JP2009235245A - 熱可塑性エラストマー組成物及び成形部材 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及び成形部材 Download PDF

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Abstract

【課題】損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】(A)極限粘度[η]が4.3〜6.8dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、(B)極限粘度[η]が1.8〜2.3dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(E)軟化剤を所定量含む原料組成物を、(F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物及び成形部材に関する。更に詳しくは、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、良好なオイルブリード性、機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成可能な熱可塑性エラストマー組成物及び成形部材に関する。
スピーカーは、電気信号を人の耳に聞こえる音として発生させるための振動板を備えている。即ち、電気信号に従って振動板が振動すると、この振動板の物理的な振動が空気を振動させるため、人の耳に音として聞こえる。
振動板には、その外周部分に環状のエッジ部材が固着されている。このエッジ部材は、振動板の余分な振動を抑制することによって、スピーカーの音響特性を向上させる機能がある。このような機能を発揮するため、エッジ部材は、損失正接(tanδ)が大きいことが必要である。
そこで、良好な損失正接(tanδ)を有するエッジ部材を形成可能な材料の開発が進められている。例えば、スチレン、ポリスチレン、及びビニル−ポリイソプレンを共重合させて得られるトリブロック共重合体(特許文献1参照)、ゴム、軟化剤、有機発泡剤、及び、加硫剤を含有する粘性ゴム混和物(特許文献2参照)、所定量の、ブチルゴム、液状のゴム、及び、結晶性オレフィン系樹脂を含有する熱可塑性エラストマー組成物(特許文献3参照)などが提案されている。
特開平7−131888号公報 特開平7−240994号公報 特開2005−320524号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の材料は、いずれも、十分な振動吸収性、即ち、良好な損失正接(tanδ))を有するものであるが、得られる成形部材の異方性が大きいため、成形部材の寸法不良が発生するという問題があった。なお、「成形部材の異方性」とは、成形部材において、流れ方向の引張破断伸び(E)及び流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E)が異なる性質をいう。また、添加した軟化剤がブリードアウトするという問題、機械物性が十分でないという問題、及び材料のリサイクルが出来ないという問題があった。そこで、スピーカーの音響特性を向上させるため、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性を有するエッジ部材(成形部材)を提供可能な熱可塑性エラストマー組成物、及び成形部材の開発が望まれている。また、環境に配慮する観点から、成形部材は、良好なリサイクル特性を有することが求められている。
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成可能な熱可塑性エラストマー組成物、及び成形部材を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、極限粘度[η]の高いエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、極限粘度[η]の低いエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、イソブチレン−イソプレン共重合ゴム、α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び軟化剤を、所定量で含む原料組成物を用いることによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明により、以下の熱可塑性エラストマー組成物、及び成形部材が提供される。
[1] (A)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、4.3〜6.8dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム40〜70質量%、(B)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、1.8〜2.3dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム15〜30質量%、(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム10〜30質量%(但し、(A)+(B)+(C)=100質量%)、(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(E)軟化剤を含み、前記(A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、前記(B)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、及び、前記(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴムの合計量100質量部に対して、前記(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂を10〜35質量部含み、前記(E)軟化剤を10〜30質量部含む原料組成物を、(F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物。
[2] 温度25℃、周波数1.0Hzの条件で測定した損失正接(tanδ)が0.1以上であり、シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出速度50mm/秒の条件で射出成形して得られた縦120mm、横120mm、厚さ2mmの成形膜を得、得られた前記試験片が、以下の式を満たす前記[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
式:1.5≧流れ方向の引張破断伸び(E)/流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E
[3] 前記[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られる成形部材。
[4] スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材である前記[3]に記載の成形部材。
[5] 前記[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材を得、得られたエッジ部材を振動板の外周部分に貼り付け、前記振動板と、前記振動板の外周部分に配置されるエッジ部材とを備えたスピーカー部材を得るスピーカー部材の製造方法。
[6] 振動板と、前記振動板の外周部分の少なくとも一部に配置されたエッジ部材と、を備えたスピーカー部材の製造方法であって、その内部に振動板を配置したスピーカー部材形成用金型に、前記[1]または[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、前記振動板の外周部分の少なくとも一部に前記エッジ部材を配置する工程を有するスピーカー部材の製造方法。
[7] 振動板形成用金型に、前記振動板を形成するための材料を射出成形して振動板を得る工程と、得られた前記振動板を前記スピーカー部材形成用金型の内部に配置する工程を更に有する前記[6]に記載のスピーカー部材の製造方法。
[8] 前記スピーカー部材形成用金型内に前記振動板を形成するための材料を射出成形して、前記スピーカー部材形成用金型の内部に配置された振動板を得る工程を更に有する前記[6]に記載のスピーカー部材の製造方法。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成することができるという効果を奏するものである。
本発明の成形部材は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって形成されるものであるため、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有するという効果を奏するものである。
本発明のスピーカー部材の製造方法は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた製造方法であるため、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有するエッジ部材を備えたスピーカー部材を製造することができるという効果を奏するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
[1]熱可塑性エラストマー組成物:
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の一実施形態は、(A)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、4.3〜6.8dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム(以下、「(A)成分」と記す場合がある)40〜70質量%、(B)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、1.8〜2.3dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム(以下、「(B)成分」と記す場合がある)15〜30質量%、(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム(以下、「(C)成分」と記す場合がある)10〜30質量%(但し、(A)+(B)+(C)=100質量%)、(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂(以下、「(D)成分」と記す場合がある)、及び(E)軟化剤を含み、(A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、(B)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、及び、(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴムの合計量100質量部に対して、(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂を10〜35質量部含み、(E)軟化剤を10〜30質量部含む原料組成物を、(F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理して得られるものである。
このように、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)軟化剤の各成分を所定量含む原料組成物を、(F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理するものであるため、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成することができる。
[1−1](A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含まれる(A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、4.3〜6.8dl/gであり、その含有割合が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量に対して、40〜70質量%である。この(A)成分は、極限粘度[η]が高いため、即ち、分子量が大きいため、得られる成形部材の引張破断強さが向上し、また(E)軟化剤のブリードアウトを抑制するものである。
(A)成分は、上記極限粘度[η]が4.3〜6.8dl/gであり、4.4〜6.8dl/gであることが好ましく、4.4〜6.7dl/gであることが更に好ましい。極限粘度[η]が4.3dl/g未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張破断強さが低下する。また、得られる成形部材は(E)軟化剤がブリードアウトする。一方、6.8dl/g超であると、動的架橋型の熱可塑性エラストマー組成物の特徴である良好な海島構造が形成され難く、流動性及び成形加工性が低下する。なお、海島構造は、熱可塑性樹脂が海(マトリックス)であり、架橋したゴムの粒子が島(ドメイン)である構造をいう。なお、本明細書において、極限粘度[η]は、ウベローデ粘度計を用い、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム((A)成分または(B)成分)をデカリン溶媒に溶解した後、135℃の条件で測定される値である。
(A)成分は、エチレンに由来する構成単位(a1)と、α−オレフィンに由来する構成単位(a2)とを含む共重合体であればその構造は特に限定されない。従って、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、構成単位(a1)と構成単位(a2)とを含む二元共重合体であってもよく、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の他の単量体に由来する構成単位(a3)を更に含む三元共重合体であってもよい。また、構成単位(a1)、及び構成単位(a2)を含むものであれば、4以上の異なる構成単位を含む多元共重合体であってもよい。このような(A)成分を得るための共重合反応は従来公知の方法によって行うことができる。
構成単位(a2)を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチルブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等を挙げることができる。これらの中でも、プロピレン、1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
構成単位(a2)の含有割合は、(A)成分の全構成単位100mol%に対して、5〜65mol%であることが好ましく、10〜45mol%であることが更に好ましく、15〜40mol%であることが特に好ましい。上記含有割合が5mol%未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物が十分な圧縮永久歪みを発揮しなくなる傾向にある。一方、65mol%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張破断強さが低下する傾向にある。
(A)成分が構成単位(a3)を含む場合、この構成単位(a3)を構成する単量体としては、例えば、非共役ジエン化合物を挙げることができる。非共役ジエン化合物としては、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等を挙げることができる。これらの中でも、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。これらの非共役ジエン化合物は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
構成単位(a3)の含有割合は、(A)成分の全構成単位100mol%に対して、10mol%以下であることが好ましく、1〜8mol%であることが更に好ましい。上記含有割合が10mol%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張破断伸びが低下する傾向にある。
(A)成分は、エチレン・α−オレフィン二元共重合体、及びエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン三元共重合体以外に、これらの共重合体の有する水素原子の一部が塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子に置換されているハロゲン化共重合体や、塩化ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイミド、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸の誘導体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン等の不飽和モノマーを上記二元共重合体、上記三元共重合体、及びハロゲン化共重合体などに対して、グラフト重合したグラフト共重合体等を用いることもできる。なお、これらの共重合体は一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(A)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量に対して、40〜70質量%であり、40〜68質量%であることが好ましく、40〜66質量%であることが更に好ましい。配合量が40質量%未満であると、引張破断強さが低下し、また(E)軟化剤のブリードアウトが発生する。一方、70質量%超であると、損失正接(tanδ)が低下する。
(A)成分の製造方法は、従来公知の方法を採用することができる。例えば、触媒として、チーグラー・ナッタ触媒、可溶性バナジウム化合物、及び有機アルミニウム化合物を含有する溶媒の存在下で、エチレン、エチレン以外のα−オレフィン、及び必要に応じて非共役ジエンを、分子量調節剤としての水素を必要に応じて供給しつつ、重合する方法(中・低圧法による重合方法)等によって製造することができる。なお、この重合方法としては、気相法(流動床又は撹拌床)、液相法(スラリー法又は溶液法)などを挙げることもできる。
可溶性バナジウム化合物としては、例えば、VOCl及びVClの少なくとも一方とアルコールとの反応生成物を用いることが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、n−ドデカノール等を用いることができるが、これらのうち、炭素数3〜8のアルコールが好ましく用いられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジクロリド、トリメチルアルミニウムと水との反応生成物であるメチルアルミノキサン等が挙げられる。これらのうち、特にエチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドとトリイソブチルアルミニウムとの混合物、トリイソブチルアルミニウムとブチルアルミニウムセスキクロリドとの混合物が好ましく用いられる。更に、上記溶媒としては、炭化水素が好ましく用いられ、これらのうち、特にn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンが好ましく用いられる。これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、(A)成分は、予め、鉱物油系軟化剤と混合して油展ゴムとして用いることもできる。このような油展ゴムを用いると、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を製造する上で取り扱いが容易となる。また、油展ゴム中のエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの配合割合は、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%ことが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。また、鉱物油系軟化剤の配合割合は、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%ことが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。
[1−2](B)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含まれる(B)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、1.8〜2.3dl/gであり、その含有割合が、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量に対して、15〜30質量%である。この(B)成分は、極限粘度[η]が低いため、即ち、分子量が小さいため、得られる損失正接(tanδ)が向上した成形部材を得ることができる。
(B)成分は、上記極限粘度[η]が1.8〜2.3dl/gであり、1.8〜2.2dl/gであることが好ましく、1.9〜2.2dl/gであることが更に好ましい。極限粘度[η]が1.8dl/g未満であると、引張破断強さが低下し、また、(E)軟化剤のブリードアウトが発生する。一方、2.3dl/g超であると、損失正接(tanδ)が低下する。
(B)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量に対して、15〜30質量%であり、17.5〜30質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることが更に好ましい。配合量が15質量%未満であると、損失正接(tanδ)が不十分となる。一方、30質量%超であると、引張破断伸びの異方性が大きく、また、(E)軟化剤のブリードアウトが発生する。
(B)成分は、上述した(A)成分の製造方法と同様の、公知の方法によって製造することができ、エチレン、エチレン以外のα−オレフィン、及び必要に応じて非共役ジエンを共重合させることによって得ることができる。
[1−3](C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム:
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含まれる(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴムは、イソブチレンに由来する構成単位と、イソプレンに由来する構成単位とを含む不飽和度の低いゴム状無晶形共重合体であり、その分子側鎖構造に由来し、損失正接(tanδ)を向上させるものである。
(C)成分としては、具体的には、米国特許第3,584,080号公報に開示されているような、イソブチレン、イソプレン、及び芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼンなど)を共重合させたものなどを挙げることができる。また、(C)成分は、例えば、特開昭48−90385号公報、特開昭53−42289号公報、特開昭59−84901号公報、特開平3−131643号公報、及び特開2004−091766号公報に開示されているように、共役ジエン不飽和結合を有するイソブチレン−イソプレン共重合ゴムに、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロシリル基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する不飽和化合物を反応させることによって変性させたものであってもよい。
(C)成分の市販品としては、全て商品名で、「JSR BUTYL」(JSR社製)、「Exxon BUTYL,Esso BUTYL」(エクソン社製)、「POLYSAR BUTYL」(バイエルポリマー社製)等を挙げることができる。
(C)成分中のイソプレンに由来する構成単位の含有割合は、全構成単位100mol%に対して、0.5〜15mol%であることが好ましく、0.8〜5.0mol%であることが更に好ましい。上記含有割合が0.5mol%未満であると、架橋反応が遅延する傾向にあり、引張破断強度が十分でない場合がある。一方、15mol%超であると、熱可塑性エラストマー組成物の架橋密度が過度に上昇し、機械的物性が低下する傾向にある。
(C)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量に対して、10〜30質量%であり、11〜30質量%であることが好ましく、12〜30質量%であることが更に好ましい。配合量が10質量%未満であると、損失正接(tanδ)が不十分となる。一方、30質量%超であると、(E)軟化剤のブリードアウトが発生し、また、機械物性が低下する。
(C)成分は、例えば、イソブチレンと少量のイソプレンとを、メチルクロリド中で、無水塩化アルミニウムを触媒として使用し、−100℃程度の低温でスラリー重合させた後、乾燥することにより得ることができる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を原料として用いることによって、これらの各成分が相俟って、損失正接(tanδ)が良好になる。そのため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成可能である。仮に、熱可塑性エラストマー組成物の原料として、(A)成分一種を用いた場合、(A)成分と(B)成分との二種を組み合わせて用いた場合、または(A)成分と(C)成分との二種を組み合わせて用いた場合、得られる熱可塑性エラストマー組成物によって形成される成形部材は、振動吸収性が不十分であるという問題がある。また、仮に、熱可塑性エラストマー組成物の原料として、(B)成分一種を用いた場合、(C)成分一種を用いた場合、または(B)成分と(C)成分との二種を組み合わせて用いた場合、得られる熱可塑性エラストマー組成物によって形成される成形部材は、十分な振動吸収性を有するものの、十分な機械物性が得られず、また、(E)軟化剤のブリードアウトが発生するという問題がある。
[1−4](D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂:
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含まれる(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂は、α−オレフィンに由来する構成単位を含むものであり、熱可塑性を付与するものである。
(D)成分としては、非晶質のもの(以下、「(D−1)成分」と記す場合がある)、結晶性のもの(以下、「(D−2)成分」と記す場合がある)、これらを組み合わせたものを挙げることができる。これらの中でも、(D−1)成分と(D−2)成分を組み合わせたものが好ましい。(D−1)成分の配合割合は、(D−1)成分と(D−2)成分との合計量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。(D−2)成分の配合割合は、(D−1)成分と(D−2)成分との合計量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。
ここで、本明細書において(D−1)成分は、X線回折による結晶化度が40%未満であり、密度が0.85〜0.89g/cmであるものを意味する。(D−1)成分の上記結晶化度は30%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
(D−1)成分は、具体的には、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリ1−ブテン等の単独重合体;プロピレンと、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等のα―オレフィンとを共重合させて得られる共重合体(プロピレンに由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して、50mol%超);1−ブテンと、例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等のα−オレフィンとを共重合させて得られる共重合体(1−ブテンに由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して、50mol%超)等が挙げられる。
これらの中でも、アタクチックポリプロピレン;プロピレン、1−ブテン、及びエチレンを共重合させて得られる共重合体(プロピレンに由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して、50mol%超);1−ブテン、プロピレン、及びエチレンを共重合させて得られる共重合体(1−ブテンに由来する構成単位の割合が、全構成単位に対して、50mol%超)が好ましい。なお、(D−1)成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
アタクチックポリプロピレン、及びアタクチックポリ−1−ブテンは、ジルコノセン化合物−メチルアルミノキサン触媒を用いた従来公知の重合方法によって製造することができる。
(D−1)成分としては、例えば、ハンツマン社製、またはデグサ社製の、プロピレン、プロピレンとエチレンやブテン−1等とを共重合させた非晶性ポリアルファオレフィンなどを挙げることができる。より具体的には、商品名「レクスタックAPAO」(ハンツマン社製)、商品名「ベストプラスト」(デグサ社製)などを挙げることができる。
また、本明細書において(D−2)成分は、X線回折による結晶化度が40%以上であり、密度が0.89g/cm以上のものを意味する。(D−2)成分の結晶化度は、43%以上であることが好ましく、45%以上であることが更に好ましい。
(D−2)成分としては、例えば、プライムポリマー社製、サンアロマー社製、または日本ポリプロ社製の、プロピレンホモポリマー、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体等を挙げることができる。より具体的には、商品名「サンアロマー」(サンアロマー社製)、商品名「ノバテック」(日本ポリプロ社製)、商品名「ウィンテック」(日本ポリプロ社製)、商品名「ニューフォーマー」(日本ポリプロ社製)、商品名「ニューストレン」(日本ポリプロ社製)、商品名「ニューコン」(日本ポリプロ社製)等を挙げることができる。
(D)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量100質量部に対して、10〜35質量%であり、12〜30質量%であることが好ましく、12〜33質量%であることが更に好ましい。配合量が10質量%未満であると、流動性が低下し、引張破断伸びの異方性が大きくなる。一方、35質量%超であると、硬度が高くなり、損失正接(tanδ)が低下する。
[1−5](E)軟化剤:
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物に含まれる(E)軟化剤は、流動性を付与し、引張破断伸びの異方性を小さくするとともに、損失正接(tanδ)を向上させるものである。
(E)軟化剤としては、具体的には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;アロマティック油、ナフテン油、パラフィン油、ホワイトオイル、ペトロラタム、ギルソナイト等の石油系軟化剤;ひまし油、綿実油、菜種油、パーム油、椰子油、ロジン等の植物油系軟化剤ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル、ポリブテン油などを挙げることができる。これらの中でも、アロマティック油、ナフテン油、パラフィン油が好ましく、パラフィン油が特に好ましい。
(E)軟化剤の配合量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量100質量部に対して、10〜30質量%以下であり、11〜30質量%であることが好ましく、12〜30質量%であることが更に好ましい。上記配合量が10質量%未満であると、成形加工性が困難となる。一方、30質量%超であると、(E)軟化剤のブリードアウトが発生する。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を得るための原料組成物には、上述した、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)軟化剤以外に、必要に応じて、各種の添加剤、充填剤、例えば、ポリエチレン、ポリイソブチレンなどのその他の(共)重合体などを含有させることができる。
添加剤としては、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、耐候剤、非ハロゲン系難燃剤、充填剤、防菌・防かび剤、ブロッキング剤、シール性改良剤、熱安定剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、金属不活性剤、結晶核剤、粘着付与剤、発泡助剤、着色剤(染料、顔料等)等を挙げることができる。
充填剤としては、例えば、フェライト等の金属粉末、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、アルミナシリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズ、カーボンブラック、セルロースパウダー、ゴム粉、木粉等を挙げることができる。
次に、本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、上記各成分を所定量含む原料組成物を(F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理して得られるものである。
[1−6](F)架橋剤:
(F)架橋剤は、その種類には特に制限はなく、(D)成分の融点以上の温度における動的熱処理により、少なくとも(A)成分及び(B)成分を架橋し得る化合物であることが好ましい。
(F)架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、ヒドロシリル化架橋剤、硫黄、硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシムの誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂、ポリオール架橋剤、ポリアミン、トリアジン化合物、金属石鹸等を挙げることができる。これらの中でも、有機過酸化物が好ましい。なお、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機過酸化物としては、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−イソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、p−メンタンパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジラウロイルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ(t−ブチルパーオキシ)パーベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。
これらの中でも、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイドが好ましい。なお、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(F)架橋剤の使用量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.3〜15質量部であることが更に好ましく、0.5〜10質量部であることが特に好ましい。(F)架橋剤の使用量が0.01質量部未満であると、架橋度が不足し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械物性が低下する傾向にある。一方、20質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が低下し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械物性が低下する傾向にある。
(F)架橋剤とともに、架橋助剤、架橋促進剤などを用いると、架橋反応を穏やかに行うことができるため、均一な架橋を形成することができる。
架橋助剤としては、例えば、硫黄、硫黄化合物(粉末硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、表面処理硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、オキシム化合物(p−キノンオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム等)、多官能性モノマー類(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−トルイレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等)等を用いることが好ましい。なかでも、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジビニルベンゼンが好ましい。これらを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記架橋剤として有機過酸化物を使用する場合の架橋助剤の使用量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計量100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、0.2〜5質量部であることが更に好ましい。この架橋助剤の使用量が10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が悪化したり、機械物性が低下する傾向にある。
ここで、本明細書において「動的に熱処理」とは、剪断力を加えること、及び加熱することの両方を行うことをいう。「動的に熱処理する」ために用いる装置としては、例えば、溶融混練装置等を好適例として挙げることができる。この溶融混練装置による処理は、連続式及びバッチ式のいずれの方式でもよい。溶融混練装置の具体例としては、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサ、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダー等を挙げることができる。
これらの中でも、経済性、処理効率等の観点から、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機等の連続式の溶融混練装置を用いることが好ましい。また、型式が同一のまたは異なる連続式の溶融混練装置を二台以上組み合わせて用いてもよい。
二軸押出機のL/D比(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)は、30以上であることが好ましく、36〜80であることが更に好ましい。また、二軸押出機としては、例えば、二本のスクリューが噛み合うもの、噛み合わないもの等の任意の二軸押出機を使用することができるが、二本のスクリューの回転方向が同一方向でスクリューが噛み合うものがより好ましい。このような二軸押出機としては、例えば、商品名「PCM」(池貝社製)、商品名「KTX」(神戸製鋼所社製)、商品名「TEX」(日本製鋼所社製)、商品名「TEM」(東芝機械社製)、商品名「ZSK」(ワーナー社製)等を挙げることができる。
連続式混練機のL/D比(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)は、5以上であることが好ましく、10以上であることが更に好ましい。このような連続式混練機としては、商品名「ミクストロンKTX・LCM・NCM」(神戸製鋼所社製)、商品名「CIM・CMP」(日本製鋼所社製)等を挙げることができる。
「動的に熱処理」する際の熱処理温度は、120〜350℃であることが好ましく、150〜290℃であることが更に好ましい。熱処理時間は、20秒間〜30分間であることが好ましく、30秒間〜25分間であることが更に好ましい。また、負荷する剪断力は、ずり速度で10〜20,000/秒であることが好ましく、100〜10,000/秒であることが更に好ましい。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、温度25℃、周波数1.0Hzの条件で測定した損失正接(tanδ)が0.1以上であり、シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出速度50mm/秒の条件で射出成形して得られた縦120mm、横120mm、厚さ2mmの成形膜を得、得られた試験片が、以下の式を満たすものであることが好ましい。
式:1.5≧流れ方向の引張破断伸び(E)/流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E
上記式を満たす熱可塑性エラストマー組成物は、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有するものであるとともに、優れた寸法安定性、即ち、引張破断伸びの異方性がより低い成形部材を形成することができる。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、上記損失正接(tanδ)が0.1以上であることが必要である。損失正接(tanδ)が0.1未満であると、得られる成形部材の振動吸収性が不十分となる。ここで、損失正接(tanδ)を測定するための装置としては、例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製の「RSAII」を挙げることができる。
試験片が上記式を満たさない場合、即ち、引張破断伸びの異方性が大きい場合、成形部材の寸法不良が大きくなる傾向にある。ここで、本明細書において、「流れ方向」とは、射出成形によってシート状の成形膜を形成したときの熱可塑性エラストマー組成物の流動方向を意味する。また、「流れに対して垂直方向」とは、流れ方向に垂直な方向を意味する。また、「引張破断伸び(E)」は、JIS K6251−1993に準拠して、3号ダンベルを用いて、引張速度500mm/分の条件にて、試験片を引張り、破断したときの試験片の伸び率を意味する。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7210に準じて、230℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレートが0.1〜100g/10分であることが好ましく、1.0〜100g/10分であることが更に好ましい。メルトフローレートが0.1g/10分未満であると、射出成形が困難になるおそれがある。一方、100g/10分超であると、引張破断強さが低下する傾向にある。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6253に準じて測定した測定開始5秒後におけるデュロA硬度が、20〜95であることが好ましく、30〜90であることが更に好ましい。デュロA硬度が20未満であると、形成したエッジ部材(成形部材)は破損し易くなる傾向がある。一方、95超であると、形成したエッジ部材(成形部材)を有するスピーカーは、良好な音質を発生することが困難になる。
[2]成形部材:
本発明の成形部材の一実施形態は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られるものである。従って、本実施形態の成形部材は、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有するものである。本実施形態の成形部材としては、スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材として使用することが好適である。即ち、振動板と、この振動板の外周部分に配置されるエッジ部材とを備えたスピーカー部材のエッジ部材として好適に用いることができる。
本実施形態の成形部材は、例えば、射出成形、プレス成形、押出成形等の各種成形方法によって製造することができる。
[3]スピーカー部材の製造方法:
本発明のスピーカー部材の製造方法の一の実施形態としては、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出して成形(射出成形)して、スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材を得、得られたエッジ部材を振動板の外周部分に貼り付け、振動板と、この振動板の外周部分に配置されるエッジ部材とを備えたスピーカー部材を得るものである。エッジ部材を振動板の外周部分に貼り付ける方法は、特に制限はないが、接着剤を用いることができる。
このように実施形態のスピーカー部材の製造方法は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いるため、損失正接(tanδ)が良好であることに起因して、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有するエッジ部材を備えるスピーカー部材を製造することができる。
振動板は、電気信号によって振動する板であり、その材質、形状などに特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。振動板の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、パルプ、アルミニウム、チタンなどを挙げることができる。また、振動板の形状としては、例えば、コーン型、ドーム型、平面型などを挙げることができる。
接着剤は、エッジ部材と振動板を一体化するものであり、その種類などに特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。接着剤の種類としては、例えば、溶剤形接着剤、水性形接着剤、ホットメルト形接着剤、反応形接着剤などを挙げることができる。
ここで、本明細書において「振動板の外周部分に配置」とは、板状である振動板の外周縁と、エッジ部材の内周縁とが一致するようにエッジ部材を配置すること、または、板状である振動板の外周縁部にエッジ部材の内周縁部が重なるようにエッジ部材を配置することをいう。
エッジ部材の形状は、シート状であることが好ましく、その厚さが50〜500μmであることが好ましく、100〜400μmであることが更に好ましい。エッジ部材の厚さが50μm未満であると、エッジ部材が破損し易くなるおそれがある。一方、500μm超であると、良好な音質を発生するスピーカーが得られないおそれがある。
例えば、図1に示すスピーカー部材10は、円板状の振動板11と、この振動板11の外周縁部に、その内周縁部が重なるように配置した環状のエッジ部材12とを備えた例である。なお、図1は、本発明のスピーカー部材の製造方法により製造したスピーカー部材の一実施形態を示す平面図である。
本発明のスピーカー部材の製造方法の別の実施形態としては、振動板と、この振動板の外周部分の少なくとも一部に配置されたエッジ部材と、を備えたものであって、その内部に振動板を配置したスピーカー部材形成用金型に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、振動板の外周部分の少なくとも一部にエッジ部材を配置する工程を有するものである。
このように本実施形態のスピーカー部材の製造方法は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いてスピーカー部材を製造するため、製造されるスピーカー部材は、損失正接(tanδ)が良好である。そのため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有するエッジ部材を備えるスピーカー部材を製造することができる。本実施形態のスピーカー部材の製造方法によれば、例えば、接着剤を用いて振動板とエッジ部材を一体化する方法と比較して、工程の簡略化が可能である。
本実施形態のスピーカー部材の製造方法は、振動板形成用金型に、振動板を形成するための材料を射出成形して振動板を得る工程と、得られた振動板をスピーカー部材形成用金型の内部に配置する工程を更に有することが好ましい。このような製造方法、いわゆるインサート成形法は、汎用性が高い製造方法である。具体的には、インサート成形法では、2台の成形機と2台の金型(振動板形成用金型とスピーカー部材形成用金型)とを用意し、まず、第一の成形機と振動板形成用金型とを用いて振動板を作製し、次に、作製した振動板をスピーカー部材形成用金型内に挿入して、第二の成形機を用いてエッジ部を成形することができる。
また、本実施形態のスピーカー部材の製造方法は、スピーカー部材形成用金型内に振動板を形成するための材料を射出成形して、スピーカー部材形成用金型の内部に配置された振動板を得る工程を更に有することが好ましい。このような製造方法、いわゆる二色成形法(連続二色成形法)は、成形時間が短く、生産性が高い製造方法である。このような二色成形法によると、振動板を予め別工程で製造しておく必要がないため、上記インサート成形法と比較した場合であっても、工程の簡略化が可能であるという利点がある。具体的には、二色成形法では、2台の成形機と2台の射出成形機とが接続された1台のスピーカー部材形成用金型を用意し、まず、第一の成形機で振動板を成形し、次に、同一金型(スピーカー部材形成用金型)内で、第二の成形機を用いてエッジ部材を成形することができる。
本実施形態のスピーカー部材の製造方法に用いるスピーカー部材形成用金型は、その内部に振動板を配置することができる限り特に制限はなく、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。
振動板を形成するための材料は、従来公知のもの(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を適宜選択して使用することができる。
熱可塑性エラストマー組成物を射出成形する条件は、特に制限はなく、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、シリンダー温度180〜280℃、金型温度20〜80℃、射出速度10〜2000mm/秒の条件で射出成形することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種の測定は、下記の方法により行った。
[極限粘度[η]]:
極限粘度[η]は、135℃のデカリン溶媒中でウベローデ粘度計を用いて行う。具体的には、まず、熱可塑性エラストマー組成物を、デカリン溶媒に溶解して試料溶液を調製する。次に、この試料溶液を、ウベローデ粘度計を使用して135℃の恒温油槽中で測定する。
[損失正接(tanδ)]:
以下の実施例、比較例で製造した熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製し、このペレットを射出成型機(型番「N−100」、日本製鋼所社製)を使用して射出成型し、120mm×120mm×2mmのシート状の成形品を得る。得られた成形品をダンベルで打ち抜き、38mm×3mmの長方形状の試験片、即ち38mm×3mm×2mmの試験片を得る。この試験片について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製「RSAII」)を用い、引張モードにて、温度25℃、周波数1.0Hzの条件における「tanδ」を測定する。
[メルトフローレート(MFR)]:
以下の実施例、比較例で製造した熱可塑性エラストマー組成物のペレットを作製し、このペレットをJIS K7210に準拠し、荷重2.16kg、温度230℃の条件で測定する。
[硬度]:
上記[損失正接(tanδ)]で作成した120mm×120mm×2mmのシート状の成形品を用い、JIS K6253に準拠し、測定開始5秒後におけるデュロA硬度を測定する。
[引張試験]:
射出成形機のシリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出速度50mm/秒の条件で射出成形することによって、縦120mm、横120mm、厚さ2mmの成形膜を得、得られた成形膜をJIS−K6251に準拠してダンベル状3号形状に打ち抜いて試験片を作製し、この試験片について、流れ方向及び流れに対して垂直方向における引張破断強さ(T)及び引張破断伸び(E)を測定する。
[引張破断伸びの異方性]:
上記[引張試験]によって得られた流れ方向及び流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E(%))を用い、「流れ方向の引張破断伸び(E)/流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E)」の値を算出する。引張破断伸びの異方性の評価は、算出された値が以下の式を満たす場合は、引張破断伸びの異方性が小さいと判断することができ、以下の式を満たさない場合は、引張破断伸びの異方性が大きいと判断することができる。
式:1.5≧流れ方向の引張破断伸び(E)/流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E
[圧縮永久歪み(%)]:
上記[損失正接(tanδ)]で作成した120mm×120mm×2mmのシート状の成形品を用い、JIS K6262に準拠し、温度70℃、22時間の条件で測定する。
[オイルブリード性]:
上記[損失正接(tanδ)]で作成した120mm×120mm×2mmのシート状の成形品を、60℃に加温したギアーオーブン内に投入し168時間投加熱した。168時間経過後、成形品表面に液状のブリードアウトが発生しているか観察する。液状のブリードアウトが観察された場合は、(E)軟化剤、即ちオイルが、ブリードアウトして外観不良が発生したため、オイルブリード性が不良「×」であると評価し、ブリードアウトが観察されなかった場合は、(E)軟化剤、即ちオイルが、ブリードアウトしておらず、良好な外観を維持しているため、オイルブリード性が良好「○」であると評価する。
[リサイクル特性]:
上記[損失正接(tanδ)]で作成した120mm×120mm×2mmのシート状の成形品を、JIS−K6251に準拠してダンベル状3号形状に打ち抜いて試験片を作製する。この試験片を、熱可塑性エラストマー組成物をリサイクルする際に使用される温度である160〜250℃とし、塑性変形特性の有無を観察する。塑性変形特性が認められる場合、即ち、試験片が溶融変形する場合をリサイクル特性が良好「○」であると評価し、塑性変形特性が認められない場合、即ち、試験片の溶融変形が観察されない場合をリサイクル特性が不良「×」であると評価する。
実施例、及び比較例に使用した熱可塑性エラストマーの各成分を以下に示す。
(A−1)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が4.5dl/g
(A−2)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が6.7dl/g
(A−3)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が4.0dl/g
(B−1)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が1.9dl/g
(B−2)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が1.8dl/g
(B−3)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が2.2dl/g
(B−4)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が1.7dl/g
(B−5)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム:EPDM、エチレンに由来する構成単位が66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネンに由来する構成単位が4.5質量%、135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度が2.6dl/g
(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム:ブチルゴム、商品名「Butyl268」(JSR社製)、イソプレンに由来する構成単位の割合=1.5mol%、ムーニー粘度 ML1+8(125℃)=51
(D−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂:プロピレン・1−ブテン共重合体(ハンツマン社製「レクスタックAPAO RT2780」、密度0.88g/cm、溶融粘度8000cps(190℃)、X線回折による結晶化度が0%)
(D−2−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂:プロピレンホモポリマー(日本ポリプロ社製「ノバテックPP MA04A」、密度0.90g/cm、MFR(温度230℃、荷重21.2N)が40g/10分、X線回折による結晶化度が65%)
(D−2−2)α−オレフィン系熱可塑性樹脂:プロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FX4E」、密度0.90g/cm、MFR(温度230℃、荷重21.2N)が5.3g/10分、X線回折による結晶化度が50%)
(E)軟化剤:パラフィン油、出光興産社製「ダイアナプロセスオイルPW−380」、流動点=−15℃、粘度(100℃)=30cSt
(F−1)架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3とシリカとの混合物、日本油脂社製「パーヘキシン25B−40」
(F−2)架橋剤:反応型アルキルフェノール樹脂、田岡化学社製「タッキロール201」
(G)架橋助剤:新日鐵化学社製「ジビニルベンゼン(濃度81%)」
(H−1)老化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製)
(H−2)老化防止剤:2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、大内新興化学社製「ノクラックNS−6」
(I)酸化亜鉛:白水化学社製「3号亜鉛華」
(J)ステアリン酸:花王社製「ルナックS−30」
(K)カーボンブラック:東海カーボン社製「シーストS」
(L−1)白色充填剤:Burgess Pigment社製「Burgess KE」
(L−2)白色充填剤:Sierra Talc社製「Mistron Vapor」
(実施例1)
150℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に、(A−1)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム43.0部、(B−1)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム28.5部、(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム28.5部、(D−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂10.8部、(D−2−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂10.0部、(D−2−2)α−オレフィン系熱可塑性樹脂10.8部、(E)軟化剤14.3部、及び(H−1)老化防止剤0.1部を添加した。
その後、(D−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、(D−2−1)α−オレフィン系熱可塑性樹脂及び(D−2−2)α−オレフィン系熱可塑性樹脂が溶融して、上記ニーダーに添加した各成分が均一に分散するまで、40rpm(ずり速度200/秒)で15分間混練して、溶融状態の混練物(原料組成物)を得た。得られた溶融状態の混練物を、フィーダールーダー(モリヤマ社製)を用いてペレット化した。
ペレット化した混練物100部、(F−1)架橋剤1.5部、及び(G)架橋助剤1.3部をヘンシェルミキサーに投入し、30秒間混合させた。その後、二軸押出機(同方向完全噛合い型スクリュー、L/D=33.5、池貝社製)を使用し、200℃、滞留時間1分30秒、300rpm、(ずり速度400/秒)の条件で動的熱処理を行い、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
本実施例の熱可塑性エラストマー組成物についての上記各評価は、損失正接(tanδ)が0.119、メルトフローレート(MFR)が7g/10分、硬度が57、流れ方向の引張破断強度Tが2.8MPa、流れ方向の引張破断伸びEが420%、流れに対して垂直方向の引張破断強度Tが2.8MPa、流れに対して垂直方向の引張破断伸びEが310%、引張破断伸びの異方性が1.35、圧縮永久歪みが50%、オイルブリード性の評価が「○」、及びリサイクル特性の評価が「○」であった。
(実施例2〜15、比較例1〜17)
表1及び表3に示す配合処方とすること以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物(実施例2〜15、比較例1〜17)を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、上記各評価を行った。評価結果を表2及び表4に示す。
Figure 2009235245
Figure 2009235245
Figure 2009235245
Figure 2009235245
(比較例18)
100℃に加熱したバンバリーミキサ(容量1.7リットル、神戸製鋼所社製)に、表5に示す配合処方で、(F)架橋剤以外の各種成分・添加剤を投入し、60rpmで約10分間混練して、配合ゴム組成物を得た。得られた配合ゴム組成物308.5部に対して、(F−2)架橋剤(田岡化学社製の(商品名)「タッキロール201」)12部を、6インチロール(関西ロール社製)を用いて添加し、シート状の架橋剤入り配合ゴム組成物を得た。
Figure 2009235245
得られたシート状の架橋剤入り配合ゴム組成物を、プレス機(関西ロール社製)と金型モールドとを用いて、200℃で45分間プレス成型して、縦120mm、横120mm、厚さ2mmの成形膜を得た。この成形膜を物性評価用の試験片とした。なお、比較例18に限り、[引張試験]、及び[引張破断伸びの異方性]の測定を、上記6インチロールのロールの回転方向を「流れ方向」、ロールの回転に垂直な方向を「流れに対して垂直方向」として測定した。作製した試験片の上記各評価の評価結果を表4に示す。
表2,4から明らかなように、実施例1〜15の熱可塑性エラストマー組成物を用いれば、比較例1〜17の熱可塑性エラストマー組成物、及び比較例18のゴム組成物に比べて、損失正接(tanδ)が良好であるため、優れた振動吸収性を有し、引張破断伸びの異方性が小さく、オイルブリード性が良好であり、良好な機械物性及びリサイクル特性を有する成形部材を形成可能であることが確認できた。
一方、比較例1,2,13,及び16の熱可塑性エラストマー組成物は、オイルブリード性が不良「×」なものであった。その理由は、比較例1の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分の極限粘度が低過ぎるためであり、比較例2の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分の極限粘度が低過ぎるためであり、比較例13の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の配合割合が適切でないためであり、比較例16の熱可塑性エラストマー組成物は、(C)成分の配合量が多すぎるためである。
また、比較例3,4,12,15,及び17の熱可塑性エラストマー組成物は、損失正接(tanδ)が不十分なものであった。その理由は、比較例3の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分の極限粘度が高過ぎるためであり、比較例4の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分、及び(C)成分を含まないためであり、比較例12の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分の配合割合が多すぎるためであり、比較例15の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分の配合割合が少なすぎるためであり、比較例17の熱可塑性エラストマー組成物は、(C)成分の配合割合が少なすぎるためである。
また、比較例5,及び14の熱可塑性エラストマー組成物は、引張破談伸びの異方性が大きいものであった。その理由は、比較例5の熱可塑性エラストマー組成物は、(C)成分を含まないためであり、比較例14の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分の配合割合が多すぎるためである。また、比較例6の熱可塑性エラストマー組成物は、(B)成分を含まないため、機械物性が不十分なものであった。また、比較例7、比較例8、及び比較例9の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)成分、及び(C)成分を含まないため、引張破談伸びの異方性が大きく、オイルブリード性が不良「×」であった。また、比較例10、及び比較例11の熱可塑性エラストマー組成物は、(C)成分の配合割合が多すぎるため、動的架橋ができなかった。また、比較例18のゴム組成物は、(D)成分を含まないため、リサイクル特性が不良「×」であった。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、スピーカー部材のエッジ部材を形成するための材料として好適に用いることができる。
本発明の成形部材は、例えば、スピーカー部材のエッジ部材として好適に用いることができる。
本発明のスピーカー部材の製造方法は、例えば、スピーカー部材のエッジ部材を製造する方法として好適である。
本発明のスピーカー部材の製造方法により製造したスピーカー部材の一実施形態を示す平面図である。
符号の説明
10:スピーカー部材、11:振動板、12:エッジ部材、d:幅。

Claims (8)

  1. (A)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、4.3〜6.8dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム40〜70質量%、
    (B)135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が、1.8〜2.3dl/gであるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴム15〜30質量%、
    (C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴム10〜30質量%(但し、(A)+(B)+(C)=100質量%)、
    (D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂、及び(E)軟化剤を含み、
    前記(A)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、前記(B)エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、及び、前記(C)イソブチレン−イソプレン共重合ゴムの合計量100質量部に対して、前記(D)α−オレフィン系熱可塑性樹脂を10〜35質量部含み、前記(E)軟化剤を10〜30質量部含む原料組成物を、
    (F)架橋剤の存在下で、動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 温度25℃、周波数1.0Hzの条件で測定した損失正接(tanδ)が0.1以上であり、
    シリンダー温度250℃、金型温度50℃、射出速度50mm/秒の条件で射出成形して得られた縦120mm、横120mm、厚さ2mmの成形膜を得、得られた前記試験片が、以下の式を満たす請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
    式:1.5≧流れ方向の引張破断伸び(E)/流れに対して垂直方向の引張破断伸び(E
  3. 請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られる成形部材。
  4. スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材である請求項3に記載の成形部材。
  5. 請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、スピーカーの振動板の外周部分に配置されるエッジ部材を得、得られたエッジ部材を振動板の外周部分に貼り付け、前記振動板と、前記振動板の外周部分に配置されるエッジ部材とを備えたスピーカー部材を得るスピーカー部材の製造方法。
  6. 振動板と、前記振動板の外周部分の少なくとも一部に配置されたエッジ部材と、を備えたスピーカー部材の製造方法であって、
    その内部に振動板を配置したスピーカー部材形成用金型に、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、前記振動板の外周部分の少なくとも一部に前記エッジ部材を配置する工程を有するスピーカー部材の製造方法。
  7. 振動板形成用金型に、前記振動板を形成するための材料を射出成形して振動板を得る工程と、得られた前記振動板を前記スピーカー部材形成用金型の内部に配置する工程を更に有する請求項6に記載のスピーカー部材の製造方法。
  8. 前記スピーカー部材形成用金型内に前記振動板を形成するための材料を射出成形して、前記スピーカー部材形成用金型の内部に配置された振動板を得る工程を更に有する請求項6に記載のスピーカー部材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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