JP2009207619A - 医療用容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持った医療用容器を提供する。
【解決手段】薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納し、先端が封止された外筒と外筒の開口部を閉塞するガスケットとを有する薬剤収納容器であって、前記ガスケット表面の少なくとも前記物質と接触する表面および前記外筒と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われており、シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持つことを特徴とする医療用容器。
【選択図】図1
【解決手段】薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納し、先端が封止された外筒と外筒の開口部を閉塞するガスケットとを有する薬剤収納容器であって、前記ガスケット表面の少なくとも前記物質と接触する表面および前記外筒と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われており、シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持つことを特徴とする医療用容器。
【選択図】図1
Description
本発明は、内腔と該内腔を外部へ連通させる先端と基端を有する外筒と、前記内腔を摺動可能に閉塞する弾性体からなるガスケットとを有する医療用容器に関する。
近年、プラスチック製医療用容器は、軽量、安価で落下による破損が少なく、成形も容易であることから医薬品の収納容器として広く使用されている。また、近年、注射器の先端を封止した外筒に薬液や注射液を充填し、もう一端の開口部をガスケットで封止した状態で輸送、保管し、シリンジ先端部に注射針もしくは投与用器具を取り付け、ガスケットを押し込んでシリンジ内を摺動させることにより薬液や注射液を投与するプレフィルドシリンジが使われ始めている。プレフィルドシリンジは、操作が簡便であり、既に薬液が充填されていて、緊急の場合においても薬剤の調整を行う必要がないため細菌の感染を防止するだけでなく調剤時間の短縮化など、多くの利点を有しており、最近の医療現場においては治療の効率化、医療過誤などの観点から、各種薬剤のプレフィルド化が望まれてきている。
また、収納する薬剤が容器やガスケットなどに吸着しやすい場合も有り、薬剤の非吸着特性と、ガスケットの摺動性の向上を図るため、医療用具コーティング用摺動性組成物として、溶液型シリコーンゴムを主構成成分とし、かつ、カーボンナノチューブおよびシリコーン樹脂微粒子を含有し、ガスケット素材と被覆剤との結合力を高めるためのシランカップリング剤を用いたものが提案されている。(特許文献1)
一方、透明性に優れ、従来のオレフィン系樹脂に比べ硬い材料として、環状ポリオレフィンに着目し、シリンジやガスケット材料として提案されている。(特許文献2)
一方、透明性に優れ、従来のオレフィン系樹脂に比べ硬い材料として、環状ポリオレフィンに着目し、シリンジやガスケット材料として提案されている。(特許文献2)
プレフィルドシリンジに収納された薬剤の中には、シリンジポンプを用いて低流速で持続的に投与される薬剤がある。これらの薬剤の中には薬剤が脂溶性であるなどの理由で医療用容器への付着・吸着・浸透するものがあり、この様な薬剤を収納するプレフィルドシリンジでは、薬剤の医療用容器へ取り込みを防止する外筒やガスケットで形成されている。しかしながら、これらの材質では、外筒とガスケットの材質の相性が悪く、シリンジポンプを用いて低流速で持続投与した場合、投与速度が速くなったり遅くなったりする脈動が起こり、安定に投与することが困難であった。
特許文献1の方法では、コーティング用組成物の調整が煩雑であり、また、コーティング材料とガスケット基材との結合補助物質も必要となる。
また、特許文献2のシリンジに示される様に、環状ポリオレフィン系樹脂から成るガスケットの周面に、バレル内周面と当接する鍔部がピストン摺動方向に間隔をあけて複数形成されているシリンジが提案されているが、環状ポリオレフィンの様な硬い樹脂でガスケットを形成してしまうと液密性が損なわれるため、滅菌中の圧力変化、落下による衝撃、使用時に強く握ることによって収納されている薬剤が漏れる可能性があった。
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決するものである。すなわち、薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納し、先端が封止された外筒と外筒の開口部を閉塞するガスケットとを有する薬剤収納容器であって、前記ガスケット表面の少なくとも前記物質と接触する表面および前記外筒と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われており、簡便に被覆でき、かつ、シリンジポンプを使用したときに脈動のない高い摺動性を持つことを特徴とする医療用容器を提供するものである。
本発明の医療用容器によれば、シリンジポンプを使用したときに脈動なく投与できる医療用容器を提供することができる。
本発明の医療用容器によれば、シリンジポンプを使用したときに脈動なく投与できる医療用容器を提供することができる。
上記課題は以下の本発明により解決される。
(1)内腔と該内腔を外部へ連通させる先端と基端を有する外筒と、前記内腔を摺動可能に閉塞する弾性体からなるガスケットとを有する医療用容器であって、該先端と該ガスケットの間に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納可能であり、該ガスケットの少なくとも該物質と接触可能な表面および該内腔表面と接触可能な表面が環状ポリオレフィンの薄膜で被覆されてなることを特徴とする医療用容器。
(1)内腔と該内腔を外部へ連通させる先端と基端を有する外筒と、前記内腔を摺動可能に閉塞する弾性体からなるガスケットとを有する医療用容器であって、該先端と該ガスケットの間に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納可能であり、該ガスケットの少なくとも該物質と接触可能な表面および該内腔表面と接触可能な表面が環状ポリオレフィンの薄膜で被覆されてなることを特徴とする医療用容器。
(2)前記先端が封止され、前記ガスケットと該先端の間に前記液体をガスケットに接触する状態で保存するものである前記(1)に記載の医療用容器。
(3)前記環状ポリオレフィンの薄膜が、該環状ポリオレフィン溶液の浸漬により被覆されてなる前記(1)または(2)に記載の医療用容器。
(4)前記ガスケットの少なくとも前記被覆部分が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン系エラストマー、および熱可塑性エラストマーからなる群のいずれか、またはこれらの混合物である前記(1)ないし(3)に記載の医療用容器。
(5)前記環状ポリオレフィンがトルエンに5重量%溶解可能である前記(1)ないし(4)に記載の医療用容器。
(6)前記外筒が光学的に透明なプラスチックからなる前記(1)ないし(5)に記載の医療用容器。
(7)前記外筒が、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、テトラメチルペンテンおよびポリエチレンナフタレートからなる群のいずれか、またはこれらの混合物からなる前記(1)ないし(6)に記載の医療用容器。
(8)前記物質が、脂溶性ビタミン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸ニカルジピン、シクロスポリン、ミダゾラム、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、脂溶性薬剤、タンパク質、ペプチド、糖タンパクである前記(1)から(8)のいずれかに記載の医療用容器。
(9)前記環状ポリオレフィン層がディッピングによるコーティングによって形成される(1)から(8)のいずれかに記載の医療用容器。
(10)0.05%硝酸イソソルビド注射液を収納し、先端が封止された外筒と外筒の開口部を閉塞するガスケットとを有する薬剤収納容器であって、ガスケット表面の少なくとも前記物質と接触する表面および外筒と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われており、シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持つことを特徴とする医療用容器。
本発明の医療用容器は、シリンジポンプを使用したときに脈動なく投与できる医療用容器である。
また、本発明の医療用容器は、0.05%硝酸イソソルビド注射液を収納した薬剤収納容器であって、ガスケット表面の少なくとも前記物質と接触する表面および外筒と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われており、シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持つことを特徴とするものである。このため、シリンジポンプを使用したときに脈動を起こさずに安定して薬剤を投与することできる。
以下、本発明に係る内腔と該内腔を外部へ連通させる先端と基端を有する外筒と、前記内腔を摺動可能に閉塞する弾性体からなるガスケットとを有する医療用容器であって、該先端と該ガスケットの間に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納可能であり、該ガスケットの少なくとも該物質と接触可能な表面および該内腔表面と接触可能な表面が環状ポリオレフィンの薄膜で被覆されてなることを特徴とする医療用容器について詳細に説明する。
本発明の医療用容器の形態をプレフィルドシリンジに限定し、図1を参照しながら説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。図1は、本発明の医療用容器の1実施例である。
本発明の医療用容器の形態をプレフィルドシリンジに限定し、図1を参照しながら説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。図1は、本発明の医療用容器の1実施例である。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、プラスチックにより形成された外筒2と外筒2の先端開口21に取り付けられた封止部材5と、ガスケット3とガスケット3に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャー6と外筒2に収納された薬液4から成る。薬液4は外筒2と封止部材5とガスケット3によって液密に収納されている。封止部材5を取り外し、先端開口21に注射針を取り付け、プランジャー6を押圧することで薬液4をシリンジから吐出することができる。
本発明の医療用容器の外筒2は、水蒸気透過性、酸素透過性の少ない材料、すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカートネート、ポリ(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリルーブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリアリレートなどのポリオレフィン、ポリエステル、環状ポリオレフィンで光学的に透明でかつ110℃以上のガラス転移点又は融点を有する材料で形成されることが好ましい。特にポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリエチレンナフタレートが、透明性、蒸気滅菌性、成型品の寸法安定性の面より望ましい。なお、これらの材料はプレフィルドシリンジの外筒に限らず薬理学的に有効な物質を収納するバイアル、アンプル等の容器に用いられる容器本体部分に共通して使用できるものである。
本発明のプレフィルドシリンジ1の容器形状は特に限定するものではないが、脈動を最小にするためには、一般にガスケット3が占める薬液接触面積が小さいほどよい。すなわち、実用上問題のない範囲で外筒内径が小さいものであることが好ましく、具体的には、外筒空間部長手方向全長と外筒空間部内径(直径)との比が4:1〜15:1、特に10:1〜15:1であることが好ましい。
本発明の医療用容器のガスケット3を構成する材料としては、特に制限されないが、スチレン−ブチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体あるいはその水添物などのスチレン系エラストマーやエチレン−α−オレフィン共重合体などのエチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーやこれらを任意に組合せたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。また、物性の改善を目的として、これにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α−オレフィン共重合体などのポリオレフィンや流動パラフィン、プロセスオイルなどのオイルやタルク、キャスト、マイカなどの粉体無機物を混合することもできる。さらに、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルーブタジエンゴムスチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料(特に硫黄や過酸化物などで加硫処理したもの)やそれらの混合物を用いることもできる。中でも弾性特性、蒸気滅菌に耐えられる耐水性、耐熱性などの観点からスチレン系エラストマー、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、シリコーンゴムなどが望ましい。なお、これらの材料はガスケットに限らず薬理学的に有効な物質を収納する容器に用いられる弾性体に共通して使用できるものである。
また、ガスケット3に用いる材料のゴム硬度(JIS K8301 )は、JIS−Aで35度〜85度が望ましい、85度より大きいとシリンジの組立てが困難となり、35度より小さいと摺動時に変形して摺動させにくくなるからである。更に望ましいゴム硬度は40度〜70度である。
本発明の医療用容器のガスケット3は少なくとも収納される薬剤に接触する表面および外筒2と接する表面が環状ポリオレフィンで覆われている。ガスケット3の全体が環状ポリオレフィンで覆われていてもよい。従来、環状ポリオレフィンは、有機溶媒に難溶であり、浸漬法で被覆する場合、ガスケット基材の変性を避けるために、溶媒選択が困難であったが、トルエンに溶解する程度の濃度の環状ポリオレフィンで浸漬することによって、優れた効果を得ることができる。
本発明における環状ポリオレフィンとしては、有機溶媒に溶ける性質を持つシクロオレフィンコポリマー(CОC)、又はシクロオレフィンポリマー(CОP)を用いることができる。シクロオレフィンコポリマーとしては、ノルボルネン類とエチレン等のオレフィン類を原料とする共重合体、テトラシクロドデセン類とエチレン等のオレフィン類を原料とする共重合体が好適に用いられる。シクロオレフィンポリマーとしては、ノルボルネン類、シクロテトラドデセン類、シクロペンテン類等の開環重合可能なシクロオレフィン系のモノマーを開環重合し水素添加した重合体が好適に用いられる。具体的には、ゼオネックス(日本ゼオン(株))、TОPAS(ポリプラスチックス(株))、ARTОN(JSR(株))などを示すが、樹脂自身が持つ摺動性よりTОPASがもっとも望ましい。
本発明における環状ポリオレフィンのコーティングは、ディッピングによって行うことが好ましい。本発明におけるディッピングとはコーティングしたいものを溶解した液にコーティングされたいものを浸漬させることを示す。例えば、環状ポリオレフィンをトルエン等の溶媒に溶解して溶解液を調製し、ガスケットを溶解液に浸漬した後、加熱乾燥して溶媒を蒸発させて、コーティングする。溶解液への浸漬は、1度だけでも構わないし、加熱乾燥後、何度か浸漬−乾燥を繰り返しても構わない。
このときの溶解液の濃度は、環状ポリオレフィンを1%〜8%含む液が望ましい。より望ましくは3%〜7%である。これ以上薄いと脈動が発生してしまい、これ以上濃いと溶解液の粘度が上昇しコーティング操作が煩雑になるだけでなく、加熱乾燥によって溶媒が除去しにくくなる。この溶解液中の環状ポリオレフィンの濃度によって、ガスケットにコーティングする環状ポリオレフィンの膜厚が制御可能となる。
このときの溶解液の濃度は、環状ポリオレフィンを1%〜8%含む液が望ましい。より望ましくは3%〜7%である。これ以上薄いと脈動が発生してしまい、これ以上濃いと溶解液の粘度が上昇しコーティング操作が煩雑になるだけでなく、加熱乾燥によって溶媒が除去しにくくなる。この溶解液中の環状ポリオレフィンの濃度によって、ガスケットにコーティングする環状ポリオレフィンの膜厚が制御可能となる。
得られた環状ポリオレフィン層は、透明性、耐熱性、変形性に優れており、ガスケット素材に吸着されやすい薬剤の吸着を抑制することができる。またディッピングにより形成されるため、複雑な形状を有する部材においてもコーティングが可能となる。したがって、本発明のように複雑な形状であるガスケット3へのコーティングも可能となる。環状ポリオレフィン層の厚さは、0.5μm〜9μmが望ましく、より望ましくは1μm〜7μmである。これ以上薄いと脈動を抑制できず、これ以上厚いとガスケットの弾性を生かしきれず、滅菌時に液漏れが発生してしまう。
本実施例のプランジャー6の先端には、ガスケット3を着脱可能に固定させる手段を有する。また前記プランジャー6はガスケット3と共に先端開口21方向に押圧されることにより、薬液4をプレフィルドシリンジ1から排出させることができる。
本発明におけるプレフィルドシリンジ1に収納される薬理学的に有効な物質としては、強心剤、麻酔薬、脂溶性ビタミン、脂溶性薬剤、タンパク質、ペプチド、糖タンパク、その他シリンジポンプを用いて投与される薬剤などが挙げられる。強心剤の例としては塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、麻酔薬の例としてはプロポフォールが挙げられ、脂溶性ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンDが挙げられ、脂溶性薬剤の例としては、塩酸二カルジピン、ヒドララジン、ミコナゾール、シクロスポリン、ミダゾラム、桂皮酸、ベンゾジアゼピン、ヘノチアジン、リモネン、メントール、テルピネン、シネン、塩化ベンザルコニウム、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、コデイン、フェタミニル、モルヒネなどの鎮痛薬、ジルチアゼム、塩酸ジルチアゼム、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニコランジル、ジピリダモールなどの狭心症薬、クロモグリク酸化合物、ネドクロミル、ケトチフェンなどの抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ストレプトマイシン、ペニシリン類、セアロスポリン類、テトラサイクリン類、ペンタミジン類、スルホンアミド類などの抗生剤が挙げられる。また、タンパク質、ペプチドの例として、インスリン、血清アルブミン、ティッシュプラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、B型肝炎ワクチン、インターフェロン類、インターロイキン類、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ヒト成長ホルモン、心房性Na利尿ペプチド、インスリン様成長因子I、モノクローナル抗体、グロブリン、凝固因子が挙げられる。また、糖タンパクの例として、ヘパリンが挙げられる。これらのうち、塩酸ドパミン、塩酸ドブタミン、モルヒネ、プロポフォールの様なシリンジポンプを用いて低流速で投与される薬剤が望ましく、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ジルチアゼム、ニコランジルの様なガスケットに吸着されやすい脂溶性薬剤でシリンジポンプを用いて低流速で投与される薬剤がもっとも望ましい。
本発明の医療用容器は、特に0.05%硝酸イソソルビド注射液を収納するものであるので、シリンジポンプを使用したときに脈動のない摺動性を持つことを特徴とするものである。このため、シリンジポンプを使用したときに脈動を起こさずに安定して薬剤を投与することできる。 硝酸イソソルビド注射液は少量の投与で瞬時に血圧を低下させるという特徴があるので、本発明の環状ポリオレフィンをコートしたガスケットを用いると、脈動を起こさず安定した投与を行うことができ、目的に合った効能効果が得られる。
実験例
注射液の調整
注射用水にD−ソルビトール50.0g、クエン酸0.5gを溶解した後、水酸化ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。これに硝酸イソソルビド1.0gを加え、加温溶解し冷却した後、さらに注射用水を加えて全量を1000mLとし無菌ろ過した。
注射液の調整
注射用水にD−ソルビトール50.0g、クエン酸0.5gを溶解した後、水酸化ナトリウムを加え、pHを5.0に調整した。これに硝酸イソソルビド1.0gを加え、加温溶解し冷却した後、さらに注射用水を加えて全量を1000mLとし無菌ろ過した。
実施例1
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、2.4mm/hでプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を以下に記載の方法により測定した。結果を図2に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、2.4mm/hでプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を以下に記載の方法により測定した。結果を図2に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
各シリンジの摺動抵抗値は、小型卓上試験機 EZTest(島津製作所製)により測定した。具体的には、シリンジの先端およびプランジャーの後端を小型卓上試験機の測定対象物固定部に固定し、プランジャーを2.4mm/hの速度で30mm降下させたときの初期摺動抵抗値(最大摺動抵抗値:0〜30mm区間内で必要とした最大応力kgf)を計測した。
実施例2
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を。結果を図3に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を。結果を図3に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
実施例3
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、1%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚0.5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図4に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、1%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚0.5μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図4に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
実施例4
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、4%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、再度、4%TOPAS/トルエン溶液に浸漬し、引き上げた後、30分風乾して80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚9μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図5に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
TOPAS(TOPAS6013、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、4%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、再度、4%TOPAS/トルエン溶液に浸漬し、引き上げた後、30分風乾して80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚9μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を容量20mL用のプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、上記摺動抵抗測定試験でプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図5に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
実施例5
ZEОNEX(ZEОNEX480R、日本ゼオン(株))をトルエンに溶解し、5%ZEОNEX/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのZEОNEXをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を20mLのプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、前記摺動抵抗測定試験によりプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図6に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
ZEОNEX(ZEОNEX480R、日本ゼオン(株))をトルエンに溶解し、5%ZEОNEX/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚5μmのZEОNEXをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を20mLのプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、コーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌し、前記摺動抵抗測定試験によりプランジャーを押し込む時の摺動抵抗を測定した。結果を図6に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動を起こさず安定して排出された。
比較例1
TOPASをガスケットにコーティングしないこと以外は実施例1と同様にして、2.4mm/hでプランジャーを押し込む時の摺動抵抗測定した。結果を図7に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動が発生したため、安定に排出することができなかった。
TOPASをガスケットにコーティングしないこと以外は実施例1と同様にして、2.4mm/hでプランジャーを押し込む時の摺動抵抗測定した。結果を図7に示す。0.05%硝酸イソソルビド注射液は脈動が発生したため、安定に排出することができなかった。
比較例2
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、10%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚12μmのTOPASをコーティングしたが、10%TOPAS/トルエン溶液の粘度が高く、均一にコーティングできなかった。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、10%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚12μmのTOPASをコーティングしたが、10%TOPAS/トルエン溶液の粘度が高く、均一にコーティングできなかった。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
比較例3
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、再度、調製した5%TOPAS/トルエン溶液にガスケットを浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚10μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を20mLのプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、実施例8でコーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌したところ、ガスケットと外筒の間の液密が得られず、液漏れが確認された。
TOPAS(TOPAS8007、ポリプラスチックス(株))をトルエンに溶解し、5%TOPAS/トルエン溶液を調製した。調製した溶液にガスケット(材質:ブチルゴム、朝日ラバー(株))を一度浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。その後、再度、調製した5%TOPAS/トルエン溶液にガスケットを浸漬し、引き上げた後、30分風乾した。80℃で30分間加熱乾燥し、膜厚10μmのTOPASをコーティングした。被覆層の膜厚の測定は、断面のSEM観察により行った。
前記のとおり調製した0.05%硝酸イソソルビド注射液を20mLのプレフィルドシリンジ外筒(材質:ポリプロピレン、日本ポリケム(株))に20mL充填し、実施例8でコーティングを施したガスケットで密封し、0.05%硝酸イソソルビド注シリンジを作製した。オートクレーブ滅菌したところ、ガスケットと外筒の間の液密が得られず、液漏れが確認された。
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
21 先端開口
22 後端開口
3 ガスケット
4 薬剤
5 封止部材
6 プランジャー
2 外筒
21 先端開口
22 後端開口
3 ガスケット
4 薬剤
5 封止部材
6 プランジャー
Claims (8)
- 内腔と該内腔を外部へ連通させる先端と基端を有する外筒と、前記内腔を摺動可能に閉塞する弾性体からなるガスケットとを有する医療用容器であって、該先端と該ガスケットの間に薬理学的に有効な物質を含有する液体を収納可能であり、該ガスケットの少なくとも該物質と接触可能な表面および該内腔表面と接触可能な表面が厚さ0.5〜9μmの環状ポリオレフィンの薄膜で被覆されてなることを特徴とする医療用容器。
- 前記先端が封止され、前記ガスケットと該先端の間に前記液体をガスケットに接触する状態で保存するものである請求項1に記載の医療用容器。
- 前記環状ポリオレフィンの薄膜が、該環状ポリオレフィン溶液の浸漬により被覆されてなる請求項1または2に記載の医療用容器。
- 前記ガスケットの少なくとも前記被覆部分が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレン系エラストマー、および熱可塑性エラストマーからなる群のいずれか、またはこれらの混合物である請求項1ないし3に記載の医療用容器。
- 前記環状ポリオレフィンがトルエンに5重量%溶解可能である請求項1ないし4に記載の医療用容器。
- 前記外筒が光学的に透明なプラスチックからなる請求項1ないし5に記載の医療用容器。
- 前記外筒が、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、テトラメチルペンテンおよびポリエチレンナフタレートからなる群のいずれか、またはこれらの混合物からなる請求項1ないし6に記載の医療用容器。
- 前記物質が、脂溶性ビタミン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、塩酸ニカルジピン、シクロスポリン、ミダゾラム、プロポフォール、ベンゾジアゼピン、脂溶性薬剤、タンパク質、ペプチド、糖タンパクである請求項1から8のいずれかに記載の医療用容器。
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