下記の説明とともに、本発明の複数の実施形態の詳細を示す。本明細書中に記載のものと同様又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、ここで好ましい方法及び材料を述べる。本発明の、その他の特性、目的及び長所がこの記述から明らかとなろう。この明細書において、文脈で別に明確に指示されない限り、単数形はまた複数形も含む。別に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術を有する者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。異なる場合、本明細書での意味をとる。
SELEXTM法
アプタマーを作製するための適切な方法は、図1で全般的に示される、「Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment(「SELEXTM」)という名称のプロセスによる。SELEXTMプロセスは、標的分子に非常に特異的に結合する核酸分子のインビトロ進化のための方法であり、米国特許出願第07/536,428号(1990年6月11日出願)、現在、放棄、米国特許第5,475,096号(題名、「Nucleic Acid Ligands」及び米国特許第5,270,163号(WO91/19813も参照のこと。)題名「Nucleic Acid Ligands」に記載されている。
例えば、アプタマーが、標的にまだ曝露されていない出発核酸ライブラリ又はプールの結合親和性よりも大きい桁で標的に対する結合親和性を含むので、アプタマーは、例えば、標的分子に非常に特異的に結合すると考えられる。SELEXTMで同定された各核酸リガンド、すなわち各アプタマーは、ある一定の標的化合物又は分子の特異的リガンドである。SELEXTMプロセスは、核酸が様々な二次及び三次構造を形成するための十分な能力及び、単量体であれ多量体であれ、実質的に何らかの化学化合物とともに、リガンドとして作用する(すなわち、特異的な結合ペアを形成する)ためにそれらの単量体内で利用可能な十分な化学的多用途性を有するユニークな洞察に基づく。何れのサイズ又は組成の分子も標的となり得る。
SELEXTMは、ランダム化配列を含有する1本鎖オリゴヌクレオチドの大型のライブラリ又はプールに出発点として依存する。このオリゴヌクレオチドは、修飾もしくは非修飾の、DNA、RNA又はDNA/RNAハイブリッドであり得る。いくつかの例において、このプールは、100%ランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含有する。その他の例において、このプールは、ランダム化配列内に組み込まれる、少なくとも1つの固定配列及び/又は保存的配列を含有する、ランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含有する。その他の例において、このプールは、このオリゴヌクレオチドプールの全ての分子に共通する配列を含み得る、その5’及び/又は3’末端において、少なくとも1つの固定配列及び/又は保存的配列を含有する、ランダム又は部分的にランダムなオリゴヌクレオチドを含有する。固定配列は、下記でさらに述べるCpGモチーフ、PCRプライマーのためのハイブリダイゼーション部位、RNAポリメラーゼのためのプロモーター配列(例えば、T3、T4、T7及びSP6)、制限部位又はホモポリマー配列(ポリA又はポリTトラクトなど)、触媒性コア、アフィニティーカラムへの選択的結合のための部位及び、関心のあるオリゴヌクレオチドのクローニング及び/又は配列決定を促進するためのその他の配列などの、予め選択した目的のために組み込まれたこのプールのオリゴヌクレオチドに共通する配列である。保存的配列は、既に述べた固定配列以外の、同じ標的に結合する多くのアプタマーに共通する配列である。
このプールのオリゴヌクレオチドは、好ましくは、ランダム化配列部分ならびに効率的な増幅に必要な固定配列を含む。通常は、出発プールのオリゴヌクレオチドは、30−50のランダムヌクレオチドの内部領域と隣接する、固定された5’及び3’末端配列を含有する。化学合成及び無作為に切断した細胞の核酸からのサイズ選択を含む多くの方法において、ランダム化ヌクレオチドを作製することができる。選択/増幅反復の前又はその最中に、突然変異生成により、試験核酸における配列の多様性を導入又は増加させることもできる。
オリゴヌクレオチドのランダム配列部分は、何れの長さのものでもあり得、リボヌクレオチド及び/又はデオキシリボヌクレオチドを含み得、修飾された、又は非天然の、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含み得る。例えば、米国特許第5,958,691号;米国特許第5,660,985号;米国特許第5,958,691号;米国特許第5,698,687号;米国特許第5,817,635号;米国特許第5,672,695号及びPCT公開WO92/07065を参照のこと。当技術分野で周知の固相オリゴヌクレオチド合成技術を用いて、ホスホジエステル連結ヌクレオチドからランダムオリゴヌクレオチドを合成することができる。例えば、Froehlerら、Nucl.Acid Res.14:5399−5467(1986)及びFroehlerら、Tet.Lett.27:5575−5578(1986)を参照のこと。トリエステル合成法などの液相法を用いて、ランダムオリゴヌクレオチドを合成することもできる。例えば、Soodら、Nucl.Acid Res.4:2557(1977)及びHiroseら、Tet.Lett.、28:2449(1978)を参照のこと。
自動DNA合成装置で行われる通常の合成は、殆どのSELEXTM実験に十分な数である、1014から1016の別個の分子を生成させる。配列設計におけるランダム配列が十分に大きい領域であると、各合成分子がユニークな配列を表す可能性がある確率が増える。
DNA合成装置での自動化学合成により、オリゴヌクレオチドの出発ライブラリを生成させ得る。ランダム化配列を合成するために、合成プロセス中に4種類全てのヌクレオチドの混合物を各ヌクレオチド付加段階に添加し、これによって、ヌクレオチドの無作為の組み込みが行われるようになる。上述のように、ある実施形態において、ランダムオリゴヌクレオチドは、完全にランダムな配列を含有するが、しかし、その他の実施形態において、ランダムオリゴヌクレオチドは、非ランダム又は部分的にランダムな配列の範囲を含有し得る。各付加段階で様々なモル比で4種類のヌクレオチドを添加することにより、部分的にランダムな配列を生成させることができる。
オリゴヌクレオチドの出発ライブラリは、RNA又はDNAの何れかであり得る。RNAライブラリを出発ライブラリとして使用すべき例において、これは、通常、T7RNAポリメラーゼ又は改変T7RNAポリメラーゼを用いて、DNAライブラリをインビトロで転写することにより作製され、精製される。次に、結合に好ましい条件下で、RNA又はDNAライブラリを標的と混合し、結合親和性及び選択性の実質的に何らかの所望の基準に到達させるために、同じ一般的選択スキームを用いて、結合、分離及び増幅の段階的反復を行う。より具体的には、核酸の出発プールを含有する混合物を用いて出発するので、SELEXTM法は、(a)結合に好ましい条件下でこの混合物を標的と接触させ;(b)標的分子と特異的に結合している核酸から非結合核酸を分離し;(c)核酸−標的複合体を解離させ;(d)リガンドが濃縮された核酸の混合物を得るために、核酸−標的複合体から解離させた核酸を増幅し;(e)標的分子に対する、特異性が高い、高親和性核酸リガンドを得るのに望ましいサイクル数で、結合、分離、解離及び増幅の段階を繰り返す、段階を含む。RNAアプタマーが選択されている例において、SELEXTM法は、(i)段階(d)の増幅前に、核酸−標的複合体から解離させた核酸を逆転写し;(ii)このプロセスを再開する前に、段階(d)からの増幅核酸を転写する、段階をさらに含む。
多数の可能な配列及び構造を含有する核酸混合物内に、ある一定の標的に対する広範な結合親和性が存在する。例えば20ヌクレオチドのランダム化セグメントを含有する核酸混合物は、420種類の候補の可能性を有し得る。標的に対してより高い親和定数を有するものが標的と結合する可能性が最も高い。分離、解離及び増幅後、より高い結合親和性候補が濃縮されている第二の核酸混合物を生成させる。選択のラウンドを重ねるにつれて、徐々に最適のリガンドに対して好都合となり、得られる核酸混合物が1種類のみ又は少数の配列から主に構成されるようになる。次に、これらをクローニングし、配列決定し、純粋なリガンド又はアプタマーとして個々に結合親和性について試験することができる。
所望の目的が達成されるまで、選択及び増幅のサイクルを繰り返す。最も一般的な場合、サイクルの反復において結合強度が顕著に向上しなくなるまで、選択/増幅を続ける。本方法は、通常、およそ1014の様々な核酸種の試料に対して使用されるが、約1018個におよぶ様々な核酸種の試料に使用し得る。一般に、核酸アプタマー分子は、5回から20回のサイクル手順において選択される。ある実施形態において、最初の選択段階でのみ異成分が導入され、複製プロセスの間、生じることはない。
SELEXTMのある実施形態において、選択プロセスは、選択標的に最も強力に結合する核酸リガンドを単離する際、非常に効率的であるので、選択及び増幅に必要なサイクルは1回のみである。例えば、最も高い親和性の核酸リガンドの選択及び単離がカラムによって十分に可能となり得るような形式で、核酸が、カラムに結合した標的と会合する能力が作用するクロマトグラフィー型のプロセスにおいて、このような効率的な選択を行い得る。
多くの場合、1個の核酸リガンドが同定されるまでSELEXTMの反復段階を行うことは必ずしも望ましくはない。標的特異性が高い核酸リガンド溶液は、多くの保存的配列及び、標的に対する核酸リガンドの親和性に顕著に影響を与えることなく置換又は付加され得る多くの配列を有する、核酸構造又はモチーフのファミリーを含み得る。完了前にSELEXTMプロセスを終えることにより、核酸リガンド溶液ファミリーのメンバーの多くの配列を決定することができる。
様々な核酸の一次、二次及び三次構造が存在することが知られている。非ワトソン−クリック型の相互作用に含まれることが最も一般的に示されている構造又はモチーフは、ヘアピンループ、対称又は非対称バルジ、擬似ノット及びこれらの無数の組み合わせと呼ばれる。このようなモチーフの殆ど全ての既知のケースから、30ヌクレオチド以下の核酸配列においてこれらを形成することができることが示唆される。この理由のために、約20から約50ヌクレオチドの間、ある実施形態において、約30から約40ヌクレオチドの間のランダム化セグメントを含有する核酸配列により、連続的なランダム化セグメントを用いたSELEX手法を開始することが好ましいことが多い。ある実施例において、5’−固定:ランダム:3’−固定配列は、約30から約50ヌクレオチドのランダム配列を含有する。
多くの具体的な目的を達成するためにコアSELEX法が改変されている。例えば、米国特許第5,707,796号は、ベントDNAなど、特定の構造特性を有する核酸分子を選択するための、ゲル電気泳動と組み合わせたSELEXTMの使用を記載している。米国特許第5,763,177号は、標的分子に対して、結合及び/又は光架橋及び/又は光不活性化することができる光反応基を含有する核酸リガンドを選択するための、SELEXTMに基づく方法を記載している。米国特許第5,567,588号及び米国特許第5,861,254号は、標的分子に対して高い親和性を有するオリゴヌクレオチドと親和性が低いオリゴヌクレオチドとを非常に効率的に分離する、SELEXTMに基づく方法を記載している。米国特許第5,496,938号は、SELEXプロセスを行った後に改善された核酸リガンドを得るための方法を記載している。米国特許第5,705,337号は、リガンドをその標的に共有結合させるための方法を記載している。
SELEXTMはまた、標的分子の複数の部位に結合する核酸リガンドを得るために、及び、標的の特異的な部位に結合する非核酸種を含む核酸リガンドを得るために、使用することもできる。SELEXTMは、核酸結合タンパク質及び生物学的機能の一部として核酸と結合することが知られていないタンパク質ならびに、補因子及びその他の小型の分子など、大型及び小型の生体分子を含む、何らかの想定可能な標的に結合する核酸リガンドを単離し、同定するための手段を提供する。例えば、米国特許第5,580,737号は、カフェイン及びその近縁類似体のテオフィリンに対して高親和性で結合することができる、SELEXTMを通して同定される核酸配列を開示する。
カウンター−SELEXTMは、1以上の非標的分子に対する交差反応性がある核酸リガンド配列を削除することにより、標的分子に対する核酸リガンドの特異性を向上させるための方法である。カウンター−SELEXTMは、次の段階から構成される:(a)核酸の候補混合物を調製し;(b)候補混合物を標的と接触させ(候補混合物に対して標的への親和性が高い核酸を候補混合物の残りの部分から分離し得る。);(c)親和性が高い核酸を候補混合物の残りの部分から分離し;(d)親和性が高い核酸を標的から解離させ;(e)非標的分子に対して非常に特異的な親和性がある核酸リガンドが除去されるように、親和性が高い核酸を1以上の非標的分子と接触させ;(f)標的分子への結合に対して、相対的により高親和性及び特異性のある核酸配列が濃縮されている核酸の混合物を得るために、標的分子に対してのみ非常に特異的な親和性を有する核酸を増幅する。SELEXTMに対して上で記載のように、所望の目的が達成されるまで必要に応じて選択及び増幅のサイクルを繰り返す。
治療薬及びワクチンとしての核酸の使用において直面する潜在的な1つの問題は、所望の効果が現れる前に、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼなどの細胞内及び細胞外酵素により、ホスホジエステル型のオリゴヌクレオチドが体液中で素早く分解され得ることである。したがって、SELEXTM法は、インビボでの安定性の向上又は送達特性の向上など、リガンドにおいて特性を改善する修飾ヌクレオチドを含有する高親和性核酸リガンドの同定を包含する。このような修飾の例には、リボース及び/又はリン酸及び/又は塩基位置での化学的置換が含まれる。修飾ヌクレオチドを含有する、SELEXTMで同定された核酸リガンドは、例えば、米国特許第5,660,985号(これは、リボースの2’位、ピリミジンの5位、プリンの8位で化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドを記載している。)、米国特許第5,756,703号(様々な2’−修飾ピリミジンを含有するオリゴヌクレオチドを記載している。)及び米国特許第5,580,737号(2’−アミノ(2’−NH2)、2’−フルオロ(2’−F)及び/又は2’−O−メチル(2’−OMe)置換基により修飾された1以上のヌクレオチドを含有する特異性の高い核酸リガンドを記載している。)に記載されている。
本発明においてもくろまれる核酸リガンドの修飾には、以下に限定されないが、さらなる電荷、分極率、疎水性、水素結合、静電相互作用及び核酸リガンド塩基又は核酸リガンド全体への流動性(fluxionality)を組み込むその他の化学基を提供するものが含まれる。ヌクレアーゼに耐性のあるオリゴヌクレオチド集団を生成させるための修飾にはまた、1以上のヌクレオチド間結合の置換、糖の改変、塩基の改変又はこれらの組み合わせも含まれる。このような修飾には、以下に限定されないが、2’−位の糖修飾、5−位のピリミジン修飾、8−位のプリン修飾、環外アミンでの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモ又は5−ヨード−ウラシルの置換;骨格修飾、ホスホロチオエート又はアルキルホスフェート修飾、メチル化及び通常のものではない塩基対形成の組み合わせ(イソ塩基、イソシチジン及びイソグアノシンなど)が含まれる。修飾には、キャッピングなどの3’及び5’修飾も含まれ得る。
ある実施形態において、P(O)O基がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、P(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)又は3’−アミン(−NH−CH2−CH2−)(式中、各R又はR’は、独立に、H又は置換もしくは非置換アルキルである。)により置換されているオリゴヌクレオチドが提供される。−O−、−N−又は−S−連結を介して、連結基を隣接するヌクレオチドに結合させることができる。オリゴヌクレオチドの全ての連結が同じである必要はない。本明細書中で使用される場合、ホスホロチオエートという用語は、1以上のイオウ原子により置換されるホスホジエステル結合中の1以上の非架橋酸素原子を包含する。
さらなる実施形態において、オリゴヌクレオチドは、修飾された糖の基を含有し、例えば、ヒドロキシル基の1以上がハロゲン、脂肪族基で置換されているか、又はエーテルもしくはアミンとして官能化されている。ある実施形態において、フラノース残基の2’−位が、O−メチル、O−アルキル、O−アリル、S−アルキル、S−アリル又はハロ基の何れかで置換されている。2’−修飾された糖の合成方法は、例えば、Sproatら、Nucl.Acid Res.19:733−738(1991);Cottenら、Nucl.Acid Res.19:2629−2635(1991);及びHobbsら、Biochemistry 12:5138−5145(1973)に記載されている。その他の修飾が当業者にとって公知である。このような修飾は、SELEXTMプロセス前修飾又はSELEXTMプロセス後修飾(既に同定されている非修飾リガンドの修飾)であり得るか、又はSELEXTMプロセスに組み込まれることにより行われ得る。
SELEXTMプロセス前修飾又はSELEXTMプロセスに組み込まれることにより行われ得る修飾により、SELEXTM標的に対して特異性が高く、安定性(例えばインビボでの安定性)が向上している核酸リガンドが得られる。核酸リガンドに対して行われるSELEXTMプロセス後修飾の結果、その核酸リガンドの結合能に悪影響を与えることなく安定性(例えばインビボでの安定性)を向上させ得る。
米国特許第5,637,459号及び米国特許第5,683,867号に記載のように、SELEXTM法は、選択されたオリゴヌクレオチドをその他の選択されたオリゴヌクレオチド及び非オリゴヌクレオチド機能単位と組み合わせることを包含する。例えば、米国特許第6,011,020号、米国特許第6,051,698号及びPCT公開WO98/18480に記載のように、SELEXTM法は、診断又は治療用複合体において、親油性又は非免疫原性の高分子化合物と選択された核酸リガンドを組み合わせることをさらに包含する。これらの特許及び出願は、オリゴヌクレオチドの効率的な増幅及び複製特性及び、その他の分子の所望の特性を有する、多岐にわたる形状及びその他の特性の組み合わせを教示する。
SELEXTM法を介した、小型の柔軟なペプチドに対する核酸リガンドの同定も探索されてきた。小型のペプチドは、柔軟な構造を有し、通常は、複数の配座異性体の平衡状態で溶液中に存在し、したがって、最初、柔軟なペプチドの結合において失われる配座エントロピーにより結合親和性が制限され得ると考えられていた。しかし、溶液中での小型のペプチドに対する核酸リガンドの同定の実現可能性が米国特許第5,648,214号で示された。この特許において、サブスタンスP(11アミノ酸ペプチド)に対する高親和性RNA核酸リガンドが同定された。
本発明の標的に対して高い特異性及び結合親和性を有するアプタマーは、通常、本明細書中に記載のように、SELEXTMプロセスにより選択される。SELEXTMプロセスの一部として、次に、場合によっては、所望の結合親和性を有する最小配列を決定するために、標的に結合するために選択された配列を最小化する。場合によっては、結合親和性を向上させるため、あるいは配列のどの位置が結合活性に不可欠かを調べるために、配列のランダム又は定方向突然変異誘発を行うことにより、選択配列及び/又は最小化された配列を最適化する。さらに、インビボでの分解に対してアプタマー分子を安定化させるために、修飾ヌクレオチドを組み込む配列を用いて、選択を行うことができる。
2’修飾SELEXTM
アプタマーが治療薬としての使用に適切となるために、合成が安価であり、安全であり、インビボで安定であることが好ましい。野生型RNA及びDNAアプタマーは、通常、ヌクレアーゼにより分解されやすいので、インビボで安定ではない。2’−位に修飾基を組み込むことにより、ヌクレアーゼ分解に対する耐性を大きく向上させることができる。
フルオロ及びアミノ基は、後にアプタマーが選択されるオリゴヌクレオチドプールにうまく組み込まれている。しかし、これらの修飾により、得られたアプタマーの合成コストが大きく上昇し、修飾オリゴヌクレオチドの分解及びそれに続くDNA合成に対する基質としてのヌクレオチドの使用により、その修飾ヌクレオチドがホストDNAに再循環され得る可能性があるため、場合によっては安全性に問題が生じ得る。
本明細書中で与えられる場合、2’−O−メチル(「2’−OMe」)ヌクレオチドを含有するアプタマーは、これらの欠点の多くを克服する。2’−OMeヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ耐性であり、合成にかかるコストが高くない。2’−OMeヌクレオチドは生体系においてユビキタスであるが、天然のポリメラーゼは、生理的条件下で2’−OMe NTPを基質として受け入れず、したがって、ホストDNAへの2’−OMeヌクレオチドの再循環に関して安全性の問題はない。2’−修飾アプタマーを生成するために使用されるSELEXTM法は、例えば米国特許仮出願60/430,761(2002年12月3日出願)、米国特許仮出願60/487,474(2003年7月15日出願)、米国特許仮出願60/517,039(2003年11月4日出願)、米国特許出願10/729,581(2003年12月3日出願)及び米国特許出願10/873,856(2004年6月21日出願)題名「Method for in vitro Selection of 2’−O−methyl Substituted Nucleic Acids」(このそれぞれを、その全体で参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。
本発明は、酵素及び化学分解ならびに熱及び物理的分解に対して非修飾オリゴヌクレオチドよりも安定性が高いオリゴヌクレオチドを生成させるための修飾ヌクレオチド(例えば、2’位に修飾があるヌクレオチドなど)を含有する、トロンビンに結合し、トロンビンの機能を低下させるか又は阻害するアプタマーを含む。文献で2’−OMe含有アプタマーのいくつかの例があるが(例えば、Greenら、Current Biology 2、683−695、1995)、これらは、C及びU残基が2’−フルオロ(2’−F)置換され、A及びG残基が2’−OH置換された修飾転写産物のライブラリのインビトロ選択により作製された。機能的配列を同定した後、次に、2’−OMe置換に対する許容性について各A及びG残基を試験し、全てのA及びG残基が2’−OMe残基として2’−OMe置換を許容するアプタマーを再合成した。この2段階形式で作製されたアプタマーのA及びG残基の殆どが2’−OMe残基での置換を許容するが、平均でおよそ20%が許容しない。その結果、この方法を用いて作製されたアプタマーは、2個から4個の2’−OH残基を含有する傾向があり、結果として、安定性及び合成コストの面で欠点がある。SELEXTM(及び/又は、本明細書中に記載のものを含む、その変形及び改法の何れか)によってアプタマーが選択され、濃縮されるオリゴヌクレオチドプールにおいて用いられる安定化オリゴヌクレオチドを生成する転写反応に修飾ヌクレオチドを組み込むことにより、本発明の方法は、選択されたアプタマーオリゴヌクレオチドを安定化する必要性がない(例えば、修飾ヌクレオチドを用いてアプタマーオリゴヌクレオチドを再合成することによる。)。
ある実施形態において、本発明は、ATP、GTP、CTP、TTP及びUTPヌクレオチドの、2’−OH、2’−F、2’−デオキシ及び2’−OMe修飾の組み合わせを含有するアプタマーを提供する。別の実施形態において、本発明は、ATP、GTP、CTP、TTP及びUTPヌクレオチドの、2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、2’−NH2及び2’−メトキシエチル修飾の組み合わせを含有するアプタマーを提供する。別の実施形態において、本発明は、ATP、GTP、CTP、TTP及びUTPヌクレオチドの、2’−OH、2’−F、2’−デオキシ、2’−OMe、2’−NH2及び2’−メトキシエチル修飾の56の組み合わせを含有するアプタマーを提供する。
本発明の2’修飾アプタマーは、野生型ポリメラーゼよりも速い、フラノース2’位での巨大な置換基を有する修飾ヌクレオチドの組み込み速度を有する、例えば改変T7ポリメラーゼなどの改変ポリメラーゼを用いて生成される。例えば、639の位置のチロシン残基がフェニルアラニンに変化している単一突然変異T7ポリメラーゼ(Y639F)は2’デオキシ、2’アミノ−及び2’フルオロ−ヌクレオチド三リン酸(NTP)を基質として容易に利用し、様々な用途に対して修飾RNAを合成するために広く使用されている。しかし、この突然変異T7ポリメラーゼは、報告によると、2’−OMe又は2’−アジド(2’−N3)置換基などの巨大な2’−置換基を有するNTPを容易に利用(すなわち組み込み)できない。巨大な2’置換基の組み込みのために、Y639F突然変異に加えて、784の位置のヒスチジンがアラニン残基に変更されている二重T7ポリメラーゼ突然変異(Y639F/H784A)が記載され、修飾ピリミジンNTPを組み込むために限られた状況において使用されている。Padilla、R.及びSousa、R.、Nucleic Acids Res.、2002、30(24):138を参照のこと。784の位置のヒスチジンがアラニン残基に変えられている単一突然変異T7ポリメラーゼ(H784A)もまた記載されている。Padillaら、Nucleic Acids Research、2002、30:138。Y639F/H784A二重突然変異及びH784A単一突然変異T7ポリメラーゼの両方において、アラニンなどのより小さいアミノ酸への変化により、2’−OMe置換ヌクレオチドなど、より大きいヌクレオチド基質の組み込みが可能となる。
一般に、本明細書中に記載の条件下で、GTP以外の全ての2’−OMe置換NTPの組み込みのためにY693F単一突然変異を使用することができ、GTPを含む全ての2’−OMe置換NTPの組み込みのためにY693F/H784A二重突然変異を使用することができる。H784A単一突然変異は、本明細書中に記載の条件下で使用される場合、Y639F及びY639F/H784A突然変異と同様の特性を保持すると予想される。
2’−修飾オリゴヌクレオチドを完全に修飾ヌクレオチドから、又は修飾ヌクレオチドのサブセットにより、合成し得る。修飾は、同じ又は異なり得る。全ヌクレオチドを修飾し得、全てが同じ修飾を含有し得る。全ヌクレオチドを修飾し得るが、様々な修飾を含有し得、例えば、同じ塩基を含有する全ヌクレオチドが修飾のある1つの型を有し得、一方、その他の塩基を含有するヌクレオチドが修飾の異なる型の修飾を有し得る。全てのプリンヌクレオチドがある1つの型の修飾を有し得る(又は非修飾である。)が、一方、全てのピリミジンヌクレオチドが修飾の別の異なる型を有する(又は非修飾である。)。このようにして、転写産物又は転写産物のプールが、例えばリボヌクレオチド(2’−OH)、デオキシリボヌクレオチド(2’−デオキシ)、2’−F及び2’−OMeヌクレオチドを含む修飾の何らかの組み合わせを用いて作製される。2’−OMe C及びU、及び2’−OH A及びGを含有する転写混合物は、「rRmY」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「rRmY」アプタマーと呼ばれる。デオキシA及びG、及び2’−OMe U及びCを含有する転写混合物は、「dRmY」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「dRmY」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C及びU、及び2’−OH Gを含有する転写混合物は、「rGmH」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「rGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、C、U及びG、及び2’−OMe A、U及びC、及び2’−F Gを代わりに含有する転写混合物は、「代替的混合物」と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「代替的混合物」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U、C及びG(ここで、G’の最大10%がリボヌクレオチドである。)を含有する転写混合物は、「r/mGmH」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「r/mGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U及びC、及び2’−F Gを含有する転写混合物は、「fGmH」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「fGmH」アプタマーと呼ばれる。2’−OMe A、U及びC、及びデオキシGを含有する転写混合物は、「dGmH」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「dGmH」アプタマーと呼ばれる。デオキシA及び2’−OMe C、G及びUを含有する転写混合物は、「dAmB」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「dAmB」アプタマーと呼ばれ、全て2’−2Hヌクレオチドを含有する転写混合物は、「rN」混合物と呼ばれ、そこから選択されるアプタマーは、「rN」又は「rRrY」アプタマーと呼ばれる。「mRmY」アプタマーは、全ての2’−O−メチルヌクレオチドを含有するものであり、通常、(可能である場合は何れかの2’−OH Gの2’−OMe Gによる)SELEXTM後置換により、r/mGmHオリゴヌクレオチドから得られる。
好ましい実施形態には、2’−OH、2’−デオキシ及び2’−OMeヌクレオチドの何らかの組み合わせが含まれる。より好ましい実施形態には、2’−デオキシ及び2’−OMeヌクレオチドの何らかの組み合わせが含まれる。さらにより好ましい実施形態は、ピリミジンが2’−2Meである、2’−デオキシ及び2’−OMeヌクレオチドの何らかの組み合わせを伴う(dRmY、mRmY又はdGmHなど)。
選択プロセスの前(選択プロセス前)に本発明のアプタマーへの修飾ヌクレオチドの組み込みを遂行する(例えば、SELEXTMプロセス前修飾)。場合によっては、SELEXTMプロセス前修飾により修飾ヌクレオチドが組み込まれている本発明のアプタマーをSELEXTMプロセス後修飾によりさらに修飾することができる(すなわち、SELEXTMプロセス前修飾後のSELEXTMプロセス後修飾)。SELEXTMプロセス前修飾により、SELEXTM標的に対して親和性が高く、インビボでの安定性も向上している修飾核酸リガンドが得られる。SELEXTMプロセス後修飾、すなわち修飾(例えば、短縮化、欠失、置換又は、SELEXTMプロセス前修飾により組み込まれたヌクレオチドを有する既に同定されているリガンドのさらなるヌクレオチド修飾)の結果、SELEXTMプロセス前修飾により組み込まれたヌクレオチドを有する核酸リガンドの結合能に悪影響を与えることなくインビボでの安定性がさらに向上し得る。
ポリメラーゼが2’−修飾NTPを受け入れる条件で2’−修飾(例えば2’−OMe)RNA転写産物のプールを生成させるために好ましいポリメラーゼは、Y693F/H784A二重突然変異体又はY693F単一突然変異体である。その他のポリメラーゼ、特に、巨大な2’置換基に対して許容性が高いものを本発明において使用することもできる。本明細書中に記載の転写条件下で修飾ヌクレオチドを組み込む能力をアッセイすることにより、このようなポリメラーゼをその許容能についてスクリーニングできる。
多くの因子が、本明細書中に記載の方法において有用な転写条件に対して重要であると分かっている。例えば、得られる転写産物の少なくとも最初の約6残基が全てプリンであるようにDNA転写鋳型の5’末端の固定配列の5’末端にリーダー配列が組み込まれる場合、修飾転写産物の収率の向上が見られる。
修飾ヌクレオチドを組み込む転写産物を得る際の別の重要な因子は、2’−OH GTPの存在又は濃度である。転写を2つのフェーズに分けることができる:第一のフェーズは開始であり、この間に、ジヌクレオチドを得るために、NTPがGTP(又は別の置換グアノシン)の3’−ヒドロキシル末端に付加され、次に、このジヌクレオチドが約10−12ヌクレオチドまで伸び;第二のフェーズは伸長であり、この間に転写が最初の約10−12ヌクレオチドの付加を越えて進む。ポリメラーゼが2’−OH GTPを用いて転写を開始することを可能とするためには、2’−OMe GTPの過剰量を含有する転写混合物に2’−OH GTPの少量を添加することで十分であるが、一旦転写が伸長フェーズに入ると、2’−OMeと2’−OH GTPとの間の判別が低下すること、及び、2’−OH GTPよりも多量の2’−OMe GTPにより、主に2’−OMe GTPが組み込まれるようになることが知られている。
2’−OMe置換ヌクレオチドの転写産物への組み込みにおける別の重要な因子は、転写混合物中の二価マグネシウム及びマンガン両方の使用である。塩化マグネシウム及び塩化マンガンの濃度の様々な組み合わせが2’−O−メチル化転写産物の収率に影響を与えることが分かっており、塩化マグネシウム及び塩化マンガンの最適濃度は、二価金属イオンと錯体を形成するNTPの転写反応混合物中の濃度に依存する。最大限に(すなわち、全てのA、C及びU及び、Gヌクレオチドの約90%)2’置換されたO−メチル化転写産物の最大収率を得るために、0.5mMの濃度で各NTPが存在する場合、およそ5mM塩化マグネシウム及び1.5mM塩化マンガンの濃度が好ましい。各NTPの濃度が1.0mMである場合、およそ6.5mMの塩化マグネシウム及び2.0mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。各NTPの濃度が2.0mMである場合、およそ9.6mMの塩化マグネシウム及び2.9mMの塩化マンガンの濃度が好ましい。いずれの場合も、これらの濃度からの乖離が2倍以下であれば、多量の修飾転写産物が得られる。
GMP又はグアノシンによる転写のプライミングも重要である。この影響は、開始ヌクレオチドに対するポリメラーゼの特異性によるものである。その結果、この形式で生成された何らかの転写産物の5’−末端ヌクレオチドは、2’−OH Gであると思われる。GMP(又はグアノシン)の好ましい濃度は0.5mM、さらにより好ましくは1mMである。転写反応中にPEG、好ましくはPEG−8000が含まれることが、修飾ヌクレオチドの組み込みを最大にするのに有用であることもまた分かっている。
2’−OMe ATP(100%)、UTP(100%)、CTP(100%)及びGTP(〜90%)(「r/mGmH」)の転写産物への最大の組み込みのために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 5mM(各2’−OMe NTPの濃度が1.0mMである場合、6.5mM)、MnCl2 1.5mM(各2’−OMe NTPの濃度が1.0mMである場合、2.0mM)、2’−OMe NTP(それぞれ)500μM(より好ましくは、1.0mM)、2’−OH GTP 30μM、2’−OH GMP 500μM、pH7.5、Y639F/H784A T7RNAポリメラーゼ15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び少なくとも8ヌクレオチド長の全てプリンのリーダー配列。本明細書中で使用される場合、Y639F/H784A突然変異T7RNAポリメラーゼ(又は、本明細書中で述べられる何れかの他の突然変異T7RNAポリメラーゼ)の1ユニットは、r/mGmH条件下で、転写産物に2’−OMe NTPの1nmoleを組み込むのに必要な酵素量として定義される。本明細書中で使用される場合、無機ピロホスファターゼの1ユニットは、pH7.2及び25℃にて1分間に無機オルトホスフェートの1.0モルを遊離させる酵素量として定義される。
転写産物への2’−OMe ATP、UTP及びCTPの最大の組み込み(100%)(「rGmH」)のために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 5mM(各2’−OMe NTPの濃度が2.0mMである場合、9.6mM)、MnCl2 1.5mM(各2’−OMe NTPの濃度が2.0mMである場合、2.9mM)、2’−OMe NTP(それぞれ)500μM(より好ましくは、2.0mM)、pH7.5、Y639F T7RNAポリメラーゼ15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び、少なくとも8ヌクレオチド長の全てプリンのリーダー配列。
転写産物への2’−OMe UTP及びCTPの最大の組み込み(100%)(「rRmY」)のために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 5mM(各2’−OMe NTPの濃度が2.0mMである場合、9.6mM)、MnCl2 1.5mM(各2’−OMe NTPの濃度が2.0mMである場合、2.9mM)、2’−OMe NTP(それぞれ)500μM(より好ましくは、2.0mM)、pH7.5、Y639F/H784A T7RNAポリメラーゼ15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び、少なくとも8ヌクレオチド長の全てがプリンであるリーダー配列。
転写産物へのデオキシATP及びGTP及び2’−OMe UTP及びCTPの最大の組み込み(100%)(「dRmY」)のために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミン2mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 9.6mM、MnCl2 2.9mM、2’−OMe NTP(それぞれ)2.0mM、pH7.5、Y639F T7RNAポリメラーゼ 15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び、少なくとも8ヌクレオチド長の全てがプリンのリーダー配列。
転写産物への2’−OMe ATP、UTP及びCTP及び2’−F GTPの最大の組み込み(100%)(「fGmH」)のために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 9.6mM、MnCl2 2.9mM、、2’−OMe NTP(それぞれ)2.0mM、pH7.5、Y639F T7RNAポリメラーゼ 15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び、少なくとも8ヌクレオチド長の全てがプリンであるリーダー配列。
転写産物へのデオキシATP及び2’−OMe UTP、GTP及びCTPの最大の組み込み(100%)(「dAmB」)のために、次の条件が好ましい:HEPES緩衝液200mM、DTT 40mM、スペルミジン 2mM、PEG−8000 10%(w/v)、Triton X−100 0.01%(w/v)、MgCl2 9.6mM、MnCl2 2.9mM、2’−OMeNTP(それぞれ)2.0mM、pH7.5、Y639F T7RNAポリメラーゼ 15ユニット/mL、無機ピロホスファターゼ 5ユニット/mL及び、少なくとも8ヌクレオチド長の全てがプリンであるリーダー配列。
上記のそれぞれに対して、(a)転写は、好ましくは、約20℃から約50℃、好ましくは約30℃から45℃、より好ましくは約37℃の温度で、少なくとも2時間行い、(b)2本鎖DNA転写鋳型の50−300nMを使用し(多様性を向上させるためにラウンド1で200nMの鋳型を使用し(dRmY転写において300nMの鋳型を使用する。)、続くラウンドでは、本明細書中に記載の条件を用いて、およそ50nM、最適化PCR反応の1/10希釈を使用する。好ましいDNA転写鋳型は下記である(ここで、ARC254及びARC256は、全2’−OMe条件下で転写し、ARC255はrRmY条件下で転写する。)。
本発明のrN転写条件下で、転写反応混合物は、2’−OHアデノシン三リン酸(ATP)、2’−OHグアノシン三リン酸(GTP)、2’−OHシチジン三リン酸(CTP)及び2’−OHウリジン三リン酸(UTP)を含有する。本発明のrN転写混合物を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て、2’−OHアデノシン、2’−OHグアノシン、2’−OHシチジン及び2’−OHウリジンを含有する。rN転写の好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHウリジンである配列を含有する。rN転写のより好ましい実施形態において、本発明の得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHウリジンである配列を含有する。rN転写の最も好ましい実施形態において、本発明の修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−OHシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−OHウリジンである配列を含有する。
本発明のrRmY転写条件下で、転写反応混合物は、2’−OHアデノシン三リン酸、2’−OHグアノシン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸及び2’−O−メチルウリジン三リン酸を含有する。本発明のrRmY転写混合物を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−OHアデノシン、2’−OHグアノシン、2’−O−メチルシチジン及び2’−O−メチルウリジンを含有する。好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−OHアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。
本発明のdRmY転写条件下で、転写反応混合物は、2’−デオキシアデノシン三リン酸、2’−デオキシグアノシン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸及び2’−O−メチルウリジン三リン酸を含有する。本発明のdRmY転写条件を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、2’−O−メチルシチジン及び2’−O−メチルウリジンを含有する。好ましい実施形態において、得られる本発明の修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−デオキシアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−デオキシグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる本発明の修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−デオキシアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−デオキシグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’O−メチルウリジンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる本発明の修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−デオキシアデノシンであり、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−デオキシグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。
本発明のrGmH転写条件下で、転写反応混合物は、2’−OHグアノシン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸、2’−O−メチルウリジン三リン酸及び2’−O−メチルアデノシン三リン酸を含有する。本発明のrGmH転写混合物を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−OHグアノシン、2’−O−メチルシチジン、2’−O−メチルウリジン及び2’−O−メチルアデノシンを含有する。好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンであり、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルアデノシンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルウリジンであり、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルアデノシンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−OHグアノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンであり、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルアデノシンである配列を含有する。
本発明のr/mGmH転写条件下で、転写反応混合物は、2’−O−メチルアデノシン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸、2’−O−メチルグアノシン三リン酸、2’−O−メチルウリジン三リン酸及び2’−OHグアノシン三リン酸を含有する。本発明のr/mGmH転写混合物を用いて生成される、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−O−メチルアデノシン、2’−O−メチルシチジン、2’−O−メチルグアノシン及び2’−O−メチルウリジンであり、ここで、グアノシンヌクレオチドの集団は最大約10%の2’−OHグアノシンを有する。好ましい実施形態において、本発明の得られるr/mGmH修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンであり、全グアノシンヌクレオチドの約10%以下が2’−OHグアノシンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルウリジンであり、全グアノシンヌクレオチドの約10%以下が2’−OHグアノシンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの90%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンであり、全グアノシンヌクレオチドの約10%以下が2’−OHグアノシンである配列を含有する。
本発明のfGmH転写条件下で、転写反応混合物は、2’−O−メチルアデノシン三リン酸、2’−O−メチルウリジン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸及び2’−Fグアノシン三リン酸を含有する。本発明のfGmH転写条件を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−O−メチルアデノシン、2’−O−メチルウリジン、2’−O−メチルシチジン及び2’−Fグアノシンを含有する。好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルアデノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−Fグアノシンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも全アデノシンヌクレオチドの90%が2’−O−メチルアデノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルウリジンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−Fグアノシンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルアデノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−Fグアノシンである配列を含有する。
本発明のdAmB転写条件下で、転写反応混合物は、2’−デオキシアデノシン三リン酸、2’−O−メチルシチジン三リン酸、2’−O−メチルグアノシン三リン酸及び2’−O−メチルウリジン三リン酸を含有する。本発明のdAmB転写混合物を用いて生成される修飾オリゴヌクレオチドは、実質的に全て2’−デオキシアデノシン、2’−O−メチルシチジン、2’−O−メチルグアノシン及び2’−O−メチルウリジンを含有する。好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−デオキシアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも80%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。より好ましい実施形態において、得られる修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−デオキシアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの少なくとも90%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。最も好ましい実施形態において、得られる本発明の修飾オリゴヌクレオチドは、全アデノシンヌクレオチドの100%が2’−デオキシアデノシンであり、全シチジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルシチジンであり、全グアノシンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルグアノシンであり、全ウリジンヌクレオチドの100%が2’−O−メチルウリジンである配列を含有する。
各場合において、次に、アプタマーを同定するために、及び/又はある標的に対して高い結合特異性を有する配列の保存的モチーフを決定するために、SELEXTMプロセスにおいてライブラリとして転写産物を使用することができる。得られる配列は、既に部分的に安定化されているので、最適化アプタマー配列に到達するためのプロセスからこの段階を削除して、結果として安定性のより高いアプタマーが得られる。2’−OMeSELEXTMプロセスの別の長所は、得られる配列が、配列中で必要とする2’−OHヌクレオチドがより少ない、あるいは全く必要としないと思われることである。2’−OHヌクレオチドが残る限り、SELEXTMプロセス後修飾を行うことにより、これらを除去することができる。
下記のように、上記の最適化条件以外の条件下で、2’置換ヌクレオチドを完全に組み込む転写産物を、低いが依然として有用な収率で得ることができる。例えば、上記の転写条件に対する変法には、以下のものが含まれる:
HEPES緩衝液濃度は、0から1Mの範囲であり得る。本発明はまた、例えばTris−ヒドロキシメチル−アミノメタンを含む、pKaが5から10であるその他の緩衝剤の使用も意図する。
DTT濃度は、0から400mMの範囲であり得る。本発明の方法はまた、例えばメルカプトエタノールを含む、その他の還元剤の使用も提供する。
スペルミジン及び/又はスペルミン濃度は、0から20mMの範囲であり得る。
PEG−8000濃度は、0から50%(w/v)の範囲であり得る。本発明の方法はまた、例えばその他の分子量のPEG又はその他のポリアルキレングリコールを含む、その他の親水性ポリマーの使用も提供する。
Triton X-100濃度は、0から0.1%(w/v)の範囲であり得る。本発明の方法はまた、例えば、Triton−X界面活性剤を含むその他の界面活性剤を含む、その他の非イオン性界面活性剤の使用も提供する。
MgCl2濃度は、0.5mMから50mMの範囲であり得る。MnCl2濃度は、0.15mMから15mMの範囲であり得る。MgCl2及びMnCl2の両方が、述べた範囲内で存在しなければならず、好ましい実施形態において、約10から約3のMgCl2:MnCl2比、好ましくは約3−5:1の比、より好ましくは、約3−4:1の比で存在する。
2’−OMe NTP濃度(各NTP)は、5μMから5mMの範囲であり得る。
2’−OH GTP濃度は、0μMから300μMの範囲であり得る。
2’−OH GMP濃度は、0から5mMの範囲であり得る。
pHは、pH6からpH9の範囲であり得る。修飾ヌクレオチドを組み込む殆どのポリメラーゼの活性のpH範囲内で本発明の方法を実施し得る。さらに、本発明の方法は、例えば、EDTA、EGTA及びDTTを含む、転写反応条件におけるキレート剤の任意の使用を提供する。
アプタマー医薬化学
アプタマー医薬化学は、一連の変形アプタマーが化学合成される、アプタマー改善技術である。これらの一連の変形は通常、1個の置換が導入されていることで親アプタマーと異なり、この置換の位置により互いに異なる。次に、これらの変形型を互いに、及び親アプタマーと比較する。特性の向上は十分に完全であり得、特定の治療基準に到達するのに必要であるのは、1個の置換を含むことのみである。
あるいは、複数の置換基が同時に導入されるさらなる一連の変形型を設計するために、一連の単一変形型から収集される情報を使用し得る。ある設計ストラテジーにおいて、単一置換基変形型の全てに順位付けを行い、上から4個を選択し、これらの4個の単一置換基変形型の全ての可能な二重(6)、三重(4)及び四重(1)の組み合わせを合成し、アッセイする。第二の設計ストラテジーにおいて、最良の単一置換基変形型を新しい親とみなし、この最高ランクの単一置換基変形型を含む全ての可能な二重置換基変形型を合成し、アッセイする。その他のストラテジーを使用することができ、さらに改良された変形型を同定することを続けながら、多くの置換基を徐々に増加させるように、これらのストラテジーを繰り返し適用し得る。
特に、全体ではなく局所的な置換基の導入を探索するための方法として、アプタマー医薬化学を使用し得る。転写により生成されるライブラリ内でアプタマーが探索されるので、SELEXTMプロセス中に導入される何れの置換基も全体的に導入されなければならない。例えば、ホスホロチオエート結合をヌクレオチド間に導入することが望ましい場合、それらを全てのA(又は全てのG、C、T、Uなど)(全体的な置換)でのみ導入することができる。一部のA(又は一部のG、C、T、Uなど)(局所的置換)でホスホロチオエートを必要とするが、他のAではそれを許容できないアプタマーは、このプロセスにより容易に探索することはできない。
アプタマー医薬化学プロセスにより利用できる置換基の種類は、それらを固相合成試薬として生成し、それらをオリゴマー合成スキームに導入する能力によってのみ制限される。本プロセスは、ヌクレオチドのみに制限されない。アプタマー医薬化学スキームは、立体的なかさ高さ、疎水性、親水性、親油性、疎脂性、正電荷、負電荷、中性電荷、両性イオン、分極性、ヌクレアーゼ耐性、立体配座の剛性、立体配座柔軟性、タンパク質結合特性、質量などを導入する置換基を含み得る。アプタマー医薬化学スキームは、塩基修飾、糖修飾又はホスホジエステル結合修飾を含み得る。
治療用アダプタマーの文脈内で有益と思われる置換基の種類を考慮する場合、次のカテゴリーの1以上に属する置換を導入することが望ましいものであり得る:
(1)本体に既に存在する置換基、例えば、2’−デオキシ、2’−リボ、2’−O−メチルプリン又はピリミジン又は5−メチルシトシン。
(2)既に、認可された治療の一部である置換基、例えば、ホスホロチオエート結合オリゴヌクレオチド。
(3)上記2つのカテゴリーの1つに加水分解又は分解する置換基、例えば、メチルホスホネート結合オリゴヌクレオチド。
本発明のトロンビンアプタマーは、本明細書中に記載のアプタマー医薬化学を通じて開発されたアプタマーを含む。
トロンビン結合アプタマー
本発明の材料は、トロンビンに結合し、ある実施形態において、インビボ及び/又は細胞に基づくアッセイにおいてトロンビンの活性を低下させるか又は阻害する、13−51ヌクレオチド長の一連の核酸アプタマーを含む。好ましくは、本発明のアプタマーは、トロンビンに高親和性で結合し、約300pM未満、好ましくは250pM未満、より好ましくは約200pM未満のKDを有する。
本発明のアプタマーは、トロンビンにより引き起こされるか、又はトロンビンと関連のあることが知られている、ある種の凝固関連疾患を治療及び/又は予防するための、低毒性で、安全で効果的な様相を提供する。本発明のアプタマーはまた、ステント留置を含む経皮冠動脈インターベンション、末梢動脈閉塞疾患(PAOD)に関連する手術及び、冠動脈バイパス移植(CABG)手術を含む心肺バイパス(CPB)手法などの外科的処置に関連する、凝固を調節するための、特に抗凝固のための、安全で効果的な様相を提供する。本発明のアプタマーは、活性凝固時間(ACT)及びその他の凝固の通常の測定により測定することができる抗凝固において効果を有し、例えばヘパリン投与により起こるように、血小板活性化などの望ましくない副次的効果がない。さらに、ある実施形態において、抗トロンビンアプタマーの薬物動態(PK)及び薬力学(PD)半減期は短く、その結果、迅速に抗トロンビン効果が逆転する。
本発明における治療及び/又は診断としての使用のためのトロンビン結合アプタマーの例には次の配列が含まれる:配列番号9−41、43−191、193−204、208−304、307−329、331−332、334、336−337、340−392、396−397、400及び402−440。
トロンビンに結合するその他のアプタマーは、下記実施例1及び2において記載する。
これらのアプタマーは、例えば親油性又は高分子量化合物(PEGなど)への共役、キャッピング部分の組み込み、修飾ヌクレオチドの組み込み、リン酸骨格における置換及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、本明細書中に記載のような修飾を含み得る。
本発明のある実施形態において、トロンビンに結合する、単離された非天然のアプタマーを提供する。ある実施形態において、単離された非天然のアプタマーのトロンビンに対する解離定数(「KD」)は、100μM未満、1μM未満、500nM未満、100nM未満、50nM未満、1nM未満、500pM未満、約300pM未満、好ましくは250pM未満、より好ましくは約200pM未満である。下記実施例1に記載のドットブロット滴定により解離定数を決定し得る。
別の実施形態において、本発明のアプタマーは、トロンビンの機能を低下させるか又は阻害する。本発明の別の実施形態において、本アプタマーは、トロンビンの変異体に結合し、トロンビンの変異体の機能を低下させるか又は阻害する。トロンビン変異体は、本明細書中で使用される場合、トロンビン機能と基本的に同じ機能を果たす変異体を包含し、好ましくは実質的に同じ構造を含み、ある実施形態において、トロンビンのアミノ酸配列に対して、70%配列同一性、好ましくは80%配列同一性、より好ましくは90%配列同一性、より好ましくは95%配列同一性を含む。本発明のある実施形態において、下記のようにBLASTを用いて標的変異体の配列同一性を調べる。
2以上の核酸又はタンパク質配列の文脈における「配列同一性」という用語は、次の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、又は目視により調べた場合、最大の一致に対して比較し、アラインした場合、同じであるか、又は同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの指定された%を有する、2以上の配列又は部分配列を指す。配列比較のために、通常1つの配列が、試験配列を比較する参照配列の役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。次に、配列比較アルゴリズムが、指定したプログラムパラメータに基づき、参照配列に対する、試験配列の%配列同一性を計算する。例えば、Smith & Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)のローカルホモロジーアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman、Proc Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法のための検索により、これらのアルゴリズムのコンピュータを利用した手段(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)により、又は、目視により(全般的に、Ausubelら、前出を参照。)、比較のための配列の最適アラインメントを行うことができる。
%配列同一性を決定するために適切なアルゴリズムの一例は、Basic local alignment search tool(本明細書中で以後「BLAST」と呼ぶ。)において使用されるアルゴリズムであり、例えばAltschulら、J Mol.Biol.、215:403−410(1990)及びAltschulら、Nucleic Acids Res.、15:3389−3402(1997)を参照のこと。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(本明細書中で以後「NCBI」と呼ぶ。)を通じて公開されている。NCBIから入手可能なソフトウェア(例えば、BLASTN(ヌクレオチド配列用)及びBLASTP(アミノ酸配列用)を用いて配列同一性を決定する際に使用される初期設定パラメータは、McGinnisら、Nucleic Acids Res.、32:W20−W25(2004)に記載されている。
本発明の別の実施形態において、本アプタマーは、次の配列番号の何れか1個を含有するアプタマーと実質的に同じである、トロビンへの結合能を有する:配列番号:43−44、48−49、52、63、72、82、84、92、97、116、130、141、143、146、166、172、185、283、292−294、319−329、331−332、334、336−337、340−392、396−397、400、402−433。本発明のその他の実施形態において、本アプタマーは、次の配列番号の何れか1個を含有するアプタマーと実質的に同じである、構造及びトロビンへの結合能を有する:43−44、48−49、52、63、72、82、84、92、97、116、130、141、143、146、166、172、185、283、292−294、319−329、331−332、334、336−337、340−392、396−397、400、402−433。
本発明の別の実施形態において、本アプタマーは、次の配列番号の何れか1個と実質的に同じである、凝固低下又は阻害能を有する:11、15、21、23、32、34、84、86、92、94、116、191、197、200、283−285、287、289−290、292−304、307−318、411、434-438及び440。本発明の別の実施形態において、本アプタマーは、次の配列番号の何れか1個と実質的に同じである、凝固低下又は阻害能及び、実質的に同じ構造を有する:11、15、21、23、32、34、84、86、92、94、116、191、197、200、283−285、287、289−290、292−304、307−318、411、434-438及び440。別の実施形態において、本発明のアプタマーは、配列番号191、197、283、292−294、411及び434−440の何れか1個に従う配列を有する。別の実施形態において、本発明のアプタマーは、医薬組成物において活性成分として使用される。別の実施形態において、本発明のアプタマー又は本発明のアプタマーを含有する組成物は、例えば急性及び慢性のトロンビン介在性凝固疾患などの凝固関連疾患を治療するために使用される。別の実施形態において、本発明のアプタマー又は本発明のアプタマーを含有する組成物は、冠動脈バイパス移植(CABG)手法又は経皮冠動脈インターベンションなどの外科的処置の前、その最中、その後又はこれらの組み合わせで、抗凝固剤として使用される。
ある実施形態において、本発明のアプタマー治療薬は、それらの標的に対して高い親和性及び高い特異性を有し、同時に、患者又は対象の体内でアプタマー治療薬が分解された場合の、非天然ヌクレオチド置換からの有害な副作用を軽減する。ある実施形態において、本発明のアプタマー治療薬を含有する治療組成物は、フッ素化ヌクレオチド不含であるか、又はフッ素化ヌクレオチドの量が少ない。
当技術分野で周知の固相オリゴヌクレオチド合成技術(例えば、Froehlerら、Nucl.Acid Res.14:5399−5467(1986)及びFroehlerら、Tet.Lett.27:5575−5578(1986)参照。)及びトリエステル合成法などの液相法(例えば、Soodら、Nucl.Acid Res.4:2557(1977)及びHiroseら、Tet.Lett.、28:2449(1978)を参照。)を含む、当技術分野で公知の何らかのオリゴヌクレオチド合成技術を用いて、本発明のアプタマーを合成することができる。
ARC2172(配列番号294)は、合成により生成され、8,155.24ダルトンの分子量(MW)の、C256H319N104O158P25(遊離酸型)の分子式を有する。ARC2172(配列番号294)のナトリウム塩は、C256H294Na25N104O158P25の分子式を有し、換算MWは8704.77ダルトンである。ARC2172(配列番号294)のナトリウム塩に対する化学名は、2’−デオキシシチジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシアデノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシアデノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシチミジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシシチジリル−(3’→5’O,O−ホスホリル)−2’−デオキシグアノシン、25−ナトリウム塩である。
医薬組成物
本発明はまた、トロンビンに結合するアプタマー分子を含有する医薬組成物も含む。ある実施形態において、本組成物は内服に適切であり、単独で、又は1以上の医薬的に許容可能な担体と組み合わせて、医薬的に活性のある本発明の化合物の有効量を含む。本化合物は、これらに何らかの毒性があっても、毒性が非常に低いという点で特に有用である。
患者において、疾病又は疾患などの病状を治療又は予防するために、又はこのような疾病又は疾患の症状を緩和するために、本発明の組成物を使用することができる。例えば、凝固に関与する病状、及び、特に、トロンビン関連の凝固に関与する病状を治療又は予防するために、本発明の組成物を使用することができる。本発明のアプタマーが高親和性で結合する標的に関連するか又は由来する、疾病又は疾患に罹患している、又は罹患しやすい対象に投与するために、本発明の組成物は有用である。
本発明のアプタマーが高親和性で結合する標的に関連するか又は由来する、疾病又は疾患に罹患している、又は罹患しやすい対象に投与するために、本発明の組成物は有用である。病状を有する患者又は対象を治療するための方法において、本発明の組成物を使用することができる。本方法は、病状に関与する標的タンパク質(例えば、トロンビン)に結合する、アプタマー又はアプタマーを含有する組成物を患者又は対象に投与することを含み、標的タンパク質へのアプタマーの結合によって標的、例えばトロンビンの生物学的機能を変化させ、それにより病状を治療する。
病状がある、及び/又は抗凝固の必要がある患者又は対象、すなわち、本発明の方法により治療される患者又は対象は、脊椎動物、より具体的には哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、サル及び/又は、ウマなどの有蹄類、より具体的にはヒトであり得る。
ある実施形態において、CABG、PCI、血管形成、血管内手術、心臓血管及び末梢血管開放系及び血管内手術、末梢/冠状動脈又は静脈におけるステントを置換するための手術、人工臓器、心臓弁、冠状動脈性心臓病及び/又は静脈又は動脈における血管疾患を処置するための手術及び末梢動脈閉塞疾患を処置するための手術、冠状動脈性心臓病及び/又は例えば腎動脈、腹大動脈における、頸動脈における、末梢動脈閉塞疾患(「PAOD」)における、静脈又は動脈における血管疾患を処置するための手術、などの外科的介入の前、その最中、その後又はこれらの組み合わせで、本発明のアプタマー、例えばARC2172(配列番号294)を投与する。本方法のある実施形態において、例えば人工股関節置換術、膝置換術などの術後の血栓症を予防するために、本発明のアプタマーを投与する。本方法のある実施形態において、腹腔鏡検査、婦人科的処置などの、低侵襲的処置の前、その最中、その後又はこれらの組み合わせで、本アプタマーを投与する。
ヘパリン誘発性血小板減少症(「HIT」)、ヘパリン抵抗性、腎機能障害及び/又は肝機能障害の患者の抗凝固剤治療において、本発明のアプタマー、例えばARC2172(配列番号294)を使用する。さらなる実施形態において、本発明は、トロンビンを低下させるか又は阻害することが望ましい状態の、ヒト又はその他の哺乳動物における治療に関する。急性冠不全症候群、うっ血性心不全、心房細動、静脈血栓症、例えば深部静脈血栓症、肺塞栓、動脈血栓症(例えば、心筋虚血におけるものなど)、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓症に基づく発作及び末梢動脈血栓症を含む、血液及び組織での血栓症及び/又は凝固性亢進の治療及び/又は予防において、ヒトを含む哺乳動物で本発明のアプタマーを使用し得る。さらに、冠動脈疾患、脳動脈疾患及び末梢動脈疾患などのアテローム性動脈硬化疾患(疾病)の治療及び/又は予防において本アプタマーを使用し得る。ある実施形態において、血液透析及び播種性血管内凝固症候群での抗凝固剤治療において、本発明のアプタマー、例えばARC2172(配列番号294)を使用し得る。ある実施形態において、カテーテル、ステント及び、インビボで患者において使用される機械装置をすすぐ及び/又は被覆する方法において、及び、インビトロで血液、血漿及びその他の血液製品を保存するための抗凝固剤として、本発明のアプタマーを使用し得る。
またさらに、転移を含む癌、炎症性疾患(動脈炎及び糖尿病を含む。)など、血液凝固が根本的な原因プロセス又は二次的病状の原因であるその他の疾病において、本アプタマーを使用し得る。
例えば、心臓手術などの手術の、前、最中及び/又は後に、抗凝固を必要とする患者又は対象を治療するための方法において、本発明の組成物を使用することができる。本方法のある実施形態での、凝固を調節する方法において、例えばCABG手術の、前、最中及び/又は後に、一定の静脈点滴により、又は静脈ボーラス投与により、抗トロンビンアプタマーを投与することができる。これらの実施形態において、本発明の組成物中で、そのナトリウム塩として、等張の中性pHの水性の食塩液中で、アプタマーが提供され得る。
実際には、所望の生物学的活性(例えば、フィブリノーゲン及びPAR−Iへのアプタマー標的、トロンビンの結合を低下させるか又は阻害する。)を与えるのに十分である量で、本アプタマー又はこれらの医薬的に許容可能な塩を投与する。
本発明のある態様は、凝固関連疾患に対するその他の治療剤と組み合わせた、本発明のアプタマー組成物を含有する。本発明のアプタマー組成物は、例えば複数のアプタマーを含有し得る。いくつかの例において、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤などの別の有用な組成物と組み合わせて、1以上の本発明の化合物を含有する本発明のアプタマー組成物を投与する。さらに、上記のような、アルキル化剤、代謝拮抗剤、分裂抑制剤又は細胞毒性抗生物質などの、抗細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤又は化学療法剤と組み合わせて、本発明の化合物を投与し得る。一般に、このような組み合わせにおいて使用するための既知の治療剤の現在利用可能な形態が適切である。
「併用療法」(又は「同時療法(co−therapy)」)は、これらの治療剤の相互作用から有益な効果を提供することを意図する具体的な治療計画の一部としての、本発明のアプタマー組成物及び少なくとも第二の薬剤の投与を含む。この併用の有益な効果は、以下に限定されないが、治療剤の組み合わせによる、薬物動態又は薬力学的相互作用を含む。併用でのこれらの治療剤の投与は、通常、ある一定の期間にわたり行われる(通常、選択される組み合わせに依存して、分、時間、日又は週)。
「併用療法」は、一般にではないが、付随的に、及び適宜、結果として本発明の組み合わせとなる、別個の単剤療法計画の一部として、これらの治療剤の2以上の投与を包含するものであり得る。「併用療法」は、連続的なこれらの治療剤の投与を包含するものとし、すなわち、各治療剤が異なる時間に投与される、ならびに、これらの治療剤、又は少なくともこれらの治療剤の2つが実質的に同時に投与される。例えば、各治療剤の固定の比を有する1個のカプセルを対象へ投与することにより、又は、各治療剤に対する、複数、1個のカプセルで、実質的に同時投与を行い得る。
以下に限定されないが、局所経路、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路及び粘膜組織を介した直接吸収を含む、何らかの適切な経路により、各治療剤の連続的又は実質的に同時の投与を行うことができる。同じ経路により、又は異なる経路により、本治療剤を投与することができる。例えば、選択した組み合わせの第一の治療剤を注射により投与することができ、一方、組み合わせの他方の治療剤を局所的に投与することができる。
あるいは、例えば、全ての治療剤を局所的に投与し得るか、又は、全ての治療剤を注射により投与し得る。治療剤を投与する順番は、他に示されない限り、厳密に重大ではない。「併用療法」はまた、その他の生物学的に活性のある成分とのさらなる組み合わせにおいて、上述のような治療剤の投与も包含し得る。併用療法がさらに非薬物療法を含む場合、治療剤と非薬物療法との組み合わせの相互作用からの有益な効果が達成される限り、何れかの適切な時間にこの非薬物療法を行い得る。例えば、適切なケースにおいて、非薬物療法が一時的に治療剤の投与から除かれるとき(おそらく、数日間又は数週間でも)、この有益な効果がまた達成される。
本発明の治療又は医薬組成物は通常、医薬的に許容可能な溶媒中で溶解されるか又は分散されている、治療の活性成分の有効量を含有する。医薬的に許容可能な溶媒又は担体には、何れか及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に活性のある物質に対するこのような溶媒及び物質の使用は当技術分野で周知である。補助的な活性成分も本発明の治療組成物に組み込み得る。
医薬又は薬理組成物の調製は、本開示に照らして、当業者にとって公知である。通常、溶液又は懸濁液としての何れかでの注入物質;注射前の液体中の溶液又は懸濁液として適切な固体の形態;経口投与のための、錠剤又はその他の固体として;徐放カプセルとして;又は、点眼薬、クリーム、ローション、サルブ、吸入薬などを含む、現在使用されている何らかのその他の形態として、このような組成物を調製し得る。術野の特定の領域を処置するための、執刀者、医師又は医療関係者による食塩水を基にした洗浄液などの滅菌処方物の使用もまた特に有用であり得る。組成物はまた、微小デバイス、微粒子又はスポンジを介して送達され得る。
処方において、剤形と適合する形式で、薬理学的に有効となるような量で、治療剤を投与する。上述のような注射溶液など様々な剤形で、処方物が容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用できる。
この状況において、投与される、活性成分の量及び組成物の体積は、治療を受けるホスト動物に依存する。投与に必要とされる活性化合物の正確な量は、医師の判断に依存し、各個体に対して固有である。
活性化合物を分散するのに必要とされる組成物の最小体積を通常利用する。投与のための適切な計画もまた様々であるが、最初に化合物を投与し、結果を監視し、次いでさらなる間隔でさらなる調節投与量を与えることにより、投与の型が決定される。
例えば、錠剤又はカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形態での経口投与の場合、経口の、無毒性の、医薬的に許容可能な不活性担体(エタノール、グリセロール、水など)と活性薬物成分を組み合わせることができる。さらに、望ましい又は必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び着色剤を本混合物に組み込むこともできる。適切な結合剤には、デンプン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/又はポリビニルピロリドン、天然の糖(グルコース又はβ−ラクトースなど)、コーンシロップ、天然及び合成ガム(アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムなど)、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコールなどが含まれる。崩壊剤には、以下に限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩又は沸騰性混合物などが含まれる。希釈剤には、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシンが含まれる。
持続放出及び徐放錠剤又はカプセル、ピル、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ及びエマルジョンなどの経口投与形態において、本発明の化合物を投与することもできる。座薬は、脂肪エマルジョン又は懸濁液から有利に調製される。
医薬組成物は滅菌され得、及び/又は、保存料、安定化剤、湿潤剤又は乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩及び/又は緩衝液などのアジュバントを含有し得る。さらに、これらはまた、その他の治療上価値のある物質も含有し得る。本組成物は、従来の、混合、造粒又は被覆法に従い調製され、通常、活性成分を約0.1%から75%、好ましくは約1%から50%含有する。
液体、特に注射可能な組成物は、例えば、溶解、分散することなどにより調製することができる。例えば、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの医薬的に純粋な溶媒中で本活性化合物を溶解させるか又はこれと混合し、これにより、注射可能な溶液又は懸濁液を形成する。さらに、注射前に液体中で溶解させるために適切な固体形態を処方することができる。
静脈内(ボーラス及び点滴の両方)、腹腔内、皮下又は筋肉内形態及び、医薬技術分野の当業者にとって周知の全ての使用形態で、本発明の化合物を投与することができる。従来の形態で、溶液又は懸濁液の何れかとして、注入剤を調製することができる。
皮下、筋肉内又は静脈内注射及び点滴に対して、非経口の注射可能な投与を通常使用する。さらに、非経口投与のためのあるアプローチでは、米国特許第3,710,795号(参照により本明細書中に組み込む。)に従い、持続放出又は徐放系の移植を利用し、これにより、確実に投与の一定レベルを維持することができる。
さらに、適切な経鼻ビヒクル、吸入薬の局所使用を介した鼻内形態、又は経皮経路を介して、当業者にとって周知の経皮パッチの形態を用いて、本発明のための好ましい化合物を投与することができる。経皮送達系の形態で投与するために、言うまでもなく、投与計画を通して、投与は間欠的ではなく、連続である。その他の好ましい局所製剤には、クリーム、軟膏、ローション、エアロゾルスプレー及びジェルが含まれ、ここで活性成分の濃度は通常、0.01%から15%w/w又はw/vの範囲である。
固形組成物の場合、賦形剤には、医薬グレードの、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。例えばポリアルキレングリコール、例えばプロピレングリコールを担体として使用して、上記で示した活性化合物を座薬として処方することもできる。ある実施形態において、脂肪エマルジョン又は懸濁液から座薬を有利に調製する。
小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル及び多重膜ベシクルなどの、リポソーム送達系の形態で、本発明の化合物を投与することもできる。コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンを含有する様々なリン脂質から、リポソームを形成することができる。ある実施形態において、米国特許第5,262,564号に記載のように、薬物を封入する脂質層を形成するために、薬物の水溶液で脂質成分のフィルムを水和する。例えば、当技術分野で公知の方法を用いて構築された、親油性化合物又は非免疫原性の高分子量化合物との複合体として、本明細書中に記載のアプタマー分子を提供することができる。核酸会合複合体の例は、米国特許第6,011,020号で提供される。
標的可能な薬物担体として、可溶性ポリマーと本発明の化合物をカップリングさせることもできる。このようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパンアミドフェノール又は、パルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが含まれ得る。さらに、例えばポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性のブロックコポリマーなどの、薬物の制御放出を行うのに有用な生体分解性ポリマーのクラスに本発明の化合物をカップリングさせ得る。
必要に応じて、投与すべき医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤及びその他の物質(例えば、酢酸ナトリウム及びオレイン酸トリエタノールアミンなど)などの少量の無毒性の補助物質も含有し得る。
患者の、タイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;治療すべき状態の重症度;投与経路;患者の腎及び肝機能;使用する特定のアプタマー又はその塩を含む様々な因子に従い、アプタマーを利用した投与計画を選択する。通常技術の医師又は獣医師は、状態の進行を、予防、抑制又は阻止するのに必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
次の投与量において与えられる分子量はアプタマーオリゴ重量のみに関係し、PEG部分などへの共役により与えられる質量を含まない。本発明の経口投与量は、望ましい効果のために使用される場合、経口で約0.05から7500mg/日の間の範囲である。本組成物は、好ましくは、活性成分の、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0及び1000.0mgを含有する分割錠の形態で提供される。点滴投与量、経鼻投与量及び経皮投与量は、0.05から7500mg/日の範囲である。皮下、静脈内及び腹腔内投与量は、0.05から12,000mg/日の範囲である。
本発明の化合物の有効血漿レベルは、0.002mg/mLから50mg/mLの範囲である。
1日1回投与で本発明の化合物を投与し得るか、又は、1日に、2、3又は4回の分割投与で1日総投与量を投与し得る。
アプタマー治療薬の薬物動態及び生体内分布の調節
アプタマーを含む全てのオリゴヌクレオチドに基づく治療薬に対する薬物動態特性を所望の医薬適用に適合するように調整することが重要である。細胞外標的に向けられたアプタマーは、細胞内送達に関する問題(アンチセンス及びRNAiに基づく治療薬を用いる場合など)に直面することはないが、このようなアプタマーは、標的器官及び組織に分布することができなければならず、所望の投与計画と一致する時間にわたり身体に残存しなければならない(非修飾)。
このように、本発明は、アプタマー組成物の薬物動態、特にアプタマー薬物動態を調整するための能力に影響を与えるための材料及び方法を提供する。例えば、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)、急性冠不全症候群(ACS)及び深部静脈血栓症(DVT)などの様々な疾患の治療において、半減期(t1/2)がより長い、本発明のトロンビン結合アプタマー−PEG共役物を使用し得る。これらのアプタマー共役物により示されるより長いt1/2は、所望の効果を生み出すのに必要な投与量に影響を及ぼす(例えば低くする。)。慢性疾患に対して半減期がより長いアプタマー共役物を使用することもできる。血液採取、血液循環又は血液保存装置(この装置は、本発明の抗トロンビンアプタマー又は本発明の抗トロンビンアプタマーの混合物の有効量を含む。)において、抗凝固剤として、本発明の、アプタマー共役物及び/又は安定化アプタマーを含む、半減期(t1/2)がより長い本発明のアプタマーを使用することもできる。このような装置の例には、以下に限定されないが、血液採取バッグ、血液採取チューブ及び血液採取シリンジが含まれる。特定の実施形態において、血液保存装置、例えば血液バッグ(ここで、血液は約4℃で数日、好ましくは2週間保存される。)において、本発明のアプタマーの有効量を使用する。
アプタマーへの修飾部分(例えばPEGポリマー)の共役及び/又は核酸の化学組成を変化させるための修飾ヌクレオチド(例えば、2’−フルオロ又は2’−O−メチル)の組み込みにより、アプタマー薬物動態が調整可能となる(すなわち、低下させるか又は阻害する能力)。既存の治療適用の改善において、あるいは、新しい治療適用の開発において、アプタマー薬物動態を調整する能力が使用される。例えば、ある治療適用において、例えば、迅速な薬物クリアランス又はターンオフが望まれ得る、抗新生物又は緊急の医療環境において、循環中のアプタマーの滞留時間を短くすることが望ましい。あるいは、その他の治療適用において、例えば、治療薬の全身的循環が望ましい維持療法において、循環中のアプタマーの滞留時間を長くすることが望ましいことがあり得る。
さらに、対象におけるアプタマー治療薬の生体内分布を変化させるために、アプタマー薬物動態の調整可能性が使用される。例えば、ある治療適用において、特定タイプの組織又は具体的な器官(又は一連の器官)を標的とすることを目的として、アプタマー治療薬の生体内分布を変化させることが望ましい場合があり得る。これらの適用において、アプタマー治療薬は特定の組織又は器官に選択的に蓄積する。その他の治療適用において、アプタマー治療薬が罹患組織で選択的に蓄積するように、ある一定の疾病、細胞損傷又はその他の異常な病状と関連する、細胞性マーカー又は症状を示す組織を標的とすることが望ましい場合があり得る。例えば、米国仮出願第60/550790号(2004年3月5日出願)題名「Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」及び米国非仮出願第11/075,648号(2005年3月7日出願)及び題名Controlled Modulation of the Pharmacokinetics and Biodistribution of Aptamer Therapeutics」において、PEG付加アプタマー治療薬が選択的に炎症組織に蓄積するように、炎症が起こっている組織を標的とするために、アプタマー治療薬のPEG付加(例えば、20kDaPEGポリマーのPEG付加)が使用されている。
アプタマー治療薬(例えば、アプタマー共役物又は修飾ヌクレオチドなどの化学的性質が改変されたアプタマー)の薬物動態及び生体内分布プロファイルを調べるために、様々なパラメータを監視する。このようなパラメータには、例えば、アプタマー組成物の、半減期(t1/2)、血漿クリアランス(C1)、分布量(Vss)、濃度−時間曲線下面積(AUC)、最大観察血清又は血漿濃度(Cmax)及び平均滞留時間(MRT)が含まれる。本明細書中で使用される場合、「AUC」という用語は、アプタマー投与後の時間に対するアプタマー治療薬の血漿濃度のプロットの下の面積を指す。あるアプタマー治療薬の、バイオアベイラビリティー(すなわち、アプタマー投与後の循環中の投与されたアプタマー治療薬の%)及び/又は総クリアランス(C1)(すなわち、アプタマー治療薬が循環から排除される速度)を推定するためにAUC値を使用する。分布量は、身体に存在するアプタマーの量に対するアプタマー治療薬の血漿濃度に関係する。Vssが大きいほど、血漿外で見られるアプタマーが多くなる(すなわち、管外流出がより多い。)。
本発明は、小型の分子、ペプチド又はポリマー末端基などの調節部分にアプタマーを共役させることにより、又は、修飾されたヌクレオチドをアプタマーに組み込むことにより、制御された形式で、インビボで安定化アプタマー組成物の薬物動態及び生体内分布を調節するための材料及び方法を提供する。本明細書中に記載のように、修飾部分の共役及び/又はヌクレオチド化学組成を変化させることにより、循環中のアプタマー滞留時間及び組織への分布の基本的な面が変化する。
ヌクレアーゼによるクリアランスに加えて、腎臓濾過を介してオリゴヌクレオチド治療薬が排出される。このようなものとして、ヌクレアーゼ抵抗性オリゴヌクレオチドが静脈内投与されることにより、通常、濾過がブロックされ得ない限り、インビボの半減期が<10分となる。血流から組織への急速な分布を促進するか、又は糸球体に対する有効サイズカットオフを上回るようにオリゴヌクレオチドの見かけの分子量を高くすることにより、これを達成することができる。下記の、PEGポリマーへの小型の治療薬の共役(PEG付加)により、循環中のアプタマーの滞留時間が劇的に長くなり、これにより、投与頻度が少なくなり、血管標的に対する有効性が促進される。
高分子量ポリマー、例えばPEG;ペプチド、例えばTat(HIV Tatタンパク質の13−アミノ酸断片(Vivesら(1997)、J.Biol.Chem.272(25):16010−7))、Ant(ショウジョウバエアンテナペディアホメオティックタンパク質の第三へリックス由来の16−アミノ酸配列(Pieterszら(2001)、Vaccine19(11−12):1397−405))及びArg7(ポリアルギニン(Arg7)から構成される、短い、正電荷を有する細胞浸透性ペプチド(Rothbardら(2000)、Nat.Med.6(11):1253−7;Rothbard、Jら(2002)、J.Med.Chem.45(17):3612−8));及び小型の分子、例えばコレステロールなどの親油性化合物など、様々な修飾部分とアプタマーを共役させることができる。本明細書中に記載の様々な共役物の中でも、PEG基との複合体形成により、アプタマーのインビボ特性が最も顕著に変化する。例えば、混合2’F及び2’−OMe修飾アプタマー治療薬と20kDa PEGポリマーとの複合体形成により、腎濾過が妨げられ、健常及び炎症組織の両方に対するアプタマー分布が促進される。さらに、20kDa PEGポリマー−アプタマー共役物により、アプタマーの腎濾過を妨害することにおいて、40kDaPEGポリマーとほぼ同程度の効果が得られる。PEG付加の影響の1つがアプタマークリアランスにおけるものである一方、20kDa部分の存在により可能となる全身曝露の延長によってまた、組織、特によく灌流された器官及び炎症部位でのアプタマーの分布も促進される。アプタマー−20kDa PEGポリマー共役物は、PEG付加アプタマーが炎症組織に選択的に蓄積するように、炎症部位へのアプタマー分布を支配する。いくつかの例において、20kDa PEG付加アプタマー共役物は、例えば腎臓細胞などの細胞の内部へ到達することができる。
アプタマーの血漿クリアランスを調節するために、修飾されたヌクレオチドを使用することもできる。例えば、2’−F及び2’−OMe安定化の化学的性質の両方を組み込む、共役していないアプタマー(インビトロ及びインビボでヌクレアーゼ安定性が高いため、現世代アプタマーの典型である。)は、非修飾アプタマーと比較した場合、血漿から急速に失われ(すなわち、急速な血漿クリアランス)、組織、主に腎臓に急速に分布する。
PEG−誘導化核酸
上述のように、高分子量の非免疫原性ポリマーでの核酸の誘導化は、核酸の薬物動態及び薬力学特性を変化させ、その核酸をより効果的な治療薬とする可能性がある。活性における有利な変化には、ヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性の向上、腎臓を通じた濾過の低下、免疫系への曝露の減少及び身体を通じた治療薬の分布の変化が含まれ得る。
本発明のアプタマー組成物は、ポリアルキレングリコール(「PAG」)部分により誘導化され得る。PAG−誘導化核酸の例は、米国特許出願第10/718,833号(2003年11月21日出願)(その全体を参照により本明細書中に組み込む。)で見出される。本発明で使用される典型的なポリマーには、ポリエチレンオキシド(「PEO」)としても知られているポリエチレングリコール(「PEG」)及びポリプロピレングリコール(ポリイソプロピレングリコールを含む。)が含まれる。さらに、多くの適用において、様々なアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド)のランダム又はブロックコポリマーを使用することができる。その最も一般的な形態において、PEGなどのポリアルキレングリコールは、各末端にヒドロキシル基が付加している線状ポリマーである:HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH。このポリマー、α−、ω−ジヒドロキシルポリエチレングリコールを、HO−PEG−OHとして表すこともできる(式中、−PEG−の印は、次の構造単位を表すと理解される:−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−(nは、通常、約4から約10,000の範囲である。))。
示されるように、PEG分子は二官能性であり、「PEGジオール」と呼ばれることがある。PEG分子の末端部分は比較的非反応性であるヒドロキシル部分、−OH基であり、他の化合物にその化合物の反応部位においてPEGを付加するために、官能部分へと活性化又は変換することができる。このような活性化PEGジオールを本明細書中で二重活性化PEGと呼ぶ。例えば、N−ヒドロキシスクシニミジルからのスクシニミジル活性エステル部分で、比較的非反応性であるヒドロキシル部分、−OHを置換することにより、アミノ部分との選択的反応のために、活性カーボネートエステルとして、PEGジオールの末端部分が官能化されている。
多くの適用において、PEG分子が一官能性(又は一活性化)であるように、基本的に非反応性の部分で片方の末端においてPEG分子にキャップ付加することが望ましい。活性化PEGに対する多反応部位を一般に示すタンパク質治療薬の場合、二官能性の活性化PEGにより、機能的凝集性が乏しい、さらなる架橋が導かれる。一活性化PEGを生成させるために、PEGジオール分子の末端の1つのヒドロキシル部分を通常、非反応性メトキシ末端部分、−OCH3で置換する。PEG分子の他方の非キャップ付加末端は通常、表面又はタンパク質などの分子における反応部位での結合のために活性化され得る反応性末端部分へと変換される。
PAGは、通常、水溶性及び多くの有機溶媒中での可溶性の特性を有し、毒性がなく、免疫原性がないポリマーである。PAGの使用の1つは、得られるPAG−分子を「共役」可溶性とするために、不溶性分子にこのポリマーを共有結合することである。例えば、水に不溶の薬パクリタキセルが、PEGとカップリングされた場合、水溶性になることが示されている。Greenwaldら、J.Org.Chem.、60:331−336(1995)。PAG共役物は、溶解性及び安定性を促進するためだけでなく、分子の血液循環半減期を延長させるために使用されることが多い。
本発明のポリアルキル化化合物は通常、5から80kDaのサイズであるが、しかし、どのようなサイズも使用することができ、その選択は、アプタマー及び適用に依存する。本発明のその他のPAG化合物は、10から80kDaのサイズである。さらに他の本発明のPAG化合物は、10から60kDaのサイズである。例えば、PAGポリマーは、少なくとも10、20、30、40、50、60又は80kDaのサイズであり得る。このようなポリマーは、線状又は分枝状であり得る。ある実施形態において、このポリマーはPEGである。ある実施形態において、このポリマーは分枝状のPEGである。さらに他の実施形態において、図2で示されるように、このポリマーは40kDaの分枝状のPEGである。ある実施形態において、図3で示されるように、40kDaの分枝状のPEGはアプタマーの5’末端に結合されている。
生物学的に発現させたタンパク質治療薬に対して、核酸治療薬は通常、活性化単量体ヌクレオチドから化学合成される。同じ反復単量体合成を用いてPEGを組み込むことにより、PEG−核酸共役物を調製し得る。例えば、ホスホロアミダイト形態への変換により活性化されたPEGを固相オリゴヌクレオチド合成に組み込むことができる。あるいは、反応性PEG結合部位の部位特異的組み込みにより、オリゴヌクレオチド合成を完遂することができる。最も一般的には、5’−末端での遊離一級アミンの付加によってこれが行われてきた(固相合成の最終カップリング段階において修飾因子ホスホロアミダイトを用いて組み込まれる。)。このアプローチを用いて、反応性PEG(例えば、それが反応し、アミンとの結合を形成するように活性化されるもの)を精製オリゴヌクレオチドと組み合わせ、溶液中でカップリング反応を行う。
PEG共役物が治療薬の生体内分布を変化させる能力は、共役物の見かけのサイズ(例えば、流体力学半径に関して測定した場合)を含む多くの要因に関連する。大きな共役物(>10kDa)は、腎臓を介したろ過をより効率的にブロックし、結果として小さな高分子(例えば、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド)の血清半減期を延長させることが知られている。PEG共役物がろ過をブロックする能力が、PEGサイズに伴っておよそ50kDaまで大きくなることが示されている(半減期は、腎臓を介した排出ではなく、マクロファージを介した代謝により定められるようになるので、さらなる増加による有益な効果はわずかである。)。
高分子量PEG(>10kDa)の生成は困難で、非効率的で、高価であり得る。高分子量PEG−核酸共役物の合成に対する経路として、以前の研究は、より高分子量の活性化PEGの生成に焦点が当てられてきた。このような分子を生成させるためのある方法は、2以上のPEGが活性化基を有する中央のコアに結合されている、分枝状の活性化PEGの形成を含む。化合物の反応部位において1以上のPEGを他の化合物に結合させるために、これらのより高分子量のPEG分子の末端部分、すなわち比較的非反応性であるヒドロキシル(−OH)部分を活性化するか、又は官能部分に変換することができる。分枝状の活性化PEGは、2を超える末端を有し、2以上の末端が活性化されている場合、このような活性化されたより高分子量のPEG分子を、本明細書中で、「多活性化PEG」と呼ぶ。あるケースにおいて、分枝状PEG分枝の全ての末端が活性化されるわけではない。分枝状PEG分子の何れか2つの末端が活性化される場合、このようなPEG分子を二活性化PEGと呼ぶ。分枝状PEG分枝の1つの末端のみが活性化される場合、このようなPEG分枝を一活性化と呼ぶ。このアプローチの例として、リジンコア(反応のために続いて活性化される。)への2つのモノメトキシPEGの連結により調製される活性化PEGが記載されている(Harrisら、Nature、vol.2:214−221、2003)。
本発明は、多重PEG付加核酸を含む高分子量PEG−核酸(好ましくはアプタマー)共役物の合成に対する、別の費用効果のある経路を提供する。本発明はまた、PEG−連結多量体オリゴヌクレオチド、例えば二量体アプタマーも包含する。本発明はまた、PEG安定化部分がアプタマーの異なる部分を分けるリンカーである、高分子量組成物にも関し、例えば、高分子量アプタマー組成物の直線的配置が例えば核酸−PEG−核酸(−PEG−核酸)n(nは1以上である。)となるように、このPEGは1つのアプタマー配列内で共役されている。
本発明の高分子量組成物は、少なくとも10kDaの分子量を有するものを含む。組成物は通常、10から80kDaのサイズの分子量を有する。本発明の高分子量組成物は、少なくとも10、20、30、40、50、60又は80kDaのサイズである。
安定化部分は、分子又は分子の一部であり、本発明の高分子量アプタマー組成物の薬物動態及び薬力学特性を向上させる。あるケースにおいて、安定化部分は、2以上のアプタマー又はアプタマードメインを近接させるか、又は本発明の高分子量アプタマー組成物の全体的な回転自由を低下させる、分子又は分子の一部である。安定化部分は、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールであり得、これは、線状又は分枝状、ホモポリマー又はヘテロポリマーであり得る。その他の安定化部分は、ペプチド核酸(PNA)などのポリマーを含む。オリゴヌクレオチドもまた安定化部分になり得;このようなオリゴヌクレオチドには、修飾ヌクレオチド及び/又は修飾連結(ホスホチオエートなど)が含まれ得る。安定化部分は、アプタマー組成物の不可欠な部分であり得、すなわち、これはアプタマーに共有結合する。
本発明の組成物は、2以上の核酸部分が少なくとも1つのポリアルキレングリコール部分に共有結合で共役されている高分子量アプタマー組成物を含む。ポリアルキレングリコール部分は、安定化部分として働く。ポリアルキレングリコールが1つの分子において一緒に核酸部分と連結するようにポリアルキレングリコール部分がアプタマーの何れかの末端に共有結合されている組成物において、ポリアルキレングリコールは連結部分と呼ばれる。このような組成物において、共有分子の一次構造には、線状配列、核酸−PAG−核酸が含まれる。ある1つの例は、一次構造、核酸−PEG−核酸を有する組成物である。別の例は、核酸−PEG−核酸−PEGの線状配列である。
核酸−PEG−核酸共役物を生成させるために、核酸が1個の反応部位を有するように(例えば、これはモノ活性化である。)、最初は核酸を合成する。好ましい実施形態において、この反応部位は、オリゴヌクレオチドの固相合成の最終段階として修飾ホスホロアミダイトの付加により5’−末端に導入されるアミノ基である。脱保護及び修飾オリゴヌクレオチドの精製に次いで、活性化PEGの自然な加水分解を最小限にする溶液中で高濃度でこれを再構成する。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドの濃度は1mMであり、再構成溶液は、200mM NaHCO3緩衝液、pH8.3を含有する。共役物の合成は、ゆっくりと段階的に高精製度の二官能性PEGを添加することにより開始する。好ましい実施形態において、プロピオン酸スクシニミジルを用いた誘導化により、両末端でPEGジオールを活性化する(二活性化)。反応後、完全、部分的及び非共役物を分離するために、ゲル電気泳動又は液体クロマトグラフィーでPEG−核酸共役物を精製する。様々な長さ(又は分子量)を得るために、鎖状に連結された複数のPAG分子(例えば、ランダム又はブロックコポリマーとして)又はより小さいPAG鎖を連結することができる。様々な長さのPAG鎖の間で非−PAGリンカーを使用することができる。
2’−O−メチル、2’−フルオロ及びその他の修飾ヌクレオチド修飾により、ヌクレアーゼに対してアプタマーが安定化され、インビボでのその半減期が延長される。3’−3’−dTキャップによってもまた、エキソヌクレアーゼ耐性を向上させることができる。例えば、米国特許第5,674,685号;同第5,668,264号;同第6,207,816号;及び同第6,229,002号(これらをそれぞれ、その全体において、参照により本明細書中に組み込む。)を参照のこと。
反応性核酸のPAG−誘導化
複数の反応部位を含有する核酸とのモノ官能性活性化PEGの反応により、高分子量PAG−核酸−PAG共役物を調製することができる。ある実施形態において、この核酸は、二反応性又は二活性化であり、従来のホスホロアミダイト合成(例えば、図4で述べられるような、3’−5’−ジ−PEG付加)を通じてオリゴヌクレオチドに導入される2個の反応性部位:5’−アミノ基及び3’−アミノ基を含有する。代替的な実施形態において、例えば、1級アミンの結合のための部位として、ピリミジンの5位、プリンの8位又はリボースの2’位を用いて、内部の位置に反応性部位を導入することができる。このような実施形態において、核酸は、いくつかの活性化又は反応性部位を有し得、多活性化と呼ばれる。合成及び精製後、自然の加水分解を最小限に抑えながら、オリゴヌクレオチド反応性部位との選択的反応を促進する条件下で、モノ活性化PEGと修飾オリゴヌクレオチドを組み合わせる。好ましい実施形態において、プロピオン酸スクシニミジルでモノメトキシ−PEGを活性化し、pH8.3で共役反応を行う。二置換PEGの合成を動かすために、化学量論的過剰のPEGをオリゴヌクレオチドに対して与える。反応後、完全、部分的及び非共役物を分離するために、ゲル電気泳動又は液体クロマトグラフィーによりPEG−核酸共役物を精製する。
連結ドメインは、これに結合された1以上のポリアルキレングリコール部分も有し得る。このようなPAGは様々な長さであり得、組成物の所望の分子量を得るために、適切な組み合わせで使用され得る。
特定のリンカーの効果は、その化学組成及び長さの両方により影響され得る。長すぎる、短すぎる又は、トロンビンとの好ましくない立体及び/又はイオン性相互作用を形成するリンカーは、アプタマーとトロンビンとの間の複合体形成を妨げる。核酸間の距離に及ぶのに必要なものより長いリンカーは、リガンドの有効濃度を低下させることにより結合安定性を低下させ得る。このように、標的へのアプタマーの親和性を最大にするためにリンカー組成及び長さを最適化することが必要であることが多い。
本明細書中で引用される全ての刊行物及び特許文献は、このような各公表物及び文献が具体的かつ個々に参照により本明細書中に組み込まれることが示されるように、参照により本明細書中に組み込まれる。刊行物及び特許文書の引用は、何れも適切な先行技術であることの認可として意図されず、また、これらの内容又は日付に関してのいかなる認可も構成しない。本発明を明細書によりここで述べてきたが、当業者は、様々な実施形態において本発明を実施し得ること及び、前述の記載及び以下の実施例は説明目的であり、続く特許請求の範囲を限定するものでないことを認めるであろう。
(実施例1)
アプタマー選択及び配列
このプログラムの全般的な目的は、トロンビン活性を低下させるか阻害することにより強力な抗凝固剤として作用するアプタマーを発見することである。具体的には、強力なアプタマー抗−凝固剤は、トロンビンのフィブリノーゲン結合エキソサイト1に結合し、したがって、酵素への結合に対して基質(フィブリノーゲン)と競合する。
次の配列5’GGTTGGTGTGGTTGG3’(配列番号4)(ARC183)を有する、既に同定されたトロンビン結合DNAアプタマーと関連する、急速排出の薬力学特性を維持するために、単純なDNA組成物を用いてアプタマー選択を行った。アプタマープールからの非中和エキソサイト2を効率的にブロックするために、ヘパリンの10−100倍のモル濃度過剰量の添加を用いた複合体のニトロセルロースフィルター捕捉を使用して、高親和性エキソサイト1結合物質を発見した。さらに、プロトロンビン結合アプタマーを除去するように設計された最初の段階でのプロトロンビンアプタマー複合体の捕捉及び放棄及びプロトロンビン及びヒルジン/トロンビン複合体の混合物とアプタマープールとの接触、それに次ぐプロトロンビン/アプタマー及びトロンビン/ヒルジン/アプタマー複合体の捕捉及び放棄を含む、その他のストラテジーが発明者らのSELEXスキームに入った。トロンビン/ヒルジン複合体を含むことは、ヘパリン競合がそれだけでは効果的でない場合に、望ましくない非阻害結合物質をプールから捕捉し除去するためにエキソサイト2を効率的に提示することを目的とした。究極的に、これらの選択ストラテジーは、インビトロ及びインビボでトロンビンの活性をまた低下させるか又は阻害する、トロンビンに対する高親和性を有する一連のアプタマーの生成へとつながる。
(実施例1A):トロンビンDNA選択#1
デオキシヌクレオチド(DNA)からなるヌクレオチドプールを用いて、ヒトトロンビンに結合するアプタマーを同定するために、ニトロセルロースフィルターカラムを用いた選択を行い、これにより、ヒトトロンビンに対する高親和性アプタマーを得た。
プールの調製
ABI−EXPEDITE(商標)、DNA合成装置を用いて、配列:
を有するDNA鋳型を合成し、標準的方法により脱保護した。このDNA鋳型の一連のN’はヌクレオチドの何らかの組み合わせであり得、得られるアプタマーのユニークな配列領域を生じさせる。標準的条件下で次のプライマーを用いてこの鋳型をPCR増幅した。
増幅後、PCR産物をエタノール沈殿処理し、次いで、アルカリ加水分解に供し(333mM NaOH、90℃、15分)、次にHClで中和し、精製前にホルムアミドローディング緩衝液を添加した。10%変性ポリアクリルアミドゲルで鎖を分離し、より大きい移動度で移動する1本鎖DNAプールをゲルから切り出し、受動的に溶出し、イソプロパノールで沈殿させた。得られたプール配列は、ARC1488の切断された逆相補体であり、50ntの長さであり、次の配列を有する。
選択
ヒトトロンビンに対して全部で12回の選択を行った。ラウンド1で、1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)3mL、ARC1538 DNAプール2x1014分子及びトロンビン900ピコモル(300nM最終濃度)(Enzyme Research Labs、South Bend、IN)からなる結合反応液を調製した。この結合反応液を室温にて2時間インキュベートした。インキュベート中、Centrexニトロセルロースフィルターカラム(Schleicher&Schuell、Keene、NH)を選択のために準備した。0.5M KOH 1mLで15分間、各カラムを処理した。処理後、遠心(2000rpm、1分間)によりこのKOHを除去し、カラムをddH2O1mLでさらに15分間処理した。次に、遠心(2000rpm、1分間)によりddH2Oを除去した。準備したフィルターカラムに選択結合反応液を添加し、遠心(2000rpm、1分間)により回転させて通した。次にこのカラムを1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)1mL(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)で洗浄し、回転させて通した。洗浄後、90℃に予め加熱した溶出緩衝液(7M尿素、300mM NaOAc、5mM EDTA)1mLでこのカラムを3分間溶出し、次に遠心(2000rpm、1分間)により回転させて通し、1.5mLエッペンドルフチューブに回収した。次に、イソプロパノール1体積及びグリコーゲン1μLを用いて溶出物を沈殿させた。
ラウンド1後の、続く全てのラウンドに対して、プールから非特異的フィルター結合物質を除去するために、ポジティブ選択の前にネガティブ選択カラムを導入した。上記で概説するようにしてネガティブ選択カラムを準備した。1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)200μL及び選択の前ラウンドからのプールの60pmoleをネガティブ選択カラムに通して、既に述べた結合反応段階に進む前に回収した。選択圧を増すために続くラウンドにおいて競合物tRNAも添加し、エキソサイト2に結合し、アプタマーがトロンビンのエキソサイト2に結合するのを防ぐために、後のラウンドにおいてポジティブ選択段階にヘパリンを添加した。使用した選択条件は下記表1で概説する。
ARC1538DNAプールの増幅には、5’−末端におけるリン酸化反応及び、それに続くその配列の5’−末端(すなわち、オリジナルのARC1488合成DNA配列の増幅のために使用される3’−プライマー)への定常領域の特異的ライゲーションと、その後の標準的PCR増幅が必要である。このように、沈殿後、選択されたプールをddH2O 9μL及び2xキナーゼ適合緩衝液(1M DTT 8μL+2xQuick Ligase buffer(New England Biolabs、Beverly、MA)1mL)10μL中で再び再懸濁し、T4PNK(New England Biolabs、Beverly、MA)1μLを反応液に添加し、37℃にて20分間インキュベートした。インキュベート後、3’プライマー5’−TATACGACTCAGCGTGTAAGAGGAAGCTAArA−3’(ARC1490)(配列番号7)100pmole及び3’ライゲーションプライマー5’−GGGATTTAGCTTCC[3T]−3’(ARC1491)(配列番号192)100pmoleをT4リガーゼ(New England Biolabs、Beverly、MA)1μLとともに添加し、室温にて10分間インキュベートした。5’プライマー5’−GATCGATCCTCAGCCAC−3’(ARC1489)及び3’プライマー(ARC1490)の両方を含有するPCR混合液中で反応液を200μLにした。次の条件を用いてPCR反応を繰り返した:94℃にて1分間変性、94℃にて30秒、54℃にて30秒、72℃にて1分間の反応を繰り返した。4%E−ゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて推定して、最終産物がおよそ10ng/μLになるまで、PCRを繰り返した(下記表1の一番右のカラムで「PCR閾値」と呼ぶ。)。次に、さらなるDNA増幅のために、この産物をより大きなPCR反応に入れた(400μLの総PCR体積に20μLを入れた。)。
増幅後、PCR産物をエタノール沈殿し、次いでアルカリ加水分解(333mM NaOH、90℃、15分間)に供し、次いで、HClで中和し、10%PAGEゲルでの精製前にホルムアミドローディング緩衝液を添加した。選択の次のラウンドに進む前に、精製した産物を受動的に溶出し、沈殿させ、定量した。
ラウンド7まで単一選択として選択を進め、ラウンド7では、選択を2つの枝に分けた(表1参照)。選択の一方の枝では、トロンビンタンパク質濃度を低下させることにより測定した場合、ストリンジェンシーが上昇し続けた。
選択の進行の監視
プールのタンパク質結合親和性を監視するために、選択を通してドットブロットアッセイを行った。ヒトトロンビンの希釈系列(1nMから1000nM)と微量32P標識RNAを組み合わせ、室温にて30分間、1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)+0.1mg/mL BSA(最終体積30μL)中でインキュベートした。Minifold Iドットブロット、96ウェル真空ろ過マニホールド(Schleicher&Schuell、Keene、NH)を用いて、ニトロセルロースろ過により結合反応を分析した。(上から下へ)Protranニトロセルロース(Schleicher&Schuell、Keene、NH)、Hybond−P ナイロン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)及びGB002ゲルブロットペーパー(Schleicher&Schuell、Keene、NH)からなる3層のろ過媒体を使用した。タンパク質が結合したRNAをニトロセルロースフィルター上で捕捉し、一方、非タンパク質結合RNAをナイロンフィルター上で捕捉する。ゲルブロットペーパーは、単純に他のフィルターのための支持媒体として含めた。ろ過後、フィルター層を分け、乾燥させ、蛍光体スクリーン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)上で曝露し、Storm860Phosphorimager(R)ブロットイメージングシステム(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)を用いて定量した。トロンビン非存在下に対してヒトトロンビン存在下でのRNAの結合の顕著な陽性率が見られた場合、製造者の説明書に従い、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてそのプールをクローニングした。
ラウンド9及び12 クローニング及び配列決定
プール結合に基づき、クローニング及び配列決定のために、ラウンド9及びラウンド12プールを選択した。配列ファミリーによるスクリーニングの目的のために、本選択の両枝からのラウンド9及びラウンド12プールを合わせた。全てのユニークなDNAクローン配列を25μmole合成スケールで合成した。下記の実施例3Aに記載のプロトロンビン時間(PTアッセイ)を用いて、トロンビン活性を低下させるか阻害する能力について、ラウンド9からのクローンをスクリーニングした。PTアッセイ結果を下記実施例3の表17で報告する。ラウンド12プールは、追跡すべき新しいユニークな配列リードがないことが示された。
合わせたラウンド9プールから得られたクローンの配列を下記表2で挙げる。各クローンに対するランダム領域は配列5’TCCCの後始まり、GTGGCTGAGGATCGTATC3’(配列番号42)の前で終わる。しかし、5’−TCCC配列はPCRプライマーの一部ではないので、SELEX及び配列決定プロセス中にいくつかの突然変異が観察され得る。したがって、下記配列においてこの領域の点突然変異が観察され得る。別段の記載がない限り、下記で挙げる個々の配列は、5’から3’方向で表され、DNA SELETM条件下で選択され、ヌクレオチドの全てがデオキシである。
(実施例1B):トロンビンDNA選択#2及び#3
1)ネガティブSELEX段階でプロトロンビンを組み込むことにより、プロトロンビンよりもヒトトロンビンに対して高親和性を有するアプタマーを同定するために;及び2)ネガティブ選択段階にトロンビン/ヒルジン複合体を添加することにより、エキソサイト2結合に対して偏ったトロンビンアプタマーを同定するために、2つのさらなるニトロセルロースフィルターカラムを利用したDNA選択を行った。トロンビン/ヒルジン複合体は、効果的にエキソサイト1及びトロンビンの活性部位を塞ぎ、それにより、可能性のあるエキソサイト2結合物質が捕捉されプールから除去されるようになる。さらに、選択1でのように、エキソサイト2に結合し、アプタマーがトロンビンのエキソサイト2に結合するのを防ぐために、後のラウンドにおいてポジティブ選択段階にヘパリンを添加した。
プールの調製及び選択
新しい選択のために使用するDNAプールは、上記実施例1Aに記載のように調製した。ヒトトロンビン(Enzyme Research Labs、South Bend、IN)に対して全部で9ラウンドの選択を行った。ラウンド1において、結合反応液は、1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)3mL、ARC1538 DNAプール 2x1014分子及びトロンビン(300nM最終濃度)900pmoleから構成された。室温にて2時間、この結合反応液をインキュベートした。インキュベート中、Centrex Filterカラム(Schleicher&Schuell、Keene、NH)を選択のために準備した。0.5M KOH 1mLで15分間、各カラムを処理した。処理後、遠心(2000rpm、1分間)によりこのKOHを除去し、カラムをddH2O 1mLでさらに15分間処理した。次に、遠心によりddH2Oを除去した。準備したCentrexに選択結合反応液を添加し、回転させて通した(2000rpm、1分間)。次にこのカラムを1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)1mLで洗浄し、遠心(2000rpm、1分間)により回転させて通した。洗浄後、90℃に加熱した溶出緩衝液(7M尿素、300mM NaOAc、5mM EDTA)1mLでこのカラムを溶出し(この溶出緩衝液を3分間カラムに置き、その後2000rpmで1分間遠心することによる。)、エッペンドルフチューブに回収した。次に、イソプロパノール1体積及びグリコーゲン1μLを用いて溶出物を沈殿させた。
ラウンド1後の続く全てのラウンドに対して、プールから非特異的フィルター結合物質を除去するために、ポジティブ選択の前にネガティブ選択カラムを付加した。上記で概説するようにしてこのカラムを準備し、DPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)200μL及び前ラウンドからのプール60pmoleの混合物をろ過し、結合反応に進む前に回収した。選択圧を増すために続くラウンドにおいて競合物tRNAも添加し、エキソサイト2に結合し、アプタマーがトロンビンのエキソサイト2に結合するのを防ぐために、後のラウンドにおいてポジティブ選択段階にヘパリンを添加した。使用した選択条件は下記表3で概説する。上記実施例1AのSELEXに対して述べたようにして、選択されたプールを増幅し、精製した。
ラウンド3まで単一選択として選択を進め、ラウンド3では、選択を2つの枝に分けた(表3参照)。選択の一方の枝(選択2)は、各ラウンドのネガティブ選択段階においてヒトプロトロンビン300nMを使用して前のように続けた。他方の枝(選択3)は、ネガティブ選択段階においてプロトロンビン(Athens Research、Athens、GA)150nM、及びトロンビン及びヒルジン(American Diagnostica、Stamford、CT)複合体150nMを用いて続けた。
選択の進行の監視
プールのタンパク質結合親和性を監視するために、選択を通じてドットブロットアッセイを行った。ヒトトロンビンの希釈系列(1nMから1000nM)と微量32P標識RNAを組み合わせ、室温にて30分間、1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)+0.1mg/mL BSA(最終体積30μL)中でインキュベートした。Minifold Iドットブロット、96ウェル真空ろ過マニホールド(Schleicher&Schuell、Keene、NH)を用いて、ニトロセルロースろ過により結合反応を分析した。(上から下へ)Protranニトロセルロース(Schleicher&Schuell、Keene、NH)、Hybond−P ナイロン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)及びGB002ゲルブロットペーパー(Schleicher&Schuell、Keene、NH)からなる3層のろ過媒体を使用した。タンパク質が結合したRNAをニトロセルロースフィルター上で捕捉し、一方、非タンパク質結合RNAをナイロンフィルター上で捕捉する。ゲルブロットペーパーは、単純に他のフィルターのための支持媒体として含めた。ろ過後、フィルター層を分け、乾燥させ、蛍光体スクリーン(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)上で曝露し、Storm862Phosphorimager(R)ブロットイメージングシステム(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)を用いて定量した。
トロンビン非存在下に対してヒトトロンビン存在下でのRNAの結合の顕著な陽性率が見られた場合、製造者の説明書に従い、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてそのプールをクローニングした。
DNA選択#2及び#3からのラウンド7:配列決定及びクローンスクリーニング
上述のように選択を通じて監視したプール結合に基づき、選択#2及び3の両方からのラウンド7プールをクローニングし、配列決定し、サンドイッチフィルター結合アッセイを用いてトロンビンへの結合能についてスクリーニングした。DNAクローンは、25マイクロモルの合成スケールでIDTにより受託合成した。1−ポイントドットブロットスクリーニングにおいてアッセイするために、両選択からのラウンド7プールから得られた66種類の合わせた配列のうち、20種類のユニークな配列を選択した。γ−32P ATPでクローン転写産物を5’末端標識し、過剰な標識を除去するためにCentrisepカラム(Princeton Separations、Adelphia、NJ)を用いてスピン精製した。30μL 1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)の総体積中で微量の標識クローンを±10nMトロンビン及び0.1mg/mL BSAとともに30分間インキュベートした。インキュベート後、実施例1Aで既に述べたドットブロット結合アッセイ装置に結合反応液を添加した。選択クローンにおけるKDを調べるために、クローン転写産物をγ−32P ATPで5’末端標識した。ドットブロット結合アッセイにおいてヒトトロンビン(トロンビンに対する具体的なクローンの親和性に依存して1pMから1000nMの範囲)の希釈系列を用い、得られたデータを1:1 RNA:タンパク質複合体を述べる式に当てはめて、KD値を決定した(アプタマー結合分画=振幅([トロンビン]/(KD+[トロンビン])(KaleidaGraph v.3.51、Synergy Software、Reading、PA)。)。
ラウンド7から得られた配列を下記表4で挙げる。各クローンに対する対応する結合特性は下記表5で表にする。下記表4で挙げる配列のそれぞれに対して、各クローンに対するランダム領域は配列5’TCCCの後始まり、GTGGCTGAGGATCGTATC3’(配列番号42)の前で終わる。別段の記載がない限り、下記で挙げる個々の配列は、5’から3’方向で表され、DNA SELETM条件下で選択され、ヌクレオチドの全てがデオキシである。
DNA選択#2及び#3からのラウンド9:配列決定及びクローンスクリーニング
上述のように選択を通じて監視したプール結合に基づき、選択#2及び#3の両方からのラウンド9プールも、製造者の説明書に従い、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてクローニングし、配列決定を行った。トロンビンへの選択的結合に対する試験を行うためのトロンビン及びプロトロンビンに対する1−ポイントドットブロットスクリーニングにおいてアッセイするために、両選択のラウンド9から得られた136種類の配列のうち、130種類のユニークな配列を選択した。クローンは、25マイクロモルの合成スケールでIDT(Coralville、IA)に委託した。γ−32P ATPでクローン転写産物を5’末端標識し、過剰な標識を除去するためにCentrisepカラム(Princeton Separations、Adelphia、NJ)を用いてスピン精製した。30μL 1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)の総体積中で微量の標識クローンを±10nMトロンビン(又は±50nMプロトロンビン)及び0.1mg/mL BSAとともに30分間インキュベートした。インキュベート後、既に述べたドットブロット結合アッセイ装置に結合反応液を添加した。選択クローンにおけるKDを調べるために、クローン転写産物をγ−32P ATPで5’末端標識した。ドットブロット結合アッセイにおいてヒトトロンビン(トロンビンに対する具体的なクローンの親和性に依存して1pMから1000nMの範囲)の希釈系列を用いて、得られたデータを1:1 RNA:タンパク質複合体で述べられる式に当てはめることにより、KD値を調べた(アプタマー結合分画=振幅*([トロンビン]/(KD+[トロンビン])(KaleidaGraph v.3.51、Synergy Software、Reading、PA)。)。
DNA選択#2及び#3のラウンド9から得られた配列を下記表6に挙げる。各クローンに対する対応する結合特性は下記表7で表にする。表6で下記に挙げる配列のそれぞれに対して、各クローンに対するランダム領域は配列5’TCCCの後始まり、GTGGCTGAGGATCGTATC3’(配列番号42)の前で終わる。別段の記載がない限り、下記で挙げる個々の配列は、5’から3’方向で表され、DNA SELEXTM条件下で選択され、ヌクレオチドの全てがデオキシである。
(実施例2)
組成物及び配列最適化及び配列
(実施例2A):DNA選択#2及び#3トロンビンアプタマーの最小化
ラウンド7DNA選択#2及び#3からのクローンの最小化
RNAフォールディングプログラム(RNASstructure(c)(1996−2004)David H.Mathews、Michael Zuker&Douglas H.Turner)を使用して、上述の実施例1BのようにKDが決定されたラウンド7クローンに対する推定二次フォールディングを決定した。高親和性クローンは、関連配列由来であり、クローンAMX(395)_C1(配列番号49)のフォールディングに基づいており、最小化アプタマー配列を設計し、合成した。実施例1Aで既に述べたドットブロット結合アッセイにおいて、ヒトトロンビンの希釈系列(トロンビンに対する具体的なクローンの親和性に依存して1pMから1000nMの範囲)を用い、得られたデータを1:1 RNA:タンパク質複合体を述べる式に当てはめることにより、各最小化コンストラクトのKD値を決定した(アプタマー結合分画=振幅*([トロンビン]/(KD+[トロンビン])(KaleidaGraph v.3.51、Synergy Software、Reading、PA)。)。親アプタマーAMX(395)_C1(配列番号49)に基づく最小化コンストラクトの配列及び対応するKDを下記表8で挙げる。示されるように、ARC1985、最小化中に同定された、得られた27マーは、DNA選択#2及び#3のラウンド7から同定され最小化された全クローンのうち、トロンビンに対する結合親和性が最大であった。
下記表8で述べる最小化DNAアプタマーに対して、全ヌクレオチド(A、T、C及びG)はデオキシである。別段の記載がない限り、個々の配列は、5’から3’方向で表す。
ラウンド9DNA選択#2及び#3からのクローンの最小化
実施例1Aで上記で述べたドットブロット結合アッセイにおいて最大結合親和性を示した、ならびに、下記実施例3Aで述べるPTアッセイにおいて最大抗凝固能を示した、DNA選択#2及び#3のラウンド9で同定されたクローンから、上述のように最小化コンストラクトを設計した。最小化コンストラクト及び各コンストラクトに対する関連する親アプタマーの配列を下記表9に記載する。下記実施例3Aで述べるPTアッセイにおいて、各最小化コンストラクトの機能活性を関連親アプタマーと比較した。設計した短縮型コンストラクトのうち、ARC2091(配列番号197)は、PTアッセイにおいて親クローンに匹敵する効力を示した(下記実施例3A参照)。ARC2091(配列番号197)は、DNA選択#2及び#3のラウンド9から同定され、最小化された全クローンのうち、最大の機能活性を示し、下記実施例2Bに記載のドープ再選択に対する基礎となった。
下記表9に記載の最小化DNAアプタマーに対して、全ヌクレオチド(A、T、C及びG)はデオキシである。別段の記載がない限り、個々の配列は、5’から3’方向で表す。
(実施例2B):ARC2091ドープ再選択
トロンビンに対してより親和性が高い結合物質を同定するために、最小化ヒトトロンビン結合配列ARC2091(配列番号197)(実施例2Aに記載)に基づく、ドーププールを用いて選択を行った。活性クローン又はミニマー内で配列条件を探索するために、ドープ再選択が使用される。1つの配列に基づき設計されている合成の縮重プールを用いて選択を行う。縮重のレベルは、通常、70%から85%野生型ヌクレオチドまで様々である。一般には、中立突然変異が観察されるが、ある場合では、配列変化の結果、親和性が向上し得る。次に、最小の結合モチーフを同定し、最適化を促進するために、合成配列情報を使用することができる。
プールの調製:
ABI−EXPEDITE(商標)DNA合成装置を用いて、配列:
を有するDNA鋳型を合成し、標準的方法により脱保護した。太字のヌクレオチドは、指示される残基である可能性が85%であり、その他の3ヌクレオチドの1つである可能性が5%である。
を用いてこの鋳型を増幅した。増幅後、PCR産物をエタノール沈殿し、次いでアルカリ加水分解に供し(333mM NaOH、90℃、15分)、次いでHClで中和し、10%PAGEゲルでの精製前にホルムアミドローディング緩衝液を添加した。
選択
トロンビン(Enzyme Research Labs、South Bend、IN)に対して、ドープ再選択に基づくニトロセルロースカラムを全3ラウンド行った。実施例1Aで既に述べたようにしてCentrexカラム(Schleicher&Schuell、Keen、NH)を準備した。次のように、プールからの非特異的フィルター結合物質を除去するために、ラウンド1での開始にネガティブ選択段階を含めた。各ラウンドに対して、実施例1で既に述べたようにネガティブフィルターを準備し、1xDPBS(500nMプール濃度)200μL中のARC2082 100pmoleを回転させて通し、回収した。ネガティブ選択段階後、トロンビン(100nM最終濃度)20pmole、競合物質tRNA 0.1mg/mL及び0.1mg/mL ヘパリンをろ過したプールに添加し、室温にて1時間インキュベートした。選択圧を増すために競合物tRNAを添加し、エキソサイト2に結合し、アプタマーがトロンビンのエキソサイト2に結合するのを防ぐために、ポジティブ選択段階にヘパリンを添加した。
各ラウンドに対する選択条件は下記表10で概説する。各ラウンドに対して、準備したCentrexに選択結合反応液を添加し、回転させて通した(2000rpmで1分間)。次に、カラムを1xDPBS(w/Ca2+及びMg2+)1mL(Gibco、カタログ番号14040、Invitrogen、Carlsbad、CA)で洗浄し、遠心により回転させて通した(2000rpmで1分間)。洗浄後、90℃に加熱した溶出緩衝液(7M尿素、300mM NaOAc、5mM EDTA)1mLでこのカラムを溶出し(この溶出緩衝液を3分間カラムに置き、その後2000rpmで1分間遠心することによる。)、エッペンドルフチューブに回収した。イソプロパノール1体積及びグリコーゲン1μLを用いて溶出物を沈殿させた。
を含有するPCR混合液中で200μLに反応液をメスアップした。次の条件を用いてPCR反応を繰り返した:94℃にて1分間変性、94℃にて30秒、54℃にて30秒、72℃にて1分間を繰り返し;4%E−ゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA)により測定して最終産物がおよそ10ng/μLになるまで、PCRを繰り返した(下記表10の一番右のカラムで「PCR閾値」と呼ぶ。)。次に、さらなる増幅のために、この産物をより大きなPCR反応に入れた(400μLの総PCR体積に20μLを入れた。)。増幅後、PCR産物をエタノール沈殿し、次いでアルカリ加水分解(333mM NaOH、90℃、15分間)に供し、次いで、HClで中和し、10%PAGEゲルでの精製前にホルムアミドローディング緩衝液を添加した。選択の次のラウンドに進む前に、精製産物を溶出し、濃縮し、定量した。既に述べたようにして続く沈殿及びゲル精製を行った。
配列決定及びスクリーニング
選択の3回のラウンド後、製造者の推奨に従い、TOPO TAクローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてドーププールをクローニングし、配列決定を行った。下記表11で示されるように、全部で75種類のユニークな配列が同定された。ドープ再選択の終了前に、ARC2091(配列番号197)のトロンビン結合親和性全てを保持する、ARC2169(配列番号283)と呼ばれるARC2091(配列番号197)の30マーの誘導体を設計し、合成した。ドープ再選択からの配列には、ARC2169(配列番号283)の配列により定められるアプタマーに対するコア機能モチーフ内外の、両方の突然変異が含まれた。このコア外の突然変異体は廃棄し、ARC2169(配列番号283)配列との関連において、このコア内の突然変異体を試験した。このように、アプタマー機能における、さらなる最小化の影響及びドープ再選択から得られた最も有力な突然変異の影響を調べるために、ドープ再選択から得られたデータを用いて(表12参照)、下記表11で示される配列から、ARC2169(配列番号283)に基づくクローンのパネルを設計した。PTアッセイを用いてアプタマー機能における突然変異の影響を測定し、下記実施例3で記載する。
下記表11及び表12で述べるDNAアプタマーに対して、全ヌクレオチド(A、T、C及びG)はデオキシである。別段の記載がない限り、個々の配列は、5’から3’方向で表す。
ARC2091(配列番号197)及びドープ再選択データを用いて、下記表13で示されるように、トロンビンに対する結合親和性に欠陥を生じさせずに、ARC2172(配列番号294)と呼ばれる26ヌクレオチドアプタマーへのARC2169(配列番号283)のさらなる最小化を行った。下記表13に記載のDNAアプタマーに対して、全ヌクレオチド(A、T、C及びG)はデオキシである。ARC2169(配列番号283)、ARC2171(配列番号293)及びARC2172(配列番号294)に対する推定二次構造(RNASstructure(c)(1996−2004)David H.Mathews、Michael Zuker&Douglas H.Turner)を用いて)を図5で示す。別段の記載がない限り、個々の配列は5’から3’方向で表す。
実施例1Aで既に述べたニトロセルロースフィルター結合アッセイを用いて、既に同定されているトロンビン結合DNAアプタマー、ARC183と、ARC2172(配列番号294)の結合親和性を比較した。図6で見ることができるように、ARC2172(配列番号294)は、ARC183と比較して、トロンビンに対する親和性が顕著に向上している。
ニトロセルロースフィルター結合アッセイを用いて、ヒト、ブタ及びラットトロンビンに対する種の交差反応性についてもARC2172(配列番号294)を試験した(それぞれ、Enzyme Research Labs、South Bend、INより。)。図7で示されるように、ARC2172(配列番号294)は、ヒトトロンビンに加えて、ブタ及びラットトロンビンに結合する。
(実施例2C):最小化クローンARC1985及びARC2169の最適化
最小化の取り組み時にアプタマーのサイズが小さくなるにつれてACTアッセイ(実施例3B参照)により測定した場合のアプタマー機能が低下するという、わずかな全般的低下傾向が見られた。したがって、最初の最適化の取り組みには、推定のステム構造にさらなる塩基対又はポリ−Tテールを付加することにより分子を長くすることが含まれる。表14で下記に配列が挙げられる次の分子は、ARC1985(配列番号191)及びARC2169(配列番号283)の何れかを基とした:1から5個のさらなる塩基対が付加されたARC2173−ARC2184を設計し;5’又は3’末端の何れかに3個又は6個何れかの「T」付加が加えられたARC2185−ARC2196を設計し;ARC2183及びARC2184は、既に選択されている抗トロンビンアプタマー、ARC183(配列番号4)と分子の本セットとの間の何らかの類似性を調べるために、ARC183上へ、ARC1985(ARC2183に対する。)又はARC2169(ARC2184に対する)のステムエレメントを組み込んでいる、既に選択されている抗トロンビンアプタマー(ARC183)(配列番号4)に基づくアプタマーである。下記実施例3Bに記載のACTアッセイにおいて、1ポイントスクリーニングを用いて(10μMアプタマー濃度)、機能性についてこれらの最適化アプタマーを試験した。
下記表14に記載のDNAアプタマーに対して、全ヌクレオチド(A、T、C及びG)はデオキシである。別段の記載がない限り、個々の配列は5’から3’方向で表す。
さらなる最適化において、ベース分子としてARC2169(配列番号283)を用い、全ての塩基を個々に2’−OMe又はホスホチオエート塩基の何れかで置き換えるために、1μmoleで一連の誘導体を合成した。全てのdG(デオキシグアノシン)塩基を個々に、dI(デオキシノシン)又はmI(2’−OMe)塩基で置換した。PAGEゲルで各分子を精製し、実施例1で既に述べた条件下でドットブロット結合アッセイを用いてトロンビンへの結合についてアッセイした。これらのARC2169(配列番号283)誘導体の配列及び結合特性を下記表15で挙げる。表15で示される結合データに基づき、1個の置換ではトロンビンへの結合を大きく向上させないことが分かった。
下記表15に記載のアプタマーに対して、「d」はデオキシヌクレオチドを示し、「m」は2’−OMeヌクレオチドを示し、「I」はイノシンを示し、「s」はホスホチオエートヌクレオチド間結合を示す。別段の記載がない限り、個々の配列は5’から3’方向で表す。
(実施例2D):ARC2169、ARC2170、ARC2171及びARC2172のフェーズ2
主にインビボでのリードアプタマーの活性の持続時間を調節するために、最適化のさらなるフェーズを行った(この化合物に対して、迅速なオン/迅速なオフプロファイルが望まれるので。)。この目的のために、ステム領域で2’−OMe塩基が許容される一連のコンストラクトを設計した。塩基対形成を弱め、できるならば分子の安定性を低下させ、より素早く分解させるために、いくつかのG−C塩基対をA−T塩基対に変換するため、ステムも変化させた。2’−OMe置換及びG−CからA−T塩基対変換の形態における突然変異について、親分子としてARC2169(配列番号283)、ARC2170(配列番号292)、ARC2171(配列番号293)及びARC2172(配列番号294)を用いて下記で概説する。1μmole合成スケールで各アプタマーを合成し、PAGE精製し、その後、実施例1で既に述べたドットブロットアッセイによりトロンビンへの結合についてアッセイした。
この一連の最適化コンストラクトに対する配列及び結合特性を下記表16で挙げる。下記表16に記載のアプタマーに対して、「d」はデオキシヌクレオチドを示し、「m」は2’−OMeヌクレオチドを示す。別段の記載がない限り、個々の配列は5’から3’方向で表す。
(実施例2E):アプタマー−5’−PEG共役物の合成
ステム延長を用いた上述の最初の最適化からの予備的結果に基づき、抗トロンビンアプタマー、ARC2169(配列番号283)及びARC2172(配列番号294)の小型の5’−PEG共役物を調製した。この構想は、小さなPEGが、インビボでの機能活性の持続時間を顕著に延長することなく、アプタマーの有効性を向上させ得るというものであった(この化合物に対して、迅速なオン/迅速なオフプロファイルが望まれるので。)。化学カップリングを促進するために最初にアプタマーの5’−アミン修飾型を合成することにより、アプタマーを調製し、推奨される製造者の手法に従い、標準的な市販のDNAホスホロアミダイト(ChemGenes Corp.Wilmington、MA)及び次のように示される支持体を用いて(ARC2327(配列番号439)及び2338(配列番号438)に対してPrimer Support 200dG(カタログ番号17−5262−02、GE Healthcare、Uppsala、Sweden);ARC2329(配列番号440)に対してiBu DMTデオキシグアノシン CPG支持体(カタログ番号CPG60N11DGVN、Prime Synthesis、Aston、PA)、ARC2323(配列番号437)に対してDMTデオキシチミジンCPG支持体(カタログ番号CPG60N11DTN、Prime Synthesis、Aston、PA))、AKTA OligoPilot 100合成装置(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)において、
5’−アミンO−修飾物質 TFAアミノC−6 CED Phosporamidite(ChemGenes Corp.Wilmington、MA)により末端アミン官能基を連結させた。脱保護した後、SuperQ 5PW(30)レジン(Tosoh Biosciences、Montgomeryville、PA)でのイオン交換クロマトグラフィー及びエタノール沈殿によりオリゴヌクレオチドを精製した。
合成後、5’−アミン修飾アプタマーのアリコートをPEG部分に共役させた(例えば、2、5及び10kDa PEG部分)。1.5から3mMの間の濃度まで、水/DMSO(1:1)溶液中でアプタマーを溶解させた。100mMの最終濃度まで炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.5を添加し、アセトニトリルの等体積中で溶解させた所望のPEG試薬(10kDa Sunbright GL2−400NP p−ニトロフェニルカーボネートエステル(NOF Corp、Japan))の1.7−3倍モル過剰量とオリゴを一晩反応させた。得られたPEG付加産物をSuperQ 5PW(30)レジン(Tosoh Biosciences、Montgomeryville、PA)上でイオン交換クロマトグラフィーにより精製し、Amberchrom CG300−Sレジン(Rohm and Haas、Philadelphia、PA)上で行う逆相クロマトグラフィーを用いて脱塩し、凍結乾燥した。
得られたPEG付加アプタマー配列を下記で挙げる。これらのアプタマーをその5’アミン対応物とともに、ヒト全血中のアプタマーの様々な濃度でACTアッセイにおいて試験した(実施例3B参照)。
下記で挙げる各配列に対して、「d」はデオキシヌクレオチドを示し(注意、下記に挙げる配列中の全てのヌクレオチドは、「T」(これは、「dT」としてではなく「T」として表される。)を含め、デオキシであり、「NH」は、化学カップリングを促進するためのヘキシルアミンを示す。
ARC2323(配列番号437)(ARC2169+5’−アミン+10kDa PEG)
ARC2338(配列番号438)(ARC2172+5’−アミン+2kDa PEG)
ARC2327(配列番号439)(ARC2172+5’−アミン+5kDa PEG)
ARC2329(配列番号440)(ARC2172+5’−アミン+10kDa PEG)
(実施例3)
インビトロ機能アッセイ
(実施例3A):プロトロンビンアッセイ
組織因子は、損傷部位で放出される、凝固の「外因系」経路の強力な誘導因子である。プロトロンビン時間(「PT」)は、血漿に対する過剰の組織因子の添加における凝固時間を評価するものであり、外因系第VII因子のレベル及び「共通系」経路第I(フィブリノーゲン)、第II(プロトロンビン)、第V及び第X因子に対して最も感度が高い。トロンボプラスチンと呼ばれるPT試薬は、リン脂質及びカルシウム(これらは、いくつかの凝固因子の活性化のために必要な補因子である。)と混合された組織因子からなる。因子欠失の診断とは別に、経口抗凝固剤ワーファリン(ビタミンKアンタゴニスト)を監視するために、臨床PTが最も一般的に使用される。ヘパリンの臨床での監視のためにPTは使用されないが、CABGに対して使用される高へパリン濃度に対して感度が高く、5U/mL以下の範囲である(例えば、1U/mLヘパリンでのPT時間は正常対照の142%である;データは示さない。)。
PTアッセイは、Coag−a−mate凝固分析装置(Biomerieux、Durham、NC)、凍結乾燥トロンボプラスチン(Fisher Scientific)、クエン酸ヒト血漿(Innovative Research、Southfield、MI)及び既知の濃度のアプタマーを利用する。試験トレイ(Biomerieux、Durham、NC)中で、クエン酸血漿とともに、37℃にて3分間、既知の濃度のアプタマーをプレインキュベートした。次に、トロンボプラスチン−D(Pacific Hemostasis、Fisher Diagnostics、Middletown、VA)200μL(ddH2O 10mL中で凍結乾燥形態から再懸濁)を用いて凝固を開始させ、Coag−a−mateで試験試料を分析して凝固時間を調べた。試料をデュプリケートで採り、1つのPT時間に対して平均した。阻害剤/アプタマー非存在下で〜13秒の凝固時間を測定したが、これは、12から14秒の臨床「正常」対照範囲内である。300秒の値が本装置により測定される最大値である。
記載のPTアッセイを用いて、トロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、トロンビンDNA選択#1(実施例1A参照)のラウンド9から同定されたアプタマーをスクリーニングした。フィブリン重合体の形成を光学的に検出するためにCoag−a−mate(Biomerieux、Durham、NC)を用いて、クエン酸ヒト血漿にウサギトロンボプラスチン(Pacific Hemostasis、Fisher Diagnostics、Middletown、VA)を添加することにより、3又は10マイクロモラーアプタマーの存在下でPT値を測定した。DNA選択#1のラウンド9から同定されたトロンビン結合アプタマーの10μMに対するPT値を下記表17で挙げる。表17で挙げるPT値からバックグラウンド値が差し引かれていないことに注意。
上述のPTアッセイにおいて、10μMアプタマーを用いてトロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、DNA選択#2及び#3のラウンド7(実施例2A参照)中に同定されたトロンビン結合アプタマーの最小化コンストラクトもスクリーニングした。最小化コンストラクトARC1985に対するPT値(バックグラウンドを含む。)を下記表18で挙げる。
上述のPTアッセイにおいて、10μMアプタマーを用いてトロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、トロンビンに対して高い結合親和性を示す、DNA選択#2及び#3のラウンド9(実施例2A参照)の間に同定された、選択されたトロンビン結合アプタマーもスクリーニングした。結果を下記表19で示す。下記表19の「N/A」はPT値を測定しなかったことを示すことに注意。
上述のPTアッセイにおいて、10μMアプタマーを用いてトロンビンを低下させるか又は阻害する能力について、DNA選択#2及び#3のラウンド9(実施例2A参照)の間に同定された、トロンビン特異性が高いアプタマーの最小化コンストラクトもスクリーニングした。最小化コンストラクトの由来である親アプタマーに対する、これらの最小化アプタマーのPT値(バックグラウンドを含む。)の比較を下記表20で挙げる。
上述のPTアッセイにおいて、トロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、実施例2Bに記載のドープ再選択に基づいて設計した最小化コンストラクトもスクリーニングした。結果を下記表21で示す。
上述のPTアッセイを用いて、ARC183と比較した場合の、トロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力についてARC2172(配列番号294)もスクリーニングした。図8で示されるように、同じモル濃度で、ARC2172(配列番号294)はARC183よりも効力が高い。
(実施例3B):活性凝固時間アッセイ
ACTは、内在の経路活性化因子の添加時の、非クエン酸全血における凝固時間を評価する。PTTよりもヘパリンに対して感度が低いので(例えば、1U/mLヘパリンでのACT時間が正常対照の181%である;データを示さない。)、CABG中の高ヘパリン用量を監視するために、ACTはベッドサイド試験として一般に使用される。他の凝固試験とは異なり、ACTは標準化されず;このゆえに、ACTの結果は、使用する活性化因子及び検出方法のタイプによって様々である。この機器に対する、公表されている標的凝固時間は、バイパス手術でのヘパリン抗凝固に対して、>420秒である(3から5U/mLの濃度に相当する。)。
ACT+キュベット(ITC Med、Edison NJ)を用いて、光学検出を利用する凝固分析装置(Hemochron Jr.、ITC Med、Edison NJ)において次の測定を行った。ACTアッセイを用いて、トロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、トロンビンに対する高い結合親和性及び上述のPTアッセイにおいて優れたPT値を示す、実施例1及び2に記載の選択アプタマーをスクリーニングした。簡潔に述べると、選択アプタマーの既知の濃度範囲(0−10μM)(室温にて30秒間、7μL体積で血液に添加した。)とともに新鮮な全血70μLをプレインキュベートした。直後に、25mM CaCl2 30μLを血液/アプタマー混合物に添加し、次いで、Hemochron Jr.凝固分析装置(Hemochron Jr.、ITC Med、Edison NJ)で分析するために、37℃に予め温めたACT+キュベット(Hemochron Jr.、ITC Med、Edison NJ)に試料を入れた。125から150秒の測定時間をACTアッセイに対するバックグラウンドとみなした。ACTアッセイにおける選択アプタマーの結果を下記表22で示す。下記表22で挙げるACT値からバックグラウンド値が差し引かれていないことに注意すること。
上述のようにACTアッセイを用いてトロンビンDNAアプタマー、ARC183と比較した場合の、ARC2172(配列番号294)がトロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力も測定した。図9で示されるように、ARC2172(配列番号294)では、>400秒の目標凝固時間に到達するのに必要とされる≧2μMアプタマーで、ACTの濃度相関延長が起こった。2−10μMの濃度範囲にわたり、ARC2172(配列番号294)は、ARC183よりも顕著に高い効力を示した。
上述のACTアッセイを用いて、10μMアプタマーでトロンビン活性を低下させるか又は阻害する能力について、実施例2Cの上述の最適化アプタマーもスクリーニングした。これらの結果を下記表23で示す。
ARC183の配列と対応するように、ARC2169及びARC1985のループ領域に突然変異を生じさせ、結果として、それぞれARC2183及びARC2184を得た。これらの分子は、下記表23で見ることができるように、ARC183よりも強くはなかった。
上述のACTアッセイにおいて、アプタマー(0−10μM)の濃度範囲を用いて、上記実施例2Eに記載のPEG付加アプタマー及びその5’−アミン共役中間体のACT値も測定した。結果を下記表24で示す。
(実施例3C):活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)
負電荷を有する面を有する接触面(例えば、ガラス、シリカ、コラーゲン)は、「内因系」凝固経路を活性化する。aPTTは、負電荷を有する活性化因子を血漿に添加した時の凝固時間を評価し、第VIII、IX、XI、XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン及び共通系の経路成分に感受性がある。aPTT試薬は、活性化因子に加えてリン脂質(部分トロンボプラスチン)を含有しており、クエン酸血漿とともにプレインキュベートした後(活性化段階)、CaCl2を添加することにより、凝固が開始される。ヘパリン(抗トロンビンと複合して)は、内在の経路及び共通経路の両方でいくつかの因子を標的とするので、aPTTは、PTよりもヘパリンに対してかなり感度が高く(例えば、1U/mL ヘパリンでのaPTT時間は正常対照の>100%である;データは示さない。)、低用量での治療用ヘパリンを監視するために使用することができる。
凝固を開始させるために20mM CaCl2 100μLの添加前にPTT−LS試薬(Pacific Hemostasis、Fisher Diagnostics、Middletown、VA)100μLを用いて血漿/阻害剤混合物を3分間活性化したことを除き、基本的にPTアッセイに対して述べたようにして、Coag−a−mate装置(Biomerieux、Durham、NC)を用いて、ヒト血漿において、aPTTにおける、ARC183と比較した場合のARC2172(配列番号294)の効果を測定した。アプタマー非存在下で測定された、〜20秒の凝固時間は、臨床的に正常な範囲内(20−40秒)である。
図10で示されるように、ARC2172(配列番号294)に対するaPTTの感度がPTと比較して幾分低下し;それにもかかわらず、aPTTアッセイにおける凝固時間がARC2172(配列番号294)の抗−凝固活性により顕著に長くなった。さらに、ARC2172(配列番号294)が、ARC183よりもPTTアッセイにおいて顕著に強力であることが再び示された。
(実施例3D):停滞血液の凝固
ARC183と比較して、ARC2172(配列番号294)が、停滞血液における凝固を防ぐのに十分な時間にわたり抗凝固効果を維持する能力を次のように測定した。
ARC2172(配列番号294)又はARC183の等モル濃度(5μM)をヒト全血中で37℃にて1.5時間までインキュベートし、凝固カスケードの活性化に対する時間にわたり、試料を監視した。時間点を取ることができるように、重合化フィブリンの分解を促進し、試料の流動性を維持するために、組織プラスミノーゲン活性化因子(5kU/mL)を添加した。プロトロンビンタンパク質分解分画1.2のELISAにより各時間点でアッセイしたトロンビン生成を凝固カスケード活性化のマーカーとして使用した。簡潔に述べると、Enzygnost(R)TAT microELISA(Dade Behring;Deerfield、Illinois;カタログ番号OWMG15)の予めコーティングしたウェルに試料を直接添加した。続いて、製造者のプロトコールに従い、ELISAを行った。これらの条件下での抗凝固効力の指標を得るために、実施例3Bで既に述べたように、インキュベートの開始時にACTを測定し、各化合物に対してそれぞれ388及び266秒の凝固時間が観察された。
図11で示されるように、停滞血液において30分間、5μMのARC2172(配列番号294)が凝固カスケードの活性化を防いだ。この効果は、ARC183を上回る顕著な向上を表し、このために、同様の条件下で抗凝固剤効果の持続時間はわずか約10分であり、ACT値の延長を測定した場合のARC2172(配列番号294)の効力の向上とほぼ平行である。
(実施例4)
薬力学及び薬物動態実験
実施例4及び5において、全ての質量ベースの濃度アプタマーデータは、PEG共役により与えられる質量に関わらず、アプタマーのオリゴヌクレオチド部分の分子量のみ指す。
(実施例4A):抗トロンビンアプタマーのラットIVボーラス実験
所望のインビトロ特性を有するトロンビン結合アプタマー(上記実施例1及び2に記載の、ARC2949(配列番号434)、ARC2172(配列番号294)、ARC2324(配列番号436)、ARC2327(配列番号439)、ARC2338(配列番号438)、ARC2329(配列番号440)、ARC2840(配列番号423)、ARC2321(配列番号435)、ARC2323(配列番号437)、ARC2828(配列番号411))の10種類をその抗凝固薬力学特性について順位付けし、Sprague−DawleyラットにIVボーラスとして投与した後、ARC183と比較した。凍結乾燥アプタマーを通常の食塩水中に溶解させ、分光光度分析で測定した場合に適切な濃度が得られるまで通常の食塩水で投与溶液の濃度を調整し、得られた溶液を0.22μmフィルターに通してろ過滅菌し、滅菌試料バイアルに回収することによりアプタマー投与溶液を前もって調製し、次いで使用まで−20℃で凍結した。投与中、凍結融解したバイアルを湿った氷の上で維持し、投与に使用しない場合は使用バイアルを4℃で保存した。
ARC183を除く全てのアプタマーを1.5μmole/kg(300−700秒の範囲で最大ACTが得られる用量)で投与した。ARC183を6.35μmole/kgで投与した。大腿静脈及び頸静脈にカニューレを取り付けた意識のある雄ナイーブSprague−Dawleyラットに対して、留置した頸静脈カニューレを介してアプタマーを静脈内投与した。予め定めた時間点(投与前;投与後0.83、1.83、2.83、5、10、15、20、30、40、50及び60分;ベースラインACTに投与後60分までに到達しなかった場合は、投与後90及び120分のさらなる時間点も使用した。)で、血液の300μLの試料を大腿静脈カニューレから採取した。上記実施例3Bに記載のACTアッセイを用いて、リアルタイムでACTを測定した。
実験計画及び結果を図12でまとめる。それぞれ24、26又は32オリゴヌクレオチドからなる、ARC2169(配列番号283)の全ての非PEG付加型、ARC2949(配列番号434)、ARC2172(配列番号294)及びARC2321(配列番号435)、は、顕著により低い用量でARC183よりも強力であった(ARC183投与、mg/kgの38−48%及びmole/kgの24%)。サイズに基づいてこれらの3種類のアプタマーを比較した場合、最大ACTにより測定した場合、効力が向上する強い傾向が注目された。170秒のACTに対する時間により示されるような、アプタマー活性の延長とのサイズの上昇の相関も注目された。最大ACTにより示されるように、ARC2172(配列番号294)は、ARC2949(配列番号434)との比較において、効力が向上した。
ARC2840(配列番号423)、ARC2172(配列番号294)のような26マー(AUリッチな2’−OMeステムを弱めることで調製)が、新しいアプタマーの中で最も効力が弱いことが分かった。ARC2321(配列番号435)の30−マー型であるARC2828(配列番号411)(ATリッチな2’−OMeステムを弱めることで調製)が、ARC2321(配列番号435)と同等であることが分かった。試験した残りのアプタマーは、5’アミンリンカー±2−10K PEG基の何れかの付加がある、上記の、ARC2172(配列番号294)及びARC2321(配列番号435)の修飾型であった。これらの修飾型では、効力がある程度向上したが、薬力学効果の延長も促進された(図13参照)。
このように、試験したこの10種類のアプタマーは、サイズの上昇とPD効果の延長(ACTにより測定した場合)の間の相関があり、効力向上に対する傾向により補われる、様々な薬力学特性を示した。ARC2172(配列番号294)は、ARC183と比較して、より高い効力を示した。
(実施例4B):Sprague−Dawleyラットにおける静脈内ボーラス投与
図14で示される実験計画で述べられるような留置頸静脈カニューレを介してARC2172(配列番号294)及びARC183を静脈内(IV)投与した。IVボーラス注射に加えて、これらの化合物の腎排出を調べるために研究の一部として、これらのラットに対して擬似腎結紮を行った;擬似手術の説明及び腎結紮の効果に関するPK/PDの結果は下記実施例4Cで述べる。注入後2時間まで定められた時間点でACT測定のために、留置した大腿静脈カテーテルを介して血液を回収した。実施例3Bで既に述べたようにACT(+)キュベットを使用して、Hemochron(R)Jr Signature+装置を用いてACT値を測定した。
ARC2172(配列番号294)及びARC183の投与のACTにおける効果を図15で示し、関連するパラメータを図16でまとめる。ARC2172(配列番号294)のIVボーラスによる投与により、418の平均最大ACT値となった。ARC2172(配列番号294)の2.5倍mg/kg(4.2倍mole/kg)用量でのARC183の投与の結果、平均最大ACTは328秒と、より低かった。ARC183の排出速度は速く、200又は170秒ACTに対する平均時間はそれぞれ、2.7及び4.1分であった。ARC2172(配列番号294)は、それぞれ9.5及び12.2分という、200又は170秒のACTに対する平均時間を示した。結論として、擬似手術ラットでのボーラスIV投与後、ARC2172(配列番号294)はARC183よりも強力であることが分かった。
(実施例4C):腎結紮及び擬似手術Sprague−DawleyラットにおけるARC2172及びARC183
この実験の目的は、腎排出及び、腎結紮及び擬似手術の雄Sprague−DawleyラットでのARC2172(配列番号294)及びARC183の薬力学活性におけるその影響を測定し、比較することである。完全な腎結紮手術又は擬似手術の何れかを行った雄Sprague−DawleyラットにARC183及びARC2172(配列番号294)をIVボーラスにより投与した。この実験計画を図17で示す。
ACT測定及びARC2172(配列番号294)又はARC183の濃度分析のために、投与前及び指定した時間点で血液を採取した。実施例3Bに記載のようにACTを測定した。それぞれ0.05μg/mL及び0.16μg/mLの定量下限(LLOQ)で、HPLCアッセイによりARC2172(配列番号294)及びARC183の血漿濃度を調べた。WinNonlinTM、バージョン5.1(Pharsight Corporation、Mountainview、CA)を用いて、それぞれ、非コンパートメント及びEmaxモデル(E=E0+(Emax−E0)*(Cγ/(Cγ+EC50γ))により、個々の血漿濃度−時間プロファイルを用いてPK及びPK/PD分析を行った。腎結紮及び擬似手術ラットの、Cmax、AUClast及びMRTlastに対して、一元配置分散分析(ANOVA、α=0.05)統計解析を使用した。
腎結紮及び擬似手術群での、ARC2172(配列番号294)及びARC183に対する薬力学プロファイル(ACT)を図18及び図19でそれぞれ示す。擬似手術及び腎結紮ラットでのARC2172(配列番号294)により得られた平均最大ACTは、それぞれ422秒及び419秒であり、一方、ARC183に対して、平均最大ACTはそれぞれ、325秒及び363秒であった。ARC2172(配列番号294)の平均ACTは、その最大値から170秒に15分以内に下落し、一方、ARC183の場合、その平均ACTは、5から10分以内に170秒に低下した。ARC2172(配列番号294)及びARC183の全体的PDプロファイルは、擬似手術ラットと比較した場合、ラットにおける腎結紮により有意に影響を受けなかった(P>0.05、Mann−Whitney検定を使用。)。しかし、初期の時間点(ARC2172(配列番号294)及びARC183に対してそれぞれ、t=5−20及びt=0.83−5分)では、擬似手術ラットと比較した場合、ラットにおける腎結紮の影響は小さいが統計的に有意であった(P<0.05、Mann−Whitney検定を使用。)。
腎結紮及び擬似手術ラットの両方でのIV投与後、ARC2172(配列番号294)及びARC183の両方に対する血漿濃度−時間プロファイルは二相性であった。両化合物に対して腎結紮群では、擬似手術群と比較した場合、殆どの試料採取時間において、血漿濃度の上昇が見られた。ARC2172(配列番号294)及びARC183のCmax及びAUC0−lastの上昇は、P<0.05で統計的に有意であることが分かった。
まとめると、ARC2172(配列番号294)及びARC183の全体的PDプロファイルは、擬似手術ラットと比較した場合、ラットにおける腎結紮により有意な影響を受けなかった(P>0.05、Mann−Whitney検定を使用)。しかし、初期の時間点(ARC2172(配列番号294)及びARC183に対してそれぞれ、t=5−20及びt=0.83−5分)では、擬似手術ラットと比較した場合、ラットにおける腎結紮の影響は小さいが統計的に有意であった(P<0.05、Mann−Whitney検定を使用。)。擬似手術ラットと比較した場合、腎結紮ラットでの単回IVボーラス後、ARC2172(配列番号294)及びARC183の両方の全体的曝露において小さいが統計的に有意な影響があった。ARC2172(配列番号294)に対して、腎結紮ラットにおける平均Cmax及びAUC0−last値は、擬似手術ラットよりも〜1.5倍及び2倍大きかった。ARC183の場合、腎結紮ラットにおける平均Cmax及びAUC0−last値は、擬似手術ラットよりも〜2.4倍及び2.9倍大きかった。統計解析から、ARC183及びARC2172(配列番号294)の両方に対して、擬似手術ラットと比較した場合、腎結紮ラットのMRT0−lastに対して有意差は示されなかった。このデータから、腎機能障害の最も重症な型の腎結紮ラットモデルにおいて、ARC2172の薬力学的影響が少ないことが分かる。何らかの理論により束縛されることを望まないが、ARC2172がその薬力学的可逆性で変化が小さく(平均ACT値に戻る時間は200秒)、重症の腎機能障害を表すこのラットモデル(両側結紮)での薬物動態の変化が中程度であるので、腎排出は、ARC2172に対するクリアランスの主な機構ではないと思われる。さらに、総合すれば、何らかの理論により束縛されることを望まないが、これらのデータから、腎機能障害のある患者においてARC2172(配列番号294)に対して用量調整の必要がないことが示唆される。
(実施例4D):(実施例4F):抗トロンビンアプタマーを順位付けするためのサルIVボーラス実験
実施例4Aに記載のラット実験で比較したトロンビン結合アプタマーの4種類(ARC2172(配列番号294)、ARC2949(配列番号434)、ARC2169(配列番号283)及びARC2840(配列番号423))をサルでのIVボーラス実験で評価した。(ARC2169(配列番号283)は、5’アミンのない30オリゴヌクレオチドARC2321(配列番号435)バージョンである。凍結乾燥アプタマー又はペプチドを通常の食塩水中に溶解させ、分光光度分析で測定した場合に適切な濃度が得られるまで通常の食塩水で投与溶液の濃度を調整し、得られた溶液を0.22μmフィルターに通してろ過滅菌して滅菌試料バイアルに回収することにより、アプタマー投与溶液を調製し、次いで使用まで−20℃で凍結した。投与中、凍結融解したバイアルを湿った氷の上で維持し、投与に使用しない場合は使用バイアルを4℃で保存した。
カニクイザルでの次のIVボーラス実験において、0.46μmole/kgで全アプタマーを投与した。麻酔したカニクイザルの橈側皮静脈にIVカテーテルを留置し、ボーラスを介してアプタマーを投与するために使用した。流動性を維持しカテーテルを開通させるために約5−10mL/kg/hrの速度でこの橈側皮静脈カテーテルを介して乳酸加リンガー溶液を与えた。ボーラス注射後1時間の間、定められた時間点で既に述べたようにして血管アクセスポートから血液を採取した(総体積=〜3mL)。全アプタマーに対して、時間点は、投与前及び投与後0.83、1.83、2.83、5、10、15、20、30、45、60分であり;ARC2169(配列番号283)の場合は、投与後さらに90及び120分の時間点も使用した。実施例3Bで既に述べたようにACT+(ITC Med、Edison NJ)カートリッジを用いてHemochron Jr Signature+装置(ITC Med、Edison NJ)によりリアルタイムで活性化ACTを測定した。
図20及び図21でこの結果をまとめる。サルにおいてmole/kg用量(ラットで使用したものの31%であった。)を用いて得られた最大ACTから分かるように、全てのアプタマーが、ラットでのIVボーラスモデルにおいてそれらを用いて得られた結果(実施例4A)と比較して、サルでは効力が上昇していた。AUリッチな2’−OMeステムを有する26−マーであるARC2840(配列番号423)は、最大ACTがわずか223.3秒であり、170秒ACTに対する時間が2.2分であり、効力が最低であった。ARC2949(配列番号434)では、最大ACTが402.7秒、170秒のACTに対する時間が14.9分となった。ARC2172(配列番号294)及びARC2169(配列番号283)は、最大ACT(それぞれ526.8及び541.7秒)が非常に近かったが、ARC2169(配列番号283)の場合の170秒のACTに対する時間は、ARC2172(配列番号294)の場合のほぼ2倍であった(24.9分に対して54.6分)。
(実施例4E):カニクイザルにおける、ARC2172及びARC183の静脈内ボーラス+点滴投与
カニクイザルにおいて、次の単回IVボーラス+連続1時間IV点滴実験において、ARC2172(配列番号294)及びARC183を評価した。図22での実験計画により示されるように、IVボーラスを行い、その直後に1時間の連続点滴を開始して、ARC2172(配列番号294)又はARC183をカニクイザルに投与した。
上述のように血管アクセスポートから血液を採取し、実施例3Bで既に述べたようにACT+(ITC Med、Edison NJ)カートリッジを用いてHemochron Jr Signature+装置(ITC Med、Edison NJ)によりACT値を測定した。
ARC2172(配列番号294)又はARC183のIVボーラス+1時間点滴投与後のACTにより測定した場合の効果を図23で示し、関連パラメータについて図24でまとめる。5μMの血漿濃度を目標とする、IVボーラス+1時間点滴によるARC2172(配列番号294)の投与により、平均最大ACTが397秒となり、200又は170秒のACTに対する平均時間は、それぞれ22.2及び26.5分となった。7.5μMの目標血漿濃度に到達させるために、ARC2172(配列番号294)の用量を増加させることにより、平均の最大ACTが414秒に延び、一方、200又は170秒のACTに対する平均時間が、それぞれ13.9及び18.0分となった(この2種類のARC2172(配列番号294)投与計画の間のこれらの後の時間の相違は実験誤差内である。)。15μMの血漿濃度にするためにIVボーラス+1時間点滴として投与した場合、ARC183は、結果として平均最大ACTが343秒となり、200又は170秒のACTに対する平均時間がそれぞれ4.9及び7.3分となった。このように、ARC2172(配列番号294)の低用量計画で観察される結果とARC183を用いた結果との比較において(この場合、投与される総用量は、ARC183を用いて投与されるmg/kg用量の7%であった。)、ARC2172(配列番号294)を用いた治療により、点滴中、約400秒の安定したACTを得ることができた。排出速度は、ARC183と比較して、ARC2172(配列番号294)では約4倍遅かった。
(実施例4F):薬力学的薬物相互作用
血小板凝集におけるARC2172の影響
フィブリン生成だけではなく、血小板を活性化することにより、トロンビンはさらに、血栓形成を刺激する。インビトロで、トロンビン、コラーゲン及びADPを含む様々なアゴニストにより血小板が活性化される。活性化されると、血小板は形態、受容体発現及び因子放出において顕著に変化する。これらの変化は、ある一定の条件下で、血小板の凝集を誘導し、この凝集は、その他の細胞の存在に依存しない。全血の低速遠心により、多血小板血漿(PRP)が得られる。PRPに血小板アゴニストを添加することにより、血小板活性化及び凝集を誘導することができる。血小板凝集及び溶液の脱落につれて通常は混濁したPRPが透明になる際の光吸収の程度により、PRPでの血小板凝集を監視することができる。この実験の目的は、ヒトPRPでの血小板凝集におけるARC2172(配列番号294)の効果を評価することであった。
様々な濃度でのARC2172(配列番号294)の存在下及び非存在下で、α−トロンビン(0.25ユニット/mL)又はADP(10μM)とPRPを混合した。光学的血小板凝集計を用いて血小板凝集を評価した。ARC2172(配列番号294)は、トロンビンにより誘導される血小板凝集(すなわち、受容体GPIIb/IIIaの活性化)を阻害したが、ADPによる凝集は阻害しなかった(図25)。これらのデータから、ARC2172(配列番号294)が、高親和性でトロンビンに結合するトロンビンアンタゴニストであることが示される。
アスピリン及びインテグリンの活性におけるARC2172のインビトロでの効果
インビトロにおいて、トロンビン、コラーゲン及びADPを含む様々なアゴニストにより血小板が活性化されるか、又はアスピリンもしくは血小板IIb/IIa阻害剤などのアンタゴニストにより阻害される。この研究の目的は、ヒトPRPでの血小板凝集における、アスピリン又はジスルフィド結合ヘプタペプチドGPIIb/IIa阻害剤、インテグリンの活性に対するARC2172(配列番号294)の効果を評価することであった。
アスピリン(6mg/L)の存在下及び非存在下で、及び様々な濃度のARC2172(配列番号294)の存在下及び非存在下で、インテグリン(1μM)とともに、PRPを室温にて20分間、プレインキュベートした。血小板混合物を予め37℃へと3分間加熱し、その後、光学的血小板凝集計を用いて、ADP(3μM)による血小板凝集を評価した。ヒトPRPにおいてアスピリンによりADP−誘発性血小板凝集が低下したが、一方で、アスピリン添加及び非添加で、ヒトPRPにおけるADP−誘発性血小板凝集がインテグリンにより完全にブロックされた。ARC2172(配列番号294)は、アスピリン又はインテグリンの何れの活性も、低下させるか又は阻害しなかった(図26)。
(実施例5)
機能的動物実験
(実施例5A):開放式非へパリン結合バイパス回路におけるARC2172
開放式非へパリン結合バイパス回路を用いて、ブタ心肺バイパスモデルにおいてARC2172(配列番号294)を評価した。バイパスの開始前に400秒の目標ACTを達成するために、ボーラス又はボーラス+点滴により、食塩水(n=2)、ヘパリン(n=5)及びARC2172(配列番号294)(n=5、動物38及び39は統計解析に含めなかった。)で動物を処置した。動物の第3群(n=2)には、抗凝固剤処置を行わず、心停止及び大動脈遮断を行わなかった。この実験計画を図27で示す。
202mmol/gのローディングで、Primer Support200において、ARC2172(配列番号294)を合成した。標準合成サイクルでは、アミダイト1.8当量及び酸化剤3当量を使用した。アセトニトリル中の20%ジメチルアミンを用いて合成後塩基洗浄を行い、アンモニアを用いて一晩脱保護した後、分取SAX−HPLCを行った。その後アプタマーを凍結乾燥し、次いで20.0mg/mLの濃度で滅菌食塩水中で再懸濁した。この実験において、ブタ膵臓から調製されたヘパリンナトリウムを使用した。
ブタバイパスモデル
図27で示されるように、雄及び雌ブタを無作為に様々な処置群に分けた。動物38及び39は統計解析に含めなかった。
手術前に、アトロピンSO4/テラゾール(R)/キシラジン(それぞれ、筋肉内(IM)で0.04mg/kg/4から6mg/kg/2mg/kg)で動物に予め麻酔をかけた。次に、動物に挿管し、体積制御された人工呼吸装置を通じて送達するために、イソフラン吸入麻酔を維持した。
麻酔開始後、血圧を監視し、血液試料を採取するために、それぞれ大腿動脈及び静脈にカニューレを挿入た。食塩水をゆっくりと滴下するか、又はARC2172(配列番号294)の点滴を介して、の何れかで、大腿静脈カニューレの開通性を維持した。
胸骨の全長にわたり、皮膚の切開を行った。次に胸骨を切開し、胸腔を開いた。Bovi電気焼灼器プローブを用いて止血した。心膜を開き、心臓に到達できるようにした。周囲組織から大動脈を切り離し、5.0ポリエステル糸を用いて心臓から4cm離れた上行大動脈において巾着縫合を行った。同様に、5.0ポリエステル糸を用いて右心耳において巾着縫合を行った。縫合後、ヘパリン又はARC2172(配列番号294)の何れかで動物を処置した。ACT Plusシステム(Medtronic、Minneapolis MN)により測定した場合にACTが400以上になり、実施例3bで述べたようにACT+テストキュベット(ITC Med、Edison NJ)を用いてHemochron Junior Signature+マイクロ凝固装置(ITC Med、Edison NJ)において約1000となるように、ヘパリン(40,000から60,000ユニット)を複数回のIVボーラスとして投与した。ヘパリン用量を調整し、ACTが適切な範囲となるのに、通常、10から20分要した。実施例3bに記載のようにACT+テストキュベット(ITC Med、Edison NJ)を用いてHemochron Junior Signature+マイクロ凝固装置(ITC Med、Edison NJ)において約400秒のACTとなるように、ボーラス+連続静脈内点滴により(0.139)、ARC2172(配列番号294)を投与した(図27参照)。薬物を投与し、ACTが適切な範囲となるのに、通常、10から20分要した。
抗凝固剤の適切な用量の投与後、動脈及び静脈カニューレを留置した。連結前に泡を排除するために、大動脈カニューレ及び動脈ラインの両方が食塩水で満たされるように注意して、人工心肺装置の、予め使用できる状態にしておいた動脈ラインに大動脈カニューレを迅速に取り付けた。動脈ラインをすぐに締め付けた。同様の技術を用いて、右心耳において静脈カニューレ(29/37 2段階静脈カニューレ、Medtronic、Minneapolis、MN)を留置し、締め、次いで、人工心肺装置の静脈ラインにこのカニューレを装着した。全体のバイパス回路は、非ヘパリン結合コンポーネント(アフィニティーCVR心臓切開術/静脈リザーバー及び血漿耐性繊維の膜型人工肺、Medtronic、Minneapolis、MN)で構成されていた。続いて、動物を3時間心肺バイパスに置いた。人工心肺装置の動脈及び静脈ラインには、血栓塞栓の存在について監視するために動物と装置との間の通路にドップラー超音波プローブを装着した。この手順の間、直接血圧を監視し、a)バイパス血流速度を調整することにより、b)静脈内輸液の投与により、及びc)静脈内注入を介した、ネオシネフィリン、ドーパミン、エピネフィリン及びカルシウムを含む様々な薬物の投与により、バイパス中、血圧を維持した。イソフルラン吸入器の流速を調整し、場合によっては必要に応じてIVペントバルビタールボーラスを投与することにより、麻酔の手術水準に動物を維持した。
3時間のバイパス完了後、動物からバイパスを取り去り、血圧が安定したらカニューレを除去し、次いで、プロタミンで処置するか(ヘパリン処置群)又はアプタマー点滴を停止するか(ARC2172処置群)の何れかにより、抗凝固剤活性を停止させた。薬物点滴の停止後さらに1時間、動物を維持した。I.V.ネオシネフリン及び/又はI.V.輸液投与の組み合わせを用いて、バイパス後、血圧を維持した。CPB実験プロトコールの概略を図28で示す。
肉眼で見える血栓又はフィブリン蓄積の所見に対する、ACTアッセイ及び心肺バイパス回路の試験:
予定した試料回収の時間点で、新鮮な全血の試料を得て、実施例3Bで述べたように、ACT+テストキュベット(ITC Med、Edison NJ)を用いたHemochron Junior Signature+マイクロ凝固装置(ITC Med、Edison NJ)及びACT Plusシステム(Medtronic、Minneapolis、MN)の両方を使用して、すぐに測定した。各実験終了後、心肺バイパス回路に食塩水をフラッシュし、肉眼で見える血栓形成の所見について、リザーバー、膜型人工肺及び動脈フィルターを調べ、写真撮影した。
対照動物ACT値は、この手法中、比較的一定のままであったが、バイパス後、上昇した(図29)。バイパス開始15分以内にバイパス回路において、大きな肉眼で見える血栓が見られ、バイパス3時間後、バイパス回路を介した流れがほぼ停止する程に大きくなった。
ヘパリン投与後、この処置群の動物のACT値は非常に高くなり、通常、上限を超えていた(1000秒以上)(図30参照)。この上昇レベルにACTを維持するために、動物に繰り返しボーラス投与を行った。この実験終了時にプロタミンを投与することにより、ACT値がベースラインに戻った。バイパス回路において、肉眼で見える血栓はなかった。
ボーラス+点滴によりARC2172(配列番号294)で処置した動物において、バイパス中、ACTは比較的狭い範囲内に維持され、ARC2172(配列番号294)投与を停止してから20分以内にACTがベースラインに戻った(図31)。バイパス回路において、肉眼で見える血栓は見られなかった。使用した各抗凝固剤との、バイパス中のACT値の比較を図32で示す。
全血ACTとT/ATIII複合体形成との間の相関:
バイパス中、凝固カスケード活性化の間接的測定としてトロンビン/抗トロンビンIII(TAT)複合体の存在を監視するために、クエン酸血漿の試料を回収した。簡潔に述べると、Enzygnost(R)TATマイクロELISA(Dade Behring;Deerfield、Illinois;カタログ番号OWMG15)の予め被覆したウェルに、希釈していない血漿試料を直接添加した。続いて、製造者のプロトコールに従い、ELISAを行った。洗浄段階は全て、自動プレート洗浄装置(Bio−Tek;Winooski、Vermont;カタログ番号ELx405Magna MVR)を用いて行った。Versamax Tunableマイクロプレートリーダー(Molecular Devices;Sunnyvale、California)を用いて、吸収値を検出した。全ての動物において、ベースラインにおいて10ng/mL未満で、血漿TAT複合体の濃度を測定した。抗凝固剤で処置しなかった対照動物において、バイパスに置いてから数分以内に、血漿中でTAT複合体が蓄積し始め、バイパス停止直前に、150±87ng/mLの最大値になった。血漿TAT複合体の濃度は、バイパス後観察期間中、これらの動物において低下したが、ベースラインには戻らなかった(図33参照)。一方、ヘパリン処置群では、比較的低い血漿TAT複合体濃度(<50ng/mL)により示されるように、バイパス中に凝固カスケードの活性化が抑制された(図34参照)。ヘパリンは、トロンビンの活性を阻害することに加え、内在の凝固カスケードにおいて上位の複数の凝固因子の活性を阻害した。
ARC2172(配列番号294)は、バイパス回路中の肉眼で見える血栓の形成を防いだが、バイパス開始後の血漿TAT複合体濃度の急速な上昇により示されるように、凝固カスケードの活性化を阻害しなかった(図35参照)。しかし、TAT複合体濃度は、対照動物で見られるほど高くはなかった。何らかの理論に縛られることを望まないが、この結果から、ARC2172(配列番号294)は、トロンビンを低下させるだけであり、内在の凝固カスケードにおいて上位のその他の活性化された凝固因子の活性を低下させないものと予想される。
要約すると、開放式非へパリン結合バイパス回路を用いて、ブタ心肺バイパスモデルにおいてARC2172(配列番号294)を評価した。バイパス開始前に目標ACTが400秒(Hemochron Jr.装置により測定した場合)となるように、ボーラス又はボーラス+点滴により、食塩水(n=2)、ヘパリン(n=5)及びARC2172(配列番号294)(n=5)で動物を処置した。これらの各群に対するバイパス中の平均ACT値は、123±39秒(対照)、950±158秒(ヘパリン)及び433±61秒(ARC2172(配列番号294))であった。ヘパリン及びARC2172(配列番号294)は、バイパス中の肉眼で見える血栓形成を減少させた。さらに、バイパス中に、ヘパリンのみがTAT複合体の蓄積を阻害した。何らかの理論に縛られることを望まないが、これにより、他の処置が内在の凝固カスケードの活性化を阻害しなかったことが示されると考えられる。
書面による明細書及び実施例によりここで本発明を説明してきたが、当業者は、様々な実施形態において本発明を実施することができること及び上記の明細書及び実施例が説明を目的とするものであり、次の特許請求の範囲を限定するものでないことを認識するであろう。