JP2009196234A - 繊維強化プラスチック構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】FRP構造体のコアの両表面を貫通するように加工された孔内部にマトリックス樹脂を注入するに際し、そのマトリックス樹脂流動を安定化することで、成形完了に要する時間のばらつきや、マトリックス樹脂の未含浸といった欠陥の発生が無いFRP構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】コア材の両面に強化繊維基材を配し、一方の強化繊維基材側から注入された樹脂を、該コア材に設けた貫通手段(筒状体、内壁表面に円滑化処理を施した貫通孔)を通して他方の強化繊維基材側へと流動させて、該両面の強化繊維基材に樹脂を含浸させることにより、該コア材の両面に繊維強化プラスチック層を形成する繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、真空減圧補助による樹脂トランスファー成形(以下、VaRTM)プロセスを用いて製造されるサンドイッチ構造の繊維強化プラスチック(以下、FRP)構造体、およびその製造方法に関する。
コア材の表面に強化繊維基材を配置し、その強化繊維基材に液状のマトリックス樹脂を含浸、硬化させることによってFRP構造体を成形する基本技術として、液状のマトリックス樹脂を加圧して注入するRTM(Resin Transfer Molding)法や、加圧する代わりに強化繊維基材内部を真空減圧し、大気圧との差圧を利用してマトリックス樹脂を注入するVaRTM(Vacuum−assisted Resin Transfer Molding)法が知られている。注入されたマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合は、加熱などによる化学的な硬化反応の促進によってFRPが得られ、熱可塑性樹脂である場合は、冷却処理により樹脂が固化することでFRPが得られる仕組みである。
上記の方法のうち、特に、コア材の両面側に強化繊維基材を配置してFRPサンドイッチ構造体を製作する方法に関しては、両面の強化繊維基材内におけるマトリックス樹脂の良好な流動・拡散性を確保するため、コア表面に形成された溝を起点として樹脂を注入することを特徴としたSCRIMP (Seeman’s Composite Resin Infusion Molding Process)法がある(特許文献1参照)。しかし、この方法では、コア材表面の溝に起因するライン状の凹凸が製品の両表面に表れてしまい、意匠性が損なわれる。
そこで、強化繊維基材の片面側を樹脂注入の起点とし、かつ、樹脂注入側の強化繊維基材が接するコア材表面に対し、その面方向に延びるように複数の溝を設けるとともに、溝底にコア材の樹脂注入側の面から他面側へと貫通する孔を設ける方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法は、樹脂が溝によってコアの面方向に拡散された後、貫通孔を介して、樹脂注入側の面から他面側に含浸するという方法を採用する。そして、設けられる貫通孔の径や数量は、製品表面の意匠性に影響しない範囲で設計されることが開示されており(特許文献3参照)、これにより、FRPサンドイッチ構造体の少なくとも片面の意匠性を確保することが可能となるとされている。
しかし、これらの方法では、木材や発泡体からなるコア材に対して貫通孔を加工する際、貫通孔内部に、たとえば、前者では木屑、後者では毛羽などの堆積物が残留するため、貫通孔内の流動抵抗が増大し、各々の貫通孔を通過するマトリックス樹脂の流動時間に差が生じたり、貫通孔内のマトリックス樹脂流れが完全に遮断されて、片方の強化繊維層における含浸様態の不安定を招き、結果として未含浸を発生させてしまうという問題があった。
特表2000−501659号公報 特開2002−86579号公報 特開2006−15611号公報
本発明は、FRP構造体のコアの両表面を貫通するように加工された孔内部にマトリックス樹脂を注入するに際し、そのマトリックス樹脂流動を安定化することで、成形完了に要する時間のばらつきや、マトリックス樹脂の未含浸といった欠陥の発生が無いFRP構造体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るFRP構造体の製造方法は、コア材の両面に強化繊維基材を配し、一方の強化繊維基材から注入されたマトリックス樹脂を、該コア材に設けた貫通手段を通して他方の強化繊維基材へと流動させて、該強化繊維基材全体にマトリックス樹脂を含浸させることによりFRP層を形成するに際し、該貫通手段として、例えば、コア材に直接加工された貫通孔に内接する形状を有する筒状体を、該貫通孔内へ挿入するなど、コア材に内包された筒状体を用いること、もしくは、コア材に直接加工された貫通孔であって、その内壁そのものに対し、加熱処理や、コーティング、およびエアーブローなどの円滑化処理を施した貫通孔を用いることを特徴とする方法である。なお、本発明における加熱処理とは、コア材が多孔質体である場合には、貫通孔の内壁を加熱溶融することによって内壁表面の空隙を閉塞させる処理を指し、コア材が木材である場合には、貫通孔の内壁を加熱することによって内壁表面に堆積した木材繊維を焼却、除去する処理を指す。この方法により、コア材に設けられた全ての貫通手段に関して、孔内壁の加工表面粗さに関係なく均一な孔内部のマトリックス樹脂流動性が得られ、注入面と反対側の強化繊維基材層にも安定した速度と分量でマトリックス樹脂を供給することが可能となる。
コア材は、孔加工によって孔内壁の表面性状がばらつく材質のものであるほど発明の効果が顕著となる。例えば、コア材に発泡体などの多孔質材を使用する場合、孔内壁に連結した空隙を介して、流入したマトリックス樹脂がコア内に吸収されることにより、孔内部でのマトリックス樹脂の流速が低下する。孔内壁の空隙の形態は穿孔する場所によってまちまちであるから、マトリックス樹脂の孔内流動時間にばらつきが生ずることとなる。また、コア材に木材を使用する場合、加工によって毛羽立った木材繊維が孔内壁に様々な密度で堆積し、孔内部でのマトリックス樹脂流動時間のばらつきを引き起こす。本発明の方法によれば、孔内壁の空隙は充填もしくは被覆されるため、上記のようなマトリックス樹脂の流動時間のばらつきを抑えることができる。
本発明によれば、FRP構造体のコア材内に筒状体を挿入する、もしくは、コア材に直接加工された貫通孔の内壁の円滑化処理を行うことにより貫通手段を設け、該貫通手段内に流入するマトリックス樹脂の流動性を安定化したので、樹脂が貫通手段を通過する時間が安定して、加工に伴う孔内壁の表面性状に依ることなく、未含浸が無い、安定して高い品質のFRP構造体を得ることが可能になる。
以下に、本発明の望ましい実施の形態に関して、図面を参照しながら説明する。なお、本発明が図面に記載された態様に限定されるものではない。
図1は、本発明を実施するために用いられる装置構成の一態様を示した模式図である。図1において、1はコア材であり、コア材1の両面には、強化繊維基材2が配置される。
前記コア材が木材もしくは発泡体(たとえば、ウレタンフォーム)などの多孔質体であれば、上述の通り、コア材に直接加工された貫通孔3内に堆積物が残留し、貫通孔内の流動抵抗が増大するため、本発明の効果がより明確となる形態である。強化繊維基材2の枚数や形態は、成形後のFRP構造体に期待される機械的物性を満たす範囲で任意に設定される。使用される強化繊維の種類も限定されるものではなく、ガラス繊維や炭素繊維、アラミド繊維、もしくはこれらを併用した強化繊維が例示されるが、この中でも、機械的強度と軽量化の両立という点を考慮すると、炭素繊維が好適に使用される。他方炭素繊維は、上記その他の繊維と比較して、用いられる液状マトリックス樹脂の種類によっては、当該マトリックス樹脂との含浸性が悪い場合があり、対象とするFRP構造体が大型であるほど、炭素繊維の使用と組み合わせた場合の本発明の効果は高い。
コア材1には、強化繊維基材2と接する面同士を連結する形態の貫通手段(図1では貫通孔3)が形成される。貫通孔3は、該貫通孔3の出口近辺の面内流動性を向上させる目的で加工された溝により、貫通孔3同士がコア材1の面上で連結していてもよい。コア材1は、図1に示したように、両面に強化繊維基材2が配置された状態で下型4に収容される。さらに、下型4上に配置されたシーラントテープ5を介して、コア材1およびの全体がバッグフィルム6で被覆、密封される。このバッグフィルム6と下型4とで形成されるキャビティ7は、下型4上に形成された真空吸引ポート8を介して真空ポンプ(図示は省略)に連結され、その内部が真空引きされる。
一方、バッグフィルム6には、強化繊維基材2に接するように樹脂注入ポート9が設けられる。樹脂注入ポート9は、樹脂カップ(図示は省略)に連通しており、樹脂カップに貯留されているマトリックス樹脂の液面に作用する大気圧とキャビティ7内の気圧との間の差圧によって、キャビティ7内へとマトリックス樹脂が連続的に供給される構造になっている。
そして、本発明に係る繊維強化プラスチック構造体の製造方法は、コア材1の両面に強化繊維基材2を配し、樹脂注入ポート9から供給された樹脂を一方の強化繊維基材2側から注入し、真空吸引ポート8を介して、その内部を真空引きすることにより、コア材1に設けた貫通手段(貫通孔3)を通して、他方の強化繊維基材2側へと流動させて、両面の強化繊維基材2に樹脂を含浸させることにより、コア材1の両面に繊維強化プラスチック層を形成するのである。なお、樹脂の流動経路の詳細な説明については、後述する。
注入されるマトリックス樹脂の種類は限定されず、成形後のFRP構造体に期待される機械的物性を満たすものであれば任意に設定可能である。たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、さらにはこれらの混合樹脂等を使用できる。なお、本発明に係る繊維強化プラスチック構造体の製造方法において、強化繊維基材2の樹脂を含浸させた後、コア材1の両面に繊維強化プラスチック層を形成するに際し、注入した樹脂を硬化させる工程を設けることが一般的であるが、本発明において、硬化工程とは、用いられる樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、熱硬化性樹脂を硬化反応させる工程、用いられる樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱された熱可塑性樹脂を冷却する工程、または、注入される熱可塑性樹脂として、そのモノマーやオリゴマーが用いられる場合は、当該モノマーやオリゴマーを重合し、冷却する工程を意味するものとする。
マトリックス樹脂の粘度としては、樹脂がゲル化してしまうよりも前に成形体全体が含浸可能であればとくに制限されないが、100〜1000mPa・sの範囲であることが望ましい。粘度が上記範囲よりも小さいと、樹脂の流動性が良いため、貫通孔の流動抵抗の影響が小さいため、本発明の効果が小さい。粘度が上記範囲よりも大きいと、マトリックス樹脂が強化繊維に含浸する際の圧力損失が注入時間全体に与える影響が過大になるため、現実的な注入時間上の制約を鑑みると、液状のマトリックス樹脂注入による成形法を採用する意義そのものが希薄となる。また、粘度が上記範囲よりも小さい場合には、コアの空隙に吸収されるマトリックス樹脂の量が増加するため、成形後のコア重量がばらつき、安定した生産が難しくなるという弊害も生じる。
図2は、本発明の第1の実施の形態において使用されるコア材1の構成を示した模式図である。本発明の第1の実施の形態においては、貫通孔3の内部に、貫通孔3の断面形状と一致する断面外形状を有する筒状体20が挿入して貫通手段が形成される。なお、筒状体20が貫通孔3の断面形状と一致する断面外形状を有するとは、一方の強化繊維基材側から注入された樹脂を他方の強化繊維基材側へと流動させる、という本発明の目的を奏するのであれば、貫通孔3が設けられているコア材1の弾性等の結果、貫通孔3の断面形状と筒状体20の断面外形状とが一致すれば良く、必ずしも貫通孔3の断面形状と筒状体20の断面外形状が幾何学上の合同をなす必要はない。また、筒状体20が構成する孔(筒状体20の断面内形状の内部空間)の断面形状および材質は特に限定されないが、形状は貫通孔3の形状と同一の形状、すなわち、幾何学上の相似であることが望ましい。また、材質はFRP構造体の重量増を少しでも低減するため強化繊維と同等以下の比重を有し、かつ、マトリックス樹脂による腐食を受けない材質であることが望ましい。具体的には、ポリエステルやポリプロピレンなどのプラスチック、もしくはアルミ、チタンなどの軽金属やそれらの合金などが例示される。
図3は、図1の装置を用いた場合の樹脂の流動経路を矢印で示した模式図である。図3に示したように、樹脂注入ポート9から供給されたマトリックス樹脂は、まず内に流入し、貫通孔3に到達する。このとき、貫通孔3内に筒状体20が挿入されているため、マトリックス樹脂は、筒状体20が構成する孔の内部を必然的に通過することになる。すなわち、たとえコア材1の材質が加工によって容易に毛羽立つものであったとしても、筒状体20が介在していることにより、加工面の毛羽がマトリックス樹脂の流動経路に介入することが無くなる。これにより、一方の強化繊維基材2側から流入したマトリックス樹脂が、貫通孔3を通過して反対側の強化繊維基材2まで到達するのに要する時間を均一化することが可能となる。貫通孔3内の樹脂流動時間が均一化されれば、マトリックス樹脂の注入完了時間の予測が容易になるため、製造スケジュール設計の高効率化に寄与する。また、貫通孔3内の流動時間が均一化されれば、貫通孔3の径や穿孔位置の変更による表裏それぞれの内での樹脂流動形態の変化をより正確に予測、制御することが可能となるため、最適な孔径や穿孔位置を設計することでマトリックス樹脂のへの部分的な供給不足(いわゆる未含浸)を未然に抑止することが可能となる。これにより、時間的、品質的に安定したFRP構造体の製造が実現する。
また、本実施形態では、成形後、筒状体20が両面の強化繊維基材2を強固に連結するウェブ構造をなす。したがって、筒状体20の材質として、マトリックス樹脂との接着性が高い、あるいは、剛性が高いものを選択すれば、FRP層とコア材1との界面強度や、FRP構造体全体の剛性を実質的に高める効果が得られる。このことは、従来のようにマトリックス樹脂を選択することによって強度や剛性の設計を行う場合と比較して、FRP層の物性を変化させることなく、FRP構造体全体の強度や剛性を調整できるという点で優位である。
図4は、本発明の第2の実施の形態において使用されるコア材1の構成を示した模式図である。本発明の第2の実施の形態においては、図4に示したように、コア材1に直接形成された貫通孔3の内壁面に表面処理領域30が形成される。表面処理領域30の処理方法は、熱処理方法、マトリックス樹脂と同一の組成または同系統の組成を有するコーティング剤塗布方法、もしくは加圧空気の吹き付け方法のうち、いずれかの処理方法が好ましく採用される。
該熱処理方法は、貫通孔3の内壁面を溶融可能な方法、もしくは、貫通孔3内部の堆積物を焼却、除去可能な方法であれば特に限定されないが、たとえば、貫通孔3に内接する形状を有し、内部を熱媒や電熱線などの加熱機構を有する筒状体を貫通孔3内に直接挿入して加熱する方法が好ましい。
該コーティング剤塗布方法は、コーティング剤を浸した刷毛を貫通孔3内に挿入して塗布する方法が好ましい。コーティング剤の塗布量は、コーティング剤の粘度、コア材1の厚み、およびコア材1の空隙率などに左右されるため、貫通孔3内壁の空隙を充填可能な量であれば特に規定されるものではない。
これら熱処理方法ならびにコーティング剤塗布方法のいずれかの表面処理を行うことで、多孔質体であるコア材1に形成された貫通孔3の内壁面に不可避に発生してしまう空隙を、加熱溶融やコーティングにより被覆することが可能となる。これによって、貫通孔3内をマトリックス樹脂が流動する際、貫通孔3の内壁面の空隙を介してマトリックス樹脂がコア材1に吸収されるのを抑止することが可能となる。マトリックス樹脂がコア材1に吸収されると、その吸収量に応じた分だけ成形後の製品重量がばらついたり、貫通孔3内の流動抵抗が変動して樹脂流動速度がばらついたりするなどの弊害が生じる。したがって、上記の表面処理を施すことは、安定的なFRP構造体の製造に寄与するものである。
該加圧空気の吹き付け方法は、貫通孔3内の堆積物を除去可能な方法であれば特に規定されないが、加圧力が0.6MPaの空気を5秒以上吹き付ける方法が望ましい。この方法の効果は、本発明の第1の実施形態と同様、貫通孔3内の樹脂流動安定化である。
なお、貫通孔3の径とピッチ長については特に制限はないが、孔径に関しては1〜5mm、孔ピッチに関しては20mm〜50mmの範囲内であることが望ましい。貫通孔3の孔径が上記の範囲よりも小さいと、コア内をマトリックス樹脂が流動する際の圧力損失が過大になり、現実的な時間内で成形の達成が難しくなることがある。また、孔径が上記の範囲よりも大きいと、孔内の残留物の流動抵抗による影響が小さいため、本発明の効果が小さく、また、成形品の表面に凹凸などの影響を与えてしまうため、意匠性が損なわれることがある。
貫通孔3の孔ピッチが上記の範囲よりも小さいと、コア内における貫通孔の占める体積比、すなわち、成形後のコア内部に残留するマトリックス樹脂量が過大となるため、コア材を用いることによる成形品全体の軽量化効果が希薄となる可能性がある。また、孔ピッチが上記の範囲よりも大きいと、下型側の織物におけるマトリックス樹脂の拡散状態が離散的になり、貫通孔の中間点近傍での未含浸の発生リスクが無視できないものとなる可能性がある。
(実施例1)
長さ610mm、幅200mmにカットした厚さ50mmのバルサコア「AL−100」(Alcan Baltek製)に対し、厚み方向に貫通するように孔径3mmの円形貫通孔をドリルにて穿孔した。貫通孔は、長さ方向および幅方向に等しく40mmピッチとなるような千鳥状に配置する形で計140箇所穿孔した。すべての貫通孔内部には、ポリプロピレン円筒(外径3mm、内径2.7±0.2mm)を長さ50mmにカットしたものを挿入した。
離型処理を施したガラス板上に炭素繊維「T700S」(東レ製)を使用した多軸織物MK6230JN(CF目付:600g/m)を疑似等方性の積層構成で8ply積層し、その上に、上記バルサコア、さらに上記と同様の積層構成で織物を8ply、樹脂拡散媒体としてポリエチレン製のメッシュ材(東京ネトロン製、TSX−312N)、および樹脂注入チューブを、それぞれ順番に積層した。次いで、該ガラス板にシーラントテープと真空吸引チューブを配置し、積層した材料全体をバッグフィルム(シーアイ化成製スカイコート)で覆い密封した。
樹脂注入チューブの口を閉じた後、真空吸引チューブから真空ポンプでバッグフィルム内の圧力を10Torr以下に減圧した。その後、フェノール樹脂BRL−1050(昭和高分子製)を100質量部、FRH−30A(昭和高分子製)を13質量部混合した混合液を、20℃雰囲気下で樹脂注入チューブからバッグフィルム内の真空度を10Torr以下に保ったまま注入し、硬化させてFRPサンドイッチ積層板を得た。
バッグフィルム内に注入された混合液は、注入開始から10分で反対側の織物表面に染み出し始め、40分で織物全体に欠陥なく含浸を完了した。混合液がバルサコアのポリプロピレン円筒内を通って反対側の織物表面に染み出してくる様子を、ガラス板を通して観察したところ、注入側における混合液の拡散状態が、バルサコア通過時に乱されることなく、反対側の面でも同様に再現されることが確認された。
(実施例2)
実施例1と同じ品番であり、サイズおよび貫通孔の形態も同一になるよう加工されたバルサコアの全ての貫通孔に対し、0.6MPaの加圧空気を5秒間吹き付けた。その後、実施例1と同様の構成で樹脂混合液を注入・硬化させてFRPサンドイッチ積層版を製造したところ、樹脂混合液は、注入開始から12分で反対側の織物表面に染み出し始め、45分で織物全体に欠陥なく含浸を完了した。実施例1と同様、貫通孔を通過した樹脂の染み出す様子にも乱れは生じなかった。
(比較例1)
バルサコアに貫通孔を形成した後、ポリプロピレン円筒を挿入しないこと以外は、実施例1と同様の方法を用いてFRPサンドイッチ積層版を製造した。
その結果、樹脂混合液の注入開始時点から反対側の織物表面に樹脂混合液が染み出し始めるまでに21分を要し、樹脂混合液のゲル化時間(=60分)に達した時点でも、最終的にガラス板側の織物表面において、面積比20%程度の未含浸部が残留した。
実施例1と同様に、貫通孔を通過した樹脂混合液がガラス板側の織物表面に染み出す様子を、ガラス板を通して観察したところ、貫通孔通過の前後で樹脂混合液の拡散状態に差異が観察された。特に、貫通孔の途中で樹脂混合液の流動がせき止められ、反対側の織物表面まで樹脂混合物が到達しない状態が観察された。
本発明は、軽量で高い曲げ剛性が要求され、かつ表面の意匠性が要求される大型パネル産業分野における安定的な製品製造に貢献するものである。具体的には、壁材、天井材、床材などの建築資材や、風力発電のローターブレード、航空機のフロアパネルおよび船舶のデッキパネルなどが例示される。
本発明を実施するために用いられる装置構成の一態様を示した模式図である。 本発明の第1の実施の形態において使用されるコア材1の構成を示した模式図である。 図1の装置を用いた場合の樹脂の流動経路を矢印で示した模式図である。 本発明の第2の実施の形態において使用されるコア材1の構成を示した模式図である。
符号の説明
1 コア材
2 強化繊維基材
3 貫通孔
4 下型
5 シーラントテープ
6 バッグフィルム
7 キャビティ
8 真空吸引ポート
9 樹脂注入ポート
20 筒状体
30 表面処理領域

Claims (9)

  1. コア材の両面に強化繊維基材を配し、一方の強化繊維基材側から注入された樹脂を、該コア材に設けた貫通手段を通して他方の強化繊維基材側へと流動させて、該両面の強化繊維基材に樹脂を含浸させることにより、該コア材の両面に繊維強化プラスチック層を形成する繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、該コア材に設けた貫通手段として、コア材に内包された筒状体を用いることを特徴とする繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  2. コア材の両面に強化繊維基材を配し、一方の強化繊維基材側から注入された樹脂を、該コア材に設けた貫通手段を通して他方の強化繊維基材側へと流動させて、該両面の強化繊維基材に樹脂を含浸させることにより、該コア材の両面に繊維強化プラスチック層を形成する繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、該コア材に設けた貫通手段として、その内壁表面に円滑化処理を施した貫通孔を用いることを特徴とする繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  3. 該円滑化処理の方法が、以下の(a)〜(c)のいずれかである、請求項2に記載の繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
    (a)該貫通孔の内壁表面を、加熱処理する方法(b)該貫通孔の内壁表面に、注入樹脂と同一の組成を有する樹脂を塗布する方法。
    (c)該貫通孔の内壁表面に、加圧空気の吹き付け処理をする方法。
  4. 前記注入される樹脂の粘度が100〜1000mPa・sである、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  5. 該コア材に多孔質材を使用する、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  6. 該コア材に木材を使用する、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  7. 繊維強化プラスチック、コア材、繊維強化プラスチックの順に積層構造を有した強化繊維プラスチック構造体であって、該コア材の両面に配された繊維強化プラスチックを貫通する筒状体が該コア材に内包されており、かつ、該筒状体の内部が前記繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂で充填されていることを特徴とする繊維強化プラスチック構造体。
  8. 該コア材として多孔質材が用いられている、請求項7に記載の繊維強化プラスチック構造体。
  9. 該コア材として木材が用いられている、請求項7に記載の繊維強化プラスチック構造体。
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