JP2009261314A - プロテアーゼを用いたタバコ材料中のタンパク質の低減方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水性溶媒中で、pH調節剤等を用いずにプロテアーゼを用いる単純な工程でタバコ抽出材料を処理してタンパク質を低減させることができ、かつプロテアーゼ処理後に得られるタバコ材料の重量収率が高い方法を提供する。
【解決手段】(i)タバコ材料を水性溶媒で抽出し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離する工程と、(ii)(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中で、前記タバコ抽出残渣を水性溶媒中酸性〜中性で活性を示すプロテアーゼにより処理して、前記タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する工程と、(iii)前記プロテアーゼ処理後の水性溶媒とプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を分離する工程と、(iv)前記工程(iii)により得られるプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を前記工程(i)により分離された前記水溶性タバコ抽出物と組み合わせる工程とを含むことを特徴とするタバコ材料中のタンパク質を低減させる方法。
【選択図】なし
【解決手段】(i)タバコ材料を水性溶媒で抽出し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離する工程と、(ii)(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中で、前記タバコ抽出残渣を水性溶媒中酸性〜中性で活性を示すプロテアーゼにより処理して、前記タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する工程と、(iii)前記プロテアーゼ処理後の水性溶媒とプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を分離する工程と、(iv)前記工程(iii)により得られるプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を前記工程(i)により分離された前記水溶性タバコ抽出物と組み合わせる工程とを含むことを特徴とするタバコ材料中のタンパク質を低減させる方法。
【選択図】なし
Description
本発明はプロテアーゼを用いたタバコ材料中のタンパク質の分解方法およびタンパク質が低減したタバコ材料に関する。
タバコ材料を用いて作製される喫煙物品を燃焼させた際に生じる主流煙中の芳香族アミンは除去することが望ましい成分である(非特許文献1)。この芳香族アミンの低減を目的として、タバコ材料中からタンパク質を除去することが検討されている。例えば、特許文献1には、プロテアーゼを用いてタバコ材料中のタンパク質を分解・除去する方法が開示されている。特許文献2には、タバコをプロテアーゼで分解し、微生物にその分解物を消化させる方法が開示されている。この方法はプロテアーゼによる処理に加えて微生物も使用する必要があり工程が増え煩雑である。特許文献3には、特許文献2の改良方法が記載されており、タバコをアルカリで抽出することが記載されている。特許文献4および5には、タバコ材料を水性溶媒で抽出し、その抽出残渣をプロテアーゼで分解・除去する方法が開示されている。
IARC monographs,38巻,「CHEMISTRY AND ANALYSIS OF TOBACCO SMOKE」 特表2002−520005号公報
米国特許第4,407,307号明細書
米国特許第4,716,911号明細書
米国特許第4,887,618号明細書
米国特許第4,941,484号明細書
IARC monographs,38巻,「CHEMISTRY AND ANALYSIS OF TOBACCO SMOKE」
しかしながら、これらの従来技術は、酵素活性を最大にするために、タバコ材料を酵素で処理する溶液に塩基性物質等を加えている。しかしながら、このようにpH調節剤を加えてpHを変化させると、タンパク質は低減するものの、一方で望まない原料変質を招き得ることを考慮すると好ましくはない。さらに、本発明者等が引用文献4の方法を試みてタバコ材料を処理したところ、プロテアーゼ処理後に得られるタバコ材料の重量収率は50%台と低く、製造コストの観点から改善が必要と考えられる。
そこで本発明は、水性溶媒中で、pH調節剤等を用いずにプロテアーゼを用いる単純な工程でタバコ抽出材料を処理してタンパク質を低減させることができ、かつプロテアーゼ処理後に得られるタバコ材料の重量収率が高い方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様によれば、
(i)タバコ材料を水性溶媒で抽出し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離する工程と、
(ii)(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中で、前記タバコ抽出残渣を水性溶媒中酸性〜中性で活性を示すプロテアーゼにより処理して、前記タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する工程と、
(iii)前記プロテアーゼ処理後の水性溶媒とプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を分離する工程と、
(iv)前記工程(iii)により得られるプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を前記工程(i)により分離された前記水溶性タバコ抽出物と組み合わせる工程と
を含むことを特徴とするタバコ材料中のタンパク質を低減させる方法
が提供される。
(i)タバコ材料を水性溶媒で抽出し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離する工程と、
(ii)(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中で、前記タバコ抽出残渣を水性溶媒中酸性〜中性で活性を示すプロテアーゼにより処理して、前記タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する工程と、
(iii)前記プロテアーゼ処理後の水性溶媒とプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を分離する工程と、
(iv)前記工程(iii)により得られるプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を前記工程(i)により分離された前記水溶性タバコ抽出物と組み合わせる工程と
を含むことを特徴とするタバコ材料中のタンパク質を低減させる方法
が提供される。
また本発明の他の態様によれば、第1の態様により得られるタンパク質が減少したタバコ材料が提供される。
本発明によれば、タバコ抽出残渣をプロテアーゼにより処理する際にpHを調節する必要がなく、単純な方法でタバコ抽出残渣からタンパク質を分解・除去することができる。また、本発明によれば、プロテアーゼ処理後のタンパク質が低減したタバコ抽出残渣を高い重量収率で得ることができる。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のタバコ材料からタンパク質を低減させる方法は、工程(i)として水性溶媒でタバコ材料を抽出して水溶性タバコ抽出物とタバコ残渣とに分離することを含む。この抽出工程において、水溶性の成分は出来るだけ水性溶媒中に抽出しておくことが望まれる。
工程(i)における水性溶媒としては、好ましくは水を用いることができる。タバコ材料としてはタバコ刻を用いることができ、これは抽出効率を上げるために予め細かく裁刻されていることが好ましい。タバコ材料の種類は特に問わない。タバコ材料と水性溶媒との比は、タバコ材料:水性溶媒が1:3〜1:20が好ましい。1:3未満であると十分にタバコ材料から水溶性成分を除くことが困難となり、後に記述する酵素の洗浄工程において、例えばニコチンのような香喫味上有用と考えられるタバコ中水溶性成分のロスを生ずるために好ましくない。1:20以上になると後に処理すべき水溶性タバコ抽出物の容積が不必要に増えて経済的にも好ましくない。抽出温度は、10℃〜100℃が好ましくは用いられる。10℃未満であると効率的な抽出ができない傾向にある。100℃を超えると、抽出液中成分の蒸発、抽出残渣成分の変質、タバコ残渣の蒸解が起きるため好ましくない。水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣の分離方法は任意の方法を用いることができ、例えばろ過により分離することができる。
次に、工程(ii)において、上記工程(i)により分離されたタバコ抽出残渣を(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中でプロテアーゼにより処理して、タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する。
水性溶媒としては好ましくは水を用いる。タバコ抽出残渣に水を加えると、一般的に酸性〜中性を示す。本発明は酸性〜中性で活性を有するプロテアーゼを用いてタバコ抽出残渣を処理することを特徴とする。すなわち、本発明はプロテアーゼによる処理に際してpHを調節するという工程を全く必要としない。本発明の方法は緩衝剤等のpH調節剤を必要としないために、pHが変化することにより起こり得るタバコ抽出残渣の変質が問題とならない。
本発明に用いられるプロテアーゼは、酸性〜中性のpHで活性を有するプロテアーゼであれば任意のものを用いることができる。例えば、EC.3.4.X.Xであって、酸性〜中性の範囲のpHで活性を有するものを挙げることができる。ここで、EC.3.4.X.Xとは、国際生化学連合により付与された酵素番号であり、Xは数字を表す。特に好ましくは、EC.3.4.24.28またはEC.3.4.21.63を用いることができる。これらのプロテアーゼは弱酸性〜中性領域で活性を有するために、pH調節剤を加えなくても、タバコ抽出残渣に水を加えた際のpHで十分な活性を有する。タバコ抽出残渣を水性溶媒中でプロテアーゼにより処理する際の処理温度は、35〜65℃であることが好ましい。35℃未満であるとプロテアーゼの活性が十分に得られないために好ましくない、一方で65℃を超えるとプロテアーゼの活性が失活する傾向がある。このプロテアーゼによる処理時間は5時間以上であることが好ましい。5時間未満であると、プロテアーゼによるタンパク質の分解が不十分であるので好ましくない。処理時間は5時間であれば十分である。
前記プロテアーゼによる処理によりタバコ抽出残渣中のタンパク質を分解したら、工程(iii)において、この酵素処理後の水性溶媒と不溶性の酵素処理タバコ抽出残渣に分離する。この分離手段としては、遠心分離、ろ過等の任意の手段を用いることができる。さらに分離の際に、分解したタンパク質および処理に用いた酵素をさらに除去するために、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を水性溶媒で洗浄することが好ましい。分離したプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣は、酸化等の変質を避けるために好ましくは調和させる。すなわち、その水分含有量が製造環境条件における平衡状態に達するまで乾燥放置する。この放置時間は48時間であることが好ましい。
本発明によれば、このプロテアーゼ処理した後のタバコ抽出残渣の重量収率を70%以上とすることができ、非常に高い重量収率でタンパク質が除去されたタバコ抽出残渣を得ることができる。
プロテアーゼ処理し、任意に調和させた後のタバコ抽出残渣を、先の工程(i)において分離した水溶性タバコ抽出物と組み合わせる。水溶性タバコ抽出物は濃縮、凍結乾燥等をされていてもよい。この組み合わせには任意の方法を用いることができる。例えば、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣に、水溶性タバコ抽出物を噴霧等により組み合わせることができる。タバコ抽出残渣と水溶性タバコ抽出物を組み合わせてタバコ材料を作製したら、このタバコ材料を任意の方法により乾燥させてもよい。
以上のようにして、本発明の方法工程(i)〜(iv)を経ることにより、タンパク質が低減したタバコ材料が得ることができる。得られたタバコ材料を用いて喫煙物品を作製する。喫煙物品としては例えばシガレットを作製することができる。タバコ材料中のタンパク質が低減しているために、この喫煙物品を燃焼した際の主流煙中の芳香族アミン等の発生を低減させることができる。
A.タバコ抽出残渣の調製方法
予め裁刻したタバコ刻300gに対して水3Lを加え、温浴下60℃で1時間撹拌した。その後、不溶物を手絞りでろ過し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離した。
予め裁刻したタバコ刻300gに対して水3Lを加え、温浴下60℃で1時間撹拌した。その後、不溶物を手絞りでろ過し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離した。
B.タバコ抽出残渣中のタンパク質の定量方法および増減率の決定
タバコ抽出残渣中のタンパク質の分析に当たり、残渣からの成分抽出効率を上げるために、タバコ抽出残渣を研究室用ミルで粉砕し、粉末状のサンプルを調製・使用した。各々のサンプルをBCA法を用いて以下の通りに分析した。
タバコ抽出残渣中のタンパク質の分析に当たり、残渣からの成分抽出効率を上げるために、タバコ抽出残渣を研究室用ミルで粉砕し、粉末状のサンプルを調製・使用した。各々のサンプルをBCA法を用いて以下の通りに分析した。
20mgの粉末状のサンプルを遠心チューブに入れ、ここに9mlの中性リン酸バッファ(pH 6.86)と900μlの1.5mg/mlデオキシコール酸ナトリウムを加えた。10℃以下で15分間超音波処理した後、ホモジナイザで1分間遠心チューブ中の粉末サンプルを処理し、30分間振盪した。その後、この処理液の1.1mlを2mlの丸底チューブに採取し、0.1mlの72%のトリクロロ酢酸水溶液を加え、冷却遠心分離した。その後上澄み液を捨て、続いて0.2NのNaOH水溶液を加え、ボルテックスミキサで混合した。この混合液の80μlを2mlの丸底チューブに採取し、1.6mlのタンパク質定量用ビシンコニン酸(BCA)水溶液を加えた。30分間、37℃で温めた後、温度を室温にまで冷却した。この溶液を用いて紫外可視分光光度計において、660nmの波長でUV測定を行い、タバコ抽出残渣中のタンパク質量を定量した。以上のようにしてプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣、および対照サンプルであるプロテアーゼ処理を行わなかったタバコ抽出残渣中のタンパク質の定量を行った。この分析は3回繰り返して行い、残渣中のタンパク質の重量平均値および標準偏差を求めた。標準偏差は平均4.5%以内であり、この重量平均値はバラつきが少なく信頼性が高い値であることがわかった。この重量平均値を下記の式に当てはめ、タバコ抽出残渣中のタンパク質の低減率を求めた。
低減率(%)=[(対照サンプル中のタンパク質重量平均値−処理サンプル中のタンパク質重量平均値)/対照サンプル中のタンパク質重量平均値]×100
C.プロテアーゼ処理後のタバコ残渣の重量収率決定法
プロテアーゼ処理し調和した後のタバコ抽出残渣の重量測定を行い、その重量から水分量を引いた重量をプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量とし、プロテアーゼ処理前のタバコ抽出残渣20gに対する重量収率を求めた。具体的には、水分測定に際し、予め重量測定した秤量瓶にプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を1g採取した。この秤量瓶ごと乾燥装置に入れ、100℃で1時間乾燥させた。その後、秤量瓶を放熱させるためデシケータに保管し、室温にまで下がった後に重量測定を行った。乾燥前後でのタバコ抽出残渣を入れた秤量瓶の重量の差を水分含量とした。このタバコ抽出残渣1g当たりの水分含量を元にプロテアーゼ処理後調和したタバコ残渣の全重量中の水分含量を求め、これを調和後のタバコ残渣全重量から差し引き、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量とした。これを下記の式にあてはめ、プロテアーゼ処理後のタバコ残渣の重量収率とした
重量収率(%)=[水分含量を差し引いたプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量/水分含量を差し引いたプロテアーゼ処理前のタバコ抽出残渣重量]×100。
C.プロテアーゼ処理後のタバコ残渣の重量収率決定法
プロテアーゼ処理し調和した後のタバコ抽出残渣の重量測定を行い、その重量から水分量を引いた重量をプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量とし、プロテアーゼ処理前のタバコ抽出残渣20gに対する重量収率を求めた。具体的には、水分測定に際し、予め重量測定した秤量瓶にプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を1g採取した。この秤量瓶ごと乾燥装置に入れ、100℃で1時間乾燥させた。その後、秤量瓶を放熱させるためデシケータに保管し、室温にまで下がった後に重量測定を行った。乾燥前後でのタバコ抽出残渣を入れた秤量瓶の重量の差を水分含量とした。このタバコ抽出残渣1g当たりの水分含量を元にプロテアーゼ処理後調和したタバコ残渣の全重量中の水分含量を求め、これを調和後のタバコ残渣全重量から差し引き、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量とした。これを下記の式にあてはめ、プロテアーゼ処理後のタバコ残渣の重量収率とした
重量収率(%)=[水分含量を差し引いたプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣重量/水分含量を差し引いたプロテアーゼ処理前のタバコ抽出残渣重量]×100。
D.タバコ抽出残渣から生成する煙中成分の評価
赤外加熱炉を用いた熱分解により、プロテアーゼ処理前後のタバコ抽出残渣から生成する芳香族アミン類である2−アミノナフタレンと4−アミノビフェニルの量を分析した。
赤外加熱炉を用いた熱分解により、プロテアーゼ処理前後のタバコ抽出残渣から生成する芳香族アミン類である2−アミノナフタレンと4−アミノビフェニルの量を分析した。
具体的には、対照サンプルとしてプロテアーゼ処理を行わなかったタバコ抽出残渣、およびプロテアーゼ処理を施したタバコ抽出残渣のそれぞれ150mgを石英ガラス管に詰めた。このサンプルを詰めた石英ガラス管を赤外加熱炉(ULVAC 理工社製)中に入れ、窒素雰囲気下、1000℃/分の昇温速度で室温〜800℃まで加熱した(Food and Chemical Toxicology Volume 42, 1409-1417を参照のこと)。上記加熱中に発生するタールをガラスフィルタに捕集した。ガラスフィルタに捕集したタールを0.2Nの塩酸で抽出し、得られた抽出液をイオン交換樹脂カラム(Oasis MCX Waters社製)に供した。カラムをアセトニトリルで洗浄した後、5%アンモニア水メタノール溶液をカラムに導入し、樹脂に吸着した混合物を溶出した。溶出液を窒素雰囲気下で濃縮し、濃縮液にヘキサン−ジクロロメタン溶液と分析用内部標準(重水素化した2−アミノナフタレンおよび4−アミノビフェニル)を加えた後、無水フッ化プロピオン酸を加えて誘導化した。この処理液を窒素雰囲気下で濃縮した後、濃縮液をガスクロマトグラフ質量分析器で分析し、2−アミノナフタレンおよび4−アミノビフェニルを定量した。上記の熱分解作業及び連続する分析作業を3回繰り返して行い、タバコ抽出残渣1gから生成する各成分重量平均値および標準偏差を算出した。標準偏差は平均5%以内であり、この重量平均値はバラつきが少なく信頼性が高い値であることがわかった。この重量平均値を下記の式に当てはめ、プロテアーゼ処理による各成分生成量の低減率を求めた。
低減率(%)=[(対照サンプルより生成する各成分の重量平均値−処理サンプルより生成する各成分の重量平均値)/対照サンプルより生成する各成分の重量平均値]×100
実施例1〜3
上記方法Aにより分離したタバコ抽出残渣20gに対して400mlの水を加えて、酵素を200mg添加した。この際、実施例1では酵素としてEC.3.4.24.28(プロテアーゼP「アマノ」3G,天野エンザイム社製)を、実施例2では酵素としてEC.3.4.21.63(プロテアーゼN「アマノ」G,天野エンザイム社製))を、および実施例3では酵素としてEC.3.4.24.27(プロテアーゼA「アマノ」G,天野エンザイム社製)をそれぞれ用いた。それぞれの酵素の至適温度(実施例1においては45℃、実施例2においては55℃、実施例3においては50℃)に合わせた温度の温浴下で5時間撹拌した。その後、この混合物中の不溶物を手絞りでろ過して、プロテアーゼ処理液とプロテアーゼ処理残渣に分離した。このプロテアーゼ処理残渣を48時間調和した。調和後、プロテアーゼ処理残渣を用いて方法Bに従って、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣1g当たりのタンパク質を定量し、またタバコ抽出残渣中のタンパク質の低減率を求めた。タバコ抽出残渣1g当たりのタンパク質量を表1に、タンパク質の低減率を図1に示す。また、方法Cに従って、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率を求めた。結果を表1および図1に併せて示す。
実施例1〜3
上記方法Aにより分離したタバコ抽出残渣20gに対して400mlの水を加えて、酵素を200mg添加した。この際、実施例1では酵素としてEC.3.4.24.28(プロテアーゼP「アマノ」3G,天野エンザイム社製)を、実施例2では酵素としてEC.3.4.21.63(プロテアーゼN「アマノ」G,天野エンザイム社製))を、および実施例3では酵素としてEC.3.4.24.27(プロテアーゼA「アマノ」G,天野エンザイム社製)をそれぞれ用いた。それぞれの酵素の至適温度(実施例1においては45℃、実施例2においては55℃、実施例3においては50℃)に合わせた温度の温浴下で5時間撹拌した。その後、この混合物中の不溶物を手絞りでろ過して、プロテアーゼ処理液とプロテアーゼ処理残渣に分離した。このプロテアーゼ処理残渣を48時間調和した。調和後、プロテアーゼ処理残渣を用いて方法Bに従って、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣1g当たりのタンパク質を定量し、またタバコ抽出残渣中のタンパク質の低減率を求めた。タバコ抽出残渣1g当たりのタンパク質量を表1に、タンパク質の低減率を図1に示す。また、方法Cに従って、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率を求めた。結果を表1および図1に併せて示す。
さらにプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を加熱した際に生成する煙中成分中の芳香族アミンの量を評価するために、方法Dに従って評価し、タバコ抽出残渣1gから生成する煙中成分重量平均値および低減率を求めた。各成分重量平均値を表2に、低減率を図2に示す。
比較例1
上記方法Aにより分離したタバコ抽出残渣20gに対して400mlの水を加えて、酵素を200mg添加した。酵素として一般的に用いられるEC3.4.21.14を用い、この酵素の至適温度である37℃に合わせた温浴を用いた。さらにこのタバコ抽出残渣を酵素を撹拌する際に、EC3.4.21.14の至適pH(pH≒8)に調整するため、Na2CO3を4g混入した。方法Bに従ってプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣中のタンパク質を定量して増減率を決定し、また方法Cに従ってプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率を求めた。結果を表1および図1に併せて示す。また、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を加熱した際に生成する煙中成分中の芳香族アミンの量を評価するために、方法Dに従って評価し、その低減率を求めた。結果を表2および図2に併せて示す。
上記方法Aにより分離したタバコ抽出残渣20gに対して400mlの水を加えて、酵素を200mg添加した。酵素として一般的に用いられるEC3.4.21.14を用い、この酵素の至適温度である37℃に合わせた温浴を用いた。さらにこのタバコ抽出残渣を酵素を撹拌する際に、EC3.4.21.14の至適pH(pH≒8)に調整するため、Na2CO3を4g混入した。方法Bに従ってプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣中のタンパク質を定量して増減率を決定し、また方法Cに従ってプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率を求めた。結果を表1および図1に併せて示す。また、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣を加熱した際に生成する煙中成分中の芳香族アミンの量を評価するために、方法Dに従って評価し、その低減率を求めた。結果を表2および図2に併せて示す。
実施例1〜3は、pH等を調節する必要なく、タバコ抽出残渣に水を加えてそこにプロテアーゼを混入して撹拌するという非常に簡単な方法であるにも関らず、表1および図1の結果から明らかなように、実施例1においてはタバコ抽出残渣中のタンパク質を約40%低減させることができ、さらにプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率も70.9%と非常に高いことがわかった。実施例2はタンパク質低減率は約30%と若干劣るものの、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率は73.4%とさらに高いものであった。実施例3はタンパク質低減率は約10%と劣るものの、プロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の主重量収率は77.0%と実施例の中では最も高いものであった。一方で、比較例1のプロテアーゼを用いた際は、タンパク質低減率は若干高いものの、プロテアーゼ処理に際してpHを調節するという必要があり、かつプロテアーゼ処理後のタバコ抽出残渣の重量収率は59%と低いものであった。さらに、表2および図2から煙中成分中の芳香族アミン低減率を比較してみると、2−アミノナフタレンに関しては、実施例1および2共に、比較例1と同程度の低減率を達成した。また、4−アミノビフェニルに関しては、実施例1は比較例1よりも若干高い低減率を達成していた。
以上詳述した通り、本発明によれば、水性溶媒中で、pH調節剤等を用いずにタバコ抽出残渣をプロテアーゼにて処理するという単純な工程でタバコ抽出残渣中のタンパク質を低減することができる。本発明によるプロテアーゼ処理後に得られるタバコ抽出残渣の重量収率は70%を超え、非常に高いものであった。
Claims (8)
- (i)タバコ材料を水性溶媒で抽出し、水溶性タバコ抽出物とタバコ抽出残渣に分離する工程と、
(ii)(i)の水性溶媒とは別の水性溶媒中で、前記タバコ抽出残渣を水性溶媒中酸性〜中性で活性を示すプロテアーゼにより処理して、前記タバコ抽出残渣中のタンパク質を分解する工程と、
(iii)前記プロテアーゼ処理後の水性溶媒とプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を分離する工程と、
(iv)前記工程(iii)により得られるプロテアーゼ処理タバコ抽出残渣を前記工程(i)により分離された前記水溶性タバコ抽出物と組み合わせる工程と
を含むことを特徴とするタバコ材料中のタンパク質を低減させる方法。 - 前記プロテアーゼがEC.3.4.X.Xであって、酸性〜中性の範囲で活性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記プロテアーゼがEC.3.4.24.28、E.C.3.4.21.63、またはE.C.3.4.24.27であることを特徴とする請求項1ないし2に記載の方法。
- 前記工程(i)および工程(ii)における水性溶媒が水であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の方法。
- 前記工程(iii)において分離される前記酵素処理タバコ抽出残渣を、分解したタンパク質をさらに除去するために水性溶媒で洗浄することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記工程(iii)において分離される前記プロテアーゼ処理タバコ抽出残渣の重量収率が70%以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1ないし6のいずれか一項の方法により得られるタンパク質が低減したタバコ材料。
- 請求項7に記載のタバコ材料を有する喫煙物品。
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