JP2009256979A - 高潮を阻止する構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】海側に向けて起倒する海側屋根1によって構成し、該屋根は、水圧に耐える強度を備えた素材で構成した屋根幕15と、屋根幕の海側に設けた止水性の高い素材で構成した止水副幕16とで構成する。そして、海側屋根を海側に倒した状態で、水位が上昇した時止水副幕の陸側に位置する屋根幕で水圧を受けるように構成する。
【選択図】図3
Description
海面が異常に上昇する原因は、強い風が海水を海岸に吹き寄せて海面を上昇させ、低気圧によって海水を吸い上げることから生じる。
そのような現象が満潮時に重なるとさらに海面が上昇して、海や川に接近している民家などはきわめて危険な状態となる。
そのような危険を避けるために、従来から多数の防潮堤が開発されているが、実施には費用や技術上の制約から刑務所の壁のように高く隙間のない擁壁を作ってエネルギーを跳ね返すような構想が一般的である。
<1> 刑務所の壁のような防潮堤を構築すると、長い延長にわたって目隠しを設置したことになるから、水域と住民との生活が完全に切断されてしまい、水辺と人々がなじむことによって形成される水辺の文化が育たない。
<2> あるいは巨大なエアバッグを膨らませて止水する防潮堤の提案もあるが、特殊で高価な繊維を使用するものであるため、海岸線に沿って長い延長にわたって設置することは経済的に困難である。
<3> また膨張させたエアバッグは、その両端を支柱で支持する必要があるが、その支柱にすべての力がかかるために、大きな構造物を設置しなければならない。
<4> その他の防潮施設でも、すべて高潮のエネルギーを全面的に受け止める構造であるから、きわめて大きな支持力が必要となり、不経済なものであった。
<5> 従来の水門や樋門の開閉は、電動モータによって作動させる構成が採用されている。しかし地震、台風などの非常時には電線が切断してモータが作動せず、水門などの開閉が不可能となる場合が想定される。
<1> 上記の発明者らに基づく発明を図7に示すと、この発明は従来の施設に比較して画期的な特徴がある。しかし実際には海側の屋根aの先端と、地表面との接触部が完全な止水性を維持していることが重要な条件となり、その構造については未開発であった。
<2> この種の構造として、たとえば鋼製やコンクリート製の水門や止水ゲートなどが知られている。これらの接合部は隙間にゴム製のパッキンを設置することで止水性を確保する構造であり、剛構造の水門などでは、変形が少ないからゴム製のパッキンを機能させることができる。
<3> しかし、特許文献2に示したような柔軟なシート材を使用して止水を行う簡易な構造では、水位の上昇、波浪などでシート材とそれを支持する枠材bや支柱c類が振動してしまい、接合部分に従来と同様のゴム製のパッキンを配置した構造では高い止水性を維持することが困難であることが分かった。
さらに本発明の高潮を阻止する構造物は、海や河川の水際に沿って延長して設置する構造物であって、海側に向けて起倒する海側屋根によって構成し、海側屋根は不動点に設置した支点と、支点に一端を起倒自在に取り付けた起倒柱と、各起倒柱の上端から、海側に向けて張り出した梁と、梁の海側の間を連結する軒材とで構成し、上記の構成の起倒柱を複数本、平行に配置し、隣接する梁と梁との間に水圧に耐える強度を備えた素材で構成した屋根幕を敷設し、屋根幕の海側には、止水性の高い素材で構成した止水副幕を取り付け、起倒柱を倒して、梁の先端が地表に達した状態で、水位が上昇した場合には、止水副幕で止水を、止水副幕の陸側に位置する屋根幕で水圧を受けるように構成したしたことを特徴とする。
<1> この防潮施設を海岸線、河川などに沿って長い延長にわたって設置しても、災害の発生しない日常は空中に収納してあるから視線をさえぎることがなく、日除けや雨除けとなり、住民や旅行者は水辺の景色を楽しむことができる。
<2> 刑務所の塀のように、陸上と水上との間に人の通行をさえぎる構造が存在しないから、人々がどこかでも海岸や河川の水辺へおりて水と親しむ環境を作り出すことができる。
<3> そしていざ高潮や小規模の津波、河川の水位の異常上昇が発生した時には、きわめて簡単な操作によって水の陸上への浸入を阻止する壁を形成することができる。
<4> 前記したように、コンクリートや鋼製のゲートなどと異なり、柔軟なシートで構成した簡易な構造では、高潮の来襲や波浪によって振動を生じやすい。すると屋根の先端と地表面との接触線の止水効果が低下しやすい。しかし本発明の構造では、高潮などの水圧は強度の高い屋根幕で受け、止水効果は屋根幕とは別に、屋根幕に添付した止水副幕で受ける構造である。そのために経済的な材料を使用して、確実な止水性を確保することができる。
本件発明の対象は「高潮など」により発生する災害を防止するための施設である。
すなわち、一般の高潮に限らず、地震にともなう津波、豪雨による水位の上昇による堤防からの越水、あるいは地球規模の異常気象に伴う潮位や河川の水位の上昇などを対象とすることができる。
したがって本件明細書や請求項では「海側」のように記載するが、これは河川の堤防においては「川側」「流水側」の意味である。
本発明の構造物は、海や河川の水際に沿って延長して設置する構造物であって、水面近くに設置する海側屋根1によって構成する。
なお、図面の実施例のように海側屋根1の後方、すなわち海側屋根1よりも陸側に陸側屋根2を設置することも可能である。
図1の実施例の場合、陸側屋根2は複数本の支柱22と、その支柱22群の上に架設した陸側屋根幕21とより構成する。
支柱22は、図1の実施例のように直接、地表面に設置する場合もあり、あるいは別に設けた基礎の上に設置する場合もある。
そして支柱22の上部にはほぼ水平に天井梁23を取り付け、T字型、L字型の構造材を構成する。
この支柱22と梁とを組み合わせたT字型、L字型の構造材を、平行に多数本を並べて設置し、平行に位置する梁の上に陸側屋根幕21を取り付ける。
この陸側屋根2は、海側屋根1のように移動することなく、その状態は固定しているから、陸側屋根幕21は可撓性の高いシートに限らず、それより可撓性の低い合成樹脂板、金属板、木製板などを採用することができる。
海側屋根1は複数個所の支点11と、起倒柱12と、梁13と、軒材14と、屋根幕15とより構成する。
支点11は、地表面、あるいは基礎柱のような不動点に設けた、水平方向のピンを備えた部材である。
起倒柱12は、この支点11に一端を起倒自在に取り付けた長手部材である。
この起倒柱12の上端には、海側に向けて張り出す梁13を固定する。
このように起倒柱12と梁13によって、T字型、あるいはL字型の部材を、梁13が海側に向く状態で、複数本を平行に設置する。
そして、梁13の海側の先端を軒材14で連結する。
したがって軒材14は、海岸線にほぼ並行状態で配置されることになる。
さらに梁13と梁13との間にはワイヤなどを配置する。
その結果、並行する梁13と、梁13間を連結した軒材14、およびワイヤによって、平面視でほぼ矩形の枠組みを形成することができる。
そして、軒材14と、梁13と梁13との間には、屋根幕15を敷設する。
この屋根幕15は、広い面部材であり、高潮などの水圧に耐えることができる程度の強度を備えた素材で構成する。
屋根幕15は、梁13の海側の先端まで敷設してあり、その位置に軒材14が配置してある。
そのために海側屋根1を海側へ傾倒して、梁13の先端を地表面まで降下させた場合に、屋根幕15によって海側へ向けた延長の長い壁を構成することができることができる。(図2)
屋根幕15は、テフロン(登録商標)幕、アラミド繊維、ゴム幕、超高分子ポリエチレン、 ポリアリレート、ポリエステルなどで製造することができる。
あるいは、塩ビ樹脂被覆ポリエステル繊維織物、塩ビ樹脂被覆ガラス繊維織物、防汚タイプの酸化チタン光触媒をコーティングしたもの、夜間発光タイプの蓄光顔料を塩ビ樹脂に練りこんだもの、高強力ポリエチレン繊維織物、ポリアリレート繊維織物、アラミド繊維織物、炭素繊維織物、異種材複合ポリステル繊維織物などを採用することもできる。
屋根幕15の海側には、止水性の高い素材で構成した止水副幕16を取り付ける。
この止水副幕16の取り付け範囲は、起倒柱12を倒して、梁13の先端が地表に達した状態で、高潮などの最高水位の位置よりも上までの範囲である。
すなわち、屋根幕15の海側は、ほぼ並行に止水副幕16を取り付けることで二重の幕が存在することになる。
そして、この止水副幕16の機能は、高潮の水位が上昇した場合に、止水副幕16で止水を、止水副幕16の陸側に位置する屋根幕15で水圧を受けるように構成してある。
起倒柱12を倒して屋根幕15を地上まで下ろした場合に、屋根幕15の先端の縁部と、地表面との接触線で漏水が生じてしまっては意味がない。
そこで、本発明では、梁13と隣接する梁13との間には、その先端付近に可撓性を備えた材料で構成した可撓枕材17を取り付ける。
可撓枕材としては、可撓性のある各種樹脂を用いることができる。
また、たとえば塩化ビニルのような可撓性樹脂で中空に形成した袋内に空気または水を封入した空気枕、水枕を使用することもできる。
この可撓枕材17の内部には重量の大きい鋼棒などを配置して、起倒柱12を倒した場合に、後述する収納溝31の内部に、自重で進入して行くように構成する。
一方地表面には、長く連続する収納溝3を凹設する。
この凹設位置は、起倒柱12を海側へ倒した際に、この収納溝3内に、梁13の先端付近に取り付けた可撓枕材17が進入可能な位置である。
この収納溝3の幅は、前記した可撓枕材17の直径、あるいは幅よりも多少小さい寸法で構成する。
収納溝3の設置延長は、海側屋根1の全延長と等しく、したがって海側屋根1の全延長に取り付けた可撓枕材17の全長を収納できる長さとして設置する。
したがって起倒柱12を海側へ倒した際に、この収納溝3内に、梁13の先端付近に取り付けた可撓枕材17が進入して、止水副幕16の下端縁からの浸水を阻止できるように構成してある。
さらに収納溝3よりも陸側の地表面には、梁支持溝3を凹設する。
この梁支持溝3に設置位置は、起倒柱12を海側へ倒した際に、起倒柱12から海側へ張り出した梁13の先端が地表面に接する位置である。
この梁支持溝3の平面形状は、梁13の先端の挿入を許すだけの形状である。
梁13の先端がこの梁支持溝3内に挿入されることによって、梁13はその先端を確実に支持される。
したがって、梁13と梁13の間に敷設した屋根幕15、止水副幕16に作用する大きな水圧に対抗することができることになる。
海側屋根1を起倒するための構造としては公知の多くの方法を採用することができる。
たとえば起倒柱12に牽引索の一端を取り付け、この牽引索の他端にウエイトを取り付け、中間に滑車を配置して昇降自在とした構成を採用することができる。
このウエイトの重量と、海側屋根1の重量とを均衡させておけば、わずかな外力を与えることによって軽快に海側屋根1を起倒させることができる。
あるいはウエイトとして水を充填した容器を使用すれば、容器内の水を抜くだけで重量を低減させて、海側屋根1を海側へ倒すことができる。
その他、公知の動力源を広く採用することができる。
高潮の来襲が想定できたら、海側屋根1を海側に傾け、その先端を地表面まで下降させる。
すると、海に向けて海側屋根1の屋根幕15を立設させた状態で設置することができる。
屋根幕15は引張強度の大きな材料で構成してあり、かつ屋根幕15を支持する梁13の先端は、梁支持溝3の内部に挿入されて先端の位置が確保されているから、高潮などの水圧や風雨や波浪による繰り返しの外力にも十分に耐えることができる。
一方、屋根幕15の海側には止水副幕16が取り付けてあり、この止水副幕16は止水性能の高い材料で構成してあるが、しかし大きな引張強度を備えている必要はない。
そのために、引張強度がさほど大きくはないが、止水性の高い安価な素材によって止水副幕16を構成することができる。
このように水圧に対する抵抗は屋根幕15で、止水性は止水副幕16でとその機能を分担したので、海水の陸への上陸を効率よく、確実に阻止することができる。
図5に示すように、陸上の岸壁に、海側に向けてほぼ水平に横溝17を凹設する。
一方、梁13の先端には、陸側へ向けて横長状の嵌合ブロック18を突設する。
横溝17と嵌合ブロック18との形状をほぼ同一にしておけば、梁13を地上に下ろした状態で、嵌合ブロック18は横溝17内に収納される状態となる。
すると、図6に示すように海側からの水圧が、両者の嵌合をより強固なものとするから、海側屋根1を下ろした場合に弱点になりやすい、地上との接合部の水密性を確実なものとすることができる。
図1に記載した実施例では起倒柱12はワイヤーによって、陸側の支柱2に係止しておく。
あるいは支点11に係止機構を持たせることもできる。
このような係止装置を備えて平常時に海側屋根の姿勢を固定しておく。
11:支点
12:起倒柱
13:梁
14:軒材
15:屋根幕
16:止水副幕
17:可撓枕材
2:陸側屋根
3:収納溝
Claims (4)
- 海や河川の水際に沿って延長して設置する構造物であって、
海側に向けて起倒する海側屋根によって構成し、
この屋根は、水圧に耐える強度を備えた素材で構成した屋根幕を敷設して構成し、
屋根幕の海側には、止水性の高い素材で構成した止水副幕を取り付け、
海側屋根を海側に倒した状態で、水位が上昇した場合には、
止水副幕で止水を、
止水副幕の陸側に位置する屋根幕で水圧を受けるように構成した、
高潮を阻止する構造物。
- 海や河川の水際に沿って延長して設置する構造物であって、
海側に向けて起倒する海側屋根によって構成し、
海側屋根は不動点に設置した支点と、
支点に一端を起倒自在に取り付けた起倒柱と、
各起倒柱の上端から、海側に向けて張り出した梁と、
梁の海側の間を連結する軒材とで構成し、
上記の構成の起倒柱を複数本、平行に配置し、
隣接する梁と梁との間に水圧に耐える強度を備えた素材で構成した屋根幕を敷設し、
屋根幕の海側には、止水性の高い素材で構成した止水副幕を取り付け、
起倒柱を倒して、梁の先端が地表に達した状態で、水位が上昇した場合には、
止水副幕で止水を、
止水副幕の陸側に位置する屋根幕で水圧を受けるように構成した、
高潮を阻止する構造物。
- 梁と隣接する梁との間には、その先端付近に、
可撓性を備えた材料で構成した可撓枕木を取り付け、
一方地表面には、収納溝を凹設し、
起倒柱を海側へ倒した際に、
この収納溝内に、梁の先端付近に取り付けた可撓枕木が進入して、
止水副幕の下端縁からの浸水を阻止できるように構成した、
請求項1、2のいずれか1項に記載の高潮を阻止する構造物。
- 起倒柱を海側へ倒した際に、
起倒柱から海側へ張り出した梁の先端が接する地表面には、
梁の先端の挿入を許す梁支持溝を凹設した、
請求項1、2、3のいずれか1項に記載の高潮を阻止する構造物。
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CN108468748A (zh) * | 2018-04-11 | 2018-08-31 | 天津大学 | 一种用于弧型闸门的空气弹簧隔振装置 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02240312A (ja) * | 1989-03-15 | 1990-09-25 | Nishida Marine Boiler Co Ltd | 可動堤防 |
JP2007262791A (ja) * | 2006-03-29 | 2007-10-11 | Tokyu Construction Co Ltd | 防潮施設 |
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2008
- 2008-04-17 JP JP2008107895A patent/JP5053917B2/ja active Active
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JPH02240312A (ja) * | 1989-03-15 | 1990-09-25 | Nishida Marine Boiler Co Ltd | 可動堤防 |
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