発明の簡単な概要
本発明は、c-Kit依存性黒色腫、例えば、粘膜黒色腫;末端性黒色腫(acral melanoma);眼の、例えば、結膜の、黒色腫;またはCSD黒色腫を検出する方法を提供する。該方法は、患者由来の黒色腫細胞においてc-KITの配列変異および/または増幅もしくは過剰発現を検出する段階を含む。該方法は、診断および予後の指標に、および例えば、c-Kit阻害剤に応答性である黒色腫患者を同定するために、用いられうる。本発明はまた、c-Kit阻害剤をc-Kit依存性黒色腫に投与する段階を含む、黒色腫を処置する方法を提供する。
本発明はさらに、SHP-2における変異の存在を検出することにより、黒色腫、例えば、粘膜、末端、眼、例えば結膜、およびCSDの黒色腫を検出する方法を提供する。
従って、本発明は、黒色腫を有するまたは黒色腫を有するのではないかと疑われる患者由来の黒色腫細胞を含む生体試料、例えば、皮膚試料において黒色腫を検出する方法であって、生体試料に存在する黒色腫細胞におけるc-KITの配列変異、もしくはコピー数の増加、またはc-KITの過剰発現を検出する段階を含み、c-KITの活性化変異の存在、またはc-KITのコピー数の増加の存在が黒色腫の存在を示す方法を提供する。典型的には、黒色腫は、末端性黒色腫、粘膜黒色腫、CSD黒色腫、または眼の、例えば、結膜の、黒色腫である。いくつかの態様において、検出段階は、mRNAまたはゲノムDNAのようなc-KIT核酸のレベルを検出することを含む。典型的な態様において、そのような検出段階は、PCRまたはRT-PCRのような増幅反応を含む。他の態様において、検出段階は、c-KITタンパク質発現のレベルを検出すること、またはc-KITタンパク質における変異を検出することを含む。いくつかの態様において、検出段階は、c-KITの複数の欠陥を検出すること、例えば、配列変異およびコピー数変化を検出することを含みうる。
c-KIT依存性黒色腫細胞はまた、SHP2における配列変異を検出することにより検出することができる。いくつかの態様において、SHP2における配列変異の存在についての分析は、黒色腫においてc-KITの欠陥を検出することに加えて行われる。SHP2の変異は、多くの場合、プロテインチロシンホスファターゼドメインにおいて検出される。例えば、変異は、エクソン13、8、および4における、それぞれ、P491L、I309V、またはS150Fでありうる。変異は、核酸またはタンパク質のいずれかを分析することにより検出することができる。典型的には、変異は、RNAまたはゲノムDNAのいずれかのような、患者からの生体試料由来の核酸を分析することにより検出される。
典型的には、検出段階は、c-KITまたはSHP2における配列変異の存在を検出することを含む。これは、多くの場合、生体試料由来の核酸を分析することにより、達成される。核酸はDNA試料またはRNA試料でありうる。DNA試料は、RNAの逆転写から導かれうる、またはゲノムDNAでありうる。多くの場合、変異を検出するための検出段階は、増幅反応を含む。
いくつかの態様において、黒色腫は、末端性黒色腫、粘膜黒色腫、眼の、例えば、結膜の、黒色腫、またはCSD黒色腫を有する、または有するのではないかと疑われる患者由来である。
さらなる態様において、検出段階は、c-KITのエクソン11、13、17、または18における変異の存在を検出することを含む。
本発明の他の態様において、末端性黒色腫、CSD黒色腫、粘膜黒色腫、または眼の、例えば、結膜の、黒色腫が、c-KIT遺伝子のコピー数の増加、および/または遺伝子産物の過剰発現を検出することにより検出される。検出方法は、本明細書に記載されているように行われる。例えば、過剰発現は、mRNAまたはタンパク質のレベルを評価することにより検出することができる。コピー数は、例えば、増幅法またはインサイチューハイブリダイゼーションなどの方法により、評価することができる。
本発明はまた、手のひらに、足底に、爪の下に、粘膜から、慢性的に日光に曝露された皮膚から、または眼、例えば、ブドウ膜もしくは結膜から発生した黒色腫由来の黒色腫細胞の存在を検出する方法であって、c-KITのコピー数の増加、c-KIT遺伝子もしくはSHP2遺伝子における配列変異を検出する段階を含む方法を提供する。
他の態様において、手のひらに、足底に、爪の下に、粘膜に、慢性的に日光に曝露された皮膚から発生した黒色腫、または眼黒色腫由来の黒色腫細胞の存在は、c-Kitの過剰発現を検出することにより検出することができる。
本発明はまた、例えば、黒色腫治療計画を受けた患者において、末端、粘膜、CSD、または眼、例えば、結膜もしくはブドウ膜、の黒色腫を有する患者において、黒色腫の進行をモニターする方法であって、変異したc-KITタンパク質もしくは核酸;または変異したSHP-2タンパク質もしくは核酸の存在を、患者由来の生体試料において検出する段階を含む方法を提供する。
いくつかの態様において、末端、粘膜、CSD、または眼の黒色腫を有する患者において黒色腫の進行をモニターすることは、患者由来の生体試料におけるc-KITのコピー数の、正常な対照と比較しての増加を検出することにより;または黒色腫細胞を含むのではないかと疑われる試料においてc-KITもしくはSHP2の配列変異を有する黒色腫細胞の数をモニターすることにより、行われる。
他の態様において、末端、粘膜、CSD、または眼、例えば、結膜、の黒色腫を有する患者において黒色腫の進行をモニターすることは、患者由来の生体試料におけるc-KIT発現の、正常と比較しての増加を検出することにより行われる。
典型的には、本発明に従う黒色腫の進行のモニタリングにおいて、生体試料におけるc-KIT依存性黒色腫の数の低下の存在は、患者における、処置剤に対する治療応答を示す。
本発明の検出方法すべてにおいて、生体試料は、原発性または転移性の黒色腫細胞を含むのではないかと疑われる、身体における任意の供給源に由来しうる。従って、生体試料は、末端皮膚などの皮膚、結膜などの眼、または粘膜からのものでありえ、かつ他の態様においては、血液、血清、リンパ節由来の組織、または内臓器官由来の組織からのものでありうる。いくつかの態様において、例えば、黒色腫の進行のモニタリングにおいて、試料は、血液のような容易に入手しやすい組織由来である。
もう一つの局面において、本発明は、黒色腫患者がc-Kit活性を阻害する治療を受けることの候補であるかどうかを判定する方法を提供する。該方法は、患者が有する黒色腫が、c-KITのコピー数の増加を有する、かつ/またはc-kitを過剰発現する、かつ/またはc-KitもしくはSHP2における配列変異を有する黒色腫細胞を含むかどうかを判定する段階を含む。検出は、本明細書に記載された方法に従って行われる。従って、検出段階は、mRNAまたはタンパク質のレベルを検出することを含みうる。他の態様において、検出段階は、黒色腫由来の核酸試料における、または黒色腫由来のタンパク質試料からの、c-kit変異の存在の検出を含みうる。核酸試料は、黒色腫試料由来のRNAまたはDNA、例えば、ゲノムDNA、もしくはRNAから生成されたcDNAでありうる。多くの場合、検出段階は、PCRまたはRT-PCRのような増幅反応を含む。
典型的態様において、黒色腫は、末端黒色腫、粘膜黒色腫、眼黒色腫、例えば、結膜黒色腫、またはCSD黒色腫である。
もう一つの局面において、本発明は、c-KIT阻害剤を投与する段階を含む、c-KIT依存性黒色腫細胞の増殖を阻害する方法を提供する。c-KIT阻害剤は、例えば、メシル酸イマチニブ、ダサチニブ、スニチニブのような小分子;抗体;またはペプチドでありうる。典型的には、黒色腫細胞は、末端性黒色腫、粘膜黒色腫、眼の、例えば、結膜の、黒色腫、またはCSD黒色腫に由来する。
発明の詳細な説明
序論
本発明は、癌を診断するための、予後的使用のための、および黒色腫を処置するための、方法、試薬、およびキットを提供する。本発明は、c-Kitが、黒色腫における発癌遺伝子であり、かつ黒色腫、例えば、粘膜の黒色腫、末端性黒色腫、慢性的な日光損傷を受けた皮膚に由来する黒色腫、および結膜黒色腫のような眼黒色腫における治療標的であるという発見に基づいている。
KITは、ネコ肉腫ウイルス発癌遺伝子v-kitの正常細胞の相同体であるKIT遺伝子の産物である145-kd膜貫通糖タンパク質である。KITは、受容体チロシンキナーゼのサブクラスIIIファミリーのメンバーであり、PDGF、M-CSF、およびFLT3リガンドの受容体と密接に関連している。KITのリガンドである幹細胞因子(SCF)は、KIT受容体の二量体化および自己リン酸化を促進する。結果として生じるリン酸化チロシン残基は、ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼを含む、SH2ドメインを含むシグナル伝達分子のための結合部位を供給する。これらのシグナル伝達分子は、下流の様々な標的を活性化する。KITシグナル伝達は、メラニン細胞だけでなく、他の細胞の正常な発生および生存に重要である。悪性腫瘍におけるc-KITの重要性は、十分に立証されている(概説として例えば、Heinrich et al., J. Clin. Oncology 20:1692-1703を参照)。
本発明の一つの局面である、c-KITのコピー数の増加、発現のレベル、および/またはc-Kitの変異体(配列)型を検出することによる黒色腫細胞を検出する能力は、多数の適用のいずれににおいても有用である。例えば、それは、患者において黒色腫、または黒色腫のある特定の型を診断するために、単独で、または他の診断方法と組み合わせて用いられうる。それはまた、ある特定の受容体チロシンキナーゼを標的にする治療用物質、例えば、フェニルピリミジンチロシンキナーゼ阻害剤であるメシル酸イマチニブ(メシレートは、4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)メチル]-N-[4-メチル-3-[[4-(3-ピリジニル)-2-イリミジニル]アミノ]-フェニル]ベンズアミドメタンスルホナートと化学的に示される)、ダサチニブ、およびスネチニブのような治療用物質に感受性がある特定の黒色腫を同定するために用いられうる。
c-Kitのレベルの検出または変異の存在の検出はまた、黒色腫処置の効力をモニターするために用いられうる。例えば、抗癌処置後の、c-Kitポリペプチドもしくはポリヌクレオチドのレベル、またはc-Kitにおける配列変異を有するメラニン細胞の数、またはc-KIT遺伝子のコピー数の増加が、処置前のレベルと比較されうる。処置後の、c-Kitポリペプチドもしくはポリヌクレオチドのレベルの減少、または変異したc-Kitを有する黒色腫細胞の数の低下により、効果的な処置が示される。さらに、c-Kitのレベルおよび/または変異したc-Kitの存在は、特定の抗黒色腫治療の効力または観察される予後結果と統計学的に相関させることができ、それによりデータベースの開発が可能になり、そのデータベースに基づき、c-Kitの特定のレベルまたは診断的存在に照らして、統計学的に基づく予後診断、または最も効果的な処置の選択を行うことができる。
例えば、細胞表面上の、c-Kitのレベルまたはc-Kitの変異の検出はまた、例えば、癌の進行を長期間モニターするために、患者において黒色腫細胞の数または位置をモニターするのに有用でありうる。
SHP2の変異もまた、黒色腫、例えば、末端、眼、粘膜、またはCSDの黒色腫、において同定されている。従って、SHP2の配列変異の検出もまた、c-KIT依存性黒色腫でありかつc-KIT阻害剤を用いる治療の標的である黒色腫を検出することができる。
c-KITはまた治療的標的としての役割を果たしうる。従って、本発明はまた、c-KIT阻害剤、例えば、抗体、ペプチド、メシル酸イマチニブのような小分子受容体チロシンキナーゼ標的化薬物、または他の小分子阻害剤、およびc-KITの核酸阻害剤を投与することにより、黒色腫、特に、変異体c-KITもしくは変異体SHP2を過剰発現する、かつ/または有する黒色腫を処置する方法を提供する。
定義
「c-KIT」という用語は、プロトオンコジーンチロシンプロテインキナーゼKitを指す。「c-KIT」は、本出願において「KIT」と互換的に用いられる。この用語は、KITの、核酸およびポリペプチドの多型変種、対立遺伝子、変異体、ならびに断片を包含する。そのような配列は、当技術分野において周知である。例示的なヒトKIT配列は、NCBIヌクレオチドデータベースにおける参照配列NM_000222(ヌクレオチド配列)およびアクセッション番号P10721(ポリペプチド配列)によって入手可能である。配列NM_000222は、例示的なポリヌクレオチド配列としてSEQ ID NO:1に提供されている。例示的なポリペプチド配列P10721は、SEQ ID NO:2に示されている。ヒトKITは、他の種由来のKITと近い構造的同一性を共有する。例えば、霊長類KITの核酸配列およびタンパク質配列は、ヒトKITと99%を超えて類似している。ラットおよびマウスKITの核酸配列およびタンパク質配列は、ヒトKITと80〜85%類似性を有する。
「SHP-2」という用語は、12q24座に位置するptpn11遺伝子がコードするプロテインチロシンホスファターゼ非受容体11を指す。この用語は、SHP-2の、核酸およびポリペプチドの多型変種、対立遺伝子、変異体、ならびに断片を包含する。そのような配列は、当技術分野において周知である。例示的なヒトSHP-2配列は、NCBIヌクレオチドデータベースにおける参照配列NP_002834(ヌクレオチド配列)およびアクセッション番号NP_002825(ポリペプチド配列)によって入手可能である。配列NP_002834は、例示的なヌクレオチド配列としてSEQ ID NO:3で提供されている。例示的なポリペプチド配列は、SEQ ID NO:4に示されている。
本出願の文脈で用いられる場合の「c-Kit依存性黒色腫」または「c-Kit依存性黒色腫細胞」は、c-Kitにおける欠陥(「変異」とも呼ばれる)および/またはSHP-2における配列変異を有する黒色腫細胞を含む黒色腫を指す。c-Kitにおける欠陥は、c-Kitの配列変異、c-Kitのコピー数の増加、またはc-Kitの過剰発現でありうる。「c-Kit依存性黒色腫細胞」は、そのような変異の1つまたは複数を有しうる、例えば、黒色腫細胞は、c-KITおよび/またはSHP2の配列変異、ならびにc-Kitのコピー数の増加を有しうる。本発明の「c-Kit依存性黒色腫」は、典型的には、末端皮膚、粘膜、結膜、または慢性日光誘発性損傷の徴候がある皮膚由来である。
本出願の文脈において、「末端性黒色腫」は、手のひらまたは足底または爪の下の無毛部皮膚に発生する黒色腫を指す。末端性黒色腫のサブセットは、「末端性黒子性黒色腫」である。
「粘膜黒色腫」は、粘膜に発生する腫瘍を指す;本明細書に用いられる場合の「眼黒色腫」は眼から発生する黒色腫である。「眼黒色腫」は、ブドウ膜および結膜の黒色腫を含む。「結膜黒色腫」は、結膜に発生する黒色腫を指す。
本明細書に用いられる場合の「CSD黒色腫」は、慢性日光誘発性損傷を有する皮膚から発生する黒色腫を指す;本明細書に用いられる場合の「NCSD黒色腫」は、慢性日光誘発性損傷をもたない皮膚から発生する黒色腫を指す。本出願における「CSD」群と「NCSD」群との区別は、黒色腫を囲む真皮における著しい日光弾性線維症の顕微鏡観察での有無に基づく。2、3例を除くすべての症例において、慢性日光誘発性損傷(CSD)に関連した黒色腫は、顔、ならびに前腕、手背部、脛、およびふくらはぎなどの四肢遠位部に発生する。これらの黒色腫は、典型的には、50歳より老齢の個体に発生し、顕微鏡的には、メラニン細胞が巣(nest)ではなく孤立した単位として配置されている表皮内構成要素を有する。さらに、これらの黒色腫は、乳頭間隆起の消失のある萎縮性表皮を有する傾向にある。CSD黒色腫のサブセットは、悪性の黒子性黒色腫である。一方、慢性日光誘発性損傷(NCSD)に関連していない黒色腫は、躯幹ならびに大腿部および上腕のような近位端に発生する。NCSD黒色腫は、典型的には、メラニン細胞が孤立した単位ではなく巣として配置されている表皮内構成要素を示し、多量の上方散乱(パジェット様拡散(pagetoid spread))を示す。NCSD黒色腫の多くは、表在性広範黒色腫である。
慢性日光誘発性損傷は、CSD 2より大きいCSDスコアをもつと定義される。スコアは、以下の系(Landi et al., Science 2006)を用いて100〜200x倍率での黒色腫を囲む正常皮膚のヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色切片上の日光弾性線維症の程度を決定することにより得られ、その例は図1に提供されている:
CSD 0:弾性線維の非存在;CSD 0+:200x倍率においてのみ識別できる極めて少ない弾性線維;
CSD 1:膠原線維束の間に、ブッシェル(bushel)としてではなく、個々の単位として存在する散乱した弾性線維;「-」または「+」分類辞は、弾性線維がほとんど散乱していないか、または密に散乱しているかを示すために用いられた。
CSD 2:個々の単位ではなくブッシェルとして主に分布している密に散乱した弾性線維;「-」分類辞は、ブッシェルが存在しているが、弾性線維は個々の単位が優勢であるように分布していることを示すために用いた;「+」分類辞は、ブッシェルのより大きな凝集体が形成されるが、不定形の沈着物を形成する代わりに個々のブッシェルの輪郭を保つ場合に用いた;
CSD 3:線維質感を喪失した、青灰色物質の不定形沈着物;「-」不定性沈着物の限局的な形成のみ;「+」広汎性の好塩基性物質の非常に大きな塊。
図1における全画像は、10x対物レンズでの全体像を示す右下を除いて40x対物レンズで撮られた。
本明細書に用いられる場合、ある部位、例えば、末端皮膚、粘膜、結膜、または慢性日光誘発性損傷を有する皮膚「から黒色腫が発生したことを決定すること」という用語は、黒色腫の起源の部位を同定することを指す。そのような決定は、患者の目視検査により、または黒色腫の病理評価により行われうる。
動物における「腫瘍」または「癌」という用語は、無制限増殖、不死性、転移能、急速な成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態学的特性を含む、非定型の成長または形態のような特徴を有する細胞の存在を指す。多くの場合、癌細胞は、腫瘍の形をとるが、そのような細胞は動物内に単独で存在しうる。「腫瘍」は、良性および悪性新生物の両方を含む。「新生物性」という用語は、良性および悪性の両方の非定型成長を指す。
本明細書に用いられる場合の「生体試料」は、黒色腫を有するのではないかと疑われる、または有する患者から得られる試料を指す。いくつかの態様において、試料は、針生検、細針生検、外科生検などのような任意の型の生検を指す組織生検でありうる。試料は、典型的には、病変または疑わしい病変を含む皮膚組織試料を含むが、生体試料はまた、別の部位、例えば、黒色腫が転移する可能性がある部位由来、または血液由来でありうる。場合によっては、生体試料はまた、病変または疑わしい病変に隣接した領域由来でありうる。
「生体試料を供給すること」とは、本発明に記載された方法に用いる生体試料を得ることを意味する。ほとんどの場合、これは、患者から細胞の試料を取り出すことにより行われるが、以前に単離された細胞(例えば、別な人により、別な時間に、および/または別の目的として、単離された)を用いることによって、または本発明の方法をインビボで実施することによっても、達成されうる。処置または転帰履歴を有するアーカイブ組織(archival tissue)もまた用いられうる。
「受容体チロシンキナーゼに基づく治療を受ける候補」である患者とは、c-KITが、コピー数が増加している、過剰発現している、かつ/もしくは配列変異を有するような、c-KITにおける欠陥を有する黒色腫を有する患者;または、SHP-2において、例えば、SHP-2のプロテインチロシンホスファターゼドメインにおいて、単独でもしくはc-KITの欠陥と組み合わせてのいずれかで、配列変異を有する患者を指す。
「受容体チロシンキナーゼに基づく治療」は、メシル酸イマチニブ、ダサチニブ、もしくはスニチニブ、またはそれらの類似体のような小分子作用物質、抗体などを含むc-KITを阻害する作用物質を指す。
2つまたはそれ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の関連における「同一の」またはパーセント「同一性」という用語は、下記のデフォルトパラメーターでのBLASTもしくはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを用いて決定される場合、または手動のアラインメントおよび視覚的洞察により、同じであるか、またはアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの同じである特定のパーセンテージを有する(すなわち、比較ウィンドウまたは指定された領域に対して比較され、最大一致のために整列された場合、特定の領域に対して約60%同一性、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)、2つもしくはそれ以上の配列または部分配列を指す(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/など参照)。そのような配列は、その後、「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、試験配列の賛辞に関係する、またはそれに適用されてもよい。この定義はまた、欠失および/または付加を有する配列、加えて置換を有する配列、加えて天然の、例えば、多型または対立遺伝子変種、および人工の変種を含む。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮しうる。好ましくは、同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域に対して、またはより好ましくは、長さが50〜100個のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域に対して、存在する。
配列比較について、典型的には、1つの配列が参照配列としての役目を果たし、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列がコンピューターへ入力され、必要に応じて、部分配列座標が指定され、そして、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。好ましくは、デフォルトプログラムパラメーターが用いられうる、または代替パラメーターが指定されうる。配列比較アルゴリズムは、その後、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した試験配列についてのパーセント配列同一性を計算する。
本明細書に用いられる場合の「比較ウィンドウ」は、2つの配列が最適に整列した後、配列が同じ数の連続した位置の参照配列と比較されうる、典型的には、20個から600個まで、通常には約50個〜約200個、より通常には約100個〜約150個からなる群より選択される連続した位置の数のうちの1つのセグメントを指す。比較のための配列のアラインメントの方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性方法についての検索により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行により(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動のアラインメントおよび視覚的洞察により、行われうる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds. 1995 supplement)参照)。
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムの好ましい例には、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムが挙げられ、それらはAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されている。本発明の目的のために、BLASTおよびBLAST 2.0が、本発明の核酸およびタンパク質についてのパーセント配列同一性を決定するためにデフォルトパラメーターで用いられる。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)を通して公的に利用可能である。このアルゴリズムは、最初に、質問配列における長さWの短いワードを同定することにより高スコアリング配列ペア(HSP)を同定する段階を含み、それはデータベース配列における同じ長さのワードと整列した場合、いくらかの正値の閾値スコアTにマッチするかまたは満足させるかのいずれかである。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al., 前記)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するための種としての役割を果たす。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加しうる限り各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、例えば、ヌクレオチド配列について、パラメーターM(マッチング残基のペアについての報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチング残基についてのペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列について、スコア行列が、累積スコアを計算するために用いられる。各方向でのワードヒットの伸長は、以下の場合、停止される:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ低下する;累積スコアが、1つもしくは複数の負スコアリング残基アライメントの蓄積のせいでゼロもしくはそれ未満になる;または、いずれかの配列の末端に達する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速さを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、11のワード長(W)、10の期待値(E)、100のカットオフ、M=5、N=4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして用いる。アミノ酸(タンパク質)配列について、BLASTPプログラムは、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコア行列をデフォルトとして用いる(Henikoff & Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915参照)。本発明の目的のために、BLAST 2.0アルゴリズムがデフォルトパラメーターおよびフィルターオフで用いられる。
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析を行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の一つの決定は、最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、それは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合には、参照配列と類似するとみなされる。対数値は大きな負の数、例えば、5、10、20、30、40、40、70、90、110、150、170など、でありうる。
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという現れは、下記のように、第一核酸がコードするポリペプチドが、第二核酸がコードするポリペプチドに対して産生された抗体と、免疫学的に交差反応性であることである。従って、ポリペプチドは、典型的には、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、第二ポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう一つの現れは、下記のように、2つの分子またはそれらの相補体がストリンジェントな条件下でお互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であるというさらにもう一つの現れは、同じプライマーが配列を増幅するために用いられうることである。
「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態で見出されるように通常はそれに伴う構成要素を、実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を用いて決定される。調製物に存在する支配的な種であるタンパク質または核酸は実質的に精製されている。特に、単離された核酸は、天然でその遺伝子に隣接し、かつその遺伝子がコードするタンパク質以外のタンパク質をコードするいくつかのオープンリーディングフレームから分離されている。いくつかの態様における「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを表す。好ましくは、それは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、および最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。他の態様における「精製する」または「精製」は、精製されるべき組成物から少なくとも1つの夾雑物を除去することを意味する。この意味において、精製は、精製された化合物が均質、例えば、100%純粋、である必要はない。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指すのに本明細書では互換的に用いられる。その用語は、天然のアミノ酸重合体、修飾残基を含むもの、および非天然のアミノ酸重合体だけでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸重合体にも適用される。
「アミノ酸」という用語は、天然および合成のアミノ酸、加えて、天然のアミノ酸と類似して機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号がコードするもの、加えて、後で修飾されるそれらのアミノ酸、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、R基に結合するα炭素、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリン、である。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を指す。そのような類似体は、改変R基(例えば、ノルロイシン)または改変ペプチドバックボーンを有しうるが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然アミノ酸と類似して機能する化学化合物を指す。
アミノ酸は、それらの一般的に知られた三文字表記によって、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている一文字表記によって、本明細書に示されうる。同様に、ヌクレオチドはそれらの一般的に認められている一文字表記により示されうる。
「保存的に改変された変種」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変種は、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一のもしくは関連した、例えば、天然で近接する、配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、大部分のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUのすべてが、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより特定されるあらゆる位置において、コドンは、コードするポリペプチドを変化させることなく、説明された対応するコドンのうちの別なものへ変化しうる。そのような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書におけるあらゆる核酸配列はまた、核酸のサイレント変異を説明する。当業者は、ある特定の状況において、核酸における各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子を生じるように改変されうることを認識していると思われる。従って、多くの場合、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関しては説明された配列に内在するが、実際のプローブ配列に関してはそうではない。
アミノ酸に関して、コードされた配列において単一のアミノ酸またはわずかなパーセンテージのアミノ酸を変化させる、付加する、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質の配列への個々の置換、欠失、または付加は、その変化が結果として、アミノ酸の、化学的に類似したアミノ酸との置換を生じる「保存的に改変された変種」である。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。そのような保存的に改変された変種は、本発明の多型変種、種間相同体、および対立遺伝子に加えてであり、それらを排除しない。典型的な、お互いに保存的な置換:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L))、メチオニン(M)、バリン(V):6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984)参照)。
本明細書に用いられる「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」または文法的相当語句は、共に共有結合された少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。オリゴヌクレオチドは、典型的には、長さが約5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50ヌクレオチド、またはそれ以上から、最高約100ヌクレオチド長までである。核酸およびポリヌクレオチドは、より長い長さ、例えば、200個、300個、500個、1000個、2000個、3000個、5000個、7000個、10,000個などを含む任意の長さの重合体である。本発明の核酸は、一般的に、ホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、例えば、ホスホロアミデート、ホスホロチオネート、ホスホロジチオネート、またはO-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press参照);ならびにペプチド核酸バックボーンおよび結合を含む代替バックボーンを有しうる核酸類似体が含まれる。他の類似体核酸は、米国特許第5,235,033号および第5,034,506号ならびにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, Carbohydrate Modifications in Antisense Research, Sanghui & Cook, eds.を含む、正のバックボーン(positive backbone);非イオン性バックボーン、および非リボースバックボーンを有するものを含む。1つまたは複数の炭素環糖(carbocyclic sugar)を含む核酸もまた、核酸の一つの定義内に含まれる。リボース-リン酸バックボーンの改変は、様々な理由で、例えば、生理学的環境下において、またはバイオチップ上のプローブとして、そのような分子の安定性および半減期を増加させるために、行われうる。天然核酸および類似体の混合物が作製されうる;あるいは、異なる核酸類似体の混合物、ならびに天然核酸および類似体の混合物が作製されうる。
様々な参照文献は、例えば、ホスホロアミデート(Beaucage et al., Tetrahedron 49(10):1925 (1993)およびその中の参照文献; Letsinger, J. Org. Chem. 35:3800 (1970); Sprinzl et al., Eur. J. Biochem. 81:579 (1977); Letsinger et al., Nucl. Acids Res. 14:3487 (1970); Letsinger et al., J. Am. Chem. Soc. 110:4470 (1988); およびPauwels et al., Chemica Scripta 26:141 91986)、ホスホロチオネート(Mag et al., Nucleic Acids Res. 19:1437 (1991); および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオネート(Briu et al., J. Am. Chem. Soc. 111:2321 (1989))、O-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, Oxford University Press参照)、ならびにペプチド核酸バックボーンおよび結合(Egholm, J. Am. Chem. Soc. 114:1895 (1992); Meier et al., Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008 (1992); Nielsen, Nature, 365:566 (1993); Carlsson et al., Nature 380:207 (1996)参照、それらのすべては参照により組み入れられている)を含むそのような核酸類似体を開示する。他の類似体核酸は、米国特許第5,235,033号および第5,034,506号ならびにChapters 6 and 7, ASC Symposium Series 580, 「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cookを含む、正バックボーン(Denpcy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097 (1995);)非イオン性バックボーン(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号、および第4,469,863号; Kiedrowshi et al., Angrew. Chem. Intl. Ed. English 30:423 (1991); Letsinger et al., J. Am. Chem. Soc. 110:4470 (1988); Letsinger et al., Nucleoside & Nucleotide 13:1597 (1994); Chapters 2 and 3, ASC Symposium Series 580, 「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」, Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cook; Mesmaeker et al., Bioorganic & Medicinal Chem. Lett. 4:395 (1994); Jeffs et al., J. Biomolecular NMR 34:17 (1994); Tetrahedron Lett. 37:743 (1996))、および非リボースバックボーンを有するものを含む。1つまたは複数の炭素環糖を含む核酸もまた、核酸の一つの定義内に含まれる(Jenkins et al., Chem. Soc. Rev. (1995) pp 169-176参照)。いくつかの核酸類似体は、Rawls, C & E News June 2,1997 page 35に記載されている。これらの参照文献のすべては、参照により本明細書によって明白に組み入れられている。
他の類似体には、ペプチド核酸類似体であるペプチド核酸(PNA)を含む。これらのバックボーンは、天然核酸の高荷電したホスホジエステルバックボーンと対照的に、天然条件下において実質的に非イオン性である。これは結果として2つの利点を生じる。第一に、PNAバックボーンは、向上したハイブリダイゼーション動力学を示す。PNAは、ミスマッチした塩基対対完全にマッチした塩基対についての融解温度(Tm)においてより大きな変化を有する。DNAおよびRNAは、典型的には、内部ミスマッチについてのTmにおいて2〜4℃降下を示す。非イオン性PNAバックボーンに関して、降下はほぼ7〜9℃である。同様に、それらの非イオン性の性質のために、これらのバックボーンに付着した塩基のハイブリダイゼーションは塩濃度に対して比較的非感受性である。加えて、PNAは細胞酵素により分解されず、従って、より安定でありうる。
核酸は、特定されているように、一本鎖もしくは二本鎖でありうる、または二本鎖もしくは一本鎖配列の両方の部分を含む。当業者により認識されているように、一本鎖の描写はまた相補鎖の配列を定義する;従って、本明細書に記載された配列はまた配列の相補体も提供する。他に規定がない限り、特定の核酸配列はまた、明確に示された配列だけでなく、それらの保存的に改変された変種(例えば、縮重コドンの置換)および相補配列も暗黙的に含む。核酸は、ゲノムおよびcDNAの両方のDNA、RNA、またはハイブリッドでありえ、核酸は、デオキシリボヌクレオチド、およびリボヌクレオチドの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニンなどを含む塩基の組み合わせを含みうる。「転写産物」は、典型的には、天然のRNA、例えば、プレmRNA、hnRNA、またはmRNAを指す。本明細書に用いられる場合、「ヌクレオシド」という用語は、ヌクレオチドおよびヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体、ならびにアミノ修飾ヌクレオシドのような修飾ヌクレオシドを含む。加えて、「ヌクレオシド」は、非天然の類似体構造を含む。従って、例えば、それぞれが塩基を含むペプチド核酸の個々の単位は、本明細書でヌクレオシドと呼ばれる。
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段により検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に用いられるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質、または、例えば、放射性標識をペプチドへ組み入れることにより検出可能にされうる、もしくはペプチドに特異的反応性である抗体を検出するために用いられうる他の実体が挙げられる。標識は、KIT核酸、タンパク質、および抗体へ任意の位置に組み入れられうる。抗体を標識へ結合させるための当技術分野における公知の任意の方法が用いられることができ、例えば、Hermanson, Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoに記載された方法を用いる。
「標識された核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、リンカーもしくは化学結合を通して共有結合性にか、またはプローブに結合した標識の存在を検出することによりプローブの存在が検出されうるように、標識へのイオン結合、ファンデルワールス結合、静電気結合、もしくは水素結合を通して非共有結合性にかのいずれかで、結合しているものである。あるいは、結合パートナーのペアの一方が、他方、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、に結合する高親和性相互作用を用いる方法は、同じ結果に達しうる。
本明細書に用いられる場合、「核酸プローブまたはオリゴヌクレオチド」は、1つまたは複数の型の化学結合を通して、通常には相補的塩基対形成を通して、通常には水素結合形成を通して、相補配列の標的核酸へ結合する能力がある核酸として定義される。本明細書に用いられる場合、プローブは天然(すなわち、A、G、C、またはT)または修飾された塩基(7-デアザグアノシン、イノシンなど)を含みうる。加えて、プローブにおける塩基は、ハイブリダイゼーションに機能的に干渉しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合により連結されうる。従って、例えば、プローブは、成分塩基がホスホジエステル結合よりむしろペプチド結合により連結されるペプチド核酸でありうる。プローブが、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存してプローブ配列との完全な相補性を欠く標的配列を結合しうることは当業者によって理解されていると思われる。プローブは、好ましくは、同位元素、発色団、発光団、色素原と同様に、直接的に標識される、またはストレプトアビジン複合体が後で結合しうるビオチンと同様に、間接的に標識される。プローブの有無についてアッセイすることにより、選択配列もしくは部分配列の有無を検出できる。診断または予後は、ゲノムレベルで、またはRNAもしくはタンパク質発現のレベルに基づきうる。
例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関連して用いられる場合の「組換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種性核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の変化により改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞由来であることを示す。従って、例えば、組換え細胞は、その細胞の天然(非組換え)型の内に見出されない遺伝子を発現する、または、別な具合で異常に発現するか、十分に発現しないか、もしくは全く発現しない天然遺伝子を発現する。本明細書での「組換え核酸」という用語は、通常には天然で見出されない形で、一般的には、例えば、ポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いる核酸の操作により、最初にインビトロで形成される核酸を意味する。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち、上記のように組換え核酸の発現を通して、生成されたタンパク質である。
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という句は、配列が複雑な混合物(例えば、全細胞もしくはライブラリーのDNAまたはRNA)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、分子が、特定のヌクレオチド配列のみへ結合、二重鎖形成、またはハイブリダイズすることを指す。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という句は、典型的には核酸の複雑な混合物において、その標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境において異なる。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの広範な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見出される。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度、pHにおいて特定の配列についての熱融解点(Tm)より約5〜10℃低いように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする(標的配列が過剰に存在する場合、Tmにおいて、プローブの50%が平衡状態で占有される)温度(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下で)である。ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7.0〜8.3において約1.0M未満ナトリウムイオン、典型的には約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、かつ温度が、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)について少なくとも約30℃、および長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)について少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加で達成されうる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションについて、陽性シグナルはバックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示としてのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のとおりでありうる:65℃での0.2xSSCおよび0.1%SDSにおける洗浄と共に、50%ホルムアミド、5xSSC、および1%SDS、42℃でのインキュベーション、または5xSSC、1%SDS、65℃でのインキュベーション。PCRについて、約36℃の温度は低ストリンジェンシー増幅について典型であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに依存して約32℃と48℃の間で変動しうる。高ストリンジェンシーPCR増幅について、約62℃の温度が典型であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に依存して約50℃から約65℃までの範囲でありうる。高いおよび低いストリンジェンシー増幅の両方についての典型的なサイクル条件は、30秒〜2分間の90℃〜95℃の変性相、30秒〜2分間続くアニーリング相、および1〜2分間の約72℃の伸長相を含む。低いおよび高いストリンジェンシー増幅反応についてのプロトコールおよびガイドラインは、例えば、Innis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.に提供されている。
ストリンジェントな条件下でお互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一である場合には、まだなお実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが遺伝暗号により許容される最大コドン縮重を用いて生成される場合に起こる。そのような場合、核酸は、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、37℃で40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液におけるハイブリダイゼーション、および45℃で1XSSCにおける洗浄を含む。陽性ハイブリダイゼーションはバックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件が類似したストリンジェンシーの条件を提供するために利用されうることを容易に認識すると思われる。ハイブリダイゼーションパラメーターを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参照文献、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel, et al.に提供されている。
c-KITタンパク質の活性を阻害する化合物を試験するためのアッセイの関連における「機能的効果」という句は、c-KIT癌タンパク質または核酸の影響下で、間接的もしくは直接的な、例えば、腫瘍形成を減少させる能力のような機能的、物理的、または化学的効果であるパラメーターの決定を含む。c-KITの活性または機能的効果は、タンパク質-タンパク質相互作用活性、例えば、抗体、またはそれが相互作用する他のタンパク質を結合するc-KITの能力;受容体チロシンキナーゼ活性、リガンドを結合するc-KITの能力、軟寒天における細胞成長;足場依存性;成長の接触阻止および密度制限;細胞増殖;細胞形質転換;成長因子または血清依存性;腫瘍特異的マーカーレベル;マトリゲルへの侵襲性;モデル系における腫瘍成長および腫瘍「生着」の判定を含む、インビボでの腫瘍成長および転移;転移を起こすものを含む細胞におけるmRNAおよびタンパク質発現、ならびに癌細胞の他の特性を含む。「機能的効果」は、インビトロ、インビボ、およびエクスビボの活性を含む。
c-KITの「阻害剤」は、例えば、c-KITタンパク質を結合する、c-KITタンパク質の活性を部分的もしくは全体的に遮断する、c-KITタンパク質を減少させる、c-KITタンパク質を阻止する、c-KITタンパク質の活性化を遅らせる、c-KITタンパク質を不活性化する、c-KITタンパク質を脱感作する、またはc-KITタンパク質の活性もしくは発現を下方制御する阻害性分子または化合物、例えば、アンタゴニストを指す。阻害剤には、siRNAまたはアンチセンスRNA、c-KITタンパク質の遺伝子改変バージョン、例えば、変化した活性をもつバージョン、加えて天然および合成のKITアンタゴニスト、抗体、化学的小分子などが挙げられる。阻害剤は公知であるか、または阻害剤を同定するためのさらなるアッセイが、インビトロでまたはインビボ、例えば、細胞もしくは細胞膜において、試験阻害剤化合物を投与することにより行われ、その後、活性への機能的効果を決定しうる。
可能性のある阻害剤で処理されるc-KITタンパク質を含む試料またはアッセイは、阻害の程度を調べるために、阻害剤を含まない対照試料と比較される。対照試料(阻害剤で処理されない)は、100%の相対タンパク質活性値を割り当てられる。c-KITの阻害は、対照に対する活性値は約80%、好ましくは50%、より好ましくは25〜0%である。
「細胞成長における変化」という句は、病巣の形成、足場非依存性、半固体もしくは軟寒天成長、成長の接触阻止および密度制限における変化、成長因子もしくは血清要求性の喪失、細胞形態における変化、不死化の獲得もしくは喪失、腫瘍特異的マーカーの獲得もしくは喪失、適切な動物宿主へ注入された場合の腫瘍を形成もしくは抑制する能力、ならびに/または細胞の不死化のような、インビトロまたはインビボでの細胞成長および増殖特性における任意の変化を指す。例えば、Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique pp. 231-241 (3rd ed. 1994)参照。
本明細書に用いられる場合、「抗体」は、特定の抗原と免疫学的反応性である免疫グロブリン分子への言及を含み、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方を含む。その用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)およびヘテロ結合抗体(例えば、二重特異性抗体)のような遺伝子操作型を含む。「抗体」という用語はまた、抗原結合性能力を有する断片を含む、抗体の抗原結合型を含む(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、およびrIgG。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, ILも参照)。例えば、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York (1998)も参照。その用語はまた、組換え一本鎖Fv断片(scFv)を指す。抗体という用語はまた、二価または二重特異性分子、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、およびテトラボディ(tetrabody)を含む。二価および二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al., (1992) J Immunol 148:1547, Pack and Pluckthun (1992) Biochemistry 31:1579, Hollinger et al., 1993, 前記, Gruber et al. (1994) J Immunol:5368, Zhu et al. (1997) Protein Sci 6:781, Hu et al. (1996) Cancer Res. 56:3055, Adams et al. (1993) Cancer Res. 53:4026、およびMcCartney, et al. (1995) Protein Eng. 8:301に記載されている。
特定の抗原と免疫学的反応性である抗体は、ファージまたは類似したベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択のような組換え方法により(例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989); およびVaughan et al., Nature Biotech. 14:309-314 (1996)参照)、または抗原、もしくは抗原をコードするDNAで動物を免疫することにより、作製されうる。
典型的には、免疫グロブリンは重鎖および軽鎖を有する。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含む(領域は「ドメイン」としても知られている)。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域により中断される4つの「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は規定されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成要素軽鎖および重鎖の組み合わされたフレームワーク領域は、3次元空間にCDRを位置づけ、かつ整列させる役割を果たす。
CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、典型的には、N末端から始めて連続的に番号を付けられたCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、典型的には、特定のCDRが位置している鎖によっても同定される。従って、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変領域由来のCDR1である。
「VH」または「VH」への言及は、Fv、scFv、またはFabの重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFv、またはFabの軽鎖を含む、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
「一本鎖Fv」または「scFv」という句は、伝統的な2鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが1つの鎖を形成するように連結されている抗体を指す。典型的には、リンカーペプチドは、活性結合部位の正しい折り畳みおよび生成を可能にするように2つの鎖の間に挿入される。
「キメラ抗体」は、(a)定常領域またはその部分が、抗原結合部位が異なるもしくは変化したクラス、エフェクター機能、および/もしくは種の定常領域、または新しい性質をキメラ抗体に与える全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など、に連結されるように、変化している、置換されている、または交換されている;または(b)可変領域またはその部分が、異なるもしくは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化している、置換されている、または交換されている、免疫グロブリン分子である。
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基により置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含みうる。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、かつフレームワーク(FR)領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリン定常配列のそれらである、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的に全部を含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれ、の少なくとも一部を含む(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992))。ヒト化は、本質的には、Winterおよび共同研究者らの方法に従って(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))、齧歯類CDR配列をヒト抗体の対応する配列に代わって用いることにより、行われうる。従って、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷ヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている。
「完全なヒト抗体」という用語は、ヒトフレームワークおよび定常領域に加えてヒト可変領域を含む免疫グロブリンを指す。そのような抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて作製されうる。例えば、インビトロ方法は、バクテリオファージ(例えば、McCafferty et al., 1990, Nature 348:552-554; Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991);およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))、酵母細胞(Boder and Wittrup, 1997, Nat Biotechnol 15:553-557)、またはリボソーム(Hanes and Pluckthun, 1997, Proc Natl Acad Sci USA 94:4937-4942)上にディスプレイされるヒト抗体断片の組換えライブラリーの使用を含む。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウスへの、ヒト免疫グロブリン座の導入により作製されうる。攻撃によって、遺伝子再編成、組み立て、および抗体レパートリーを含むすべての点でヒトにおいて見られるものによく似ているヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第6,150,584号;第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号に、および以下の科学刊行物に記載されている:例えば、Jakobavits, Adv Drug Deliv Rev. 31:33-42 (1998), Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); Lonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。
「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質の三次折り畳みにより並列される非連続性アミノ酸の両方から形成されうる。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露において保持されるのに対して、三次折り畳みにより形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理で喪失される。エピトープは、典型的には、固有の空間的立体構造で、少なくとも3個、より通常には、少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体構造を決定するための方法には、例えば、x線結晶学および2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)参照。
一般的な組換え方法
本発明は、本発明に用いるc-Kitの調製およびc-Kitを検出する方法について、組換え遺伝学の分野における日常的技術に頼る。本発明に用いる一般的な方法を開示する基本的なテキストには、Sambrook & Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd Ed, 2001); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994-1999)が挙げられる。例えば、c-KITまたはc-KITの断片が、例えば、阻害剤を検出するためのアッセイに用いるのに、産生される適用において、日常的な発現プロトコールが用いられる。
患者由来の試料におけるc-KitまたはSHP2の配列の同定
本発明の一つの局面において、mRNAのようなc-KITポリヌクレオチドのレベルの増加、もしくはc-KITタンパク質のレベルの増加の存在、ならびに/またはc-KITもしくはSHP2における配列変異の存在が、黒色腫細胞を含むのではないかと疑われる生体試料において判定される。
いくつかの態様において、c-KITにおける変異が判定される。述べられているように、ヒトKIT配列は周知である。mRNAおよびタンパク質配列(例示的なアクセッション番号、前記)に加えて。ゲノム配列は公知である(例えば、Vandenbark, Oncogene 1992 Jul; 7(7):1259-66参照)。イントロンにおける、非翻訳領域における、および結果としてアミノ酸配列に変化を生じない、または保存的変化を生じるコード配列における一塩基多型(例えば、NCBI SNPデータベース参照)を含む、活性に影響を及ぼさない多型変種もまた公知である。遺伝子は89kbに及び、21個のエクソンを有する。mRNA転写産物は5.23kbである。エクソン9の選択的スプライシングは、2つのアイソフォーム、KitAおよびKitを生じ、それらは4個のアミノ酸の有無によって異なる。
本出願に用いられる場合の「配列変異」は、結果としてタンパク質活性への変化を生じるポリヌクレオチド配列における変化を指す。変異は、単一ヌクレオチド置換のようなヌクレオチド置換、挿入、または欠失でありうる。本発明における末端、粘膜、CSD、または眼の黒色腫に検出されるC-kit変異は、典型的には、c-kit活性の活性化へと導く活性化変異である。
完全長KITタンパク質は976アミノ酸長であり、細胞外領域に、そのうちの3個がリガンド結合に関与する、5個の免疫グロブリン様C2型ドメインを含む、この成長因子受容体のファミリーの特徴を示す様々なドメインを含む。リガンドのc-KITへの結合は、その内因性細胞内チロシンキナーゼ酵素活性のホモ二量体化および活性化、その後の自己リン酸化へ導く。c-Kitの細胞内領域は、2個のチロシンキナーゼドメイン、TK IおよびTK II、加えてTK IおよびTK IIを負に制御する膜近傍ドメイン、ならびにプロテインチロシンキナーゼドメインを含む。活性c-kitキナーゼの構造は決定されている(例えば、Mol et al., J Biol Chem 2003 Aug 22; 278(34):31461-64参照)。機能喪失および機能獲得の変異は公知である。
様々な機能獲得変異は悪性腫瘍において同定されており、結果として、c-KitのSCF非依存性恒常的活性化を生じる。KITのチロシンキナーゼ活性は、c-kit遺伝子の数個の異なるエクソンの変異により活性化されうる(例えば、Heinrich et al., 前記による概説参照)。エクソン1〜9は細胞外ドメインを含み、エクソン11〜17は細胞内ドメインをコードする。エクソン10は膜貫通ドメインをコードし、エクソン11は細胞内膜近傍ドメインをコードし、そしてエクソン13および17はチロシンキナーゼドメインである。細胞外部分のエクソン2における変異は骨髄増殖性障害において説明されており、エクソン8における変異は急性骨髄性白血病において同定されており、そしてエクソン9における変異は消化管間質腫瘍において同定されている。エクソン13および17のチロシンキナーゼドメインを負に制御するc-Kitの膜近傍ドメインである、エクソン11における変異は、ヒト消化管間質腫瘍において説明されている。これは、ヒト消化管間質腫瘍における変異の最も一般的な部位である。c-Kitのチロシンキナーゼドメインをコードするエクソン13および17における変異は、全身性肥満細胞症、コア因子結合性白血病(core factor binding leukemia)、および精上皮腫において頻繁に検出される。チロシンキナーゼドメインにおける変異は、c-KitのATP結合能力に影響を及ぼし、機能獲得または機能喪失チロシンキナーゼ活性を生じうる。c-Kit膜近傍領域における変異は、PTB結合を媒介する2つの主要な自己リン酸化部位、Tyr-568およびTyr-570の周りに群がり、ヒト消化管間質腫瘍と関連している。キナーゼドメインにおける変異は、肥満細胞および骨髄性白血病において、ならびにヒト胚細胞腫瘍において見出される。
本発明は、黒色腫、例えば、粘膜、末端、およびCDSの黒色腫の一般的なc-KIT変異部位における変異の発見に基づいている。変異は、c-KIT遺伝子の任意の部分においてでありうる。一般的な配列変異部位は、エクソン11、13、17、および18に存在する。本発明において同定されうる例示的な変異は表3に示されている。これらの変異には、以下の変異が挙げられる:K642E、L576P、D816H、V559A、A829P、ならびにイントロンの欠失、R634W、Y553N、およびN566d。表3に示されているように、これらの変異の一部はこれまで報告されていない。当技術分野において理解されているように、特定の変異は、核酸配列における変異に起因するアミノ酸配列における変化によって一般的に参照される。
本発明において、C-KITにおける過剰発現および/または配列変異は、黒色腫の診断(または予後指標)、例えば、末端黒色腫、粘膜黒色腫、CDS黒色腫、および眼黒色腫のような黒色腫のサブタイプの診断のために、検出される。従って、黒色腫を有する、または有するのではないかと疑われる患者から得られた生体試料が、C-KITのコピー数の増加、C-KITのmRNAの過剰発現、C-KITタンパク質の過剰発現について、およびC-KITにおける変異の存在について、分析されうる。変異の存在は、好都合なことに、生体試料由来の、RNAかまたはDNAのいずれかである核酸試料を分析することにより分析されるが、タンパク質を分析することによって判定されてもよい。
SHP2の配列変異
SHP2(PTPN11としても知られている)は、非受容体プロテインチロシンホスファターゼ、Src相同性領域2ドメインホスファターゼ-2(SHP-2)をコードし、チロシンキナーゼ受容体と会合する細胞内シグナルトランスデューサー、および足場アダプターとして機能する(Tartaglia & Gelb, Ann. Rev. Genom. and Hum. Gen. 6:45-68, 2005)。患者からの黒色腫細胞、例えば、末端黒色腫、粘膜黒色腫、眼黒色腫、またはCSD黒色腫に由来する黒色腫細胞からの核酸およびタンパク質はまた、SHP2の配列変異の存在について評価されうる。典型的には、この方法は、プロテインチロシンホスファターゼドメインにおける変異、例えば、P491L、S150F、またはI309V置換、を検出する段階を含む。変異体配列の検出は、典型的には、患者由来の黒色腫細胞からの核酸試料を評価することにより行われる。評価は、例えば、配列分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの使用などを含む、当技術分野において周知の方法を用いて行われうる。用いられる方法は、c-Kitにおける配列変異を決定するために用いられるものと同じである。
SHP2における変異はまた、例えば、特異的抗体を用いて、タンパク質試料を評価することにより決定されうる。
コピー数の検出
一つの態様において、癌におけるc-Kitの診断的および予後的検出は、c-Kitのコピー数、すなわち、c-Kitをコードする細胞におけるDNA配列の数を決定することにより行われる。特定の遺伝子のコピー数を評価する方法は、当業者に周知であり、とりわけ、ハイブリダイゼーションおよび増幅に基づくアッセイを含む。本発明におけるc-KITのコピー数の増加は、c-KITに選択的にハイブリダイズするプローブを用いて決定される。
いくつかの態様において、c-Kitのコピー数は、インサイチューハイブリダイゼーション、例えば、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、またはFISH、により決定される。インサイチューハイブリダイゼーションアッセイは周知である(例えば、Angerer (1987) Meth. Enzymol 152:649)。そのような適用に用いられるプローブはc-KITに特異的にハイブリダイズする。プローブは、典型的には蛍光標識で、標識される。好ましいプローブは、ストリンジェントな条件下で標的核酸と特異的にハイブリダイズするのに十分長い、例えば、約50個、100個、または200個のヌクレオチドから約1000個またはそれ以上のヌクレオチドまでである。
数々の他のハイブリダイゼーションに基づくアッセイのうち任意のものが、生体試料の細胞におけるc-Kitのコピー数を検出するために用いられうる。例えば、ドットブロット、アレイに基づくアッセイなどがc-Kitのコピー数を決定するために用いられうる。
他の態様において、増幅に基づくアッセイは、c-Kitのコピー数を決定するために用いられ、c-Kitの転写産物のレベルを決定することができる。そのようなアッセイにおいて、c-Kitの核酸配列は増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、すなわちPCR)において鋳型として作用する。そのような増幅反応は定量的に行われる。定量的増幅において、増幅産物の量は、最初の試料における鋳型の量に比例する。適切な対照との比較は、RNA転写産物のコピー数またはレベルの決定を提供する。定量的増幅の方法は当業者に周知である。DNA試料およびRNA試料の定量的PCRの詳細なプロトコールは公知である(例えば、Innis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.参照)。c-KIT(例えば、SEQ ID NO:1参照)の既知の核酸配列は、当業者が遺伝子の任意の部分を増幅するためにプライマーを日常的に選択するのを可能にするのに十分である。特定の配列の増幅のための適切なプライマーは、当技術分野において周知の原理を用いて設計されうる(例えば、Dieffenfach & Dveksler, PCR Primer: A Laboratory Manual (1995)参照)。
他の適切な増幅方法には、限定されるわけではないが、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace (1989) Genomics 4:560, Landegren et al. (1988) Science 241:1077, およびBarringer et al. (1990) Gene 89:117参照)、転写増幅(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173)、自律的配列複製(Guatelli et al. (1990) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 87:1874)、ドットPCR、およびリンカーアダプターPCRなどが挙げられる。
c-KITのDNA配列またはRNA配列における変異の存在は、当技術分野において公知の任意の技術を用いて判定されうる。例えば、一つの態様において、変異体または正常核酸配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて変異体を正常核酸配列と区別することに頼る、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションが用いられうる。この方法は、典型的には、正常または変異対立遺伝子に示差的にハイブリダイズするように設計される、例えば、15〜20ヌクレオチド長の、短いオリゴヌクレオチドを用いる。そのようなプローブを設計することについての手引きは、当技術分野において入手可能である。変異対立遺伝子の存在は、試料にハイブリダイズする対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドの量を決定することにより判定される。
試料においてプローブと標的核酸配列の間に形成されるハイブリッドを検出するための適切なアッセイ形式は、当技術分野において公知であり、固定化標的(ドットブロット)形式および固定化プローブ(逆ドットブロットまたはラインブロット)アッセイ形式を含む。ドットブロットおよび逆ドットブロットアッセイ形式は、米国特許第5,310,893号;第5,451,512号;第5,468,613号;および第5,604,099号に記載されている。
対立遺伝子特異的プライマー
他の態様において、正常または変異体c-KIT核酸の存在(または量)は、対立遺伝子特異的増幅またはプライマー伸長方法を用いて検出することができる。これらの反応は、典型的には、プライマーの3'末端におけるミスマッチによって正常または変異対立遺伝子を特異的に標的化するように設計されるプライマーの使用を含む。ミスマッチの存在は、ポリメラーゼがエラー修正活性を欠く場合、プライマーを伸長するポリメラーゼの能力に影響を及ぼす。増幅産物の量は、プローブを用いて、または反応物に存在するDNAの量を直接的に決定することにより、決定されうる。
c-KIT核酸のレベルの増加またはc-KIT変異の存在の検出はまた、例えば、米国特許第5,210,015号;第5,487,972号;および第5,804,375号;ならびにHolland et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280に記載されているように、5'-ヌクレアーゼ活性を用いて行われうる(「TaqMan(登録商標)」アッセイとも呼ばれる)。そのようなアッセイにおいて、増幅領域内にハイブリダイズする標識検出プローブが増幅反応中に加えられる。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションプローブは、正常または変異対立遺伝子を識別する対立遺伝子特異的プローブでありうる。あるいは、この方法は、対立遺伝子特異的プライマー、および増幅産物に結合する標識プローブを用いて行われうる。他の態様において、プローブは、変異体と正常対立遺伝子の間を識別しない可能性がある。
他の態様において、変異体c-KIT対立遺伝子の存在は、パイロシーケンシングのようなDNAシーケンシング、または他の公知のシーケンシング技術を用いて便利に判定されうる。他の検出方法には、一本鎖立体構造的多型検出方法および変性剤濃度勾配ゲル電気泳動分析が挙げられる。
上記で示されているように、いくつかの態様において、c-KIT RNAのレベルが検出される。核酸ハイブリダイゼーション技術を用いてc-Kit遺伝子転写産物(mRNAまたはそれから生成されたcDNA)のレベルを検出および/または定量化する方法は当業者に公知である。例えば、c-Kitの発現レベルはまた、ドットブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーション、RNアーゼプロテクション、探索DNAマイクロチップアレイなどのような技術により分析されうる。
c-KIT転写産物のレベルまたは転写産物における変異の存在はまた、増幅に基づく方法(例えば、RT-PCR)により検出することができる。RT-PCR方法は当業者に周知である(例えば、Ausubel et al., 前記参照)。好ましくは、TaqMan(登録商標)アッセイのような定量的RT-PCRが用いられ、それにより、試料におけるmRNAのレベルの対照試料または値との比較が可能になる。
c-Kitポリペプチド配列の検出
c-Kitの発現または活性の変化はまた、c-Kitタンパク質または活性のレベルを検出することにより検出することができる。例えば、c-Kitタンパク質活性または発現の検出は、診断を目的として、またはスクリーニングアッセイにおいて、用いられうる。いくつかの態様において、c-Kitのレベルは、好都合なことに、c-Kitポリペプチドのレベルを検出するための免疫学的アッセイを用いて決定される。以下の節は、c-Kitの免疫学的検出を考察する。その節はまた、例えば、治療的適用に用いられうる、抗体の作製およびエンジニアリングに関する。
c-Kitの免疫学的検出
抗体がc-Kitを検出するために用いられうる、またはc-Kitを阻害する能力について本発明の方法において評価されうる。c-Kitは、いくつかの十分に認識された免疫学的結合アッセイのいずれかを用いて検出および/または定量化されうる。適用できるテクノロジーの一般的な概観は、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)およびHarlow & Lane, Using Antibodies (1999)に見出されうる。他の情報源には、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, volume 37 (Asai, ed. 1993); Basic and Clinical Immunology (Stites & Terr, eds., 7th ed. 1991)、およびCurrent Protocols in Immunology (Coligan, et al. Eds, John C. Wiley, 1999-present)が挙げられ、それらも参照されたい。免疫学的結合アッセイは、ポリクローナルかまたはモノクローナルかのいずれの抗体でも用いることができる。いくつかの態様において、変異体c-KIT分子を特異的に検出する抗体が用いられうる。
一般的に用いられるアッセイには、非競合的アッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、および競合的アッセイが挙げられる。競合的アッセイにおいて、試料に存在するc-Kitの量は、試料に存在する未知のc-Kitにより抗c-Kit抗体から置換された(競合して追い出された)既知の加えられた(外因性)c-Kitの量を決定することにより間接的に決定される。一般的に用いられるアッセイ形式には、試料においてタンパク質の存在を検出および定量化するために用いられる、イムノブロットが挙げられる。他のアッセイ形式には、リポソームイムノアッセイ(LIA)が挙げられ、それは、特定の分子(例えば、抗体)を結合し、封入されていた試薬またはマーカーを放出するように設計されたリポソームを用い、その試薬またはマーカーがその後、標準技術により検出される(Monroe et al., Amer. Clin. Prod. Rev. 5:34-41 (1986)参照)。
イムノアッセイはまた、多くの場合、抗体および抗原により形成される複合体に特異的に結合して、標識するために標識剤を用いる。標識剤は、それ自身、抗体/抗原複合体を含む部分の1つでありうる。従って、標識剤は、標識c-Kitポリペプチドまたは標識抗c-Kit抗体でありうる。あるいは、標識剤は、抗体/抗原複合体に特異的に結合する二次抗体のような第三部分でありうる(二次抗体は、典型的には、第一抗体が由来する種の抗体に特異的である)。プロテインAまたはプロテインGのような免疫グロブリン定常領域を特異的に結合する能力がある他のタンパク質もまた、標識剤として用いられうる。標識剤は、ストレプトアビジンのようなもう一つの分子が特異的に結合できるビオチンのような、検出可能な部分で修飾されうる。様々な検出可能な部分は、当業者に周知である。
アッセイに用いられる特定の標識または検出可能な群は、それがアッセイに用いられる抗体の特異的結合に有意には干渉しない限り、本発明の重要な局面ではない。検出可能な群は、検出可能な物理的または化学的性質を有する任意の物質でありうる。そのような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野において十分開発されており、一般的に、そのような方法に有用な大部分の任意の標識が本発明に適用されうる。従って、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段により検出可能な任意の組成物である。本発明に有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADSTM)、蛍光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセインなど)、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般的に用いられる他のもの)、ストレプトアビジン/ビオチン、および金コロイドまたは着色ガラスもしくはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)のような比色標識が挙げられる。化学発光性化合物もまた用いられうる。用いられうる様々な標識またはシグナル発生系の概説については、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
c-Kitに対する抗体は市販されている。いくつかの態様において、c-Kitへの変異は、変異体型を特異的に結合する抗体を用いて検出されえ、それに従って、イムノアッセイもまた、変異体c-Kitタンパク質を検出するために用いられうる。
c-Kitまたはその断片、例えば、細胞外ドメインまたは並列ドメインは、c-Kitと特異的に反応する抗体を産生するために用いられうる。例えば、組換えc-Kitまたはその抗原性断片が単離される。組換えタンパク質は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の産生に好ましい免疫原である。あるいは、本明細書に開示された配列由来でかつ担体タンパク質に結合した合成ペプチドが免疫原として用いられうる。天然のタンパク質もまた、純粋な形または不純な形のいずれでも用いられうる。産物はその後、抗体を産生するために用いられうる。
c-KITと特異的に反応するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を産生する方法は、当業者に公知である(例えば、Coligan; Harlow & Lane, 両方とも前記、参照)。そのような技術は、ファージまたは類似したベクターにおける組換え抗体のライブラリーからの抗体の選択による抗体調製、およびウサギまたはマウスを免疫することによるポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製を含む(例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989)参照)。そのような抗体は、例えば、黒色腫、またはc-Kitの発現もしくは活性の増加を示す他の癌の検出において、診断的または予後的適用に用いられうる。
典型的には、104またはそれ以上の力価をもつポリクローナル抗血清が選択され、競合的な結合イムノアッセイを用いて、非c-Kitタンパク質または他の生物体由来の他の関連タンパク質にも対するそれらの交差反応性について試験される。特異的ポリクローナル抗血清とモノクローナル抗体とは、通常、少なくとも約0.1mM、より通常には少なくとも約1μM、任意で少なくとも約0.1μMまたはより良好、および任意で0.01μMまたはより良好のKdで結合する。
いくつかの態様において、c-Kit抗体は、治療的適用に用いられうる。例えば、いくつかの態様において、そのような抗体は、下記のように、c-Kitの生物学的機能を低下させるまたは除去するために用いられうる。すなわち、抗c-Kit抗体(ポリクローナルかまたは好ましくはモノクローナル)の悪性黒色腫組織(または癌性細胞を含む細胞集団)への添加は、黒色腫を低下させうるまたは除去しうる。一般的に、活性、成長、サイズなどにおける少なくとも25%の減少が好ましく、少なくとも約50%が特に好ましく、かつ約95〜100%の減少がとりわけ好ましい。
多くの場合、治療的適用のためのc-Kitタンパク質に対する抗体はヒト化抗体(例えば、Xenerex Biosciences, Mederex, Inc., Abgenix, Inc., Protein Design Labs, Inc.)である。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むそれらの断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体の他の抗原結合部分配列)のキメラ分子である。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含みうる。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、かつフレームワーク(FR)領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリン定常配列のそれらである、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメインの実質的に全部を含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の、少なくとも一部を含む(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992))。ヒト化は、本質的には、Winterおよび共同研究者らの方法に従って(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))、齧歯類CDR配列をヒト抗体の対応する配列に代わって用いることにより、行われうる。従って、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、無傷ヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている。
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリー(Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))を含む当技術分野において公知の様々な技術を用いて作製されうる。Cole et al.およびBoerner et al.の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, p. 77 (1985)およびBoerner et al., J. Immunol. 147(1):86-95 (1991))。同様に、ヒト抗体は、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウスのような、トランスジェニック動物へのヒト免疫グロブリン座の導入により作製することができる。攻撃によって、遺伝子再編成、組み立て、および抗体レパートリーを含むすべての点でヒトにおいて見られるものによく似ているヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、および以下の科学刊行物に記載されている:Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996); Lonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。
活性の検出
当業者により認識されているように、c-Kit活性は、発現レベルを評価するために、または活性の阻害剤を同定するために、検出することができる。活性は、リガンド結合活性およびチロシンキナーゼ活性を含む、様々なインビトロおよびインビボのアッセイを用いて評価されうる。下記でより詳細に考察されるいくつかの態様において、阻害剤は、形質転換に関連したもののようなさらなる指標を用いて同定されうる。典型的には、c-Kit活性は、それが相互作用するタンパク質、例えば、抗体、リガンド、またはSH2ドメインを含むシグナル伝達分子のような他のタンパク質、に結合する能力を決定することにより決定される。
疾患診断/予後
c-KitおよびSHP2の核酸およびポリペプチド配列は、患者における黒色腫の診断または予後のために用いられうる。例えば、上記のように、患者由来の黒色腫試料におけるc-Kitの配列、レベル、または活性を決定することができ、変化、例えば、c-Kitの発現もしくは活性のレベルにおける増加、またはコピー数における増加もしくはc-Kitにおける配列変異の検出が、黒色腫の存在または可能性を示す。
多くの場合、そのような方法は、例えば、細胞形態のような他の黒色腫指標の検出などの、さらなる診断方法と共に用いられうる。他の態様において、腫瘍由来の組織試料などの、黒色腫細胞を含むことが知られた組織試料が、癌についての情報、例えば、メシル酸イマチニブのような受容体チロシンキナーゼを標的化する治療用物質のようなある特定の処置の効力、生存見込みなどの情報を決定するために、c-Kitの欠陥について分析される。
いくつかの態様において、c-Kitの欠陥またはSHP2の配列変異の存在についての黒色腫細胞の分析は、黒色腫をもつ患者の予後を決定するために、または疾患の進行を決定するために用いられうる。例えば、黒色腫が、組織生検のような、c-Kitを検出することによる以外の技術を用いて検出される場合には、c-Kitの欠陥の有無が、患者についての予後を決定するために用いられうる、すなわち、c-KitまたはSHP2の配列変異における欠陥の存在が、典型的には、黒色腫をもつがc-Kitの正常レベルである患者と比較して、患者における生存見込みの低下を示す。本明細書に用いられる場合、「生存見込み」は、疾患、状態、もしくはその任意の症状の重症度、持続期間、または進行に関する予想を指す。「診断的存在」は、c-KITのコピー数における増加、c-KIT mRNAもしくはタンパク質のレベルの増加、および/または機能を変化させるc-KITもしくはSHP2における配列変異の存在でありうる。
黒色腫細胞を含むのではないかと疑われる任意の生体試料は、進行を決定するために評価されうる。例えば、内臓、血液、リンパ節など由来の組織が、C-KITもしくはSHP2の配列変異の存在、ならびに/またはC-KITのコピー数および/もしくは発現の増加について分析されうる。
特定の変異の存在は、黒色腫がある特定の処置、例えば、メシル酸イマチニブ、に対して応答性である可能性があること、または応答性でない可能性があることを示しうる。例えば、膜近傍領域に変異を有する黒色腫は、メシル酸イマチニブに対して応答性でない可能性がある。
本発明の方法は、癌をもつ患者における処置の最適なコースを決定するために用いられうる。例えば、c-KITのコピー数における増加、および/もしくはc-Kitのレベルの上昇、ならびに/またはc-Kitにおける配列変異の存在は、受容体チロシンキナーゼを標的化するもののようなある特定の治療用物質がそれらの患者に対して有益であるだろうことを示しうる。加えて、c-Kitにおける欠陥および/またはSHP2における配列変異の存在と、一つまたは別の抗黒色腫剤の相対効力との間に相関が容易に確立されうる。そのような分析は、例えば、遡及的に、すなわち、1つまたは複数の型の抗癌治療、例えば、受容体チロシンキナーゼを標的化する治療をその後に受けている患者から以前に採取された試料におけるc-Kitの欠陥および/SHP2の配列変異について分析し、欠陥の存在を処置の既知の効力と相関させることにより、行われうる。
c-KITの阻害剤またはモジュレーターについてのスクリーニング
もう一つの局面において、本発明は、c-KITの阻害剤を投与する段階を含む、c-KITを過剰発現するおよび/またはc-KITにおける変異を有する黒色腫を処置する方法を含む。c-KITの阻害剤は公知であり、例えば、メシル酸イマチニブが挙げられる。フィラデルフィア染色体転座の腫瘍性タンパク質産物、BCR-ABL、を阻害するメシル酸イマチニブは、Kit、PDGF-Rα、およびFLT-3を含む、分割チロシンキナーゼドメインIII型受容体ファミリーの他のメンバーを阻害する(例えば、Wong & Witte, Annu Rev Immunol. 22:247-306, 2004による概説参照)。KITチロシンキナーゼ活性の他の小分子阻害剤もまた同定されている。これらには、インドリノンおよびアニリノフタラジンが挙げられる(例えば、Ma et al., J. Invest. Dermatol. 114:392-394, 2000; Smolich et al. Blood 97:1413-1421, 2001; Krystal et al. Cancer Res. 61:3660-3668, 2001; Mendel et al. Anticancer Drug Des 15:29-41, 2000; およびWood et al. Cancer Res. 60:2178-2189, 2000参照)。これらのクラスにおける特定の薬物には、SU6668およびSU5416(Sugen Inc. South San Francisco, CA)が挙げられる。
他の阻害剤には、抗体、ペプチド、核酸などのような阻害剤が挙げられる。本明細書に用いられる場合、c-Kit阻害剤は、c-Kit核酸発現および/またはc-Kitタンパク質活性を調節する分子である。
化合物のモジュレーターについてスクリーニングする方法は、例えば、c-kitが過剰発現している、または増幅されている黒色腫細胞を用いることができる。そのようなモジュレーターは、候補受容体チロシンキナーゼモジュレーターでありうる。
さらなるc-kit阻害剤は、結合または酵素活性のようなc-kit活性についてアッセイすることにより同定されうる。そのようなアッセイは、既知のc-kit配列もしくは断片、例えば、c-kitの細胞外ドメイン、またはそれらの変種を用いる。そのようなアッセイに用いられうる例示的なヒトc-kit配列ポリペプチド配列は、SEQ ID NO:2に提供されている。
活性アッセイは、治療剤として用いられうる阻害剤、例えば、c-Kitに対する抗体およびc-Kit活性のアンタゴニスト、を同定するために用いられる。c-Kit活性の阻害剤は、組換えかまたは天然のいずれかの、c-Kitポリペプチドを用いて試験される。そのタンパク質は、組換えかまたは天然のいずれかで、単離されうる、細胞において発現しうる、組織または動物において発現しうる。例えば、形質転換細胞が用いられうる。調節は、本明細書に記載されたインビトロまたはインビボのアッセイの1つを用いて試験される。活性はまた、c-KITリガンドのような別のタンパク質に結合するc-Kit断片を用いて、溶解または固体状態反応でインビトロで調べらることができる。
もう一つの態様において、mRNAおよび/またはタンパク質の発現レベルは、試験化合物のc-Kitの発現レベルへの効果を評価するために決定されうる。c-Kitを発現する宿主細胞を、任意の相互作用をもたらすのに十分な時間、試験化合物と接触させ、その後、mRNAまたはタンパク質のレベルを決定する。そのような相互作用をもたらしうる時間の量は、例えば、時間経過をたどり、時間の関数として発現のレベルを決定することによって、実験的に決定されうる。発現の量は、適切な当業者に公知の任意の方法を用いることにより決定されうる。
発現の量は、その後、試験化合物の非存在下での発現の量と比較される。実質的に同一の細胞は、組換え細胞が調製されたが、異種性DNAの導入により改変されなかった同じ細胞由来でありうる。発現の量における差は、試験化合物がある様式でc-Kitのレベルを変化させていることを示す。
c-Kit阻害剤を同定するためのアッセイにおいて、可能性のある阻害剤で処理される試料は、調節の程度を決定するために対照試料と比較される。対照試料(候補阻害剤で処理されていない)は、100の相対活性値を割り当てられる。c-Kitの阻害は、対照に対する活性値が約80%、任意で50%、任意で25〜0%である場合、達成される。
c-Kitの阻害剤として試験される化合物は、任意の小さな化学化合物、または生物学的実体、例えば、タンパク質、糖、核酸、もしくは脂質のような高分子でありうる。あるいは、モジュレーターは、c-Kitの遺伝子改変バージョンでありうる。典型的には、試験化合物は、化学的小分子、およびペプチドまたは抗体である。
いくつかの態様において、作用物質は、1,500ダルトン未満、および場合によっては、1,000、800、600、500、または400ダルトン未満の分子量を有する。より小さな分子をもつ作用物質は、より大きい分子量をもつ作用物質より、経口吸収を含む良い薬物動態学的特性に適合する生理化学的性質を有する可能性がより高いため、比較的小さなサイズの作用物質が望ましい。例えば、透過性および溶解性に基づいて薬物として成功する可能性がより低い作用物質は、以下のとおり、Lipinski et al.により記載された:5個より多いH-結合ドナー(OHおよびNHの合計として表される)を有する;500を超える分子量をもつ;5を超えるLogP(または4.15を超えるMLogP)を有する;および/または10個より多いH-結合アクセプター(NおよびOの合計として表される)を有する。例えば、Lipinski et al. Adv Drug Delivery Res 23:3-25 (1997)参照。生物学的輸送体の基質である化合物クラスは、典型的には、その規則の例外である。
本質的に任意の化学化合物が、本発明のアッセイにおいて可能性のあるモジュレーターまたはリガンドとして用いられうる。ほとんどの場合、化合物は、水溶液または有機溶液(特に、DMSOに基づく)に溶解されうる。アッセイは、アッセイ段階を自動化することにより大きな化学ライブラリーをスクリーニングするように設計され、典型的には並行して実行される(例えば、ロボットによるアッセイにおいてマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式で)。Sigma(St. Louis, MO)、Aldrich(St. Louis, MO)、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)、Fluka Chemika-Biochemica Analytika(Bucks Switzerland)などを含む、化学化合物の多くの供給業者があることは認識されていると思われる。
発現アッセイ
特定のスクリーニング方法は、c-Kit発現を調節する化合物についてスクリーニングする段階を含む。そのような方法は、一般的に、試験化合物をc-Kitを発現する1つまたは複数の細胞と接触させる細胞に基づくアッセイを行う段階、およびその後、発現(転写産物かまたは翻訳産物のいずれか)における減少を検出する段階を含む。そのようなアッセイは多くの場合、c-Kitを過剰発現する細胞で行われる。
発現はいくつかの異なる方法で検出することができる。本明細書に記載されているように、細胞におけるタンパク質の発現レベルは、細胞において発現したmRNAを、c-Kit転写産物(またはそれ由来の相補核酸)と特異的にハイブリダイズするプローブで探索することにより決定されうる。あるいは、タンパク質は、細胞可溶化物がそのタンパク質へ特異的に結合する抗体で探索される免疫学的方法を用いて検出することができる。
他の細胞に基づくアッセイは、そのタンパク質を発現しない細胞で行われるレポーターアッセイである。多くの場合、これらのアッセイは、検出可能な産物をコードするレポーター遺伝子に機能的に連結されているプロモーターを含む異種性核酸構築物で行われる。
核酸阻害剤
いくつかの態様において、c-KIT阻害剤は核酸分子である。例えば、リボザイム、アンチセンスRNA、および/または小さな干渉RNA(siRNA)分子がc-Kitを標的化するために用いられうる。
いくつかの態様において、siRNA分子はc-KIT阻害剤として用いられる。哺乳動物細胞において、長いdsRNA(>30nt)の導入は、多くの場合、タンパク質合成の非特異的阻害およびRNA分解により例示される、強力な抗ウイルス応答を惹起する。RNA干渉の現象は、例えば、Bass, Nature 411:428-29 (2001); Elbahir et al., Nature 411:494-98 (2001); およびFire et al., Nature 391:806-11 (1998)に記載および考察されており、干渉RNAを作製する方法もまた考察されている。本明細書に開示されたc-Kitの配列に基づくsiRNAは、100塩基対未満、典型的には30bpsまたはそれ未満であり、当技術分野において公知のアプローチにより作製される。本発明による例示的なsiRNAは、最高29bps、25bps、22bps、21bps、20bps、15bps、10bps、5bps、またはその辺のもしくはそれらの間の任意の整数までを有しうる。
siRNAは、2つの相補的分子を含みうる、または、例えば、ヘアピンのような、単一転写産物が標的遺伝子由来のセンス配列および相補的アンチセンス配列の両方を有するように構築されうる。
標的細胞において遺伝子発現を阻害するように二本鎖RNAを設計するための方法は公知である(例えば、米国特許第6,506,559号; Elbashir et al. Methods 26:199-213, 2002; Chalk et al., Biochem. Biophysy Res. Comm 319:264-274, 2004; Cui et al. Computer Method and Programs in Biomedicine 75:67-73, 2004, Wang et al., Bioinformatics 20:1818-1820, 2004参照)。例えば、siRNA(ヘアピンを含む)の設計は、典型的には、公知の熱力学的ルールに従う(例えば、Schwarz, et al., Cell 115:199-208, 2003; Reynolds et al., Nat Biotechnol. 22:326-30, 2004; Khvorova, et al., Cell 115:209-16, 2003参照)。多くのコンピュータープログラムが、適切な標的部位であるc-Kitの領域を選択するために利用できる。これらには、Ambion、Dharmacon、Promega、Invitrogen、Ziagen、およびGenScriptのような営利的供給源、加えて、EMBOSS、The Wistar Institute、Whitehead Instituteなどのような非営利的供給源を通して利用可能なプログラムが挙げられる。
例えば、設計は以下の考慮に基づきうる。典型的には、より短い配列、すなわち、約30ヌクレオチド未満が選択される。mRNAのコード領域は通常、標的化される。非翻訳領域結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNPエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉する可能性があるため、適切な標的配列についての検索は、任意で、開始コドンの50〜100ヌクレオチド下流から始まる。いくつかのアルゴリズム、例えば、Elbashir et al., 前記の研究に基づくアルゴリズム、は23-nt配列モチーフAA(N19)TT(N、任意のヌクレオチド)について検索し、約50%G/C含量(30%〜70%もまたそれらの候補として働いている)をもつヒットを選択する。適した配列が見出されない場合には、検索はモチーフNA(N21)を用いて拡大される。センスsiRNAの配列は、それぞれ、(N19)TTまたはN21(23-ntモチーフの3位〜23位)に対応する。後者の場合、センスsiRNAの3'末端はTTへ変換される。
他のアルゴリズムは、優先的に、標的モチーフNAR(N17)YNN(Rはプリン(A、G)であり、Yはピリミジン(C、U)である)に対応するsiRNAを選択する。それぞれの21-ntセンスおよびアンチセンスsiRNAは、それゆえに、プリンヌクレオチドから始まり、また、標的部位における変化なしにpol III発現ベクターから発現しうる;pol IIIプロモーターからのRNAの発現は、最初に転写されるヌクレオチドがプリンである場合のみ有効である。
他の核酸、例えば、リボザイム、アンチセンス、もまた公知の原理に基づいて設計されうる。例えば、Sfold(例えば、Ding, et al., Nucleic Acids Res. 32 Web Server issue, W135-W141, Ding & Lawrence, Nucl. Acids Res. 31:7280, 7301, 2003; およびDing & Lawrence Nucl. Acids Res. 20:1034-1046, 2001)は、siRNAだけでなく、リボザイムおよびアンチセンスを設計することに関するプログラムを提供する。
黒色腫処置ならびに薬学的組成物およびワクチン組成物の投与
c-Kitの阻害剤は、黒色腫の処置のために患者へ投与されうる。下記で詳細に記載されているように、阻害剤は、任意の適切な様式で、任意で、薬学的に許容される担体と共に、投与される。いくつかの態様において、メシル酸イマチニブ、またはその光学異性体、プロドラッグ、および薬学的に許容される塩が、投与される。メシル酸イマチニブは、Novartis(Basel, Switzerland)から入手可能である(Savage, D.G. and Antman, K.H. (2002) N. Engl. J. Med. 346(9):683-93; Mauro, M.J. et al. (2002) J. Clin. Oncol. 20(1):325-34; Schiffer, C.A. (2001) Semin. Oncol. 28(5 Suppl 17):34-9; Demetri, G.D. (2001) Semin. Oncol. 28(5 Suppl 17):19-26; Griffin, J. (2001) Semin. Oncol. 28(5 Suppl 17):3-8; Verweij, J. et al. (2001) Eur. J. Cancer. 37(15):1816-9; Shah, N.P. and Sawyers, C.L. (2001) Curr. Opin. Investig. Drugs. 2(3):422-3)。メシル酸イマチニブのような阻害剤の投与についてのプロトコールは公知であり(例えば、J Clin Oncol. 2003 Dec 1;21(23):4342-9参照)、薬理学的分野において公知の原理に基づいて黒色腫患者のためにさらに最適化されうる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989)。
他のc-KIT阻害剤が公知である。例えば、インドリン骨格を有する化合物は、c-Kitキナーゼ阻害作用を示すものとして報告された(WO 01/45689)。キナゾリン骨格を有する化合物によるc-Kitキナーゼへの阻害作用に関する報告もあった(WO 01/47890)。他の公知のc-kit阻害剤には、CT52923、PD173955、XL820、SU11248、およびSU5614が挙げられる。特異的c-KIT阻害剤を用いることが望ましいが、他の受容体チロシンキナーゼも標的化するc-KIT阻害剤を投与することができる。例えば、SU11248(Sutent, Pfizer)は、3つの別個の血管内皮成長因子受容体(VEGFR-1、-2、および-3)、血小板由来成長因子受容体αおよびβ(PDGFR-αおよび-β)、KIT受容体チロシンキナーゼ、およびfms関連チロシンキナーゼ3/Flk2(FLT3)を標的化する多重標的化受容体チロシンキナーゼ阻害剤である。ダサチニブ(Bristol Myers Squibb, BMS-354825)は、小分子キナーゼ阻害剤である。ダサチニブもまたSRC阻害剤およびabl阻害剤である。
阻害剤は、黒色腫を予防する、処置する、または制御するために治療的有効量で患者へ投与されうる。この化合物は、患者において効果的な防御または治療応答を誘発するのに十分な量で患者へ投与される。効果的な治療応答は、疾患の症状もしくは合併症を少なくとも部分的に停止するまたは遅らせる応答である。これを達成するのに適切な量は、「治療的有効量」と定義される。その用量は、用いられる特定のc-Kit阻害剤の効力、および被験体の状態、加えて体重または処置される領域の表面積により決定される。用量のサイズはまた、特定の被験体における特定の化合物またはベクターの投与に伴う任意の有害効果の存在、性質、および程度により決定される。
そのような化合物の毒性または治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療効果のある用量)を測定することにより、決定されうる。毒性効果と治療効果の間の用量比は治療指数であり、比、LD50/ED50として表されうる。治療指数の大きい化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物も用いられうるが、正常細胞への潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を低減するように罹患組織の部位へそのような化合物を標的化する送達系を設計するという配慮がなされるべきである。
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータは、ヒトに用いる用量範囲を策定するために用いられうる。そのような化合物の用量は、好ましくは、有るか無しかの毒性でED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いられる剤形および投与経路に依存してこの範囲内で変動しうる。本発明の方法に用いられる任意の化合物について、治療的有効量は、最初に、細胞培養アッセイから推定されうる。細胞培養において測定されたようなIC50(症状の最大半減抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて用量が策定されうる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いられうる。血漿におけるレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、決定されうる。一般的に、モジュレーターの用量当量は、典型的な被験体について約1ng/kgから10mg/kgまでである。
本発明に用いる薬学的組成物は、1つもしくは複数の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて標準技術により製剤化されうる。化合物ならびにそれらの生理学的に許容される塩および溶媒和物は、吸入を介して、局所に、経鼻で、経口で、非経口で(例えば、静脈内に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に)、または直腸にを含む任意の適切な経路による投与のために製剤化されうる。
経口投与について、薬学的組成物は、例えば、結合剤、例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース;増量剤、例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプンもしくはデンプングリコール酸ナトリウム;または湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含む、薬学的に許容される賦形剤と共に通常の手段により調製される錠剤またはカプセルの形をとりうる。錠剤は、当技術分野において周知の方法によりコーティングされうる。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形をとりうる、またはそれらは、使用前の水もしくは他の適した媒体との構成のための乾燥製品として提供されうる。そのような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、沈殿防止剤、例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチンまたはアラビアゴム;非水性媒体、例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分留化植物油;および保存剤、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、またはソルビン酸、と共に通常の手段により調製されうる。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤、および/または甘味剤を含みうる。必要なら、経口投与のための調製物は、活性化合物の徐放性を与えるように適切に製剤化されうる。
吸入による投与について、化合物は、好都合なことに、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガス、を用いて、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー供与の形で送達されうる。加圧エアゾールの場合、用量単位は、定量を送達するためのバルブを提供することにより決定されうる。ゼラチンなどの、吸入器または注入器に用いるカプセルおよびカートリッジは、ラクトースまたはデンプンなどの、化合物および適した粉末基剤の粉末混合物を含んで製剤化されうる。
化合物は、注入、例えば、ボーラス注入または持続注入による非経口投与のために製剤化されうる。注入のための製剤化は、加えられた保存剤と共に、単位用量形で、例えば、アンプル中または複数回用量容器中で、提供されうる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳濁液などの形をとることができ、製剤化剤、例えば、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤を含みうる。あるいは、活性成分は、使用前の適切な媒体、例えば、滅菌した発熱物質を含まない水、との構成のための粉末形でありうる。
化合物はまた、直腸作用性組成物、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような通常の坐剤基剤を含む坐剤または保持浣腸剤に製剤化されうる。
さらに、化合物はデポ製剤として製剤化されうる。そのような長時間作用性製剤は、埋め込みにより(例えば、皮下にまたは筋肉内に)、または筋肉内注射により投与されうる。従って、例えば、化合物は、適切な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中の乳濁液のような)で、もしくはイオン交換樹脂で、または難溶性塩のような難溶性誘導体として、製剤化されうる。
組成物は、必要に応じて、活性成分を含む1つまたは複数の単位用量形を含みうるパックまたはディスペンサー装置で提供されうる。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイルからなる、例えば、ブリスターパックでありうる。パックまたはディスペンサー装置は、投与についての使用説明書を添付しうる。
遺伝子発現の阻害剤
本発明の一つの局面において、c-Kit阻害剤はまた、c-Kit発現を阻害する核酸分子を含みうる。通常のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入方法が、哺乳動物細胞もしくは標的組織において改変c-Kitポリペプチドをコードする核酸、または代替として、核酸、例えば、siRNA、リボザイム、もしくはアンチセンスRNAのようなc-Kit活性の阻害剤、を導入するために用いられうる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームのような送達媒体と複合体形成された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれるゲノムのいずれかを有するDNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。遺伝子治療手順の概説として、Anderson, Science 256:808-813 (1992); Nabel & Felgner, TIBTECH 11:211-217 (1993); Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993); Dillon, TIBTECH 11:167-175 (1993); Miller, Nature 357:455-460 (1992); Van Brunt, Biotechnology 6(10):1149-1154 (1988); Vigne, Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36 (1995); Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin 51(1):31-44 (1995); Haddada et al., Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds) (1995); およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26 (1994)参照。
いくつかの態様において、siRNAが投与される。siRNA治療は、本発明のsiRNAをコードする標準ベクターおよび/または合成siRNA分子を送達することによるような遺伝子送達系により、siRNAを患者に投与することにより行われる。典型的には、合成siRNA分子は、インビボでのヌクレアーゼ分解を防ぐために化学的に安定化される。化学的安定化RNA分子を調製するための方法は当技術分野において周知である。典型的には、そのような分子は、リボヌクレアーゼの作用を防ぐように改変されたバックボーンおよびヌクレオチドを含む。他の改変もまた可能であり、例えば、コレステロール結合型siRNAは、薬理学的性質の改善を示している(例えば、Song et al. Nature Med. 9:347-351 (2003)参照)。
非ウイルス送達方法
本発明の改変ポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス送達の方法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸結合体、裸のDNA、人工ビリオン、および作用物質促進性DNA取り込みが挙げられる。リポフェクションは、例えば、US 5,049,386;US 4,946,787;およびUS 4,897,355に記載されており、リポフェクション試薬は商業的に販売されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適している陽イオン性および中性脂質には、Felgner, WO 91/17424、WO 91/16024のものが挙げられる。送達は、細胞(エクスビボ投与)または標的組織(インビボ投与)へでありうる。
イムノリピッド(immunolipid)複合体のような標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当技術分野において周知である(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995); Blaese et al., Cancer Gene Ther. 2:291-297 (1995); Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994); Remy et al., Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994); Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995); Ahmad et al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992); 米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号、および第4,946,787号参照)。
ウイルス送達方法
c-Kitの阻害剤の送達のためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、当技術分野において公知である。c-Kit核酸阻害剤の送達のための通常のウイルスに基づく系は、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルスのベクターを含みうる。
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療ベクターは特定の組織型、例えば、膵臓または乳房組織へ、高度の特異性を以て送達されることが望ましい。ウイルスベクターは、典型的には、ウイルス外面上にウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することにより所定の細胞型に対する特異性を有するように改変される。リガンドは、対象となる細胞型に存在することが知られている受容体に対して親和性を有するように選択される。例えば、Han et al., PNAS 92:9747-9751 (1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスがgp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変されえ、組換えウイルスはヒト上皮成長因子受容体を発現する特定のヒト癌細胞に感染することを報告した。この原理は、リガンド融合タンパク質を発現するウイルスおよび受容体を発現する標的細胞の他のペアへ拡大されうる。例えば、線状ファージは、事実上任意の選択された細胞受容体に対する特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FabまたはFv)をディスプレイするように操作されうる。上記は主としてウイルスベクターに適用されるが、同じ原理は、非ウイルスベクターに適用されうる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取り込みに有利に働くと考えられる特定の取り込み配列を含むように操作されうる。
遺伝子治療用ベクターは、下記のように、個々の患者への投与、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所投与により、インビボで送達されうる。あるいは、ベクターは、個々の患者由来の外植される細胞と同様に、エクスビボで細胞へ送達されうる。
診断、研究、または遺伝子治療(例えば、トランスフェクションされた細胞の宿主生物体への再注入による)のためのエクスビボ細胞トランスフェクションは、当業者に周知である。いくつかの態様において、細胞は、被験生物体から単離され、c-Kit阻害剤の核酸をトランスフェクションされ、被験生物体(例えば、患者)へ再注入して戻される。エクスビボトランスフェクションに適した様々な細胞型は当業者に周知である(患者から細胞を単離し、培養する方法の考察について、例えば、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994)およびそこに引用されている参照文献を参照)。
治療用核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、インビボでの細胞の形質転換のために、生物体へ直接投与されうる。あるいは、裸のDNAが投与されうる。投与は、分子を導入して最終的に血液または組織細胞と接触させるために通常用いられる経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する適切な方法は利用可能であり、当業者に周知であり、かつ複数の経路を特定の組成物の投与のために用いることができるが、多くの場合、特定の経路は別の経路より迅速かつ効果的な反応を提供できる。
薬学的に許容される担体は、投与される特定の組成物により、および組成物を投与するために用いられる特定の方法により、一部は決定される。従って、下記のように、本発明の薬学的組成物の幅広い種類の適切な製剤がある(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989参照)。
いくつかの態様において、c-Kitポリペプチドおよびポリヌクレオチドはまた、免疫応答、典型的には細胞(CTLおよび/またはHTL)応答、を刺激するためのワクチン組成物として投与されうる。そのようなワクチン組成物には、例えば、脂質化ペプチド(例えば、Vitiello, A. et al., J. Clin. Invest. 95:341 (1995)参照)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(「PLG」)ミクロスフェアに封入されたペプチド組成物(例えば、Eldridge, et al., Molec. Immunol. 28:287-294 (1991); Alonso et al., Vaccine 12:299-306 (1994); Jones et al., Vaccine 13:675-681 (1995)参照)、免疫刺激複合体(ISCOMS)に含まれるペプチド組成物(例えば、Takahashi et al., Nature 344:873-875 (1990); Hu et al., Clin Exp Immunol. 113:235-243 (1998)参照)、多抗原ペプチド系(MAPs)(例えば、Tam, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5409-5413 (1988); Tam, J. Immunol. Methods 196:17-32 (1996)参照)、多価ペプチドとして製剤化されたペプチド;弾道的送達系(ballistic delivery system)に用いるペプチド、典型的には、結晶化ペプチド、ウイルス送達系(Perkus, et al., Concepts in vaccine development (Kaufmann, ed., p.379, 1996); Chakrabarti, et al., Nature 320:535 (1986); Hu et al., Nature 320:537 (1986); Kieny, et al., AIDS Bio/Technology 4:790 (1986); Top et al., J. Infect. Dis. 124:148 (1971); Chanda et al., Virology 175:535 (1990))、ウイルスまたは合成起源の粒子(例えば、Kofler et al., J. Immunol. Methods. 192:25 (1996); Eldridge et al., Sem. Hematol. 30:16 (1993); Falo et al., Nature Med. 7:649 (1995)参照)、アジュバント(Warren et al., Annu. Rev. Immunol. 4:369 (1986); Gupta et al., Vaccine 11:293 (1993))、リポソーム(Reddy et al., J. Immunol. 148:1585 (1992); Rock, Immunol. Today 17:131 (1996))、または裸のもしくは粒子吸着型cDNA(Ulmer, et al., Science 259:1745 (1993); Robinson et al., Vaccine 11:957 (1993); Shiver et al., Concepts in vaccine development(Kaufmann, ed., p.423, 1996); Cease & Berzofsky, Annu. Rev. Immunol. 12:923 (1994)およびEldridge et al., Sem. Hematol. 30:16 (1993))が挙げられうる。Avant Immunotherapeutics, Inc. (Needham, Massachusetts)のもののような受容体媒介性ターゲティング(receptor-mediated targeting)としても知られている、毒素ターゲティング送達テクノロジー(toxin-targeted delivery technology)もまた用いられうる。
診断的および/または予後的適用に用いるキット
本発明はまた、診断的または治療的適用のためのキットを提供する。診断/予後的適用について、そのようなキットは以下のいずれかまたは全部を含みうる:アッセイ試薬、緩衝液、c-KITおよび/またはSHP-2プローブ、プライマー、抗体など。
加えて、キットは、本発明の方法の実施についての説明書(すなわち、プロトコール)を含む教材を含みうる。教材は、典型的には、文書によるまたは印刷された資料を含むが、それらに限定されない。そのような使用説明書を保存し、それらをエンドユーザーへ通信することができる任意の媒体が本発明により企図される。そのような媒体には、限定されるわけではないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられる。そのような媒体は、そのような教材を提供するインターネットサイトへのアドレスを含みうる。
実施例
実施例1 − 103個の原発性黒色腫のコピー数プロファイルの検査
MAPキナーゼおよびPI3キナーゼ経路は、腫瘍がUV曝露および解剖学的部位の組み合わせに従って分類される場合、黒色腫のサブタイプの間で異なって活性化される(Curtin, et al., New Engl. J. Med. 353:2135-2147, 2005)。最も顕著には、BRAF変異は、慢性日光誘発性損傷の徴候なしに皮膚に生じる黒色腫(非CSD黒色腫)において高度に蔓延しているが(59%)、手のひら、足底、または爪下部位(それぞれ、末端または粘膜黒色腫)に生じる黒色腫において頻度が非常に低い。BRAF変異はまた、慢性日光誘発性損傷の証拠を示す皮膚に生じる黒色腫(CSD黒色腫)においてもまれである。すべてのサブタイプの黒色腫の約10〜20%は、NRASの変異によりこれらの経路を活性化しているが、NRASおよびBRAFの両方の変異は同時には発生しない。これらの所見は、どのようにしてMAPキナーゼ経路が、NRASまたはBRAF変異を有しない腫瘍において活性化されうるかという重要な問いを起こさせる。
Curtin et al.、前記、によるアレイCGH分析により、黒色腫のサブタイプの間にDNAコピー数異常の特徴における差が見出され、いくつかの座の関与の頻度において有意な差があった。この研究(GEO、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/;アクセッション番号GSE2631において入手可能なデータ)からの103個の原発性黒色腫のコピー数プロファイルの検査により、染色体4p12の増加(10個の腫瘍)または増幅(7個の腫瘍)が見出された(図2)。これらの腫瘍のうちの16個は、BRAFおよびNRASについてシーケンシングされており、変異は見出されなかった。すべての17個の腫瘍は、末端、粘膜、またはCSDのサブタイプであった。
実施例2 − c-Kitについての免疫組織化学法およびインサイチューハイブリダイゼーション
4p12コピー数上昇の一般的な領域は、魅力的な候補黒色腫発癌遺伝子であるいくつかの受容体チロシンキナーゼ(RTK)を含む。これらは、v-kit Hardy-Zuckerman 4ネコ肉腫ウイルス発癌遺伝子相同体c-Kit、血管内皮成長因子受容体KDR、および血小板由来成長因子α受容体(PDGFRA)を含む。c-Kitは、メラニン細胞生存および発生のための必須の遺伝子であり(Chabot, et al., Nature 335:88-89, 1988; Geissler, et al., Cell 55:185-192, 1988)、様々な癌型における発癌性変異を受けやすい(Beghini et al., Cancer 92:657-662, 2001; Beghini et al., Blood Cells Molecules and Diseases 24:262-270, 1998; Isozaki, et al., Am. J. Path. 157:1581-1585, 2000; Lux, et al., Am. J. Path. 156:791-795, 2000; Wardelmann, et al., Mod. Pathology 15:125-136, 2002)。しかしながら、以前の研究は、発現が腫瘍進行中に失われるように思われたため、一般的に、黒色腫におけるその重要性を退けている(Lassam & Bickford, Oncogene 7:51-56, 1992; Natali, et al., Int. J. Cancer 52:197-201, 1992; Zakut, et al., Oncogene 8:2221-2229, 1993; Huang, et al., Oncogene 13:2339-2347, 1996; Montone, et al., Mod. Pathology 10:939-944, 1997)。KDRは、血管新生(Millauer, et al., Cell 72:835-846, 1993)および固形腫瘍の発生(Millauer, et al., Nature 367:576-579, 1994)において重要であり、一般的に黒色腫において発現している(Straume & Akslen, Am J Pathol 159:223-235, 2001)。PDGFRAは、消化管間質腫瘍(GIST)のサブセットにおいて(Heinrich, et al., Science 299:708-710., 2003)、および小児急性骨髄性白血病において(Hiwatari, et al., Leukemia 19:476-477, 2005)、変異または小さな欠失により活性化されることが見出されている。
本発明者らは、PDGFRAおよびKDRについての免疫組織化学法、ならびに組織マイクロアレイ上でのPDGFRAについてのインサイチューハイブリダイゼーションを行い、両方の遺伝子が黒色腫のサブセットにおいて発現していたが、4q12におけるコピー数増加とタンパク質またはRNA発現との間の関連はなかったことを見出した(データ未呈示)。さらに、4q12の増幅を有する症例におけるPDGFRAの一般的な変異部位、エクソン10、12、14、および18(Heinrich, et al., Science 299:708-710., 2003)のシーケンシングにより、いかなる変異も明らかにされなかった。対照的に、標準的な抗体濃度を用いる免疫組織化学法を使用してc-Kit発現について試験された(方法参照)、4q12のコピーの増加を有する11個の黒色腫のうちの8個(73%)は、c-Kit発現の増加を示した。c-Kitにおける増幅を有する7つの試料におけるc-Kitの一般的な変異部位、エクソン11、13、17、および18の配列分析により、変異を有する3つの試料が見出された。すべての3つの試料は、K642E変異を示し、1つは残基N566Dにおいてさらなる変異を有した(表2)。K642E変異は発癌性であり(Isozaki, et al., Am. J. Path. 157:1581-1585, 2000)、散発性GISTにおいて(Lux, et al., Am. J. Path. 156:791-795,2000)および家族性GISTにおいて発生している(Isozaki, et al., Am. J. Path. 157:1581-1585, 2000)。4q12における増幅は、シーケンシングトレースのピークの高さにより示された、すべての3つの症例における変異した対立遺伝子を標的化しており、c-Kitタンパク質はすべての3つの症例において高度に発現していた(図2)。これらの所見は、c-Kitが、少なくともこれらの3つの症例において、4q12におけるコピー数増加の選択を作動させる遺伝子であることを示し、変異がコピー数変化の非存在下において起きているかどうかを判定するために腫瘍の残りにおいてこれらの同じc-Kitエクソンをシーケンシングすることを動機付けた。14個の腫瘍(14%)におけるコーディング変異、およびさらなる腫瘍におけるイントロンの欠失が見出された(表3)。隣接する正常組織を入手することができたc-Kit変異体の症例、8/15、についての隣接する正常組織由来のDNAの分析により、変異は見出されず、変異が体細胞的に得られたことを示した。
異なる黒色腫サブグループにおけるc-Kitの異常(すなわち、配列変異またはコピー数増加)の頻度は、BRAF変異とのほぼ鏡像として変動した。粘膜、末端、CSD、および非CSD黒色腫におけるc-Kitの異常は、それぞれ、39%、26%、17%、および0%に存在し、一方、BRAF変異は、11%、23%、11%、59%に存在した(Maldonado, et al., J. Natl. Canc. Inst. 95:1878-1880, 2003; Curtin, et al., New Engl. J. Med. 353:2135-2147, 2005)。
c-Kitタンパク質発現の免疫組織化学的分析により、黒色腫発癌遺伝子としてのその役割がさらに支持される。c-Kitの変異を有する11個の黒色腫のうちの10個(91%)、およびc-Kitのコピー数増加を有する11個のうちの8個(73%)が、腫瘍の他の部分と比較して、垂直成長期(VGP)においてc-Kitタンパク質の発現の増加を示し(表2、図1)、黒色腫におけるc-Kit発現は、腫瘍の進行期において増強され、その受容体の変異または遺伝子量増加があることを示している。標準的な分析条件下で腫瘍のVGPにおいて強いc-Kitタンパク質発現を示さなかった、c-Kitの変異またはコピー数増加を有する4つの試料は、より高い抗体濃度が用いられた場合、VGPにおいて発現の増強を示した。対照的に、残留する組織が免疫組織化学法に利用できた、検出可能なc-Kitの変異またはコピー数をもたない試料の6/19(32%)のみが、VGPにおいてc-Kitタンパク質の発現の増加を示した。興味深いことに、本発明者らの方法がc-Kitにおける遺伝子異常を明らかにしなかったc-Kitを発現する6つの黒色腫(n=6)は、すべて、BRAFまたはNRASについての野生型であり、たった1つがCCND1の増幅を示した。従って、黒色腫における異常なc-Kitシグナル伝達は、他の癌型について説明されているように(Sihto, et al., J Clin Oncol 23:49-57, 2005)両方の遺伝子量効果、変異により、およびおそらく、本発明者らの研究において決定されない他の発現を変化させる機構により、活性化されうる。異なる黒色腫サブグループにおけるc-Kitの異常の頻度(すなわち、変異またはコピー数の増加)は、BRAF変異とのほぼ鏡像として変動した(例えば、図3)。粘膜、末端、CSD、および非CSD黒色腫におけるc-Kitの異常は、それぞれ、39%、26%、17%、および0%に存在し、一方、BRAF変異は、11%、23%、11%、59%に存在した(Maldonado, et al., J. Natl. Canc. Inst. 95:1878-1880, 2003; Curtin, et al., New Engl. J. Med. 353:2135-2147, 2005)。
本発明者らは、黒色腫におけるc-Kitの重要性に関連した本発明者らの結果は、c-Kitが黒色腫進行中に下方制御されること、または腫瘍成長に負に影響を及ぼすことを示した最も最近の研究(Lassam & Bickford, Oncogene 7:51-56, 1992; Natali, et al., Int. J. Cancer 52:197-201, 1992; Zakut, et al., Oncogene 8:2221-2229, 1993; Huang, et al., Oncogene 13:2339-2347, 1996; Montone, et al., Mod. Pathology 10:939-944, 1997)と対照をなしていることに注目する。転移性黒色腫の本発明者らの研究のみが、原発性腫瘍の性質についての詳細なしに100個の黒色腫転移のうちの2個における変異を報告している(Willmore-Payne, et al., Hum. Pathol. 36:486-493, 2005)。本発明者らは、この違いは黒色腫分類への本発明者らのアプローチのせいであると考えており、それにより、本発明者らは、c-Kitがたまたま活性である腫瘍の中に濃縮された試料コホートを用いること、およびより広い関連において結果を解釈することに動機付けられた。本発明者らの所見と一致して、c-Kitの高レベルの発現が、以前に、末端性黒色腫において報告されていた(Ohashi, et al., Melanoma Res. 6:25-30, 1996)。
本発明者らのデータは、黒色腫治療、および黒色腫発生の理解を向上させること、および研究の将来的方向を示唆することについての重要な掛かり合いを含む。本発明者らが黒色腫において見出した変異の大部分は、他の癌型において報告されており、その受容体の恒常的活性化へ導くと考えられる(表3)。本発明者らのシリーズにおける黒色腫のうちの12個は、散乱係数(SCF)の非存在下で二量体化を促進し、結果として恒常的活性化を生じること(Lennartsson, et al., Oncogene 18:5546-5553, 1999)、またはc-Kitがその自己抑制立体構造を維持するのを妨げること(Mol, et al., J. Biol. Chem. 279:31655-31663, 2004)が予想される、膜近傍ドメインを侵す変異を有した。治療的考慮について重要なことには、膜近傍領域における変異は、本発明者らのシリーズ(表)において最も頻繁であり、イマチニブに対して応答性である可能性がある(Frost, et al., Mol. Canc. Ther. 1:1115-1124, 2002; Heinrich, et al., J. Clin. Onc. 21:4342-4349, 2003; Ma, et al., Blood 99:1741-1744, 2002)。本発明者らの症例のうちの3つは、高頻度でイマチニブに対して抵抗性であるキナーゼドメインにおける変異を有したが(Heinrich, et al., J. Clin. Onc. 21:4342-4349, 2003)、c-Kitの変異を含む黒色腫のその型は、ヨーロッパ人の子孫の集団において少数派の症例を表し、それらはアフリカ人、アジア人、およびスペイン系人の子孫の人々においてより一般的であるため、世界中では、それらは最も高い黒色腫負荷量を表す。さらに、それらは特に攻撃的であり、そのため、これらの変異の知識の治療的影響は相当でありうる。
変異、遺伝子量、およびタンパク質発現データの組み合わせは、c-Kitが異常なシグナル伝達に関与しうる様式の複雑さを示す。本発明者らのコホートにおいて、K642E変異を有する黒色腫のみが、c-Kitのコピー数増加を示し、逆に、この変異は、遺伝子量増加またはNRAS変異を有しない黒色腫において見出されなかった(例えば、表1および2)。機能的研究(Tarn, et al., Clin. Canc. Res. 11:3668-3677, 2005)、およびK642E対立遺伝子が生殖細胞系に見出されうるという所見(Isozaki, et al., Am. J. Path. 157:1581-1585, 2000)は、それがc-Kitの弱い活性化型を表すことを示唆する。従って、この変異は、有意な発癌性シグナルを提供するためにさらなる直接的に相互作用する選択的段階を必要とするように思われる。c-Kitにおけるコーディング変異を有するすべての他の試料は、c-Kit座のコピー数増加を有さず、かつBRAFまたはNRAS変異を示さず、これらの変異が実質的により強い発癌性シグナルを生じることを示唆した。
c-Kitの高頻度の遺伝子変化を示す黒色腫型は、多くの場合、浸潤性成長に先立つ進行期における表皮に沿って単細胞として並んだメラニン細胞により特徴付けられる黒子の成長パターンを示す。対照的に、非CSD黒色腫は、典型的には、メラニン細胞が表皮中に点在する表在拡大型成長パターンを示す。
実施例2 SHP2の変異の分析
方法
本発明者らは、粘膜黒色腫(n=35)、末端皮膚(acral skin)黒色腫(n=24)、慢性日光誘発性損傷有り(n=16)および無し(n=12)の皮膚黒色腫、ならびに眼黒色腫(n=16)からの104個の原発性黒色腫を研究した。日光誘発性損傷は、著しい日光弾性線維症の有無により顕微鏡的に定義された。これらの症例は、以前に発表されたデータセットの一部である(Maldonado, et al., J. Natl. Canc. Inst. 95:1878-1880, 2003; Curtin, et al., New Engl. J. Med. 353:2135-2147, 2005)。本発明者らはまた、13個の細胞系を研究した。
変異分析のためのDNAは、以前に発表されているように(Bastian, et al: Cancer Res. 8:2170-2175, 1998)、ホルマリン固定、パラフィン包埋の原発性腫瘍および周囲の正常組織から抽出された。本発明者らは、対象となるエクソンを含むように設計された特定のプライマーで生成されたPCR増幅産物の直接的シーケンシングにより配列分析を行った。用いられるプライマーは以下のとおりであった。
シーケンシングを目的として、M13フォワード(5'-tgtaaaacgacggccagt-3')およびリバース(5'-agcggataacaatttcacacagg-3')プライマーが、それぞれ、各フォワードおよびリバースプライマーの5'末端上へ付加された。PCRサイクリング条件は以下のとおりであった。95℃で6分間の最初の変性、続いて、95℃で90秒間、62℃で90秒間のアニーリング相で、57℃へのタッチダウンまでサイクルごとに0.5℃ずつ減少させる、および72℃で90秒間の伸長段階の10サイクルがある。これは、続いて、57℃のアニーリング温度を用いる上記のようなさらなる36サイクル、および最後に72℃で10分間の伸長段階がある。PCR産物は、ExoSAP-IT(登録商標)(USB Corporation, Cleveland, OH)を用いて精製され、ABI PRISM(登録商標)3700 DNA Analyzer (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてM13プライマーで直接、シーケンシングされた。
SHP2(PTPN11としても知られている)は、非受容体プロテインチロシンホスファターゼ、Src相同性領域2ドメインホスファターゼ-2(SHP-2)をコードし、チロシンキナーゼ受容体と会合する細胞内シグナルトランスデューサー、および足場アダプターとして機能する(Tartaglia & Gelb, Ann. Rev. Genom. and Hum. Gen. 6:45-68, 2005)。本発明者らは、104個の原発性黒色腫腫瘍および13個の黒色腫細胞系におけるエクソン3、7、8、および13、ならびに50個の原発性黒色腫におけるエクソン4をシーケンシングし、3つの変異を観察したが、それらは結果として、それぞれ、P491L、S150F、およびI309V置換を生じ、その両方はプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインに起きている。それらは、それぞれ、慢性日光損傷皮膚(CSD)上の黒色腫および粘膜黒色腫に見出され、隣接する正常組織由来のDNAをシーケンシングすることにより体細胞的に獲得されることが実証された。
P491L置換(Binder, et al., J Clin Endocrinol Metab 90:5377-5381, 2005)は、ヌーナン症候群をもつ患者において生殖細胞系に見出されており、ALLにおいては体細胞的に獲得されている(Tartaglia, et al., Blood 104:307-313, 2004)。生殖細胞系のI309V変異もまた、ヌーナン症候群において観察されている(Tartaglia, et al., Am. J. Hum. Gen. 70:1555-1563, 2002)。結果としてP491LおよびP491S置換を生じる体細胞および生殖細胞系変異、ならびに結果としてI309V置換を生じる生殖細胞系変異はまた、ヌーナン症候群かまたはLeopard症候群のいずれかをもつ患者を調べる研究において報告された(Tartaglia, et al., Am J Hum Genet 78:279-290, 2006)。S150Fはこれまで報告されていない。SHP2における結果としてR138Q変異を生じる変異は、以前に、1つの黒色腫試料において報告されている(Bentires-Alj, et al., Cancer Res 64:8816-8820, 2004)。
Shp2タンパク質は、N-SH2、PTP、およびC-SH2ドメインからなる。SHP2の機能の正確な機構は完全には明らかになっていないが、その不活性状態においてN-SH2ドメインがPTP触媒部位をブロックすることが提案されている。SHP2のそのリガンドへの結合は、N-SH2ドメインの立体構造を変化させ、結果として、PTPドメインからのその解離を生じることによりホスファターゼを活性化する(Tartaglia & Gelb, Ann. Rev. Genom. and Hum. Gen. 6:45-68, 2005)。I309およびP491残基の両方はPTPドメインに位置している。その不活性状態において、SHP2タンパク質は、PTPドメインとN-SH2ドメインの間の相互作用により不活性である。結晶構造証拠は、P491残基がN-SH2/PTP相互作用表面から空間的に遠いことを示す。I309およびP491残基の両方は、全体的なPTP構造に寄与すると考えられ、触媒機能またはN-SH2/PTP相互作用に役割を果たしているとは考えられない(Tartaglia, et al., Am J Hum Genet 78:279-290, 2006)。
Shp2はRAS/MAPKカスケードの活性化を正に制御する(Cunnick, et al., J. Biol. Chem. 277:9498-9504, 2002; Maroun, et al., Mol. Cell. Biol. 20:8513-8525, 2000; Shi, et al., Mol. Cell. Biol. 20:1526-1536, 2000; Saxton, et al., Embo J. 16:2352-2364, 1997)。MAPK経路は、症例の約40%において、NRAS、KRAS2、またはNF1における変異によりJMMLにおいて調節が解除されている。ヌーナン症候群をもたない62人のJMML患者におけるSHP2の遺伝子分析により、JMML患者の34%がSHP2において変異を有することが実証された。MAPK経路の他の構成要素の変異状態でこれらのデータを補うことにより、SHP2の変異は、Shp2についての役割を活性化するMAPK経路を支持するMAPK経路の他の変異と相互排他的であることが実証された(Tartaglia, et al., Nat Genet 34:148-150, 2003)。
この実施例で分析された104個の原発性黒色腫において、2人の患者がSHP2における変異を有した。どちらの患者も、調べられたMAPKカスケードの他の構成要素における変異、BRAF、NRAF、KITの変異、またはKITの異常なコピー数を有しなかった。本発明者らのデータセットにおける発表されたCGHデータの分析(Curtin, et al., New Engl. J. Med 353:2135-2147, 2005)により、変異したCSD試料はSHP2座のコピーを喪失し、喪失した対立遺伝子は、シーケンシングトレースのピークの高さにより示されているように、野生型対立遺伝子を標的化することが実証された(図4)。
一般的に、ヌーナンもしくはLeopard症候群、またはJMML、AMLをもつ患者においてSHP2の変異の別個の分布があり、異なる変異が結果として、別個の表現型を生じることを示している。付随したヌーナンをもたないJMMLにおけるSHP2の変異は、生殖細胞系に見出されず、これらの変異が致死性でありうることを示している。対照的に、結果としてヌーナン症候群を生じるが白血病誘発性ではないSHP2における体細胞変異は、より穏やかな機能獲得を有しうる。ヌーナン症候群/JMML変異体は中間的効果を生じ、それがヌーナン症候群患者に起きる場合のJMMLのより穏やかな経過を説明しうると本発明者らは推測した。若年性骨髄単球性白血病(JMML)を発症するヌーナン症候群をもつ個体は、5/7症例においてSHP2の生殖細胞系変異を有し、これらのうちの4つは、結果としてThr73Ile置換を生じる変異を有したが、この置換はヌーナン症候群患者の4%のみに起きている(Tartaglia, et al., Nat Genet 34:148-150, 2003)。
この実施例に開示されているように、2つの黒色腫試料において同定された変異は、MAPK経路活性化をもつ症候群および癌に見出される既知の疾患を引き起こす変化である。これらの変異がMAPK経路をさらに活性化することなく黒色腫に起きているという本発明者らの観察は、Shp2の変異が、黒色腫においてMAPK活性化の代替機構を提供することを示唆する。正常な生理学的状態下において、MAPK経路は、幹細胞因子(SCF)の受容体チロシンキナーゼKITへの結合により活性化されえ、結果として、KITの二量体化および、それゆえに、そのプロテインキナーゼ活性の活性化を生じる(Roskoski, Biochem. Biophys. Res. Comm. 337:1-13, 2005)。その結果、SH2ドメインを含むシグナル伝達分子の結合部位であるチロシン残基における、KITの自己リン酸化が起こる。SHP2は、KITのホスホチロシン568と結合することが知られている(Roskoski, Biochem. Biophys. Res. Comm. 337:1-13, 2005)。黒色腫において、KITは、腫瘍においてBRAFの変異無しに高頻度で変異しており(Curtin, et al., J Clin Oncol 24:4340-4346, 2006)、結果としてMAPK活性化を生じる。KITの膜近傍領域における変異を有する癌は、これらの変異が、SCFの非存在下でKIT二量体化を促進し、結果としてその恒常的活性化を生じること(Lennartsson, et al., Oncogene 18:5546-5553, 1999)、またはKITがその自己抑制立体構造を維持するのを妨げること(Mol, et al., J. Biol. Chem. 279:31655-31663, 2004)が予想されるため、イマチニブに対して応答性である(Heinrich, et al., J Clin Oncol. 21:4342-4349, 2003; Frost, et al., Mol Canc Therap 1:1115-1124, 2002; Ma, et al., Blood 99:1741-1744, 2002)。イマチニブは、KITの自己リン酸化を防ぎ(Heinrich, et al., Blood 96:925-932, 2000)、従って、KIT上のそのドッキング部位が自己リン酸化されず、それゆえにSHP2がMAPK経路を正に活性化することができないため、SHP2の変異を有する腫瘍についてイマチニブのような作用物質の治療効果を示す。
上記の実施例は、例証のためのみ提供され、限定のためではない。当業者は、本質的に類似した結果を生じるように変化または改変されうる様々な重要ではないパラメーターを容易に認識するものと思われる。
本明細書に引用されたすべての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に示されて参照により組み入れられているかのように、参照により本明細書に組み入れられている。
enh:コピー数の増加;amp:増幅;na:該当なし;CSD:慢性日光損傷
1CD117染色は1/25の濃度で60分間行われた。
JMDは膜近傍である。
1残基はJMDの外側に位置するが、その変異は、アミノ酸相互作用を通してJMDを不安定化することが知られている。
SEQ ID NO:1 例示的なヒトKIT核酸配列CDS 22-2952
SEQ ID NO:2 ヒトc-Kitの例示的なポリペプチド配列
SEQ ID NO:3 ヒトSHP2の例示的な核酸配列NM_002834
SEQ ID NO:4 ヒトSHP2の例示的なポリペプチド配列NP_002825