JP2009222439A - 核医学診断装置 - Google Patents

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和巳 田中
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Abstract

【課題】定量性を確保して画質を向上させ、精度の高い核医学診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】装置の状態を示す情報である装置状態情報としてU/S比に基づいて、オフセット値取得部54は、PETデータのディジタル出力のADオフセットを取得し、そのADオフセットに基づいて、オフセット補正部54は、ディジタル出力をオフセット補正する。U/S比に基づいてADオフセットを取得してオフセット補正を行えば、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
【選択図】図2

Description

この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置に係り、特に、核医学診断装置における画質、定量性および装置の精度管理の技術に関する。
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽電子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本の光子を検出して複数個の検出器で光子を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている。
具体的には、陽電子放出核種を含んだ放射性薬剤を被検体内に投与して、投与された被検体内から放出される511KeVの対消滅光子を多数の検出素子(例えばシンチレータ)群からなる検出器で検出する。そして、2つの検出器で一定時間内に光子を検出した場合に同時に検出したとして、それを一対の対消滅光子として計数し、さらに対消滅発生地点を、検出した検出器対の直線上と特定する。このような同時計数情報を蓄積して再構成処理を行って、陽電子放出核種分布画像(すなわち断層画像)を得る。
このように、検出器の位置情報から光源(放射線源)の位置情報を求めて、その情報から医学画像を作成する装置では、検出器の詳細な位置情報を得ることで医学画像の質を向上させている。したがって、散乱線やその他のノイズ成分は、AD変換器(Analog to Digital Converter)では低エネルギ成分として検出されるので、それを除去するためにエネルギウィンドウ(EW: Energy Window)を設定して、エネルギによって光子の検出(すなわちイベント)を選別する(例えば、特許文献1−2、非特許文献1参照)。
AD変換器の出力には、検出素子に依存する出力と、ノイズ成分などによる出力と、光電子増倍管(PMT: Photo Multiplier Tube)や基板などの回路などによって発生する出力など多数の成分からなっている。したがって、検出素子に何も入力がない(すなわち放射線の入射がない)状態においてもAD変換器の出力は“0”にならない。これを「ADオフセット」と呼ぶ。つまり、放射線が入射していないときの検出器のアナログ出力を入力とするAD変換器の出力データが、ADオフセットとなる。なお、AD変換器の前段(検出器とAD変換器との間)に増幅器(アンプ)が配設されている場合には、放射線が入射していないときの増幅器のアナログ出力を入力とするAD変換器の出力データが、ADオフセットとなる。
ところで、核医学診断装置においても、オフセット補正をリアルタイムで行って、その後にエネルギ弁別を行って、弁別をパスした光子を対象にして演算処理を行って、断層画像を生成することが開示されている(例えば、特許文献3参照)
特開平07−113873号公報(第3,8頁、図11) 特開平11−352233号公報(第1−6頁、図4,5) 特開平11−304926号公報(第6頁) "eラーニング PETの基本 散乱イベント"、[online]、GE横河メディカルシステム株式会社(GE healthcare)、インターネット< URL : http://japan.gehealthcare.com/cwcjapan/static/rad/nm/etraining/scatter.html>
しかしながら、装置の状態は様々な要因(例えば温度・測定の負荷)によって時間的に変化する。また、PET装置は、X線CT装置を組み合わせたPET−CT装置が一般的になり、空調によって室温が一定に保たれても、X線CT装置におけるX線管およびX線検出器の被検体の体軸の軸心周りの回転によるエネルギやX線管からのエネルギなどのCTの排出熱がPET装置に影響を与える。このような排出熱により、数日単位では安定してみえるが短時間では装置の状態が変動している。このような状態の変動に応じてADオフセットが変動する。その結果、エネルギ出力が変化すると、EW(エネルギウィンドウ)内にノイズ成分が増えたり、場合によってオフセット補正が過剰に行われ(いわゆる過補正が行われ)、真の成分が欠落してしまったりする場合が発生する。その結果、定量性を損なっている可能性がある。なお、現在は装置の安定のために、装置の電源は24時間通電を基本としている場合がほとんどである。なお、EWというのは、ある幅のエネルギ情報を持つイベント(この場合には光子の検出の事象)だけを出力する枠(Window)を言う。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、定量性を確保して画質を向上させ、精度の高い核医学診断装置を提供することを目的とする。
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、上述した特許文献3の段落番号「0021」に記載されているように、オフセット補正をリアルタイムで行う技術をADオフセットに適用すれば、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができると考えられる。しかし、オフセット補正をリアルタイムで行うということは、装置が短時間で変動している状態で、しかもその装置の状態を鑑みることなくオフセット補正を常に行い続けるということを意味する。したがって、不要なオフセット値(すなわちADオフセット)の取得を行い続けることになり、不要なオフセット値取得による分だけ計数することができないという問題がある。一方で、従来のように固定した同じオフセット値を適用し続けたり、あるいはオフセット値を取得せずにオフセット補正を行わない場合には、以下のようなケースが生じる。
例えばオフセット値が徐々に増加している状態で同じオフセット値を適用し続けると、EWの下側にいた低エネルギの散乱成分(ノイズ)がシフトしてEW内に入り、逆に、EW内にいた真の成分(ピーク)がシフトしてEWの上側に移動する。これがノイズの増加である。なお、オフセット値が低下していく状態では真の成分がEWの下側にシフトして欠落していく。このような不適切なオフセット値を使用しないで、適切なオフセット値を再度に取得して適用すると、真の成分がEW内に戻ってくる。
一方で、オペレータは経験則でオフセット値の取得を行うもしくは行わない判定を行うことができる。特に、上述した短時間で変動している装置の状態を逆に利用して、すなわち装置の状態を示す情報である装置状態情報に基づいて、オフセット補正を行えば、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができると考えられる。
装置状態情報としては、例えばPET−CT装置のガントリの温度が考えられる。ガントリが冷えた状態から電源を入れると、時間の経過とともにガントリの温度が緩やかに変化して、所定時間(例えば22時間)が経過すると、ガントリの温度が収束することが確認されている。このとき、AD変換器で出力される662KeVのエネルギピーク位置のデータも、時間の経過とともに緩やかに変化して、所定時間が経過すると収束することが確認されている。この主な要因は検出器における結晶素子の発光量の温度変化による低下である。これに対して、所定時間経過後(例えば22時間経過後)にADオフセットを取得してオフセット補正を行うと、エネルギおよびその分解能に改善が見られる。してみれば、ガントリが冷えた状態から電源を入れると、所定時間が経過するまではオフセット値(すなわちADオフセット)を取得してオフセット補正を行う必要がないことがわかる。
また、装置状態情報としては、散乱成分に関する物理量である散乱線物理量(散乱線パラメータ)も有用であることが近年において確認されている。散乱線パラメータの中でも、「U/S比」と呼ばれるパラメータが特に有用である。エネルギに対する光子の計数値を表したエネルギスペクトルは、図6(a)に示す通りである。なお、同時計数の対象となる各光子のエネルギ分布は、図6(b)に示す通りである(横軸を「Energy of photon 1」、縦軸を「Energy of photon 2」で表記)。図6に示すように、511keVの光子のエネルギをピークとした分布をしている。SfromからStoまでの全体のエネルギ幅(図6ではSEW:Standard Energy Window)と、511KeV(図6ではUfrom)からStoまでのエネルギ幅(Upper Window) (図6ではUEW)を設定した場合にそれぞれのエネルギ幅を通過したイベントの計数の比をU/S比と定義する。このとき、エネルギ情報のオフセット値(すなわちADオフセット)が変化すると、それぞれのウィンドウを通過する計数の量が変化するので、U/S比が変化する。
このU/S比はオフセット補正を行う際のパラメータである。ADオフセットがシフトするとピーク位置もシフトするので、U/S比が大きく変化する。したがって、所定範囲外(例えば0.4±0.2の範囲外)のU/S比となる状態でオフセット補正を行うと不適切な補正となり画質が劣化する。どこまでの画質の劣化を許容するかは最終的には視覚評価なので、所定範囲(いわゆる許容範囲)は推奨値(経験値)であり、オペレータ(この場合には装置を使用するユーザ)により可変の値である。したがって、所定範囲で0.4±0.2としたのは、あくまでも一例であり、可変であることに留意されたい。端的に述べると、画質が悪くなってきたとユーザが感じたら、ユーザがオフセット値を再取得して適用する。画質を改善できる機能であり、ユーザにオフセット値の再取得を促す基準の例がこのU/S比である。
このU/S比が所定範囲外のとき(例えば0.4±0.2の範囲外)にADオフセットを取得してオフセット補正を行うと、エネルギおよびその分解能に改善が見られる。U/S比が所定範囲内のとき(例えば0.4±0.2の範囲内)には、その所定範囲内のときにオフセット値(すなわちADオフセット)を再取得して適用してもエネルギおよびその分解能にさほど改善が得られないことから,ADオフセットを再取得する必要がない。
なお、上述した特許文献3では装置状態情報を鑑みることなくオフセット補正をリアルタイムで行うことを意味する。以上を鑑みて、オペレータの経験則でオフセット値(すなわちADオフセット)の取得を行うもしくは行わない選択、オフセット補正を行うもしくは行わない選択を行うようにするか、あるいは装置状態情報に基づいてオフセット値(すなわちADオフセット)を取得してオフセット補正を行えば、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、かつ課題を解決することができるという知見を得た。
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得するオフセット値取得手段と、前記オフセット値に基づいて前記ディジタル出力をオフセット補正するオフセット補正手段と、前記オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う選択手段とを備え、その選択手段による選択結果に基づいて前記ディジタル出力に反映させることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、オフセット値取得手段とオフセット補正手段と選択手段とを備えている。オフセット値取得手段は、核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得し、そのオフセット値に基づいて、オフセット補正手段は、ディジタル出力をオフセット補正する。選択手段は、上述した取得されたオフセット値を用いて上述したオフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う。そして、その選択手段による選択結果に基づいてディジタル出力に反映させるので、オフセット補正を行うもしくは行わない選択を選択手段によってオペレータの経験則で行うことができ、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
また、請求項2に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、装置の状態を示す情報である装置状態情報に基づいて、前記核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得するオフセット値取得手段と、前記オフセット値に基づいて前記ディジタル出力をオフセット補正するオフセット補正手段とを備えることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、オフセット値取得手段とオフセット補正手段とを備えている。装置の状態を示す情報である装置状態情報に基づいて、オフセット値取得手段は、核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得し、そのオフセット値に基づいて、オフセット補正手段は、ディジタル出力をオフセット補正する。装置状態情報に基づいてオフセット値を取得してオフセット補正を行えば、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
上述した後者の発明(請求項2に記載の発明)と前者の発明(請求項1に記載の発明)とを組み合わせてもよい。すなわち、後者の発明において、取得されたオフセット値を用いてオフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う選択手段を備え、その選択手段による選択結果に基づいてディジタル出力に反映させる(請求項3に記載の発明)。つまり、オフセット補正を行うもしくは行わない選択を選択手段によって装置状態情報に基づいて行うことができる。
また、上述した後者の発明において、装置状態情報を表す値が画質劣化となる所定範囲外のときに、オフセット値取得手段はディジタル出力のオフセット値を取得し、そのときに取得されたオフセット値に基づいて、オフセット補正手段はディジタル出力をオフセット補正してもよい(請求項4に記載の発明)。つまり、装置状態情報を表す値が画質劣化のない所定範囲内のときにオフセット補正を行ってもさほどの改善が得られないことからオフセット補正を行う必要はないが、装置状態情報を表す値が画質劣化となる所定範囲外のときにはオフセット補正を行うとエネルギおよびその分解能に改善が見られるのでオフセット値を取得してオフセット補正を行う。
また、上述した後者の発明およびそれに従属された各々の発明(請求項2〜請求項4に記載の発明)において、装置状態情報の一例は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線の散乱成分に関する物理量である散乱線物理量である(請求項5に記載の発明)。上述したように、装置状態情報としては、散乱線物理量(散乱線パラメータ)(例えばU/S比)が有用である。もちろん、散乱線物理量以外に、装置状態情報として、上述したガントリの温度であってもよい。
より好ましくは、前者の発明も含めて、上述したこれらの発明(請求項1〜請求項5に記載の発明)において、ディジタル出力のオフセット値の時間的変化に基づいて装置の状態を診断し、装置が異常と診断されたときに異常を報知する報知手段を備えてもよい(請求項6に記載の発明)。オフセット値において急激な変化が見られた場合には報知手段が異常を報知することで、装置の現状をリアルタイムに把握することができる。
前者の発明も含めて、上述したこれらの発明(請求項1〜請求項6に記載の発明)において、放射線を検出して核医学用データのアナログ値を出力する検出手段と、核医学用データのアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力するアナログ−ディジタル変換手段とを備える。核医学用データのアナログ値を増幅させる増幅手段をさらに備えた場合には、ディジタル出力のオフセット値の一例は、放射線が入射していないときの増幅手段のアナログ出力を入力とするアナログ−ディジタル変換手段の出力データである(請求項7に記載の発明)。また、増幅手段を備えない場合には、ディジタル出力のオフセット値の一例は、放射線が入射していないときの検出手段のアナログ出力を入力とするアナログ−ディジタル変換手段の出力データである(請求項8に記載の発明)。
前者の発明も含めて、上述したこれらの発明(請求項1〜請求項8に記載の発明)において、上述した選択手段は、オフセット値取得手段によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択を行うことで、オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行ってもよいし(請求項9に記載の発明)、選択手段は、オフセット値取得手段によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択と、オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択とを独立して行ってもよい(請求項10に記載の発明)。もちろん、オフセット値取得について常に行い続け、オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択のみを選択手段が行ってもよい。
この発明に係る核医学診断装置によれば、選択手段は、オフセット値取得手段によって取得されたオフセット値を適用したオフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行い、その選択手段による選択結果に基づいてディジタル出力に反映させるので、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
また、上述した発明とは別の発明に係る核医学診断装置によれば、装置の状態を示す情報である装置状態情報に基づいて、オフセット値取得手段は、核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得し、そのオフセット値に基づいて、オフセット補正手段は、ディジタル出力をオフセット補正するので、装置状態情報に基づいてオフセット値を取得してオフセット補正を行えば、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET−CT装置の側面図であり、図2は、実施例1に係るPET−CT装置のブロック図である。なお、本実施例1では、核医学診断装置として、PET (Positron Emission Tomography) 装置とX線CT装置とを組み合わせたPET−CT装置を例に採って説明する。
図1に示すように、本実施例1に係るPET−CT装置1は、水平姿勢の被検体Mを載置する天板2を備えている。この天板2は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸に沿って平行移動するように構成されている。PET−CT装置1は、天板2に載置された被検体Mを診断するPET装置3とX線CT装置4とを備えている。PET−CT装置1は、この発明における核医学診断装置に相当する。
PET装置3は、開口部31aを有したガントリ31と被検体Mから発生した光子を検出する光子検出器32とを備えている。光子検出器32は、被検体Mの体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ31内に埋設されている。光子検出器32は、シンチレータブロックとライトガイドと光電子増倍管(PMT)と(いずれも図示省略)を備えている。シンチレータブロックは、複数個のシンチレータからなる。放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子をシンチレータブロックが光に変換して、変換されたその光をライトガイドが案内して、光電子増倍管が光電変換して電気信号に出力する。光子検出器32は、この発明における検出手段に相当する。
一方、X線CT装置4は、開口部41aを有したガントリ41を備えている。ガントリ41内には、被検体MにX線を照射するX線管42と、被検体Mを透過したX線を検出するX線検出器43とを配設している。X線管42およびX線検出器43が互いに対向位置になるようにそれぞれを配設しており、モータ(図示省略)の駆動によってガントリ41内でX線管42およびX線検出器43を被検体Mの体軸の軸心周りに回転させる。本実施例1では、X線検出器43としてフラットパネル型X線検出器(FPD)を採用している。もちろん、フラットパネル型X線検出器(FPD)以外のX線検出器を用いてもよい。
図1(a)では、PET装置3のガントリ31とX線CT装置4のガントリ41とを互いに別体としたが、図1(b)に示すように、一体型に構成してもよい。ガントリを一体型に構成した場合には、上述したようにCTの排出熱がPET装置3に影響を与える。すなわち、X線管42およびX線検出器43の被検体Mの体軸の軸心周りの回転によるエネルギやX線管42からのエネルギなどのCTの排出熱がPET装置3に影響を与えるが、後述するオフセット値取得やオフセット補正を常時行わないようにすることで、不要なオフセット値の取得による分だけ計数することができないということを防止することができる。その結果、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
続いて、PET−CT装置1のブロック図について説明する。図2に示すように、PET−CT装置1は、上述した天板2やPET装置3やX線CT装置4の他に、コンソール6を備えている。PET装置3は、上述したガントリ31や光子検出器32の他に、PETデータ収集部50を備えている。X線CT装置4は、上述したガントリ41やX線管42やX線検出器43の他に、CTデータ収集部44を備えている。
PETデータ収集部50は、光子検出器33で検出された光子に基づいてPETデータ(核医学用データ)を収集し、同時計数回路51と増幅器52とAD変換器53とオフセット値取得部54とオフセット値メモリ部55とオフセット補正部56と差分取得部57とを備えている。本実施例1では、PETデータ収集部50は基板で構成されており、その基板上に同時計数回路51などの回路やオフセット補正部56などの論理回路などを搭載している。増幅器52は、この発明における増幅手段に相当し、AD変換器53は、この発明におけるアナログ−ディジタル変換手段に相当し、オフセット値取得部54は、この発明におけるオフセット値取得手段に相当し、オフセット補正部56は、この発明におけるオフセット補正手段に相当し、差分取得部57は、この発明における報知手段に相当する。
コンソール6は、データ収集部61と画像再構成部62とメモリ部63と入力部64と出力部65とLED(Light-Emitting Diode)66とコントローラ67とを備えている。入力部64は、この発明における選択手段に相当する。
同時計数回路51は、光子が光子検出器33で同時に検出(すなわち同時計数)されたか否かを判定する。同時計数回路51で同時計数されたPETデータをデータ収集部61に送り込む。増幅器52は、光子検出器33で検出されて出力された電気信号を増幅させる。AD変換器53は、増幅器52で増幅された電気信号のアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力する。本実施例1のように、AD変換器53の前段(光子検出器33とAD変換器53との間)に増幅器52が配設されている場合には、上述したように、光子が入射していないときの増幅器52のアナログ出力を入力とするAD変換器53の出力データが、ADオフセットとなる。ADオフセットは、この発明におけるオフセット値に相当する。
オフセット値取得部54は、PETデータ(核医学用データ)のディジタル出力のADオフセットを取得する。本実施例1では、オフセット値取得部54はレジスタで構成されている。オフセット値メモリ部55に、オフセット値取得部54で取得されたADオフセットを書き込んで記憶し、オフセット補正部56でオフセット補正を行うときに、オフセット値取得部54に記憶されたADオフセットを読み出す。本実施例1では、コンソール6外のPET装置3内のオフセット値メモリ部55に書き込んで記憶したが、コンソール6内のメモリ63に書き込んで記憶してもよい。オフセット値メモリ部55,メモリ部63は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。
オフセット補正部56は、オフセット値取得部54で取得され、オフセット値メモリ部55に記憶されたADオフセットに基づいて上述したディジタル出力をオフセット補正する。本実施例1では、オフセット補正部56は減算器で構成されている。差分取得部57は、前回で取得されたADオフセットと今回で取得されるADオフセットとの差分を求めることで、その差分をADオフセットの時間的変化として求める。その時間的変化に基づいてPET−CT装置1の状態を診断し、装置が異常と診断されたときに、コントローラ67を介してLED66から照射を行いオペレータの視覚に訴えかけることで異常を報知する。本実施例1では、LED66に代表される照射手段がオペレータの視覚に訴えかけることで異常を報知したが、ブザーに代表される音声手段がオペレータの聴覚に訴えかけることで異常を報知してもよく、五感に訴えかける手段であれば、特に限定されない。本実施例1では、差分取得部57は、遅延回路や減算器などで構成されている。
一方、CTデータ収集部44は、X線検出器43で検出されたX線に基づいて投影データをCTデータ(X線CT用のデータ)として収集する。CT収集部44で収集されたCTデータをデータ収集部61に送り込む。
データ収集部61は、同時計数回路51で同時計数されて収集されたPETデータとCTデータ収集部44で収集されたCTデータとを重畳する。また、CTデータ収集部44で収集されたCTデータをトランスミッションデータとしてPETデータに作用させて、PETデータの吸収補正を行ってもよい。データ収集部61は、重畳された投影データを画像再構成部62に送り込む。画像再構成部62は、データ収集部61で重畳された投影データを再構成して断層画像を生成する。
メモリ部63は、コントローラ67を介して、PETデータ収集部50やCTデータ収集部44やデータ収集部61で収集された各々のデータや画像再構成部62で再構成された断層画像などのデータを書き込んで記憶し、適宜必要に応じて読み出して、コントローラ67を介して、各々のデータを出力部65に送り込んで出力する。
本実施例1では、メモリ部63は、U/S比を逐次に記憶するU/S比メモリ部を備えており、U/S比が画質劣化となる所定範囲外のとき(例えば0.4±0.2の範囲外)に、コントローラ67を介してオフセット取得部54によるADオフセット取得およびオフセット補正部55によるオフセット補正を行うように制御する。逆に、U/S比が画質劣化のない所定範囲内のとき(例えば0.4±0.2の範囲内)には、コントローラ67を介さずに、オフセット値取得部54によるADオフセット取得およびオフセット補正部55によるオフセット補正を行わない。図2では結線を省略しているが、このU/S比はPET装置3から常時に得られる散乱線物理量(散乱線パラメータ)であり、このU/S比が画質劣化のない所定範囲内であるか否かで装置の状態を把握することができる。なお、U/S比をメモリ部63から読み出して、コントローラ67を介して、出力部65に送り込んで出力することも可能である。U/S比は、この発明における装置状態情報に相当する。
入力部64は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ67に送り込む。入力部64は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。本実施例1では、オフセット値取得部54によるADオフセット取得を行うもしくは行わない選択を行うことで、オフセット補正部56によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行うために、経験則(例えば上述したガントリの温度が安定するまで22時間まではオフセット補正を行わない)あるいは出力部65へのU/S比の出力結果に基づいて、ADオフセット取得を行う選択命令(取得命令)をオペレータは入力部64に入力する。オペレータが入力部64に入力した取得命令を、コントローラ67を介してオフセット値取得部54に送り込む。ADオフセットを取得した上で、ADオフセットに基づいたオフセット補正が行われることになる。なお、オフセット値取得部54によるADオフセット取得を行わない選択を行った場合には、取得命令をオペレータは入力部64に入力しなければよい。また、ADオフセットが取得されないとオフセット補正は行われないので、取得命令をオペレータは入力部64に入力しない場合には、オフセット補正部56によるオフセット補正を行わない選択を行ったことになる。
出力部65は、モニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。LED66は、上述したようにADオフセットの時間的変化に基づいて装置が異常と診断されたときに光を照射することで、オペレータの視覚に訴えかける。
コントローラ67は、実施例1に係るPET−CT装置1を構成する各部分統括制御する。コントローラ67は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。PETデータ収集部50やCTデータ収集部44やデータ収集部61で収集された各々のデータや画像再構成部62で再構成された断層画像などのデータを、コントローラ67を介して、メモリ部63に書き込んで記憶、あるいは出力部65に送り込んで出力する。出力部65が表示部の場合には出力表示し、出力部65がプリンタの場合には出力印刷する。また、U/S比が画質劣化となる所定範囲外のとき、またはオフセット値取得部54によるADオフセット取得を行う選択をオペレータが行うことで、オフセット補正部56によるオフセット補正を行う選択を行ったときには、コントローラ67を介してオフセット取得部54によるADオフセット取得およびオフセット補正部55によるオフセット補正を行うように制御する。上述したように、ADオフセットの時間的変化に基づいて装置が異常と診断されたときに、コントローラ67を介してLED66から照射を行いオペレータの視覚に訴えかけることで異常を報知する。
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子を光子検出器33のうち該当する光子検出器33のシンチレータブロックが光に変換して、変換されたその光を光子検出器33の光電子増倍管が光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素値)として同時計数回路51とともに増幅器52に送り込む。
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本の光子が発生する。同時計数回路51は、光子検出器33のシンチレータブロックの位置と光子の入射タイミングとをチェックし、被検体Mを挟んで互いに対向位置にある2つのシンチレータブロックで光子が同時に入射したとき(すなわち同時計数したとき)のみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロックのみに光子が入射したときには、同時計数回路51は、ポジトロンの消滅により生じた光子ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
このとき、上述のノイズ以外のノイズとして、上述したように光子検出器33の検出素子に依存する出力と、ノイズ成分などによる出力と、光電子増倍管や基板(本実施例1ではPETデータ収集部5)などの回路などによって発生する出力ノイズがあり、多数の成分からなっている。これらの出力ノイズが、AD変換器53でADオフセットとしてディジタル出力される。そこで、同時計数回路51でエネルギ弁別を行って同時計数の精度を高くする。そのためには、ADオフセットに基づいてオフセット補正部56はオフセット補正して、その補正された実際の撮像で得られたディジタル出力を同時計数回路51に送り込む。
同時計数回路51に送り込まれた画像情報を投影データ(PETデータ)として、データ収集部61に送り込む。一方、X線管42およびX線検出器43を回転させながらX線管42から被検体MにX線を照射して、被検体Mの外部から照射されて被検体Mを透過したX線をX線検出器43が電気信号に変換することでX線を検出する。X線検出器43で変換された電気信号を画像情報(画素値)としてCTデータ収集部44に送り込む。CTデータ収集部44は、送り込まれた画像情報の分布をX線検出器43の投影面に投影された投影データ(CTデータ)として収集して、データ収集部61に送り込む。
データ収集部61は、PETデータの吸収補正やPETデータおよびCTデータの重畳を行って、画像再構成部62に送り込み、送り込まれた投影データを画像再構成部62は再構成して断層画像を生成する。
次に、入力部、オフセット値取得部およびオフセット補正部のフローについて、図3を参照して説明する。図3は、入力部、オフセット値取得部およびオフセット補正部の一連の流れを示すフローチャートである。
被検体Mに放射性薬剤を投与して、PET装置3による核医学診断(PET装置3での撮像)およびX線CT装置4による撮像を行う前に、オフセット値(ADオフセット)の取得やオフセット補正を行う。先ず、各々のガントリ31,41を起動させる。
(ステップS1)選択?
入力部64では、オフセット値取得部54によるADオフセット取得を行う選択をオペレータが行う(すなわち、取得命令をオペレータが入力部64に入力する)まで、このステップS1をループさせて待機する。もし、選択が行われたら、オペレータが入力部64に入力した取得命令を、コントローラ67を介してオフセット値取得部54に送り込む。図3のフローチャートでは、この取得命令を「“A”の条件」と定義する(図3では“A”を参照)。
(ステップT1)U/S比が所定値範囲外?
一方、U/S比が画質劣化となる所定範囲外のとき(例えば0.4±0.2の範囲外)になるまで、このステップT1をループさせて待機する。もし、U/S比が画質劣化となる所定範囲外のときには、そのときのADオフセットを取得するために、コントローラ67を介して取得命令をオフセット値取得部54に送り込む。図3のフローチャートでは、この取得命令を「“B”の条件」と定義する(図3では“B”を参照)。
(ステップU1)レジスタを“0”から“1”
ところで、各々のガントリ31,41を起動させるべく電源を入れる。オフセット値取得部54は、上述したようにレジスタで構成され、この電源の投入に伴って、レジスタを“0”から“1”にする。
(ステップU2)そのときのADオフセットを取得、レジスタを“1”から“0”
レジスタが“1”のときのみ、そのときのADオフセットをオフセット値取得部54は取得する。なお、レジスタが“0”のときにはADオフセットを取得しないようにする。そのときのADオフセットは、ガントリ31,41の起動時、かつ光子が入射していないときの増幅器52のアナログ出力を入力とするAD変換器53の出力データに相当する。次回のADオフセットの再取得に備えるべく、ADオフセットを取得した直後、レジスタを“1”から“0”にする。
このときのADオフセットをオフセット値メモリ部55に書き込んで記憶する。オフセット値メモリ部55に記憶されたADオフセットを読み出して、オフセット補正部56および差分取得部57に送り込む。なお、このステップU1、U2は、ガントリ31,41の起動時のステップで、上述したようにガントリ31,41の温度が収束していないので、必ずしもステップU1、U2を行う必要はない。同様に、後述するステップV1のオフセット補正も必ずしも行う必要はない。なお、ステップU1、U2でADオフセットの取得のみを行って、後述するステップV1のオフセット補正を行わないようにすることも可能である。
(ステップU3)“A”、“B”のいずれかを満たす、レジスタを“0”から“1”
電源の投入から所定時間(例えば22時間)が経過した後、ガントリ31,41の温度が収束した場合について説明する。上述したステップS1において入力部64で入力された取得命令が送り込まれた場合、上述したステップT1においてU/S比が画質劣化となる所定範囲外のときの取得命令が送り込まれた場合のいずれか、すなわち、「“A”の条件」または「“B”の条件」のいずれかを満たす(図3では「“A”、“B”のいずれかを満たす」を参照)場合には、レジスタを“0”から“1”にする。
(ステップU4)そのときのADオフセットを取得、レジスタを“1”から“0”
ステップU2でも述べたように、レジスタが“1”のときのみ、そのときのADオフセットをオフセット値取得部54は取得する。そのときのADオフセットは、「“A”の条件」または「“B”の条件」のいずれかを満たしたとき、かつ光子が入射していないときの増幅器52のアナログ出力を入力とするAD変換器53の出力データに相当する。次回のADオフセットの再取得に備えるべく、ADオフセットを取得した直後、レジスタを“1”から“0”にする。
このときのADオフセットをオフセット値メモリ部55に書き込んで記憶する。オフセット値メモリ部55に記憶されたADオフセットを読み出して、オフセット補正部56および差分取得部57に送り込む。差分取得部57は、前回で取得されたADオフセットと今回で取得されるADオフセットとの差分を遅延回路や減算器によって求めることで、その差分をADオフセットの時間的変化として求める。その時間的変化に基づいてPET−CT装置1の状態を診断する。もし、予め設定された所定値よりも差分の方が大きい場合には、ADオフセットの時間的変化が大きく装置が異常だと診断し、所定値よりも差分の方が小さい場合には、ADオフセットの時間的変化が小さく装置が正常だと診断する。もし、異常と診断されたときに、コントローラ67を介してLED66から照射を行いオペレータの視覚に訴えかけることで異常を報知する。
(ステップU5)終了?
装置そのものを終了させる(電源切断)まで、ステップU3、U4を繰り返しループさせる。もし、終了の場合には、オフセット値取得部54の一連のフローを終了する。
(ステップV1)オフセット補正
ところで、ガントリ31,41の起動時に、上述したステップU2においてガントリ31,41の起動時でのADオフセットをオフセット値取得部54が取得すると、上述したようにADオフセットをオフセット値メモリ部55に書き込んで記憶し、オフセット値メモリ部55に記憶されたADオフセットを読み出して、オフセット補正部56は、そのADオフセットに基づいて補正する。具体的には、オフセット値取得部54は、上述したように減算器で構成され、そのADオフセットを“0”にするために、そのADオフセットを減算器は減算する。上述したようにガントリ31,41の温度が収束していないので、このステップV1のオフセット補正も必ずしも行う必要はない。
(ステップV2)オフセット補正
電源の投入から所定時間(例えば22時間)が経過した後、ガントリ31,41の温度が収束した場合について説明する。「“A”の条件」または「“B”の条件」のいずれかを満たしたときに、上述したステップU4において「“A”の条件」または「“B”の条件」のいずれかを満たしたときでのADオフセットをオフセット値取得部54が取得すると、上述したようにADオフセットをオフセット値メモリ部55に書き込んで記憶し、オフセット値メモリ部55に記憶されたADオフセットを読み出して、オフセット補正部56は、そのADオフセットに基づいて補正する。ステップV1でも述べたように、そのADオフセットを“0”にするために、そのADオフセットを減算器は減算する。
特に、被検体Mに放射性薬剤が投与されて、光子検出器33に光子が入射されたときに、増幅器52、AD変換器53を介して出力された画像情報(画素値)のディジタル値(すなわち実際の撮像で得られたディジタル出力)からADオフセットを減算することでオフセット補正を行う。オフセット補正された画像情報(画素値)を同時計数回路51に送り込み、同時計数回路51でエネルギ弁別を行って同時計数の精度を高くする。
(ステップV3)終了?
装置そのものを終了させる(電源切断)まで、ステップV1、V2を繰り返しループさせる。もし、終了の場合には、オフセット補正部56の一連のフローを終了する。
上述の構成を備えた本実施例1に係るPET−CT装置1によれば、オフセット値取得部54とオフセット補正部56と入力部64とを備えている。オフセット値取得部54は、PETデータ(核医学用データ)のディジタル出力のオフセット値(すなわちADオフセット)を取得し、そのオフセット値(ADオフセット)に基づいて、オフセット補正部56は、ディジタル出力をオフセット補正する。入力部64は、上述したオフセット補正部54によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う。そして、その入力部64による選択結果に基づいてディジタル出力に反映させるので、オフセット補正を行うもしくは行わない選択を入力部64によってオペレータの経験則で行うことができ、オフセット値の取得を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
また、上述の構成を備えた本実施例1に係るPET−CT装置1によれば、装置の状態を示す情報である装置状態情報(本実施例1ではU/S比)に基づいて、オフセット値取得部54は、PETデータ(核医学用データ)のディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)を取得し、そのオフセット値(ADオフセット)に基づいて、オフセット補正部54は、ディジタル出力をオフセット補正する。装置状態情報(U/S比)に基づいてオフセット値(ADオフセット)を取得してオフセット補正を行えば、オフセット補正を常に行い続ける必要もなく、定量性を確保して画質を向上させ、精度を高くすることができる。
本実施例1では、取得されたオフセット値(ADオフセット)を用いてオフセット補正を行うもしくは行わない選択を、入力部64によって装置状態情報(本実施例1では出力部65へのU/S比の出力結果)に基づいて行うことができる。また、本実施例1では、装置状態情報を表す値(本実施例1ではU/S比)が画質劣化となる所定範囲外のときに、オフセット値取得部54はディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)を取得し、そのときに取得されたオフセット値(ADオフセット)に基づいて、オフセット補正部56はディジタル出力をオフセット補正している。つまり、装置状態情報を表す値であるU/S比が画質劣化のない所定範囲内のときにオフセット補正を行ってもさほどの改善が得られないことからオフセット補正を行う必要はないが、装置状態情報を表す値であるU/S比が画質劣化となる所定範囲外のときにはオフセット補正を行うとエネルギおよびその分解能に改善が見られるのでオフセット値を取得してオフセット補正を行う。
また、本実施例1では、装置状態情報として、放射性薬剤が投与された被検体Mから発生した光子の散乱成分に関する物理量である散乱線物理量を例に採って説明している。上述したように、装置状態情報としては、散乱線物理量(散乱線パラメータ)(例えばU/S比)が有用である。
また、本実施例1では、ディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)の時間的変化に基づいて装置の状態を診断し、装置が異常と診断されたときに異常を報知する差分取得部57を備えている。オフセット値(ADオフセット)において急激な変化が見られた場合には差分取得部57が異常を報知する(本実施例1ではLED66から光を照射させることで報知する)ことで、装置の現状をリアルタイムに把握することができる。
本実施例1では、光子を検出してPETデータ(核医学用データ)のアナログ値を出力する光子検出器33と、PETデータのアナログ値を増幅させる増幅器52と、その増幅されたアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力するAD変換器53とを備えている。この場合には、ディジタル出力のオフセット値は、光子が入射していないときの増幅器52のアナログ出力を入力とするAD変換器53の出力データである。また、本実施例1では、入力部64は、オフセット値取得部54によるADオフセット取得を行うもしくは行わない選択を行うことで、オフセット補正部56によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行っている。
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図4は、実施例2に係るトランスミッション型のPET装置の側面図であり、図5は、実施例2に係るトランスミッション型のPET装置のブロック図である。本実施例2では、核医学診断装置として、PET (Positron Emission Tomography) 装置とトランスミッション装置とを組み合わせたトランスミッション型のPET装置を例に採って説明する。
図4に示すように、本実施例2に係るトランスミッション型のPET装置1は、上述した実施例1と同様に、寝台2とPET装置3とを備えている。本実施例2では、上述した実施例1のX線CT装置4の替わりにトランスミッション装置7を備えている。PET装置3については、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
トランスミッション装置7は、開口部71aを有したガントリ71を備えている。ガントリ71内には、被検体Mに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同種の放射線(本実施例2では光子)を照射させる線源72と、被検体Mを透過した光子を検出するトランスミッション検出器73とを配設している。モータ(図示省略)の駆動によってガントリ71内で線源72を被検体Mの体軸の軸心周りに回転させる。トランスミッション検出器73については被検体Mの体軸の軸心周りにリング状に配設しており、静止させている。もちろん、線源72と同様に、トランスミッション検出器73を被検体Mの体軸の軸心周りに回転させてもよい。
図4(a)では、PET装置3のガントリ31とトランスミッション装置7のガントリ71とを互いに別体としたが、上述した実施例1と同様に、図4(b)に示すように、一体型に構成してもよい。
続いて、トランスミッション型のPET装置1のブロック図について説明する。図5に示すように、トランスミッション型のPET装置1は、上述した寝台2やPET装置3やトランスミッション装置7の他に、コンソール6を備えている。PET装置3およびコンソール6のブロック図については、データ収集部61を除けば、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
トランスミッションデータ収集部74は、トランスミッション検出器73で検出された光子に基づいて光子吸収係数の分布データをトランスミッションデータ(吸収補正データ)として収集する。トランスミッションデータ収集部74で収集されたトランスミッションデータをデータ収集部61に送り込む。
データ収集部61は、同時計数回路51で同時計数されて収集されたPETデータに、トランスミッションデータ収集部77で収集されたトランスミッションデータを作用させて、被検体Mの体内での光子の吸収を考慮した投影データに補正する。すなわち、トランスミッションデータをPETデータに作用させてPETデータの吸収補正を行う。データ収集部61は、吸収補正された投影データを再構成して断層画像を生成する。
実施例1でも述べたように、被検体Mに放射性薬剤を投与して、同時計数回路51は、光子検出器33で検出された光子に基づく画像情報を投影データ(PETデータ)として、データ収集部61に送り込む。一方、線源72を回転させながら線源72から被検体Mに光子を照射して、被検体Mの外部から照射されて被検体Mを透過した光子をトランスミッション検出器73が電気信号に変換することで光子を検出する。トランスミッション検出器73で変換された電気信号を画像情報(画素値)としてトランスミッションデータ収集部74に送り込む。トランスミッションデータ収集部74は、送り込まれた画像情報に基づいてトランスミッションデータ(吸収補正データ)を求める。トランスミッションデータ収集部74は、光子またはX線の吸収係数とエネルギーとの関係を表す演算を利用することで、CT用の投影データ、すなわちX線吸収係数の分布データを光子吸収係数の分布データに変換して、光子吸収係数の分布データをトランスミッションデータ(吸収補正データ)として収集する。トランスミッションデータ収集部77は、トランスミッションデータをデータ収集部61に送り込む。
データ収集部61は、PETデータの吸収補正を行って、画像再構成部62に送り込み、送り込まれた吸収補正後の投影データを画像再構成部62は再構成して、被検体Mの体内での光子の吸収を考慮した断層画像を生成する。
なお、実施例1のX線CT装置4の替わりにトランスミッション装置7を本実施例2で備えた構成以外は、入力部、オフセット値取得部およびオフセット補正部のフローについては、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
また、実施例1のX線CT装置4の替わりにトランスミッション装置7を本実施例2で備えた構成以外は、実施例2における作用・効果についても、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例1では、PET装置とX線CT装置とを組み合わせた装置を例に採って説明し、上述した実施例2では、PET装置とトランスミッション装置とを組み合わせた装置を例に採って説明したが、PET装置単体に適用してもよい。また、この発明は、単一の光子を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
(2)上述した各実施例では、オフセット補正手段(各実施例ではオフセット補正部56)によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う機能(すなわち選択手段)を入力部64に有したが、必ずしも選択を行う機能を備える必要はない。装置の状態を示す情報である装置状態情報(各実施例ではU/S比)に基づいて、オフセット値取得手段(各実施例ではオフセット値取得部54)は、核医学用データ(PETデータ)のディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)を取得し、そのオフセット値(ADオフセット)に基づいて、オフセット補正手段(各実施例ではオフセット補正部56)がディジタル出力をオフセット補正するのであれば、選択を行う機能を備える必要はない。
(3)上述した各実施例では、装置の状態を示す情報である装置状態情報(各実施例ではU/S比)に基づいて、オフセット値取得手段(各実施例ではオフセット値取得部54)は、核医学用データ(PETデータ)のディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)を取得し、そのオフセット値(ADオフセット)に基づいて、オフセット補正手段(各実施例ではオフセット補正部56)がディジタル出力をオフセット補正したが、必ずしも装置状態情報に基づいてオフセット値を取得する必要はない。オフセット補正手段(各実施例ではオフセット補正部56)によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う機能(すなわち選択手段)を入力部64に有するのであれば、必ずしも装置状態情報に基づいてオフセット値を取得する必要はない。
(4)上述した各実施例では、装置状態情報としてU/S比を例に採って説明したが、装置の状態を示す情報であれば、特に限定されない。例えば、上述したガントリの温度を装置状態情報として採用してもよい。電源の投入から所定時間(例えば22時間)が経過すると、ガントリの温度が収束することから、所定時間が経過するまではオフセット補正を行わずに、所定時間が経過した後にオフセット補正を行うようにしてもよい。
(5)上述した各実施例では、ディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)の時間的変化に基づいて装置の状態を診断し、装置が異常と診断されたときに異常を報知する報知手段(各実施例では差分取得部57)を備えたが、必ずしも報知手段を備える必要はない。
(6)上述した各実施例では、検出手段(各実施例では光子検出器33)とアナログ−ディジタル変換手段(各実施例ではAD変換器53)との間に増幅手段(各実施例では増幅器52)とを配設したが、増幅手段(増幅器52)を備えない場合には、ディジタル出力のオフセット値(ADオフセット)は、放射線(各実施例では光子)が入射していないときの検出手段(光子検出器33)のアナログ出力を入力とするアナログ−ディジタル変換手段(AD変換器53)の出力データである。
(7)上述した各実施例では、選択手段(各実施例では入力部64)は、取得されたオフセット値(各実施例ではADオフセット)を用いてオフセット値取得手段(各実施例ではオフセット値取得部54)によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択を行うことで、オフセット補正手段(各実施例ではオフセット補正部56)によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行ったが、これに限定されない。選択手段(入力部64)は、オフセット値取得手段(オフセット値取得部54)によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択と、オフセット補正手段(オフセット補正部56)によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択とを独立して行ってもよい。また、オフセット値取得について常に行い続け、オフセット補正手段(オフセット補正部56)によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択のみを選択手段(入力部64)が行ってもよい。
実施例1に係るPET−CT装置の側面図である。 実施例1に係るPET−CT装置のブロック図である。 入力部、オフセット値取得部およびオフセット補正部の一連の流れを示すフローチャートである。 実施例2に係るトランスミッション型のPET装置の側面図である。 実施例2に係るトランスミッション型のPET装置のブロック図である。 U/S比の説明に供する図であって、(a)はエネルギに対する光子の計数値を表したエネルギスペクトル、(b)は同時計数の対象となる各光子のエネルギ分布である。
符号の説明
1 … PET−CT装置、トランスミッション型のPET装置
3 … PET装置
32 … 光子検出器
52 … 増幅器
53 … AD変換器
54 … オフセット値取得部
56 … オフセット補正部
57 … 差分取得部
64 … 入力部
M … 被検体

Claims (10)

  1. 放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得するオフセット値取得手段と、前記オフセット値に基づいて前記ディジタル出力をオフセット補正するオフセット補正手段と、前記オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う選択手段とを備え、その選択手段による選択結果に基づいて前記ディジタル出力に反映させることを特徴とする核医学診断装置。
  2. 放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、装置の状態を示す情報である装置状態情報に基づいて、前記核医学用データのディジタル出力のオフセット値を取得するオフセット値取得手段と、前記オフセット値に基づいて前記ディジタル出力をオフセット補正するオフセット補正手段とを備えることを特徴とする核医学診断装置。
  3. 請求項2に記載の核医学診断装置において、前記取得されたオフセット値を用いて前記オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行う選択手段を備え、その選択手段による選択結果に基づいて前記ディジタル出力に反映させることを特徴とする核医学診断装置。
  4. 請求項2に記載の核医学診断装置において、前記装置状態情報を表す値が画質劣化となる所定範囲外のときに、前記オフセット値取得手段は前記ディジタル出力のオフセット値を取得し、そのときに取得されたオフセット値に基づいて、前記オフセット補正手段は前記ディジタル出力をオフセット補正することを特徴とする核医学診断装置。
  5. 請求項2から請求項4のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記装置状態情報は、前記放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線の散乱成分に関する物理量である散乱線物理量であることを特徴とする核医学診断装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記ディジタル出力のオフセット値の時間的変化に基づいて装置の状態を診断し、装置が異常と診断されたときに異常を報知する報知手段を備えることを特徴とする核医学診断装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記放射線を検出して前記核医学用データのアナログ値を出力する検出手段と、前記核医学用データのアナログ値を増幅させる増幅手段と、その増幅されたアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力するアナログ−ディジタル変換手段とを備え、前記ディジタル出力のオフセット値は、前記放射線が入射していないときの前記増幅手段のアナログ出力を入力とする前記アナログ−ディジタル変換手段の出力データであることを特徴とする核医学診断装置。
  8. 請求項1から請求項6のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記放射線を検出して前記核医学用データのアナログ値を出力する検出手段と、前記核医学用データのアナログ値をディジタル値に変換してディジタル出力するアナログ−ディジタル変換手段とを備え、前記ディジタル出力のオフセット値は、前記放射線が入射していないときの前記検出手段のアナログ出力を入力とする前記アナログ−ディジタル変換手段の出力データであることを特徴とする核医学診断装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記選択手段は、前記オフセット値取得手段によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択を行うことで、前記オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択を行うことを特徴とする核医学診断装置。
  10. 請求項1から請求項8のいずれかに記載の核医学診断装置において、前記選択手段は、前記オフセット値取得手段によるオフセット値取得を行うもしくは行わない選択と、前記オフセット補正手段によるオフセット補正を行うもしくは行わない選択とを独立して行うことを特徴とする核医学診断装置。
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