JP2009216473A - 音源距離計測装置及びそれを用いた音響情報分離装置 - Google Patents

音源距離計測装置及びそれを用いた音響情報分離装置 Download PDF

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Abstract

【課題】周波数に依存せず高い精度で音源までの距離をリアルタイムに計測することが可能な音源距離計測装置を提供する。
【解決手段】音源距離計測装置は、少なくとも2つの音源方向計測部10と、音源距離演算部20とから主に構成される。各音源方向計測部10は、単一指向性の複数のマイクロホンを有し、各マイクロホンの感度最大方向を向く単位ベクトルの総和がゼロとなるように配置され、少なくとも音源からの音の方向を計測可能である。また、音源距離演算部20は、少なくとも2つの音源方向計測部により計測される音源からの音の方向を用いて三角測量の原理により音源までの距離を求めるものである。
【選択図】図1

Description

本発明は音源距離計測装置に関し、特に、音源方向計測部を複数用いて三角測量の原理により音源までの距離を計測する音源距離計測装置に関する。また、このような音源距離計測装置を用いて音源からの音響情報を分離する音響情報分離装置に関する。
従来から、音源までの距離や音源位置を計測するための装置は種々存在している。例えば、特許文献1には、同一音源からの音が複数のマイクロホンに到達するときの時間差を利用して、音源までの距離を測定する装置が開示されている。この装置は、所定の形状の三角形の3つの頂点にそれぞれ配置されるマイクロホンを用いる。そして、1つの音源からの音が3つのマイクロホンのそれぞれで捉えられた時刻を検出し、3つのマイクロホンの2つずつを組み合わせたマイクロホンペアごとの音の到達時間差を求める。そして、3つのマイクロホンのそれぞれの位置とマイクロホンペアごとの到達時間差を用いて、三角測量の原理により音源までの距離を計測するものである。そして、音源の位置に向かってカメラを向きとズーム量を制御できるものとしている。
また、特許文献2には、球面バッフルマイクロホンを2つ用いて三角測量の原理により音源までの距離を測定する装置が開示されている。球面バッフルマイクロホンとは、球体のバッフルの表面に複数の無指向性マイクロホンを配設して全方位の音を取り込むようにしたものである。球面バッフルマイクロホンは、ビームフォーミングにより、ある方向に所定の鋭さの指向性を有するものである。特許文献2に開示の装置は、このような球面バッフルマイクロホンを2つ用いて、複数のマイクロホンで取り込まれたそれぞれの音響信号の振幅特性と、位相特性とを演算処理によって求めた後、それらの信号情報とバッフル周辺の音場解析情報を統合し、特定方向からの到来音を強調する演算処理を全方位にわたって行い、音源からの音の到来方向を特定するものである。
特開平10−227849号公報 WO2004/021031
特許文献1に開示の装置では、3つのマイクロホンに入ってくる音の到達時間差を利用するものである。したがって、マイクロホンに入ってくる音がトリガとなるものであり、時間的に始まりのある音、衝撃音、突発音等に反応してその音の音源までの距離を計測するものである。このため、都市騒音や機械騒音等、定常的な音である定常継続音については、時間的な始まりが無い音であるため、特許文献1に開示の装置では定常継続音を発生する音源までの距離を計測することは原理的に不可能であった。
一方、特許文献2に開示の装置では、時間的な差を用いるものではないため、定常継続音について計測することは可能である。しかしながら、球面バッフルに設けられる複数のマイクロホンによるビームフォーミング方式であるため、音源の角度の測定誤差が大きいものであった。即ち、球面バッフルマイクロホンの指向性の鋭さ(受音範囲の狭さ)が周波数に依存し、低い周波数では指向性をそれほど鋭くすることができない。このため、球面バッフルマイクロホンの指向性が広いので、ある角度範囲から音が到達してきたことは判断できたとしても、ビームフォーミング方式の特性上、正確な音源方向の角度というのは一意に定まるものではなかった。このように、特許文献2では、球面バッフルマイクロホンによる音源方向の角度誤差が大きく、正確に音源の角度を求めることが可能なものではなかった。さらに、ビームフォーミング方式は数多くのマイクロホンを用いるので多大な計算量を要するため、リアルタイム処理に向いているものでもなかった。
本発明は、斯かる実情に鑑み、周波数に依存せず高い精度で音源までの距離をリアルタイムに計測することが可能な音源距離計測装置を提供しようとするものである。さらに、用途に応じて、種々の条件で音源からの音響情報を分離することも可能な音響情報分離装置を提供しようとするものである。
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による音源距離計測装置は、所定の間隔を開けて配置される少なくとも2つの音源方向計測部であって、各音源方向計測部は、単一指向性の複数のマイクロホンを有し、該複数のマイクロホンは、その感度最大方向を向く単位ベクトルの総和がゼロとなるように配置され、少なくとも音源からの音の方向を計測可能な、少なくとも2つの音源方向計測部と、少なくとも2つの音源方向計測部により計測される音源からの音の方向を用いて三角測量の原理により音源までの距離を求める音源距離演算部と、を具備するものである。
そして、このように構成された音源距離計測装置を用いる音響情報分離装置は、音源距離演算部で演算される音源までの距離を用いて音源からの音響情報を分離する、分離部を具備するものである。
また、分離部は、音源方向計測部で計測される音源の方向を基準に音源からの音響情報を分離するものであれば良い。
また、少なくとも2つの音源方向計測部は、さらに、音源からの音の大きさを計測可能であり、分離部は、少なくとも2つの音源方向計測部のそれぞれで測定される音源の音の大きさを基準に音源からの音響情報を分離するものであっても良い。
また、少なくとも2つの音源方向計測部は、さらに、音源からの音の周波数を計測可能であり、分離部は、少なくとも2つの音源方向計測部のそれぞれで測定される音源の音の周波数を基準に音源からの音響情報を分離するものであっても良い。
本発明の音源距離計測装置には、衝突音等の突発的な音だけでなく、都市騒音等の定常的な音についてもその音源までの距離をリアルタイムに計測することが可能であるという利点がある。また、周波数に依存せず角度検出精度が高い音源方向計測部であるため、音源までの距離を正確に計測可能であるという利点もある。さらに、用途に応じて、種々の条件で音源からの音響情報を分離することも可能であるという利点もある。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の音源距離計測装置の構成の概略を説明するためのブロック図である。図示の通り、本発明の音源距離計測装置は、一対の音源方向計測部10と、音源距離演算部20とから主に構成され、これらを用いて、音源100までの距離を求めるものである。なお、図示例では、音源100としては点音源を意図している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、面音源や線音源であっても、十分に距離が離れていれば、原理上、本発明の音源距離計測装置で計測可能である。
本発明の音源距離計測装置は、音源方向計測部10を少なくとも2つ用いる。そして、これらの音源方向計測部10は、所定の間隔を開けて配置される。また、各音源方向計測部10は、複数の単一指向性マイクロホンを有するものである。そして、これらの単一指向性マイクロホンの指向特性情報を用いて、音源方向計測部10では、音源からの音の方向を計測する。音源方向計測部10は、単一指向性マイクロホンを複数用いて、これらの指向性情報から音響インテンシティを計測する方式(C−C方式)の音響測定装置を用いれば良い。C−C方式の音源方向計測部10は、音源100からの音の周波数に影響を受けず、また精度良く正確に音源100からの音の方向を計測できる。なお、音源方向計測部10の具体的な構成例については後述する。また、音源方向計測部は、これにより測定される角度を用いて三角測量の原理に適用するため、少なくとも2つあれば良いが、さらに多くの計測部があっても勿論良い。
そして、2つの音源方向計測部10により計測された音源方向の角度の情報は、音源距離演算部20に入力される。音源距離演算部20は、2つの音源方向計測部10により計測される音源100からの音の方向を用いて三角測量の原理により音源までの距離を求めるものである。音源距離演算部20は、例えばパーソナルコンピュータ等の電子計算機からなるものであれば良い。
図2は、三角測量の原理を説明するための図である。図示の通り、音源方向計測部10の間隔をL、左側の音源方向計測部10の音源方向の角度をθ、右側の音源方向計測部10の音源方向の角度をθとし、音源100から左側の音源方向計測部10までの距離をR、右側の音源方向計測部10までの距離をRとする。このとき、距離R、距離Rと角度θ、角度θとの関係は以下の式のように表せる。
したがって、2つの音源方向計測部10により音源方向の角度がそれぞれ求まれば、これを上述の式に入力することで、音源100までの距離が求まる。そして、これらの距離が求まれば、音源100の位置も求めることが可能となる。なお、音源100の位置は、2次元xy平面上の座標位置として求めることが可能である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、さらに仰角等を計測して3次元xyz空間上の座標位置として求めることも可能である。また、本発明の音源距離計測装置では、必ずしも上述の数式を用いたものに限定されるわけではない。例えば、2つの音源方向計測部によりそれぞれの角度が求まれば、そこからその角度で直線状に延びた線の交点を求めることで、距離を求めても良い。
上述の式からも明らかなように、三角測量の原理では角度検出精度が音源の距離計測に大きく影響する。したがって、音源方向計測部の角度検出精度が重要となってくる。本発明の音源距離計測装置では、以下に詳細に説明されるような音源方向計測部を用いることで、安定的に正確な音源方向の角度検出を可能としている。
以下、本発明の音源距離計測装置に用いられる音源方向計測部について説明する。本願発明者は、単一指向性マイクロホンを複数用いて、これらの指向性情報から音響インテンシティを計測する方式(C−C方式)の音響測定装置を種々開発している。なお、音響インテンシティとは、スカラ量である音圧とは異なりベクトル量であり、音源からの音が有する音の大きさや、周波数、波形といった情報だけでなく、音の方向に関する情報も含まれるものである。即ち、音響インテンシティにより、音の大きさだけでなく、音源方向の角度も計測できる。
例えば、国際公開第2006/054599号パンフレットでは、180度反対向きに配置されたマイクロホンのレベル差のデータベースを用いて音源方向及び音源レベルを求めることが可能な装置が開示されている。また、特願2007−054909では、直交座標の各軸上に、指向性を180度反対向きに配置された単一指向性マイクロホンの対からなる受信部を用いて、所定の演算処理を行うことでデータベース等を用いずに音源から発せられた音の方向を検出するC−C方式の音響測定装置も開発している。これら、C−C方式の音響測定装置では、音源からの音の周波数依存性もなく、音響インテンシティを計測できるものである。
C−C方式の音源方向計測部は、単一指向性の複数のマイクロホンを有するものであり、その感度最大方向を向く単位ベクトルの総和がゼロとなるように各マイクロホンが配置されるものである。
以下に、C−C方式の音源方向計測部の概念を説明する。図3は、単一平面波が受音部に到来する音場を想定した場合の概念図である。図示のような、単一平面波P(t)がx方向に対して角度θで到来する音場を想定したときの音響インテンシティを求める。ここで、音響インテンシティは音圧と粒子速度の積で表されるものである。まず、音場進行方向の粒子速度u(t)は次式で表される。
但し、ρcは音響インピーダンスである。
そして、x方向の粒子速度u(t)は次式で表される。
したがって、音響インテンシティのx方向成分は、次式で表される。
次に、この音場を単一指向性マイクロホン対で測定することを考える。単一指向性マイクロホンとして、例えばカーディオイドマイクロホンを用いた場合、マイクロホン1及びマイクロホン2で測定されるそれぞれの応答P(t)、P(t)は、それぞれ次式で表される。
これらP(t)、P(t)を加算すると、次式のように無指向性応答となる。
そして、これらP(t)、P(t)の差分は次式で表される。
数8を数3と比べると、x方向の粒子速度u(t)は、次式のようにマイクロホン1とマイクロホン2の応答の差分から求められることが分かる。
したがって、x方向の音響インテンシティ成分は、以下のように表される。
なお、数10は以下のように表すことも可能である。
また、y方向やさらにz方向の音響インテンシティ成分を求める場合にも、上述の理論と同様に各方向の音響インテンシティ成分を求めれば良く、これらの各方向の音響インテンシティ成分を合成すれば、音響インテンシティI(t)が求まる。
数10からも分かる通り、C−C方式では、各次元のマイクロホン対の差分と加算によって各次元の音響インテンシティ成分が求められることが分かる。本願発明者と同一人による特願2007−054909では、このような理論に基づき音響インテンシティを求めている。
さて、以下では、上述のC−C方式の音響インテンシティを求める原理をベクトルで解釈してみる。図4は、単一平面波が受音部に到来する音場をベクトルで解釈した場合の概念図である。図示のような、マイクロホンの感度最大方向を向く単位ベクトルe〜eを考える。ここで、単位ベクトルに関し、例えば図示のように直交座標のx軸上にマイクロホンの感度最大方向を向けた単位ベクトルeは、その成分が(1,0)というものである。
単一平面波P(t)が到来する音場を想定したとき、無指向性の音圧P(t)、粒子速度ベクトルu(t)、音響インテンシティI(t)は、それぞれ次式のように表される。
但し、上記の式中、nはマイクロホンの数(チャンネル数)で、Kはチャンネル数やマイクロホンの形式によって異なる粒子速度正規化の係数である。
これらの式から分かるように、音場をベクトルで解釈すると、粒子速度ベクトルは、複数のマイクロホンのそれぞれの測定値を各単位ベクトルに乗算(重み付け)してベクトル合成したものとして表されている。
また、無指向性の音圧は、複数のマイクロホンのそれぞれの音圧の総和したものとして表されている。
そして、音響インテンシティは、このようにして求められる粒子速度ベクトルと無指向性の音圧との積で表されている。即ち、音響インテンシティを算出したい場合には、粒子速度ベクトルと無指向性の音圧を乗算すれば良い。
さらに、音圧の2乗である2乗音圧を考えた場合には、音響インテンシティI(t)は、次式のように表される。
但し、上記の式中、Gはチャンネル数やマイクロホンの形式によって異なる正規化係数である。
これらの式から分かるように、音場をベクトルで解釈すると、2乗音圧を考えた場合には音響インテンシティが粒子速度ベクトルを求めずにダイレクトに算出することが可能となる。即ち、音響インテンシティを算出したい場合には、2乗音圧を各単位ベクトルに乗算し、これをベクトル合成すれば良い。
C−C方式の音源方向計測部のベクトル合成法は、このような理論で行われれば良い。なお、ベクトル合成は、ベクトルを加算するものだけではなく、逆方向から考えれば減算するものも含まれるものである。
ここで、本発明の音源距離計測装置の音源方向計測部のベクトル合成法を用いる場合、マイクロホンの感度最大方向を向く単位ベクトルには、以下の条件が加えられる。
(1)次式に表されるように、各マイクロホンの感度最大方向を向く単位ベクトルが空間的にバランスしていること。即ち、各単位ベクトルの総和がゼロとなるように複数のマイクロホンが配置されること。
(2)次式に表されるように、各次元の寄与が等しいこと。即ち、複数のマイクロホンのそれぞれの単位ベクトルのそれぞれの成分の2乗の総和が等しくなるように配置されること。
(3)マイクロホンの数は、算出する音響情報のベクトルの空間次元数よりも多いこと。
複数のマイクロホンがこれらの条件を満たせば、本発明の音源方向計測部のベクトル合成法を用いることが可能である。但し、(2)の条件については必ずしも必須のものではなく、各次元の寄与が等しくならないようなマイクロホンの配置であっても、(1)の条件を満たしていれば適宜補正することで対応可能である。
複数のマイクロホンがこれらの条件を満たす限り、本発明の音源方向計測部のベクトル合成法を用いることが可能であり、これにより音源方向の角度を正確に求めることが可能となる。
上述のようなC−C方式を用いて音響インテンシティを求めれば音源方向の角度も正確に求まるため、これを既知の間隔を設けて配置される2つの音源方向計測部で測定すれば、音源距離演算部において、これら2つの角度を用いて音源までの距離を求めることが可能となる。
図5に、本発明の音源距離計測装置に用いられる音源方向計測部の構成の一例を説明するための概略図を示す。図示のように、1つの音源方向計測部10は、複数の単一指向性マイクロホン101〜106を有するものである。図示例の音源方向計測部10は、3次元の方向検出を行うことが可能な構成であり、単一指向性マイクロホンを6つ(6チャンネル)用い、180度反対向きに配置したマイクロホン対(101と103の対、102と104の対、105と106の対)を、座標の原点を中心にx軸方向、y軸方向、z軸方向にそれぞれ直交するように配置している。なお、これらは上述のC−C方式の条件を満たすように配置されている。そして、マイクロホン対の差分と加算によって音響インテンシティ成分を求め、これを合成することにより音響インテンシティ、即ち、音源方向の角度を求めるものである。
なお、本発明の音源距離計測装置に用いられる音源方向計測部は上述の図示例には限定されず、2次元の方向検出を行う場合には、180度反対向きに配置したマイクロホン対を座標の原点を中心にx軸方向、y軸方向にそれぞれ直交するように配置したものであっても良い。
さらに、複数のマイクロホンは180度反対向きに配置されていなくても、各マイクロホンの感度最大方向を向く単位ベクトルが空間的にバランスしてさえすれば、単一指向性を有する3つのマイクロホンを三角形の重心から各頂点に向かう方向に各指向性の単位ベクトルが向くようにそれぞれ配置し、或いは、4つのマイクロホンを三角錐の重心から各頂点に向かう方向に各指向性の単位ベクトルが向くようにそれぞれ配置し、それぞれの測定値を各単位ベクトルに重み付してベクトル合成する粒子速度ベクトルと、マイクロホンのそれぞれの測定値の総和とから音響インテンシティを算出するものであっても良い。
このように、本発明の音源距離計測装置は、C−C方式による音源方向計測部を用いたものであれば、その具体的構造は上述の図示例に限定されるものではない。
本発明の音源距離計測装置は、上述のような構成を採用することにより、衝突音等の突発的な音だけでなく、都市騒音等の定常的な音についてもその音源までの距離を検出することが可能である。C−C方式の音源方向計測部を用いれば、音源距離演算部における演算も簡単なものであるため、リアルタイム処理も可能である。さらに、C−C方式の音源方向計測部は、周波数に依存せず角度検出精度が高い音源方向計測部であるため、音源までの距離を正確に計測可能である。
次に、上述の本発明の音源距離計測装置を用いて、さらに、音源からの音響情報を分離する機能を付加した音響情報分離装置について説明する。図6は、分離部を有する本発明の音響情報分離装置の構成の概略を説明するためのブロック図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、重複説明は省略する。基本的な構成は図1に示す音源距離計測装置と同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図6に示す如く、音源距離計測装置にさらに分離部30を設けた点にある。図示の通り、分離部30は、音源距離演算部20の出力に設けられており、音源距離演算部20で演算される音源までの距離を用いて音源からの音響情報を分離するものである。即ち、音源までの距離により、測定される音圧情報等を分離して、取捨選択、或いは振り分けるものである。
例えば、分離部30は、音源距離演算部20で演算される音源までの距離を基準に音源からの音響情報を分離する。音源距離演算部20では、上述のように音源までの距離が算出できるため、この距離情報を基準に音源からの音響情報を分離する。即ち、所定の距離以内の音源と、所定の距離以上離れた音源とを分けてその音圧を検出することが可能となる。これにより、音源までの距離に応じて、音源からの音を分けてそれぞれ解析することが可能となる。したがって、本発明の音源距離計測装置が置かれたところを中心に、例えば半径20m以内の音と20m以上の音とを分けて、それぞれの音の大きさや周波数等を解析することが可能となる。
そして、本発明の音響情報分離装置では、音源の座標位置も求めることが可能であるため、音源距離計測装置が置かれたところを中心に分離する以外に、任意の位置を中心に、そこから所定範囲内の音と範囲外の音とを分けて解析することも可能である。
さらに、分離部30は、音源方向計測部10の出力に設けられても良い。音源方向計測部10の出力に設けられた場合、分離部30は、音源方向計測部10で計測される音源の方向を基準に音源からの音響情報を分離しても良い。即ち、音源の位置する方向により、音源からの音を取捨選択、或いは振り分けても良い。上述のように、音源方向計測部10では、音源方向の角度を計測できるため、この角度情報を基準に音源からの音響情報を分離する。即ち、所定の角度範囲内の音源と、所定の角度範囲外の音源とを分けてその音圧を検出することが可能となる。これにより、音源方向の角度に応じて、音源からの音を分けてそれぞれ解析することが可能となる。したがって、本発明の音源距離計測装置が置かれたところを中心に、例えば左右90度の範囲内の音と範囲外の音とを分けて、それぞれの音の大きさや周波数等を解析することが可能となる。
なお、分離部30は、距離情報と角度情報をそれぞれ用いて音源からの音響情報を分離することも可能である。これらは音響情報分離装置の用途や、解析したい音場の状況に応じて種々変更可能である。
このような構成の本発明の音響情報分離装置によれば、種々の音場解析が可能となる。例えば、都市騒音を測定したい場合、従来の装置では単にマイクロホンで音圧を計測し、音圧平均等で評価するしかなかったため、都市全体の騒音なのか、たまたま近くを通った自動車等の騒音が含まれるものなのか十分に評価できるものではなかった。しかしながら、本発明の音響情報分離装置では、距離や角度に応じて音源からの音響情報を分離できるため、都市全体の騒音と近くを通った自動車等の騒音を分けて評価することが可能となる。また、同様に、航空機等の騒音を測定したい場合等でも、近くの道路の車両騒音とミックスされた音場であっても、車両騒音と航空機騒音を分けて評価できる。航空機からの騒音を測定したい場合には、分離部では距離だけでなく角度も考慮して分離すれば、より精度良く航空機の騒音のみを取り出すことも可能となる。
さらに、本発明の音響情報分離装置では、音源方向計測部10において、音源からの方向だけでなく音源からの音の大きさを測定するようにしても良い。C−C方式の音源方向計測部であれば、音響インテンシティが測定できるため、音源の音の大きさも検出できる。そして、分離部30では、各音源方向計測部で測定される音源の音の大きさを基準に音源からの音響情報を分離することも可能である。なお、分離部30は、音源の音の大きさだけでなく、上述の距離情報や角度情報を種々組み合わせて分離しても良い。音源の音の大きさにより分離できれば、所定の大きさ以上の音を発する音源のみを評価したり、逆に所定の大きさ以下の音を発する音源のみを評価したりすることも可能となる。
なお、三角測量の原理を用いた距離計測の原理的な特徴として、音源方向計測部の間隔が広いほど、また音源方向計測部から音源までの距離が近いほど、距離の測定精度が高くなる。換言すれば、音源方向計測部の間隔を固定した場合には、音源方向計測部から音源までの距離が遠くなればなるほど、距離の測定精度が低くなり、演算した音源までの距離の誤差が大きくなる。また、屋内等、反射音の相対エネルギが音源からの直接音に比して大きくなる環境では、音源が遠くにあると音源の距離計測の誤差がより大きくなる場合がある。しかしながら、屋外における都市騒音等の場合には、反射音については考慮しなくても良い場合が多い。そして、分離部を有する本発明の音響情報分離装置では、距離精度が確保できる距離と、それ以上離れた距離にある音源とを分けて検出することが可能となるため、測定精度の高い範囲と低い範囲を分けて解析することも可能となる。
以下、複数の音源からミックス音が各音源方向計測部に届くような音場に本発明の音源距離計測装置を適用した場合について説明する。まず、用意したミックス音の条件は以下の通りである。音源方向は90度、距離5mと20mの位置に音源を配置した条件で測定したインパルス応答(直接音のみ)を用いた。なお、距離5mのインパルス応答には男性アナウンス、距離20mのインパルス応答には女性アナウンスの波形データをそれぞれ畳み込んだ。さらに、その両者を受音点において略同レベルとなるようにミックスし、両方の音が混在するデータを作成した。そして、このデータを基に、両者を分離できるか否か検証した。そして、距離測定は、短時間窓(512データ)ごとに分析する方法で行った。さらに、すべての短時間窓の測定距離に窓内エネルギによって重み付し、測定距離に関する確率密度関数を算出した。この結果を図7に示す。なお、音源距離計測装置の音源方向計測部の間隔は2mとした。
図7は、1kHzオクターブ帯域における各時間窓の距離測定結果の時間変化と確率密度分布の結果である。図中の円は各時間窓内エネルギの大きさに対応しており、横軸は時間軸である。図の右側には確率密度関数が表されている。同図から分かるように、5m付近に男性アナウンスと思われる大きなエネルギの音が連続して検出されている。また、本来20m付近にも女性アナウンスの音が存在するはずであるが、音源が遠い場合には距離測定誤差が大きくなるため、15m〜25mの範囲にエネルギが分散して検出されている。図中、右側の確率密度関数を見ても、5mにはっきりとピークが現れており、男性アナウンスの音が検出されたことが分かるが、女性アナウンスの音については分散されており、はっきりとしたピークを示していない。しかしながら、10m付近に谷があり、それより距離が近い領域と遠い領域を分けて解釈することが可能である。そこで、10mを境に、それより近くにあると推定された音エネルギと、それより遠くにあると推定された音エネルギをそれぞれ積分し、両者の比率を求めたところ、0.45:0.55であった。一方、男性アナウンスと女性アナウンスのミックス前の元データのエネルギ比率は、0.43:0.57であり、両者の比率は略一致している。したがって、近くの音源と遠くの音源からのミックス音であっても、両者の近距離と遠距離の音をエネルギ的に分離できていることが明らかである。なお、上述の例では、音源距離計測装置の音源方向計測部の間隔が2mの場合には上述のように10m付近に谷ができたが、音源方向計測部の間隔を広げることで、この分離する境を調整することも可能である。
このように、本発明の音源距離計測装置によれば、音源までの距離を計測することが可能となり、さらに、これを用いた音響情報分離装置では、音源の位置する方向や距離、さらには音源からの音の大きさを基準に、音源(音)を振り分ける空間フィルタのような機能も実現可能となる。
なお、本発明の音源距離計測装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
図1は、本発明の音源距離計測装置の構成の概略を説明するためのブロック図である。 図2は、三角測量の原理を説明するための図である。 図3は、単一平面波が受音部に到来する音場を想定した場合の概念図である。 図4は、単一平面波が受音部に到来する音場をベクトルで解釈した場合の概念図である。 図5は、本発明の音源距離計測装置に用いられる音源方向計測部の構成の一例を説明するための概略図である。 図6は、分離部を有する本発明の音響情報分離装置の構成の概略を説明するためのブロック図である。 図7は、1kHzオクターブ帯域における各時間窓の距離測定結果の時間変化と確率密度分布の結果である。
符号の説明
10 音源方向計測部
20 音源距離演算部
30 分離部
100 音源
101〜106 単一指向性マイクロホン

Claims (5)

  1. 音源距離計測装置であって、該音源距離計測装置は、
    所定の間隔を開けて配置される少なくとも2つの音源方向計測部であって、各音源方向計測部は、単一指向性の複数のマイクロホンを有し、該複数のマイクロホンは、その感度最大方向を向く単位ベクトルの総和がゼロとなるように配置され、少なくとも音源からの音の方向を計測可能な、少なくとも2つの音源方向計測部と、
    前記少なくとも2つの音源方向計測部により計測される音源からの音の方向を用いて三角測量の原理により音源までの距離を求める音源距離演算部と、
    を具備することを特徴とする音源距離計測装置。
  2. 請求項1に記載の音源距離計測装置を用いる音響情報分離装置であって、該音響情報分離装置は、前記音源距離演算部で演算される音源までの距離を用いて音源からの音響情報を分離する、分離部を具備することを特徴とする音響情報分離装置。
  3. 請求項2に記載の音響情報分離装置において、前記分離部は、前記音源方向計測部で計測される音源の方向を基準に音源からの音響情報を分離することを特徴とする音響情報分離装置。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の音響情報分離装置において、前記少なくとも2つの音源方向計測部は、さらに、音源からの音の大きさを計測可能であり、前記分離部は、前記少なくとも2つの音源方向計測部のそれぞれで測定される音源の音の大きさを基準に音源からの音響情報を分離することを特徴とする音響情報分離装置。
  5. 請求項2乃至請求項4の何れかに記載の音響情報分離装置において、前記少なくとも2つの音源方向計測部は、さらに、音源からの音の周波数を計測可能であり、前記分離部は、前記少なくとも2つの音源方向計測部のそれぞれで測定される音源の音の周波数を基準に音源からの音響情報を分離することを特徴とする音響情報分離装置。
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