JP2009293234A - 摩擦減震装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大規模の建物はもちろんのこと、一戸建て住宅のような新築や既存の小規模の建物に設置することができ、簡単な構造を有し低コストで設置可能であって、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置を提供する。
【解決手段】建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板からなり、最下段に位置する該滑り平板は該基礎または該杭頭に固定されるとともに、最上段に位置する該滑り平板は該土台または該基礎に固定され、中間に位置する該滑り平板は上部の該滑り平板および下部の該滑り平板に対して摺動可能に設置され、相互に面接触する該滑り平板の1つの滑り面同士は摩擦係数が所定値となるように形成されるとともに、他の1つの滑り面同士は摩擦係数が該所定値よりも大きな値となるように形成されるようにした。
【選択図】図1
【解決手段】建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板からなり、最下段に位置する該滑り平板は該基礎または該杭頭に固定されるとともに、最上段に位置する該滑り平板は該土台または該基礎に固定され、中間に位置する該滑り平板は上部の該滑り平板および下部の該滑り平板に対して摺動可能に設置され、相互に面接触する該滑り平板の1つの滑り面同士は摩擦係数が所定値となるように形成されるとともに、他の1つの滑り面同士は摩擦係数が該所定値よりも大きな値となるように形成されるようにした。
【選択図】図1
Description
本願発明は、建物の減震装置に関し、より詳しくは、建物の基礎に介挿される板材を主要素とする減震装置に関する。
地震対策としての建築構造に関する技術としては、耐震技術、免震技術および制震技術があるが、免震技術は地震振動が建物に直接伝達されないように基礎等から分離、絶縁する構造が基本である。そして、ビル等の大型の建物に適用される免震技術としては、たとえば、円盤状の鋼製板とゴムとを積層して構成した積層ゴム体が知られているが、この積層ゴム体は質量の大きな大型の建物に適しているものの、比較的軽量な一戸建て住宅のような小規模の建物には適していない。
そのため、比較的軽量な小規模の建物に適用される免震技術として、平板間の摩擦力を利用した減震装置が提案されていて、特開2002−206245号公報、特開2002−371569号公報および特開2007−138678号公報に関示されている。なお、特開2007−138678号公報に関示の発明は、本願出願人によるものである。
特開2002−206245号公報に開示の技術は、「戸建住宅のような構造物に適し、安価で提供できる住宅減震用基礎構造を提供する」ことを目的としていて、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎と、住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎と、地盤側コンクリート基礎と住宅側コンクリート基礎との間に設けられた複数の摩擦軽減機構とを含み、摩擦軽減機構は、地盤側コンクリート基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側コンクリート基礎における該板材に対応する箇所に住宅側コンクリート基礎の下面から出没可能に設けられて前記板材の上を住宅側コンクリート基礎と共にスライド可能な滑動部材とを含む」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
また、特開2002−371569号公報に開示の技術は、特開2002−206245号公報に開示の技術と同様に、「戸建住宅のような構造物に適し、安価で提供できる住宅減震用基礎構造を提供する」ことを目的としていて、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎と、住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎と、地盤側コンクリート基礎と住宅側コンクリート基礎との間に設けられた複数の摩擦軽減機構とを含み、摩擦軽減機構は、地盤側コンクリート基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側コンクリート基礎における該板材に対応する箇所の下面に設けられて前記板材の上を住宅側コンクリート基礎と共にスライド可能な滑動部材53とを含む」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
そして、本願出願人による特開2007−138678号公報に開示の技術は、「一戸建ての住宅のような小型の建築物に、好適な減震装置を提供する」ことを目的としていて、「基礎と土台又は柱との間で、主にアンカーボルトの各箇所に分散して設けられる、地震時の横揺れ荷重により潤滑な滑動可能なフッ素系高分子樹脂を塗装した二重の鋼板等とからなる摩擦減衰装置と地震荷重を受けてこの摩擦減衰装置が滑動した場合、基礎に固定されたアンカーボルトと土台の衝突を緩衝し基礎と土台のずれを拘束する低反発高分子樹脂等の円筒形の衝撃緩衝装置及び地震荷重を受けた時に発生する引抜力をアンカーボルトに拘束する滑動可能な座板鋼板及びナット、スプリングワッシャー等からなる引抜拘束装置からなる」構成とすることにより、この目的を達成しようとしたものである。
特開2002−206245号公報
特開2002−371569号公報
特開2007−138678号公報
しかしながら、特開2002−206245号公報および特開2002−371569号公報に開示の技術は、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎」と「住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎」との間に、摩擦軽減機構を介挿しているため、「住宅が構築される地盤に形成された地盤側コンクリート基礎」および「住宅の下部に構成され、地盤側基礎の上に置かれる住宅側コンクリート基礎」の設置されていない建物には、適用できない。また、摩擦軽減機構は、地盤側基礎に設けられた所定の面積を持つ板材と、住宅側基礎の下面における該板材に対応する箇所に設けられて該板材の上を該住宅側基礎と共にスライド可能な滑動部材とから構成されていて、たとえば、摩擦係数を大きく設定した場合には、中規模程度の地震に対して有効に働かず、摩擦係数を小さく設定した場合には、大規模の地震に対して有効に働かない恐れがある。
そして、特開2007−138678号公報に開示の技術では、コンクリート製の基礎および木製の土台からなる一般的な住宅にも適用できるものの、摩擦減衰装置が地震時の横揺れ荷重により滑動が可能なフッ素系高分子樹脂を塗装した二層の鋼板から構成されていて、当該装置においては摩擦面が1箇所であるので、前述の特開2002−206245号公報および特開2002−371569号公報に開示の装置と略同様の課題がある。また、基礎に固定されたアンカーボルトと土台の衝突を緩衝する衝撃緩衝装置に使用される円筒形の低反発高分子は、高価であって経済性に難点があるとともに、温度変化に対し脆弱化するという課題がある。
そこで、本願発明は、大規模の建物はもちろんのこと、一戸建て住宅のような新築や既存の小規模の建物に設置することができ、簡単な構造を有し低コストで設置可能であって、中規模や大規模地震に有効に機能する摩擦減震装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る摩擦減震装置は、建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板からなり、最下段に位置する該滑り平板は該基礎または該杭頭に固定されるとともに、最上段に位置する該滑り平板は該土台または該基礎に固定され、中間に位置する該滑り平板は上部の該滑り平板および下部の該滑り平板に対して摺動可能に設置され、相互に面接触する該滑り平板の1つの滑り面同士は静止摩擦係数が所定値となるように形成されるとともに、他の1つの滑り面同士は静止摩擦係数が該所定値よりも大きな値となるように形成される、ことを特徴としている。
なお、滑り平板には鋼製等の金属製、合金製、合成樹脂製またはセラミック製を使用することができる。
また、本願請求項2に係る摩擦減震装置は、請求項1に記載の摩擦減震装置であって、前記1つの滑り面同士の所定値である静止摩擦係数は略0.1〜0.2であり、前記他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数は略0.2〜0.5である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る摩擦減震装置は、請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置であって、前記滑り平板の表面は非処理のまま、または前記静止摩擦係数となるように研磨処理され、メッキ処理され、若しくは塗装されている、ことを特徴としている。
なお、研磨処理には凹凸や溝を刻設することも含む。
さらに、本願請求項4に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記滑り平板は金属板または合成樹脂板である、ことを特徴としている。なお、金属板は鋼製あるいは鋼を含む合金製であることが好ましい。
また、本願請求項5に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記基礎はコンクリート製の基礎であり、前記土台は木製または鋼製の水平材であって、該土台は該基礎に複数のアンカーボルトを介して固定され、前記滑り平板は該アンカーボルトに挿通されて該基礎および該土台間に介挿され、および/または複数の該アンカーボルト間の該基礎および該土台間に介挿され、該アンカーボルトが挿通される該滑り平板には挿通孔が穿設されて、該アンカーボルトは少なくとも該基礎に固定される以外の該滑り平板の該挿通孔に遊貫して挿通される、ことを特徴としている。
なお、アンカーボルトに遊貫して挿通される滑り平板の挿通孔は、土台が木製の場合にはアンカーボルト径+5mm程度であることが好ましく、土台が鋼製の場合にはアンカーボルト径+10mm程度であることが好ましい。
そして、本願請求項6に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記杭は鋼製、コンクリート製または合成樹脂製の杭であり、前記基礎はコンクリート製の基礎であって、該杭の上部は該基礎の底面に凹設された杭頭嵌合穴に所定の間隙を以って嵌合し、該基礎は該滑り平板を介して該杭頭に摺動可能に載置されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る摩擦減震装置は、請求項6に記載の摩擦減震装置であって、前記所定の間隙は略5mmである、ことを特徴としている。
また、本願請求項8に係る摩擦減震装置は、請求項6または請求項7に記載の摩擦減震装置であって、前記所定の間隙内には伸縮可能な間隙保持材が充填されている、ことを特徴としている。なお、間隙保持材は圧縮強度がゼロに近い材料であることが好ましい。
そして、本願請求項9に係る摩擦減震装置は、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記杭頭嵌合穴は最上段に位置する前記滑り平板および該滑り平板の周辺縁から垂設される該滑り平板と同じ素材の筒体により被覆されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項10に係る摩擦減震装置は、請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記基礎の外周側面と該外周側面周りの地盤との間には緩衝帯が介挿されている、ことを特徴としている。
なお、滑り平板には鋼製等の金属製、合金製、合成樹脂製またはセラミック製を使用することができる。
また、本願請求項2に係る摩擦減震装置は、請求項1に記載の摩擦減震装置であって、前記1つの滑り面同士の所定値である静止摩擦係数は略0.1〜0.2であり、前記他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数は略0.2〜0.5である、ことを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る摩擦減震装置は、請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置であって、前記滑り平板の表面は非処理のまま、または前記静止摩擦係数となるように研磨処理され、メッキ処理され、若しくは塗装されている、ことを特徴としている。
なお、研磨処理には凹凸や溝を刻設することも含む。
さらに、本願請求項4に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記滑り平板は金属板または合成樹脂板である、ことを特徴としている。なお、金属板は鋼製あるいは鋼を含む合金製であることが好ましい。
また、本願請求項5に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記基礎はコンクリート製の基礎であり、前記土台は木製または鋼製の水平材であって、該土台は該基礎に複数のアンカーボルトを介して固定され、前記滑り平板は該アンカーボルトに挿通されて該基礎および該土台間に介挿され、および/または複数の該アンカーボルト間の該基礎および該土台間に介挿され、該アンカーボルトが挿通される該滑り平板には挿通孔が穿設されて、該アンカーボルトは少なくとも該基礎に固定される以外の該滑り平板の該挿通孔に遊貫して挿通される、ことを特徴としている。
なお、アンカーボルトに遊貫して挿通される滑り平板の挿通孔は、土台が木製の場合にはアンカーボルト径+5mm程度であることが好ましく、土台が鋼製の場合にはアンカーボルト径+10mm程度であることが好ましい。
そして、本願請求項6に係る摩擦減震装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記杭は鋼製、コンクリート製または合成樹脂製の杭であり、前記基礎はコンクリート製の基礎であって、該杭の上部は該基礎の底面に凹設された杭頭嵌合穴に所定の間隙を以って嵌合し、該基礎は該滑り平板を介して該杭頭に摺動可能に載置されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項7に係る摩擦減震装置は、請求項6に記載の摩擦減震装置であって、前記所定の間隙は略5mmである、ことを特徴としている。
また、本願請求項8に係る摩擦減震装置は、請求項6または請求項7に記載の摩擦減震装置であって、前記所定の間隙内には伸縮可能な間隙保持材が充填されている、ことを特徴としている。なお、間隙保持材は圧縮強度がゼロに近い材料であることが好ましい。
そして、本願請求項9に係る摩擦減震装置は、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記杭頭嵌合穴は最上段に位置する前記滑り平板および該滑り平板の周辺縁から垂設される該滑り平板と同じ素材の筒体により被覆されている、ことを特徴としている。
さらに、本願請求項10に係る摩擦減震装置は、請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の摩擦減震装置であって、前記基礎の外周側面と該外周側面周りの地盤との間には緩衝帯が介挿されている、ことを特徴としている。
本願各請求項に係る発明は上記の構成により以下の効果を奏する。
(1)本願発明に係る摩擦減震装置は、建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板から構成されているので、簡単な構造であり、低コストで製造できるとともに低コストで設置可能であり、かつ、新築や既存の小規模の建物に設置することができる。
(2)また、摩擦減震装置が3枚の滑り平板から構成されている場合において、たとえば、相互に面接触する滑り平板間の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を略0.1〜0.2とし、他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を略0.2〜0.5とした場合には、100ガル(地震加速度:gal(cm/s2))程度の中地震や700ガル程度の大地震に対して有効に機能する。なお、出願人の知見に拠れば、滑り面同士の静止摩擦係数の総和は、想定地震加速度の1/1,000以下とすることが好ましい。また、震動に対する滑り平板の作用については〔発明を実施するための最良の形態〕で説明する。
(3)そして、滑り平板を金属板としたときには、所定の静止摩擦係数となるような表面処理は容易であり、滑り平板自体の加工も安価で容易にできる。
(4)一般的な一戸建て住宅はコンクリート製の布基礎と布基礎にアンカーボルトを介して木製または鋼製の水平材である土台が固着されているが、本願発明に係る摩擦減震装置は、このような構造の基礎部分にも使用することができる。そして、このアンカーボルトに挿通孔が穿設された滑り平板を挿通した摩擦減震装置を設置した場合には、布基礎に固定される最下段以外の滑り平板はアンカーボルトに遊貫して挿通されていて、アンカーボルト周りには所定の間隔を有しているため、最下段以外の滑り平板はアンカーボルトに拘束されずに摺動することができる。このため、水平方向の地震の揺れに拠る基礎と土台のズレが生じたときに、相互に面接触する滑り平板同士が摺動することができ、このときに滑り平板間に生じる摩擦により地震エネルギーが減衰して建物に伝達されることになる。さらに、アンカーボルトに挿通された滑り平板は、アンカーボルトが滑り平板の抜出防止の役割を担うことになる。
(5)本願発明に係る摩擦減震装置を鋼製、コンクリート製または合成樹脂製の杭とコンクリート製の基礎との間に介挿して使用する場合には、基礎の底面に凹設された杭頭嵌合穴に杭頭を所定の間隙を以って嵌合し、杭頭と杭頭嵌合穴底との間に介挿することとしている。このため、杭頭嵌合穴の周壁が中間に位置する滑り平板の抜出を防止することとなる。
(6)上記の場合において、杭頭嵌合穴と杭頭との所定の間隙をあまりに小さくすると地震の揺れに対して滑り平板間に滑りが生ぜず、また、あまりに大きくすると滑りが生じたときに基礎の加速度が大きくなって、杭と基礎が激しく衝突することになる。出願人の知見に拠れば杭頭嵌合穴と杭頭との所定の間隙は略5mmであることが適当である。
(7)また、杭頭嵌合穴を最上段に位置する滑り平板および滑り平板の辺縁から垂設される筒体により被覆することとし、さらに、所定の間隙内には伸縮可能な間隙保持材で充填することとした場合には、カップ状となった滑り平板および筒体を杭頭に被せた後、基礎のコンクリートを打設することにより、所定の間隙内にコンクリートが回り込むこともなく本願発明に係る摩擦減震装置を設置することができるので、その施工はきわめて容易である。
(8)請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の摩擦減震装置を設置した場合には、地盤内に埋設される基礎の揺れと地盤の揺れとが一致しない。このため、基礎の外周側面と該外周側面周りの地盤との間に緩衝帯を介挿することにより摩擦減震装置の減震効果を十分に発揮させることができる。なお、緩衝帯は砂利や砕石等で形成することが好ましく、建物周りの水はけも良くなる。
(1)本願発明に係る摩擦減震装置は、建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板から構成されているので、簡単な構造であり、低コストで製造できるとともに低コストで設置可能であり、かつ、新築や既存の小規模の建物に設置することができる。
(2)また、摩擦減震装置が3枚の滑り平板から構成されている場合において、たとえば、相互に面接触する滑り平板間の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を略0.1〜0.2とし、他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を略0.2〜0.5とした場合には、100ガル(地震加速度:gal(cm/s2))程度の中地震や700ガル程度の大地震に対して有効に機能する。なお、出願人の知見に拠れば、滑り面同士の静止摩擦係数の総和は、想定地震加速度の1/1,000以下とすることが好ましい。また、震動に対する滑り平板の作用については〔発明を実施するための最良の形態〕で説明する。
(3)そして、滑り平板を金属板としたときには、所定の静止摩擦係数となるような表面処理は容易であり、滑り平板自体の加工も安価で容易にできる。
(4)一般的な一戸建て住宅はコンクリート製の布基礎と布基礎にアンカーボルトを介して木製または鋼製の水平材である土台が固着されているが、本願発明に係る摩擦減震装置は、このような構造の基礎部分にも使用することができる。そして、このアンカーボルトに挿通孔が穿設された滑り平板を挿通した摩擦減震装置を設置した場合には、布基礎に固定される最下段以外の滑り平板はアンカーボルトに遊貫して挿通されていて、アンカーボルト周りには所定の間隔を有しているため、最下段以外の滑り平板はアンカーボルトに拘束されずに摺動することができる。このため、水平方向の地震の揺れに拠る基礎と土台のズレが生じたときに、相互に面接触する滑り平板同士が摺動することができ、このときに滑り平板間に生じる摩擦により地震エネルギーが減衰して建物に伝達されることになる。さらに、アンカーボルトに挿通された滑り平板は、アンカーボルトが滑り平板の抜出防止の役割を担うことになる。
(5)本願発明に係る摩擦減震装置を鋼製、コンクリート製または合成樹脂製の杭とコンクリート製の基礎との間に介挿して使用する場合には、基礎の底面に凹設された杭頭嵌合穴に杭頭を所定の間隙を以って嵌合し、杭頭と杭頭嵌合穴底との間に介挿することとしている。このため、杭頭嵌合穴の周壁が中間に位置する滑り平板の抜出を防止することとなる。
(6)上記の場合において、杭頭嵌合穴と杭頭との所定の間隙をあまりに小さくすると地震の揺れに対して滑り平板間に滑りが生ぜず、また、あまりに大きくすると滑りが生じたときに基礎の加速度が大きくなって、杭と基礎が激しく衝突することになる。出願人の知見に拠れば杭頭嵌合穴と杭頭との所定の間隙は略5mmであることが適当である。
(7)また、杭頭嵌合穴を最上段に位置する滑り平板および滑り平板の辺縁から垂設される筒体により被覆することとし、さらに、所定の間隙内には伸縮可能な間隙保持材で充填することとした場合には、カップ状となった滑り平板および筒体を杭頭に被せた後、基礎のコンクリートを打設することにより、所定の間隙内にコンクリートが回り込むこともなく本願発明に係る摩擦減震装置を設置することができるので、その施工はきわめて容易である。
(8)請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の摩擦減震装置を設置した場合には、地盤内に埋設される基礎の揺れと地盤の揺れとが一致しない。このため、基礎の外周側面と該外周側面周りの地盤との間に緩衝帯を介挿することにより摩擦減震装置の減震効果を十分に発揮させることができる。なお、緩衝帯は砂利や砕石等で形成することが好ましく、建物周りの水はけも良くなる。
本発明を実施するための最良の形態に係る実施例1および実施例2について、図1ないし図5に基づいて説明する。
ここで、図1は、実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置を設置した一戸建て住宅の軸組み立面図であり、図2は、実施例1に係る摩擦減震装置の地震時における作動説明図であって、図2(a)は上部滑り平板、中間部滑り平板および下部滑り平板間に滑りが生じていない状態を示し、図2(b)および図2(c)は上部滑り平板および中間部滑り平板間に滑りが生じている状態を示し、図3は、実施例2に係る摩擦減震装置の地震時における作動説明図であって、図3(a)は上部滑り平板、中間部滑り平板および下部滑り平板間に滑りが生じていない状態を示し、図3(b)および図3(c)は上部滑り平板および中間部滑り平板間に滑りが生じている状態を示している。なお、図1では、実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置が併設されるように図示しているが、必ずしも実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置を併設する必要がないことは勿論であり、通常はそれぞれ単独で設置することになる。
ここで、図1は、実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置を設置した一戸建て住宅の軸組み立面図であり、図2は、実施例1に係る摩擦減震装置の地震時における作動説明図であって、図2(a)は上部滑り平板、中間部滑り平板および下部滑り平板間に滑りが生じていない状態を示し、図2(b)および図2(c)は上部滑り平板および中間部滑り平板間に滑りが生じている状態を示し、図3は、実施例2に係る摩擦減震装置の地震時における作動説明図であって、図3(a)は上部滑り平板、中間部滑り平板および下部滑り平板間に滑りが生じていない状態を示し、図3(b)および図3(c)は上部滑り平板および中間部滑り平板間に滑りが生じている状態を示している。なお、図1では、実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置が併設されるように図示しているが、必ずしも実施例1および実施例2に係る摩擦減震装置を併設する必要がないことは勿論であり、通常はそれぞれ単独で設置することになる。
図1ないし図3において、符号1は実施例1に係る摩擦減震装置、符号2は実施例2に係る摩擦減震装置、符号10は上部滑り平板、中間部滑り平板および下部滑り平板の積層体である滑り平板、符号11は上部滑り平板、符号12は中間部滑り平板、符号13は下部滑り平板、符号15は筒体、符号21はアンカーボルト、符号23は杭頭カバー、符号25は突出棒、符号27は土台、符号29は基礎、符号31は杭、符号33は間隙保持材、符号51は建物、符号53は絶縁層、符号55は緩衝帯、である。
まず、実施例1に係る摩擦減震装置1について、図1および図2を基に説明する。
摩擦減震装置1は、コンクリート製の布基礎である基礎29に木製の水平材である土台27を固定するアンカーボルト21と、アンカーボルト21に貫通され土台27の底面に固定される上部滑り平板11と、アンカーボルト21に貫通され基礎29の表面に固定される下部滑り平板13と、アンカーボルト21に貫通され上部滑り平板11と下部滑り平板13に介挿される中間部滑り平板12と、から構成されている。
アンカーボルト21は、その一端が基礎29に埋設される鋼製のアンカーボルト本体と、アンカーボルト本体の他端に螺刻された雄螺子部に挿入されるワッシャーと、前記雄螺子部に螺合するナットと、から構成されていて、アンカーボルト21を介して基礎29に土台27が固定されるようになっている。
上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13は矩形または円形のステンレス鋼製であって、それぞれの中心部にはアンカーボルト21が貫通する貫通孔が貫設されていて、上部滑り平板11および中間部滑り平板12の貫通孔はアンカーボルト21の直径よりも略5mm大きくなっている。そして、前述したように、上から上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13がこの順に土台27と基礎29とに挟持されていて、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13には、土台27を介して建物51の荷重のみが作用するようになっている。したがって、基礎29に土台27を固定する際には、アンカーボルト21のナットを締付過ぎないようにし、取付け時においては、アンカーボルト21には殆ど引張応力が働かないようにする必要がある。
なお、実施例では、土台27を木製としているため、アンカーボルトの木製土台への減り込みを考慮して上部滑り平板11および中間部滑り平板12の貫通孔径をアンカーボルト径+5mmとしているが、土台27が鋼製の場合にはアンカーボルト径+10mm程度とすることが好ましい。また、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13をステンレス鋼製としているが、鋼鉄製としても良いことは勿論である。
なお、実施例では、土台27を木製としているため、アンカーボルトの木製土台への減り込みを考慮して上部滑り平板11および中間部滑り平板12の貫通孔径をアンカーボルト径+5mmとしているが、土台27が鋼製の場合にはアンカーボルト径+10mm程度とすることが好ましい。また、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13をステンレス鋼製としているが、鋼鉄製としても良いことは勿論である。
上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13は、その表面の研磨処理等により、上部滑り平板11および中間部滑り平板12同士の静止摩擦係数が0.1となるように調整され、中間部滑り平板12および下部滑り平板13同士は静止摩擦係数が0.3となるように調整されている。なお、静止摩擦係数の数値は、建物51の立地条件等を勘案して、所望の数値とすることができることは勿論である。また、ステンレス鋼製に代えて鋼鉄製とした場合には、研磨処理に代えてメッキ処理または塗装処理する。
つぎに、摩擦減震装置1の設置方法およびその作用効果について説明する。
新築工事における摩擦減震装置1の設置手順例としては、
(1)コンクリートを打設した基礎29から突出しているアンカーボルト21に下部滑り平板13を貫通させて基礎29の表面に固定する。なお、固定方法としては、たとえば、基礎29に溶接用の鉄筋やプレートを埋設しておいて、埋設した鉄筋やプレートに下部滑り平板13を溶着することにより基礎29の表面に固定するような公知の方法で固着することも含まれるが、コンクリートと金属板との静止摩擦係数は0.4よりもはるかに大きいことからコンクリートの表面に下部滑り平板13を載置するだけでも構わない。
(2)下部滑り平板13の上部に中間部滑り平板12を載置する。この際、アンカーボルト21の中心と中間部滑り平板12の貫通孔の中心を一致させるようにする。その結果、アンカーボルト21の外周面と中間部滑り平板12の貫通孔の内周縁は略2.5mmの間隙を有することになる。
(3)アンカーボルト21の位置に合わせて土台27に錐で孔を開け、この穴に合わせて上部滑り平板11を土台27に固定する。固定方法としては、たとえば、上部滑り平板11に複数個の孔を開け、木螺子により土台27に固着することも含まれるが、前述したように、木材と金属板との静止摩擦係数は0.4よりもはるかに大きく、かつ、木材に金属板が減り込むこともあって、前述同様に、木材の表面に上部滑り平板11を密接するだけでも構わない。
(4)上部滑り平板11を取付けた面を下にして土台27をアンカーボルト21に挿入し、その後、アンカーボルト21にワッシャーを挿入し、ナットを螺入して締め付ける。この際、前述したように、ナットを締付過ぎないようにして、アンカーボルト21には殆ど引張応力が働かないようにする。
(1)コンクリートを打設した基礎29から突出しているアンカーボルト21に下部滑り平板13を貫通させて基礎29の表面に固定する。なお、固定方法としては、たとえば、基礎29に溶接用の鉄筋やプレートを埋設しておいて、埋設した鉄筋やプレートに下部滑り平板13を溶着することにより基礎29の表面に固定するような公知の方法で固着することも含まれるが、コンクリートと金属板との静止摩擦係数は0.4よりもはるかに大きいことからコンクリートの表面に下部滑り平板13を載置するだけでも構わない。
(2)下部滑り平板13の上部に中間部滑り平板12を載置する。この際、アンカーボルト21の中心と中間部滑り平板12の貫通孔の中心を一致させるようにする。その結果、アンカーボルト21の外周面と中間部滑り平板12の貫通孔の内周縁は略2.5mmの間隙を有することになる。
(3)アンカーボルト21の位置に合わせて土台27に錐で孔を開け、この穴に合わせて上部滑り平板11を土台27に固定する。固定方法としては、たとえば、上部滑り平板11に複数個の孔を開け、木螺子により土台27に固着することも含まれるが、前述したように、木材と金属板との静止摩擦係数は0.4よりもはるかに大きく、かつ、木材に金属板が減り込むこともあって、前述同様に、木材の表面に上部滑り平板11を密接するだけでも構わない。
(4)上部滑り平板11を取付けた面を下にして土台27をアンカーボルト21に挿入し、その後、アンカーボルト21にワッシャーを挿入し、ナットを螺入して締め付ける。この際、前述したように、ナットを締付過ぎないようにして、アンカーボルト21には殆ど引張応力が働かないようにする。
上記の手順により新築の建物51に摩擦減震装置1は設置されるが、摩擦減震装置1はアンカーボルト21の部分のみならず、アンカーボルト21、21間に設置しても良い。この場合は、当然ながら、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13に貫設される貫通孔は不要である。
また、摩擦減震装置1を既存の建物51に設置する場合には、たとえば、土台27をジャッキアップして基礎29との間に隙間を開け、その隙間に重ね合わせた上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13を挿入し、その後ジャッキダウンすることにより設置することができる。そして、既存の建物51のアンカーボルト21の部分に取り付ける場合には、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の貫通孔に連通するスリットを設け、このスリットにアンカーボルト21を挿通させることにより設置できる。なお、上部滑り平板11の土台27の固定、および下部滑り平板13の基礎29の固定は、たとえば、上部滑り平板11および下部滑り平板13をL字型に折り曲げ、その折曲げた部分を固着することにより行うことができる。
摩擦減震装置1が設置された建物51では、地震により基礎29が横揺れすると、横揺れが小さいときは、基礎29と一緒に土台27が揺れ、したがって、建物51も揺れる。これは、摩擦減震装置1を構成する上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13間に静止摩擦力が介在するためである。一方、横揺れの加速度がある限度を超えると滑りが生ずる。この滑りにより、滑り面では摩擦による摩擦熱が発生して、地震エネルギーを費消して基礎29の揺れが減衰されて土台27に伝達される。
ここで、摩擦係数(μ)と地震の大きさとの関係について説明する。
土台27より上部の建物51の質量をWとすると、基礎29と土台27との間に介挿したすべての摩擦減震装置1に働く最大静止摩擦力Ffは、下記の式(1)で表される。
Ff=Wμ―――――――――――(1)
一方、地震の加速度をαとすると、土台27より上部の建物51に働く水平方向の荷重Fhは、下記の式(2)で表される。
Fh=Wα―――――――――――(2)
最大静止摩擦力に抗して地震の横揺れにより上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13間に滑りが生ずるのは、水平方向の荷重Fhが最大静止摩擦力Ffを超えたとき、すなわち、Fh(=Wα)≧Ff(=Wμ)のときである。したがって、α≧μ、なる関係式が成立する。
ところで、地震の大きさを表す単位には、震度、ガル(gal)、カイン(kine)およびマグニチュード(M)の4つの単位が用いられている。この内、ガルは地震動の大きさを加速度で表したものであり、上記のαと同義であり、静止摩擦係数(μ)と同列に扱うことができるが、ガルの単位はcm/s2であるので、静止摩擦係数(μ)と同列に扱うためには、静止摩擦係数(μ)に1,000を乗ずる必要がある。
土台27より上部の建物51の質量をWとすると、基礎29と土台27との間に介挿したすべての摩擦減震装置1に働く最大静止摩擦力Ffは、下記の式(1)で表される。
Ff=Wμ―――――――――――(1)
一方、地震の加速度をαとすると、土台27より上部の建物51に働く水平方向の荷重Fhは、下記の式(2)で表される。
Fh=Wα―――――――――――(2)
最大静止摩擦力に抗して地震の横揺れにより上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13間に滑りが生ずるのは、水平方向の荷重Fhが最大静止摩擦力Ffを超えたとき、すなわち、Fh(=Wα)≧Ff(=Wμ)のときである。したがって、α≧μ、なる関係式が成立する。
ところで、地震の大きさを表す単位には、震度、ガル(gal)、カイン(kine)およびマグニチュード(M)の4つの単位が用いられている。この内、ガルは地震動の大きさを加速度で表したものであり、上記のαと同義であり、静止摩擦係数(μ)と同列に扱うことができるが、ガルの単位はcm/s2であるので、静止摩擦係数(μ)と同列に扱うためには、静止摩擦係数(μ)に1,000を乗ずる必要がある。
上記を踏まえて、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を0.1とし、他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を0.3とした場合における摩擦減震装置1の減震作用について説明する。
上述したように、横揺れが小さく100ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.1)以下のときは、基礎29と一緒に土台27(すなわち建物51)が揺れて、摩擦減震装置1は働かない(図2(a))。
横揺れが100ガルを超えると、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の内、摩擦係数を0.1とした面で滑りが生ずる(図2(b)および(c))。この滑りにより、滑り面では摩擦による摩擦熱が発生して、地震エネルギーを費消して基礎29の揺れが減衰されて建物51に伝達される。そして、一旦滑りが生ずると、動摩擦係数は静止摩擦係数の数十%に低下するので、前後左右の横揺れに対して、滑りが連続して起き、揺れの減衰効果は持続する。
そして、横揺れが300ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.3)を超えると、静止摩擦係数を0.1または0.3とした面で滑りが生じ、摩擦による摩擦熱が発生して地震エネルギーを費消し、基礎29の揺れがさらに減衰されて建物51に伝達され、前述したように、一旦滑りが生ずると、前後左右の横揺れに対して、滑りが連続して起きるので揺れの減衰効果は持続する。
さらに、横揺れが400ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.4(=0.1+0.3))を超えると、静止摩擦係数を0.1および0.3とした面で滑りが生じ、摩擦による摩擦熱が発生して地震エネルギーを費消し、基礎29の揺れがさらに減衰されて建物51に伝達される。したがって、摩擦減震装置1を上部滑り平板11、中間部滑り平板12、下部滑り平板13のような滑り平板がn枚からなる構成とし、n枚の滑り平板間の静止摩擦係数をそれぞれμ1、μ2、・・・μ(n+1)とした場合には、最大、(μ1+μ2+・・・+μ(n+1))×103ガルの地震に対して有効に機能することになる。
上述したように、横揺れが小さく100ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.1)以下のときは、基礎29と一緒に土台27(すなわち建物51)が揺れて、摩擦減震装置1は働かない(図2(a))。
横揺れが100ガルを超えると、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の内、摩擦係数を0.1とした面で滑りが生ずる(図2(b)および(c))。この滑りにより、滑り面では摩擦による摩擦熱が発生して、地震エネルギーを費消して基礎29の揺れが減衰されて建物51に伝達される。そして、一旦滑りが生ずると、動摩擦係数は静止摩擦係数の数十%に低下するので、前後左右の横揺れに対して、滑りが連続して起き、揺れの減衰効果は持続する。
そして、横揺れが300ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.3)を超えると、静止摩擦係数を0.1または0.3とした面で滑りが生じ、摩擦による摩擦熱が発生して地震エネルギーを費消し、基礎29の揺れがさらに減衰されて建物51に伝達され、前述したように、一旦滑りが生ずると、前後左右の横揺れに対して、滑りが連続して起きるので揺れの減衰効果は持続する。
さらに、横揺れが400ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.4(=0.1+0.3))を超えると、静止摩擦係数を0.1および0.3とした面で滑りが生じ、摩擦による摩擦熱が発生して地震エネルギーを費消し、基礎29の揺れがさらに減衰されて建物51に伝達される。したがって、摩擦減震装置1を上部滑り平板11、中間部滑り平板12、下部滑り平板13のような滑り平板がn枚からなる構成とし、n枚の滑り平板間の静止摩擦係数をそれぞれμ1、μ2、・・・μ(n+1)とした場合には、最大、(μ1+μ2+・・・+μ(n+1))×103ガルの地震に対して有効に機能することになる。
つぎに、実施例2に係る摩擦減震装置2について、図1および図3を基に説明するが、実施例1に係る摩擦減震装置1と略同様の構成であり、その異なる主なところは、摩擦減震装置2の設置場所にあるので、ここでは、主に、実施例1と異なる構成および作用について説明する。
摩擦減震装置2は、鋼管製の杭31の杭頭と杭31の杭頭が略5mmの間隙を以って嵌合する基礎29の底面に凹設された杭頭嵌合穴との間に設置されていて、杭31の杭頭端に固定される下部滑り平板13と、杭頭嵌合穴の底面に固定される下部滑り平板13と、上部滑り平板11と下部滑り平板13に介挿される中間部滑り平板12と、から構成されている。
なお、後述するように、実施例2では、杭頭嵌合穴は円筒状かつ有底の筒体15が基礎29内に埋設されることにより形成されていて、杭頭嵌合穴と有底の筒体15とは一致している。
なお、後述するように、実施例2では、杭頭嵌合穴は円筒状かつ有底の筒体15が基礎29内に埋設されることにより形成されていて、杭頭嵌合穴と有底の筒体15とは一致している。
前述したように、筒体15はステンレス鋼製の有底の円筒であって、カップを伏せたような形状となっていて、底部は上部滑り平板11と一体となっている。なお、上部滑り平板11を底部と別体としても良く、さらには、底部自体を上部滑り平板11としても良い。
また、杭頭カバー23は筒体15と同様にステンレス鋼製の有底の円筒であって、カップを伏せたような形状となっていて、底部は下部滑り平板13と一体となっている。なお、下部滑り平板13を底部と別体としても良く、さらには、底部自体を下部滑り平板13上部滑り平板11としても良い。
さらに、円形のステンレス鋼製である中間部滑り平板12は、中心部に貫通孔を有し、下部滑り平板13の中心部から立設された突出棒25が貫通孔を貫通して上部滑り平板11と下部滑り平板13に介挿されている。そして、中間部滑り平板12の貫通孔は突出棒25の直径よりも略10mm大きくなっている。なお、突出棒25は、摩擦減震装置2に横揺れが生じたときに、中間部滑り平板12のズレを所定の範囲内に止めておく役割を担うものである。
また、実施例2では、上部滑り平板11、筒体15、下部滑り平板13、杭頭カバー23および中間部滑り平板12をステンレス鋼製としているが、鋼鉄製としても良いことは勿論である。
また、杭頭カバー23は筒体15と同様にステンレス鋼製の有底の円筒であって、カップを伏せたような形状となっていて、底部は下部滑り平板13と一体となっている。なお、下部滑り平板13を底部と別体としても良く、さらには、底部自体を下部滑り平板13上部滑り平板11としても良い。
さらに、円形のステンレス鋼製である中間部滑り平板12は、中心部に貫通孔を有し、下部滑り平板13の中心部から立設された突出棒25が貫通孔を貫通して上部滑り平板11と下部滑り平板13に介挿されている。そして、中間部滑り平板12の貫通孔は突出棒25の直径よりも略10mm大きくなっている。なお、突出棒25は、摩擦減震装置2に横揺れが生じたときに、中間部滑り平板12のズレを所定の範囲内に止めておく役割を担うものである。
また、実施例2では、上部滑り平板11、筒体15、下部滑り平板13、杭頭カバー23および中間部滑り平板12をステンレス鋼製としているが、鋼鉄製としても良いことは勿論である。
そして、摩擦減震装置1と同様に、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13は、その表面の研磨処理等により、上部滑り平板11および中間部滑り平板12同士の静止摩擦係数が0.1となるように調整され、中間部滑り平板12および下部滑り平板13同士は静止摩擦係数が0.3となるように調整されている。なお、静止摩擦係数の数値は、建物51の立地条件等を勘案して、所望の数値とすることができることは勿論であり、ステンレス鋼製に代えて鋼鉄製とした場合には、研磨処理に代えてメッキ処理または塗装処理する。
実施例2では、一体となった下部滑り平板13および杭頭カバー23と一体となった上部滑り平板11と筒体15との間には、伸縮可能な間隙保持材33が充填されていて、この間隙保持材33には発泡スチロールが使用されている。
さらに、基礎29の外周側面と該外周側面周りの地盤との間には緩衝帯55が介設されていて、この緩衝帯55には緩衝材としての砂利が充填されている。
さらに、基礎29の外周側面と該外周側面周りの地盤との間には緩衝帯55が介設されていて、この緩衝帯55には緩衝材としての砂利が充填されている。
つぎに、摩擦減震装置2の設置方法およびその作用効果について説明する。
摩擦減震装置2は、主に杭基礎を有する新築の建物に設置される摩擦減震装置であるが、建物51に対する設置手順例としては、
(1)地盤から突出している鋼管製の杭31の杭頭を所定のレベルに揃え、その上から一体となった下部滑り平板13と杭頭カバー23を杭31の杭頭に被せるようにして固定する。下部滑り平板13の中心部から立設された突出棒25は、下部滑り平板13に固定しても良いし、下部滑り平板13を貫通して杭33の杭頭に固定しても良い。
(2)杭31、31間の基礎29の下面となる地盤上に、基礎29と地盤とを絶縁するベントナイト、粘土、砂または砂利等を敷いて絶縁層53を形成し、必要に応じて絶縁層53上に捨てコンクリートを打設する。
(3)下部滑り平板13の上部に中間部滑り平板12を載置する。この際、突出棒25の中心と中間部滑り平板12の貫通孔の中心を一致させるようにする。その結果、突出棒25の外周面と貫通孔の内周縁は略5mmの間隙を有することになる。
(4)中間部滑り平板12の上部に一体となった上部滑り平板11と円筒状の筒体15を載置し固定する。実施例2では間隙保持材33が筒体15の内周面に嵌着されているため、一体となった下部滑り平板13と杭頭カバー23に嵌合させるだけでがたつくこともなく固定することができる。
そして、中間部滑り平板12と上部滑り平板11が密着するようにするため、突出棒25の天端レベルは中間部滑り平板12の表面のレベルよりも下に位置し、かつ、絶縁層53または絶縁層53上に打設した捨てコンクリートの天端レベルは筒体15の下端レベルよりも下に位置するようにする必要がある。なお、一体となった上部滑り平板11と筒体15の固定は、たとえば、絶縁層53または絶縁層53上の捨てコンクリートにモルタルを塗りつけて行うこともできる。
(5)その後、基礎29の鉄筋、型枠を組み、コンクリートを打設する。なお、基礎コンクリートの打設に際しては、一体となった下部滑り平板13および杭頭カバー23と一体となった上部滑り平板11と筒体15との間には伸縮可能な間隙保持材33が充填されているため、コンクリートが回り込むことはない。
(6)基礎29の外周側の型枠を解体した後、基礎29の外周側面と該外周側面周りの地盤との間に緩衝材および埋め戻し材を兼ねた砂利を投入して緩衝帯55を形成する。
以上の工程を経て、建物51に摩擦減震装置2が設置される。
(1)地盤から突出している鋼管製の杭31の杭頭を所定のレベルに揃え、その上から一体となった下部滑り平板13と杭頭カバー23を杭31の杭頭に被せるようにして固定する。下部滑り平板13の中心部から立設された突出棒25は、下部滑り平板13に固定しても良いし、下部滑り平板13を貫通して杭33の杭頭に固定しても良い。
(2)杭31、31間の基礎29の下面となる地盤上に、基礎29と地盤とを絶縁するベントナイト、粘土、砂または砂利等を敷いて絶縁層53を形成し、必要に応じて絶縁層53上に捨てコンクリートを打設する。
(3)下部滑り平板13の上部に中間部滑り平板12を載置する。この際、突出棒25の中心と中間部滑り平板12の貫通孔の中心を一致させるようにする。その結果、突出棒25の外周面と貫通孔の内周縁は略5mmの間隙を有することになる。
(4)中間部滑り平板12の上部に一体となった上部滑り平板11と円筒状の筒体15を載置し固定する。実施例2では間隙保持材33が筒体15の内周面に嵌着されているため、一体となった下部滑り平板13と杭頭カバー23に嵌合させるだけでがたつくこともなく固定することができる。
そして、中間部滑り平板12と上部滑り平板11が密着するようにするため、突出棒25の天端レベルは中間部滑り平板12の表面のレベルよりも下に位置し、かつ、絶縁層53または絶縁層53上に打設した捨てコンクリートの天端レベルは筒体15の下端レベルよりも下に位置するようにする必要がある。なお、一体となった上部滑り平板11と筒体15の固定は、たとえば、絶縁層53または絶縁層53上の捨てコンクリートにモルタルを塗りつけて行うこともできる。
(5)その後、基礎29の鉄筋、型枠を組み、コンクリートを打設する。なお、基礎コンクリートの打設に際しては、一体となった下部滑り平板13および杭頭カバー23と一体となった上部滑り平板11と筒体15との間には伸縮可能な間隙保持材33が充填されているため、コンクリートが回り込むことはない。
(6)基礎29の外周側の型枠を解体した後、基礎29の外周側面と該外周側面周りの地盤との間に緩衝材および埋め戻し材を兼ねた砂利を投入して緩衝帯55を形成する。
以上の工程を経て、建物51に摩擦減震装置2が設置される。
摩擦減震装置2の作用は、摩擦減震装置2の作用と略同様である。すなわち、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を0.1とし、他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数を0.3とした場合には、上述したように、横揺れが小さく100ガル(すなわち、静止摩擦係数に換算して0.1)以下のときは、基礎29と一緒に土台27(すなわち建物51)が揺れて、摩擦減震装置1は働かない(図3(a))。横揺れが100ガルを超えると、上部滑り平板11、中間部滑り平板12および下部滑り平板13の内、摩擦係数を0.1とした面で滑りが生ずる(図3(b)および(c))。この滑りにより、滑り面では摩擦による摩擦熱が発生して、地震エネルギーを費消して基礎29の揺れが減衰されて建物51に伝達される。そして、一旦滑りが生ずると、動摩擦係数は静止摩擦係数の数十%に低下するので、前後左右の横揺れに対して、滑りが連続して起き、揺れの減衰効果は持続する。
ところで、摩擦減震装置1と摩擦減震装置2の作用において異なるところは、建物51が地震による横揺れを受けたときに、摩擦減震装置1では土台27より上部が減震され、摩擦減震装置2では基礎29より上部が減震されるところにある。すなわち、摩擦減震装置2では、通常は地盤内に埋設される基礎29の揺れと地盤の揺れとが一致しない。
このため、基礎29の周りに、砂利を充填した緩衝帯55を設置することにより、摩擦減震装置2の減震効果を十分に発揮させることができる。すなわち、基礎29は揺れて緩衝帯55を押圧するが、押圧された緩衝帯55は、砂利層がクッションとなって押圧力を吸収し、地盤にこの押圧力が伝わらないため、基礎29は揺れても地盤から水平方向の外力を受けることはない。さらに、緩衝帯55により建物周りの水はけも良くなるという副次的効果も生ずる。
このため、基礎29の周りに、砂利を充填した緩衝帯55を設置することにより、摩擦減震装置2の減震効果を十分に発揮させることができる。すなわち、基礎29は揺れて緩衝帯55を押圧するが、押圧された緩衝帯55は、砂利層がクッションとなって押圧力を吸収し、地盤にこの押圧力が伝わらないため、基礎29は揺れても地盤から水平方向の外力を受けることはない。さらに、緩衝帯55により建物周りの水はけも良くなるという副次的効果も生ずる。
1 実施例1に係る摩擦減震装置
2 実施例2に係る摩擦減震装置
11 上部滑り平板
12 中間部滑り平板
13 下部滑り平板
15 筒体
21 アンカーボルト
27 土台
29 基礎
31 杭
33 間隙保持材
51 建物
55 緩衝帯
2 実施例2に係る摩擦減震装置
11 上部滑り平板
12 中間部滑り平板
13 下部滑り平板
15 筒体
21 アンカーボルト
27 土台
29 基礎
31 杭
33 間隙保持材
51 建物
55 緩衝帯
Claims (10)
- 建物の基礎と土台との間または杭頭と基礎との間に重ね合わされて介挿される少なくとも3枚の滑り平板からなり、
最下段に位置する該滑り平板は該基礎または該杭頭に固定されるとともに、最上段に位置する該滑り平板は該土台または該基礎に固定され、
中間に位置する該滑り平板は上部の該滑り平板および下部の該滑り平板に対して摺動可能に設置され、
相互に面接触する該滑り平板の1つの滑り面同士は静止摩擦係数が所定値となるように形成されるとともに、他の1つの滑り面同士は静止摩擦係数が該所定値よりも大きな値となるように形成される、ことを特徴とする摩擦減震装置。 - 前記1つの滑り面同士の所定値である静止摩擦係数は略0.1〜0.2であり、前記他の1つの滑り面同士の静止摩擦係数は略0.2〜0.5である、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦減震装置。
- 前記滑り平板の表面は非処理のまま、または前記静止摩擦係数となるように研磨処理され、メッキ処理され、若しくは塗装されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦減震装置。
- 前記滑り平板は金属板または合成樹脂板である、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の摩擦減震装置。
- 前記基礎はコンクリート製の基礎であり、前記土台は木製または鋼製の水平材であって、該土台は該基礎に複数のアンカーボルトを介して固定され、
前記滑り平板は該アンカーボルトに挿通されて該基礎および該土台間に介挿され、および/または複数の該アンカーボルト間の該基礎および該土台間に介挿され、
該アンカーボルトが挿通される該滑り平板には挿通孔が穿設されて、該アンカーボルトは少なくとも該基礎に固定される以外の該滑り平板の該挿通孔に遊貫して挿通される、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置。 - 前記杭は鋼製、コンクリート製または合成樹脂製の杭であり、前記基礎はコンクリート製の基礎であって、該杭の上部は該基礎の底面に凹設された杭頭嵌合穴に所定の間隙を以って嵌合し、
該基礎は該滑り平板を介して該杭頭に摺動可能に載置されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の摩擦減震装置。 - 前記所定の間隙は略5mmである、ことを特徴とする請求項6に記載の摩擦減震装置。
- 前記所定の間隙内には伸縮可能な間隙保持材が充填されている、ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の摩擦減震装置。
- 前記杭頭嵌合穴は最上段に位置する前記滑り平板および該滑り平板の周辺縁から垂設される該滑り平板と同じ素材の筒体により被覆されている、ことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の摩擦減震装置。
- 前記基礎の外周側面と該外周側面周りの地盤との間には緩衝帯が介挿されている、ことを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の摩擦減震装置。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012002026A (ja) * | 2010-06-19 | 2012-01-05 | Jukankyo Sekkeishitsu:Kk | 鋼管杭を用いた免震基礎構造 |
JP2012001994A (ja) * | 2010-06-18 | 2012-01-05 | Nice Holdings Inc | 地震動が抑制可能な建築地盤構造およびその構築方法 |
JP5657825B1 (ja) * | 2014-05-28 | 2015-01-21 | 薫和 半澤 | 摩擦減震装置 |
JP2015231654A (ja) * | 2014-06-10 | 2015-12-24 | 株式会社ディスコ | 加工装置設置用治具及び加工装置の設置方法 |
-
2008
- 2008-06-04 JP JP2008146369A patent/JP2009293234A/ja not_active Withdrawn
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