JP2009298731A - 酸化傷害を抑制する金属ポルフィリン錯体、及びそれを用いた医薬組成物 - Google Patents

酸化傷害を抑制する金属ポルフィリン錯体、及びそれを用いた医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】ミトコンドリアに選択的に抗酸化剤を送達することにより、標的が明確でない抗酸化剤を使用するよりもより効果的でミトコンドリアを標的にできる抗酸化剤の提供。
【解決手段】一般式(1)

(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arのうちの1個又は2個がN,N’−ジ置換イミダゾール基からなるカチオン性の親水性の基を示し、残りの3個又は2個は置換基を有してもよいフェニル基からなる親油性の基を示す)で表される親水性の基と親油性の基とを有する両親媒性金属ポルフィリン錯体、より詳細にはオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlogPowの値が−2以上である両親媒性金属ポルフィリン錯体、及びこれを含有してなる医薬組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、オクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上であり、親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体、及びそれを用いた医薬組成物に関する。
ヒトの重要な高次機能を司る脳は、全身の酸素消費量の約20%を消費しており、酸素消費量の最も多い組織である。脳においても他の組織と同様に酸素消費に伴う活性酸素が発生している。活性酸素の約90%は細胞内のミトコンドリアで発生しており、ミトコンドリアでのエネルギー代謝に伴う酸素消費量の約2〜4%が活性酸素となっているとされている。一方、脳の細胞は、細胞膜成分として多量の多価不飽和脂防酸を含有しており、また脳内にはカテコールアミンなどの酸化に弱い脳内物質が多数存在しており、活性酸素などのフリーラジカルに脆弱であるとされている。このために、脳における活性酸素は主に細胞障害をもたらす因子とされ、パーキンソン病、アルツハイマー症、遅発性ジスキネジア、セロイドリポフステン蓄積症、ダウン症候群などをはじめ、脳卒中や脳梗塞、運動神経疾患などの多くの神経疾患が、活性酸素による細胞障害に関連しているとされてきている。
このように脳の細胞は活性酸素に脆弱であるとされているにもかかわらず、脳の細胞は酸素消費が著しく高く、多量の活性酸素の発生にさらされている。しかし、脳には発生した活性酸素を除去する制御機能が備わっており、脳の細胞が活性酸素による障害を受けないようになっている。例えば、活性酸素の1種であるスーパーオキシド(O ・)は、スーパーオキシドジスミターゼ(SOD)を多量に含有している脳ホモジネートの添加により、用量依存的に消去されることが報告されている。このように脳内では、脳内の抗酸化機構により速やかに消去され、活性酸素による脳細胞の細胞障害を防御している。しかし、脳内の活性酸素と抗酸化機構とのバランスがひとたび崩壊すれば、脳の細胞は重篤な酸化ストレスにさらされることになり、重篤な中枢神経疾患が発症することになる。
例えば、一過性の脳虚血が発生した場合には、虚血に伴うエネルギー代謝障害による脳細胞の壊死が起こるだけでなく、虚血再灌流後においても虚血に伴う酸化ストレスにより神経細胞が死滅する遅発性神経細胞死(DND)が発生する。これは、虚血部位での活性酸素と抗酸化機構とのバランスが虚血により崩壊し、虚血再灌流後に重篤な酸化ストレスにさらされることになった脳の細胞が、活性酸素による細胞障害に耐えきれず、神経細胞障害を起こすためであると考えられている。
また、一酸化窒素(NO)は、L−アルギニンからNO合成酵素(NOS)により生成される半減期の極めて短いフリーラジカルである。脳の神経細胞には、神経細胞に特有のNOSがあり、グルタミン酸レセプターの興奮によりNOSが活性化され、大量の一酸化窒素(NO)が発生する。脳内における一酸化窒素(NO)は、細胞保護作用や神経情報伝達の補助作用を有しているが、反面、神経細胞障害作用も有している。一酸化窒素(NO)による神経細胞障害は、一酸化窒素(NO)が活性酸素の1種であるスーパーオキシド(O ・)と反応して、パーオキシナイトライト(ONOO)を生成し、これがヒドロキシラジカル(HO・)を発生させ、これらが細胞膜成分の不飽和脂防酸に作用して脂質過酸化反応により神経細胞死を誘導すると考えられている。
このように脳の細胞は活性酸素に脆弱であるにもかかわらず、脳の細胞は大量の酸素を消費し、多量の活性酸素を発生しているのであるが、脳内の抗酸化機構により活性酸素による細胞障害を防御している。しかし、虚血などにより、ひとたび脳内の抗酸化機構が障害を受けると、虚血後に再灌流が始まったとしても、脳内の活性酸素と抗酸化機構とのバランスが崩れ、重篤な神経細胞障害が発生する。従って、脳内の活性酸素などのフリーラジカルを標的とした抗酸化剤は、脳酸化障害を抑制する有効な治療法になると考えられている。
一方、ミトコンドリアは、生体内酸素の90%以上を消費して生命活動に必要なエネルギーであるATPを供給し、エネルギー代謝にとって重要な細胞内器官である。したがってミトコンドリアに欠陥が生じると、特に、エネルギーを大量に必要とする神経組織や筋肉組織にダメージがもたらされる。また、ミトコンドリアは、その一方で、消費酸素の数%を活性酸素種(ROS)として産生し、過剰に産生したミトコンドリアROSがアポートシスや組織障害に関係しており、パーキンソン病、糖尿病合併症などの様々な疾病を誘導していることが報告されている。
ミトコンドリアの欠陥は、エネルギー源との機能を失うだけでなく、ほとんどの細胞の内部で酸化ストレスを引き起こすフリーラジカルと反応性酸素種を大量に放出することにもなる。
従来、活性酸素種(ROS)による酸化ストレスからのダメージを避けるため、数多くの抗酸化療法が開発されている。しかしそのほとんどは細胞内を標的としていないため、非常に有効であるとは言えない。しかもそのような抗酸化剤の多くは好ましくない物理化学的特性を持っているため、例えば生物学的利用能が制限されたり、標的となる臓器に侵入して治療効果をもたらす能力が制限されたりする。これは、開発されてきた抗酸化剤の多くが、細胞内を標的としていないために非常に有効であるとは言えないからである。しかもそのような抗酸化剤の多くは好ましくない物理化学的特性を持っているため、例えば生物学的利用能が制限されたり、標的となる臓器に侵入して治療効果をもたらす能力が制限されていた。
生体への応用においては、細胞は脂質二重膜などの疎水性を有していることから、親水性の物質は細胞内への取り込みが困難であり、その効果を細胞内で発揮するためには疎水性を有していなければならないことになる。
そして、細胞内に存在するミトコンドリアは、その内膜を横切って180mVまでの膜の内側が負となっている実質的な膜電位を有する。この電位により、膜透過性の親油性カチオンは、ミトコンドリアマトリックス内に数百倍も蓄積することが報告されている(非特許文献1及び2参照)。そのようなイオンは、正の電荷を選別するか、または正の電荷を広い表面積にわたって非局在化させるのに十分に親油性である場合、さらには、有効な流出経路が存在せず、カチオンが代謝されないか直ちに細胞にとって有害になる場合に蓄積するとされている。
ミトコンドリアの膜への蓄積については、正電荷と負電荷との電荷の関係により説明されているが、ミトコンドリアの膜の通過に関しては、エンドサイトーシスによらないことが報告されている(非特許文献3参照)。一般に、細胞膜を通過して細胞内に侵入する方法として、エンドサイトーシスが知られているが、ミトコンドリアの膜はエンドサイトーシスによらず、オクタノール−水系における分配係数(log Powパラメーター)によることが報告されている(非特許文献3及び4参照)。
このようなことから、ミトキノールとミトキノンというキノン系化合物の抗酸化部分に、親油性カチオンを共有結合させた化合物が、ミトコンドリアに向かうであろうし、そしてそこで抗酸化作用を発現させるであろうことが報告されてきた(特許文献1参照)。
一方、ポルフィリンは、4個のピロール核が4個のメチレン基で結合した環状テトラピロール構造(ポルフィン)の誘導体であり、多くの金属元素と金属錯体を形成する。鉄ポルフィリンはヘムと称されて、ヘモグロビンなどの構成要素となっている。ポリフィリンは光増感作用を有し、光記録装置や光による造影装置などにも応用されている。
ポルフィリン環には26個のπ電子が含まれる。二重結合が共役した多くの共鳴構造のうち、寄与の大きいものは18員環の18π電子系である。これは、ヒュッケル則の4n+2を満足し、この共役π電子系は強い芳香族性を備えている。X線構造解析から決められた各C−C間の結合距離は、約0.135nmで、二重結合と単結合の間にあること、またポルフィリン面がほぼ平面であることも、裏付けである。
ポルフィリン骨格の共役平面構造は環周囲の置換基によらず保たれている。また、中央に1個の金属イオンが位置している金属ポルフィリンでは、共鳴構造の対称性はポルフィリン環全体にわたる。金属イオンの径がポルフィリンの空孔に合致しているか、上下の第5、6座への結合の有無によって、ポルフィリン環の平面構造は影響を受ける。ヘモグロビンのアロステリック作用と関連して問題となる例としては、5配位構造のヘム(がある。鉄イオンは平面中心から0.08nm浮き上がっていて、ポルフィリンもたわんでいる。
ポルフィリンは一種の電子プールとして働き、生体内の電子授受や重要なメディエーターとなるばかりでなく、電磁、光電子機能物質としても興味がもたれている。
ノニオン性金属ポルフィリン錯体では水溶性を得ることが難しく、これまでに開発されてきたイオン性金属ポルフィリン錯体は、そのほとんどが非常に高い親水性を示していた。金属ポルフィリン錯体において、水溶性を示しながら、高い新油性をも兼ね備えることは、生体への応用などにおいて非常に有効であると考えられる。
本発明者らは、既に、金属ポルフィリン錯体がSOD活性と、パーオキシナイトライト(ONOO)消去活性を有し、優れた抗酸化剤になりうることを報告してきた(特許文献2及び3参照)。また、これらをカタラーゼと複合体にしたもの(特許文献4参照)、これをリポソームに包埋したもの(特許文献5参照)、ヘモグロビンをPEGで修飾したもの(特許文献6参照)なども報告してきた。さらに、ポルフィリンに4個のピリジン骨格が結合した誘導体(特許文献7参照)、4個のイミダゾール骨格やベンゼン骨格が結合した誘導体(特許文献8及び9参照)が抗酸化作用を有していることも報告されている。
従来の抗酸化剤も生体内で優れた抗酸化活性を示すが、生体内の標的コンパートメントに対する抗酸化機能は少ない抗酸化化合物として、補酵素Q(CoQ)やイデベノンなどがある。この2つの化合物はどちらも生物学的利用能が小さいため、効果をもたらすには非常に多くの量を投与する必要がある。そのため投与量の割には治療効果が小さい。また、多くの抗酸化剤は自身が選択的にROSを消去するのではなく、酸化力の大きい無差別的なヒドロキシラジカルやペルオキシナイトライトの生体組織への攻撃の身代わりとなることで、ROS障害からの保護効果を得ていたに過ぎない。
これに対して、Mnポルフィリン錯体のような酵素模倣物質は酸化力は弱いが全てのROSに派生するスーパーオキシドラジカルを選択的に消去することができることから、新規抗酸化剤として、有効であることが期待されている。
米国特許第6,331,532号明細書 特開2000−247978号公報 特願2007−95381号明細書 特開2007−75058号公報 特開2005−41869号公報 特開2005−27512号公報 特表2006−501163号公報 特表2004−520380号公報 特表平11−509180号公報 Rottenberg, et al., Methods in Enzymology, 55, 547-560 (1979). Chen, et al., Ann. Rev. Cell Biol., 4, 155-181 (1988). Horobin, et al., J. Controlled Release, 121 (2007), 125-136. Asin-Cayuela, et al., FEBS Lett., 571 (2004), 9-16.
本発明は、ミトコンドリアに選択的に抗酸化剤を送達することにより、標的が明確でない抗酸化剤を使用するよりもより効果的な新規な抗酸化剤として、ミトコンドリアを標的にできる抗酸化剤を提供することを目的とする。細胞内に侵入し、ミトコンドリアに集積するだけでなく、ミトコンドリアの膜を通過してミトコンドリアの内部に侵入することができれば、より効果的な抗酸化剤として機能させることが可能となるからである。
本発明は、抗酸化作用を有し、且つミトコンドリアが特別な親油性カチオンを濃縮する能力を利用することにより、そのカチオンと結合した抗酸化剤をミトコンドリアが取り込み、酸化ストレスを引き起こすフリーラジカルと反応性酸素種の主な供給源であるミトコンドリアに送達することができる新規な金属ポルフィリン錯体、及びそれを用いた医薬組成物を提供する。
本発明者らは、ある抗酸化化合物がミトコンドリアを標的とした抗酸化化合物として役立つには、その抗酸化化合物が試験管内又は生体外で適切な抗酸化活性を示さねばならないのは事実であるが、さらに生体内で効果を持つためには、ミトコンドリアを標的としたその抗酸化化合物は、他の望ましい物理化学的特性(例えば、適度な生物学的利用能、及び/又は標的とするミトコンドリア内での適度な局在または分布、及び/又は適度な安定性)を示さねばならない。
本発明者らは、ポルフィリン骨格に1個又は2個のカチオン性のイミダゾール基を有し、2個又は3個の置換基を有してもよいフェニル基を有する化合物が、抗酸化活性はピリジニウム体に比べて弱いが、優れたオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値を有しており、ミトコンドリア集積性のみならず、ミトコンドリアの膜を透過することができ、ミトコンドリアの内部に侵入可能であることを見出した。
ミトコンドリアを標的とした本発明の抗酸化化合物が、望ましい抗酸化機能(例えば、生物学的利用能及び/又はミトコンドリアを標的とすること)を示すだけでなく、その物理化学的特性(例えば、両親媒性、並びに/又は物理的構造及び/若しくは大きさ)が少なくとも理由の1つとなって、生体内に蓄積し、そして疎水性及び/又は分配係数をあまり変化させることなく生体内に存在できると考えている。したがって、このような化合物は、他の抗酸化化合物と比べて低用量で治療に有効となる。
即ち、本発明は、次の一般式(1)
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arのうちの1個又は2個がN,N’−ジ置換イミダゾール基からなるカチオン性の親水性の基を示し、残りの3個又は2個は置換基を有してもよいフェニル基からなる親油性の基を示す。)
で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体、より詳細にはオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上である親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体に関する。
さらに詳細には、本発明は、次の一般式(2)、(3)、又は(4)
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体、より詳細にはオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上である親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体に関する。
また、本発明は、前記一般式(1)で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体、より詳細には、前記一般式(2)、(3)、又は(4)で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体の少なくとも1種、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物に関する。
本発明をより詳細に説明すれば以下のとおりとなる。
(1)前記一般式(1)で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(2)前記一般式(2)、(3)、又は(4)で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(3)前記一般式(1)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体が、次の一般式(4)、
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される金属ポルフィリン錯体である前記(1)又は(2)に記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(4)前記一般式(1)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体が、次の一般式(2)、
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される金属ポルフィリン錯体である前記(1)又は(2)に記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(5)前記一般式(2)〜(4)におけるRが、メチル基であり、Rが水素原子である前記(2)〜(4)のいずれかに記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(6)オクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(7)前記一般式(1)〜(4)におけるMが、鉄原子、銅原子又はマンガン原子である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体の少なくとも1種、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物。
(9)医薬組成物が、酸化障害による疾患の予防又は治療用である前記(8)に記載の医薬組成物。
(10)酸化傷害が、脳の細胞における酸化傷害である前記(9)に記載の医薬組成物。
(11)酸化障害が、スーパーオキシド(O ・)及び/又はパーオキシナイトライト(ONOO)に起因するものである前記(9)又は(10)に記載の医薬組成物。
(12)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体のオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が、−2以上である前記(7)〜(11)のいずれかに記載の医薬組成物。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、SOD活性、ONOO消去活性を有するだけでなく、同時に脂質に対する親和性を有し細胞内に容易に取り込まれ、さらにカチオン性でミトコンドリアに集積され、そしてオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上であることからミトコンドリアの内部にも取り込まれ、小用量で顕著な抗酸化作用を有する細胞において従来の金属ポルフィリン錯体に比べて予想外に顕著なSOD活性、及びONOO消去活性を示す。また、脂質に対する親和性が大きいことから、脳の細胞に多量に存在する細胞膜成分の不飽和脂防酸に対する脂質過酸化反応を顕著に抑制して脳の細胞の細胞死を防止することができ、また、一過性の脳虚血における酸化ストレス(低酸素傷害)などに対して極めて有効な保護作用を有するものである。
このように、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、ミトコンドリアでのROS(reactive oxygen species:活性酸素種)を効果的に消去しうるものであり、特に脳内ROSを効果的に消去しうる脳酸化障害抑制能を有しており、これを有効成分として含有してなる本発明の医薬組成物は、各種の酸化傷害、特に脳の細胞の酸化障害による疾患の予防又は治療に有効である。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、ポルフィン骨格に4個の芳香族基を有するものであり、かつ、4個の芳香族基のうちの1個又は2個がN,N’−ジ置換イミダゾール基からなるカチオン性の親水性の基であり、残りの2個又は3個は置換基を有してもよいフェニル基からなる親油性の基であることを特徴とするものである。
より詳細には、前記した一般式(2)、(3)、又は(4)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体が挙げられる。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体のフェニル基は、抗酸化作用や細胞、特に脳の細胞に対する親和性に悪影響を与えない置換基を有していてもよい。フェニル基における置換基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10、1〜5の直鎖又は分枝状の低級アルキル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、前記した低級アルキル基で置換されているアミノ基、前記した低級アルキル基からなる低級アルコキシ基などが挙げられる。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体におけるN,N’−ジ置換イミダゾール基における置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)などが挙げられる。これらの置換基は全てが同じであっても異なっていてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基などの炭素数1〜20、好ましくは1〜15、1〜11の直鎖又は分枝状の低級アルキル基が挙げらる。また、基−(R−O)n−CHにおけるRとしては、エチレン基、プロピレン基などの炭素数2〜5、好ましくは2〜3の直鎖又は分枝状の低級アルキレン基が挙げられる。繰り返し数のnとしては1〜10、好ましくは1〜5が挙げられる。これらの繰り返し数は必ずしも一定の値である必要はなく、1〜10の混合物であってもよい。
本発明のカチオン性の親水性の基であるN,N’−ジ置換イミダゾール基は、1位の窒素原子が置換されており、さらに3位の窒素原子が炭素原子により第四級化されてカチオン性になっているものである。
本発明のカチオン性の親水性の基であるN,N’−ジ置換イミダゾール基の好ましい例としては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾール−2−イル基、1,3−ジエチルイミダゾール−2−イル基、1,3−ジプロピルイミダゾール−2−イル基などのN,N’−ジ低級アルキル−イミダゾール−2−イル基などが挙げられる。
前記一般式(1)における親油性の基である置換基を有してもよいフェニル基は、細胞膜、特に脳の細胞の細胞膜成分として多量に存在している不飽和脂防酸に親和性を有しているだけでなく、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体のオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値を−2以上とするものである。このような置換基を有してもよいフェニル基はポルフィリン骨格に少なくとも2個、好ましくは3個が結合している。好ましい置換基を有してもよいフェニル基としては、具体的には、例えば、フェニル基、4−トリル基、4−エチルフェニル基等が挙げられる。
本発明におけるオクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値は、オクタノール/水二相溶媒系における分配係数Powの対数としてlog Pow値を決定することができる。分配係数Powの値はshake flask法により測定し、その対数として算出される値である。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、log Powの値が、−2以上好ましくは0以上のものが挙げられる。log Powの範囲としては−2〜20、好ましくは−2〜5、更に好ましくは0〜10の範囲が挙げられる。
前記した一般式(1)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体は、ポルフィリン骨格に1個又は2個のカチオン性の親水性のイミダゾール基と、2個又は3個の親油性の置換基を有してもよいフェニル基を有していることを特徴とするものであり、これにより両親媒性となり、ポリフィリン錯体による抗酸化作用と同時に細胞、特に脳の細胞に対する親和性を有し、さらにミトコンドリアへの集積及びミトコンドリアの膜を透過する能力を有することになる。2個の親水性のイミダゾール基は、前記した一般式(1)におけるAr、Ar、Ar、及び、Arのうちのいずれの位置であってもよいが、好ましい位置としては、Ar及びArの位置が挙げられる。
本発明における好ましい一般式(1)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体としては、次の一般式(2)、(3)、又は(4)
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体が挙げられる。さらに、好ましい一般式(1)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体としては、次の一般式(4)、
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体が挙げられる。
また、次の一般式(2)
(式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、又は基−(R−O)n−CH(式中、Rは炭素数2〜5のアルキレン基を示し、nは1〜10の整数を示す。)を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。)
で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体も、本発明の好ましい金属ポルフィリン錯体のひとつである。
前記した一般式(2)、(3)及び(4)における好ましいRとしては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜20、好ましくは1〜10、1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。前記した一般式(2)、(3)及び(4)における好ましいRとしては、水素原子、又はメチル基、エチル基などの炭素数1〜20、好ましくは1〜10、1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
本発明の前記してきた一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体の例としては、例えば、金属−5,15−ビス(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−10,20−ジフェニルポルフィリン(以下、金属−dMImPhPと表記することがある。)、金属−5−(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−10,15,20−トリフェニルポルフィリン(以下、金属−dMImPhPと表記することがある。)、金属−5,10−ビス(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−15,20−ジフェニルポルフィリンなどが挙げられる。
本発明の前記してきた一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体における中心金属Mとしては、抗酸化作用と同時に細胞、特に脳の細胞に対する親和性を示すものであれば特に制限はなく、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、イリジウム(Ir)等が挙げられるが、このなかでも鉄原子(Fe)、銅原子(Cu)又はマンガン原子(Mn)などが好ましく、マンガン原子(Mn)がさらに好ましい。
したがって、本発明の前記してきた一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体の例としては、前記した金属ポルフィリン錯体の金属部分がマンガンになっている錯体、例えば、マンガン−5,15−ビス(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−10,20−ジフェニルポルフィリン(以下、Mn−dMImPhPと表記することがある。)、マンガン−5−(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−10,15,20−トリフェニルポルフィリン(以下、Mn−dMImPhPと表記することがある。)、マンガン−5,10−ビス(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−15,20−ジフェニルポルフィリンなどが挙げられる。
本発明の前記してきた一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)又は一般式(4)で表される両親媒性金属ポルフィリン錯体は、例えば、K. Kalyanasundaram, Inorg. Chem., 23, 2453(1984)、 A. D. Adler et al., J. Inorg. Nucl. Chem., 32, 2443(1970)、 T, Yonetani et al., J. Biol. Chem., 245, 2988(1970)、 P. Hambright, Inorg. Chem., 15, 2314(1976)等に記載の方法に準じて製造することができる。例えば、ピロールとイミダゾリルアルデヒド、及び置換基を有してもよいベンズアルデヒドとを反応させてポリフィリン環部分を製造することができる。しかし、4個の芳香族基が同一の基である従来のポルフィリンでは、原料となる芳香族アルデヒドが1種類であり、単一のポルフィリンを製造することができるが、本発明のポルフィリンでは、2種又は2種以上の芳香族基を有することになるので、原料となる芳香族アルデヒドが2種又は2種以上となり、生成物は混合物となる。この方法で得られた混合物をカラムクロマトグラフィーなどの分離手段により、分離することにより、目的の本発明のポルフィリンを得ることができる。
このようにして製造された目的のポルフィリンを、ハロゲン化低級アルキルや低級アルキルトシレートなどのアルキル化剤でカチオン化し、次いで金属又は金属化合物、例えば金属ハロゲン化物、金属酢酸塩などを用いて金属錯体とする方法により、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体を製造することができる。
代表的な製造方法の具体的な例を、Mn−dMImPhP及びMn−dMImPhPの製造方法として次の化学反応式で示す。
次に、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の種々の特性を測定した。
これらの試験においては、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の例としてMn−dMImPhP及びMn−dMImPhPを用い、比較としてMn−dMImP(マンガン−5,10,15,20−テトラキス(N,N’−ジメチル−イミダゾール−2−イル)−ポルフィリン)及びMn−MPyP(マンガン−5,10,15,20−テトラキス(N−メチル−4−ピリジル)−ポルフィリン)を用いた。これらの試験に用いたMn−dMImPの化学構造を次に示しておく。
また、比較として用いたMn−MPyPの化学構造を次に示しておく。
これらの錯体のスーパーオキシド(O ・)消失活性(SOD活性)を、オオセらの方法(T.Ohse, et al., Porphyrins, 6, 137 (1997))に準じたストップトフロー法により評価した。試験物質のHEPES/HEPES・Na緩衝液(pH8.1)と、スーパーオキシド(O ・)の発生剤としてKOのDMSO(ジメチルスルホキサイド)溶液とを37℃で反応させ、スーパーオキシド(O ・)の極大吸収波長である245nmの吸光度の経時変化を測定した。これにより、スーパーオキシド(O ・)の不均化反応速度(kcat)を以下の式から算出した。
−In[O ・] = kobs × t
cat = kobs × [Mnポルフィリン濃度]
結果を次の表1に示す。
次に、同様のストップトフロー法によりパーオキシナイトライト(ONOO)消去活性を試験した。試験物質のPBS緩衝液(pH7.4)と、亜硝酸を用いて発生させたパーオキシナイトライト(ONOO)の水溶液とを、アスコルビン酸の存在下で37℃で反応させて、パーオキシナイトライト(ONOO)の極大吸収波長である301nmにおける吸光度の経時変化を測定した。これにより、パーオキシナイトライト(ONOO)の分解反応速度(kcat)を以下の式から算出した。
−In[ONOO] = kobs × t
cat = kobs × [Mnポルフィリン濃度]
結果を次の表2に示す。
これらのストップトフロー方法による抗酸化能評価の結果、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体であるMn−dMImPhP及びMn−dMImPhPは、SOD活性、及びONOO消去活性を有していることが明らかとなった(前記した表1及び表2参照)。そのONOO消去活性は、Mn(IV)からMn(III)へ還元される速度が律速となり必ずしも高いものではなかったが、アスコルビン酸の存在下では、その還元効果により消去活性は50倍以上に増大した。脳内ではアスコルビン酸濃度が高く、脳内でのインビボ(in vivo)の評価では本発明のMn−dMImPhP及びMn−dMImPhPはフリーラジカル消去能が期待できることが明らかになった。
次に、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の脂質親和性(疎水性)についての評価を、オクタノール/水二相溶媒系における分配係数Pow及びその対数のlog Pow値を決定した。この値はshake flask法により測定した値から算出した。結果を次の表3に示す。
このように、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、親油性の基が導入されており、オクタノールへの分配が明らかとなったが、親油性の基を有していない従来のMn−MPyPやMn−dMImPではオクタノールへの分配を検出することができなかった。したがって、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、前記してきたようにSOD活性、及びONOO消去活性を共に有している(前記した表1及び表2参照)だけでなく、脂質親和性(疎水性)をも同時に有していることが明らかになった。
以上のように、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、SOD活性、ONOO消去活性を有するだけでなく、同時に脂質に対する親和性を有し、細胞内に容易に取り込まれるだけでなく、ミトコンドリアの膜を透過できるだけの大きなlog Powの値を有しており、ミトコンドリア内部でのSOD活性、及びONOO消去活性を示すだけでなく、脂質に対する親和性が大きいことから、脳の細胞に多量に存在する細胞膜成分の不飽和脂防酸に対する脂質過酸化反応を顕著に抑制して脳の細胞の細胞死を防止することができ、また、一過性の脳虚血における酸化ストレス(低酸素傷害)に対して極めて有効な保護作用を有するものである。
そこで、ヒト神経線維芽細胞を用いた6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)毒性からの細胞保護作用を細胞生存率(%)により評価した。
その結果を次の表4に示す。
このように、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、脳内ROS(reactive oxygen species:活性酸素種)を効果的に消去しうる脳酸化障害抑制能を有している。
また、本発明の医薬組成物は、経口又は非経口により投与することができ、その有効投与量は、病態や患者により相違するが、一般的には1μg〜1gを1日数回に分けて投与するか連続的に投与する。本発明の医薬組成物は公知の方法により、製剤化することができ、投与方法や患者により適宜製剤することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の少なくとも1種を有効成分として含有し、これに製薬上許容される担体、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤などと共に公知の方法により製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、用量単位の形態、例えば、錠剤、カプセル、または坐剤とすることができる。また、本発明の医薬組成物は、注射または噴霧療法に適する無菌溶液とすることもできる。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体、又はこれを有効成分とする本発明の医薬組成物による予防や治療に適する疾患としては、脳の細胞の酸化障害による疾患、特にスーパーオキシド(O ・)及び/又はパーオキシナイトライト(ONOO)に起因する疾患が挙げられる。このような疾患の例としては、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー症、遅発性ジスキネジア、セロイドリポフステン蓄積症、ダウン症候群などをはじめ、脳卒中や脳梗塞、運動神経疾患などの多くの神経疾患が挙げられる。
特に本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、前出してきた薬理試験からも明らかなように、一過性の脳虚血における酸化ストレス(低酸素傷害)に対して極めて有効な保護作用を有するものであり、脳の虚血再灌流後における酸化障害、例えば、遅発性神経細胞死(DND)などの疾患に対して有効である。
したがって、本発明の医薬組成物は、これらの各種の脳神経疾患の予防や治療に有効である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の製造
1−メチル−イミダゾール−2−イル カーボアルデヒド 3.66g、ベンズアルデヒド 7.21mlをプロピオン酸50ml中に溶解し、80℃で30分加熱・攪拌した。蒸留によって精製したピロール7.21mlをゆっくり加えて、110℃で4時間、還流した。その後、溶媒であるプロピオン酸を留去した。
溶媒を留去後、再度、クロロホルムに溶解し、カラムクロマトグラフィー(固定相Aluminium oxide 90 active basic、移動相クロロホルム)で分離し、第2の紫色の相を回収した。
得られた分画を再度、カラムクロマトグラフィー(固定相シリカゲル60、移動相クロロホルムで分離し、第1相を回収して、H−MImPhPを得た。
得られたH−MImPhP 210mgをクロロホルム20mlに溶解し、ヨードメタン2mlを加え、40℃で24時間攪拌した。その後、カラムクロマトグラフィー(固定相Aluminium oxide 90 active basic、移動相クロロホルム:メタノール=100:15)で分離し、第2相を回収して、H−dMImPh・Iを得た。
H−NMRのチャートを図1に示す。
H−NMR: δ -2.64(環内部の2H), 4.00(メチル基の6H),
7.27(CHCl), 7.77-8.21(フェニル基の15H),
8.52(イミダゾール基の2H), 8.71-9.1(β−ピロール)
−dMImPh4+4I 320mgをメタノール20mlに溶解し、Mn酢酸塩を0.16g加え、40℃で48時間攪拌した。溶媒留去後、水に溶解し、リン酸ヘキサフルオルアンモニウム(Ammonium hexafluoro phosphate)を徐々に加えて、ポルフィリン錯体を沈殿させ、ろ過して回収した。回収したポルフィリン錯体PF塩を乾燥し、アセトンに溶解後、塩化テトラエチルアンモニウムの飽和アセトン溶液を徐々に加えた。溶液の色が変化した後、アセトンを留去した。
固体を水に溶解し、クロロホルムを加えクロロホルム相へ抽出を行い、クロロホルム層を回収して、Mn−dMImPh2+・2Clを得た。得られたMn−dMImPh2+・2ClのUVスペクトルを図2に示す。
実施例1と同様にして、Mn−dMImPhPを得た。
1−メチル−イミダゾール−2−イル カーボアルデヒド3.66g、ベンズアルデヒド7.21mlをプロピオン酸50ml中に溶解し、80℃で30分加熱・攪拌した。次いで、蒸留によって精製したピロール7.21mlをゆっくり加えて、110℃で4時間、還流した。その後、溶媒であるプロピオン酸を留去した。
溶媒を留去後、再度、クロロホルムに溶解し、カラムクロマトグラフィー(固定相Aluminium oxide 90 active basic、移動相クロロホルム)で分離し、第2の紫色の相を回収した。得られた画分を再度、カラムクロマトグラフィー(固定相シリカゲル60、移動相クロロホルム/メタノール=100:5)で分離し、第2相を回収し、trans−H−MImPhPを得た。
得られたtrans−H−MImPhP 210mgをクロロホルム20mlに溶解し、ヨードメタン4mlを加え、40℃で24時間攪拌した。その後、溶媒を留去し、水とジクロロメタンを加え、分液し、水相を回収した。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去し、H−dMImPh2+・2Iを得た。
得られたH−dMImPh2+・2I 320mgをメタノール20mlに溶解し、Mn酢酸塩を0.16g加え、40℃で48時間攪拌した。溶媒留去後、水に溶解し、アンモニウム ヘキサフルオロ フォスファイト(Ammonium hexafluoro phosphate)を徐々に加えて、ポルフィリン錯体を沈殿させ、ろ過して回収した。回収したポルフィリン錯体のPF6塩を乾燥し、アセトンに溶解後、塩化テトラエチルアンモニウム塩を飽和させたアセトン溶液を徐々に加えた。沈殿物をろ過し、乾燥後回収し、標記のMn−dMImPh3+・3Clを得た。
得られたH−dMImPhPのH−NMRのチャートを図3に示し、Mn−dMImPhPのUVスペクトルを図4に示す。
H−NMR: δ -2.94(環内部の2H), 3.78(メチル基の12H),
7.96(フェニル基のパラ及びメタ位の6H),
8.33(イミダゾール基の4H),
8.56(フェニル基のオルト位の4H), 9.12(β−ピロール)
SOD 活性評価
ストップトフロー法による評価は、混合装置にApplied Photophysics SX-18MX stopped-flow装置を用いた。混合装置のシリンダーAにHEPES緩衝溶液を用いて調製したMnポルフィリン溶液を入れ、シリンダーBに超酸化カリウム(1g)をDMSOに分散させて調製した・O 飽和溶液を入れた。シリンダーAおよびB内の溶液を体積比20:1で迅速に混合した後、245nmにおける吸光度の経時変化を測定した。これによりO ・の不均化反応速度(kcat)を以下の式から算出した。
−In[O ・] = kobs × t
cat = kobs × [Mnポルフィリン濃度]
結果を表1に示した。
ONOO分解活性評価
ストップトフロー法による評価は,混合装置にApplied Photophysics SX-18MX stopped-flow装置を用いた。混合装置のシリンダーAに100mMリン酸緩衝溶液を用いて調製したMnポルフィリン溶液及びアスコルビン酸を入れ,シリンダーBに0.8M H溶液25mlと0.8M NaNO溶液25mlと1M HCl,1.5M NaOH溶液それぞれ25mlから作成したONOO溶液を入れ、シリンダーAおよびB内の溶液を体積比1:1で迅速に混合した後,301nmにおける吸光度の経時変化を測定した。これによりONOOの分解反応速度(kcat)を以下の式から算出した。
−In[ONOO] = kobs × t
cat = kobs × [Mnポルフィリン濃度]
結果を表2に示した。
安定性試験
UV−vis分光光度計による評価は1mlセル中に5μMポルフィリン溶液800μlを加え、0〜600mM、H PBS溶液を加え、462nmの吸光度の減衰200sec追跡した。これによりHによるポルフィリン錯体の分解反応定数(kdeg)を以下の式から算出した。
−In[ポルフィリン] = kobs × t
deg = kobs × [H濃度]
結果を次の表5に示す。
細胞保護効果
10%FBS添加DMEM中で培養したヒト神経線維芽細胞SH−SY5Yを1×10cells/wellで96穴プレートに播種した。翌日、1μMのMnポルフィリン錯体PBS溶液を加え、4時間後に、50μM6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)のPBS溶液を加え、24時間後、培地を交換し、アラマーブルーを加え、4時間後に570nm、595nmの吸光度から、細胞生存率を算出した。
結果を図5のグラフで示す。図5の縦軸は生存率(%)を示し、横軸は左側から、対照の6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)、Mn−MPyP、Mn−dMImP、Mn−dMImPhP、及びMn−dMImPhPの場合をそれぞれ示す。
本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体は、スーパーオキシド(O ・)やパーオキシナイトライト(ONOO)などの細胞内ROS、特に脳内ROS(reactive oxygen species:活性酸素種)を効果的に消去しうる脳酸化障害抑制能を有しており、これを有効成分として含有してなる本発明の医薬組成物は、各種の脳の細胞の酸化障害による疾患に有効な医薬品として有用であり、本発明は製薬産業などにおける産業上の利用可能性を有している。
図1は、本発明のH−dMImPhPのNMRスペクトルのチャートである。 図2は、本発明のMn−dMImPhPのUVスペクトルのチャートである。 図3は、本発明のH−dMImPhPのNMRスペクトルのチャートである。 図4は、本発明のMn−dMImPhPのUVスペクトルのチャートである。 図5は、本発明の両親媒性金属ポルフィリン錯体の細胞保護作用の試験の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 次の一般式(1)
    (式中、Mは錯体を形成するための金属原子を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arはそれぞれ独立して置換基を有してもよい炭素環式又は複素環式芳香族基を示し、Ar、Ar、Ar、及び、Arのうちの1個又は2個がN,N’−ジ置換イミダゾール基からなるカチオン性の親水性の基を示し、残りの3個又は2個は置換基を有してもよいフェニル基からなる親油性の基を示す。)
    で表される親水性の基と親油性の基を有する両親媒性金属ポルフィリン錯体。
  2. オクタノール−水系における分配係数のパラメーターであるlog Powの値が−2以上である請求項1に記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体。
  3. 請求項1又は2に記載の両親媒性金属ポルフィリン錯体の少なくとも1種、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物。
  4. 医薬組成物が、酸化障害による疾患の予防又は治療用である請求項3に記載の医薬組成物。
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