JP2009214131A - 枠構造体の製造方法および枠構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】厚さの大きい枠構造体を容易に製造することを課題とする。
【解決手段】金属製の複数の枠部材10,10をその厚さ方向に接合して枠構造体1を形成する枠構造体の製造方法であって、枠部材10,10の接合面18,18を、面削加工して平坦にする面削工程と、枠部材10,10の接合面18,18を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、枠部材10,10をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、枠部材10,10の外周面11側から枠部材10,10同士の突合部12に沿って接合用回転ツールBを移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】金属製の複数の枠部材10,10をその厚さ方向に接合して枠構造体1を形成する枠構造体の製造方法であって、枠部材10,10の接合面18,18を、面削加工して平坦にする面削工程と、枠部材10,10の接合面18,18を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、枠部材10,10をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、枠部材10,10の外周面11側から枠部材10,10同士の突合部12に沿って接合用回転ツールBを移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、枠構造体の製造方法および枠構造体に関する。
金属部材同士を接合する方法として、摩擦撹拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦撹拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで金属部材同士を固相接合させるものである。
この摩擦撹拌接合を用いて、金属部材同士を接合する発明が数多く提案されている。例えば、特許文献1または特許文献2には、複数の金属プレート部材を複数重ね合わせて、金属プレート部材の表面側から回転ツールを押し込んで移動させることで、金属プレート部材の一部を塑性流動化して、金属プレート部材同士を一体化して接合する技術が示されている。
特開2007−30043号公報(図1)
特開平11−28584号公報(図1)
ところで、本出願人は、長尺の直方体の金属部材を互いに接合して、額縁状の枠部材を形成する技術を開発中である。具体的には、一の金属部材の端面を隣接する金属部材の側面に接合して、その突合部を摩擦撹拌して接合することで、4本の金属部材を矩形の枠状に一体化する。この枠部材は、化学蒸着(CVD=Chemical Vapor Deposition)装置のフレーム等に用いられる部材であって、所定の厚さと気密性および水密性が要求される。しかしながら、前記した一般的な摩擦撹拌接合方法では、所望の厚さと気密性および水密性を確保するのが困難であった。
そこで、本出願人は、摩擦撹拌接合を用いて所望の厚さと気密性および水密性を確保できる金属部材同士の接合方法を提案している(特願2006−271243)。この接合方法は、所定の厚さを有する金属部材同士を接合する方法であって、金属部材同士の突合部に対して、金属部材の表面側から摩擦撹拌を行う第一の本接合工程と、裏面側から摩擦撹拌を行う第二の本接合工程とを備えており、第二の本接合工程において、第一の本接合工程で形成された塑性化領域に回転ツールの撹拌ピンを入り込ませつつ摩擦撹拌を行うようになっている。このような接合方法によれば、回転ツールの撹拌ピンの略2倍の厚さの枠部材を形成できるとともに、接合部における気密性や水密性を高めることができる。
近年では、さらなる枠部材の大型化が要求されているが、前記した接合方法では、枠部材の厚さは、回転ツールの大きさによって決まってくるので、枠部材の厚さを厚くするためには、回転ツールを大きくしなければならず手間と費用がかかり、また、回転ツールを大きくしたとしても、製造できる枠部材の厚さには限度があった。
このような観点から、本発明は、厚さの大きい枠構造体を容易に製造することができることができる枠構造体の製造方法および枠構造体を提供することを課題とする。
このような課題を解決するための請求項1に係る発明は、金属製の複数の枠部材をその厚さ方向に接合して枠構造体を形成する枠構造体の製造方法であって、前記枠部材の接合面を、面削加工して平坦にする面削工程と、前記枠部材の接合面を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、前記枠部材をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、前記枠部材の外周面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有することを特徴とする枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、枠部材を重ねて突き合わせているので、従来の枠部材の少なくとも2倍以上の厚さの枠構造体を製造することができる。また、重ねられた枠部材の外周面側から枠部材同士の突合部に沿って摩擦撹拌を行うだけで容易かつ確実に接合することができる。さらに、接合面を面削加工して平坦にすることによって、枠部材同士が隙間なく密着し、さらに接合面を脱脂することによって、接合面から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができ、摩擦撹拌の接合性を高めることができ、枠構造体の接合部の気密性および接着性を向上することができる。
請求項2に係る発明は、前記本接合工程において、前記突合部の外周面側全周に亘って前記接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、外周面の全周に亘って塑性化領域を介して枠部材を一体化できるので、気密性を大幅に向上することができる。
請求項3に係る発明は、前記本接合工程において、前記枠部材の内周面側からの前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールをそれぞれ移動させて摩擦撹拌を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、外周面と内周面とで二重のシール効果が得られるので、気密性をさらに向上することができる。
請求項4に係る発明は、前記本接合工程前に、前記枠部材の外周面を構成する複数の平面のうちの一つに現れる前記枠部材同士の境界線の一端側に第一タブ材を配置するとともに、前記境界線の他端側に第二タブ材を配置するタブ材配置工程と、前記第一タブ材と前記枠部材との突合部に対して摩擦撹拌を行う第一タブ材接合工程と、前記第二タブ材と前記枠部材との突合部に対して摩擦撹拌を行う第二タブ材接合工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、第一タブ材から枠部材同士の突合部、第二タブ材へと摩擦撹拌を行うことによって、一の外周平面の一端から他端まで突合部(境界線)の全長に亘って摩擦撹拌接合を行うことができる。また、摩擦撹拌接合を第一タブ材または第二タブ材上で終了させることによって、接合用回転ツールの抜き穴が枠部材に形成されない。
請求項5に係る発明は、前記第一タブ材接合工程と前記第二タブ材接合工程との間に、前記境界線に沿って仮接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う仮接合工程をさらに有し、前記第一タブ材接合工程、前記仮接合工程および前記第二タブ材接合工程は、前記仮接合用回転ツールを用いて連続して摩擦撹拌を行うことを特徴とする請求項4に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、第一タブ材接合工程の終点での回転ツールの離脱作業が不要となるとともに、仮接合工程の始点での回転ツールの挿入作業が不要となる。さらに、仮接合工程の終点での回転ツールの離脱作業が不要となり、第二タブ材接合工程の始点での回転ツールの挿入作業が不要となる。したがって、予備的な接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
請求項6に係る発明は、前記本接合工程前に、前記接合用回転ツールの挿入位置に下穴を形成する下穴形成工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、多くの時間を要する接合用回転ツールの挿入作業の時間を短縮することができ、接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
請求項7に係る発明は、前記本接合工程において、前記枠部材の内周面に現れる前記枠部材同士の境界線に沿って移動させた前記接合用回転ツールを、前記枠部材の内周面に現れる前記境界線から偏移させた位置で抜き取って、この位置を終了位置とし、その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えたことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、突合部(境界線)に抜き穴が形成されないので、枠部材同士の接合性が高くなり気密性が向上する。また、終了位置の接合用回転ツール抜き穴を補修することで、枠部材の美観を損なうことなく、強度の低下を防止できる。
請求項8に係る発明は、前記補修工程において、前記接合用回転ツール抜き穴に充填用金属部材を充填して補修用回転ツールによって前記枠部材と接合した後、その終了位置に形成された補修用回転ツール抜き穴に溶接金属を埋めて補修することを特徴とする請求項7に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、補修用回転ツール抜き穴を補修することで、枠部材の内周面側の最終仕上げにおいて、面削量を低減することができ、終了位置を平坦に仕上げることが容易にでき、美観を損なうことがない。
請求項9に係る発明は、前記枠部材は、矩形枠状を呈しており、直線状の金属部材の端面を、隣接する直線状の金属部材の側面に突き合わせて摩擦撹拌によって接合して形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、接合部の気密性の高い枠部材を形成することができる。
請求項10に係る発明は、前記枠部材の前記金属部材同士の接合部が、隣接する前記枠部材の前記金属部材同士の接合部に対してオフセットしていることを特徴とする請求項9に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、接合部同士が集中しないので、応力集中を防止することができ、強度の低下を防止できる。
請求項11に係る発明は、前記枠部材の入隅部における前記枠部材同士の突合部は、溶接によって接合することを特徴とする請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法である。
このような方法によれば、枠部材の内周面の突合部においても全周に亘って接合することができるので、枠構造体の気密性を向上することができる。
請求項12に係る発明は、金属製の枠部材をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせ、前記枠部材の外周面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行い、前記枠部材同士を接合したことを特徴とする枠構造体である。
このような構成によれば、枠部材を重ねて突き合わせているので、従来の枠部材の少なくとも2倍以上の厚さを確保することができる。また、重ねられた枠部材の外周面の枠部材同士の突合部に沿って摩擦撹拌を行うだけで容易かつ確実に接合することができる。
本発明に係る枠構造体の製造方法および枠構造体によれば、厚さの大きい枠構造体を容易に製造することができることができるといった優れた効果を発揮する。
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、二個の枠部材10を厚さ方向に重ねて突き合わせた形態を例に挙げて説明する。まず、本発明に係る枠構造体の製造方法によって製造された枠構造体1の構成を説明する。
図1および図3に示すように、かかる枠構造体1は、金属製の二個の枠部材10,10がその厚さ方向に複数重ねられて突き合わされ、摩擦撹拌接合によって枠部材10,10同士が接合されて形成されている。枠部材10は、金属部材の断面が略正方形で、全体で平面視長方形の矩形枠状を呈している。
図1及び図2に示すように、互いに重ねられて突き合わされた枠部材10,10は、その枠部材10,10同士の突合部12に沿って外周面11側から摩擦撹拌を行うことで塑性化領域W1が形成されて枠部材10,10同士が一体化されて接合されている。枠部材10の外周面11における摩擦撹拌は、突合部12の全周に亘って接合用回転ツールを移動させて行われており、外周面11に塑性化領域W1が形成されている。また、摩擦撹拌は、枠部材10,10同士の突合部12に沿って内周面13側からも行われ、内周面13側に塑性化領域W2が形成されている。なお、塑性化領域とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
図2に示すように、各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重合するように形成されており、枠部材10,10同士の突合部12の幅全体に亘って摩擦撹拌が行われている。枠部材10の内周面13の枠部材10,10同士の突合部12の入隅部14(図1および図2参照)は、後記する回転ツールの挿入が困難であるため溶接によって接合されている。
図3に示すように、本実施形態では、枠部材10は、矩形枠状を呈しており、複数の直線状の金属部材15を枠状に接合して形成されている。枠部材10は、直線状の金属部材15の端面を、隣接する金属部材15の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦撹拌を行って接合して一体形成されている。ここで、隣接する金属部材15,15同士は互いに直交しており、併せて平面視L字状を呈している。金属部材15は、断面が略正方形の長尺直方体の形状を呈しており、長手方向の端面が、隣接する金属部材15の側面に突き合わされて接合されている。互いに隣接する金属部材15,15同士の接合は、摩擦撹拌によって行われる。摩擦撹拌接合は、表面側から回転ツールを挿入して突合部16に沿って移動させて塑性化領域W5を形成した後に、裏面側から回転ツールを挿入して突合部16に沿って移動させて塑性化領域W6を形成することで行われている。各塑性化領域W5,W6は、その底部同士が互いに重合するように形成されており、金属部材15,15同士の突合部16の厚さ全体に亘って摩擦撹拌が行われている。
図4に示すように、枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17は、重ねられて隣接する枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17に対してオフセットしている。具体的には、一方の枠部材10(以下、「10a」と表示する場合がある)は、図3の(a)に示すように、長方形枠の短手方向に沿って配置された金属部材15(以下、「15a」と表示する場合がある)の端面が、長方形枠の長手方向に沿って配置された金属部材15(以下、「15b」と表示する場合がある)の側面に突き合わされて摩擦撹拌によって接合されている。他方の枠部材10(以下、「10b」と表示する場合がある)は、図3の(b)に示すように、長方形枠の長手方向に沿って配置された金属部材15(以下、「15c」と表示する場合がある)の端面が、長方形枠の短手方向に沿って配置された金属部材15(以下、「15d」と表示する場合がある)の側面に突き合わされて摩擦撹拌によって接合されている。このように構成することで、図4に示すように、各枠部材10a,10bを重ねて突き合わせた際に、枠部材10aの金属部材15,15同士の接合部17(以下、「17a」と表示する場合がある)と、枠部材10bの金属部材15,15同士の接合部17(以下、「17b」と表示する場合がある)とが、同じ位置で同じ方向に重なることはない。
次に、本実施形態に係る枠構造体の製造方法を説明する。
かかる枠構造体の製造方法は、複数(本実施形態では2つ)の金属製の枠部材10をその厚さ方向に接合して枠構造体1を形成する枠構造体の製造方法であって、枠部材10,10同士の接合面18(図3参照)を、面削加工して平坦にする面削工程と、接合面18を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、枠部材10,10をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、枠部材10,10の外周面11側から枠部材10,10同士の突合部12に沿って接合用回転ツールB(図6参照)を移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有することを特徴とする。
本実施形態では、前記各工程の前に、直線状の金属部材15の端面を、隣接する金属部材15の側面に突き合わせて、その突合部16に沿って摩擦撹拌を行い、枠部材10を一体的に接合する枠部材製造工程を行う。
まず、枠部材製造工程において互いに接合される金属部材15を詳細に説明するとともに、この金属部材15を接合する際に用いられる金属部材接合用第一タブ材51と金属部材接合用第二タブ材52を詳細に説明する。
図5の(a)および(b)に示すように、金属部材15は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦撹拌可能な金属材料からなる。本実施形態では、各金属部材15,15・・は、同一組成の金属材料で形成されている。また、本実施形態では、各金属部材15,15・・は、同等の断面形状(略正方形形状)の長尺直方体状に形成されており、隣接する金属部材15,15同士の突合部16における厚さ寸法が同一になっている。
また、直方体形状を呈するブロック状の金属部材接合用第一タブ材51および金属部材接合用第二タブ材52は、金属部材15,15同士の突合部16を枠部材10の外周面11側と内周面13側から挟むように配置されるものであって、それぞれ、金属部材15,15に添設され、金属部材15の側面に現れる金属部材15,15の継ぎ目(厚さ方向に沿った境界線)を覆い隠す。金属部材15,15の突合部16の一端側(外周側)に金属部材接合用第一タブ材51を配置して、金属部材接合用第一タブ材51の当接面53を、一方の金属部材15の外側の側面および他方の金属部材15の端面に当接させるとともに、金属部材15,15により形成されたL字の入隅部となる突合部16の他端側(内周側)に金属部材接合用第二タブ材52を配置して、金属部材接合用第二タブ材52の二つの当接面54を金属部材15,15の内側の側面に当接させる。なお、金属部材接合用第一タブ材51および金属部材接合用第二タブ材52の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材15と同一組成の金属材料で形成している。また、金属部材接合用第一タブ材51および金属部材接合用第二タブ材52の形状・寸法にも特に制限はないが、本実施形態では、その厚さ寸法を突合部16における金属部材15の厚さ寸法と同一となっている。
次に、図6を参照して、仮接合に用いる回転ツールA(以下、「仮接合用回転ツールA」という。)および本接合に用いる回転ツールB(以下、「本接合用回転ツールB」という。)を詳細に説明する。
図6の(a)に示す仮接合用回転ツールAは、金属部材15(図5参照)よりも硬質である工具鋼などの金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11に突設された撹拌ピン(プローブ)A2とを備えて構成されている。仮接合用回転ツールAの寸法・形状は、金属部材1の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、後記する本接合用回転ツールB(図6の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、本接合よりも小さな負荷で仮接合を行うことが可能となるので、仮接合時に摩擦撹拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、仮接合用回転ツールAの移動速度(送り速度)を本接合用回転ツールBの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、仮接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部A1の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径よりも小さくなっている。
撹拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、撹拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された撹拌翼が形成されている。
図6の(b)に示す本接合用回転ツールBは、工具鋼など金属部材1よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部B1と、このショルダ部B1の下端面B11に突設された撹拌ピン(プローブ)B2とを備えて構成されている。
ショルダ部B1の下端面B11は、仮接合用回転ツールAと同様に、凹面状に成形されている。撹拌ピンB2は、ショルダ部B1の下端面B11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。
以下、枠部材製造工程を詳細に説明する。枠部材製造工程は、(1)準備工程、(2)第一の予備工程、(3)第一の本接合工程、(4)第一の補修工程、(5)第一の横断補修工程、(6)第二の予備工程、(7)第二の本接合工程、(8)第二の補修工程、(9)第二の横断補修工程を含む。なお、第一の予備工程、第一の本接合工程、第一の補修工程および第一の横断補修工程は、金属部材15の表面20側から実行される工程であり、第二の予備工程、第二の本接合工程、第二の補修工程および第二の横断補修工程は、金属部材15の裏面21側から実行される工程である。
(1)準備工程
図5を参照して準備工程を説明する。本実施形態に係る準備工程は、接合すべき金属部材15,15を突き合せる突合工程と、金属部材15,15同士の突合部16の両側に金属部材接合用第一タブ材51と金属部材接合用第二タブ材52を配置するタブ材配置工程と、金属部材接合用第一タブ材51と金属部材接合用第二タブ材52を溶接により金属部材15,15に仮接合する溶接工程とを具備している。
図5を参照して準備工程を説明する。本実施形態に係る準備工程は、接合すべき金属部材15,15を突き合せる突合工程と、金属部材15,15同士の突合部16の両側に金属部材接合用第一タブ材51と金属部材接合用第二タブ材52を配置するタブ材配置工程と、金属部材接合用第一タブ材51と金属部材接合用第二タブ材52を溶接により金属部材15,15に仮接合する溶接工程とを具備している。
突合工程では、接合すべき金属部材15,15を平面視L字状に配置し、一方の金属部材15の側面に他方の金属部材15の端面を密着させる。
タブ材配置工程では、金属部材15,15の突合部16の一端側(外周側)に金属部材接合用第一タブ材51を配置して金属部材接合用第一タブ材51の当接面53(図5の(b)参照)を一方の金属部材15の外周面11側の側面および他方の金属部材15の端面に当接させるとともに、金属部材15,15により形成された入隅部(金属部材15,15の内側の側面により形成された角部)となる突合部16の他端側(内周側)に金属部材接合用第二タブ材52を配置して金属部材接合用第二タブ材52の当接面54,54(図5の(b)参照)を金属部材15,15の内周面13側の側面に当接させる。
溶接工程では、金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51とにより形成された入隅部51bを溶接するとともに、入隅部51bとは逆側の接合端部(突き合わされた金属部材15,15同士で構成されるL字の出隅部分)に位置し、金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51とが面一となる平面接合部51cを溶接して金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51とを接合し、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52とにより形成された入隅部52b,52bを溶接して金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52とを接合する。
準備工程が終了したら、金属部材15,15、金属部材接合用第一タブ材51および金属部材接合用第二タブ材52を図示せぬ摩擦撹拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。
(2)第一の予備工程
第一の予備工程は、金属部材15,15と金属部材接合用第一タブ材51との突合部22(図5参照)を接合する金属部材接合用第一タブ材接合工程と、金属部材15,15同士の突合部16を仮接合する仮接合工程と、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23(図5参照)を接合する金属部材接合用第二タブ材接合工程と、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置に本接合用回転ツールBの挿入用の下穴P1を形成する下穴形成工程とを具備している。
第一の予備工程は、金属部材15,15と金属部材接合用第一タブ材51との突合部22(図5参照)を接合する金属部材接合用第一タブ材接合工程と、金属部材15,15同士の突合部16を仮接合する仮接合工程と、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23(図5参照)を接合する金属部材接合用第二タブ材接合工程と、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置に本接合用回転ツールBの挿入用の下穴P1を形成する下穴形成工程とを具備している。
本実施形態の第一の予備接合工程では、図8の(a)および(b)に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部22,16,23に対して連続して摩擦撹拌を行う。
本実施形態の第一の予備接合工程における摩擦撹拌の手順を図7および図8を参照してより詳細に説明する。
まず、図7の(a)に示すように、金属部材接合用第一タブ材51の適所に設けた開始位置SPの直上に仮接合用回転ツールAを位置させ、続いて、仮接合用回転ツールAを右回転させつつ下降させて撹拌ピンA2を開始位置SPに押し付ける。撹拌ピンA2が金属部材接合用第一タブ材51の表面51aに接触すると、摩擦熱によって撹拌ピンA2の周囲にある金属が塑性流動化し、図7の(b)に示すように、撹拌ピンA2が金属部材接合用第一タブ材51に挿入される。
撹拌ピンA2の全体が金属部材接合用第一タブ材51に入り込み、かつ、ショルダ部A1の下端面A11の全面が金属部材接合用第一タブ材51の表面51aに接触したら、図8に示すように、仮接合用回転ツールAを回転させつつ第一タブ材接合工程の始点s2に向けて相対移動させる。
なお、仮接合用回転ツールAを移動させる際には、ショルダ部A1の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、仮接合用回転ツールAの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。仮接合用回転ツールAを移動させると、その撹拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
仮接合用回転ツールAを相対移動させて第一タブ材接合工程の始点s2まで連続して摩擦撹拌を行ったら、始点s2で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま第一タブ材接合工程に移行する。
第一タブ材接合工程では、金属部材接合用第一タブ材51と金属部材15,15との突合部22に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、金属部材15,15と金属部材接合用第一タブ材51の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部22に対して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく第一タブ材接合工程の始点s2から終点e2まで連続して摩擦撹拌を行う。
なお、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンA2が突合部22に入り込むと、金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51を引き離そうとする力が作用するが、金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51により形成された入隅部51bと平面接合部51cを溶接によりそれぞれ仮接合しているので、金属部材15と金属部材接合用第一タブ材51との間に目開きが発生することがない。
仮接合用回転ツールAが第一タブ材接合工程の終点e2に達したら、終点e2で摩擦撹拌を終了させずに仮接合工程の始点s1まで連続して摩擦撹拌を行い、そのまま仮接合工程に移行する。すなわち、第一タブ材接合工程の終点e2から仮接合工程の始点s1まで仮接合用回転ツールAを離脱させずに摩擦撹拌を継続し、さらに、始点s1で仮接合用回転ツールAを離脱させることなく仮接合工程に移行する。このようにすると、第一タブ材接合工程の終点e2での仮接合用回転ツールAの離脱作業が不要となり、さらに、仮接合工程の始点s1での仮接合用回転ツールAの挿入作業が不要となることから、予備的な接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
本実施形態では、第一タブ材接合工程の終点e2から仮接合工程の始点s1に至る摩擦撹拌のルートを金属部材接合用第一タブ材51上に設定し、仮接合用回転ツールAを第一タブ材接合工程の終点e2から仮接合工程の始点s1に移動させる際の移動軌跡を金属部材接合用第一タブ材51上に形成する。このようにすると、第一タブ材接合工程の終点e2から仮接合工程の始点s1に至る工程中において、金属部材15,15に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
仮接合工程では、金属部材15,15同士の突合部16(図5の(a)参照)に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、金属部材15,15の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部16の全長に亘って連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく仮接合工程の始点s1から終点e1まで連続して摩擦撹拌を行う。このようにすると、仮接合工程中における仮接合用回転ツールAの離脱作業が一切不要となることから、予備的な接合作業のより一層の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
仮接合用回転ツールAが仮接合工程の終点e1に達したら、そのまま第二タブ材接合工程に移行する。すなわち、第二タブ材接合工程の始点s3でもある仮接合工程の終点e1で仮接合用回転ツールAを離脱させることなく第二タブ材接合工程に移行する。
第二タブ材接合工程では、金属部材15,15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23,23に対して摩擦撹拌を行う。本実施形態では、第二タブ材接合工程の始点s3が、突合部23,23の中間に位置しているので、第二タブ材接合工程の始点s3から終点e3に至る摩擦撹拌のルートに折返し点m3を設け、仮接合用回転ツールAを始点s3から折返し点m3に移動させた後に(図8の(a)参照)、仮接合用回転ツールAを折返し点m3から終点e3に移動させることで(図8の(b)参照)、第二タブ材接合工程の始点s3から終点e3まで連続して摩擦撹拌を行う。すなわち、仮接合用回転ツールAを始点s3〜折返し点m3間で往復させた後に、仮接合用回転ツールAを終点e3まで移動させることで、第二タブ材接合工程の始点s3から終点e3まで連続して摩擦撹拌を行う。なお、始点s3から折返し点m3に至る摩擦撹拌のルートおよび折返し点m3から終点e3に至る摩擦撹拌のルートは、それぞれ、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との継ぎ目(突合部23)上に設定する。
始点s3、折返し点m3および終点e3の位置関係に特に制限はないが、本実施形の如く仮接合用回転ツールAを左回転させている場合には、少なくとも折返し点m3から終点e3に至る摩擦撹拌のルートにおいて仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に金属部材1,1が位置するように、第二タブ材接合工程の始点s3、折返し点m3および終点e3の位置を設定することが望ましい。この場合、始点s3〜折返し点m3間においては、往路においても復路においても金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との継ぎ目上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを移動させることが望ましい。このようにすると、始点s3から折返し点m3に至るまでの間に、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に金属部材15が位置し、金属部材15側に接合欠陥が発生したとしても、その後に行われる折返し点m3から終点e3に至る摩擦撹拌において仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に金属部材15が位置することになるので、前記した接合欠陥が是正され、高品質の接合体を得ることが可能となる。
図8の(b)に示すように、仮接合用回転ツールAが第二タブ材接合工程の終点e3に達したら、終点e3で摩擦撹拌を終了させずに、金属部材接合用第二タブ材52上に設けた終了位置EPまで連続して摩擦撹拌を行う。仮接合用回転ツールAが終了位置EPに達したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ上昇させて撹拌ピンA2を終了位置EPから離脱させる。
続いて、下穴形成工程を実行する。下穴形成工程は、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置に下穴P1(図8の(b)参照)を形成する工程である。本実施形態に係る下穴形成工程では、金属部材接合用第一タブ材51の表面で、金属部材15,15同士の突合部16である継ぎ目(境界線)の延長線上に形成する。
下穴P1は、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものである。下穴P1の形成方法に制限はなく、例えば、図示せぬ公知のドリルを回転挿入することで形成することができるが、このほか、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンA2(図6の(a)参照)よりも大型で且つ本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2(図6の(b)参照)よりも小型の撹拌ピンを有する回転ツールを回転させつつ抜き差しすることでも形成することができる。
また、下穴P1の位置(すなわち、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置)にも制限はなく、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23上や金属部材接合用第二タブ材52に形成してもよいし、突合部22に形成してもよいが、本実施形態の如く金属部材15の表面20側に現れる金属部材15,15同士の突合部16である継ぎ目(境界線)の延長線上か、あるいは、図示は省略するが、金属部材15,15同士の突合部16である継ぎ目の端部に形成することが望ましい。
なお、金属部材15,15の継ぎ目(突合部16)の延長線上や金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23上に下穴P1を形成する場合には、図9に示すように、当該延長線上に第一の予備工程における摩擦撹拌の終了位置EPを設け、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンA2を離脱させたときに形成される抜き穴をそのまま下穴とするか、あるいは抜き穴を図示せぬドリルなどで拡径して下穴を形成してもよい。このようにすると、下穴の加工作業を省略あるいは簡略化することが可能となるので、作業時間を短縮することが可能となる。
(3)第一の本接合工程
第一の予備工程が終了したら、金属部材15,15同士の突合部16を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示す本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部16に対して金属部材15の表面20側から摩擦撹拌を行う。
第一の予備工程が終了したら、金属部材15,15同士の突合部16を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示す本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部16に対して金属部材15の表面20側から摩擦撹拌を行う。
第一の本接合工程では、図11の(a)〜(c)に示すように、金属部材接合用第一タブ材51上の開始位置SM1に形成した下穴P1に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を挿入(圧入)し、挿入した撹拌ピンB2を途中で離脱させることなく終了位置EM1まで移動させる。すなわち、第一の本接合工程では、下穴P1から摩擦撹拌を開始し、終了位置EM1まで連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、金属部材接合用第一タブ材51に摩擦撹拌の開始位置SM1を設け、金属部材接合用第二タブ材52に終了位置EM1を設けているが、開始位置SM1と終了位置EM1の位置を限定する趣旨ではない。
図11の(a)〜(c)を参照して第一の本接合工程をより詳細に説明する。
まず、図11の(a)に示すように、下穴P1(開始位置SM1)の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P1に挿入する。撹拌ピンB2を下穴P1に入り込ませると、撹拌ピンB2の周面(側面)が下穴P1の穴壁に当接し、穴壁から金属が塑性流動化する。このような状態になると、塑性流動化した金属を撹拌ピンB2の周面で押し退けながら、撹拌ピンB2が圧入されることになるので、圧入初期段階における圧入抵抗を低減することが可能となり、また、本接合用回転ツールBのショルダ部B1が金属部材接合用第一タブ材51の表面51aに当接する前に撹拌ピンB2が下穴P1の穴壁に当接して摩擦熱が発生するので、塑性流動化するまでの時間を短縮することが可能となる。つまり、摩擦撹拌装置の負荷を低減することが可能となり、加えて、本接合に要する作業時間を短縮することが可能となる。
まず、図11の(a)に示すように、下穴P1(開始位置SM1)の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P1に挿入する。撹拌ピンB2を下穴P1に入り込ませると、撹拌ピンB2の周面(側面)が下穴P1の穴壁に当接し、穴壁から金属が塑性流動化する。このような状態になると、塑性流動化した金属を撹拌ピンB2の周面で押し退けながら、撹拌ピンB2が圧入されることになるので、圧入初期段階における圧入抵抗を低減することが可能となり、また、本接合用回転ツールBのショルダ部B1が金属部材接合用第一タブ材51の表面51aに当接する前に撹拌ピンB2が下穴P1の穴壁に当接して摩擦熱が発生するので、塑性流動化するまでの時間を短縮することが可能となる。つまり、摩擦撹拌装置の負荷を低減することが可能となり、加えて、本接合に要する作業時間を短縮することが可能となる。
撹拌ピンB2の全体が金属部材接合用第一タブ材51に入り込み、かつ、ショルダ部B1の下端面B11の全面が金属部材接合用第一タブ材51の表面51aに接触したら、図11の(b)に示すように、摩擦撹拌を行いながら金属部材15,15同士の突合部16の一端に向けて本接合用回転ツールBを相対移動させ、さらに、突合部22を横切らせて突合部16に突入させる。本接合用回転ツールBを移動させると、その撹拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W5(以下、「表側塑性化領域W5」という。)が形成される。ここで、塑性化領域とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
金属部材15への入熱量が過大になる虞がある場合には、本接合用回転ツールBの周囲に金属部材15の表面20側から水を供給するなどして冷却することが望ましい。なお、金属部材15,15間に冷却水が入り込むと、接合面に酸化皮膜を発生させる虞があるが、本実施形態においては、仮接合工程を実行して金属部材15,15間の目地を閉塞しているので、金属部材15,15間に冷却水が入り込み難く、したがって、接合部の品質を劣化させる虞がない。
本実施形態では、まず、図10に示すように、本接合用回転ツールBを右回転させつつ撹拌ピンB2を開始位置SM1(すなわち、図8の(b)に示す下穴P1)に挿入し、摩擦撹拌を開始する。
金属部材15,15の突合部16の一端まで摩擦撹拌を行ったら、そのまま本接合用回転ツールBを突合部16に突入させ、金属部材15,15同士の継ぎ目上に設定された摩擦撹拌のルートに沿って本接合用回転ツールBを相対移動させることで、突合部16の一端から他端まで連続して摩擦撹拌を行う。突合部16の他端まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、摩擦撹拌を行いながら金属部材15から離反する方向に本接合用回転ツールBを斜めに移動させ、そのまま金属部材接合用第二タブ材52上に設定された終了位置EM1に向けて相対移動させる。
本接合用回転ツールBが終了位置EM1に達したら、図11の(c)に示すように、本接合用回転ツールBを回転させつつ上昇させて撹拌ピンB2を終了位置EM1(図11の(b)参照)から離脱させる。なお、終了位置EM1において撹拌ピンB2を上方に離脱させると、撹拌ピンB2と略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
なお、図9に示すように、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との突合部23に開始位置SM1を設けた場合には、図12に示すように、本接合用回転ツールBを左回転させつつ撹拌ピンB2を開始位置SM1(すなわち、図9に示すEPの位置)に挿入し、摩擦撹拌を開始する。このようにすれば、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を圧入する際に、塑性流動化した金属の一部が金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との間にある微細な隙間に流れ込み、その後に塑性流動化した金属の前記した隙間への逸散が緩和されるので、肉不足による接合欠陥が生じ難くなる。
また、下穴P1に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2(図6の(b)参照)を圧入すると、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52とを引き離そうとする力が作用するが、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52とにより形成された入隅部52b,52bを溶接により仮接合しているので、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52との間に目開きが発生することがない。
金属部材15,15同士の突合部16の一端まで摩擦撹拌を行ったら、そのまま本接合用回転ツールBを突合部16に突入させ、金属部材15,15の継ぎ目上に設定された摩擦撹拌のルートに沿って本接合用回転ツールBを相対移動させることで、突合部16の一端から他端まで連続して摩擦撹拌を行う。突合部16の他端まで本接合用回転ツールBを相対移動させたら、摩擦撹拌を行いながら突合部22を横切らせ、そのまま終了位置EM1に向けて相対移動させる。
本接合用回転ツールBが終了位置EM1に達したら、本接合用回転ツールBを回転させながら上昇させて撹拌ピンB2を終了位置EM1から離脱させる。なお、終了位置EM1において撹拌ピンB2を上方に離脱させると、撹拌ピンB2と略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
なお、本実施形態においては、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM1を、金属部材接合用第一タブ材51上または突合部23に設けた場合を例示したが、図13に示すように、金属部材接合用第二タブ材52上に設けてもよい。
(4)第一の補修工程
第一の本接合工程が終了したら、図14に示すように、第一の本接合工程により金属部材15に形成された表側塑性化領域W5に対して摩擦撹拌を第一の補修工程を実行する。本実施形態に係る第一の補修工程では、図14および図15に示すように、表側塑性化領域W5のうち、少なくとも、第一の補修領域R1および第二の補修領域R2に対して本接合用回転ツールBよりも小型の補修用回転ツールC(図14の(b)参照)により摩擦撹拌を行う。
第一の本接合工程が終了したら、図14に示すように、第一の本接合工程により金属部材15に形成された表側塑性化領域W5に対して摩擦撹拌を第一の補修工程を実行する。本実施形態に係る第一の補修工程では、図14および図15に示すように、表側塑性化領域W5のうち、少なくとも、第一の補修領域R1および第二の補修領域R2に対して本接合用回転ツールBよりも小型の補修用回転ツールC(図14の(b)参照)により摩擦撹拌を行う。
第一の補修領域R1に対する摩擦撹拌は、本接合用回転ツールB(図6の(b)参照)の進行方向に沿って形成される虞のあるトンネル欠陥を分断することを目的として行われるものである。本接合用回転ツールBを右回転させた本実施形態においては、進行方向の左側にトンネル欠陥が発生する虞があるので、平面視して進行方向の左側に位置する表側塑性化領域W5の上部を少なくとも含むように第一の補修領域R1を設定するとよい。
第二の補修領域R2に対する摩擦撹拌は、本接合用回転ツールBが突合部22を横切る際に表側塑性化領域W5に巻き込まれた酸化皮膜(金属部材15の側面と金属部材接合用第一タブ材51の当接面に形成されていた酸化皮膜)を分断することを目的として行われるものである。本実施形態の如く本接合工程における摩擦撹拌の終了位置EM1を金属部材接合用第一タブ材51に設け、かつ、本接合用回転ツールB(図6の(b)参照)を左回転させた場合には、進行方向の左側にある表側塑性化領域W5の上部に酸化皮膜が巻き込まれている可能性が高いので、金属部材接合用第一タブ材51に隣接する表側塑性化領域W5のうち、平面視して進行方向の左側に位置する表側塑性化領域W5の上部を少なくとも含むように第二の補修領域R2を設定するとよい。
第一の補修工程では、図15に示すように、一の補修用回転ツールを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、第一の補修領域R1および第二の補修領域R2に対して連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、第一の補修領域R1、第二の補修領域R2の順序で摩擦撹拌を行う場合を例示するが、摩擦撹拌の順序を限定する趣旨ではない。
第一の補修工程における摩擦撹拌の手順を、図15を参照してより詳細に説明する。
まず、金属部材15の適所に設けた開始位置SRに補修用回転ツールCの撹拌ピンを挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、第一の補修領域R1(図14の(a)参照)に対して摩擦撹拌を行う。本実施形態では、開始位置SRを挟んで終了位置ERと反対側に折返し点MRを設け、補修用回転ツールCを折返し点MRに向かって相対移動させた後に、折返し点MRで折り返し、その後、突合部16(図10参照)に沿って相対移動させることで、第一の補修領域R1(図14の(a)参照)に対して摩擦撹拌を行う。
まず、金属部材15の適所に設けた開始位置SRに補修用回転ツールCの撹拌ピンを挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、第一の補修領域R1(図14の(a)参照)に対して摩擦撹拌を行う。本実施形態では、開始位置SRを挟んで終了位置ERと反対側に折返し点MRを設け、補修用回転ツールCを折返し点MRに向かって相対移動させた後に、折返し点MRで折り返し、その後、突合部16(図10参照)に沿って相対移動させることで、第一の補修領域R1(図14の(a)参照)に対して摩擦撹拌を行う。
第一の補修領域R1に対する摩擦撹拌が終了したら、補修用回転ツールCを離脱させずにそのまま第二の補修領域R2に移動させ、第二の補修領域R2に対して摩擦撹拌を行う。なお、補修用回転ツールCで摩擦撹拌できる領域に比して第二の補修領域R2が大きい場合には、摩擦撹拌のルートをずらしつつ補修用回転ツールCを何度かUターンさせればよい。
第二の補修領域R2に対する摩擦撹拌が終了したら、補修用回転ツールCを終了位置ERに移動させ、補修用回転ツールCを回転させつつ上昇させて撹拌ピンC2(図14の(b)参照)を終了位置ERから離脱させる。
(5)第一の横断補修工程
第一の補修工程が終了したら、図16に示すように、表側塑性化領域W5を複数回横断するように横断用回転ツールDを移動させることで、表側塑性化領域W5に対して摩擦撹拌を行う第一の横断補修工程を実行する。
第一の補修工程が終了したら、図16に示すように、表側塑性化領域W5を複数回横断するように横断用回転ツールDを移動させることで、表側塑性化領域W5に対して摩擦撹拌を行う第一の横断補修工程を実行する。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌のルートは、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルート(表側塑性化領域W5の中央線)上において複数の再塑性化領域W7,W7,…が互いに離間するように設定されていて、本実施形態では、表側塑性化領域W5を横切る複数の交差ルートF1,F1,…と、隣り合う交差ルートF1,F1の同側の端部同士を繋ぐ移行ルートF2,F2,…とを備えている。
交差ルートF1は、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートと直交している。また、移行ルートF2は、表側塑性化領域W5の長手方向の右側あるいは左側に設けられていて、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートと平行になっている。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌の手順を詳細に説明する。
本実施形態でも、一の横断用回転ツールDを、一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように、表側塑性化領域W5を挟んでジグザグ状に移動させることで、摩擦撹拌の開始位置SCから終了位置ECまで連続して摩擦撹拌を行う。
本実施形態でも、一の横断用回転ツールDを、一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように、表側塑性化領域W5を挟んでジグザグ状に移動させることで、摩擦撹拌の開始位置SCから終了位置ECまで連続して摩擦撹拌を行う。
第一の横断補修工程では、まず、金属部材15の適所に設けた開始位置SCに横断用回転ツールDの撹拌ピンD2(図17参照)を挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、一つ目の交差ルートF1に沿って連続して摩擦撹拌を行う。一つ目の交差ルートF1の終点e10に到達したら、横断用回転ツールDの移動方向を変更して、移行ルートF2に沿って移動させ、表側塑性化領域W5の側方にある金属に対して連続して摩擦撹拌を行う。横断用回転ツールDが二つ目の交差ルートF1の始点s10に達したら、横断用回転ツールDの移動方向を変更して二つ目の交差ルートF1に沿って移動させ、表側塑性化領域W5に対して連続して摩擦撹拌を行う。以上のような過程を繰り返し、横断用回転ツールDが最後の交差ルートF1の終点e10に達したら、横断用回転ツールDを終了位置ECに移動させ、横断用回転ツールDを回転させつつ上昇させて撹拌ピンD2(図17参照)を終了位置ECから離脱させる。
第一の横断補修工程が終了したら、第一の予備接合工程、第一の本接合工程、第一の補修工程および第一の横断補修工程における摩擦撹拌で発生したバリを除去し、さらに、金属部材15,15を裏返し、裏面21を上にする。
(6)第二の予備工程
金属部材15,15を裏返したら、第二の予備工程を実行する。本実施形態に係る第二の予備工程は、第二の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM2(図18参照)に下穴P2(図19の(a)参照)を形成する下穴形成工程を具備している。この下穴形成工程は、前記した第一の予備工程における下穴形成工程と同等の手順で行われる。
金属部材15,15を裏返したら、第二の予備工程を実行する。本実施形態に係る第二の予備工程は、第二の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM2(図18参照)に下穴P2(図19の(a)参照)を形成する下穴形成工程を具備している。この下穴形成工程は、前記した第一の予備工程における下穴形成工程と同等の手順で行われる。
(7)第二の本接合工程
第二の予備工程が終了したら、図18に示すように、第一の本接合工程で使用した本接合用回転ツールBを使用して、突合部16に対して金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行う第二の本接合工程を実行する。第二の本接合工程は、金属部材15,15同士の突合部16を本格的に接合する工程である。本実施形態に係る第二の本接合工程では、図19の(a)および(b)に示すように、第一の本接合工程で使用した本接合用回転ツールBを使用して、突合部16に対して金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行う。突合部16に対して摩擦撹拌を行う際には、第一の本接合工程で形成された表側塑性化領域W5に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を入り込ませつつ摩擦撹拌を行う(図19の(b)参照)。
第二の予備工程が終了したら、図18に示すように、第一の本接合工程で使用した本接合用回転ツールBを使用して、突合部16に対して金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行う第二の本接合工程を実行する。第二の本接合工程は、金属部材15,15同士の突合部16を本格的に接合する工程である。本実施形態に係る第二の本接合工程では、図19の(a)および(b)に示すように、第一の本接合工程で使用した本接合用回転ツールBを使用して、突合部16に対して金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行う。突合部16に対して摩擦撹拌を行う際には、第一の本接合工程で形成された表側塑性化領域W5に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を入り込ませつつ摩擦撹拌を行う(図19の(b)参照)。
第二の本接合工程では、金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52の突合部23に設けた下穴P2(開始位置SM2)に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を挿入(圧入)し、挿入した撹拌ピンB2を途中で離脱させることなく金属部材接合用第一タブ材51に設けた終了位置EM2まで移動させる。すなわち、第二の本接合工程では、下穴P2から摩擦撹拌を開始し、終了位置EM2まで連続して摩擦撹拌を行う。
図19の(a)〜(c)を参照して第二の本接合工程をより詳細に説明する。
まず、図19の(a)に示すように、下穴P2の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P2に挿入する。
まず、図19の(a)に示すように、下穴P2の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P2に挿入する。
撹拌ピンB2の全体が金属部材15と金属部材接合用第二タブ材52の突合部23に入り込み、かつ、ショルダ部B1の下端面B11の全面が突合部23の表面に接触したら、図19の(b)に示すように、摩擦撹拌を行いながら本接合用回転ツールBを金属部材15,15同士の突合部16の一端に向けて相対移動させる。本接合用回転ツールBを移動させると、その撹拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W6(以下、「裏側塑性化領域W6」という。)が形成される。ここで、塑性化領域とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
本実施形態においては、第一の本接合工程と第二の本接合工程において同一の本接合用回転ツールBを用いているので、裏側塑性化領域W6の断面積は、表側塑性化領域W3の断面積と同等になる。なお、第一の本接合工程の場合と同様に、本接合用回転ツールBを移動させる際には、ショルダ部B1の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、本接合用回転ツールBの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。また、金属部材15への入熱量が過大になる虞がある場合には、本接合用回転ツールBの周囲に裏面21側から水を供給するなどして冷却することが望ましい。
金属部材15,15同士の突合部16の一端に到達したら、金属部材15,15の継ぎ目に沿って本接合用回転ツールBを相対移動させて突合部16の他端まで連続して摩擦撹拌を行い、さらに、摩擦撹拌を行いながら終了位置EM2まで相対移動させる。
突合部16に対して摩擦撹拌を行う際には、第一の本接合工程で形成された表側塑性化領域W3に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を入り込ませつつ摩擦撹拌を行う。このようにすると、第一の本接合工程で形成された表側塑性化領域W3の深部が、撹拌ピンB2によって再び摩擦撹拌されることになるので、表側塑性化領域W3の深部に接合欠陥が連続的に形成されていたとしても、当該接合欠陥を分断して不連続にすることが可能となり、ひいては、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。
本接合用回転ツールBが終了位置EM2に達したら、本接合用回転ツールBを回転させつつ上昇させて撹拌ピンB2を終了位置EM2から離脱させる(図19の(c)参照)。
なお、第一の本接合工程で残置された抜き穴Q1(図10参照)と第二の本接合工程における本接合用回転ツールBの移動ルートとが重なると、塑性流動化した金属が抜き穴Q1に流れ込み、接合欠陥が発生する虞があるので、抜き穴Q1から離れた位置に第二の本接合工程における摩擦撹拌の終了位置EM2(抜き穴Q2(図18参照))を設けるとともに、抜き穴Q1を避けるように第二の本接合工程における摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を移動させることが望ましい。
また、第二の本接合工程で用いる本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2が第一の本接合工程の抜き穴Q1を通過しない場合であっても、その離隔距離が小さい場合には、塑性流動化した金属が抜き穴Q1に押し出され、接合欠陥が発生する虞があるので、より好適には、第一の本接合工程における摩擦撹拌の終了位置EM1と、第二の本接合工程における本接合用回転ツールBの移動軌跡(本実施形態では終了位置EM2)との平面視での最短距離を、本接合用回転ツールBのショルダ部B1の外径以上にすることが望ましい。
なお、本実施形態の如く第一の本接合工程で使用した本接合用回転ツールBを使用して第二の本接合工程を行えば、作業効率が向上してコストの削減を図ることが可能になり、さらには、表側塑性化領域W5の断面積と裏側塑性化領域W6の断面積とが同等になるので、接合部の品質が均質になるが、第一の本接合工程と第二の本接合工程とで異なる形態の本接合用回転ツールを用いても差し支えない。
第一の本接合工程と第二の本接合工程とで異なる形態の本接合用回転ツールを用いる場合には、例えば図20の(a)および(b)に示すように、第一の本接合工程で用いる本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の長さL1と第二の本接合工程で用いる本接合用回転ツールB’の撹拌ピンB2’の長さL2の和を、突合部16における金属部材15の肉厚t以上に設定することが望ましい。なお、撹拌ピンB2,B2’の長さL1,L2が、それぞれ肉厚t未満であることは言うまでもない。このようにすれば、第一の本接合工程で形成された表側塑性化領域W3の深部が、第二の本接合工程で使用する本接合用回転ツールB’の撹拌ピンB2’によって再び摩擦撹拌されることになるので、表側塑性化領域W3の深部に接合欠陥が連続的に形成されていたとしても、当該接合欠陥を分断して不連続にすることが可能となり、ひいては、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。
(8)第二の補修工程
第二の本接合工程が終了したら、第二の本接合工程により金属部材15に形成された裏側塑性化領域W6に対して摩擦撹拌を行う第二の補修工程を実行する。第二の補修工程は、金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
第二の本接合工程が終了したら、第二の本接合工程により金属部材15に形成された裏側塑性化領域W6に対して摩擦撹拌を行う第二の補修工程を実行する。第二の補修工程は、金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
(9)第二の横断補修工程
第二の補修工程が終了したら、第二の本接合工程により金属部材15に形成された裏側塑性化領域W6に対して摩擦撹拌を行う第二の横断補修工程を実行する。第二の横断補修工程は、金属部材15の裏面21側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の横断補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
第二の横断補修工程が終了したら、第二の予備工程、第二の本接合工程、第二の補修工程および第二の横断補修工程における摩擦撹拌で発生したバリを除去し、さらに、金属部材接合用第一タブ材51および金属部材接合用第二タブ材52を切除する。
以上のような(1)〜(9)の工程を経ることで、肉厚が40(mm)を超えるような極厚の金属部材15,15を接合する場合であっても、接合部における気密性や水密性を向上させることが可能となる。また、前記の工程を複数行い、4本の金属部材15をそれぞれ接合することによって、図3の(a)および(b)に示すような枠部材10a,10bを形成することができる。
次に、本実施形態に係る枠構造体の製造方法の、枠部材10,10同士を接合する工程について説明する。本実施形態における製造方法は、枠部材10の接合面18を、面削加工して平坦にする面削工程と、面削加工された接合面18を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、枠部材10,10をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、重ねられた枠部材10,10の外周面11側から枠部材10,10同士の突合部12に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有しており、本接合工程前に、枠部材10,10の外周面11のうちの一外周平面11aに現れる境界線(枠部材10,10同士の突合部12)の両端に第一タブ材60と第二タブ材70をそれぞれ配置するタブ材配置工程と、第一タブ材60と枠部材10,10との突合部65に対して摩擦撹拌を行う第一タブ材接合工程と、第二タブ材70と枠部材10,10との突合部75に対して摩擦撹拌を行う第二タブ材接合工程と、をさらに有している。さらに、本実施形態における製造方法は、第一タブ材接合工程と前記第二タブ材接合工程との間に、一外周平面11aの枠部材10,10同士の突合部12に沿って仮接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う仮接合工程をさらに有し、本接合工程前に、接合用回転ツールの開始位置に、下穴を形成する下穴形成工程をさらに有する。
以下、枠部材10,10同士を接合して枠構造体1を形成する枠構造体の製造方法の各工程を詳細に説明する。かかる製造方法は、(10)面削工程、(11)脱脂工程、(12)突合工程、(13)タブ材配置工程、(14)溶接工程、(15)第一タブ材接合工程、(16)仮接合工程、(17)第二タブ材接合工程、(18)第一の下穴形成工程、(19)第一の本接合工程、(20)第一の補修工程、(21)第一の横断補修工程、(22)第二の下穴形成工程、(23)第二の本接合工程、(24)抜き穴補修工程、(25)第二の補修工程、(26)第二の横断補修工程、(27)入隅部溶接工程を含む。なお、第一の下穴形成工程、第一の本接合工程、第一の補修工程および第一の横断補修工程は、枠部材10の外周面11側から実行される工程であり、第二の下穴形成工程、第二の本接合工程、第二の補修工程および第二の横断補修工程は、枠部材10の内周面13側から実行される工程である。なお、(10)〜(14)の工程が、摩擦撹拌接合を行う前の準備工程に該当する。
(10)面削工程
面削工程では、枠部材10を図示せぬ架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。そして、隣り合う枠部材10との接合面18(図3の(a)および(b)参照)となる面(上側の枠部材10aの下面と、下側の枠部材10bの上面)の全体に亘ってフライス盤等の工具を用いて面削加工を行い表面の凹凸を取り除く。これによって、接合面の平坦度が向上し、枠部材10,10同士が密着するようになる。なお、接合面18以外に、第一タブ材60と第二タブ材70が当接される面(外周面11)にも面削加工を施しておくのが好ましい。
面削工程では、枠部材10を図示せぬ架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。そして、隣り合う枠部材10との接合面18(図3の(a)および(b)参照)となる面(上側の枠部材10aの下面と、下側の枠部材10bの上面)の全体に亘ってフライス盤等の工具を用いて面削加工を行い表面の凹凸を取り除く。これによって、接合面の平坦度が向上し、枠部材10,10同士が密着するようになる。なお、接合面18以外に、第一タブ材60と第二タブ材70が当接される面(外周面11)にも面削加工を施しておくのが好ましい。
(11)脱脂工程
脱脂工程では、面削加工された各枠部材10を、図示せぬ脱脂用の処理槽のアルコールやアセトン等の脱脂処理液内に浸けて、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れを取り除く。これによって、接合面18から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができ、摩擦撹拌の接合性を高めることができる。
脱脂工程では、面削加工された各枠部材10を、図示せぬ脱脂用の処理槽のアルコールやアセトン等の脱脂処理液内に浸けて、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れを取り除く。これによって、接合面18から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができ、摩擦撹拌の接合性を高めることができる。
(12)突合工程
突合工程では、図4に示すように、各枠部材10a,10bを、その長手方向と短手方向が揃うように重ねて突き合わせる。ここで、面削加工および脱脂を施した各枠部材10a,10bの接合面18,18同士が当接するように重ねる。このとき、一方の枠部材10aは、その長手方向に沿って塑性化領域W3,W4が形成されており、他方の枠部材10bは、その短手方向に沿って塑性化領域W3,W4が形成されている。したがって、各枠部材10a,10bの塑性化領域W3,W4は、互いに直角に交差することとなり、枠部材10aの金属部材15,15同士の接合部17aは、重ねられて隣接する枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17bに対してオフセットする。このように、配置することによって、枠構造体1の厚さ方向全体に亘って、塑性化領域W3,W4で構成される部分を少なくすることができる。
突合工程では、図4に示すように、各枠部材10a,10bを、その長手方向と短手方向が揃うように重ねて突き合わせる。ここで、面削加工および脱脂を施した各枠部材10a,10bの接合面18,18同士が当接するように重ねる。このとき、一方の枠部材10aは、その長手方向に沿って塑性化領域W3,W4が形成されており、他方の枠部材10bは、その短手方向に沿って塑性化領域W3,W4が形成されている。したがって、各枠部材10a,10bの塑性化領域W3,W4は、互いに直角に交差することとなり、枠部材10aの金属部材15,15同士の接合部17aは、重ねられて隣接する枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17bに対してオフセットする。このように、配置することによって、枠構造体1の厚さ方向全体に亘って、塑性化領域W3,W4で構成される部分を少なくすることができる。
(13)タブ材配置工程
タブ材配置工程は、接合すべき枠部材10a,10b同士の摩擦撹拌の開始位置や終了位置が設けられる当て部材(第一タブ材60および第二タブ材70)を準備する工程であり、本実施形態では、重ねられた枠部材10a,10bの外周面11のうちの一外周平面11aにおける枠部材10a,10b同士の突合部12の両端に第一タブ材60と第二タブ材70をそれぞれ配置する工程を各外周平面の接合ごとに行う。
タブ材配置工程は、接合すべき枠部材10a,10b同士の摩擦撹拌の開始位置や終了位置が設けられる当て部材(第一タブ材60および第二タブ材70)を準備する工程であり、本実施形態では、重ねられた枠部材10a,10bの外周面11のうちの一外周平面11aにおける枠部材10a,10b同士の突合部12の両端に第一タブ材60と第二タブ材70をそれぞれ配置する工程を各外周平面の接合ごとに行う。
図21乃至図23に示すように、本実施形態では、第一タブ材60および第二タブ材70は、直方体形状を呈しており、重ねられた枠部材10a,10bの外周面11のうちの一外周平面11aの両端で、枠部材10a,10b同士の突合部12を挟むように配置されるものである。第一タブ材60および第二タブ材70は、その一面62,72(図22および図23参照)が、枠部材10a,10bの外周面11のうちの一外周平面11aと面一になるように枠部材10a,10bに添設され、一外周平面11aと直交する第一直交平面11bおよび第二直交平面11cにそれぞれ当接してその端部を覆い隠す。第一タブ材60および第二タブ材70の材質に特に制限はないが、本実施形態では、金属部材1と同一組成の金属材料で形成している。また、第一タブ材60および第二タブ材70の形状・寸法にも特に制限はないが、本実施形態では、その厚さ寸法を重ねた枠部材10a,10bの厚さ寸法と同一にしている。
タブ材配置工程では、重ねられて突き合わされた枠部材10a,10bの外周面11のうちの一外周平面11a(図22および図23参照)に現れる境界線(枠部材10a,10b同士の突合部12)の一端側に第一タブ材60を配置して第一タブ材60の当接面61(図22および図23参照)を枠部材10の外周面11の一外周平面11aと直交する第一直交平面11b(図21参照)に当接させる。このとき、第一タブ材60の一面62が、一外周平面11aと面一になるように配置する。その後、第一タブ材60の配置側とは逆側で一外周平面11aと直交する第二直交平面11c(図22参照)に第二タブ材70を配置する。
なお、第一タブ材60および第二タブ材70は、本実施形態では、新たな部材を用いて形成しているが、枠部材製造工程で使用して切除した金属部材接合用第一タブ材51同士または金属部材接合用第二タブ材52同士をそれぞれ重ね合わせて再利用してもよい。この場合、枠部材10a,10bとの当接面を面削加工して平坦にして利用する。
(14)溶接工程
溶接工程では、図21に示すように、枠部材10a,10bと第一タブ材60とにより形成された入隅部60a(すなわち、枠部材10a,10bの第一直交平面11bと、これと直交する第一タブ材60の面63とにより形成された角部60a)を溶接して枠部材10a,10bと第一タブ材60とを接合する。また、枠部材10a,10bと第二タブ材70とにより形成された入隅部70a(図22参照)を溶接して枠部材10a,10bと第二タブ材70とを接合する。なお、入隅部60a,70aの全長に亘って連続して溶接を施してもよいし、断続して溶接を施してもよい。
溶接工程では、図21に示すように、枠部材10a,10bと第一タブ材60とにより形成された入隅部60a(すなわち、枠部材10a,10bの第一直交平面11bと、これと直交する第一タブ材60の面63とにより形成された角部60a)を溶接して枠部材10a,10bと第一タブ材60とを接合する。また、枠部材10a,10bと第二タブ材70とにより形成された入隅部70a(図22参照)を溶接して枠部材10a,10bと第二タブ材70とを接合する。なお、入隅部60a,70aの全長に亘って連続して溶接を施してもよいし、断続して溶接を施してもよい。
面削工程から溶接工程までの準備工程が終了したら、枠部材10a,10b、第一タブ材60および第二タブ材70を図示せぬ摩擦撹拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。なお、溶接工程を省略する場合には、図示せぬ摩擦撹拌装置の架台上で、突合工程とタブ材配置工程を実行する。
(15)第一タブ材接合工程(表面接合工程)
第一タブ材接合工程は、第一の本接合工程に先立って行われる工程であり、本実施形態では、図21および図22に示すように、枠部材10a,10bの外周面11と直交する表面20a(すなわち、枠部材10a,10bの厚さ方向一側に位置する枠部材10aの平面視枠状の表側の表面20a)と第一タブ材60との突合部64を接合する表面接合工程と、図22および図23に示すように、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの一端部における第一タブ材60との突合部65を接合する外周面接合工程とを具備している。
第一タブ材接合工程は、第一の本接合工程に先立って行われる工程であり、本実施形態では、図21および図22に示すように、枠部材10a,10bの外周面11と直交する表面20a(すなわち、枠部材10a,10bの厚さ方向一側に位置する枠部材10aの平面視枠状の表側の表面20a)と第一タブ材60との突合部64を接合する表面接合工程と、図22および図23に示すように、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの一端部における第一タブ材60との突合部65を接合する外周面接合工程とを具備している。
第一タブ材接合工程の表面接合工程では、図21に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きのコ字状の移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部64に対して摩擦撹拌を行う。
具体的には、まず、第一タブ材60の適所に設けた開始位置SP1の直上に仮接合用回転ツールAを位置させ、続いて、図6の(a)に示すものと同等の仮接合用回転ツールAを左回転させつつ下降させて撹拌ピンを開始位置SP1に押し付ける。撹拌ピンが第一タブ材60の表面に接触すると、摩擦熱によって撹拌ピンの周囲にある金属が塑性流動化し、撹拌ピンA2が第一タブ材60に挿入される。
撹拌ピンの全体が第一タブ材60に入り込み、かつ、ショルダ部の下端面の全面が第一タブ材60の表面に接触したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ第一タブ材接合工程の始点s21に向けて相対移動させる。
なお、仮接合用回転ツールAを移動させる際には、ショルダ部の軸線を鉛直線に対して進行方向の後ろ側へ僅かに傾斜させてもよいが、傾斜させずに鉛直にすると、仮接合用回転ツールAの方向転換が容易となり、複雑な動きが可能となる。仮接合用回転ツールAを移動させると、その撹拌ピンの周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンから離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
仮接合用回転ツールAを相対移動させて第一タブ材接合工程の始点s21まで連続して摩擦撹拌を行ったら、始点s21で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部64に沿って移動させて第一タブ材60と枠部材10aとの突合部64に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10aと第一タブ材60の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部64に対して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく始点s21から終点e21まで連続して摩擦撹拌を行う。
なお、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に枠部材10aが位置するように始点s21と終点e21の位置を設定することが望ましい。このようにすると、枠部材10a側に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の枠構造体1(図1参照)を得ることが可能となる。
ちなみに、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に枠部材10aが位置するように第一タブ材接合工程の始点と終点の位置を設定することが望ましい。具体的には、図示は省略するが、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合の終点e21の位置に始点を設け、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合の始点s21の位置に終点を設ければよい。
なお、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンA2が突合部64に入り込むと、枠部材10aと第一タブ材60を引き離そうとする力が作用するが、枠部材10a,10bと第一タブ材60により形成された入隅部60aを溶接により仮接合するとともに、クランプ等の治具で拘束しているので、枠部材10a,10bと第一タブ材60との間に目開きが発生することがない。なお、必要に応じて、枠部材10a,10bと第一タブ材60との接合部の外周面11側も溶接にて固定するようにしておいてもよい。この際、摩擦撹拌接合を行う範囲と溶接部が重ならないようにするのが好ましい。
仮接合用回転ツールAが終点e21に達したら、終点e21で摩擦撹拌を終了させずに、第一タブ材60の表面に設けた終了位置EP1まで連続して摩擦撹拌を行う。仮接合用回転ツールAが終了位置EP1に達したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ上昇させて撹拌ピンを終了位置EP1から離脱させる。
表面接合工程が終了した後、外周面接合工程を実行する前に、第二タブ材接合工程における表面接合工程を先行して実行する。図22に示すように、突合部12の、第一タブ材60とは逆側の端部で、前記した第一タブ材接合工程の表面接合工程と同様の工程を実行して、枠部材10a,10bの外周面11と直交する表面21a(すなわち、枠部材10a,10bの厚さ方向他側に位置する枠部材10bの平面視枠状の裏側の表面21a)と第二タブ材70との突合部74を接合する。この工程が、第二タブ材接合工程における表面接合工程となる。
(15)第一タブ材接合工程(外周面接合工程)
その後、第一タブ材接合工程の外周面接合工程を実行する。第一タブ材接合工程の外周面接合工程は、仮接合工程および第二タブ材接合工程の外周面接合工程と連続的に実行される工程であって、図22および図23に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部65、一外周平面11a上の枠部材10a,10b同士の突合部12、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの他端部における第二タブ材70との突合部75に対して連続して摩擦撹拌を行う。すなわち、摩擦撹拌の開始位置SP2に挿入した仮接合用回転ツールAの撹拌ピンを途中で離脱させることなく終了位置EP2まで移動させて、第一タブ材接合工程の外周面接合工程、仮接合工程および第二タブ材接合工程の外周面接合工程の3つの工程を連続して実行する。なお、本実施形態では、第一タブ材60に摩擦撹拌の開始位置SP2を設け、第二タブ材70に終了位置EP2を設けているが、開始位置SP2と終了位置EP2の位置を限定する趣旨ではない。
その後、第一タブ材接合工程の外周面接合工程を実行する。第一タブ材接合工程の外周面接合工程は、仮接合工程および第二タブ材接合工程の外周面接合工程と連続的に実行される工程であって、図22および図23に示すように、一の仮接合用回転ツールAを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、突合部65、一外周平面11a上の枠部材10a,10b同士の突合部12、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの他端部における第二タブ材70との突合部75に対して連続して摩擦撹拌を行う。すなわち、摩擦撹拌の開始位置SP2に挿入した仮接合用回転ツールAの撹拌ピンを途中で離脱させることなく終了位置EP2まで移動させて、第一タブ材接合工程の外周面接合工程、仮接合工程および第二タブ材接合工程の外周面接合工程の3つの工程を連続して実行する。なお、本実施形態では、第一タブ材60に摩擦撹拌の開始位置SP2を設け、第二タブ材70に終了位置EP2を設けているが、開始位置SP2と終了位置EP2の位置を限定する趣旨ではない。
第一タブ材接合工程の外周面接合工程、仮接合工程および第二タブ材接合工程の外周面接合工程における摩擦撹拌の手順を図22および図23を参照してより詳細に説明する。
図22および図23に示すように、まず、第一タブ材60の適所に設けた開始位置SP2の直上に仮接合用回転ツールA(図23参照)を位置させ、続いて、仮接合用回転ツールAを右回転させつつ下降させて撹拌ピンA2を開始位置SP2に押し付ける。
撹拌ピンA2の全体が第一タブ材60に入り込み、かつ、ショルダ部の下端面の全面が第一タブ材60の表面に接触したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ第一タブ材接合工程の始点s22(図23参照)に向けて相対移動させる。仮接合用回転ツールAを移動させると、その撹拌ピンの周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
仮接合用回転ツールAを相対移動させて第一タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s22まで連続して摩擦撹拌を行ったら、始点s22で仮接合用回転ツールAを離脱させずにそのまま突合部65に沿って移動させて突合部65に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10a,10bと第一タブ材60の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部65に対して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく始点s22から終点e22(図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行う。
なお、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に枠部材10a,10bが位置するように第一タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s22と終点e22の位置を設定することが望ましい。このようにすると、枠部材10a,10b側に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
ちなみに、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に微細な接合欠陥が発生する虞があるので、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に枠部材10a,10bが位置するように第一タブ材接合工程の始点と終点の位置を設定することが望ましい。具体的には、図示は省略するが、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合の終点e22の位置に始点を設け、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合の始点s22の位置に終点を設ければよい。
なお、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンA2が突合部65に入り込むと、枠部材10a,10bと第一タブ材60を引き離そうとする力が作用するが、枠部材10a,10bと第一タブ材60により形成された入隅部60aを溶接により仮接合するとともに、クランプ等の治具で拘束しているので、枠部材10aと第一タブ材60との間に目開きが発生することがない。
仮接合用回転ツールAが第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22に達したら、終点e22で摩擦撹拌を終了させずに仮接合工程の始点s12(図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行い、そのまま仮接合工程に移行する。すなわち、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12まで仮接合用回転ツールAを離脱させずに摩擦撹拌を継続し、さらに、始点s12で仮接合用回転ツールAを離脱させることなく仮接合工程に移行する。このようにすると、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22での仮接合用回転ツールAの離脱作業が不要となり、さらに、仮接合工程の始点s12での仮接合用回転ツールAの挿入作業が不要となることから、予備的な接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
本実施形態では、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に至る摩擦撹拌のルートを第一タブ材60に設定し、仮接合用回転ツールAを第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に移動させる際の移動軌跡を第一タブ材60に形成する。このようにすると、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に至る工程中において、枠部材10a,10bに接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
なお、第一タブ材接合工程における摩擦撹拌のルートと、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に至る摩擦撹拌のルートのうち第一タブ材接合工程における摩擦撹拌のルートに平行な部分との離隔距離d1(図23参照)は、仮接合用回転ツールAのショルダ部の外径以上確保する。すなわち、仮接合用回転ツールAを第一タブ材接合工程の始点s2から終点e2に移動させた際に形成された移動軌跡と、仮接合用回転ツールAを第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に移動させた際に形成された移動軌跡との離隔距離d1を、仮接合用回転ツールAのショルダ部の外径以上確保する。このようにすると、第一タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e22から仮接合工程の始点s12に至る工程中において、仮接合用回転ツールAの枠部材10に接合欠陥が発生したとしても、当該接合欠陥が枠部材10に及び難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
(16)仮接合工程
仮接合工程では、枠部材10a,10bの突合部12に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10a,10bの継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、一外周平面11aの突合部12の全長に亘って連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく仮接合工程の始点s12から終点e12(図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行う。このようにすると、仮接合工程中における仮接合用回転ツールAの離脱作業が一切不要となることから、予備的な接合作業のより一層の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
仮接合工程では、枠部材10a,10bの突合部12に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10a,10bの継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、一外周平面11aの突合部12の全長に亘って連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく仮接合工程の始点s12から終点e12(図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行う。このようにすると、仮接合工程中における仮接合用回転ツールAの離脱作業が一切不要となることから、予備的な接合作業のより一層の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
仮接合用回転ツールAが仮接合工程の終点e12に達したら、終点e12で摩擦撹拌を終了させずに第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32(図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行い、そのまま第二タブ材接合工程の外周面接合工程に移行する。すなわち、仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32まで仮接合用回転ツールAを離脱させずに摩擦撹拌を継続し、さらに、始点s32で仮接合用回転ツールAを離脱させることなく第二タブ材接合工程の外周面接合工程に移行する。このようにすると、仮接合工程の終点e12での仮接合用回転ツールAの離脱作業が不要となり、さらに、第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32での仮接合用回転ツールAの挿入作業が不要となることから、予備的な接合作業のより一層の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
本実施形態では、仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32に至る摩擦撹拌のルートを第二タブ材70に設定し、仮接合用回転ツールAを仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の始点s32に移動させる際の移動軌跡を第二タブ材70に形成する。このようにすると、仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32に至る工程中において、枠部材10に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
なお、仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32に至る摩擦撹拌のルートのうち後記する第二タブ材接合工程の外周面接合工程における摩擦撹拌のルートに平行な部分と、第二タブ材接合工程の外周面接合工程における摩擦撹拌のルートとの離隔距離d2は、仮接合用回転ツールAのショルダ部の外径以上確保する。すなわち、仮接合用回転ツールAを仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32に移動させた際に形成された移動軌跡と、仮接合用回転ツールAを第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32から終点e32(図23参照)に移動させた際に形成された移動軌跡との離隔距離d2(図23参照)を、仮接合用回転ツールAのショルダ部の外径以上確保する。このようにすると、仮接合工程の終点e12から第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32に至る工程中において、仮接合用回転ツールAの枠部材10a,10b側に接合欠陥が発生したとしても、当該接合欠陥が枠部材10a,10bに及び難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
(17)第二タブ材接合工程(外周面接合工程)
第二タブ材接合工程の外周面接合工程では、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの他端部における第二タブ材70との突合部75に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10a,10bと第二タブ材70の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部75に対して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32から終点e32まで連続して摩擦撹拌を行う。
第二タブ材接合工程の外周面接合工程では、枠部材10a,10bの外周面11の一外周平面11aの他端部における第二タブ材70との突合部75に対して摩擦撹拌を行う。具体的には、枠部材10a,10bと第二タブ材70の継ぎ目(境界線)上に摩擦撹拌のルートを設定し、当該ルートに沿って仮接合用回転ツールAを相対移動させることで、突合部75に対して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、仮接合用回転ツールAを途中で離脱させることなく第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32から終点e32まで連続して摩擦撹拌を行う。
なお、仮接合用回転ツールAを右回転させているので、仮接合用回転ツールAの進行方向の右側に枠部材10a,10bが位置するように第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点s32と終点e32の位置を設定する。このようにすると、枠部材10a,10b側に接合欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。ちなみに、仮接合用回転ツールAを左回転させた場合には、仮接合用回転ツールAの進行方向の左側に枠部材10a,10bが位置するように第二タブ材接合工程の外周面接合工程の始点と終点の位置を設定することが望ましい。具体的には、図示は省略するが、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合の終点e32の位置に始点を設け、仮接合用回転ツールAを右回転させた場合の始点s32の位置に終点を設ければよい。
なお、仮接合用回転ツールAの撹拌ピンが突合部75に入り込むと、枠部材10a,10bと第二タブ材70を引き離そうとする力が作用するが、枠部材10a,10bと第二タブ材70により形成された入隅部70aを溶接により仮接合するとともに、クランプ等の治具で拘束しているので、枠部材10a,10bと第二タブ材70との間に目開きが発生することがない。なお、必要に応じて、枠部材10a,10bと第二タブ材70との接合部の外周面11側も溶接にて固定するようにしておいてもよい。この際、摩擦撹拌接合を行う範囲と溶接部が重ならないようにするのが好ましい。
仮接合用回転ツールAが第二タブ材接合工程の外周面接合工程の終点e32に達したら、終点e32で摩擦撹拌を終了させずに、第二タブ材70に設けた終了位置EP2(図22および図23参照)まで連続して摩擦撹拌を行う。
仮接合用回転ツールAが終了位置EP2に達したら、仮接合用回転ツールAを回転させつつ上昇させて撹拌ピンを終了位置EP2から離脱させる。
(18)第一の下穴形成工程
続いて、第一の下穴形成工程を実行する。第一の下穴形成工程は、図23および図24に示すように、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM3に下穴P3を形成する工程である。すなわち、下穴形成工程は、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入予定位置に下穴P3を形成する工程である。
続いて、第一の下穴形成工程を実行する。第一の下穴形成工程は、図23および図24に示すように、第一の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM3に下穴P3を形成する工程である。すなわち、下穴形成工程は、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入予定位置に下穴P3を形成する工程である。
下穴P3は、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものであり、図23に示すように、本実施形態では、第二タブ材70の表面で、枠部材10a,10b同士の突合部12である継ぎ目(境界線)の延長線上に形成する。下穴P3の形態に特に制限はないが、本実施形態では、円筒状としている(図24および図26参照)。なお、本実施形態では、第二タブ材70に下穴P3を形成しているが、下穴P3の位置に特に制限はなく、第一タブ材60に形成してもよいし、突合部65,75に形成してもよいが、好適には、本実施形態の如く枠部材10a,10b同士の突合部12の延長線上に形成することが望ましい。なお、下穴P3の最大穴径、深さや容積は、枠構造体の製造工程における下穴P1(図6の(b)参照)と同等になるように形成する。
(19)第一の本接合工程
第一の下穴形成工程が終了したら、枠部材10a,10b同士の突合部12を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示すものと同等の本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部12に対して枠部材10a,10bの一外周平面11a側から摩擦撹拌を行う。
第一の下穴形成工程が終了したら、枠部材10a,10b同士の突合部12を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示すものと同等の本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部12に対して枠部材10a,10bの一外周平面11a側から摩擦撹拌を行う。
第一の本接合工程では、図26の(a)〜(c)に示すように、第二タブ材70上の開始位置SM3に形成した下穴P3に本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2を挿入(圧入)し、挿入した撹拌ピンB2を途中で離脱させることなく終了位置EM3まで移動させる。すなわち、第一の本接合工程では、下穴P3から摩擦撹拌を開始し、終了位置EM3まで連続して摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、第二タブ材70に摩擦撹拌の開始位置SM3を設け、第一タブ材60に終了位置EM3を設けているが、開始位置SM3と終了位置EM3の位置を限定する趣旨ではない。
図26の(a)〜(c)を参照して第一の本接合工程をより詳細に説明する。まず、図26の(a)に示すように、下穴P3(開始位置SM3)の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P3に挿入する。撹拌ピンB2を下穴P3に入り込ませると、撹拌ピンB2の周面(側面)が下穴P3の穴壁に当接し、穴壁から金属が塑性流動化する。このような状態になると、塑性流動化した金属を撹拌ピンB2の周面で押し退けながら、撹拌ピンB2が圧入されることになるので、圧入初期段階における圧入抵抗を低減することが可能となり、また、本接合用回転ツールBのショルダ部B1が第二タブ材70の表面に当接する前に撹拌ピンB2が下穴P3の穴壁に当接して摩擦熱が発生するので、塑性流動化するまでの時間を短縮することが可能となる。つまり、摩擦撹拌装置の負荷を低減することが可能となり、加えて、本接合に要する作業時間を短縮することが可能となる。
撹拌ピンB2の全体が第二タブ材70に入り込み、かつ、ショルダ部B1の下端面B11の全面が第二タブ材70の表面に接触したら、図26の(b)に示すように、摩擦撹拌を行いながら枠部材10a,10b同士の突合部12の一端に向けて本接合用回転ツールBを相対移動させ、さらに、突合部75を横切らせて突合部12に突入させる。本接合用回転ツールBを移動させると、その撹拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W1(以下、「外周面側塑性化領域W1」という。)が形成される(図25参照)。ここで、塑性化領域とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
枠部材10への入熱量が過大になる虞がある場合には、本接合用回転ツールBの周囲に枠部材10の一外周平面11a側から水を供給するなどして冷却することが望ましい。なお、枠部材10a,10b間に冷却水が入り込むと、接合面に酸化皮膜を発生させる虞があるが、本実施形態においては、枠部材10a,10b同士の接合面18,18を面削加工するとともに、仮接合工程を実行して枠部材10a,10b間の目地を閉塞しているので、枠部材10a,10b間に冷却水が入り込み難く、したがって、接合部の品質を劣化させる虞がない。
本接合用回転ツールBが終了位置EM3に達したら、図26の(c)に示すように、本接合用回転ツールBを回転させつつ上昇させて撹拌ピンB2を終了位置EM3(図26の(b)参照)から離脱させる。なお、終了位置EM3において撹拌ピンB2を上方に離脱させると、撹拌ピンB2と略同形の抜き穴Q1が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
(20)第一の補修工程
第一の本接合工程が終了したら、枠部材製造工程における第一の補修工程と同様の補修工程を行う。第一の補修工程は、第一の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された外周面側塑性化領域W1に対して摩擦撹拌を行う工程であり、外周面側塑性化領域W1に含まれている可能性がある接合欠陥を補修する目的で行われるものである。
第一の本接合工程が終了したら、枠部材製造工程における第一の補修工程と同様の補修工程を行う。第一の補修工程は、第一の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された外周面側塑性化領域W1に対して摩擦撹拌を行う工程であり、外周面側塑性化領域W1に含まれている可能性がある接合欠陥を補修する目的で行われるものである。
本実施形態に係る第一の補修工程では、図27に示すように、外周面側塑性化領域W1のうち、少なくとも、第一の補修領域R11、第二の補修領域R12および第三の補修領域R13に対して摩擦撹拌を行う。
第一の補修領域R11に対する摩擦撹拌は、本接合用回転ツールBの進行方向に沿って形成される虞のあるトンネル欠陥を分断することを目的として行われるものである。本接合用回転ツールBを右回転させた場合にはその進行方向の左側にトンネル欠陥が発生する虞があり、左回転させた場合には進行方向の右側にトンネル欠陥が発生する虞があるので、本接合用回転ツールBを右回転させた本実施形態においては、平面視して進行方向の左側に位置する表側塑性化領域W1の上部を少なくとも含むように第一の補修領域R11を設定するとよい。
第二の補修領域R12に対する摩擦撹拌は、本接合用回転ツールBが突合部65を横切る際に外周面側塑性化領域W1に巻き込まれた酸化皮膜(枠部材10a,10bの第一直交平面11bと第一タブ材60の当接面に形成されていた酸化皮膜)を分断することを目的として行われるものである。本実施形態の如く本接合工程における摩擦撹拌の終了位置EM3を第一タブ材60に設けた場合、本接合用回転ツールBを右回転させた場合にはその進行方向の右側にある外周面側塑性化領域W1の上部に酸化皮膜が巻き込まれている可能性が高く、左回転させた場合には進行方向の左側にある外周面側塑性化領域W1の上部に酸化皮膜が巻き込まれている可能性が高いので、本接合用回転ツールBを右回転させた本実施形態においては、第一タブ材60に隣接する外周面側塑性化領域W1のうち、平面視して進行方向の右側に位置する外周面側塑性化領域W1の上部を少なくとも含むように第二の補修領域R12を設定するとよい。
第三の補修領域R13に対する摩擦撹拌は、本接合用回転ツールBが突合部75を横切る際に外周面側塑性化領域W1に巻き込まれた酸化皮膜(枠部材10a,10bの第二直交平面11cと第二タブ材70の当接面に形成されていた酸化皮膜)を分断することを目的として行われるものである。本実施形態の如く本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM3を第二タブ材70に設けた場合、本接合用回転ツールBを右回転させた場合にはその進行方向の左側にある外周面側塑性化領域W1の上部に酸化皮膜が巻き込まれている可能性が高く、左回転させた場合には進行方向の右側にある外周面側塑性化領域W1の上部に酸化皮膜が巻き込まれている可能性が高いので、本接合用回転ツールBを右回転させた本実施形態においては、第二タブ材70に隣接する外周面側塑性化領域W1のうち、平面視して進行方向の左側に位置する外周面側塑性化領域W1の上部を少なくとも含むように第三の補修領域R13を設定するとよい。
本実施形態に係る第一の補修工程では、本接合用回転ツールBよりも小型の補修用回転ツールC(枠部材製造工程における第一の補修工程と同様の回転ツール)を用いて摩擦撹拌を行う。このようにすると、塑性化領域が必要以上に広がることを防止することが可能となる。
第一の補修工程では、一の補修領域に対する摩擦撹拌が終了する度に補修用回転ツールCを離脱させてもよいし、補修領域ごとに形態の異なる補修用回転ツールCを使用してもよいが、本実施形態では、図27に示すように、一の補修用回転ツールCを一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するように移動させて、第一の補修領域R11、第二の補修領域R12および第三の補修領域R13に対して連続して摩擦撹拌を行う。すなわち、本実施形態に係る第一の補修工程では、摩擦撹拌の開始位置SR2に挿入した補修用回転ツールCの撹拌ピンC2(図6の(b)参照)を途中で離脱させることなく終了位置ER2まで移動させる。なお、本実施形態では、第一タブ材60に摩擦撹拌の開始位置SR2を設けるとともに、第二タブ材70に終了位置ER2を設け、第二の補修領域R12、第一の補修領域R11、第三の補修領域R13の順序で摩擦撹拌を行う場合を例示するが、開始位置SR2と終了位置ER2の位置や摩擦撹拌の順序を限定する趣旨ではない。
第一の補修工程における摩擦撹拌の手順をより詳細に説明する。まず、第一タブ材60の適所に設けた開始位置SR2に補修用回転ツールCの撹拌ピン(図示せず)を挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、第二の補修領域R12に対して摩擦撹拌を行う。
第二の補修領域R12に対して摩擦撹拌を行うと、枠部材10a,10bの第一直交平面11bと第一タブ材60の当接面に形成されていた酸化皮膜が外周面側塑性化領域W1に巻き込まれた場合であっても、当該酸化皮膜を分断することが可能となるので、第一タブ材60に隣接する外周面側塑性化領域W1においても接合欠陥が発生し難くなる。なお、補修用回転ツールCで摩擦撹拌できる領域に比して第二の補修領域R12が大きい場合には、摩擦撹拌のルートをずらしつつ補修用回転ツールCを何度かUターンさせればよい。
第二の補修領域R12に対する摩擦撹拌が終了したら、補修用回転ツールCを離脱させずにそのまま第一の補修領域R11に移動させ、前記した第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートに沿って連続して摩擦撹拌を行う。このようにすると、本接合工程における摩擦撹拌のルートに沿ってトンネル欠陥が連続して形成された場合であっても、これを確実に分断することが可能となるので、接合欠陥が発生し難くなる。
第一の補修領域R11に対する摩擦撹拌が終了したら、補修用回転ツールCを離脱させずにそのまま第三の補修領域R13に移動させ、第三の補修領域R13に対して摩擦撹拌を行う。このようにすると、枠部材10a,10bの第二直交平面11cと第二タブ材70の当接面に形成されていた酸化皮膜が外周面側塑性化領域W1に巻き込まれた場合であっても、当該酸化皮膜を分断することが可能となるので、第二タブ材70に隣接する外周面側塑性化領域W1においても接合欠陥が発生し難くなる。なお、補修用回転ツールCで摩擦撹拌できる領域に比して第三の補修領域R13が大きい場合には、摩擦撹拌のルートをずらしつつ補修用回転ツールCを何度かUターンさせればよい。
第三の補修領域R13に対する摩擦撹拌が終了したら、補修用回転ツールCを終了位置ER2に移動させ、補修用回転ツールCを回転させつつ上昇させて撹拌ピンを終了位置ER2から離脱させる。このとき、第一タブ材60上の終了位置ER2において撹拌ピンと略同形の抜き穴が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
(21)第一の横断補修工程
第一の横断補修工程も、第一の本接合工程により枠部材10,10に形成された外周面側塑性化領域W1に対して摩擦撹拌を行う工程であり、外周面側塑性化領域W1に含まれている可能性があるトンネル欠陥を分断する目的で行われるものである。
第一の横断補修工程も、第一の本接合工程により枠部材10,10に形成された外周面側塑性化領域W1に対して摩擦撹拌を行う工程であり、外周面側塑性化領域W1に含まれている可能性があるトンネル欠陥を分断する目的で行われるものである。
本実施形態に係る第一の横断補修工程では、図28に示すように、外周面側塑性化領域W1を複数回横断するように横断用回転ツールDを移動させることで、外周面側塑性化領域W1に対して摩擦撹拌を行う。すなわち、第一の横断補修工程では、外周面側塑性化領域W1を複数回横断するように摩擦撹拌のルートを設定する。このようにすると、外周面側塑性化領域W1に沿ってトンネル欠陥が形成されていたとしても、当該トンネル欠陥を充分な確実性をもって分断することが可能となる。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌のルートは、外周面側塑性化領域W1に形成される複数の塑性化領域(以下、「再塑性化領域」という。)W3,W3,…が第一の本接合工程における摩擦撹拌のルート(すなわち、外周面側塑性化領域W1の中央線)上において互いに離間するように設定する。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌のルートには、外周面側塑性化領域W1を横切る複数の交差ルートF11と、隣り合う交差ルートF11,F11の同側の端部同士を繋ぐ移行ルートF12とが設けられている。すなわち、第一の横断補修工程における摩擦撹拌のルートは、外周面側塑性化領域W1の側方から始まって外周面側塑性化領域W1を挟んで反対側に向かうように設定される第一の交差ルートF11と、この交差ルートF11の終点e11から始まって第一の本接合工程における摩擦撹拌のルート(枠部材10a,10bの継ぎ目)に沿うように設定される移行ルートF12と、この移行ルートF12の始点s11から始まって外周面側塑性化領域W1を挟んで反対側に向かうように設定される第二の交差ルートF11と、を少なくとも備えている。
交差ルートF11は、外周面側塑性化領域W1を横切るように設定された摩擦撹拌のルートであり、本実施形態では、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートと直交している。交差ルートF11の始点s11と終点e11は、外周面側塑性化領域W1の側方に位置しており、外周面側塑性化領域W1を挟んで対向している。
交差ルートF11の始点s11と終点e11の位置は、横断用回転ツールDの全体が外周面側塑性化領域W1から抜け出るような位置に設定することが望ましいが、外周面側塑性化領域W1から必要以上に離れた位置に設定すると、横断用回転ツールDの移動距離が増大してしまうので、本実施形態では、始点s11から外周面側塑性化領域W1の側縁までの距離および外周面側塑性化領域W1の側縁から終点e11までの距離が、横断用回転ツールDのショルダ部の外径の半分と等しくなるような位置に設定している。つまり、交差ルートF11の長さ(始点s11から終点e11までの距離)は、外周面側塑性化領域W1の幅寸法に、ショルダ部の外径を加えた値と等しくなる。ちなみに、横断用回転ツールDにより形成される塑性化領域の幅寸法は、ショルダ部の外径と略等しくなるので、交差ルートF11の長さは、外周面側塑性化領域W1の幅寸法に、横断用回転ツールDにより形成される塑性化領域の幅寸法を加えた値と略等しくなる。
移行ルートF12は、一の交差ルートF11の終点e11からこの交差ルートF11よりも摩擦撹拌の終了位置EC2側に位置する他の交差ルートF11の始点s11に至る摩擦撹拌のルートであり、本実施形態では、外周面側塑性化領域W1の右側あるいは左側に設けられていて、かつ、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートと平行になっている。
移行ルートF12は、移行ルートF12に沿って横断用回転ツールDを移動させることで形成される塑性化領域W4が外周面側塑性化領域W1の側縁に接触するような位置に設定することが望ましい。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌の手順を詳細に説明する。なお、本実施形態では、前記した補修用回転ツールC(図27参照)を横断用回転ツールDとして使用することとし、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では、一の横断用回転ツールDを、一筆書きの移動軌跡(ビード)を形成するようにジグザグ状に移動させることで、摩擦撹拌の開始位置SC2から終了位置EC2まで連続して摩擦撹拌を行う。すなわち、摩擦撹拌の開始位置SC2に挿入した横断用回転ツールDの撹拌ピンを途中で離脱させることなく終了位置EC2まで移動させる。なお、外周面側塑性化領域W1を横断する度に、横断用回転ツールDを離脱させても差し支えない。また、本実施形態では、枠部材10に摩擦撹拌の開始位置SC2を設けるとともに、第二タブ材70に終了位置EC2を設けた場合を例示するが、開始位置SC2と終了位置EC2の位置を限定する趣旨ではない。
第一の横断補修工程における摩擦撹拌の手順をより詳細に説明する。
第一の横断補修工程では、まず、枠部材10の適所に設けた開始位置SC2に横断用回転ツールDの撹拌ピン(図示せず)を挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、一つ目の交差ルートF11に沿って連続して摩擦撹拌を行う。
第一の横断補修工程では、まず、枠部材10の適所に設けた開始位置SC2に横断用回転ツールDの撹拌ピン(図示せず)を挿入(圧入)して摩擦撹拌を開始し、一つ目の交差ルートF11に沿って連続して摩擦撹拌を行う。
交差ルートF11に沿って横断用回転ツールDを移動させると、外周面側塑性化領域W1の上部にある金属が再び摩擦撹拌されることになるので、前記した第一の補修工程で分断しきれなかったトンネル欠陥や第一の補修工程における摩擦撹拌のルートから外れた位置に形成されていたトンネル欠陥などを充分な確実性をもって分断することができる。
横断用回転ツールDが一つ目の交差ルートF11の終点e11に達したら、横断用回転ツールDの移動方向を本接合工程における摩擦撹拌のルートに沿う方向に変更し、移行ルートF12に沿って移動させる。つまり、横断用回転ツールDを終点e11で離脱させずにそのまま移行ルートF12に沿って移動させ、外周面側塑性化領域W11の側方にある金属に対して連続して摩擦撹拌を行う。本実施形態では、移行ルートF12が、第一の本接合工程における摩擦撹拌のルートと平行になっているので、移行ルートF12を傾斜させる場合に比べて、移行ルートF12の距離が短くなる。
横断用回転ツールDが二つ目の交差ルートF11の始点s11に達したら、横断用回転ツールDの移動方向を外周面側塑性化領域W1に交差する方向に変更するとともに、横断用回転ツールDを離脱させずにそのまま二つ目の交差ルートF11に沿って移動させ、外周面側塑性化領域W1に対して連続して摩擦撹拌を行う。
以上のような過程を繰り返し、横断用回転ツールDが最後の交差ルートF11の終点e11に達したら、横断用回転ツールDを終了位置EC2に移動させ、横断用回転ツールDを回転させつつ上昇させて撹拌ピンを終了位置EC2から離脱させる。このとき、第一タブ材60上の終了位置EC2において撹拌ピンと略同形の抜き穴が不可避的に形成されることになるが、本実施形態では、そのまま残置する。
このように、複数の再塑性化領域W3,W3,…を第一の本接合工程における摩擦撹拌のルート上において互いに離間させれば、外周面側塑性化領域W1の全体に再塑性化領域を形成する場合に比べて、横断用回転ツールDの横断回数や方向転換の回数が少なくなり、その結果、第一の横断補修工程における摩擦撹拌のルートの総延長が短くなるので、横断用回転ツールDの動きに無駄がなくなり、ひいては、トンネル欠陥を効率よく分断することが可能となる。
なお、補修用回転ツールCとは異なる回転ツールを横断用回転ツールDとしても差し支えないが、この場合でも、本接合用回転ツールBよりも小型であることが望ましい。また、本接合用回転ツールBによるトンネル欠陥は、その撹拌ピンの上端から1/3までの範囲に形成されることが多いので、横断用回転ツールDの撹拌ピンの長さは、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の長さの1/3以上とすることが望ましいが、1/2よりも大きくなると、塑性化領域が必要以上に広がる虞があるので、1/2以下とすることが望ましい。
第一の横断補修工程が終了したら、第一の予備工程、第一の本接合工程、第一の補修工程および第一の横断補修工程における摩擦撹拌で発生したバリを除去し、さらに、第一タブ材60および第二タブ材70を切除する。
その後、枠部材10a,10bを回転させて、外周面11のうち他の三面の外周表面に対して、前記した(13)タブ材配置工程、(14)溶接工程、(15)第一タブ材接合工程、(16)仮接合工程、(17)第二タブ材接合工程、(18)第一の下穴形成工程、(19)第一の本接合工程、(20)第一の補修工程、(21)第一の横断補修工程およびバリの除去、第一タブ材60および第二タブ材70の切除をそれぞれ繰り返して行い、枠部材10a,10bの外周面11の突合部12の全周に亘って摩擦撹拌を行う。
(22)第二の下穴形成工程
枠部材10a,10bの外周面11の突合部12の全周の摩擦撹拌が終了したら、枠部材10a,10bの内周面13が上を向くように、図示せぬ摩擦撹拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。
枠部材10a,10bの外周面11の突合部12の全周の摩擦撹拌が終了したら、枠部材10a,10bの内周面13が上を向くように、図示せぬ摩擦撹拌装置の架台に載置し、クランプ等の図示せぬ治具を用いて移動不能に拘束する。
続いて、第二の下穴形成工程を実行する。第二の下穴形成工程は、図29に示すように、第二の本接合工程における摩擦撹拌の開始位置SM4に下穴P4を形成する工程である。すなわち、下穴形成工程は、枠部材10a(または10b)の内周面13上の本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入予定位置に下穴P4を形成する工程である。
下穴P4は、本接合用回転ツールBの撹拌ピンB2の挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものであり、本実施形態では、枠部材10aの内周面13の表面で、突合部から偏移した位置に形成する。下穴P4の位置は、枠部材10a,10bの内周面13の一平面内における突合部12の一端部近傍で、且つ、第二の本接合工程において用いる本接合用回転ツールBが、直交して隣り合う内周面13の表面と干渉しないように、隣り合って直交する内周面13と所定の距離を確保している。下穴P4の形態に特に制限はないが、本実施形態では、下穴P3(図23参照)と同様に円筒状としている。なお、本実施形態では、一方の枠部材10aの内周面13の表面に下穴P4を形成しているが、下穴P4の位置に特に制限はなく、他方の枠部材10bの内周面13の表面に形成してもよいし、突合部12上に形成してもよい。
(23)第二の本接合工程
第二の下穴形成工程が終了したら、内周面13の枠部材10a,10b同士の突合部12を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示す本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部12に対して枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行う。なお、第二の本接合工程では、本接合用回転ツールBは、先端が直角に屈曲したアーム(図示せず)の先端で回転自在に支持されており、枠部材10a,10bの内周面13側からの摩擦撹拌を行うようになっている。
第二の下穴形成工程が終了したら、内周面13の枠部材10a,10b同士の突合部12を本格的に接合する第一の本接合工程を実行する。本実施形態に係る第一の本接合工程では、図6の(b)に示す本接合用回転ツールBを使用し、仮接合された状態の突合部12に対して枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行う。なお、第二の本接合工程では、本接合用回転ツールBは、先端が直角に屈曲したアーム(図示せず)の先端で回転自在に支持されており、枠部材10a,10bの内周面13側からの摩擦撹拌を行うようになっている。
第二の本接合工程では、下穴P4に本接合用回転ツールBの撹拌ピン(図示せず)を挿入(圧入)し、挿入した撹拌ピンを途中で離脱させることなく終了位置EM4まで移動させる。終了位置EM4は、枠部材10a,10bの内周面13の表面に現れる枠部材10a,10b同士の境界線(突合部12)から偏移した位置とする。終了位置EM4は、開始位置SM4とは逆側となる突合部12の他端側近傍に設けられており、境界線(突合部12)から偏移した位置となっている。また、終了位置EM4は、第二の本接合工程において用いる本接合用回転ツールBが、直交して隣り合う内周面13の表面と干渉しないように、隣り合う内周面13と所定の距離を確保して決定されている。すなわち、第二の本接合工程では、下穴P4から摩擦撹拌を開始し、終了位置EM4まで連続して平面視コ字状の摩擦撹拌を行う。なお、本実施形態では、枠部材10aの内周面13に摩擦撹拌の開始位置SM4と終了位置EM4を設けているが、開始位置SM4と終了位置EM4の位置を限定する趣旨ではない。開始位置SM4と終了位置EM4は、枠部材10bの内周面13に設けてもよいし、一方を枠部材10aの内周面13に設けて、他方を枠部材10bの内周面13に設けてもよい。
図31の(a)〜(c)を参照して第二の本接合工程をより詳細に説明する。まず、図31の(a)に示すように、下穴P4(開始位置SM4)の直上に本接合用回転ツールBを位置させ、続いて、本接合用回転ツールBを右回転させつつ下降させて撹拌ピンB2の先端を下穴P4に挿入する。撹拌ピンB2を下穴P4に入り込ませると、撹拌ピンB2の周面(側面)が下穴P4の穴壁に当接し、穴壁から金属が塑性流動化する。このような状態になると、塑性流動化した金属を撹拌ピンB2の周面で押し退けながら、撹拌ピンB2が圧入されることになるので、圧入初期段階における圧入抵抗を低減することが可能となり、また、本接合用回転ツールBのショルダ部B1が枠部材10aの表面に当接する前に撹拌ピンB2が下穴P4の穴壁に当接して摩擦熱が発生するので、塑性流動化するまでの時間を短縮することが可能となる。つまり、摩擦撹拌装置の負荷を低減することが可能となり、加えて、本接合に要する作業時間を短縮することが可能となる。
撹拌ピンB2の全体が枠部材10aに入り込み、かつ、ショルダ部B1の下端面B11の全面が枠部材10aの表面に接触したら、図31の(b)に示すように、摩擦撹拌を行いながら内周面13の枠部材10a,10b同士の突合部12の一端近傍に向けて本接合用回転ツールBを相対移動させ、突合部12に突入させる。その後、本接合用回転ツールBの移動方向を変更して(図30参照)、突合部12に沿って突合部12の他端近傍まで相対移動させる。さらに、本接合用回転ツールBの移動方向を変更して(図30参照)、終了位置EM4へと相対移動させる。本接合用回転ツールBを変更して移動させると、その撹拌ピンB2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、撹拌ピンB2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域W2(以下、「内周面側塑性化領域W2」という。)が形成される。ここで、塑性化領域とは、回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
本接合用回転ツールBが終了位置EM4に達したら、図31の(c)に示すように、本接合用回転ツールBを回転させつつ上昇させて撹拌ピンB2を終了位置EM4(図29および図30参照)から離脱させる。なお、終了位置EM4において撹拌ピンB2を上方に離脱させると、撹拌ピンB2と略同形の抜き穴Q4が不可避的に形成されることになるが、後の抜き穴補修工程で補修する。
(24)抜き穴補修工程
抜き穴補修工程は、第二の本接合工程において枠部材10aの内周面13に形成された抜き穴(接合用回転ツール抜き穴)Q4に充填用金属部材Hを充填する充填用金属部材挿入工程(図31の(c)参照)と、枠部材10aと充填用金属部材Hの突合部80に対して内周面13側から摩擦撹拌を行う補修接合工程(図32参照)と、補修接合工程において充填用金属部材Hの表面に形成された抜き穴(補修用回転ツール抜き穴)Q5に溶接金属Kを充填する補修溶接工程(図33参照)と、を具備するものである。
抜き穴補修工程は、第二の本接合工程において枠部材10aの内周面13に形成された抜き穴(接合用回転ツール抜き穴)Q4に充填用金属部材Hを充填する充填用金属部材挿入工程(図31の(c)参照)と、枠部材10aと充填用金属部材Hの突合部80に対して内周面13側から摩擦撹拌を行う補修接合工程(図32参照)と、補修接合工程において充填用金属部材Hの表面に形成された抜き穴(補修用回転ツール抜き穴)Q5に溶接金属Kを充填する補修溶接工程(図33参照)と、を具備するものである。
充填用金属部材挿入工程は、図31の(c)に示すように、第二の本接合工程において形成された抜き穴Q4に、抜き穴Q4と同形の充填用金属部材Hを挿入して、抜き穴Q4を埋める工程である。なお、充填用金属部材Hを挿入する前に、抜き穴Q4の内周面を機械加工によって面削しておくのが好ましい。充填用金属部材Hは、枠部材10aと同一組成の金属材料で形成されており、抜き穴Q4の内空部と同等の形状(本実施形態では円錐台形状)を呈している。なお、本実施形態では、枠部材10aと同一組成の金属材料で充填用金属部材Hを形成しているが、これに限定されるものではなく、摩擦撹拌可能な金属材料であれば、異なった組成の金属で形成してもよい。
補修接合工程は、図32に示すように、枠部材10aの抜き穴Q4の周壁と充填用金属部材Hの外周縁との突合部80に対して、図示しない補修用回転ツールを用いて摩擦撹拌を行う工程である。本実施形態で用いる補修用回転ツールは、ショルダ部の外径が突合部80の半径と略同等である。補修接合工程では、枠部材10aと充填用金属部材Hとの継ぎ目上に設定された摩擦撹拌の開始位置SR3に、補修用回転ツールの撹拌ピンを入り込ませ、突合部80に沿って一周するように、補修用回転ツールを相対移動させることで、突合部80の全周に亘って摩擦撹拌を行う。
本実施形態では、突合部80の全周に亘って摩擦撹拌を行った後に、補修用回転ツールを、充填用金属部材Hの表面の中心位置に設定された摩擦撹拌の終了位置ER3(第二の本接合工程における摩擦撹拌の終了位置EM4)まで移動させ、補修用回転ツールを終了位置ER3から離脱させる。このように、終了位置ER3で補修用回転ツールの撹拌ピンを上方に離脱させると、終了位置ER3に補修用回転ツールの撹拌ピンと略同形の小型の抜き穴Q5が形成される(図32および図33参照)。
なお、本実施形態では、補修用回転ツールは、ショルダ部の外径が突合部80の半径と略同等であるものを用いているが、これに限定されるものではなく、枠部材10aと充填用金属部材Hとの継ぎ目に沿って、円周状に撹拌ピンを移動させることができる大きさであれば、他の回転ツールを用いてもよく、仮接合工程等で使用した他の回転ツールを用いてもよい。
補修溶接工程では、図33に示すように、充填用金属部材Hの表面に形成された抜き穴Q5内にMIG溶接等の肉盛溶接を行うことで、抜き穴Q5内に溶接金属Kを充填する。
なお、補修溶接工程は、MIG溶接に限定するものではなく、他の公知の溶接を行ってもよい。また、溶接材料は、枠部材10aと異なっていてもよいが、本実施形態では同一の材料を用いている。また、補修溶接工程では、抜き穴Q5に溶接金属Kを充填した後に、枠部材10aの内周面13よりも盛り上がっている部分の溶接金属Kを切除することが望ましい。
(25)第二の補修工程
第二の補修工程は、第二の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された内周面側塑性化領域W2に対して摩擦撹拌を行う工程であり、内周面側塑性化領域W2に含まれている可能性がある接合欠陥を補修する目的で行われるものである。第二の補修工程は、内周面側塑性化領域W2において、本接合用回転ツールBの進行方向の左右側いずれかで、トンネル欠陥が発生する虞のある一方(本接合用回転ツールBを右回転させた場合にはその進行方向の左側で、左回転させた場合には進行方向の右側)に直線状に摩擦撹拌を行う点と、枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
第二の補修工程は、第二の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された内周面側塑性化領域W2に対して摩擦撹拌を行う工程であり、内周面側塑性化領域W2に含まれている可能性がある接合欠陥を補修する目的で行われるものである。第二の補修工程は、内周面側塑性化領域W2において、本接合用回転ツールBの進行方向の左右側いずれかで、トンネル欠陥が発生する虞のある一方(本接合用回転ツールBを右回転させた場合にはその進行方向の左側で、左回転させた場合には進行方向の右側)に直線状に摩擦撹拌を行う点と、枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
なお、補修用回転ツールCを枠部材10aの内周面13から離脱するときに、内周面13上の終了位置において撹拌ピンと略同形の抜き穴が不可避的に形成されることになるが、抜き穴補修工程の補修溶接工程と同様に、抜き穴内にMIG溶接等の肉盛溶接を行うことで、抜き穴内に溶接金属を充填するようにする。
(26)第二の横断補修工程
第二の横断補修工程は、第二の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された内周面側塑性化領域W2に対して摩擦撹拌を行う工程であり、内周面側塑性化領域W2に含まれている可能性があるトンネル欠陥を分断する目的で行われるものである。第二の横断補修工程は、枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の横断補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
第二の横断補修工程は、第二の本接合工程により枠部材10a,10bに形成された内周面側塑性化領域W2に対して摩擦撹拌を行う工程であり、内周面側塑性化領域W2に含まれている可能性があるトンネル欠陥を分断する目的で行われるものである。第二の横断補修工程は、枠部材10a,10bの内周面13側から摩擦撹拌を行うという点以外は、前記した第一の横断補修工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
なお、横断用回転ツールDを枠部材10aの内周面13から離脱するときに、内周面13上の終了位置において撹拌ピンと略同形の抜き穴が不可避的に形成されることになるが、抜き穴補修工程の補修溶接工程と同様に、抜き穴内にMIG溶接等の肉盛溶接を行うことで、抜き穴内に溶接金属を充填するようにする。
(27)入隅部溶接工程
入隅部溶接工程では、枠部材10a,10bの内周面13の突合部12の入隅部14を、溶接によって接合する。具体的には、図1に示すように、入隅部14にすみ肉溶接を行うことで、突合部12の摩擦撹拌が行なわれていない部分を接合する。
入隅部溶接工程では、枠部材10a,10bの内周面13の突合部12の入隅部14を、溶接によって接合する。具体的には、図1に示すように、入隅部14にすみ肉溶接を行うことで、突合部12の摩擦撹拌が行なわれていない部分を接合する。
なお、補修溶接工程は、すみ肉溶接に限定するものではなく、他の公知の溶接を行ってもよい。
入隅部溶接工程が終了したら、第二の本接合工程、抜き穴補修工程、第二の補修工程、第二の横断補修工程における摩擦撹拌で発生したバリを除去する。
その後、枠部材10a,10bを回転させて、内周面13のうち他の三面の内周表面に対して、前記した(22)第二の下穴形成工程、(23)第二の本接合工程、(24)抜き穴補修工程、(25)第二の補修工程、(26)第二の横断補修工程、(27)入隅部溶接工程およびバリの除去をそれぞれ繰り返し行い、枠部材10a,10bの内周面の突合部12の摩擦撹拌および溶接を行う。
以上のような工程を経ることで、従来の枠部材10の2倍の厚さの枠構造体1を製造することができ、従来、製造可能であった枠構造体1の厚さと比較して、厚さを大幅に厚くすることができる。
特に、本実施形態では、枠部材10は、直線状の金属部材15の端面を、隣接する直線状の金属部材15の側面に突き合わせて、金属部材15の表裏両面から摩擦撹拌を行い、複数の金属部材15を枠状に接合しているので、摩擦撹拌の撹拌深さの2倍近い厚さの枠部材10を形成でき、より一層厚い枠構造体1を製造することができるとともに、枠構造体1の気密性を向上させることができる。
また、枠部材10,10の外周面11の枠部材10,10同士の突合部12に沿って摩擦撹拌を行うことで、枠部材10,10同士を容易かつ確実に接合することができる。特に、本実施形態では、枠部材10,10の外周面11の突合部12の全周に亘って摩擦撹拌を行っているので、外周面11の全周に亘って塑性化領域W1を介して枠部材10,10同士を一体化でき、気密性を大幅に向上することができる。さらに、枠部材10同士の接合面18,18を面削加工して平坦にすることによって、枠部材10,10同士が隙間なく密着し、また、接合面18,18を脱脂することによって、接合面18,18から油等の有機物や水分を取り除くことができるので、塑性化領域W1,W2に有機物の残渣や分解ガスが混入するのを防止することができる。したがって、枠部材10,10同士の摩擦撹拌による接合性を高めることができ、枠構造体1の接合部の気密性および接着性を向上することができる。
さらに、本実施形態では、枠部材10,10の内周面13の突合部12に沿っても摩擦撹拌を行っているので、枠部材10,10の外周面11と内周面13とで二重のシール効果が得られるので、気密性をさらに向上することができる。本実施形態では、特に、枠部材10,10の内周面13における突合部12の入隅部14を、溶接によって接合しているので、枠部材10,10の内周面13においても全周に亘って枠部材10,10同士を接合することができる。したがって、枠構造体1の内周面13側と外周面11側とにおける気密性をさらに向上することができる。また、回転ツールの挿入が困難である入隅部14を溶接で接合しているので、容易に内周面13の突合部12の全周を接合することができる。
また、本実施形態では、本接合工程前に、枠部材10,10の外周面11のうちの一外周平面11aにおける枠部材10,10同士の突合部12の一端側に第一タブ材60を配置して仮接合するとともに、一外周平面11aにおける枠部材10,10同士の突合部12の他端側に第二タブ材70を配置して仮接合しているので、第一タブ材60から、枠部材10,10同士の突合部12、第二タブ材70へと摩擦撹拌を行うことによって、一外周平面11aの一端から他端まで突合部12の全長に亘って摩擦撹拌接合を行うことができる。これによって、枠部材10,10の外周面11における突合部12の全周に亘る摩擦撹拌を容易にかつ確実に行うことができる。さらに、接合用回転ツールの抜き穴が枠部材10,10上に形成されないので、接合強度および枠構造体1自体の強度が低下することがない。なお、抜き穴は、第一タブ材60または第二タブ材70に形成されることとなるが、第一タブ材60および第二タブ材70を切除することで容易に取り除くことができる。
また、第一タブ材60および第二タブ材70の摩擦撹拌は、間に枠部材10,10同士の突合部12の仮接合工程を挟んで連続して行われるので、第一タブ材接合工程の終点での仮接合用回転ツールAの離脱作業が不要となるとともに、仮接合工程の始点での回転ツールAの挿入作業が不要となる。さらに、仮接合工程の終点での回転ツールAの離脱作業が不要となり、第二タブ材接合工程の始点での回転ツールAの挿入作業が不要となるので、予備的な接合作業の効率化・迅速化を大幅に図ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、本接合工程前に、接合用回転ツールBの開始位置SM3に、当該接合用回転ツールBの挿入用の下穴P3を形成するようにしているので、多くの時間を要する接合用回転ツールBの挿入作業の時間を短縮することができ、接合作業の効率化・迅速化を図ることが可能となる。
また、内周面13の突合部12の本接合工程において、接合用回転ツールBを、内周面13の枠部材10,10同士の突合部12に沿って移動させた後に突合部12から枠部材10の内周面13上に偏移させて抜き取って、この位置を終了位置EM4としたことによって、突合部12に抜き穴Q4が形成されないので、枠部材10,10同士の接合性が高くなり気密性が向上する。また、その後、終了位置EM4に形成された回転ツール抜き穴Q4を補修するようにしたので、枠部材10,10の美観を損なうことなく、強度の低下を防止できる。
抜き穴Q5に溶接金属Kを埋めて補修を行っているので、枠部材10,10の内周面13側の最終仕上げにおいて、面削量を低減することができ、終了位置ER3を平坦に仕上げることが容易にでき、枠構造体1の美観を損なうことがない。
また、枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17aが、隣接して重ねられる枠部材10の金属部材15,15同士の接合部17bに対してオフセットしているので、接合部17,17同士が集中しないので、枠部材10にかかる応力の集中を防止することができ、強度の低下を防止できる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これに限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。例えば、前記した実施形態においては、2つの枠部材10,10を重ねて枠構造体1を形成しているが、これに限定されるものではなく、3つ以上の枠部材10を重ねてもよい。このようにすれば、より一層厚さの大きい枠構造体を形成することができる。
また、例えば、前記した実施形態では、図2に示すように、各塑性化領域W1,W2は、その底部同士が互いに重複するように形成されているが、これに限定されるものではなく、各塑性化領域の底部同士が重複していなくてもよい。
さらに、前記した実施形態では、脱脂工程において、面削加工された各枠部材10を脱脂処理液内に浸けて、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れを取り除いたが、これに限定されるものではなく、接合面18に直接アルコールやアセトン等を適量散布した後に、ウエスと呼ばれる布によって、接合面18に付着した加工油等の油脂分や汚れとともに拭き取るようにしてもよい。ここで、アルコールとして、遺伝子組み換えによる品種改良がされたトウモロコシ、大豆等の穀物を発酵させて得られたエチルアルコールを抽出、精製したいわゆるバイオエタノールを使用すれば、経済面および環境面から見て好ましい。勿論、接合面18の表面だけでなく、2つの枠部材10,10の突合部12の外周面11側と内周面13側に付着した加工油等の油脂分や汚れも同時に拭き取ることが望ましいのは言うまでもない。
また、前記した実施形態では、枠部材10,10の内周面13に形成された抜き穴Q4を補修しているが、内周面13の摩擦撹拌を行う際にタブ材を用いて、このタブ材上に抜き穴を形成するようにしてもよい。このようにすれば、最終的にタブ材を切除するので、抜き穴の補修を行わなくても済む。
1 枠構造体
10 枠部材
11 外周面
12 突合部
13 内周面
14 入隅部
15 金属部材
16 突合部
17 接合部
60 第一タブ材
70 第二タブ材
A 仮接合用回転ツール
B 本接合用回転ツール
P3 下穴
P4 下穴
Q4 抜き穴(接合用回転ツール抜き穴)
Q5 抜き穴(補修用回転ツール抜き穴)
H 充填用金属部材
K 溶接金属
10 枠部材
11 外周面
12 突合部
13 内周面
14 入隅部
15 金属部材
16 突合部
17 接合部
60 第一タブ材
70 第二タブ材
A 仮接合用回転ツール
B 本接合用回転ツール
P3 下穴
P4 下穴
Q4 抜き穴(接合用回転ツール抜き穴)
Q5 抜き穴(補修用回転ツール抜き穴)
H 充填用金属部材
K 溶接金属
Claims (12)
- 金属製の複数の枠部材をその厚さ方向に接合して枠構造体を形成する枠構造体の製造方法であって、
前記枠部材の接合面を、面削加工して平坦にする面削工程と、
前記枠部材の接合面を、脱脂して表面の油脂を除去する脱脂工程と、
前記枠部材をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせる突合工程と、
前記枠部材の外周面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う本接合工程と、を有する
ことを特徴とする枠構造体の製造方法。 - 前記本接合工程において、前記突合部の外周面側全周に亘って前記接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記本接合工程において、前記枠部材の内周面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールをそれぞれ移動させて摩擦撹拌を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記本接合工程前に、
前記枠部材の外周面を構成する複数の平面のうちの一つに現れる前記枠部材同士の境界線の一端側に第一タブ材を配置するとともに、前記境界線の他端側に第二タブ材を配置するタブ材配置工程と、
前記第一タブ材と前記枠部材との突合部に対して摩擦撹拌を行う第一タブ材接合工程と、
前記第二タブ材と前記枠部材との突合部に対して摩擦撹拌を行う第二タブ材接合工程と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記第一タブ材接合工程と前記第二タブ材接合工程との間に、
前記境界線に沿って仮接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行う仮接合工程をさらに有し、
前記第一タブ材接合工程、前記仮接合工程および前記第二タブ材接合工程は、前記仮接合用回転ツールを用いて連続して摩擦撹拌を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記本接合工程前に、
前記接合用回転ツールの挿入位置に下穴を形成する下穴形成工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記本接合工程において、前記枠部材の内周面に現れる前記枠部材同士の境界線に沿って移動させた前記接合用回転ツールを、前記枠部材の内周面に現れる前記境界線から偏移させた位置で抜き取って、この位置を終了位置とし、
その後、前記終了位置に形成された接合用回転ツール抜き穴を補修する補修工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記補修工程において、前記接合用回転ツール抜き穴に充填用金属部材を充填して補修用回転ツールによって前記枠部材と接合した後、その終了位置に形成された補修用回転ツール抜き穴に溶接金属を埋めて補修する
ことを特徴とする請求項7に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記枠部材は、矩形枠状を呈しており、直線状の金属部材の端面を、隣接する直線状の金属部材の側面に突き合わせて摩擦撹拌によって接合して形成される
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記枠部材の前記金属部材同士の接合部が、隣接する前記枠部材の前記金属部材同士の接合部に対してオフセットしている
ことを特徴とする請求項9に記載の枠構造体の製造方法。 - 前記枠部材の入隅部における前記枠部材同士の突合部は、溶接によって接合する
ことを特徴とする請求項3乃至請求項10のいずれか1項に記載の枠構造体の製造方法。 - 金属製の枠部材をその厚さ方向に複数重ねて突き合わせ、
前記枠部材の外周面側から前記枠部材同士の突合部に沿って接合用回転ツールを移動させて摩擦撹拌を行い、前記枠部材同士を接合した
ことを特徴とする枠構造体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008059673A JP2009214131A (ja) | 2008-03-10 | 2008-03-10 | 枠構造体の製造方法および枠構造体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008059673A JP2009214131A (ja) | 2008-03-10 | 2008-03-10 | 枠構造体の製造方法および枠構造体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009214131A true JP2009214131A (ja) | 2009-09-24 |
Family
ID=41186570
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008059673A Pending JP2009214131A (ja) | 2008-03-10 | 2008-03-10 | 枠構造体の製造方法および枠構造体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009214131A (ja) |
-
2008
- 2008-03-10 JP JP2008059673A patent/JP2009214131A/ja active Pending
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