JP2009276146A - カムシャフト検査装置及びカムシャフト検査方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】取得部21は、検査対象のカムシャフトが組み付けられたエンジンが発する音の異音テスター15による測定データを取得する。判定部22は、取得部21により取得された測定データのうち特定の周波数帯域の測定データの振幅の変化量、測定データの振幅が予め設定された閾値を超えた回数及びスペクトルのピーク値の各特性値に基づき判別分析又はマハラノビスータグチ(MT)システムを用いて当該検査対象のカムシャフトに対するびびりの発生の有無を検査し、カムシャフトの加工状態の合否を判定する。
【選択図】図1
Description
異音テスターの測定データの表示方法には管理図がある。(管理図に関しては、JISZ9020,9021参照)。管理図は、各ワークの測定結果を時系列的に示すツールである。従来においては、管理図を利用することによって、母集団による平均値と管理限界(規格値)との関係を示して、製造される部品の正常・異常を評価した。なお、十有りにおいては、正常であれば検査に合格し、異常であれば検査に不合格となる。しかし、この考え方は必ずしも正解とはいえない。それは、管理限界が一般的に母集団の3σ(σ:標準偏差、3σ:99.7%)とみなして設定しているからである。しかし、この限界は、ある期間には当てはまらない場合がある。その一例を、図3を用いて説明する。
本実施の形態では、前述したように、加工工程においてカムシャフトに発生しうるびびりと組付工程において異音テスターにより収集される測定データとの関連付けを検討している。加工工程においてカムシャフトに発生しうるびびり33は、図6に示したようにノーズ部分31や揚程部分32で発生する。図7は、びびり33が発生したカムの研磨面の一部分を拡大した図である。びびりは、ピークとピッチを実際に測定すれば判定できるが、本実施の形態では、組付工程で用いる異音テスターの測定データを解析することによってびびりの発生の有無を精度良く判定する。
本実施の形態では、異音テスターの測定データを利用した評価方法を体系化するために、事前に解析を行った。カムシャフトのびびりは、加工工程のカムシャフトの研磨工程で発生するが、その発生形態は、1日、または1週間で周期的に発生するわけではない。加工ラインでのびびりの発生の原因としては、一般的には、設備とワークの相対的な動きで発生すると考えられている。この場合は理論的にも発生メカニズムは解明されているのでこのメカニズムに対する対策、たとえば、オートバランサーによる修正等の対策を講じることによって発生は回避できる。しかし、発生の原因はこればかりではなく、研磨工程で用いられる設備の砥石交換時での作業者による砥石設定不良も原因となりうる。これは、人的な原因なので、確実に回避できるとは言い難い。そして、この場合は、砥石交換後に集中的にびびりが発生する。結果的に、びびりの発生は、「異音」という現象として把握することが必要となる。こうした状況から発生するカムシャフトのびびりに対して、本実施の形態では、組付工程で実施する異音テスターによる測定データを利用して解析を行うようにした。
(1)管理限界(規格値)を外れた場合
(2)管理限界(規格値)に達していなくても、直前50点の測定値の傾向から3σを超えてしまっている場合
(3)(1)かつ(2)を満たす場合
について調べたものである。図8A,図8Bにおいて、(1)に該当する枠には縦線を、(2)に該当する枠には横線を、(3)に該当する枠には黒塗りを、それぞれ施した。なお、びびりが検出できたカムシャフトに該当するデータには、表の左欄に示したように“*”を付加した。図9は、図8A,図8Bに示した測定結果のうちびびりが発生した場合のみ抽出して示した図である。この解析結果より、以下のことが判明した。
判別分析の一般的解法については、文献:「多変量解析の実践」(菅民郎、現代数学社)等を参照することができる。本実施の形態では、びびりが発生した異常データ、びびりが発生しなかった正常データを使用して、以下の判別関数zを求めた。
z=a1×A2+a2×F2+a3×A3+a4×P3+a5×F3+b (1)
但し、a1〜a5はシステムが計算により予め求めている係数、bは定数である。本実施の形態では、さらに、カムシャフトの規格毎に係数を設定し、上記式(1)の判別関数zの係数を検査対象とするカムシャフトに応じて切り替えながら検査を行うことにした。
第2の方法として、以下にMTシステムについて説明する。図10は、MTシステムの概要を説明するために用いる図である。MTシステムは、検査に合格したカムシャフトの測定データ群(=基準空間(単位空間とも言う))34と検査対象のカムシャフトの測定データ35とのかけ離れ具合を1次元の統計的距離(「マハラノビスの距離」)36に置き換えて、検査対象のカムシャフトの合否判定を行う方法である。この方法は、多変量解析の手法の複数の母集団のどれに属するかを調べる判別分析と異なり、1つの正常な母集団にどのくらい近いかを調べる方法で、不合格のカムシャフトのデータが少なくても解析が可能である点に特徴がある。
ところで、本実施の形態においては、カムシャフトの加工工程の中の研磨工程のびびりの発生を組付工程の異音テスターの測定データを使用して判定を行った。この結果、3つの特性の測定項目、すなわち(a)振幅の変化量(An,n=1〜16)、(b)振幅のしきい値超え発生回数(Pn)、(c)スペクトルのピーク値(Fn)(10点平均値)において、特に1−2kHzの周波数帯域の測定値の寄与率が高いことが判明した。その原因は次のようであると考えられる。
600rpm/60×6×N=60N(回)
ここで、Nはびびりの山数である。そして、これまでのびびりの解析研究から、びびりはカム1個当たり、20〜30山程度であると考えられている。これより、平均を取ってカムの山数を25山とすると、
60×25=1500回=1500Hz
と計算される。
Claims (5)
- カムシャフトを組み付けたエンジンが発する音の測定データを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された測定データを記憶する記憶手段と、
検査対象のカムシャフトと同一規格のカムシャフトの検査時に取得された測定データに基づきカムシャフトの合否判定の定量化が可能な統計的手法を用いて設定された合否判定閾値と、前記検査対象のカムシャフトを組み付けたエンジンが発する音の測定データに基づき前記統計的手法を用いて算出された評価値とを比較し、その比較結果により当該検査対象のカムシャフトの合否を判定する判定手段と、
を有し、
前記判定手段は、前記測定データの振幅の変化量、前記測定データの振幅が予め設定された閾値を超えた回数、及びスペクトルのピーク値の各特性値を統計的手法の入力値として用いることを特徴とするカムシャフト検査装置。 - 請求項1記載のカムシャフト検査装置において、
前記判定手段は、当該検査対象のカムシャフトの合否判定に、前記測定データのうち、検査時に音を発するエンジンの回転数に依存した周波数帯域に該当する測定データのみを用いることを特徴とするカムシャフト検査装置。 - 請求項1記載のカムシャフト検査装置において、
前記判定手段は、
前記検査対象のカムシャフトと同一規格であって検査に合格したカムシャフトを組み付けたエンジンから得られた測定データに基づき前記統計的手法を用いて算出された合格検証値及び前記検査対象のカムシャフトと同一規格であって検査に合格しなかったカムシャフトを組み付けたエンジンから得られた測定データに基づき前記統計的手法を用いて算出された不合格検証値を出力する手段と、
合格検証値及び不合格検証値を参照したユーザによる入力値を合否判定閾値として受け付ける手段と、
を有することを特徴とするカムシャフト検査装置。 - 請求項1記載のカムシャフト検査装置において、
前記判定手段は、前記統計的手法として判別分析またはマハラノビスータグチシステムを用いることを特徴とするカムシャフト検査装置。 - コンピュータにより実施され、
カムシャフトを組み付けたエンジンが発する音の測定データを取得する取得ステップと、
取得された測定データを記憶した記憶手段から検査対象のカムシャフトと同一規格のカムシャフトの検査時に取得された測定データを抽出する抽出ステップと、
抽出された測定データに基づきカムシャフトの合否判定の定量化が可能な統計的手法を用いて設定された合否判定閾値と、前記検査対象のカムシャフトを組み付けたエンジンが発する音の測定データに基づき前記統計的手法を用いて算出された評価値とを比較し、その比較結果により当該検査対象のカムシャフトの合否を判定する判定ステップと、
を含み、
前記判定ステップは、前記測定データの振幅の変化量、前記測定データの振幅が予め設定された閾値を超えた回数、及びスペクトルのピーク値の各特性値を統計的手法の入力値として用いることを特徴とするカムシャフト検査方法。
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