JP2009213442A - ヒト毛包構成細胞からなる細胞塊においてソニック・ヘッジホッグ(Shh)を指標とする発毛薬剤評価法 - Google Patents

ヒト毛包構成細胞からなる細胞塊においてソニック・ヘッジホッグ(Shh)を指標とする発毛薬剤評価法 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒト・Shhを指標として発毛又は育毛薬剤を評価するためには、Shhが検出可能なレベルで発現しなければならない。従って、Shhを有意に発現することが可能な培養系及び発現したShhを効率良く増幅することが可能なPCR用プライマーを確立する必要がある。さらには、発ガン性を示す可能性があるShhのアゴニストやShh発現を直接促進する物質を回避することが極めて重要な問題となる。
【解決手段】ヒト毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞から成る細胞塊を用いること、ヒトShh発現を効率良く検出できるPCRプライマーを見出したことにより、平面培養系でほとんど検出されないShhを指標とする発毛薬剤の評価が可能となる。さらに被験物質の添加から24時間経過後に初めてShh発現を亢進させる作用をモニタリングすることにより発癌性物質を選択するおそれを回避し、被験物質の発毛又は育毛促進活性を安全に評価することが可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト毛乳頭細胞及びヒト外毛根鞘細胞からなる細胞塊においてヒト・ソニック・ヘッジホッグ遺伝子(Shh)の発現を効率良く検出することができるPCR用プライマー、及び該プライマーを使用して増幅させたヒト・ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の発現の亢進を指標とする被験物質の発毛又は育毛促進活性を評価するための方法に関する。
高齢化社会、ストレス社会といわれる現代社会では、頭部毛髪が様々な原因により、脱毛の危機にさらされる機会がますます多くなってきている。これに対応して、発毛又は育毛剤を開発するためにより優れた評価方法が望まれる。従来、発毛又は育毛剤の評価方法としては、マウスやウサギの体毛に覆われている部分を毛刈りして、その部分に被験物質を塗布し、発毛を観察するインビボ法が知られている。しかしながら、近年の動物愛護の風潮から、実験動物を可能な限り用いずに、高精度で簡便な発毛剤又は育毛剤の評価方法の確立が望まれている。このようなインビトロ法の1つとしては、毛成長を促進する遺伝子の発現の亢進を指標とした評価法、又は毛成長を抑制する遺伝子の発現の抑制を指標とした評価法が考えられる。
発毛に関与する遺伝子としてはShhが疑われる。Rudolph D et al., Journal of Investigative Dermatology (2005) 125, 638-646 には、Shhのアゴニストが発毛を誘導することが示唆され、そしてヒト胎児頭皮の器官培養にShhのアゴニストを作用させることによりShhの下流の遺伝子発現が変動することが記載されており、Shh又はその下流に存在する因子が発毛剤又は育毛剤の評価方法における指標となりうることが示唆されている。
しかしながら、発毛剤又は育毛剤の評価方法において、特定の遺伝子発現を指標とする場合には、その発現レベルが発毛又は育毛作用に特異的であり、かつ検出可能である必要があるが、該Shhは一般的な平面培養系ではほとんど検出することができない。また逆転写ポリメラーゼ連鎖反応等により、極微量のShhを特異的に検出可能なレベルにまで増幅させるために有効なプライマーの存在も知られていない。
さらに、Shhの下流の遺伝子であるGLI転写因子を指標にShhアゴニストをスクリーニングする場合には、Shhタンパク質の受容体であるPTCHを介してアゴニストによる影響をモニターすることになる。しかしながら、皮膚などの基底細胞ガン(BCC)は、PTCHタンパク質の変異が原因であることが知られており(Athar M et al., Exp Dermatol. 2006 Sep;15(9):667-77)、このようなスクリーニング方法で選定されたShhのアゴニストやShh発現を直接促進する物質は発癌性を示す可能性がある。
また、特表2001-520202号公報には、上皮細胞の増殖速度を変化させるため、ヘッジホッグ治療薬を上皮細胞に異所的に接触させる方法が記載されている。しかしながら、この文献にはShhのアゴニストをスクリーニングする方法については何ら記載されていない。
特表2001−520202号公報 Journal of Investigative Dermatology (2005) 125, 638-646 Exp Dermatol. 2006 Sep;15(9):667-77
ヒト・ソニック・ヘッジホッグ遺伝子(Shh)を指標として発毛又は育毛薬剤を評価するためには、Shhが発毛又は育毛促進作用を有する物質に対して特異的かつ検出可能なレベルで発現しなければならない。しかしながら、Shhは一般的な平面培養系ではほとんど発現しないため、Shhを有意に発現することが可能な培養系を確立しなければならない。さらに、発現したShhを効率良く増幅することが可能なPCR用プライマーを構築する必要がある。また、さらには、PTCHに対する作用を介して選定されたShhのアゴニストやShh発現を直接促進する物質は発ガン性を示す可能性があるため、これらの物質の選別を回避することが極めて重要な問題となる。
本願は以下の発明を包含する。
(1) 配列番号1に示される配列中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド。
(2) 配列番号1に示される塩基配列を含んで成る、(1)に記載のオリゴヌクレオチド。
(3) 配列番号2に示される配列中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド。
(4) 配列番号2に示される塩基配列を含んで成る、(3)に記載のオリゴヌクレオチド。
(5) ヒト・ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の発現の亢進を指標とする被験物質の発毛又は育毛促進活性を評価するための方法であって、ヒト毛乳頭細胞とヒト外毛根鞘細胞の混合培養液から製造した細胞塊に被験物質を適用させる工程、(1)又は(2)に記載のオリゴヌクレオチドを順方向プライマーとして使用し、かつ(3)又は(4)に記載のオリゴヌクレオチドを逆方向プライマーとして使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により該遺伝子を増幅させる工程、そして該増幅させた発現遺伝子をモニタリングする工程を含んで成り、ここで該モニタリングが、該被験物質を該細胞塊に適用させてから少なくとも24時間経過後に行われることを特徴とする方法。
(6) 前記モニタリングが、被験物質を細胞塊に適用させてから少なくとも3日目以降に行われることを特徴とする、(5)に記載の方法。
(7) 前記細胞塊がハンギングドロップ法により製造されることを特徴とする(5)又は(6)に記載の方法。
本発明において、ヒト毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞から成る細胞塊を用いること、ヒトShh発現を効率良く検出できるPCRプライマーを見出したことにより、平面培養系でほとんど検出されないShhを指標とする発毛薬剤の評価が可能となる。さらに、ShhのアゴニストやShh発現を直接促進する物質は発癌性を示す可能性が考えられることから、本方法では、被験物質の添加から24時間まではヒトShh発現を変化させず、24時間経過後に初めてヒトShh発現を亢進させる作用をモニタリングすることにより発癌性物質を選択するおそれを回避し、被験物質の発毛又は育毛促進活性を安全に評価することが可能となる。
「ソニック・ヘッジホッグ」は脊椎動物において発見された3つのホモログの1つである。該ホモログファミリーは、ソニック・ヘッジホッグ(SHH)、デザート・ヘッジホッグ(DHH)、及びインディアン・ヘッジホッグ(IHH)から構成される。ソニック・ヘッジホッグはこれらの中で最も一般的なホモログであり、この発現遺伝子は生体において多くの重要な機能を有し、ソニック・ヘッジホッグのアゴニストが発毛を誘導することが知られているが、そのメカニズムについては不明である。
本発明における特徴の1つは、被験物質の発毛又は育毛促進活性を評価する方法において、ヒトShhを有意に発現することができる細胞塊を用いることである。該細胞塊は、毛包の原子的な器官様をなし得、ヒト毛乳頭細胞とヒト外毛根鞘細胞の混合培養液から、例えばハンギングドロップ方法などにより人工的に製造することが可能である。
「外毛根鞘細胞」とは、外毛根鞘は毛幹を包む毛包細胞の上皮系細胞の一つであり、毛幹と内毛根鞘を支える役割を担っている。該細胞の調製は、採取した頭皮から毛包組織を得て、該毛包組織を、加水分解酵素溶液で処理した後に、コラーゲンコーティングした培養皿に静置させ、低カルシウム無血清培地中で培養することにより調製することができる。
「毛乳頭細胞」とは、間葉系細胞として毛包最底部に位置し、毛包の自己再生のために毛包上皮幹細胞に活性化シグナルを送る、いわば司令塔の役割を担っている細胞をいう。該細胞は、頭皮から実体顕微鏡下で毛乳頭を得て、該毛乳頭を、常用の動物細胞培養培地で培養することにより調製することができる。
本発明に係る毛包構成細胞、すなわち外毛根鞘細胞及び毛乳頭細胞の培養に有効な培養液は特に限定されるものではなく、細胞培養において慣用されているものが使用できる。例えば、毛乳頭細胞については、好ましくはDMEM、MEM、F12、Changメディウム等の血清含有型培地が使用可能である。この場合、血清濃度は0〜30%、好ましくは10%とし、必要不可欠な因子として、bFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)及びEGF(上皮増殖因子)、2mM L−グルタミンを添加する。
外毛根鞘細胞の場合、Epilife(登録商標)、HuMedia(登録商標)(共にクラボウ社)、Invitrogen SFM(Invitrogen社)など、無血清型のケラチノサイトに対し最適化された培地が好ましい。ケラチノサイトは場合によってはGreen法(Cell 1975 NOV;6(3):331-43, Serial cultivation of strain of human epidermal keratinocytes:the formation of keratinizing colonies from single cells. Rheinwalf J.G., Green H.)にて調製することが出来るが、この場合はその培養に上記間葉系で使用した血清含有型培地を使用できる。なお、外毛根鞘細胞及び毛乳頭細胞の培養に共通して使える抗生物質としてはペニシリンG、カナマイシン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンBが挙げられる。
ハンギングドロップ方法とは、非平面接触性培養方法の1つであり、Keller G. M. et al., Curr. Opin. Cell Biol., 7, 862-869 (1995)に記載されるとおり、培養細胞を含む培養液の液滴(一般に25〜35μL程度)を培養皿の蓋の天井側に点着し、培養液が落下又は流れ落ちないように注意深く蓋を閉じ、表面張力により培養液内の細胞を逆さの液滴の状態で培養する方法である。このように培養することで、細胞は平面培養など場合における平面との接触により受ける影響を最小限にすることができる。非平面接触性培養方法のその他の例としては、あらかじめ細胞接着ができないよう表面加工された半球状の細胞培養皿(例えば住友ベークライトから販売されている「スフェロイド」)を利用した形成方法(スフェロイド形成方法)、ニトロセルロース培地内での培養により浮遊状態で細胞凝集させる浮遊方法などがある。
ハンギングドロップ培養のための温度・時間は取り扱う細胞の種類や継代回数に依存して変わりうるが、例えば37℃で1〜10日間、好ましくは3〜7日間行い、必要であれば適宜培地を同様のもので交換する。
上述のとおり、ヒト毛乳頭細胞とヒト外毛根鞘細胞の混合培養液を使用したハンギングドロップ方法により、実際の人の毛包構成に類似し、そしてヒトShhを有意なレベルで発現することができる細胞塊を効率良く人工的に作成することが可能となる。
このようにして得られた細胞塊に被験物質を加えることによりヒトShhを細胞塊内で発現させることが可能となる。しかしながら、発毛剤又は育毛剤の評価方法において、ヒトShhの発現を指標とする場合には、発癌性を示すヒトShhのアゴニストやShh発現を直接的に促進する物質までも選別してしまうおそれがある。
そこで、毛周期における発毛機構に目を向けると、毛包は皮膚の付属器官の一つで一定の周期をもって常に生え変わり、自己再生を繰り返す能力をもつ器官として特徴付けられ、毛包は皮膚外部に露出したいわゆる毛髪と、皮膚真皮に埋没した毛幹を生み出す元になる毛根鞘や毛母細胞、毛乳頭細胞などから形成されている。発生学的には皮膚−真皮の相互作用により毛包原基が形成され、下部方向に皮膚が伸長することで毛包は形成される(成長期)。発生の最終段階として毛幹の伸長は一定期間継続するが、やがて停止し、アポトーシスによって毛根鞘、毛母細胞の部分が退縮に向かう(退行期)。この一連の過程で、真皮奥深くまで伸長していた毛包は皮膚近くまで短くなり、毛乳頭のサイズも小さくなる。やがて休止期を経て、再び毛母細胞は活性化され新しい周期の成長期へと向かう。この周期がほぼ一生を通じて繰り返される(毛周期)。このような毛周期の発毛機構などには多数の因子が複雑に関与、機能しているものと考えられる。
かかる知見に基づき、シクロスポリンAが、副作用として多毛症(Lutz et al, Skin Pharmacol 7, 101, 1994)が知られている薬剤であり、発毛作用(Paus et al, Lab Invest 60, 365, 1989)や毛成長促進作用(Taylor et al, J Invest Dermatol 100, 237, 1993)を示すことから、該薬剤をポジティブコントロールとしてハンギングドロップ法培養で作製した細胞塊に適用し、Shhの発現変化を調べたところ、Shhの発現がシクロスポリンAの添加後24時間までは変化がなく、その後はじめてその発現が亢進されることが判明した。発癌機構によりヒトShhの発現が亢進される場合、発癌性を有する物質はヒトShhに直接的に働きかけるため、数時間でヒトShhの発現が亢進されるものと考えられるが、発毛又は育毛活性作用でヒトShhの発現が亢進される場合には複雑な相互作用を介して間接的に発毛又は育毛を促進することにより、ヒトShh発現の亢進にタイムラグが生じるものと考えられる。従って、本発明において、薬剤の発毛効果の有無を確認する上で、候補薬剤の添加から24時間経過後、好ましくは少なくとも3日目以降のヒトShhの発現の亢進を指標とすることにより、安全かつ正確に発毛剤又は育毛剤を評価することが可能となる。
したがって、本発明においては、候補薬剤の添加から24時間経過後、好ましくは少なくとも3日目以降に発現したヒトShhを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)解析に供し、ヒトShhの発現を定量的に分析することを特徴とする。
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は、RNAを逆転写することによってDNAとし、これをPCR法によって高度に増幅することにより、極めて微量なRNAを検出・定量する方法である。これにより、細胞塊中の微量なヒトShh遺伝子発現を解析することができる。具体的には、まず、候補薬剤をハンギングドロップ培養した細胞塊に添加してから、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも3日間経過後、該細胞塊試料からmRNAを抽出し、逆転写酵素、例えば、SuperScriptII(Invitrogen)及び好適なプライマーを用いてcDNAを逆転写する。該方法において、ヒトShhに対する特異性はプライマーの配列により決定するため、最適なプラマーを選択しなければならない。これに関連して、NCBI(米国国立バイオテクノロジー情報センター)のデータベースにおいては、ヒトShhのPCRプライマーがいくつか公開されているが、これらのPCRプライマーは、定量PCRに試用したところ不適当であることが確認された。しかしながら、このたび、本発明に従う方法においてヒトShhに最適なPCR用プライマーペアを構築することに成功した。該プライマーペアは、順方向プライマーとして、AGCTGACCCCTTTAGCCTAC(配列番号1)中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号1の塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド、及び逆方向プライマーとして、TCTGAGTCATCAGCCTGTCC(配列番号2)中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号2中の塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド、である。
cDNAを逆転写した後、通常のPCRの反応手順と同様に、mRNA/cDNAハイブリッドを変性させて一本鎖にほどき、そしてまた上記PCR用プライマーと対合させて、DNAポリメラーゼによりcDNAを鋳型としてDNA鎖の伸長を行う。かかる段階を繰り返すことにより、ヒトShhが増幅される。PCR条件は、例えば、変性条件として95℃で5秒から30秒;アニーリング条件として50℃〜65℃で5秒から30秒;伸長条件として72℃で5秒から30秒を35サイクルから45サイクルとして行うことができる。好ましいPCR条件は、変性条件として95℃で10秒間;アニーリング条件として58℃で10秒間;伸長条件として72℃で15秒間を40サイクルとして行う。
増幅したヒトShhは、当業界において慣習的な方法により検出・定量することができる。これらの方法には、例えば、アガロースゲル電気泳動法、SYBRグリーン法、蛍光プローブ法等が挙げられるが、これらに限定されない。
候補薬物によるヒトShhの発現の亢進を、コントロール、例えば、溶媒又はあらかじめヒトShh遺伝子の発現量がわかっている標準物質と比較することにより、候補薬物の発毛又は育毛効果について評価することができる。
本発明の方法により発毛又は育毛活性を有する物質として選定されるには、例えば、被験物質の作用によるヒトShh遺伝子の発現が、コントロール、すなわち、発現を作用させていない物質に比べ、有意に亢進しているか否かで判断される。例えば、ヒトShhの発現が、コントロールに比べ、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%、更に好ましくは50%、最も好ましくは100%以上亢進している場合、発毛又は育毛促進物質として選定される。
このように、本発明は、被験物質の発毛又は育毛促進活性を極めて正確かつ安全に評価する方法を提供することができ、発毛又は育毛剤の開発に著しく貢献するものである。
毛包細胞の調製
ヒト外毛根鞘細胞
ヒト外毛根鞘細胞は、ヒトの頭皮を美容整形外科手術又は外科手術の副産物として得て、これをこの頭皮から実体顕微鏡下で毛包組織を得た。次にこの毛包組織をコラゲナーゼ溶液で37℃で30分間処理した後に、さらにトリプシン溶液で37℃で5分間処理してから、コラーゲンコーティングした培養皿に静置させ、K−GM(Clonetics)又はKeratinocyte−SFM(GIBCO BRL)中で培養し、2日間ごとに培地を交換した。細胞が増殖したことを確認した後、培養器に付着している細胞を遊離させ遠心分離により細胞を回収し、無血清培地により継代培養を行った。
ヒト毛乳頭細胞
ヒト毛乳頭細胞も外毛根鞘細胞と同様、美容整形外科手術又は外科手術の副産物としてヒト頭皮から実体顕微鏡下で毛乳頭を得た。次に該毛乳頭を、ウシ胎児血清を含むダルベコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium; D-MEM )中で培養し、この間2日間ごとに培地を交換した。細胞が増殖したことを確認した後、培養器に付着している細胞を遊離させ遠心分離により細胞を回収し、無血清培地により継代培養を行った。
ヒト正常ヒト表皮メラニン細胞(メラノサイト)はクラボウ社より購入して、通常の継代培養を行った。
毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞からの細胞塊の調製(ハンギングドロップ法)
培地構成
Advanced−DMEM(Invitrogen社)に、10%ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、ペニシリン・ストレプトマイシン混合液(Invitrogen社)(100倍希釈)、及び3.5μl/500mlβ−メルカプトエタノールを加えた培地に、HumediaKG−2(クラボウ社)を1:1にて混合した培地を用いた。
調製方法
培養した毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞をトリプシン処理後に、各細胞が2×103個/μlになるよう上記の混合培地に懸濁した。この細胞懸濁液を、10cm角の四角い培養皿の天井側(フタ)に30μlずつ分注して、適当な大きさのドーム上の水滴を形成させた。注意深くフタを閉じ、培養液が落下しないようにして、37℃、5%CO2雰囲気にて培養した。毛乳頭細胞及び外毛根鞘細胞は、P3(継代数1をP1と表記)以内の細胞を使用した。
細胞塊に発毛薬剤シクロスポリンAを添加した場合のShh発現の変化
免疫抑制剤であるシクロスポリンAは、副作用として多毛症(Lutz et al, Skin Pharmacol 7, 101, 1994)が知られている薬剤であり、発毛作用(Paus et al, Lab Invest 60, 365, 1989)や毛成長促進作用(Taylor et al, J Invest Dermatol 100, 237, 1993)を示すことが明らかになっている。そこで、ハンギングドロップ法培養で作製した細胞塊に、シクロスポリンAを加えた際のShhの発現変化を調べた。ハンギングドロップ法培養開始の3日後に、シクロスポリンAあるいは溶媒コントロールのエタノールを含む上記培地にて培地交換を行った。シクロスポリンA(Novartis社)は、エタノールにて10mM溶解して、5μMとなるように添加した。シクロスポリンAの添加から経時的に細胞塊サンプルを回収し、下記のRT−PCR解析に供した。
RT−PCR解析
平面培養した細胞及びハンギングドロップ法培養した細胞塊サンプルから、RNeasyキット(QIAGEN)を用い、RNAを抽出した。各RNA500ng相当をSuperScriptII(Invitrogen)20μlの反応系にてcDNAへ逆転写した。得られたサンプル1μlを表1に示したプライマーペアを用い、20μlの系で定量PCR(LightCycler system、Roche)にかけた。LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche)の反応プロトコール[95℃、10秒;58℃、10秒;72℃、15秒を40サイクル]を用いた。
結果
ハンギングドロップ法培養を3日間行って形成させた細胞塊のcDNAを鋳型に用いた場合に、表1に示した10種類のプライマーペアのうち、SHH−F10とSHH−R10のプライマーペアのみで目的のShhの遺伝子断片が増幅され、定量が可能であった(表1)。
Figure 2009213442
SHH−F10とSHH−R10のプライマーペアを用いてShhの発現量を測定した結果を図1に示す。まず、単層で培養した外毛根鞘細胞において、わずかにShhの発現は検出されるが、ハンギングドロップ法培養を3日間行って形成させた細胞塊において、Shhの発現は約60倍まで亢進した。一方、毛乳頭細胞とメラノサイトにおいて、Shhの発現は確認されなかった(図1)。
次に図2に示すとおり、細胞塊にシクロスポリンAを添加した場合、シクロスポリンA添加から3日後において、Shhの発現が約1.5倍まで有意に亢進した。一方、血管拡張作用が主な発毛の機序と考えられるミノキシジルを30μMの濃度で添加した場合には、Shhの有意な発現亢進は確認されなかった。
Shhは発毛への関与が知られているが、Wntなどの下流に位置して二次的に働く因子であることを考えると、薬剤のShh発現に対する効果は間接的であるべきであると考えられる。図3に示すとおり、Shhの発現はシクロスポリンAの添加後24時間までは変化がなく、3日目以降においてはじめて、その発現が亢進されて来ることが分かった。このように、薬剤の発毛効果の有無を確認する上で、薬剤の添加から3日目以降にShhの発現が亢進されるかを評価することが肝要と考えられる。
培養細胞におけるShh遺伝子の発現を示すグラフである。 シクロスポリンAによるShh遺伝子発現の亢進を示すグラフである(溶媒によるShh遺伝子発現を100%とした場合のミノキシジルとシクロスポリンAによるShh発現量を比較する)。 シクロスポリンAによるShh遺伝子発現の経時的変化を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 配列番号1に示される配列中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド。
  2. 配列番号1に示される塩基配列を含んで成る、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
  3. 配列番号2に示される配列中の少なくとも15個の連続した塩基配列を含んで成るオリゴヌクレオチド。
  4. 配列番号2に示される塩基配列を含んで成る、請求項3に記載のオリゴヌクレオチド。
  5. ヒト・ソニック・ヘッジホッグ遺伝子の発現の亢進を指標とする被験物質の発毛又は育毛促進活性を評価するための方法であって、ヒト毛乳頭細胞とヒト外毛根鞘細胞の混合培養液から製造した細胞塊に被験物質を適用させる工程、請求項1又は2に記載のオリゴヌクレオチドを順方向プライマーとして使用し、かつ請求項3又は4に記載のオリゴヌクレオチドを逆方向プライマーとして使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により該遺伝子を増幅させる工程、そして該増幅させた発現遺伝子をモニタリングする工程を含んで成り、ここで該モニタリングが、該被験物質を該細胞塊に適用させてから少なくとも24時間経過後に行われることを特徴とする方法。
  6. 前記モニタリングが、被験物質を細胞塊に適用させてから少なくとも3日目以降に行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記細胞塊がハンギングドロップ法により製造されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
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