、ならびに血清インスリンおよびC-ペプチドをLinco RIAキットを用いて測定した。インスリンだけを注射された対照と比較した場合、注射30〜90分後に、血糖の有意な低下が観察された(図1A)。注射後10分でのピークのインスリン濃度を伴って、ISF401およびインスリンの投与後に血清インスリン濃度の有意な増加があった。ピークのインスリンレベルは、インスリンを単独で注射する場合に観察されるレベルよりも有意に大きかった(図1B)。
ピークのインスリンレベルの増加は、ISF401注射後の血清C-ペプチド濃度の増加の欠如によって示されるように、膵臓からの内因性インスリンの分泌によるものではなかった。それよりむしろ、C-ペプチド濃度は減少し、ISF401によって誘導されたインスリン感受性の増加に応答した膵臓のインスリン分泌の必要性の低下を反映した(図1C)。
実施例2
グルコース恒常性に対するISF02用量の効果を外来性インスリンの同時注射ありおよびなしの両方で検討した。インスリンと共に0.5、1.5、3、および4.5mg/kgの用量のISF02ならびに3、4.5、および10mg/kgの用量のISF402だけをメスのZuckerラットの大腿静脈中に静脈内注射し、ならびに先の通り血糖、C-ペプチド、およびインスリンを測定した。ISF402用量の範囲を超えた所では、外来性インスリンの同時注射があろうとなかろうと、グルコースを低減させる応答は用量依存的でかつ釣鐘型であった(図2A)。ISF402を外来性インスリンと同時注射した場合、血糖濃度の減少は用量依存的でかつ血清インスリンレベルと逆相関した。同時に、C-ペプチドの減少によって示されるように、内因性インスリン産物は低下した(図2Bおよび2C)。インスリンなしのISF402も血糖を低減させたが、4.5mg/kgという用量でのみであった。この場合、循環インスリンの増加は観察されなかったが、血清C-ペプチド濃度は低下し(図2Aおよび2B)、ISF402はインスリン分泌を刺激していないということを示した。
グルコース恒常性に対するISF02用量の効果を外来性インスリンの同時注射ありおよびなしの両方で検討した。インスリンと共に0.5、1.5、3、および4.5mg/kgの用量のISF02ならびに3、4.5、および10mg/kgの用量のISF402だけをメスのZuckerラットの大腿静脈中に静脈内注射し、ならびに先の通り血糖、C-ペプチド、およびインスリンを測定した。ISF402用量の範囲を超えた所では、外来性インスリンの同時注射があろうとなかろうと、グルコースを低減させる応答は用量依存的でかつ釣鐘型であった(図2A)。ISF402を外来性インスリンと同時注射した場合、血糖濃度の減少は用量依存的でかつ血清インスリンレベルと逆相関した。同時に、C-ペプチドの減少によって示されるように、内因性インスリン産物は低下した(図2Bおよび2C)。インスリンなしのISF402も血糖を低減させたが、4.5mg/kgという用量でのみであった。この場合、循環インスリンの増加は観察されなかったが、血清C-ペプチド濃度は低下し(図2Aおよび2B)、ISF402はインスリン分泌を刺激していないということを示した。
実施例3
細胞外酸性化を細胞代謝の指標として測定する技術である、マイクロフィジオメトリーを用いて、インスリンおよびISF402の組み合わせのインスリン増感における活性をC2C12筋細胞で調べた。この濃度がC2C12細胞での亜最大(約20%)応答を産生するので、0.1μMのISF402濃度を用いて、インスリン応答性の増感について検討した。特に低いインスリン濃度での、増加する濃度のインスリンによる増加する細胞外酸性化率(ECAR)によって示されるように、0.1μM ISF402の存在下では、インスリンに対する細胞応答が増加した(図3)。
細胞外酸性化を細胞代謝の指標として測定する技術である、マイクロフィジオメトリーを用いて、インスリンおよびISF402の組み合わせのインスリン増感における活性をC2C12筋細胞で調べた。この濃度がC2C12細胞での亜最大(約20%)応答を産生するので、0.1μMのISF402濃度を用いて、インスリン応答性の増感について検討した。特に低いインスリン濃度での、増加する濃度のインスリンによる増加する細胞外酸性化率(ECAR)によって示されるように、0.1μM ISF402の存在下では、インスリンに対する細胞応答が増加した(図3)。
実施例4
メスのZucker fa/faラットに1.5mg/kgのISF402および1単位/kgのインスリンまたは1単位/kgインスリンだけを注射した。様々な時間で血清を回収し、および血清インスリンを測定した。注射後10分でのピークのインスリン濃度を伴って、ISF402およびインスリンによる注射後に血清インスリン濃度の有意な増加があった。ピークのインスリンレベルは、インスリンを単独で注射する場合に観察されるレベルよりも有意に大きかった(図4A)
メスのZucker fa/faラットに1.5mg/kgのISF402および1単位/kgのインスリンまたは1単位/kgインスリンだけを注射した。様々な時間で血清を回収し、および血清インスリンを測定した。注射後10分でのピークのインスリン濃度を伴って、ISF402およびインスリンによる注射後に血清インスリン濃度の有意な増加があった。ピークのインスリンレベルは、インスリンを単独で注射する場合に観察されるレベルよりも有意に大きかった(図4A)
ピークのインスリンレベルの増加は、ISF402注射後の血清C-ペプチド濃度の増加の欠如によって示されるように、膵臓からの内因性インスリンの分泌によるものではなかった(図4B)。それよりもむしろ、C-ペプチド濃度は減少し、ISF402によって誘導されたインスリン感受性の増加に応答した膵臓のインスリン分泌の必要性の低下を反映した。
実施例5
インスリンは、2つのZn2+イオンが配位結合しかつ安定化させる六量体を容易に形成する。インスリンはその受容体に単量体として結合し、したがって六量体インスリンは、生物学的に活性があるために単量体形態に解離しなければならない。血流中に入る前に六量体の解離が生じる必要性があるために、皮下注射されたインスリンの放出は通例ゆっくりである。静脈内注射後の血清インスリンレベルのピークに対するISFペプチドの効果(図1参照)についての1つの説明は、ISFペプチドが六量体インスリンの分散の速度を速め、それゆえに循環中の遊離のインスリンの鋭いピークを産生するということである。
インスリンは、2つのZn2+イオンが配位結合しかつ安定化させる六量体を容易に形成する。インスリンはその受容体に単量体として結合し、したがって六量体インスリンは、生物学的に活性があるために単量体形態に解離しなければならない。血流中に入る前に六量体の解離が生じる必要性があるために、皮下注射されたインスリンの放出は通例ゆっくりである。静脈内注射後の血清インスリンレベルのピークに対するISFペプチドの効果(図1参照)についての1つの説明は、ISFペプチドが六量体インスリンの分散の速度を速め、それゆえに循環中の遊離のインスリンの鋭いピークを産生するということである。
ISF401によるインスリン六量体の分散を検討するために、円二色性(CD)を用いた。六量体インスリン(Zn-インスリン、25mM HEPES緩衝剤、pH 7.2中で1mg/mL)についてのCDプロファイルは、275nmでの強い負のピークを有する(図5)。亜鉛に結合して、インスリン六量体が分散しかつ単量体/二量体インスリンを形成するのを可能にする、2.5mMの濃度での遷移金属キレート剤EDTAの添加によって、275nmでのシグナルの増加がもたらされる(図5)。
275nmでのCDシグナルを用いて、ISF401(100mMの1μL)、EDTA(4mMの1μM)、および脱イオン水(1μL)の存在下でのインスリンの会合状態を測定した。CDシグナルはISF401またはEDTAの添加によって増加し、インスリン六量体の分散と一致した(図6)。インスリン六量体の最大限の分散に必要とされるISF401の量は、インスリンよりも10倍モル濃度が過剰である、1.5から2mMの間であった。
実施例6
インスリンをISF402と混合し、およびサイズを基にして分離する、ゲル濾過クロマトグラフィーで分子複合体を分離することによって、インスリンの多量体化に対するISF402の効果をインビトロで調べた(図7)。ISF402およびインスリンの混合物(破線)の保持容量とインスリンだけ(実線)またはISF402(点線)だけのいずれかとの比較によって、ISF402と予め混合しないで溶出する場合(14〜15mL)よりもISF402と混合する場合(16〜17mL)の方が、インスリンがカラムから溶出するのが遅いということが示された。これは、ISF402がインスリン多量体のサイズを低下させるということを示唆する。
インスリンをISF402と混合し、およびサイズを基にして分離する、ゲル濾過クロマトグラフィーで分子複合体を分離することによって、インスリンの多量体化に対するISF402の効果をインビトロで調べた(図7)。ISF402およびインスリンの混合物(破線)の保持容量とインスリンだけ(実線)またはISF402(点線)だけのいずれかとの比較によって、ISF402と予め混合しないで溶出する場合(14〜15mL)よりもISF402と混合する場合(16〜17mL)の方が、インスリンがカラムから溶出するのが遅いということが示された。これは、ISF402がインスリン多量体のサイズを低下させるということを示唆する。
実施例7
尿中のペプチドは通例、断片化された血漿タンパク質または通常は循環中に存在する生体活性ペプチドに由来する(Cutillas et al., Clinical Science, 104:483-490(2003))。カルボキシル末端のアミド化は、通例神経ペプチドおよびペプチドホルモンと関連する特色であり、ISF401がインスリン感受性を増加させる自然の役割を持つ循環ペプチドホルモンまたはホルモン断片であり得るということを示唆している。尿のISF401の源を同定するために、ジフテリアトキソイドへのISF401アミノ末端のコンジュゲーションおよびウサギの免疫付与によって、ISF401に対する抗血清を作製した。間接免疫蛍光によって、マウス(図8A)ならびにヒト(図8BおよびC)両方の膵臓のランゲルハンス島におけるインスリンと抗血清の強い共局在が同定された。マウスの肝臓、筋肉、腎臓、および脂肪組織、ならびにヒト由来のその他の内分泌腺は全て陰性であった(データは示さない)。免疫前血清の染色の欠如、二次抗体の交差反応の欠如、および合成ISF401ペプチドの添加による染色の阻害によって、抗体結合の特異性を確認した。マウス島β細胞由来MIN6細胞の共焦点画像撮影によって、インスリン分泌顆粒と抗ISF401の共局在が明らかとなった(図8D)。
尿中のペプチドは通例、断片化された血漿タンパク質または通常は循環中に存在する生体活性ペプチドに由来する(Cutillas et al., Clinical Science, 104:483-490(2003))。カルボキシル末端のアミド化は、通例神経ペプチドおよびペプチドホルモンと関連する特色であり、ISF401がインスリン感受性を増加させる自然の役割を持つ循環ペプチドホルモンまたはホルモン断片であり得るということを示唆している。尿のISF401の源を同定するために、ジフテリアトキソイドへのISF401アミノ末端のコンジュゲーションおよびウサギの免疫付与によって、ISF401に対する抗血清を作製した。間接免疫蛍光によって、マウス(図8A)ならびにヒト(図8BおよびC)両方の膵臓のランゲルハンス島におけるインスリンと抗血清の強い共局在が同定された。マウスの肝臓、筋肉、腎臓、および脂肪組織、ならびにヒト由来のその他の内分泌腺は全て陰性であった(データは示さない)。免疫前血清の染色の欠如、二次抗体の交差反応の欠如、および合成ISF401ペプチドの添加による染色の阻害によって、抗体結合の特異性を確認した。マウス島β細胞由来MIN6細胞の共焦点画像撮影によって、インスリン分泌顆粒と抗ISF401の共局在が明らかとなった(図8D)。
実施例8
方法
以下のように痩せたZuckerラット(n=5)およびfa/fa Zuckerラット(n=5)から尿を回収した。ラットを12時間絶食させ、その後代謝ケージ中に置いた。その後12時間の間、尿を回収し(絶食)、その後標準的なラットの食べ物を提供し、およびさらに12時間、尿を回収した(絶食-摂食)。
方法
以下のように痩せたZuckerラット(n=5)およびfa/fa Zuckerラット(n=5)から尿を回収した。ラットを12時間絶食させ、その後代謝ケージ中に置いた。その後12時間の間、尿を回収し(絶食)、その後標準的なラットの食べ物を提供し、およびさらに12時間、尿を回収した(絶食-摂食)。
MIN6細胞を10% FCS入りのDMEM中で摂氏37度、5% CO2で培養した。ペプチド分泌の解析のために、ほぼコンフルエントな細胞の層を洗浄し、その後無血清培地中で24時間インキュベートした。
尿および細胞培養培地中のISF401をHPLCクロマトグラフィーで検出した。10%緩衝剤B(90%アセトニトリル、0.1% v/v H3PO4、2.5mMオクタンスルホン酸)で平衡化した4.6×150mm C-18カラム、Phenomenex Luna(2)に充填する前に、試料を13000×gで5分間遠心分離した。試料注射後、線形勾配の緩衝剤A(0.1% v/v H3PO4および2.5mMオクタンスルホン酸を含むミリQ水)に対して、25分以降に100%になるまで緩衝剤Bを増加させた。合成ISF401の保持時間は16.29分であり、および尿試料中のペプチドの未知の量の定量のために、公知の量のISF401を用いて標準曲線を確立した。
光ダイオードアレイスペクトルおよびマトリックス支援レーザー脱離飛行時間型マススペクトロメトリー(MALDI-TOF)を用いて、試料中のISF401と推定されるものの分子量およびペプチド組成物を確かめた。
アミノ末端のシステイン残基を介してジフテリアトキソイドにコンジュゲートされたISF401を用いて、ウサギに免疫付与した(Institute of Medical and Veterinary Science, Adelaide, Australia)。一次接種および3回のブースター注射後、血清を回収した。
膵島細胞におけるISF401抗血清に反応する抗原構造の検出は、尿のISF401についての島β細胞起源を示唆した。マウスβ細胞株MIN6を用いて、これを検討した。無血清培地をコンフルエントなMIN6細胞で24時間馴化させた。合成ISF401の保持時間と同一のC18逆相HPLCでの保持時間(16.2分)を持つ214nmで吸収される種を馴化培地中に同定したが、非馴化培地にはなかった(図9)。16〜17分以降に回収された分画に対するMALDI-TOFマススペクトロメトリーによって428.983ダルトンの分子量が明らかになり、かつ断片化によって予期された断片のサイズが産生された(表3)。
このようにISF401はMIN6β細胞によって分泌され、膵島β細胞がISF401の内因性の源であることが確認された。MIN6細胞の培地中のISF401の出現は、テトラペプチドがより大きいペプチドの崩壊産物ではなく、β細胞から分泌されるホルモンの形態であるということも示す。ISF401は、その他のペプチドホルモンと同様に、より大きい前駆体タンパク質から処理されるということが期待されると考えられた。ペプチドのサイズが小さくかつ利用可能なデータベース中のGHTD配列の頻度が高いために、バイオインフォマティックス的なアプローチによってこの前駆体を同定するのは困難である(データは示さない)。したがって、ISF401についての生合成経路は現在公知ではない。
インスリンは栄養物刺激に応答して分泌される。インスリンとISF401の共局在は、ISF401も栄養物に応答して放出されるということを示唆すると考えられた。絶食ラットおよび摂食ラットの尿中に排泄されるISF401の量を比較することによって、これを検討した(図10)。ISF401産生がインスリン抵抗性および2型糖尿病の高インスリン血症動物モデルで変化するかどうかを決定するために、インスリン抵抗性および2型糖尿病のモデルである、肥満の(fa/fa)Zuckerラット、ならびにそれらの痩せた同腹子で実験を行った。痩せたZuckerラットでは、ISF401分泌の割合が3倍増加したのに対し、肥満のZuckerラットでは、2匹のラットはペプチドの尿濃度の大きい増加を示したが、3匹のラットでは、尿のISF401レベルが増加しないことが明らかであり、1匹のラットは尿中の検出可能なペプチドを完全に欠いていた(図10)。このようにISF401の尿排泄は接触後に増加し、およびインスリン抵抗性ラットでは排泄される量が極めて変化に富んでいる。
実施例9
1.5mg/kgという最適なISF402用量での注射したインスリンおよびISF402についての時間経過データ(図11)の調査によって、血糖の最大限の低下が、同じ時点でのインスリンだけについての0.68±0.22mmol/Lと比較して、投与後45分での1.63±0.51mmol/Lであったということが明らかになっている(図11A)。循環インスリンの増加は投与10分後にピークに達し、かつインスリンを注射した対照を上回って20分間上昇したままであった(図11B)。インスリンの循環からの消失の割合の計算によって、13分(9.9〜13分、95%信頼区間)という半減期が明らかになった。同時に、血清C-ペプチド濃度によって測定される場合の膵臓のインスリン分泌は減少し(図11C)、およびペプチドの注射後90分間そのままであった。インスリン単独ではトリグリセリドレベルに何の効果も有しなかったのに対し、インスリンと1.5mg/kg ISF402の注射10分後に、同じ時点での対照と比較して血清トリグリセリドの有意な減少があった(p<0.05、表4)。
1.5mg/kgという最適なISF402用量での注射したインスリンおよびISF402についての時間経過データ(図11)の調査によって、血糖の最大限の低下が、同じ時点でのインスリンだけについての0.68±0.22mmol/Lと比較して、投与後45分での1.63±0.51mmol/Lであったということが明らかになっている(図11A)。循環インスリンの増加は投与10分後にピークに達し、かつインスリンを注射した対照を上回って20分間上昇したままであった(図11B)。インスリンの循環からの消失の割合の計算によって、13分(9.9〜13分、95%信頼区間)という半減期が明らかになった。同時に、血清C-ペプチド濃度によって測定される場合の膵臓のインスリン分泌は減少し(図11C)、およびペプチドの注射後90分間そのままであった。インスリン単独ではトリグリセリドレベルに何の効果も有しなかったのに対し、インスリンと1.5mg/kg ISF402の注射10分後に、同じ時点での対照と比較して血清トリグリセリドの有意な減少があった(p<0.05、表4)。
(表4)ISF402および/またはインスリンで処置したメスのZucker fa/faラットにおける0時点と比較した血清トリグリセリドレベルの変化
平均±SEM(n=5)として値を表す。ap=0.03 生理食塩水で処置したラットと比較した4.5mg/kgのISF402。bp=0.04 インスリンだけで処置したラットと比較した1.5mg/kgのインスリンおよびISF402。
平均±SEM(n=5)として値を表す。ap=0.03 生理食塩水で処置したラットと比較した4.5mg/kgのISF402。bp=0.04 インスリンだけで処置したラットと比較した1.5mg/kgのインスリンおよびISF402。
外来性インスリンの添加を伴わないISF402の最適な静脈内用量は4.5mg/kgであった。時間経過は、投与後45分での1.02±0.27mmol/Lという血糖の最大限の低下を示すのに対し、生理食塩水を注射した対照では変化がなかった(0.18±0.40mmol/L)(図11D)。インスリンだけの対照と比較した場合、4.5mg/kg ISF402の注射後の血糖の最大限の低下の規模は、インスリンと1.5mg/kg ISF402の同時注射について見られるものと同様であった(それぞれ0.95および0.94mmol/L)。4.5mg/kgのISF402の注射も、注射45分後にトリグリセリドレベルを低下させた(p<0.05)(表4)。投与後10〜45分で観察された血清インスリン(図11E)およびC-ペプチド濃度(図11F)のわずかな減少は、生理食塩水で処置した対照と比較して、肝臓のインスリンクリアランスの割合の差にはならなかった(図12)。
実施例10
ISF402のインスリン増感効果の性差を詳細に調べるために、メスのラットについて上で記載されたように、年齢が一致したオスのZucker fa/faラットにISF402(1.5mg/kg)およびインスリンを静脈内注射した。オスのZucker fa/faラットは、これらのオスのラットにおける深刻な程度のインスリン抵抗性の徴候を示す、インスリンだけの注射後の血糖の着実な増加を示した。比べて、インスリンとISF402の同時注射は、注射20分後の血糖の減少をもたらし、それはさらに25分間低いままであった(図13A)。血糖の最大の低下は0.98±0.31mmol/Lであり、および注射30分後に達成された。オスのZucker fa/faラットは、メスのZuckerラットと比較して高い基礎インスリンレベルで始まり、および血清インスリンのピークは、インスリンとISF402の注射10分後に再び明らかとなった。しかしながら、規模は、メスと比較してオスでは30パーセント低かった(図13B)。血清C-ペプチド濃度は、対照およびISF402を注射したオスのラットの両方で一定のままであったが(図13C)、これはISF402を注射したメスで見られるC-ペプチドの長期にわたる下落と対照的である。このように、オスのZucker fa/faラットでは、1.5mg/kgのISF402とインスリンの静脈内注射は血糖を効果的に低下させたが、メスで観察されたよりも低い血清インスリンおよびC-ペプチド濃度に対する効果を有した。
ISF402のインスリン増感効果の性差を詳細に調べるために、メスのラットについて上で記載されたように、年齢が一致したオスのZucker fa/faラットにISF402(1.5mg/kg)およびインスリンを静脈内注射した。オスのZucker fa/faラットは、これらのオスのラットにおける深刻な程度のインスリン抵抗性の徴候を示す、インスリンだけの注射後の血糖の着実な増加を示した。比べて、インスリンとISF402の同時注射は、注射20分後の血糖の減少をもたらし、それはさらに25分間低いままであった(図13A)。血糖の最大の低下は0.98±0.31mmol/Lであり、および注射30分後に達成された。オスのZucker fa/faラットは、メスのZuckerラットと比較して高い基礎インスリンレベルで始まり、および血清インスリンのピークは、インスリンとISF402の注射10分後に再び明らかとなった。しかしながら、規模は、メスと比較してオスでは30パーセント低かった(図13B)。血清C-ペプチド濃度は、対照およびISF402を注射したオスのラットの両方で一定のままであったが(図13C)、これはISF402を注射したメスで見られるC-ペプチドの長期にわたる下落と対照的である。このように、オスのZucker fa/faラットでは、1.5mg/kgのISF402とインスリンの静脈内注射は血糖を効果的に低下させたが、メスで観察されたよりも低い血清インスリンおよびC-ペプチド濃度に対する効果を有した。
オスのZucker fa/faラットは、メスよりも大きいインスリン抵抗性を示した。メスでは血糖のわずかな減少をもたらし、およびオスでは全く減少をもたらさなかった、1U/kgのウシインスリンに対する応答の欠如によって、インスリン抵抗性は両性別で明白であった。基礎インスリン濃度も高く、メスでは27±3ng/mLおよびオスでは75.8±11.3ng/mLの血清インスリンであった。比べて、痩せたZuckerラットおける基礎インスリンレベルは、1.67±0.42ng/mLである(Qu et al., J. Endocrinol., 162:207-214(1999))。これは、オスのZucker fa/faラットがメスよりも大きい程度のインスリン抵抗性を有するということを示唆する。オスのZucker fa/faラットの体重もメスより高く、およびオスは通例、より急速に糖尿病を発症する。これは、オスのZucker fa/faラットが内臓脂肪を蓄積し易い傾向によって説明され得る。内臓脂肪は、皮下脂肪と比較してインスリンの抗脂肪分解性効果および再エステル化効果に対する感受性がより低く(Kahn and Flier, J. Clin. Invest., 106:472-481(2000))、ならびに内臓脂肪貯蔵所からの血液が直接門脈に排出され、肝臓への遊離の脂肪酸流出の増加(Hikita et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 277:423-429(2000))ならびに肝臓グルコース代謝の障害、グルコース不寛容、インスリン抵抗性、インスリン分泌、および脂質異常症を引き起こす。この文脈において、インスリンとISF402の注射は、オスおよびメス両方のZucker fa/faラットにおける血糖の同様な低下をもたらし、インスリンだけの注射と比較して投与45分後の血糖の1mmol/Lの減少(図2Aおよび13A)および注射10分後の循環インスリンの増加(図2Bおよび13B)を示した。しかしながら、メスとは異なり、血清C-ペプチドはオスでは変化せず、これはより大きい程度のインスリン抵抗性およびβ細胞機能不全に起因し得る。これらの結果は、ISF402が、メスおよびオスのZucker fa/faラットでそれぞれ見られるような中度および重度両方のインスリン抵抗性を克服することができるということを示す。
実施例11
ウシインスリンとISF402の同時注射後のインスリン増感および血清C-ペプチドの低下が、ISF402によるインスリン六量体の分散に関連するかどうかを検討するために、安定な六量体を形成しない変化した形態のヒトインスリンを使用した。16〜18週齢のメスのZucker fa/faラットに1.5mg/kgでISF402と共にLisproインスリンを注射した。Lisproインスリンだけで、メスのZucker fa/faラットへの注射60分後に、0.90±0.77mmol/Lだけ血糖が低下した。LisproインスリンをISF402と同時注射した場合、AUCによって評価されるように対照と比較して血糖のわずかな低下があったが、これは有意性には達しなかった(図14A)。動物間の高度の多様性のために、血清中のLisproインスリンは測定することができなかった(図示しない)。血清C-ペプチド濃度によって示されるように、どちらの群も内因性インスリン放出の減少を示さなかった(図14B)。このように、ISF402をLisproインスリンと同時注射した場合、ISF402のインスリン増感活性は低下した。
ウシインスリンとISF402の同時注射後のインスリン増感および血清C-ペプチドの低下が、ISF402によるインスリン六量体の分散に関連するかどうかを検討するために、安定な六量体を形成しない変化した形態のヒトインスリンを使用した。16〜18週齢のメスのZucker fa/faラットに1.5mg/kgでISF402と共にLisproインスリンを注射した。Lisproインスリンだけで、メスのZucker fa/faラットへの注射60分後に、0.90±0.77mmol/Lだけ血糖が低下した。LisproインスリンをISF402と同時注射した場合、AUCによって評価されるように対照と比較して血糖のわずかな低下があったが、これは有意性には達しなかった(図14A)。動物間の高度の多様性のために、血清中のLisproインスリンは測定することができなかった(図示しない)。血清C-ペプチド濃度によって示されるように、どちらの群も内因性インスリン放出の減少を示さなかった(図14B)。このように、ISF402をLisproインスリンと同時注射した場合、ISF402のインスリン増感活性は低下した。
Lisproインスリンは、それぞれ位置B28およびB29におけるProおよびLysの位置が逆になっていて、二量体の形成−六量体形成における中間工程を妨げているという点でネイティブなヒトインスリンと異なる。インビボにおけるLisproインスリンの単量体特性は、短時間作用型インスリン類似体としての糖尿病の処置におけるその使用を可能にする。Lisproインスリンおよび1.5mg/kgのISF402の同時注射が、Lisproインスリンだけの注射よりもさらに血糖濃度を低下させることは全くなく(図14A)、ならびにC-ペプチド濃度も同様であった(図14B)。このように、ISF402は注射した六量体インスリンと相互作用して単量体インスリンの形成を促進し、その結果注射したインスリンがすぐに効果的であるようにしている可能性がある。六量体ウシインスリンの代わりにLisproインスリンを使用した場合、Lisproインスリンが既に単量体形態にあるので、この効果は観察されない。注目すべきことに、単量体インスリンが六量体インスリンよりも静脈内注射後に血糖を低下させるのに効果的であるという見解と一致して、1U/kg体重のLisproインスリンだけの注射は、1U/kg体重のウシインスリンがもたらすよりも大きい血糖およびC-ペプチド濃度の低下をもたらした。しかしながら、これはISF402だけの注射後の血糖の低下を説明することができず、ISF402がインスリン感受性を促進するインスリン非依存的な効果も有するということを示唆している。
実施例12
ISF402の溶解度
もはや固体が溶けなくなるまで、固体のISF402を50μLアリコートの25mM重炭酸アンモニウム緩衝剤に添加した。各チューブに添加したペプチドの総重量を書き留め、および1M NaOHの添加によって各溶液のpHをおよそpH 8に調整した。室温(23〜25℃)または37℃のいずれかで24時間絶えず振盪しながら試料をインキュベートし、その後16000×gで15分間遠心分離した。各上清の2μLアリコートをミリQ-H2Oで1mg/mLの推定濃度まで希釈した。UV検出(214nm)を用いたISF402の正確な濃度を決定するためのHPLCによる後の解析のために、試料−20℃で保存した。残りの上清のpHを測定した。2μLの5M HClの添加によってpHを低減させ、ならびにチューブの中身を混合しおよび2つの温度条件下でインキュベートした。2から3の間のpHを達成するまで、pH低減、インキュベーション、および試料抽出のサイクルを繰り返した。
ISF402の溶解度
もはや固体が溶けなくなるまで、固体のISF402を50μLアリコートの25mM重炭酸アンモニウム緩衝剤に添加した。各チューブに添加したペプチドの総重量を書き留め、および1M NaOHの添加によって各溶液のpHをおよそpH 8に調整した。室温(23〜25℃)または37℃のいずれかで24時間絶えず振盪しながら試料をインキュベートし、その後16000×gで15分間遠心分離した。各上清の2μLアリコートをミリQ-H2Oで1mg/mLの推定濃度まで希釈した。UV検出(214nm)を用いたISF402の正確な濃度を決定するためのHPLCによる後の解析のために、試料−20℃で保存した。残りの上清のpHを測定した。2μLの5M HClの添加によってpHを低減させ、ならびにチューブの中身を混合しおよび2つの温度条件下でインキュベートした。2から3の間のpHを達成するまで、pH低減、インキュベーション、および試料抽出のサイクルを繰り返した。
室温および37℃の両方でのISF402の溶解度は、pH 4.6以下およびpH 6.9以上で300〜450mg/mLであった。両温度での溶解度は、pH 4.6〜6.9で減少し、pH 5.7〜6.3で最小限の溶解度が観察されたが、これはペプチドの理論的な等電点(pH 6.71)に近い[ExPASy。Compute pI/Mw tool。2006年3月31日にアクセスした、http://ca.expasy.org/tools/pi_tool.htmlで入手可能である]。室温でISF402について記録された最低溶解度はpH 6.3での165mg/mlであったが、一方37℃での最小限の溶解度はpH 6での179mg/mLであった(図15)。
実施例13
ISF402の安定性
British Pharmacopeia(British Pharmacopoeia, 1988, Her Majesty's Stationary Office, London)に従って、擬似胃液(SGF)および擬似腸液(SIF)を製剤化した。SGFは、pHが1〜1.3の、4mLの2M HClを含む50mLの蒸留水(dH2O)の中に0.1M NaCl、32mgペプシン(Sigma, St. Louis, MO)を含み、かつ100mLのdH2Oに合わせた。SIFは、156mM KH2PO4、18.6mM NaOH、1g/Lパンクレアティン(Sigma, St. Louis, MO)pH 6.8を含み、かつdH2Oで10.0mLに合わせた。ウシ血清アルブミン(BSA)または1mg/mL ISF402の添加前に、各液を室温に平衡化した。混合物を穏やかに混合し、ならびに示された時点で試料を採取しおよび解析されるまで−80℃で保存した。
ISF402の安定性
British Pharmacopeia(British Pharmacopoeia, 1988, Her Majesty's Stationary Office, London)に従って、擬似胃液(SGF)および擬似腸液(SIF)を製剤化した。SGFは、pHが1〜1.3の、4mLの2M HClを含む50mLの蒸留水(dH2O)の中に0.1M NaCl、32mgペプシン(Sigma, St. Louis, MO)を含み、かつ100mLのdH2Oに合わせた。SIFは、156mM KH2PO4、18.6mM NaOH、1g/Lパンクレアティン(Sigma, St. Louis, MO)pH 6.8を含み、かつdH2Oで10.0mLに合わせた。ウシ血清アルブミン(BSA)または1mg/mL ISF402の添加前に、各液を室温に平衡化した。混合物を穏やかに混合し、ならびに示された時点で試料を採取しおよび解析されるまで−80℃で保存した。
BSA試料を10パーセントポリアクリルアミド非還元SDS-ゲル上の電気泳動で解析し、およびCoomassie Blueで染色した。214nmでの拡張された波長モジュールが付いたWaters 440吸収検出器が接続されたWaters系を用いる逆相HPLCでISF402試料を解析した。解析カラムは、250×46nm、5μm粒子サイズの、Phenomenex luna (2)-c-18カラムであった。溶媒は脱気し、ならびに使用した緩衝剤は、緩衝剤A:100パーセントミリQ H2O、0.1パーセントv/v H3PO4、2.5mM オクタンスルホネート、および緩衝剤B:90パーセントアセトニトリル(aq)、0.1パーセントv/v H3PO4、2.5mM オクタンスルホネートであった。SIFおよびSGF中の50μlのISF402を注射し、ならびに2分間10パーセントBおよび25分以降10〜100パーセントのBの線形勾配で溶出した。カラムを運転の合間に100パーセントBで13分間掃除し、および10パーセントBで10分間平衡化した。保持時間(分で)およびISF402のピーク下面積を反応時間経過に対してプロットした。
SGFおよびSIF反応混合物中のISF402についてのマススペクトロスコピーを、30Vのコーン電圧を用いるポジティブイオンモードのエレクトロスプレースペクトロメーターへのISF402ピーク分画の直接注射によって決定した。420分のSGFおよびSIF試料に対してエレクトロスプレーイオン化マススペクトロスコピー(ESI-MS)を行った。ISF402のポジティブイオンは470.0ダルトンの分子量を有する。
BSAはSGF中で2分以内に分解した(図16A)。SIF中のパンクレアティンの活性は、BSAバンドの下のスメアーの出現およびより長いインキュベーション後のより低分子の分解産物の出現によって示された(図16B)。逆相HPLC保持時間およびピークのサイズによって決定されるように、SGFおよびSIF中での8時間のインキュベーション後、ISF402は分解しなかった(図16CおよびD)。化学的完全性はESI-MSによって確認した。SGFまたはSIF中での7時間のインキュベーション後、ISF402の分子質量は不変であった(図17AおよびB)。HPLC緩衝剤ブランクのESI-MSによって、ISF402よりも低い分子量を持つ構成物質はISF402の断片ではなく緩衝剤構成要素に起因するということが示された(図17C)。
実施例14
ISF402によるインスリン増感
メスのZucker fa/faラットをMonash Animal Services(Monash University, Clayton, Australia)から購入した。ラットをBiochemistry and Molecular Biology Animal House(Monash University, Victoria, Australia)で飼育し、および22℃で環境が制御された部屋の中で7日間順応させた。ラットに通常食および水を自由に与えた。全ての実験はUniversity Animal Care and Ethics Committee指針に従って行われ、およびMonash University Animal ethics committeeによって承認された。
ISF402によるインスリン増感
メスのZucker fa/faラットをMonash Animal Services(Monash University, Clayton, Australia)から購入した。ラットをBiochemistry and Molecular Biology Animal House(Monash University, Victoria, Australia)で飼育し、および22℃で環境が制御された部屋の中で7日間順応させた。ラットに通常食および水を自由に与えた。全ての実験はUniversity Animal Care and Ethics Committee指針に従って行われ、およびMonash University Animal ethics committeeによって承認された。
16〜18週齢のラットに水を自由に利用させて晩中絶食させ、その後35mg/kg体重で腹腔内投与(IP)したペントバルビトン(Nembutal, Phone Merieux, QLD, Australia)で麻酔した。被検物質の投与前に1時間、Medisenseグルコメーター(Abbott Laboratories, Abbott Park, IL)を用いて血糖をモニターした。ISF402を2U/kgのウシインスリンと共にIPにより3mg/kgで投与し(n=6)、および対照にインスリンだけをIP注射した(n=8)。ISF402を経口的に与える場合には、2回の実験を行った。第一の実験で、対照に強制飼養で経口的に生理食塩水を与え(n=5)、および被検群に15mg/kgで経口的にISF402を与えた(n=5)。15分後、インスリン(2U/kg)をIP注射した。手順を3日後に繰り返し、対照ラットにもう一度生理食塩水を与え、および処置ラットに30mg/kg ISF402を与えた。第二の実験は別々の群のラットに対して行い、実験では対照に先の通りに経口的に生理食塩水を与え(n=5)、および処置ラットに30mg/kgで経口的にISF402を与え(n=5)、次いで15分後に、2U/kgインスリンのIP注射を行った。両実験について、ペプチドの投与後に、血液を尾静脈から回収しおよびグルコースをすぐに測定した。製造元の取扱説明書に従ってLinco Rat C-peptide and Insulin RIAキット(Linco Research社, St Charles, MO)を用いた後のC-ペプチドおよびインスリンの測定のために、血清試料も回収した。
インスリン抵抗性および高インスリン血症を含むヒト2型糖尿病に対するその類似性のために、ISF402のインスリン増感活性を検討するためにZucker fa/faラットを選択した。2U/kgウシインスリンのIP注射はほんのわずかな血糖の低下を引き起こし、Zucker fa/faラットの特徴を示す極度のインスリン抵抗性を示した(図18A)。しかしながら、インスリンと3.0mg/kgのISF402のIP注射は血糖の有意な低下をもたらした(図18A)。血糖の最大限の低下は注射後45分での1.56±0.42mmol/Lであり、およびより低い血糖読み取りが1時間を上回る間持続された。さらに、ISF402の注射20分後、循環インスリン濃度はインスリンだけの注射と比較して2倍高く、および40分間上昇したままであった(図18B)。同時に、血清C-ペプチド濃度から測定されるように、膵臓のインスリン分泌はペプチドの注射後20〜60分まで減少した(図18C)。
15mg/kgの用量のISF402を経口投与し、および15分後IPインスリン寛容性検査(IPITT)を行った。IPITTの十四(14)分後(ISF402の投与の29分後)、血糖が減少する傾向があったが、結果は様々でありかつ統計的有意性に達しなかった(図19A)。3日後、30mg/kgの用量のISF402を同じラットに経口投与し、およびIPITTを繰り返し、それによってインスリン注射した対照群と比較して血糖の有意な減少が産生された(図19A)。繰り返し用量が二回目の用量のインスリン感受性の増加に寄与したかどうかを詳しく調査するために、異なる群のラットに対して実験を繰り返した。この実験において、30mg/kgの単回用量のISF402を強制飼養で経口的に与え、および先の通りにIPITTを行った。時間経過の間存続する血糖の有意な減少があった(図19B)。ISF402およびインスリンのIP注射とは異なり、経口ISF402後の血糖の低下は、循環インスリンの増加またはC-ペプチド濃度の低下と関連しなかった(それぞれ、図19CおよびD)。
実施例15
メスの肥満のZucker fa/faラットにおける14C-ISF402の投与
14C-ISF402(22.7μCi/mg)を水に溶かし、ならびに非標識ISF402で経口投与用に30mg/mLおよび静脈内(IV)投与用に4.5mg/mLの濃度まで希釈した。実験前日、30mg/kg、260〜263.7kBq/kg(5.0〜5.1μCi/kg)での強制飼養によるまたは4.5mg/kg、103.0〜107.3kBq/kg(1.98〜2.06μCi/kg)でのIVによる14C-ISF402の経口投与前に、16〜18週のメスのZucker fa/faラット(300〜400g)に水を自由に利用させて一晩中絶食した。14C-ISF402の投与後、ラットを代謝ケージの中に置き、食物および水を自由に利用させた。
メスの肥満のZucker fa/faラットにおける14C-ISF402の投与
14C-ISF402(22.7μCi/mg)を水に溶かし、ならびに非標識ISF402で経口投与用に30mg/mLおよび静脈内(IV)投与用に4.5mg/mLの濃度まで希釈した。実験前日、30mg/kg、260〜263.7kBq/kg(5.0〜5.1μCi/kg)での強制飼養によるまたは4.5mg/kg、103.0〜107.3kBq/kg(1.98〜2.06μCi/kg)でのIVによる14C-ISF402の経口投与前に、16〜18週のメスのZucker fa/faラット(300〜400g)に水を自由に利用させて一晩中絶食した。14C-ISF402の投与後、ラットを代謝ケージの中に置き、食物および水を自由に利用させた。
7時間の時間経過にわたって尾静脈から血液試料を回収した。投与後4および12時間で尿を回収した。全血試料(100μL)を回収しおよびドライアイス中に置き、その後−80℃で保存した。全血由来の50μLの血清をT-MG凝血キャピジェクト(capiject)チューブ(Terumo, Elkton, MD)の中に回収した。血液を室温で3000×gで90秒間遠心分離することによって、血清を分離した。それぞれ、100μL および50μLの全血および血清を放射能の測定に使用した。2容量の試料、2容量の1.4M NaOH、および1容量の30パーセント過酸化水素水で全血および血清試料を可溶化した。蒸留水の添加によって最終容量を1mLにした。4mLのHiSafe3 Optiphase(PerkinElmer, Boston, MA)を添加し、およびWallacシンチレーションカウンターで放射能を決定した。
放射能について解析するまで、尿を−20℃で凍結した。尿の総容量を測定した後、100μLの尿および100μLエタノールを4 mLシンチラントに添加した。シンチラントの添加後、試料を一晩中置いておき、その後Wallac 1409液体シンチラントカウンター(PerkinElmer, Boston, MA)を用いて放射能についてカウントした。読み取りが一定になるまで全ての試料中の放射能を4週の間にわたって数回カウントした。放射能は、μg当量(eq.)/mLと表した。これは、投与されたペプチドの特定の放射能で割った試料のmL当たりのdpmから計算された。血清および尿試料中の放射性標識ペプチドの完全性を上記のような逆相HPLCによって決定した。
Zucker fa/faラットの大腿静脈における14C-ISF402のIV注射の二(2)分後、ラットのISF402は全血中に12±1μg/mLの濃度で検出され、およびこの反応性の多くは血清中にあった(血清中濃度24.8±0.3μg/mL)(図20A)。注射の九十(90)分後、循環中の放射能は、放射能が無傷のISF402に起因すると仮定すれば、全血中で3.4±1.3μg/mL(血清中で8±2μg/mL)まで減少し、および時間経過(すなわち、7時間)の最後に、2.2±1.5μg/mLのISF402が検出された。経口投与後、14C-ISF402は投薬後30分以内に循環中に現れ、および循環中の放射能は時間と共に徐々に減少した(図20B)。90分後、標識ISF402が依然として無傷であると仮定すれば、23.7±2.1μg/mLに対応するレベルが全血中で検出され、および同様の濃度(22.1±4.9μg/mL)が血清中で検出された。血中14C-ISF402-時間経過(7時間)の最後に、44.2±2.5μg/mLのISF402が全血中で検出可能であった。
放射能が無傷のペプチドに対応するかまたは分解されたペプチドに対応するかを決定するために、尿および血清試料を逆相HPLCで分離し、ならびにプロファイルを無傷の14C-ISF402と比較した。無傷の14C-ISF402(図21A)ならびにラットに投与された標識および非標識ISF402の混合物(図21B)は両方とも分画15〜17の中に溶出する。IV投与2分後に回収された血清における溶出プロファイルは、14〜17分でのピークを同定し、ISF402が無傷であるということを示している(図21C)。経口投与120分後に回収された血清試料中の放射能の溶出プロファイルは、試料中の全放射能のおよそ27パーセントに対応する15〜17分での小さいピークを示すが(図21D)、存在する放射能の量は検出の限界に近かった。投薬後4時間にわたって回収された尿は、分解されたペプチドおよび無傷のISF402の混合物を含み、放射能の大部分は、遊離のバリンに対応する、分画3、および無傷のISF402に相当する分画15〜17に溶出した(図21E)。別の分解産物または別の分子に結合したISF402に相当し得る、第3のピークも20分の保持時間に存在した。
興味深いことに、投与の12時間後、2つのピークのみが明らかであった。放射能の多く(47パーセント)は無傷のISF402と関連したが、一方32パーセントは遊離のバリンと関連した(図21F)。14C-ISF402尿-時間経過(すなわち、12時間)の最後に、尿中に取り出された平均の14C-ISF402は、投与された全放射性ISF402の0.97±0.13パーセントであった。
実施例12〜15についての考察
腸のぺプチダーゼによる消化および腸上皮を横断する透過性の悪さのために、経口的に与えられる場合、多くのペプチド薬物候補は効果的ではない。ここに、インスリン増感テトラペプチドISF402はタンパク質分解的な分解に抵抗し、および経口投与された場合、ラットにおけるインスリン感受性を効果的に改善させるということが示されている。
腸のぺプチダーゼによる消化および腸上皮を横断する透過性の悪さのために、経口的に与えられる場合、多くのペプチド薬物候補は効果的ではない。ここに、インスリン増感テトラペプチドISF402はタンパク質分解的な分解に抵抗し、および経口投与された場合、ラットにおけるインスリン感受性を効果的に改善させるということが示されている。
経口投与される薬物が腸壁を横断して吸収され、かつ無傷で門脈に入るためには、高度の溶解度および安定性が重要である。腸細胞の頂端膜および側底膜を横断する拡散への原動力は、薬物の溶解度および濃度勾配に依存し、ならびにイオン化可能な薬物について、これは腸の区画間のpKaおよびpHプロファイルによって変化する。ISF402は水性溶液中で極めてよく溶け、ならびに双性イオンペプチドおよび薬物に典型的な様式で、溶解度がpHによって変化した(Pasini and Indelicato, Pharm. Res., 1992, 9:250-254)。薬物安定性は等しく重要である。胃でのタンパク質分解は、多くの場合、それが吸収のために腸に達する前にペプチドを破壊する。ポリペプチドは通例、胃および膵臓の酵素の作用によって、タンパク質断片および遊離のアミノ酸にまで分解される。ISF402は例外であり、ならびに擬似胃液および腸液中での長期にわたるインキュベーションに持ちこたえることができた。しかしながら、ISF402はやはり、肝門脈への侵入前に遭遇しなければならない、腸および刷子縁ペプチダーゼの影響を受け易い可能性がある。
経口投与の主な限界は、消化液による連続的希釈による吸収の部位での投薬形態の保持の欠如である(Weatherell et al., Oral Mucosal Drug Delivery, NY, Marcel Dekker, 1996, p157-191)。この希釈効果および腸を横断して通過する時の刷子縁ペプチダーゼによる分解の可能性を考慮に入れて、ISF402の経口有効性を検討するために最初に選ばれた経口用量は、腹腔内経路と比較して5〜10倍高かった。15mg/kgという用量は、インスリン感受性の増加に向かう傾向を示したが、これは有意性には達しなかった。経口用量を30mg/kgまで増加させおよび3日後に同じラットに投与した場合、IPITTで評価されるようなインスリン感受性の有意な増加があった。別の群のZucker fa/faラットに30 mg/kgを経口的に投与する第二の実験が、繰り返し用量実験におけるものと同様のグルコースプロファイルの低下を産生したので、2用量のISF402の累積的効果はないと思われた。インスリンとISF402のIP注射が、IV注射についての本発明者らの以前の報告と同様の、循環インスリンの増加およびC-ペプチドの低下を結果的にもたらしたということは注目すべきことである。しかしながら、経口ISF402、それに続くIPインスリン注射は、循環インスリンおよびC-ペプチド濃度を変化させなかった。これらの結果は、2つが別々の経路で投与される場合には生じない注射されたインスリンとISF402の間の直接的な相互作用を示唆する。それでもやはり、ISF402の経口送達はIPインスリン寛容性試験で評価されるようなインスリン感受性を改善するのにやはり効果的であった。
14C-ISF402の経口投与後30分以内に、放射能を循環中で検出することができた。この放射能の25から50パーセントがやはり無傷のISF402ペプチドと関連したという証拠は、RP-HPLC溶出プロファイルが元になっている。経口投薬30分後、およそ4μg/mLのISF402が全血および血清中で検出され、ならびに120分後、ISF402レベルは20μg/mLを上回るまで増加し、その時放射能のおよそ25パーセントが無傷の14C-ISF402に相当した。ISF402の安定性のさらなる証拠は、投与後12時間にわたって回収された尿中に取り出された放射能の46パーセントは無傷のISF402であったという観察が元になっている。これらのデータは、循環に入る間に、アミノ末端のバリンがISF402の50〜75%から切断されるということを示す。特に、放射性標識バリンが新たに合成されるタンパク質に取り込まれかつ循環に再び侵入し得るので、これは濃度-時間プロファイルの解釈を限定する。しかしながら、データは、吸収されたISF402の25から50%が様々な胃腸管環境に持ちこたえ、および腸を横断して無傷で循環に侵入することができたということも示す(図21F)。しかしながら、IPITTは、30mg/kg ISF402の経口投与後の血糖の最大の減少が、循環中の最高濃度の時間に対応する、投与2時間後に生じるということを示唆した。
実施例16
尿中のISF401のELISA検出
代わりの方法論において、ELISAアッセイ技術を用いてISFペプチドを生体液中で検出してもよい。
尿中のISF401のELISA検出
代わりの方法論において、ELISAアッセイ技術を用いてISFペプチドを生体液中で検出してもよい。
方法
例として、ISF401およびISF402に適用されるような方法を記載する。本方法は、本明細書において記載された任意のISFペプチドに無理なく適用されることができ、および当業者は、それがその他のISFペプチドに好適であるように、記載されたアッセイを適合させることができると考えられた。
例として、ISF401およびISF402に適用されるような方法を記載する。本方法は、本明細書において記載された任意のISFペプチドに無理なく適用されることができ、および当業者は、それがその他のISFペプチドに好適であるように、記載されたアッセイを適合させることができると考えられた。
0.5mgのジフテリアトキソイドコンジュゲートにコンジュゲートされたISF401またはISF402(ISF-diptox)の複数回の皮下注射によって、New Zealand Whiteウサギでポリクローナル抗体を作製した。ジフテリア毒素へのコンジュゲーションは、ペプチドへのN末端システインの添加およびマレイミドカプロイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MCS)リンカーの添加によった。完全フロインドアジュバント(Institute of Medical and Veterinary Science, Adelaide, Australia)との注射の前にISF-diptoxを乳化した。ひとたび3回目および最後の免疫付与が完了したら、8週後に抗血清を回収した。
pH 7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH 7.2)中の2パーセントのカゼイン(カゼインブロッキング溶液)(200μL/ウェル)でストレプトアビジンコーティングしたプレートをブロッキングした。絶えず混合しながら、25℃で1時間プレートをインキュベートした。0.1パーセントTween-20を含むPBS(PBST)中でプレートを4回洗浄した。100μLの5μg/mLビオチン化ISF401またはISF402で、ストレプトアビジンをブロッキングしたプレートをコーティングした。ビオチン化ペプチドは、ビオチン-SGSG-GHTD-NH2またはビオチン-SGSG-VHTD-NH2であった。インキュベーション後、プレートを先の通りPBSTで洗浄した。
カゼインブロッキング溶液中の50μg/mL〜6.1pg/mLの連続希釈のISFを用いて競合的阻害アッセイ用の標準曲線を作成した。公知の量のISF401またはISF402を含むペプチド溶液ならびに血清および尿被検試料をエッペンドルフチューブ中で80℃で15分間予めインキュベートし、その後等しい容量の1/3200希釈の抗血清を混合し、ならびに25℃で45分間インキュベートした。ペプチド-抗体混合物をISF-ビオチン/ストレプトアビジンコーティングしたプレートのウェルに添加し、および絶えず混合しながら25℃で1時間保った。ウェルをPBSTで4回洗浄し、その後100μL/ウェルの1/4000 HRPコンジュゲートされた抗ウサギ抗体と25℃で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで4回およびPBSで1回洗浄した。100μL/ウェルの基質溶液の添加によって、25℃で20±5分間、色が目に見えるようにした。
結果および考察
遊離のISFペプチドによるISF抗体の固定化ビオチン-ISFへの結合の阻害は、97.6pg/mLの濃度に至るまで明らかであった(図22AおよびB)。6.25μg/mL以上の濃度で、阻害は100パーセントに近かった。S字形の阻害曲線の線形部分(97.6pg/mL〜6.25μg/mL)についての線形回帰係数は0.98であった(図22AおよびB)。
遊離のISFペプチドによるISF抗体の固定化ビオチン-ISFへの結合の阻害は、97.6pg/mLの濃度に至るまで明らかであった(図22AおよびB)。6.25μg/mL以上の濃度で、阻害は100パーセントに近かった。S字形の阻害曲線の線形部分(97.6pg/mL〜6.25μg/mL)についての線形回帰係数は0.98であった(図22AおよびB)。
尿のISFの測定用のCI-ELISAの有用性を様々なラット尿試料で検討し、ならびに結果を実施例10で記載された方法を用いるRP-HPLCおよび214nmでの溶出ペプチドの検出を用いた結果と比較した。公知の量のISFの標準曲線と16.2〜16.3分のピークの曲線下面積の比較によって、尿のISFを定量した。同じ原尿試料についてのCI-ELISA結果とこれらの結果の比較によって、有意な相関関係(r2=0.92)が示された(図23)。
実施例17
方法
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて六量体インスリンに対するGHTD-アミド(ISF401)の効果を調査した。組換えヒトインスリン溶液(Sigma I9278)を10mM Tris pH 7.4で2mg/mLまで希釈し、および(214nmで強く吸収し、かつGHTD-アミドと共溶出するHEPESを除去するために)10mM Tris pH 7.4に対して透析した。その後、フェノールを4mMまで、NaClを140mMまで、およびZnCl2を100μMまで添加することによって、1.5mg/mLのインスリンストック溶液を調製した。サイズ排除クロマトグラフィーの前に、ストックインスリンを水または被検ペプチドのいずれかと混合し、適用できる場合には、各々最終濃度1mg/mLのインスリンおよび被検ペプチド、ならびに10mM Tris pH 7.4、140mM NaCl、および100mM ZnCl2を与え、その後室温で1時間インキュベートした。その後、インスリンまたは混合物の試料(800μL)を、0.1mL min-1の流速のTris緩衝等張生理食塩水(140mM NaCl、10mM Tris/HCl pH 7.4、60μM ZnCl2)を含む溶離剤を用いる0.1mL min-1の流速の1×30cm Superdex 75 HR 10/30カラム、214nmおよび216nmでのUV検出、ならびにタンパク質決定用の0.5mL分画の回収を用いるサイズ排除クロマトグラフィーに供した。同じ条件下で流したタンパク質サイズ標準アプロチニン(6kDa)およびカルボニックアンヒドラーゼ(29kDa)はそれぞれ18.85mLおよび14.75mLで溶出した。
方法
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて六量体インスリンに対するGHTD-アミド(ISF401)の効果を調査した。組換えヒトインスリン溶液(Sigma I9278)を10mM Tris pH 7.4で2mg/mLまで希釈し、および(214nmで強く吸収し、かつGHTD-アミドと共溶出するHEPESを除去するために)10mM Tris pH 7.4に対して透析した。その後、フェノールを4mMまで、NaClを140mMまで、およびZnCl2を100μMまで添加することによって、1.5mg/mLのインスリンストック溶液を調製した。サイズ排除クロマトグラフィーの前に、ストックインスリンを水または被検ペプチドのいずれかと混合し、適用できる場合には、各々最終濃度1mg/mLのインスリンおよび被検ペプチド、ならびに10mM Tris pH 7.4、140mM NaCl、および100mM ZnCl2を与え、その後室温で1時間インキュベートした。その後、インスリンまたは混合物の試料(800μL)を、0.1mL min-1の流速のTris緩衝等張生理食塩水(140mM NaCl、10mM Tris/HCl pH 7.4、60μM ZnCl2)を含む溶離剤を用いる0.1mL min-1の流速の1×30cm Superdex 75 HR 10/30カラム、214nmおよび216nmでのUV検出、ならびにタンパク質決定用の0.5mL分画の回収を用いるサイズ排除クロマトグラフィーに供した。同じ条件下で流したタンパク質サイズ標準アプロチニン(6kDa)およびカルボニックアンヒドラーゼ(29kDa)はそれぞれ18.85mLおよび14.75mLで溶出した。
2つのペプチドがゲルマトリックス内部で接触したままで、それによって分離過程の間に2つの間に相互作用が生じることが可能になるのを確実にするために、3,000〜70,000Daの分画範囲を有する、ゲルマトリックスおよび充填される試料容量を選んだ。この濃度ではインスリンが主にZn2+依存性の六量体として存在するということが示されているので、インスリンの濃度を、2つのZn2+/六量体の存在下、pH 7.4で1mg/mLに維持した。
結果
ヒトインスリンだけのサイズ排除クロマトグラフィーは、13.315mLでの単一ピークとしての六量体インスリンの溶出を結果的にもたらす(図24A)。GHTD-アミドとインスリンのインキュベーション、サイズ排除クロマトグラフィーによる分離、および276nmでの溶出物のモニタリングの後、13.39〜13.95mLでのピークの低下および広がりによって示されるように六量体インスリンの量は低下する。15.085mLおよび19.045mLで出現する2つの小さいピークはそれぞれ二量体インスリン(11.8kDa)および単量体(5.8kDa)インスリンに対応する(図24B)。
ヒトインスリンだけのサイズ排除クロマトグラフィーは、13.315mLでの単一ピークとしての六量体インスリンの溶出を結果的にもたらす(図24A)。GHTD-アミドとインスリンのインキュベーション、サイズ排除クロマトグラフィーによる分離、および276nmでの溶出物のモニタリングの後、13.39〜13.95mLでのピークの低下および広がりによって示されるように六量体インスリンの量は低下する。15.085mLおよび19.045mLで出現する2つの小さいピークはそれぞれ二量体インスリン(11.8kDa)および単量体(5.8kDa)インスリンに対応する(図24B)。
インスリンおよびNCP、亜鉛をキレートしない対照テトラペプチド、の混合物の214nmでの溶出プロファイルは、同様のサイズの2つの別個のピークの存在を示した(図24C)。13.21〜14.09mLに及ぶ最初のものは六量体インスリンに対応し、および18.56mLにおける二番目のものはNCPに対応する。276nmでのインスリンおよびNCPの溶出のモニタリング(図24D)によって、13.21〜14.09mLでのピークは六量体インスリンからなり、ならびに18.56mLでのピークに存在するインスリンはないということが示されている。これらの結果は、インスリンは検出するが、GHTD-アミドもNCPも検出しないブラッドフォード法による分画のタンパク質解析によって確認された。
したがって、亜鉛結合ペプチドGHTD-アミドの六量体インスリンへの添加はインシュリンと相互作用し、六量体の二量体および単量体形態への解離(分解)を引き起こす。亜鉛をキレートしないペプチドの添加は六量体インスリンの解離を引き起こさなかった。
Claims (24)
- ペプチドが、Gly-His-Thr-AspまたはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体である、請求項1記載の組成物。
- インスリンが、誘導体化された、合成の、または組換えのヒトインスリンである、請求項1記載の組成物。
- インスリン:ペプチド比が1:1または2:1である、請求項5記載のインスリン-ペプチド複合体。
- 多量体インスリン複合体が二量体または六量体インスリン複合体である、請求項8記載の方法。
- 多量体インスリン複合体が六量体インスリン複合体である、請求項9記載の方法。
- ペプチドが、
Val-His-Thr-Asp(ISF402);ならびに
Gly-His-Thr-Asp(ISF401);
またはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体
から選択されるテトラペプチドである、請求項12記載の方法。 - インビボの血糖値をヒトにおいて調節する、請求項11記載の方法。
- ペプチドが、
Val-His-Thr-Asp(ISF402);ならびに
Gly-His-Thr-Asp(ISF401);
またはC末端および/もしくはN末端がキャップされたその誘導体
から選択されるテトラペプチドである、請求項15記載の方法。 - 糖尿病が1型糖尿病である、請求項15記載の方法。
- 糖尿病が、インスリンの投与を必要とする2型糖尿病である、請求項15記載の方法。
- インスリンおよびペプチドの組み合わせを単一の組成物として投与する、請求項15記載の方法。
- 組み合わせの各構成要素を別々に、同時に、または連続的に投与する、請求項15記載の方法。
- 組み合わせを別の治療薬剤と共に投与する、請求項15記載の方法。
- その他の治療薬剤が別の形態のインスリンまたはインスリン増感剤である、請求項22記載の方法。
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