JP2009272162A - 電流遮断機構付き電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電流遮断機構の機能低下を防ぎつつ、大電流を通電可能な電池を提供する。
【解決手段】正負の電極を有する電極体80がケース3に収容された電池2が提供される。電池2は、電極体80側から第一導電部材36および第二導電部材22を経て外部端子30側に至る導電経路を分断することによって電極体80と電池外部との導通を遮断する電流遮断機構4を備える。両導電部材22,36は、それぞれ相手側部材に向けて突出する凸部23,25を有し、それら凸部の頂部に形成された溶接部Wで接合されている。電流遮断機構4は、電池2の異常時に溶接部Wに剪断力を加えて破断させることで導電経路を分断するように構成されており、凸部23,25の周辺に配置されて上記剪断力の発生に寄与する剪断力発生部5(例えば、形状記憶合金製のコイルバネ32)を有する。
【選択図】図1
【解決手段】正負の電極を有する電極体80がケース3に収容された電池2が提供される。電池2は、電極体80側から第一導電部材36および第二導電部材22を経て外部端子30側に至る導電経路を分断することによって電極体80と電池外部との導通を遮断する電流遮断機構4を備える。両導電部材22,36は、それぞれ相手側部材に向けて突出する凸部23,25を有し、それら凸部の頂部に形成された溶接部Wで接合されている。電流遮断機構4は、電池2の異常時に溶接部Wに剪断力を加えて破断させることで導電経路を分断するように構成されており、凸部23,25の周辺に配置されて上記剪断力の発生に寄与する剪断力発生部5(例えば、形状記憶合金製のコイルバネ32)を有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、電池の異常時に電流を遮断する機構を内蔵した電池に関する。
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。このような二次電池の典型的な構造の一つとして、正極および負極を備える電極体を電解質とともにケース内に密閉して成る密閉構造の電池(密閉型電池)が挙げられる。
ところで、この種の電池を充電処理する際、不良電池の存在や充電装置の故障による誤作動等があった場合、電池に通常以上の電流が供給されて過充電状態に陥ることが想定される。かかる過充電等の際に、電池反応が急速に進行して電池が過熱したり、電池ケースの内圧が過剰に上昇して該ケースの変形等を生じたりすることがあり得る。そこで、このような電池の異常時に電流を遮断する機構を設けることが提案されている。例えば特許文献1には、通常時にはバイメタルの当接を介して集電リードとキャップとを電気的に接続させておき、温度上昇時には上記バイメタルを変形させて上記当接状態を解除することにより電流を遮断する技術が記載されている。電流遮断に関する他の従来技術文献として特許文献2が挙げられる。
特開平5−205727号公報
特開平10−321213号公報
しかしながら、特許文献1のようにバイメタルの当接を介して電流を取り出す構成では電池の内部抵抗が高くなりがちである。かかる内部抵抗の上昇は電池の出力低下につながることから、車両搭載用電池等のように高出力が求められる電池への適用は困難である。また特許文献1には、関連する技術として、圧力により変形する部材と集電リードとを溶着しておき、電池の内圧が上昇したときには上記部材を変形させて該溶着を破断させる(溶着面に垂直な方向への引張力を加えて溶着部を引き剥がす)ことにより電流を遮断する技術が記載されている。しかし、かかる電流遮断機構では大電流(例えば10A以上の大電流)を放電可能な電池を提供することが困難となる。すなわち、大電流を放電するには溶着部の断面積(溶着面積、すなわち通電面積)を大きくとることが有利であるが、溶着面積を大きくとると当該溶着部の破断に要する力(延いては電流遮断機構を作動させるケース内圧、すなわち該機構の作動圧力)も大きくなる。このため、電流遮断機構の機能低下を防ぐ(例えば、異常モードの早期に電流遮断機構を作動させる)ためには、適切なタイミングで溶着部を破断させ得る程度に溶着面積を制限する(小さくする)必要があり、このことが大電流放電に対する制約となっていた。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、電流遮断機構の機能低下を防ぎつつ、大電流を通電可能な電池を提供することである。
本発明によると、正負の電極を有する電極体がケースに収容された電池が提供される。その電池は、前記電極の少なくとも一方と前記ケース外部に露出する外部端子とを結ぶ導電経路を分断することで前記電極体と該電池外部との導通を遮断する電流遮断機構を備える。前記導電経路は、前記電極体側から第一導電部材および第二導電部材をこの順に経て前記外部端子側に至っている。前記第一導電部材および前記第二導電部材は、それぞれ相手側部材に向けて突出する凸部を有する。両導電部材は、前記ケースの内部において、前記凸部の頂部に形成された溶接部で接合されている。前記電流遮断機構は、前記電池の異常時に、前記溶接部に対して該溶接部の溶接面に沿う方向への力を加えることにより該溶接部を破断させて前記導電経路を分断するように構成されている。ここで、該電流遮断機構は、前記凸部の周辺に配置されて前記溶接面に沿う方向(典型的には、溶接面に略平行な方向)への力の発生に寄与する剪断力発生部を有する。
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス一般を指す用語であって、一次電池および二次電池を含む概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、リチウムイオン電池、金属リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する概念である。ここに開示される技術は、典型的には密閉型の二次電池に好ましく適用される。
このように溶接面に沿う方向への力(すなわち剪断力)を利用して溶接部を破断させる上記構成によると、溶接部の断面積(溶接面積、すなわち通電面積)をより大きく確保しても、該溶接部を適切なタイミングで(例えば、異常モードがそれほど進行しないうちに)破断させることができる。これは、一般に金属材料の剪断強度は引張強度の50〜70%程度であることから、溶接部を引張力により破断させる(溶接面と交差(典型的には直交)する方向への引張力を加えて溶接部を引き剥がす)場合と比較して、該溶接部を剪断力により破断させる場合には概ね3〜5割減の力で足りるためである。したがって本発明によると、通常時には大電流を放電(通電)可能であり、且つ異常時には良好な電流遮断機能を発揮する電流遮断機構を備えた電池が提供され得る。また、上記のように溶接部の通電面積を大きくとり得ることから、該溶接部を設けたことによる内部抵抗(直流抵抗)の上昇を抑えて、より高性能な(例えば高出力の)電池を提供することができる。
上記溶接部は両導電部材の凸部同士を溶接することにより形成されているので、該凸部の形状を利用して(例えば、該凸部の頂面全体を溶接部とすることにより)、両導電部材の溶接面積を容易に制御することができる。このことによって、より精確に電流遮断機構を作動させる(作動タイミングのバラツキを抑える)ことができる。また、上記凸部の周辺に形成されるスペースを有効に利用して上記剪断力発生部を効率よく配置することができる。したがって、ケースの外形サイズの増大を抑えつつ剪断力発生部を設けることができる。また、このように凸部の頂部に溶接部を設けた構成によると、該溶接部を破断に伴って両導電部材が離隔した状態を確実に実現しやすいという利点がある。
なお、ここに開示される電池は、該電池の異常時に上記溶接部に対して剪断力を含む力を加えるものであればよく、該溶接部に対して剪断力とともに引張力が加わる構成であり得る。好ましい一態様では、電池の異常時に上記溶接部に対して加わる力(溶接部の破断に寄与する力)が主として(すなわち、上記力の主成分が)剪断力である。上記溶接部に加わる力が実質的に剪断力のみであってもよい。
前記剪断力は、前記第二導電部材に対して前記第一導電部材を一方向に直線的にずらす剪断力(以下、単純剪断力ということもある。)であってもよく、前記第二導電部材に対して前記第一導電部材を前記溶接部の周りに回転させる方向への回転剪断力(ねじれの剪断力)であってもよく、これらの合力であってもよい。上記剪断力が主として回転剪断力であるか、あるいは実質的に回転剪断力である態様を好ましく採用し得る。かかる態様によると、上記回転剪断力を利用して溶接部をねじ切ることにより、該溶接部を適切なタイミングで破断させることができる。また、ねじれの剪断に要する力は直線的な剪断に比べて溶接部の品質(溶接のばらつき)の影響を受けにくいことから、上記態様によると電流遮断機構をより確実に(精度よく)作動させることができる。このように回転剪断力を利用して溶接部を破断する電流遮断機構は、円筒型のケースを備える電池(円筒型電池)に好ましく適用され得る。例えば、該ケースの軸方向の端部に電流遮断機構を配置することにより、ケースの外形サイズ(軸長)の増大を抑えつつ(換言すれば、ケース内のスペースを有効に利用して)電流遮断機構を設けることができる。
ここに開示される電池の好ましい一態様では、前記電流遮断機構が、前記電池の温度が所定値(すなわち作動温度)以上に上昇した場合に前記溶接部を破断させるように構成されている。例えば、温度に応じて形状が変化する感熱変形部材(典型的には、形状記憶材料製の部材)を含み、該感熱変形部材の形状変化(好ましくは、溶接面に沿う方向への変形、すなわち溶接面に平行な平面に対する投影形状の変化を含む。)によって前記溶接部に力(好ましくは主に剪断力)が加わるように構成された電流遮断機構であり得る。このように温度上昇により作動するタイプの電流遮断機構は、ケース内空間の大きさや内圧上昇に関与する材料(電極活物質、電解質等)の種類を問わず、同様の構成を種々の電池に適用し得る。したがって部品の共通化や設計の効率化が容易である。かかる電流遮断機構は、密閉型電池および非密閉型電池のいずれにも好ましく適用され得る。
温度上昇により作動するタイプの電流遮断機構を備えた電池の好ましい一態様では、前記剪断力発生部が感熱変形部材を含み、該感熱変形部材の一端および他端が前記第一導電部材および前記第二導電部材にそれぞれ係合している。そして、前記電流遮断機構は、前記電池の温度が所定値以上に上昇した場合に、前記感熱変形部材の形状変化によって、前記第一導電部材と前記感熱変形部材との係合部を前記第二導電部材と前記感熱変形部材との係合部に対して相対的に移動させることで(好ましくは、該相対移動により前記溶接部に剪断力を加えて)前記溶接部を破断させるように構成されている。一例として、前記感熱変形部材として温度に応じて伸縮するコイル(典型的には形状記憶材料製のコイル)を用い、該コイルが前記溶接部を取り巻くようにして、その両端を前記第一、第二導電部材にそれぞれ係合させた構成が挙げられる。かかる構成によると、上記コイルの伸縮に伴って上記係合部を相対的に移動させることで、前記溶接部に主として回転剪断力を加えて該溶接部を効果的に破断させることができる。また、上記コイルは溶接部(凸部)を囲む空間を有効に利用して省スペースで配置することができる。
ここに開示されるいずれかの電池は、大電流の放電に適することから、車両に搭載される電池として好適に利用され得る。したがって本発明によると、ここに開示されるいずれかの電池(例えばリチウムイオン電池)を備える車両(例えば自動車)が提供される。
以下、本発明のいくつかの好適な実施形態例を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明に係る電池(典型的には二次電池、例えばリチウムイオン電池)は、大電流放電(高出力)が可能であることから、特に自動車等の車両に搭載されるモータ(電動機)用電源として好適に使用され得る。したがって本発明によると、例えば図16に模式的に示すように、かかる電池2(当該電池2を複数個直列に接続して形成される組電池の形態であり得る。)を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車等のような電動機を備える自動車)1が提供され得る。
特に限定することを意図したものではないが、以下では捲回型の電極体(捲回電極体)と非水電解質(典型的には液状電解質、すなわち電解液)とを円筒型のケース(容器)に収容した形態の密閉型リチウムイオン電池を例として本発明を詳細に説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映するものではない。
本実施形態は、電池の温度が所定の作動温度以上に上昇した場合に、第一導電部材と第二導電部材との溶接部Wに回転剪断力を加えて該溶接部Wを破断させるタイプの電流遮断機構を備えたリチウムイオン電池の一例に関する。図1〜3を参照しながら、本実施形態に係るリチウムイオン電池2の構成および作動を説明する。図1および図2は正常時(電流遮断機構4が作動する前の状態)、図3は異常時(電流遮断機構4が作動して電流が遮断された状態)における電池2またはその要部を示している。
本実施形態に係るリチウムイオン電池2は、図1に示すように、従来の一般的なリチウムイオン電池と同様、典型的には所定の電池構成材料(正負それぞれの集電体に活物質が保持された正極および負極、セパレータ等)を具備する電極体80が適当な電解液(図示せず)とともに電池ケース3に収容された構成を有する。ケース3は、開口部を有するケース本体10と、その開口部を塞ぐ蓋体20とを備える。
ケース本体10は、後述する電極体80を収容し得る形状であればよく、本実施形態では軸方向の一端が開口した円筒形状(すなわち有底円筒形状)である。ケース本体10を構成する材質としては、従来のリチウムイオン電池で使用されるものと同様の材質のものを適宜採用することができ、特に制限はない。本実施形態のケース本体10はニッケルメッキ鋼板製であって、電極体80の負極に接続された負極集電板84が底部内面に接合されることによりケース本体10が負極側の外部端子を兼ねるように構成されている。また、電極体80を構成する正極(典型的には、正極活物質を保持する正極集電体)には正極集電板82が接続されている。
蓋体20は、概ね円板状の金属板からなる封口板22と、封口板22の外周部に固定された樹脂製の筒部26と、筒部26とは反対側に突出する正極側の外部端子30とを備える。この蓋体20を筒部26側からケース本体10の開口部に挿入し、絶縁封止材(例えば絶縁性樹脂)12を介して封口板22の外周にケース本体10の開口端をカシメることにより、封口板22とケース本体10との間を絶縁するとともに、ケース本体10の開口部を気密に封止してケース3の密閉構造を構築している。
封口板22の中央部には、例えばプレス成形により、ケース3の内側に向けて突出する略円錐台形状の凸部23が形成されている。一方、正極集電板82には、帯状の金属板からなるリード部材36の一端が固定(例えば溶接)されている。リード部材36の他端には、例えばプレス成形によって、略円錐台形状の凸部25が形成されている。封口板22の凸部23とリード部材36の凸部25とは略同一の頂面形状を有し、該頂面において凸部23と凸部25とを溶接(例えば超音波溶接)することで溶接部Wが形成されている。すなわち、本実施形態では、リード部材36が第一導電部材として機能し、封口板22が第二導電部材として機能する。両導電部材(ここではリード部材36および封口板22)は互いに近づく方向に突出する凸部23,25を有し、該凸部23,25の頂面を溶接することで溶接部Wが形成されている。溶接面積(ひいては溶接強度)の制御が容易であることから、上記頂面の全体(全面積)を溶接部Wとすることが好ましい。電極体80を構成する正極は、該電極体80側から順に、正極集電板82、リード部材36および封口板22を経て正極外部端子30と電気的に接続されている。電池2の正常時には、かかる導電経路を介して電極体80の正極と外部端子30との導通が確保されている。
本実施形態の電池2は、該電池の温度が所定の作動温度(例えば凡そ60〜120℃、典型的には凡そ70〜100℃に設定され得る。)以上に上昇した場合に上記導電経路を分断して電流を遮断する電流遮断機構4を備える。この電流遮断機構4は、リード部材36と封口板22との溶接部Wに対して溶接面に沿う方向への力(剪断力)を加え、これにより該溶接部Wを破断させることで導電経路を分断するように構成されている。
電流遮断機構4の構成および作動をより具体的に説明する。図2によく示されるように、凸部23,25の周囲には、剪断力発生部5を構成する感熱変形部材32が配置されている。本実施形態では、感熱変形部材32として、上記作動温度に対応する変態温度を有する形状記憶合金により形成されたコイルバネを用いている。この感熱変形部材32の表面は絶縁性の樹脂膜(塗料等)でコートされている。感熱変形部材32の一端は、凸部23の側面に設けられた凹部(図示せず)に係合させて(例えば差し込んで)固定されている。感熱変形部材32の他端は、上記一端から溶接部Wの周辺を回り込んで、凸部25の側面に設けられた凹部(図示せず)に係合させて(例えば差し込んで)固定されている。
なお、感熱変形部材32を構成する材質としては、従来公知の各種形状記憶材料のなかから適当なものを(例えば、変態温度、強度、形状回復力、成形性、耐薬品性等を考慮して)選択することができる。金属系の材料(形状記憶合金)を成形してなる感熱変形部材32、有機系の材料(形状記憶ポリマー)を成形(射出成形、押出成形等)してなる感熱変形部材32のいずれも使用可能である。好ましく採用し得る形状記憶合金の市販品として、例えば、株式会社古川テクノマテリアル製の商品名「古川NT合金」、NECトーキン株式会社製の商品名「メモアロイ(登録商標)」等が挙げられる。
電池2の温度が感熱変形部材32の変態温度以上に上昇すると、感熱変形部材32のコイル形状が広がる(バネが伸びる)ように該部材32が変形しようとする。ここで、感熱変形部材32の両端は凸部23,25に固定されていることから、上記変形しようとする力により、図2に黒矢印で示すように、凸部23(封口板22)に対して凸部25(リード部材36)を回転させる方向への力(溶接面に対してやや斜めに回転する方向への力であり得る。)が加わる。これにより溶接部Wに剪断力(典型的には主に回転剪断力)が働く。該剪断力が溶接強度に打ち勝つと、図3に示すように溶接部Wが破断し(ここでは、やや斜めに捻じ切られる場合を図示している。)、これにより封口板22とリード部材36との間で導通経路が分断されて電流が遮断される。
なお、溶接部Wの破断により封口板22からフリーな状態となったリード部材36は、感熱変形部材(コイルバネ)32が広がった形状を維持することにより、封口板22から離隔した状態に保たれる。ここで、リード部材36(凸部25)と封口板22(凸部23)とをより確実に離隔させるために、例えばリード部材36の屈曲部36Aを外側にやや弾性変形させた(引き伸ばした)状態で接続部材24および集電板82に接合しておき、溶接部Wが破断するとリード部材36の弾性復元力により接続部材24が集電板82側(封口板22から遠ざかる側)に離隔するように構成してもよい。
本実施形態の構成によれば、回転剪断力を利用して溶接部Wを破断させるので、主として引張力により(例えば、実質的に引張力により)破断させる場合に比べて、溶接面積の割に小さな力で溶接部Wを破断させることができる。したがって、温度上昇時(異常時)に感熱変形部材32が形状変形(復元)しようとする力を、溶接部Wを破断させるために効率よく利用することができる。これにより、適切なタイミングで溶接部Wを破断可能な溶接面積(通電面積)の上限を高めることができる。すなわち、本実施形態の電池2は、所望の大電流(例えば10A〜150A程度)を通電可能な程度にまで溶接面積を大きくとっても(典型的には凡そ2mm2〜20mm2、例えば凡そ4mm2〜10mm2)、適切なタイミングで溶接部Wを破断させる(電流遮断機構を作動させる)ことができる。また、溶接面積の割に小さな力で溶接部Wを破断させ得ることから、より余裕をもって該破断を行うことができる。すなわち、溶接部Wを破断させるために最低限必要な力と、異常時に溶接部Wに加わる力(ここでは回転剪断力)との間に、より大きなマージンを確保することができる。したがって、本実施形態の電池2は、電流遮断機構4の作動確実性(作動精度)に優れたものとなり得る。このように、本実施形態によると、電流遮断機構4の機能低下を防ぎつつ、大電流を通電可能な電池2が提供される。本実施形態のように温度上昇により作動するタイプの電流遮断機構4は、ケース3内の空間の大きさや内圧上昇に関与する材料(電極活物質、電解質等)の種類を問わず、種々の電池に同様の構成を適用し得る。したがって部品の共通化や設計の効率化が容易である。
本実施形態のように第一、第二導電部材(ここではリード部材36および封口板22)に互いに近づく方向に突出する凸部23,25を設け、該凸部23,25の頂面(好ましくは該頂面の全体)を溶接して溶接部Wを形成することにより、両導電部材の溶接面積(ひいては溶接強度)を容易に規定(制御)することができる。このことによって電流遮断機構4をより精確に作動させる(作動タイミングのバラツキを抑える)ことができる。
図1に示すように、凸部23,25の背面には、該凸部に対応する形状の凹部24,37が形成されている。本実施形態では、凸部23,25の頂部(頂面)を溶接して溶接部Wを形成するにあたり、凹部24,37を利用して溶接装置(例えば、超音波溶接機におけるホーン、抵抗溶接におけるロッド(電極)等)の位置合わせをより的確に行うことができる。これにより溶接品質(ひいては溶接強度)のバラツキを抑制し、電流遮断機構4をより精確に作動させることができる。
なお、図2に示す例ではコイルバネ状の感熱変形部材32が凸部23,25の回りに一周を少し超えて巻き付く程度に該部材32の長さを設定しているが、例えば図4に示すように、同様の(コイルバネ状の)感熱変形部材32を凸部23,25の回りに二周以上巻き付けてもよい(図4には約四周巻き付けた例を示している)。
また、上記実施形態では一つの感熱変形部材32を用いる例につき説明したが、同様の感熱変形部材32を二つ以上用いた構成としてもよい。例えば図5に示すように、凸部23,25の周方向に略180度位相をずらして二つの感熱変形部材(形状記憶合金製のコイルバネ)32A,32Bを略平行に配置してもよい。三つ以上の感熱変形部材を用いる場合には、それらの位相間隔を略均等にすることが好ましい。
このように感熱変形部材の数および/または巻数を多くすることにより、溶接部Wの溶接面積をより大きくしても該溶接部Wを適切に破断させ得る。あるいは、より余裕をもって上記溶接部Wを破断させ得る。
以下、図1を参照しながら、実施形態1に係るリチウムイオン電池2(実施形態2〜6に係る電池についても同様である。)においてケース3に収容される電極体80の構成等を説明する。この電極体80は、通常のリチウムイオン電池の捲回電極体と同様、シート状の正極集電体に正極活物質層が保持された正極(正極シート)と、シート状の負極集電体に負極活物質層が保持された負極(負極シート)とを、シート状のセパレータ(セパレータシート)を介して重ね合わせ、次いで捲回して構成されている。正極シートの長手方向に沿う一方の端部(すなわち幅方向の一方の端部)には、正極集電体上に正極活物質層を有しない部分(活物質層非形成部分)が設けられている。同様に、負極シートの長手方向に沿う一方の端部には、負極集電体上に負極活物質層を有しない部分(活物質層非形成部分)が設けられている。正負の電極シートをセパレータシートと重ね合わせる際には、両電極シートの活物質層を重ね合わせるとともに活物質層非形成部分が長手方向に沿う一方の端部と他方の端部とに別々に配置されるように、幅方向(捲回軸方向)にやや位置をずらして積層する。これにより、電極体80の軸方向の一端および他端には、正負の電極シートの活物質非形成部分(集電体)が捲回コア部分(すなわち、両電極シートの正極活物質層形成部分とセパレータシートとが密に捲回された部分)から外方にはみ出した部分が形成されている。正極側はみ出し部分(図1では電極体80の上端)および負極側はみ出し部分(図1では電極体80の下端)には、正負の集電板82,84が、例えば溶接により接続されている。
かかる捲回電極体80を構成する材料および部材自体は、従来のリチウムイオン電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば、正極集電体にはアルミニウム箔(本実施形態)その他の正極に適する金属箔が好適に使用される。正極活物質としては従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4等のリチウム遷移金属参加物が挙げられる。負極集電体には銅箔(本実施形態)その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質としては従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボンやアモルファスカーボン等の炭素系材料が挙げられる。セパレータシートとしては多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。なお、電解質として固体電解質もしくはゲル状の電解質を使用する場合には、一般的な樹脂製のセパレータシートが不要な場合(すなわちこの場合には電解質自体がセパレータとして機能し得る。)があり得る。
捲回電極体80とともにケース3内に収容される電解質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。例えば、LiPF6等のリチウム塩(支持塩)をジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)に適当な濃度(例えば濃度1M)で溶解させた非水電解液を用いることができる。
上記実施形態のリチウムイオン電池2において、電極体80の正極から外部端子30に至る導電経路を形成する部材(正極集電板82、リード部材36および封口板22)の構成材料としては、正極集電体と同様の金属材料を好ましく採用し得る。例えば、正極集電体および上記導電経路形成部材をアルミニウム製とすることが好ましい。
溶接部Wの断面積(溶接面積)は、電池の大きさ(容量等)や用途(想定される放電電流等)によっても異なり得るが、例えば凡そ2mm2〜20mm2程度の溶接面積を採用し得る。第一導電部材および第二導電部材がアルミニウム製である場合には、該溶接面積を例えば5mm2以上(より好ましくは8mm2以上、典型的には20mm2以下)とすることが好ましい。
また、上記実施形態のリチウムイオン電池2において樹脂部分(ここでは筒部26)を構成する材料としては、使用する電解液に対して耐性を示す樹脂材料を用いることが好ましい。例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、パーフロロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン樹脂(PEKK)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)等の樹脂材料を好ましく採用することができる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん種々の改変が可能である。例えば、第一導電部材と第二導電部材との溶接方法(すなわち溶接部Wの形成方法)としては、超音波溶接、抵抗溶接のほか、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、プラズマ溶接のようなアーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接等の、従来公知の各種溶接(金属溶接、樹脂溶接等)方法を適宜採用することができる。
上記実施形態では正極側の導電経路に電流遮断機構を設ける例につき説明したが、負極側の導電経路(電極体を構成する負極から負極側の外部端子に至る経路)に電流遮断機構を設けてもよい。例えば、上述した各実施形態において正極と負極とを逆にしてもよい。負極側の導電経路に電流遮断機構を設ける場合、該導電経路を構成する部材としては、負極集電体と同様の金属材料(例えば銅)を好ましく採用し得る。
なお、アルミニウム(正極側の導電経路に使用される金属材料の典型例)に比べて銅は導電性に優れることから、第一導電部材および第二導電部材が銅製である場合には、所定の大電流を放電するために必要な溶接部W(抵抗溶接等の溶接方法により好ましく形成され得る。)の断面積をより小さくし得る。例えば、上記溶接面積を例えば2mm2以上(より好ましくは8mm2以上、典型的には20mm2以下)とし得る。したがって、電流遮断機構が正極側に設けられた態様の電池では、溶接部Wの面積をより大きくとることが望まれる傾向にあるため、ここに開示される技術を適用することによる効果がよりよく発揮され得る。
また、一つの電池に対して複数の電流遮断機構を設けてもよい。例えば、正極側と負極側との双方にそれぞれ独立して電流遮断機構を設けてもよく、正極側および負極側のいずれか一方に二つ以上の電流遮断機構を設けてもよい。このように複数の電流遮断機構を設けることにより、異常時における電流遮断性能の信頼性をより高めた電池を提供することができる。これら複数の電流遮断機構の作動温度を互いに異ならせてもよい。また、温度上昇により作動するタイプの電流遮断機構と、ケース内の圧力上昇によって作動するタイプの電流遮断機構との双方を有する構成としてもよい。
電池の外形は上述のような円筒型に限られず、例えば角型(扁平な角型等)の電池であってもよい。電極体の構成は上述のような捲回タイプに限られず、例えば正負の電極シートをセパレータシートと共に交互に積層して成る積層タイプの電極体(積層電極体)であってもよい。電池の種類は上述したリチウムイオン電池に限られず、電極体構成材料や電解液の組成が異なる種々の電池であり得る。例えば、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ(すなわち物理電池)等にも本発明の構成を好ましく適用することができる。特に好ましい適用対象としてリチウムイオン電池が挙げられる。リチウムイオン電池は高エネルギー密度で高出力を実現できる電池であるため、高性能な電源、特に車両搭載用電源を構築することができる。
1 車両(自動車)
2 リチウムイオン電池(電池)
3 電池ケース(ケース)
4 電流遮断機構
5 剪断力発生部
10 ケース本体
20 蓋体
22 封口板(第二導電部材)
26 筒部
30 外部端子
32 感熱変形部材
36 リード部材(第一導電部材)
80 捲回電極体(電極体)
82,84 集電板
2 リチウムイオン電池(電池)
3 電池ケース(ケース)
4 電流遮断機構
5 剪断力発生部
10 ケース本体
20 蓋体
22 封口板(第二導電部材)
26 筒部
30 外部端子
32 感熱変形部材
36 リード部材(第一導電部材)
80 捲回電極体(電極体)
82,84 集電板
Claims (5)
- 正負の電極を有する電極体がケースに収容された電池であって、
前記電極の少なくとも一方と前記ケース外部に露出する外部端子とを結ぶ導電経路を分断することで前記電極体と該電池の外部との導通を遮断する電流遮断機構を備え、
前記導電経路は、前記電極体側から第一導電部材および第二導電部材を経て前記外部端子側に至り、且つ前記第一導電部材および前記第二導電部材はそれぞれ相手側部材に向けて突出する凸部を有し、両導電部材は前記ケースの内部において前記凸部の頂部に形成された溶接部で接合されており、
前記電流遮断機構は、前記電池の異常時に、前記溶接部に対して該溶接部の溶接面に沿う方向への力を加えることにより該溶接部を破断させて前記導電経路を分断するように構成されており、
前記電流遮断機構は、前記凸部の周辺に配置されて前記溶接面に沿う方向への力の発生に寄与する剪断力発生部を有する、電流遮断機構付き電池。 - 前記剪断力発生部は、温度に応じて形状が変化する感熱変形部材を含み、該感熱変形部材の一端および他端は前記第一導電部材および前記第二導電部材にそれぞれ係合しており、
前記電流遮断機構は、前記電池の温度が所定値以上に上昇した場合に、前記感熱変形部材の形状変化によって前記第一導電部材と前記感熱変形部材との係合部を前記第二導電部材と前記感熱変形部材との係合部に対して相対的に移動させることで前記溶接部を破断させるように構成されている、請求項1に記載の電池。 - 前記溶接面に沿う方向への力は、前記第二導電部材に対して前記第一導電部材を前記溶接部の周りに回転させる方向への回転剪断力である、請求項2に記載の電池。
- 前記感熱変形部材は、温度に応じて伸縮するコイルであり、該コイルは前記溶接部を取り巻くように配置される、請求項2または3に記載の電池。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の電池を備えた車両。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008122307A JP2009272162A (ja) | 2008-05-08 | 2008-05-08 | 電流遮断機構付き電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008122307A JP2009272162A (ja) | 2008-05-08 | 2008-05-08 | 電流遮断機構付き電池 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2009272162A true JP2009272162A (ja) | 2009-11-19 |
Family
ID=41438539
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2008122307A Withdrawn JP2009272162A (ja) | 2008-05-08 | 2008-05-08 | 電流遮断機構付き電池 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2009272162A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105591062A (zh) * | 2016-03-17 | 2016-05-18 | 宁德时代新能源科技股份有限公司 | 二次电池 |
CN115020931A (zh) * | 2021-12-30 | 2022-09-06 | 荣耀终端有限公司 | 电池以及电子设备 |
-
2008
- 2008-05-08 JP JP2008122307A patent/JP2009272162A/ja not_active Withdrawn
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