JP2009276063A - 振動を用いた樹木の特性測定装置並びに特性測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】測定対象の樹木の一部に振動付与手段4によって所定時間継続して振動が与えられ、樹木を伝わった振動は振動検出手段3によって検出される。検出された振動の信号が特性データ算出手段8に送られ、特性データ算出手段8は検出した振動から得られる振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報に関する特性データを算出する。
【選択図】図1
Description
(1)測定対象の樹木の一部に所定の時間継続して振動を与える振動付与手段と、樹木の他の一部に伝わる振動を検出する振動検出手段と、検出した振動から得られる振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報に関する特性データを算出する特性データ算出手段と、を備えたことを特徴する樹木の特性測定装置。
(2)振動を与える所定の時間は、1秒以上10秒以下の範囲である前項(1)に記載の樹木の特性測定装置。
(5)データ算出手段が算出する特性データとは、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数である前項(1)から(4)のいずれかに記載の樹木の特性測定装置。
(7)データ算出手段は、さらに、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数から第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比を特性データとして算出する前項(5)に記載の樹木の特性測定装置。
(9)測定対象の樹木の一部に所定の時間継続して振動を与え、該振動が樹木の他の一部に伝わる振動を検出し、検出した振動から得られる振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報に関する特性データを算出することを特徴とする樹木の特性測定方法。
(11)測定対象の樹木の一部に与える振動は、エネルギーがほぼ一定で、かつ、周波数が100Hzから10KHzまでの範囲でスイープする低周波信号、若しくは、ホワイトノイズ信号、もしくは、ピンクノイズ信号の何れか1つの信号に基づいた振動であることを特徴とする前項(9)または(10)の何れかに記載の樹木の特性測定方法。
(13)算出される特性データが、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数である前項(9)から(12)のいずれかに記載の樹木の特性測定方法。
(15)算出された第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数から第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比を算出する前項(13)に記載の樹木の特性測定方法。
(16)測定対象の樹木に与えられる振動をモニターし、検出された振動の信号とモニターされた振動の信号との位相の差を算出する前項(9)から(12)のいずれかに記載の樹木の特性測定方法。
前項(3)に記載の発明によれば、測定対象の樹木の一部にエネルギーがほぼ一定で、かつ、周波数が100Hzから10KHzまでの範囲でスイープする低周波信号、ホワイトノイズ信号、ピンクノイズ信号の何れかの信号に基づいた振動を与えることができる。また、測定対象の樹木に与えるスイープする低周波信号の周波数の上限を10KHzとすることで、該周波数を超えると振動の振幅が小さくなり振動を検出できなくなる恐れを未然に防ぐことができ、その結果エネルギー効率等の高い測定が可能となる。
前項(5)に記載の発明によれば、第2共鳴周波数と第3共鳴周波数を特性データとして算出することができる。
前項(7)に記載の発明によれば、第2共鳴周波数と第3共鳴周波数の比を算出することができる。
前項(9)に記載の発明によれば、測定対象の樹木から精度の高い測定を行うために必要な特性データを得るのに必要な時間継続して振動を与えることが可能となるので、精度の高い測定が可能となる。また測定対象の樹木の幹に穴を開ける必要がないので、穴を開けたことが原因による該樹木が病原菌等に感染することを防ぐことができる。
前項(11)に記載の発明によれば、測定対象の樹木の一部にエネルギーがほぼ一定で、かつ、周波数が100Hzから10KHzまでの範囲でスイープする低周波信号、ホワイトノイズ信号、ピンクノイズ信号の何れかの信号に基づいた振動を与えることができる。
前項(13)に記載の発明によれば、第2共鳴周波数と第3共鳴周波数を算出することができる。
前項(15)に記載の発明によれば、第2共鳴周波数と第3共鳴周波数の比を算出することができる。
前項(16)に記載の発明によれば、モニターされた信号と検出された振動の信号との位相の差を得ることができる。
(全体構成)
図1は、本発明に係る樹木の特性測定装置1の概略構成、及び樹木の特性測定装置1をイヌエンジュ樹木Tに設置した状態の一例を示した図である。
図1に示すように、樹木の特性測定装置1は、振動発信部2、第一アンプ3、振動付与部4,振動モニター5、振動検出部6、第二アンプ7、特性データ算出部8、データ保存部9及び表示部10を備えている。振動発信部2は第一アンプ3と、第一アンプ3は振動付与部4と、振動付与部4は振動モニター5と、振動モニター5は特性データ算出部8とそれぞれ接続されている。
第一アンプ3は増幅器であり、振動発信部2から供給された信号を増幅して振動付与部4へ供給する。
振動付与部4は、供給された信号に基づいて振動を発生させ、イヌエンジュ樹木Tに振動を与える。
振動検出部6は、イヌエンジュ樹木Tに与えられ、該樹木を伝達してきた振動を検出し、検出された振動の信号(以下では、振動信号という)を第二アンプ7に送る。
特性データ算出部8は、送られてきた振動信号に対してフーリエ解析等の処理を行うことによって振動伝達特性を得て該振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報(この実施形態では、幹内部の腐朽の程度や節の有無等についての情報)に関する特性データを算出する。
本実施形態では、特性データとして、振動スペクトル、第2共鳴周波数、第3共鳴周波数、第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比、及び振動信号とモニター信号との位相差等を算出するが、詳しくは後述する。
表示部10は、特性データ算出部8によって算出された特性データ等を表示する。
図1に示すように、地面から上方約1メートルの地点にある幹の表面の一部に振動付与部4を設置する。また、振動検出部6を幹の表面の他の一部(振動付与部4から180度離れた同心円上の位置)に設置する。なお、以下では振動付与部4が振動を与える部位を加振点といい、また振動検出部6が振動を検出する部位を検出点という。
イヌエンジュ樹木Tは振動付与部4によって振動が与えられると、垂直モード振動(樹木の軸に沿った伸び縮み振動)、曲げモード振動、ねじれモード振動、円周モード振動(赤道面での収縮膨張)の4つの振動モードが励起されるが、本発明では、このうち円周モード振動に着目する。ここで、円周モードとは樹木あるいは枝の側面の一点を振動させたとき、図2において実線で示したような振動モードのことである。この円周モードの振動強度は、加振点Aから90度おきの点B、点C、点Dの各点で最も大きくなる。従って、A点を振動させた場合には、点B、点C、点Dで振動を検出すると、樹木の測定箇所の上下の幹の状態や枝や果実の状態に影響を受けない振動信号を得ることができる。
まず、ユーザは測定対象のイヌエンジュ樹木Tの直径(または、円周)を測定する。
ユーザによって測定された直径データ等は、入力部(図示せず)を介してデータ保存部9に保存される(ステップS1)。
特性データ算出部8は、送られてきた振動信号等に対してフーリエ解析等の所定の処理を行うことにより振動伝達特性を得て、該振動伝達特性に基づいて特性データを算出する(ステップ4)。
最後に、表示部10に特性データを表示し(ステップS5)、処理を終了する。
直径20センチのイヌエンジュ樹木Tの第2共鳴周波数が約2500Hzである場合、第2共鳴周波数は円周上の2波長入ることが分かっているので、
V2=(0.628/2)×2500=785m/s
として振動速度V2が計算できる。
V3=(0.628/3)×3800=795m/s
として振動速度V3が計算できる。
y=156.951+32.559x
であり、また相関係数は
y=170.31+32.588x
であり、また相関係数は
y=188.05+30.098x
であり、また相関係数は
(i)もし、様々な直径をもつ樹木、即ち大きさや樹齢の異なる樹木の振動速度が一定であると仮定するならば、横軸に直径を縦軸に振動速度をとったグラフは、X軸に平行になるはずである。ところが、様々な直径をもつイヌエンジュ樹木Tに対して測定を行い、データを取ると、図5に示したグラフのように右上がりのグラフとなる。即ち、円周が大きくなると振動速度が上昇している。これは、直径の小さな樹木、換言すれば樹齢の若い樹木ほど振動速度が低いことを表している。
これから、密度が同じなら若い樹木のほうが樹齢の高いものよりヤング率が低いことがわかる。
図5において、第2、第3及び第4共鳴周波数の値から計算した振動速度がそれぞれほぼ同じであるということは、イヌエンジュでは中心部に存在する心材と周辺に存在する辺材の性質が同じであることを意味している。
第1実施例として、第2、第3及び第4共鳴周波数それぞれから振動速度V2、V3及びV4を算出することにより、イヌエンジュ樹木Tの内部の腐朽の程度を測定する方法を説明する。なお、データ保存部9には、測定対象のイヌエンジュ樹木Tと同じ直径を有する正常なイヌエンジュ樹木Tの振動速度が保存されている。
図7及び図8は、12点での特性データを示した図あり、また右端の写真は測定したイヌエンジュ樹木Tの赤道面の断面である。
一方、樹木Cは、樹木内部に腐朽がわずかに存在するものであり、樹木A及びBの円グラフと比べてわずかながら円グラフが拡大する方向にあることが見て取れる。即ち、振動速度V2、V3及びV4の値は、正常なイヌエンジュ樹木Tのそれよりも小さくなっている。
次に、第2実施例として第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比(f3/f2)、及び第2共鳴周波数に対する第4共鳴周波数の比(f4/f2)を特性データとして算出し、該特性データから測定対象のイヌエンジュ樹木Tの内部の腐朽の有無を測定する方法を説明する。
樹木A及びBは、正常な(腐朽のない)イヌエンジュ樹木Tであり、樹木A及びBの円グラフから読み取れるように、f3/f2の値が約1.5であり、またf4/f2の値は約2.0である。
さらに、樹木D、E及びFは、いずれも樹木内部に大きな腐朽が存在するイヌエンジュ樹木Tである。いずれの樹木の円グラフもf3/f2の値が1.5から、またf4/f2の値が2.0から著しくはずれている。
次に、第3実施例として測定対象のイヌエンジュ樹木Tの幹の内部に節があるか否かの測定をする方法を説明する。
本実施例においても、実施例1及び実施例2と同様にして測定対象のイヌエンジュ樹木Tに樹木の特性測定装置1を設置し、加振点と受振点とを同方向に30度ずつずらして12回測定を行い、赤道面上の平面的な樹木の特性データ(本実施例では、振動速度)を12点から得る。
樹木A及びBは内部に節のない正常なイヌエンジュ樹木Tである。
図11に示すように、樹木A及びBの円グラフは中心にまとまっている。換言すれば、測定対象のイヌエンジュ樹木Tの振動速度は、正常なイヌエンジュ樹木Tのそれとほぼ同じである。
次に、第4実施例としてf3/f2の値とf4/f2の値とから測定対象のイヌエンジュ樹木Tの幹の内部に節があるか否かの測定をする方法を説明する。
測定対象のイヌエンジュ樹木Tに樹木の特性測定装置1を設置し、実施例1,2及び3と同様にして加振点と受振点とを同方向に30度ずつずらして12回測定を行い、赤道面上の平面的な樹木の特性データ(本実施例では、f3/f2の値及びf4/f2の値)を12点から得る。
一方、幹内部に節のある樹木C及びDでは、いずれもf3/f2の値が1.5よりも大きく下回り、まf4/f2の値も2.0から大きく下回っている。
このことを用いることで、共鳴周波数の比を用いて測定対象のイヌエンジュ樹木Tの幹内部に節があるか否かの測定が可能となる。
次に、本発明に係る第5実施例を、図面を参照しながら説明する。
本実施例は、振動信号の位相とモニター信号の位相との差から幹の内部の腐朽の程度を測定するものである。なお、本実施例では直径が約12cmのイヌエンジュ樹木Tに対して測定を行う。
このことを用いることにより、振動信号とモニター信号との位相差の変化に基づいて測定対象のイヌエンジュ樹木Tの幹内部の腐朽の程度の測定が可能となる。
一般的に、測定対象の樹木に与える振動の周波数の範囲が広ければ広いほどより詳細なデータが得られることが知られている。
また、本実施例では、円周モードに基づいて測定するため、直径(円周)の情報があれば、正確に樹木内部の情報を伝達する振動速度を計算することができる。
また、本実施形態では測定対象の樹木としてイヌエンジュを用いたが、これ以外の樹木に対しても本発明が適用可能であることはいうまでもない。
例えば、用途の一例としては、以下のようなものが挙げられる。
1960年代に日本の各地の山林で始まった大規模な国有林の植林事業は、50年を経た2010年には、材として切り出される予定である。
材の買い手は購入対象となる山林全体の評価を行うため、購入対象の山林に属する樹木の中から1本から数本切り出し、切り出した樹木の内部の特性によって山林全体を評価する。そのため、1本でも病中害や腐朽など欠陥のある樹木を見つけると、他の切り出されていない材がいくらすぐれていてもその山林全体の評価が低く見積もられ、国有財産の正当な評価がなされない恐れがある。
2・・・振動発信部
3・・・第一アンプ
4・・・振動付与部
5・・・振動モニター
6・・・振動検出部
7・・・第二アンプ
8・・・特性データ算出部
9・・・データ保存部
10・・・表示部
Claims (16)
- 測定対象の樹木の一部に所定の時間継続して振動を与える振動付与手段と、
樹木の他の一部に伝わる振動を検出する振動検出手段と、
検出した振動から得られる振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報に関する特性データを算出する特性データ算出手段と、
を備えたことを特徴する樹木の特性測定装置。 - 振動を与える所定の時間は、1秒以上10秒以下の範囲である請求項1に記載の樹木の特性測定装置。
- 測定対象の樹木の一部に与える振動は、エネルギーがほぼ一定で、かつ、周波数が100Hzから10KHzまでの範囲でスイープする低周波信号、もしくは、ホワイトノイズ信号、もしくは、ピンクノイズ信号の何れか1つの信号に基づいた振動であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の樹木の特性測定装置。
- 振動付与手段により振動を与える部位と振動検出手段により振動を検出する部位とが、樹木の平断面の中心点に対してほぼ対称の位置に設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の樹木の特性測定装置。
- データ算出手段が算出する特性データとは、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数である請求項1から4のいずれかに記載の樹木の特性測定装置。
- データ算出手段は、さらに、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数のそれぞれから振動が測定対象の樹木を伝わる速さである振動速度を特性データとして算出する請求項5に記載の樹木の特性測定装置。
- データ算出手段は、さらに、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数から第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比を特性データとして算出する請求項5に記載の樹木の特性測定装置。
- 振動付与手段が付与する振動をモニターする振動モニター手段を備え、
データ算出手段は、モニターされた振動の信号と検出された振動の信号との位相の差を特性データとして算出する請求項1から4のいずれかに記載の樹木の特性測定装置。 - 測定対象の樹木の一部に所定の時間継続して振動を与え、該振動が樹木の他の一部に伝わる振動を検出し、検出した振動から得られる振動伝達特性に基づいて樹木の内部情報に関する特性データを算出することを特徴とする樹木の特性測定方法。
- 振動を与える所定の時間は、1秒以上10秒以下の範囲である請求項9に記載の樹木の特性測定方法。
- 測定対象の樹木の一部に与える振動は、エネルギーがほぼ一定で、かつ、周波数が100Hzから10KHzまでの範囲でスイープする低周波信号、若しくは、ホワイトノイズ信号、もしくは、ピンクノイズ信号の何れか1つの信号に基づいた振動であることを特徴とする請求項9または10の何れかに記載の樹木の特性測定方法。
- 測定対象の樹木に振動を与える部位と該振動を検出する部位とが、樹木の平断面の中心点に対してほぼ対象の位置に設定されることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の樹木の特性測定方法。
- 算出される特性データが、第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数である請求項9から12のいずれかに記載の樹木の特性測定方法。
- 算出された第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数から振動が測定対象の樹木を伝わる速さである振動速度を算出する請求項13に記載の樹木の特性測定方法。
- 算出された第2共鳴周波数及び第3共鳴周波数から第2共鳴周波数に対する第3共鳴周波数の比を算出する請求項13に記載の樹木の特性測定方法。
- 測定対象の樹木に与えられる振動をモニターし、検出された振動の信号とモニターされた振動の信号との位相の差を算出する請求項9から12のいずれかに記載の樹木の特性測定方法。
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