JP2009258072A - 配管検査方法および配管検査装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 配管に海水を充水させたままで配管の外側から配管内部のライニングが正常状態であるか否かを検査することが可能な配管検査方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の配管検査方法は、内面にライニング122が施された配管を検査する配管検査方法であって、配管としての海水配管120の外表面から海水配管120の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する超音波発生工程S302と、発生した超音波の反射波を受信する超音波受信工程(S304)と、受信した反射波に基づいてライニング122が剥離しているか否かを判定する判定工程(S306)と、を含み、配管の内部は充水されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 本発明の配管検査方法は、内面にライニング122が施された配管を検査する配管検査方法であって、配管としての海水配管120の外表面から海水配管120の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する超音波発生工程S302と、発生した超音波の反射波を受信する超音波受信工程(S304)と、受信した反射波に基づいてライニング122が剥離しているか否かを判定する判定工程(S306)と、を含み、配管の内部は充水されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、内面にライニングが施された配管を検査する配管検査方法および配管検査装置に関する。
原子力発電所や火力発電所等の発電所におけるリアクタやボイラ、復水器等には大量の冷却水が必要になるため、海水が使用される場合がある。海水は海から取水され、配管を通じて施設内を流通した後に、ふたたび海に排出される。海水を流通させる配管は一般に鋼管が用いられるが、腐食したり、錆が生じたり、貝が付いたりするため、配管の内面に樹脂等のライニングが施されている場合がある。
しかし、配管に海水を長期間にわたり流通させていると、ライニングの剥離や亀裂、摩耗等の損傷が発生する。一旦ライニングの損傷が発生し配管が海水と接触すると、配管の腐蝕等が急速に進行し、例えば1年程度で肉厚が規定値以下に減肉してしまうおそれもある。したがって、ライニングの損傷を早期に発見し、修復あるいは交換する、もしくは次回のメンテナンス時に交換することを予定することが重要となっている。
従来の原子力発電所における配管のライニングの点検は、当該ラインを隔離・停止し、配管から海水を除去し、配管を開放した後、配管内部を目視検査することによって配管のライニングの付設状態を検査していた。
しかし、発電所などの大型施設では海水ラインの管路長が長くなるため、定期的に一定量の配管のライニングを点検する場合には相当数の人工(にんく)と作業日数が必要になる。このため配管のライニングの点検がメンテナンス期間の長期化を招き、施設の稼働率に著しく影響が出ていた場合がある。したがって、運転中にあらかじめ配管のライニングの点検を行いたいという要望がある。
そこで従来からも、配管の外側から超音波を用いてライニングの状態を測定する技術が提案されている。例えば特許文献1には、配管の外面から内面方向に向かって縦波の超音波を伝播させて、ライニングが剥離しているか否かを検査する技術が提案されている。
また特許文献2には、配管の外面から内面方向に向かって横波の超音波を伝播させて、ライニングが剥離しているか否かを検査する技術が提案されている。特許文献2によれば、横波は、海水や空気などの液体や気体には殆ど伝播しないため、横波を用いることによって配管へ伝播したエネルギーはほとんど全て反射して配管外面へ伝わり、ライニングが剥離しているか否かを識別できるとしている。
特開2006−276032号公報
特開2003−130854号公報
しかし、上記従来の技術によっては、必ずしも明確にライニングの付設状態を知ることができなかった。まず特許文献1に記載したような縦波の超音波を用いてライニングの剥離を検査する技術では、配管に海水が充填(充水)されている状態では検査をすることができない。
これは、海水の音響インピーダンス(1.545ρc/106N・s・m−3)とライニングとして用いられるポリエチレンの音響インピーダンス(1.755ρc/106N・s・m−3)の差が小さいことに起因する。すなわち、超音波の反射は物質の界面で発生するが、その反射率は音響インピーダンスの差に依存するため、この差が小さいと反射波が微弱になってノイズに紛れてしまう(S/N比(シグナル/ノイズ比)が得られない)ためである。
図8は、超音波の反射波の反射係数について説明するための説明図である。超音波の反射波の反射係数は図8(a)に示す数式から算出することができる。図8(a)を用いて、ライニングが剥離していない状態(以下正常状態という)の反射係数を算出する場合、図8(a)中のZ1は配管の材質の音響インピーダンス、Z2はライニングの材質の音響インピーダンスとなる。
一方、ライニングが剥離している状態(以下剥離状態という)の反射係数を算出する場合、図8(a)中のZ1は配管の材質の音響インピーダンス、Z2は海水の音響インピーダンスとなる。
したがって図8(b)に示すように、配管に海水が充水されていない場合は、ライニングが正常状態か否かで反射係数に差がある(空気の場合とポリエチレンの場合で反射係数Rに0.7の差がある)。一方、配管に海水が充水されている場合ライニングが正常であるときと剥離状態であるときの反射係数に殆ど差が無い(海水の場合とポリエチレンの場合で反射係数Rは0.01しか差がない)。このため、ライニングが正常状態か否かを検出することは極めて困難である。
特許文献2に記載したような横波の超音波を用いてライニングの剥離を検査する技術では、海水中に横波の超音波が伝搬しないとしても、ライニングと海水との界面における反射が微弱である点に変わりはない。このためライニングと海水の境界から反射する反射波がノイズに埋もれてしまい検出が困難となる場合が多い。
そこで、本発明は、配管検査方法が有する上記問題に鑑み、配管に水や海水を充水させたままで配管の外側から配管内部のライニングが正常状態であるか否かを検査することが可能な配管検査方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる配管検査方法の代表的な構成は、内面にライニングが施された配管を検査する配管検査方法であって、配管の外表面から当該配管の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する超音波発生工程と、発生した超音波の反射波を受信する超音波受信工程と、受信した反射波に基づいてライニングが剥離しているか否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、ライニングの近傍で点集束させた横波の超音波の反射波(エコー)を検出するので、ライニング近傍の超音波の強度を高めることができ、反射波のシグナルを強めることができる。したがって、ライニングから反射する反射波をノイズに埋もれることなく受信することができる。また、横波の超音波を用いるため、配管の内部が充水されていても測定することが可能となる。すなわち、上記方法は非破壊検査であることはもとより、配管の分解も必要がなく、配管内部を流通する液体を利用する施設が運転中であっても測定することが可能となるため、メンテナンス期間を短縮することができ、施設の稼働率の低下を防ぐことができる。なお超音波を点集束させるためには、シングルプローブ式(点集束探触子)を用いてもよいし、フェーズドアレイ式(アレイ探触子)を用いてもよい。
上記配管の内部には水または海水が充水されていてもよい。海水が配管に直接接触すると、腐蝕、発錆が生じる。上述した配管検査方法では、海水を流通させる配管のライニングが剥離しているか否かを施設の稼動中すなわち海水が充水された状態で検出できるため、万が一ライニングが剥離状態にあったとしても、配管の補修を直ちに行うことができ、海水の漏洩を未然に防ぐことができる。
上記配管は、原子力発電所において用いられてもよい。原子力発電は管理が厳密であり、たとえ海水であっても漏洩を生じる前に確実に防止する必要がある。また原子力発電は、一旦停止すると再開するまでに長時間を要するため、停止して配管を検査すると稼働率が著しく低下する。これに対し、上述した配管検査方法を用いれば、配管に海水が充水された状態でも検査することが可能となるため、原子力発電所を停止することなく、配管の内面に施されたライニングが剥離しているか否かを検査することができる。
上記超音波発生工程で超音波を発生させる超音波発生手段および前記超音波受信工程で反射波を受信する超音波受信手段は、ダンピング係数0.25程度の高ダンピング探触子で構成されてもよい。
上記ダンピング係数0.25程度の高ダンピング探触子で超音波発生手段を構成するため、広帯域の超音波を発生させることができる。したがって、超音波を発生させたあとすなわちパルス電圧を加えた後に探触子が有する弾性に起因し探触子の振動が継続することにより発生する波(以下、残留波と称する。)の発生を低減させることが可能となる。
超音波発生工程で1の超音波を発生した場合、超音波受信工程において反射回数の異なる複数の反射波を間欠的に受信することになる。したがって、上記高ダンピングの探触子を用いて検査を行った場合、残留波の発生がほとんどないため、超音波受信工程で受信する反射波と反射波との間の所定期間に残留波の受信がなくなる。つまり、超音波受信工程で受信する反射波と反射波との間の所定期間は、波を受信しない期間が発生し、1回目の反射波の受信と2回目の反射波の受信を分離することができる。
ライニングと海水の境界から反射する反射波(以下、目的の反射波とする。)は、配管とライニングとの境界もしくは配管と水との境界で発生する反射波(以下、ノイズの反射波と称する。)同士を受信する間の期間である所定期間に、超音波受信手段で受信されることになる。したがって、高ダンピング探触子で超音波発生手段を構成することにより、残留波の無い間に目的の反射波を受信するため、S/N比を向上させることが可能となる。
上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、内面にライニングが施された配管を検査する配管検査装置であって、配管の外表面から当該配管の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する高ダンピング探触子で構成される超音波発生部と、発生した超音波の反射波を受信する高ダンピング探触子で構成される超音波受信部と、受信した反射波に基づいてライニングが剥離しているか否かを判定する判定部と、を備え、超音波発生部と超音波受信部の少なくとも一方が他方に対して離接する方向に位置調整可能であることを特徴とする。
上述した配管検査方法における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該配管検査装置にも適用可能である。
以上説明したように本発明の配管検査方法によれば、運転中等の配管が充水している状態でも配管の外部から配管内部のライニングが正常状態であるか否かを検査することが可能となる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
以下の実施形態では、理解を容易にするため、最初に本実施形態にかかる配管検査方法を適用できる施設として原子力発電所の構成について説明し、その後当該配管検査方法の特徴を詳述する。なお、ここでは当該配管検査方法を適用できる施設として原子力発電所を例に挙げているが、これに限定されず、海水を流通させる配管を利用する火力発電所等の施設や液体を流通させる配管を利用する施設に利用することができる。
(原子力発電所100)
図1は、原子力発電所100の全体構成を説明する説明図である。原子力発電所100は、原子炉102と、蒸気配管104と、復水給水配管106と、タービン108と、発電機110と、復水器112と、海水配管120と、を含んで構成される。
図1は、原子力発電所100の全体構成を説明する説明図である。原子力発電所100は、原子炉102と、蒸気配管104と、復水給水配管106と、タービン108と、発電機110と、復水器112と、海水配管120と、を含んで構成される。
原子炉102では、ウラン燃料を核分裂させ、大量の熱を発生させる。復水給水配管106から供給された復水および給水は、原子炉102に運ばれ原子炉102で発生した熱によって約280度、70から80気圧程度の高温高圧の水蒸気となり蒸気配管104を経由してタービン108へと送られる。
タービン108は、蒸気配管104によって運ばれた蒸気が保有するエネルギーを動力に変える機械である。原子炉102にて発生した水蒸気は、タービン108を構成する羽根に衝突し回転力を作出する。タービン108は発電機110と同軸でつながっており、タービン108の回転が直接発電機110に伝わり電気を発生させる。発電機110にて発生した電気は変圧器へと送電され、電力として様々な場所へ供給される。
復水器112は、タービン108を回した水蒸気を回収し、冷却し、水に戻して、再度復水給水配管106を通じて原子炉102へ送る。復水器112には、常に海水配管120により海水が循環しており、水蒸気を急激に冷却し液化する。このとき、水蒸気の体積が急激に減少するので圧力が低下し、タービン108付近の水蒸気の流通がよくなり、タービン108の回転を増大させることができる。
以下、原子力発電所100における海水配管120の配管検査方法および配管検査に用いる配管検査装置について説明する。
(第1実施形態:配管検査方法)
図2は、本実施形態にかかる配管検査方法の流れを示すフローチャートであり、図3は本実施形態にかかる配管検査方法を説明するための説明図である。
図2は、本実施形態にかかる配管検査方法の流れを示すフローチャートであり、図3は本実施形態にかかる配管検査方法を説明するための説明図である。
図3(a)に示すように、本実施形態にかかる配管検査方法の検査対象である配管(海水配管120)は、直径500mmから1100m程度、管厚10mm程度であり、内面に1mm以上のライニング122が施されている。また海水配管120の内部は、海水が充水されている。本実施形態において、海水配管120は炭素鋼で構成され、ライニング122は、ポリエチレンで構成されている。
まず、海水配管120の外表面に配管検査装置としての超音波センサ200を設置する(S300:センサ設置工程)。超音波センサ200は、超音波発生部202と、超音波受信部204と、判定部で構成され、超音波発生部202が海水配管120の外表面から海水配管120の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する(S302:超音波発生工程)。
そして、超音波発生部202が発生した点集束させた横波の超音波の反射波を超音波受信部204が受信する(S304:超音波受信工程)。本実施形態において、超音波センサ200は、シングルプローブ式(点集束探触子)を用いているが、これに限定されず、フェーズドアレイ式(アレイ探触子)を好適に利用することもできる。
この際、反射波は、ライニング122が正常状態であれば、海水配管120とライニング122の境界およびライニング122と海水の境界で発生する(図3(b))。一方、ライニング122が剥離状態であれば、海水配管120に海水が直接触れることとなり、海水配管120と海水の境界で反射波が発生する(図3(c))。
図4は、ライニングが正常状態である場合と剥離状態である場合の超音波受信部が受信した反射波の測定結果を示す図であり、図4(a)はライニング122が正常状態である場合の測定結果を、図4(b)にライニング122が剥離状態である場合の測定結果を示す。図4(a)に示すように、正常状態では、海水配管120とライニング122の境界で反射する反射波(図中Xで示す)およびライニング122と海水の境界で反射する反射波(図中Yで示す)がノイズに埋もれることなく、顕著に検出できている。
一方、図4(b)に示すように、剥離状態では、海水配管120と海水の境界で反射する反射波(図中Zで示す)のみ検出されている。
このように超音波受信工程S304において検出されるライニング122と海水の境界で反射する反射波の有無に基づいて超音波センサ200の判定部が、ライニング122が剥離しているが否かを判定し(S306:ライニング判定工程)、剥離状態であれば、剥離状態もしくは配管の肉厚が許容できる範囲であるか否かを判定する(S308:許容判定工程)。許容判定工程S308において、許容できる範囲であると判定された場合、監視を強化し(S310:監視強化工程)、許容できない範囲であると判定された場合、当該海水配管120ラインの隔離・停止を行い(S312:隔離停止工程)、海水配管120を補修する(S314:補修工程)。なお、監視強化工程S310では、次回の定期メンテナンス時に当該配管を修復または交換するよう予定することでもよい。
上述した如く超音波発生部202が点集束させた横波の超音波を発生するため、ライニング近傍の超音波の強度を高めることができ、反射波のシグナルを強めることができる。したがって、ライニング122と海水の境界で反射する反射波を、ノイズに埋もれることなく超音波受信部204において受信することができる。また、横波の超音波を用いるため、海水配管120の内部が海水で充水されていても測定することが可能となる。すなわち、配管内部を流通する液体を利用する施設が運転中であっても測定することが可能となるため、メンテナンス期間を短縮することができ、施設の稼働率の低下を防ぐことができる。なお、点集束でない横波の超音波を用いて出力を単に高くすることも考えられるが、その場合は反射波と同様にノイズも増大してしまうため、S/N比が得られず、ライニングの状態を判別することは困難である。
特に本実施形態のように海水を流通させる配管(海水配管120)である場合には、ライニング122が剥離状態であると、海水が配管に直接接触し、腐蝕、発錆が生じる。したがって、本実施形態にかかる配管検査方法では、施設の稼動中すなわち海水が充水された状態で検出できるため、万が一ライニングが剥離状態にあったとしても、配管の補修を直ちに行うことができ、海水の漏洩を未然に防ぐことができる。
さらに、本実施形態のように当該配管検査方法を原子力発電所100において用いられる配管に適用することにより、原子力発電所100を停止することなく、配管の内面に施されたライニングが剥離しているか否かを検査することができる。したがって、一旦停止すると再開するまでに長時間を要する原子力発電所100の稼働率を低下させることなく、配管を検査することが可能となる。
(第2実施形態:超音波センサ300)
上述した第1実施形態においては、超音波発生部202が点集束させた横波の超音波を発生させることにより、ライニング122近傍の超音波の強度を高めることができるため、反射波のシグナルを強めることが可能な配管検査方法について説明した。第2実施形態においては、超音波センサ300の探触子を工夫することでさらに反射波のS/N比を向上させた構成に関して説明する。
上述した第1実施形態においては、超音波発生部202が点集束させた横波の超音波を発生させることにより、ライニング122近傍の超音波の強度を高めることができるため、反射波のシグナルを強めることが可能な配管検査方法について説明した。第2実施形態においては、超音波センサ300の探触子を工夫することでさらに反射波のS/N比を向上させた構成に関して説明する。
図5は、本実施形態にかかる超音波センサを説明するための説明図である。図5に示すように、超音波センサ300は、超音波発生部302と、超音波受信部304と、音響シールド306と、を含んで構成される。
超音波発生部302は、3MHzの超音波を発生する。これはライニング122がポリエチレンであって、厚みが約1mmであるからである。すなわち、ポリエチレンの音速は540m/secであり、ポリエチレンのライニング122の厚みが1mmである場合、超音波発生部302が発生する超音波の周波数が3MHz程度であれば、1波長が約0.18mmとなるため分解能がよく反射波を受信することができる。
本実施形態において、超音波発生部302および超音波受信部304の探触子は、ダンピング係数0.25程度の高ダンピング探触子で構成されている。
したがって、ダンピング係数0.25程度の高ダンピング探触子を有する超音波発生部302は、入力するパルス電力が半波長である場合に、波数が2波以下の超音波を発生する。
また、上記のような高ダンピング探触子においては、超音波の強度は、パルス電圧を供給していない場合(パルス信号を停止した後)、前の波に対して約20%以下に減衰する。
これにより、超音波発生部302は広帯域の超音波を発生させることができるため、超音波を発生させたあとすなわちパルス電圧を加えた後に探触子が有する弾性に起因し探触子の振動が継続することにより発生する波(以下、残留波と称する。)の発生を低減させることが可能となる。すなわち、極めて微小時間の超音波を出力することができる。また受信側においても、受信した超音波の影響で探触子の振動子が揺れ続けることを防止できるため、極めて短時間で減衰する波に追従することが可能となる。
図6は、比較例としての高ダンピングでない探触子を有する超音波センサを用いた配管の検査結果と、本実施形態にかかる超音波センサを用いた配管の検査結果とを説明するための説明図であり、特に図6(a)(b)は、比較例の結果を、図6(c)(d)は、本実施形態にかかる超音波センサを用いた結果を示す。
図6(a)および(b)に示すように、比較例としての高ダンピングでない探触子を有する超音波センサ200を用いて海水配管120を検査した場合であっても、ライニング122の剥離状態では、海水配管120と海水の境界で反射する反射波のみ検出され(図6(a)参照)、ライニング122の剥離がない正常状態では、海水配管120とライニング122の境界で反射する反射波(ノイズの反射波)およびライニング122と海水の境界で反射する反射波(目的の反射波)が検出できている(図6(b)参照)。
しかしながら、超音波センサ200を用いた場合、超音波を発生させたあとすなわちパルス電圧を加えた後に探触子が有する弾性に起因し探触子の振動が継続することにより発生する波である残留波が発生する。図6(a)を参照すると、超音波受信部204は反射回数の異なる複数のノイズの反射波を間欠的に受信しており、1回目のノイズの反射波を受信するときと2回目のノイズの反射波を受信するときとの間の所定期間に残留波を受信していることがわかる。
したがって、図6(b)を参照すると、目的の反射波を検出することはできるものの、残留波と重複して検出していることがわかる。
一方、図6(c)に示すように、本実施形態にかかる高ダンピングの探触子を有する超音波センサ300を用いて海水配管120を検査した場合、1回目のノイズの反射波を受信するときと2回目のノイズの反射波を受信するときとの間の所定期間に残留波の発生がほとんどない。したがって、超音波受信部304が目的の反射波を受信する際に残留波を受信しないため、目的の反射波のみをより顕著に検出することが可能となる(図6(d))。これにより、超音波受信部304が、波を受信しない(0点復帰)期間にライニング122と海水の境界で反射する反射波を受信するため、S/N比を向上させることが可能となる。
音響シールド306は、コルク等音響インピーダンスが著しく小さい材質で構成され、超音波発生部302と超音波受信部304のとの間に設けられている。音響シールド306を備える構成により、超音波発生部302で発生した超音波が直接超音波受信部304に伝達してしまうのを防止することができる。
また、超音波発生部302と超音波受信部304の少なくとも一方が他方に対して離接する方向に位置調整可能である。本実施形態では、超音波受信部304が、ケース308に設けられた調節穴310に沿ってスライド可能である。特に図5に示すように、超音波発生部302および超音波受信部304を覆うケース308の外表面にメモリ312を備えているため、ユーザはメモリ312を視認しながら超音波受信部304を、調節穴310を介してスライドできる。これにより、海水配管120の管厚およびライニング122の膜厚に応じて、適切に検査を行うことができる。
(第3実施形態:配管検査システム400)
上述した第1および第2実施形態においては、点集束させた横波の超音波を利用することにより、ライニング近傍の超音波の強度を高め、海水配管内に海水が充水された状態であってもライニングが剥離しているか否かを確実かつ安定して検査することが可能な配管検査方法および配管検査装置について説明した。第3実施形態においては、上述した第1および第2実施形態にかかる配管検査装置としての超音波センサを搭載した配管検査システムについて説明する。
上述した第1および第2実施形態においては、点集束させた横波の超音波を利用することにより、ライニング近傍の超音波の強度を高め、海水配管内に海水が充水された状態であってもライニングが剥離しているか否かを確実かつ安定して検査することが可能な配管検査方法および配管検査装置について説明した。第3実施形態においては、上述した第1および第2実施形態にかかる配管検査装置としての超音波センサを搭載した配管検査システムについて説明する。
図7は、本実施形態にかかる配管検査システムの外観図である。図7に示すように、配管検査システム400は、本体ユニット402と、本体ユニット402と海水配管120とを移動可能に支持する支持リング404と、支持リング404に回転支持されセンサユニット406を固定する回転リング408と、本体ユニット402からセンサユニット406へ電力を供給する電線支持ワイヤ410と、電線支持ワイヤ410とセンサユニット406を接続する電線412とを含んで構成される。ここで電線412は、本体ユニット402からセンサユニット406への信号の伝達およびセンサユニット406を構成する超音波センサで測定した測定結果としての信号を本体ユニット402に伝達する通信機能も有している。
本体ユニット402は、当該配管検査システムに電力を供給する電源と、本体ユニット402を制御するユニット制御部と、回転リング408に噛合し回転リング408と海水配管120の円周方向に回転させる駆動ギヤ414と、を含んで構成される。
本実施形態において、センサユニット406は、超音波センサ200もしくは300を備えており、本体ユニット402の駆動ギヤ414が回転することにより、回転リング408が回転し、回転リング408に固定されたセンサユニット406が、海水配管120の円周方向に反復回転することとなる。したがって、超音波センサは、海水配管120の円周方向を満遍なく検査することができる。
一方、本体ユニット402は、海水配管120の軸方向に沿って移動可能である。したがって、支持リング404を1回転させるごとに本体ユニット402を1ライン分ずつ移動させることにより、センサユニット406に設けられた超音波センサは、海水配管120の全体を満遍なく検査することができる。
また、センサユニット402に超音波センサ300を用いれば、ライニング122と海水の境界で反射する反射波である目的の反射波を顕著に検出することができるため。したがって、目的の反射波が検出されると推測される時間を監視することによって、当該時間にピークが検出されるか否かを判定するだけで、簡単にライニング122の剥離を検出することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本明細書の配管検査方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理も含んでも良い。
本発明は、内面にライニングが施された配管を検査する配管検査方法および配管検査装置に利用することができる。
100 …原子力発電所、102 …原子炉、104 …蒸気配管、106 …復水給水配管、108 …タービン、110 …発電機、112 …復水器、120 …海水配管、122 …ライニング、200、300 …超音波センサ、202、302 …超音波発生部、204、304 …超音波受信部、306 …音響シールド、308 …ケース、310 調節穴、312 …メモリ、400 …配管検査システム、402 …本体ユニット、404 …支持リング、406 …センサユニット、408 …回転リング、410 …電線支持ワイヤ、412 …電線、414 …駆動ギヤ
Claims (4)
- 内面にライニングが施された配管を検査する配管検査方法であって、
前記配管の外表面から該配管の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する超音波発生工程と、
前記発生した超音波の反射波を受信する超音波受信工程と、
前記受信した反射波に基づいて前記ライニングが剥離しているか否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする配管検査方法。 - 前記配管の内部には水または海水が充水されていることを特徴とする請求項1に記載の配管検査方法。
- 前記超音波発生工程で超音波を発生させる超音波発生手段および前記超音波受信工程で反射波を受信する超音波受信手段は、ダンピング係数0.25程度の高ダンピング探触子で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の配管検査方法。
- 内面にライニングが施された配管を検査する配管検査装置であって、
前記配管の外表面から該配管の内部方向に点集束させた横波の超音波を発生する高ダンピング探触子で構成される超音波発生部と、
前記発生した超音波の反射波を受信する高ダンピング探触子で構成される超音波受信部と、
前記受信した反射波に基づいて前記ライニングが剥離しているか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記超音波発生部と前記超音波受信部の少なくとも一方が他方に対して離接する方向に位置調整可能であることを特徴とする配管検査装置。
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---|---|---|---|
JP2008217757A JP2009258072A (ja) | 2008-03-19 | 2008-08-27 | 配管検査方法および配管検査装置 |
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---|---|---|---|
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012117875A (ja) * | 2010-11-30 | 2012-06-21 | Kobe Steel Ltd | 小径管の超音波探傷装置及び方法 |
JP2017194299A (ja) * | 2016-04-18 | 2017-10-26 | 日鉄住金防蝕株式会社 | 被膜健全性評価方法 |
CN111579642A (zh) * | 2020-05-28 | 2020-08-25 | 武汉第二船舶设计研究所(中国船舶重工集团公司第七一九研究所) | 循环冷却水管路腐蚀损伤抑制装置及抑制方法 |
CN114518084A (zh) * | 2022-03-10 | 2022-05-20 | 西安交通大学 | 滑动轴承润滑膜厚与轴瓦衬层磨损的同步超声测量方法 |
-
2008
- 2008-08-27 JP JP2008217757A patent/JP2009258072A/ja active Pending
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