JP2009512508A - トロポエラスチンの使用および生産方法、およびトロポエラスチン生体材料 - Google Patents

トロポエラスチンの使用および生産方法、およびトロポエラスチン生体材料 Download PDF

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Abstract

人体内に移植可能な装置および当該装置を製造する方法を提供する。当該装置は、基材の外表面の少なくとも一部に、生体適合性被膜を有する。当該生体適合性被膜は、トロポエラスチンを含有する。生体適合性被膜は、前記基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、トロポエラスチンの使用方法、およびトロポエラスチン生体材料の生産方法に関する。
弾性繊維は、動脈と同様に、皮膚や肺のような種々の組織の弾性に関与しており、2つの形態的に異なる成分であるエラスチンおよびミクロフィブリルから構成されている。ミクロフィブリルは、前記繊維において定量的により少ない成分を構成し、弾性繊維の構造および構築に重要な役割を果している。
弾性繊維において最も豊富な成分は、エラスチンである。エラスチンの緩和エントロピーは、弾性繊維のゴム様弾性に関与している。脊椎動物において、エラスチンは、トロポエラスチンの分泌および架橋結合を通して形成される。トロポエラスチンは、72kDaの生合成により自然発生するエラスチンの前駆物質である。例えば、これは、Bedell-Hoganらの論文(非特許文献1)において考察されている。
バルーン血管形成術で開通されたアテローム硬化性狭窄症の30〜40パーセントは、中膜細胞(medial cells)の内殖(ingrowth)の結果として再狭窄する。内膜内への平滑筋の内殖(内方成長)は、弾性板の引き裂きや除去を招来するバルーン血管形成術による重度の拡張障害、血管吻合やその他の血管外傷の場合と同様に、動脈の内弾性板(IEL)が切り取られ、引き裂かれ、あるいは、欠失している動脈の部分においてより優勢なようである。
血管ステントのような補綴物を用いて、障害後に、筋細胞の内殖に起因する再狭窄や血管壁の再狭小化(re-narrowing)の問題を解消することに成功した例がある。しかしながら、金属ステントやスカフォード(足場:scaffold)は、現在、非観血的なカテーテルを用いるシステムによって、ダメージを受けた動脈を支持するために配置されているが、これらは、本質的に血栓形成性(thrombogenic)であり、それらを配置することにより、悲劇的な血栓性の閉鎖を生じ得る。
また、金属ステントは、内腔の再狭窄や閉鎖を生じ得る数週以内に、著しい内膜肥厚性の反応を生じることが十分に示されている。最適な動脈の再建は、動脈組織を復元して、正常な血管の生理機能や生態を回復し、結果として、血管の恒常性(homeostasis)の急性期および長期における順応不良メカニズムを最小限に抑制することができるであろう。
疾病や障害による動脈壁に対するダメージは、内皮、内弾性板(internal elastic lamina)、中膜平滑筋(medial smooth muscle)および外膜に影響を及ぼし得る。大抵の場合、内因性の宿主反応(endogenous host response)は、ダメージの重症度にもよるが、数週間から数ヶ月の期間で、内皮層、平滑筋層および外膜層を修復および置換することができる。しかしながら、エラスチンは、高度かつ後発生的な再構築(extensive post-developmental remodelling)を受けず、エラスチン合成能は、年齢にともなって衰える(非特許文献2参照)。
したがって、一度ダメージを受けると、弾性繊維は、実質的に再形成されない。高血圧症や新生内膜肥厚(neointimal hyperplasia)の傾向がある動脈壁における、エラスチンの新合成(neosynthesis)は、後発生的なエラスチン合成(post developmental elastin synthesis)の最も顕著な例を表している。この合成により、組織が正常のエラスチン構造と異なり、おそらく正常な血管生理の回復に寄与しないエラスチンの微小繊維(fibrils)により主に構成される弾性構造を結果として生ずる。
内膜肥厚やアテローマ性動脈硬化症の動物モデルにおいて、内弾性板の破壊が大型動物や霊長類における、確実な内膜肥厚の発生やアテローム発生の前提条件であることは十分に受け入れられている(非特許文献3参照)。この所見は、種々のタイプの細胞の生物学的制御における、エラスチンに対する役割を示唆する種々の系統の証拠によってサポートされている。
病理学的な研究によって、エラスチンが内皮細胞に対して確実に付着することや、エラスチンがマイトジェンや成長因子のような巨大分子に対するバリアとして機能し、これらの分子が血管の中膜内に入ることを防止し得ることが示されている。直ちに、実質的かつ継続的なエラスチン膜が内皮に形成された場合、脂質、泡沫マクロファージおよびその他の炎症細胞は、容易に内膜内に入れないようである(非特許文献4参照)。
さらに、オオヤマ、トシロおよびサカモトによって、可溶性エラスチンペプチドおよび血小板由来成長因子の化学走性効果(chemotactic effects)が、基質結合性エラスチンペプチド(substratum bound elastin peptides)によって阻害されることが示されている(非特許文献5、非特許文献6参照)。インビトロの実験では、細胞結合性配列(cell binding sequence)VGVAPGに対する130kDaの細胞表面エラスチン結合性タンパク質(cell surface elastin binding protein)と相互に作用することによって、アルファエラスチンがウサギ動脈SMCの収縮性(contractile)から合成(synthetic)への表現型遷移(phenotypic transition)を抑制することが示されている。
弾性繊維に付着しているウサギ平滑筋細胞は、障害に対するレストノティック(restonotic)な反応によって識別される合成の状態より収縮性の状態を好むようである(非特許文献7参照)。オオヤマらによる同様の研究によれば、収縮タイプ(contractile type)から改変タイプ(modified type)への平滑筋細胞の表現型の変化は、当該細胞がエラスチン被覆シャーレ上で成長する場合に、顕著に遅延することが実証されている。
本発明は、当該技術分野において知られている補綴物に関する問題を実質的に解消する組織補綴物(特に、血管修復用材料)を実現し得る。
トロポクラスチン(tropoclastin)系生体材料を用いる動脈の置換または再建は、正常な強度および弾性を付与し得るだけでなく、正常な内皮の再成長を促進し、平滑筋細胞遊走(smooth muscle cell migration)を抑制し、結果として、人工物では現在不可能な程度に正常な血管の恒常性を回復することができる。
また、金属ステントやスカフォードは、現在、ダメージを受けた動脈に対して、非観血的なカテーテルを用いるシステムによって配置されているが、金属は、本質的に、血栓形成性であり、著しい内膜肥厚性の反応が生じ得る。最適な動脈の再建は、動脈組織を復元して、正常な血管の生理機能を回復し、結果として、血管の恒常性の急性期および長期における順応不良メカニズムを最小限に抑制することができるであろう。疾病や障害による動脈壁に対するダメージは、内皮、内弾性板、中膜平滑筋および外膜に影響を及ぼし得る。
大抵の場合、内因性宿主反応は、ダメージの重症度にもよるが、数週間から数ヶ月の期間で、内皮層、平滑筋層および外膜層を修復および置換することができる。しかしながら、一度破壊やダメージを受けた内弾性板は、再構築されない。
血管壁の弾力性および強度における重要な構造的な役割に加えて、弾性板は、平滑筋細胞の内殖に対するインヒビターや、血流中のマイトジェンや成長因子のような巨大分子に対するバリアとしても機能すると考えられている。内膜肥厚やアテローム性動脈硬化症の動物モデルにおいて、内弾性板の破壊が大型動物や霊長類における、確実な内膜肥厚の発生やアテローム発生の前提条件となることは十分に受け入れられている。
血管、尿道、十二指腸、食道および鼓膜の修復のために、組織弾性および強度を付与する天然の細胞外基質タンパク質であるエラスチンに基づく組織置換が、開発され、慢性の長期動物モデルにおいて研究されている。抗生物質、凝固剤、鎮痛薬やその他の薬剤が組み合わされることにより、局所的には高濃度で全身的には低濃度となるように、移植サイトにおいて放出を制御した医学的治療が可能となる。
Bedell-Hogan, et al, "Oxidation, Cross-linking, and Insolubilization of Recombinant Crosslinked Tropoelastin by Purified Lysyl Oxidase", Journal of Biological Chemistry, Vol. 268, No. 14, 10345-10350 (1993) Jeffrey M. Davidson and Gregory C. Sephel, "Regulation of Elastin Synthesis in Organ and Cell Culture", Methods in Hnzymology 144 (1987) 214-232 Schwartz R. S., et al, "Restenosis After Balloon Angioplasty: Practical Proliferation Model In Porcine Coronary Arteries", Circulation 1990: 82: 2190-2200 Sims, F. H., et al, "The Importance of A Substantial Elastic Lamina Subjacent To The Endothelium hi Limiting the Progression of Atherosclerotic Changes", Histopathology (1993) 23:307-317 "Elastase in the Prevention of Arterial Aging and the Treatment of Atherosclerosis" Chadwick, Derek J. and Jamie A. Goode, "The Molecular Biology and Pathology of Elastic Tissues", John Wiley and Sons Ltd, Chichester, England (1995) Yamamoto, et al, "Changes in Elastin Binding Proteins During Phenotypic Transition of Rabbit Arterial Smooth Muscle Cells in Primary Culture", Experimental Cell Research 218 (1995) pg.339-345
人体内に移植可能な装置、および、この装置を製造するための方法を提供する。本発明の各種の実施形態において、装置は、基材の外表面の少なくとも一部のトロポエラスチンを含有する生体適合性被膜を含む。一の実施形態において、生体適合性被膜は、インサイチューで(in situ)、基材の外表面上に形成される。他の実施形態において、基材の外表面の少なくとも一部に形成された生体適合性被膜は、主としてトロポエラスチンで構成されるポリマーを含有する。
また、他の実施形態において、生体適合性被膜は、基材の外表面にトロポエラスチンを架橋結合することによって、インサイチューで、基材の外表面の少なくとも一部に形成される。さらに、他の実施形態において、基材の外表面にトロポエラスチンを架橋結合する工程は、基材を架橋結合溶液中に導入することによって行われる。本発明の特定の実施形態において、基材は、浸漬によって架橋結合溶液中に導入される。
各種の実施形態において、基材の外表面の少なくとも一部に生体適合性被膜を形成する工程は、トロポエラスチンモノマーを架橋結合して、主としてトロポエラスチンで構成されるポリマーを形成する工程を含む。トロポエラスチンを架橋結合するための典型的な薬剤は、アミノ反応性官能基を含む二官能性官能基を有する。
各種の実施形態において、架橋剤は、N−ヒドロキシスクシニミドエステル類の一種であり得る。例えば、架橋剤は、ビス(スルホスクシニミジル)グルタル酸塩、ビス(スルホスクシニミジル)スベリン酸塩、ジスクシニミジルグルタル酸塩およびジスクシニミジルスベリン酸塩から選択される一つであり得る。他の実施形態において、架橋剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびグルタルアルデヒドから選択される一つであり得る。
各種の実施形態において、基材の外表面の少なくとも一部に生体適合性被膜を形成する工程は、浸漬法(dip coating)、スプレー法や、エレクトロスピニング法のような技術を用いて、基材の外表面にトロポエラスチンモノマーを供給する工程を含む。
架橋結合溶液は、好ましくは、さらに、トロポエラスチンの再溶解を実質的に防止し得る溶媒を含有することができる。本明細書中の特定の実施形態において、水非混和性溶媒(water immiscible solvent)が用いられる。トロポエラスチンの再溶解を実質的に防止するための好適な溶媒材料は、水系溶媒と混合し難い溶媒を含有する。各種の実施形態において、溶媒は、有機溶媒であり得る。典型的な溶媒としては、炭化水素溶剤、エーテル、クロロホルム、ジクロロメタンおよび酢酸エチルが挙げられる。
また、各種の実施形態において、架橋結合溶液は、架橋剤を含有し得る。トロポエラスチンを架橋結合するための典型的な薬剤は、アミノ反応性官能基を含む二官能性官能基を有する。各種の実施形態において、架橋剤は、N−ヒドロキシスクシミドエステル類の一種であり得る。例えば、架橋剤は、ビス(スルホスクシニミジル)グルタル酸塩、ビス(スルホスクシニミジル)スベリン酸塩、ジスクシニミジルグルタル酸塩およびジスクシニミジルスベリン酸塩から選択される一つであり得る。他の実施形態において、架橋剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびグルタルアルデヒドから選択される一つであり得る。
本発明の特定の実施形態において、インサイチューで、基材の外表面の少なくとも一部に形成された生体適合性被膜は、基材の外表面の少なくとも一部に形成された中間結合層を含む。トロポエラスチンは、中間結合層の外表面に付着される。他の実施形態では、トロポエラスチンを中間結合層の外表面に付着する工程は、トロポエラスチンを中間結合層の外表面に共有結合する工程を含む。
各種の実施形態において、中間結合層は、トロポエラスチンを基材の外表面に架橋結合するためのアミノ基を有する。かかる実施形態において、中間結合層は、トロポエラスチンを基材の外表面に架橋結合するためのアミノシランを含有し得る。
トロポエラスチンを架橋結合するためのアミノシランとしては、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(3−メタクロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメチルジエトキシシラン、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルエトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、t−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノメチル)テトラメチルジシロキサン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルシラントリオール、3−アミノプロピルペンタメチルジシロキサン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)シラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、N−3−[アミノ(ポリプロピレノキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、o−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノオクチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、および、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
各種の実施形態において、基材は、生体適合性被膜の付着を促進する前処理された基材を形成するため、生体適合性被膜を形成する工程に先立って、前処置され得る。各種の実施形態において、生体適合性被膜を形成する工程に先立って、基材を前処理する工程は、基材を酸化する工程を含む。基材を酸化する典型的な方法としては、酸による電気化学的酸化、および、化学的酸化または化学的エッチングが挙げられる。
他の実施形態において、基材を酸化する工程は、電気化学的酸化を含む。好適な電気化学的酸化技術としては、正および負の分極電圧を印加した状態における酸による電気化学的酸化が挙げられる。
一の実施形態において、基材は、金属材料から形成される。また、特定の実施形態において、基材は、ポリマー材料のような非金属材料から形成され得る。他の実施形態において、基材は、補綴物である。さらに、他の実施形態において、基材は、ステント、コンジット(導管:conduit)またはスカフォードである。
例えば、ステンレス鋼ステントのような従来の金属補綴物は、約60度の接触角を有する。以下、「接触角」なる用語について記載する。一般に、接触角は、液体界面が固体表面に接触する時の角度であり、典型的には、pH7.0の蒸留水の液滴を用いて測定される。
本発明の特定の実施形態において、基材は、その親水性を実質的に低下させるために、前処理される。基材の接触角は、その親水性の目安である。極めて親水性が高い表面上では、水の液滴は、完全に広がり得る(有効接触角(effective contact angle)が0°)。水との相性が悪い疎水性が高い表面上では、大きな接触角(70から90°)が観察され得る。ある表面では、150°、さらに180°程度に高い水との接触角を有する。
前処理された基材は、前処理前の未前処理の基材の接触角の約50%以下の接触角を有するのが好ましく、約40%以下の接触角を有するのがより好ましく、約30%以下の接触角を有するのがさらに好ましい。生体適合性被膜で被覆された基材については、接触角が増大し、結果として、親水性が増大している。したがって、生体適合性被膜で被覆された基材は、一の実施形態において、前処理前の未前処理の基材の接触角の少なくとも約150%である接触角を有し、他の実施形態において、少なくとも約175%であり、さらに、他の実施形態において、少なくとも約200%である。
基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、生体適合性被膜を形成する工程に先立って、トロポエラスチンを配列して、ポリトロポエラスチン凝集体を形成するのが好ましい。一の実施形態において、これは、生体適合性被膜の形成に先立って、トロポエラスチンをコアセルベートすることによって行われる。他の好適な配列技術としては、エレクトロスピニング法を挙げることができる。
生体適合性被膜は、基材の表面に、不均一な複数層(nonuniform multiple layers)として成形され得る。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、生体適合性被膜は、基材上に実質的に単一の生体適合性層(single biocompatible layer)として形成される。
薬剤を生体適合性被膜中に導入することができ。その結果、全身性の静脈注射や経口投与の必要性を低減させ得る。生体適合性被膜は、人体に使用するための薬剤を含有するのが好ましい。
モノマー合成
トロポエラスチンモノマーは、可溶性の生合成物質であり、自然発生するエラスチン前駆体である。これは、脊椎動物において自然に成形される。トロポエラスチンは、Atherosclerosis 37 (1980)において、E.B.Smithによって記載されたような公知の方法で、銅欠乏性のブタの大動脈から単離することができる。トロポエラスチンは、グリシン、プロリンおよび疎水性アミノ酸がリッチな72kDaのポリペプチドである。トロポエラスチンの正確なアミノ酸組成は、種によって異なっている。トロポエラスチンと当該分野で認められている相同性を有する如何なるポリペプチド成分をも、本発明のためのトロポエラスチンモノマーと考えることができる。
トロポエラスチンは、哺乳動物組織から単離されるか、組み換え発現系を用いて生産することができる。また、如何なる種からのトロポエラスチンのスプライスバリアント(splice variants)をも、本発明のために用いることができる。
以下は、本発明において用いられるトロポエラスチンモノマーを生産する方法の典型的な記載である。
1.トロポエラスチンは、銅欠乏あるいはラチリスム(lathyritic)の食餌で飼育した哺乳類から抽出することができる。哺乳動物の食餌から銅を欠乏させることにより、リシルオキシダーゼが阻害され、結果として、エラスチンリッチな組織内にトロポエラスチンが蓄積する。銅欠乏性の動物は、主に乳製品から構成される食餌で急激に成長させ、銅の汚染源から隔離しておかれなければならない。
銅欠乏性のブタを飼育する手順は、Methods in Enzymology 82 (1982) 657-665において、L.B.SandbergおよびT.B.Wolt.の「Production of Soluble Elastin from Copper Deficient Swine.」に詳述されている。150mgのトロポエラスチンは、15kgの銅欠乏性のブタから抽出することができる。
2.また、上記1における銅を欠乏させる方法と同様の方法で、リシルオキシダーゼ(ラチロゲン)の作用を効果的に阻害する化学薬品を動物に摂取させることにより、トロポエラスチンの無定形エラスチンへの変換を制限することができる。かかる方法によれば、銅欠乏性のブタの場合と同様のトロポエラスチンの収率が得られる。しかしながら、この場合、銅欠乏性の動物を飼育するのに必要とされる特別なケージ、水および食餌は、必要とされない。ラチリズム(lathyrisim)を引き起こすために、動物の食餌には、Methods in Enzymology 82 (1982) 665-673において、Celeste B.RichおよびJudith Ann Fosterの「Isolation of Soluble Elastin-Lathyrism.」に記載されるように、0.1重量%のa−アミノアセトニトリル塩酸と0.05重量%のアミノカプロン酸が補われる。
3.また、トロポエラスチンは、哺乳動物の細胞培養系によって産生することができる。ウシ血管内皮細胞、ウシおよびヒツジ由来の項靱帯線維芽細胞、ヒト皮膚線維芽細胞、および、ブタおよびウサギ由来の血管平滑筋細胞の短期培養により、培地中には、トロポエラスチンが蓄積する。
4.タンパク質発現系によって産生された組み換えトロポエラスチンは、本発明のための好適なモノマーである。組み換えタンパク質技術は、組み換え遺伝子を宿主有機体内に導入し、栄養素および代謝産物を組み換えタンパク質産物に育成および変換する技術である。この技術を用いることにより、トロポエラスチンをエンコードするcDNAを、タンパク質発現系内で複製および発現させ、生物学的に活性な組み換えトロポエラスチンを産生することができる。
機能的に区別される疎水性のドメインおよびリジンリッチな架橋結合性のドメインは、分離したエクソン内にエンコードされている。エラスチン−プレmRNAがカセット様(Cassette-like)の異なるスプライシングを受けることにより、いくつかの種において、トロポエラスチンの複数のスプライスバリアントが存在するものと考えられる。トロポエラスチンの異なる組み換えスプライスバリアントを発現させることにより、特有の性質を有するタンパク質を産生することが可能である。
さらに、インビトロ(in vitro)において、突然変異誘発を指示する部位を、自然発生遺伝子(naturally occurring gene)のポリペプチド配列の変更に用いることにより、改善された生物活性および物理的特性を備える異なるポリペプチドを産生することができる。
完全長のエラスチンcDNAクローンであるcHEL2の発現、および、その後の組み換えヒトトロポエラスチン(rTE)の精製は、The Faseb Journal 7 (1993) 1208-1218において、Joel Rosenbloom、William R.AbramsおよびRobert Mecham.の「Extracellular Matrix 4: The Elastic Fiber.」によって達成されている。Rosenbloomらの方法によって産生されたrTEは、本発明のために用いることができるが、その方法を、本発明の一部であると考えてはならない。
さらに、本発明は、cHEL2の発現によって産生されるrTEに限定されない。如何なるトロポエラスチンのゲノムまたはcDNAの発現によって産生されるrTEは、本明細書中に記載される方法のために用いることができる。
Martin、VrhovskiおよびWeissは、E. Coli中において、ヒトトロポエラスチンをエンコードする遺伝子を、合成および発現することに成功し、Rosenbloomらによって回収されるrTEのそれ程高くない収率を改善した。遺伝子の構築に際して、彼らは、E. Coliが好むように合成配列の稀なコドンの偏りを調整した。合成遺伝子の発現によって産生されたrTEは、本明細書中に記載される方法のために用いることができる。
本発明において用いられるrTEは、非細菌性の発現ベクター系において産生することができる。酵母発現ベクター系は、真核細胞のタンパク質を発現するのに好適であり、トロポエラスチンは、潜在的に、酵母内において良好な発現が期待できる候補である。
大規模に異種の遺伝子を発現させるためには、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)は、特に有利である。BEVSは、哺乳動物遺伝子の発現用の他の発現系システムに対して、いくつかの利点を有する。この系は、より安全で、スケールアップし易く、より正確であり、より高い発現レベルを実現し、大規模な生物反応器を用いることができる懸濁培養に理想的である。
次のようにして、相同組み換え(homologous recombination)または部位特異的組み換え(site specific recombination)により、トロポエラスチンのアイソフォームをコードするエラスチンcDNAのクローンを有する組み換えバキュロウイルス粒子を作成し、この組み換えバキュロウイルスを昆虫細胞(Sf9またはHigh Five)に感染させた後、組み換え遺伝子を発現させた。
トロポエラスチンをコードするエラスチンcDNAを同定し、cDNAライブラリーから単離する。この遺伝子を、標準制限エンドヌクレアーゼおよびDNAリガーゼを用いて、pFastBacあるいはpFastBac HTドナープラスミド中に挿入(cloned)する。遺伝子が正確に導入されたか否かを、制限エンドヌクレアーゼ消化およびPCR分析によって確認する。その後、DNAを、バクミド(bacmid)、mini-attTn7ターゲットサイトおよびヘルパープラスミドを内包するDHlOBac細胞に形質転換(transformed)する。
一旦DHlOBac細胞内に導入(cloned)されると、エラスチン遺伝子は、バクミドへの部位特異的遺伝子転移(site-specific transposition)を受ける。遺伝子転位により、結果として、LacZalpha遺伝子の破壊が生じ、組み換えバクミドを含むコロニーは、白色を呈する。
高分子量のmini-prep DNAは、選択された組み換えバクミドを含むE. Coliクローンから調製され、CellFECTIN試薬を用いて、SF9あるいはHigh Five昆虫細胞に導入(transfect)するために用いられる。昆虫細胞は、トロポエラスチンをエンコードする遺伝子を内包する真のバキュロウイルス粒子を産生する。ウイルス粒子は、回収された後、組み換えタンパク質産物であるトロポエラスチンを高収率で産生する昆虫細胞に感染させるために使用される。
銅欠乏やラチズムを通じて、リシルオキシダーゼを抑制することにより、エラスチンリッチな組織中に蓄積したトロポエラスチンは、短鎖アルコールに対するトロポエラスチンの高い溶解性を利用して単離することができる。このアルコール抽出法を改変した方法は、培地中のバクテリア、酵母細胞、昆虫細胞や哺乳動物細胞のような発現宿主(expression hosts)からrTEを精製するために用いることができる。この方法は、n−プロパノールおよびn−ブタノールによるトロポエラスチンの沈殿に関係するものとして、詳細に説明されている。
pFastBac HTバキュロウイルス発現系(メリーランド州、ゲイサーズバーグのLife Technologies)用いて、昆虫細胞内で発現されたトロポエラスチンは、Ni-NTA樹脂を用いる1回のアフィニティークロマトグラフィー工程で精製することができる。本発明は、トロポエラスチンの単離や精製の如何なる特定の方法にも限定されない。
ポリマー合成
トロポエラスチンは、組織中において、各種の四官能性および二官能性架橋結合によって自然に架橋結合され、エラスチンを成形している。これらの架橋結合は、リシル側鎖の酸化的脱アミノ化および縮合によって生じる。二官能性のリシノノルロイシン(Lysinonorleucine)およびアリシン(allysine)アルドールと、四官能性のデスモシン(desmosine)架橋結合との双方が形成される。四官能性のデスモシン架橋結合は、エラスチンの特色である。トロポエラスチンは、リシル残基の酸化的脱アミノ化と、これにつづく、銅依存性酵素であるリシルオキシダーゼ(protein-lysine 6-oxidase)による触媒作用を受けた単肢骨格(monomelic moiety)の架橋結合とによって、トロポエラスチン生体材料に変換され得る。
ヒトは、エラスチン中に見られるのと同一の二官能性および四官能性架橋結合によって、トロポエラスチンモノマーを架橋結合することができる。しかしながら、本発明は、これらの自然に生じる架橋結合に限定されず、化学的、酵素的またはラジカル的に生じるか否かにかかわらず、トロポエラスチンモノマー同士の間に形成される如何なる架橋結合のタイプも、本発明に用いることができる。
リシルオキシダーゼで架橋結合するトロポエラスチンは、自然に生じるものと似通ったマトリクスを産生するであろう。リシルオキシダーゼは、リジン残基の酸化を触媒して、ペプチジルα−アミノアジピン酸−α−セミアルデヒド(peptidyl α-aminoadipic-α-semialdehyde)とする。このアルデヒド残基は、隣接するアルデヒドや、分子間鎖または分子内鎖の架橋結合を形成するα−アミノ基によって、自発的に縮合する(Kagan、1991参照)。
酸化すべきトロポエラスチンを適切なリガンド(ligand)とするのであれば、何なる起源のリシルオキシダーゼをも使用することができる。典型的には、リシルオキシダーゼは、4〜6Mの尿素抽出緩衝液を用いて、ウシの大動脈および肺、ヒトの胎盤やラットの肺から抽出される。組み換え的に産生されたリシルオキシダーゼも、トロポエラスチンを架橋結合するために使用することができる。組み換えトロポエラスチン(rTE26A)は、pH8.0の0.1Mナトリウムホウ酸塩−0.15M塩化ナトリウム中で、37℃で24時間、インキュベートすることによってリシルオキシダーゼで架橋結合される(Bedell-Hogan 1993参照)。
トロポエラスチンを架橋結合する好適な他の方法は、γ線照射を用いるものである。γ線照射は、結果として架橋結合の形成を生じ得るフリーラジカルを生成する。20mradのγ線照射により、エラスチン様のポリペプチド(poly(GLy-Val-Gly-Val-Pro))が弾性マトリクスとして架橋結合されることが示され、エラスチン−フィブリン生体材料の弾性および強度が増大した。また、照射によって活性化して架橋結合を形成する化学試薬を付加して使用することもできる。γ線照射に硫黄誘導体を組み合わせることによって、さらに、エラスチン−フィブリン生体材料の強度が増大することが示された。また、グルタルアルデヒドのような化学的な架橋剤も、トロポエラスチンマトリクスを架橋結合するために用いてもよい。
架橋結合に先立って、トロポエラスチンモノマーを繊維状の構造に組織化する好適な方法は、トロポエラスチンによって示されるコアセルベーションの特性を利用することにある。トロポエラスチンは、37℃未満の温度で水に溶解するが、温度を37℃にまで上昇させると、トロポエラスチンは、コアセルベートと呼ばれる凝集構造として凝集する。トロポエラスチンのコアセルベートは、組織内における弾性繊維形成(elastogenesis)の過程において、架橋結合の形成に先立って生じる自然な工程であるかもしれない。コアセルベートしたトロポエラスチンは、適度な条件下でリシルオキシダーゼによって架橋結合され、トロポエラスチン凝集体を生成する。架橋結合に先立って、磁場にトロポエラスチンコアセルベートを曝すことによって、容易に整列させることができる。
コラーゲンは、結合組織の主要な構造ポリマーである。人工的なコラーゲン繊維は、可溶性コラーゲンI抽出物から生産される。これらの繊維は、スカフォードに形成することができ、このスカフォード上に、トロポエラスチンを不溶性の無定形エラスチンとして架橋結合させることにより、エラスチン/コラーゲン複合材料を生産することができる(図3参照)。コラーゲン繊維は、トロポエラスチン材料に対して、形態および引張強度を付与するのに寄与し、架橋結合されたトロポエラスチン微小繊維は、弾性に寄与する。その結果として、自然に生じる結合組織に非常に近い複合材料を作成することができる。
プロテオグリカンは、細胞外基質の主成分である。また、共材料として、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸類(keratane sulfates)やコンドロイチン硫酸類を付加することにより、材料の強度および凝集を促進し得る。さらに、細胞の機能は、部分的に、細胞外基質によってコントロールされる。各種のグリコサミノグリカンと同様に、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニンおよびコラーゲンのいずれも、細胞の付着を仲介する。
フィブロネクチンは、結合組織のマトリクス中において、各種の役割を有する。それは、発育組織において、組織化の役割を有し、さらに、細胞外基質に対する細胞の付着において主要な役割を果たす。共材料としてフィブロネクチンを組み合わせることにより、トロポエラスチン系生体材料の細胞の付着特性を改善し得る。
マイクロフィブリルは、全身に分布し、弾性組織および弾性繊維中に主に存在する。トロポエラスチンモノマーが重合する際に、マイクロフィブリルが存在することにより、モノマーの組織化を補助し、優れた構造組織を有する材料を生産し得る。また、マイクロフィブリルは、カルシウムイオンを隔離(sequester)することが知られており、トロポエラスチンが慢性石灰化することから保護する役割を果たすものと考えられている。
製品の製造
複合材料を形成する合成または天然のポリマー共材料と、トロポエラスチン系生体材料とを組み合わせたり、生物活性を有する充填剤を添加することによって、トロポエラスチン系生体材料の有用性を、さらに向上し得る。
局所的に薬物療法を行ったり、感染を防止するために、抗生物質および/または抗凝固剤、その他の薬剤を、トロポエラスチンマトリクスに追加することができる。腹部外傷の外科的再建において、血管補綴インプラントが使用される場合には、感染が特に重大な問題となる。抗生物質を組み込んだトロポエラスチン移植片は、自己の動脈や静脈を犠牲にすることを避け得るため、理想的であるかもしれない。これにより、手術時間を短縮することがきるとともに、トロポエラスチン移植片より感染を生じ易い人工移植片を使用する必要性がなくなる。また、生物活性を有する充填剤としては、抗凝固剤(ヒルジン)、凝固剤、抗増殖剤(メトトレキサート)、成長因子、抗ウイルス剤、および、抗腫瘍剤が挙げられる。
血管内ステントの形態をなす生体材料を搬送するため、生体材料を、収縮状態のバルーンカテーテル上に予め配置する。バルーンカテーテルは、一般的な手法を用いて、動脈や静脈の目的位置に搬送される。その後、バルーンを拡張させることにより、ステント(トロポエラスチン生体材料)を血管壁に対して押圧することができる。次いで、定位置にステントを固定するために、バルーンを介してレーザ光を照射する。この場合、色素を生体材料の外側に存在させることができる。
次いで、バルーンを収縮させ、定位置にステントを残して取り除かれる。プラスチック製等の保護スリーブは、ステントが血管を通過する間に、ステントを保護するために使用され、その後、一旦ステントが目的の位置に到達すると、取り除かれる。
また、本発明の生体材料は、金属または人工のスカフォードやステント用の生体適合性被膜として用いられる。このような場合、レーザ結合を行う必要なく、単純かつ機械的な留置術(deployment)を使用することができる。しかしながら、例えば、腹部大動脈瘤に対するステント留置術の場合のように、機械的な結合が十分に生じない場合等、特定の要求に応じて、レーザ結合を用いることができる。他のカテーテルを用いる血管ステント留置術の計画では、バルーン搬送装置ともにまたは単独で、テンポラリーメカニカルステント(temporary mechanical stent)を使用する。
さらに、他のカテーテルを用いる血管ステント留置術の計画では、熱変形可能な金属(ニチノールや他の同タイプの金属等)のスカフォードやステント、あるいは、ステント生体材料直下のカテーテルチューブ内に組み込んだ被膜を使用する。ステントを目的の位置に移動させ、そこで、ステントの変形可能な金属を活性化させることにより、ステントを血管壁に密着させる。その後、レーザ光を、カテーテル装置に組み入まれた光ファイバー系システムを介して照射する。
各種の治療のため、生体材料に、抗生物質、凝固剤やその他の薬剤を含ませることにより、全身性の薬物レベルを最小としつつ、高い局所濃度を付与することができる。
特定の用途のためには、高い機械的特性を有する支持材料と組み合わせて、本発明の生体材料を用いるのが好ましいかもしれない。これらの用途のためには、例えば、本明細書中に記載される成形技術を用いて、生体材料を、支持材料(前述のステントの記載を参照)に被覆することができる。適当な支持材料としては、織られたポリエチレンテレフタレート(ダクロン)、テフロン、ポリオレフィンコポリマー、ポリウレタンポリビニルアルコールや、その他のポリマーのようなポリマーが挙げられる。
さらに、フィブリンやエラスチンのような天然のポリマーと、ポリウレタン、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールのような非天然のポリマーとの複合型のポリマー用いることができる(Giusti et al, Trends in Polymer Science 1 :261 (1993)参照)。かかる複合型材料は、ポリマーの有利な機械的特性と、トロポエラスチン材料の目的とする生体適合性とを備える。合成物、トロポエラスチン系生体材料で被覆された金属や、生体材料/合成複合物から作成できる他の補綴物としては、心臓弁リングや食道ステントが挙げられる。
本発明のトロポエラスチン系補綴物は、当該補綴物を介して特定の体の部位に運搬される薬剤を含むように調製することができる。例えば、血管ステントは、ヘパリンのような凝固を阻止する薬剤、ヒルジンのような抗血小板薬、平滑筋の内殖を阻止する薬剤や、食道癌や内皮の再増殖に対する外科手術あるいは化学療法の間や後において、内皮にダメージを受けた食道節(esophageal segments)を刺激する薬剤を含むように生産され得る。血管拡張薬を含むこともできる。
また、トロポエラスチン生体材料から形成された補綴物は、生細胞、すなわち、当該補綴物の受容器に感受性を有する細胞で被覆することができる。内皮細胞、好ましくは自己のもの(例えば、脂肪吸引の間に採取されたもの)は、(例えば、血管ステントの適用のための)移植に先立って、エラスチン生体補綴物上に接種され得る。その他、トロポエラスチン生体材料は、皮膚交換媒体(media)や皮膚修復媒体として使用することができ、培養皮膚細胞は、移植に先立って、生体材料の上に載置される。このように、皮膚細胞は、エラスチン生体材料を被覆するために使用することができる。
上記で引用されたすべての文献は、参照することによって、そのまま完全に組み入れられる。
組み換えヒトトロポエラスチンを生産する信頼できる発現システムは、以下に記載されるように確立されている。精製方法も開発されており、かかる精製方法によれば、結果として純度95%を上回る(>95%)純粋な生産物が得られる。トロポエラスチンは、化学物質で架橋結合され、完成したエラスチンが成形される。これは、構造化された生体ポリマーを成形するために、組み換えトロポエラスチンが必要な生化学的な特性を有することを実証している。また、組織中において架橋結合を形成するための天然のイニシエータである組み換えヒトリシルオキシダーゼを発現するE. coliの細胞系も作成されている。
我々のE. coli発現システムにおいては、組み換えトロポエラスチンの収率を増加させることができている。10リットルの生体反応炉を用いた組み換えヒトトロポエラスチンの連続産生が可能である。E. coliの培養は、1回の10リットルの回分培養で、ヒトトロポエラスチンを4gmまで産生することに成功している。第一に、これは、生体反応炉の使用とコドンを用いた最適化されたE. coli合成トロポエラスチン遺伝子の使用とにより可能となった。酵母抽出物およびトリプトンを細胞培養培地から取り除くことにより、合成培地は成形される。産生物は、遠心分離によって収集されるE. coli中に保持されている。
約300〜350gmのE. coliウェットペレット(バイオマス)が回収される。新しいトロポエラスチン遺伝子を用いた場合、収率が10倍に増大する。また、これらのデータは、誘発物質IPTG濃度を増大させることにより、トロポエラスチンの収率が増大し、誘導時に温度を減少させることにより、収率が減少することを示す。トロポエラスチンの分析は、SDSポリアクリルアミド電気泳動ゲル中での染色タンパク質バンドの定量に基づくものである。
トロポエラスチンを含む生体反応炉からのバイオマスを、遠心分離によって回収し、重量測定して、70%のギ酸(典型的には、300ml中150gm)中に懸濁する。臭化シアン(10%w/w)を添加し、混合物を室温で5時間攪拌すると、透明な薄い黄色の溶液が得られる。臭化シアンを減圧下で除去して、サンプルの体積を半分に減少させる。サンプルを、4℃、0.1%のトリフルオロ酢酸(4×4リットル)で透析する。不溶性物質を遠心分離で除去し、上清を凍結乾燥する。
この物質(8−10gm)を、6Mの尿素を含む25mM、pH7.5のK2HPO4緩衝液に溶解し、BioRad HS50陽イオン交換体のカラム(5×22cm)にアプライする。サンプルを、0.05M、0.5M、0.25MのNaCeで3段階溶出法を用いて溶出する。トロポエラスチンを含む中間の分画を、0.1%のトリフルオロ酢酸で透析し、逆相カラム(Vydac C4 21×25mm)にアプライし、室温で、アセトニトリルのグラジエント(0−30%)を用いて溶出する。
トロポエラスチンを含む分画を集め、凍結乾燥し、6Mの尿素を含む25mM、pH5.0の酢酸ナトリウム緩衝液で平衡化されたSPセファロース(Amersham Biochemicals)の第2の陽イオン交換カラム(2.5×22cm)にアプライする。サンプルを、0〜0.1MのNaClのリニアグラジエントで溶出する。トロポエラスチンを含む分画を集め、0.1%のトリフルオロ酢酸で透析することによって脱塩し、凍結乾燥する。最終的なヒトトロポエラスチン産生物は、95%を上回る(95+%)の純度であり、改善の余地があるが、架橋結合の研究および機械的な試験のためには、十分に純粋である。
リシルオキシダーゼは、トロポエラスチンコアセルベートを架橋結合するために用いることができるが、他の化学試薬を用いることもできる。架橋結合を形成するために、トロポエラスチン分子を、予め配列(pre-aligned)させることができる。これは、サンプルをコントロールされた速度で加温することによって行うことができ、これにより、トロポエラスチン分子が会合によりコアセルベートするとともに、遠心分離によって回収することができる粘性相を形成する。
この過程を分光測定で追跡することができ、コアセルベーションの割合および程度を、用いられるアイソフォームに対する、トロポエラスチンとしての質および特性の指標とすることができる。化学架橋剤であるジ(スルホ−スクシンイミド)スベリン酸塩は、生物学的な系において使用するための2つの重要な特性を有するのでテストされた。第1に、生理的な条件下において、タンパク質と反応するために重要なことは、水溶性であることである。第2に、タンパク質に組み込まれた架橋結合構造が、バイオポリマーを生体組織中に移植した場合に、生物学的な応答を生じ得ないであろう-(CH2)6-であることである。
実験では、ジ(スルホ−スクシンイミド)スベリン酸ナトリウム塩を、ジメチルスルホキシドに溶解し、15分間、氷上においてトロポエラスチンコアセルベート(〜100μl)と混合した後、一晩、室温に放置した。白色の固形物を得、これを遠心分離によって回収し、試薬を除去するために水で洗浄し、架橋結合していないトロポエラスチンを除去するために6Mの尿素で洗浄し、再度、尿素を除去するために水で洗浄する。
ポリマーは、ゴムの硬度を有し、弾性を有するようであった。これらは、定量的に特徴付けられるであろう目的とする特性である。解決されるべき技術的な問題は、架橋結合が生じる前に均一相を与えるのに十分に速く、粘性の溶液であるトロポエラスチンコアセルベートを架橋剤溶液と混合することにある。
1つの可能性としては、架橋剤の濃度を減少させることにより、反応速度を低下させる方法があるが、この方法では、完全に架橋結合されない生産物を生じてしまった。しかし、我々は、反応を完結させるために、産生物を架橋結合溶液中に浸漬することにより、これを修正することができた。検討された別の可能性としては、反応速度を低下させるために、示適pH以下(sub-optimal pH)かつ低温で架橋結合反応を行う方法がある。スタティックミキサは、高速混合を達成し得る。
ヒトエラスチンの4cm×6cmのパッチは、約1mmの厚さに製造することができる。これには、まず、1.5gmのトロポエラスチンを含む溶液が必要である。トロポエラスチンをコアセルベートするために、この溶液を37℃で加温する。コアセルベートは、粘性の溶液であり、遠心分離によって回収し得る離生相(separate phase)を成形する。
コアセルベートを二官能性の架橋剤と−10℃で混合し、型に注入する。型を37℃に加温し、一晩、オーブン内でその温度を保持する。エラスチンパッチを、型から取り出し、未反応または未架橋結合の成分を除去するために、6Mの塩酸グアニジンで洗浄する。その後、テストのために、パッチをPBS中に再平衡化する。
ヒト合成エラスチンポリマーの機械的特性は、ブタ大動脈を抽出することにより調製された天然のエラスチンと比較される。応力/歪み曲線は、ヒトエラスチン(tropoE)が天然の大動脈のエラスチンIIIに匹敵ものの、若干劣ることを示す。走査電子顕微鏡写真に示すように、トロポエラスチン由来のパッチは、大きな孔を備えるメッシュ状構造を有する。この構造は、細胞浸潤、および、生体内(in vivo)において天然のコラーゲンマトリクスの構造を強化するのに有利となるであろう。
しかしながら、それらの強度を増大させるためには、1パッチあたりのトロポエラスチンの重量を増大させて、孔のサイズを低下させなければならない。パッチを作成るために使用される溶液中における、トロポエラスチンの濃度には限界がある。パッチの形成は、遠心力を付与しつつ行われ得る。これには、スウィングアウトローターを備える低速遠心機が用いられる。トロポエラスチン溶液および架橋剤を低温で混合し、遠心分離機内の型に注入され、遠心分離を開始し、トロポエラスチンをコアセルベートするために、温度を37℃に上昇させる。
血管の修復において、チューブ状の金属ステントは、血管損傷を修復する外科医に利用可能な技術範囲における重要な要素である。金属は、容易に免疫系に識別され得る異物であり、かつ、本来血栓形成性であるという事実があり、現在の技術の制限は、金属自体によるものである。これらの制限のため、ステントは、より大きな血管において有用であるだけであり、表面から抗炎症剤やその他の薬剤を溶出する最新の血管ステントでさえ、血栓症は、長年存在する問題である。
遅発性ステント血栓症(late stent thrombosis)の場合、近時の死亡率は、45%である。世界的に大多数の民間の患者に移植された100万を超える薬剤溶出ステントにおいて、少なくとも1%の遅発性ステント血栓症が発生するという重大かつ致命的な新たな問題が明らかになっている。
生体適合性、血栓形成性、および、医療用ステンレス鋼ステントの生体適合性および有用性を改善すべく、これに組み換えヒトエラスチン被膜を設ける原理の裏付けを確認するために、我々は、3mm径×12mm長のAVE-Medtronicから商業的に入手可能なステンレス鋼ステントをrTPEで被覆し、これを架橋結合させた。この工程により、安定、均一かつ共有結合したエラスチンが得られた(写真参照)。
従来のバルーン搬送装置(balloon deployment devices)を用いて、3mm径のブタ冠状動脈内に留置する場合、被膜が安定していたことを確認している。移植2時間後の走査EMにおいて、被膜の破壊の痕跡は全く認められなかった。フィブリンや凝血塊の付着は、微度であり、他の冠状動脈内に留置された同一の未被覆ステントと差異はなかった。DESにおける遅延性の血栓症は、合成ポリマー被膜が原因であるのかもしれない。
エラスチンは、平滑筋の遊走を抑制し、薬剤をも結合し得る柔軟性、生体適合性および非血栓形成性のタンパク質である。ヒト組み換えエラスチン(HRE)が共有結合した金属ステント上の被膜は、ブタ冠状動脈における血栓症、血栓付着、炎症反応および新生内膜増殖を比較するために、無作為二重盲検試験において、裸の金属ステント(BMS)と比較された。
46頭の麻酔された40kgのブタを、経口アスピリン(ASA)325mgおよびクロピドグレル(Clopidogrel)75mg、および、ACTが250を上回る(ACT>250)ようにヘパリン(100IU/kg)で前処置した。未被覆または3μm(HRE)被膜を有するMedtronic AVE S7ステント(3.00mm×12mm)を、LADまたはLCX冠状動脈に無作為に留置し、ステントタイプについて盲検化した。クロピドグレルおよびASAを、2時間、7、14および28日目に、血管造影、屠殺および灌流固定を行うまで、経口的に投与した。すべてのデータは、ステントタイプについて盲検化された独立した観察者によって分析された。
いずれの群にも、重大な血栓の事象が全くないか、または、血管撮影的な再狭窄が20%を上回ら(>20%)なかった。2時間目において、走査EMによる血栓付着や被膜の破壊について有意差は、全くなかった。フィブリン量は、BMS:2.00に対してHRE:1.22±0.54、p=0.009と低く、フィブリンの付着があるストラットの%は、7および14日目において、BMS:90.2±7.70に対してHRE:23.43±9.57、p=0.017と低く、28日目において、同等であった。炎症性スコア、内皮化率(% endotheliaiization)、狭窄率(% stenosis)、および、新生内膜厚または面積は、BMSとHRE被覆ステントとの間で優位な差はなかった。
金属ステント上のヒト組み換えエラスチン被膜は、未被覆金属ステントと比較して血栓付着および量を減少させた。HRE被膜は、異種の血管に曝されても、炎症増大、新生内膜過形成やアレルギー性好酸性反応の痕跡がなく生体適合性であるようであった。平滑筋細胞の遊走を低減し、シロリムス(sirolimus)のような薬剤を結合する本来の能力を有するエラスチンは、血管ステント用の優れた生理的被膜であり得、そして、血栓症や合成のステント被覆材料に対する長期の有害な反応を低減する可能性を有する。
組み換えヒトエラスチン被膜が、従来の医療用ステンレス鋼ステントより優れており、この分野すなわち血栓症において、最も重要な問題の1つを解決し得ることが示された。しかしながら、rTPE被膜は、金属ステントに対して炎症反応を低減させず、炎症や内膜肥厚性の反応の全ての指標について優位な差はなかった。一方、この所見は、金属に対して、より生体適合性な組織界面を与える期待を低減するかも知れないが、この炎症反応の一部は、rTPEがブタ動脈の内側血流表面に接触するヒトタンパク質であることが原因であり、異種タンパク質移植に対する適度な炎症反応である可能性は非常に高い。
外来タンパク質に対する著しい炎症反応の欠如は、完全なエラスチンタンパク質に対して免疫応答が低いことを証明するのかもしれない。ブタモデル中では、ブタエラスチンで被覆された金属ステントが最適な反応を示し、結果として、人体内に置かれたヒトタンパク質の動物モデルとしてより適しているかもしれない。
ヒトELNcDNAのクローニング
ヒト胎児の心臓cDNAライブラリー(カリフォルニア州、パロアルトのClontech)を、標準的な方法を用いて、ヒトエラスチン遺伝子(ELN)の特異的プローブでスクリーニングした。
約1×106クローンを、エクソン20を含むヒトエラスチンcDNAの175bpのPCR破片でスクリーニングした。スクリーニングにより、85個のポジティブプラーク(positive plaques)を得た。完全長クローンを同定するために、単離されたポジティブプラークに、5γおよび3γUTRが存在するか否かをPCRによってさらにスクリーニングした。完全長転写産物を含むクローンを均一に精製し、pLITMUS 29(New England Biolahs)にサブクローニングし、6つの内部エラスチンcDNAの特定配列プライマーと同様に、pUC19/M13のフォワードおよびリバースプライマーで配列を決定して、アイソフォームの組成を確定した。
9個の異なるスプライスバリアントを発現する15個のトロポエラスチン完全長クローンの配列が決定された。血管組織中に見出された最も豊富なスプライスバリアントは、組み換えエラスチン産生のための鋳型として選択された。このスプライスバリアントの組成は、エクソン22および26Aを除いた全てのコーディングエクソン(coding exons)を含んでいる。これらのめったに利用されないエクソンは、ELN mRNAには殆ど含まれていない。
選択されたトロポエラスチンcDNAは、エクソン1を除去して設計されており、このcDNAは、分泌シグナル配列をエンコードし、E.coli.によって認識および切断されないであろう。エクソン1の除去は、分泌シグナル配列が誤って、トロポエラスチン分子に組み入れられることを防止する。メチオニン残基は、エクソン2の5γ末端に付加された。メチオニン残基は、トロポエラスチンのアミノ末端からGST融合タンパク質(fusion protein)を分離する。これは、精製を容易にするために、臭化シアン切断点を与える。
トロポエラスチン中には、他のメチオニン残基が全くないので、最終生産物は、臭化シアンによる処理によって影響を受けないが、他の混入タンパク質(contaminating proteins)は切断され、最終生産物からの除去が簡素化される。修正された挿入断片(altered insert)を、pGEX2T(Amersham Biosciences)にクローニングした。これは、アミノ末端GSTタグを有するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を産生する。構成物を、組み換えタンパク質の発現のために、E. coli BL21 Codon Plus cells(Stratagene)に導入(transfected)した。
E. coliによって発現されたtRNAには、ヒト細胞によって発現されたものと比較して、大きなコドン偏位(codon bias)があるので、合成のトロポエラスチン遺伝子は、上述したクローンと同一のタンパク質を産生するが、通常、E. coliによって使用されるコドンを用いて作成された。合成された挿入断片(Entelechon GmbH、Germany)を、改変されたpGRX2Tベクターに挿入(cloned)し、組み換えタンパク質の発現のために、E. coli BL21 cells(Stratagene)に導入した。
新しい構成物を、シェーカフラスコ中で育成されたE. coli中で発現させ、オリジナルのヒトクローンから得られた発現レベルと比較した。トロポエラスチンの産生において3〜5倍の増加が達成された。トロポエラスチンの通常の産生用に、10リットルの生体反応炉に播種するために、最適化された配列を含むE. coliの残りを調製して使用した。
トロポエラスチン被覆ステント
ステンレス鋼ステントを、トロポエラスチンの共有結合による固定化が可能なように改変した。まず、表面を電気化学的に酸化し、アミン末端を有するシランを表面に固定し、ステントをトロポエラスチンコアセルベート中に浸漬し、最後に、トロポエラスチンを架橋結合させてステント表面に結合したポリマー材料とした。ステントの微視的な検査によって、円滑かつ連続的な被膜が確認された。被膜は柔軟であり、そして、ステントの拡張後およびγ線照射後において、そのまま残存している。生物学的な試験について、以下説明する。
実験
トルエン、アセトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチルおよびビス(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を、Sigma-Aldrichから購入し、さらに精製することなく使用した。(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)を、TCI Americaから購入した。トロポエラスチン被膜の予備研究のためのステンレス鋼プレート(type 302)を、AIST(American Iron and Steel institute)から入手した。
ステンレス鋼ステント(AVE Medtronic S7、3mm径、12mm長)を、移植研究のために使用した。トロポエラスチンは、オレゴン州、ポートランドのOregon Medical Laser Centerから提供された。すべての装置およびガラス器具類を、蒸気またはステラッドによって殺菌した。
計測
電気化学的実験を、M270ソフトウェア(米国、ニュージャージ州、プリンストンのEG&G)によって制御されたモデル273ポテンシオスタット/ガルバノスタットによって行った。飽和KCl中に、対抗電極としてPt線(Aldrich)、作用電極としてステントまたはステンレスチップ、および、参照電極としてAg/AgClを含む従来の3電極セルを使用した。
X線光電子分光(XPS)測定を、単色のアルミニウム源(200Wで操作された)を使って、Kxatos Hsi XPS装置で行った。走査電子顕微鏡(SEM)測定を、エネルギー分散X線(EDX)を備えるFEI Siron SEMを用いて行った。すべてのサンプルを、走査前に、金で被覆した。移植されたサンプルを、食塩水で3回、その後、蒸留水で1回すすぎ、乾燥、最後に金で最終的に被覆した。
被覆サンプルの表面分析のために、原子間力顕微鏡(AFM)を、300kHzの発振周波数、タッピングモードで、窒化ケイ素チップを備える125μmのカンチレバーを用いて、Nanoscope IIIA(カリフォルニア州、サンタバーバラのVeeco)で行った。
方法
移植すべきサンプルのための全ての被覆処置を、クリーンルーム内で行った。ステンレス鋼箔を、1.0×1.5cmのサンプルに切断し、水性界面活性剤溶液中で30分間、超音波処理し、次いで、1:1のアセトン/イソプロピルアルコール溶液中で30分間、超音波処理した後、オーブン中、70℃、6時間で乾燥した。
まず、サンプルを、−0.60Vで15分間、カソード分極(cathodically polarized)させた後、サンプルに、+0.25Vで1分間、パルス電圧を付与(pulsed)した。酸化後、サンプルを滅菌蒸留水で洗浄し、70℃で6時間、乾燥した。酸化工程は、シラン誘導体の後の結合に、より有利である考えられる表面酸化物層を形成することを目的に行った。
酸化サンプルを、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)(5μLのAPSを10mLのトルエンに溶解したもの)で処理し、24時間、反応させた。その後、酸化サンプルを、フレッシュトルエン中に浸漬し、強く結合していない過剰の材料を除去するために、10分間、超音波処理し、105℃で10分間、加熱した。このシラン化処理の目的は、表面上にフリーな第1級アミンを生成することにあり、これらの第1級アミンは、トロポエラスチン中のリジン残基と化学的に反応して、表面と架橋結合したトロポエラスチンとの間の結合の増強が期待できる。
Fe −(酸化)→ Fe-O −(APS)→ Fe-O-Si-CH2-CH2-CH2-NH2
トロポエラスチンのリン酸緩衝液溶液(pH7.4)を、コアセルベーションを行うために、37℃に加温した。シラン処理ステンレス鋼チップまたはステントを、5分間、このコアセルベート中に浸漬し、取り出した。これらのコアセルベート被覆サンプルを、過剰の材料を除去するために、1,000rpmで遠心分離した。その後、コアセルベート被覆ステントを、架橋剤としてビス(N−ヒドロキシスクシニミドエステル)(10mg)を、酢酸エチル(10mL)に溶解した溶液中に、一晩、浸漬した。
酢酸エチルのような水非混和性溶媒(water immiscible solvent)を使用することにより、コアセルベートの再溶解を最小限にすることができる。架橋結合されたトロポエラスチン被覆サンプルを、純酢酸エチルで慎重に3回すすぎ、24時間、風乾した。最終的なステンレス鋼チップを表面分析に使用し、ステントをバルーン搬送装置に設置し、無菌バッグに挿入し、γ線滅菌を行った。被覆および未被覆ステントの双方を、後の生物学的な研究に供した。
結果
図1(a)−(d)は、基材、より具体的には、平坦なステンレス鋼表面における水の接触角を示す。図1(a)は、未前処理ステンレス鋼基材(接触角=60°)である。図1(b)は、前処理(酸化)ステンレス鋼基材(接触角=12°)である。図1(c)は、生体適合性の中間(シラン処理)結合層で被覆された前処理基材(接触角=81°)である。図1(d)は、トロポエラスチンポリマーで被覆された前処理基材(接触角=121°)である。
接触角の測定は、典型的には、親水性または疎水性と解釈される表面の濡れ特性を示す。測定は、2μLの蒸留水の液滴を水平面に慎重に載置し、液体/固体界面に作られた角度を視覚的に観察し、測定することによって行われた。オリジナルのステンレス鋼は、60°の接触角を示す。酸化後において、接触角は、さらに小さく(12°)、これは、ステンレス鋼表面が実質的に親水性(極性)であり、酸化による予期された変化であるを示している。
フレッシュな酸化表面のシラン処理後において、接触角は、オリジナルのステンレス鋼よりさらに大きく(81°)、これは、表面が実質的により疎水性(非極性)であることを示している。コアセルベートでの被覆後において、接触角は、トロポエラスチンの既知の疎水性と一致し、非常に高い(121°)。アミン基を含むシラン処理表面を確認するために、接触角は、純水よりむしろ緩衝処理された溶液の液滴を用いて測定された。pH10での接触角には、変化はなかったが、pH3、4または5において、接触角は、アミンのプロトン付加に関連する図と一致し、明らかに低かった(60°)。
エネルギー分散X線分析(EDX)は、サンプルの表面における特定元素を検出する技術である。図2に示されるように、トロポエラスチン被覆ステントサンプルを、集束イオンビーム(FIB)を用いて横断面を観察するために切断した。トロポエラスチンで被覆された側、金属側、および、金属とポリマー側と間の界面を、EDXで観察した。ケイ素は1.75keVで検出された。これは、APSで表面改質が良好に行われたことを示す。強い炭素のバンドは、ポリマーの存在を示すポリマー側および界面で観察されが、金属側で殆ど観察されなかった。より低い金属エネルギー強度バンド(metal energy intensity bands)は、金属側および界面と比較してトロポエラスチン被覆側で観察された。
図2は、トロポエラスチン被覆ステントの横断面のSEM写真である(スペクトル1:トロポエラスチンフィルム側、スペクトル2:ステンレス鋼側、スペクトル3:金属とトロポエラスチンフィルムと界面領域)である。図3は、EDXスペクトル(スペクトル1:トロポエラスチンフィルム側、スペクトル2:ステンレス鋼側、スペクトル3:金属とトロポエラスチンフィルムとの界面領域)である。
X線光電子分光法(XPS)は、サンプルの表面における特定元素を検出する技術である。表1には、各サンプルの表面組成を記載する。シラン処理サンプルは、ケイ素と窒素の存在を示した。これは、シラン処理ステンレス鋼サンプルの表面におけるAPS分子の存在を示す。炭素ピークは、より詳細に分析された。
表1:XPS分析による表面組成
Figure 2009512508
図4(a)−(c)は、C1s XPSスペクトルである。図4(a)は、裸のステンレス鋼であり、図4(b)は、中間的に被覆された(シラン処理された)ステンレス鋼基材、図4(c)は、トロポエラスチン被覆ステンレス鋼基材である。図4(a)−(c)は、裸のステンレス鋼、シラン処理サンプルおよびトロポエラスチン被覆ステンレス鋼チップのC1s光電子スペクトルを示す。285.0eVでの結合エネルギーは、炭化水素であり、286.5eVでの結合エネルギーは、C-OおよびC-N結合中の炭素であり、288.6eVでの結合エネルギーは、カルボニル(アミド)炭素であると分析される。
裸のステンレス鋼サンプルは、炭化水素の高い強度を示す。これは、大気汚染物質に曝されたサンプルでは普通である(図4(a)参照)。シラン処理サンプルからの286.5eVの強度は、オリジナルステンレス鋼の約2倍であり、これは、アミン基の存在を示している(図4(b)参照)。トロポエラスチン被覆ステンレス鋼サンプルは、NおよびOと結合した炭素を示す非常に高い強度を示した(図4(c)参照)。
図5は、原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。図5は、右側に未被覆表面を備える、架橋結合したトロポエラスチン被覆ステンレス鋼(50μmフルスケール)である。図5は、コアセルベート被膜(5μmフルスケール)の表面特性を示す。原子間力顕微鏡は、ステンレス鋼サンプル上の被覆および架橋結合したトロポエラスチンフィルムの表面特性を検出するために使用された。トロポエラスチン被覆ステンレス鋼チップのAFM写真は、図5に示されている。
コアセルベート被膜の表面特性は、観察された(図5参照)。ステント上のより薄くかつ連続するフィルムを作成する方法として、各浸漬工程の後、ステントに遠心回転(centrifugal spinning)(1000rpmで5分間)を施し、ステントの表面から余分な材料を除去して、粘性のコアセルベートを均一に分布させた。
図6は、未被覆ステント(x、y次元:1μmフルスケール、z軸=400nm/div)、および、遠心処理された(centrifugally treated)浸漬被覆ステント(x、y次元:1μmフルスケール、z軸=100nm/div)の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。遠心処理された浸漬被覆ステントのAFM写真は、サブマイクロメータスケールにおいても、表面が比較的平滑であることを示す。
図7は、遠心処理された浸漬被覆ステントの(a)内側(x、y次元:1μmフルスケール、z軸=80nm/div)、および、(b)外表面(x、y次元:0.5μmフルスケール、z軸=100nm/div)の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。ステントの外表面および内表面の双方について調べた。
図8は、浸漬被覆および架橋結合されたステントの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。比較的厚いフィルム材料は、ステントの曲線部分において見受けられる。余分な材料は、手動による回転(manual spinning)後に、SEM写真から観察された。
図9は、遠心処理され、浸漬被覆および架橋結合されたステントのSEM写真を示す。遠心回転(centrifugal spinning)により、図9に示すように、全ての余分な材料を除去することができる。被覆ステントは、生物学的な試験の状況を再現するために、水中で拡張された。
図10は、水中における拡大前後の遠心処理された浸漬被覆ステントのSEM写真である。拡大後において、被膜は、完全に残るようであった(図10参照)。滅菌のためのγ線照射の影響をSEMで調べた。
図11は、拡張され、γ線照射された被覆ステントの表面のSEM写真である。γ線照射後において、トロポエラスチン被覆表面のSEM写真からは、いかなる微細な影響も観察されなかった。
図12(a)−(f)は、(a)未被覆ステント、(b)移植前の架橋結合されたトロポエラスチン被覆ステント、および、(c−f)移植2時間後の被覆ステントのSEM写真である。AVE Medtronic S7 ステント(3mm径、12mm長、円形横断面)が選択され、移植すべきサンプルのために、全ての表面に円滑かつ均一な被膜を形成した。図12(a)は、表面に小さな窪みを有する裸のステントの表面特性を示す。図12(b)に示すように、これらの特性は、トロポエラスチンを被覆した後に、全ての範囲にわたっていた。移植後(図12(c−f)参照)、いくつかの生物学的な繊維(図12(c)参照)および生物学的な付着(図12(e))が移植2時間後に観察された。
インビボ(In Vivo)移植方法
43個のステントを、国産のブタの冠状動脈内に移植した。ステント術が施された血管を、スポンサーの設備で解剖し、組織学処理のためにCV Pathに送られた。23個の血管には、共有結合したヒト組み換えエラスチン(HRC)金属ステント(被膜厚5μm)が移植され、20個の血管(LAD動脈またはLCX動脈)には、裸の金属ステント(BMS)、すなわち、未被覆の3mm×12mm Medtronic-AVE S7 ステントが無作為に移植された。
動物を、7日間(HRC:n=6およびBMS:n=6)、14日間(HRC:n=6およびBMS:n=6)および28日間(HRC:n=8およびBMS:n=7)の間、飼育した。1頭の動物(#489)を、60日間(HRC:n=1およびBMS:n=1)の間、飼育した。全てのステント術が施された血管について、CV Pathで放射線写真を撮影し、ステントを留置した位置を確認して評価した。
光学顕微鏡の処理のために、ステント術が施された血管の部分を、段階的にエタノール中で脱水し、メチルメタクリレートプラスチック内に埋設した。重合させた後に、2〜3ミリメートルの切片を、各ステントの先端部、中間部および基端部から切り出した。ステントからの切片を、回転式ミクロトーム上で、4〜5ミクロンに切断、設置し、ヘマトキシリン、エオジンおよびエラスチカワンギーソン染色(elastic Van Gieson stains)により染色した。全ての切片について、光学顕微鏡によって、炎症、血栓、新生内膜肥厚および内皮化の有無、および、血管壁の損傷を調べた。
動物の取り扱いおよび飼育の全ての方法は、1996年の学術研究会議「Guide for the Care and Use of Laboratory Animal」にしたがって実施され、オレゴン州、ポートランドのInstitutional Animal Care and Use Committee of the Legacy Clinical Research and Technology Center of the Legacy Health System、および、United States Army Medical Research and Material Command Animal Care & Use Officeによって承認された。
国産のブタ40.6kg(±4.60、範囲34.3−52.7kg)を、外科手術前に、アスピリン325mg、ニフェジピンXL(Nifedipine XL)30mg(イリノイ州、ロックフォードのUDL Laboratories Inc.)、および、プラビックス(Plavix)150mg(ニューヨーク州、ニューヨークのBristol-Meyers-Squib/Sanofi Pharmaceuticals)で前処置した。全ての動物について、外科手術前日の夕方から任意に許された水を与えるだけで絶食させた。外科手術の日には、アスピリン325mgおよびプラビックス150mgを与えた。
チレタミン(tiletamine)/ゾラゼパム(zolazepam)混合物4−9mg/kg(テトラゾール(登録商標)、アイオワ州、フォートドッジのFort Dodge Laboratories)、および、アトロピン0.06mg/kg(ミズーリ州、セントジョゼフのPhoenix Scientific)を筋内注射した。
マスク導入を酸素中、5%イソフルランによって行った。イソフルランを2−3%で継続しつつ経口挿管して、後に続く機械的人工呼吸のために気道を確保した。ブタを背殿位に寝かせ、内側大腿をクリップした後、手術の準備をして、滅菌ファッション(sterile fashion)で覆った。右大腿動脈静脈切開を行い、7frのシースを導入し、適切に縫合して、300mmHg以上の圧力に維持しつつ、通常の生理食塩溶液のバッグに接続した。
血液検査(laboratory blood work)の結果を出し、全血球計算および凝固プロファイルの検査のために、カリフォルニア州、ウェストサクラメントのIDEXX Preclinical Research Servicesに送付した。ヘパリン100単位/kgを静注した。追加のヘパリン投与を伴う処置の間、適正な抗凝固作用を保証するために、活性凝固時間(ACT)が250秒を上回る(>250秒)ように維持すべく、必要に応じて、ACTの結果を10分後、その後20分ごとに出した。外科手術の間、心電図(ECG)および血圧を、Siemens Monitor Model # 8792129E3501で、酸素飽和度を、コネチカット州、ウォリンフォードのNovametrix Tidal Wave Sp Capnography/Oximetry Model 710/715でモニターした。
50μgのNTGを、ガイドカテーテルを介して投与し、基準となる血管造影(baseline angiography)を行った。術者者が判らないような方法で、いずれの血管に被覆または未被覆の3.0mm径のステントを留置するのかについて、左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)冠状動脈を無作為化した。0.014のガイドワイヤを遠位冠状動脈(distal coronary artery)を通過させ、バルーン搬送装置を用いて9気圧でステントを拡張した。
ステントを拡張した後、50μgのNTGをガイディングカテーテルを介して投与した。その後、反対側の冠状動脈内にステントを留置した。処置後の血管造影図を得た。6頭の動物を2時間後に安楽死させ、血管灌流をホルマリンで固定し、血小板の付着および急性の血栓形成性を評価するために、走査電子顕微鏡検査に出した。残りのブタは、カテーテルを除去し、大腿動脈および切開部を修復し、麻酔から覚醒させた。
目的の時点で屠殺するまで、アスピリン81mgおよびプラビックス75mgを、動物に、毎日、経口的に投与した。術後の疼痛処置のために、フェンタニールパッチ(Fentanyl patches)75Ug/Hを、72時間付与した。ブタには、倦怠感、食欲不振、社会化の欠如、指診に対する疼痛反応、発熱および顕著な感染に限定されない、痛覚および不快感のサインが毎日観察されるであろう。
1、2または4週間の時点で、上記の処置において記載されたように、動物を、テラゾール(登録商標)4−9mg/kgで鎮静させ、吸入麻酔下に置いた。左大腿動脈静脈の切開を行って、動脈に6frのシースを挿入した。6frの診断用カテーテルを、左冠状動脈に挿入するのに用い、50μgのNTGをカテーテルを介して投与して、血管造影を行った。胸部を胸部ノコギリ(sternal saw)で開胸し、胸部開創器(chest retractors)で開胸状態を維持した。心臓を慎重に解剖して取り出し、冠状動脈を灌流固定するために、標準生理食塩溶液、次いで10%の緩衝化されたホルマリンで、大動脈起始部を洗浄した。処置された動脈を、慎重に解剖して、組織学的な分析のために、CV path(メリーランド州、ゲイサーズバーグのInternational Registry of Pathology)に送付した。
走査電子顕微鏡検査の手順
全部で18個のステントを、走査電子顕微鏡検査のために処理した。走査電子顕微鏡検査は、血栓の有無、内皮の被覆(endothelial coverage)および内皮の成熟度を評価するために用いられた。処理前に、管腔の表面を露出させるためにステントを縦に2等分し、写真を撮影した。標本を0.1mmol/Lのカコジル酸ナトリウム塩緩衝液(pH7.2)ですすぎ、その後、30分間、1%の四酸化オスミウムでポスト固定した。
その後、標本を段階的にエタノール中で脱水した。臨界点乾燥後、組織を載置し、金でスパッタ被覆して、標本を日立走査電子顕微鏡を用いて可視化した。内皮の比率は、目視による測定に基づくものである。
形態計測法
血管の障害スコアを、シュワルツ法に従って計算した。各切片の断面積(外弾性板[EEL]、内弾性板[IEL]および管腔)を、デジタル形態計測法によって測定した。新生内膜の厚さを、各ステントストラットの内表面から管腔のへりまでの距離として測定した。面積狭窄率(percent area stenosis)を、式(新生内膜面積/IEL面積×100)で計算した。ステントストラット周囲におけるフィブリン沈着、肉芽腫、赤血球(RBC)および巨細胞性の反応を含む順序データを、各ステント切片について収集して、各切片におけるストラット全数の比率として表現した。
全体の炎症値(値0−4)を各切片について評点した。周囲に肉芽腫性の反応を有するストラットを、スコア4とした。内皮被覆を半定量化し、内皮によって被覆された管腔の周長の比率として表現した。ステントについての形態計測分析を、平均値±SDとして記載する。平均変数を、対応のないt-検定(unpaired t-tests)を用いて群間比較した。P値<0.05は、統計的に有意であると考えられた。
X線写真の所見
血管のX線像は、湾曲状態を含む血管壁に対するステントの優れた順応性を示す。動物#472−Bにおけるコントロールステントは、ステントの先端において限局的な圧挫像(focal crush artifact)を示す。
組織学的所見
7日目群;動物#477−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への適度なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、8%(平均)の断面狭小化(cross sectional narrowing)を伴う、完全な内皮化(endothelialization)を示す。35〜47%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、3〜6個のストラットの周囲に、10個以下の炎症細胞からなる限局的かつ微度の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、まばらに存在するIEL断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#477B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度ないし高度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、8%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。20〜27%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、3〜6個のストラットの周囲に、10個以下の炎症細胞からなり、ステントの基端部で観察された限局的かつ微度の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、まばらに存在するIEL断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#478−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、8%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。44〜53%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、6個を上回る(>6)が50%未満のストラットの周囲に、10個以下の炎症細胞からなる限局的かつ軽度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、まばらに存在するIEL断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#478−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への適度なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、11%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。30〜53%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ微度(1)ないし軽度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、まばらに存在するIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#483−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、11%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。21〜35%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ微度(1)ないし中等度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、単一かつ限局的なIELの断裂からなり、微度(1)または無(none)と考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#483−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、10%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。19〜33%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ微度(1)ないし中等度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、単一かつ限局的なIELの断裂からなり、微度(1)または無(none)と考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#495−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への適度なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、9%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。11〜28%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ微度(1)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、単一かつ限局的なIELの断裂からなり、微度(1)または無(none)と考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#495−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、10%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。17〜33%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ中等度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELおよび明らかな中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられたが、外弾性板(EEL)は、無傷であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#496−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への適度なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、12%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。18〜22%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ軽度(2)の慢性炎症が存在する。外膜に微度ないし軽度の限局的な慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#496−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への中等度ないし高度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、13%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。16〜30%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ軽度(2)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#497−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度ないし中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、12%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。35〜58%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ、軽度(2)ないし中等度(3)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
7日目群;動物#497−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度ないし適度なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、10%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。22〜47%のストラットが巨細胞性の反応を示すとともに、限局的かつ軽度(2)なしい中等度(3)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#484−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、16%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。8〜25%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を除いて、明らかな慢性炎症は存在しない。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#484−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、13%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。16〜25%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を除いて、明らかな慢性炎症は存在しない。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#485−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、19%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。25〜50%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、中等度(3)の慢性炎症が存在する。微度かつ限局的な外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよびまばらに存在する中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#485−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、22%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。16〜30%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、微度(1)の慢性炎症が存在する。外膜の炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELおよび中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#486−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への微度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、38%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症および巨細胞性の反応は、全く存在しない。外膜の炎症は存在しない。血管壁障害は、限局的かつまばらに存在するIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#486−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、26%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。10〜40%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、微度(1)の慢性炎症が存在する。微度かつ限局的な外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#490−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、12%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。25〜40%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、微度(1)の慢性炎症が存在する。微度かつ限局的な外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよびまばらに存在する中膜の断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#490−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、21%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。15〜75%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、軽度(2)の慢性炎症が存在する。明らかな外膜の炎症は存在しない。血管壁障害は、限局的なIELおよびまばらに存在する中膜の断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#493−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、16%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。17〜75%のストラットに関連する軽度ないし中等度の巨細胞性の反応を伴う、中等度(3)の慢性炎症が存在する。微度かつ限局的な外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよびまばらに存在する中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#493−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、19%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。25〜41%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、微度(1)の慢性炎症が存在する。微度かつ限局的な外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよびまばらに存在する中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#494−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への微度ないし軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、14%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。5〜2%のストラットに関連する微度ないし軽度の巨細胞性の反応を伴う、微度(1)の慢性炎症が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、まばらに存在するIELの断裂からなり、限局的かつ微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
14日目群;動物#494−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、49%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。100%のストラットに関連する巨細胞性の反応を伴う、高度/激しい(4)の肉芽腫性の炎症が存在する。中等度の外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよび多数の中膜の断裂からなり、軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#471−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ストラット周囲への微度のフィブリン沈着(基端部および中間部にのみ)を伴う、新生内膜による軽度ないし中等度のステント表面の取り込み(先端部に偏って)を示す。管腔表面は、40%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、5〜30%のストラットに関連する巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELおよびEEL(まばらに存在する)の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#471−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、フィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度ないし中等度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、20%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症や巨細胞性の反応は、全く存在しない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#472−A(テスト)および472−B(コントロール):これは、早期に死亡した動物である。ステント(テストおよびコントロール)の基端部、中間部および先端部を代表する切片は、微度の炎症性の浸潤を伴う、微度のフィブリン血栓を有する開存性の管腔を示す。血管壁障害は、まばらに存在するIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#473−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、フィブリン沈着を伴わない、新生内膜による中等度ないし高度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、54%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。55〜85%のストラットに関連する肉芽腫性かつ巨細胞性の反応を伴う、高度(4)の慢性炎症が存在する。慢性炎症が外膜に及んでいる。血管壁障害は、EELを介して延在する中膜の大きな断裂からなり、軽度(2)ないし中等度(3)であると考えられ、時折、コイルワイヤが外膜中に見られる。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#473−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、微度ないし軽度かつ限局的なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度ないし中等度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、26%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。炎症や巨細胞性の反応の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂が殆どなく、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#474−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度ないし中等度(偏った)のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、27%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、5〜15%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#474−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、20%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、10〜15%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的かつ僅かなIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#475−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、16%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、15%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応(ステントの先端部にのみ見られる)が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的かつ僅かなIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#475−B(コントロール):ステントの中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、13%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。基端において完全なステントの不完全密着が存在する。明らかな慢性炎症は存在しないが、15%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であると考えられた。
28日目群;動物#476−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、30%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、15%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応(ステントの先端部にのみ見られる)が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#476−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、22%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。ステントの基端部および先端部において、明らかな慢性炎症は存在しないが、中間部において、微度の慢性炎症が存在する。7〜25%のストラットに関連する巨細胞性の反応は、微度である。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#480−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、20%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、6〜20%のストラットに関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#481−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、26%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。外膜内に至る軽度ないし高度の肉芽腫性の反応を伴う、高度の慢性炎症が存在する。巨細胞性の反応は、軽度であり、20〜47%のストラットに存在する。血管壁障害は、限局的なIELおよび中膜の断裂からなり、微度(1)ないし軽度(2)であった。中間部において、ステントの限局的な不完全密着が存在する。
28日目群;動物#481−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、13%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症や巨細胞性の反応は、全く観察されない。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#482−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、22%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症や巨細胞性の反応は、全く観察されない。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#487−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、22%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、10%のストラット(中間部においてのみ)に関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#488−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、ステントの先端部においてのみ、微度の限局的なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、24%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症や巨細胞性の反応は、全く観察されない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
28日目群;動物#488−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、微度の限局的なフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、27%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症は存在しないが、10%のストラット(中間部においてのみ)に関連する微度の限局的な巨細胞性の反応が存在する。外膜の慢性炎症の痕跡は、全くない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
60日目群;動物#489−A(テスト):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による微度のステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、約10%の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。明らかな慢性炎症や巨細胞性の反応は、全く観察されない。血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度(1)であった。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
60日目群;動物#489−B(コントロール):ステントの基端部、中間部および先端部を代表する切片は、明らかなフィブリン沈着を伴わない、新生内膜による中等度ないし高度の偏ったステント表面の取り込みを示す。管腔表面は、70〜80%(平均)の断面狭小化を伴う、完全な内皮化を示す。60%のストラットに関連する肉芽腫性かつ巨細胞性の反応を伴う、高度(4)の慢性炎症が存在する。高度の外膜の慢性炎症が存在する。血管壁障害は、中膜内および外膜付近にコイルワイヤが見られ、EELを介して延在する中膜の大きな断裂からなり、軽度(2)ないし中等度(3)であると考えられた。ステントの不完全密着は、全く観察されない。
走査電子顕微鏡分析
SEMに供された最初の12個のステント(テスト:n=6およびコントロール:n=6)は、急性移植片(数時間から1日)であるため、長手方向に沿って二分割する際に、血管からのステントの分離が必然的に生じた。基本的に、全てのステントのストラットを十分に拡張して、血管壁に密着させたが、予期されたような如何なる新生内膜の形成もなかった。ステント表面のSEM分析では、全体的に、テストおよびコントロール群で観察された組織学的な変化において、違いが全く明らかでない。これらの変化は、微度のフィブリン/血小板の凝集、および、限局的な領域での内皮化を伴う、限局的な炎症細胞の付着からなるものであった。全てのステントは、開在性であった。
14日目(ブタ#501)および28日目(ブタ#502および#503)の時点において、テスト品およびコントロール品の双方とも、血管壁に対して良好にストラットが密着し、十分に拡張した状態であること、および、表面血栓の痕跡を伴うことなく、管腔が開在状態であることを示した。同様に、双方の時点において、トロポエラスチン被覆ステントおよび裸のステントは、薄く新生内膜が成長することにより取り込まれ、融合性の内皮細胞層によって管腔表面が完全に被覆されることを示した。内皮細胞は、一般に、その形状が、良好な接合を形成する多角形である。全てのステントにおいて、炎症細胞の付着は僅かしか見られない。処理による人為的な変化は、#502および#503において見られ、この変化は、未知の沈着物からなっている。
結論
7日目群において、テストおよびコントロールのステント術が施された血管は、ストラットの周囲に軽度ないし中等度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による僅かなステント表面の取り込みを示す。全てのステントは、部分的に内皮化された管腔表面を有する広い開在性の管腔、および、良好に血管壁に密着するストラットを示す。双方の群において、中膜の断裂が存在したコントロールのステント#495−Bを除いて、血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度であると考えられた。
慢性炎症は、50%のストラットの周囲に10個を上回る炎症細胞を有するステント#497−Aおよび#497−Bにおいて中等度と判定された以外、全体的に、微度ないし軽度であると判定された。巨細胞性の反応は、双方の群において、ステントのストラットの周囲に、高い頻度で存在する。外膜の慢性炎症は、全く観察されなかった。
14日目群において、テストおよびコントロールのステント術が施された血管は、ストラットの周囲に軽度のフィブリン沈着を伴う、新生内膜による微度ないし軽度のステント表面の取り込みを示す。全てのステントは、管腔表面の完全に内皮化された厚さ20%未満の新生内膜、および、血管壁に良好に密着するストラットを示す。双方の群において、中膜が限局的に断裂するコントロールのステント#485−A、#485−B、486−A、#486−B、#493−A、#493−Bおよび#494−Bを除いて、血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度であると考えられた。
慢性炎症の程度は、非炎症(ステント#484−A、#484−Bおよび#486−A)から、微度炎症(ステント#485−B、#486−B、#490−A、#493−Bおよび#490−A)、中等度炎症(ステント#485−Aおよび493−A)およびステント#494−Bにおいて観察された顕著な肉芽腫性の炎症まで、両群で変化した。また、巨細胞性の反応は、双方の群において、ステントのストラットの周囲に頻繁に観察された。ステント#494−Bを除いて、外膜の慢性炎症は、全く観察されなかった。
28日目群において、テストおよびコントロールのステント術が施された血管は、ストラット(ステント#488−Aおよび#488−B)の周囲への僅かなフィブリン沈着を伴う、新生内膜による軽度ないし中等度のステント表面の取り込みを示している。ステント#475−B(基端部において、全てのストラットが不完全密着である)およびステント#481−A(中間部において、2つのストラットが不完全密着である)を除いて、全てのステントは、広く開在性の内皮化された管腔表面、および、血管壁に良好に密着するストラットを示す。
双方の群において、中膜が限局的に破断するテストのステント#481−Aの中を除いて、血管壁障害は、限局的なIELの断裂からなり、微度であると考えられた。中間部および先端部が高度の慢性かつ肉芽腫性の炎症を示すステント#481−Aを除いて、全体的に、いずれの群においても慢性炎症は、全く観察されなかった。巨細胞性の反応は、早期の時点と比較した場合、双方の群において高頻度ではなかった。外膜の慢性炎症は、全く観察されなかった。
全体的に、トロポエラスチン被覆ステントおよび裸のステントとの形態計測の分析では、7日目の時点において、新生内膜の厚さについて統計的な有意差が示されている。ここで、テスト品の平均値±SDは、0.017±0.03、コントロール品の平均値±SDは、0.022±0.03であり、結果として、P値が0.019である。同様に、テスト群およびコントロール群でフィブリンが沈着するステントの比率を比較すると、7日目の時点において統計的な差が存在する。ここで、テスト群の平均値±SDは、85.44±8.28、コントロール群の平均値±SDは、97.75±4.44であり、結果として、P値が0.009である。
さらに、14日目の時点で、テスト品とコントロール品との、フィブリンで囲まれたストラットの比率、および、フィブリンスコアを比較すると、両方とも結果として、P値が0.017となっており、統計学的な差が存在した。14日目または28日目のいずれかの時点で、テスト品およびコントロール品との、新生内膜の厚さを比較すると、統計学的な有意差は存在しなかった。さらに、各時点(7日目、14日目および28日目)でのテスト品とコントロール品との、内膜形成の比率、炎症および障害スコアを比較した統計解析では、有意差が全く示されなかった。
ヒト組み換えトロポエラスチンタンパク質被膜は、7および14日目において、金属ステントに対する血栓の付着を減少させた。これは、ブタ動脈内に配置されたヒトタンパク質であったが、炎症および内皮化には、影響を与えなかった。ヒト組み換えトロポエラスチンタンパク質は、潜在的に血管に対する好ましい影響を有する、改善されたより生理的な被膜であるかもしれず、現在のステントおよび被覆技術を超えて、血管内の薬物送達用の改善された基本骨格(platform)として機能するかもしれない。
好適な実施形態において、本発明の原理を記載および示したが、本発明が、そのような原理からかけ離れずに、整然かつ詳細に改変され得ることは明白であるに違いない。私は、上記のクレームの精神および範囲内におけるすべての改変および変更を要求する。
関連出願
この出願は、2005年10月19日に出願された出願番号60/728,471の仮出願に基づく本出願である。本件には、仮出願60/728,471の優先権を主張している。仮出願60/728,471の全ての内容は、参照により本件に組み込まれる。
図1(a)−(d)は、基材、具体的には、平坦なステンレス鋼の表面における水の接触角を示す。 図2は、トロポエラスチン被覆ステントの横断面のSEM写真(スペクトル1:トロポエラスチンフィルム側、スペクトル2:ステンレス鋼側、スペクトル3:金属とトロポエラスチンフィルムとの界面領域)である。 図3は、EDXスペクトル(スペクトル1:トロポエラスチンフィルム側、スペクトル2:ステンレス鋼側、スペクトル3:金属とトロポエラスチンフィルムとの界面領域)である。 図4(a)−(c)は、C1s XPSスペクトルである。 図5は、原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。 図6は、未被覆ステントおよび遠心処理された浸漬被覆ステントの原子間力顕微鏡(AFM)写真を示す。 図7は、遠心処理された浸漬被覆ステントの内側(a)および外表面の原子間力顕微鏡(AFM)写真である。 図8は、浸漬被覆および架橋結合されたステントの走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す。 図9は、遠心処理され、浸漬被覆および架橋結合されたステントのSEM写真を示す。 図10は、水中における拡大前後の遠心処理された浸漬被覆ステントのSEM写真である。 図11は、拡張され、γ線照射された被覆ステントの表面のSEM写真である。 図12(a)−(f)は、(a)未被覆ステント、(b)移植前の架橋結合されたトロポエラスチン被覆ステント、および、(c−f)移植2時間後の被覆ステントのSEM写真である。

Claims (42)

  1. 人体内に移植可能な装置を製造する方法であって、
    基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、トロポエラスチンを含有する生体適合性被膜を形成する工程を有することを特徴とする方法。
  2. 前記生体適合性被膜は、主としてトロポエラスチンで構成されるポリマーを含有する請求項1に記載の方法。
  3. 前記基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、トロポエラスチンを含有する生体適合性被膜を形成する工程は、前記基材の前記外表面上で、前記トロポエラスチンを架橋結合する工程を含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記基材の外表面上で、トロポエラスチンを架橋結合する工程は、架橋結合溶液中に、前記基材を導入する工程を含む請求項3に記載の方法。
  5. 前記架橋結合溶液は、前記トロポエラスチンの再溶解を実質的に防止し得る溶媒を含有する請求項4に記載の方法。
  6. 前記架橋結合溶液は、水非混和性溶媒を含有する請求項5に記載の方法。
  7. 前記架橋結合溶液は、スベリン酸塩架橋剤を含有する請求項4に記載の方法。
  8. 前記基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、生体適合性被膜を形成する工程は、トロポエラスチンモノマーを架橋結合して、主としてトロポエラスチンで構成されるポリマーを形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
  9. 前記基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、生体適合性被膜を形成する工程は、前記基材の前記外表面の少なくとも一部に、中間結合層を形成する工程と、前記中間結合層の外表面にトロポエラスチンを付着する工程とを含む請求項1に記載の方法。
  10. 前記中間結合層の外表面にトロポエラスチンを付着する工程は、前記中間結合層の前記外表面に、トロポエラスチンを共有結合する工程を含む請求項9に記載の方法。
  11. 前記中間結合層は、前記基材の前記外表面に、前記トロポエラスチンを架橋結合するためのアミン基を含有する請求項9に記載の方法。
  12. 前記中間結合層は、前記基材の前記外表面に、前記トロポエラスチンを架橋結合するためのアミノシランを含有する請求項9に記載の方法。
  13. さらに、前記生体適合性被膜を形成する工程に先立って、前記基材を前処理して、前記基材に対する前記生体適合性被膜の付着を促進する前処理基材を形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
  14. 前記生体適合性被膜を形成する工程に先立って、基材を前処理する工程は、前記基材を酸化する工程を含む請求項12に記載の方法。
  15. 前記基材を酸化する工程は、電気化学的酸化を含む請求項13に記載の方法。
  16. 前記前処理基材は、前処理前の未前処理基材の接触角の約50%以下の接触角を有する請求項12に記載の方法。
  17. 前記トロポエラスチンポリマーで被覆された基材は、前処理前の前記未前処理基材の接触角の少なくとも約150%の接触角を有する請求項2に記載の方法。
  18. さらに、前記基材の外表面の少なくとも一部に、インサイチューで、生体適合性被膜を形成する工程に先立って、前記トロポエラスチンを配列して、ポリトロポエラスチン凝集体を形成する工程を含む請求項1に記載の方法。
  19. 前記基材は、金属材料から形成される請求項1に記載の方法。
  20. 前記基材は、非金属材料から形成される請求項1に記載の方法。
  21. 前記基材は、補綴物である請求項1に記載の方法。
  22. 前記基材は、ステント、コンジットまたはスカフォードを含む請求項1に記載の方法。
  23. 前記生体適合性被膜は、前記基材上に、実質的に単一層として形成されている請求項1に記載の方法。
  24. 前記生体適合性被膜は、前記人体内において使用するための薬剤を含む請求項1に記載の方法。
  25. 人体内に移植可能な装置であって、
    外表面を有する基材と、
    前記基材の前記外表面の少なくとも一部を被覆する中間結合層と、
    前記中間結合層に、付着的に結合されたトロポエラスチンの生体適合性を備える外層とを有することを特徴とする装置。
  26. 前記トロポエラスチンの生体適合性を備える外層は、前記中間結合層の外表面に架橋結合している請求項25に記載の装置。
  27. 前記トロポエラスチンの生体適合性を備える外層は、前記中間結合層の前記外表面に、共有結合により結合している請求項25に記載の装置。
  28. 前記基材は、前記生体適合性被膜の付着を促進する前処理基材を含む請求項25に記載の装置。
  29. 前記前処理基材は、酸化的に前処理された基材を含む請求項28に記載の装置。
  30. 前記前処理基材は、酸化的かつ電気化学的に前処理された基材である請求項28に記載の装置。
  31. 前記前処理基材は、未前処理基材の接触角の約50%以下の接触角を有する請求項28に記載の装置。
  32. 前記トロポエラスチンポリマーで付着的に被覆された基材は、未前処理基材の接触角の少なくとも約150%の接触角を有する請求項28に記載の装置。
  33. 前記基材は、金属材料から形成されている請求項25に記載の装置。
  34. 前記基材は、非金属材料から形成されている請求項25に記載の装置。
  35. 前記基材は、補綴物である請求項25に記載の装置。
  36. 前記中間結合層は、架橋結合可能なアミン基を含有する請求項25に記載の装置。
  37. 前記中間結合層は、アミノシランを含有する請求項25に記載の装置。
  38. 前記トロポエラスチンは、前記中間結合層上に、実質的に単一層として形成されている請求項25に記載の装置。
  39. 前記前処理基材は、ステント、コンジットまたはスカフォードを含む請求項25に記載の装置。
  40. 前記トロポエラスチンの生体適合性を備える外層は、主としてトロポエラスチンで構成されるポリマーを含有する請求項25に記載の装置。
  41. 前記トロポエラスチンの生体適合性を備える外層は、前記人体内において使用するための薬剤を含有する請求項25に記載の装置。
  42. 人体内に移植可能な装置であって、
    トロポエラスチンの層で付着的に被覆可能な前処理された外表面を有する前処理基材と、
    前記前処理基材に付着的に結合された、トロポエラスチンポリマーの生体適合性を備えるインサイチュー外層とを有することを特徴とする装置。
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