JP2009257732A - ソーラーシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】 大型のソーラーシステムであってもより焦点距離を短くすることができるようにする。
【解決手段】 太陽光が入射面に垂直に入射する姿勢で同一平面上に並べられた方形板状の複数のフレネルレンズF1〜F9が、保持枠71で保持されている。各フレネルレンズF1〜F9は、入射側が平坦面2であって出射側が凸面となっている多数のプリズム部11,12が同一平面上に並べられ、フレネルレンズ全体として一つのレンズ作用を為す。フレネルレンズF1〜F9において、光軸Aに近い側に位置する第一の群のプリズム部11における凸面は、第一の面3に達した光が第一の面3で屈折して出射するすることでレンズ作用を為し、光軸Aから遠い側に位置する第二の群のプリズム部12における凸面は、第一の面3に達した光が第一の面3で全反射した後、第二の面4で屈折して出射することでレンズ作用を為す。
【選択図】 図5

Description

本願の発明は、ソーラーシステムに関するものである。
本願において、「ソーラーシステム」とは、太陽光エネルギーを利用したシステムを広く意味する用語である。「利用する」とは、熱エネルギーとして利用する場合や、太陽電池のように光電変換して電気エネルギーとして取り出す場合を含む。
現在、フレネルレンズを使用したソーラーシステムが検討されている。図8は、一般的なフレネルレンズの構造を示した正面断面概略図である。
フレネルレンズは、通常のレンズを多数のプリズム状のセグメントに分割し、セグメントを平面上に並べることでシート状又はプレート状に変換した光学部品である。したがって、フレネルレンズは、プリズム部1を同一平面上に多数並べて設けたものとなっている。このようなフレネルレンズは、一方の側の面が平坦面2で、他方の側の面がプリズム部
1によって形成される凹凸面である場合が多い。
図8には、平凸レンズをフレネルレンズで達成した構成が示されており、(1)は入射側を凸にした配置、(2)は出射側を凸にした配置である。フレネルレンズを構成する各プリズム部1は、図8に拡大して示すように、二つの面101,102から成る凸面を有している。このうちの一方の面101は、フレネルレンズ全体として一つのレンズ作用を為すよう形成された面(以下、レンズ面)である。他方の面102は、各レンズ面101をつなげるための面であり、一義的にはレンズ作用のための面ではない。以下、この面を、非レンズ面と呼ぶ。
このようなフレネルレンズにおいて、図8(1)に示すように、凹凸面を入射側にし、平坦面2を出射側にして配置するのが一般的である。この理由について、平行光を一点に集光する場合を例にして説明する。
フレネルレンズの効率を高くするには、非レンズ面102の部分で光の損失がないようにすることが重要である。非レンズ面102での損失を無くすには、ドラフト角をゼロにすれば良い。ドラフト角は、非レンズ面102が平坦面2の法線に対して成す角である(図8にθdで示す)。しかしながら、ドラフト角θdがゼロであると、フレネルレンズを成型法で製作する際の離型が難しいという問題がある。離型とは、成型後に製品を型から引き離すことを指す。このため、多少のドラフト角θdをつけた設計とされることが多い。
この場合、図8(2)に拡大して示すように、出射側が凹凸面であると、ドラフト角θdが少しついている場合、非レンズ面102に達した光L1は、非レンズ面102で全反射し、集光点から大きく外れた方向に進んでしまう。一方、入射側を凹凸面とした場合では、図8(1)に拡大して示すように、非レンズ面102に達した光L1は、非レンズ面102で全反射するものの、集光点から大きく外れることなく進んでいく。このため、ドラフト角θdを適宜設計すれば、集光点の照度を上げるのに貢献させることができる。
このようなことから、一般的には、凹凸面を出射側にするよりも入射側にした設計や配置の方が、ドラフト角を多少つけても光の利用効率が高くできると言われており、凹凸面を入射側にする方が好ましいとされている。
特開平4−127101号公報
しかしながら、ソーラーシステム用のフレネルレンズの場合、どうしても入射側を平坦面にしなければならない事情がある。ソーラーシステム用のフレネルレンズの場合、当然のことながら、戸外に配置され、直射日光に晒される。この場合、入射面が凹凸面であると、埃やゴミが溜まってしまい、その結果、透過特性が著しく低下してしまうからである。入射側に透明な板をおいて埃やゴミが付かないようにしてもよいが、どんなに透過率の
高い板を使用しても光の吸収等はあり、ロスの発生は避けられない。このようなことから、ソーラーシステム用のフレネルレンズは、入射側を平坦面とした設計が行われる。
一方、ソーラーシステムのような大型のシステムに搭載されるフレネルレンズは、システム全体を少しでもコンパクトにするため、焦点距離をより短くすることが求められる。発明者の研究によると、上記のように入射側を平坦面とした構成において焦点距離の短いものを得ようとすると、従来の考え方では限界があることが判明した。
即ち、焦点距離を短くする場合、レンズ面が平坦面に対して成す角を大きくする必要がある。この角を、以下、「立ち上がり角」と呼び、図8(2)にθuで示す。集光作用を為させる場合、立ち上がり角θuは、光軸Aから遠い位置に位置するプリズム部のレンズ面ほど大きくする。言い換えれば、光軸Aから遠ざかるに従って立ち上がり角θuを漸増させれば、計算上は凸レンズと同様の集光作用が得られるということである。しかしながら、立ち上がり角θuがあまり大きくなると、レンズ面への光の入射角が臨界角に近くなる。臨界角を越えてしまうと、光はレンズ面で全反射し、設計通りの集光作用が得られなくなってしまう。
例えば、フレネルレンズの材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂を使用した場合、臨界角は42度程度であり、これを越えると全反射する。したがって、レンズ面をこの角度以上に立ち上げなければならない場合、従来の考え方では設計ができなくなってしまう。
光軸に近い位置のプリズム部では、立ち上がり角θuはそれほど大きくしなくて済むので、光軸に近い位置にだけプリズム部を配置し、臨界角を超えないようにすることも考えられる。しかしながら、プリズム部の数が少なくなり、全体として小さいフレネルレンズにならざるを得ず、集光量が少なくなってしまう問題が生ずる。
本願の発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、大型のソーラーシステムであってもより焦点距離を短くすることができるようにした意義を有するものである。
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、太陽光エネルギーを利用するソーラーシステムであって、太陽光が入射面に垂直に入射する姿勢で同一平面上に並べられた方形板状の複数のフレネルレンズと、各フレネルレンズを保持する保持枠とを備えており、
各フレネルレンズは、入射側が平坦面であり出射側が凸面となっているプリズム部を同一平面上に多数並べた構造のフレネルレンズであり、多数のプリズム部は、平坦面から入射した光が最初に到達する第一の面と、第一の面とは別の第二の面とを有しており、
複数のフレネルレンズは一つの共通した光軸に対して配置されていて、各フレネルレンズの各プリズム部は、全体として一つのレンズ作用を為すよう形成されており、
複数のフレネルレンズのうちの一つは、前記光軸上に配置されており、他のフレネルレンズは、光軸上に配置されたフレネルレンズの周囲に配置されており、
前記光軸上に配置されたフレネルレンズは、第一の面に達した光が第一の面で屈折して出射するすることで前記レンズ作用を為すよう形成されたプリズム部の群を有しており、
前記周囲に配置されたフレネルレンズは、第一の面に達した光が第一の面で全反射した後、第二の面で屈折して出射することで前記レンズ作用を為すよう形成されたプリズム部の群を有している。
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、臨界角によって制限されることなく、フレネルレンズを大型化することが可能であり、太陽光エネルギーを利用する好適なシステムを得ることができる。
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。まず、本願発明の実施形態のソーラーシステムに用いられるフレネルレンズについて説明する。
図1は、第一の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。図1に示すフレネルレンズは、入射側が平坦面2であり、出射側が凸面となっているプリズム部11,12を同一平面上に多数並べた構造のフレネルレンズである。各凸面は、断面が三角形状を成しており、第一の面3と第二の面4とから成っている。第一の面3は、平坦面2が入射した光が最初に到達する面である。各プリズム部11,12において、第一の面3は光軸Aから遠い側にあり、第二の面4は光軸Aに近い位置にある。
尚、図1は、光軸Aの右側の部分のみを示しており、且つ説明に必要な部分のみを抜粋して概略的に示している。各プリズム部11,12は円周状に延びており、光軸Aを中心として同心上に配置されている。
これらのプリズム部11,12は、光軸Aに近い側に位置する第一の群のプリズム部11と、光軸Aから遠い側に位置する第二の群のプリズム部12とから成っている。この例のフレネルレンズの大きな特徴点は、屈折系と全反射系を組み合わせて構成した点にある。即ち、第一の群のプリズム部11は、第一の面3での屈折を利用してレンズ作用を為させるのに対し、第二の群のプリズム部12は、第一の面3での全反射を利用してレンズ作用を為させるものとなっている。図1において、第一の群と第二の群との境界線を、一点鎖線6で示す。
より具体的に説明すると、この例のフレネルレンズは、図8(1)と同様に、平凸レンズを入射側を凸面にして配置したのと等価な構成となっている。即ち、出射側に位置する凹凸面は、平凸レンズの凸面に光学的に等価な面となるよう構成されている。
このうち、第一の群のプリズム部11は、第一の面3が、平凸レンズの凸面に等価となっており、各第一の面3をつなげてくと平凸レンズの凸面に近似する面を形成するようになっている。
一方、第二の群の各プリズム部12では、第一の面3が全反射であって第二の面4が屈折面であり、これらの面により得られる作用が、第一の群の各プリズム部11で得られる作用と合わせて、フレネルレンズ全体として平凸レンズの作用を為すよう構成されている。即ち、第二の群の各プリズム部12は、第一の面3で全反射して第二の面4で屈折して
出射した光が、第一の群の各プリズム部11から出射した光と同じ位置(即ち、焦点)に集まるよう構成されている。
上記説明から解るように、第一の群の各プリズム部11では第一の面3の角度は入射光が全反射しない角度に設定され、第二の群の各プリズム部12では第一の面3の角度は入射光が全反射する角度に設定される。以下、各プリズム部11,12の材質がPMMA樹脂である場合を例にし、上記の点をさらに具体的に説明する。
光がPMMA樹脂の媒体内から外部(空気中)に出射する場合、臨界角は42度程度であり、入射角が42度を超えると全反射する。したがって、第一の群のプリズム部11は、入射角が42度を超えないようになっている。各プリズム部11,12において、光は
平坦面2に垂直に入射するので、第一の面3への光の入射角θiは、第一の面3が平坦面2と平行な面に対して成す角(立ち上がり角θu)に等しい。したがって、第一の群の各プリズム部11は、立ち上がり角θuが42度を超えないようになっている。
第一の群のプリズム部11は第一の面3での屈折により前記レンズ作用を為すから、最も中央の(光軸A上の)プリズム部11において第一の面3の立ち上がり角θuは0度であり、光軸Aから遠ざかるにしたがって、徐々に立ち上がり角θuが大きくなっている。そして、42度を超えない範囲で最も大きな立ち上がり角θuのプリズム部11が、第一の群において最外周に位置するものとなる。以下、このプリズム部11を、第一群最外周部と呼ぶ。第一群最外周部11における立ち上がり角θuは、例えば38度程度に設定される。
尚、第一の群の各プリズム部11は、この例では、ドラフト角ゼロとなっている。即ち、第二の面4は、平坦面2に対して垂直である。これは、前述したように、ドラフト角をつけると損失が生じるためである。
第二の面4から出射する光が平坦面2に対して成す角(以下、単に「出射角」と呼ぶ)θeは、光軸A上のプリズム部11において最も大きい角度(90度)となり、光軸Aから遠ざかるに従って徐々に小さくなる。
第二の群の各プリズム部12では、第二の面4から出射する光が第一の群の各プリズム部11からの光と同じ位置(焦点)に結ぶことと、第一の面3の立ち上がり角θuが臨界角より大きいことの二つを条件とする以外、本質的に制限はない。したがって、これら二つの条件を満たすよう第一第二の各面3,4を設計すればよい。
図1に示す第一の例は、第一の面3と第二の面4とが成す角(頂角)を一定にした設計となっている。頂角を一定にすると、成型に用いる型を、同じ刃先のバイトで切削することで製作することができるので、好適である。また、図1に示すように、第一の例では、成型の際の離型を容易にするため、第二の群の各プリズム部12では、若干のドラフト角を設けている。
第二の群のプリズム部12から出射する光の出射角θeは、図1に示すように、最も光軸Aに近い位置に位置するプリズム部(以下、第二群最内周部)12において最も大きく、光軸Aから遠ざかるに従って徐々に小さくなる。そして、第二群最内周部12における
出射角θeは、第一群最外周部11における出射角θeから僅かに小さいのみであり、出射角θeの漸次減少がシームレスにつながるようになっている。
また、この例では、図1に示すように、第二の群のプリズム部12において、凸面の高さ(図1にhで示す)は、光軸Aから遠ざかるに従って徐々に高くなっている。この点は、内側(光軸Aに近い側)に隣接するプリズム部12に出射光が入射してしまう問題(いわゆるケラレ)を避けるためである。ケラレがあると、損失が生じ、光の利用効率が低下してしまう。
第一の群のプリズム部11においては、第一の面3での屈折を利用してレンズ作用を得るのみであるのでケラレの問題はないが、第二の群のプリズム部12では、第一の面3で全反射させた後に第二の面4から出射させるので、ケラレが生じやすい。このため、第二の面4から出射する出射光が内側のプリズム部1に入射しないように、凸面の高さhを漸増させている。
ケラレを防止するには、凸面の高さhを漸増させるとともに、第二の面4の角度を適宜設定することが効果的である。第二の群の一つのプリズム部12の第一の面3において、最も光軸Aから遠い点(以下、最遠点)に入射した光が全反射して第二の面4で屈折して出射した際、内側に隣接するプリズム部11,12に達しないように、第一の面3の立ち上がり角θu及び第二の面4の角度を決定する。
上述した第一の例のフレネルレンズでは、光軸Aに近い第一の群のプリズム部11では屈折を利用し、光軸Aから遠い第二の群のプリズム部12では全反射を利用しつつ、フレネルレンズ全体として一つのレンズ作用を得ている。したがって、臨界角によって
制限されることなく、フレネルレンズを大型化することが可能である。また、第二の群のプリズム部12において、凸面hの高さを漸増させているので、ケラレの問題を防止でき、光の利用効率が低下することもない。
次に、第二の例について説明する。
図2は、第二の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。図2に示すフレネルレンズも、図1に示すものと同様、光軸Aに近い第一の群のプリズム部11は、第一の面3が屈折によりレンズ作用を為す構成となっており、光軸Aから遠い第二の群のプリズム部12では、第一の面3で全反射して第二の面4で屈折することでレンズ作用を為す構成となっている。
この第二の例のフレネルレンズが、第一の例と異なるのは、以下の三つの点である。まず第一の点は、第二の群の各プリズム部12においても、ドラフト角はゼロとなっている点である。ドラフト角をゼロとすると、前述したように、第二の面4における損失が無くなるので、光の利用効率の点から好適である。
第二の点は、第二の群の各プリズム部12の凸面が、第一の群の各プリズム部11の凸面に比べて、平坦面2に近くなっていることである。即ち、平坦面2と各凸面との間の部分を、「肉厚部分」と呼ぶと、第二の群の各プリズム部12における肉厚部分は、第一の群の各プリズム部11に比べ薄くなっている。
第二の例においても、ケラレを防止するため、第二の群のプリズム部12は、高さhが高くなっている。この際、上記にように第二の群のプリズム部12において肉厚部分を薄くしておくことは、肉厚部分を含めた全体の高さ(フレネルレンズ全体の厚さ)Hが高くなるのを抑えることにつながり、フレネルレンズ全体が厚さの点でコンパクトになり、搭載が容易である等のメリットがもたらされる。
第三の点は、第一の面3と第二の面4の先端部分に、頂角ではなく、小さな面(第三の面)5が形成されている点である。即ち、鋭利な頂角の先端をカットしたような形状となっている。
先端カットの目的はいくつかあるが、まず第一に、先端部分の欠けを防止するためである。第二の群のプリズム部12では、前述した通り、第一の面3が全反射面となるよう立ち上がり角θuが大きく設定される。したがって、第二の群のプリズム部12は、第一の群のプリズム部11に比べて凸面の頂角がより鋭利なものとなる。頂角が鋭利であると、フレネルレンズの搭載等の際に欠け易く、欠けによって、性能が低下することもあり得る。このため、性能に影響しない範囲で予め先端をカットした形状としている。
先端カットの別の目的は、製作に用いる型の加工の容易さからである。型は、母材をバイトで切削加工することで作られるが、鋭利な頂角を形成する場合には、その分だけ鋭利な溝を形成する必要が生じ、刃先の幅が鋭利に狭まっているバイトを使用する必要がある。そのようなバイトは、強度が弱く、少しの切削を行っただけで欠けてしまう。第二の実
施形態のように先端をカットした構成としておけば、刃先の幅が鋭利なバイトを使用する必要はなく、耐久性の高いバイトを使用して生産コストを低くして型を作ることができる。
第三の面5の幅は、5〜50μmであることが望ましい。5μmより小さいと、鋭利なものになってくるので、上記効果が得られなくなる。50μmより大きいと、この第三の面5が光学特性に与える影響が無視できなくなり、集光性能が低下したり、光の利用効率が低下したりする問題が生ずる。
図3は、第二の例を変形した実施形態の構成を模式的に示した図である。図3の二点鎖線61は、各プリズム部1の第一の面3のうち最も平坦面2に近い点と第二の面4のうち最も平坦面2に近い点とを結んだ線を連続させたものである。
図3に示すように、この実施形態では、第二の群のプリズム部12において、肉厚部分の厚さが、光軸Aから遠ざかるに従って漸次減少したものととなっている。前述したように、ケラレを防止するには、光軸Aから遠ざかるに従って徐々に高さhを高くすることが望ましい。したがって、全体の高さHを抑えるには、この実施形態のように、肉厚部分を漸次減少させることが好適である。
次に、第三の例について説明する。
図4は、第三の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。図4に示すフレネルレンズも、図1に示すものと同様、光軸Aに近い第一の群のプリズム部11は、第一の面3が屈折によりレンズ作用を為す構成となっており、第二の群のプリズム部12では、第一の面3で全反射して第二の面4で屈折することでレンズ作用を為す構成となっている。
この第三の例のフレネルレンズが、第一第二の例と異なるのは、第二の群の各プリズム部12のピッチ幅が、第一の群の各プリズム部11のピッチ幅より狭くなっている点である。ピッチ幅とは、各プリズム部11,12が並んだ方向で見た各凸面の幅である(図4中にpで示す)。この実施形態では、第二の群の各プリズム部12のピッチ幅は、第一の群の各プリズム部11の半分となっている。
図1に示す第一の例では、第二の群のプリズム部12のピッチ幅pは第一の群のプリズム部11と同じである。図4には、第一の例における第二の群のプリズム部12が二点鎖線で描かれている。図4から解るように、第三の例における第二の群のプリズム部12は、第一第二の面3,4の角度は第一の例と同じで、ピッチ幅pのみが半分になっている。即ち、第三の例は、第二の群において、二つのプリズム部12が第一の例のプリズム部12一つ分の機能を持つようにした構成となっている。
尚、第二の群において、二つのプリズム部12が一つの組みとなっている。各組みにおいて、二つのプリズム部12は互いに同じ構成である。つまり、第一の斜面3の立ち上がり角θu、第二の面4の角度及び頂角は同じである。そして、光軸Aから遠い組みほど、立ち上がり角θuが大きくなり、出射角θeが小さくなるようになっている。
第二の例では、ピッチ幅pが半分になっているので、凸面の高さhについても、第一の例に比べて半分になる。従って、第二の群のプリズム部12における高さの増加を半分に抑えることができる。この第三の例においても、第二の群のプリズム部12の凸面の高さhは漸増しているが、その漸増が第一の例に比べて半分となっている。
第二の群のプリズム部12同士はピッチ幅pが同じであるが、変えるようにしてもよい。即ち、第二の群のプリズム部12において、光軸Aから遠ざかるに従って徐々にピッチ
幅pを狭くする構成であっても良い。
また、第二の群の各組みのプリズム部12は互いに同じ構成でない場合もある。各組みにおいて、光軸Aから遠い方のプリズム部12において出射角θeが小さくなるように設計する場合もある。
上述した第一乃至第三の例の各特徴点は、適宜組み合わせることができる。例えば、先端カットの構成を第一の例や第三の例で採り入れても良い。また、肉厚部分の厚さを変える特徴点を、第三の例に採り入れても良い。
いずれにしても、本願の各実施形態のフレネルレンズによれば、光軸Aに近い第一の群のプリズム部11では屈折を利用し、光軸Aから遠い第二の群のプリズム部12では全反射を利用しつつ、フレネルレンズ全体として一つのレンズ作用を得ているので、臨界角によって制限されることなくフレネルレンズを大型化することが可能である。
尚、フレネルレンズの材料には、PMMA樹脂の他、MS(アクリル・スチレン共重合)樹脂やPC(ポリカーボネード)樹脂等が使用されることがある。フレネルレンズの製作は、母材を一対の型で挟み込み、加熱加圧する熱間プレス法により行われることが多い。
上述した各実施形態では、フレネルレンズのレンズ作用は平凸レンズの作用であったが、本願発明はこれに限られる訳ではなく、平凹レンズであっても良い。つまり、平坦面か
ら入射する光を拡大させるレンズ作用を為すものであっても良い。
また、各プリズム部11,12が光軸に対して同心円周状であることは、本願発明にとって必須の要素ではない。例えば、各プリズム部11,12が直線状に延びるものであっても、本願発明は実施可能であり、大型のフレネルレンズが得られる効果は同様である。各プリズム部11,12が直線状である場合、集光レンズとして構成すると、光は直線上に集光されることになり、いわゆるリニアフレネルレンズの構成となる。
次に、本願発明のソーラーシステムの実施形態について説明する。
実施形態のソーラーシステムは、上述したいずれかの例のフレネルレンズを使用したシステムである。実施形態のソーラーシステムは、太陽光を集光してエネルギー密度を高くした上で利用することが想定されており、このような利用の仕方が望ましい分野に用途に好適に適用されるものである。
図5は、実施形態のソーラーシステムの斜視概略図である。
図5に示すソーラーシステムは、同一平面上に並べられた複数のフレネルレンズF1〜F9と、各フレネルレンズF1〜F9を保持する保持枠71と、各フレネルレンズF1〜F9の姿勢を制御する姿勢制御装置とを備えている。
各フレネルレンズF1〜F9が並べられた平面は、太陽光の入射方向に垂直である。したがって、太陽光は各フレネルレンズF1〜F9に垂直に入射する。
各フレネルレンズF1〜F9は、全体として正方形の板状である。この実施形態では、合計で9枚のフレネルレンズが搭載されており、図5に示すように碁盤の升目状に並べてられている。保持枠71は、これらのフレネルレンズF1〜F9を保持できるよう直角格子状のものである。
各フレネルレンズF1〜F9は、1100×1100mm程度の大きなものである。保持枠71全体としては3300×3300mm程度の大きなものであり、受光面の大きさが10m2程度のシステムとなっている。
姿勢制御装置は、各フレネルレンズF1〜F9を一括して姿勢制御するものであって、各フレネルレンズF1〜F9の入射面が太陽光の入射方向に対して常に垂直になるようにするものである。姿勢制御装置は、太陽光の高度の変化に追従して各フレネルレンズF1〜F9の傾斜角度を制御する高度追従制御機構72と、太陽の経度の変化に追従して各フレネルレンズF1〜F9の水平方向の向きを制御する経度追従制御機構73とを含んでいる。
上述した保持枠71は、一対の支柱74によって支えられている。保持枠71は、水平な回転軸の周りに所定角度回転可能な状態で支柱74に取り付けられている。回転軸は、保持枠71の中心を通る位置となっている。尚、保持枠71の中心は、九つのフレネルレンズのうち中央に設けられたフレネルレンズF1の中心に一致している。「保持枠71の中心」や「フレネルレンズの中心」は、「保持枠71の重心」、「フレネルレンズの重心」と言い換えることも可能である。
高度追従制御機構72は、保持枠71に取り付けられたアーム75と、アーム75を駆動する駆動部76によって構成されている。アーム75は、左右一対のものである。アーム75は、クランクアームと同様の構造であり、駆動部76は、アーム75を引っ張ったり押したりすることが可能となっている。この駆動によって保持枠71の傾斜角度が制御されるようになっている。
また、支柱74は、回転台77の上に固定されている。経度追従制御機構73は、この回転台77を鉛直な回転軸の周りに回転させる機構となっている。この回転軸も、保持枠71の中心を通る位置である。
姿勢制御装置は、不図示のコンピュータを備えている。コンピュータには、太陽の軌道に関するデータが入力されており、このデータに従って高度追従制御機構72と経度追従制御機構73とを制御するようになっている。
尚、このソーラーシステムは、複数のフレネルレンズによる太陽光の集光位置に、受光部(不図示)を備えている。受光部の構成は、集光された太陽光をどのように利用するかによって異なる。本実施形態では、集光された太陽光の高いエネルギーを利用して試料の加工を行うことが想定されており、試料を入れる容器が受光部として採用されている。
図6は、図5に示すソーラーシステムに搭載された複数のフレネルレンズのプリズム部1の構成について模式的に示した平面概略図である。
実施形態のソーラーシステムは、複数のフレネルレンズF1〜F9が全体として一つのレンズと等価になるような構成である。光軸Aは、中央のフレネルレンズF1の中心を通り、各フレネルレンズF1〜F9が並べられた平面に対して垂直な方向に設定されている。中央のフレネルレンズF1では、各プリズム部は光軸Aを中心とする同心円周状であり
、自身の中心と同心である。一方の周辺のフレネルレンズF2〜F9では、各プリズム部が同じ光軸Aに対して同心円周状となっており、自身の中心とは同心ではない(いわゆるオフアクシス)。言い換えると、フレネルレンズF2〜F9では、各プリズム部は光軸Aを中心とする円弧状である。
図7は、図6に示す各フレネルレンズF1〜F9のプリズム部11,12における第一第二の群の区分けについて示した断面概略図である。一例として、フレネルレンズF1,F4,F8の断面が示されている。
前述したように、第一の群のプリズム部11は光軸Aに近い位置に位置するものであり、第二の群のプリズム部12は光軸Aから遠い位置に位置するものである。この場合、複
数のフレネルレンズにおける区分けは、二つのパターンがある。
第一のパターンは、図7(1)にすように、中央のフレネルレンズF1において、第一の群のプリズム部11と第二の群のプリズム部12とがあり、周辺のフレネルレンズF4,F8では、全て第二の群のプリズム部12となっているパターンである。第二のパターンは、中央のフレネルレンズF1では、全て第一の群のプリズム部11であり、周辺のフレネルレンズF4,F8では、第一の群のプリズム部11と第二の群のプリズム部12とがあるパターンである。
第一のパターンは、各フレネルレンズF1〜F9(特に中央のフレネルレンズF1)が大きく、全体として大きな領域で太陽光を受光して集光する場合に用いられる。第二のパターンは、逆に各フレネルレンズF1〜F9(特に中央のフレネルレンズF1)が小さく、比較的小さい領域で太陽光を受光して集光する場合に用いられる。いずれにしても、複
数のフレネルレンズを用いているので、一枚のフレネルレンズの場合に比べてより大きな領域で太陽光を受光して集光することができ、よりエネルギー密度を高くすることができる。
尚、中央のフレネルレンズF1は全て第一の群のプリズム部11とし、周囲のフレネルレンズF4,F8は全て第二の群のプリズム部12とすることもあり得る。
上述したソーラーシステムにおいて、姿勢制御装置は、太陽光が各フレネルレンズF1〜F9に常に垂直に入射するようにするので、光の利用効率を常時高くする意義がある。とはいえ、光の利用効率をそれほど高くする必要がない場合には、姿勢制御装置を設けず、簡略化したシステムとする場合もある。
尚、上述したように複数のフレネルレンズを光軸に垂直な同一平面上に配置する構成は、「フレネルレンズ組立体」の発明として捉えることができる。このようなフレネルレン
ズ組立体は、上記ソーラーシステムの用途以外にも使用することができる。
次に、フレネルレンズの各例について、より具体的な実施例を説明する。一例として、図1に示す第一の例の実施例につて説明する。この実施例は、フレネルレンズの材質としてPMMA樹脂を使用し、焦点距離1000mmの集光レンズを構成した例である。各プリズム部11,12のピッチ幅は0.3mmであり、第一の群及び第二の群とも同じである。
この実施例では、光軸Aから半径約560mmの位置が境界線6となっており、560mmまでのプリズム部11については屈折系(第一の群のプリズム部)となっている。560mmを超えると、第一の面3において臨界角を超えてしまうので、それより外側は全反射系(第二の群のプリズム部)となっている。つまり、光軸Aから1866個めまでのプリズム部11は屈折系で構成し、1867個め以降を全反射系で構成している。
また、第二の群のプリズム部12の最も外側のプリズム部(以下、第二群最外周部)12で光軸Aから約880mmとなっている。したがって、第二の群プリズム部12は1067個設けられた構成であり、全体で2933個のプリズム部11,12が設けられている。フレネルレンズ全体の入射面の大きさは直径880mmであり、直径1mに迫る大口径の集光レンズがフレネルレンズで達成されている。
第一群最外周部11では、第一の面3の立ち上がり角θuは38.35度、ドラフト角はゼロであり、頂角は51.65度である。第二群最内周部12では、立ち上がり角θuは64.1度(したがって、入射角は64.1度)、ドラフト角は4.1度である。頂角は、30度である(第二の群の各プリズム部12で共通)。第二群最外周部12では、立ち上がり角θuは60.17度、ドラフト角は0.07度である。
第一群最外周部11での出射角θeは61.75度で、第二群最内周部12での出射角θeは60.75度である。出射角θeは、光軸Aから遠ざかるにしたがって小さくなり、第二群最外周部12では48.65度である。
このようにして出射する光は、距離1000mmの焦点に集光する。スポット径は直径50mm程度である。このようなフレネルレンズを用いて太陽光を集光すると、良く晴れた日の場合、集光点の温度は1500℃程度以上に達する。
第一の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。 第二の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。 第二の例を変形した実施形態の構成を模式的に示した図である。 第三の例に係るフレネルレンズの断面概略図である。 実施形態のソーラーシステムの斜視概略図である。 図5に示すソーラーシステムに搭載された複数のフレネルレンズのプリズム部1の構成について模式的に示した平面概略図である。 図6に示す各フレネルレンズF1〜F9のプリズム部1における第一第二の群の区分けについて示した断面概略図である。 一般的なフレネルレンズの構造を示した正面断面概略図である。
符号の説明
11 第一の群のプリズム部
12 第二の群のプリズム部
2 平坦面
3 第一の面
4 第二の面
5 第三の面
6 境界線
71 保持枠
72 高度追従制御機構
73 経度追従制御機構

Claims (1)

  1. 太陽光エネルギーを利用するソーラーシステムであって、太陽光が入射面に垂直に入射する姿勢で同一平面上に並べられた方形板状の複数のフレネルレンズと、各フレネルレンズを保持する保持枠とを備えており、
    各フレネルレンズは、入射側が平坦面であり出射側が凸面となっているプリズム部を同一平面上に多数並べた構造のフレネルレンズであり、多数のプリズム部は、平坦面から入射した光が最初に到達する第一の面と、第一の面とは別の第二の面とを有しており、
    複数のフレネルレンズは一つの共通した光軸に対して配置されていて、各フレネルレンズの各プリズム部は、全体として一つのレンズ作用を為すよう形成されており、
    複数のフレネルレンズのうちの一つは、前記光軸上に配置されており、他のフレネルレンズは、光軸上に配置されたフレネルレンズの周囲に配置されており、
    前記光軸上に配置されたフレネルレンズは、第一の面に達した光が第一の面で屈折して出射するすることで前記レンズ作用を為すよう形成されたプリズム部の群を有しており、
    前記周囲に配置されたフレネルレンズは、第一の面に達した光が第一の面で全反射した後、第二の面で屈折して出射することで前記レンズ作用を為すよう形成されたプリズム部の群を有していることを特徴とするソーラーシステム。
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