JP2009289461A - 燃料電池面内状態推定システム及び燃料電池面内状態推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、燃料電池面内状態推定システムに関し、燃料電池を構成する膜電極接合体の面内における発電状態分布を簡易かつ精度良く推定することを目的とする。
【解決手段】アノード及びカソードのそれぞれに反応ガスの供給を受けることにより発電を行う燃料電池10の膜電極接合体12を設ける。ECU50は、膜電極接合体12の発電状態と発電環境との関係を定めたマップを記憶する。膜電極接合体12を、仮想的に、反応ガスの流れに沿って並んだ複数の小領域に区分する。ECU50は、小領域毎に発電環境を推定し、その結果を発電特性に当てはめることにより、小領域毎に発電状態を推定する。
【選択図】図1

Description

この発明は、燃料電池面内状態推定システム及び推定方法に係り、特に、燃料電池を構成する膜電極接合体の面内における発電状態分布を精度良く推定するための面内状態推定システム及び推定方法に関する。
特開2005−347016号公報には、燃料電池の膜電極接合体の面内状態を簡易に予測するための方法が開示されている。上記公報には、具体的には、予測の対象である膜電極接合体を1/nに縮小したモデルを作成して、このモデルを用いて面内状態を予測する方法が開示されている。
上記従来の予測方法では、膜電極接合体の面内状態を、既存の演算方法で予測することとしている。ここで用いられる演算方法は、膨大な適合作業等を伴って開発すべきものであるため、その開発に長い期間を要する。1/nの縮小モデルを用いて予測演算を行うこととすれば、フルサイズの予測を行う場合に比して、演算方法の開発時間を著しく短縮することができる。この点、上記従来の予測方法は、膜電極接合体の面内状態を簡易に予測する方法として有効である。
特開平6−188020号公報 特開2006−244757号公報
しかしながら、1/nの縮小モデルにおいて生ずる現象は、フルサイズの膜電極接合体において生ずる現象と正確には一致しない。このため、上記従来の予測方法では、現実の膜電極接合体において生ずる面内状態を正確に予測することはできない。また、1/nの縮小モデルを用いたとしても、そのモデルに対応する演算方法を開発するには、未だ多大な時間を要する。この点、上記従来の方法は、開発工数の面でも、予測精度の面でも、改善の余地を残すものであった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、燃料電池の膜電極接合体における面内の発電量分布を簡易かつ正確に予測することのできる面内状態推定システム及び予測方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料電池面内状態推定システムであって、
アノード及びカソードのそれぞれに反応ガスの供給を受けることにより発電を行う燃料電池の膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の発電状態と発電環境との関係を定めた発電特性を記憶する発電特性記憶手段と、
前記膜電極接合体を、仮想的に、前記反応ガスの流れに沿って並んだ複数の小領域に区分する小領域定義手段と、
前記複数の小領域のそれぞれにつき、前記発電環境を推定する発電環境推定手段と、
前記発電環境の推定結果を前記発電特性に当てはめることにより、小領域毎に、前記発電状態を推定する発電状態推定手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記発電状態は、発電密度を含み、
前記発電環境は、膜電極接合体の面内圧力、カソードの酸素濃度、カソード湿度、及びアノード湿度を含み、
前記発電環境推定手段は、
個々の小領域について、前記面内圧力を推定する面内圧力推定手段と、
個々の小領域について、前記酸素濃度を推定する酸素濃度推定手段と、
個々の小領域について、前記カソード湿度を推定するカソード湿度推定手段と、
個々の小領域について、前記アノード湿度を推定するアノード湿度推定手段と、を含むことを特徴とする。
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記発電環境は、膜電極接合体の発生電圧及び面内温度を含み
前記発電環境推定手段は、
個々の小領域について、前記発生電圧を推定する発生電圧推定手段と、
個々の小領域について、前記面内温度を推定する面内温度推定手段と、を含むことを特徴とする。
また、第4の発明は、第2又は第3の発明において、
前記発電環境推定手段は、
小領域毎に、カソードに存在する個々のカソード成分の成分量を推定するカソード成分量推定手段と、
小領域毎に、アノードに存在する個々のアノード成分の成分量を推定するアノード成分量推定手段と、を備え、
前記酸素濃度推定手段は、カソード成分の成分量に基づいて前記酸素濃度を推定し、
前記カソード湿度推定手段は、カソード成分の成分量に基づいて前記カソード湿度を推定し、
前記アノード湿度推定手段は、アノード成分の成分量に基づいて前記アノード湿度を推定することを特徴とする。
また、第5の発明は、第4の発明において、
前記複数の小領域において、前記個々のカソード成分、及び前記個々のアノード成分が、それぞれ既定の初期状態量となるように、前記燃料電池を起動運転させる初期状態形成手段と、
前記複数の小領域のそれぞれについて、前記既定の初期状態量を記憶する初期状態量記憶手段と、を備え、
前記カソード成分量推定手段は、前記起動運転の終了時に、前記既定の初期状態量として記憶されている値を前記個々のカソード成分の成分量とし、
前記アノード成分量推定手段は、前記起動運転の終了時に、前記既定の初期状態量として記憶されている値を前記個々のアノード成分の成分量とすることを特徴とする。
また、第6の発明は、第4又は第5の発明において、
前記カソード成分量推定手段は、
発電反応に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード発電変化反映手段と、
カソードからアノードへの成分移動に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード膜通過量反映手段と、
隣接する小領域間で生ずる成分移動に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード領域移動量反映手段と、を備え、
前記アノード成分量推定手段は、
発電反応に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード発電変化反映手段と、
カソードからアノードへの成分移動に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード膜通過量反映手段と、
隣接する小領域間で生ずる成分の移動に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード領域移動量反映手段と、を備えことを特徴とする。
また、第7の発明は、第6の発明において、
前記カソード成分は、酸素、窒素及び水を含み、
前記アノード成分は、水素及び水を含み、
前記カソード発電変化反映手段は、
膜電極接合体の発電状態とカソードにおける酸素消費量との関係を定めた酸素消費特性を記憶した酸素消費特性記憶手段と、
前記発電状態の推定結果を前記酸素消費特性に当てはめて酸素消費量を推定する酸素消費量推定手段と、
前記酸素消費量の推定量を、カソードの酸素量から減ずる酸素消費量減算手段と、
膜電極接合体の発電状態とカソードにおける水生成量との関係を定めた水生成特性を記憶した水生成特性記憶手段と、
前記発電状態の推定結果を前記水生成特性に当てはめて水生成量を推定する水生成量推定手段と、
前記水生成量の推定量を、カソードの水量に加える水生成量加算手段を備え、
前記アノード発電変化反映手段は、
膜電極接合体の発電状態とアノードにおける水素消費量との関係を定めた水素消費特性を記憶した水素消費特性記憶手段と、
前記発電状態の推定結果を前記水素消費特性に当てはめて水素消費量を推定する水素消費量推定手段と、
前記水素消費量の推定量を、アノードの水素量から減ずる水素消費量減算手段を備え、
前記カソード膜通過量反映手段及び前記アノード膜通過量反映手段の少ないとも一方は、
前記膜電極接合体の発電環境とカソードからアノードへの水移動量との関係を定めた水移動特性を記憶する水移動特性記憶手段と、
前記発電環境の推定結果を前記水移動特性に当てはめて水移動量を推定する水移動量推定手段を備え、
前記カソード膜通過量反映手段は、前記水移動量の推定量を、カソードの水量から減ずる水移動量減算手段を備え、
前記アノード膜通過量反映手段は、前記水移動量の推定量を、アノードの水量に加える水移動量加算手段を備えることを特徴とする。
また、第8の発明は、第6又は第7の発明において、
前記カソード領域移動量反映手段は、
個々の小領域について、カソード面内圧力を推定するカソード圧力推定手段と、
隣接する小領域間のカソード面内圧力差を算出するカソード圧力差算出手段と、
前記カソード面内圧力差に基づいて、前記隣接する小領域間を移動する個々のカソード成分の移動量を推定するカソード成分移動量推定手段と、
個々のカソード成分量を、隣接する前段の小領域から移動してくる流入量だけ増やし、隣接する後段の小領域に移動していく流出量だけ減らすカソード移動量加減手段を備え、
前記アノード領域移動量反映手段は、
個々の小領域について、アノード面内圧力を推定するアノード圧力推定手段と、
隣接する小領域間のアノード面内圧力差を算出するアノード圧力差算出手段と、
前記アノード面内圧力差に基づいて、前記隣接する小領域間を移動する個々のアノード成分の移動量を推定するアノード成分移動量推定手段と、
個々のアノード成分量を、隣接する前段の小領域から移動してくる流入量だけ増やし、隣接する後段の小領域に移動していく流出量だけ減らすアノード移動量加減手段を備えることを特徴とする。
また、第9の発明は、第8の発明において、
前記カソード成分移動量推定手段は、
前記カソード面内圧力差を、前記隣接する小領域間を移動するカソード成分総移動量に換算するためのカソード係数を設定するカソード係数設定手段と、
前記カソード面内圧力差と、前記カソード係数とに基づいて、前記カソード成分総移動量を算出するカソード成分総移動量算出手段と、
前記カソード成分総移動量に、移動元の小領域における個々のカソード成分の割合を掛け合わせることにより、個々のカソード成分の移動量を算出するカソード個別成分移動量算出手段を備え、
前記アノード成分移動量推定手段は、
前記アノード面内圧力差を、前記隣接する小領域間を移動するアノード成分総移動量に換算するためのアノード係数を設定するアノード係数設定手段と、
前記アノード面内圧力差と、前記アノード係数とに基づいて、前記アノード成分総移動量を算出するアノード成分総移動量算出手段と、
前記アノード成分総移動量に、移動元の小領域における個々のアノード成分の割合を掛け合わせることにより、個々のアノード成分の移動量を算出するアノード個別成分移動量算出手段を備えることを特徴とする。
また、第10の発明は、第9の発明において、
カソードを流れる反応ガスの粘性を推定するカソード粘性推定手段と、
アノードを流れる反応ガスの粘性を推定するアノード粘性推定手段と、
個々の小領域に存在する液水量を推定する液水量推定手段を備え、
前記カソード係数設定手段は、カソードを流れる反応ガスの粘性と、カソードにおける液水の占有率とに基づいて、前記カソード係数を算出し、
前記アノード係数設定手段は、アノードを流れる反応ガスの粘性と、アノードにおける液水の占有率とに基づいて、前記アノード係数を算出することを特徴とする。
また、第11の発明は、燃料電池面内状態推定方法であって、
燃料電池の膜電極接合体のアノード及びカソードに、それぞれ反応ガスを供給するステップと、
前記膜電極接合体の発電状態と発電環境との関係を定めた発電特性を準備する発電特性準備ステップと、
前記膜電極接合体を、仮想的に、前記反応ガスの流れに沿って並んだ複数の小領域に区分する小領域定義ステップと、
前記複数の小領域のそれぞれにつき、前記発電環境を推定する発電環境推定ステップと、
前記発電環境の推定結果を前記発電特性に当てはめることにより、小領域毎に、前記発電状態を推定する発電状態推定ステップと、
を含むことを特徴とする。
また、第12の発明は、第11の発明において、
前記発電特性準備ステップは、
前記膜電極接合体と同じ構造を有し、面内の発電環境を実質的に均一にすることが可能な程度の大きさを有する膜電極接合体小片を準備するステップと、
前記膜電極接合体小片のアノード及びカソードに、反応ガスを供給するステップと、
前記反応ガスの入口における発電環境を変化させながら前記膜電極接合体小片の発電状態を計測する計測ステップと、
前記計測ステップの結果に基づいて前記発電特性を生成するステップを含むことを特徴とする。
第1又は第11の発明によれば、膜電極接合体を、仮想的に複数の小領域に区分し、小領域のそれぞれについて、発電環境を推定し、更に、その発電環境に基づいて発電状態を推定することができる。発電状態の推定対象となる領域が大きいほど、その対象内で発電環境が不均一となる。小領域に区分して推定を行うと、個々の小領域内では発電環境が均一であるものとして扱えるため、簡単な処理により発電状態を正しく推定することができる。このため、本発明によれば、膜電極接合体の発電状態の分布を、その全域において、簡単かつ正確に推定することができる。
第2の発明によれば、小領域のそれぞれについて、面内圧力、カソードの酸素濃度、カソード湿度、及びアノード湿度に基づいて、発電密度を正確に推定することができる。このため、本発明によれば、膜電極接合体の発電密度分布を、簡単かつ正確に推定することができる。
第3の発明によれば、小領域のそれぞれについて、発生電圧及び面内温度をも考慮して、電流密度を推定することができる。このため、本発明によれば、第2の発明に比して更に高い精度で電流密度分布を推定することができる。
第4の発明によれば、小領域毎に個々のカソード成分の成分量を推定し、その推定結果に基づいて、カソードの酸素濃度、及びカソード湿度を推定することができる。また、この発明によれば、小領域毎に個々のアノード成分の成分量を推定し、その推定結果に基づいて、アノード湿度を推定することができる。
第5の発明によれば、燃料電池を起動運転させることにより、個々の小領域におけるカソード成分及びアノード成分を、それぞれ初期状態量に初期化することができる。初期状態量は記憶されているため、起動運転が終了した時点で、その記憶値を読み出せば、カソード成分及びアノード成分を正しく推定することができる。
第6の発明によれば、カソード成分の成分量に、発電反応に伴う変化、カソードからアノードへの成分移動に伴う変化、及び隣接する小領域間での成分移動に伴う変化を反映させることができる。このため、本発明によれば、個々の小領域におけるカソード成分の成分量を正確に推定することができる。また、本発明によれば、アノード成分の成分量にも、発電反応に伴う変化、カソードからアノードへの成分移動に伴う変化、及び隣接する小領域間での成分移動に伴う変化を反映させることができる。このため、本発明によれば、アノード成分の成分量も正確に推定することができる。
第7の発明によれば、発電状態の推定結果が酸素消費特性に当てはめられることにより、カソードの酸素消費量が正しく推定される。そして、この酸素消費量が減じられることにより、カソードの酸素量が正しく推定される。また、本発明によれば、発電状態の推定結果が水生成特性に当てはめられることによりカソードにおける水生成量が正しく推定される。加えて、本発明によれば、発電環境の推定結果が水移動特性に当てはめられることによりカソードからアノードへの水移動量が正しく推定される。そして、水生成量が加算され、かつ、水移動量が減算されることにより、カソードの水量が正しく推定される。同時に、水移動量が加算されることにより、アノードの水量が正しく推定される。また、本発明によれば、発電状態の推定結果が水素消費特性に当てはめられることにより、アノードの水素消費量が正しく推定される。そして、この水素消費量が減じられることにより、アノードの水素量が正しく推定される。
第8の発明によれば、隣接する小領域間のカソード面内圧力差に基づいて、個々のカソード成分の移動量が推定される。そして、小領域毎に、前段からの流入量を増やし、後段への流出量を減らすことにより、小領域間の移動に伴う変化を、個々のカソード成分量に正しく反映させることができる。同様に、本発明によれば、小領域間の移動に伴う変化を、個々のアノード成分量に正しく反映させることができる
第9の発明によれば、カソード面内圧力差と、カソード係数とに基づいて、カソード成分総移動量を正確に算出することができる。更に、カソード成分総移動量に、移動元の小領域における個々のカソード成分の割合を掛け合わせることにより、個々のカソード成分の移動量を正確に算出することができる。同様に、本発明によれば、個々のアノード成分の移動量を正確に算出することができる。
第10の発明によれば、カソードを流れる反応ガスの粘性と、小領域における液水の占有率とに基づいて、カソードにおけるガスの流れ易さを、正しくカソード係数に反映させることができる。同様に、本発明によれば、アノードにおけるガスの流れ易さを、正しくアノード係数に反映させることができる。
第12の発明によれば、膜電極接合体小片を用いることにより、発電特性を簡単に生成することができる。すなわち、膜電極接合体小片においては、面内の発電環境を均一にすることができる。このため、反応ガスの入口において発電環境を変化させながら、膜電極接合体小片の発電状態を計測すれば、発電特性を簡単に生成することができる。
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシステムの構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、燃料電池10を備えている。燃料電池10は、積層された複数の膜電極接合体12を備えている。膜電極接合体12は、図1の紙面奥行き方向に広がりを有する板状の構造物である。
膜電極接合体12の内部には、電解質膜を挟んでアノードとカソードが形成されている。アノード側には、水素を含む燃料ガス(本実施形態では水素ガスとする)を面内に流通させるためのガス流路が形成されている。また、カソード側には、酸素を含む酸化ガス(本実施形態では空気とする)を面内に流通させるためのガス流路が形成されている。更に、個々の膜電極接合体の境界には、冷却水を流通させるための冷却水通路が形成されている。燃料電池10及び膜電極接合体12の構成は公知であるため、ここでは、これ以上の説明は省略する。
燃料電池10には、酸化ガス供給通路14と酸化ガス排出通路16が連通している。酸化ガス供給通路14は、加湿器18を介してコンプレッサ20に連通している。コンプレッサ20は、エアフィルタ22を通して吸入した空気を、酸化ガス供給通路14を介して燃料電池10に供給することができる。
コンプレッサ20とエアフィルタ22との間には、エアフロメータ(AFM)23が配置されている。AFM23は、コンプレッサ20に向かって流れる空気の量を、ノルマルリットル[NL]の単位で計測することができる。つまり、AFM23によれば、酸化ガス供給通路14を流れる空気量を、標準圧力・標準気圧下での体積流量に規格化して計測することができる。
酸化ガス供給通路14から燃料電池10に供給された空気は、積層された複数の膜電極接合体12のそれぞれが備えるカソード側のガス流路に分配される。このようにして分配された空気は、それぞれの膜電極接合体のカソード側の面内を伝って流れた後、酸化ガス排出通路16から排出される。
燃料電池10は、酸素と水素を反応させて発電を行うにあたり、カソード側において水を生成する。このため、酸化ガス排出通路16から排出されるガスには、水分が含まれている。加湿器18は、酸化ガス排出通路16に含まれる水分を利用して、酸化ガス供給通路14側の空気を加湿する機能を有している。このため、図1に示すシステムによれば、燃料電池10のカソード側に、加湿空気を供給することができる。
燃料電池10には、燃料ガス供給通路24及び燃料ガス排出通路26が連通している。燃料ガス供給通路24には、調整バルブ28を介して水素タンク30が連通している。この構成によれば、調整バルブ28を開くことで所望の圧力の水素ガスを燃料電池10に供給することができる。
燃料電池10に供給された水素ガスは、積層された複数の膜電極接合体12のそれぞれが備えるアノード側のガス流路に分配される。アノード側に供給された水素ガスは、それぞれの膜電極接合体の面内を伝って流れた後、燃料ガス排出通路26から排出される。
燃料ガス排出通路26は、3方弁32に連通している。3方弁32は、燃料ガス排出通路26をポンプ34に連通させる通常状態と、燃料ガス排出通路26を大気に開放する排気状態とを実現することができる。ポンプ34の吐出口は、燃料ガス供給通路24に連通している。
本実施形態のシステムでは、3方弁32を通常状態とすることで、燃料電池10から排出された水素ガスを燃料ガス供給通路24に還流させることができる。この際、燃料ガス供給通路24を通って燃料電池10に流入する水素ガスの流量[NL]は、ポンプ34の回転数rpmに対して相関を示す。このため、このシステムでは、ポンプ34の回転数rpmに基づいて、燃料電池10に流入する水素ガスの流量を[NL]の単位で検知することができる。
本実施形態において、膜電極接合体12は、カウンター流路を有している。すなわち、膜電極接合体12のカソード側ガス流路と、アノード側ガス流路は、それぞれ、逆向きに反応ガスを流通させるように設けられている。より具体的には、本実施形態の膜電極接合体12は、図1に示す状態において、アノード側の燃料ガスを紙面表側から裏側に向けて流通させ、また、カソード側の酸化ガスを紙面裏側から表側に向けて流通させるように構成されている。
燃料電池10には、更に、冷却水供給通路36と冷却水排出通路38が連通している。それらの間には、冷却水排出通路38から冷却水供給通路36へ冷却水を圧送する冷却水ポンプ40が配置されている。また、冷却水排出通路38には、その中を流れる冷却水の温度を検出するための温度センサ42が配置されている。冷却水供給通路36から流入した冷却水は、個々の膜電極接合体12の境界を流れた後、冷却水排出通路38に排出される。この構成によれば、冷却水ポンプ40を作動させることにより、燃料電池10の内部に冷却水を循環させることができる。
本実施形態において、冷却ポンプ40は、燃料電池10の入口温度Tinと出口温度Toutの差が所定の目標値となるように制御される。換言すると、冷却水ポンプ40は、燃料電池10の入口温度Tinと出口温度Toutの間に発生させるべき目標の温度差に応じた回転数に制御される。このため、このシステムでは、温度センサ42の出力により出口温度Toutが検知できると共に、その出口温度Toutと、冷却水ポンプ40の回転数とに基づいて、入口温度Tinを検知することができる。
本実施形態のシステムは、図1に示すように、酸化ガス供給通路14に、圧力センサ44及び露点センサ46を備えている。これらのセンサ44、46によれば、膜電極接合体12のカソード側入口における圧力P_CAin及び湿度Ca_RHinを検知することができる。このシステムにおいて、カソード側出口の圧力P_CAoutは、カソード側入口の圧力P_CAinとコンプレッサ20の回転数に対して相関を有している。このため、カソード側出口の圧力P_CAoutは、圧力センサ44の出力とコンプレッサ20の回転数とに基づいて推定することができる。
本実施形態のシステムは、更に、燃料ガス供給通路24に圧力センサ48を備えている。このため、このシステムは、圧力センサ48の出力に基づいてアノード側入口における圧力P_ANinを検知することができる。また、このシステムにおいて、アノード側出口の圧力P_ANoutは、アノード側入口の圧力P_ANinとポンプ34の回転数に対して相関を有している。このため、アノード側出口の圧力P_ANoutは、圧力センサ48の出力とポンプ34の回転数とに基づいて推定することができる。
アノード側の圧力センサ44の出力、及びポンプ34の回転数は、ECU(Electronic Control Unit)50に供給されている。ECU50は、それらの供給値に基づいて、アノードの入口圧力P_ANin及び出口圧力P_ANout、並びにアノード側を流れるガス流量[NL]を検知することができる。
カソード側の圧力センサ44の出力、コンプレッサ20の回転数、及びAFM23の出力もECU50に供給されている。ECU50は、それらの供給値に基づいて、カソードの入口圧力P_CAin及び出口圧力P_CAout、並びにカソード側を流れるガス流量[NL]を検知することができる。
更に、冷却水排出通路38の温度センサ42の出力、及びポンプ40の回転数もECU50に供給されている。ECU50は、それらの供給値に基づいて、燃料電池10から流出してくる冷却水の温度と、燃料電池10に流入する冷却水の温度とを検知することができる。
本実施形態のシステムは、また、電圧センサ52を備えている。電圧センサ52は、燃料電池10が備える個々の膜電極接合体12が発生している電圧を個別に検知することができる。電圧センサ52の出力もECU50に供給されている。このため、ECU50は、個々の膜電極接合体12の出力電圧を個別に検知することができる。
[ECU内のマップ]
本実施形態のシステムは、燃料電池10が備える個々の膜電極接合体12の発電分布を正確に予測する点に特徴を有している。ECU50は、この機能を実現するために、図2乃至図4に示す複数のマップを記憶している。
図2(A)及び図2(B)は、電流密度Iのマップを示す。より具体的には、図2(A)及び図2(B)は、それぞれ、膜電極接合体12を取りまく発電環境と、膜電極接合体12が発生する電流密度Iとの関係を定義したマップを示す。
膜電極接合体12が発生する電流密度Iは、膜電極接合体12を取りまく発電環境に応じて変化する。そして、電流密度Iに影響を与える発電環境は、主として以下に示す6つのパラメータで特定される
1.面内圧力P
2.面内温度T
3.発生電圧Volt
4.カソード側のO2濃度(以下、「O2濃度」とする)
5.カソード側相対湿度Ca_RH(以下、「カソード湿度」とする)
6.アノード側相対湿度An_RH(以下、「アノード湿度」とする)
膜電極接合体12においては、カソード側の圧力と、アノード側の圧力とが異なった値となることがある。電流密度Iには、アノード側の圧力に比してカソード側の圧力が大きな影響を与える。このため、上記1の面内圧力Pは、カソード側の圧力で代用することができる。
図2(A)は、面内圧力Pが140kpa、面内温度Tが80°C、発生電圧VoltがV1の場合に、O2濃度、カソード湿度Ca_RH、及びアノード湿度An_RHと、電流密度Iの間に成立する関係を定めたマップである。図2(B)は、面内圧力Pが200kpaの場合についての同様のマップである。
図2(A)のマップ及び図2(B)のマップによれば、面内温度Tと発生電圧Voltが同じ(80°C、V1)で、面内圧力Pが異なる(140kpaと200kpa)環境下でそれぞれ生ずる電流密度Iを求めることができる。そして、このような2種類の電流密度Iが判ると、比例計算等の処理により、80°C、V1の環境下で、任意の面内圧力Pに対して発生する電流密度Iを求めることができる。
ECU50は、図2(A)及び図2(B)に示すマップの他に、80°Cとは異なる面内温度T(例えば60°C)の下で成立する電流密度Iのマップ、及びV1とは異なる発生電圧Volt(例えばV2)の下で成立する電流密度Iのマップを記憶している。これらのマップから得られた電流密度Iに対して、比例計算等の処理を施せば、任意のP、T、Voltに対して発生する電流密度Iを求めることが可能である。ECU50は、このため、発電環境を定める上記6つのパラメータが特定できれば、その環境下で膜電極接合体12が発生する電流密度Iを正確に算出することができる。
図3(A)及び図3(B)は、それぞれ、膜電極接合体12の発電環境と、膜電極接合体12の抵抗値Rとの関係を定義したマップを示す。抵抗値Rも、電流密度Iと同様に、上述した6つのパラメータによって定まる発電環境に応じた値となる。ECU50は、図3(A)及び図3(B)に示すマップの他に、80°Cとは異なる面内温度T(例えば60°C)の下で成立する抵抗値Rのマップ、及びV1とは異なる発生電圧Volt(例えばV2)の下で成立する抵抗値Rのマップを記憶している。ECU50は、電流密度Iの場合と同様に、発電環境を定める上記6つのパラメータが特定できれば、これらのマップを参照することにより、膜電極接合体12の抵抗値Rを正確に算出することができる。
図4(A)及び図4(B)は、それぞれ、膜電極接合体12の発電環境と、電解質膜を通ってカソード側からアノード側に移動する水移動量Cross_H2Oとの関係を定義したマップを示す。水移動量Cross_H2Oも、電流密度Iや抵抗値Rと同様に、上述した6つのパラメータに応じた値となる。ECU50は、図4(A)及び図4(B)に示すマップの他に、80°Cとは異なる面内温度T(例えば60°C)の下で成立する水移動量Cross_H2Oのマップ、及びV1とは異なる発生電圧Volt(例えばV2)の下で成立する水移動量Cross_H2Oのマップを記憶している。ECU50は、電流密度Iの場合と同様に、発電環境を定める上記6つのパラメータが特定できれば、これらのマップを参照することにより、膜電極接合体12の内部でカソード側からアノード側に移動する水量Cross_H2Oを正確に算出することができる。
[マップの作成方法]
次に、図5を参照して、図2乃至図4に示すマップの作成方法について説明する。図1に示す膜電極接合体12は、酸化ガスが流入してくる箇所と流出する箇所との間に十分に長い距離を有している。燃料ガスの流入経路についても同様である。このため、酸化ガスの圧力、及び燃料ガスの圧力は、膜電極接合体12の面内において一定にはならない。
また、膜電極接合体12のカソード側には、発電に伴って生成される水が存在する。他方、アノード側には、カソード側から移動してきた水が存在する。これらの水は、酸化ガス、或いは水素ガスの流れに伴って、それぞれのガス通路において下流側に流される。このため、カソード側においても、アノード側においても、ガスの流れ方向において一様でない水分布が生ずる。その結果、カソード湿度Ca_RH及びアノード湿度An_RHは、それぞれ、ガスの流れ方向に対して均一でない分布を示す。
更に、膜電極接合体12は、カソードに供給される空気中の酸素を消費することで発電を行う。このため、カソードの面内における酸素濃度は、空気の入口に近いほど高くなり、空気の出口に近づくに連れて低くなる。このように、膜電極接合体12においては、カソード側の酸素濃度にも、面内に分布が発生する。
図2乃至図4に示すマップを作成するにあたっては、上述した6つのパラメータ(発電環境)を特定して、その結果生ずる電流密度I等を測定することが必要である。しかしながら、それらのパラメータは、上述した理由により、膜電極接合体12の全面において均一にすることは難しい。このため、フルサイズの膜電極接合体12を用いてマップ作成のための計測を行うことは困難である。そこで、本実施形態では、サイズを除いて膜電極接合体12と同じ構造を有する膜電極接合体小片を作成し、この小片を用いて上記マップを作成することとした。
図5は、膜電極接合体小片60を用いて、特定の発電環境下で電流密度I等を測定するためのシステムの図である。膜電極接合体小片60は、電解質膜の両側に、カソード側のガス流路と、アノード側のガス流路とを備えている。膜電極接合体小片60は、それらのガス流路の入口から出口までの発電環境、具体的には、面内圧力P(第1パラメータ)、面内温度T(第2パラメータ)、発生電圧Volt(第3パラメータ)、O2濃度(第4パラメータ)、カソード湿度Ca_RH(第5パラメータ)、及びアノード湿度An_RH(第6パラメータ)が均一であるとみなせる大きさを有している。ここでは、上記の観点から、膜電極接合体60のサイズを1cm×1cmとしている。
図5に示すシステムは、膜電極接合体小片60のカソード側に連通する酸化ガス供給通路62及び酸化ガス排出通路64を備えている。酸化ガス供給通路62には、コンプレッサ66が連通している。コンプレッサ66は、エアフィルタ68を介して吸入した空気を膜電極接合体小片60に向けて供給することができる。
酸化ガス供給通路62には、調整バルブ72を介して窒素タンク72が連通している。窒素タンク72は、調整バルブ72の開度に応じた量の窒素を酸化ガス供給通路62に供給することができる。
酸化ガス供給通路62は、バブラー74を備えている。バブラー74は、ヒータ76と温度計78とを内蔵した加湿器である。バブラー74によれば、設定温度における水蒸気の飽和状態を作り出すことができる。例えば、設定温度が40℃であれば、膜電極接合体小片60に流れ込む酸化ガスを40℃における飽和状態になるように加湿することができる。
バブラー74の下流には、圧力計80と、ヒータ82が配置されている。膜電極接合体小片60は、上述した通り、その内部における圧力の分布が無視できる大きさとされている。このため、圧力計80の計測値は、膜電極接合体小片60のカソードにおける圧力P_Ca(均一値)として取り扱うことができる。
ヒータ82は、膜電極接合体小片60の前段での結露を防止するために設けられている。このような構成によれば、バブラー74で加湿された酸化ガスを、そのままの湿度で膜電極接合体小片60に供給することができる。従って、図5に示すシステムによれば、膜電極接合体小片60に供給する酸化ガスの湿度を、極めて精度良く制御することができる。
膜電極接合体小片60のカソードに供給された酸化ガスは、酸化ガス排出通路64から流出する。酸化ガス排出通路64には、露点計84が設けられている。露点計84によれば、膜電極接合体小片60から流出してくる酸化ガスの湿度を正確に測定することができる。
図5に示すシステムは、膜電極接合体小片60のアノード側に連通する燃料ガス供給通路86及び燃料ガス排出通路88を備えている。燃料ガス供給通路86には、調整バルブ90を介して水素タンク92が連通している。この構成によれば、調整バルブ90の開度を制御することで、所望の圧力で水素ガスを膜電極接合体小片60に供給することができる。
燃料ガス供給通路86は、調整バルブ90の下流に、バブラー94を備えている。バブラー94は、カソード側のバブラー74と同様に、ヒータ96及び温度計98を備えており、設定温度下での飽和状態が形成されるように燃料ガスを加湿することができる。
バブラー94の下流には、圧力計100と、ヒータ102が配置されている。圧力計100の計測値は、膜電極接合体小片60のアノードにおける圧力P_An(均一値)として取り扱うことができる。また、ヒータ102によれば、膜電極接合体小片60の前段での結露を防止することができる。このような構成によれば、膜電極接合体小片60のアノードに流入する燃料ガスの湿度を、極めて精度良く制御することができる。
膜電極接合体小片60のアノードに供給された燃料ガスは、燃料ガス排出通路88から流出する。燃料ガス排出通路88には、露点計104が設けられている。露点計104によれば、膜電極接合体小片60から流出してくる燃料ガスの湿度を正確に測定することができる。
膜電極接合体小片60には、冷却水供給通路106及び冷却水排出通路108が連通している。冷却水排出通路108には、温度計110が設けられている。図5に示すシステムは、温度計110の計測値をフィードバックすることにより、膜電極接合体小片60を流れる冷却水の温度を正確に制御することができる。また、このシステムにおいては、その冷却水の温度を、膜電極接合体小片60の温度として取り扱うことができる。
図5に示すシステムは、更に、膜電極接合体小片60のアノード側電極とカソード側電極とを結ぶ測定回路112を備えている。測定回路112には、電流計114と可変抵抗116を備えている。この構成によれば、可変抵抗116を調整することで、アノード電極とカソード電極との間に生ずる発生電圧Voltを所望の値(例えば0.6V、或いは0.8V)に制御した状態で、膜電極接合体小片60が発する電流量(電流密度I)を計測することができる。
上述した通り、図2乃至図4に示すマップを作成するためには、膜電極接合体12の発電環境、つまり、上述した6つのパラメータを特定することが必要である。図5に示すシステムでは、それらのパラメータのうち、面内圧力P(第1パラメータ)を圧力センサ80により検知することができ、また、面内温度T(第2パラメータ)を温度センサ110により検知することができる。更に、発生電圧Volt(第3パラメータ)は、可変抵抗116により任意の値とすることができる。
また、このシステムによれば、コンプレッサ66の運転状態を制御することで、カソード圧力P_Caを任意の値に制御することができる。そして、調整バルブ70によって、酸化ガス供給通路62に流れ込む窒素の量を調整すれば、膜電極接合体小片60に流れ込む酸化ガス中のO2濃度(第4パラメータ)も正確に制御することができる。
残る2つのパラメータ、つまり、カソード湿度Ca_RH(第5パラメータ)及びアノード湿度An_RH(第6パラメータ)は、それぞれ下記の演算式により求めることができる。
An_RH=(燃料ガスの蒸気圧)/(面内温度Tにおける飽和水蒸気圧)×100
・・・(1)
Ca_RH=(酸化ガスの蒸気圧)/(面内温度Tにおける飽和水蒸気圧)×100
・・・(2)
図5に示すシステムでは、温度センサ110が「面内温度T」を検知する。温度Tが検知できれば、(1)式及び(2)式右辺の「飽和水蒸気圧」を特定することができる。一方、このシステムでは、バブラー74,94の温度を変化させることにより、(1)式右辺の「燃料ガスの湿度」、並びに(2)式右辺の「酸化ガスの湿度」を制御することができる。このため、図5に示すシステムによれば、膜電極接合体60のアノード湿度An_RH及びカソード湿度Ca_RHを、正確かつ簡単に、任意の値に制御することができる。
以上説明した通り、図5に示すシステムによれば、図2乃至図4に示すマップを設定するにあたって特定するべき6つのパラメータの全てを、容易かつ正確に設定することが可能である。このため、このシステムによれば、上記6つのパラメータを適宜変更しながら、電流密度I、抵抗値R、水移動量cross_H2Oを取得することで、図2乃至図4に示すマップを正確に設定することが可能である。
[膜電極接合体の面内状態の推定]
(小領域への仮想分割)
図6は、膜電極接合体12のアノード面を示す斜視図である。膜電極接合体12の内部には、上述した通り、アノード側及びカソード側の双方に、燃料ガス又は酸化ガスを流通させるためのガス流路が形成されている。本実施形態では、それらのガス流路が、カウンター流路を形成するように、つまり、アノード側の燃料ガスと、カソード側の酸化ガスとが、膜電極接合体12の内部を対向して流れるように構成されている。
図7(A)は、膜電極接合体12の一部を帯状に切り出した部分(以下、「帯状部分120」と称す)を示す。膜電極接合体12は、仮想的には、この帯状部分120が、図7(A)の紙面に垂直な方向に複数連なって構成されたものとみなすことができる。
帯状部分120は、更に、反応ガスの流れ方向に並んだs個の小領域で構成されているとみなすことができる。本実施形態では、これらの小領域は、図5に示す膜電極接合体小片60と同様に、1cm×1cmの大きさを有しているものとする。
膜電極接合体12を、図7(A)に示す小領域に分解して考えた場合、個々の小領域においては、発電環境が均一であるとみなすことができる。このため、膜電極接合体12を仮想的に上記小領域に区分して、それぞれの小領域における発電環境を特定すれば、小領域毎に発電状態を正しく推定することが可能である。
(小領域間のガス流量)
本実施形態のシステムは、発電環境を決める6つのパラメータのうち、O2濃度、カソード湿度Ca_RH及びアノード湿度An_RHを求めるために、隣接する小領域間で授受されるガス量を算出する。図7(B)は、カソード側の第1領域CA1から第2領域CA2に流れ込むガス量Q_CA12を推定する原理を説明するための拡大図である。ここで、「カソード側の第1領域CA1」とはカソード側のガス流入口側の端部に位置する小領域であり、「第2領域」とは、その隣に位置する小領域である。以下、カソード側のガス流入孔側からi番目に位置する小領域を「カソード側の第i領域CAi」若しくは単に「第i領域CAi」と称する。また、第i領域CAiに対応するアノード側の領域を「アノード側の第i領域ANi」若しくは単に「第i領域ANi」と称する。
第1領域CA1から第2領域CA2に流れるガス量Q_CA12は、第1領域CA1の圧力P_CA1と第2領域CA2の圧力P_CA2との差(P_CA1−P_CA2)に応じた値、例えば比例した値となる。この関係は、隣接する2つの小領域(第i領域CAiと、第i+1領域CA(i+1)とする)間で授受されるガス量Q_CAi(i+1)について一般的に成立し、そのガス量Q_CAi(i+1)は、次式のように表すことができる。但し、次式中、k_CAi(i+1) は比例係数である。
Q_CAi(i+1)=k_CAi(i+1)×{P_CAi−P_CA(i+1)} ・・・(3)
小領域間で授受される成分量が小領域間の圧力差に応じた値となる関係は、ガス成分に限らず、液体成分についても成立する。このため、比例係数kを適切な値とすれば、小領域間を移動する液水量も、上記3式の関係に従って算出することが可能である。
膜電極接合体12の内部において、反応ガスの流路は、多孔質体によって形成されることがある。図8(A)は、多孔質体で形成されたガス流路の断面の一例を示す。この様な流路を流れるガス流量は、ガスの粘性に大きな影響を受ける。このため、係数k_CAi(i+1)は、第i領域から第i+1領域に向かうガスの粘性に応じた値とすることが望ましい。
より詳細には、ガスの粘性は、そのガスに含まれる個々のガス割合により変化する。ガス流路の空孔率は、多孔質体の熱膨張によって変化する。このため、隣接する小領域間を流れるガス量Q_CAi(i+1)は、ガス割合や面内温度Tに応じた値となる。以上の理由から、係数k_CAi(i+1)は、より好ましくは、ガス割合や面内温度Tの関数として定めることが望ましい。
また、小領域間を流れるガス量Q_CAi(i+1)は、それらの領域における液水の占有率に応じて変化する。図8(B)は、その影響を説明するための図である。図8(B)に示すように、小領域内に存在する液水は、ガスの流れを阻害する障害物となる。このため、係数k_CAi(i+1)は、小領域内における液水の占有率をも考慮して定めることが望ましい。
図9は、本実施形態のシステムが係数k_CAi(i+1)を定めるために用いるマップを示す。ECU50は、図9に示すように、ガスの粘性と液水の占有率との関係で係数k_CAi(i+1)を定めたマップを記憶している。そして、ECU50は、ガス割合と面内温度Tに基づいてガス粘性を求めることとしている。このマップによれば、小領域間におけるガスの流れ易さを係数k_CAi(i+1)に正しく反映させることができる。
(発電環境及び発電状態の算出)
次に、図10を参照して、ECU50が、小領域毎に発電環境と発電状態を算出する手法について説明する。図10は、時刻t0における第i領域CAi,ANiと、その前後領域における状態を説明するための図である。ここで、図10中のn_O2、n_N2、n_gasH2O、n_liqH2Oは、それぞれ、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、液水をモル数で表した値を意味している。また、dn_O2やdn_N2は、それぞれ、小領域間を移動するO2やN2のモル数を意味している。
本実施形態のシステムは、上述した通り、カソード側の入口圧力P_CAin及び出口圧力P_CAoutを検知することができる。これらの圧力P_CAin及びP_CAoutが判ると、比例計算により、小領域毎にカソード圧力P_CAを算出することができる。発電環境の第1パラメータである面内圧力Pは、上述した通り、カソード圧力P_CAにより代用することができる。このため、ECU50は、任意の小領域につき、面内圧力Pを特定することができる(符号130参照)。
本実施形態のシステムは、上述した通り、冷却水の入口温度Tin及び出口温度Toutを検知することができる。入口温度Toutと出口温度Toutが判ると、比例計算により、個々の小領域につき、面内温度Tは算出することができる。このため、ECU50は、任意の小領域につき、発電環境の第2パラメータである面内温度Tを特定することができる(符号132参照)。
個々の小領域が発生する電圧は、その小領域が属する膜電極接合体12の発生電圧Voltで代用することが可能である。上述した通り、本実施形態のシステムは、電圧センサ52により、膜電極接合体12のそれぞれにつき、発生電圧Voltを検出することができる。このため、ECU50は、任意の小領域につき、発電環境の第3パラメータである発生電圧Voltを特定することができる(符号134参照)。
本実施形態のシステムは、後述する理由により、処理サイクル毎に、カソード側の小領域のそれぞれにつき、酸素量n_O2[モル]、窒素量n_N2[モル]、水蒸気量n_gasH2O[モル]、及び液水量n_liqH2O[モル]を特定することができる(符号136〜142参照)。それらのガス量が判ると、発電環境の第4パラメータであるO2濃度、並びに、第5パラメータであるカソード湿度Ca_RHは、それぞれ、以下に示す式によって算出することができる(符号144,146参照)。
O2濃度=n_O2/(n_O2+n_N2+n_H2O) ・・・(4)
Ca_RH=水蒸気分圧P_gasH2O/飽和水蒸気圧P_satH2O(T)
={n_gasH2O/(n_O2+n_N2+n_gasH2O)}×P_CA/P_satH2O(T) ・・・(5)
但し、上記5式の「飽和水蒸気圧P_satH2O(T)」は、小領域の温度Tにより一義的に決まる値である。上述した通り、このシステムでは、比例計算等の処理により、小領域毎に温度Tを特定することができる。また、このシステムでは、上述した通り、小領域毎に圧力P_CAを求めることも可能である。このため、ECU50は、個々のガス成分の量が判れば、上記5式の処理を実行することができる。
本実施形態のシステムは、処理サイクル毎に、アノード側の小領域のそれぞれに存在する水素量n_H2[モル]、窒素量n_N2[モル]、水蒸気量n_gasH2O[モル]、及び液水量n_liqH2O[モル]を特定することができる(符号148〜154参照)。これらのガス量が判ると、小領域毎に、発電環境の第6パラメータであるアノード湿度An_RHを、次式によって算出することができる(符号156参照)。
An_RH=水蒸気分圧P_gasH2O/飽和水蒸気圧P_satH2O(T)
={n_gasH2O/(n_H2+n_N2+n_gasH2O)}×P_AN/P_satH2O(T) ・・・(6)
上記6式の演算は、ガス成分量に加えて、アノード側の面内圧力P_ANと、飽和水蒸気圧P_satH2O(T)とが特定できれば実行することができる。本実施形態のシステムは、上述した通り、アノード側においても、入口圧力P_CAinと出口圧力P_CAoutを検知することができる。このため、面内圧力P_ANは、比例計算等の処理により特定することができる。また、飽和水蒸気圧P_satH2O(T)は、カソード側のP_satH2O(T)と同様に、面内温度Tに基づいて特定することができる。このため、ECU50は、第6パラメータであるアノード湿度An_RHを、小領域毎に求めることができる。
小領域のそれぞれについて、体積Vは、予め定めておくことができる。そして、個々の小領域においては、圧力P、体積V、温度T、ガス成分量n[モル]の間に、以下に示す気体の状態方程式の関係が成立する。
P・V=n・R・T ・・・(7)
但し、Rは気体定数である。
ガス成分量nは、個々の小領域に存在するガス成分のモル数を合算することで求めることができる。そして、小領域毎にガス成分量nが定まると、上記7式の関係から、個々の小領域における圧力Pを算出することができる。このため、本実施形態のシステムは、発電環境の第1パラメータである面内圧力P(符号130)を、2種類の方法で特定することができる。
以上説明した通り、本実施形態において、ECU50は、発電環境を決める6つのパラメータの全てを、小領域毎に特定することができる(符号158参照)。ECU50は、小領域毎に6つのパラメータが特定できると、図2乃至図4に示すマップを参照することで、個々の小領域につき、電流密度I、水移動量cross_H2O、及び抵抗値Rを算出することができる(符号160〜164参照)。
膜電極接合体12のカソード側では、電流密度Iに応じた量の酸素が消費される。この酸素消費量O2_offは、次式により算出することができる。但し、次式におけるFはファラデー定数である。
O2_off=I/4/F×22.4×60 ・・・(8)
ECU50は、処理サイクル毎に、上記8式に従って個々の小領域で消費される酸素量O2_offを算出する。そして、処理サイクルの開始時に存在していた酸素量n_O2から酸素消費量O2_offを減ずることにより、小領域毎に酸素量n_O2を最新値に更新する(符号166参照)。
また、膜電極接合体12のカソード側では、電流密度Iに応じた量の水が生成される。この生成水量H2Oは、次式により算出することができる。
H2O=I/2/F×22.4×60 ・・・(9)
カソード側の小領域における総水量は、処理サイクルの過程で、上記9式による生成水量H2O分だけ増加し、同時に、アノード側に移動する水移動量cross_H2O分だけ減少する。このため、ECU50は、処理サイクル毎に、下記の演算を行って水蒸気量n_gasH2Oを最新値に更新する(符号168参照)。
n_gasH2O=n_gasH2O+H2O−cross_H2O ・・・(10)
但し、上記10式中、左辺のn_gasH2Oは更新後の水蒸気量であり、右辺のn_gasH2Oは、処理サイクルの開始時における水蒸気量である。
ところで、個々の小領域において、水蒸気量n_gasH2Oは、その領域における飽和水蒸気圧p_satH2Oに対応する量(以下、「飽和対応量」と称す)を超えることはできない。このため、ECU50は、更新後の水蒸気量n_gasH2Oが飽和対応量を超えている場合は、n_gasH2Oの最新値を飽和対応量に制限する。そして、飽和対応量を超える分を当初の液水量n_liqH2Oに加えて、その値n_liqH2Oを最新値に更新する。
また、膜電極接合体12の内部では、カソード側からアノード側へのN2の移動が生ずる。本実施形態では、単位時間当たり一定量のN2が、カソード側からアノード側へ移動するものとしている。以下、その一定量を「窒素移動量cross_N2」とする。ECU50は、処理サイクル毎に、カソード側においては、当初の窒素量n_N2から窒素移動量cross_N2を減じることにより、その値n_N2を最新値に更新する(符号170参照)。また、アノード側では、当初の窒素量n_N2に窒素移動量cross_N2を加えることにより、その値n_N2を最新値に更新する(符号172参照)。
膜電極接合体12のアノード側では、電流密度Iに応じた量の水素が消費される。この水素消費量H2_offは、次式により算出することができる。
H2_off=I/2/F×22.4×60 ・・・(11)
ECU50は、処理サイクル毎に、上記11式に従って個々の小領域で消費される酸素量H2_offを算出する。そして、処理サイクルの開始時に存在していた水素量n_H2から水素消費量H2_offを減ずることにより、小領域毎に水素量n_H2を最新値に更新する(符号174参照)。
アノード側の小領域における総水量は、処理サイクルの過程で、カソード側から移動してくる水移動量cross_H2O分だけ増加する。このため、ECU50は、処理サイクル毎に、下記の演算を行ってアノード側の水蒸気量n_gasH2Oを最新値に更新する(符号176参照)。
n_gasH2O=n_gasH2O+cross_H2O ・・・(12)
但し、上記12式中、左辺のn_gasH2Oは更新後の水蒸気量であり、右辺のn_gasH2Oは、処理サイクルの開始時における水蒸気量である。
アノード側においても、水蒸気量n_gasH2Oは、飽和対応量を超えることはできない。このため、ECU50は、更新後の水蒸気量n_gasH2Oが飽和対応量を超えている場合は、n_gasH2Oの最新値を飽和対応量に制限する。そして、飽和対応量を超える分を当初の液水量n_liqH2Oに加えて、その値n_liqH2Oを最新値に更新する。
以上説明した通り、ECU50は、処理サイクルの開始時点において、個々のガス成分の量nが特定できていれば、それらの全てを、処理サイクルの過程で最新値に更新することができる。他方、本実施形態のシステムは、燃料電池10の始動時に、規定の始動時運転を行うことで、全ての小領域に、個々のガス成分が規定量だけ含まれる状態を作り出すことができる。このため、本実施形態のシステムは、始動時運転の後、処理サイクル毎に、全ての小領域において、個々のガス成分量を正しく更新し続けること、換言すると、正しく推定し続けることができる。
小領域毎に個々のガス成分量nが更新できると、そのガス成分量nを気体の状態方程式(上記7式)に当てはめることにより、発電に伴う状態変化後の面内圧力Pを、全ての小領域について算出することができる。つまり、図10に示す領域について確認すると、CA(i-1)領域、CAi領域、CA(i+1)領域の全てについて、カソード側の面内圧力P_CA(i-1)、P_CAi、及びP_CA(i+1)の最新値を算出することができる。同様に、AN(i-1)領域、ANi領域、AN(i+1)領域の全てについて、アノード側の面内圧力P_AN(i-1)、P_ANi、及びP_AN(i+1)の最新値を算出することができる。
カソード側で隣接する2つの小領域CAi,CA(i+1)につき、面内圧力P_CAi,P_CA(i+1)が判ると、上記3式により、それらの領域間で授受されるガス量Q_CAi(i+1)が算出できる。同様に、アノード側で隣接する2つの小領域ANi,AN(i-1)につき、面内圧力P_ANi,P_AN(i-1)が判ると、それらの領域間で授受されるガス量Q_ANi(i-1)が算出できる。従って、図10に示す領域については、以下に示す4種類のガス量を算出することができる。
Q_CA(i-1)i=k_CA(i-1)i×{P_CA(i-1)−P_CAi} ・・・(13)
Q_CAi(i+1)=k_CAi(i+1)×{P_CAi−P_CA(i+1)} ・・・(14)
Q_AN(i+1)i=k_AN(i+1)i×{P_AN(i+1)−P_ANi} ・・・(15)
Q_ANi(i-1)=k_ANi(i-1)×{P_ANi−P_AN(i-1)} ・・・(16)
発電に伴う変化後にCAi領域に存在するガス量は、当初から存在していたガス量に対して、前段の小領域CA(i-1)から流入してくるガス量Q_CA(i-1)i分だけ増加し、後段の小領域(i+1)に流出したガス量Q_CAi(i+1)分だけ減少した値となる。アノード側の領域ANiについても、同様の関係が成立する。このため、上記(13)〜(16)式のガス量が判ると、発電に伴う変化の後にCAi領域に存在するガス量Q_CAi、及びANi領域に存在するガス量Q_ANiは、それぞれ、次式により求めることができる。但し、以下に示す式中、左辺のQ_CAi及びQ_ANiは、変化後のガス量であり、右辺第1項のQ_CAi及びQ_ANiは、変化前のガス量である。
Q_CAi=Q_CAi+Q_CA(i-1)i−Q_CAi(i+1) ・・・(17)
Q_ANi=Q_ANi+Q_AN(i+1)i−Q_ANi(i-1) ・・・(18)
本実施形態において、個々の小領域に存在するガス量は、[NL]の単位で管理することができる。17式及び18式の関係は、それぞれの項が[NL]の単位で管理されていれば、モル数の関係にそのまま置き換えることができる。具体的には、17式及び18式は、それぞれ、[mol]を単位とするガス量nの関係として、以下のように書き直すことができる。但し、n_CAiやn_ANiは、領域CAi,ANiに存在するガスの総モル数である。また、dn_CA(i-1)iやdn_ANi(i-1)は、i領域とi-1領域との間で授受されるガスの総モル数である。
n_CAi=n_CAi+dn_CA(i-1)i−dn_CAi(i+1) ・・・(19)
n_ANi=n_ANi+dn_AN(i+1)i−dn_ANi(i-1) ・・・(20)
更に、19式及び20式の関係は、小領域に存在する個々のガス成分に対する関係に置き換えることができる。例えば、19式の関係は、領域CAiに存在する酸素量の関係として、以下のように書き換えることができる。
n_O2i=n_O2i+dn_O2(i-1)i−dn_O2i(i+1) ・・・(21)
21式中、右辺第2項のdn_O2(i-1)iは、領域CA(i-1)から領域CAiに流入する酸素のモル数である。領域CA(i-1)から領域CAiへは、領域CA(i-1)におけるガス割合で、個々のガス成分が移動すると考えられる。このため、酸素の流入モル数dn_O2(i-1)iは、領域CAiへの総流入ガス量dn_CA(i-1)iに、領域CA(i-1)中の酸素割合{n_O2(i-1)/n_CA(i-1)}を掛け合わせた値となる。この値は、具体的には、次式のように表すことができる。
dn_O2(i-1)i=dn_CA(i-1)i×{n_O2(i-1)/n_CA(i-1)} ・・・(22)
21式中、右辺第3項のdn_O2i(i+1)は、領域CAiから領域CA(i+1)に流出する酸素のモル数である。領域CAiから領域CA(i+1)へは、領域CAiにおけるガス割合で、個々のガス成分が移動すると考えられる。このため、酸素の流出モル数dn_O2i(i+1)は、次式のように表すことができる。
dn_O2i(i+1)=dn_CAi(i+1)×{n_O2i/n_CAi} ・・・(23)
本実施形態のシステムは、上述した通り、処理サイクル毎に、全ての小領域につき、個々のガス成分の量を特定することができる(符号136〜142、148〜154参照)。つまり、本実施形態のシステムは、上記21式中、右辺第1項の酸素量n_O2iを特定することができる。そして、このシステムは、22式及び23式により、酸素の流入量dn_O2(i-1)i及び流出量dn_O2i(i+1)を求めることができる。このため、ECU50は、上記21式により、処理サイクル毎に、発電に伴う変化後の酸素量n_O2iを推定することができる。
発電に伴う変化後の酸素量n_O2は、領域CAiに限らず、カソード側の全ての小領域において推定することができる。また、その推定は、酸素量n_O2に限らず、他の全てのガス成分(水素、窒素、水蒸気)について行うことができる。更に、飽和対応値を超える水は液水になる、との規則に従うことで、全ての小領域において、変化後の液水量n_liqH2Oも推定することができる。
以後、変化後の推定値を用いて、新たな処理サイクルを実行すれば、再び、全ての小領域につき、発電状態(電流密度I、水移動量cross_H2O、抵抗値R)を推定することができ、また、ガス成分量等の更新値を推定することができる。つまり、本実施形態のシステムによれば、上記の処理を繰り返すことにより、膜電極接合体12の全域において、発電環境及び発電状態の分布を正確に推定し続けることができる。
[処理サイクルの流れ]
図11は、上述した処理サイクルの流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態において、ECU50は、図11に示す手順に従って演算処理を繰り返す。
ECU50は、燃料電池10の始動が要求されると、先ず、起動運転を行う(ステップ200)。起動運転は、膜電極接合体12の全域において、個々の小領域における各成分(酸素、水素、窒素、水蒸気、液水)の量が、それぞれ予め定めた初期状態量になるように実行される。起動時点では、アノード側及びカソード側に、安定した発電能力を発揮することのできる発電環境が整っていない。初期状態量は、安定した発電能力を発揮し得る状態に至った時点で達成される状態量である。具体的には、本ステップ202では、カソード側の酸化ガス量、及びアノード側の水素ガス量を予め定めた条件で制御しつつ、予め定めた時間だけ燃料電池12が駆動される。
起動運転が終了すると、膜電極接合体12の個々の小領域の状態は、上述した初期状態量で表すことのできる状態となる。ECU50は、全ての小領域について、その初期状態量を記憶している。ECU50は、起動運転が終了すると、それらの初期状態量に基づいて、以下の処理を実行する(ステップ202)。
ここでは、先ず、初期状態量が小領域毎に読み出される(図10中、符号136〜142、148〜154参照)。また、面内圧力P、発生電圧Volt、及び面内温度Tが、比例計算等の処理により小領域毎に特定される。次いで、それらの値に基づいて、発電環境を決める6つのパラメータが算出される(図10中、符号158参照)。その後、図2乃至図4に示すマップを参照して、小領域毎に、電流密度I、水移動量cross_H2O、及び抵抗値Rが特定される(図10中、符号160〜164参照)。更に、ここでは、算出された電流密度Iに基づいて、酸素消費量O2_off、生成水量H2O、及び水素消費量H2_offが算出される(上記8式、9式、11式参照)。
次に、ECU50は、小領域毎に、ガスの消費量や水の生成量の加減を行い、各成分の量に発電に伴う影響を反映させる(ステップ204)。具体的には、カソード側及びアノード側のそれぞれで、小領域の各成分に対して下記の処理が施される。
<カソード側>(図10中、符号166〜170参照)
酸素量n_O2:酸素消費量H2_offを減算
水蒸気量n_gasH2O、液水量n_liqH2O:水移動量cross_H2Oを減算、水生成量H2Oを加算
窒素量n_N2:窒素移動量cross_N2を減算
<アノード側>(図10中、符号172〜176参照)
窒素量n_N2:窒素移動量cross_N2を加算
水素量n_H2:水素消費量H2_offを減算
水蒸気量n_gasH2O、液水量n_liqH2O:水移動量cross_H2Oを加算
次に、ECU50は、小領域間の圧力差に基づいて、小領域間で生ずる個々の成分の移動量を算出する(ステップ206)。ここでは、具体的には、以下の処理が実行される。
<第1の処理>
上記ステップ204の処理により算出された各成分量の総和nを、小領域毎に求める。上記の総和nを、面内温度T及び小領域の体積Vと共に状態方程式(上記7式参照)に当てはめて、小領域毎に、発電に伴う変化後の面内圧力Pを算出する。
<第2の処理>
小領域毎に算出した面内圧力に基づいて、隣接する小領域間の圧力差を算出する。次に、隣接する2つの小領域毎に、係数k(図9参照)を求める。より詳細には、先ず、隣接する2つの小領域(ここでは、領域CA(i-1)及びCAiとする)を対象として、それらの中に含まれるガスの成分割合と、面内温度Tの平均値とに基づいて、ガス粘性を求める。次に、それらの領域における液水の占有率を求める。この様にして求めたガス粘性と液水占有率を図9に示すマップに当てはめて、係数k_CA(i-1)iを求める。そして、小領域間の圧力差と、係数k_CA(i-1)iとを掛け合わせて、ガス移動量Q_CA(i-1)iを算出する(上記13式乃至16式参照)。これらの処理を、全ての小領域について実行し、小領域毎にガス移動量を算出する。
但し、カソードの入口側端部の領域CA1に流れ込むガス移動量は、エアフロメータ23により計測された空気流量[NL]とする。また、アノードの入口側端部の領域ANsに流れ込むガス移動量は、ポンプ34の回転数に基づいて推定される水素流入量[NL]とする。また、カソードの出口側端部の領域CAsから流出するガス移動量は、その領域CAsの圧力P_CAsとカソード出口の圧力P_CAoutとの差(P_CAs−P_CAout)に、予め定めた固定の係数kを掛け合わせることにより算出する。同様に、アノードの入口側端部の領域AN1から流出するガス移動量は、その領域AN1の圧力P_AN1とアノード出口の圧力P_ANoutとの差(P_AN1−P_ANout)に、予め定めた固定の係数kを掛け合わせることにより算出する。
<第3の処理>
次に、成分毎の移動量を計算する。具体的には、先ず、隣接する2つの小領域毎に、ガスの移動元に当たる小領域中の各成分の割合を求める。そして、上記第2の処理により算出されたガス移動量(例えば、Q_CA(i-1)i若しくはそのモル数換算値dn_CA(i-1)i)に、移動元の成分割合を掛け合わせることにより、成分毎の移動量(例えば、dn_O2(i-1)i)を算出する(上記22式及び23式参照)。
ECU50は、次に、上記ステップ206において算出した移動量を足し引きすることにより、小領域毎に、各成分の最新の存在量を算出する(ステップ208)。例えば、酸素量n_O2については、上記21式により、最新の存在量を小領域毎に算出する。
全ての小領域につき、かつ、全ての成分につき、上記ステップ208の処理が終わると、各成分の総和を、小領域内の成分量nとして算出する。そして、その成分量nに基づいて、状態方程式(上記7式)の関係が満たされるように、他の状態量が確定される(ステップ210)。具体的には、小領域内の成分量nを、既知の体積Vと、比例計算により算出した面内温度Tと共に状態方程式に当てはめることにより、ガス移動に伴う変化後の面内圧力Pが算出される。
以後、上記ステップ210において確定した状態量(P,V,n,T)と、新たに検出する発生電圧Voltとを用いて、上記ステップ202以降の処理が再び実行される。その結果、ECU50は、全ての小領域につき、発電環境と、発電状態とを、正しく推定し続けることができる。つまり、ECU50は、膜電極接合体12の全面における発電環境の分布(ガス分布、圧力分布、温度分布)と、発電状態(I、cross_H2O、R)の分布とを、正しく推定し続けることができる。
膜電極接合体12を運転させるにあたっては、触媒劣化を防止するための制御や、電解質膜のドライアップを防止するための制御が求められることがある。これらの制御は、膜電極接合体12のガス分布が正しく推定できるほど、精度良く行うことができる。そして、それらの制御が精度良く実行できるほど、燃料電池10の燃費特性は向上する。このため、本実施形態のシステムによれば、燃料電池10の燃費特性を十分に高めることができる。
[推定結果の応用例]
以下、図12及び図13を参照して、本実施形態のシステムが、発電環境や発電状態の推定結果を、燃料電池10の制御に利用する方法について説明する。
図12は、本実施形態のシステムが実行するフラッディング防止制御の内容を説明するためのブロック図である。図12において、燃料電池10を駆動するための種々の機器(コンプレッサ20、調整バルブ28、ポンプ34等)は、FCシステム補機220として、簡略化されている。ECU50は、発電環境や発電状態の分布に基づいて、改善するべき現象を検知すると、その現象が解消されるように、FCシステム補機220の状態を修正する。
図12は、図10及び図11を参照して説明した推定の手法(一次元面内状態推定モデルによる手法)により、膜電極接合体12のフラッディングが検知された場合を例示している。すなわち、図12において、ECU50の枠中、2次元座標内に示した曲線は、膜電極接合体12内のカソード側の湿度分布の推定結果である。また、この2次元座標中に「閾値」として示した直線は、適正湿度の上限値である。
本実施形態において、ECU50は、一次元面内状態推定モデルによって推定した湿度の分布に基づいて、膜電極接合体12がフラッディング気味であるか否かを判断する機能を有している。更に、ECU50は、フラッディング気味であることが判定された場合には、どこが、どのくらいフラッディング気味であるかを判断する機能を有している。そして、ECU50は、フラッディングの領域及び程度を判定すると、それらの情報に基づいて、フラッディングが解消されるようにFCシステム補機220の制御内容を修正する。
図12に示すような湿度分布が検知された場合、ECU50は、膜電極接合体12のカソード側が、ガス流路の中央付近において僅かにフラッディング気味であると判定する。この場合、ECU50は、カソード側中央付近の水量が減るように、FCシステム補機の制御内容を修正する。この場合、ECU50は、例えば、カソード側の中央付近に水が滞留し難くなるように、カソードに対する酸化ガスの供給量が増えるようにFCシステム補機220の制御内容を変化させる。制御内容がこの様に変更されると、カソードを流れる反応ガスによって持ち去られる水の量が増えるため、カソード側中央付近の湿度が低下する。
図13は、上述した制御の変更に起因して改善された後のカソード側の湿度分布を示す。図13に示す曲線では、膜電極接合体12の中央付近における湿度が閾値より低く抑えられている。つまり、この曲線では、フラッディングが解消されている。このように、上記の処理によれば、膜電極接合体12のフラッディングを解消させることができる。
ところで、本実施形態のシステムにおいて、フラッディングを解消するための手法は、(1)反応ガスを増やして水の持ち去り量を増やすことだけではない。例えば、(2)加湿器18による酸化ガスの加湿の度合いを下げて、カソードに流れ込む酸化ガスの湿度自体を下げることによりフラッディングを解消することとしてもよい。或いは、(3)カソードの全圧Pを下げて、カソードに流れ込む水蒸気の絶対量を減らすことによりフラッディングを解消することとしてもよい。
また、本実施形態のシステムが、改善を要する現象として検知するのは、フラッディングに限られるものではない。すなわち、本実施形態のシステムは、下限の閾値を下回る湿度が検知された場合には、膜電極接合体12のドライアップを検知する。ECU50は、より詳細には、湿度の分布と、湿度の下限閾値との比較に基づいて、膜電極接合体12のどこが、どれくらいドライアップしているかを判定することができる。
ECU50は、膜電極接合体12のドライアップを検知した場合には、(1)加湿器18による加湿の度合いを上げて、カソードに供給される酸化ガスの湿度を高めることによりドライアップを解消させることができる。また、ECU50は、(2)反応ガスの流量を下げて、反応ガスによる水の持ち去り量を少なくすることによりドライアップを解消させることもできる。更には、ECU50は、(3)カソードの全圧Pを上げて、カソードに流れ込む水蒸気の絶対量を増やすことによりドライアップを解消することとしてもよい。
更に、本実施形態のシステムは、カソード側の酸素濃度分布に基づいて、カソード出口における酸素不足を検知することができる。ECU50は、より詳細には、カソードにおける酸素濃度の分布と、酸素濃度の下限閾値との比較に基づいて、膜電極接合体12のカソード出口に、適正量の酸素が到達しているか否かを判定することができる。
ECU50は、カソード出口における酸素濃度不足を検知した場合、(1)カソードに供給する空気量を増やすことにより、その状態を解消することができる。或いは、ECU50は、カソード側の全圧Pを上げて、カソードに流れ込む水酸素の絶対量を増やすことにより、カソード出口の酸素不足を解消することとしてもよい。
ところで、上述した実施の形態においては、燃料電池10を、アノード循環型システムに組み込んだ構成を有しているが、一次元面内状態推定モデルによる推定は、この様なシステムに限定して適用されるものではない。すなわち、一次元面内状態推定モデルによる推定は、アノード循環レスシステムとの組み合わせで実行することとしてもよい。
また、上述した実施の形態では、カソード側に、加湿器18を配置することとしているが、一次元面内状態推定モデルによる推定は、加湿器18を有するシステムに限定して適用されるものではない。すなわち、一次元面内状態推定モデルによる推定は、外部加湿器レスシステムとの組み合わせで実行することとしてもよい。
また、上述した通り、本実施形態のシステムでは、小領域の面内圧力Pを、2種類の方法で取得することができる。つまり、面内圧力Pは、圧力センサ44,48の出力に基づいて、比例計算により算出することができると共に、小領域内の成分量nに基づいて、状態方程式により求めることができる。以下、便宜上、前者の方法で算出した圧力Pを実測値Pと称し、後者の方法で取得した圧力Pをモデル推定値Pと称す。
小領域内の状態量が正しく推定できていれば、モデル推定値Pは、実測値Pに比して高い精度を有する。このため、本実施形態では、原則として、モデル推定値Pを分布推定の基礎データとする。しかしながら、小領域内の状態量に大きな推定誤差が含まれている場合は、実測値Pに含まれるより大きな誤差がモデル推定値Pに重畳する。この場合、モデル推定値Pは、実測値Pから大きく乖離した値となる。換言すると、モデル推定値Pが実測値Pから大きく乖離している場合は、モデル推定値Pに大きな誤差が重畳していること、更には、状態量の推定値に大きな誤差が重畳していることを推認することができる。このため、モデル推定値Pと実測値Pとの乖離量が予め設定した許容値を超える場合には、一時的に、モデル推定値Pの代わりに実測値Pを分布推定の基礎データとして、状態量の推定誤差の縮小を図ることとしてもよい。
また、上述した実施の形態では、電流密度I、抵抗値R、及び水移動量cross_H2Oを推定するにあたって、発生電圧Volt及び面内温度Tも、発電環境を決める変数としているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、燃料電池10の内部において、発生電圧Voltや面内温度Tに大きな相違が見られない場合には、それらを一定値とみなして発電環境を定めるパラメータから除外することとしてもよい。
また、上述した実施の形態では、膜電圧接合体12がカウンター流路を備えることとしているが、その構成はこれに限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態において用いた一次元面内状態推定モデルによる処理は、膜電圧接合体12がコフロー流路を備える場合にも適用することが可能である。
本発明の実施の形態1のシステムの構成を説明するための図である。 本発明の実施の形態1のシステムが用いる電流密度Iのマップを示す。 本発明の実施の形態1のシステムが用いる抵抗値Rのマップを示す。 本発明の実施の形態1のシステムが用いる水移動量cross_H2Oのマップを示す。 膜電極接合体小片を用いて、特定の発電環境下での発電状態を測定するためのシステムの図である。 図1に示す燃料電池が備える膜電極接合体の仮想的な分割方法を説明するための図である。 図7(A)は、膜電極接合体の一部を帯状に切り出した部分を示す。図7(B)は、カソード側の第1領域CA1から第2領域CA2に流れ込むガス量Q_CA12を推定する原理を説明するための拡大図である。 図8(A)は、多孔質体で形成されたガス流路の断面の一例を示す。図8(B)は、小領域間を流れるガス量に対する液水の占有率の影響を説明するための図である。 本発明の実施の形態1のシステムが係数kを定めるために用いるマップを示す。 時刻t0における第i領域CAi,ANiと、その前後領域における状態を説明するための図である。 本発明の実施の形態1のシステムが実行する処理サイクルの流れを説明するためのフローチャートである。 本発明の実施の形態1のシステムが実行するフラッディング防止制御の内容を説明するためのブロック図である。 フラッディング防止制御の結果改善された湿度分布を示す。
符号の説明
10 燃料電池
12 膜電極接合体
18 加湿器
20 コンプレッサ
23 エアフロメータ
36 冷却水供給通路
38 冷却水排出通路
50 ECU(Electronic Control Unit)
I 電流密度
R 抵抗値
cross_H2O 水移動量
P 面内圧力
Volt 発生電圧
T 面内圧力
An_RH アノード相対湿度
Ca_RH カソード相対湿度
V 小領域の体積
k 係数
生成水量 H2O
酸素消費量 O2_off
水素消費量 H2_off

Claims (12)

  1. アノード及びカソードのそれぞれに反応ガスの供給を受けることにより発電を行う燃料電池の膜電極接合体と、
    前記膜電極接合体の発電状態と発電環境との関係を定めた発電特性を記憶する発電特性記憶手段と、
    前記膜電極接合体を、仮想的に、前記反応ガスの流れに沿って並んだ複数の小領域に区分する小領域定義手段と、
    前記複数の小領域のそれぞれにつき、前記発電環境を推定する発電環境推定手段と、
    前記発電環境の推定結果を前記発電特性に当てはめることにより、小領域毎に、前記発電状態を推定する発電状態推定手段と、
    を備えることを特徴とする燃料電池面内状態推定システム。
  2. 前記発電状態は、発電密度を含み、
    前記発電環境は、膜電極接合体の面内圧力、カソードの酸素濃度、カソード湿度、及びアノード湿度を含み、
    前記発電環境推定手段は、
    個々の小領域について、前記面内圧力を推定する面内圧力推定手段と、
    個々の小領域について、前記酸素濃度を推定する酸素濃度推定手段と、
    個々の小領域について、前記カソード湿度を推定するカソード湿度推定手段と、
    個々の小領域について、前記アノード湿度を推定するアノード湿度推定手段と、を含むことを特徴とする請求項1記載の燃料電池面内状態推定システム。
  3. 前記発電環境は、膜電極接合体の発生電圧及び面内温度を含み
    前記発電環境推定手段は、
    個々の小領域について、前記発生電圧を推定する発生電圧推定手段と、
    個々の小領域について、前記面内温度を推定する面内温度推定手段と、を含むことを特徴とする請求項2記載の燃料電池面内状態推定システム。
  4. 前記発電環境推定手段は、
    小領域毎に、カソードに存在する個々のカソード成分の成分量を推定するカソード成分量推定手段と、
    小領域毎に、アノードに存在する個々のアノード成分の成分量を推定するアノード成分量推定手段と、を備え、
    前記酸素濃度推定手段は、カソード成分の成分量に基づいて前記酸素濃度を推定し、
    前記カソード湿度推定手段は、カソード成分の成分量に基づいて前記カソード湿度を推定し、
    前記アノード湿度推定手段は、アノード成分の成分量に基づいて前記アノード湿度を推定することを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池面内状態推定システム。
  5. 前記複数の小領域において、前記個々のカソード成分、及び前記個々のアノード成分が、それぞれ既定の初期状態量となるように、前記燃料電池を起動運転させる初期状態形成手段と、
    前記複数の小領域のそれぞれについて、前記既定の初期状態量を記憶する初期状態量記憶手段と、を備え、
    前記カソード成分量推定手段は、前記起動運転の終了時に、前記既定の初期状態量として記憶されている値を前記個々のカソード成分の成分量とし、
    前記アノード成分量推定手段は、前記起動運転の終了時に、前記既定の初期状態量として記憶されている値を前記個々のアノード成分の成分量とすることを特徴とする請求項4記載の燃料電池面内状態推定システム。
  6. 前記カソード成分量推定手段は、
    発電反応に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード発電変化反映手段と、
    カソードからアノードへの成分移動に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード膜通過量反映手段と、
    隣接する小領域間で生ずる成分移動に伴ってカソード成分の成分量に生ずる変化を、個々のカソード成分の成分量に反映させるカソード領域移動量反映手段と、を備え、
    前記アノード成分量推定手段は、
    発電反応に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード発電変化反映手段と、
    カソードからアノードへの成分移動に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード膜通過量反映手段と、
    隣接する小領域間で生ずる成分の移動に伴ってアノード成分の成分量に生ずる変化を、個々のアノード成分の成分量に反映させるアノード領域移動量反映手段と、を備えことを特徴とする請求項4又は5記載の燃料電池面内状態推定システム。
  7. 前記カソード成分は、酸素、窒素及び水を含み、
    前記アノード成分は、水素及び水を含み、
    前記カソード発電変化反映手段は、
    膜電極接合体の発電状態とカソードにおける酸素消費量との関係を定めた酸素消費特性を記憶した酸素消費特性記憶手段と、
    前記発電状態の推定結果を前記酸素消費特性に当てはめて酸素消費量を推定する酸素消費量推定手段と、
    前記酸素消費量の推定量を、カソードの酸素量から減ずる酸素消費量減算手段と、
    膜電極接合体の発電状態とカソードにおける水生成量との関係を定めた水生成特性を記憶した水生成特性記憶手段と、
    前記発電状態の推定結果を前記水生成特性に当てはめて水生成量を推定する水生成量推定手段と、
    前記水生成量の推定量を、カソードの水量に加える水生成量加算手段を備え、
    前記アノード発電変化反映手段は、
    膜電極接合体の発電状態とアノードにおける水素消費量との関係を定めた水素消費特性を記憶した水素消費特性記憶手段と、
    前記発電状態の推定結果を前記水素消費特性に当てはめて水素消費量を推定する水素消費量推定手段と、
    前記水素消費量の推定量を、アノードの水素量から減ずる水素消費量減算手段を備え、
    前記カソード膜通過量反映手段及び前記アノード膜通過量反映手段の少ないとも一方は、
    前記膜電極接合体の発電環境とカソードからアノードへの水移動量との関係を定めた水移動特性を記憶する水移動特性記憶手段と、
    前記発電環境の推定結果を前記水移動特性に当てはめて水移動量を推定する水移動量推定手段を備え、
    前記カソード膜通過量反映手段は、前記水移動量の推定量を、カソードの水量から減ずる水移動量減算手段を備え、
    前記アノード膜通過量反映手段は、前記水移動量の推定量を、アノードの水量に加える水移動量加算手段を備えることを特徴とする請求項6記載の燃料電池面内状態推定システム。
  8. 前記カソード領域移動量反映手段は、
    個々の小領域について、カソード面内圧力を推定するカソード圧力推定手段と、
    隣接する小領域間のカソード面内圧力差を算出するカソード圧力差算出手段と、
    前記カソード面内圧力差に基づいて、前記隣接する小領域間を移動する個々のカソード成分の移動量を推定するカソード成分移動量推定手段と、
    個々のカソード成分量を、隣接する前段の小領域から移動してくる流入量だけ増やし、隣接する後段の小領域に移動していく流出量だけ減らすカソード移動量加減手段を備え、
    前記アノード領域移動量反映手段は、
    個々の小領域について、アノード面内圧力を推定するアノード圧力推定手段と、
    隣接する小領域間のアノード面内圧力差を算出するアノード圧力差算出手段と、
    前記アノード面内圧力差に基づいて、前記隣接する小領域間を移動する個々のアノード成分の移動量を推定するアノード成分移動量推定手段と、
    個々のアノード成分量を、隣接する前段の小領域から移動してくる流入量だけ増やし、隣接する後段の小領域に移動していく流出量だけ減らすアノード移動量加減手段を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の燃料電池面内状態推定システム。
  9. 前記カソード成分移動量推定手段は、
    前記カソード面内圧力差を、前記隣接する小領域間を移動するカソード成分総移動量に換算するためのカソード係数を設定するカソード係数設定手段と、
    前記カソード面内圧力差と、前記カソード係数とに基づいて、前記カソード成分総移動量を算出するカソード成分総移動量算出手段と、
    前記カソード成分総移動量に、移動元の小領域における個々のカソード成分の割合を掛け合わせることにより、個々のカソード成分の移動量を算出するカソード個別成分移動量算出手段を備え、
    前記アノード成分移動量推定手段は、
    前記アノード面内圧力差を、前記隣接する小領域間を移動するアノード成分総移動量に換算するためのアノード係数を設定するアノード係数設定手段と、
    前記アノード面内圧力差と、前記アノード係数とに基づいて、前記アノード成分総移動量を算出するアノード成分総移動量算出手段と、
    前記アノード成分総移動量に、移動元の小領域における個々のアノード成分の割合を掛け合わせることにより、個々のアノード成分の移動量を算出するアノード個別成分移動量算出手段を備えることを特徴とする請求項8記載の燃料電池面内状態推定システム。
  10. カソードを流れる反応ガスの粘性を推定するカソード粘性推定手段と、
    アノードを流れる反応ガスの粘性を推定するアノード粘性推定手段と、
    個々の小領域に存在する液水量を推定する液水量推定手段を備え、
    前記カソード係数設定手段は、カソードを流れる反応ガスの粘性と、カソードにおける液水の占有率とに基づいて、前記カソード係数を算出し、
    前記アノード係数設定手段は、アノードを流れる反応ガスの粘性と、アノードにおける液水の占有率とに基づいて、前記アノード係数を算出することを特徴とする請求項9記載の燃料電池面内状態推定システム。
  11. 燃料電池の膜電極接合体のアノード及びカソードに、それぞれ反応ガスを供給するステップと、
    前記膜電極接合体の発電状態と発電環境との関係を定めた発電特性を準備する発電特性準備ステップと、
    前記膜電極接合体を、仮想的に、前記反応ガスの流れに沿って並んだ複数の小領域に区分する小領域定義ステップと、
    前記複数の小領域のそれぞれにつき、前記発電環境を推定する発電環境推定ステップと、
    前記発電環境の推定結果を前記発電特性に当てはめることにより、小領域毎に、前記発電状態を推定する発電状態推定ステップと、
    を含むことを特徴とする燃料電池面内状態推定方法。
  12. 前記発電特性準備ステップは、
    前記膜電極接合体と同じ構造を有し、面内の発電環境を実質的に均一にすることが可能な程度の大きさを有する膜電極接合体小片を準備するステップと、
    前記膜電極接合体小片のアノード及びカソードに、反応ガスを供給するステップと、
    前記反応ガスの入口における発電環境を変化させながら前記膜電極接合体小片の発電状態を計測する計測ステップと、
    前記計測ステップの結果に基づいて前記発電特性を生成するステップを含むことを特徴とする請求項11記載の燃料電池面内状態推定方法。
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