JP2009250926A - 磁気センサ、及び磁性粒子の検出方法 - Google Patents

磁気センサ、及び磁性粒子の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】磁性粒子を磁気抵抗効果素子の近傍へ集め、且つ磁気抵抗効果素子の安定性を向上させる。
【解決手段】磁気センサは、基板104と、磁気抵抗効果素子103と、磁界印加手段と、を備えている。磁気抵抗効果素子103は基板104の表面に設けられている。磁気抵抗効果素子103は多層膜から成り、その膜面は基板104の表面と平行になっている。磁界印加手段は、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群101と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群102と、を有している。第2の導線群を成す各導線は、第1の導線群の導線と交差する方向に沿っている。第1及び第2の導線群101,102は基板104中に設けられている。また各導線は、基板表面106に対して平行に設置されている。すなわち、導線は磁気抵抗効果素子103の膜面と平行に設置されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサ、特に溶液中に含まれる磁性粒子を検出するための磁気センサ、ならびに検出方法に関する。
定量的なイムノアッセイ(Immunoassay)として、放射免疫分析法(RIA:Radio ImmunoAssay、もしくはIRMA:ImmunoRadioMetric Assay)がよく知られている。
この方法では、放射性核種を、抗原あるいは抗体に固定し、標識物質として機能させる。そして、比放射能の測定結果から抗原を定量的に測定する。つまり、標識物質を検出することで、抗原などの標的物質(測定の対象となる物質)を間接的に測定する。
この方法は、検出感度が高いため、臨床診断において大きな貢献を果たしてきた。しかし、放射性核種の安全性の問題や、専用の施設や装置が必要であるという課題がある。
そこで、より簡易な方法として、例えば、蛍光物質、酵素、電気化学発光分子、磁性粒子などを標識物質として用いる方法が提案されている。
標識物質として蛍光物質、酵素、及び電気化学発光分子を用いた場合には、光学的な検出方法が用いられる。具体的には、光の吸収率や透過率、あるいは発光光量を計測することによって、標識物質の検出が行われる。
標識物質として酵素を用いる酵素免疫測定法(EIA:Enzyme ImmunoAssay)では、抗原−抗体反応の後に、酵素標識抗体を反応させる。そして、その酵素に対する基質を添加し、発色させる。そして、その吸光度により比色定量を行う。
一方、標識物質として磁性粒子を用いて、磁気センサで間接的に生体分子を測定するバイオセンサが注目されている。特に、磁界変化を高感度に検出することが可能な磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサが注目されている。
磁気抵抗効果素子は、巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto-Resistive effect)を発現する巨大磁気抵抗効果素子(以下、GMR素子と呼ぶ。)やスピントンネル磁気抵抗効果膜を有するトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子と呼ぶ。)が用いられる。
バイオセンサは、例えば生体分子のような標的物質を高感度かつ定量的に検出する事が求められる。このためには、生体分子の標識物質として用いられる磁性粒子を効果的に磁気抵抗効果素子の近傍に集めることや、磁気抵抗効果素子の近傍に集められた磁性粒子の磁気モーメントを定量的に再現性良く測定することが必要である。
非特許文献1には、磁性粒子を磁気抵抗効果素子の近傍に、効果的に集めるための磁気センサが開示されている。図6は、非特許文献1に記載の磁気センサの概略図である。
非特許文献1に記載の磁気センサは、磁気抵抗効果素子を備えたU字型の磁気センサ701と、U字型の導線702とを有する。この導線702に電流を流し、磁界を発生させることで、磁性粒子を引き寄せる。これにより、磁性粒子と標的物質との接触確率が高め、効率良く反応させることができる。
ところで、磁性粒子の磁気モーメントを定量的に再現性良く測定するためには、磁気抵抗効果素子を安定して動作させる事が必要である。磁気抵抗効果素子は、磁化の方向が固定化された固定層と、外部磁界に応じて磁化方向が変化する自由層と、を有する。固定層及び自由層は、薄膜強磁性体を含んでいる。
このような磁気抵抗効果素子は、ハードディスクの磁気ヘッドに広く用いられており、安定動作及び線形動作を確保するため、多くの工夫がなされている。その中でも、自由層の磁区構造及び磁化方向を制御することが重要である。
自由層が単磁区化されていない場合、自由層の磁気的なエネルギーを安定化させるために、磁区構造が形成される。この場合、磁壁が不連続に動くことに起因するノイズ(バルクハウゼンノイズ)が発生する。
したがって、磁気抵抗効果素子を安定動作させるためには、自由層を単磁区化させ、磁化方向を制御することが重要である。その制御方法として、自由層の端部に硬磁性体を配置する方法、自由層に形状磁気異方性(強い一軸磁気異方性。)を与える方法、自由層に反強磁性層を積層させる方法、及び自由層に一様な磁界を印加する方法が挙げられる。
特許文献1では、自由層に一様な磁界を印加する手段を備えた磁気センサが開示されている。特許文献1に記載の磁気センサは、磁気抵抗効果素子と導線とを有する。そして、導線に電流を流すことによって、磁気抵抗効果素子に膜面内の方向の磁界を印加する。これにより、自由層を安定化させることが可能である。
Hugo A. Ferreira, et al., IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 41, No. 10, p. 4140, October 2005. 特開2007−218700号公報
非特許文献1に記載の磁気センサでは、磁界強度が強い導線付近に磁性粒子が最も集まり易い。したがって、磁気センサの近傍に磁性粒子を集めるという目的において、十分とは言えない。
また、特許文献1に記載の磁気センサは、溶液中の磁性粒子を磁気抵抗効果素子の近傍に集める機能を有していない。そのため、溶液中の磁性粒子を検出するという目的を達成することは出来ない。
溶液中の磁性粒子を検出するという目的で、磁気抵抗効果素子を利用する場合、自由層の磁化の制御方法には、いくつかの制約が生じる。
例えば、自由層の端部に硬磁性体を配置した場合、磁性粒子を磁気抵抗効果素子の近傍に集めることを妨げる可能性がある。また、そのような磁気センサの作製は困難である。
自由層と交換結合する反強磁性体を積層させる場合、磁性粒子の検出感度が大幅に低下するという懸念が生じる。
形状磁気異方性を利用する場合では、磁気抵抗効果素子の作製は比較的容易である。しかし、大きな一軸磁気異方性を付与するためには、アスペクト比の大きな磁気抵抗効果素子が必要である。このような形状の磁気抵抗効果素子では、磁気センサ周囲の影響により、信号の線形性が劣化する可能性がある。
本発明の目的は上記背景技術の課題に鑑み、磁性粒子を磁気抵抗効果素子の近傍へ集めることが可能であり、安定に動作する磁気センサを提供することである。
また本発明の他の目的は、上記の磁気センサを用いた磁性粒子の検出方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明の磁気センサは、基板と、基板表面に形成された多層膜からなる磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界と前記膜面に平行な方向の磁界とを、前記磁気抵抗効果素子に印加するための複数の導線を有する磁界印加手段と、を備えている。
また本発明の磁性粒子の検出方法は、基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線とを有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む。
本発明の別の磁性粒子の検出方法は、基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群を有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、前記第1の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、前記奇数列の導線と、前記偶数列の導線とに、同じ方向の電流を流し、前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む。
さらに、本発明の別の磁性粒子の検出方法は、基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群及び該第1の導線群の導線と交差する方向に沿った複数の導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群を有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、前記第1の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、さらに第2の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、前記第1の導線群および/または前記第2の導線群の奇数列の導線と偶数列の導線とに、同じ方向の電流を流し、前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む。
本発明によれば、磁性粒子を磁気抵抗効果素子近傍へ集め、安定に動作する磁気センサを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の磁気センサは、例えば液体のような流動する溶液中の磁性粒子の検出に、好適に用いられる。
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る磁気センサの概略的な平面図である。図1(b)は図1(a)の1B−1B線に沿った断面図であり、図1(c)は図1(a)の1C−1C線に沿った断面図である。ただし図1(a)では、基板は示されていない。
本実施形態に係る磁気センサは、基板104と、磁気抵抗効果素子103と、磁界印加手段と、を備えている。磁気抵抗効果素子103は基板104の表面に設けられている。磁気抵抗効果素子103は多層膜から成り、その膜面は基板104の表面と平行になっている。
磁界印加手段は、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群101と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群102と、を有している。第2の導線群を成す各導線は、第1の導線群の導線と交差する方向に沿っている。各導線は、同形状であることが好ましい。
第1及び第2の導線群101,102は基板104中に設けられている。第1の導線群101は第2の導線群102よりも基板表面106に近い方に設けられている。第1の導線群101と第2の導線群102とは接触せず、互いに絶縁されている。
図1(a)を参照すると、第1の導線群101の導線は、第2の導線群102の導線と直交しているが、直交ではなく、交差していれば良い。ただし、両導線群101,102のなす角は、好ましくは60度以上90度以下、より好ましくは80度以上90度以下である。これは、磁気抵抗効果素子103の形状に制限が課せられることを防ぐためである。
また各導線は、基板表面106に対して平行に設置されている。すなわち、導線は磁気抵抗効果素子103の膜面と平行に設置されている。
導線としては、主に銅(Cu)やアルミニウム(Al)等が用いられる。その他、非磁性の導電性金属を用いても良い。
磁気抵抗効果素子103は格子状に配置されている。それぞれの磁気抵抗効果素子103の中心部は、第1の導線群101のうちの、隣接する2本の導線からの距離が等しくなっている。同様に、磁気抵抗効果素子103の中心部は、第2の導線群102のうちの、隣接する2本の導線からの距離も等しくなっている。
つまり、基板表面106に射影して見た場合、射影面は、2つの導線群101,102によって、格子状に分割されている。各格子の形状は、平行四辺形、長方形、または正方形である。そして、磁気抵抗効果素子103の中心部は、それぞれの格子の重心に位置している。
磁気抵抗効果素子103は、磁化方向が固定された固定層(ピンド層)と、外部磁界に応じて磁化方向が変化する自由層(フリー層)と、を有する。固定層及び自由層は磁性体の薄膜を含んでいる。磁気抵抗効果素子103としては、GMR素子、もしくはTMR素子を用いることが好ましいが、これらの素子に限定されない。
GMR素子は固定層と自由層との間に薄膜の非磁性層が挿入された層構成であり、TMR素子は固定層と自由層との間に酸化物絶縁層が挿入された層構成である。
次に、磁気抵抗効果素子103の一例として、TMR素子の層構成について表1を参照して説明する。TMR素子は平坦な基板104の表面に積層されてなる。表1では、TMR素子の層構成が、基板104に積層される順番に、下から上へと記載されている。
Figure 2009250926
TMR素子は、下地層、反強磁性層、固定層、非磁性層、及び自由層が順次積層されて成る。下地層は、Ta膜、Cu膜、及びTa膜から成る多層膜である。反強磁性層は、PtMn膜からなる。
固定層はCoFe膜、Ru膜、及びCoFeB膜の積層膜である。反強磁性層は固定層と交換結合しており、固定層の磁化方向を固定している。そのため、反強磁性層はピンニング層とも呼ばれる。
非磁性層は酸化絶縁体であるMgO膜から成る。自由層はCoFeB膜からなり、外部磁界に応じて磁化方向が変化する。
また自由層には、保護層としてRu膜が積層されている。保護層としては、Ru膜の代わりにPt膜を用いることができる。保護層は、自由層などを保護するために設けられている。
さらに、保護層には電極層としてAu膜が積層されている。電極層には、磁気抵抗効果素子に検出電流を流すための導線が配されている。
ここで説明したTMR素子の層構成は一例であり、異なる種々の層構成から成る磁気抵抗効果素子を用いることが出来る。
磁気抵抗効果素子103の自由層の磁化が固定層の磁化と反平行であるとき、磁気抵抗効果素子103の抵抗は極大となる。一方、自由層の磁化が固定層の磁化と平行であるとき、磁気抵抗効果素子103の抵抗は極小となる。
自由層の磁化は外部の磁界に応じて変化するため、磁気抵抗効果素子103は外部磁界に応じて、抵抗値が変化する。この抵抗値の変化から磁界の大きさを検出することができる。
磁気抵抗効果素子103のノイズ(バルクハウゼンノイズ)を低減し、検出信号の安定化を図るには、自由層に、膜面に平行な磁界(以下、面内磁界と呼ぶ。)を印加すれば良い。本発明の磁気センサは、磁気センサが有する導線に電流を流すことによって、このような磁界を印加する。
さらに磁気センサは、導線中を流れる電流の方向や大きさを制御する制御部を有していることが望ましい。制御部によって電流の方向を制御することで、磁気センサは、磁気抵抗効果素子103の膜面に垂直な磁界(以下、垂直磁界と呼ぶ。)を印加する機能も有する。
磁気センサは、磁性粒子を含んだ液体と接触した状態で垂直磁界を印加することで、磁性粒子を磁気抵抗効果素子103の表面付近に集めることができる。これにより、磁気センサの検出精度が向上する。ここで、第1及び第2の導線群101,102は基板104中に形成されているため、磁気粒子が導線の近傍に集まることは無い。
次に、上述の垂直磁界に関して、詳細に説明する。まず、第1の導線群101を成す奇数列の導線に、同じ大きさかつ同じ方向の電流を流す。さらに、偶数列の導線に、奇数列の導線と同じ大きさ、かつ逆方向の電流を流す。
これにより、磁気抵抗効果素子103の表面、特に磁気抵抗効果素子103の中心部には、垂直磁界が印加される。
磁性粒子を効果的に集めるためには、磁気抵抗効果素子103の表面に、周囲の磁界よりも強い磁界を印加する必要がある。そのため、図2に示すように、隣接する導線間の距離をp、導線からセンサ表面401(磁気抵抗効果素子の表面を含む平面。)までの距離をdとすると、「d≧0.35p」なる関係式が満たされることが好ましい。
距離dが大きくなるにつれて、センサ表面401における磁界強度の勾配が大きくなる。したがって、センサ表面401に磁性粒子が集まり易くなる。しかし、距離dが大きくなるにつれてセンサ表面401の磁界強度自体は減少するため、距離dは大き過ぎないことが好ましい。磁界強度は、導線に流れる電流の大きさによって、容易に制御することができる。
次に、上述の面内磁界に関して、詳細に説明する。まず、第1の導線群101を成す導線に、同じ大きさかつ同じ方向の電流を流す。このとき、第2の導線群102には電流を流さない。
これにより、磁気抵抗効果素子103の表面に、膜面に平行な方向の面内磁界を発生させることができる。具体的には、磁気抵抗効果素子103の中心部分を通り、電流を流している導線に平行な直線上では、膜面に垂直な磁界成分は0となる。この面内磁界が印加された状態で、磁性粒子からの浮遊磁界を検出すれば良い。
面内磁界は、磁界が印加されていない状態における自由層の磁化方向であることが望ましい。これにより自由層が安定化し、出力信号のノイズが低減される。印加する面内磁界の強度は、電流の大きさによって容易に制御することができる。
磁気抵抗効果素子103の中心部から離れるに従って、膜面に垂直な方向の磁界成分が大きくなる。しかし、磁気抵抗効果素子103は膜面に垂直な方向の磁界に対して鈍感であり、抵抗値の変化を示さない。そのため、本発明の磁気センサを構築するうえで、問題にはならない。
一方、面内方向の磁界成分の大きさは、磁気抵抗効果素子103の中心部から離れるに従って変化する。しかし、その変化量、特に中心部近傍における変化量は小さいため、問題にはならない。また、この磁界強度の変化による出力信号への影響を低減するために、磁気抵抗効果素子103を十分小さくしても良い。
磁気抵抗効果素子103は、複数の第1の導線群101の導線と垂直な方向の幅が小さいことが好ましい。これにより、磁気抵抗効果素子103の表面に概ね一様な面内磁界を印加することができる。
以上、第1の導線群101を用いて、面内磁界を印加することについて説明したが、第2の導線群102を用いて面内磁界を印加することもできる。さらには、第1及び第2の導線群101,102の両方を用いて面内磁界を印加することも可能である。
自由層を安定化させるためには、自由層に1600〜4000A/m(20〜50Oe)の一軸磁気異方性を与えることが好ましい。一軸磁気異方性は、特に2000〜2800A/m(25〜35Oe)であることがより好ましい。
両導線群101,102を成す導線の幅は十分太いことが好ましい。これにより、導線の許容電流値が増大し、強い磁界を発生させる事が可能となる。
ただし、複数の磁気抵抗効果素子103を集積させた磁気センサの場合、集積度を向上させるためには、導線の幅に制限が課せられる。つまり、センサ表面401に平行な面内における導線の幅を小さくする必要がある。この場合、センサ表面401に垂直な方向の導線の幅を大きくすれば良い。これにより、磁気抵抗効果素子の集積度を向上させるとともに、強い磁界を発生させることができる。
面内磁界が強すぎる場合、磁気抵抗効果素子103の出力信号に悪影響を及ぼす。磁気抵抗効果素子103の磁化が、線形に変化する範囲で利用される。
また、磁性粒子からの浮遊磁界を磁気抵抗効果素子103で検出する場合、磁気抵抗効果素子103の表面において、浮遊磁界の強度が面内磁界の強度よりも充分大きいことが必要である。
第1の導線群101を成す奇数列の導線の端部は、並列に結線されていることが好ましい。同様に、第1の導線群101を成す偶数列の導線の端部は、並列に結線されていることが好ましい。これにより、奇数列または偶数列の導線に、同じ方向かつ同じ大きさの電流を、容易に流すことができる。また、奇数列と偶数列の導線の電流方向を制御するだけで良いため、磁界の制御が容易となる。
特に、センサ表面401に導線の間隔と同じ周期で、所望の磁界を印加する事ができる。そのため、複数の磁気抵抗効果素子を備えた磁気センサに対して、好適な形態となる。
同様に、第2の導線群102を成す奇数列の導線の端部、及び偶数列の導線の端部が、それぞれ並列に結線されていることが好ましい。このようにして、複数の磁気抵抗効果素子103に印加される磁界を、同強度で、同時に制御することができる。
本実施形態の磁気センサは、各々の導線に流す電流の方向及び大きさを制御するための制御手段をさらに有することが好ましい。また、磁界の検出時において、磁気抵抗効果素子103の膜面に垂直な方向の一様磁界を、磁気抵抗効果素子に印加するための別の磁界印加手段をさらに有していてもよい。
以下、第1の実施形態に係る磁気センサの作製方法について簡単に説明する。まず、基板を用意し、基板に導線群を形成する。導線群の形成は、一般的な半導体プロセスを用いる事ができる。また、ナノインプリント法を用いて、導線群を一括して形成することも好ましい。導線群の形成方法について制限はなく、その他の公知の方法を利用しても良い。
次に、導線群が形成された基板に、絶縁層を積層する。その後、絶縁層の表面を平坦化する。平坦化処理は、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって、実施することが出来る。
次に、絶縁層が形成された基板表面に、磁気抵抗効果素子を積層する。磁気抵抗効果素子は非常に薄い多層膜で構成されるため、基板表面の平坦性は素子特性に影響を及ぼす。そのため、磁気抵抗効果素子を積層する前に、上記の平坦化処理を実施することが好ましい。
本発明の磁気センサは、特に液体中の磁性粒子を好適に検出することができる。磁性粒子は磁気センサによって検出できれば良く、その観点から磁性粒子の大きさに著しい制約は無い。
また磁気センサは、磁気抵抗効果素子の近傍に磁性粒子を固定する機構を有していることが好ましい。そのためには、磁性粒子と特異的に結合する物質を磁気抵抗効果素子の表面に形成すれば良い。これにより、磁気抵抗効果素子の近傍に集めた磁性粒子が、拡散することを防ぐことが出来る。
磁気センサは、磁性粒子を含む溶液と接触することができれば、どのような状態で保持されていても良い。例えば、磁気センサは、容器の底面や側面に保持されていても良い。また、溶液が流れる流路中に保持されていても良い。
(磁気センサの応用例)
次に、第1の実施形態の磁気センサの応用例について説明する。本応用例では、検体溶液中に含まれる標的物質(測定対象となる物質)の有無や量を測定する。標的物質は、標的物質に固定された磁性粒子を検出することによって、間接的に測定される。
図3は、磁気センサが有する磁気抵抗効果素子103の表面近傍を拡大した概略図である。図では、磁気抵抗効果素子103の層構成は簡略化して示されている。
磁気抵抗効果素子103は、外部磁化に応じて磁化方向が変化する自由層205と、磁化方向が固定された固定層203と、自由層205と固定層203とに挟まれた非磁性層204と、を有する。さらに、磁気抵抗効果素子103の表面には、電極層207として、Au膜が設けられている。
磁気抵抗効果素子103の表面(電極層207の表面)には、標的物質301と特異的に結合する第1の捕捉体302が固定されている。
標的物質の測定の工程において、第1の捕捉体302に、検体溶液中の標的物質301が捕捉される。
第1の捕捉体302は、標的物質301の種類に応じて選択できる。特異的に結合する一対の物質のうちの一方が標的物質301である場合、他方を第1の捕捉体302として用いることができる。
一対の物質の組み合わせとしては、抗原/抗体、相補的DNA対、リセプター/リガンド、及び酵素/基質などが挙げられる。
抗原を測定する場合、捕捉体として抗体を用い、特異的に反応する抗原・抗体反応を利用することができる。このとき、磁気センサは、免疫検査用のセンサデバイスとして機能する。
標的物質301としては、生体物質(例えば、タンパク質、核酸、糖鎖、脂質等)、アレルゲン、バクテリア、またはウイルス等が挙げられる。
標的物質301を測定するために、標的物質301には磁性粒子304を結合させておく。図3に示すように磁性粒子304は、磁性粒子304に固定された第2の捕捉体303を介して間接的に、標的物質301と結合している。二次補足体としては、標的物質と特異的に結合する物質が用いられる。なお、磁性粒子304は標的物質301に直接結合していても良い。
図3のように、標的物質301と磁性粒子304とを結合させた状態で、磁性粒子304を検出することにより、標的物質301を測定することが出来る。
磁性粒子304としては、例えばB/F分離(抗原−抗体結合型と遊離型の分離)で用いられる一般的な粒子が使用可能である。そのような磁性粒子として、数十μmから数十nmまでの様々な粒径のものがある。
また、検体溶液中で磁性粒子304が凝集することを低減するために、磁性粒子304は超常磁性体である事が好ましい。超常磁性体は、磁界を印加しない状態のとき、磁化がゼロである。また、磁界を印加すると、磁界の方向に磁化する性質を持つ。
このような超常磁性体として、例えば、酸化鉄や、コバルトとプラチナの合金などが挙げられる。
導線を有する磁気センサでは、導線に流れる電流によって、導線が発熱する。生体物質などを測定する場合、検体溶液の温度上昇は好ましく無い。第1の実施形態の磁気センサでは、導線が基板104の内部に設けられているため、導線が露出した磁気センサ(例えば、非特許文献1参照。)と比較して、温度上昇が抑制される。
さらに、温度上昇をより効果的に抑制するために、基板104の裏面に、基板104を冷却する冷却装置を設置しても良い。冷却装置は、公知の様々なものが利用できる。
次に、上記の磁気センサを用いた検出方法について説明する。
まず、準備工程として、上記の磁気センサを準備し、検体溶液を磁気センサに接触させる。このとき、磁気抵抗効果素子103の表面には、予め、標的物質301と特異的に結合する第1の捕捉体302を吸着させておく。そして、検体溶液中の標的物質301に、第2の捕捉体303を介して磁性粒子304を結合させる。
また、予め、第2の捕捉体303を介して、磁性粒子304と標的物質301とを結合させた検体溶液を準備し、当該検体溶液を磁気センサに接触させても良い。
次に、垂直磁界印加工程として、第1及び第2の導線群101,102に電流を流し、磁気抵抗効果素子103に垂直磁界を印加する。具体的には、第1の導線群101を成す導線の奇数列と偶数列の導線に、同強度かつ逆方向の電流を印加する。また同様に、第2の導線群102の奇数列と偶数列の導線に、同強度かつ逆方向の電流を印加する。
このとき、正方格子状に配置された磁気抵抗効果素子のうちの、市松模様状に配置された磁気抵抗効果素子(図4(a)において、破線の丸で示された磁気抵抗効果素子。)に、垂直磁界が生じる。これにより、磁気抵抗効果素子の表面に磁性粒子を集めることができる。
そして、図3に示すように、標的物質301が第1の捕捉体302に捕捉される。磁性粒子は第2の捕捉体303を介して標的物質301と結合されているため、磁性粒子304は磁気抵抗効果素子103の表面近傍に固定される。
その後、必要に応じて、第1の導線群101もしくは第2の導線群102に流す電流方向を反転させる。これにより、先ほどとは別の磁気抵抗効果素子103(図4(b)において、破線の丸で示された磁気抵抗効果素子。)に、垂直磁界が生じる。
この垂直磁界により、未結合の磁性粒子304が当該磁気抵抗効果素子の近傍に集められる。ここで、未結合の磁性粒子のうち、標的物質と結合している磁性粒子は、標的物質が第1の捕捉体302と特異的に結合することによって、磁気抵抗効果素子103の近傍に固定される。
さらに、必要に応じて、第1の導線群101、または第2の導線群102に流す電流方向を繰り返し反転させても良い。このような繰り返しは何度行われても良い。
これにより、標的物質301と結合した磁性粒子304は、より効果的に磁気抵抗効果素子103の近傍に固定される。この工程の後、未結合の不要な磁性粒子は、標的物質に固定されていない磁性粒子と見なされるため、検出領域から除去する。
次に、面内磁界印加工程として、面内磁界を印加する。具体的には、第1の導線群101に同じ大きさ、かつ同方向の電流を印加する。これにより、磁気抵抗効果素子103に、面内の磁界を印加され、自由層が安定化される。
本工程において、第1の導線群101の代わりに、第2の導線群102に同じ大きさ、かつ同方向の電流を印加しても良い。さらに、第1の導線群101と第2の導線群102の両方に、それぞれ同じ大きさ、かつ同方向の電流を印加しても良い。
最後に、検出工程として、磁性粒子からの浮遊磁界を検出する。具体的には、面内磁界印加工程中に、磁気抵抗効果素子103に検出電流を流し、その抵抗値から磁界強度を検出する。
本工程において、別の磁界印加手段によって、磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の一様磁界を、磁気抵抗効果素子103に印加することが望ましい。印加磁界は交流(DC)磁界でも直流(AC)磁界でも構わない。
この外部磁界によって、磁気粒子の磁化は、外部磁界の方向を向く。このとき、磁気粒子からの浮遊磁界によって、磁気抵抗効果素子の表面に、膜面内の磁界が印加される。この磁界の強度に応じて、自由層の磁化方向が変化し、磁性粒子の磁気モーメントの大きさに対応する出力信号が検出される。
この出力信号から、間接的に標的物質の有無または含有濃度を測定することができる。
必要に応じて、サンドイッチ免疫測定法などの定性分析や定量分析において行われる抽出処理、精製処理、希釈処理などの前処理を行なってもよい。また、検出工程の直前に、磁気抵抗効果素子の表面を洗浄する工程を行っても良い。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサについて説明する。
図5(a)は、本発明の第2の実施形態に係る磁気センサの概略的な平面図である。図5(b)は図5(a)の5B−5B線に沿った断面図であり、図5(c)に5C−5C線に沿った断面図である。ただし図5(a)では、基板は示されていない。
本実施形態に係る磁気センサは、基板604と、磁気抵抗効果素子603と、磁界印加手段と、を備えている。磁気抵抗効果素子603は基板表面606に設けられている。磁気抵抗効果素子603は多層膜から成り、その膜面は基板表面606と平行になっている。磁気抵抗効果素子603としては、第1の実施形態と同様のものを用いることが出来る。
磁界印加手段は、複数の導線605を互いに平行に配置してなる第1の導線群601を有している。第1の導線群601は基板604中に設けられている。それぞれの導線605は、同形状であり、基板表面606から同じ深さに位置する。
導線605は、基板表面606に垂直な面内において、矩形波状に形成されている。この矩形波状の導線における基板表面606に近い線分領域Lは、磁気抵抗効果素子の基板表面606と平行な方向の幅Qよりも長い。
磁気抵抗効果素子603は隣接する2本の導線605から等しい距離に設けられている。さらに上記の線分領域Lが、磁気抵抗効果素子603と最近接するように配置される。この結果、磁気抵抗効果素子603の表面に、局所的に強い磁界を印加することが可能となる。
導線605の種類、及び作成方法等は、第1の実施形態で説明したものと同様である。また、第1の導線群601を成す奇数列の導線605の端部、及び偶数列の導線605の端部を、それぞれ並列に結線しても良い。これにより、同強度及び同方向の電流を、容易に印加できる。
第1の実施形態と同様に、第1の導線群601は、磁気抵抗効果素子603に垂直磁界と面内磁界とを印加する。
垂直磁界は、第1の導線群601の奇数列と偶数列の導線605に同強度、かつ逆方向の電流を流すことで印加される。これにより、磁気抵抗効果素子603の表面、特に磁気抵抗効果素子603の中心部に垂直磁界が発生する。
本実施形態では、矩形波状の導線605により、磁気抵抗効果素子603の表面に、周囲よりも十分強い磁界を印加することができる。これにより、磁気抵抗効果素子の近傍に、磁性粒子を効果的に集めることが出来る。
ここで、第1の実施形態と同様に、センサ表面から導線605までの距離をdとし、隣接する導線605間の距離をpとすると、d≧0.35pなる関係式が満たされることが好ましい。これにより磁気抵抗効果素子603の近傍に、磁性粒子をさらに効果的に集めることができる。
また、第1の実施形態と同様に、全ての導線605に同強度及び同方向の電流を印加することにより、磁気抵抗効果素子603に面内磁界を印加することができる。この面内磁界により、磁気抵抗効果素子の自由層が安定化される。
次に、第2の実施形態に係る磁気センサを用いた磁性粒子の検出方法について説明する。検出方法は、第1の実施形態で述べたものとほぼ同様である。
検出方法は、準備工程と、垂直磁界印加工程と、面内磁界印加工程と、検出工程と、を含んでいる。準備工程及び検出工程は、第1の実施形態と同様に実施される。
垂直磁界印加工程では、第1の導線群601に電流を流し、磁気抵抗効果素子603に垂直磁界を印加する。具体的には、第1の導線群601を成す奇数列と偶数列の導線605に、同強度かつ逆方向の電流を印加する。これにより、磁性粒子は、磁気抵抗効果素子603の近傍に集まる。
面内磁界印加工程では、面内磁界を印加する。具体的には、第1の導線群601に同じ大きさ、かつ同方向の電流を印加する。これにより、磁気抵抗効果素子603に、面内の磁界が印加され、自由層が安定化する。
(第1の実施例)
本実施例は、第1の実施形態の磁気センサの詳細な実施例である。まず、基板104に、25本の導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群102を作製する。導線幅は3μm、導線の高さは2μmとする。また導線間のピッチは10μmとした。
後に形成する第1の導線群101と、第2の導線群102とを互いに絶縁させるために、絶縁層としてAl23層を積層する。その後、その表面を平坦化した。この平坦化した表面に、25本の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群101を作製した。導線幅は3μm、導線の高さは2μmとする。導線間のピッチは10μmである。
第1の導線群101の導線と、第2の導線群102の導線とは、垂直になっている。また、第1の導線群101を成す奇数列の導線の端部、及び偶数列の導線の端部を、それぞれ並列に結線する。同様に、第2の導線群102を成す奇数列の導線の端部、及び偶数列の導線の端部を、それぞれ並列に結線する。
第1及び第2の導線群101,102の作成後、絶縁層としてAl23層を成膜し、平坦化処理を行った。第1の導線群101から基板表面106までの距離、即ち絶縁層の厚さを4μmとした。
この後、基板104表面にTMR素子を成膜した。TMR素子は、第1の実施形態で述べた層構成(表1参照。)のものを用いた。TMR素子形成後に4μm角に加工し、検出電流を流すための導線を作製する。
磁気抵抗効果素子103は、縦横10個ずつ計100個作製し、導線群101,102の中央部分に配置する。
磁気抵抗効果素子103の作成後、電極層にアビジン分子を吸着させる。この磁気センサを用いて、標的物質であるビオチンを測定した。以下、測定結果について述べる。
まず準備工程として、標的物質であるビオチンが固定化された磁性粒子を含む検体溶液を用意し、磁気センサの基板表面106に、この検体溶液を接触させる。
本実施例では、準備工程として、既知のビオチン濃度の検体溶液を、5種類用意する。そして、検体溶液を磁気センサに接触させる。
次に、垂直磁界印加工程として、第2の導線群102を成す奇数列と遇数列の導線に、100mAの電流を、互いに逆方向に印加する。この状態を維持して、第1の導線群101を成す奇数列と遇数列の導線に100mAの電流を、互いに逆方向に印加する。
更に、第1の導線群101の電流方向を反転させる。電流を反転させる工程を少なくとも1回行い、磁性粒子に結合したビオチンを、アビジンと特異的に結合させる。この後、余剰の未結合磁性粒子を洗浄する。
次に、面内磁界印加工程として、導線群101を成す全ての導線に、同方向の電流を印加する。これにより、磁気抵抗効果素子103に2000A/m(25Oe)の面内磁界を印加する。
最後に検出工程として、別の磁界印加手段により、磁気抵抗効果素子103の膜面に垂直な方向の一様なDC磁界を印加して、信号を検出する。80kA/m(1kOe)のDC磁界において検出信号を確認すると、既知のビオチン濃度と同様の関係を有する線形変化を示す信号が得られた。
(第2の実施例)
次に、第2の実施形態の磁気センサの具体的な実施例について説明する。まず、基板604に、25本の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群601を作製する。導線の幅は3μm、導線の高さは1μmとした。また導線間のピッチは10μmである。この導線の線分領域L(図5(c)参照。)の長さを4.5μmとした。
導線群601の形成後、絶縁層としてAl23を積層して、平坦化処理を行った。導線群601から基板表面606までの距離、即ち絶縁層の厚さを4μmとした。また、導線群601を成す奇数列の導線の端部を結線した。同様に、偶数列の導線の端部を結線した。
この基板表面606に、TMR素子を積層する。TMR素子は、第1の実施形態と同様のもの(表1参照。)が用いられる。TMR素子を4μm角に加工し、検出電流を流すための導線を作製する。
磁気抵抗効果素子603は、縦横10個ずつ計100個作製し、導線群601の中央部分に配置する。また、磁気抵抗効果素子603は隣接する導線の上記線分領域Lから等しい距離に作製される。さらに磁気抵抗効果素子603は、導線の線分領域Lと最近接するように配置される。
磁気抵抗効果素子603の作成後、電極層にアビジン分子を固定させる。この磁気センサを用いて標的物質であるビオチンを測定する。
まず、準備工程として、標的物質であるビオチンが固定された磁性粒子を含む検体溶液を、磁気センサに接触させる。本実施例では、既知の5種類のビオチン濃度からなる検体溶液を準備して、それぞれ独立に測定を実施した。
次に、垂直磁界印加工程として、導線群601を成す奇数列と遇数列の導線に、100mAの電流を互いに逆方向に印加する。これにより、磁性粒子に結合されているビオチンが、電極層のアビジンと特異的に結合される。本工程の後、余剰の未結合磁性粒子を洗浄する。
次に、垂直磁界印加工程として、導線群601の全ての導線に、同方向の電流を印加する。これにより、磁気抵抗効果素子603に2000A/m(25Oe)の面内磁界を印加する。
最後に、検出工程として、膜面に垂直な方向に一様なDC磁界を印加して、出力信号を検出する。ここで、DC磁界の強度を80kA/m(1kOe)とした。すると、既知のビオチン濃度とほぼ同様の関係を有する線形変化を示す信号が得られた。
(第1の比較例)
次に、第1の比較例として、面内磁界印加工程を実施しない検出方法を行った。第1の比較例で用いられる磁気センサは、第2の実施例と同じである。そして、第2の実施例と同様に標的物質であるビオチンを検出した。
標的物質であるビオチンが固定された磁性粒子を含む検体溶液を準備し、磁気センサにこの検体溶液を接触させる。ここで、第2の実施例と同様に、既知のビオチン濃度からなる検体溶液を5種類準備した。
検体溶液を導入後、導線群601の奇数列と遇数列の導線に100mAの電流を、互いに逆方向に印加する。これにより、磁性粒子に結合したビオチンが、電極層のアビジンと特異的に結合する。この後、余剰の未結合磁性粒子を洗浄する。
最後に、別の磁界印加手段により、一様なDC外部磁界を、膜面に垂直な方向に印加して、出力信号を検出する。外部磁界の強度を80kA/m(1kOe)として、検出信号を確認した。この場合、線形変化を示す信号は得られなかった。
これは、面内磁界印加工程を実施しなかったことで、磁気抵抗効果素子603の自由層が安定化されず、大きなノイズを含んだ信号が出力されたためである。したがって、ビオチン濃度を定量的に測定することはできない。
以上、本発明の望ましい実施形態及び実施例について提示し、詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
例えば、第1の実施形態における磁気センサは2種類の導線群を有しているが、導線群が1種類であっても良い。この場合にも、磁気抵抗効果素子に垂直磁界と面内磁界とを印加することができる。
また、導線群を成す複数の導線は平行に配置されているが、導線の配置はこれに限定されない。磁気抵抗効果素子の表面に、面内方向と面内方向の磁界を印加することができれば、導線の配置はどのようなものでも良い。
上記実施例では、磁気粒子を標識物質として、他の物質を測定する方法について詳細に述べたが、測定対象の物質が磁気粒子自体であっても良い。
(a)は第1の実施形態に係る磁気センサの概略的な平面図であり、(b)は(a)の1B−1B線に沿った磁気センサの断面図であり、(c)は(a)の1C−1C線に沿った磁気センサの断面図である。 第1の導線群と磁気抵抗効果素子との配置を説明する概略図。 磁気センサが有する磁気抵抗効果素子の表面を示す概略図。 (a)及び(b)は、導線群が発する磁界分布を説明するための概念図である。 (a)は第2の実施形態に係る磁気センサの概略的な平面図であり、(b)は(a)の5B−5B線に沿った磁気センサの断面図であり、(c)は(a)の5C−5C線に沿った磁気センサの断面図である。 非特許文献1に記載の磁気センサの概略図。
符号の説明
101、601 第1の導線群
102 第2の導線群
103、603 磁気抵抗効果素子
104、604 基板
106、606 基板表面
401 センサ表面
605 導線

Claims (16)

  1. 基板と、
    基板表面に形成された多層膜からなる磁気抵抗効果素子と、
    前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界と前記膜面に平行な方向の磁界とを、前記磁気抵抗効果素子に印加するための複数の導線を有する磁界印加手段と、を備えた、磁気センサ。
  2. 前記磁気抵抗効果素子は、外部磁界に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化方向が固定された固定層とを有し、
    前記磁界印加手段は、前記膜面に垂直な方向の磁界と、前記膜面に平行かつ磁界が無い状態における前記自由層の磁化方向の磁界とを、前記磁気抵抗効果素子に印加する、請求項1に記載の磁気センサ。
  3. 前記磁気抵抗効果素子は、前記膜面が前記基板表面と平行になるように設けられており、
    前記導線は前記基板表面に平行に設けられている、請求項1または2に記載の磁気センサ。
  4. 前記磁界印加手段は、複数の前記導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群を有する、請求項3に記載の磁気センサ。
  5. 前記磁界印加手段は、複数の前記導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群と、前記第1の導線群の導線と交差する方向に沿った複数の前記導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群と、
    を有している、請求項3に記載の磁気センサ。
  6. 前記磁気抵抗効果素子は、前記導線群のうちの、隣接する2つの前記導線から等しい距離に配置されている、請求項4または5に記載の磁気センサ。
  7. 前記導線は、前記基板に垂直な面内において矩形波状に形成され、
    前記矩形波状の導線における前記基板表面に近い線分領域と最近接するように、前記磁気抵抗効果素子が設けられている、請求項3または4に記載の磁気センサ。
  8. 前記矩形波状の導線における前記基板表面に近い前記線分領域の長さが、前記磁気抵抗効果素子の、前記基板表面と平行な方向の幅よりも長い、請求項7に記載の磁気センサ。
  9. 前記導線群を成す奇数列の導線の端部、及び前記導線群を成す偶数列の導線の端部が、それぞれ並列に結線されている、請求項4から8のいずれか1項に記載の磁気センサ。
  10. 前記膜面に垂直な方向の一様磁界を、前記磁気抵抗効果素子に印加するための別の磁界印加手段をさらに有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の磁気センサ。
  11. 前記導線に流す電流を制御する制御部をさらに有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の磁気センサ。
  12. 基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線とを有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、
    前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、
    前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、
    前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む、磁性粒子の検出方法。
  13. 基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群を有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、
    前記第1の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、
    前記奇数列の導線と、前記偶数列の導線とに、同じ方向の電流を流し、前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、
    前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む、磁性粒子の検出方法。
  14. 基板と、基板表面に形成された多層膜から成る磁気抵抗効果素子と、複数の導線を互いに平行に配置してなる第1の導線群及び該第1の導線群の導線と交差する方向に沿った複数の導線を互いに平行に配置してなる第2の導線群を有する磁気センサと、磁性粒子を含む溶液と、を準備する準備工程と、
    前記第1の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、さらに第2の導線群を成す奇数列の導線と偶数列の導線とに、互いに逆方向の電流を流し、前記磁気抵抗効果素子の膜面に垂直な方向の磁界を印加する垂直磁界印加工程と、
    前記第1の導線群および/または前記第2の導線群の奇数列の導線と偶数列の導線とに、同じ方向の電流を流し、前記膜面に平行な方向の磁界を印加する面内磁界印加工程と、
    前記面内磁界印加工程中に、前記磁気抵抗効果素子によって、前記磁性粒子を検出する検出工程と、を含む、磁性粒子の検出方法。
  15. 前記垂直磁界印加工程において、
    さらに前記第1の導線群または前記第2の導線群の電流方向の反転を、少なくとも1回行う、請求項14に記載の磁性粒子の検出方法。
  16. 前記検出工程において、前記磁気抵抗効果素子に、前記膜面に垂直な方向の一様な外部磁界をさらに印加する、請求項12から15のいずれか1項に記載の磁性粒子の検出方法。
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